説明

パターン形成方法

【課題】トレンチパターンやホールパターンの寸法を実効的に微細化したパターンをスカムを発生させずに形成する方法の提供。
【解決手段】(ア)酸の作用により極性が増大する樹脂を含有し、活性光線又は放射線の照射により、ポジ型現像液に対する溶解度が増大し、ネガ型現像液に対する溶解度が減少する、レジスト組成物を塗布する工程、(イ)露光工程、(ウ)ネガ型現像液を用いて現像を行い、レジストパターンを形成する工程、及び(エ)該レジストパターンに架橋層形成材料を作用させ、該レジストパターンを構成する樹脂と架橋層形成材料とを架橋させ、架橋層を形成する工程、を含むことを特徴とするパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IC等の半導体製造工程、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造、さらにはその他のフォトアプリケーションのリソグラフィー工程に使用される、パターン形成方法に関するものである。特に波長が300nm以下の遠紫外線光を光源とするArF露光装置および液浸式投影露光装置で露光するために好適な、パターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
KrFエキシマレーザー(248nm)用レジスト以降、光吸収による感度低下を補うためにレジストの画像形成方法として化学増幅という画像形成方法が用いられている。ポジ型の化学増幅の画像形成方法を例に挙げ説明すると、露光で露光部の酸発生剤が分解し酸を生成させ、露光後のベーク(PEB:Post Exposure Bake)でその発生酸を反応触媒として利用してアルカリ不溶の基をアルカリ可溶基に変化させ、アルカリ現像により露光部を除去する画像形成方法である。
【0003】
現在、g線、i線、KrF、ArF、EB、EUVリソグラフィー用の現像液としては、2.38質量%TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)の水系アルカリ現像液が汎用的に用いられている。
上記以外の現像液としては、例えば、特許文献1には、放射線の照射により、ポリマー鎖が切断されて低分子化するレジスト材料の露光部分を溶解し現像するための、酢酸基またはケトン基、エーテル基、フェニル基を少なくとも2つ以上有し、かつ分子量が150以上であることを特徴とする現像液が記載されている。又、特許文献2及び特許文献3には、フッ素原子を含有する特定の樹脂を含有するレジスト材料の露光部分を溶解し現像するための、超臨界流体、ハロゲン化有機溶剤又は非ハロゲン化有機溶剤から選択される現像液が記載されている。
しかしながら、半導体素子が微細化するにつれて、性能が総合的に良好なパターンを形成するための、レジスト組成物、現像液等の適切な組み合わせ、更にはそれらを用いたパターン形成方法を見い出すことが極めて困難であるのが実情であり、改良が求められていた。
【0004】
半導体素子の微細化に伴い露光光源の短波長化と投影レンズの高開口数(高NA)化が進み、現在では193nm波長を有するArFエキシマレーザーを光源とする露光機が開発されている。これらは一般によく知れている様に次式で表すことができる。
(解像力)=k1・(λ/NA)
(焦点深度)=±k2・λ/NA2
ここでλは露光光源の波長、NAは投影レンズの開口数、k1及びk2はプロセスに関係する係数である。
【0005】
解像力を高める技術として、従来から投影レンズと試料の間に高屈折率の液体(以下、「液浸液」ともいう)で満たす、所謂、液浸法が提唱されている。
この「液浸の効果」はλ0を露光光の空気中での波長とし、nを空気に対する液浸液の屈折率、θを光線の収束半角としNA0=sinθとすると、液浸した場合、前述の解像力及び焦点深度は次式で表すことができる。
(解像力)=k1・(λ0/n)/NA0
(焦点深度)=±k2・(λ0/n)/NA02
すなわち、液浸の効果は波長が1/nの露光波長を使用するのと等価である。言い換えれば、同じNAの投影光学系の場合、液浸により、焦点深度をn倍にすることができる。
これは、あらゆるパターン形状に対して有効であり、更に、現在検討されている位相シフト法、変形照明法などの超解像技術と組み合わせることが可能である。
【0006】
更に解像力を高める技術として、特許文献4〜7等には、レジストパターンのスペース寸法を露光の解像限界よりも縮小する方法が開示されている。
また、放射線の照射により樹脂の極性が増加するレジスト膜の未露光部分を溶解除去するための現像液として、特許文献8には、アルカリ水溶液よりも極性の低い有機溶剤からなる現像液が記載されている。
上記に開示されている方法は、いずれも化学増幅型レジスト材料の特徴を利用しており、まず、通常のリソグラフィー技術を用いて、酸を発生する酸発生剤を含有したレジストパターンを形成した後、その上に、酸の存在下で反応し、現像液に対して不溶化する架橋層を形成する材料(架橋層形成材料ともいう)を被着し、さらに加熱などの追加処理工程を経て、レジストパターンから架橋層形成材料へと酸を拡散させ、レジストパターンと架橋層形成材料の界面に現像液に対する不溶化層を形成させることにより、レジストパターンの寸法を太らせて、レジストパターンのトレンチ寸法又はホール寸法を実効的に縮小させる技術を用いている。
しかしながら、いずれの技術を用いた場合も、より多くの酸を利用するために、酸性物質による表面処理や再度の露光工程などの追加工程、更には高温での熱処理工程を必要とする場合があり、架橋層形成材料との界面に現像液に対する不溶化層を形成するのに有効な成分である酸を、十分な量だけ確保することが困難であった。
これらの問題を解決する為に、特許文献9には、レジスト中に添加する酸発生剤量を予め増やしておき、酸の拡散量を増大させるというアプローチが成されているが、その場合、酸拡散量の増大に伴い、レジストパターンの解像性、特には露光余裕度が劣化してしまうという別の問題があった。レジスト中に添加する酸量の増大と露光余裕度の劣化の関係は、例えば、非特許文献1に開示されている。また、酸拡散量の増大と露光余裕度の劣化の関係は、例えば、非特許文献2に開示されている。
更には、上記事情に加えて、上記に開示されている方法を用いて実際のレジストパターンのスペース寸法を縮小した場合,ウェハ上にレジスト残渣(スカム)が残ってしまうという問題があり、改善が求められていた。
【0007】
【特許文献1】特開2006−227174号公報
【特許文献2】特表2002-525683号公報
【特許文献3】特表2005-533907号公報
【特許文献4】特開平5−241348号公報
【特許文献5】特開平10−73927号公報
【特許文献6】特開2001−19860号公報
【特許文献7】特開2004−61668号公報
【特許文献8】特開2000−199953号公報
【特許文献9】特開2003−249437号公報
【非特許文献1】Journal of Science and Technology B, vol.12, No.6, 3863(1994)
【非特許文献2】Journal of Science and Technology B, vol.24, No.1, 316(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情を鑑み成されたものであって、高集積かつ高精度な電子デバイスを製造するために、高精度な微細パターンを残渣(スカム)を残さずに形成する方法を提供することを目的としており、特には、トレンチパターンやホールパターンの寸法を実効的に微細化したパターンをスカムを残さずに形成する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記の構成であり、これにより本発明の上記目的が達成される。
【0010】
(1) (ア)酸の作用により極性が増大する樹脂を含有し、活性光線又は放射線の照射により、ポジ型現像液に対する溶解度が増大し、ネガ型現像液に対する溶解度が減少する、レジスト組成物を塗布する工程、
(イ)露光工程、
(ウ)ネガ型現像液を用いて現像を行い、レジストパターンを形成する工程、及び
(エ)該レジストパターンに架橋層形成材料を作用させ、該レジストパターンを構成する樹脂と架橋層形成材料とを架橋させ、架橋層を形成する工程、を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【0011】
(2) 工程(ウ)が、有機溶剤を含有する現像液を用いて現像を行い、レジストパターンを形成する工程であることを特徴とする(1)に記載のパターン形成方法。
【0012】
(3) 工程(エ)が、(a)架橋剤および(b)溶剤を含む架橋層形成材料をレジストパターン上に塗布する工程、を含むことを特徴とする(1)又は(2)に記載のパターン形成方法。
【0013】
(4) レジスト組成物が、下記成分を含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のパターン形成方法。
(A)酸の作用により極性が増大し、活性光線又は放射線の照射により、ポジ型現像液に対する溶解度が増大し、ネガ型現像液に対する溶解度が減少する樹脂
(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物、及び
(C)溶剤。
【0014】
以下、更に、本発明の好ましい実施の態様を挙げる。
【0015】
(5) 更に、(オ)未反応の架橋層形成材料を除去する工程を有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のパターン形成方法。
【0016】
(6) (オ)未反応の架橋層形成材料を除去する工程が、水又は有機溶剤を用いて未反応の架橋層形成材料を除去する工程であることを特徴とする(5)に記載のパターン形成方法。
【0017】
(7) (ア)酸の作用により極性が増大する樹脂を含有し、活性光線又は放射線の照射により、ポジ型現像液に対する溶解度が増大し、ネガ型現像液に対する溶解度が減少する、レジスト組成物を塗布する工程、
(イ)露光工程、
(ウ)ネガ型現像液を用いて現像を行い、レジストパターンを形成する工程、
(エ)該レジストパターンに架橋層形成材料を作用させ、該レジストパターンを構成する樹脂と架橋層形成材料とを架橋させ、架橋層を形成する工程、及び、
(オ)未反応の架橋層形成材料を除去する工程をこの順序で含むことを特徴とするパターン形成方法。
【0018】
(8) (ア)酸の作用により極性が増大する樹脂を含有し、活性光線又は放射線の照射により、ポジ型現像液に対する溶解度が増大し、ネガ型現像液に対する溶解度が減少する、レジスト組成物を塗布する工程、
(イ)露光工程、
(カ)加熱工程
(ウ)ネガ型現像液を用いて現像を行い、レジストパターンを形成する工程、
(エ)該レジストパターンに架橋層形成材料を作用させ、該レジストパターンを構成する樹脂と架橋層形成材料とを架橋させ、架橋層を形成する工程、及び、
(オ)未反応の架橋層形成材料を除去する工程、をこの順序で含むことを特徴とするパターン形成方法。
【0019】
(9) 工程(エ)が、更に、(カ−2)加熱工程を有することを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載のパターン形成方法。
【0020】
(10) 工程(カ)または(カ−2)が、30℃〜160℃の温度で加熱することを特徴とする(9)に記載のパターン形成方法。
【0021】
(11) 工程(ウ)の後に、更に、露光工程(イー2)を有することを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載のパターン形成方法。
【0022】
(12) 工程(エ)が、更に、露光工程(イー2’)を有することを特徴とする(1)〜(11)のいずれかに記載のパターン形成方法。
【0023】
(13) 前記(イー2)又は(イー2’)の露光工程が紫外線、遠紫外線、極紫外線又は電子線のいずれかを用いて行われることを特徴とする(11)又は(12)に記載のパターン形成方法。
【0024】
(14) 工程(ウ)の後に、更に、(キ)有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄する工程を含むことを特徴とする(1)〜(13)のいずれかに記載のパターン形成方法。
【0025】
(15) 架橋層形成材料が、さらに、(c)極性基を有する有機基又は不飽和結合を含有する樹脂を含有することを特徴とする(1)〜(14)のいずれかに記載のパターン形成方法。
【0026】
(16) (c)極性基を有する有機基又は不飽和結合を含有する樹脂が有機溶剤又は水に可溶な樹脂であることを特徴とする(15)に記載のパターン形成方法。
【0027】
(17) 極性基を有する有機基がヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、エーテル基、チオール基、イソシアネート基又はチオシアネート基のいずれかであることを特徴とする(16)に記載のパターン形成方法。
【0028】
(18) (c)極性基を有する有機基又は不飽和結合を含有する樹脂が、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキシド、スチレンーマレイン酸共重合体、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、オキサゾリン基含有樹脂、メラミン樹脂、スルホンアミド樹脂、不飽和ポリエステル、スチレン−無水マレイン酸共重合体、アクリル樹脂、ポリイミド、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン系樹脂、不飽和オルガノポリシロキサン、尿素樹脂から選択される少なくとも1種を含む樹脂であることを特徴とする(16)に記載のパターン形成方法。
【0029】
(19) 架橋層形成材料が、アミノ系架橋剤、ビニルエーテル系架橋剤、アルコール系架橋剤及びエポキシ系架橋剤の少なくとも1種を含む架橋剤(a)、を含むことを特徴とする(1)〜(18)のいずれかに記載のパターン形成方法。
【0030】
(20) 架橋層形成材料が、アミノ系架橋剤を含むことを特徴とする(1)〜(19)
のいずれかに記載のパターン形成方法。
【0031】
(21) 架橋層形成材料が、さらに、界面活性剤を含有することを特徴とする(1)〜(20)のいずれかに記載のパターン形成方法。
【0032】
(22) レジスト組成物の(A)成分が、脂環炭化水素構造を有し、酸の作用により極性が増大し、活性光線又は放射線の照射により、ポジ型現像液に対する溶解度が増大し、ネガ型現像液に対する溶解度が減少する樹脂であることを特徴とする(4)に記載のパターン形成方法。
【0033】
(23) レジスト組成物の(A)成分の重量平均分子量が、1,000〜100,000であることを特徴とする(22)に記載のパターン形成方法。
【0034】
(24) レジスト組成物の(A)成分が、さらにラクトン構造を有する樹脂であることを特徴とする(22)又は(23)に記載のパターン形成方法。
【0035】
(25) レジスト組成物の(A)成分が、さらに極性基を有する有機基を含有する繰り返し単位、を有する樹脂であることを特徴とする(22)〜(24)のいずれかに記載のパターン形成方法。
【0036】
(26) 極性基を有する有機基が、ヒドロキシル基であることを特徴とする(25)に記載のパターン形成方法。
【0037】
(27) ヒドロキシル基が脂環炭化水素構造中に含まれていることを特徴とする(26)に記載のパターン形成方法。
【0038】
(28) レジスト組成物の(B)成分の割合が、レジスト組成物の全固形分を基準として、0.1〜10質量%であることを特徴とする(22)〜(27)のいずれかに記載のパターン形成方法。
【0039】
(29) レジスト組成物の(B)成分の割合が、レジスト組成物の全固形分を基準として、1〜7質量%であることを特徴とする(22)〜(28)のいずれかに記載のパターン形成方法。
【0040】
(30) レジスト組成物が、さらに、塩基性化合物を含有することを特徴とする、(22)〜(29)のいずれかに記載のパターン形成方法。
【0041】
(31) レジスト組成物が、さらに、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤を含有することを特徴とする(22)〜(30)のいずれかに記載のパターン形成方法。
【0042】
(32) レジスト組成物が、さらに、フッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを有する樹脂(D)を含有することを特徴とする(22)〜(31)のいずれかに記載のパターン形成方法。
【0043】
(33) 250nm以下の波長を用いて(イ)の露光を行うことを特徴とする(1)〜(32)のいずれかに記載のパターン形成方法。
【0044】
(34) 波長193nmの光を用いて(イ)の露光を行うことを特徴とする(1)〜(33)のいずれかに記載のパターン形成方法。
【0045】
(35) 波長193nmの光を用いて液浸露光を行うことを特徴とする(1)〜(34)のいずれかに記載のパターン形成方法。
【発明の効果】
【0046】
本発明により、高精度な微細パターンを、スカムを残さず、さらに露光ラチチュードも改善して形成できる方法を提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
尚、本明細書に於ける基(原子団)の表記に於いて、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0048】
まず、本明細書で用いられる用語について説明する。
本発明では、酸の作用により極性が増大する樹脂を含有し、活性光線又は放射線の照射により、ポジ型現像液に対する溶解度が増大し、ネガ型現像液に対する溶解度が減少する、レジスト組成物を用いる。
ここで、ネガ型現像液とは、図1の点線で示す、所定の閾値以下の低露光部を選択的に溶解・除去させる現像液のことである。ネガ型現像液としては後述する有機溶剤系の現像液を好適に用いることができるが、これらに限定されない。
一方、ポジ型現像液とは、前記所定の閾値以上の高露光部を選択的に溶解・除去させる現像液のことである。好適に用いられるポジ型現像液としてはアルカリ現像液が挙げられる。アルカリ現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類等のアルカリ性水溶液を使用することができる。これらの中でもテトラエチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液を用いることが好ましい。
本明細書では、ネガ型現像液を用いた現像工程のことをネガ型現像(ネガ型現像工程ともいう)と呼び、ポジ型現像液を用いた現像工程のことをポジ型現像(ポジ型現像工程ともいう)と呼ぶ。
架橋層形成材料とは、レジストパターン上に塗布され、酸の存在下、レジストパターンとの界面に架橋層を形成する材料のことであり、本発明では、(a)架橋剤及び(b)溶剤を含む材料であることが好ましい。
【0049】
本発明では、解像力を高める技術として、酸の作用により極性が増大する樹脂を含有し、活性光線又は放射線の照射により、ポジ型現像液に対する溶解度が増大し、ネガ型現像液に対する溶解度が減少する、レジスト組成物を塗布する工程と、所定の閾値以下の低露光部を溶解・除去させ、高露光部を残膜させるネガ型現像工程(好ましくは有機溶剤を含む現像液を使用)と、前記レジストパターンの高露光部に酸の存在により不溶化する架橋層を形成する工程とを組み合わせた、新しいパターン形成方法を提示する。
これにより、レジストパターンの露光余裕度の改善とレジストパターン縮小による微細化、更には残渣(スカム)の低減を同時に達成できる。その理由は明らかではないが、以下の様に推察される。
すなわち、ネガ型現像を行うことで、レジスト膜の高露光部分を残膜させている為、レジスト膜の低露光部分を残膜させるポジ型現像を行った場合よりも、レジスト膜中に発生する酸量が多くなると考えられ、架橋層形成材料とレジスト膜との架橋反応に有効な酸をより多く利用することが可能であると考えられる。
【0050】
本発明を実施するのに、必要なパターン形成プロセスは、以下の工程を含む。
(ア)酸の作用により極性が増大する樹脂を含有し、活性光線又は放射線の照射により、ポジ型現像液に対する溶解度が増大し、ネガ型現像液に対する溶解度が減少する、レジスト組成物を塗布する工程、
(イ)露光工程、
(ウ)ネガ型現像液を用いて現像を行い、レジストパターンを形成する工程、及び、
(エ)該レジストパターンに架橋層形成材料を作用させ、該レジストパターンを構成する樹脂と架橋層形成材料とを架橋させ、架橋層を形成する工程、
【0051】
本発明のパターン形成方法は、工程(ウ)が、有機溶剤を含有する現像液を用いて現像を行い、レジストパターンを形成する工程であることが好ましい。
【0052】
本発明のパターン形成方法は、工程(エ)が、(a)架橋剤および(b)溶剤を含む架橋層形成材料をレジストパターン上に塗布する工程を含むことが好ましい。
【0053】
<パターン形成方法>
以下、本発明を実施する為のパターン形成方法について詳細に説明する。
【0054】
本発明のパターン形成方法は、下記プロセスを含むことが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0055】
(ア)酸の作用により極性が増大する樹脂を含有し、活性光線又は放射線の照射により、ポジ型現像液に対する溶解度が増大し、ネガ型現像液に対する溶解度が減少する、レジスト組成物を塗布する工程、
(イ)露光工程、
(ウ)ネガ型現像液を用いて現像を行い、レジストパターンを形成する工程
(エ)該レジストパターンに架橋層形成材料を作用させ、該レジストパターンを構成する樹脂と架橋層形成材料とを架橋させ、架橋層を形成する工程、及び
(オ)未反応の架橋層形成材料を除去する工程をこの順序で含むことを特徴とするパターン形成方法。
【0056】
(ア)酸の作用により極性が増大する樹脂を含有し、活性光線又は放射線の照射により、ポジ型現像液に対する溶解度が増大し、ネガ型現像液に対する溶解度が減少する、レジスト組成物を塗布する工程、
(イ)露光工程、
(カ)加熱工程
(ウ)ネガ型現像液を用いて現像を行い、レジストパターンを形成する工程、
(エ)該レジストパターンに架橋層形成材料を作用させ、該レジストパターンを構成する樹脂と架橋層形成材料とを架橋させ、架橋層を形成する工程、及び
(オ)未反応の架橋層形成材料を除去する工程をこの順序で含むことを特徴とするパターン形成方法。
【0057】
(ア)酸の作用により極性が増大する樹脂を含有し、活性光線又は放射線の照射により、ポジ型現像液に対する溶解度が増大し、ネガ型現像液に対する溶解度が減少する、レジスト組成物を塗布する工程は、レジスト組成物を基板上に塗布することができればいずれの方法を用いても良く、従来公知のスピンコート法、スプレー法、ローラーコート法、浸漬法などを用いることができ、好ましくはスピンコート法によりレジスト組成物を塗布する。レジスト組成物を塗布後、必要に応じて基板を加熱(プリベーク)する。これにより、不溶な残留溶剤の除去された膜を均一に形成することができる。プリベークの温度は特に限定されないが、50℃〜160℃が好ましく、より好ましくは、60℃〜140℃である。
【0058】
本発明において膜を形成する基板は特に限定されるものではなく、シリコン、SiN、SiO2やSiN等の無機基板、SOG等の塗布系無機基板等、IC等の半導体製造工程、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造工程、さらにはその他のフォトアプリケーションのリソグラフィー工程で一般的に用いられる基板を用いることができる。
【0059】
レジスト膜を形成する前に、基板上に予め反射防止膜を塗設してもよい。
反射防止膜としては、チタン、二酸化チタン、窒化チタン、酸化クロム、カーボン、アモルファスシリコン等の無機膜型と、吸光剤とポリマー材料からなる有機膜型のいずれも用いることができる。また、有機反射防止膜として、ブリューワーサイエンス社製のDUV30シリーズや、DUV−40シリーズ、シプレー社製のAR−2、AR−3、AR−5等の市販の有機反射防止膜を使用することもできる。
【0060】
使用し得るレジスト組成物としては、酸を発生する化合物を含有し、基板上に塗布することができれば特に制限はなく、公知のレジスト組成物の中から適宜選択することができるが、200nm以下の波長を用いた露光に使用しうるものが好ましく、その例としては、後述する、脂環炭化水素基を含有する樹脂の組成物などが挙げられる。
【0061】
(イ)露光工程に於いては、レジスト膜への露光を、一般的に良く知られている方法により行うことができる。好ましくは、当該レジスト膜に、所定のマスクを通して活性光線又は放射線を照射する。
活性光線又は放射線としては、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、X線、電子線等を挙げることができるが、好ましくは250nm以下、より好ましくは220nm以下、特に好ましくは1〜200nmの波長の遠紫外光であり、具体的には、ArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、EUV(13nm)、電子線が好ましい。
本発明における露光装置に用いられる光源の波長には特に制限は無いが、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)とF2エキシマレーザー光(157nm)、EUV光(13.5nm)、電子線等を適用できる。この中でも、200nm以下の波長の光を用いることが好ましく、更に好ましくは、ArFエキシマレーザー光(193nm)を用いる。特に好ましくは、ArFエキシマレーザー光(193nm)を用いた露光に、後述する液浸露光方法を適用することである。
【0062】
また、本発明の露光を行う工程においては液浸露光方法を適用することができる。
液浸露光を行う場合には、(1)基板上に膜を形成した後、露光する工程の前に、及び/又は(2)液浸液を介して膜に露光する工程の後、膜を加熱する工程の前に、膜の表面を水系の薬液で洗浄する工程を実施してもよい。
液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつ膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう、屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましいが、特に露光光源がArFエキシマレーザー光(波長;193nm)である場合には、上述の観点に加えて、入手の容易さ、取り扱いのし易さといった点から水を用いるのが好ましい。
水を用いる場合、水の表面張力を減少させるとともに、界面活性力を増大させる添加剤
(液体)を僅かな割合で添加しても良い。この添加剤はウエハー上のレジスト層を溶解させず、且つレンズ素子の下面の光学コートに対する影響が無視できるものが好ましい。使用する水としては、蒸留水が好ましい。更にイオン交換フィルター等を通して濾過を行った純水を用いてもよい。これにより、不純物の混入による、レジスト上に投影される光学像の歪みを抑制することができる。
また、さらに屈折率が向上できるという点で屈折率1.5以上の媒体を用いることもできる。この媒体は、水溶液でもよく有機溶剤でもよい。
【0063】
レジスト膜と液浸液との間には、レジスト膜を直接、液浸液に接触させないために、液浸液難溶性膜(以下、「トップコート」ともいう)を設けてもよい。トップコートに必要な機能としては、レジスト上層部への塗布適性、放射線、特に193nmに対する透明性、液浸液難溶性である。トップコートは、レジストと混合せず、さらにレジスト上層に均一に塗布できることが好ましい。
トップコートは、193nm透明性という観点からは、芳香族を含有しないポリマーが好ましく、具体的には、炭化水素ポリマー、アクリル酸エステルポリマー、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリビニルエーテル、シリコン含有ポリマー、フッ素含有ポリマーなどが挙げられる。
