バンドギャップリファレンス回路
【課題】温度に対し高精度なリファレンス電圧の発生を実現する。
【解決手段】ダイオード接続されたトランジスタのベース−エミッタ間電圧を用いた、温度に対して負の特性を持つ電圧に、絶対温度に比例する正の特性を持つ電圧を加えて1次の温度補償を行うとともに、さらに前記トランジスタのベース−エミッタ間電圧に含まれる例えば2次の温度特性成分を打ち消す温度補償信号を発生するN次温度補償信号発生回路105を設け、ベース−エミッタ間電圧に、N次温度補償信号発生回路105からの温度補償信号Vcompを加えることにより、ベース−エミッタ間電圧に含まれる2次の温度特性成分による変動を抑制する。
【解決手段】ダイオード接続されたトランジスタのベース−エミッタ間電圧を用いた、温度に対して負の特性を持つ電圧に、絶対温度に比例する正の特性を持つ電圧を加えて1次の温度補償を行うとともに、さらに前記トランジスタのベース−エミッタ間電圧に含まれる例えば2次の温度特性成分を打ち消す温度補償信号を発生するN次温度補償信号発生回路105を設け、ベース−エミッタ間電圧に、N次温度補償信号発生回路105からの温度補償信号Vcompを加えることにより、ベース−エミッタ間電圧に含まれる2次の温度特性成分による変動を抑制する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンドギャップリファレンス回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バンドギャップリファレンス回路として、例えば図11に示すものが知られている。
この図11に示すバンドギャップリファレンス回路は、PNP型トランジスタからなるトランジスタQ1およびQ2と、オペアンプOP1と、電流源として機能するP型MOSトランジスタからなるトランジスタM1およびM2と、抵抗R1、R2、R3とで構成されている。
【0003】
トランジスタQ2のエミッタサイズは、トランジスタQ1のエミッタサイズのN倍(Nは正の整数、N>1)であり、トランジスタM1およびM2のトランジスタサイズは同一である。
そして、トランジスタM1と抵抗R3とトランジスタQ1とが直列に接続されて、電源VDDおよび接地間に接続され、同様に、トランジスタM2と抵抗R2と抵抗R1とトランジスタQ2とが直列に接続されて、電源VDDおよび接地間に接続されている。
【0004】
オペアンプOP1は、抵抗R1とR2との接合点の電位とトランジスタQ1のエミッタの電位とに基づいてトランジスタM1およびM2のゲート電圧を制御し、これらトランジスタM1およびM2に流れる電流を制御するように動作する。
ここで、トランジスタM1に流れる電流をI2、トランジスタM2に流れる電流をI1とすると、トランジスタM1とM2とはトランジスタサイズが等しいため、I1=I2となる。
【0005】
電流I1とI2とが供給されたとき、トランジスタQ1のエミッタと抵抗R3との接続点であるノードN1の電圧VN1、及び抵抗R1とR2との接合点であるノードN2の電圧VN2はそれぞれ次式で表すことができる。
VN1=VBE(Q1) ……(1)
VN2=VBE(Q2)+R1×I1 ……(2)
ここで、VBE(Q1)はトランジスタQ1のベース−エミッタ間電圧、VBE(Q2)はトランジスタQ2のベース−エミッタ間電圧である。
【0006】
オペアンプOP1は、ノードN1およびノードN2の電圧を同一にするように、トランジスタM1、M2のゲート電圧を制御し、つまり電流I1、I2を制御するため、最終的にVN1=VN2となる。
式(1)および式(2)から、電流I1について解くと、I1は次式(3)で表すことができる。
I1=(VBE(Q1)−VBE(Q2))/R1 ……(3)
【0007】
図11からわかるように、抵抗R2にも、式(3)で表されるI1と同一の電流が流れるため、出力端子OUTの出力電圧Voutは、次式(4)で表すことができる。
Vout=VBE(Q2)+(R1+R2)×I1 ……(4)
ここでΔVBE=(VBE(Q1)−VBE(Q2))とおくと、式(3)および式(4)から、出力電圧Voutは次式(5)と表すことができる。
Vout=VBE(Q2)+ΔVBE×(1+R2/R1) ……(5)
【0008】
ベース電流を無視すれば、VBE(Q1)およびVBE(Q2)電圧は次式(6)および(7)で表すことができる。
VBE(Q1)=k×T/q×ln(I1/Is1) ……(6)
VBE(Q2)=k×T/q×ln(I2/Is2) ……(7)
ここで、式(6)および(7)中の、kはボルツマン定数、Tは絶対温度、qは電気素量、Is1、Is2はトランジスタQ1、Q2の飽和電流を表す。
【0009】
飽和電流はエミッタ面積に比例するので、Is1とIs2との関係は、次式(8)となる。
Is2=N×Is1 ……(8)
これら式(6)、式(7)、式(8)から、ΔVBEは次式(9)で表すことができる。
ΔVBE=VBE(Q1)−VBE(Q2)
=k×T/q×ln〔(I1/Is1)×(Is2/I2)〕
=k×T/q×ln(N) ……(9)
式(9)からわかるように、式(5)中のΔVBEは、正の傾きをもつ絶対温度に比例した電圧となる。
【0010】
また、式(5)中のVBE(Q2)は、次式(10)で表すことができる。
VBE(Q2)=Vg0−(Vg0−VBE(TR))/TR×T
−(γ−1)×(k×T/q)×ln(T/TR) ……(10)
ここで式(10)中の、Vg0は温度0〔K〕の時のシリコンのバンドギャップ、VBE(TR)は、室温におけるエミッタ−ベース間電圧、TRは室温、γはドーピングレベルによって決まる定数である。
式(10)において、第2項と第3項とが温度に依存し、温度に対して負の傾きを持つ特性となっている。
【0011】
図11に示した、従来のバンドギャップリファレンス回路では、出力電圧Voutは、前記式(5)に示したように、式(10)で示されたトランジスタQ2のベース−エミッタ間電圧VBE(Q2)と、式(9)で示された電圧ΔVBEを(1+R2/R1)倍した電圧の和として発生される。
したがって、抵抗R2とR1との比を適切に選択することにより、ΔVBEの正の温度特性を用いて、トランジスタQ2のベース−エミッタ間電圧VBE(Q2)の負の温度特性を打ち消すことで1次の温度補償を行うようになっている。
【0012】
また、このように、1次の温度補償を行うバンドギャップリファレンス回路の他に、例えば2次の温度特性を持つ電流によりバンドギャップ電圧の2次成分を打ち消すことで、2次の温度補償を行うようにしたバンドギャップリファレンス回路も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平9−260597号公報
【特許文献2】特開2009−59149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上述の図11に示すように、ΔVBEの正の温度特性を用いて、トランジスタQ2のベース−エミッタ間電圧VBE(Q2)の温度補償を行う方法にあっては、前記(10)式中の第3項は、ΔVBEによる1次の温度補償ではキャンセルできない高次の温度特性を有する。そのため、抵抗R2とR1との比R2/R1として最適な値を選択したとしても、数mV程度の温度ドリフトが残ってしまい、高精度のリファレンス電圧を実現することができない。
【0015】
また、上述の2次の温度補償を行うようにしたバンドギャップリファレンス回路を用いた場合、バンドギャップ電圧の2次成分を打ち消すことはできるが、3次以上の高次成分の電圧エラー、すなわち温度ドリフトが残り、高精度なリファレンス電圧を実現することができない。
そのため、高次成分の温度補償を行うことの可能なバンドギャップリファレンス回路が望まれていた。
そこで、この発明は、上記従来の未解決の問題に着目してなされたものであり、温度に対してより高精度なリファレンス電圧を実現することの可能なバンドギャップリファレンス回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の請求項1にかかるバンドギャップリファレンス回路は、温度特性を持つ被補償信号を生成する被補償信号発生部と、前記被補償信号が持つ前記温度特性のうちn次(nは3以上の整数)の温度特性を補償するn次温度補償部と、を備え、前記n次温度補償部により温度特性が補償された後の前記被補償信号をバンドギャップリファレンス信号として出力するバンドギャップリファレンス回路であって、前記n次温度補償部は、前記被補償信号に含まれる、前記n次までの各次数における温度特性を持つ信号成分を打ち消すための温度特性を持つ各温度補償信号を生成し、前記n次までの各温度補償信号の総和を前記被補償信号に重畳することを特徴としている。
【0017】
請求項2にかかるバンドギャップリファレンス回路は、前記被補償信号は温度特性を持つ被補償電圧信号であって、前記n次の温度補償信号は、前記被補償電圧信号に含まれる、前記n次の温度特性を持つ電圧信号成分を打ち消す温度特性を持つn次の温度補償電圧信号であることを特徴としている。
請求項3にかかるバンドギャップリファレンス回路は、前記被補償信号は温度特性を持つ被補償電流信号であって、前記n次の温度補償信号は、前記被補償電流信号に含まれる、前記n次の温度特性を持つ電流信号成分を打ち消す温度特性を持つn次の温度補償電流信号であることを特徴としている。
【0018】
請求項4にかかるバンドギャップリファレンス回路は、前記n次温度補償部は、前記n次の温度補償電流信号を電圧信号に変換する電流−電圧変換部を備えることを特徴としている。
請求項5にかかるバンドギャップリファレンス回路は、前記電流−電圧変換部は抵抗であることを特徴としている。
請求項6にかかるバンドギャップリファレンス回路は、前記抵抗の抵抗値は可変に構成されていることを特徴としている。
請求項7にかかるバンドギャップリファレンス回路は、前記抵抗の抵抗値を記憶する記憶手段を備えることを特徴としている。
請求項8にかかるバンドギャップリファレンス回路は、前記n次温度補償部は、前記被補償信号に含まれる1次の温度特性を持つ信号成分を打ち消す温度特性を持つ1次補償信号を生成する1次補償部を備えることを特徴としている。
【0019】
請求項9にかかるバンドギャップリファレンス回路は、前記1次補償部は、電源電圧間に並列に接続された特性の異なる一対のバイポーラトランジスタを備え、前記一対のバイポーラトランジスタのベース−エミッタ間電圧の差を利用して前記1次補償信号を生成することを特徴としている。
