説明

パラベン化合物

本発明は、海洋の海綿動物から単離されたミクロバルビファー細菌株、パラベン化合物を製造する方法におけるその使用に関する。本発明は、ミクロバルビファー株から得られるパラベン化合物及びそれらの使用にも関する。本発明のミクロバルビファー株は、登録番号I-3714の下でCNCMに寄託されたL4-N2と命名されたミクロバルビファー株である。本発明のパラベン化合物の製造方法は、このミクロバルビファー株を用いる。本発明は、特に化粧品、医薬、防汚、洗剤、消毒及び殺菌組成物用のパラベン化合物の製造に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋の海綿動物から単離されたミクロバルビファー(Microbulbifer)細菌株、及びパラベン化合物を製造するための方法におけるその使用に関する。
本発明は、いくつかのパラベン化合物及びそれらの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
パラヒドロキシ安息香酸エステル、すなわちパラベン化合物は、食品、薬品、化粧品及びトイレタリーでの使用が許可されている公知の抗微生物保存料である。
これらは、通常、2種以上のパラベン化合物及び/又は保存料を含有する組み合わせで用いられる。
【0003】
EC通達95/2/EC、補遺IIIの下では、メチルパラベン、エチルパラベン及びプロピルパラベン並びにそれらのナトリウム塩は、特に、その他の保存料との組み合わせで、制限された数の食品製品での使用が許可されている。AFSSAPS評価(AFSSAPS Vigilance、2005年12月、第30号告示中のCommission de cosmetologie 29-09-2005)の下では、メチル-エチル-プロピル-及びブチルパラベンが、化粧品での使用を許可されている。
さらに、種々の製品中でのパラベン化合物のレベルは、ほとんどの国の公衆衛生当局により制限されている。
【0004】
パラベン化合物は、その他の多数の用途も有している。
例えば、これらは、抗微生物剤、防腐剤及び/又は防汚剤として用いることができる。よって、これらは、防汚組成物、殺虫組成物、除草組成物のような多数の組成物、抗微生物不織布の製造、抗微生物殺ダニ組成物、水性インク、歯牙充填物及び封止組成物並びにメイクアップ組成物に用いることができる。
【0005】
工業的には、パラベン化合物は、現在、石油化学プロセスに由来している。これらは、フェノールのようないくつかの毒性溶媒を用いて製造されるパラヒドロキシ安息香酸、すなわち4HBAから製造されている。
Xue Pengらは、Applied and Environmental Microbiology、2006年8月、pp 5556〜5561で、ミクロバルビファー属に属し、熱帯地方のホヤ類(ascidian)から単離された海洋細菌(A4B-17株)が、4-ヒドロキシベンゾエート(4HBA)並びにそのブチル-、ヘプチル-及びノニルエステルを生産できることを報告した。この著者らは、同じ属であるミクロバルビファーに属し、種々の海洋供給源及び地理的起源(多くは熱帯地方)に由来する23のその他の株を試験した。これらの全ての株は、いくらかの4HBAを製造できたが、A4B-17株よりも低い量(20%未満)であった。しかし、A4B-17株以外のこれらの株は、パラベン化合物を生産できなかった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、特にデシルパラベン及びドデシルパラベンを含むパラベン化合物のファミリーを生産できるミクロバルビファー属に属する別の海洋細菌株の発見に基づく。実際に、この株(以下、「L4-N2」と命名する)は、A4B-17株よりも広い多様性のパラベン化合物を得ることを可能にする。
【0007】
L4-N2株は、ブダペスト条約の下で、2007年1月24日に、国立微生物培養コレクション(the Collection Nationale de Cultures de Microorganismes (CNCM), 25 rue du Docteur Roux, Paris, France)に、I-3714の登録番号の下で寄託された。
【0008】
L4-N2株は、ミクロバルビファー属、及びスコットランドの海岸の沖合の赤色砂岩から単離されたミクロバルビファー・アレナセオス(Microbulbifer arenaceous)の種(Tanakaら、Curr Microbiol、47、412、2003)と同じクラスターに系統学的に属し、この種と16S rRNA配列に基づいて99.8%の配列同一性を有する。エム・アレナセオス及びL4-N2株はともに、A4B-17株及びPengらにより記載される4HBA産生性のミクロバルビファー種とは異なる系統学的サブグループに属する。
【0009】
L4-N2株の細菌はグラム陰性で、嫌気性で、桿形状であり、幅約1μmで5〜7μm長である。これらは、なめらかで凸状で粘液状のコロニーを形成し、非拡散性の茶色の色素を生産する。これらは、グルコースを資化し、ベータ-ガラクトシダーゼ、カタラーゼ及びゼラチナーゼ活性を示す。これらは、アンピシリン、ペニシリン及びオキサシリンに耐性で、カナマイシン(30UI)及びセフタジジム(30μg)に対して感受性である。
これらは、海洋細菌についての伝統的な培地、例えばZobell (J. Mar. Res. 4, 42, 1941)により記載されるもので培養でき、そのような培地の例は、DIFCO Marine Agar 2216及びMarine Broth 2216 (2.6 g/L NaCl)である。
【0010】
これらの成長は、8〜30℃の温度範囲及び6.8〜8.0のpH範囲で試験された。これらは、この温度及びpH範囲全体で成長できる。しかし、パラベン化合物の生産は、細菌が12℃〜20℃の温度範囲で成長するときに最適である。
【0011】
本発明の目的は、上記のように定義されるミクロバルビファー種L4-N2株である。
本発明のさらなる目的は、ミクロバルビファー属に属し、かつ上記のL4-N2株のように非拡散性の茶色の色素を産生する特性を有する細菌の、パラベン化合物の生産のための使用、又はパラベン化合物の生産に関与する酵素若しくは該酵素をコードするポリヌクレオチドを精製するための出発原料としての使用である。このような細菌は、特に、海洋石灰海綿動物、好ましくは温帯水(temperate-water)海綿動物、例えばロイコニア(Leuconia)属、より具体的にはロイコニア・ニベア(Leuconia nivea)種の海綿動物から単離できる。好ましくは、これらの単離は、ナリジキシン酸を補った培地での選択培養を含む。これらは、それらのコロニーの茶色の色素産生に基づいて容易に同定できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の好ましい実施形態によると、上記の細菌は、ミクロバルビファー・アレナセオス種の菌群に属する。同じ種の菌群に属する細菌は、本明細書において、少なくとも99%の配列同一性を有する16S rRNAを有する細菌として定義される。
本発明の特に好ましい実施形態によると、上記の細菌は、上記で定義されるL4-N2株に属する。
【0013】
本発明は、特に、上記で定義されるミクロバルビファー属に属するパラベン化合物産生性細菌を培養し、培養物からパラベン化合物を回収することを含むことを特徴とする、パラベン化合物を生産する方法を提供する。好ましくは、上記の細菌は、ミクロバルビファー・アレナセオス種の菌群、さらにより好ましくはL4-N2株に属する。
【0014】
有利には、上記の細菌は、約12〜20℃の温度で成長させ、パラベン化合物を、培養が定常期(OD 600 nm値が2を超える)にあるとき、好ましくは培養が定常期に入ってから12〜24時間後に回収する。
【0015】
パラベン化合物の混合物は、培養上清及び/又は細菌細胞から、任意の適切な溶媒、例えばCH2Cl2又は酢酸エチル(AcOEt)を用いて容易に回収できる。
このパラベン化合物の混合物は、特に、以下により具体的に記載される化合物を含む。
【0016】
個別のパラベン化合物は、この混合物から、公知の方法、例えばCH2Cl2抽出物のシリカゲル及び逆相カラムでの連続クロマトグラフィーを用いて単離できる。
パラベンの組に属する以下の9つの化合物は、これらの方法により単離される。
化合物1:以下の式1の4-ヒドロキシ-安息香酸 エチルエステル、すなわちエチルパラベン:
【化1】

