ファイバファブリペローエタロンとその製造方法、外部共振器型半導体レーザ、ラマン増幅器
【課題】安価でかつ簡単な構造を有し、所望の発振波長のレーザ光を選択的に反射することが可能なファイバファブリペローエタロンとその製造方法、外部共振器型半導体レーザ、ラマン増幅器を提供する。
【解決手段】それぞれコア部およびクラッド部を有する第1および第2の光ファイバ2、3をそれぞれ挿通させる2つのフェルール4、5と、フェルール4、5を固定し、光ファイバ2、3のコア部の端面同士を光軸方向に所定間隔Δの間隙6を設けて対向させる円筒状のスリーブ7と、を備え、該端面のうちの少なくとも一方が凹状の端面である構成を有している。
【解決手段】それぞれコア部およびクラッド部を有する第1および第2の光ファイバ2、3をそれぞれ挿通させる2つのフェルール4、5と、フェルール4、5を固定し、光ファイバ2、3のコア部の端面同士を光軸方向に所定間隔Δの間隙6を設けて対向させる円筒状のスリーブ7と、を備え、該端面のうちの少なくとも一方が凹状の端面である構成を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバファブリペローエタロンとその製造方法、外部共振器型半導体レーザ、ラマン増幅器に関し、特に発振波長を安定化させる構造を有するファイバファブリペローエタロンとその製造方法、外部共振器型半導体レーザ、ラマン増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネット上で提供されるサービスの多様化に伴い、光ファイバ通信の通信容量の一層の拡大が必要となっている。
【0003】
光ファイバ通信の長距離化および大容量化に大きな役割を果たしているのが光ファイバ増幅器であり、エルビウム添加ファイバ増幅器(Erbium Doped Fiber Amplifier、以下、EDFAと記す)の実用化によって長距離光ファイバ通信技術が大きく前進した。
【0004】
さらに、EDFAの増幅帯域が1.55μm付近である程度の広がりを持っていたため、波長の異なる信号光を1本の光ファイバに同時に通すことで通信容量を飛躍的に拡大する波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing、以下、WDMと記す)通信技術が注目され、急激に発展した。
【0005】
しかしながら、EDFAの増幅帯域は光ファイバの低損失帯域よりも狭いため、最近では、EDFAの増幅帯域よりもさらに広い波長帯域の信号光を増幅できるラマン増幅器がEDFAとともに併用されている。
【0006】
ラマン増幅器は、励起光を出射する増幅用光源と、該増幅用光源から出射された励起光が入射される増幅用光ファイバと、を備えており、励起光の波長を変化させることによって任意の波長帯の信号光を増幅することが可能な光増幅器である。
【0007】
励起光が増幅用光ファイバに入射されると、増幅用光ファイバにおいて誘導ラマン散乱が生じ、励起光の中心波長(以下、励起光波長と記す)から100nm程度長波長側に利得が生じる。このとき、信号光が増幅用光ファイバに入射されると、上述の増幅用光ファイバ中に生じた利得によって励起光波長から100nm程度長い波長の信号光が増幅される。従って、ラマン増幅器は、励起光波長が変動すると、増幅用光ファイバにおいて増幅される信号光の利得も変動するため、増幅すべき波長を適切に増幅できなくなってしまう。
【0008】
従って、信号光の増幅率を安定させるためには、励起光波長が正確に制御される必要がある。このため、FBG(Fiber Bragg Grating)を用いた外部共振器型半導体レーザ(External Cavity Laser Diode、以下、ECLDと記す)が増幅用光源として実用化された。
【0009】
このようなECLDとして、従来、ゲインチップの前方端面から出射される光を、FBGが形成された光ファイバに入射させ、FBGにより反射された光をゲインチップに帰還させ、ゲインチップの後方端面によりこの光を反射させて再びFBGに入射させることを繰り返すことによって、特定波長でレーザ発振させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