請求項10にかかるバンドギャップリファレンス回路は、前記被補償信号発生部は、前記一対のバイポーラトランジスタのうちの一方のバイポーラトランジスタのベース−エミッタ間電圧を、前記被補償信号として用いることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、n次温度補償部により温度補償信号を被補償信号に重畳し、この温度補償信号は、被補償信号が持つ温度特性のうちのn次までの各次数における温度特性を持つ信号成分を打ち消すための温度特性の総和であるため、被補償信号に対してn次までの温度補償を行うことができる。したがって、温度に対してより高精度なリファレンス電圧を実現することの可能なバンドギャップリファレンス回路を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明におけるバンドギャップリファレンス回路の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明におけるバンドギャップリファレンス回路の一例を示す回路図である。
【図3】(a)は絶対温度と温度補償電流との関係を示す特性図、(b)は絶対温度と温度補償電圧との関係を示す特性図である。
【図4】温度補償を行わない場合および温度補償を行った場合の温度ドリフト量の一例である。
【図5】温度ドリフトの高次特性をn次多項式で展開した場合における計算誤差結果の一例である。
【図6】温度に対して2次関数の特性を持つ温度補償電流発生回路の一例を示す回路図である。
【図7】温度に対して3次関数の特性を持つ温度補償電流発生回路の一例を示す回路図である。
【図8】差動対を構成するトランジスタに流れる電流の一例である。
【図9】(a)はトランジスタPAに流れる電流の一例、(b)はトランジスタPBに流れる電流の一例である。
【図10】差動対を構成するトランジスタQ1、Q2として、NPN型トランジスタからなるトランジスタQ1、Q2を用いた場合のバンドギャップリファレンス回路の一例を示す回路図である。
【図11】従来のバンドギャップリファレンス回路の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明のバンドギャップリファレンス回路の一例を示す構成図である。
図1におけるバンドギャップリファレンス回路1は、定電流I1を発生する定電流源101と、当該定電流源101に接続されたPNP型トランジスタからなるトランジスタQ101と、加算回路102と、絶対温度に比例するVT電圧を発生するVT発生回路103と、VT発生回路103で発生されたVT電圧をM倍する乗算器104と、N次の温度補償を行うためのN次温度補償信号を発生するN次温度補償信号発生回路105と、を備える。
【0023】
トランジスタQ101は、ベース−コレクタ間が短絡されるようにダイオード接続されたトランジスタであって、トランジスタQ101のエミッタが定電流源101に接続され、コレクタは接地されている。定電流源101とトランジスタQ101のエミッタとの接続点の電圧がトランジスタQ101のベース−エミッタ間電圧VBEとして加算回路2に入力される。
【0024】
VT発生回路103は、VT(VT=k×T/q)電圧を発生する。なお、kはボルツマン定数、Tは絶対温度、qは電気素量である。
そして、トランジスタQ101のベース−エミッタ間電圧VBEと、乗算器104からのM×VT電圧と、N次温度補償信号発生回路105からの高次温度補償電圧Vcompとが加算回路102に入力され、これら電圧の和が出力電圧すなわち基準電圧Vout(=VBE+M×VT+Vcomp)として出力される。
【0025】
つまり、前述の従来のバンドギャップリファレンス回路(図11)では、ダイオード接続されたトランジスタQ2のVBE電圧を用いた、温度に対して負の傾きを持つ電圧に、絶対温度に比例するVT(VT=k×T/q)電圧を加えることで、温度ドリフトを軽減していたが、この図1に示すバンドギャップリファレンス回路1では、これに加えて高次の温度係数を持つ温度補償信号発生回路(N次温度補償信号発生回路105)を有し、高次温度補償電圧Vcompをさらに加えることにより、さらに温度ドリフトを低減させるようにしている。
【0026】
図2は、図1のバンドギャップリファレンス回路1の具体的な構成を示す回路図である。
図2に示すように、このバンドギャップリファレンス回路1は、図11に示す従来のバンドギャップリファレンス回路と同様に、PNP型トランジスタからなるトランジスタQ1およびQ2と、オペアンプOP1と、電流源として機能するP型MOSトランジスタからなるトランジスタM1およびM2と、を備えるとともに、さらに、抵抗R1、R2A、R2B、R3と、温度補償電流発生回路10とを備えている。抵抗R2AおよびR2Bは抵抗値可変に構成されている。
【0027】
トランジスタQ2のエミッタサイズは、トランジスタQ1のエミッタサイズのN倍(Nは正の整数、N>1)であり、トランジスタM1およびM2のトランジスタサイズは同一である。これらトランジスタQ1およびQ2はそれぞれベース−コレクタ間が短絡するようにダイオード接続される。
そして、トランジスタM1のソースが電源電圧VDDに接続され、ドレインは抵抗R3を介してトランジスタQ1のエミッタに接続され、コレクタは接地される。同様に、トランジスタM2のソースが電源電圧VDDに接続されトランジスタM2のドレインは抵抗R2B、R2A、R1を介してトランジスタQ2のエミッタに接続されトランジスタQ2のコレクタは接地される。
【0028】
抵抗R3とトランジスタQ1のエミッタとの接続点であるノードN1の電圧VN1がオペアンプOP1の反転入力端子に入力され、抵抗R2AとR1との接合点であるノードN2の電圧VN2がオペアンプOP1の非反転入力端子に入力される。オペアンプOP1は、ノードN1の電圧VN1とノードN2の電圧VN2とを同一にするようにトランジスタM1およびM2のゲート電圧を制御して、トランジスタM2に流れる電流I1′およびトランジスタM1に流れる電流I2′を制御する。
温度補償電流発生回路10は、抵抗R2AおよびR2Bの接合点であるノードN3に接続される。また、トランジスタM2と抵抗R2Bの接続点の電圧が出力電圧Voutとして、出力端子OUTから出力されるようになっている。
【0029】
ここで、ノードN1での電流変化に対する電圧変化は、ノードN2での電流変化に対する電圧変化に対して十分小さい。上述のように、オペアンプOP1は、ノードN1のVN1電圧とノードN2のVN2電圧とが同一となるようにトランジスタM1、M2に流れる電流を制御するため、ノードN3において温度補償電流発生回路10により温度補償電流Icompが引かれた場合、抵抗R1に流れる電流を変化させないようにトランジスタM1およびM2に流れる電流が制御されることになる。そのため、トランジスタM1に流れる電流I2′およびトランジスタM2に流れる電流I1′は、次式(11)で表すことができる。
I1′=I2′=I1+Icomp=I2+Icomp ……(11)
なお、式(11)中のI1、I2は、前記図11に示す温度補償電流発生回路10が接続されていないときに、トランジスタM1、M2を流れる電流である。
【0030】
式(11)から、出力端子OUTに発生される出力電圧Voutは、次式(12)で表すことができる。
Vout
=VBE(Q2)+I1×R1+I1×R2A+(I1+Icomp)×R2B
=VBE(Q2)+I1×(R1+R2A+R2B)+Icomp×R2B
……(12)
ここで、R2A+R2B=R2とすると、式(12)における第1項と第2項との和は、前記式(4)と同一であり、すなわち、前記従来の図11に示すバンドギャップリファレンス回路の出力電圧Voutと同一である。
【0031】
式(12)においてその第3項が、出力電圧Voutにおいて新しく付加された高次温度補償電圧Vcompとなっている。
温度補償電流発生回路10により引かれる温度補償電流Icompと、高次温度補償電圧Vcompとの関係は、2次の温度補償の場合、例えば図3のようになる。すなわち、式(12)の第3項に示したように、Vcomp=Icomp×R2Bとなる。
【0032】
なお、図3において(a)は絶対温度Tと温度補償電流Icompとの対応を表したものであって、横軸が絶対温度T、縦軸が温度補償電流Icompである。図3において(b)は絶対温度Tと高次温度補償電圧Vcompとの対応を表したものであって、横軸が絶対温度T、縦軸が高次温度補償電圧Vcompである。
図4は、式(12)における第3項に示した温度補償電圧“Icomp×R2B”が、温度に関して3次関数の特性を持つ場合の温度補償後の出力電圧Voutの温度ドリフト量の計算値を表したものである。
【0033】
この温度ドリフト量の計算は、以下のように行った。すなわち、前記従来の図11に示すバンドギャップリファレンス回路において説明したように、図11においてトランジスタM2に流れる電流I1は、前記式(3)で示したように、ΔVBE(=VBE(Q1)−VBE(Q2))を抵抗R1で割った値として求められ、式(9)で示したように、ΔVBEは、絶対温度Tに比例するため、トランジスタM2に流れる電流I1は理論上温度に比例し、温度に関する1次関数で近似することができる。また、温度ドリフトの2次以上の成分は、式(12)の第1項に表されたVBE(Q2)に起因するものであるため、式(10)を用いて計算した。
【0034】
なお、図4において、(a)は温度補償が無い時のVBE(Q2)がもつ温度ドリフト量を表す。(b)は温度補償後のVBE(Q2)に起因する温度ドリフト量を示したものであり、1次補償後、2次補償後、3次補償後の温度ドリフト量を示す。(c)は図4(b)の2次補償後の温度ドリフト量を拡大表示したもの、(d)は図4(b)の3次補償後の温度ドリフト量を拡大表示したものである。なお、各図4(a)〜(d)において横軸は温度〔℃〕を表す。縦軸は温度ドリフト量を示し、その単位は、図4(a)は電圧〔V〕であり、図4(b)〜(d)は電圧〔μV〕である。
【0035】
図4に示すように、VBE(Q2)電圧は、温度補償されないときには、図4(a)に示すように、−40〔℃〕から90〔℃〕で、300〔mV〕程度の温度ドリフトをもっている。1次の温度補償を実施することにより、図4(b)に示すように、1200〔μV〕程度の温度ドリフトに抑制することができる。2次の温度補償を実施することにより図4(c)に示すように、50〔μV〕以下の温度ドリフトを達成することができる。さらに、3次補償を実施することにより、図4(d)に示すように、10〔μV〕以下の温度ドリフトを達成することができる。したがって、3次補償まで実施すれば、計算上、10ppm以下の温度ドリフト量にすることが可能である。