【0017】
化合物2:以下の式2の4-ヒドロキシ-安息香酸 ブチルエステル、すなわちブチルパラベン:
【化2】

【0018】
化合物3:以下の式3の4-ヒドロキシ-安息香酸 オクチルエステル、すなわちオクチルパラベン:
【化3】

【0019】
化合物4:以下の式4の4-ヒドロキシ-安息香酸 デシルエステル、すなわちデシルパラベン:
【化4】

【0020】
化合物5:以下の式5の4-ヒドロキシ-安息香酸 3-ヒドロキシ-デシルエステル、すなわちヒドロキシデシルパラベン:
【化5】

【0021】
化合物6:以下の式6の4-ヒドロキシ-安息香酸 メチル-デシルエステル、すなわちメチルデシルパラベン:
【化6】

【0022】
化合物7:以下の式7の4-ヒドロキシ-安息香酸 3-ヒドロキシ-メチル-デシルエステル、すなわちヒドロキシメチルデシルパラベン:
【化7】

【0023】
化合物8:以下の式8の4-ヒドロキシ-安息香酸 ドデシルエステル、すなわちドデシルパラベン:
【化8】

【0024】
化合物9:以下の式9の4-ヒドロキシ-安息香酸 ドデシ-5-エニルエステル:
【化9】

【0025】
エム・アレナセオス種の菌群の中の株の培養物から単離されるこれらの精製パラベン化合物は、驚くべきことに、抗微生物保存料として通常用いられる商用の(commercial)合成メチルパラベン及びプロピルパラベンよりもさらに高いインビトロ活性を示した。
【実施例】
【0026】
説明及び非限定的な目的のためにのみ与えられるいくつかの実施例に言及する以下の記載を読めば、本発明はよりよく理解され、本発明のその他の利点及び特徴がより明確になる。
一般的な実験手順
旋光度は、Perkin Elmer 341偏光計で得た。UVスペクトルは、EtOH中で、KontronタイプUvikon 930分光光度計を用いて得て、IRスペクトルは、FTIR Shimatzu 8400S分光光度計で記録した。
シリカゲルカラムクロマトグラフィーは、Kieselgel 60 (230〜400メッシュ, E. Merck)を用いて行った。フラクションは、アルミニウム裏打ちシート(Si gel 60 F254, 厚さ0.25 mm)を用い、UV (254及び366 nm)及びLibermannスプレー試薬の下での視覚化を用いるTLCにより監視した。分析逆相HPLC (Kromasil KR5C18-25QS 250×4.6 mmカラム及びC18 Uptisphere 250×7.8 mmカラム)は、UV-vis検出器(λ = 254 nm) L-4250C (Merck-Hitachi)及びクロマトインテグレーターD-2500 (Merck-Hitachi)を備えたL-6200Aポンプ(Merck-Hitachi)を用いて行った。
【0027】
質量スペクトルは、Applied BiosystemのAPI Q-STAR PULSAR Iで記録した。
13C NMRスペクトルは、Bruker AC300で、75.47 MHzにて得た。1H NMRスペクトル1D及び2D (COSY, HSQC, HMBC, NOESY)は、Bruker AVANCE 400で得た。HMQC及びHMBCデータは、400.13 MHzにて、1H -13Cデュアルプローブヘッドを用いて得た。HMBCにおけるいくつかの束縛による多重量子干渉の創出についての13Cパルスに先行する遅延は、70 msに設定した。
【0028】
生物学的材料
石灰海綿動物であるロイコニア・ニベア・グラント1826(海綿動物門(Porifera): 石灰海綿類(Calcarea): カルカロネア亜綱(Calcaronea): ベリイデ(Baeriidae))の生検体は、2006年1月に、ブルターニュ南フランス海岸沖の北東大西洋で収集した。
【0029】
生物活性
抗微生物活性は、グラム陽性細菌であるスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus) ATCC 6538株の成長の阻害により試験した。海綿動物からの全ての抽出物及び細菌単離物は、この抗菌活性についてスクリーニングした。抽出物及び細菌株は、グラム陰性ガンマプロテオバクテリア(ビブリオ属(Vibrio)を含む)及びアルファプロテオバクテリア(ロドバクテリア類)、グラム陽性バチルス目(バチルス種(Bacillus sp.)を含む)、並びに酵母カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)に対しても試験した。
【0030】
細菌株の単離
1グラムの新鮮な海綿動物を、濾過(0.2μm)海水で3回リンスし、カルシウム及びマグネシウムフリーの人工海水中で、40μmメッシュサイズのプランクトンネットを通過させた。浸軟させたものの10-2及び10-4系列希釈を、回収される細菌多様性を増大させるためにナリジキシン酸(10μg/mL)を補ったMarine Agar上に広げた。全てのプレートを、15〜20℃にてインキュベートした。14日間のインキュベーション(15℃にて5日間、続いて4℃にて9日間)の後に、茶色に着色した凸状のコロニーが、10-2希釈から単離され、マリンアガー上での純粋培養で増殖した。