この特許文献1に記載のECLDにおいては、FBGは、ゲルマニウムがドープされたコア部を有する光ファイバの一部に紫外レーザ光を照射させることにより、光ファイバの所定長さの範囲のコア部の屈折率を長手方向に周期的に変化させてなるものである。このFBGが形成された光ファイバに入射された光のうち、特定波長(λ=2nΛ)(nは光ファイバコアの実効屈折率、Λはグレーティング周期)の光のみがFBGで反射される。
【0011】
さらに、ラマン増幅器の利得特性の広帯域化および平坦化を実現するためには、増幅すべき波長帯域に応じた複数の中心波長を有する励起光が増幅用光ファイバに入射される必要がある。このため従来は、複数の励起光波長それぞれに対応するFBGが光ファイバに形成されていた(例えば、特許文献2参照)。
【0012】
図12は、特許文献2に開示されたような従来のラマン増幅器の構成の模式図である。従来のラマン増幅器は、例えば中心波長λ1、λ2の励起光を出射する半導体レーザ100A、100B、100C、100Dと、FBG101A、101B、101C、101Dと、偏波合成カプラ102、103と、WDMカプラ104、105と、増幅用光ファイバ106と、を備えている。
【0013】
半導体レーザ100A〜100Dで発生される励起光は、その中心波長λ1、λ2毎に偏波合成カプラ102、103で偏波合成され、各偏波合成カプラ102、103の出力光がWDMカプラ104で合波され、WDMカプラ105を介して増幅用光ファイバ106に入射される。半導体レーザ100A〜100Dから各偏波合成カプラ102、103の間は偏波保持ファイバ107で接続され、偏波面が異なる2つの励起光が各偏波合成カプラ102、103で合成されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第96/27929号パンフレット
【特許文献2】特開2000−98433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献1、2に示されたFBGを用いたECLDにおいては、上述のように増幅すべき波長帯域に対応する複数のFBGが光ファイバに形成されなければならないため、作製に対する時間およびコストがかかるという問題があった。
【0016】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、安価でかつ簡単な構造を有し、所望の発振波長のレーザ光を選択的に反射することが可能なファイバファブリペローエタロンとその製造方法、外部共振器型半導体レーザ、ラマン増幅器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のファイバファブリペローエタロンは、第1および第2の光ファイバと、前記第1および第2の光ファイバをそれぞれ挿通させる2つのフェルールと、前記フェルールを固定し、前記第1および第2の光ファイバの端面同士を光軸方向に所定間隔の間隙を設けて対向させる円筒状のスリーブと、を備え、前記端面のうちの少なくとも一方が凹状の端面である構成を有している。
【0018】
この構成により、間隙の間隔を調整することにより所望の中心波長のレーザ光を選択的に反射することが可能であるため、安価でかつ簡単な構造を有するエタロンを実現できる。
【0019】
また、本発明のファイバファブリペローエタロンは、前記第1および第2の光ファイバが、シングルモードファイバまたは偏波保持ファイバである構成を有していてもよい。
【0020】
本発明のファイバファブリペローエタロンの製造方法は、2つのフェルールにそれぞれ挿通された第1および第2の光ファイバのうち、少なくとも一方の光ファイバの端部をフッ化水素酸(HF)を含むエッチング溶液に浸してエッチングすることにより、該端部に凹状の端面を形成するエッチング段階と、前記第1および第2の光ファイバを円筒状のスリーブの両側から挿入して前記2つのフェルールを突き合わせて固定し、前記2本の光ファイバの端面同士を光軸方向に所定間隔の間隙を設けて対向させる光ファイバ固定段階と、を含む構成を有している。
【0021】
この構成により、間隙の間隔を調整することにより所望の中心波長のレーザ光を選択的に反射することが可能であり、安価でかつ簡単な構造を有するエタロンを実現できる。
【0022】