【0036】
ここで、実際の回路では、抵抗値やトランジスタ特性のプロセスばらつきや、素子間のミスマッチなどによって温度特性は変動する。この変動を補正するため、図2中の抵抗R2A、R2Bは、抵抗値可変に構成され、調整後の抵抗値を記憶するようにしている。例えば、バンドギャップリファレンス回路1が実装されたIC内に、記憶手段として不揮発性メモリを実装しておき、調整後の抵抗R2A、R2Bの抵抗値を不揮発性メモリにより保持するようになっている。そして、以後、抵抗R2A、R2Bの抵抗値として、不揮発性メモリに格納された抵抗値を設定することによって、抵抗R2A、R2Bの調整を容易に行うようになっている。
【0037】
図4は、以下のように数式上も証明出来る。
前記式(10)に示したVBE(Q2)の温度特性において、高次の温度特性を持つ第3項を変形すると下記のようになる。
−(γ−1)×(k×T/q)×ln(T/TR)
=−(γ−1)×(k×TR/q)×(T/TR)×ln(T/TR)
……(13)
実使用範囲である温度(−40〜100℃程度)では、前記式(13)は次のように展開できる。
【0038】
【数1】
【0039】
上記のように、高次成分をもつ(T/TR)×ln(T/TR)は、温度Tのべき乗で展開できる。例えば、γ=3、k×TR/q=26mVを用いて計算すると、図5のようになり、高精度リファレンス電圧の生成には、3次以上の温度補正が必要であることが明らかである。なお、図5において、横軸は温度〔℃〕、縦軸は温度ドリフト量〔μV〕を表す。
【0040】
次に、温度補償電流発生回路10の具体的な回路を説明する。
図6は、温度に対して2次関数の特性を持つ温度補償電流発生回路の一例を示したものであり、10aは温度補償電流Icompを引き抜く場合、10a′は温度補償電流Icompを加える場合の回路である。なお、温度補償電流発生回路10aは、温度補償対象となる二次の温度特性に応じて、温度補償対象の二次の温度補償を行うことができる方の温度補償電流発生回路10a、または10a′を選択する。温度補償対象の二次の温度特性は設計時に認識することができる。
【0041】
この温度補償電流発生回路10aは、NPN型トランジスタからなるトランジスタBIP1〜BIP4と、温度に対して比例する電流Iptatを発生する電流源12と、温度に関係なく一定の電流Icを発生する定電流源13と、オペアンプOP11と、電流源として動作するP型MOSトランジスタからなるトランジスタMP1およびMP2とから構成される。
【0042】
トランジスタBIP1〜BIP4は、同一特性を有し且つベース−コレクタ間が短絡するようにダイオード接続され、トランジスタBIP1のコレクタとトランジスタBIP2のエミッタとが接続され、トランジスタBIP2のコレクタは電流源12を介して電源電圧VDDに接続され、トランジスタBIP1のエミッタは接地される。同様に、トランジスタBIP3のコレクタとトランジスタBIP4のエミッタとが接続され、トランジスタBIP4のコレクタは定電流源13を介して電源電圧VDDに接続され、トランジスタBIP3のエミッタは接地される。
【0043】
また、トランジスタMP1は、電源電圧VDDと、トランジスタBIP3およびトランジスタBIP4の接続点との間に接続され、トランジスタMP2のソースは電源電圧VDDに接続される。トランジスタMP2のドレインは、ミラー回路を構成する一対のトランジスタに接続される。このミラー回路は、N型MOSトランジスタからなるトランジスタMN1とトランジスタMN2とで構成され、トランジスタMN1のドレイン電圧がトランジスタMN1およびMN2のゲートに供給される。そして、トランジスタMP2のドレインとミラー回路を構成するトランジスタMN1のドレインとが接続され、これらトランジスタMN1およびMN2のソースは接地される。そして、トランジスタMN2のドレインが、図2のノードN3に接続される。
【0044】
つまり、トランジスタMP1を流れる電流が温度補償電流Icomp11となり、トランジスタMN1およびMN2からなるミラー回路により、トランジスタMP2を流れる温度補償電流Icomp11相当のドレイン電流がIoutとしてトランジスタMN2に流れ、温度補償電流Icomp11相当の電流が引き抜かれるようになっている。
そして、電流源12とトランジスタBIP2との接続点であるコレクタノードNINのノード電圧VninがオペアンプOP11の反転入力端子に入力され、定電流源13とトランジスタBIP4との接続点であるコレクタノードPINのノード電圧Vpinがオペアンプ11の非反転入力端子に入力される。オペアンプ11の出力側は、トランジスタMP1およびMP2のゲートに接続される。
【0045】
オペアンプOP11は、トランジスタBIP2のコレクタノードNINのノード電圧VninとトランジスタBIP4のコレクタノードPINのノード電圧Vpinとを同一とするようにトランジスタMP1に流れる電流Icomp11を調整するように動作する。
一方、温度補償電流を重畳するための温度補償電流発生回路10a′は、図6(b)に示すように、図6(a)において、ミラー回路を構成するトランジスタMN1およびMN2を除去した構成を有し、トランジスタMP2を流れる温度補償電流Icomp11相当の電流がIoutとしてノードN3に加えられるようになっている。
【0046】
ここで、コレクタノードNINのノード電圧Vninは次式(15)で表される。
Vnin=2×k×T/q×ln(Iptat/Is)
=k×T/q×ln(Iptat/Is)2 ……(15)
また、コレクタノードPINのノード電圧Vpinは次式(16)で表される。
Vpin=k×T/q×ln(Ic/Is)
+k×T/q×ln((Ic+Icomp11)/Is)
=k×T/q×ln〔Ic×(Ic+Icomp11)/Is2〕
……(16)
なお、式(15)、式(16)中のIsは、NPN型トランジスタからなるトランジスタBIP1〜BIP4の飽和電流である。
【0047】
これらノード電圧VninおよびVpinは、最終的にはオペアンプOP11によって、Vnin=Vpinとなるような状態に安定する。したがって、式(15)および式(16)から、Icomp11は、次式(17)で示される。
(Iptat/Is)2=Ic×(Ic+Icomp11)/Is2
Icomp11=(Iptat2/Ic)−Ic ……(17)
式(17)からわかるように、Icomp11は、Iptatの2乗に比例する。すなわち、前述のようにIptatは温度に比例する電流であるから、Icomp11は、温度の2乗に比例する電流となる。
つまり、2次関数の特性を持つ温度補償電流Icomp11を発生することができることを意味する。
【0048】
図7は、温度に対して3次関数の特性をもつ温度補償電流発生回路10bの一例を示したものである。
この温度補償電流発生回路1bは、所定電流を発生する定電流源21〜23と、NPN型トランジスタからなる3組の差動対H1〜H3と、差動対を構成する各NPN型トランジスタに接続される抵抗R11a〜13bと、電流源として動作するP型MOSトランジスタからなるトランジスタPAおよびPBと、これらトランジスタPAおよびPBのそれぞれとカレントミラー回路を構成するP型MOSトランジスタからなるトランジスタMPa、MPbと、カレントミラー回路を構成するN型MOSトランジスタからなるトランジスタ対MN21およびMN22とから構成される。
【0049】
差動対H1は、NPN型トランジスタからなるトランジスタBIP21aおよびBIP21bで構成され、トランジスタBIP21aのエミッタは抵抗R11aおよび定電流源21を介して接地され、同様に、トランジスタBIP21bのエミッタは抵抗R11bおよび定電流源21を介して接地される。
差動対H2は、NPN型トランジスタからなるトランジスタBIP22aおよびBIP22bで構成され、トランジスタBIP22aのエミッタは抵抗R12aおよび定電流源22を介して接地され、同様に、トランジスタBIP22bのエミッタは抵抗R12bおよび定電流源22を介して接地される。
【0050】
差動対H3は、NPN型トランジスタからなるトランジスタBIP23aおよびBIP23bで構成され、トランジスタBIP23aのエミッタは抵抗R13aおよび定電流源23を介して接地され、同様に、トランジスタBIP23bのエミッタは抵抗R13bおよび定電流源23を介して接地される。これらトランジスタBIP21a〜BIP23bは同一特性を有する。
【0051】
各差動対H1〜H3を構成する一方のトランジスタBIP21a、BIP22a、BIP23aのコレクタは、共通してトランジスタPAのドレインに接続され、トランジスタPAのソースは電源電圧VDDに接続される。
各差動対H1〜H3を構成する他方のトランジスタBIP21b、BIP22b、BIP23bのコレクタは、共通してトランジスタPBのドレインに接続され、トランジスタPBのソースは電源電圧VDDに接続される。
【0052】
トランジスタMPaとトランジスタMN22とは直列に接続され、トランジスタMPaのソースは電源電圧VDDに接続され、トランジスタMN22のソースは接地される。
同様に、トランジスタMPbとトランジスタMN21とは直列に接続され、トランジスタMPbのソースは電源電圧VDDに接続され、トランジスタMN21のソースは接地される。
【0053】
各差動対H1〜H3を構成する一方のトランジスタBIP21b、BIP22a、BIP23bのベースにはそれぞれ個別に一定電圧Vrefが入力され、他方のトランジスタBIP21a、BIP22b、BIP23aのベースには、温度に対して1次の温度特性を有する共通の電圧VTが入力される。
カレントミラー回路を構成するトランジスタPAおよびMPaのゲートには、トランジスタPAのドレイン電圧が入力される。カレントミラー回路を構成するトランジスタPBおよびMPbのゲートには、トランジスタPBのドレイン電圧が入力される。カレントミラー回路を構成するトランジスタMN21およびMN22のゲートには、トランジスタMN21のドレイン電圧が入力される。
【0054】
そして、トランジスタMPaおよびトランジスタMN22の接続点を流れる電流が温度補償電流Icomp21として出力または引き抜かれる。つまり、トランジスタPAを流れる電流IAと電流IBとの差の電流が、温度補償電流Icomp21として出力または引き抜かれる。
ここで、電圧VTと一定電圧VrefとがVT=Vrefであるとき、差動対H1〜H3を構成する各トランジスタに流れる電流は等しく、流れる電流は、定電流源21〜23を流れる電流量の半分となる。
【0055】