【0031】
培養条件
細菌株は、暗所で350 rpmの回転振動を用いて、8〜30℃の温度範囲にて、Marine Broth Difco 2216 (37.4 g/L)中で1〜5日間成長させた。生物活性化合物の生産は、定常期で停止させた着色培養物中で、15℃にて最大になった。
【0032】
培養条件及び粗抽出物の調製
5つのコロニーから調製した25 mlの植菌物を、Marine Broth中で2日間、15℃にて振とうしながら成長させ、次いで、5Lのエルレンマイヤーフラスコ中の2.5 Lに拡張した。それぞれの細菌培養は、2日間、15℃にて空気中で振とうしながらインキュベートした。細胞を、4℃にて、10,000 rpm (17,300 g)にて15分間の遠心分離により分離した。上清を、CH2Cl2又はAcOEt中に直ちに注ぎ、少なくとも12時間(一晩)インキュベートした。細菌のペレットを、凍結−融解と超音波破砕の連続6サイクルにより機械的に溶菌させた後に、CH2Cl2又はAcOEt中に少なくとも12時間(一晩)の抽出のために注いだ。それぞれの場合において、有機相を真空濃縮した。Tlcでの検査により、細菌培養物の上清及びペレットの両方のCH2Cl2又はAcOEt抽出物について、同一の化学的特性が明らかになった。これらは、同じ抗微生物活性も示したので、これらを合わせて培養物のCH2Cl2又はAcOEt抽出物を構成した。CH2Cl2抽出物を、さらに抽出した。
【0033】
抽出及び単離
CH2Cl2抽出物(100 mg)を、シリカゲル(Merckシリカゲル70-230メッシュ)カラム上で、漸増容量のAcOEtを含むシクロヘキサンを溶離液として用いてクロマトグラフィーにかけた。バイオアッセイにより導かれたフラクションは、20容量% AcOEt/80容量%シクロヘキサン(フラクションA)及び30% AcOEt/ 70容量%シクロヘキサン(フラクションB)で溶出されたフラクションに最大活性を有した。
20容量% AcOEt/80容量%シクロヘキサンで溶出されたフラクションA (17 mg)を、漸増量のCH3CN/H2Oを溶離液として用いる(流速: 1 mL/分、波長: 254 nm)逆相HPLCカラム(C18 Uptisphere 250×7.8 mm)に供して、化合物1 (保持時間: 9 min 79, 1.2 mg)、化合物2 (保持時間: 12 min 38, 1.0 mg)、化合物3 (保持時間: 20 min 98, 0.4 mg)、化合物4 (保持時間: 30 min78, 1.2 mg)、化合物6 (保持時間: 33 min 68, 2.0 mg)、化合物8 (保持時間: 39 min 74, 0.5 mg)、化合物9 (保持時間: 31 min 94, 0.8 mg)を得た。
【0034】
同様にして、30容量% AcOEt/70容量%シクロヘキサンで溶出されたフラクションB (4.6 mg)を、漸増量のCH3CN/H2Oを溶離液として用いる(流速: 1 mL/分、波長254 nm)逆相HPLC (C18 Uptisphere 250×7.8 mm)に供して、化合物5 (保持時間: 6 min 54, 0.6 mg)、化合物7 (保持時間: 7 min 54, 0.6 mg)を得た。
【0035】
2.5 Lの4つの細菌培養物が、構造解明及び抗微生物活性の評価のために十分な量の純粋化合物得るために必要であった。
本発明のパラベン化合物は、上記の手順に従って得られ、単離される。
【0036】
実施例I:化合物1の同定
エチルパラベン、4-ヒドロキシ-安息香酸 エチルエステル(培養物1Lあたり0.64 mg、細菌培養物のCH2Cl2粗抽出物の乾燥物重量の0.80 %)、白色粉末; mp 114〜115℃; UV (EtOH) λmax nm (ε) : 286 (364) ; 1H NMR CDCl3 [ppmでのδH] : 7.94 (2H, d, J= 8.7 Hz, H-2, H-6) ; 6.83 (2H, d, J= 8.7 Hz, H-3, H-5) ; 4.31 (2H, m, H-1') ; 1.35 (3H, t, J= 7.1 Hz, H-2'), 13C NMR: CDCl3 (ppmでのδC): 123.4 (C-1), 131.9 (C-2, C-6), 115.1 (C-3, C-5), 159.5 (C-4), 166.2 (C-7), 60.7 (C-1'), 14.4 (C-2'), ESI-MS [M+H]+ 実測値(m/z) 167.0708 (Δ -0.019 mmu), 理論値(C9H11O3) 167.0708.
【0037】
この化合物は、以下の式1を有する:
【化10】

