説明

パワーテールゲート装置

【課題】駆動ギアと従動ギアとの噛み合い精度を向上させて、パワーテールゲート装置の作動効率を高めることである。
【解決手段】電動モータ31にギアケース33を備えた減速機32を取り付け、ギアケース33から突出する出力軸にピニオンを設ける。ギアケース33にブラケット76を固定し、このブラケット76に支軸41を装着する。リフトアーム24の基端にセクタギア42を設け、このセクタギア42を支軸41により揺動自在に支持するとともにピニオンに噛み合わせる。また、セクタギア42に円弧状の溝部42cを設け、この溝部42cを貫通するボルトとセクタギア42よりも外周側に配置されるボルト54とによりギアケース33にギアカバー51を固定し、このギアカバー51によりピニオンとセクタギア42との噛み合い部分を覆うとともにセクタギア42をブラケット76に向けて押し付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の後端部にヒンジを介して車両の上下方向に開閉自在に装着されたテールゲートを自動的に開閉するパワーテールゲート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、例えばドアに設けられるウインドガラスや車体後端部に設けられるテールゲート(バックドア)等の開閉体が随所に設けられている。また、これらの開閉体の開閉操作を容易にするために、パワーウインド装置やパワーテールゲート装置等の自動開閉装置を搭載するようにした車両が開発されている。
【0003】
このような自動開閉装置としては、例えばXアーム式のレギュレータを備えたパワーウインド装置のように、車体やドア等に支軸により揺動自在に支持された駆動アームの先端に開閉体を連結し、この駆動アームを電動モータにより揺動駆動して開閉体を開閉させるようにした、いわゆるアーム駆動式のものが知られている。この場合、電動モータにはウォームギア機構を収容するギアケースが取り付けられ、このギアケースの外面には出力軸に固定された駆動ギアが配置されており、駆動アームの基端に設けられた従動ギアが駆動ギアに噛み合わされている。これにより、電動モータが作動すると、その回転が駆動ギアから従動ギアに伝達され、従動ギアとともに駆動アームが揺動する。
【0004】
一方、このような自動開閉装置としては、駆動ギアと従動ギアの噛み合いピッチを保持するために、ギアケースにブラケットを固定し、このブラケットにより支軸を支持するようにしたものが知られている。しかしながら、このような構成であっても、開閉体から駆動アームに支軸に対して傾斜する方向に荷重が加えられると、従動ギアが駆動ギアに対して傾斜してその噛み合い精度が悪化し、噛み合い部分から異音を発生したり、自動開閉装置の作動効率が低下する場合があった。
【0005】
そのため、例えば特許文献1に示される自動開閉装置では、ブラケットの一部を利用することにより従動ギアの側面に当接して当該従動ギアをギアケース側に向けて押し付ける押さえ部を設け、この押さえ部により従動ギアの傾斜を抑制して、駆動ギアと従動ギアとの噛み合いを保持するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−90796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に示される自動開閉装置では、押さえ部は駆動ギア側から従動ギア側に突出して各ギアの噛み合い部分を覆う被覆部の先端部分に設けられるため、押さえ部は片持ち状態となって、大きな荷重が加わった際にはその支持剛性が不足することが考えられる。また、従動ギアからの荷重を被覆部を介した一方側でのみギアケースに支持された構造となっているので、従動ギアの傾斜を十分に押さえることが困難であった。
【0008】