本発明の外部共振器型半導体レーザは、劈開によって形成された後方端面および出射端面と、該後方端面から該出射端面にかけて設けられ、駆動電流が供給されることによって光を発生させる活性層とを有し、該活性層において発生された光を該出射端面から出射するゲインチップと、前記出射端面から出射された光が前記第1の光ファイバを介して入射される上記のファイバファブリペローエタロンと、を備え、前記後方端面と前記ファイバファブリペローエタロンとの間で光共振器が構成される。
【0023】
この構成により、所望の中心波長のレーザ光を出射できるとともに、より安価でかつ簡単な構造を有する外部共振器型半導体レーザを実現できる。
【0024】
また、本発明の外部共振器型半導体レーザは、前記ゲインチップの前記出射端面に反射防止膜が設けられている構成を有していてもよい。
【0025】
本発明のラマン増幅器は、上記の外部共振器型半導体レーザと、前記外部共振器型半導体レーザの前記第2の光ファイバから出射されたレーザ光が励起光として入射され、誘導ラマン増幅を生じさせる増幅用光ファイバと、を備えた構成を有している。
この構成により、ラマン増幅の利得特性の安定化、広帯域化および平坦化を実現できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、安価でかつ簡単な構造を有し、所望の発振波長のレーザ光を選択的に反射することが可能なファイバファブリペローエタロンとその製造方法、外部共振器型半導体レーザ、ラマン増幅器を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るファイバエタロンの構造を示す模式図
【図2】本発明に係るファイバエタロンの構成を示す光軸に沿った断面図
【図3】本発明に係るファイバエタロンの反射特性を示すグラフ
【図4】本発明に係るファイバエタロンの透過率が最小となる場合の中心波長λcと間隔Δとの関係を示すグラフ
【図5】本発明に係るファイバエタロンの反射特性のサイドモード間隔および半値幅を示すグラフ
【図6】エッチング前とエッチング後の光ファイバの端部を模式的に示す光軸に沿った断面図
【図7】エッチング時間に対するエッチング深さを示すグラフ
【図8】固定前と固定後の2本の光ファイバを示す光軸に沿った断面図
【図9】本発明に係るファイバエタロンを備えた外部共振器型半導体レーザの上面図および断面図
【図10】本発明に係る外部共振器型半導体レーザを備えたラマン増幅器の構成を示すブロック図
【図11】励起光波長と利得との関係を示すグラフ
【図12】従来のラマン増幅器の構成を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係るファイバファブリペローエタロンとその製造方法、外部共振器型半導体レーザ、ラマン増幅器の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0029】
(第1の実施形態)
本発明に係るファイバファブリペローエタロンの第1の実施形態を図1〜図8を用いて説明する。図1はファイバファブリペローエタロン(以下、ファイバエタロンと記す)1の構造を示す模式図である。図2は、ファイバエタロン1の光軸を含む要部の断面図である。
【0030】
ファイバエタロン1は、図1、図2に示すように、それぞれコア部21、31およびクラッド部22、32を有する第1および第2の光ファイバ2、3(以下、単に光ファイバ2、3と記す)をそれぞれ挿通させる2つのフェルール4、5と、フェルール4、5を固定し、光ファイバ2、3のコア部21、31の端面(以下、コア端面と記す)21a、31a同士を光軸方向に所定間隔Δ(以下、単に間隔Δと記す)の間隙6を設けて対向させる円筒状のスリーブ7と、を備えている。なお、図1はスリーブ7の一部を破断して示している。
【0031】
光ファイバ2、3は、シングルモードファイバ(偏波を保持しないもの)またはパンダファイバ等の偏波保持ファイバである。光ファイバ2、3の先端部分の周囲にはフェルール4、5がそれぞれ取り付けられており、フェルール4、5の中心に光ファイバ2、3が位置している。フェルール4、5がスリーブ7の両端からそれぞれスリーブ7内に挿入されることによって、光ファイバ2、3は光軸が互いに一致した状態で固定されている。
【0032】
