ビードの終端部の形状を判定する装置及びその方法
【課題】本発明の目的は、溶接プロセスと同期してビードの画像を取得し、溶接プロセス直後の極めて短い時間でビードの終端部の穴欠陥を高精度に判定することが可能なビードの終端部の形状を判定する装置及びその方法を提供することにある。
【解決手段】本発明の装置1は、レーザ照射部2と、モニタ部3と、記憶部4と、画像取込部5と、ビード認識部6と、ビード形状判定部7とを備えている。ビード形状判定部7は、ビード認識部6によって認識されたビード領域に基づいてビード領域の終端部の位置を算出し、ビード領域の終端部がビード領域の延在方向に凸形状か凹形状かを判定するように構成されている。
【解決手段】本発明の装置1は、レーザ照射部2と、モニタ部3と、記憶部4と、画像取込部5と、ビード認識部6と、ビード形状判定部7とを備えている。ビード形状判定部7は、ビード認識部6によって認識されたビード領域に基づいてビード領域の終端部の位置を算出し、ビード領域の終端部がビード領域の延在方向に凸形状か凹形状かを判定するように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接材料に溶接用レーザを照射した際に形成されるビードの終端部の形状を判定する装置及びその方法に関するものである。詳しくは、本発明は、レーザ溶接による重ね合わせ溶接を行う際、溶接直後に金属からの熱発光が残っている極めて短い時間内に、ビードの終端部の画像を高速カメラで取得し、取得した画像に基づいてビードの終端部の穴欠陥を判定するアルゴリズムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザ溶接などによる溶接を行う際に、カメラや光センサなどでビード領域からの信号を検出し、その検出信号を解析してレーザ溶接における溶接欠陥を判定する方法が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
【0003】
特許文献1では、溶接プロセス中に熱放射光センサ及び反射光センサを用いて溶接箇所からの信号を検出し、この検出信号の経時変化を溶接条件に対応する基準データテーブルと比較し、溶接可能な状態かを判定している。これにより、特許文献1では、溶接後の溶接割れや溶接欠陥を防止している。
【0004】
また、特許文献2では、測定用ビームを溶接領域に放射し、溶接直後に得られた温度信号を、実験的に求めた温度の上限及び下限と比較している。そして、特許文献2では、この温度の上限及び下限を違反した回数をカウントして溶接欠陥を判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−326134号公報
【特許文献2】特開2005−230913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図11は、レーザ溶接を行う際に、カメラや光センサなどを用いてビード領域から連続的に信号を検出した場合の例を示している。
図11に示すように、特許文献1のような検出信号を用いる判定方法では、ビード領域の終端部の位置で溶接用レーザの照射及びビード領域のモニタ動作が停止すると、ビードの終端部における検出信号には極めて大きな変化が生じることが知られている。そのため、ビード領域の終端部は、溶接プロセス中と同じ判定方法では溶接欠陥を判定することができないことが問題となっている。
【0007】
また、特許文献2の方法では、溶接直後に得られた温度信号が制限値を何回違反したかで溶接欠陥を判定しており、ビード領域の終端部の形状自体が全く観察されていない。したがって、正確にビード領域の終端部の溶接欠陥を判定することができない可能性がある。しかも、特許文献2では、溶接用レーザ以外に測定用レーザを照射する装置も必要となり、装置のコストが高くなるという問題もあった。
【0008】
図12は、ビード領域の終端部をカメラで撮影した画像であり、ビード領域の終端部において穴欠陥が生じた場合の画像と、正常に溶接が終了した場合の画像とを示している。図12(a)に示すように、ビード領域の終端部に穴欠陥が生じた場合、ビード領域の終端部がビードの延在方向に凹形状となる。一方、図12(b)に示すように、溶接が正常に終了した場合には、ビード領域の終端部がビードの延在方向に凸形状となる。
【0009】
これに対して、従来より、ビード領域の終端部の穴欠陥を溶接プロセスが完全に終了した後に検査する方法が提案されている。例えば、バックライト式と呼ばれる検査方法では、レーザ溶接のプロセスが完全に終了した後に、別工程で溶接面に対して裏側から照明光を照射し、表側への漏れ光を検出して、穴欠陥を判定している。しかしながら、この方法では、溶接が終了した後に別工程として検査工程が追加されるので、生産効率が低下してしまうという問題もあった。
【0010】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、溶接プロセスと同期してビード領域の画像を取得し、溶接プロセス直後の極めて短い時間でビードの終端部の穴欠陥を高精度に判定することが可能なビードの終端部の形状を判定する装置及びその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の発明者は、溶接プロセスが終了した直後に、溶接用レーザの照射部の透過率の低さに打ち勝って、溶接材料からある程度の光量の金属熱発光が観察できることに気付き、この画像をカメラなどで撮像して穴欠陥の判定に利用する方法を発見した。この画像は、特許文献1の従来の方法では、溶接プロセス後であるため不要と判定されていた画像である。本願の発明者は、溶接プロセスが終了した直後の画像に着目し、従来では全く知られていない特徴的な形状判定を行い、溶接プロセス後の極めて短い時間で(実質的に、溶接プロセスの時間内で)穴欠陥の検査が実現できる装置及びその方法を確立した。
【0012】
本発明によれば、上記従来技術の有する課題を解決するために、溶接材料に溶接用レーザを照射した際に形成されるビードの終端部の形状を判定する装置であって、前記溶接材料に前記溶接用レーザを照射するレーザ照射部と、前記溶接材料上の前記溶接用レーザを照射した部分の画像を連続的に取得するモニタ部と、前記モニタ部によって取得された画像を記憶する記憶部と、前記画像内の平均輝度が所定の画像取込用閾値以下の場合に前記記憶部から前記画像を取得する画像取込部と、前記画像取込部によって取得された前記画像内のビード領域を認識するビード認識部と、前記ビード認識部によって認識された前記ビード領域に基づいて前記ビード領域の終端部の位置を算出し、前記ビード領域の前記終端部が前記ビード領域の延在方向に凸形状か凹形状かを判定するビード形状判定部とを備えている装置が提供される。
【0013】
また、本発明に係る装置の別の実施態様によれば、前記モニタ部は、溶接プロセス中の画像を取得するための第1のモニタ手段と、溶接プロセスが終了した後の画像を取得するための第2のモニタ手段と、前記溶接用レーザを照射した部分からの光を前記第1のモニタ手段と前記第2のモニタ手段の2方向に分割する光分割手段とを備え、前記第1のモニタ手段に導かれる光の光量が、前記第2のモニタ手段に導かれる光の光量よりも小さくなっている。
【0014】
また、本発明に係る装置の別の実施態様によれば、前記ビード認識部は、前記画像内において所定の領域認識用閾値以上の輝度を有する領域をビード領域候補として決定する領域認識手段と、前記ビード領域候補のアスペクト比に基づいて、前記ビード領域候補が前記ビード領域であるかを判断する判断手段とを備えている。
【0015】
また、本発明に係る装置の別の実施態様によれば、前記ビード形状判定部は、前記ビード領域の代表点を算出する代表点算出手段と、前記ビード領域の前記終端部の中心位置を算出する中心位置算出手段と、前記ビード領域の前記代表点と前記ビード領域の前記終端部の前記中心位置との間の中間点を算出する中間点算出手段と、前記中心位置と前記中間点とを結ぶ線分を挟んで平行に延び、且つ前記ビード領域の前記終端部の外周部に交わる2つの直線を算出する直線算出手段と、前記2つの直線と前記終端部の前記外周部との交点を算出し、前記交点と前記中心位置とに基づいて湾曲度を計算し、該湾曲度を用いて前記ビード領域の前記終端部が凸形状か凹形状かを判定する湾曲度算出手段とを備えている。
【0016】
また、本発明に係る装置の別の実施態様によれば、前記湾曲度は、前記交点を結ぶ線分から前記中心位置までの距離である。
【0017】
また、本発明に係る装置の別の実施態様によれば、前記湾曲度算出手段は、前記画像取込部が複数の画像を取得した場合、前記複数の画像から求められた平均湾曲度を用いて前記ビード領域の前記終端部が凸形状か凹形状かを判定するように構成されている。
【0018】
また、本発明によれば、溶接材料に溶接用レーザを照射した際に形成されるビードの終端部の形状を判定する方法であって、前記溶接材料に前記溶接用レーザを照射するステップと、前記溶接材料上の前記溶接用レーザを照射した部分の画像を時間経過に沿って取得するステップと、前記画像を記憶部に記憶するステップと、前記画像内の平均輝度が所定の画像取込用閾値以下の場合に前記記憶部から前記画像を取得するステップと、前記記憶部から取得した前記画像内のビード領域を認識するステップと、該認識されたビード領域に基づいて前記ビード領域の終端部の位置を算出し、前記ビード領域の前記終端部が前記ビード領域の延在方向に凸形状か凹形状かを判定するステップとを含む方法が提供される。
【0019】
また、本発明に係る方法の別の実施態様によれば、前記溶接用レーザを照射した部分の画像を時間経過に沿って取得するステップは、前記溶接用レーザを照射した部分からの光を第1のモニタ手段と第2のモニタ手段の2方向に分割する工程と、前記第1のモニタ手段によって溶接プロセス中の画像を取得する工程と、前記第2のモニタ手段によって溶接プロセスが終了した後の画像を取得する工程とを含み、前記第1のモニタ手段に導かれる光の光量が、前記第2のモニタ手段に導かれる光の光量よりも小さくなっている。
【0020】
また、本発明に係る方法の別の実施態様によれば、前記ビード領域を認識するステップは、前記画像内において所定の領域認識用閾値以上の輝度を有する領域をビード領域候補として決定する工程と、前記ビード領域候補のアスペクト比に基づいて、前記ビード領域候補が前記ビード領域であるかを判断する工程とを含む。
【0021】
また、本発明に係る方法の別の実施態様によれば、前記ビード領域内の終端部が前記ビード領域の延在方向に凸形状か凹形状かを判定するステップは、前記ビード領域の代表点を算出する工程と、前記ビード領域の前記終端部の中心位置を算出する工程と、前記ビード領域の前記代表点と前記ビード領域の前記終端部の前記中心位置との間の中間点を算出する工程と、前記中心位置と前記中間点とを結ぶ線分を挟んで平行に延び、且つ前記ビード領域の前記終端部の外周部に交わる2つの直線を算出する工程と、前記2つの直線と前記終端部の前記外周部との交点を算出し、前記交点と前記中心位置とに基づいて湾曲度を計算し、該湾曲度を用いて前記ビード領域の前記終端部が凸形状か凹形状かを判定する工程とを含む。
【0022】
また、本発明に係る方法の別の実施態様によれば、前記湾曲度は、前記交点を結ぶ線分から前記中心位置までの距離である。
【0023】
また、本発明に係る方法の別の実施態様によれば、前記終端部が凸形状か凹形状かを判定する工程は、前記記憶部から複数の画像を取得した場合、前記複数の画像から求められた平均湾曲度を用いて前記ビード領域の前記終端部が凸形状か凹形状かを判定する。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るビードの終端部の形状を判定する装置によれば、前記溶接材料に前記溶接用レーザを照射するレーザ照射部と、前記溶接材料上の前記溶接用レーザを照射した部分の画像を連続的に取得するモニタ部と、前記モニタ部によって取得された画像を記憶する記憶部と、前記画像内の平均輝度が所定の画像取込用閾値以下の場合に前記記憶部から前記画像を取得する画像取込部と、前記画像取込部によって取得された前記画像内のビード領域を認識するビード認識部と、前記ビード認識部によって認識された前記ビード領域に基づいて前記ビード領域の終端部の位置を算出し、前記ビード領域の前記終端部が前記ビード領域の延在方向に凸形状か凹形状かを判定するビード形状判定部とを備えている。この構成によれば、溶接直後に得られた画像を用いてビード領域の終端部の形状自体を凸形状か凹形状かを判定するので、溶接プロセス中に得られる信号の経時変化を利用する従来の構成に比べて、より高精度にビードの終端部の穴欠陥を判定することができる。また、溶接プロセス後の極めて短い時間で(実質的に、溶接プロセスの時間内で)、ビードの終端部の穴欠陥を判定することができ、溶接が終了した後に別工程として検査工程を追加する必要がなく、生産効率が向上する。また、この構成によれば、装置が溶接用レーザを照射する照射部のみ備えていればよいので、従来のように溶接用レーザ以外に測定用レーザ用の照射部を設ける必要がなくなり、装置のコストを抑えることもできる。
【0025】
また、本発明に係るビードの終端部の形状を判定する装置によれば、前記モニタ部は、溶接プロセス中の画像を取得するための第1のモニタ手段と、溶接プロセスが終了した後の画像を取得するための第2のモニタ手段と、前記溶接用レーザを照射した部分からの光を前記第1のモニタ手段と前記第2のモニタ手段の2方向に分割する光分割手段とを備え、前記第1のモニタ手段に導かれる光の光量が、前記第2のモニタ手段に導かれる光の光量よりも小さくなっているので、ダイナミックレンジが小さいモニタ手段を使用する場合でも、2つのモニタ手段を溶接中と溶接直後用とで使い分けることにより、溶接中の画像と溶接直後の画像の両方を撮像することができる。したがって、ダイナミックレンジが小さいモニタ手段を使用する場合でも、溶接直後の画像を用いてビード領域の終端部の穴欠陥を判定することができる。