一方、一定電圧Vrefよりも電圧VTが十分に大きい場合、定電流源21〜23を流れる電流は全て電圧VTが入力されるトランジスタBIP21a、BIP22b、BIP23aを流れ、一定電圧Vrefが入力されるトランジスタBIP21b、BIP22a、BIP23bには電流は流れない。
逆に、一定電圧Vrefの方が電圧VTよりも十分に大きい場合、定電流源21〜23を流れる電流は全て一定電圧Vrefが入力されるトランジスタBIP21a、BIP22b、BIP23aを流れ、電圧VTが入力されるトランジスタBIP21b、BIP22a、BIP23bには電流は流れない。
【0056】
例えば、電圧VTが負の温度特性とし、図7に示すように、差動対H1のトランジスタBIP21bのベースに高温相当の一定電圧VrefHが入力され、差動対H2のトランジスタBIP22aのベースに常温相当の電圧VrefMが入力され、差動対H3のトランジスタBIP23bのベースに低温相当の一定電圧VrefLが入力されたとき、各トランジスタBIP21a〜BIP23bに流れる電流は図8に示すようになる。
【0057】
図8において、(a)は差動対H1における各トランジスタのベースへの入力電圧VBと差動対H1の各トランジスタを流れる電流I1A、I1Bと、絶対温度Tとの関係を示したものである。同様に、(b)は差動対H2における各トランジスタのベースへの入力電圧VBと差動対H2の各トランジスタを流れる電流I2A、I2Bと、絶対温度Tとの関係を示したものである。同様に、(c)は差動対H3における各トランジスタのベースへの入力電圧VBと差動対H3の各トランジスタを流れる電流I3A、I3Bと、絶対温度Tとの関係を示したものである。
【0058】
ここで、トランジスタPAおよびPBを流れる電流をそれぞれIA、IBとすると、これらIA、IBは次式(18)、式(19)で表すことができる。
IA=I1A+I2A+I3A ……(18)
IB=I1B+I2B+I3B ……(19)
したがって、図8の電流特性と、式(18)、式(19)とから、これらIA、IBは、図9に示す温度特性を有することがわかる。なお、図9(a)において、横軸は絶対温度Tを表し、縦軸はトランジスタPAを流れる電流IAを表す。図9(b)において、横軸は絶対温度Tを表し、縦軸はトランジスタPBを流れる電流IBを表す。
【0059】
すなわち、図9に示すように、トランジスタPAおよびPBを流れる電流IA、IBは温度に対して3次関数の特性を持つ形状を示している。したがって、各差動対H1〜H3に入力される各一定電圧Vrefと抵抗R11a〜R13bの各抵抗値と、定電流源21〜23を流れる各電流量とを調整することによって、図4(b)、(c)に示した2次補償後の温度ドリフト量の温度特性を補償する電流を発生することができることになる。
【0060】
したがって、図2において、温度補償電流発生回路10として、図6の2次関数の特性を持つ温度補償電流発生回路10aを用いれば、1次および2次までの温度ドリフト量の温度特性を補償するバンドギャップリファレンス回路を構成することができる。また、図2において、温度補償電流発生回路10として図6の2次関数の特性を持つ温度補償電流発生回路10aと図7の温度補償電流発生回路10bとを用いることによって、3次までの温度ドリフト量の温度特性を補償するバンドギャップリファレンス回路を構成することができる。
【0061】
つまり、前述の図4に示すように、1次の温度補償後の出力電圧Voutの温度ドリフト量は、上に凸となる2次関数で表される特性を有する。また、図6の2次関数の特性を持つ温度補償電流発生回路10a、10a′で発生される温度補償電流Icomp11は、温度に対して2次関数の特性を持つ下に凸となる2次関数で表される特性を有する。このため、温度補償電流発生回路として10a′を用い、ノードN3から温度補償電流Icomp11を引き抜く。これによって、出力電圧Voutの2次の温度ドリフト量が、これとは逆の特性をもつ温度補償電流Icomp11により打ち消されることになって2次の温度補償を行うことができる。
【0062】
また、前述の図4に示すように、2次の温度補償後の出力電圧Voutの温度ドリフト量は3次関数の特性を有する。また、図7の3次関数の特性を持つ温度補償電流発生回路10bで発生される温度補償電流Icomp21は、図9に示すような3次関数で表される特性を持つ。このため、温度補償電流Icomp21を図2のノードN3に作用させることによって、出力電圧Voutの温度ドリフト量の3次の温度補償を行うことができる。
【0063】
したがって、これら温度補償電流発生回路10a、10bを並列に、ノードN3に接続することによって、1次、2次および3次までの温度特性を補償するバンドギャップリファレンス回路を構成することができる。
なお、次数の選択や各次数における温度補償電流のゲイン設定の個別調整は容易に実施することができる。
【0064】
すなわち、前記式(11)に示したように、温度補償電流発生回路10を付加した後にトランジスタM1、M2に流れる電流I1′は、I1′=I1+Icompであって、I1は1次温度補償電流であり、Icompは高次温度補償電流である。1次温度補償電流によってOUT端子に発生される電圧をVout1st、高次温度補償電流IcompによってOUT端子に発生される電圧をVoutcompとすると、これら電圧Vout1st、Voutcompはそれぞれ次式(20)、(21)で表すことができる。
Vout1st=I1×(R1+R2A+R2B) ……(20)
Voutcomp=Icomp×R2B ……(21)
したがって、式(21)から抵抗R2Bの抵抗値を変化させることにより、Voutcompを調整できることがわかる。
【0065】
このとき、“R2A+R2B”を一定に保つようにR2AおよびR2Bの抵抗値を調整し、Vout1stは変化しないように調整すればVoutcompのみを変化させることができる。
一方、Vout1stは、前記式(20)から、抵抗R2Aの抵抗値を変化させることにより調整できることがわかり、また、Voutcompを変化させることなくVout1stのみをさせることができることがわかる。
【0066】
以上のように、本実施の形態におけるバンドギャップリファレンス回路1によれば、図11に示す従来のバンドギャップリファレンス回路に、温度補償電流発生回路10をさらに追加するだけで、温度に対して高精度なリファレンス電圧を発生することの可能なバンドギャップリファレンス回路を実現することができ、さらに、温度補償電流発生回路10は、図6や図7に示す比較的簡易な構成で実現することができ大幅な素子の追加などを伴うことなく、容易に実現することができる。
【0067】
また、図2および前記(11)式に示すように、1次の温度補償が行われた電流I1に対して、2次や3次の温度特性を補償する温度補償電流Icomp11やIcomp21を重畳させることで温度補償を行う構成としているため、各次数の温度補償電流発生回路を並列にノードN3に接続するだけで実現することができ、従来のバンドギャップリファレンス回路に対して大幅な変更を伴うことなく容易に実現することができる。
【0068】
なお、上記実施の形態においては、図2に示すように、バンドギャップリファレンス回路1を、PNP型トランジスタからなるトランジスタQ1、Q2を用いて作成する場合について説明したが、これに限るものではなく、図10に示すように、トランジスタQ1、Q2として、NPN型トランジスタを用いることも可能である。
【0069】
また、本発明は、図2に示すバンドギャップリファレンス回路1に限定するものではなく、図1の概念で表すことのできるバンドギャップリファレンス回路であれば、適用することができる。
ここで、上記実施の形態において、定電流源101およびトランジスタQ101が被補償信号発生部に対応し、温度補償電流発生回路10、10a、10a′、10bがn次温度補償部に対応し、VT発生回路103が1次補償部に対応している。
【符号の説明】
【0070】
1 バンドギャップリファレンス回路
10 温度補償電流発生回路
10a 2次の温度補償電流発生回路
10b 3次の温度補償電流発生回路
101 定電流源
102 加算回路
103 VT発生
105 N次温度補償信号発生回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンドギャップリファレンス回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バンドギャップリファレンス回路として、例えば図11に示すものが知られている。
この図11に示すバンドギャップリファレンス回路は、PNP型トランジスタからなるトランジスタQ1およびQ2と、オペアンプOP1と、電流源として機能するP型MOSトランジスタからなるトランジスタM1およびM2と、抵抗R1、R2、R3とで構成されている。
【0003】
トランジスタQ2のエミッタサイズは、トランジスタQ1のエミッタサイズのN倍(Nは正の整数、N>1)であり、トランジスタM1およびM2のトランジスタサイズは同一である。
そして、トランジスタM1と抵抗R3とトランジスタQ1とが直列に接続されて、電源VDDおよび接地間に接続され、同様に、トランジスタM2と抵抗R2と抵抗R1とトランジスタQ2とが直列に接続されて、電源VDDおよび接地間に接続されている。
【0004】
オペアンプOP1は、抵抗R1とR2との接合点の電位とトランジスタQ1のエミッタの電位とに基づいてトランジスタM1およびM2のゲート電圧を制御し、これらトランジスタM1およびM2に流れる電流を制御するように動作する。
ここで、トランジスタM1に流れる電流をI2、トランジスタM2に流れる電流をI1とすると、トランジスタM1とM2とはトランジスタサイズが等しいため、I1=I2となる。
【0005】
電流I1とI2とが供給されたとき、トランジスタQ1のエミッタと抵抗R3との接続点であるノードN1の電圧VN1、及び抵抗R1とR2との接合点であるノードN2の電圧VN2はそれぞれ次式で表すことができる。
VN1=VBE(Q1) ……(1)
VN2=VBE(Q2)+R1×I1 ……(2)
ここで、VBE(Q1)はトランジスタQ1のベース−エミッタ間電圧、VBE(Q2)はトランジスタQ2のベース−エミッタ間電圧である。
【0006】
オペアンプOP1は、ノードN1およびノードN2の電圧を同一にするように、トランジスタM1、M2のゲート電圧を制御し、つまり電流I1、I2を制御するため、最終的にVN1=VN2となる。
式(1)および式(2)から、電流I1について解くと、I1は次式(3)で表すことができる。
I1=(VBE(Q1)−VBE(Q2))/R1 ……(3)