本発明の目的は、駆動ギアと従動ギアとの噛み合い精度を向上させて、パワーテールゲート装置の作動効率を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のパワーテールゲート装置は、車両の後端部にヒンジを介して前記車両の上下方向に開閉自在に装着されたテールゲートを自動的に開閉するパワーテールゲート装置であって、回転軸を備え、車体に配置される電動モータと、前記電動モータに取り付けられるギアケースと、前記ギアケースに収容され、前記回転軸の回転を減速して出力軸に伝達するウォームギア機構と、前記出力軸に設けられ、前記ギアケースの外側に配置されて該出力軸とともに回転する駆動ギアと、前記ギアケースと一体的に設けられた支軸により揺動自在に支持されて前記駆動ギアに噛み合わされ、前記支軸の軸心を中心とした円弧状の溝部を備えた従動ギアと、前記従動ギアと一体的に設けられるとともに前記テールゲートに連結され、前記従動ギアとともに揺動して前記テールゲートを開閉させる駆動アームと、前記溝部を貫通し前記ギアケースに組み付けられる第1の締結部材と、前記従動ギアの外周側に配置され前記ギアケースに組み付けられる第2の締結部材とにより前記ギアケースに固定され、前記駆動ギアと前記従動ギアとの噛み合い部分を覆うとともに前記従動ギアの側面に当接するカバー側押さえ部が設けられたギアカバーとを有することを特徴とする。
【0010】
本発明のパワーテールゲート装置は、前記カバー側押さえ部は、前記支軸を中心とした円弧状に延びるとともに前記従動ギアに向けて突出して形成されることを特徴とする。
【0011】
本発明のパワーテールゲート装置は、前記支軸の先端を前記ギアカバーにより支持することを特徴とする。
【0012】
本発明のパワーテールゲート装置は、前記ギアケースにはナットが組み付けられ、前記第1と第2の締結部材はそれぞれ前記ナットにねじ結合するボルトであり、前記第1と第2の締結部材の先端にはそれぞれ前記車体に固定可能な固定部が形成され、前記固定部は前記ナットを貫通して前記車体に固定可能に該ナットから突出していることを特徴とする。
【0013】
本発明のパワーテールゲート装置は、前記ギアケースにはブラケットが一体的に固定され、該ブラケットには前記従動ギアを軸支する支軸が設けられるとともに、前記ギアカバーが前記第1の締結部材により前記ブラケットに固定されることを特徴とする。
【0014】
本発明のパワーテールゲート装置は、前記ブラケットは、予め前記ギアカバーと前記従動ギアとが前記ブラケットに組み付けられてユニット化された状態で前記ギアケースに固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従動ギアの傾斜を押さえるギアカバーを、従動ギアに設けられる円弧状の溝部を貫通する第1の締結部材と、従動ギアの外周側に配置される第2の締結部材とによりギアケースに固定し、駆動ギアと従動ギアとの噛み合い部分を挟んだ両側でギアケースに支持させるようにしたので、従動ギアの傾斜をギアカバーにより確実に防止することができる。これにより、駆動ギアと従動ギアとの噛み合い精度を高め、噛み合い部分からの異音の発生を防止するとともに、パワーテールゲート装置の作動効率を高めることができる。
【0016】
本発明によれば、ギアカバーに設けられる円弧状の押さえ部により従動ギアを押さえるようにしたので、従動ギアの傾斜を確実に押さえて、駆動ギアと従動ギアとの噛み合い精度をさらに高めることができる。
【0017】
本発明によれば、支軸の先端をギアカバーにより支持するようにしたので、支軸がギアケースに対して傾斜することを防止して、駆動ギアと従動ギアとの噛み合い精度をさらに高めることができる。
【0018】
本発明によれば、ギアカバーをギアケースに固定するためのボルトを、ギアケースを車体に固定するためのボルトとして併用するようにしたので、このパワーテールゲート装置の部品点数を削減して、そのコストを低減することができる。
【0019】
本発明によれば、ギアケースに一体的に固定されるブラケットに支軸を設けるとともに、このブラケットに第1の締結部材によりギアカバーを固定するようにしたので、ブラケットや駆動アーム等を変更することで、車両側の仕様に対応させることができる。これにより、各仕様においてギアケースを併用して、このパワーテールゲート装置の汎用性を高めることができる。
【0020】
本発明によれば、ブラケットを予めギアカバーと従動ギアとが組み付けられたユニット化された状態でギアケースに固定するようにしたので、このパワーテールゲート装置の組み立て作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態であるパワーウインド装置を備えたドアの斜視図である。
【図2】図1に示す駆動ユニットの詳細を示す斜視図である。
【図3】図2に示す駆動ユニットを裏側から見た斜視図である。
【図4】図2に示す駆動ユニットの分解斜視図である。