【0026】
また、本発明に係るビードの終端部の形状を判定する装置によれば、前記ビード認識部は、前記画像内において所定の領域認識用閾値以上の輝度を有する領域をビード領域候補として決定する領域認識手段と、前記ビード領域候補のアスペクト比に基づいて、前記ビード領域候補が前記ビード領域であるかを判断する判断手段とを備えているので、アスペクト比という簡易な処理でビード領域が認識されることになり、装置への処理負荷も小さく、認識処理を高速に行うことができる。
【0027】
また、本発明に係るビードの終端部の形状を判定する装置によれば、前記ビード形状判定部は、前記ビード領域の代表点を算出する代表点算出手段と、前記ビード領域の前記終端部の中心位置を算出する中心位置算出手段と、前記ビード領域の前記代表点と前記ビード領域の前記終端部の前記中心位置との間の中間点を算出する中間点算出手段と、前記中心位置と前記中間点とを結ぶ線分を挟んで平行に延び、且つ前記ビード領域の前記終端部の外周部に交わる2つの直線を算出する直線算出手段と、前記2つの直線と前記終端部の前記外周部との交点を算出し、前記交点と前記中心位置とに基づいて湾曲度を計算し、該湾曲度を用いて前記ビード領域の前記終端部が凸形状か凹形状かを判定する湾曲度算出手段とを備えているので、画像内のビード領域の終端部に対してベクトルを利用した形状判定が行われることになり、終端部が凸形状か凹形状かをより高精度に判定することができる。
【0028】
また、本発明に係るビードの終端部の形状を判定する装置によれば、前記湾曲度は、前記交点を結ぶ線分から前記中心位置までの距離であるので、簡易な処理で湾曲度を算出することができ、装置への処理負荷も小さく、判定処理を高速に行うことができる。
【0029】
また、本発明に係るビードの終端部の形状を判定する装置によれば、前記湾曲度算出手段は、前記画像取込部が複数の画像を取得した場合、前記複数の画像から求められた平均湾曲度を用いて前記ビード領域の前記終端部が凸形状か凹形状かを判定するように構成されているので、複数の画像の湾曲度の結果が反映されることになり、終端部が凸形状か凹形状かをより高精度に判定することができる。
【0030】
本発明に係るビードの終端部の形状を判定する方法によれば、前記溶接材料に前記溶接用レーザを照射するステップと、前記溶接材料上の前記溶接用レーザを照射した部分の画像を時間経過に沿って取得するステップと、前記画像を記憶部に記憶するステップと、前記画像内の平均輝度が所定の画像取込用閾値以下の場合に前記記憶部から前記画像を取得するステップと、前記記憶部から取得した前記画像内のビード領域を認識するステップと、該認識されたビード領域に基づいて前記ビード領域の終端部の位置を算出し、前記ビード領域の前記終端部が前記ビード領域の延在方向に凸形状か凹形状かを判定するステップとを含む。この方法によれば、溶接直後に得られた画像を用いてビード領域の終端部の形状自体を凸形状か凹形状かを判定するので、溶接プロセス中に得られる信号の経時変化を利用する従来の構成に比べて、より高精度にビードの終端部の穴欠陥を判定することができる。また、溶接プロセス後の極めて短い時間で(実質的に、溶接プロセスの時間内で)、ビードの終端部の穴欠陥を判定することができ、溶接が終了した後に別工程として検査工程を追加する必要がなく、生産効率が向上する。
【0031】
また、本発明に係るビードの終端部の形状を判定する方法によれば、前記溶接用レーザを照射した部分の画像を時間経過に沿って取得するステップは、前記溶接用レーザを照射した部分からの光を第1のモニタ手段と第2のモニタ手段の2方向に分割する工程と、前記第1のモニタ手段によって溶接プロセス中の画像を取得する工程と、前記第2のモニタ手段によって溶接プロセスが終了した後の画像を取得する工程とを含み、前記第1のモニタ手段に導かれる光の光量が、前記第2のモニタ手段に導かれる光の光量よりも小さくなっているので、ダイナミックレンジが小さいモニタ手段を使用する場合でも、2つのモニタ手段を溶接中と溶接直後用とで使い分けることにより、溶接中の画像と溶接直後の画像の両方を撮像することができる。したがって、ダイナミックレンジが小さいモニタ手段を使用する場合でも、溶接直後の画像を用いてビード領域の終端部の穴欠陥を判定することができる。
【0032】
また、本発明に係るビードの終端部の形状を判定する方法によれば、前記ビード領域を認識するステップは、前記画像内において所定の領域認識用閾値以上の輝度を有する領域をビード領域候補として決定する工程と、前記ビード領域候補のアスペクト比に基づいて、前記ビード領域候補が前記ビード領域であるかを判断する工程とを含むので、アスペクト比という簡易な処理でビード領域が認識されることになり、認識処理を高速に行うことができる。
【0033】
また、本発明に係るビードの終端部の形状を判定する方法によれば、前記ビード領域内の終端部が前記ビード領域の延在方向に凸形状か凹形状かを判定するステップは、前記ビード領域の代表点を算出する工程と、前記ビード領域の前記終端部の中心位置を算出する工程と、前記ビード領域の前記代表点と前記ビード領域の前記終端部の前記中心位置との間の中間点を算出する工程と、前記中心位置と前記中間点とを結ぶ線分を挟んで平行に延び、且つ前記ビード領域の前記終端部の外周部に交わる2つの直線を算出する工程と、前記2つの直線と前記終端部の前記外周部との交点を算出し、前記交点と前記中心位置とに基づいて湾曲度を計算し、該湾曲度を用いて前記ビード領域の前記終端部が凸形状か凹形状かを判定する工程とを含むので、画像内のビード領域の終端部に対してベクトルを利用した形状判定が行われることになり、終端部が凸形状か凹形状かをより高精度に判定することができる。
【0034】
また、本発明に係るビードの終端部の形状を判定する方法によれば、前記湾曲度は、前記交点を結ぶ線分から前記中心位置までの距離であるので、簡易な処理で湾曲度を算出することができ、判定処理を高速に行うことができる。
【0035】
また、本発明に係るビードの終端部の形状を判定する方法によれば、前記終端部が凸形状か凹形状かを判定する工程は、前記記憶部から複数の画像を取得した場合、前記複数の画像から求められた平均湾曲度を用いて前記ビード領域の前記終端部が凸形状か凹形状かを判定するので、複数の画像の湾曲度の結果が反映されることになり、終端部が凸形状か凹形状かをより高精度に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態に係るビードの終端部の形状を判定する装置の構成を示したブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る装置の処理内容を示した図であり、ビード領域の終端部の形状を判定する手順を示した図である。
【図3】本発明の実施形態に係るモニタ部の構成と、画像取込部による画像取り込み処理を示した図である。
【図4】本発明の実施形態に係るビード認識部と代表点算出手段の処理を示した図である。
【図5】本発明の実施形態に係る装置によって湾曲度を算出した実験例である。
【図6】本発明の実施形態に係る装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態に係る装置内のビード認識部の動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態に係る装置内のビード形状判定部の動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の別の実施形態に係るモニタ部の構成と、画像取込部による画像取り込み処理を示した図である。
【図10】本発明の別の実施形態に係るビード形状判定部の処理を示した図である。
【図11】従来のビード領域の溶接欠陥を判定する方法を示した図であり、レーザ溶接を行う際にカメラや光センサなどを用いてビード領域から連続的に信号を検出した場合の例である。
【図12】ビード領域の終端部をカメラで撮影した場合の画像であり、(a)が穴欠陥が生じた場合の画像であり、(b)が正常に溶接が終了した場合の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態に係るビードの終端部の形状を判定する装置及びその方法を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るビードの終端部の形状を判定する装置の構成を示したブロック図であり、図2は、ビード領域の終端部の形状を判定する手順を示した図である。また、図3は、本発明の実施形態に係るモニタ部の構成と、画像取込部による画像取り込み処理を示した図である。
【0038】
図1に示すように、本実施形態に係るビードの終端部の形状を判定する装置1は、溶接材料10を重ね合わせ溶接する際に用いられる装置であり、レーザ照射部2と、モニタ部3と、記憶部4と、画像取込部5と、ビード認識部6と、ビード形状判定部7と、アラーム出力部8とを備えている。以下に各部分について詳細に説明する。
【0039】
レーザ照射部2は、溶接用レーザを照射するものであり、光ファイバなどを経由して送られてくるレーザを重ね合わせた溶接材料10に照射するヘッド部(図示せず)を有している。なお、本実施形態において、レーザ照射部2は、波長1064nm付近のレーザ光を発生させるように構成されている。
【0040】
図1に示すように、モニタ部3は、レーザ照射部2付近に設けられ、溶接用レーザを照射した部分の画像を連続的に取得するように構成されている。モニタ部3は、例えば、500Hz前後のフレームレートを有する高速カメラで構成されている。また、本実施形態では、図3(a)に示すように、モニタ部3は、1台の高ダイナミックレンジカメラで構成されている。この高ダイナミックレンジカメラは、信号検出のダイナミックレンジが広く(すなわち、計測可能な輝度の範囲が広い)、溶接中と溶接直後の両方の画像を撮像できるものである。
【0041】
また、図1に示すように、記憶部4は、モニタ部3に接続されており、モニタ部3により取得された画像を時間経過に沿って連続的に記憶するようになっている。
【0042】
図1に示すように、画像取込部5は、記憶部4に接続されており、記憶部4に記憶されている画像の中から、溶接プロセスが終了した直後の画像を取り込むように構成されている。
ここで、照射部2のヘッド部の透過率は、1060nm付近のレーザ波長で最適化されているため、一般の可視〜近赤外光における透過率は高くない。そのため、溶接プロセスの終了直後で溶接材料10がその熱で弱く発光している現象を観察できるのは概ね数10msと短い時間であり、その後は、溶接材料10からの発光の減衰が大きなって観察は厳しくなる。実験の結果、発光を観察できる時間は、典型的には、20msであった。したがって、本実施形態では、モニタ部3が500Hz前後のフレームレートを有する高速カメラで構成されているので、画像取込部5は、10枚前後(20ms÷2ms)の画像を取得できることになる。
【0043】
また、画像取込部5は、溶接プロセス中の画像か溶接プロセス終了直後の画像かを判断するために、画像内の平均輝度を利用して溶接プロセスが終了したかを判定している。実験では、溶接プロセス中の画像内の平均輝度は、溶接プロセス終了直後と比較して3〜4桁ほど高いことがわかった。したがって、所定の第1の閾値(画像取込用閾値)を、溶接プロセス中と溶接プロセス終了直後の平均輝度の間になるように設定する。そして、図2の手順A及び図3(b)に示すように、画像取込部5は、画像内の平均輝度が所定の第1の閾値(画像取込用閾値)以下の場合に記憶部4から画像を取得するように構成されている。なお、上述したように、溶接プロセス中と溶接プロセス終了直後とでは、平均輝度が大きく異なるので、溶接プロセス終了直後の画像を取り込むための第1の閾値は、容易に設定することができる。
また、発光を観察できる時間の経過後は、モニタ部3によって取得される画像は、真っ暗になってビードの終端部の判定に使用することができなくなる。本実施形態においては、第1の閾値より小さい第2の閾値も設定し、図3(b)に示すように、画像取込部5は、画像内の平均輝度が第2の閾値以下の場合、発光現象が終了したと判定して、画像の取り込み処理を終了する。
【0044】
図1に示すように、ビード認識部6は、画像取込部5に接続されており、画像取込部5が取り込んだ画像を処理するものである。ビード認識部6は、画像内において所定の領域認識用閾値以上の輝度を有する領域をビード領域候補として決定する領域認識手段6aと、ビード領域候補のアスペクト比に基づいて、ビード領域候補がビード領域であるかを判断する判断手段6bとを備えている。次に、ビード認識部6の各手段の処理について詳しく説明する。
【0045】
図4(a)及び(b)は、ビード認識部6における画像の処理を示した図である。
図4(a)に示すように、ビード認識部6の領域認識手段6aは、画像内で所定の領域認識用閾値以上の輝度が連続する領域をビード領域候補として決定する。ここでは、ビード領域C1と飛散するスパッタ粒子の領域C2がビード領域候補となる。
次に、図4(b)に示すように、ビード認識部6の判断手段6bは、画像に対して一定間隔の縦横直線を引き、ビード領域候補C1,C2を横切る線分の中点Qiを算出する。その後、図2の手順Bに示すように、ビード認識部6の判断手段6bは、各ビード領域候補C1,C2のアスペクト比(縦横比)l1/l2を算出し、このアスペクト比l1/l2に基づいてビード領域候補C1,C2がビード領域であるかを判断する。特に、ビード領域C1はスパッタ粒子の領域C2に比べて扁平(横長)の形状になるので、ビード認識部6の判断手段6bは、アスペクト比l1/l2が所定の値以上になる場合をビード領域と判断する。