【0007】
図11からわかるように、抵抗R2にも、式(3)で表されるI1と同一の電流が流れるため、出力端子OUTの出力電圧Voutは、次式(4)で表すことができる。
Vout=VBE(Q2)+(R1+R2)×I1 ……(4)
ここでΔVBE=(VBE(Q1)−VBE(Q2))とおくと、式(3)および式(4)から、出力電圧Voutは次式(5)と表すことができる。
Vout=VBE(Q2)+ΔVBE×(1+R2/R1) ……(5)
【0008】
ベース電流を無視すれば、VBE(Q1)およびVBE(Q2)電圧は次式(6)および(7)で表すことができる。
VBE(Q1)=k×T/q×ln(I1/Is1) ……(6)
VBE(Q2)=k×T/q×ln(I2/Is2) ……(7)
ここで、式(6)および(7)中の、kはボルツマン定数、Tは絶対温度、qは電気素量、Is1、Is2はトランジスタQ1、Q2の飽和電流を表す。
【0009】
飽和電流はエミッタ面積に比例するので、Is1とIs2との関係は、次式(8)となる。
Is2=N×Is1 ……(8)
これら式(6)、式(7)、式(8)から、ΔVBEは次式(9)で表すことができる。
ΔVBE=VBE(Q1)−VBE(Q2)
=k×T/q×ln〔(I1/Is1)×(Is2/I2)〕
=k×T/q×ln(N) ……(9)
式(9)からわかるように、式(5)中のΔVBEは、正の傾きをもつ絶対温度に比例した電圧となる。
【0010】
また、式(5)中のVBE(Q2)は、次式(10)で表すことができる。
VBE(Q2)=Vg0−(Vg0−VBE(TR))/TR×T
−(γ−1)×(k×T/q)×ln(T/TR) ……(10)
ここで式(10)中の、Vg0は温度0〔K〕の時のシリコンのバンドギャップ、VBE(TR)は、室温におけるエミッタ−ベース間電圧、TRは室温、γはドーピングレベルによって決まる定数である。
式(10)において、第2項と第3項とが温度に依存し、温度に対して負の傾きを持つ特性となっている。
【0011】
図11に示した、従来のバンドギャップリファレンス回路では、出力電圧Voutは、前記式(5)に示したように、式(10)で示されたトランジスタQ2のベース−エミッタ間電圧VBE(Q2)と、式(9)で示された電圧ΔVBEを(1+R2/R1)倍した電圧の和として発生される。
したがって、抵抗R2とR1との比を適切に選択することにより、ΔVBEの正の温度特性を用いて、トランジスタQ2のベース−エミッタ間電圧VBE(Q2)の負の温度特性を打ち消すことで1次の温度補償を行うようになっている。
【0012】
また、このように、1次の温度補償を行うバンドギャップリファレンス回路の他に、例えば2次の温度特性を持つ電流によりバンドギャップ電圧の2次成分を打ち消すことで、2次の温度補償を行うようにしたバンドギャップリファレンス回路も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平9−260597号公報
【特許文献2】特開2009−59149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上述の図11に示すように、ΔVBEの正の温度特性を用いて、トランジスタQ2のベース−エミッタ間電圧VBE(Q2)の温度補償を行う方法にあっては、前記(10)式中の第3項は、ΔVBEによる1次の温度補償ではキャンセルできない高次の温度特性を有する。そのため、抵抗R2とR1との比R2/R1として最適な値を選択したとしても、数mV程度の温度ドリフトが残ってしまい、高精度のリファレンス電圧を実現することができない。
【0015】
また、上述の2次の温度補償を行うようにしたバンドギャップリファレンス回路を用いた場合、バンドギャップ電圧の2次成分を打ち消すことはできるが、3次以上の高次成分の電圧エラー、すなわち温度ドリフトが残り、高精度なリファレンス電圧を実現することができない。
そのため、高次成分の温度補償を行うことの可能なバンドギャップリファレンス回路が望まれていた。
そこで、この発明は、上記従来の未解決の問題に着目してなされたものであり、温度に対してより高精度なリファレンス電圧を実現することの可能なバンドギャップリファレンス回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の請求項1にかかるバンドギャップリファレンス回路は、温度特性を持つ被補償信号を生成する被補償信号発生部と、前記被補償信号が持つ前記温度特性のうちn次(nは3以上の整数)の温度特性を補償するn次温度補償部と、を備え、前記n次温度補償部により温度特性が補償された後の前記被補償信号をバンドギャップリファレンス信号として出力するバンドギャップリファレンス回路であって、前記n次温度補償部は、前記被補償信号に含まれる、前記n次までの各次数における温度特性を持つ信号成分を打ち消すための温度特性を持つ各温度補償信号を生成し、前記n次までの各温度補償信号の総和を前記被補償信号に重畳することを特徴としている。
【0017】
請求項2にかかるバンドギャップリファレンス回路は、前記被補償信号は温度特性を持つ被補償電圧信号であって、前記n次の温度補償信号は、前記被補償電圧信号に含まれる、前記n次の温度特性を持つ電圧信号成分を打ち消す温度特性を持つn次の温度補償電圧信号であることを特徴としている。
請求項3にかかるバンドギャップリファレンス回路は、前記被補償信号は温度特性を持つ被補償電流信号であって、前記n次の温度補償信号は、前記被補償電流信号に含まれる、前記n次の温度特性を持つ電流信号成分を打ち消す温度特性を持つn次の温度補償電流信号であることを特徴としている。
【0018】
請求項4にかかるバンドギャップリファレンス回路は、前記n次温度補償部は、前記n次の温度補償電流信号を電圧信号に変換する電流−電圧変換部を備えることを特徴としている。
請求項5にかかるバンドギャップリファレンス回路は、前記電流−電圧変換部は抵抗であることを特徴としている。
請求項6にかかるバンドギャップリファレンス回路は、前記抵抗の抵抗値は可変に構成されていることを特徴としている。
請求項7にかかるバンドギャップリファレンス回路は、前記抵抗の抵抗値を記憶する記憶手段を備えることを特徴としている。
請求項8にかかるバンドギャップリファレンス回路は、前記n次温度補償部は、前記被補償信号に含まれる1次の温度特性を持つ信号成分を打ち消す温度特性を持つ1次補償信号を生成する1次補償部を備えることを特徴としている。
【0019】
請求項9にかかるバンドギャップリファレンス回路は、前記1次補償部は、電源電圧間に並列に接続された特性の異なる一対のバイポーラトランジスタを備え、前記一対のバイポーラトランジスタのベース−エミッタ間電圧の差を利用して前記1次補償信号を生成することを特徴としている。
請求項10にかかるバンドギャップリファレンス回路は、前記被補償信号発生部は、前記一対のバイポーラトランジスタのうちの一方のバイポーラトランジスタのベース−エミッタ間電圧を、前記被補償信号として用いることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、n次温度補償部により温度補償信号を被補償信号に重畳し、この温度補償信号は、被補償信号が持つ温度特性のうちのn次までの各次数における温度特性を持つ信号成分を打ち消すための温度特性の総和であるため、被補償信号に対してn次までの温度補償を行うことができる。したがって、温度に対してより高精度なリファレンス電圧を実現することの可能なバンドギャップリファレンス回路を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明におけるバンドギャップリファレンス回路の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明におけるバンドギャップリファレンス回路の一例を示す回路図である。
【図3】(a)は絶対温度と温度補償電流との関係を示す特性図、(b)は絶対温度と温度補償電圧との関係を示す特性図である。
【図4】温度補償を行わない場合および温度補償を行った場合の温度ドリフト量の一例である。
【図5】温度ドリフトの高次特性をn次多項式で展開した場合における計算誤差結果の一例である。
【図6】温度に対して2次関数の特性を持つ温度補償電流発生回路の一例を示す回路図である。
【図7】温度に対して3次関数の特性を持つ温度補償電流発生回路の一例を示す回路図である。
【図8】差動対を構成するトランジスタに流れる電流の一例である。
【図9】(a)はトランジスタPAに流れる電流の一例、(b)はトランジスタPBに流れる電流の一例である。
【図10】差動対を構成するトランジスタQ1、Q2として、NPN型トランジスタからなるトランジスタQ1、Q2を用いた場合のバンドギャップリファレンス回路の一例を示す回路図である。
【図11】従来のバンドギャップリファレンス回路の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明のバンドギャップリファレンス回路の一例を示す構成図である。
図1におけるバンドギャップリファレンス回路1は、定電流I1を発生する定電流源101と、当該定電流源101に接続されたPNP型トランジスタからなるトランジスタQ101と、加算回路102と、絶対温度に比例するVT電圧を発生するVT発生回路103と、VT発生回路103で発生されたVT電圧をM倍する乗算器104と、N次の温度補償を行うためのN次温度補償信号を発生するN次温度補償信号発生回路105と、を備える。
【0023】
トランジスタQ101は、ベース−コレクタ間が短絡されるようにダイオード接続されたトランジスタであって、トランジスタQ101のエミッタが定電流源101に接続され、コレクタは接地されている。定電流源101とトランジスタQ101のエミッタとの接続点の電圧がトランジスタQ101のベース−エミッタ間電圧VBEとして加算回路2に入力される。
【0024】
VT発生回路103は、VT(VT=k×T/q)電圧を発生する。なお、kはボルツマン定数、Tは絶対温度、qは電気素量である。
そして、トランジスタQ101のベース−エミッタ間電圧VBEと、乗算器104からのM×VT電圧と、N次温度補償信号発生回路105からの高次温度補償電圧Vcompとが加算回路102に入力され、これら電圧の和が出力電圧すなわち基準電圧Vout(=VBE+M×VT+Vcomp)として出力される。
【0025】