【図5】図2におけるA−A線に沿う断面図である。
【図6】図2に示すギアカバーの詳細を示す斜視図である。
【図7】図2に示す駆動ユニットの変形例を示す正面図である。
【図8】(a)、(b)はそれぞれ本発明の他の実施の形態であるパワーテールゲート装置を備えた車両の一部を示す図である。
【図9】図8に示すパワーテールゲート装置の詳細を示す斜視図である。
【図10】図9に示すブラケットのユニット化された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1は本発明の一実施の形態であるパワーウインド装置を備えたドアの斜視図であり、このドア11は図示しない車両の車体を構成するフロントドアであり、このドア11には開閉体としてのウインドガラス12が設けられている。このウインドガラス12はドア11の内部に設けられた一対のガイドユニット13により支持され、これらのガイドユニット13に沿って車両の上下方向に開閉自在となっている。車両用自動開閉装置としてのパワーウインド装置21はドア11の内部に配置され、ウインドガラス12はこのパワーウインド装置21により自動的に開閉されるようになっている。
【0024】
このパワーウインド装置21はウインドレギュレータ22と駆動ユニット23とを備えており、駆動ユニット23によりウインドレギュレータ22を作動させてウインドガラス12を開閉させる構造となっている。
【0025】
ウインドレギュレータ22はXアーム式となっており、駆動アームとしてのリフトアーム24とイコライザアーム25とを備えている。リフトアーム24は鋼板により形成され、その基端部において駆動ユニット23に支持されてドア11の内部で上下方向に揺動自在となっている。一方、イコライザアーム25は鋼板により形成され、その長手方向の略中央部において連結軸26によりリフトアーム24の長手方向の略中央部に軸支されている。リフトアーム24の先端部とイコライザアーム25の先端部にはそれぞれ図示しないローラが装着され、これらのローラはウインドガラス12の下端に固定されたローラガイド27に移動自在に装着されている。また、イコライザアーム25の基端部にも図示しないローラが装着され、このローラはドア11に固定されたローラガイド28に移動自在に装着されている。駆動ユニット23はリフトアーム24を揺動駆動するようになっており、駆動ユニット23によりリフトアーム24が揺動駆動されると、リフトアーム24とイコライザアーム25とが連結軸26を中心として傾動動作して、ウインドガラス12が図中上下方向に開閉される。
【0026】
図2は図1に示す駆動ユニットの詳細を示す斜視図であり、図3は図2に示す駆動ユニットを裏側から見た斜視図である。また、図4は図2に示す駆動ユニットの分解斜視図であり、図5は図2におけるA−A線に沿う断面図である。
【0027】
次に、駆動ユニット23の構造について説明する。
【0028】
駆動ユニット23は電動モータ31を備えており、この電動モータ31に減速機32が取り付けられて1つのユニットとされている。減速機32は電動モータ31に取り付けられる樹脂製のギアケース33を備えており、その円柱状に形成された本体部33aの内部にはウォームギア機構34が収容されている。
【0029】
図5に示すように、電動モータ31は回転軸としてのアマチュア軸31aを備えており、このアマチュア軸31aはギアケース33の本体部33aの内部に突出し、当該突出部分の外周面にはウォーム34aが一体に形成されている。このウォーム34aに噛み合うウォームホイル34bがギアケース33の本体部33aに収容されており、このウォームホイル34bはギアケース33に支持された出力軸35に固定されて出力軸35とともに回転自在となっている。ウォームギア機構34はウォーム34aとウォームホイル34bとにより構成されており、電動モータ31が作動すると、このウォームギア機構34により、アマチュア軸31aの回転が所定の回転数にまで減速されて出力軸35から出力されるようになっている。
【0030】
ギアケース33にはコネクタ36が一体に設けられ、電動モータ31はこのコネクタ36を介して車両に搭載される図示しない制御装置に接続されている。そして、電動モータ31は、図示しないパワーウインドスイッチ等の指令信号に基づいて制御装置によりその作動が制御される。
【0031】