【0046】
ただし、高速で飛散するスパッタ粒子に関しては、モニタ部3のカメラの露光時間の短さに限界があるので、カメラで画像を取得した際に、スパッタ粒子の領域C2が横長に延びて映る場合がある。この場合、スパッタ粒子の領域C2もアスペクト比l1/l2が大きくなるので、アスペクト比l1/l2だけに基づいてビード領域であるかを判断するのが難しくなる。
これに対処するために、本実施形態では、ビード認識部6の判断手段6bが更に、ビード領域候補C1,C2が前後の時間フレームの画像で移動しているかどうかを評価してビード領域であるかを判断する。具体的には、溶接プロセスの終了直後では、ビード領域C1は、画像内で停止しており、スパッタ粒子の領域C2は飛散して移動していることを利用する。ビード認識部6の判断手段6bは、アスペクト比l1/l2を閾値にしても複数のビード領域候補があった場合には、前後の時間フレームで停止している領域をビード領域であると判断する。
【0047】
図1に示すように、ビード形状判定部7は、ビード認識部6に接続されており、ビード認識部6によってビード領域が認識された後の画像を処理するものである。ビード形状判定部7は、ビード認識部6によって認識されたビード領域に基づいてビード領域の終端部の位置を算出し、ビード領域の終端部がビード領域の延在方向に凸形状か凹形状かを判定するようになっている。
具体的には、図1に示すように、ビード形状判定部7は、代表点算出手段7aと、中心位置算出手段7bと、中間点算出手段7cと、直線算出手段7dと、湾曲度算出手段7eとを備えている。次に、ビード形状判定部7の各手段について詳しく説明する。
【0048】
図4(c)は、代表点算出手段7aにおける画像の処理を示した図である。図2の手順C及び図4(c)に示すように、代表点算出手段7aは、ビード認識部6によって算出された中点Qiの集合を利用して、ビード領域の代表点Qsを算出する。具体的には、代表点算出手段7aは、中点Qiの集合の平均位置(中点Qiの縦座標の平均及び中点Qiの横座標の平均)を代表点Qsとして算出する。
更に、代表点算出手段7aは、ビード領域の中点Qiの集合を2次関数Yc=aX2+bX+cでフィッティングする。代表点算出手段7aは、2次関数とビード領域の中点Qiとの距離の2乗和が最小となるように係数a,b,cを決定する数学的処理(最小2乗法)を行う。なお、実際には、フィッティング関数が、2次関数Yc=aX2+bX+cではなく、2次関数Xc=aY2+bY+cとなる可能性もあるため、これら両方の関数についてフィッティング処理を行い、フィッティング誤差が小さい方を選択する。
【0049】
図2の手順Dに示すように、中心位置算出手段7bは、代表点算出手段7aにおいて求めた2次関数Ycがビード領域の境界と交わる交点を求めることにより、ビード領域の終端部における幅方向の中心位置Tを算出する。中心位置算出手段7bは、代表点Qsを開始点として2次関数Ycに沿って画像の1ピクセルごとに輝度を評価し、輝度が領域認識用閾値未満となった部分に到達した場合、その画像ピクセルの位置をビード領域の終端部の中心位置Tに決定する。このような処理を行う場合、左右又は上下方向の両方で輝度が領域認識用閾値未満となるピクセルが検出されるが、終端部ではない方向では、ビード領域の発光により終端部に比べて輝度の平均(代表点Qsから境界までの輝度の平均)が大きくなるので、輝度の平均が小さい方向をビード領域の終端部と判定する。
【0050】
図2の手順Eに示すように、本実施形態において、中間点算出手段7cは、ビード領域の代表点Qsとビード領域の終端部の中心位置Tとの間の中間点Wを算出するように構成されている。ビード領域は、曲線状に形成される場合もあるため、より終端部に近い中間点Wを終端部の判定の基点とすることで、ビード領域の曲線部分が終端部の評価に影響しにくくなる。中間点Wは、以下のように、2つの位置ベクトルTとQsの平均位置Wを算出すればよい。
【数1】
【0051】
さらに、図2の手順Eに示すように、直線算出手段7dは、中間点算出手段7cによって算出された中間点Wに基づいて、2つの直線L1,L2を算出するように構成されている。2つの直線L1,L2は、中心位置Tと中間点Wとを結ぶ線分TWに対して垂直な方向に一定距離変位させたものであり、線分TWを挟んで平行に延びるものである。この変位距離は、2つの直線L1,L2がビード領域の終端部の外周部に交わるように設定されている。なお、ビード領域の幅は溶接条件に変更がない限り大きく変化しないので、変位距離は定数として予め設定することができる。
【0052】
図2の手順Eに示すように、湾曲度算出手段7eは、中心位置Tの方向に向かって直線L1,L2に沿って画像の1ピクセルごとに輝度を評価し、輝度が領域認識用閾値未満となった部分に到達した場合、その画像ピクセルの位置をそれぞれ境界点U,Vに決定する。
【0053】
そして、図2の手順Fに示すように、湾曲度算出手段7eは、境界点U,Vを結ぶ線分UVから中心位置Tまでの距離dを湾曲度として算出する。ここで、湾曲度dは、中心位置Tが線分UVに対して中間点W側にあるときは、マイナスの値とし、中心位置Tが線分UVに対して中間点Wとは反対側にあるときは、プラスの値とする。
【0054】
最終的に、図2の手順Gに示すように、湾曲度算出手段7eは、この湾曲度dを用いてビード領域の終端部が凸形状か凹形状かを判定するようになっている。実験では凸形状か凹形状か判断しづらい平らな場合にも穴が発生している場合があったため、湾曲度dの閾値を0とする。したがって、湾曲度算出手段7eは、湾曲度dが0以下の場合には終端部が凹形状であると判定する。
図5は、本実施形態に係る装置1によって湾曲度dを算出した実験例である。図5(a)に示すように、ビード領域の終端部が凹形状の場合は、湾曲度が−0.9と算出され、一方、図5(b)に示すように、ビード領域の終端部が凸形状の場合は、湾曲度が1.5と算出されている。
【0055】
また、画像取込部5では、複数の画像が取り込まれる場合がある。図2の手順Gに示すように、湾曲度算出手段7eは、複数の画像を取得した場合、各画像から湾曲度を算出する。そして、湾曲度算出手段7eは、複数の湾曲度の平均湾曲度を用いてビード領域の終端部が凸形状か凹形状かを判定する。
【0056】
そして、湾曲度算出手段7eは、アラーム出力部8に接続されており(図1参照)、最終的に、湾曲度算出手段7eは、ビード領域の終端部が凹形状である場合には、アラーム出力部8に信号を出力する。その後、アラーム出力部8が、アラームを出力し、オペレータに溶接欠陥を知らせるようになっている。
【0057】
次に、本実施形態に係る装置1の動作を、図面を参照しながら説明する。図6は、本実施形態に係る装置1の動作を示すフローチャートである。
【0058】
まず、ステップS1において、モニタ部3が、溶接用レーザを照射した部分の画像を連続的に取得する。なお、モニタ部3によって取得された画像は、記憶部4に記憶される。
【0059】
次に、ステップS2において、画像取込部5は、溶接プロセス中の画像か溶接プロセス終了直後の画像かを判定する。
画像内の平均輝度が第1の閾値以下の場合(ステップS2のNO)、ステップS3において、画像取込部5は、記憶部4から画像を取り込む。一方、画像内の平均輝度が第1の閾値より大きい場合(ステップS2のYES)、引き続き、モニタ部3による画像の取得が継続される。
【0060】
次に、ステップS4において、画像取込部5は、溶接材料10からの発光現象が終了したかを判定する。
画像内の平均輝度が第2の閾値以下の場合(ステップS4のNO)、発光現象が終了したと判定し、ステップS5に進む。一方、画像内の平均輝度が第2の閾値より大きい場合(ステップS4のYES)、引き続き、画像取込部5による画像の取り込みが継続される。
【0061】
さらに、ステップS5において、ビード認識部6は、画像取込部5によって取得された画像内の溶接形状を認識する。具体的には、ビード認識部6は、画像内に存在する所定の輝度を有する領域がビード領域かそれ以外の領域かを認識する。
【0062】
次に、ステップS6において、ビード形状判定部7は、ビード認識部6によって認識されたビード領域に基づいてビード領域の終端部の位置を算出し、ビード領域の終端部がビード領域の延在方向に凸形状か凹形状かを判定する。
【0063】
そして、ステップS7において、ビード形状判定部7は、ビード領域の終端部が凸形状である場合、欠陥なしと判定する(ステップS7のNO)。一方、ビード領域の終端部が凹形状である場合(ステップS7のYES)、ステップS8に進み、アラーム出力部8が、アラームを出力し、オペレータに溶接欠陥を知らせるようになっている。
以上のステップにより、ビードの終端部の形状を判定し、溶接の欠陥を検出することができる。
【0064】
次に、図6の溶接形状の認識処理(ステップS5)の詳細を、図面を参照しながら説明する。図7は、本実施形態に係るビード認識部6の動作を示すフローチャートである。
【0065】
まず、ステップS51において、ビード認識部6の領域認識手段6aが、画像内で所定の領域認識用閾値以上の輝度が連続する領域をビード領域候補として決定し、その後、ビード認識部6の判断手段6bが、各ビード領域候補のアスペクト比(縦横比)を算出する。
【0066】
次に、ステップS52において、アスペクト比が所定の閾値より大きい場合(ステップS52のYES)、ステップS54に進む。一方、アスペクト比が所定の閾値以下の場合(ステップS52のNO)、ステップS53において、ビード認識部6の判断手段6bが、対象の領域をビード領域以外の領域(例えば、スパッタ領域)と判定する。
【0067】
次に、ステップS54において、ビード領域候補が2つ以上ある場合(ステップS54のYES)、ステップS56に進む。一方、ビード領域候補が1つしかない場合(ステップS54のNO)、ステップS55において、ビード認識部6の判断手段6bが、そのビード領域候補をビード領域と判定する。
【0068】
ステップS56では、ビード認識部6の判断手段6bが、複数のビード領域候補の中から、前後の時間フレームで停止している領域をビード領域であると判定する。
以上のステップにより、画像内の溶接形状を認識することができる。
【0069】
次に、図6のビードの終端形状の分析処理(ステップS6)の詳細を、図面を参照しながら説明する。図8は、本実施形態に係るビード形状判定部7の動作を示すフローチャートである。
【0070】
まず、ステップS61において、代表点算出手段7aが、ビード領域の中点Qiの集合を用いて、ビード領域の代表点Qsを算出する。
【0071】
次に、ステップS62において、代表点算出手段7aが、ビード領域の中点Qiの集合を2次関数Yc=aX2+bX+cでフィッティングする。この際、代表点算出手段7aは、2次関数Ycとビード領域の中点Qiとの距離の2乗和が最小となるように係数a,b,cを決定する数学的処理(最小2乗法)を実行する。
【0072】
次に、ステップS63において、中心位置算出手段7bが、代表点算出手段7aにおいて求めた2次関数Ycがビード領域の境界と交わる交点を求めることによりビード領域の終端部の中心位置Tを算出する。
【0073】
そして、ステップS64において、中間点算出手段7cが、ビード領域の代表点Qsとビード領域の終端部の中心位置Tとの間の中間点Wを算出する。
【0074】
次に、ステップS65において、直線算出手段7dは、中間点算出手段7cによって算出された中間点Wに基づいて、2つの直線L1,L2を算出する。2つの直線L1,L2は、中心位置Tと中間点Wとを結ぶ線分TWに対して垂直な方向に一定距離変位させたものであり、線分TWを挟んで平行に延びるものである。
【0075】
次に、ステップS66において、湾曲度算出手段7eは、2つの直線L1,L2とビード領域の終端部の外周部との境界点U,Vを算出し、そして、境界点U,Vを結ぶ線分UVから中心位置Tまでの距離dを湾曲度として算出する。
【0076】
次に、ステップS67において、湾曲度算出手段7eは、複数の画像を取得した場合、各画像から湾曲度dを算出し、複数の湾曲度の平均湾曲度を計算する。
【0077】
そして、ステップS68において、平均湾曲度が0より大きい場合(ステップS68のNO)、ステップS69に進み、湾曲度算出手段7eが、欠陥なしと判定する。一方、平均湾曲度が0以下の場合(ステップS68のYES)、ステップS70に進み、湾曲度算出手段7eが、欠陥ありと判定する。
以上のステップによりビード領域の終端部の形状の分析を行うことができる。
【0078】
本実施形態に係る装置1は、溶接材料10に溶接用レーザを照射するレーザ照射部2と、溶接材料10上の溶接用レーザを照射した部分の画像を連続的に取得するモニタ部3と、モニタ部3によって取得された画像を記憶する記憶部4と、画像内の平均輝度が所定の第1の閾値以下の場合に記憶部4から画像を取得する画像取込部5と、画像取込部5によって取得された画像内のビード領域を認識するビード認識部6と、ビード認識部6によって認識されたビード領域に基づいてビード領域の終端部の位置を算出し、ビード領域の終端部がビード領域の延在方向に凸形状か凹形状かを判定するビード形状判定部7とを備えている。
本実施形態では、数100Hz程度の高速カメラからなるモニタ部3で溶接直後の画像を取得すると、穴欠陥があるときは画像のビード領域の終端部が凹形状の発光領域となり、穴欠陥がない場合(ひけがある場合やひけもなく平坦な場合)は凸形状の発光領域となる。装置1はこれを利用して穴欠陥の有無を判定するため、溶接プロセス中に得られる信号の経時変化を利用する従来の構成に比べて、より高精度にビードの終端部の穴欠陥を判定することができる。また、溶接プロセス後の極めて短い時間で(実質的に、溶接プロセスの時間内で)、ビードの終端部の穴欠陥を判定することができ、溶接が終了した後に別工程として検査工程を追加する必要がなく、生産効率が向上する。また、この構成によれば、装置1が溶接用レーザを照射する照射部2のみ備えていればよいので、従来のように溶接用レーザ以外に測定用レーザ用の照射部を設ける必要がなくなり、装置1のコストを抑えることもできる。