【0064】
トップコートを剥離する際は、現像液を使用してもよいし、別途剥離剤を使用してもよい。剥離剤としては、レジストへの浸透が小さい溶剤が好ましい。また、アルカリ現像液により剥離できることが好ましい。アルカリ現像液で剥離するという観点からは、トップコートは酸性が好ましいが、レジストとの非インターミクス性の観点から、中性であってもアルカリ性であってもよい。また、剥離工程がレジストの現像処理工程と同時にできるという点では、本発明のネガ型現像液により剥離できることが好ましい。
また、液浸露光の際には、前記トップコートに換えて、あるいはトップコートと併用して、疎水性樹脂を、レジスト組成物中に添加してレジスト膜を形成した後、液浸露光を行ってもよい。これにより、レジスト膜表層に疎水性樹脂が偏在化し、液浸媒体が水の場合、レジスト膜とした際の水に対するレジスト膜表面の後退接触角を向上させ、液浸水追随性を向上させることができる。疎水性樹脂としては、表面の後退接触角が添加することにより向上する樹脂で、好ましくは後述する(D)フッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを有する樹脂である。レジスト膜の後退接触角は60°〜90°が好ましく、更に好ましくは70°以上である。添加量は、レジスト膜の後退接触角が前記範囲になるよう適宜調整して使用できるが、レジスト組成物の全固形分を基準として、0.1〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。疎水性樹脂は界面に偏在するものであるが、界面活性剤とは異なり、必ずしも分子内に親水基を有する必要はなく、極性/非極性物質を均一に混合することに寄与しなくても良い。
【0065】
本発明のパターン形成方法は、露光工程を複数回有していてもよい。その場合の、複数回の露光は同じ光源を用いても、異なる光源を用いても良いが、1回目の露光には、ArFエキシマレーザー光(波長;193nm)を用いることが好ましい。
【0066】
前記、露光工程の後、好ましくはベーク(PEB)を行い、現像、リンスする。これにより良好なパターンを得ることができる。PEBの温度は、良好なレジストパターンが得られる限り特に限定されるものではなく、通常40℃〜160℃である。
【0067】
本発明では、(ウ)ネガ型現像液を用いて現像を行い、レジストパターンを形成する。
ネガ型現像工程においては、有機溶剤を含有する有機系現像液を用いて現像することが好ましい。
ネガ型現像を行う際に使用し得る有機系現像液としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤及び炭化水素系溶剤
を用いることができる。例えば、1−オクタノン、2−オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、アセトン、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート等のケトン系溶剤や、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルー3−エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等のエステル系溶剤を使用することができる。
アルコール系溶剤としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−デカノール等のアルコールや、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤等を挙げることができる。
エーテル系溶剤としては、上記グリコールエーテル系溶剤の他、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が使用できる。
炭化水素系系溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
上記の溶剤は、複数混合してもよいし、上記以外の溶剤や水と混合し使用してもよい。
【0068】
現像方法としては、たとえば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)などを適用することができ、これらの中から、使用する現像液の性質又は目的に応じて適宜選択することができる。
【0069】
ネガ型現像を行う際に使用しうる現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。
界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。これらのフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤として、例えば特開昭62−36663号公報、特開昭61−226746号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭62−170950号公報、特開昭63−34540号公報、特開平7−230165号公報、特開平8−62834号公報、特開平9−54432号公報、特開平9−5988号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、好ましくは、非イオン性の界面活性剤である。非イオン性の界面活性剤としては特に限定されないが、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を用いることが更に好ましい。
界面活性剤の使用量は現像液の全量に対して、通常0.001〜5質量%、好ましくは0.005〜2質量%、更に好ましくは0.01〜0.5質量%である。
【0070】
また、ネガ型現像を行う工程の後に、他の溶媒に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
【0071】
ネガ型現像の後には、有機溶剤を含むネガ型現像用リンス液を用いて洗浄する工程(キ)を含むことが好ましい。
【0072】
リンス工程(キ)に用いるリンス液としては、レジストパターンを溶解しなければ特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液を使用することができる。前記リンス液としては、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。より好ましくは、ネガ型現像の後に、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤から選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。更により好ましくは、ネガ型現像の後に、アルコール系溶剤又はエステル系溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。特に好ましくは、ネガ型現像の後に、炭素数5〜8の1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。ここで、ネガ型現像後のリンス工程で用いられる炭素数5〜8の1価アルコールとしては、直鎖状、分岐状、環状の1価アルコールが挙げられ、具体的には、1−ペンタノール、2−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−ヘキサノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、3−ヘキサノール、3−ヘプタノール、3−オクタノール、4−オクタノールなどを用いることができ、好ましくは、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、1−ペンタノールである。
【0073】
前記各成分は、複数混合してもよいし、上記以外の有機溶剤と混合し使用してもよい。
【0074】
リンス液中の含水率は、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。含水率を10質量%以下にすることで、良好な現像特性を得ることができる。
【0075】
リンス液には、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0076】
リンス工程においては、ネガ型の現像を行ったウェハを前記の有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄処理することが好ましい。洗浄処理の方法は特に限定されないが、たとえば、一定速度で回転している基板上にリンス液を塗出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)、などを適用することができ、この中でも回転塗布方法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2000rpm〜4000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。
【0077】
レジストパターンを形成後、必要に応じて、更に(イー2)第二の露光工程を行うことができる。これにより、レジストパターンにより多くの酸を発生させることができる。第二の露光工程ではパターン形成用のマスクを介さず、レジストパターン全面を一様に露光することが好ましい。前記露光を行う光源としては、前記レジストパターンに酸を発生し得る露光光源であればいずれでも良く、高圧水銀灯のg線又はI線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、EUV光、電子線などを挙げることができる。
【0078】
本発明に於いては、レジストパターンを形成後、(エ)該レジストパターンに架橋層形成材料を作用させ、該レジストパターンを構成する樹脂と架橋層形成材料とを架橋させ、
架橋層を形成する工程、を行う。
【0079】
工程(エ)は、(a)架橋剤および(b)溶剤を含む架橋層形成材料をレジストパターン上に塗布する工程、を含むことが好ましい。
架橋層形成材料を塗布する工程は、架橋層形成材料を基板上に塗布することができればいずれの方法を用いても良く、従来公知のスピンコート法、スプレー法、ローラーコート法、浸漬法などを用いることができ、好ましくはスピンコート法により架橋層形成材料を塗布する。架橋層形成材料を塗布後、必要に応じて基板を加熱(プリベーク、加熱工程(カ))し、架橋層形成材料からなる膜を形成する。これにより、不溶な残留溶剤を除去でき、更には、前記架橋層形成材料がレジストパターン中に効率よく含浸(ミキシング)することができる。前記プリベークの温度はレジストパターンを軟化させない限り特に限定されないが、30℃〜160℃が好ましく、より好ましくは、60℃〜140℃である。続いて、前記基板に、更に加熱処理(ミキシングベーク、加熱工程(カ−2))を施すことで、レジストパターンと前記架橋層形成材料からなる膜の界面へと十分な量の酸が拡散し、前記界面部分で架橋反応が起こる。ここで、ミキシングベークの温度は架橋反応を生じる温度であれば特に限定されないが、架橋反応を効率よく進行させる為には、前記プリベーク温度よりも高いことが好ましい。ミキシングベークの温度及び時間は、用いるレジスト材料の種類、架橋層形成材料の種類、及びレジストパターンの縮小量に応じて、適宜選択することができる。ミキシングベークの温度は、30℃〜160℃が好ましく、より好ましくは、60℃〜160℃である。
【0080】
架橋層形成材料を塗布後、必要に応じて、更に露光工程(イー2’)を行うことができる。これにより、レジストパターンにより多くの酸を発生させることができる。第二の露光工程ではパターン形成用のマスクを介さず、レジストパターン全面を一様に露光することが好ましい。前記露光を行う光源としては、紫外線、遠紫外線、極紫外線、電子線等、前記レジストパターンに酸を発生し得る露光光源であればいずれでも良く、高圧水銀灯のg線又はI線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、EUV光、電子線などを挙げることができる。
露光工程(イー2’)は、前記ミキシングベークを行う前に行うことが好ましい。
前記露光工程(イー2)と露光工程(イー2’)はそれぞれ単独で行っても良いし、両方を併用しても良い。
【0081】
更に、前記ミキシングベークを行った後、架橋層形成材料から成る膜の未反応部分(非架橋部分ともいう)を除去する工程を含むことが好ましい。これにより、レジストパターンのトレンチ若しくはホール寸法が縮小されたパターンを得ることができる。
前記除去工程は、水又は有機溶剤を含む現像液を用いて、未反応の架橋層形成材料を現像し、除去する工程であることが好ましい。水及び有機溶剤は互いに混合して用いることもできるし、必要に応じて界面活性剤やその他の添加剤を添加して用いることができる。これらの中でも、現像液として水を含む溶剤を用いる場合は、アルカリ水溶液又は純水が更に好ましく、現像液として有機溶剤を含む溶剤を用いる場合は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤及び炭化水素系溶剤の少なくとも1種を含む有機溶剤を用いることが更に好ましい。
未反応の架橋層形成材料を現像し除去する工程に於ける処理温度及び時間は、良好なレジストパターンを得られる範囲で任意に調整することができる。
未反応の架橋層形成材料を現像し除去した後、更に加熱処理(ポストベーク)を施しても良い。これにより、ウェハ上の余分な溶剤を乾燥除去できる。加熱温度は、未反応の架橋層形成材料を現像する溶剤に合わせて、適宜調整することができる。
【0082】
使用し得る架橋層形成材料としては、レジストパターンと架橋することができればいずれでも良く、特に限定されるものではない。以下、本発明で使用しうる架橋層形成材料に
ついて説明する。
【0083】
<架橋層形成材料>本発明のパターン形成方法で用いられる架橋層形成材料は、(a)架橋剤および(b)溶剤を含有することが好ましい。前記架橋層形成材料は、更に、(c)極性基を有する有機基又は不飽和結合を含有する樹脂を含有することが好ましい。更に、必要に応じて、界面活性剤、塩基性成分、その他の添加剤などを含有することができる。
【0084】
(a)架橋剤
架橋層形成材料が含有する架橋剤としては、水又は有機溶剤からなる溶剤に溶解することが可能であり、熱又は酸によって架橋反応を生じることができれば特に制限されず、例えば、アミノ系架橋剤、ビニルエーテル系架橋剤、アルコール系架橋剤及びエポキシ系架橋剤等を使用することができる。これらは、1種単独あるいは2種以上を併用しても良い。前記架橋剤としては、反応性を向上させる観点から、2官能以上が好ましく、より好ましくは、2官能以上のアミノ系架橋剤である。具体的には、メラミン誘導体、ユリア誘導体、ウリル誘導体などが挙げられる。前記メラミン誘導体としては、例えば、アルコキシメチルメラミン、アルコキシメチレンメラミン、及びこれらの誘導体などが挙げられる。前記ユリア誘導体としては、例えば、尿素、アルコキシメチレン尿素、N−アルコキシメチレン尿素、エチレン尿素、エチレン尿素カルボン酸、及びこれらの誘導体などが挙げられる。前記ウリル誘導体としては、例えば、ベンゾグアナミン、グリコールウリル、及びこれらの誘導体などが挙げられる。これらの中でも、尿素及びグリコールウリルが好適に用いられ、特に好適にはヒドロキシメチル化された尿素及びグリコールウリルを用いることができる。
【0085】
架橋剤(a)の添加量は、(b)溶剤及び(c)極性基を有する有機基又は不飽和結合を含有する樹脂の種類及び含有量により適宜選択することができ、一般的には、架橋層形成材料の全固形分に対して、1〜70質量%が好ましく、更に好ましくは5〜50質量%、最も好ましくは、10〜50質量%である。
【0086】
(b)溶剤
架橋層形成材料が含有する溶剤は水であっても有機溶剤であっても良く、レジストパターンを溶解しないものであれば特に限定されるものではなく、用いる架橋層形成材料及びレジスト組成物に応じて適宜選択することができる。(b)溶剤として水を用いる場合は純水が好ましく、有機溶剤を用いる場合は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の単独あるいは2種以上の混合溶剤を用いることが好ましい。
これらの中でも、レジストパターンの非溶解性の観点からアルコール系溶剤を用いることが更に好ましく、炭素数3〜8の1価のアルコール溶剤を用いることが最も好ましい。
架橋層形成材料の全固形分濃度(溶剤を除く総重量)は好ましくは0.1〜20質量%であり、更に好ましくは1〜15質量%であり、最も好ましくは1〜13質量%である。
【0087】
(c)極性基を有する有機基又は不飽和結合を含有する樹脂
本発明のパターン形成方法で用いられる架橋層形成材料は、(c)極性基を有する有機基又は不飽和結合を含有する樹脂を含むことが好ましい。前記樹脂としては、用いる架橋層形成材料(特には、溶剤)及びレジスト組成物に応じて適宜選択すればよく、水又は有機溶剤に可溶な樹脂であることが好ましい。
【0088】
前記(c)極性基を有する有機基又は不飽和結合を含有する樹脂としては、架橋反応を生じることが可能である、あるいは、架橋剤と混合可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルア
セタール、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキシド、スチレンーマレイン酸共重合体、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、オキサゾリン基含有樹脂、メラミン樹脂、スルホンアミド樹脂、不飽和ポリエステル、スチレン−無水マレイン酸共重合体、アクリル樹脂、ポリイミド、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン系樹脂、不飽和オルガノポリシロキサン、尿素樹脂から選択される少なくとも1種を含む樹脂などを用いることができる。これらの中でも、好ましくは、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール及びポリビニルアセテートを有する樹脂である。
【0089】
前記(c)極性基を有する有機基又は不飽和結合を含有する樹脂の好ましい別の態様としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、エーテル基、チオール基、イソシアネート基又はチオシアネート基から選択される少なくとも1種の有機基を含有する脂環炭化水素構造を有する樹脂を用いる。これにより、ドライエッチング耐性を高めることができる。脂環炭化水素構造を有する樹脂としては、後述するレジスト組成物に用いられる、「酸の作用により極性が増大し、活性光線又は放射線の照射により、ポジ型現像液に対する溶解度が増大し、ネガ型現像液に対する溶解度が減少する樹脂」を」そのまま用いることができる。これらの中でも、ヒドロキシル基、カルボキシル基及びアミノ基から選択される少なくとも1種の有機基を含有する脂環炭化水素構造を有する樹脂が好ましい。脂環炭化水素構造を有する樹脂は1種単独で使用しても良いし、2種以上併用しても良い。
【0090】
樹脂(c)の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜100,000で、より好ましくは1,000〜50,000、更により好ましくは2,000〜15,000、特に好ましくは3,000〜15,000である。
【0091】
樹脂(c)の分子量分布(Mw/Mn、分散度ともいう)は、1〜5が好ましく、より好ましくは1〜3、更により好ましくは1〜1.5の範囲である。
【0092】
樹脂(c)の添加量は、前記(a)架橋剤及び(b)溶剤の種類により適宜選択することができるが、架橋層形成剤の溶剤を除く総重量に対して、30〜99質量%が好ましく、更に好ましくは50〜95質量%、最も好ましくは、50〜90質量%である。
【0093】
界面活性剤
本発明の架橋層形成材料は、架橋層形成材料の成膜性を向上させる目的で、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤としては特に制限は無く、架橋層形成材料を均一に成膜することができ、かつ架橋層形成材料の溶剤に溶解することができれば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤のいずれも用いることができる。
界面活性剤の添加量は、好ましくは0.001〜20質量%であり、更に好ましくは、0.01〜10質量%である。
界面活性剤は1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
前記界面活性剤としては、例えば、アルキルカチオン系界面活性剤、アミド型4 級カチオン系界面活性剤、エステル型4 級カチオン系界面活性剤、アミンオキサイド系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤、アルコキシレート系界面活性剤、脂肪酸エステル系界面活性剤、アミド系界面活性剤、アルコール系界面活性剤、及びエチレンジアミン系界面活性剤、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素原子と珪素原子の両方を有する界面活性剤)から選択されるものを好適に用いることができる。
界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチル
フェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテ−ト、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等の界面活性剤や、下記に挙げる市販の界面活性剤をそのまま用いることができる。
使用できる市販の界面活性剤として、例えばエフトップEF301、EF303、(新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431、4430(住友スリーエム(株)製)、メガファックF171、F173、F176、F189、F113、F110、F177、F120、R08(大日本インキ化学工業(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106(旭硝子(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)、GF−300、GF−150(東亜合成化学(株)製)、サーフロンS−393(セイミケミカル(株)製)、エフトップEF121、EF122A、EF122B、RF122C、EF125M、EF135M、EF351、352、EF801、EF802、EF601((株)ジェムコ製)、PF636、PF656、PF6320、PF6520(OMNOVA社製)、FTX−204D、208G、218G、230G、204D、208D、212D、218、222D((株)ネオス製)等のフッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を挙げることができる。またポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0094】
塩基性成分
本発明の架橋層形成材料は、パターン縮小幅を調整する目的で、塩基性成分を含有することができる。塩基性成分としては、有機アミン類やアンモニウム塩などが挙げられ、特に制限はない。
塩基性成分として具体的には、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミンなどの脂肪族アミン、トリエタノールアミンやジオクタノールアミンなどの脂肪族アミンの水素原子をヒドロキシル基等の極性基で置換した脂肪族アミン、2、4、5−トリフェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール等のイミダゾール構造を有する化合物、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネンなどのジアザビシクロ構造を有する化合物、2,6−ジイソプロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリンなどのアニリン構造を有する化合物が挙げられる。塩基性成分は1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0095】
<レジスト組成物>
本発明のパターン形成方法は、酸の作用により極性が増大する樹脂を含有し、活性光線又は放射線の照射により、ポジ型現像液に対する溶解度が増大し、ネガ型現像液に対する溶解度が減少する、レジスト組成物を用いる。
【0096】
前記レジスト組成物は、下記成分を含有することが好ましい。
(A)酸の作用により極性が増大し、活性光線又は放射線の照射により、ポジ型現像液に対する溶解度が増大し、ネガ型現像液に対する溶解度が減少する樹脂
(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物、及び
(C)溶剤。
【0097】
以下、本発明で使用し得るレジスト組成物について説明する。
【0098】
(A)酸の作用により極性が増大する樹脂
本発明のレジスト組成物に用いられる、酸の作用により極性が増大する樹脂は、樹脂の主鎖又は側鎖、あるいは、主鎖及び側鎖の両方に、酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基を生じる基(以下、「酸分解性基」ともいう)を有する樹脂(「酸分解性樹脂」、「酸分解性樹脂(A)」又は「樹脂(A)」とも呼ぶ)であり、単環又は多環の脂環炭化水素構造を有し、酸の作用により極性が増大し、ポジ型現像液に対する溶解度が増大し、ネガ型現像液に対する溶解度が減少する樹脂(以下、「脂環炭化水素系酸分解性樹脂」ともいう)であることがより好ましい。その理由は、活性光線又は放射線の照射の前後において、樹脂の極性が大きく変化し、ポジ型現像液(好ましくは、アルカリ現像液)及びネガ型現像液(好ましくは、有機溶剤)を用いて現像した場合の溶解コントラストが向上するためである。さらには、単環又は多環の脂環炭化水素構造を有する樹脂は一般に疎水性が高く、ネガ型現像液(好ましくは、有機溶剤)によりレジスト膜の光照射強度の弱い領域を現像する場合の現像速度が速く、ネガ型現像液使用時の現像性が向上する。
【0099】
酸の作用により極性が増大する樹脂を含有する本発明のレジスト組成物は、ArFエキシマレーザー光を照射する場合に好適に使用することができる。
【0100】
酸の作用により極性が増大する樹脂は、極性基を有する有機基を含有する樹脂であることが好ましい。
極性基を有する有機基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、エーテル基、チオール基、イソシアネート基又はチオシアネート基から選択される少なくとも1種の有機基であることが好ましい。
極性基を有する有機基が、ヒドロキシル基であることがより好ましい。
ヒドロキシル基が脂環炭化水素構造中に含まれていることがさらに好ましい。
更に好適には、下記一般式(F1)で表される基、下記一般式(H1)で表される基、及び下記一般式(H2)で表される基が挙げられる。これらの基は、樹脂中の繰り返し単位にそれぞれ独立して含まれていることが好ましい。
【0101】
本発明の酸分解性樹脂は、一般式(F1)で表される基を有する繰り返し単位、一般式(H1)で表される基を有する繰り返し単位、及び一般式(H2)で表される基を有する繰り返し単位の少なくとも1つを有する樹脂であることが好ましく、より好ましくは、(H1)で表される繰り返し単位を含有する樹脂である。これら繰り返し単位は、2種類以上が同時に樹脂中に含まれていても良い。
【0102】
本発明の酸分解性樹脂は、一般式(F1)で表される基を1〜3個有する繰り返し単位を有することが好ましい。これにより、架橋層形成材料との架橋反応性が向上する。
【0103】
【化1】