出力軸35の先端はギアケース33の外部に突出しており、図4、図5に示すように、出力軸35のギアケース33の外部に突出した先端には駆動ギアとしてのピニオン37が固定されている。つまり、ピニオン37はギアケース33の外側つまり本体部33aの外面上に配置され、出力軸35とともに回転するようになっている。
【0032】
ギアケース33には本体部33aからその径方向に突出するベース部33bが一体に設けられており、このベース部33bの先端側には支持孔38が形成されている。支持孔38には軸受43が挿入されて支軸41の大径部41cが軸支されており、このベース部33bに一体的に支持された支軸41により従動ギアとしてのセクタギア42がギアケース33のベース部33bに揺動自在に支持されている。
【0033】
セクタギア42は鋼板により扇状に形成されており、その軸心には装着孔42aが設けられている。また、セクタギア42の円弧状の外周部分にはギア部42bが設けられ、また、このギア部42bと装着孔42aとの間には軸心つまり装着孔42aを中心とした円弧状の溝部42cが形成されている。セクタギア42は装着孔42aに支軸41が挿通されることにより支軸41に揺動自在に支持されており、そのギア部42bはピニオン37に噛み合わされている。これにより、セクタギア42は、電動モータ31が作動すると、ピニオン37つまり電動モータ31に駆動されて支軸41を中心として所定の角度範囲で揺動するようになっている。
【0034】
ここで、このパワーウインド装置21では、前述のように、ピニオン37を出力軸35によりギアケース33に支持させるとともに、これに噛み合うセクタギア42を支軸41によりギアケース33のベース部33bに支持させるようにしている。これにより、ピニオン37とセクタギア42との噛み合いピッチをギアケース33により精度よく保持することができ、したがって、ピニオン37とセクタギア42との噛み合い精度を確保して、この駆動ユニット23の作動効率を高めることができる。
【0035】
一方、リフトアーム24の基端には固定片24aが一体に設けられている。この固定片24aはセクタギア42とベース部33bの間においてセクタギア42に重ねて配置され、その貫通孔24bには支軸41が挿通されている。固定片24aにおける貫通孔24bの周囲には、3つの固定孔24cが同心状に等間隔に並べて形成されている。一方、セクタギア42の装着孔42aの周囲には、ギアカバー51側に凹部42dを打出し成形等により形成することでリフトアーム24側に3つの固定ボス42eが同心状に等間隔に並べて突出形成されており、固定孔24cと固定ボス42eとは互いに係合可能とされている。つまり、リフトアーム24はセクタギア42とは別体に形成され、その基端においてセクタギア42と一体的に係合して、セクタギア42とともに支軸41に揺動自在に支持されるようになっている。
【0036】
なお、図4、図5に示すように、支軸41はセクタギア42のベース部33bを挟む反対側から支持孔38に挿通されて大径部41cが軸支されるとともに、支軸41の小径部41bがセクタギア42の装着孔42aと固定片24aの貫通孔24bを貫通し、固定孔24cと固定ボス42dとを互いに係合させた状態で、セクタギア42側において先端部41aがカシメられている。これにより、リフトアーム24とセクタギア42とはお互いの凹凸係合状態が維持されている。なお、リフトアーム24とセクタギア42とは、溶接、ねじ止め、リベット等の締結手段によりセクタギア42の要部分に固定するようにしてもよい。
【0037】
ギアケース33には、ピニオン37とセクタギア42との噛み合い部分を覆うとともにセクタギア42の支軸41の軸方向に対する傾斜を抑制するために、ギアカバー51が固定されている。
【0038】
図6は図2に示すギアカバーの詳細を示す斜視図であり、このギアカバー51は樹脂製となっており、ギアケース33の本体部33aのピニオン37が配置される一方の外面を覆う円筒部51aと、円筒部51aから支軸41の方向に向けて径方向に延びる板状の延長部51bとが一体に形成されている。
【0039】
ギアカバー51の円筒部51aには、それぞれ延長部51bの延び方向に対して直交する方向に向けて互いに逆向きに突出する一対のカバー側固定脚52が一体に設けられており、これらのカバー側固定脚52にはそれぞれボルト孔52aが設けられている。一方、ギアケース33の本体部33aにはカバー側固定脚52に対応した一対のケース側固定脚53が設けられており、これらのケース側固定脚53にはそれぞれ挿通孔53aが設けられている。