【0079】
また、本実施形態に係る装置1においては、ビード認識部6が、画像内において所定の領域認識用閾値以上の輝度を有する領域をビード領域候補として決定する領域認識手段6aと、ビード領域候補のアスペクト比に基づいて、ビード領域候補がビード領域であるかを判断する判断手段6bとを備えているので、アスペクト比という簡易な処理でビード領域が認識されることになり、装置1への処理負荷が小さく、認識処理も高速に行うことができる。
【0080】
また、本実施形態に係る装置1においては、ビード形状判定部7は、ビード領域の代表点Qsを算出する代表点算出手段7aと、ビード領域の終端部の中心位置Tを算出する中心位置算出手段7bと、ビード領域の代表点Qsとビード領域の終端部の中心位置Tとの間の中間点Wを算出する中間点算出手段7cと、中心位置Tと中間点Wとを結ぶ線分TWを挟んで平行に延び、且つビード領域の終端部の外周部に交わる2つの直線L1,L2を算出する直線算出手段7dと、2つの直線L1,L2と終端部の外周部との交点U,Vを算出し、交点U,Vと中心位置Tとに基づいて湾曲度dを計算し、湾曲度dを用いてビード領域の終端部が凸形状か凹形状かを判定する湾曲度算出手段7eとを備えているので、画像内のビード領域の終端部に対してベクトルを利用した形状判定が行われることになり、終端部が凸形状か凹形状かをより高精度に判定することができる。しかも、終端部の凹凸を湾曲度dという値で定量的に評価することができ、ビードの終端部の穴欠陥をより容易に行える。
【0081】
また、本実施形態に係る装置1においては、湾曲度dは、交点U,Vを結ぶ線分UVから中心位置Tまでの距離であるので、簡易な処理で湾曲度を算出することができ、装置1の処理負荷が小さく、判定処理も高速に行うことができる。また、湾曲度算出手段7eは、画像取込部5が複数の画像を取得した場合、複数の画像から求められた平均湾曲度を用いてビード領域の終端部が凸形状か凹形状かを判定するように構成されているので、複数の画像の湾曲度の結果が反映されることになり、終端部が凸形状か凹形状かをより高精度に判定することができる。
【0082】
以下では、ビードの終端部の形状を判定する装置の別の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図9は、本発明の別の実施形態に係るモニタ部3の構成と、画像取込部5による画像取り込み処理を示した図である。
【0083】
上述した実施形態では、図3に示すように、モニタ部3は、溶接中と溶接直後の両方の画像を撮像できる1台の高ダイナミックレンジカメラで構成されているが、ダイナミックレンジが小さいカメラを使用する場合、1台のカメラで溶接中と溶接直後の両方の画像を撮像することが不可能となる。なぜなら、1台のカメラで溶接中と溶接直後とで検出ゲイン設定を変更しようとしても、カメラの検出ゲインの設定を切り替えるのに要する時間が、溶接終了直後の発光を観察できる時間ほど短くならず、溶接直後の画像を撮像することができないためである。
【0084】
これに対処するために、図9(a)に示すように、この実施形態においては、モニタ部3が、2台のカメラ3A,3Bを備えている。具体的には、モニタ部3は、溶接プロセス中の画像を取得するためのプロセス観察用カメラ(第1のモニタ手段)3Aと、溶接プロセスが終了した後の画像を取得するための溶接終了後観察用カメラ(第2のモニタ手段)3Bとを備えている。
さらに、図9(a)に示すように、モニタ部3は、溶接用レーザを照射した部分からの光をプロセス観察用カメラ3Aと溶接終了後観察用カメラ3Bの2方向に分割するビームスプリッタ(光分割手段)3Cを備えている。ここで、溶接プロセス中は、溶接用レーザを照射した部分からの光の光量が非常に大きくなるので、2台のカメラ3A,3Bのうちプロセス観察用カメラ3Aに導かれる光の光量は、溶接終了後観察用カメラ3Bに導かれる光の光量よりも小さく設定されている。具体的には、プロセス観察用カメラ3Aに導かれる光の光量は、溶接用レーザを照射した部分からの元の光量に対して数%でよく、大部分の光量は、溶接終了後観察用カメラ3Bに導かれればよい。
【0085】
したがって、かかる実施形態においては、図9(b)に示すように、プロセス観察用カメラ3Aでは、溶接プロセス中の高い輝度の画像が計測レンジに入るように調節されているので、溶接終了直度の画像は逆に真っ暗になり観察はできなくなる。その一方で、図9(c)に示すように、溶接終了後観察用カメラ3Bでは、溶接プロセス中の画像は明る過ぎて輝度が飽和し、観察できないが、溶接終了直後の画像は、観察できることになる。なお、かかる実施形態において、2台のカメラ3A,3Bで取得された画像は、上述した実施形態と同様に記憶部4に記憶され、その後の処理(平均輝度を求めて画像取込用閾値と比較する処理など)も上述した実施形態と同じ処理である。
このようにかかる実施形態においては、ダイナミックレンジが小さいカメラを使用する場合でも、溶接中と溶接直後の両方の画像を撮像できる。
【0086】
以下では、ビード形状判定部7の別の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図10は、別の実施形態に係るビード形状判定部7の処理を示した図である。
【0087】
この実施形態においては、図10に示すように、直線算出手段7dが、まず、中心位置Tと中間点Wとを結ぶ線分TWに対して垂直な方向の直線L3を算出する。この直線L3とビード領域の終端部の外周部とが交わる点を交点W1及びW2とし、直線算出手段7dは、線分WW1と線分WW2の中点W3及びW4を算出する。そして、直線算出手段7dは、中心位置Tと中点W3を結ぶ線分TW3(図10のベクトルm)と、中心位置Tと中点W4を結ぶ線分TW4(図10のベクトルn)を算出する。
その後、湾曲度算出手段7eは、ベクトルm及びnを平行移動させ、平行移動したベクトルm及びnとビード領域の終端部の外周部との接点をそれぞれ境界点U,Vに決定する。なお、かかる実施形態において、境界点U,Vを決定した後の湾曲度dの算出は、上述した実施形態と同じ処理である。
【0088】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものでなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【0089】
上述の実施形態では、重ね合わせ溶接を対象としているが、溶接材料の溶接位置に穴欠陥が存在するかという幾何学的な状況を判定するものであるため、形状段差溶接や突合せ溶接など、孤立した穴欠陥が生じる溶接に適用することができる。
【0090】
また、上述の実施形態は、ビード領域の終端部における穴欠陥を判定する装置及び方法であるが、終端部に限らず溶接途中の部分においても穴欠陥を判定することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 装置
2 レーザ照射部
3 モニタ部
3A プロセス観察用カメラ
3B 溶接終了後観察用カメラ
3C ビームスプリッタ
4 記憶部
5 画像取込部
6 ビード認識部
6a 領域認識手段
6b 判断手段
7 ビード形状判定部
7a 代表点算出手段
7b 中心位置算出手段
7c 中間点算出手段
7d 直線算出手段
7e 湾曲度算出手段
10 溶接材料
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接材料に溶接用レーザを照射した際に形成されるビードの終端部の形状を判定する装置及びその方法に関するものである。詳しくは、本発明は、レーザ溶接による重ね合わせ溶接を行う際、溶接直後に金属からの熱発光が残っている極めて短い時間内に、ビードの終端部の画像を高速カメラで取得し、取得した画像に基づいてビードの終端部の穴欠陥を判定するアルゴリズムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザ溶接などによる溶接を行う際に、カメラや光センサなどでビード領域からの信号を検出し、その検出信号を解析してレーザ溶接における溶接欠陥を判定する方法が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
【0003】
特許文献1では、溶接プロセス中に熱放射光センサ及び反射光センサを用いて溶接箇所からの信号を検出し、この検出信号の経時変化を溶接条件に対応する基準データテーブルと比較し、溶接可能な状態かを判定している。これにより、特許文献1では、溶接後の溶接割れや溶接欠陥を防止している。
【0004】
また、特許文献2では、測定用ビームを溶接領域に放射し、溶接直後に得られた温度信号を、実験的に求めた温度の上限及び下限と比較している。そして、特許文献2では、この温度の上限及び下限を違反した回数をカウントして溶接欠陥を判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−326134号公報
【特許文献2】特開2005−230913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図11は、レーザ溶接を行う際に、カメラや光センサなどを用いてビード領域から連続的に信号を検出した場合の例を示している。
図11に示すように、特許文献1のような検出信号を用いる判定方法では、ビード領域の終端部の位置で溶接用レーザの照射及びビード領域のモニタ動作が停止すると、ビードの終端部における検出信号には極めて大きな変化が生じることが知られている。そのため、ビード領域の終端部は、溶接プロセス中と同じ判定方法では溶接欠陥を判定することができないことが問題となっている。
【0007】
また、特許文献2の方法では、溶接直後に得られた温度信号が制限値を何回違反したかで溶接欠陥を判定しており、ビード領域の終端部の形状自体が全く観察されていない。したがって、正確にビード領域の終端部の溶接欠陥を判定することができない可能性がある。しかも、特許文献2では、溶接用レーザ以外に測定用レーザを照射する装置も必要となり、装置のコストが高くなるという問題もあった。
【0008】
図12は、ビード領域の終端部をカメラで撮影した画像であり、ビード領域の終端部において穴欠陥が生じた場合の画像と、正常に溶接が終了した場合の画像とを示している。図12(a)に示すように、ビード領域の終端部に穴欠陥が生じた場合、ビード領域の終端部がビードの延在方向に凹形状となる。一方、図12(b)に示すように、溶接が正常に終了した場合には、ビード領域の終端部がビードの延在方向に凸形状となる。
【0009】
これに対して、従来より、ビード領域の終端部の穴欠陥を溶接プロセスが完全に終了した後に検査する方法が提案されている。例えば、バックライト式と呼ばれる検査方法では、レーザ溶接のプロセスが完全に終了した後に、別工程で溶接面に対して裏側から照明光を照射し、表側への漏れ光を検出して、穴欠陥を判定している。しかしながら、この方法では、溶接が終了した後に別工程として検査工程が追加されるので、生産効率が低下してしまうという問題もあった。
【0010】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、溶接プロセスと同期してビード領域の画像を取得し、溶接プロセス直後の極めて短い時間でビードの終端部の穴欠陥を高精度に判定することが可能なビードの終端部の形状を判定する装置及びその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の発明者は、溶接プロセスが終了した直後に、溶接用レーザの照射部の透過率の低さに打ち勝って、溶接材料からある程度の光量の金属熱発光が観察できることに気付き、この画像をカメラなどで撮像して穴欠陥の判定に利用する方法を発見した。この画像は、特許文献1の従来の方法では、溶接プロセス後であるため不要と判定されていた画像である。本願の発明者は、溶接プロセスが終了した直後の画像に着目し、従来では全く知られていない特徴的な形状判定を行い、溶接プロセス後の極めて短い時間で(実質的に、溶接プロセスの時間内で)穴欠陥の検査が実現できる装置及びその方法を確立した。
【0012】
本発明によれば、上記従来技術の有する課題を解決するために、溶接材料に溶接用レーザを照射した際に形成されるビードの終端部の形状を判定する装置であって、前記溶接材料に前記溶接用レーザを照射するレーザ照射部と、前記溶接材料上の前記溶接用レーザを照射した部分の画像を連続的に取得するモニタ部と、前記モニタ部によって取得された画像を記憶する記憶部と、前記画像内の平均輝度が所定の画像取込用閾値以下の場合に前記記憶部から前記画像を取得する画像取込部と、前記画像取込部によって取得された前記画像内のビード領域を認識するビード認識部と、前記ビード認識部によって認識された前記ビード領域に基づいて前記ビード領域の終端部の位置を算出し、前記ビード領域の前記終端部が前記ビード領域の延在方向に凸形状か凹形状かを判定するビード形状判定部とを備えている装置が提供される。
【0013】
また、本発明に係る装置の別の実施態様によれば、前記モニタ部は、溶接プロセス中の画像を取得するための第1のモニタ手段と、溶接プロセスが終了した後の画像を取得するための第2のモニタ手段と、前記溶接用レーザを照射した部分からの光を前記第1のモニタ手段と前記第2のモニタ手段の2方向に分割する光分割手段とを備え、前記第1のモニタ手段に導かれる光の光量が、前記第2のモニタ手段に導かれる光の光量よりも小さくなっている。