光ファイバ2、3の互いに対向する端面2a、3aは、上述のコア端面21a、31aと、クラッド部22、32の端面(以下、クラッド端面と記す)22a、32aからなる。コア端面21a、31aのうち少なくとも一方は凹状の端面である。なお、図2(a)は、コア端面21a、31aの両方が凹状の端面である例を示しており、一方、図2(b)は、コア端面21aが光軸に対して垂直な平面であり、コア端面31aのみが凹状の端面である例を示している。
【0033】
スリーブ7においては、その長手方向に1本のスリット7aが形成されている。スリット7aによってスリーブ7の径(内径および外径)がわずかに広がるので、フェルール4、5の外径がスリーブ7の内径とほぼ等しい、または、フェルール4、5の外径がスリーブ7の内径よりわずかに大きくても、フェルール4、5をスリーブ7内にきつく挿入することができる。また、スリット7aは、フェルール4、5をスリーブ7内にきつく挿入するときの空気の逃げに役立つ。
【0034】
一般にエタロンは、様々な波長を含む光のうちの特定波長の光のみを通過(透過)させるフィルタ(光周波数フィルタ)として用いられるが、本発明のファイバエタロン1は光周波数フィルタとしてではなく、特定波長の光を反射する光反射器として用いられる。
【0035】
本実施形態のファイバエタロン1に、中心波長λの光が光軸に対して角度θで入射したときの光の透過率T(λ)は近似的に次式によって表される。
【数1】
【0036】
[数1]において、A1、A2は2つの部分透過ミラーとしての端面2a、3aそれぞれの光吸収率を、R1、R2は端面2a、3aそれぞれの反射率を表す。さらに、[数1]におけるδは、次式によって表される。
【数2】
【0037】
[数2]において、nは間隙6に含まれる媒質に基づく屈折率を表す。θは、上述のようにファイバエタロン1への光の入射角度である。
【0038】
また、ファイバエタロン1の反射率R(λ)は、上述した透過率T(λ)を用いて次式のように表される。
【数3】
【0039】
[数1]におけるR1、R2は、ファイバエタロン1の場合、R1=R2=Rであり、端面2a、3aにおける光吸収率についてはA1=A2=0である。さらに、[数2]における屈折率nは間隙6がエアギャップであるとしてn=1とし、光の入射角度θは0度とする。このようにして、[数1]〜[数3]に基づいて、ファイバエタロン1の透過率T(λ)および反射率R(λ)はそれぞれ[数4]、[数5]のように表される。
【数4】
【数5】
【0040】
図3は、ファイバエタロン1の上記反射率R(λ)に基づく反射特性を、横軸をファイバエタロン1への入射光の波長(nm)、縦軸を反射率(%)とするグラフ上に示すものである。図3においては、R=3.4%、Δ=20μmとした場合の反射特性を示している。この場合においては、入射光の中心波長λが約1403nmまたは約1455nmのときに、ファイバエタロン1の反射率が最も高くなることが分かる。
【0041】
さらに、[数5]から分かるように、間隔Δを変化させることによってファイバエタロン1の反射特性は変化する。所望の中心波長λに対するファイバエタロン1の反射率R(λ)を最大にするには(即ち、透過率T(λ)を最小にするには)、[数5]において(2πΔ/λ)を(π/2)の整数倍とすればよく、このときの中心波長λcと間隔Δの関係は次式で与えられる。
【数6】
【0042】
図4は、透過率T(λ)が最小となる場合の中心波長λcと間隔Δとの関係を示すグラフである。各実線は異なるmの値に対応している。このグラフから所望の中心波長λcを実現するための間隔Δを得ることができる。図中の破線は中心波長λcが1.46μmである場合を示すものであり、透過率T(λc)が最小となる間隔Δが離散的に複数点存在することが分かる。
【0043】
また、間隔Δを変化させることによって、ファイバエタロン1の反射特性のサイドモード間隔(FSR)および半値幅も変化する。図5は、間隔Δに対する反射特性のFSRおよび半値幅を示すグラフである。図5においては、R=3.4%、n=1、θ=0度の場合のデータを示している。
【0044】
このグラフから、間隔Δが広くなるとFSRおよび半値幅が狭くなることが分かる。しかしながら、例えば、ファイバエタロン1と、ファイバエタロン1の光ファイバ2または光ファイバ3に向かって光を出射するゲインチップとの間で光共振器を形成する場合に上記のFSRおよび半値幅が狭すぎると、複数の発振波長(中心波長)のレーザ発振が起こりやすくなる。即ち、単一の中心波長を持つレーザ光を得るためのファイバエタロン1の間隔Δの値には制限(上限)がある。