【0104】
一般式(F1)中、
50〜R55は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はアルキル基を表す。但し、R50〜R55の内、少なくとも1つは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
【0105】
50〜R55のアルキル基は、フッ素原子等のハロゲン原子、シアノ基等で置換されていてもよく、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基、例えば、メチル基、トリフルオロメチル基を挙げることができる。
50〜R55は、すべてフッ素原子であることが好ましい。
【0106】
一般式(F1)で表される基を有する繰り返し単位として好ましくは下記一般式(F1’)で表される繰り返し単位である。
【0107】
【化2】

【0108】
一般式(F1’)中、
Rxは、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。Rxのアルキル基が有していてもよい好ましい置換基としては、ヒドロキシル基、ハロゲン原子が挙げられる。
Faは、単結合、直鎖または分岐のアルキレン基(好ましくは単結合)を表す。
Fbは、単環または多環の環状炭化水素基を表す。
Fcは、単結合、直鎖または分岐のアルキレン基(好ましくは単結合、メチレン基)を表す。
1は、一般式(F1)で表される基を表す。
1は、1〜3を表す。
Fbにおける環状炭化水素基としてはシクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基が好ましい。
【0109】
一般式(F1)で表される基を有する繰り返し単位の具体例を示すが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0110】
【化3】

【0111】
本発明の脂環炭化水素系酸分解性樹脂は、一般式(H1)で表される基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。これにより、架橋層形成材料との架橋反応性が向上し、さらには、基板密着性が向上する。
【0112】
【化4】

【0113】
一般式(H1)において、
Rnh1〜Rnh3は水素原子又はヒドロキシル基を表し、Rnh1〜Rnh3のうち少なくとも一つはヒドロキシル基を表す。
【0114】
本発明に於けるRnh1〜Rnh3のうち、好ましくは、1つまたは2つがヒドロキシル基で残りが水素原子である。
【0115】
一般式(H1)で表される基を有する繰り返し単位として好ましくは下記一般式(NGH1)で表される繰り返し単位である。
【0116】
【化5】

【0117】
一般式(NGH1)において、
Rhは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を表す。
Fhは、単結合、直鎖または分岐のアルキレン基(好ましくは単結合)を表す。
H1は、一般式(H1)で表される基を表す。
【0118】
一般式(NGH1)で表される基を有する繰り返し単位の具体例を示すが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0119】
【化6】

【0120】
本発明の酸分解性樹脂は、一般式(H2)で表される基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。これにより、架橋層形成材料との架橋反応性が向上し、さらには、基板密着性が向上する。
【0121】
【化7】

【0122】
一般式(H2)において、
Shは単結合又は鎖状アルキレン基を表す。
【0123】
本発明に於けるShは、好ましくは単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基である。アルキレン鎖中に酸素原子、硫黄原子、エステル基、ケトン基などのヘテロ原子を有する連結基を含有していてもよい。この中でもより好ましくは単結合又は炭素数1〜4の鎖状アルキレン基であり、最も好ましくは、単結合、メチレン基又はエチレン基である。
【0124】
一般式(H2)で表される基を有する繰り返し単位として好ましくは下記一般式(NGH2)で表される繰り返し単位である。
【0125】
【化8】

【0126】
一般式(NGH2)において、Rhは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のフッ素化アルキル基、又は炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を表す。Rhとして好ましくは、水素原子又はメチル基である。
H2は、一般式(H2)で表される基を表す。
【0127】
本発明の酸分解性樹脂は、フェノール性ヒドロキシル基、カルボン酸基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基を有する繰り返し単位を有していても良い。
これらの中でも好ましくは、カルボン酸基を有する繰り返し単位が挙げられる。これらを含有することによりコンタクトホール用途での解像性が増す。カルボキシル基を有する繰り返し単位としては、アクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位のような樹脂の主鎖に直接カルボキシル基が結合している繰り返し単位、あるいは連結基を介して樹脂の主鎖にカルボキシル基が結合している繰り返し単位、さらにはアルカリ可溶性基を有する重合開始剤や連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入、のいずれも好ましく、連結基は単環または多環の環状炭化水素構造を有していてもよい。特に好ましくはアクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位である。
酸で分解し得る基(酸分解性基)として好ましい基は、フェノール性ヒドロキシル基、カルボン酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等のアルカリ可溶性基の水素原子を酸で脱離する基で置換した基である。
酸で脱離する基としては、例えば、−C(R36)(R37)(R38)、−C(R36)(R37)(OR39)、−C(R01)(R02)(OR39)等を挙げることができる。
式中、R36〜R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラ
ルキル基又はアルケニル基表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
01〜R02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
酸分解性基としては好ましくは、クミルエステル基、エノールエステル基、アセタールエステル基、第3級のアルキルエステル基等である。更に好ましくは、第3級アルキルエステル基である。
【0128】
本発明の脂環炭化水素系酸分解性樹脂としては、下記一般式(pI)〜一般式(pV)で示される脂環式炭化水素を含む部分構造を有する繰り返し単位及び下記一般式(II-AB)で示される繰り返し単位の群から選択される少なくとも1種を含有する樹脂であることが好ましい。
【0129】
【化9】

【0130】
一般式(pI)〜(pV)中、
11は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基又はsec−ブチル基を表し、Zは、炭素原子とともにシクロアルキル基を形成するのに必要な原子団を表す。
12〜R16は、各々独立に、炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基又はシクロアルキル基を表す。但し、R12〜R14のうち少なくとも1つ、もしくはR15、R16のいずれかはシクロアルキル基を表す。
17〜R21は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基又はシクロアルキル基を表す。但し、R17〜R21のうち少なくとも1つはシクロアルキル基を表す。また、R19、R21のいずれかは炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基又はシクロアルキル基を表す。
22〜R25は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基又はシクロアルキル基を表す。但し、R22〜R25のうち少なくとも1つはシクロアルキル基を表す。また、R23とR24は、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0131】
【化10】

【0132】
一般式(II−AB)中、
11'及びR12'は、各々独立に、水素原子、シアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。
Z'は、結合した2つの炭素原子(C−C)を含み、脂環式構造を形成するための原子団を表す。
【0133】
また、上記一般式(II−AB)は、下記一般式(II−AB1)又は一般式(II−AB2)であることが更に好ましい。
【0134】
【化11】