【0038】
実施例II:化合物2の同定
ブチルパラベン、4-ヒドロキシ-安息香酸 ブチルエステル(培養物1Lあたり0.436 mg、細菌培養物のCH2Cl2粗抽出物の乾燥物重量の1.78 %)、白色粉末; mp 68〜69℃; UV (EtOH) λmax nm (ε) : 285 (575); 1H NMR: CDCl3 [ppmでのδH] : 7.96 (2H, d, J =9 Hz, H-2, H-6) ; 6.89 (2H, d, J = 9 Hz, H-3, H-5); 4.31 (2H, t, J = 6.5 Hz, H-1') ; 1.75 (2H, m, H-2') ; 1.47 (2H, m, H-3') ; 0.98 (3H, t, J = 7.3 Hz, H-4') ; 13C NMR : CDCl3 (ppmでのδC) : 122.7 (C-1), 131.9 (C-2, C-6), 115.2 (C-3, C-5), 160.2 (C-4), 167.0 (C-7), 64.7 (C-1'), 30.8 (C-2'), 19.3 (C-3'), 13.7 (C-4'), ESI-MS [M+H]+ 実測値(m/z) 195.1028 (Δ -0.6 mmu), 理論値(C11H15O3) 195.1093.
【0039】
この化合物は、以下の式2を有する:
【化11】

【0040】
実施例III:化合物3の同定
オクチルパラベン、4-ヒドロキシ-安息香酸 オクチルエステル(培養物1Lあたり0.109 mg、細菌培養物のCH2Cl2粗抽出物の乾燥物重量の0.43 %)、白色非晶質固体; UV (EtOH) λmax nm (ε) : 283 (175); 1H NMR: CDCl3 [ppmでのδH]: 7.94 (2H, d, J = 8.8 Hz, H-2, H-6 ); 6.83 (2H, d, J = 8.8 Hz, H-3, H-5), 4.25 (2H, t, J = 6.7 Hz, H-1'); 1.72 (2H, m, H-2'); 1.41 (2H, m, H-3'); 1.34 (2H, m, H-4'); 1.23 (2H, brs, H-5'); 1.27 (2H, m, H-6'); 1.26 (2H, m, H-7'); 0.86 (3H, t, J = 7.1 Hz, H-8'); 13C NMR: CDCl3 (ppmでのδC): 124.2 (C-1), 132.3(C-2, C-6), 115.3 (C-3, C-5), 159.0 (C-4), 166.2 (C-7), 65.0 (C-1'), 28.6 (C-2'), 26.0 (C-3'), 29.1 (C-4'), 29.7 (C-5'), 31.8 (C-6'), 22.6 (C-7'), 13.9 (C-8'), ESI-MS [M+H]+ 実測値(m/z) 251.1652(Δ -0.48 mmu), 理論値(C15H23O3) 251.1647.
【0041】
この化合物は、次の式3を有する:
【化12】

【0042】
実施例IV:化合物4の同定
デシルパラベン、4-ヒドロキシ-安息香酸 デシルエステル(培養物1Lあたり0.254 mg、細菌培養物のCH2Cl2粗抽出物の乾燥物重量の1.04 %)、淡黄色の油; UV (EtOH) λmax nm (ε) : 285 (966); 1H NMR: CDCl3 [ppmでのδH] : 7.94 (2H, d, J= 8.8Hz, H-2, H-6) ; 6.83 (2H, d, J= 8.8 Hz, H-3, H-5) ; 4.26 (2H, t, J= 6.7 Hz, H-1') ; 1.73 (2H, m, H-2',) 1.41 (2H, m, H-3'); 1.34 (2H, m, H-4'); 1.40 (2H, m, H-5'); 1.27 (4H, brs, H-6', H-7'); 1.24 (2H, m, H-8'), 1.26 (2H, m, H-9'); 0.86 (3H, t, J= 6.7 Hz, H-10') ; 13C NMR: CDCl3 (ppmでのδC): 123.3 (C-1), 131.9 (C-2, C-6), 115.1 (C-3, C-5), 159.5 (C-4), 166.4 (C-7), 65.0 (C-1'), 28.7 (C-2'), 26.1 (C-3'), 29.3 (C-4'), 26.9 (C-5'), 29.5 (C-6'), 29.7 (C-7'), 31.9 (C-8'), 22.7 (C-9'), 14.1 (C-10'), ESI-MS [M+H]+ 実測値(m/z) 279.1962 (Δ -0.18 mmu), 理論値(C17H27O3) 279.1960.
【0043】
この化合物は、次の式4を有する:
【化13】

【0044】
実施例V:化合物5の同定
ヒドロキシデシルパラベン、4-ヒドロキシ-安息香酸 3-ヒドロキシ-デシルエステル(培養物1Lあたり0.145 mg、細菌培養物のCH2Cl2粗抽出物の乾燥物重量の0.59 %)、淡黄色の油、[α]D20 = - 18°(c 0.14, MeOH), UV (EtOH) λmax nm (ε): 286 (1378); 1H NMR: CDCl3 [ppmでのδH]: 7.93 (2H, d, J= 9 Hz, H-2, H-6) ; 6.83 (2H, d, J= 9 Hz, H-3, H-5); 4.58 (1H, m, H-1'a)-4.33 (1H, m, H-1'b) ; 1.92 (1H, m, H-2'a)-1.76(1H, m, H-2'b) ; 3.71 (1H, m, H-3') ; 1.45 (2H, m, H-4'); 1.40 (1H, m, H-5'a)- 1.28 (1H, m, H-5'b) ; 1.26 (4H, brs, H-6', H-7') ; 1.23 (2H, m, H-8') ; 1.24 (2H, m, H-9') ; 0.84 (3H, t, J= 6.6 Hz, H-10'), 13C NMR: CDCl3 (ppmでのδC): 123.3 (C-1), 131.8 (C-2, C-6), 115.2 (C-3, C-5), 159.6 (C-4), 168.1 (C-7), 62.0 (C-1'), 36.5 (C-2'), 68.6 (C-3'), 37.8 (C-4'), 25.5 (C-5'), 29.6* (C-6'), 29.5* (C-7'), 31.6 (C-8'), 22.9 (C-9'), 14.0 (C-10') ESI-MS [M+H]+ 実測値(m/z) 295.1913 (Δ -0.4 mmu), 理論値(C17H27O4) 295.1923.
*は交換可能。
【0045】
この化合物は、次の式5を有する:
【化14】