【0014】
また、本発明に係る装置の別の実施態様によれば、前記ビード認識部は、前記画像内において所定の領域認識用閾値以上の輝度を有する領域をビード領域候補として決定する領域認識手段と、前記ビード領域候補のアスペクト比に基づいて、前記ビード領域候補が前記ビード領域であるかを判断する判断手段とを備えている。
【0015】
また、本発明に係る装置の別の実施態様によれば、前記ビード形状判定部は、前記ビード領域の代表点を算出する代表点算出手段と、前記ビード領域の前記終端部の中心位置を算出する中心位置算出手段と、前記ビード領域の前記代表点と前記ビード領域の前記終端部の前記中心位置との間の中間点を算出する中間点算出手段と、前記中心位置と前記中間点とを結ぶ線分を挟んで平行に延び、且つ前記ビード領域の前記終端部の外周部に交わる2つの直線を算出する直線算出手段と、前記2つの直線と前記終端部の前記外周部との交点を算出し、前記交点と前記中心位置とに基づいて湾曲度を計算し、該湾曲度を用いて前記ビード領域の前記終端部が凸形状か凹形状かを判定する湾曲度算出手段とを備えている。
【0016】
また、本発明に係る装置の別の実施態様によれば、前記湾曲度は、前記交点を結ぶ線分から前記中心位置までの距離である。
【0017】
また、本発明に係る装置の別の実施態様によれば、前記湾曲度算出手段は、前記画像取込部が複数の画像を取得した場合、前記複数の画像から求められた平均湾曲度を用いて前記ビード領域の前記終端部が凸形状か凹形状かを判定するように構成されている。
【0018】
また、本発明によれば、溶接材料に溶接用レーザを照射した際に形成されるビードの終端部の形状を判定する方法であって、前記溶接材料に前記溶接用レーザを照射するステップと、前記溶接材料上の前記溶接用レーザを照射した部分の画像を時間経過に沿って取得するステップと、前記画像を記憶部に記憶するステップと、前記画像内の平均輝度が所定の画像取込用閾値以下の場合に前記記憶部から前記画像を取得するステップと、前記記憶部から取得した前記画像内のビード領域を認識するステップと、該認識されたビード領域に基づいて前記ビード領域の終端部の位置を算出し、前記ビード領域の前記終端部が前記ビード領域の延在方向に凸形状か凹形状かを判定するステップとを含む方法が提供される。
【0019】
また、本発明に係る方法の別の実施態様によれば、前記溶接用レーザを照射した部分の画像を時間経過に沿って取得するステップは、前記溶接用レーザを照射した部分からの光を第1のモニタ手段と第2のモニタ手段の2方向に分割する工程と、前記第1のモニタ手段によって溶接プロセス中の画像を取得する工程と、前記第2のモニタ手段によって溶接プロセスが終了した後の画像を取得する工程とを含み、前記第1のモニタ手段に導かれる光の光量が、前記第2のモニタ手段に導かれる光の光量よりも小さくなっている。
【0020】
また、本発明に係る方法の別の実施態様によれば、前記ビード領域を認識するステップは、前記画像内において所定の領域認識用閾値以上の輝度を有する領域をビード領域候補として決定する工程と、前記ビード領域候補のアスペクト比に基づいて、前記ビード領域候補が前記ビード領域であるかを判断する工程とを含む。
【0021】
また、本発明に係る方法の別の実施態様によれば、前記ビード領域内の終端部が前記ビード領域の延在方向に凸形状か凹形状かを判定するステップは、前記ビード領域の代表点を算出する工程と、前記ビード領域の前記終端部の中心位置を算出する工程と、前記ビード領域の前記代表点と前記ビード領域の前記終端部の前記中心位置との間の中間点を算出する工程と、前記中心位置と前記中間点とを結ぶ線分を挟んで平行に延び、且つ前記ビード領域の前記終端部の外周部に交わる2つの直線を算出する工程と、前記2つの直線と前記終端部の前記外周部との交点を算出し、前記交点と前記中心位置とに基づいて湾曲度を計算し、該湾曲度を用いて前記ビード領域の前記終端部が凸形状か凹形状かを判定する工程とを含む。
【0022】
また、本発明に係る方法の別の実施態様によれば、前記湾曲度は、前記交点を結ぶ線分から前記中心位置までの距離である。
【0023】
また、本発明に係る方法の別の実施態様によれば、前記終端部が凸形状か凹形状かを判定する工程は、前記記憶部から複数の画像を取得した場合、前記複数の画像から求められた平均湾曲度を用いて前記ビード領域の前記終端部が凸形状か凹形状かを判定する。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るビードの終端部の形状を判定する装置によれば、前記溶接材料に前記溶接用レーザを照射するレーザ照射部と、前記溶接材料上の前記溶接用レーザを照射した部分の画像を連続的に取得するモニタ部と、前記モニタ部によって取得された画像を記憶する記憶部と、前記画像内の平均輝度が所定の画像取込用閾値以下の場合に前記記憶部から前記画像を取得する画像取込部と、前記画像取込部によって取得された前記画像内のビード領域を認識するビード認識部と、前記ビード認識部によって認識された前記ビード領域に基づいて前記ビード領域の終端部の位置を算出し、前記ビード領域の前記終端部が前記ビード領域の延在方向に凸形状か凹形状かを判定するビード形状判定部とを備えている。この構成によれば、溶接直後に得られた画像を用いてビード領域の終端部の形状自体を凸形状か凹形状かを判定するので、溶接プロセス中に得られる信号の経時変化を利用する従来の構成に比べて、より高精度にビードの終端部の穴欠陥を判定することができる。また、溶接プロセス後の極めて短い時間で(実質的に、溶接プロセスの時間内で)、ビードの終端部の穴欠陥を判定することができ、溶接が終了した後に別工程として検査工程を追加する必要がなく、生産効率が向上する。また、この構成によれば、装置が溶接用レーザを照射する照射部のみ備えていればよいので、従来のように溶接用レーザ以外に測定用レーザ用の照射部を設ける必要がなくなり、装置のコストを抑えることもできる。
【0025】
また、本発明に係るビードの終端部の形状を判定する装置によれば、前記モニタ部は、溶接プロセス中の画像を取得するための第1のモニタ手段と、溶接プロセスが終了した後の画像を取得するための第2のモニタ手段と、前記溶接用レーザを照射した部分からの光を前記第1のモニタ手段と前記第2のモニタ手段の2方向に分割する光分割手段とを備え、前記第1のモニタ手段に導かれる光の光量が、前記第2のモニタ手段に導かれる光の光量よりも小さくなっているので、ダイナミックレンジが小さいモニタ手段を使用する場合でも、2つのモニタ手段を溶接中と溶接直後用とで使い分けることにより、溶接中の画像と溶接直後の画像の両方を撮像することができる。したがって、ダイナミックレンジが小さいモニタ手段を使用する場合でも、溶接直後の画像を用いてビード領域の終端部の穴欠陥を判定することができる。
【0026】
また、本発明に係るビードの終端部の形状を判定する装置によれば、前記ビード認識部は、前記画像内において所定の領域認識用閾値以上の輝度を有する領域をビード領域候補として決定する領域認識手段と、前記ビード領域候補のアスペクト比に基づいて、前記ビード領域候補が前記ビード領域であるかを判断する判断手段とを備えているので、アスペクト比という簡易な処理でビード領域が認識されることになり、装置への処理負荷も小さく、認識処理を高速に行うことができる。
【0027】
また、本発明に係るビードの終端部の形状を判定する装置によれば、前記ビード形状判定部は、前記ビード領域の代表点を算出する代表点算出手段と、前記ビード領域の前記終端部の中心位置を算出する中心位置算出手段と、前記ビード領域の前記代表点と前記ビード領域の前記終端部の前記中心位置との間の中間点を算出する中間点算出手段と、前記中心位置と前記中間点とを結ぶ線分を挟んで平行に延び、且つ前記ビード領域の前記終端部の外周部に交わる2つの直線を算出する直線算出手段と、前記2つの直線と前記終端部の前記外周部との交点を算出し、前記交点と前記中心位置とに基づいて湾曲度を計算し、該湾曲度を用いて前記ビード領域の前記終端部が凸形状か凹形状かを判定する湾曲度算出手段とを備えているので、画像内のビード領域の終端部に対してベクトルを利用した形状判定が行われることになり、終端部が凸形状か凹形状かをより高精度に判定することができる。
【0028】
また、本発明に係るビードの終端部の形状を判定する装置によれば、前記湾曲度は、前記交点を結ぶ線分から前記中心位置までの距離であるので、簡易な処理で湾曲度を算出することができ、装置への処理負荷も小さく、判定処理を高速に行うことができる。
【0029】
また、本発明に係るビードの終端部の形状を判定する装置によれば、前記湾曲度算出手段は、前記画像取込部が複数の画像を取得した場合、前記複数の画像から求められた平均湾曲度を用いて前記ビード領域の前記終端部が凸形状か凹形状かを判定するように構成されているので、複数の画像の湾曲度の結果が反映されることになり、終端部が凸形状か凹形状かをより高精度に判定することができる。
【0030】
本発明に係るビードの終端部の形状を判定する方法によれば、前記溶接材料に前記溶接用レーザを照射するステップと、前記溶接材料上の前記溶接用レーザを照射した部分の画像を時間経過に沿って取得するステップと、前記画像を記憶部に記憶するステップと、前記画像内の平均輝度が所定の画像取込用閾値以下の場合に前記記憶部から前記画像を取得するステップと、前記記憶部から取得した前記画像内のビード領域を認識するステップと、該認識されたビード領域に基づいて前記ビード領域の終端部の位置を算出し、前記ビード領域の前記終端部が前記ビード領域の延在方向に凸形状か凹形状かを判定するステップとを含む。この方法によれば、溶接直後に得られた画像を用いてビード領域の終端部の形状自体を凸形状か凹形状かを判定するので、溶接プロセス中に得られる信号の経時変化を利用する従来の構成に比べて、より高精度にビードの終端部の穴欠陥を判定することができる。また、溶接プロセス後の極めて短い時間で(実質的に、溶接プロセスの時間内で)、ビードの終端部の穴欠陥を判定することができ、溶接が終了した後に別工程として検査工程を追加する必要がなく、生産効率が向上する。
【0031】
また、本発明に係るビードの終端部の形状を判定する方法によれば、前記溶接用レーザを照射した部分の画像を時間経過に沿って取得するステップは、前記溶接用レーザを照射した部分からの光を第1のモニタ手段と第2のモニタ手段の2方向に分割する工程と、前記第1のモニタ手段によって溶接プロセス中の画像を取得する工程と、前記第2のモニタ手段によって溶接プロセスが終了した後の画像を取得する工程とを含み、前記第1のモニタ手段に導かれる光の光量が、前記第2のモニタ手段に導かれる光の光量よりも小さくなっているので、ダイナミックレンジが小さいモニタ手段を使用する場合でも、2つのモニタ手段を溶接中と溶接直後用とで使い分けることにより、溶接中の画像と溶接直後の画像の両方を撮像することができる。したがって、ダイナミックレンジが小さいモニタ手段を使用する場合でも、溶接直後の画像を用いてビード領域の終端部の穴欠陥を判定することができる。
【0032】
また、本発明に係るビードの終端部の形状を判定する方法によれば、前記ビード領域を認識するステップは、前記画像内において所定の領域認識用閾値以上の輝度を有する領域をビード領域候補として決定する工程と、前記ビード領域候補のアスペクト比に基づいて、前記ビード領域候補が前記ビード領域であるかを判断する工程とを含むので、アスペクト比という簡易な処理でビード領域が認識されることになり、認識処理を高速に行うことができる。
【0033】
また、本発明に係るビードの終端部の形状を判定する方法によれば、前記ビード領域内の終端部が前記ビード領域の延在方向に凸形状か凹形状かを判定するステップは、前記ビード領域の代表点を算出する工程と、前記ビード領域の前記終端部の中心位置を算出する工程と、前記ビード領域の前記代表点と前記ビード領域の前記終端部の前記中心位置との間の中間点を算出する工程と、前記中心位置と前記中間点とを結ぶ線分を挟んで平行に延び、且つ前記ビード領域の前記終端部の外周部に交わる2つの直線を算出する工程と、前記2つの直線と前記終端部の前記外周部との交点を算出し、前記交点と前記中心位置とに基づいて湾曲度を計算し、該湾曲度を用いて前記ビード領域の前記終端部が凸形状か凹形状かを判定する工程とを含むので、画像内のビード領域の終端部に対してベクトルを利用した形状判定が行われることになり、終端部が凸形状か凹形状かをより高精度に判定することができる。
【0034】
また、本発明に係るビードの終端部の形状を判定する方法によれば、前記湾曲度は、前記交点を結ぶ線分から前記中心位置までの距離であるので、簡易な処理で湾曲度を算出することができ、判定処理を高速に行うことができる。
【0035】
また、本発明に係るビードの終端部の形状を判定する方法によれば、前記終端部が凸形状か凹形状かを判定する工程は、前記記憶部から複数の画像を取得した場合、前記複数の画像から求められた平均湾曲度を用いて前記ビード領域の前記終端部が凸形状か凹形状かを判定するので、複数の画像の湾曲度の結果が反映されることになり、終端部が凸形状か凹形状かをより高精度に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態に係るビードの終端部の形状を判定する装置の構成を示したブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る装置の処理内容を示した図であり、ビード領域の終端部の形状を判定する手順を示した図である。
【図3】本発明の実施形態に係るモニタ部の構成と、画像取込部による画像取り込み処理を示した図である。
【図4】本発明の実施形態に係るビード認識部と代表点算出手段の処理を示した図である。