【0135】
式(II−AB1)及び(II−AB2)中、
13'〜R16'は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、−COOH、−COOR5、酸の作用により分解する基、−C(=O)−X−A'−R17'、アルキル基あるいはシクロアルキル基を表す。Rl3'〜R16'のうち少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。
ここで、R5は、アルキル基、シクロアルキル基又はラクトン構造を有する基を表す。
Xは、酸素原子、硫黄原子、−NH−、−NHSO2−又は−NHSO2NH−を表す。
A'は、単結合又は2価の連結基を表す。
17'は、−COOH、−COOR5、−CN、ヒドロキシル基、アルコキシ基、−CO−NH−R6、−CO−NH−SO2−R6又はラクトン構造を有する基を表す。
6は、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
nは、0又は1を表す。
【0136】
一般式(pI)〜(pV)において、R12〜R25におけるアルキル基としては、1〜4個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のアルキル基を表す。
【0137】
11〜R25におけるシクロアルキル基或いはZと炭素原子が形成するシクロアルキル基は、単環式でも、多環式でもよい。具体的には、炭素数5以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ構造等を有する基を挙げることができる。その炭素数は6〜30個が好ましく、特に炭素数7〜25個が好ましい。これらのシクロアルキル基は置換基を有していてもよい。
【0138】
好ましいシクロアルキル基としては、アダマンチル基、ノルアダマンチル基、デカリン残基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、ノルボルニル基、セドロール基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基を挙げることができる。より好ましくは、アダマンチル基、ノルボルニル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、テトラシクロドデカニル基、トリシクロデカニル基を挙げることができる。
【0139】
これらのアルキル基、シクロアルキル基の更なる置換基としては、アルキル基(炭素数1〜4)、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基(炭素数1〜4)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(炭素数2〜6)が挙げられる。上記のアルキル基、アル
コキシ基、アルコキシカルボニル基等が、更に有していてもよい置換基としては、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基を挙げることができる。
【0140】
上記樹脂における一般式(pI)〜(pV)で示される構造は、アルカリ可溶性基の保護に使用することができる。アルカリ可溶性基としては、この技術分野において公知の種々の基が挙げられる。
【0141】
具体的には、カルボン酸基、スルホン酸基、フェノール基、チオール基の水素原子が一般式(pI)〜(pV)で表される構造で置換された構造などが挙げられ、好ましくはカルボン酸基、スルホン酸基の水素原子が一般式(pI)〜(pV)で表される構造で置換された構造である。
【0142】
一般式(pI)〜(pV)で示される構造で保護されたアルカリ可溶性基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(pA)で示される繰り返し単位が好ましい。
【0143】
【化12】

【0144】
ここで、Rは、水素原子、ハロゲン原子又は1〜4個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のアルキル基を表す。複数のRは、各々同じでも異なっていてもよい。
Aは、単結合、アルキレン基、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、スルホンアミド基、ウレタン基、又はウレア基よりなる群から選択される単独あるいは2つ以上の基の組み合わせを表す。好ましくは単結合である。
Rp1は、上記式(pI)〜(pV)のいずれかの基を表す。
【0145】
一般式(pA)で表される繰り返し単位は、特に好ましくは、2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、ジアルキル(1−アダマンチル)メチル(メタ)アクリレートによる繰り返し単位である。
【0146】
以下、一般式(pA)で示される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0147】
【化13】

【0148】
【化14】

【0149】
前記一般式(II−AB)、R11'、R12'におけるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、沃素原子等を挙げることができる。
【0150】
上記R11'、R12'におけるアルキル基としては、炭素数1〜10個の直鎖状あるいは分岐状アルキル基が挙げられる。
【0151】
上記Z'の脂環式構造を形成するための原子団は、置換基を有していてもよい脂環式炭
化水素の繰り返し単位を樹脂に形成する原子団であり、中でも有橋式の脂環式炭化水素の繰り返し単位を形成する有橋式脂環式構造を形成するための原子団が好ましい。
【0152】
形成される脂環式炭化水素の骨格としては、一般式(pI)〜(pV)に於けるR12〜R25の脂環式炭化水素基と同様のものが挙げられる。
【0153】
上記脂環式炭化水素の骨格には置換基を有していてもよい。そのような置換基としては、前記一般式(II−AB1)あるいは(II−AB2)中のR13'〜R16'を挙げることができる。
【0154】
本発明に係る脂環炭化水素系酸分解性樹脂においては、酸の作用により分解する基は、前記一般式(pI)〜一般式(pV)で示される脂環式炭化水素を含む部分構造を有する繰り返し単位、一般式(II−AB)で表される繰り返し単位、及び後記共重合成分の繰り返し単位のうち少なくとも1種の繰り返し単位に含有することが好ましい。酸の作用により分解する基は、一般式(pI)〜一般式(pV)で示される脂環式炭化水素を含む部分構造を有する繰り返し単位に含まれることが好ましい。
【0155】
上記一般式(II−AB1)あるいは一般式(II−AB2)におけるR13'〜R16'の各種置換基は、上記一般式(II−AB)における脂環式構造を形成するための原子団ないし有橋式脂環式構造を形成するための原子団Zの置換基ともなり得る。
【0156】
上記一般式(II−AB1)あるいは一般式(II−AB2)で表される繰り返し単位として、下記具体例が挙げられるが、本発明はこれらの具体例に限定されない。
【0157】
【化15】

【0158】
本発明の酸分解性樹脂は、ラクトン基を有することが好ましい。ラクトン基としては、ラクトン構造を含有していればいずれの基でも用いることができるが、好ましくは5〜7員環ラクトン構造を含有する基であり、5〜7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものが好ましい。下記一般式(LC1−1)〜(LC1−16)のいずれかで表されるラクトン構造を有する基を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。また、ラクトン構造を有する基が主鎖に直接結合していてもよい。好ましいラクトン構造としては一般式(LC1−1)、(LC1−4)、(LC1−5)、(LC1−6)、(LC1−13)、(LC1−14)で表される基であり、特定のラクトン構造を用いることでラインエッジラフネス、現像欠陥が良好になる。
【0159】
【化16】

【0160】
ラクトン構造部分は、置換基(Rb2)を有していても有していなくてもよい。好ましい置換基(Rb2)としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、酸分解性基などが挙げられる。n2は、0〜4の整数を表す。n2が2以上の時、複数存在するRb2は、同一でも異なっていてもよく、また、複数存在するRb2同士が結合して環を形成してもよい。
【0161】
一般式(LC1−1)〜(LC1−16)のいずれかで表されるラクトン構造を有する基を有する繰り返し単位としては、上記一般式(II−AB1)又は(II−AB2)中のR13'〜R16'のうち少なくとも1つが一般式(LC1−1)〜(LC1−16)で表される基を有するもの(例えば−COOR5のR5が一般式(LC1−1)〜(LC1−16)で表される基を表す)、又は下記一般式(AI)で表される繰り返し単位等を挙げることができる。
【0162】
【化17】

【0163】
一般式(AI)中、
Rb0は、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
Rb0のアルキル基が有していてもよい好ましい置換基としては、ヒドロキシル基、ハ
ロゲン原子が挙げられる。
Rb0のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子を挙げることができる。
Rb0は、水素原子又はメチル基が好ましい。
Abは、単結合、アルキレン基、単環または多環の脂環炭化水素構造を有する2価の連結基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、又はこれらを組み合わせた2価の基を表す。好ましくは、単結合、−Ab1−CO2−で表される連結基である。Ab1は、直鎖、分岐アルキレン基、単環または多環のシクロアルキレン基であり、好ましくは、メチレン基、エチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基、ノルボルニレン基である。
Vは、一般式(LC1−1)〜(LC1−16)のうちのいずれかで示される基を表す。
【0164】
ラクトン構造を有する繰り返し単位は通常光学異性体が存在するが、いずれの光学異性体を用いてもよい。また、1種の光学異性体を単独で用いても、複数の光学異性体混合して用いてもよい。1種の光学異性体を主に用いる場合、その光学純度(ee)が90以上のものが好ましく、より好ましくは95以上である。
【0165】
ラクトン構造を有する基を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0166】
【化18】

【0167】
【化19】

【0168】
【化20】

【0169】
本発明の酸分解性樹脂は、前記一般式(NGH1)で表される繰り返し単位におけるヒドロキシル基含有脂環炭化水素基以外の、極性基を有する有機基を含有する繰り返し単位、特に、極性基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位を有していても良い。これにより基板密着性が更に向上する。極性基で置換された脂環炭化水素構造の脂環炭化水素構造としてはアダマンチル基、ジアマンチル基、ノルボルナン基が好ましい。極性基としてはカルボキシル基、シアノ基が好ましい。
極性基で置換された脂環炭化水素構造としては、下記一般式(VIIa)〜(VIId)で表される部分構造が好ましい。
【0170】
【化21】

【0171】
一般式(VIIa)〜(VIIc)中、
2c〜R4cは、各々独立に、水素原子又はカルボキシル基、シアノ基を表す。ただし、R2c〜R4cのうち少なくとも1つはカルボキシル基、シアノ基を表す。好ましくはR2c〜R4cのうち1つまたは2つがシアノ基で残りが水素原子である。
一般式(VIIa)において、更に好ましくはR2c〜R4cのうち2つがシアノ基で残りが水素原子である。
【0172】
一般式(VIIa)〜(VIId)で表される基を有する繰り返し単位としては、上記一般式(II−AB1)又は(II−AB2)中のR13'〜R16'のうち少なくとも1つが上記一般式(VIIa)〜(VIId)で表される基を有するもの(例えば、−COOR
5におけるR5が一般式(VIIa)〜(VIId)で表される基を表す)、又は下記一般式(AIIa)〜(AIId)で表される繰り返し単位等を挙げることができる。
【0173】
【化22】

【0174】
一般式(AIIa)〜(AIId)中、
1cは、水素原子、メチル基、トリフロロメチル基、ヒドロキシメチル基を表す。
2c〜R4cは、一般式(VIIa)〜(VIIc)におけるR2c〜R4cと同義である。
【0175】
一般式(AIIa)〜(AIId)で表される構造を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0176】
【化23】

【0177】
本発明の酸分解性樹脂は、下記一般式(VIII)で表される繰り返し単位を有してもよい。
【0178】
【化24】

【0179】
上記一般式(VIII)に於いて、
2は、−O−又は−N(R41)−を表す。R41は、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基又は−OSO2−R42を表す。R42は、アルキル基、シクロアルキル基又は樟脳残基を表す。R41及びR42のアルキル基は、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)等で置換されていてもよい。
【0180】
上記一般式(VIII)で表される繰り返し単位として、以下の具体例が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0181】
【化25】

【0182】
本発明の酸分解性樹脂は、更に脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を含有してもよい。これにより液浸露光時にレジスト膜から液浸液への低分子成分の溶出が低減できる。このような繰り返し単位として、例えば1−アダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0183】
本発明の酸分解性樹脂は、上記の繰り返し構造単位以外に、ドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、さらにレジストの一般的な必要な特性である解像力、耐熱性、感度等を調節する目的で様々な繰り返し構造単位を含有することができる。
【0184】
このような繰り返し構造単位としては、下記の単量体に相当する繰り返し構造単位を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0185】
これにより、酸分解性樹脂に要求される性能、特に、
(1)塗布溶剤に対する溶解性、
(2)製膜性(ガラス転移温度)、
(3)ポジ型現像液及びネガ型現像液に対する溶解性、
(4)膜べり(親疎水性、アルカリ可溶性基選択)、
(5)未露光部の基板への密着性、
(6)ドライエッチング耐性、
等の微調整が可能となる。
【0186】
このような単量体として、例えばアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等を挙げることができる。
【0187】
その他にも、上記種々の繰り返し構造単位に相当する単量体と共重合可能である付加重合性の不飽和化合物であれば、共重合されていてもよい。
【0188】
酸分解性樹脂において、各繰り返し構造単位の含有モル比はレジストのドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、さらにはレジストの一般的な必要性能である解像力、耐熱性、感度等を調節するために適宜設定される。
【0189】
本発明の酸分解性樹脂の好ましい態様は、酸分解性基を有する繰り返し単位及び極性基を有する繰り返し単位を有する樹脂である。
【0190】
酸分解性基を有する繰り返し単位としては、以下のものが挙げられる。
(1) 上記一般式(pI)〜(pV)で表される脂環式炭化水素を含む部分構造を有する繰り返し単位を含有するもの(側鎖型)。
好ましくは(pI)〜(pV)の構造を有する(メタ)アクリレート繰り返し単位を含有するもの。
(2) 一般式(II-AB)で表される繰り返し単位を含有するもの(主鎖型)。
但し、(2)においては例えば、更に以下のものが挙げられる。
(3) 一般式(II-AB)で表される繰り返し単位、無水マレイン酸誘導体及び(メタ)アクリレート構造を有するもの(ハイブリッド型)。
【0191】
酸分解性樹脂中、酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量は、全繰り返し構造単位中10〜60モル%が好ましく、より好ましくは20〜50モル%、更に好ましくは25〜40モル%である。
【0192】
酸分解性樹脂中、一般式(pI)〜(pV)で表される脂環式炭化水素を含む部分構造を有する繰り返し単位の含有量は、全繰り返し構造単位中20〜70モル%が好ましく、より好ましくは20〜50モル%、更に好ましくは25〜40モル%である。
【0193】
酸分解性樹脂中、一般式(II−AB)で表される繰り返し単位の含有量は、全繰り返し構造単位中10〜60モル%が好ましく、より好ましくは15〜55モル%、更に好ましくは20〜50モル%である。
【0194】
極性基を有する繰り返し単位としては、以下のものが挙げられる。
(1) 一般式(F1’)で表される繰り返し単位。
(2) 一般式(NGH1)で表される繰り返し単位。
(3) 一般式(NGH2)で表される繰り返し単位。
【0195】
酸分解性樹脂中、極性基を有する繰り返し単位は、上記各成分を単独で用いても良いし、これらを組み合わせて用いても良い。樹脂中の極性基を有する繰り返し単位の含有量は、全繰り返し構造単位中5〜60モル%が好ましく、より好ましくは5〜40モル%、更に好ましくは10〜30モル%である。
【0196】
酸分解性樹脂中、一般式(F1’)で表される繰り返し単位の含有量は、全繰り返し構造単位中0〜60モル%が好ましく、より好ましくは0〜40モル%、更に好ましくは5〜30モル%である。
【0197】
酸分解性樹脂中、一般式(NGH1)で表される繰り返し単位の含有量は、全繰り返し構造単位中0〜60モル%が好ましく、より好ましくは5〜40モル%、更に好ましくは5〜30モル%である。
【0198】
酸分解性樹脂中、一般式(NGH2)で表される繰り返し単位の含有量は、全繰り返し構造単位中0〜60モル%が好ましく、より好ましくは0〜40モル%、更に好ましくは5〜20モル%である。
【0199】
酸分解性樹脂中、ラクトン環を有する繰り返し単位の含有量は、全繰り返し構造単位中10〜70モル%が好ましく、より好ましくは20〜60モル%、更に好ましくは25〜40モル%である。
【0200】
また、上記更なる共重合成分の単量体に基づく繰り返し構造単位の樹脂中の含有量も、所望のレジストの性能に応じて適宜設定することができるが、一般的に、上記一般式(pI)〜(pV)で表される脂環式炭化水素を含む部分構造を有する繰り返し構造単位と上記一般式(II−AB)で表される繰り返し単位の合計した総モル数に対して99モル%以下が好ましく、より好ましくは90モル%以下、さらに好ましくは80モル%以下である。
【0201】
本発明のレジスト組成物がArF露光用であるとき、ArF光への透明性の点から樹脂
は芳香族基を有さないことが好ましい。
【0202】
本発明に用いる酸分解性樹脂として好ましくは、繰り返し単位のすべてが(メタ)アクリレート系繰り返し単位で構成されたものである。この場合、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位、繰り返し単位のすべてがアクリレート系繰り返し単位、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位/アクリレート系繰り返し単位の混合のいずれのものでも用いることができるが、アクリレート系繰り返し単位が全繰り返し単位の50mol%以下であることが好ましい。
【0203】
酸分解性樹脂は、少なくとも、一般式(F1’)で表される繰り返し単位及び一般式(NGH1)で表される繰り返し単位及び一般式(NGH2)で表される繰り返し単位のいずれか1種以上から選択されるヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位、ラクトン環を有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位、並びに、酸分解性基を有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位をそれぞれ有する共重合体であることが好ましい。
【0204】
好ましくは、一般式(NGH1)又は一般式(F1’)で表される繰り返し単位を5〜40モル%、ラクトン構造を有する繰り返し単位20〜50モル%、一般式(pI)〜(pV)で表される脂環式炭化水素を含む部分構造を有する繰り返し単位20〜50モル%を含有する3元共重合ポリマー、を含有する3元共重合ポリマー、または、一般式(NGH1)及び一般式(F1’)で表される繰り返し単位を両繰り返し単位の合計で5〜40モル%、ラクトン構造を有する繰り返し単位20〜50モル%、一般式(pI)〜(pV)で表される脂環式炭化水素を含む部分構造を有する繰り返し単位20〜50モル%を含有する4元共重合ポリマーである。これらの共重合ポリマーに、さらに、一般式(NGH2)で表される繰り返し単位を5〜20モル%含有させることも、架橋層形成材料との架橋反応性の調節及び密着性の更なる向上の観点から好ましい。さらに、上記共重合ポリマーに、酸分解性を示さない繰り返し単位を5〜20モル%含有させることも、現像液親和性を向上させる観点から好ましい。
【0205】
前記繰り返し単位としては、下記一般式(ARA−1)〜(ARA−7)で表される酸分解性基を有する繰り返し単位、下記一般式(ARL−1)〜(ARL−8)で表されるラクトン基を有する繰り返し単位、下記一般式(ARH−1)〜(ARH−4)で表されるヒドロキシル基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位、(ARH−5)又は(ARH−6)で表されるヒドロキシル基を有する繰り返し単位を含有する樹脂を用いることが好ましい。
【0206】
(式中、Rxy1は水素原子又はメチル基、Rxa1、Rxb1はメチル基又はエチル基を、Rxc1は水素原子又はメチル基を表す。)
【0207】
【化26】