つまり、前述の従来のバンドギャップリファレンス回路(図11)では、ダイオード接続されたトランジスタQ2のVBE電圧を用いた、温度に対して負の傾きを持つ電圧に、絶対温度に比例するVT(VT=k×T/q)電圧を加えることで、温度ドリフトを軽減していたが、この図1に示すバンドギャップリファレンス回路1では、これに加えて高次の温度係数を持つ温度補償信号発生回路(N次温度補償信号発生回路105)を有し、高次温度補償電圧Vcompをさらに加えることにより、さらに温度ドリフトを低減させるようにしている。
【0026】
図2は、図1のバンドギャップリファレンス回路1の具体的な構成を示す回路図である。
図2に示すように、このバンドギャップリファレンス回路1は、図11に示す従来のバンドギャップリファレンス回路と同様に、PNP型トランジスタからなるトランジスタQ1およびQ2と、オペアンプOP1と、電流源として機能するP型MOSトランジスタからなるトランジスタM1およびM2と、を備えるとともに、さらに、抵抗R1、R2A、R2B、R3と、温度補償電流発生回路10とを備えている。抵抗R2AおよびR2Bは抵抗値可変に構成されている。
【0027】
トランジスタQ2のエミッタサイズは、トランジスタQ1のエミッタサイズのN倍(Nは正の整数、N>1)であり、トランジスタM1およびM2のトランジスタサイズは同一である。これらトランジスタQ1およびQ2はそれぞれベース−コレクタ間が短絡するようにダイオード接続される。
そして、トランジスタM1のソースが電源電圧VDDに接続され、ドレインは抵抗R3を介してトランジスタQ1のエミッタに接続され、コレクタは接地される。同様に、トランジスタM2のソースが電源電圧VDDに接続されトランジスタM2のドレインは抵抗R2B、R2A、R1を介してトランジスタQ2のエミッタに接続されトランジスタQ2のコレクタは接地される。
【0028】
抵抗R3とトランジスタQ1のエミッタとの接続点であるノードN1の電圧VN1がオペアンプOP1の反転入力端子に入力され、抵抗R2AとR1との接合点であるノードN2の電圧VN2がオペアンプOP1の非反転入力端子に入力される。オペアンプOP1は、ノードN1の電圧VN1とノードN2の電圧VN2とを同一にするようにトランジスタM1およびM2のゲート電圧を制御して、トランジスタM2に流れる電流I1′およびトランジスタM1に流れる電流I2′を制御する。
温度補償電流発生回路10は、抵抗R2AおよびR2Bの接合点であるノードN3に接続される。また、トランジスタM2と抵抗R2Bの接続点の電圧が出力電圧Voutとして、出力端子OUTから出力されるようになっている。
【0029】
ここで、ノードN1での電流変化に対する電圧変化は、ノードN2での電流変化に対する電圧変化に対して十分小さい。上述のように、オペアンプOP1は、ノードN1のVN1電圧とノードN2のVN2電圧とが同一となるようにトランジスタM1、M2に流れる電流を制御するため、ノードN3において温度補償電流発生回路10により温度補償電流Icompが引かれた場合、抵抗R1に流れる電流を変化させないようにトランジスタM1およびM2に流れる電流が制御されることになる。そのため、トランジスタM1に流れる電流I2′およびトランジスタM2に流れる電流I1′は、次式(11)で表すことができる。
I1′=I2′=I1+Icomp=I2+Icomp ……(11)
なお、式(11)中のI1、I2は、前記図11に示す温度補償電流発生回路10が接続されていないときに、トランジスタM1、M2を流れる電流である。
【0030】
式(11)から、出力端子OUTに発生される出力電圧Voutは、次式(12)で表すことができる。
Vout
=VBE(Q2)+I1×R1+I1×R2A+(I1+Icomp)×R2B
=VBE(Q2)+I1×(R1+R2A+R2B)+Icomp×R2B
……(12)
ここで、R2A+R2B=R2とすると、式(12)における第1項と第2項との和は、前記式(4)と同一であり、すなわち、前記従来の図11に示すバンドギャップリファレンス回路の出力電圧Voutと同一である。
【0031】
式(12)においてその第3項が、出力電圧Voutにおいて新しく付加された高次温度補償電圧Vcompとなっている。
温度補償電流発生回路10により引かれる温度補償電流Icompと、高次温度補償電圧Vcompとの関係は、2次の温度補償の場合、例えば図3のようになる。すなわち、式(12)の第3項に示したように、Vcomp=Icomp×R2Bとなる。
【0032】
なお、図3において(a)は絶対温度Tと温度補償電流Icompとの対応を表したものであって、横軸が絶対温度T、縦軸が温度補償電流Icompである。図3において(b)は絶対温度Tと高次温度補償電圧Vcompとの対応を表したものであって、横軸が絶対温度T、縦軸が高次温度補償電圧Vcompである。
図4は、式(12)における第3項に示した温度補償電圧“Icomp×R2B”が、温度に関して3次関数の特性を持つ場合の温度補償後の出力電圧Voutの温度ドリフト量の計算値を表したものである。
【0033】
この温度ドリフト量の計算は、以下のように行った。すなわち、前記従来の図11に示すバンドギャップリファレンス回路において説明したように、図11においてトランジスタM2に流れる電流I1は、前記式(3)で示したように、ΔVBE(=VBE(Q1)−VBE(Q2))を抵抗R1で割った値として求められ、式(9)で示したように、ΔVBEは、絶対温度Tに比例するため、トランジスタM2に流れる電流I1は理論上温度に比例し、温度に関する1次関数で近似することができる。また、温度ドリフトの2次以上の成分は、式(12)の第1項に表されたVBE(Q2)に起因するものであるため、式(10)を用いて計算した。
【0034】
なお、図4において、(a)は温度補償が無い時のVBE(Q2)がもつ温度ドリフト量を表す。(b)は温度補償後のVBE(Q2)に起因する温度ドリフト量を示したものであり、1次補償後、2次補償後、3次補償後の温度ドリフト量を示す。(c)は図4(b)の2次補償後の温度ドリフト量を拡大表示したもの、(d)は図4(b)の3次補償後の温度ドリフト量を拡大表示したものである。なお、各図4(a)〜(d)において横軸は温度〔℃〕を表す。縦軸は温度ドリフト量を示し、その単位は、図4(a)は電圧〔V〕であり、図4(b)〜(d)は電圧〔μV〕である。
【0035】
図4に示すように、VBE(Q2)電圧は、温度補償されないときには、図4(a)に示すように、−40〔℃〕から90〔℃〕で、300〔mV〕程度の温度ドリフトをもっている。1次の温度補償を実施することにより、図4(b)に示すように、1200〔μV〕程度の温度ドリフトに抑制することができる。2次の温度補償を実施することにより図4(c)に示すように、50〔μV〕以下の温度ドリフトを達成することができる。さらに、3次補償を実施することにより、図4(d)に示すように、10〔μV〕以下の温度ドリフトを達成することができる。したがって、3次補償まで実施すれば、計算上、10ppm以下の温度ドリフト量にすることが可能である。
【0036】
ここで、実際の回路では、抵抗値やトランジスタ特性のプロセスばらつきや、素子間のミスマッチなどによって温度特性は変動する。この変動を補正するため、図2中の抵抗R2A、R2Bは、抵抗値可変に構成され、調整後の抵抗値を記憶するようにしている。例えば、バンドギャップリファレンス回路1が実装されたIC内に、記憶手段として不揮発性メモリを実装しておき、調整後の抵抗R2A、R2Bの抵抗値を不揮発性メモリにより保持するようになっている。そして、以後、抵抗R2A、R2Bの抵抗値として、不揮発性メモリに格納された抵抗値を設定することによって、抵抗R2A、R2Bの調整を容易に行うようになっている。
【0037】
図4は、以下のように数式上も証明出来る。
前記式(10)に示したVBE(Q2)の温度特性において、高次の温度特性を持つ第3項を変形すると下記のようになる。
−(γ−1)×(k×T/q)×ln(T/TR)
=−(γ−1)×(k×TR/q)×(T/TR)×ln(T/TR)
……(13)
実使用範囲である温度(−40〜100℃程度)では、前記式(13)は次のように展開できる。
【0038】
【数1】
【0039】
上記のように、高次成分をもつ(T/TR)×ln(T/TR)は、温度Tのべき乗で展開できる。例えば、γ=3、k×TR/q=26mVを用いて計算すると、図5のようになり、高精度リファレンス電圧の生成には、3次以上の温度補正が必要であることが明らかである。なお、図5において、横軸は温度〔℃〕、縦軸は温度ドリフト量〔μV〕を表す。
【0040】
次に、温度補償電流発生回路10の具体的な回路を説明する。
図6は、温度に対して2次関数の特性を持つ温度補償電流発生回路の一例を示したものであり、10aは温度補償電流Icompを引き抜く場合、10a′は温度補償電流Icompを加える場合の回路である。なお、温度補償電流発生回路10aは、温度補償対象となる二次の温度特性に応じて、温度補償対象の二次の温度補償を行うことができる方の温度補償電流発生回路10a、または10a′を選択する。温度補償対象の二次の温度特性は設計時に認識することができる。
【0041】
この温度補償電流発生回路10aは、NPN型トランジスタからなるトランジスタBIP1〜BIP4と、温度に対して比例する電流Iptatを発生する電流源12と、温度に関係なく一定の電流Icを発生する定電流源13と、オペアンプOP11と、電流源として動作するP型MOSトランジスタからなるトランジスタMP1およびMP2とから構成される。
【0042】
トランジスタBIP1〜BIP4は、同一特性を有し且つベース−コレクタ間が短絡するようにダイオード接続され、トランジスタBIP1のコレクタとトランジスタBIP2のエミッタとが接続され、トランジスタBIP2のコレクタは電流源12を介して電源電圧VDDに接続され、トランジスタBIP1のエミッタは接地される。同様に、トランジスタBIP3のコレクタとトランジスタBIP4のエミッタとが接続され、トランジスタBIP4のコレクタは定電流源13を介して電源電圧VDDに接続され、トランジスタBIP3のエミッタは接地される。
【0043】
また、トランジスタMP1は、電源電圧VDDと、トランジスタBIP3およびトランジスタBIP4の接続点との間に接続され、トランジスタMP2のソースは電源電圧VDDに接続される。トランジスタMP2のドレインは、ミラー回路を構成する一対のトランジスタに接続される。このミラー回路は、N型MOSトランジスタからなるトランジスタMN1とトランジスタMN2とで構成され、トランジスタMN1のドレイン電圧がトランジスタMN1およびMN2のゲートに供給される。そして、トランジスタMP2のドレインとミラー回路を構成するトランジスタMN1のドレインとが接続され、これらトランジスタMN1およびMN2のソースは接地される。そして、トランジスタMN2のドレインが、図2のノードN3に接続される。