【図5】本発明の実施形態に係る装置によって湾曲度を算出した実験例である。
【図6】本発明の実施形態に係る装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態に係る装置内のビード認識部の動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態に係る装置内のビード形状判定部の動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の別の実施形態に係るモニタ部の構成と、画像取込部による画像取り込み処理を示した図である。
【図10】本発明の別の実施形態に係るビード形状判定部の処理を示した図である。
【図11】従来のビード領域の溶接欠陥を判定する方法を示した図であり、レーザ溶接を行う際にカメラや光センサなどを用いてビード領域から連続的に信号を検出した場合の例である。
【図12】ビード領域の終端部をカメラで撮影した場合の画像であり、(a)が穴欠陥が生じた場合の画像であり、(b)が正常に溶接が終了した場合の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態に係るビードの終端部の形状を判定する装置及びその方法を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るビードの終端部の形状を判定する装置の構成を示したブロック図であり、図2は、ビード領域の終端部の形状を判定する手順を示した図である。また、図3は、本発明の実施形態に係るモニタ部の構成と、画像取込部による画像取り込み処理を示した図である。
【0038】
図1に示すように、本実施形態に係るビードの終端部の形状を判定する装置1は、溶接材料10を重ね合わせ溶接する際に用いられる装置であり、レーザ照射部2と、モニタ部3と、記憶部4と、画像取込部5と、ビード認識部6と、ビード形状判定部7と、アラーム出力部8とを備えている。以下に各部分について詳細に説明する。
【0039】
レーザ照射部2は、溶接用レーザを照射するものであり、光ファイバなどを経由して送られてくるレーザを重ね合わせた溶接材料10に照射するヘッド部(図示せず)を有している。なお、本実施形態において、レーザ照射部2は、波長1064nm付近のレーザ光を発生させるように構成されている。
【0040】
図1に示すように、モニタ部3は、レーザ照射部2付近に設けられ、溶接用レーザを照射した部分の画像を連続的に取得するように構成されている。モニタ部3は、例えば、500Hz前後のフレームレートを有する高速カメラで構成されている。また、本実施形態では、図3(a)に示すように、モニタ部3は、1台の高ダイナミックレンジカメラで構成されている。この高ダイナミックレンジカメラは、信号検出のダイナミックレンジが広く(すなわち、計測可能な輝度の範囲が広い)、溶接中と溶接直後の両方の画像を撮像できるものである。
【0041】
また、図1に示すように、記憶部4は、モニタ部3に接続されており、モニタ部3により取得された画像を時間経過に沿って連続的に記憶するようになっている。
【0042】
図1に示すように、画像取込部5は、記憶部4に接続されており、記憶部4に記憶されている画像の中から、溶接プロセスが終了した直後の画像を取り込むように構成されている。
ここで、照射部2のヘッド部の透過率は、1060nm付近のレーザ波長で最適化されているため、一般の可視〜近赤外光における透過率は高くない。そのため、溶接プロセスの終了直後で溶接材料10がその熱で弱く発光している現象を観察できるのは概ね数10msと短い時間であり、その後は、溶接材料10からの発光の減衰が大きなって観察は厳しくなる。実験の結果、発光を観察できる時間は、典型的には、20msであった。したがって、本実施形態では、モニタ部3が500Hz前後のフレームレートを有する高速カメラで構成されているので、画像取込部5は、10枚前後(20ms÷2ms)の画像を取得できることになる。
【0043】
また、画像取込部5は、溶接プロセス中の画像か溶接プロセス終了直後の画像かを判断するために、画像内の平均輝度を利用して溶接プロセスが終了したかを判定している。実験では、溶接プロセス中の画像内の平均輝度は、溶接プロセス終了直後と比較して3〜4桁ほど高いことがわかった。したがって、所定の第1の閾値(画像取込用閾値)を、溶接プロセス中と溶接プロセス終了直後の平均輝度の間になるように設定する。そして、図2の手順A及び図3(b)に示すように、画像取込部5は、画像内の平均輝度が所定の第1の閾値(画像取込用閾値)以下の場合に記憶部4から画像を取得するように構成されている。なお、上述したように、溶接プロセス中と溶接プロセス終了直後とでは、平均輝度が大きく異なるので、溶接プロセス終了直後の画像を取り込むための第1の閾値は、容易に設定することができる。
また、発光を観察できる時間の経過後は、モニタ部3によって取得される画像は、真っ暗になってビードの終端部の判定に使用することができなくなる。本実施形態においては、第1の閾値より小さい第2の閾値も設定し、図3(b)に示すように、画像取込部5は、画像内の平均輝度が第2の閾値以下の場合、発光現象が終了したと判定して、画像の取り込み処理を終了する。
【0044】
図1に示すように、ビード認識部6は、画像取込部5に接続されており、画像取込部5が取り込んだ画像を処理するものである。ビード認識部6は、画像内において所定の領域認識用閾値以上の輝度を有する領域をビード領域候補として決定する領域認識手段6aと、ビード領域候補のアスペクト比に基づいて、ビード領域候補がビード領域であるかを判断する判断手段6bとを備えている。次に、ビード認識部6の各手段の処理について詳しく説明する。
【0045】
図4(a)及び(b)は、ビード認識部6における画像の処理を示した図である。
図4(a)に示すように、ビード認識部6の領域認識手段6aは、画像内で所定の領域認識用閾値以上の輝度が連続する領域をビード領域候補として決定する。ここでは、ビード領域C1と飛散するスパッタ粒子の領域C2がビード領域候補となる。
次に、図4(b)に示すように、ビード認識部6の判断手段6bは、画像に対して一定間隔の縦横直線を引き、ビード領域候補C1,C2を横切る線分の中点Qiを算出する。その後、図2の手順Bに示すように、ビード認識部6の判断手段6bは、各ビード領域候補C1,C2のアスペクト比(縦横比)l1/l2を算出し、このアスペクト比l1/l2に基づいてビード領域候補C1,C2がビード領域であるかを判断する。特に、ビード領域C1はスパッタ粒子の領域C2に比べて扁平(横長)の形状になるので、ビード認識部6の判断手段6bは、アスペクト比l1/l2が所定の値以上になる場合をビード領域と判断する。
【0046】
ただし、高速で飛散するスパッタ粒子に関しては、モニタ部3のカメラの露光時間の短さに限界があるので、カメラで画像を取得した際に、スパッタ粒子の領域C2が横長に延びて映る場合がある。この場合、スパッタ粒子の領域C2もアスペクト比l1/l2が大きくなるので、アスペクト比l1/l2だけに基づいてビード領域であるかを判断するのが難しくなる。
これに対処するために、本実施形態では、ビード認識部6の判断手段6bが更に、ビード領域候補C1,C2が前後の時間フレームの画像で移動しているかどうかを評価してビード領域であるかを判断する。具体的には、溶接プロセスの終了直後では、ビード領域C1は、画像内で停止しており、スパッタ粒子の領域C2は飛散して移動していることを利用する。ビード認識部6の判断手段6bは、アスペクト比l1/l2を閾値にしても複数のビード領域候補があった場合には、前後の時間フレームで停止している領域をビード領域であると判断する。
【0047】
図1に示すように、ビード形状判定部7は、ビード認識部6に接続されており、ビード認識部6によってビード領域が認識された後の画像を処理するものである。ビード形状判定部7は、ビード認識部6によって認識されたビード領域に基づいてビード領域の終端部の位置を算出し、ビード領域の終端部がビード領域の延在方向に凸形状か凹形状かを判定するようになっている。
具体的には、図1に示すように、ビード形状判定部7は、代表点算出手段7aと、中心位置算出手段7bと、中間点算出手段7cと、直線算出手段7dと、湾曲度算出手段7eとを備えている。次に、ビード形状判定部7の各手段について詳しく説明する。
【0048】
図4(c)は、代表点算出手段7aにおける画像の処理を示した図である。図2の手順C及び図4(c)に示すように、代表点算出手段7aは、ビード認識部6によって算出された中点Qiの集合を利用して、ビード領域の代表点Qsを算出する。具体的には、代表点算出手段7aは、中点Qiの集合の平均位置(中点Qiの縦座標の平均及び中点Qiの横座標の平均)を代表点Qsとして算出する。
更に、代表点算出手段7aは、ビード領域の中点Qiの集合を2次関数Yc=aX2+bX+cでフィッティングする。代表点算出手段7aは、2次関数とビード領域の中点Qiとの距離の2乗和が最小となるように係数a,b,cを決定する数学的処理(最小2乗法)を行う。なお、実際には、フィッティング関数が、2次関数Yc=aX2+bX+cではなく、2次関数Xc=aY2+bY+cとなる可能性もあるため、これら両方の関数についてフィッティング処理を行い、フィッティング誤差が小さい方を選択する。
【0049】
図2の手順Dに示すように、中心位置算出手段7bは、代表点算出手段7aにおいて求めた2次関数Ycがビード領域の境界と交わる交点を求めることにより、ビード領域の終端部における幅方向の中心位置Tを算出する。中心位置算出手段7bは、代表点Qsを開始点として2次関数Ycに沿って画像の1ピクセルごとに輝度を評価し、輝度が領域認識用閾値未満となった部分に到達した場合、その画像ピクセルの位置をビード領域の終端部の中心位置Tに決定する。このような処理を行う場合、左右又は上下方向の両方で輝度が領域認識用閾値未満となるピクセルが検出されるが、終端部ではない方向では、ビード領域の発光により終端部に比べて輝度の平均(代表点Qsから境界までの輝度の平均)が大きくなるので、輝度の平均が小さい方向をビード領域の終端部と判定する。
【0050】
図2の手順Eに示すように、本実施形態において、中間点算出手段7cは、ビード領域の代表点Qsとビード領域の終端部の中心位置Tとの間の中間点Wを算出するように構成されている。ビード領域は、曲線状に形成される場合もあるため、より終端部に近い中間点Wを終端部の判定の基点とすることで、ビード領域の曲線部分が終端部の評価に影響しにくくなる。中間点Wは、以下のように、2つの位置ベクトルTとQsの平均位置Wを算出すればよい。
【数1】
【0051】
さらに、図2の手順Eに示すように、直線算出手段7dは、中間点算出手段7cによって算出された中間点Wに基づいて、2つの直線L1,L2を算出するように構成されている。2つの直線L1,L2は、中心位置Tと中間点Wとを結ぶ線分TWに対して垂直な方向に一定距離変位させたものであり、線分TWを挟んで平行に延びるものである。この変位距離は、2つの直線L1,L2がビード領域の終端部の外周部に交わるように設定されている。なお、ビード領域の幅は溶接条件に変更がない限り大きく変化しないので、変位距離は定数として予め設定することができる。
【0052】
図2の手順Eに示すように、湾曲度算出手段7eは、中心位置Tの方向に向かって直線L1,L2に沿って画像の1ピクセルごとに輝度を評価し、輝度が領域認識用閾値未満となった部分に到達した場合、その画像ピクセルの位置をそれぞれ境界点U,Vに決定する。
【0053】
そして、図2の手順Fに示すように、湾曲度算出手段7eは、境界点U,Vを結ぶ線分UVから中心位置Tまでの距離dを湾曲度として算出する。ここで、湾曲度dは、中心位置Tが線分UVに対して中間点W側にあるときは、マイナスの値とし、中心位置Tが線分UVに対して中間点Wとは反対側にあるときは、プラスの値とする。
【0054】
最終的に、図2の手順Gに示すように、湾曲度算出手段7eは、この湾曲度dを用いてビード領域の終端部が凸形状か凹形状かを判定するようになっている。実験では凸形状か凹形状か判断しづらい平らな場合にも穴が発生している場合があったため、湾曲度dの閾値を0とする。したがって、湾曲度算出手段7eは、湾曲度dが0以下の場合には終端部が凹形状であると判定する。
図5は、本実施形態に係る装置1によって湾曲度dを算出した実験例である。図5(a)に示すように、ビード領域の終端部が凹形状の場合は、湾曲度が−0.9と算出され、一方、図5(b)に示すように、ビード領域の終端部が凸形状の場合は、湾曲度が1.5と算出されている。
【0055】
また、画像取込部5では、複数の画像が取り込まれる場合がある。図2の手順Gに示すように、湾曲度算出手段7eは、複数の画像を取得した場合、各画像から湾曲度を算出する。そして、湾曲度算出手段7eは、複数の湾曲度の平均湾曲度を用いてビード領域の終端部が凸形状か凹形状かを判定する。
【0056】
そして、湾曲度算出手段7eは、アラーム出力部8に接続されており(図1参照)、最終的に、湾曲度算出手段7eは、ビード領域の終端部が凹形状である場合には、アラーム出力部8に信号を出力する。その後、アラーム出力部8が、アラームを出力し、オペレータに溶接欠陥を知らせるようになっている。
【0057】
次に、本実施形態に係る装置1の動作を、図面を参照しながら説明する。図6は、本実施形態に係る装置1の動作を示すフローチャートである。
【0058】
まず、ステップS1において、モニタ部3が、溶接用レーザを照射した部分の画像を連続的に取得する。なお、モニタ部3によって取得された画像は、記憶部4に記憶される。
【0059】
次に、ステップS2において、画像取込部5は、溶接プロセス中の画像か溶接プロセス終了直後の画像かを判定する。