【0208】
【化27】

【0209】
【化28】

【0210】
【化29】

【0211】
【化30】

【0212】
酸分解性樹脂(A)をKrFエキシマレーザー光、電子線、X線、波長50nm以下の高エネルギー光線(EUVなど)を照射するポジ型レジスト組成物に使用する場合には、酸分解性樹脂は、ヒドロキシスチレンによる繰り返し単位等のヒドロキシスチレン系繰り返し単位を有することが好ましい。更に好ましくは、ヒドロキシスチレン系繰り返し単位及び酸分解基を有する繰り返し単位を有する樹脂(以下、「ヒドロキシスチレン系酸分解性樹脂」ともいう)である。酸分解基を有する繰り返し単位としては、酸脱離性基で保護されたヒドロキシスチレン系繰り返し単位、酸分解性(メタ)アクリル酸3級アルキルエステル系繰り返し単位が好ましい。
酸脱離性基で保護されたヒドロキシスチレン系繰り返し単位としては、1−アルコキシエトキシスチレン、t−ブチルカルボニルオキシスチレン等による繰り返し単位が好ましい。酸分解性(メタ)アクリル酸3級アルキルエステル系繰り返し単位におけるアルキル基としては、鎖状アルキル基、或いは、単環又は多環の環状アルキル基が挙げられる。酸
分解性(メタ)アクリル酸3級アルキルエステル系繰り返し単位として、好ましくは、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリルレート、2−(1−アダマンチル)−2−プロピル(メタ)アクリルレート、1−アルキル−1−シクロヘキシル(メタ)アクリルレート、1−アルキル−1−シクロペンチル(メタ)アクリルレート等による繰り返し単位が挙げられる。
【0213】
以下、ヒドロキシスチレン系酸分解性樹脂の具体例を示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0214】
【化31】

【0215】
上記具体例において、tBuは、t−ブチル基を表す。
【0216】
酸分解性基の含有率は、ヒドロキシスチレン系酸分解性樹脂中の酸分解性基の数(B)
と酸で脱離する基で保護されていないアルカリ可溶性基の数(S)をもって、B/(B+S)で表される。含有率は、好ましくは0.01〜0.7、より好ましくは0.05〜0.50、更に好ましくは0.05〜0.40である。
【0217】
本発明に用いる酸分解性樹脂は、常法に従って(例えばラジカル重合)合成することができる。例えば、一般的合成方法としては、モノマー種および開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマー種と開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。反応溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド溶剤、さらには後述のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンのような本発明の組成物を溶解する溶媒が挙げられる。より好ましくは本発明のレジスト組成物に用いられる溶剤と同一の溶剤を用いて重合することが好ましい。これにより保存時のパーティクルの発生が抑制できる。
【0218】
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。所望により開始剤を追加、あるいは分割で添加し、反応終了後、溶剤に投入して粉体あるいは固形回収等の方法で所望のポリマーを回収する。反応の濃度は5〜50質量%であり、好ましくは10〜30質量%である。反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、さらに好ましくは60〜100℃である。
精製は、後述の樹脂(D)と同様の方法を用いることができ、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留単量体やオリゴマー成分を除去する液液抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外ろ過等の溶液状態での精製方法や、樹脂溶液を貧溶媒へ滴下することで樹脂を貧溶媒中に凝固させることにより残留単量体等を除去する再沈殿法や、濾別した樹脂スラリーを貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法等の通常の方法を適用できる。
【0219】
本発明に係る樹脂の重量平均分子量は、GPC法によりポリスチレン換算値として、好ましくは1,000〜200,000であり、更に好ましくは1,000〜20,000、最も好ましくは1,000〜15,000である。重量平均分子量を、1,000〜200,000とすることにより、耐熱性やドライエッチング耐性の劣化を防ぐことができ、且つ現像性が劣化したり、粘度が高くなって製膜性が劣化することを防ぐことができる。
分散度(分子量分布)は、通常1〜5であり、好ましくは1〜3、更に好ましくは1.2〜3.0、特に好ましくは1.2〜2.0の範囲のものが使用される。分散度の小さいものほど、解像度、レジスト形状が優れ、且つレジストパターンの側壁がスムーズであり、ラフネス性に優れる。
【0220】
本発明のレジスト組成物において、本発明に係わる全ての樹脂の組成物全体中の配合量は、全固形分中50〜99.9質量%が好ましく、より好ましくは60〜99.0質量%である。
また、本発明において、樹脂は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
【0221】
(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物
本発明のレジスト組成物は活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(「光酸発生剤」又は「(B)成分」ともいう)を含有する。
そのような光酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。
【0222】
たとえば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネートを挙げることができる。
【0223】
また、これらの活性光線又は放射線の照射により酸を発生する基、あるいは化合物をポリマーの主鎖又は側鎖に導入した化合物、たとえば、米国特許第3,849,137号、独国特許第3914407号、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号等に記載の化合物を用いることができる。
【0224】
さらに米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0225】
活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する化合物の内で好ましい化合物として、下記一般式(ZI)、(ZII)、(ZIII)で表される化合物を挙げることができる。
【0226】
【化32】

【0227】
上記一般式(ZI)において、R201、R202及びR203は、各々独立に有機基を表す。
-は、非求核性アニオンを表し、好ましくはスルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、ビス(アルキルスルホニル)アミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン、BF4-、PF6-、SbF6-などが挙げられ、好ましくは炭素原子を含有する有機アニオンである。
【0228】
好ましい有機アニオンとしては下式に示す有機アニオンが挙げられる。
【0229】
【化33】

【0230】
式中、
Rc1は、有機基を表す。
Rc1における有機基として炭素数1〜30のものが挙げられ、好ましくは置換していてもよいアルキル基、アリール基、またはこれらの複数が、単結合、−O−、−CO2−、−S−、−SO3−、−SO2N(Rd1)−などの連結基で連結された基を挙げることができる。Rd1は水素原子、アルキル基を表す。
Rc3、Rc4、Rc5は、各々独立に、有機基を表す。Rc3、Rc4、Rc5の有機基として好ましくはRc1における好ましい有機基と同じものを挙げることができ、最も好ましくは炭素数1〜4のパーフロロアルキル基である。
Rc3とRc4が結合して環を形成していてもよい。Rc3とRc4が結合して形成される基としてはアルキレン基、アリーレン基が挙げられる。好ましくは炭素数2〜4のパーフロロアルキレン基である。
Rc1、Rc3〜Rc5の有機基として特に好ましくは1位がフッ素原子またはフロロアアルキル基で置換されたアルキル基、フッ素原子またはフロロアルキル基で置換されたフェニル基である。フッ素原子またはフロロアルキル基を有することにより、光照射によって発生した酸の酸性度が上がり、感度が向上する。また、Rc3とRc4が結合して環を形成することにより光照射によって発生した酸の酸性度が上がり、感度が向上する。
【0231】
201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。
また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
201、R202及びR203としての有機基の具体例としては、後述する化合物(ZI−1)、(ZI−2)、(ZI−3)における対応する基を挙げることができる。
【0232】
尚、一般式(ZI)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、一般式(ZI)で表される化合物のR201〜R203の少なくともひとつが、一般式(ZI)で表されるもうひとつの化合物のR201〜R203の少なくともひとつと結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0233】
更に好ましい(ZI)成分として、以下に説明する化合物(ZI−1)、(ZI−2)、及び(ZI−3)を挙げることができる。
【0234】
化合物(ZI−1)は、上記一般式(ZI)のR201〜R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニム化合物、即ち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
アリールスルホニウム化合物は、R201〜R203の全てがアリール基でもよいし、R201〜R203の一部がアリール基で、残りがアルキル基、シクロアルキル基でもよい。
アリールスルホニウム化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物、ジアリ
ールシクロアルキルスルホニウム化合物、アリールジシクロアルキルスルホニウム化合物を挙げることができる。
アリールスルホニウム化合物のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基などのアリール基、インドール残基、ピロール残基、などのヘテロアリール基が好ましく、更に好ましくはフェニル基、インドール残基である。アリールスルホニム化合物が2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているアルキル基は、炭素数1〜15の直鎖又は分岐状アルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等を挙げることができる。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているシクロアルキル基は、炭素数3〜15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜14)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、フェニルチオ基を置換基として有してもよい。好ましい置換基としては、炭素数1〜12の直鎖又は分岐状アルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数1〜12の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基であり、特に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基である。置換基は、3つのR201〜R203のうちのいずれか1つに置換していてもよいし、3つ全てに置換していてもよい。また、R201〜R203がアリール基の場合に、置換基はアリール基のp−位に置換していることが好ましい。
【0235】
次に、化合物(ZI−2)について説明する。化合物(ZI−2)は、式(ZI)におけるR201〜R203が、各々独立に、芳香環を含有しない有機基を表す場合の化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含有する芳香族環も包含するものである。
201〜R203としての芳香環を含有しない有機基は、一般的に炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20である。
201〜R203は、各々独立に、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリル基、ビニル基であり、更に好ましくは直鎖、分岐、環状2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、特に好ましくは直鎖、分岐2−オキソアルキル基である。
【0236】
201〜R203としてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)を挙げることができる。R201〜R203としてのアルキル基は、直鎖若しくは分岐状2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基であることが好ましい。
201〜R203としてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。R201〜R203としてのシクロアルキル基は、環状2−オキソアルキル基であることが好ましい。
201〜R203としての直鎖、分岐、環状の2−オキソアルキル基は、好ましくは、上記のアルキル基、シクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
201〜R203としてのアルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基)を挙げることができる。
201〜R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1〜5)、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0237】
化合物(ZI−3)とは、以下の一般式(ZI−3)で表される化合物であり、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
【0238】
【化34】

【0239】
一般式(ZI−3)に於いて、
1c〜R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。
6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
Rx及びRyは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、又はビニル基を表す。
1c〜R7c中のいずれか2つ以上、及びRxとRyは、それぞれ結合して環構造を形成しても良く、この環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合を含んでいてもよい。R1c〜R7c中のいずれか2つ以上、及びRxとRyが結合して形成する基としては、ブチレン基、ペンチレン基等を挙げることができる。
-は、非求核性アニオンを表し、一般式(ZI)に於けるX-の非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
【0240】
1c〜R7cとしてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、例えば、炭素数1〜20個の直鎖又は分岐状アルキル基、好ましくは炭素数1〜12個の直鎖又は分岐状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、直鎖又は分岐プロピル基、直鎖又は分岐ブチル基、直鎖又は分岐ペンチル基)を挙げることができる。
1c〜R7cとしてのシクロアルキル基は、好ましくは炭素数3〜8個のシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)を挙げることができる。
1c〜R5cとしてのアルコキシ基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜10のアルコキシ基、好ましくは、炭素数1〜5の直鎖及び分岐アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、直鎖又は分岐プロポキシ基、直鎖又は分岐ブトキシ基、直鎖又は分岐ペントキシ基)、炭素数3〜8の環状アルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基)を挙げることができる。
好ましくはR1c〜R5cのうちいずれかが直鎖又は分岐状アルキル基、シクロアルキル基又は直鎖、分岐、環状アルコキシ基であり、更に好ましくはR1c〜R5cの炭素数の和が2〜15である。これにより、より溶剤溶解性が向上し、保存時にパーティクルの発生が抑制される。
【0241】
x及びRyとしてのアルキル基は、R1c〜R7cとしてのアルキル基と同様のものを挙げることができる。Rx及びRyとしてのアルキル基は、直鎖又は分岐状2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基であることが好ましい。
x及びRyとしてのシクロアルキル基は、R1c〜R7cとしてのシクロアルキル基と同様のものを挙げることができる。Rx及びRyとしてのシクロアルキル基は、環状2−オキソアルキル基であることが好ましい。
直鎖、分岐、環状2−オキソアルキル基は、R1c〜R7cとしてのアルキル基、シクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
アルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基については、R1c〜R5cとしてのアルコキシ基と同様のものを挙げることができる。
x、Ryは、好ましくは炭素数4個以上のアルキル基であり、より好ましくは6個以上、更に好ましくは8個以上のアルキル基である。
【0242】
一般式(ZII)、(ZIII)中、
204〜R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
204〜R207のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。
204〜R207としてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)を挙げることができる。
204〜R207としてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。
204〜R207は、置換基を有していてもよい。R204〜R207が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜15)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、フェニルチオ基等を挙げることができる。
-は、非求核性アニオンを表し、一般式(ZI)に於けるX-の非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
【0243】
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物の内で好ましい化合物として、更に、下記一般式(ZIV)、(ZV)、(ZVI)で表される化合物を挙げることができる。
【0244】
【化35】

【0245】
一般式(ZIV)〜(ZVI)中、
Ar3及びAr4は、各々独立に、アリール基を表す。
208は、アルキル基又はアリール基を表す。
209及びR210は、各々独立に、アルキル基、アリール基または電子吸引性基を表す。
209は、好ましくはアリール基である。
210は、好ましくは電子吸引性基であり、より好ましくはシアノ基、フロロアルキル基である。
Aは、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を表す。
【0246】
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物として、一般式(ZI)〜(ZIII)で表される化合物が好ましい。
【0247】
化合物(B)は、活性光線または放射線の照射によりフッ素原子を有する脂肪族スルホ
ン酸又はフッ素原子を有するベンゼンスルホン酸を発生する化合物であることが好ましい。
【0248】
化合物(B)は、トリフェニルスルホニウム構造を有することが好ましい。
【0249】
化合物(B)は、カチオン部にフッ素置換されていないアルキル基若しくはシクロアルキル基を有するトリフェニルスルホニウム塩化合物であることが好ましい。
【0250】
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物の中で、特に好ましいものの例を以下に挙げる。
【0251】
【化36】

【0252】
【化37】

【0253】
【化38】

【0254】
【化39】

【0255】
【化40】

【0256】
【化41】

【0257】
光酸発生剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。2種以上を組み合わせて使用する際には、水素原子を除く全原子数が2以上異なる2種の有機酸を発生する化合物を組み合わせることが好ましい。
光酸発生剤の含量は、レジスト組成物の全固形分を基準として、0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは、0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜10質量%、特に好ましくは2〜10質量%である。
光酸発生剤の含量をこの範囲とすることで、レジストパターンを形成したときの露光ラチチュードの向上や架橋層形成材料との架橋反応性が向上する。
【0258】
(C)溶剤
前記各成分を溶解させてレジスト組成物を調製する際に使用することができる溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、炭素数4〜10の環状ラクトン、炭素数4〜10の、環を含有しても良いモノケトン化合物、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、ピルビン酸アルキル等の有機溶剤を挙げることができる。
【0259】
アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが好ましく挙げられる。
アルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルを好ましく挙げられる。
【0260】
乳酸アルキルエステルとしては、例えば、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチルを好ましく挙げられる。
アルコキシプロピオン酸アルキルとしては、例えば、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチルを好ましく挙げられる。
【0261】
炭素数4〜10の環状ラクトンとしては、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−オクタノイックラクトン、α−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンが好ましく挙げられる。
【0262】
炭素数4〜10の、環を含有しても良いモノケトン化合物としては、例えば、2−ブタノン、3−メチルブタノン、ピナコロン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、3−メチル−2−ペンタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−メチル−3−ペンタノン、4,4−ジメチル−2−ペンタノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、2,2,4,4−テトラメチル−3−ペンタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、5−メチル−3−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−メチル−3−ヘプタノン、5−メチル−3−ヘプタノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、3−ノナノン、5−ノナノン、2−デカノン、3−デカノン、、4−デカノン、5−ヘキセン−2−オン、3−ペンテン−2−オン、シクロペンタノン、2−メチルシクロペンタノン、3−メチルシクロペンタノン、2,2−ジメチルシクロペンタノン、2,4,4−トリメチルシクロペンタノン、シクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、4−メチルシクロヘキサノン、4−エチルシクロヘキサノン、2,2−ジメチルシクロヘキサノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン、2,2,6−トリメチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、2−メチルシクロヘプタノン、3−メチルシクロヘプタノンが好ましく挙げられる。
【0263】
アルキレンカーボネートとしては、例えば、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネートが好ましく挙げられる。
アルコキシ酢酸アルキルとしては、例えば、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル、酢酸−2−(2−エトキシエトキシ)エチル、酢酸−3−メトキシ−3−メチルブチル、酢酸−1−メトキシ−2−プロピルが好ましく挙げられる。
ピルビン酸アルキルとしては、例えば、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピルが好ましく挙げられる。
好ましく使用できる溶剤としては、常温常圧下で、沸点130℃以上の溶剤が挙げられる。具体的には、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、乳酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸−2−エトキシエチル、酢酸−2−(2−エトキシエトキシ)エチル、プロピレンカーボネートが挙げられる。
本発明に於いては、上記溶剤を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0264】
本発明においては、有機溶剤として構造中にヒドロキシル基を含有する溶剤と、ヒドロキシル基を含有しない溶剤とを混合した混合溶剤を使用してもよい。
ヒドロキシル基を含有する溶剤としては、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、乳酸エチル等を挙げることができ、これらの内でプロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルが特に好ましい。
ヒドロキシル基を含有しない溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等を挙げることができ、これらの内で、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチルが特に好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノンが最も好ましい。
ヒドロキシル基を含有する溶剤とヒドロキシル基を含有しない溶剤との混合比(質量)は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/8
0〜60/40である。ヒドロキシル基を含有しない溶剤を50質量%以上含有する混合溶剤が塗布均一性の点で特に好ましい。
【0265】
溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する2種類以上の混合溶剤であることが好ましい。
【0266】
(D)フッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを有する樹脂
本発明のレジスト組成物は、フッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを有する樹脂(D)を含有することが好ましい。
樹脂(D)は非酸分解性の樹脂である。即ち、樹脂(A)と比較して酸分解性が極めて低く、実質的に非酸分解性と同等とみなせる樹脂である。
樹脂(D)におけるフッ素原子または珪素原子は、樹脂の主鎖中に有していても、側鎖に置換していてもよい。
【0267】
樹脂(D)は、フッ素原子を有する部分構造として、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、または、フッ素原子を有するアリール基を有する樹脂であることが好ましい。
フッ素原子を有するアルキル基(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜4)は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖又は分岐アルキル基であり、さらに他の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するシクロアルキル基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された単環または多環のシクロアルキル基であり、さらに他の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などのアリール基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたものが挙げられ、さらに他の置換基を有していてもよい。
【0268】
フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、または、フッ素原子を有するアリール基の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0269】
【化42】