【0046】
実施例VI:化合物6の同定
メチルデシルパラベン、4-ヒドロキシ-安息香酸 メチル-デシルエステル(培養物1Lあたり0.509 mg、細菌培養物のCH2Cl2粗抽出物の乾燥物重量の2.08 %)、淡黄色の油; UV (EtOH) λmax nm (ε): 286 (687); 1H NMR: CDCl3 [ppmでのδH] : 7.92 (2H, d, J= 9 Hz, H-2, H-6) ; 6.82 (2H, d, J= 9 Hz, H-3, H-5); 4.26 (2H, t, J= 6.6 Hz, H-1') ; 1.72 (2H, m, H-2') ; 1.40 (2H, m, H-3') ; 1.30 (2H, m, H-4') ; 1.25 (2H, m, H-5') ; 1.31 (2H, m, H-6') ; 1.28 (2H, m, H-7') ; 1.13 (2H, m, H-8') ; 1.53 (1H, m, H-9') ; 0.88 (6H, d, J= 6.6 Hz, H-10', H-11'), 13C NMR: CDCl3 (ppmでのδC) : 123.0 (C-1), 131.9 (C-2, C-6), 115.1 (C-3, C-5), 159.6 (C-4), 166.5 (C-7), 65.0 (C-1'), 28.7 (C-2'), 26.1 (C-3'), 29.5 (C-4'), 29.1 (C-5'), 29.7 (C-6'), 27.3 (C-7'), 39.0 (C-8'), 27.9 (C-9'), 22.6 (C-10', C-11'), , ESI-MS [M+H]+ 実測値(m/z) 293.2115 (Δ -0.07 mmu), 理論値(C18H29O3) 293.2116.
【0047】
この化合物は、次の式6を有する:
【化15】

【0048】
実施例VII:化合物7の同定
ヒドロキシメチルデシルパラベン、4-ヒドロキシ-安息香酸 3-ヒドロキシ-メチル-デシルエステル(培養物1Lあたり0.218 mg、細菌培養物のCH2Cl2粗抽出物の乾燥物重量の0.89 %)、白色の非晶質の固体; [α]D20 = - 7°(c 0.10, MeOH); UV (EtOH) λmax nm (ε):287 (2000); 1H NMR: CDCl3 [ppmでのδH]: 7.92 (2H, d, J= 8.7 Hz, H-2, H-6) ; 6.83 (2H, d, J= 8.7 Hz, H-3, H-5) ; 4.57 (1H, m, H-1'a)-4.33 (1H, m, H-1'b) ; 1.93 (1H, m, H-2'a)-1.76(1H, m, H-2'b) ; 3.72 (1H, m, H-3') ; 1.47 (2H, m, H-4') ; 1.46 (1H, m, H-5'a )-1.31 (1H, m, H-5'b) ; 1.27 (2H, m, H-6') ; 1.25 (2H, m, H-7') ; 1.17 (2H, m, H-8') ; 1,26 (1H, m, H-9') ; 0.83 (6H, d, J= 6.6 Hz (H-10', H-11'), 13C NMR: CDCl3 (ppmでのδC) : 122.7 (C-1), 131.9 (C-2, C-6), 115.1 (C-3, C-5), 160.2 (C-4), 166.7 (C-7), 61.9 (C-1'), 36.6 (C-2'), 68.8 (C-3'), 37.4 (C-4'), 25.4 (C-5'), 31.4 (C-6'), 29.4 (C-7'), 39.0 (C-8'), 27.9 (C-9'), 22.6 (C-10', C-11') ESI-MS [M+H]+ 実測値(m/z) 309.2055 (Δ -0.5 mmu), 理論値(C18H29O4) 309.2000.
【0049】
この化合物は、次の式7を有する:
【化16】

【0050】
実施例VIII:化合物8の同定
ドデシルパラベン、4-ヒドロキシ-安息香酸 ドデシルエステル(培養物1Lあたり0.109 mg、細菌培養物のCH2Cl2粗抽出物の乾燥物重量の0.43%)、白色の非晶質の固体、UV (EtOH) λmax nm (ε): 285 (966); 1H NMR: CDCl3 [ppmでのδH] 7.94 (2H, d, J= 8.8 Hz, H-2, H-6) ; 6.83 (2H, d, J= 8.8 Hz, H-3, H-5); 4.26 (2H, t, J= 6.7 Hz, H-1') ; 1.72 (2H, m, H-2'); 1.39 (2H, m, H-3'); 1.33-1.24 (12H, brs, H-4'-H-9'), 1,24 (2H, m, H-10') ; 1,23 (2H, m, H-11'), 0.86 (3H, t, J= 6.6 Hz, H-12'): , 13C NMR: CDCl3 (ppmでのδC) :123.7 (C-1), 131.9 (C-2, C-6), 115.1 (C-3, C-5), 159,1 (C-4), 166.0 (C-7), 64.6 (C-1'), 28.7 (C-2'), 26.0 (C-3'), 29.6-29.0 (C-4'-C-9'), 31.9 (C-10'), 22.7 (C-11'), 14.1 (C-12'); ESI-MS [M+H]+ 実測値(m/z) 306.2278 (Δ -0.4 mmu), 理論値(C19H31O3) 306.2273.
【0051】
この化合物は、次の式8を有する:
【化17】