【0044】
つまり、トランジスタMP1を流れる電流が温度補償電流Icomp11となり、トランジスタMN1およびMN2からなるミラー回路により、トランジスタMP2を流れる温度補償電流Icomp11相当のドレイン電流がIoutとしてトランジスタMN2に流れ、温度補償電流Icomp11相当の電流が引き抜かれるようになっている。
そして、電流源12とトランジスタBIP2との接続点であるコレクタノードNINのノード電圧VninがオペアンプOP11の反転入力端子に入力され、定電流源13とトランジスタBIP4との接続点であるコレクタノードPINのノード電圧Vpinがオペアンプ11の非反転入力端子に入力される。オペアンプ11の出力側は、トランジスタMP1およびMP2のゲートに接続される。
【0045】
オペアンプOP11は、トランジスタBIP2のコレクタノードNINのノード電圧VninとトランジスタBIP4のコレクタノードPINのノード電圧Vpinとを同一とするようにトランジスタMP1に流れる電流Icomp11を調整するように動作する。
一方、温度補償電流を重畳するための温度補償電流発生回路10a′は、図6(b)に示すように、図6(a)において、ミラー回路を構成するトランジスタMN1およびMN2を除去した構成を有し、トランジスタMP2を流れる温度補償電流Icomp11相当の電流がIoutとしてノードN3に加えられるようになっている。
【0046】
ここで、コレクタノードNINのノード電圧Vninは次式(15)で表される。
Vnin=2×k×T/q×ln(Iptat/Is)
=k×T/q×ln(Iptat/Is)2 ……(15)
また、コレクタノードPINのノード電圧Vpinは次式(16)で表される。
Vpin=k×T/q×ln(Ic/Is)
+k×T/q×ln((Ic+Icomp11)/Is)
=k×T/q×ln〔Ic×(Ic+Icomp11)/Is2〕
……(16)
なお、式(15)、式(16)中のIsは、NPN型トランジスタからなるトランジスタBIP1〜BIP4の飽和電流である。
【0047】
これらノード電圧VninおよびVpinは、最終的にはオペアンプOP11によって、Vnin=Vpinとなるような状態に安定する。したがって、式(15)および式(16)から、Icomp11は、次式(17)で示される。
(Iptat/Is)2=Ic×(Ic+Icomp11)/Is2
Icomp11=(Iptat2/Ic)−Ic ……(17)
式(17)からわかるように、Icomp11は、Iptatの2乗に比例する。すなわち、前述のようにIptatは温度に比例する電流であるから、Icomp11は、温度の2乗に比例する電流となる。
つまり、2次関数の特性を持つ温度補償電流Icomp11を発生することができることを意味する。
【0048】
図7は、温度に対して3次関数の特性をもつ温度補償電流発生回路10bの一例を示したものである。
この温度補償電流発生回路1bは、所定電流を発生する定電流源21〜23と、NPN型トランジスタからなる3組の差動対H1〜H3と、差動対を構成する各NPN型トランジスタに接続される抵抗R11a〜13bと、電流源として動作するP型MOSトランジスタからなるトランジスタPAおよびPBと、これらトランジスタPAおよびPBのそれぞれとカレントミラー回路を構成するP型MOSトランジスタからなるトランジスタMPa、MPbと、カレントミラー回路を構成するN型MOSトランジスタからなるトランジスタ対MN21およびMN22とから構成される。
【0049】
差動対H1は、NPN型トランジスタからなるトランジスタBIP21aおよびBIP21bで構成され、トランジスタBIP21aのエミッタは抵抗R11aおよび定電流源21を介して接地され、同様に、トランジスタBIP21bのエミッタは抵抗R11bおよび定電流源21を介して接地される。
差動対H2は、NPN型トランジスタからなるトランジスタBIP22aおよびBIP22bで構成され、トランジスタBIP22aのエミッタは抵抗R12aおよび定電流源22を介して接地され、同様に、トランジスタBIP22bのエミッタは抵抗R12bおよび定電流源22を介して接地される。
【0050】
差動対H3は、NPN型トランジスタからなるトランジスタBIP23aおよびBIP23bで構成され、トランジスタBIP23aのエミッタは抵抗R13aおよび定電流源23を介して接地され、同様に、トランジスタBIP23bのエミッタは抵抗R13bおよび定電流源23を介して接地される。これらトランジスタBIP21a〜BIP23bは同一特性を有する。
【0051】
各差動対H1〜H3を構成する一方のトランジスタBIP21a、BIP22a、BIP23aのコレクタは、共通してトランジスタPAのドレインに接続され、トランジスタPAのソースは電源電圧VDDに接続される。
各差動対H1〜H3を構成する他方のトランジスタBIP21b、BIP22b、BIP23bのコレクタは、共通してトランジスタPBのドレインに接続され、トランジスタPBのソースは電源電圧VDDに接続される。
【0052】
トランジスタMPaとトランジスタMN22とは直列に接続され、トランジスタMPaのソースは電源電圧VDDに接続され、トランジスタMN22のソースは接地される。
同様に、トランジスタMPbとトランジスタMN21とは直列に接続され、トランジスタMPbのソースは電源電圧VDDに接続され、トランジスタMN21のソースは接地される。
【0053】
各差動対H1〜H3を構成する一方のトランジスタBIP21b、BIP22a、BIP23bのベースにはそれぞれ個別に一定電圧Vrefが入力され、他方のトランジスタBIP21a、BIP22b、BIP23aのベースには、温度に対して1次の温度特性を有する共通の電圧VTが入力される。
カレントミラー回路を構成するトランジスタPAおよびMPaのゲートには、トランジスタPAのドレイン電圧が入力される。カレントミラー回路を構成するトランジスタPBおよびMPbのゲートには、トランジスタPBのドレイン電圧が入力される。カレントミラー回路を構成するトランジスタMN21およびMN22のゲートには、トランジスタMN21のドレイン電圧が入力される。
【0054】
そして、トランジスタMPaおよびトランジスタMN22の接続点を流れる電流が温度補償電流Icomp21として出力または引き抜かれる。つまり、トランジスタPAを流れる電流IAと電流IBとの差の電流が、温度補償電流Icomp21として出力または引き抜かれる。
ここで、電圧VTと一定電圧VrefとがVT=Vrefであるとき、差動対H1〜H3を構成する各トランジスタに流れる電流は等しく、流れる電流は、定電流源21〜23を流れる電流量の半分となる。
【0055】
一方、一定電圧Vrefよりも電圧VTが十分に大きい場合、定電流源21〜23を流れる電流は全て電圧VTが入力されるトランジスタBIP21a、BIP22b、BIP23aを流れ、一定電圧Vrefが入力されるトランジスタBIP21b、BIP22a、BIP23bには電流は流れない。
逆に、一定電圧Vrefの方が電圧VTよりも十分に大きい場合、定電流源21〜23を流れる電流は全て一定電圧Vrefが入力されるトランジスタBIP21a、BIP22b、BIP23aを流れ、電圧VTが入力されるトランジスタBIP21b、BIP22a、BIP23bには電流は流れない。
【0056】
例えば、電圧VTが負の温度特性とし、図7に示すように、差動対H1のトランジスタBIP21bのベースに高温相当の一定電圧VrefHが入力され、差動対H2のトランジスタBIP22aのベースに常温相当の電圧VrefMが入力され、差動対H3のトランジスタBIP23bのベースに低温相当の一定電圧VrefLが入力されたとき、各トランジスタBIP21a〜BIP23bに流れる電流は図8に示すようになる。
【0057】
図8において、(a)は差動対H1における各トランジスタのベースへの入力電圧VBと差動対H1の各トランジスタを流れる電流I1A、I1Bと、絶対温度Tとの関係を示したものである。同様に、(b)は差動対H2における各トランジスタのベースへの入力電圧VBと差動対H2の各トランジスタを流れる電流I2A、I2Bと、絶対温度Tとの関係を示したものである。同様に、(c)は差動対H3における各トランジスタのベースへの入力電圧VBと差動対H3の各トランジスタを流れる電流I3A、I3Bと、絶対温度Tとの関係を示したものである。
【0058】
ここで、トランジスタPAおよびPBを流れる電流をそれぞれIA、IBとすると、これらIA、IBは次式(18)、式(19)で表すことができる。
IA=I1A+I2A+I3A ……(18)
IB=I1B+I2B+I3B ……(19)
したがって、図8の電流特性と、式(18)、式(19)とから、これらIA、IBは、図9に示す温度特性を有することがわかる。なお、図9(a)において、横軸は絶対温度Tを表し、縦軸はトランジスタPAを流れる電流IAを表す。図9(b)において、横軸は絶対温度Tを表し、縦軸はトランジスタPBを流れる電流IBを表す。
【0059】
すなわち、図9に示すように、トランジスタPAおよびPBを流れる電流IA、IBは温度に対して3次関数の特性を持つ形状を示している。したがって、各差動対H1〜H3に入力される各一定電圧Vrefと抵抗R11a〜R13bの各抵抗値と、定電流源21〜23を流れる各電流量とを調整することによって、図4(b)、(c)に示した2次補償後の温度ドリフト量の温度特性を補償する電流を発生することができることになる。
【0060】
したがって、図2において、温度補償電流発生回路10として、図6の2次関数の特性を持つ温度補償電流発生回路10aを用いれば、1次および2次までの温度ドリフト量の温度特性を補償するバンドギャップリファレンス回路を構成することができる。また、図2において、温度補償電流発生回路10として図6の2次関数の特性を持つ温度補償電流発生回路10aと図7の温度補償電流発生回路10bとを用いることによって、3次までの温度ドリフト量の温度特性を補償するバンドギャップリファレンス回路を構成することができる。
【0061】
つまり、前述の図4に示すように、1次の温度補償後の出力電圧Voutの温度ドリフト量は、上に凸となる2次関数で表される特性を有する。また、図6の2次関数の特性を持つ温度補償電流発生回路10a、10a′で発生される温度補償電流Icomp11は、温度に対して2次関数の特性を持つ下に凸となる2次関数で表される特性を有する。このため、温度補償電流発生回路として10a′を用い、ノードN3から温度補償電流Icomp11を引き抜く。これによって、出力電圧Voutの2次の温度ドリフト量が、これとは逆の特性をもつ温度補償電流Icomp11により打ち消されることになって2次の温度補償を行うことができる。