【0040】
各カバー側固定脚52のボルト孔52aにはそれぞれ第2の締結部材としてのボルト54がギアケース33とは反対側から挿通され、各ケース側固定脚53の挿通孔53aにはそれぞれフランジを備えたスリーブ状のナット55がギアカバー51とは反対側から挿通されており、各ボルト54が対応するナット55にねじ結合することにより、ギアカバー51はギアケース33に固定されるようになっている。
【0041】
ここで、カバー側固定脚52とケース側固定脚53は、それぞれセクタギア42の外周側つまりセクタギア42の移動範囲よりも外側に配置されている。これにより、ギアカバー51はセクタギア42の外周側においてボルト54とナット55とによりギアケース33に固定されるようになっている。
【0042】
図4に示すように、ギアカバー51の延長部51bの先端側にはセクタギア42の溝部42cに向けて開口するボルト孔56が設けられ、これに対応してギアケース33のベース部33bには溝部42cに向けて開口する挿通孔57が設けられている。ボルト孔56には第1の締結部材としてのボルト58がベース部33bとは反対側から挿通され、このボルト58はセクタギア42の溝部42cとギアケース33の挿通孔57とを貫通してベース部33bの裏面側に突出している。一方、ベース部33bの挿通孔57にはフランジを備えたスリーブ状のナット59が延長部51bとは反対側から挿通され、ボルト58はこのナット59にねじ結合している。これにより、ギアカバー51の延長部51bは、セクタギア42の溝部42cを貫通したボルト58により、円筒部51a側のボルト54に対してピニオン37とセクタギア42との噛み合い部分よりも支軸41の側においてギアケース33のベース部33bに固定されるようになっている。つまり、ギアカバー51はピニオン37とセクタギア42との噛み合い部分を挟んだ両側においてギアケース33に固定(支持)されるようになっている。
【0043】
図5、図6に示すように、ギアカバー51のセクタギア42と対向する内面には、一対のカバー側押さえ部61a,61bが設けられている。これらのカバー側押さえ部61a,61bは、それぞれギアカバー51がギアケース33に固定されたときに支軸41を中心とするように円弧状に延びるとともに、ギアカバー51の内面からセクタギア42に向けて突出するリブ状に形成されている。そして、一方のカバー側押さえ部61aはセクタギア42のギア部42bの根本部分において当該セクタギア42の側面に当接し、他方のカバー側押さえ部61bはセクタギア42の装着孔42aの外周部分において当該セクタギア42の側面に当接している。
【0044】
一方、図4、図5に示すように、ギアケース33のセクタギア42と対向する外面には一対のケース側押さえ部62a,62bが設けられている。これらのケース側押さえ部62a,62bも、それぞれ支軸41を中心とするように円弧状に延びるとともに、ギアケース33の外面からセクタギア42に向けて突出するリブ状に形成されており、一方のケース側押さえ部62aはセクタギア42のギア部42bの根本部分において当該セクタギア42の側面にカバー側押さえ部61aとは反対側から当接し、他方のケース側押さえ部62bはセクタギア42の装着孔42aの外周部分において当該セクタギア42の側面にカバー側押さえ部61bとは反対側から当接している。つまり、セクタギア42は、ギアカバー51に設けられるカバー側押さえ部61aとギアケース33に設けられるケース側押さえ部61bとによりギア部42bの根本部分が挟み込まれるとともに、ギアカバー51に設けられるカバー側押さえ部61bとギアケース33に設けられるケース側押さえ部62bとにより装着孔42aの外周部分が挟み込まれ、これにより、セクタギア42はギアカバー51によりギアケース33に押さえつけられて、その支軸41を支点とした傾斜が抑制されるようになっている。
【0045】