【0270】
一般式(F2)〜(F4)中、
57〜R68は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はアルキル基を表す。但し、R57〜R61、R62〜R64およびR65〜R68の内、少なくとも1つは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)を表す。R57〜R61及びR65〜R67は、全てがフッ素原子であることが好ましい。R62、R63及びR68は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)が好ましく、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基であることがさらに好ましい。R62とR63は、互いに連結して環を形成してもよい。
【0271】
一般式(F2)で表される基の具体例としては、例えば、p−フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル基等が挙げられる。
一般式(F3)で表される基の具体例としては、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロプロピル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロブチル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ(2−メチル)イソプロピル基、ノナフルオロブチル基、オクタフルオロイソブチル基、ノナフルオロヘキシル基、ノナフルオロ−t−ブチル基、パーフルオロイソペンチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロ(トリメチル)ヘキシル基、2,2,3,3-テトラフルオロシクロブチル基、パーフルオロシクロヘキシル基などが挙げられる。ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ(2−メチル)イソプロピル基、オクタフルオロイソブチル基、ノナフルオロ−t−ブチル基、パーフルオロイソペンチル基が好ましく、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基が更に好ましい。
一般式(F4)で表される基の具体例としては、例えば、−C(CF32OH、−C(C252OH、−C(CF3)(CH3)OH、−CH(CF3)OH等が挙げられ、−C(CF32OHが好ましい。
【0272】
樹脂(D)は、珪素原子を有する部分構造として、アルキルシリル構造(好ましくはトリアルキルシリル基)、または環状シロキサン構造を有する樹脂であることが好ましい。
アルキルシリル構造、または環状シロキサン構造としては、具体的には、下記一般式(CS−1)〜(CS−3)で表される基などが挙げられる。
【0273】
【化43】

【0274】
一般式(CS−1)〜(CS−3)に於いて、
12〜R26は、各々独立に、直鎖もしくは分岐アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)またはシクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)を表す。
3〜L5は、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、アルキレン基、フェニル基、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、またはウレア基よりなる群から選択される単独あるいは2つ以上の基の組み合わ
せを挙げられる。
nは1〜5の整数を表す。
【0275】
樹脂(D)として、下記一般式(C−I)〜(C−V)で示される繰り返し単位の群から選択される少なくとも1種を有する樹脂が好ましい。
【0276】
【化44】

【0277】
一般式(C−I)〜(C−V)中、
1〜R3は、各々独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基、または炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のフッ素化アルキル基を表す。
1〜W2は、フッ素原子および珪素原子の少なくともいずれかを有する有機基を表す。
4〜R7は、各々独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基、または炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のフッ素化アルキル基を表す。ただし、R4〜R7の少なくとも1つはフッ素原子を表す。R4とR5もしくはR6とR7は環を形成していてもよい。
8は、水素原子、または炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基を表す。
9は、炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基、または炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のフッ素化アルキル基を表す。
1〜L2は、単結合又は2価の連結基を表し、上記L3〜L5と同様のものである。
Qは、単環または多環の環状脂肪族基を表す。すなわち、結合した2つの炭素原子(C−C)を含み、脂環式構造を形成するための原子団を表す。
30及びR31は、各々独立に、水素又はフッ素原子を表す。
32及びR33は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、フッ素化アルキル基又はフッ素化シクロアルキル基を表す。
但し、一般式(C−V)で表される繰り返し単位は、R30、R31、R32及びR33の内の少なくとも1つに、少なくとも1つのフッ素原子を有する。
【0278】
樹脂(D)は、一般式(C−I)で表される繰り返し単位を有することが好ましく、下記一般式(C−Ia)〜(C−Id)で表される繰り返し単位を有することがさらに好ましい。
【0279】
【化45】

【0280】
一般式(C−Ia)〜(C−Id)に於いて、
10及びR11は、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基、または炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のフッ素化アルキル基を表す。
3〜W6は、フッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを1つ以上有する有機基を表す。
【0281】
1〜W6が、フッ素原子を有する有機基であるとき、炭素数1〜20のフッ素化された、直鎖、分岐アルキル基もしくはシクロアルキル基、または、炭素数1〜20のフッ素化された直鎖、分岐、または環状のアルキルエーテル基であることが好ましい。
【0282】
1〜W6のフッ素化アルキル基としては、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ(2−メチル)イソプロピル基、ヘプタフルオロブチル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、オクタフルオロイソブチル基、ノナフルオロヘキシル基、ノナフルオロ−t−ブチル基、パーフルオロイソペンチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロ(トリメチル)ヘキシル基などが挙げられる。
【0283】
1〜W6が、珪素原子を有する有機基であるとき、アルキルシリル構造、または環状シロキサン構造であることが好ましい。具体的には、前記一般式(CS−1)〜(CS−3)で表される基などが挙げられる。
【0284】
以下、一般式(C−I)で表される繰り返し単位の具体例を示す。Xは、水素原子、−CH3、−F、又は、−CF3を表す。
【0285】
【化46】

【0286】
【化47】

【0287】
【化48】

【0288】
【化49】

【0289】
【化50】

【0290】
【化51】

【0291】
樹脂(D)は、下記の(D−1)〜(D−6)から選ばれるいずれかの樹脂であることが好ましい。
(D−1)フルオロアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)を有する繰り返し単位(a)を有する樹脂、より好ましくは繰り返し単位(a)のみを有する樹脂。
(D−2)トリアルキルシリル基又は環状シロキサン構造を有する繰り返し単位(b)を有する樹脂、より好ましくは繰り返し単位(b)のみを有する樹脂。
(D−3)フルオロアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)を有する繰り返し単位(a)と、分岐状のアルキル基(好ましくは炭素数4〜20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数4〜20)、分岐状のアルケニル基(好ましくは炭素数4〜20)、シクロアルケニル基(好ましくは炭素数4〜20)又はアリール基(好ましくは炭素数4〜20)を有する繰り返し単位(c)とを有する樹脂、より好ましくは繰り返し単位(a)及び繰り返し単位(c)の共重合樹脂。
(D−4)トリアルキルシリル基又は環状シロキサン構造を有する繰り返し単位(b)と、分岐状のアルキル基(好ましくは炭素数4〜20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数4〜20)、分岐状のアルケニル基(好ましくは炭素数4〜20)、シクロアルケニル基(好ましくは炭素数4〜20)又はアリール基(好ましくは炭素数4〜20)を有する繰り返し単位(c)とを有する樹脂、より好ましくは繰り返し単位(b)及び繰り返し単位(c)の共重合樹脂。
(D−5)フルオロアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)を有する繰り返し単位(a)と、トリアルキルシリル基又は環状シロキサン構造を有する繰り返し単位(b)とを有する樹脂、より好ましくは繰り返し単位(a)及び繰り返し単位(b)の共重合樹脂。
(D−6)フルオロアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)を有する繰り返し単位(a)と、トリアルキルシリル基又は環状シロキサン構造を有する繰り返し単位(b)と、分岐状のアルキル基(好ましくは炭素数4〜20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数4〜20)、分岐状のアルケニル基(好ましくは炭素数4〜20)、シクロアルケニル基(好ましくは炭素数4〜20)又はアリール基(好ましくは炭素数4〜20)を有する繰り返し単位(c)とを有する樹脂、より好ましくは繰り返し単位(a)、繰り返し単位(b)及び繰り返し単位(c)の共重合樹脂。
樹脂(D−3)、(D−4)、(D−6)における、分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、分岐状のアルケニル基、シクロアルケニル基、またはアリール基を有する繰り返し単位(c)としては、親疎水性、相互作用性などを考慮し、適当な官能基を導入することができるが、液浸液追随性、後退接触角の観点から、極性基を有さない官能基である方が好ましい。
樹脂(D−3)、(D−4)、(D−6)において、フルオロアルキル基を有する繰り返し単位(a)および/またはトリアルキルシリル基、または環状シロキサン構造を有する繰り返し単位(b)は、20〜99モル%であることが好ましい。
【0292】
樹脂(D)は、下記一般式(Ia)で表される繰り返し単位を有する樹脂であることが
好ましい。
【0293】
【化52】

【0294】
一般式(Ia)に於いて、
Rfは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
1は、アルキル基を表す。
2は、水素原子又はアルキル基を表す。
【0295】
一般式(Ia)に於ける、Rfの少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基は、炭素数1〜3であることが好ましく、トリフルオロメチル基がより好ましい。
1のアルキル基は、炭素数3〜10の直鎖若しくは分岐状のアルキル基が好ましく、炭素数3〜10の分岐状のアルキル基がより好ましい。
2は、炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐状のアルキル基が好ましく、炭素数3〜10の直鎖若しくは分岐状のアルキル基がより好ましい。
【0296】
以下、一般式(Ia)で表される繰り返し単位の具体例を挙げるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0297】
【化53】

【0298】
一般式(Ia)で表される繰り返し単位は、下記一般式(I)で表される化合物を重合させることにより形成させることができる。
【0299】
【化54】

【0300】
一般式(I)に於いて、
Rfは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
1は、アルキル基を表す。
2は、水素原子又はアルキル基を表す。
【0301】
一般式(I)に於ける、Rf、R1及びR2は、一般式(Ia)に於ける、Rf、R1及びR2と同義である。
一般式(I)で表される化合物は、新規化合物である。
一般式(I)で表される化合物は、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。合成する場合は、2−トリフルオロメチルメタクリル酸を酸クロリド化後、エステル化することにより得ることができる。
【0302】
一般式(Ia)で表される繰り返し単位を有する樹脂(D)は、更に、下記一般式(III)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0303】
【化55】

【0304】
一般式(III)に於いて、
4は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、トリアルキルシリル基又は環状シロキサン構造を有する基を表す。
6は、単結合又は2価の連結基を表す。
【0305】
一般式(III)に於ける、R4のアルキル基は、炭素数3〜20の直鎖若しくは分岐状アルキル基が好ましい。
シクロアルキル基は、炭素数3〜20のシクロアルキル基が好ましい。
アルケニル基は、炭素数3〜20のアルケニル基が好ましい。
シクロアルケニル基は、炭素数3〜20のシクロアルケニル基が好ましい。
トリアルキルシリル基は、炭素数3〜20のトリアルキルシリル基が好ましい。
環状シロキサン構造を有する基は、炭素数3〜20の環状シロキサン構造を有する基が好ましい。
6の2価の連結基は、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜5)、オキシ基が好ましい。
【0306】
以下、一般式(Ia)で表される繰り返し単位を有する樹脂(D)の具体例を挙げるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0307】
【化56】

【0308】
【化57】

【0309】
樹脂(D)は、下記一般式(II)で表される繰り返し単位及び下記一般式(III)で表される繰り返し単位を有する樹脂であることが好ましい。
【0310】
【化58】

【0311】
一般式(II)及び(III)に於いて、
Rfは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
3は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基若しくはシクロアルケニル基又はこれらの2つ以上が結合して形成される基を表す。
4は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、トリアルキルシリル基若しくは環状シロキサン構造を有する基又はこれらの2つ以上が結合して形成される基を表す。
3及びR4のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、トリアルキルシリル基は、官能基を導入することができるが、液浸液追随性の観点から、極性基を有さない官能基である方が好ましく、無置換であることがより好ましい。
6は、単結合又は2価の連結基を表す。
0<m<100。
0<n<100。
【0312】
一般式(II)に於ける、Rfは、一般式(Ia)に於ける、Rfと同様のものである。
3のアルキル基は、炭素数3〜20の直鎖若しくは分岐状アルキル基が好ましい。
シクロアルキル基は、炭素数3〜20のシクロアルキル基が好ましい。
アルケニル基は、炭素数3〜20のアルケニル基が好ましい。
シクロアルケニル基は、炭素数3〜20のシクロアルケニル基が好ましい。
6は、単結合、メチレン基、エチレン基、エーテル基が好ましい。
m=30〜70、n=30〜70であることが好ましく、m=40〜60、n=40〜60であることがより好ましい。
【0313】
以下、一般式(II)で表される繰り返し単位及び一般式(III)で表される繰り返し単位を有する樹脂(D)の具体例を挙げるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0314】
【化59】