【0052】
実施例IX:化合物9の同定
4-ヒドロキシ-安息香酸 ドデシ-5-エニルエステル(培養物1Lあたり0.145 mg、細菌培養物のCH2Cl2粗抽出物の乾燥物重量の0.59 %)、白色の非晶質の固体、UV (EtOH) λmax nm (ε): 285 (334); 1H NMR: CDCl3 [ppmでのδH] : 7.94 (2H, d, J= 8.8 Hz, H-2, H-6) ; 6.83 (2H, d, J= 8.8 Hz, H-3, H-5); 4.27 (2H, t, J= 6.6 Hz, H-1') ; 1.74 (2H, m, H-2') ; 1.47 (2H, m, H-3') ; 2.10 (2H, m, H-4') ; 5.35 (2H, m, H-5', H-6') ; 2.00 (2H, m, H-7') ; 1.24 (4H, brs, H-8', H-9') ; 1.22 (2H, m, H-10') ; 1.27 (2H, m, H-11') ; 0.86 ( 3H, t, J= 6.7 Hz, H-12'), 13C NMR: CDCl3 (ppmでのδC) : 123.2 (C-1), 131.9 (C-2, C-6), 115.1 (C-3, C-5), 159.5 (C-4), 166.2 (C-7), 64.7 (C-1'), 28.2 (C-2'), 26.1 (C-3'), 26.7 (C-4'), 129.2 (C-5'), 130.6 (C-6'), 27.2 (C-7'), 29.6 (C-8'), 29.0 (C-9'), 31.9 (C-10'), 22.5 (C-11'), 14.1 (C-12'), ESI-MS [M+H]+ 実測値(m/z) 305.2102 (Δ -1.4 mmu), 理論値(C19H29O3) 305.2116.
【0053】
この化合物は、次の式9を有する:
【化18】

【0054】
これらの9つの生成物のうち、化合物1、3、4及び8は、天然の供給源から得られた天然生成物として初めて報告される。
化合物5、6、7及び9について、これらは新規な構造であり、本発明の前には報告されていなかった。
【0055】
最小阻止濃度(MIC)及び最小殺菌濃度(MBC)の決定
本発明による化合物1〜9、並びに従来の商用のメチルパラベン及びプロピルパラベンのそれぞれのMICを、100μg/mLの最初の濃度からの2倍希釈法により決定した。よって、それぞれの化合物を、100μg/mLから0.048μg/mLの範囲で試験した。マイクロプレートを振とうしながら(500 rpm)、30℃にて24時間インキュベートし、600 nmでの光学密度を読み取って、細菌の成長を評価した。従来のメチルパラベン及びプロピルパラベンは、フランス、ボビニのInterchimie社から得た。
【0056】
24時間後に目視可能な成長がないウェルでの細菌の生存を調べるために、寒天プレート上に継代培養してコロニー形成単位(CFU/mL)を計数することにより、MBCを決定した。MBCは、最初の植菌物の0.1%未満のコロニーカウントを生じる化合物の最低濃度と定義した。
【0057】
本発明のパラベン化合物の抗微生物活性、並びに商用のメチルパラベン及びプロピルパラベンの抗微生物活性は、スタフィロコッカス・アウレウス(グラム+)細菌株に対して決定した。
この評価の結果は、次の表1にまとめる。
【0058】
【表1】

【0059】
表1からわかるように、ミクロバルビファー種L4-N2株の培養物から単離された全てのパラベン化合物は、エス・アウレウスに対して強い抗微生物活性を示した。化合物4は、2.8〜5.6μMのMICの最大効率を示した。アルキル鎖の長さが、活性を著しく増大させるようである。我々は、C-8、C-10、C-11及びC-12アルキル鎖をそれぞれ有する化合物3、4、6、8がより高い効力を有し、従来技術の合成メチル及びプロピルパラベン、並びに我々の天然の細菌由来エチル(1)及びブチル(2)パラベンよりも約2〜100倍活性が高いことを見出した。化合物8 (81.6〜163.3μM)と化合物9 (20.5〜41.1μM)のMIC値を比較することにより示されるように、アルキル鎖に不飽和が加わることによっても、抗微生物活性が4倍増進される。アルキル鎖上にヒドロキシル官能性が存在することは、抗微生物活性にほとんど影響しない。
【0060】
エス・アウレウスに対して観察された成長阻害が、殺菌又は静菌活性のいずれに関連するかを決定するために、MBC/MICの比を算出した。MBC/MICが4未満であると化合物は殺菌性であり、MBC/MICが8〜16の間及び16を超えると、化合物は静菌性である。結果を、次の表2にまとめる。
表2からわかるように、この方法を用いると、化合物4及び9は静菌性化合物のようであり、化合物3、6及び7は、殺菌性化合物のようである。
【0061】
【表2】

【0062】
つまり、化合物3、6及び7は、特に消毒及び防腐組成物において、殺菌剤として用いることができる。
このような消毒組成物は、床、医療装置及びパネルなどに、病院で望ましくない細菌を殺すために適用できる。
これらは、ホームケア製品として床、パネルなどを消毒するために用いることもできる。そうでないと記載しない限り、これらは、洗剤組成物に用いることができる。
【0063】
我々は、天然パラベン化合物3〜9が、従来の合成メチルパラベン及びプロピルパラベン、並びに本発明の方法により得られた天然のエチル-及びブチルパラベン1〜2 (これらは、抗微生物保存料として通常用いられる4つのパラベン化合物である)よりもよいインビトロ活性を有すると結論付けた。
【0064】
抗微生物活性の研究は、作用の相乗的な形態の可能性を探索することにより進めた。抗微生物アッセイを、等モル比の化合物の混合物を用いて同時に行った。
結果は、以下の表3に報告し、ここでは、MICをμg/ml で報告し、表1と同様に、a-bの差(aは、微生物が成長する最高試験濃度であり、bは、100%成長阻害を生じる最低濃度である)として示す。
【0065】
【表3】