画像内の平均輝度が第1の閾値以下の場合(ステップS2のNO)、ステップS3において、画像取込部5は、記憶部4から画像を取り込む。一方、画像内の平均輝度が第1の閾値より大きい場合(ステップS2のYES)、引き続き、モニタ部3による画像の取得が継続される。
【0060】
次に、ステップS4において、画像取込部5は、溶接材料10からの発光現象が終了したかを判定する。
画像内の平均輝度が第2の閾値以下の場合(ステップS4のNO)、発光現象が終了したと判定し、ステップS5に進む。一方、画像内の平均輝度が第2の閾値より大きい場合(ステップS4のYES)、引き続き、画像取込部5による画像の取り込みが継続される。
【0061】
さらに、ステップS5において、ビード認識部6は、画像取込部5によって取得された画像内の溶接形状を認識する。具体的には、ビード認識部6は、画像内に存在する所定の輝度を有する領域がビード領域かそれ以外の領域かを認識する。
【0062】
次に、ステップS6において、ビード形状判定部7は、ビード認識部6によって認識されたビード領域に基づいてビード領域の終端部の位置を算出し、ビード領域の終端部がビード領域の延在方向に凸形状か凹形状かを判定する。
【0063】
そして、ステップS7において、ビード形状判定部7は、ビード領域の終端部が凸形状である場合、欠陥なしと判定する(ステップS7のNO)。一方、ビード領域の終端部が凹形状である場合(ステップS7のYES)、ステップS8に進み、アラーム出力部8が、アラームを出力し、オペレータに溶接欠陥を知らせるようになっている。
以上のステップにより、ビードの終端部の形状を判定し、溶接の欠陥を検出することができる。
【0064】
次に、図6の溶接形状の認識処理(ステップS5)の詳細を、図面を参照しながら説明する。図7は、本実施形態に係るビード認識部6の動作を示すフローチャートである。
【0065】
まず、ステップS51において、ビード認識部6の領域認識手段6aが、画像内で所定の領域認識用閾値以上の輝度が連続する領域をビード領域候補として決定し、その後、ビード認識部6の判断手段6bが、各ビード領域候補のアスペクト比(縦横比)を算出する。
【0066】
次に、ステップS52において、アスペクト比が所定の閾値より大きい場合(ステップS52のYES)、ステップS54に進む。一方、アスペクト比が所定の閾値以下の場合(ステップS52のNO)、ステップS53において、ビード認識部6の判断手段6bが、対象の領域をビード領域以外の領域(例えば、スパッタ領域)と判定する。
【0067】
次に、ステップS54において、ビード領域候補が2つ以上ある場合(ステップS54のYES)、ステップS56に進む。一方、ビード領域候補が1つしかない場合(ステップS54のNO)、ステップS55において、ビード認識部6の判断手段6bが、そのビード領域候補をビード領域と判定する。
【0068】
ステップS56では、ビード認識部6の判断手段6bが、複数のビード領域候補の中から、前後の時間フレームで停止している領域をビード領域であると判定する。
以上のステップにより、画像内の溶接形状を認識することができる。
【0069】
次に、図6のビードの終端形状の分析処理(ステップS6)の詳細を、図面を参照しながら説明する。図8は、本実施形態に係るビード形状判定部7の動作を示すフローチャートである。
【0070】
まず、ステップS61において、代表点算出手段7aが、ビード領域の中点Qiの集合を用いて、ビード領域の代表点Qsを算出する。
【0071】
次に、ステップS62において、代表点算出手段7aが、ビード領域の中点Qiの集合を2次関数Yc=aX2+bX+cでフィッティングする。この際、代表点算出手段7aは、2次関数Ycとビード領域の中点Qiとの距離の2乗和が最小となるように係数a,b,cを決定する数学的処理(最小2乗法)を実行する。
【0072】
次に、ステップS63において、中心位置算出手段7bが、代表点算出手段7aにおいて求めた2次関数Ycがビード領域の境界と交わる交点を求めることによりビード領域の終端部の中心位置Tを算出する。
【0073】
そして、ステップS64において、中間点算出手段7cが、ビード領域の代表点Qsとビード領域の終端部の中心位置Tとの間の中間点Wを算出する。
【0074】
次に、ステップS65において、直線算出手段7dは、中間点算出手段7cによって算出された中間点Wに基づいて、2つの直線L1,L2を算出する。2つの直線L1,L2は、中心位置Tと中間点Wとを結ぶ線分TWに対して垂直な方向に一定距離変位させたものであり、線分TWを挟んで平行に延びるものである。
【0075】
次に、ステップS66において、湾曲度算出手段7eは、2つの直線L1,L2とビード領域の終端部の外周部との境界点U,Vを算出し、そして、境界点U,Vを結ぶ線分UVから中心位置Tまでの距離dを湾曲度として算出する。
【0076】
次に、ステップS67において、湾曲度算出手段7eは、複数の画像を取得した場合、各画像から湾曲度dを算出し、複数の湾曲度の平均湾曲度を計算する。
【0077】
そして、ステップS68において、平均湾曲度が0より大きい場合(ステップS68のNO)、ステップS69に進み、湾曲度算出手段7eが、欠陥なしと判定する。一方、平均湾曲度が0以下の場合(ステップS68のYES)、ステップS70に進み、湾曲度算出手段7eが、欠陥ありと判定する。
以上のステップによりビード領域の終端部の形状の分析を行うことができる。
【0078】
本実施形態に係る装置1は、溶接材料10に溶接用レーザを照射するレーザ照射部2と、溶接材料10上の溶接用レーザを照射した部分の画像を連続的に取得するモニタ部3と、モニタ部3によって取得された画像を記憶する記憶部4と、画像内の平均輝度が所定の第1の閾値以下の場合に記憶部4から画像を取得する画像取込部5と、画像取込部5によって取得された画像内のビード領域を認識するビード認識部6と、ビード認識部6によって認識されたビード領域に基づいてビード領域の終端部の位置を算出し、ビード領域の終端部がビード領域の延在方向に凸形状か凹形状かを判定するビード形状判定部7とを備えている。
本実施形態では、数100Hz程度の高速カメラからなるモニタ部3で溶接直後の画像を取得すると、穴欠陥があるときは画像のビード領域の終端部が凹形状の発光領域となり、穴欠陥がない場合(ひけがある場合やひけもなく平坦な場合)は凸形状の発光領域となる。装置1はこれを利用して穴欠陥の有無を判定するため、溶接プロセス中に得られる信号の経時変化を利用する従来の構成に比べて、より高精度にビードの終端部の穴欠陥を判定することができる。また、溶接プロセス後の極めて短い時間で(実質的に、溶接プロセスの時間内で)、ビードの終端部の穴欠陥を判定することができ、溶接が終了した後に別工程として検査工程を追加する必要がなく、生産効率が向上する。また、この構成によれば、装置1が溶接用レーザを照射する照射部2のみ備えていればよいので、従来のように溶接用レーザ以外に測定用レーザ用の照射部を設ける必要がなくなり、装置1のコストを抑えることもできる。
【0079】
また、本実施形態に係る装置1においては、ビード認識部6が、画像内において所定の領域認識用閾値以上の輝度を有する領域をビード領域候補として決定する領域認識手段6aと、ビード領域候補のアスペクト比に基づいて、ビード領域候補がビード領域であるかを判断する判断手段6bとを備えているので、アスペクト比という簡易な処理でビード領域が認識されることになり、装置1への処理負荷が小さく、認識処理も高速に行うことができる。
【0080】
また、本実施形態に係る装置1においては、ビード形状判定部7は、ビード領域の代表点Qsを算出する代表点算出手段7aと、ビード領域の終端部の中心位置Tを算出する中心位置算出手段7bと、ビード領域の代表点Qsとビード領域の終端部の中心位置Tとの間の中間点Wを算出する中間点算出手段7cと、中心位置Tと中間点Wとを結ぶ線分TWを挟んで平行に延び、且つビード領域の終端部の外周部に交わる2つの直線L1,L2を算出する直線算出手段7dと、2つの直線L1,L2と終端部の外周部との交点U,Vを算出し、交点U,Vと中心位置Tとに基づいて湾曲度dを計算し、湾曲度dを用いてビード領域の終端部が凸形状か凹形状かを判定する湾曲度算出手段7eとを備えているので、画像内のビード領域の終端部に対してベクトルを利用した形状判定が行われることになり、終端部が凸形状か凹形状かをより高精度に判定することができる。しかも、終端部の凹凸を湾曲度dという値で定量的に評価することができ、ビードの終端部の穴欠陥をより容易に行える。
【0081】
また、本実施形態に係る装置1においては、湾曲度dは、交点U,Vを結ぶ線分UVから中心位置Tまでの距離であるので、簡易な処理で湾曲度を算出することができ、装置1の処理負荷が小さく、判定処理も高速に行うことができる。また、湾曲度算出手段7eは、画像取込部5が複数の画像を取得した場合、複数の画像から求められた平均湾曲度を用いてビード領域の終端部が凸形状か凹形状かを判定するように構成されているので、複数の画像の湾曲度の結果が反映されることになり、終端部が凸形状か凹形状かをより高精度に判定することができる。
【0082】
以下では、ビードの終端部の形状を判定する装置の別の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図9は、本発明の別の実施形態に係るモニタ部3の構成と、画像取込部5による画像取り込み処理を示した図である。
【0083】
上述した実施形態では、図3に示すように、モニタ部3は、溶接中と溶接直後の両方の画像を撮像できる1台の高ダイナミックレンジカメラで構成されているが、ダイナミックレンジが小さいカメラを使用する場合、1台のカメラで溶接中と溶接直後の両方の画像を撮像することが不可能となる。なぜなら、1台のカメラで溶接中と溶接直後とで検出ゲイン設定を変更しようとしても、カメラの検出ゲインの設定を切り替えるのに要する時間が、溶接終了直後の発光を観察できる時間ほど短くならず、溶接直後の画像を撮像することができないためである。
【0084】
これに対処するために、図9(a)に示すように、この実施形態においては、モニタ部3が、2台のカメラ3A,3Bを備えている。具体的には、モニタ部3は、溶接プロセス中の画像を取得するためのプロセス観察用カメラ(第1のモニタ手段)3Aと、溶接プロセスが終了した後の画像を取得するための溶接終了後観察用カメラ(第2のモニタ手段)3Bとを備えている。
さらに、図9(a)に示すように、モニタ部3は、溶接用レーザを照射した部分からの光をプロセス観察用カメラ3Aと溶接終了後観察用カメラ3Bの2方向に分割するビームスプリッタ(光分割手段)3Cを備えている。ここで、溶接プロセス中は、溶接用レーザを照射した部分からの光の光量が非常に大きくなるので、2台のカメラ3A,3Bのうちプロセス観察用カメラ3Aに導かれる光の光量は、溶接終了後観察用カメラ3Bに導かれる光の光量よりも小さく設定されている。具体的には、プロセス観察用カメラ3Aに導かれる光の光量は、溶接用レーザを照射した部分からの元の光量に対して数%でよく、大部分の光量は、溶接終了後観察用カメラ3Bに導かれればよい。
【0085】
したがって、かかる実施形態においては、図9(b)に示すように、プロセス観察用カメラ3Aでは、溶接プロセス中の高い輝度の画像が計測レンジに入るように調節されているので、溶接終了直度の画像は逆に真っ暗になり観察はできなくなる。その一方で、図9(c)に示すように、溶接終了後観察用カメラ3Bでは、溶接プロセス中の画像は明る過ぎて輝度が飽和し、観察できないが、溶接終了直後の画像は、観察できることになる。なお、かかる実施形態において、2台のカメラ3A,3Bで取得された画像は、上述した実施形態と同様に記憶部4に記憶され、その後の処理(平均輝度を求めて画像取込用閾値と比較する処理など)も上述した実施形態と同じ処理である。
このようにかかる実施形態においては、ダイナミックレンジが小さいカメラを使用する場合でも、溶接中と溶接直後の両方の画像を撮像できる。
【0086】
以下では、ビード形状判定部7の別の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図10は、別の実施形態に係るビード形状判定部7の処理を示した図である。
【0087】
この実施形態においては、図10に示すように、直線算出手段7dが、まず、中心位置Tと中間点Wとを結ぶ線分TWに対して垂直な方向の直線L3を算出する。この直線L3とビード領域の終端部の外周部とが交わる点を交点W1及びW2とし、直線算出手段7dは、線分WW1と線分WW2の中点W3及びW4を算出する。そして、直線算出手段7dは、中心位置Tと中点W3を結ぶ線分TW3(図10のベクトルm)と、中心位置Tと中点W4を結ぶ線分TW4(図10のベクトルn)を算出する。
その後、湾曲度算出手段7eは、ベクトルm及びnを平行移動させ、平行移動したベクトルm及びnとビード領域の終端部の外周部との接点をそれぞれ境界点U,Vに決定する。なお、かかる実施形態において、境界点U,Vを決定した後の湾曲度dの算出は、上述した実施形態と同じ処理である。
【0088】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものでなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【0089】
上述の実施形態では、重ね合わせ溶接を対象としているが、溶接材料の溶接位置に穴欠陥が存在するかという幾何学的な状況を判定するものであるため、形状段差溶接や突合せ溶接など、孤立した穴欠陥が生じる溶接に適用することができる。
【0090】
また、上述の実施形態は、ビード領域の終端部における穴欠陥を判定する装置及び方法であるが、終端部に限らず溶接途中の部分においても穴欠陥を判定することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 装置