このように、このパワーウインド装置21では、ピニオン37とセクタギア42との噛み合い部分を覆うギアカバー51によりセクタギア42をギアケース33に押さえつけてその支軸41を支点とした傾斜を抑制するようにしたので、ピニオン37とセクタギア42との噛み合い精度を確保して、この噛み合い部分からの異音の発生を防止するとともに、この駆動ユニット23の作動効率を高めることができる。また、ギアケース33に設けられる円弧状のケース側押さえ部62a,62bとギアカバー51に設けられる円弧状のカバー側押さえ部61a,61bとによりセクタギア42を押さえるようにしたので、所定の範囲で揺動するセクタギア42に対して常に各押さえ部61a,61b,62a,62bを所定の範囲で当接させて、セクタギア42の傾斜を確実に押さえることができる。
【0046】
また、前述のように、このパワーウインド装置21では、セクタギア42の傾斜を押さえるギアカバー51を、セクタギア42に設けられる溝部42cを貫通するボルト58と、セクタギア42の外周側に配置されるボルト54とによりギアケース33に固定するようにしたので、ピニオン37とセクタギア42との噛み合い部分を挟んだ両側でギアカバー51をギアケース33に支持させることができる。これにより、セクタギア42からの荷重をギアカバー51により確実に支持して、セクタギア42の支軸41を中心とした傾斜を確実に防止することができる。
【0047】
さらに、このパワーウインド装置21では、リフトアーム24とセクタギア42とを別体に形成するようにしているので、車両の仕様に応じて、駆動ユニット23はそのままに形状の異なるリフトアーム24を用いることができる。これにより、各仕様において駆動ユニット23を併用することができ、これにより、駆動ユニット23つまりパワーウインド装置21の汎用性を高めることができる。
【0048】
図5に示すように、ナット55,59にねじ結合してギアカバー51をギアケース33に固定した各ボルト54,58は、その先端部がそれぞれナット55,59を貫通してギアケース33の裏面側に突出している。一方、ドア11の内部に設けられるドアパネル11aには駆動ユニット23の取り付け用の取付孔63が設けられている。そして、各ボルト54,58の先端部が対応する取付孔63に挿通され、ドアパネル11aの反対側からボルト54,58にナット64が締結されることにより、駆動ユニット23はピニオン37の軸方向をドア11の厚み方向に向けてドアパネル11aに固定されるようになっている。
【0049】
このように、このパワーウインド装置21では、ギアカバー51をギアケース33に固定するためのボルト54,58の先端部が車両への固定部とされ、ギアケース33つまり駆動ユニット23をドアパネル11aに固定するためのボルトとして併用するようにしたので、駆動ユニット23をドアパネル11aに固定するための別のボルトを不要にすることができる。これにより、このパワーウインド装置21の部品点数を削減して、そのコストを低減することができる。
【0050】
図7は図2に示す駆動ユニットの変形例を示す正面図である。なお、図7においては、前述した部材に対応する部材には同一の符号を付してある。
【0051】
図2に示す場合では、セクタギア42とリフトアーム24とを揺動自在に支持する支軸41は、ギアケース33のベース部33bに設けられる支持孔38により、その軸方向の一端のみが支持されている。
【0052】
これに対して、図7に示す変形例では、ギアケース33に固定されるギアカバー51の延長部51bを支軸41の部分にまでさらに延長し、当該延長部51bに設けられる支持孔65により支軸41の他端を支持するようにしている。これにより、支軸41はセクタギア42を挟んだ両端においてギアケース33とギアカバー51とにより支持され、その支持剛性が高められることになる。
【0053】
このように、支軸41の一端(基端)をギアケース33の支持孔38で支持するとともに他端(先端)をギアカバー51の支持孔65で支持することにより、支軸41の支持剛性を高めて、当該支軸41に支持されるセクタギア42の傾斜をさらに確実に防止することができる。
【0054】
図8(a)、(b)はそれぞれ本発明の他の実施の形態であるパワーテールゲート装置を備えた車両の一部を示す図であり、図9は図8に示すパワーテールゲート装置の詳細を示す斜視図であり、図10は図9に示すブラケットのユニット化された状態を示す斜視図である。なお、図8〜図10においては、前述した部材に対応する部材には同一の符号を付してある。
【0055】
この実施の形態に示す車両用自動開閉装置としてのパワーテールゲート装置71は、車両72に設けられる開閉体としてのテールゲート73を自動的に開閉するものであり、その駆動ユニット23は車体74の後部ピラー74aに配置されている。