【0066】
2つの本発明のパラベン化合物を一緒に混合した場合に、組み合わせた化合物のMICは、2つの化合物の間の最良のMICに常に近いことが表3からわかる。化合物2と4、3と6、4と6及び4と9の等モルの組み合わせはいずれも、約3〜6μg/mLのMICを有する。
【0067】
表3は、本発明の方法に従って製造された天然エチルパラベン又は天然ブチルパラベンのいずれかが本発明の別の天然パラベン化合物と混合されたときに、この混合物のMICは、天然のエチルパラベン又はブチルパラベン単独のMICよりも非常に低いので、混合物を用いて細菌の成長を阻害するのに必要な量が、細菌の成長を阻害するのに必要なエチルパラベン又はブチルパラベン単独の量に比較して低くなることも示す。
さらに、CH2Cl2粗抽出物のMICと、20 % AcOEtを用いて溶出されたフラクションのMICは50>MIC>25μg/mLであり、かつ30 % AcOEt (酢酸エチル)を用いて溶出されたフラクションのMICは100>MIC>50μg/mLであり、このことは、混合物が得られたとしても、すなわちそれぞれのパラベン化合物の単離の前に、保存料として通常用いられる商用の合成メチルパラベン及びプロピルパラベンよりも約2倍高い優れた防腐特性を有することを意味する。よって、L4-N2株の培養物は、それぞれのパラベン化合物を単離することなく、そして天然のパラベン化合物のその天然の組み合わせに基づいて用いることができる。
【0068】
CH2Cl2粗抽出物は、グラム陰性細菌に対して活性でない商用のパラベン化合物とは反対に、グラム陰性株(ビブリオガンマプロテオバクテリア及びロドバクテリアアルファプロテオバクテリア)に対して活性であることも示された。
海綿動物由来細菌の抗微生物活性は、例えば日和見環境病原体に対する海綿動物宿主の化学的防御ストラテジーに貢献しているのだろう。これらは、海綿動物の特徴である微生物共同体の構造のバランス及びその多様性の維持にも貢献しているのだろう。
【0069】
その格別の活性のために、本発明の天然パラベン化合物又は本発明の方法により得られるパラベン化合物は、商用のパラベン化合物に代わる保存料として特に有用である。
さらに、そのより高い活性のために、本発明のパラベン化合物は、従来技術のパラベン化合物に比較して、同じ防腐特性を維持しながら、より低い濃度で用いることができ、このことは、特に食品、化粧品、医薬及びトイレタリー組成物におけるパラベン化合物のレベルを制限する国の規定の観点から、大きな興味の対象である。
【0070】
よって、本発明は、
4-ヒドロキシ-安息香酸 3-ヒドロキシ-デシルエステルである以下の式5:
【化19】

を有するパラベン化合物、
4-ヒドロキシ-安息香酸 メチル-デシルエステルである以下の式6:
【化20】

を有するパラベン化合物、
【0071】
4-ヒドロキシ-安息香酸 3-ヒドロキシ-メチル-デシルエステルである以下の式7:
【化21】

を有するパラベン化合物、
4-ヒドロキシ-安息香酸 ドデシ-5-エニルエステルである以下の式9:
【化22】

を有するパラベン化合物
も包含する。
【0072】
本発明は、別々又は組み合わさったこれらの化合物、又は粗CH2Cl2抽出物又はフラクションA若しくはB、又は本発明の方法により得られる化合物の、特に化粧品組成物、医薬組成物、食品組成物又はトイレタリー組成物での保存料としての使用も包含する。
よって、本発明は、本発明によるか又は本発明の方法により得られる少なくとも1つのパラベン化合物を含む医薬組成物も包含する。
本発明は、本発明によるか又は本発明の方法により得られる少なくとも1つのパラベン化合物を含む化粧品組成物も包含する。
本発明は、さらに、本発明によるか又は本発明の方法により得られる少なくとも1つのパラベン化合物を含む食品組成物を包含する。
本発明によるか又は本発明の方法により得られる少なくとも1つのパラベン化合物を含むトイレタリー組成物も本発明に包含される。
【0073】
本発明は、別々又は組み合わさった本発明のパラベン化合物、又は粗CH2Cl2抽出物又はフラクションA若しくはBの、防汚剤としての使用も包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CNCMにI-3714の登録番号で寄託された、L4-N2と命名されたミクロバルビファー株。
【請求項2】
請求項1に記載のミクロバルビファー株を培養し、培養物からパラベン化合物を回収することを含むことを特徴とする、パラベン化合物を製造する方法。
【請求項3】
前記ミクロバルビファー株を、12〜20℃の温度で成長させ、前記パラベン化合物が、定常期にある培養物から回収されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記パラベン化合物が、粗抽出物を得るために、CH2Cl2又は酢酸エチルを用いる抽出により定常期にある培養物から回収されることを特徴とする請求項1又は2に記載のパラベン化合物を製造する方法。
【請求項5】
前記CH2Cl2粗抽出物のクロマトグラフィーによる抽出の工程をさらに含み、前記クロマトグラフィーの間に用いられる溶離液が、漸増量の酢酸エチルが添加されたシクロヘキサンであり、80容量%のシクロヘキサン及び20容量%の酢酸エチルを用いて溶出されるフラクションと、70容量%のシクロヘキサン及び30容量%の酢酸エチルを用いて溶出されるフラクションとを回収することを特徴とする請求項4に記載のパラベン化合物を製造する方法。
【請求項6】
それぞれのパラベン化合物を逆相HPLCにより単離する工程をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載のパラベン化合物を製造する方法。
【請求項7】
請求項1に記載のミクロバルビファー株を12〜20℃の温度で培養し、定常期にある細胞を、培養培地から遠心分離により分離し、培養上清をCH2Cl2又は酢酸エチルに注ぎ、少なくとも12時間インキュベートし、細菌ペレットを機械的に溶菌させ、溶菌させた細菌ペレットをCH2Cl2又は酢酸エチル中で少なくとも12時間インキュベートしてパラベン化合物の混合物を抽出することを含む方法により得ることができるパラベン化合物の混合物を含む粗抽出物。
【請求項8】
以下の:
a)請求項1に記載のミクロバルビファー株を12〜20℃の温度で培養し、
b)定常期にある細胞を、培養培地から遠心分離により分離することにより、上清及び細菌ペレットを得て、
c)工程b)で得られた上清をCH2Cl2に注ぎ、これを少なくとも12時間インキュベートし、
d)工程b)で得られた細菌ペレットを機械的に溶菌させ、溶菌させた細胞ペレットをCH2Cl2中で少なくとも12時間インキュベートすることにより、第2のCH2Cl2抽出物を得て、
e)工程c)及びd)で得られたCH2Cl2抽出物を混合し、得られた混合物を、漸増量の酢酸エチルを含むシクロヘキサンを溶離液として用いるシリカゲルカラムでクロマトグラフィーにかけ、
f)70容量%のシクロヘキサン及び30容量%の酢酸エチルを用いて溶出されるフラクションを回収する
工程を含む方法により得ることができるパラベン化合物の混合物を含むフラクション。
【請求項9】
以下の:
a)請求項1に記載のミクロバルビファー株を12〜20℃の温度で培養し、
b)定常期にある細胞を、培養培地から遠心分離により分離することにより、上清及び細菌ペレットを得て、
c)工程b)で得られた上清をCH2Cl2に注ぎ、これを少なくとも12時間インキュベートし、
d)工程b)で得られた細菌ペレットを機械的に溶菌させ、溶菌させた細胞ペレットをCH2Cl2中で少なくとも12時間インキュベートすることにより、第2のCH2Cl2抽出物を得て、
e)工程c)及びd)で得られたCH2Cl2抽出物を混合し、得られた混合物を、漸増量の酢酸エチルを含むシクロヘキサンを溶離液として用いるシリカゲルカラムでクロマトグラフィーにかけ、
f)80容量%のシクロヘキサン及び20容量%の酢酸エチルを用いて溶出されるフラクションを回収する
工程を含む方法により得ることができるパラベン化合物の混合物を含むフラクション。
【請求項10】
以下の式5:
【化1】