2 レーザ照射部
3 モニタ部
3A プロセス観察用カメラ
3B 溶接終了後観察用カメラ
3C ビームスプリッタ
4 記憶部
5 画像取込部
6 ビード認識部
6a 領域認識手段
6b 判断手段
7 ビード形状判定部
7a 代表点算出手段
7b 中心位置算出手段
7c 中間点算出手段
7d 直線算出手段
7e 湾曲度算出手段
10 溶接材料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接材料に溶接用レーザを照射した際に形成されるビードの終端部の形状を判定する装置であって、
前記溶接材料に前記溶接用レーザを照射するレーザ照射部と、
前記溶接材料上の前記溶接用レーザを照射した部分の画像を連続的に取得するモニタ部と、
前記モニタ部によって取得された画像を記憶する記憶部と、
前記画像内の平均輝度が所定の画像取込用閾値以下の場合に前記記憶部から前記画像を取得する画像取込部と、
前記画像取込部によって取得された前記画像内のビード領域を認識するビード認識部と、
前記ビード認識部によって認識された前記ビード領域に基づいて前記ビード領域の終端部の位置を算出し、前記ビード領域の前記終端部が前記ビード領域の延在方向に凸形状か凹形状かを判定するビード形状判定部と
を備えていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記モニタ部は、
溶接プロセス中の画像を取得するための第1のモニタ手段と、
溶接プロセスが終了した後の画像を取得するための第2のモニタ手段と、
前記溶接用レーザを照射した部分からの光を前記第1のモニタ手段と前記第2のモニタ手段の2方向に分割する光分割手段と
を備え、
前記第1のモニタ手段に導かれる光の光量が、前記第2のモニタ手段に導かれる光の光量よりも小さくなっていることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項3】
前記ビード認識部は、
前記画像内において所定の領域認識用閾値以上の輝度を有する領域をビード領域候補として決定する領域認識手段と、
前記ビード領域候補のアスペクト比に基づいて、前記ビード領域候補が前記ビード領域であるかを判断する判断手段と
を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記ビード形状判定部は、
前記ビード領域の代表点を算出する代表点算出手段と、
前記ビード領域の前記終端部の中心位置を算出する中心位置算出手段と、
前記ビード領域の前記代表点と前記ビード領域の前記終端部の前記中心位置との間の中間点を算出する中間点算出手段と、
前記中心位置と前記中間点とを結ぶ線分を挟んで平行に延び、且つ前記ビード領域の前記終端部の外周部に交わる2つの直線を算出する直線算出手段と、
前記2つの直線と前記終端部の前記外周部との交点を算出し、前記交点と前記中心位置とに基づいて湾曲度を計算し、該湾曲度を用いて前記ビード領域の前記終端部が凸形状か凹形状かを判定する湾曲度算出手段と
を備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記湾曲度は、前記交点を結ぶ線分から前記中心位置までの距離であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記湾曲度算出手段は、前記画像取込部が複数の画像を取得した場合、前記複数の画像から求められた平均湾曲度を用いて前記ビード領域の前記終端部が凸形状か凹形状かを判定するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
溶接材料に溶接用レーザを照射した際に形成されるビードの終端部の形状を判定する方法であって、
前記溶接材料に前記溶接用レーザを照射するステップと、
前記溶接材料上の前記溶接用レーザを照射した部分の画像を時間経過に沿って取得するステップと、
前記画像を記憶部に記憶するステップと、
前記画像内の平均輝度が所定の画像取込用閾値以下の場合に前記記憶部から前記画像を取得するステップと、
前記記憶部から取得した前記画像内のビード領域を認識するステップと、
該認識されたビード領域に基づいて前記ビード領域の終端部の位置を算出し、前記ビード領域の前記終端部が前記ビード領域の延在方向に凸形状か凹形状かを判定するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記溶接用レーザを照射した部分の画像を時間経過に沿って取得するステップは、
前記溶接用レーザを照射した部分からの光を第1のモニタ手段と第2のモニタ手段の2方向に分割する工程と、
前記第1のモニタ手段によって溶接プロセス中の画像を取得する工程と、
前記第2のモニタ手段によって溶接プロセスが終了した後の画像を取得する工程と
を含み、
前記第1のモニタ手段に導かれる光の光量が、前記第2のモニタ手段に導かれる光の光量よりも小さくなっていることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ビード領域を認識するステップは、
前記画像内において所定の領域認識用閾値以上の輝度を有する領域をビード領域候補として決定する工程と、
前記ビード領域候補のアスペクト比に基づいて、前記ビード領域候補が前記ビード領域であるかを判断する工程と
を含むことを特徴とする請求項7または8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ビード領域内の終端部が前記ビード領域の延在方向に凸形状か凹形状かを判定するステップは、
前記ビード領域の代表点を算出する工程と、
前記ビード領域の前記終端部の中心位置を算出する工程と、
前記ビード領域の前記代表点と前記ビード領域の前記終端部の前記中心位置との間の中間点を算出する工程と、
前記中心位置と前記中間点とを結ぶ線分を挟んで平行に延び、且つ前記ビード領域の前記終端部の外周部に交わる2つの直線を算出する工程と、
前記2つの直線と前記終端部の前記外周部との交点を算出し、前記交点と前記中心位置とに基づいて湾曲度を計算し、該湾曲度を用いて前記ビード領域の前記終端部が凸形状か凹形状かを判定する工程と
を含むことを特徴とする請求項7ないし9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記湾曲度は、前記交点を結ぶ線分から前記中心位置までの距離であることを特徴とする請求項7ないし10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記終端部が凸形状か凹形状かを判定する工程は、前記記憶部から複数の画像を取得した場合、前記複数の画像から求められた平均湾曲度を用いて前記ビード領域の前記終端部が凸形状か凹形状かを判定することを特徴とする請求項7ないし11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
溶接材料に溶接用レーザを照射した際に形成されるビードの終端部の形状を判定する装置であって、
前記溶接材料に前記溶接用レーザを照射するレーザ照射部と、
前記溶接材料上の前記溶接用レーザを照射した部分の画像を連続的に取得するモニタ部と、
前記モニタ部によって取得された画像を記憶する記憶部と、
前記画像内の平均輝度が所定の画像取込用閾値以下の場合に前記記憶部から前記画像を取得する画像取込部と、
前記画像取込部によって取得された前記画像内のビード領域を認識するビード認識部と、
前記ビード認識部によって認識された前記ビード領域に基づいて前記ビード領域の終端部の位置を算出し、前記ビード領域の前記終端部が前記ビード領域の延在方向に凸形状か凹形状かを判定するビード形状判定部と
を備えていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記モニタ部は、
溶接プロセス中の画像を取得するための第1のモニタ手段と、
溶接プロセスが終了した後の画像を取得するための第2のモニタ手段と、
前記溶接用レーザを照射した部分からの光を前記第1のモニタ手段と前記第2のモニタ手段の2方向に分割する光分割手段と
を備え、
前記第1のモニタ手段に導かれる光の光量が、前記第2のモニタ手段に導かれる光の光量よりも小さくなっていることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項3】
前記ビード認識部は、
前記画像内において所定の領域認識用閾値以上の輝度を有する領域をビード領域候補として決定する領域認識手段と、
前記ビード領域候補のアスペクト比に基づいて、前記ビード領域候補が前記ビード領域であるかを判断する判断手段と
を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記ビード形状判定部は、
前記ビード領域の代表点を算出する代表点算出手段と、
前記ビード領域の前記終端部の中心位置を算出する中心位置算出手段と、
前記ビード領域の前記代表点と前記ビード領域の前記終端部の前記中心位置との間の中間点を算出する中間点算出手段と、
前記中心位置と前記中間点とを結ぶ線分を挟んで平行に延び、且つ前記ビード領域の前記終端部の外周部に交わる2つの直線を算出する直線算出手段と、
前記2つの直線と前記終端部の前記外周部との交点を算出し、前記交点と前記中心位置とに基づいて湾曲度を計算し、該湾曲度を用いて前記ビード領域の前記終端部が凸形状か凹形状かを判定する湾曲度算出手段と
を備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記湾曲度は、前記交点を結ぶ線分から前記中心位置までの距離であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記湾曲度算出手段は、前記画像取込部が複数の画像を取得した場合、前記複数の画像から求められた平均湾曲度を用いて前記ビード領域の前記終端部が凸形状か凹形状かを判定するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
溶接材料に溶接用レーザを照射した際に形成されるビードの終端部の形状を判定する方法であって、
前記溶接材料に前記溶接用レーザを照射するステップと、
前記溶接材料上の前記溶接用レーザを照射した部分の画像を時間経過に沿って取得するステップと、
前記画像を記憶部に記憶するステップと、
前記画像内の平均輝度が所定の画像取込用閾値以下の場合に前記記憶部から前記画像を取得するステップと、
前記記憶部から取得した前記画像内のビード領域を認識するステップと、
該認識されたビード領域に基づいて前記ビード領域の終端部の位置を算出し、前記ビード領域の前記終端部が前記ビード領域の延在方向に凸形状か凹形状かを判定するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記溶接用レーザを照射した部分の画像を時間経過に沿って取得するステップは、
前記溶接用レーザを照射した部分からの光を第1のモニタ手段と第2のモニタ手段の2方向に分割する工程と、
前記第1のモニタ手段によって溶接プロセス中の画像を取得する工程と、
前記第2のモニタ手段によって溶接プロセスが終了した後の画像を取得する工程と
を含み、
前記第1のモニタ手段に導かれる光の光量が、前記第2のモニタ手段に導かれる光の光量よりも小さくなっていることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ビード領域を認識するステップは、
前記画像内において所定の領域認識用閾値以上の輝度を有する領域をビード領域候補として決定する工程と、
前記ビード領域候補のアスペクト比に基づいて、前記ビード領域候補が前記ビード領域であるかを判断する工程と
を含むことを特徴とする請求項7または8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ビード領域内の終端部が前記ビード領域の延在方向に凸形状か凹形状かを判定するステップは、
前記ビード領域の代表点を算出する工程と、
前記ビード領域の前記終端部の中心位置を算出する工程と、
前記ビード領域の前記代表点と前記ビード領域の前記終端部の前記中心位置との間の中間点を算出する工程と、
前記中心位置と前記中間点とを結ぶ線分を挟んで平行に延び、且つ前記ビード領域の前記終端部の外周部に交わる2つの直線を算出する工程と、
前記2つの直線と前記終端部の前記外周部との交点を算出し、前記交点と前記中心位置とに基づいて湾曲度を計算し、該湾曲度を用いて前記ビード領域の前記終端部が凸形状か凹形状かを判定する工程と
を含むことを特徴とする請求項7ないし9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記湾曲度は、前記交点を結ぶ線分から前記中心位置までの距離であることを特徴とする請求項7ないし10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記終端部が凸形状か凹形状かを判定する工程は、前記記憶部から複数の画像を取得した場合、前記複数の画像から求められた平均湾曲度を用いて前記ビード領域の前記終端部が凸形状か凹形状かを判定することを特徴とする請求項7ないし11のいずれか一項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−45610(P2012−45610A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192129(P2010−192129)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]