【0056】
テールゲート73は車体74のルーフ部74bの後端部にヒンジ75を介して装着されており、このヒンジ75を中心として図8(a)に示す全閉位置と図8(b)に示す全開位置との間で車両72の上下方向に開閉自在となっている。
【0057】
図9に示すように、この駆動ユニット23は鋼板により形成されたブラケット76を備えており、このブラケット76は3本のボルト77によりギアケース33の出力軸35が設けられる側の外面に一体的に固定されている。ピニオン(不図示)は軸受78によりブラケット76に回転自在に支持されており、ブラケット76がギアケース33に一体的に固定されたときに減速機32内の出力軸(不図示)に一体回転自在に連結されて当該出力軸とともに回転するようになっている。
【0058】
また、支軸41はブラケット76とギアカバー51の延長部51bとの間に設けられており、セクタギア42は支軸41を介してブラケット76に揺動自在に支持されている。つまり、ブラケット76に設けた支軸41によりセクタギア42はギアケース33に揺動自在に支持されている。また、ギアカバー51もボルト54,58によりブラケット76に固定されている。これにより、本実施の形態においても、支軸41はセクタギア42を挟んだ両端においてブラケット76とギアカバー51とにより支持され、その支持剛性が高められることになる。
【0059】
図10に示すように、ブラケット76は、予め、ピニオンや支軸41、セクタギア42、ギアカバー51等が組み付けられてユニット化されている。そして、ブラケット76は、このユニット化された状態でボルト77によりギアケース33に固定されるようになっている。
【0060】
このように、ブラケット76を予めセクタギア42やギアカバー51等を組み付けてユニット化した状態でギアケース33に固定するようにしたので、このパワーテールゲート装置71の組み立て作業を容易にすることができる。
【0061】
また、このパワーテールゲート装置71では、セクタギア42やギアカバー51等が組み付けられてユニット化されたブラケット76をギアケース33に固定するようにしているので、ユニット化されたブラケット76を交換することで、ギアケース33を併用したまま車両72側の仕様変化に対応することができる。これにより、ギアケース33つまりこのパワーテールゲート装置71の汎用性を高めることができる。
【0062】
この実施の形態においては、リフトアーム24はセクタギア42と一体に形成されており、このリフトアームの先端は駆動ロッド81を介してテールゲート73に連結されている。そして、セクタギア42とともにリフトアーム24が車両72の上下方向に揺動することにより、テールゲート73が開閉されるようになっている。
【0063】
なお、符号82はテールゲート73の開閉を補助するためのガスステーである。
【0064】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、前記実施の形態においては、本発明を車両のパワーウインド装置21とパワーテールゲート装置71に適用した場合を示しているが、これに限らず、例えば、車両に設けられる開閉体を自動的に開閉する車両用自動開閉装置であれば他の車両用自動開閉装置に本発明を適用してもよい。
【0065】
また、前記実施の形態においては、従動ギアは扇形状のセクタギア42とされているが、これに限らず、全周にギア部を備えた円形のギアを用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0066】
11 ドア
11a ドアパネル
12 ウインドガラス(開閉体)
13 ガイドユニット
21 パワーウインド装置(車両用自動開閉装置)
22 ウインドレギュレータ
23 駆動ユニット
24 リフトアーム(駆動アーム)
24a 固定片
24b 貫通孔
24c 固定孔
25 イコライザアーム
26 連結軸
27,28 ローラガイド
31 電動モータ
31a アマチュア軸(回転軸)
32 減速機
33 ギアケース
33a 本体部
33b ベース部
34 ウォームギア機構
34a ウォーム
34b ウォームホイル
35 出力軸
36 コネクタ
37 ピニオン(駆動ギア)
38 支持孔
41 支軸
41a 先端部
41b 小径部
41c 大径部
42 セクタギア(従動ギア)
42a 装着孔
42b ギア部