を有する4-ヒドロキシ-安息香酸 3-ヒドロキシ-デシルエステルであるパラベン化合物。
【請求項11】
以下の式6:
【化2】

を有する4-ヒドロキシ-安息香酸 メチル-デシルエステルであるパラベン化合物。
【請求項12】
以下の式7:
【化3】

を有する4-ヒドロキシ-安息香酸 3-ヒドロキシ-メチル-デシルエステルであるパラベン化合物。
【請求項13】
以下の式9:
【化4】

を有する4-ヒドロキシ-安息香酸 ドデシ-5-エニルエステルであるパラベン化合物。
【請求項14】
請求項7に記載の粗抽出物、又は請求項8若しくは9に記載のフラクション、又は請求項10〜13のいずれか1項に記載の少なくとも1つのパラベン化合物、又は請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法により得られる少なくとも1つのパラベン化合物の、保存料としての使用。
【請求項15】
請求項7に記載の粗抽出物、又は請求項8若しくは9に記載のフラクション、又は請求項10〜13のいずれか1項に記載の少なくとも1つのパラベン化合物、又は請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法により得られる少なくとも1つのパラベン化合物を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項16】
請求項7に記載の粗抽出物、又は請求項8若しくは9に記載のフラクション、又は請求項10〜13のいずれか1項に記載の少なくとも1つのパラベン化合物、又は請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法により得られる少なくとも1つのパラベン化合物を含むことを特徴とする化粧品組成物。
【請求項17】
請求項7に記載の粗抽出物、又は請求項8若しくは9に記載のフラクション、又は請求項10〜13のいずれか1項に記載の少なくとも1つのパラベン化合物、又は請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法により得られる少なくとも1つのパラベン化合物を含むことを特徴とする食品組成物。
【請求項18】
請求項7に記載の粗抽出物、又は請求項8若しくは9に記載のフラクション、又は請求項10〜13のいずれか1項に記載の少なくとも1つのパラベン化合物、又は請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法により得られる少なくとも1つのパラベン化合物を含むことを特徴とするトイレタリー組成物。
【請求項19】
請求項7に記載の粗抽出物、又は請求項8若しくは9に記載のフラクション、又は請求項10〜13のいずれか1項に記載の少なくとも1つのパラベン化合物、又は請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法により得られる少なくとも1つのパラベン化合物を含むことを特徴とする洗剤組成物。
【請求項20】
請求項7に記載の粗抽出物、又は請求項8若しくは9に記載のフラクション、又は請求項10〜13のいずれか1項に記載の少なくとも1つのパラベン化合物、又は請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法により得られる少なくとも1つのパラベン化合物を含むことを特徴とするホームケア製品組成物。
【請求項21】
請求項7に記載の粗抽出物、又は請求項8若しくは9に記載のフラクション、又は請求項10〜13のいずれか1項に記載の少なくとも1つのパラベン化合物、又は請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法により得られる少なくとも1つのパラベン化合物を含むことを特徴とする消毒及び/又は殺菌組成物。
【請求項22】
請求項7に記載の粗抽出物、又は請求項8若しくは9に記載のフラクション、又は請求項10〜13のいずれか1項に記載の少なくとも1つのパラベン化合物、又は請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法により得られる少なくとも1つのパラベン化合物の、防汚剤としての使用。

【公表番号】特表2010−524437(P2010−524437A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502608(P2010−502608)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【国際出願番号】PCT/IB2008/002297
【国際公開番号】WO2008/122897
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(502205846)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィク (154)
【出願人】(509282457)ミュージアム ナショナル ドイストワール ナチュレール (2)
【氏名又は名称原語表記】MUSEUM NATIONAL D’HISTOIRE NATURELLE
【住所又は居所原語表記】57 rue Cuvier, F−75231 Paris Cedex 05, FRANCE
【出願人】(509017424)ユニベルシテ ピエール エ マリー キュリー(パリ 6) (3)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PIERRE ET MARIE CURIE(PARIS 6)
【住所又は居所原語表記】4, place Jussieu, F−75252 Paris Cedex 05, France
【Fターム(参考)】