【0315】
【化60】

【0316】
樹脂(D)は、下記一般式(VIII)で表される繰り返し単位を有してもよい。
【0317】
【化61】

【0318】
一般式(VIII)に於いて、
2は、−O−又は−N(R41)−を表す。R41は、水素原子、アルキル基、又は−OSO2−R42を表す。R42は、アルキル基、シクロアルキル基又は樟脳残基を表す。R41及びR42のアルキル基は、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)等で置換されていてもよい。
【0319】
樹脂(D)は、常温(25℃)において、固体あることが好ましい。さらに、ガラス転移温度(Tg)が50〜200℃であることが好ましく、80〜160℃がより好ましい。
【0320】
25℃において固体であるとは、融点が25℃以上であることをいう。
ガラス転移温度(Tg)は、走査カロリメトリー(Differential Scanning Calorimeter)により測定することができ、例えば、試料を一度昇温、冷却後、再度5℃/分にて昇温したときの比容積が変化した値を解析することにより測定することができる。
【0321】
樹脂(D)は、(x)アルカリ可溶性基、(y)アルカリ(アルカリ現像液)の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基及び(z)酸の作用により分解し、現像液に対する溶解度が増大する基を有していてもよい。
樹脂(D)中のアルカリ可溶性基又は酸やアルカリの作用により現像液に対する溶解度が増大する基を有する繰り返し単位の総量は、好ましくは、樹脂(D)を構成する全繰り返し単位に対して、50モル%以下、より好ましくは0〜35モル%、更により好ましくは0〜20モル%である。
また、樹脂(D)は、一般にレジストで使用される界面活性剤とは異なり、イオン結合や(ポリ(オキシアルキレン))基等の親水基を有さない。
【0322】
(x)アルカリ可溶性基としては、たとえば、フェノール性ヒドロキシル基、カルボン酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基を有する基等が挙げられる。
【0323】
(y)アルカリ(アルカリ現像液)の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基としては、例えば、ラクトン基、エステル基、スルホンアミド基、酸無水物、酸イミド基などが挙げられる。
【0324】
(z)酸の作用により分解し、現像液に対する溶解度が増大する基としては、酸分解性樹脂(A)における酸分解性基と同様の基が挙げられる。
【0325】
樹脂(D)が珪素原子を有する場合、珪素原子の含有量は、樹脂(D)の分子量に対し、2〜50質量%であることが好ましく、2〜30質量%であることがより好ましい。また、珪素原子を含む繰り返し単位が、樹脂(D)中10〜100質量%であることが好ましく、20〜100質量%であることがより好ましい。
【0326】
樹脂(D)がフッ素原子を有する場合、フッ素原子の含有量は、樹脂(D)の分子量に対し、5〜80質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることがより好ましい。また、フッ素原子を含む繰り返し単位が、樹脂(D)中10〜100質量%であることが好ましく、30〜100質量%であることがより好ましい。
【0327】
樹脂(D)の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜100,000で、より好ましくは1,000〜50,000、更により好ましくは2,000〜15,000、特に好ましくは3,000〜15,000である。
【0328】
樹脂(D)は、残存モノマー量が0〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0〜5質量%、0〜1質量%が更により好ましい。また、解像度、レジスト形状、レジストパターンの側壁、ラフネスなどの点から、分子量分布(Mw/Mn、分散度ともいう)は、1〜5が好ましく、より好ましくは1〜3、更により好ましくは1〜1.5の範囲である。
【0329】
レジスト組成物中の樹脂(D)の添加量は、レジスト組成物の全固形分を基準として、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましい。さらには、0.1〜5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜3.0質量%であり、さらに好ましくは0.3〜2.0質量%である。
【0330】
樹脂(D)は、酸分解性樹脂(A)同様、金属等の不純物が少ないのは当然のことながら、残留単量体やオリゴマー成分が既定値以下、例えばHPLCで0.1質量%等であることが好ましく、それによりレジストとしての感度、解像度、プロセス安定性、パターン形状等をさらに改善することができるだけでなく、液中異物や感度等の経時変化のないレジストが得られる。
【0331】
樹脂(D)は、各種市販品を利用することもできるし、常法に従って(例えばラジカル重合)合成することができる。例えば、一般的合成方法としては、モノマー種および開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマー種と開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。反応溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド溶剤、さらには後述のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンのような本発明の組成物を溶解する溶媒が挙げられる。より好ましくは本発明のレジスト組成物に用いられる溶剤と同一の溶剤を用いて重合することが好ましい。これにより保存時のパーティクルの発生が抑制できる。
【0332】
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。必要に応じて連鎖移動剤を使用することもできる。反応の濃度は、通常5〜50質量%であり、好ましくは20〜50質量%、より好ましくは30〜50質量%である。反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、さらに好ましくは60〜100℃である。
【0333】
反応終了後、室温まで放冷し、精製する。精製は、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留単量体やオリゴマー成分を除去する液々抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外ろ過等の溶液状態での精製方法や、樹脂溶液を貧溶媒へ滴下することで樹脂を貧溶媒中に凝固させることにより残留単量体等を除去する再沈澱法やろ別した樹脂スラリーを貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法等の通常の方法を適用できる。たとえば、上記樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒(貧溶媒)を、該反応溶液の10倍以下の体積量、好ましくは10〜5倍の体積量で、接触させることにより樹脂を固体として析出させる。
【0334】
ポリマー溶液からの沈殿又は再沈殿操作の際に用いる溶媒(沈殿又は再沈殿溶媒)としては、該ポリマーの貧溶媒であればよく、ポリマーの種類に応じて、例えば、炭化水素(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素)、ハロゲン化炭化水素(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素など)、ニトロ化合物(ニトロメタン、ニトロエタンなど)、ニトリル(アセトニトリ
ル、ベンゾニトリルなど)、エーテル(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタンなどの鎖状エーテル;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトンなど)、エステル(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、カーボネート(ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなど)、カルボン酸(酢酸など)、水、これらの溶媒を含む混合溶媒等の中から適宜選択して使用できる。これらの中でも、沈殿又は再沈殿溶媒として、少なくともアルコール(特に、メタノールなど)または水を含む溶媒が好ましい。このような少なくとも炭化水素を含む溶媒において、アルコール(特に、メタノールなど)と他の溶媒(例えば、酢酸エチルなどのエステル、テトラヒドロフランなどのエーテル類等)との比率は、例えば前者/後者(体積比;25℃)=10/90〜99/1、好ましくは前者/後者(体積比;25℃)=30/70〜98/2、さらに好ましくは前者/後者(体積比;25℃)=50/50〜97/3程度である。
【0335】
沈殿又は再沈殿溶媒の使用量は、効率や収率等を考慮して適宜選択できるが、一般には、ポリマー溶液100質量部に対して、100〜10000質量部、好ましくは200〜2000質量部、さらに好ましくは300〜1000質量部である。
【0336】
ポリマー溶液を沈殿又は再沈殿溶媒(貧溶媒)中に供給する際のノズルの口径は、好ましくは4mmφ以下(例えば0.2〜4mmφ)である。また、ポリマー溶液の貧溶媒中への供給速度(滴下速度)は、線速度として、例えば0.1〜10m/秒、好ましくは0.3〜5m/秒程度である。
【0337】
沈殿又は再沈殿操作は攪拌下で行うのが好ましい。攪拌に用いる攪拌翼として、例えば、デスクタービン、ファンタービン(パドルを含む)、湾曲羽根タービン、矢羽根タービン、ファウドラー型、ブルマージン型、角度付き羽根ファンタービン、プロペラ、多段型、アンカー型(又は馬蹄型)、ゲート型、二重リボン、スクリューなどを使用できる。攪拌は、ポリマー溶液の供給終了後も、さらに10分以上、特に20分以上行うのが好ましい。攪拌時間が少ない場合には、ポリマー粒子中のモノマー含有量を充分低減できない場合が生じる。また、攪拌翼の代わりにラインミキサーを用いてポリマー溶液と貧溶媒とを混合攪拌することもできる。
【0338】
沈殿又は再沈殿する際の温度としては、効率や操作性を考慮して適宜選択できるが、通常0〜50℃程度、好ましくは室温付近(例えば20〜35℃程度)である。沈殿又は再沈殿操作は、攪拌槽などの慣用の混合容器を用い、バッチ式、連続式等の公知の方法により行うことができる。
【0339】
沈殿又は再沈殿した粒子状ポリマーは、通常、濾過、遠心分離等の慣用の固液分離に付し、乾燥して使用に供される。濾過は、耐溶剤性の濾材を用い、好ましくは加圧下で行われる。乾燥は、常圧又は減圧下(好ましくは減圧下)、30〜100℃程度、好ましくは30〜50℃程度の温度で行われる。
【0340】
尚、一度、樹脂を析出させて、分離した後に、再び溶媒に溶解させ、該樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒と接触させてもよい。
即ち、上記ラジカル重合反応終了後、該ポリマーが難溶あるいは不溶の溶媒を接触させ、樹脂を析出させ(工程a)、樹脂を溶液から分離し(工程b)、改めて溶媒に溶解させ樹脂溶液Aを調製(工程c)、その後、該樹脂溶液Aに、該樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒を、樹脂溶液Aの10倍未満の体積量(好ましくは5倍以下の体積量)で、接触させることにより樹脂固体を析出させ(工程d)、析出した樹脂を分離する(工程e)ことを含
む方法でもよい。
樹脂溶液Aの調製に際し使用する溶媒は、重合反応に際しモノマーを溶解させる溶媒と同様の溶媒を使用することができ、重合反応に際し使用した溶媒と同一であっても異なっていてもよい。
【0341】
(E)塩基性化合物
本発明のレジスト組成物は、露光から加熱までの経時による性能変化を低減するために、(E)塩基性化合物を含有することが好ましい。
塩基性化合物としては、好ましくは、下記式(A)〜(E)で示される構造を有する化合物を挙げることができる。
【0342】
【化62】

【0343】
一般式(A)〜(E)中、
200 、R201及びR202 は、同一でも異なってもよく、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(炭素数6〜20)を表し、ここで、R201とR202は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0344】
上記アルキル基について、置換基を有するアルキル基としては、炭素数1〜20のアミノアルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基、または炭素数1〜20のシアノアルキル基が好ましい。
203 、R204、R205及びR206は、同一でも異なってもよく、炭素数1〜20個のアルキル基を表す。
これら一般式(A)〜(E)中のアルキル基は、無置換であることがより好ましい。
【0345】
好ましい化合物として、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、ピペリジン等を挙げることができ、更に好ましい化合物として、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造又はピリジン構造を有する化合物、ヒドロキシル基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、ヒドロキシル基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体等を挙げることができる。
【0346】
イミダゾール構造を有する化合物としてはイミダゾール、2、4、5−トリフェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール等が挙げられる。ジアザビシクロ構造を有する化合物としては1、4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1、5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン、1、8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカー7−エン等が挙げられる。オニウムヒドロキシド構造を有する化合物としてはトリアリールスルホニウムヒドロキシド、フェナシルスルホニウムヒドロキシド、2−オキソアルキル基を有するスルホニウムヒドロキシド、具体的にはトリフェニルスルホニウムヒドロキシド、トリス(t−ブチルフェニル)スルホニウムヒドロキシド、ビス(t−ブチルフェニル)ヨードニウムヒドロキシド、フェナシルチオフェニウムヒドロキシド、2−オキソプロピルチ
オフェニウムヒドロキシド等が挙げられる。オニウムカルボキシレート構造を有する化合物としてはオニウムヒドロキシド構造を有する化合物のアニオン部がカルボキシレートになったものであり、例えばアセテート、アダマンタンー1−カルボキシレート、パーフロロアルキルカルボキシレート等が挙げられる。トリアルキルアミン構造を有する化合物としては、トリ(n−ブチル)アミン、トリ(n−オクチル)アミン等を挙げることができる。アニリン化合物としては、2,6−ジイソプロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリン等を挙げることができる。ヒドロキシル基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリス(メトキシエトキシエチル)アミン等を挙げることができる。ヒドロキシル基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体としては、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン等を挙げることができる。
これらの塩基性化合物は、単独であるいは2種以上一緒に用いられる。
【0347】
塩基性化合物の使用量は、レジスト組成物の固形分を基準として、通常、0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。
【0348】
酸発生剤と塩基性化合物の組成物中の使用割合は、酸発生剤/塩基性化合物(モル比)=2.5〜300であることが好ましい。即ち、感度、解像度の点からモル比が2.5以上が好ましく、露光後加熱処理までの経時でのレジストパターンの太りによる解像度の低下抑制の点から300以下が好ましい。酸発生剤/塩基性化合物(モル比)は、より好ましくは5.0〜200、更に好ましくは7.0〜150である。
【0349】
(F)界面活性剤
本発明のレジスト組成物は、更に(F)界面活性剤を含有することが好ましく、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素原子と珪素原子の両方を有する界面活性剤)のいずれか、あるいは2種以上を含有することがより好ましい。
【0350】
本発明のレジスト組成物が(F)界面活性剤を含有することにより、250nm以下、特に220nm以下の露光光源の使用時に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥の少ないレジストパターンを与えることが可能となる。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤としては、例えば特開昭62−36663号公報、特開昭61−226746号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭62−170950号公報、特開昭63−34540号公報、特開平7−230165号公報、特開平8−62834号公報、特開平9−54432号公報、特開平9−5988号公報、特開2002−277862号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、下記市販の界面活性剤をそのまま用いることもできる。
使用できる市販の界面活性剤として、例えばエフトップEF301、EF303、(新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431、4430(住友スリーエム(株)製)、メガファックF171、F173、F176、F189、F113、F110、F177、F120、R08(大日本インキ化学工業(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106(旭硝子(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)、GF−300、GF−150(東亜合成化学(株)製)、サーフロンS−393(セイミケミカル(株)製)、エフトップEF121、EF122A、EF122B、RF122C、EF125M、EF135M、EF351、352、EF801、EF802、EF601((株)ジェムコ製)、PF636、PF65
6、PF6320、PF6520(OMNOVA社製)、FTX−204D、208G、218G、230G、204D、208D、212D、218、222D((株)ネオス製)等のフッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を挙げることができる。またポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0351】
また、界面活性剤としては、上記に示すような公知のものの他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)もしくはオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を有する重合体を用いた界面活性剤を用いることが出来る。フルオロ脂肪族化合物は、特開2002−90991号公報に記載された方法によって合成することが出来る。
フルオロ脂肪族基を有する重合体としては、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート及び/又は(ポリ(オキシアルキレン))メタクリレートとの共重合体が好ましく、不規則に分布しているものでも、ブロック共重合していてもよい。また、ポリ(オキシアルキレン)基としては、ポリ(オキシエチレン)基、ポリ(オキシプロピレン)基、ポリ(オキシブチレン)基などが挙げられ、また、ポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとオキシエチレンとのブロック連結体)やポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック連結体)など同じ鎖長内に異なる鎖長のアルキレンを有するようなユニットでもよい。さらに、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体は2元共重合体ばかりでなく、異なる2種以上のフルオロ脂肪族基を有するモノマーや、異なる2種以上の(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)などを同時に共重合した3元系以上の共重合体でもよい。
【0352】
例えば、市販の界面活性剤として、メガファックF178、F−470、F−473、F−475、F−476、F−472(大日本インキ化学工業(株)製)を挙げることができる。さらに、C613基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C37基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体などを挙げることができる。
【0353】
また、本発明では、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤を使用することもできる。具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテ−ト、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤等を挙げることができる。
【0354】
これらの界面活性剤は単独で使用してもよいし、また、いくつかの組み合わせで使用してもよい。
【0355】
(F)界面活性剤の使用量は、レジスト組成物全量(溶剤を除く)に対して、好ましく
は0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0356】
(G)カルボン酸オニウム塩
本発明におけるレジスト組成物は、(G)カルボン酸オニウム塩を含有しても良い。カルボン酸オニウム塩としては、カルボン酸スルホニウム塩、カルボン酸ヨードニウム塩、カルボン酸アンモニウム塩などを挙げることができる。特に、(G)カルボン酸オニウム塩としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩が好ましい。更に、本発明の(H)カルボン酸オニウム塩のカルボキシレート残基が芳香族基、炭素−炭素2重結合を含有しないことが好ましい。特に好ましいアニオン部としては、炭素数1〜30の直鎖、分岐、単環または多環環状アルキルカルボン酸アニオンが好ましい。さらに好ましくはこれらのアルキル基の一部または全てがフッ素置換されたカルボン酸のアニオンが好ましい。アルキル鎖中に酸素原子を含んでいても良い。これにより220nm以下の光に対する透明性が確保され、感度、解像力が向上し、疎密依存性、露光マージンが改良される。
【0357】
フッ素置換されたカルボン酸のアニオンとしては、フロロ酢酸、ジフロロ酢酸、トリフロロ酢酸、ペンタフロロプロピオン酸、ヘプタフロロ酪酸、ノナフロロペンタン酸、パーフロロドデカン酸、パーフロロトリデカン酸、パーフロロシクロヘキサンカルボン酸、2,2−ビストリフロロメチルプロピオン酸のアニオン等が挙げられる。
【0358】
これらの(G)カルボン酸オニウム塩は、スルホニウムヒドロキシド、ヨードニウムヒドロキシド、アンモニウムヒドロキシドとカルボン酸を適当な溶剤中酸化銀と反応させることによって合成できる。
【0359】
(G)カルボン酸オニウム塩の組成物中の含量は、組成物の全固形分に対し、一般的には0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%である。
【0360】
(H)その他の添加剤
本発明のレジスト組成物には、必要に応じてさらに染料、加熱により酸を発生する化合物、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、アルカリ可溶性樹脂、溶解阻止剤及び現像液に対する溶解性を促進させる化合物(例えば、分子量1000以下のフェノール化合物、カルボキシル基を有する脂環族、又は脂肪族化合物)等を含有させることができる。
【0361】
加熱により酸を発生する化合物としては、この分野において公知の種々の化合物を使用することができる。例えば、スルホニウム塩型化合物、アニリニウム塩型化合物、ピリジニウム塩型化合物、ホスホニウム塩型化合物、ヨードニウム塩型化合物などの既知化合物が挙げられる。 これらのオニウム塩型化合物の対アニオンとしては、SbF6-、BF4-、AsF6-、 PF6-、トルエンスルホネート、トリフレートなどを挙げることができる。
酸を発生する温度としては、好ましくは、200℃以下であり、さらに好ましくは170℃以下である。
【0362】
前記分子量1000以下のフェノール化合物は、例えば、特開平4−122938号、特開平2−28531号、米国特許第4,916,210、欧州特許第219294等に記載の方法を参考にして、当業者において容易に合成することができる。
カルボキシル基を有する脂環族、又は脂肪族化合物の具体例としてはコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸などのステロイド構造を有するカルボン酸誘導体、アダマンタンカルボン酸誘導体、アダマンタンジカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0363】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0364】
合成例1(樹脂(A1)の合成)
窒素気流下、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルの6/4(質量比)の混合溶剤20gを3つ口フラスコに入れ、これを80℃に加熱した(溶剤1)。γ−ブチロラクトンメタクリレート、ヒドロキシアダマンタンメタクリレート、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレートをモル比40/30/30の割合でプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルの6/4(質量比)の混合溶剤に溶解し、22質量%のモノマー溶液(200g)を調製した。更に、開始剤V−601(和光純薬工業製)をモノマーに対し8mol%を加え、溶解させた溶液を、上記溶剤1に対して6時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに80℃で2時間反応させた。反応液を放冷後ヘキサン1800ml/酢酸エチル200mlに注ぎ、析出した紛体をろ取、乾燥すると、樹脂(A1)が37g得られた。得られた樹脂(A1)の重量平均分子量は、9500、分散度(Mw/Mn)は、1.80であった。
【0365】
【化63】

【0366】
レジスト組成物(A1)の調製
下記に示す成分をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/プロピレングリコールモノメチルエーテル(60:40)の混合溶剤に溶解させ得た固形分濃度5.8質量%の溶液をポアサイズ0.05μmのポリエチレンフィルターで濾過してレジスト組成物(A1)を調製した。
(樹脂A1)1.83g、
トリフェニルスルホニウムノナフレート69.6mg、
2,6−ジイソプロピルアニリン(塩基性化合物)8.7mg、
PF6320(OMNOVA社製、フッ素系界面活性剤)1.7mg。
【0367】
レジスト組成物(A2)の調製
樹脂(A1)の代わりに、下記樹脂(A2)を調合し、レジスト組成物(A2)を調製した。
【0368】
【化64】

【0369】
レジスト組成物(A3)の調製
樹脂(A1)の代わりに、下記樹脂(A3)を調合し、レジスト組成物(A3)を調製した。
【0370】
【化65】

【0371】
レジスト組成物(A4)の調製
下記に示す成分をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/プロピレングリコールモノメチルエーテル(60:40)の混合溶剤に溶解させ得た固形分濃度4.0質量%の溶液をポアサイズ0.05μmのポリエチレンフィルターで濾過してレジスト組成物(A4)を調製した。
レジスト組成物(A4)中の成分量:
(樹脂A4):1.03g
(樹脂D1):5.5mg
(光酸発生剤:MP1):94.0mg
(塩基性化合物:MQ1):12.5mg
PF6320(OMNOVA社製、フッ素系界面活性剤):3.0mg
【0372】
(樹脂A4)Mw = 10000、Mw/Mn = 1.55
モル組成比 40/10/40/10
【化66】