【0062】
また、前述の図4に示すように、2次の温度補償後の出力電圧Voutの温度ドリフト量は3次関数の特性を有する。また、図7の3次関数の特性を持つ温度補償電流発生回路10bで発生される温度補償電流Icomp21は、図9に示すような3次関数で表される特性を持つ。このため、温度補償電流Icomp21を図2のノードN3に作用させることによって、出力電圧Voutの温度ドリフト量の3次の温度補償を行うことができる。
【0063】
したがって、これら温度補償電流発生回路10a、10bを並列に、ノードN3に接続することによって、1次、2次および3次までの温度特性を補償するバンドギャップリファレンス回路を構成することができる。
なお、次数の選択や各次数における温度補償電流のゲイン設定の個別調整は容易に実施することができる。
【0064】
すなわち、前記式(11)に示したように、温度補償電流発生回路10を付加した後にトランジスタM1、M2に流れる電流I1′は、I1′=I1+Icompであって、I1は1次温度補償電流であり、Icompは高次温度補償電流である。1次温度補償電流によってOUT端子に発生される電圧をVout1st、高次温度補償電流IcompによってOUT端子に発生される電圧をVoutcompとすると、これら電圧Vout1st、Voutcompはそれぞれ次式(20)、(21)で表すことができる。
Vout1st=I1×(R1+R2A+R2B) ……(20)
Voutcomp=Icomp×R2B ……(21)
したがって、式(21)から抵抗R2Bの抵抗値を変化させることにより、Voutcompを調整できることがわかる。
【0065】
このとき、“R2A+R2B”を一定に保つようにR2AおよびR2Bの抵抗値を調整し、Vout1stは変化しないように調整すればVoutcompのみを変化させることができる。
一方、Vout1stは、前記式(20)から、抵抗R2Aの抵抗値を変化させることにより調整できることがわかり、また、Voutcompを変化させることなくVout1stのみをさせることができることがわかる。
【0066】
以上のように、本実施の形態におけるバンドギャップリファレンス回路1によれば、図11に示す従来のバンドギャップリファレンス回路に、温度補償電流発生回路10をさらに追加するだけで、温度に対して高精度なリファレンス電圧を発生することの可能なバンドギャップリファレンス回路を実現することができ、さらに、温度補償電流発生回路10は、図6や図7に示す比較的簡易な構成で実現することができ大幅な素子の追加などを伴うことなく、容易に実現することができる。
【0067】
また、図2および前記(11)式に示すように、1次の温度補償が行われた電流I1に対して、2次や3次の温度特性を補償する温度補償電流Icomp11やIcomp21を重畳させることで温度補償を行う構成としているため、各次数の温度補償電流発生回路を並列にノードN3に接続するだけで実現することができ、従来のバンドギャップリファレンス回路に対して大幅な変更を伴うことなく容易に実現することができる。
【0068】
なお、上記実施の形態においては、図2に示すように、バンドギャップリファレンス回路1を、PNP型トランジスタからなるトランジスタQ1、Q2を用いて作成する場合について説明したが、これに限るものではなく、図10に示すように、トランジスタQ1、Q2として、NPN型トランジスタを用いることも可能である。
【0069】
また、本発明は、図2に示すバンドギャップリファレンス回路1に限定するものではなく、図1の概念で表すことのできるバンドギャップリファレンス回路であれば、適用することができる。
ここで、上記実施の形態において、定電流源101およびトランジスタQ101が被補償信号発生部に対応し、温度補償電流発生回路10、10a、10a′、10bがn次温度補償部に対応し、VT発生回路103が1次補償部に対応している。
【符号の説明】
【0070】
1 バンドギャップリファレンス回路
10 温度補償電流発生回路
10a 2次の温度補償電流発生回路
10b 3次の温度補償電流発生回路
101 定電流源
102 加算回路
103 VT発生
105 N次温度補償信号発生回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度特性を持つ被補償信号を生成する被補償信号発生部と、
前記被補償信号が持つ前記温度特性のうちn次(nは3以上の整数)の温度特性を補償するn次温度補償部と、を備え、
前記n次温度補償部により温度特性が補償された後の前記被補償信号をバンドギャップリファレンス信号として出力するバンドギャップリファレンス回路であって、
前記n次温度補償部は、前記被補償信号に含まれる、前記n次までの各次数における温度特性を持つ信号成分を打ち消すための温度特性を持つ各温度補償信号を生成し、
前記n次までの各温度補償信号の総和を前記被補償信号に重畳することを特徴とするバンドギャップリファレンス回路。
【請求項2】
前記被補償信号は温度特性を持つ被補償電圧信号であって、
前記n次の温度補償信号は、前記被補償電圧信号に含まれる、前記n次の温度特性を持つ電圧信号成分を打ち消す温度特性を持つn次の温度補償電圧信号であることを特徴とする請求項1記載のバンドギャップリファレンス回路。
【請求項3】
前記被補償信号は温度特性を持つ被補償電流信号であって、
前記n次の温度補償信号は、前記被補償電流信号に含まれる、前記n次の温度特性を持つ電流信号成分を打ち消す温度特性を持つn次の温度補償電流信号であることを特徴とする請求項1記載のバンドギャップリファレンス回路。
【請求項4】
前記n次温度補償部は、前記n次の温度補償電流信号を電圧信号に変換する電流−電圧変換部を備えることを特徴とする請求項3記載のバンドギャップリファレンス回路。
【請求項5】
前記電流−電圧変換部は抵抗であることを特徴とする請求項4記載のバンドギャップリファレンス回路。
【請求項6】
前記抵抗の抵抗値は可変に構成されていることを特徴とする請求項5記載のバンドギャップリファレンス回路。
【請求項7】
前記抵抗の抵抗値を記憶する記憶手段を備えることを特徴とする請求項6記載のバンドギャップリファレンス回路。
【請求項8】
前記n次温度補償部は、前記被補償信号に含まれる1次の温度特性を持つ信号成分を打ち消す温度特性を持つ1次補償信号を生成する1次補償部を備えることを特徴とする請求項1から請求項7の何れか1項に記載のバンドギャップリファレンス回路。
【請求項9】
前記1次補償部は、電源電圧間に並列に接続された特性の異なる一対のバイポーラトランジスタを備え、
前記一対のバイポーラトランジスタのベース−エミッタ間電圧の差を利用して前記1次補償信号を生成することを特徴とする請求項8記載のバンドギャップリファレンス回路。
【請求項10】
前記被補償信号発生部は、前記一対のバイポーラトランジスタのうちの一方のバイポーラトランジスタのベース−エミッタ間電圧を、前記被補償信号として用いることを特徴とする請求項9記載のバンドギャップリファレンス回路。
【請求項1】
温度特性を持つ被補償信号を生成する被補償信号発生部と、
前記被補償信号が持つ前記温度特性のうちn次(nは3以上の整数)の温度特性を補償するn次温度補償部と、を備え、
前記n次温度補償部により温度特性が補償された後の前記被補償信号をバンドギャップリファレンス信号として出力するバンドギャップリファレンス回路であって、
前記n次温度補償部は、前記被補償信号に含まれる、前記n次までの各次数における温度特性を持つ信号成分を打ち消すための温度特性を持つ各温度補償信号を生成し、
前記n次までの各温度補償信号の総和を前記被補償信号に重畳することを特徴とするバンドギャップリファレンス回路。
【請求項2】
前記被補償信号は温度特性を持つ被補償電圧信号であって、
前記n次の温度補償信号は、前記被補償電圧信号に含まれる、前記n次の温度特性を持つ電圧信号成分を打ち消す温度特性を持つn次の温度補償電圧信号であることを特徴とする請求項1記載のバンドギャップリファレンス回路。
【請求項3】
前記被補償信号は温度特性を持つ被補償電流信号であって、
前記n次の温度補償信号は、前記被補償電流信号に含まれる、前記n次の温度特性を持つ電流信号成分を打ち消す温度特性を持つn次の温度補償電流信号であることを特徴とする請求項1記載のバンドギャップリファレンス回路。
【請求項4】
前記n次温度補償部は、前記n次の温度補償電流信号を電圧信号に変換する電流−電圧変換部を備えることを特徴とする請求項3記載のバンドギャップリファレンス回路。
【請求項5】
前記電流−電圧変換部は抵抗であることを特徴とする請求項4記載のバンドギャップリファレンス回路。
【請求項6】
前記抵抗の抵抗値は可変に構成されていることを特徴とする請求項5記載のバンドギャップリファレンス回路。
【請求項7】
前記抵抗の抵抗値を記憶する記憶手段を備えることを特徴とする請求項6記載のバンドギャップリファレンス回路。
【請求項8】
前記n次温度補償部は、前記被補償信号に含まれる1次の温度特性を持つ信号成分を打ち消す温度特性を持つ1次補償信号を生成する1次補償部を備えることを特徴とする請求項1から請求項7の何れか1項に記載のバンドギャップリファレンス回路。
【請求項9】
前記1次補償部は、電源電圧間に並列に接続された特性の異なる一対のバイポーラトランジスタを備え、
前記一対のバイポーラトランジスタのベース−エミッタ間電圧の差を利用して前記1次補償信号を生成することを特徴とする請求項8記載のバンドギャップリファレンス回路。
【請求項10】
前記被補償信号発生部は、前記一対のバイポーラトランジスタのうちの一方のバイポーラトランジスタのベース−エミッタ間電圧を、前記被補償信号として用いることを特徴とする請求項9記載のバンドギャップリファレンス回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−243054(P2012−243054A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112022(P2011−112022)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】
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