42c 溝部
42d 凹部
42e 固定ボス
43 軸受
51 ギアカバー
51a 円筒部
51b 延長部
52 カバー側固定脚
52a ボルト孔
53 ケース側固定脚
53a 挿通孔
54 ボルト(第2の締結部材)
55 ナット
56 ボルト孔
57 挿通孔
58 ボルト(第1の締結部材)
59 ナット
61a,61b カバー側押さえ部
62a,62b ケース側押さえ部
63 取付孔
64 ナット
65 支持孔
71 パワーテールゲート装置(車両用自動開閉装置)
72 車両
73 テールゲート(開閉体)
74 車体
74a 後部ピラー
74b ルーフ部
75 ヒンジ
76 ブラケット
77 ボルト
78 軸受
81 駆動ロッド
82 ガスステー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後端部にヒンジを介して前記車両の上下方向に開閉自在に装着されたテールゲートを自動的に開閉するパワーテールゲート装置であって、
回転軸を備え、車体に配置される電動モータと、
前記電動モータに取り付けられるギアケースと、
前記ギアケースに収容され、前記回転軸の回転を減速して出力軸に伝達するウォームギア機構と、
前記出力軸に設けられ、前記ギアケースの外側に配置されて該出力軸とともに回転する駆動ギアと、
前記ギアケースと一体的に設けられた支軸により揺動自在に支持されて前記駆動ギアに噛み合わされ、前記支軸の軸心を中心とした円弧状の溝部を備えた従動ギアと、
前記従動ギアと一体的に設けられるとともに前記テールゲートに連結され、前記従動ギアとともに揺動して前記テールゲートを開閉させる駆動アームと、
前記溝部を貫通し前記ギアケースに組み付けられる第1の締結部材と、前記従動ギアの外周側に配置され前記ギアケースに組み付けられる第2の締結部材とにより前記ギアケースに固定され、前記駆動ギアと前記従動ギアとの噛み合い部分を覆うとともに前記従動ギアの側面に当接するカバー側押さえ部が設けられたギアカバーとを有することを特徴とするパワーテールゲート装置。
【請求項2】
請求項1記載のパワーテールゲート装置において、前記カバー側押さえ部は、前記支軸を中心とした円弧状に延びるとともに前記従動ギアに向けて突出して形成されることを特徴とするパワーテールゲート装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のパワーテールゲート装置において、前記支軸の先端を前記ギアカバーにより支持することを特徴とするパワーテールゲート装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のパワーテールゲート装置において、前記ギアケースにはナットが組み付けられ、前記第1と第2の締結部材はそれぞれ前記ナットにねじ結合するボルトであり、前記第1と第2の締結部材の先端にはそれぞれ前記車体に固定可能な固定部が形成され、前記固定部は前記ナットを貫通して前記車体に固定可能に該ナットから突出していることを特徴とするパワーテールゲート装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のパワーテールゲート装置において、前記ギアケースにはブラケットが一体的に固定され、該ブラケットには前記従動ギアを軸支する支軸が設けられるとともに、前記ギアカバーが前記第1の締結部材により前記ブラケットに固定されることを特徴とするパワーテールゲート装置。
【請求項6】
請求項5記載のパワーテールゲート装置において、前記ブラケットは、予め前記ギアカバーと前記従動ギアとが前記ブラケットに組み付けられてユニット化された状態で前記ギアケースに固定されることを特徴とするパワーテールゲート装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−228420(P2009−228420A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57911(P2009−57911)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【分割の表示】特願2008−71765(P2008−71765)の分割
【原出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】