【0373】
(樹脂D1)Mw = 6000、Mw/Mn = 1.35
モル組成比 50/50
【化67】

【0374】
(光酸発生剤:MP1)
【化68】

【0375】
(塩基性化合物:MQ1)
【化69】

【0376】
レジスト組成物(A5)の調製
下記に示す成分をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/プロピレングリコールモノメチルエーテル(80:20)の混合溶剤に溶解させ得た固形分濃度4.0質量%の溶液をポアサイズ0.05μmのポリエチレンフィルターで濾過してレジスト組成物(A5)を調製した。
レジスト組成物(A5)中の成分量:
(樹脂A5):1.03g
(樹脂D2):10.5mg
(光酸発生剤:MP2):105.0mg
(塩基性化合物:MQ2):9.7mg
メガファックF176(大日本インキ化学工業製、フッ素系界面活性剤):1.5mg
【0377】
(樹脂A5)Mw = 8000、Mw/Mn = 1.45
モル組成比 40/10/50
【化70】

【0378】
(樹脂D2)Mw = 6000、Mw/Mn = 1.35
モル組成比 30/60/10
【化71】

【0379】
(光酸発生剤:MP2)
【化72】

【0380】
(塩基性化合物:MQ2)
【化73】

【0381】
レジスト組成物(A6)の調製
下記に示す成分をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/プロピレングリコールモノメチルエーテル(80:20)の混合溶剤に溶解させ得た固形分濃度3.5質量%の溶液をポアサイズ0.05μmのポリエチレンフィルターで濾過してレジスト組成物(A6)を調製した。
レジスト組成物(A6)中の成分量:
(樹脂A6):1.03g
(樹脂D3):10.5mg
(光酸発生剤:MP3):8.0mg
(塩基性化合物:MQ3):7.7mg
メガファックR08(大日本インキ化学工業製、フッ素及びシリコン系界面活性剤):1.5mg
【0382】
(樹脂A6)Mw = 12000、Mw/Mn = 1.72
モル組成比 40/7/40/13
【化74】

【0383】
(樹脂D3)Mw = 4500、Mw/Mn = 1.45
モル組成比 50/40/10
【化75】

【0384】
(光酸発生剤:MP3)
【化76】

【0385】
(塩基性化合物:MQ3)
【化77】

【0386】
架橋層形成材料(B1)の調整
下記に示す成分を純水190gに溶解させ得た溶液をポアサイズ0.05μmのポリエチレンフィルターで濾過して水溶性の架橋層形成材料(B1)を調製した。
(成分)
ポリビニルアセタール樹脂エスレックKW3(積水化学社製)8g、
(N−メトキシメチル)メトキシエチレン尿素2g、
メガファックR-08(大日本インキ化学工業社製界面活性剤)0.001g。
【0387】
架橋層形成材料(B2)の調整
下記に示す成分を純水182gに溶解させ得た溶液をポアサイズ0.05μmのポリエチレンフィルターで濾過して水溶性の架橋層形成材料(B2)を調製した。
(成分)
ポリビニルアセタール樹脂エスレックKW3(積水化学社製)16g、
テトラメトキシメチルグリコールウリル2g、
メガファックR-08(大日本インキ化学工業社製界面活性剤)0.001g。
【0388】
架橋層形成材料(B3)の調整
下記に示す成分を純水190gに溶解させ得た溶液をポアサイズ0.05μmのポリエチレンフィルターで濾過して水溶性の架橋層形成材料(B3)を調製した。
(成分)
ポリビニルアルコール樹脂8g、
(N−メトキシメチル)メトキシエチレン尿素2g、
メガファックR-08(大日本インキ化学工業社製界面活性剤)0.001g。
【0389】
架橋層形成材料(B4)の調整
下記に示す成分を3−メチルー1−ブタノール/イソプロパノールの重量比90/10の混合溶剤190gに溶解させ得た溶液をポアサイズ0.05μmのポリエチレンフィルターで濾過して非水溶性の架橋層形成材料(B4)を調製した。
(成分)
樹脂(A4)8g、
(N−メトキシメチル)メトキシエチレン尿素2g、
PF6320(OMNOVA社製フッ素系界面活性剤)0.001g。
ここで、樹脂(A4)は前記樹脂(A1)と同様の方法を用いて合成した。
【0390】
【化78】

【0391】
架橋層形成材料(B5)の調製
架橋層形成材料(B5)の調整
下記に示す成分を1−ブタノール190gに溶解させ得た溶液をポアサイズ0.05μmのポリエチレンフィルターで濾過して架橋層形成材料(B5)を調製した。
(成分)
ポリ−p−ヒドロキシスチレン樹脂VP8000(日本曹達社製)5.5g、
サイメル300(共栄社化学社製、ヘキサメトキシメチルメラミン樹脂)3g
【0392】
架橋層形成材料(B6)の調整
下記に示す成分を純水190gに溶解させ得た溶液をポアサイズ0.05μmのポリエチレンフィルターで濾過して架橋層形成材料(B6)を調製した。
(成分)
オキサゾリン基含有樹脂エポクロスWS−500(日本触媒社製)7.5g、
デナコールEX−512(ナガセケムテックス社製、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル)2g
【0393】
(実施例1)
(レジストパターンの形成)
シリコンウエハー上に有機反射防止膜ARC29A(日産化学社製)を塗布し、205℃で、60秒間ベークを行い、78nmの反射防止膜を形成した。その上に、調製した前記レジスト組成物(A2)を回転塗布し、100℃で、60秒間ベークを行い、膜厚200nmのレジスト膜を形成した。その後、レジスト膜の塗布されたウェハを、露光マスクを介してArFエキシマレーザースキャナー(ASML社製 PAS5500/1100、NA0.75)を用いてパターン露光し、115℃で、60秒間加熱した後、酢酸ブチルを用いて30秒間現像(ネガ型現像)し、1−ヘキサノールを用いて30秒間リンスした後、4000rpmの回転数でウェハを回転させることにより、スペース幅100nm、ライン幅300nmのトレンチパターンを得た。
(架橋膜の形成)
前記レジストパターンが形成されたウェハ上に、架橋層形成材料(B1)を回転塗布し、85℃で70秒間ベーク(プリベーク)を行い、架橋層形成材料かなる膜をレジストパターン上に形成した。その後、更に110℃で90秒間ベーク(ミキシングベーク)を行い、レジストパターンと架橋層形成材料からなる膜の界面に架橋層を形成させた後、純水を用いて60秒間現像を行い、非架橋層を除去し、更に、90℃で90秒間加熱(ポストベーク)を行い、レジストパターン上に架橋層が形成された縮小パターンを得た。
【0394】
(実施例2〜5)
使用するレジスト組成物と架橋層形成材料をそれぞれ表1に示す組み合わせにした以外は、実施例1と同様の方法にて、レジストパターン上に架橋層が形成された縮小パターンを得た。
【0395】
(実施例6)
使用するレジスト組成物と架橋層形成材料をそれぞれ表1に示す組み合わせにし、架橋層形成材料からなる膜の非架橋層の現像除去に2.38%のテトラメチルアンモニウム水溶液を用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、レジストパターン上に架橋層が形成された縮小パターンを得た。
【0396】
なお、表1には、レジスト膜を現像しレジストパターンを得る際の現像方式及び現像液、さらには架橋層を形成する為のミキシングベークの温度を示した。
【0397】
(実施例7)
架橋膜を形成する際のミキシングベークを100℃で90秒間行った以外は、実施例1と同様の方法にて、レジストパターン上に架橋層が形成された縮小パターンを得た。
【0398】
実施例8
(レジストパターンの形成)
シリコンウエハー上に有機反射防止膜ARC29A(日産化学社製)を塗布し、205℃で、60秒間ベークを行い、78nmの反射防止膜を形成した。その上に、調製した前記レジスト組成物(A4)を回転塗布し、100℃で、60秒間ベークを行い、膜厚100nmのレジスト膜を形成した。その後、レジスト膜の塗布されたウェハを、液浸液として純水を用いて、ArFエキシマレーザースキャナー(ASML社製 TWINSCAN
XT:1700Fi、NA1.2)を用いて、所望パターンを有する露光マスクを介して液浸露光を行った。その後、115℃で、60秒間加熱した後、酢酸ブチルを用いて30秒間現像(ネガ型現像)し、1−ヘキサノールを用いて30秒間リンスした後、4000rpmの回転数でウェハを回転させることにより、残存するリンス液を振り切った。その後、基板上に残留する溶剤を完全に除去するため90℃90秒間加熱し、室温まで冷却し
、スペース幅100nm、ライン幅300nmのトレンチパターンを得た。
【0399】
(架橋膜の形成)
前記レジストパターンが形成されたウェハ上に、架橋層形成材料(B5)を回転塗布し、続けて、155℃で90秒間ベーク(ミキシングベーク)を行い、レジストパターンと架橋層形成材料からなる膜の界面に架橋層を形成させた後、2.38%のテトラメチルアンモニウム水溶液を用いて60秒間現像を行い、非架橋層を除去し、更に、90℃で90秒間加熱(ポストベーク)を行い、レジストパターン上に架橋層が形成された縮小パターンを得た。
【0400】
実施例9
使用するレジスト組成物と架橋層形成材料、架橋層を形成するためのミキシングベーク温度を表1に示す組み合わせにした以外は、実施例8と同様の方法にて、レジストパターン上に架橋層が形成された縮小パターンを得た。
【0401】
実施例10
(レジストパターンの形成)
シリコンウエハー上に有機反射防止膜ARC29A(日産化学社製)を塗布し、205℃で、60秒間ベークを行い、78nmの反射防止膜を形成した。その上に、調製した前記レジスト組成物(A5)を回転塗布し、120℃で、60秒間ベークを行い、膜厚100nmのレジスト膜を形成した。その後、レジスト膜の塗布されたウェハを、液浸液として純水を用いて、ArFエキシマレーザースキャナー(ASML社製 TWINSCAN
XT:1700Fi、NA1.2)を用いて、所望パターンを有する露光マスクを介して液浸露光を行った。その後、120℃で、60秒間加熱した後、酢酸ブチルを用いて60秒間現像(ネガ型現像)し、1−ヘキサノールを用いて30秒間リンスした後、4000rpmの回転数でウェハを回転させることにより、残存するリンス液を振り切った。その後、基板上に残留する溶剤を完全に除去するため90℃90秒間加熱し、室温まで冷却し、スペース幅100nm、ライン幅300nmのトレンチパターンを得た。
【0402】
(架橋膜の形成)
前記レジストパターンが形成されたウェハ上に、架橋層形成材料(B5)を回転塗布し、続けて、155℃で90秒間ベーク(ミキシングベーク)を行い、レジストパターンと架橋層形成材料からなる膜の界面に架橋層を形成させた後、2.38%のテトラメチルアンモニウム水溶液を用いて60秒間現像を行い、非架橋層を除去し、更に、90℃で90秒間加熱(ポストベーク)を行い、レジストパターン上に架橋層が形成された縮小パターンを得た。
【0403】
実施例11
(レジストパターンの形成)
シリコンウエハー上に有機反射防止膜ARC29A(日産化学社製)を塗布し、205℃で、60秒間ベークを行い、78nmの反射防止膜を形成した。その上に、調製した前記レジスト組成物(A6)を回転塗布し、95℃で、60秒間ベークを行い、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。その後、レジスト膜の塗布されたウェハを、ArFエキシマレーザースキャナー(ASML社製 PAS5500/1100、NA0.75)を用いて、所望パターンを有する露光マスクを介して液浸露光を行った。その後、110℃で、60秒間加熱した後、酢酸ブチルを用いて30秒間現像(ネガ型現像)し、1−ヘキサノールを用いて30秒間リンスした後、4000rpmの回転数でウェハを回転させることにより、残存するリンス液を振り切った。その後、基板上に残留する溶剤を完全に除去するため90℃90秒間加熱し、室温まで冷却し、スペース幅100nm、ライン幅300nmのトレンチパターンを得た。
【0404】
(架橋膜の形成)
前記レジストパターンが形成されたウェハ上に、架橋層形成材料(B1)を回転塗布し、続けて、110℃で90秒間ベーク(ミキシングベーク)を行い、レジストパターンと架橋層形成材料からなる膜の界面に架橋層を形成させた後、2.38%のテトラメチルアンモニウム水溶液を用いて60秒間現像を行い、非架橋層を除去し、更に、90℃で90秒間加熱(ポストベーク)を行い、レジストパターン上に架橋層が形成された縮小パターンを得た。
【0405】
(比較例1)
(レジストパターンの形成)
シリコンウエハー上に有機反射防止膜ARC29A(日産化学社製)を塗布し、205℃で、60秒間ベークを行い、78nmの反射防止膜を形成した。その上に、調製したレジスト組成物(A1)を回転塗布し、120℃で、60秒間ベークを行い、膜厚200nmのレジスト膜を形成した。その後、レジスト膜の塗布されたウェハを、実施例1〜7で用いたものとは被覆率の異なる露光マスクを介してArFエキシマレーザースキャナー(ASML社製 PAS5500/1100、NA0.75)を用いてパターン露光し、120℃で、60秒間加熱した後、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38質量%の水溶液を用いて30秒間現像(ポジ型現像)し、純水を用いて30秒間リンスした後、4000rpmの回転数でウェハを回転させることにより、スペース幅100nm、ライン幅300nmのトレンチパターンを得た。
(架橋膜の形成)
前記レジストパターンが形成されたウェハ上に、架橋層形成材料(B1)を回転塗布し、85℃で70秒間ベーク(プリベーク)を行い、架橋層形成材料かなる膜をレジストパターン上に形成した。その後、更に110℃で90秒間ベーク(ミキシングベーク)を行い、第一のレジストパターンと架橋層形成材料からなる膜の界面に架橋層を形成させた後、純水を用いて60秒間現像を行い、非架橋層を除去し、更に、90℃で90秒間加熱(ポストベーク)を行い、レジストパターン上に架橋層が形成された縮小パターンを得た。
【0406】
パターン寸法縮小幅の評価
架橋層を形成する前後でのレジストパターンのトレンチ寸法(スペースの幅)を測長走査型電子顕微鏡(日立社製S9260)を使用して計測し、架橋層を形成する前の測長値から架橋層を形成した後の測長値の差を算出し、パターン寸法縮小幅(nm)を求めた。この値が大きいほど、性能が良好なことを表す。
【0407】
露光ラチチュードの評価
架橋層形成材料を塗布する前のレジストパターンのみが形成されたウェハを、測長走査型電子顕微鏡(日立社製S9260)を使用して観察し、スペース幅100nm、ライン幅300nmのトレンチパターンのマスクパターンを再現する露光量を最適露光量として、スペース幅100nm±10%の線幅を再現する露光量幅を最適露光量値で割った値を百分率(%)で表した。数値が大きいほど露光量変化に対して線幅変動が少なく、性能が良好なことを表す。
【0408】
スカムの評価
トレンチパターンに架橋層を形成させトレンチ寸法を縮小させた後のウェハを、測長走査型電子顕微鏡(日立社製S9260)を使用して観察し、レジスト残渣が全く観察されない場合を◎で表し、僅かにある場合を○で表し、かなり多い場合を×で表した。
【0409】
【表1】

【0410】
上記実施例から、本発明のパターン形成方法により、レジストパターンの露光ラチチュードが向上し、トレンチパターンのトレンチ寸法が高効率で縮小し、更にはスカムの発生もない、高精度な微細パターンを安定的に形成できることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0411】
本発明のパターン形成方法およびレジスト組成物により、トレンチパターンやホールパターンの寸法を実効的に微細化したパターンをスカムを発生させずに得られる。特に、実用性の高いネガ型現像技術及びそれを用いた二重現像技術が提供される。これにより、従来と同一光源の下でより微細なパターニングが可能となる。本発明のパターン形成方法は、IC等の半導体製造工程、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造、さらにはその他のフォトアプリケーションのリソグラフィー工程に好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0412】
【図1】ネガ型現像液を用いたネガ型現像により溶解除去される領域と、ポジ型現像液を用いたポジ型現像により溶解除去される領域の、露光量に対する関連を示す模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(ア)酸の作用により極性が増大する樹脂を含有し、活性光線又は放射線の照射により、ポジ型現像液に対する溶解度が増大し、ネガ型現像液に対する溶解度が減少する、レジスト組成物を塗布する工程、
(イ)露光工程、
(ウ)ネガ型現像液を用いて現像を行い、レジストパターンを形成する工程、及び
(エ)該レジストパターンに架橋層形成材料を作用させ、該レジストパターンを構成する樹脂と架橋層形成材料とを架橋させ、架橋層を形成する工程、
を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
工程(ウ)が、有機溶剤を含有する現像液を用いて現像を行い、レジストパターンを形成する工程であることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
工程(エ)が、(a)架橋剤および(b)溶剤を含む架橋層形成材料をレジストパターン上に塗布する工程、を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
レジスト組成物が、下記成分を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のパターン形成方法。
(A)酸の作用により極性が増大し、活性光線又は放射線の照射により、ポジ型現像液に対する溶解度が増大し、ネガ型現像液に対する溶解度が減少する樹脂
(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物、及び
(C)溶剤。

【図1】
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【公開番号】特開2008−310314(P2008−310314A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128797(P2008−128797)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】