【0045】
従って、ファイバエタロン1において、[数6]から得られる所望の中心波長λcを実現する間隔Δのうち、上記の上限以下の間隔Δを採用することにより、単一の中心波長λcのレーザ光を選択的に反射することができる。
【0046】
なお、上述した実施例では、ファイバエタロン1の端面2a、3aに特段のコーティングが施されていないが、端面2a、3aに、反射膜または反射防止膜のコーティングが形成されていてもよい。このコーティングにより、反射率および半値幅の制御を行うこともできる。
【0047】
以下、本発明に係るファイバエタロン1の製造方法の一例を図6〜図8を用いて説明する。
【0048】
本発明に係るファイバエタロンの製造方法は、2つのフェルール4、5にそれぞれ挿通された2本の光ファイバ2、3のうち、少なくとも一方の光ファイバの端部をフッ化水素酸(HF)を含むエッチング溶液に浸してエッチングすることにより、該端部に凹状の端面を形成するエッチング段階(I)と、2本の光ファイバ2、3を円筒状のスリーブ7の両側から挿入して2つのフェルール4、5を突き合わせて固定し、2本の光ファイバ2、3の端面2a、3a同士を光軸方向に所定間隔の間隙6を設けて対向させる光ファイバ固定段階と、を含む。
【0049】
なお、以下では、エッチング段階(I)において2本の光ファイバ2、3の両方をエッチングする場合を例にとって説明する。
【0050】
エッチング段階(I)においては、まず、シングルモードファイバまたは偏波保持ファイバである2本の光ファイバ2、3を用意する。光ファイバ2、3の端部には予めフェルール4、5が取り付けられている。光ファイバ2、3のコア部21、31およびクラッド部22、32の端面は光軸に対して垂直に切り出されている。
【0051】
そして、エッチング溶液に2本の光ファイバ2、3のフェルール4、5が取り付けられた側の端部を浸してエッチングを行う。エッチング溶液としては、例えば市販のフッ化水素酸(HF)(50重量%)と純水との混合液(以下、HF混合液と記す)を用意する。HF混合液は、コア部21、31に対するエッチング速度がクラッド部22、32に対するエッチング速度よりも大きいため、光ファイバ2、3の端部に凹状の端面を形成することができる。
【0052】
また、HF混合液中のフッ化水素酸(HF)の割合が低いほどエッチング速度は遅くなるため、フッ化水素酸(HF)と純水との体積比を調整することにより、所望のエッチング速度を実現することができる。
【0053】
なお、エッチング溶液として、フッ化水素酸(HF)(50重量%)とフッ化アンモニウム(NH4F)溶液(40重量%)との混合液であるバッファードフッ酸を用いてもよい。しかしながら、バッファードフッ酸中のフッ化アンモニウム(NH4F)溶液のフッ化水素酸(HF)に対する体積比が所定値を超えると、コア部21、31に対するエッチング速度がクラッド部22、32に対するエッチング速度よりも小さくなってしまい、光ファイバ2、3の端部に凸状の端面が形成されてしまうため注意が必要である。
【0054】
図6はエッチング前(a)とエッチング後(b)の光ファイバ2、3の端部を模式的に示す光軸に沿った断面図である。ここで、エッチングにより形成されたクラッド端面22a、32aとコア端面21a、31aの光軸方向の最大距離をコアエッチング深さt1とする。また、フェルール4、5の端面4a、5aとクラッド端面22a、32aの光軸方向の最小距離をクラッドエッチング深さt2とする。さらに、フェルール4、5の端面4a、5aとコア端面21a、31aの光軸方向の最大距離をエッチング深さt(=t1+t2)とする。
【0055】
例えばエッチング溶液として、フッ化水素酸(HF)と純水との体積比が1:1であるHF混合液を用いた場合には、エッチング時間に対するコアエッチング深さt1およびクラッドエッチング深さt2の実験結果では図7のグラフに示すようになった。
【0056】
図8に光ファイバ固定段階(II)における、固定前(a)と固定後(b)の光ファイバ2、3の光軸に沿った断面図を示す。光ファイバ固定段階(II)においては、まず透光性の接着剤をフェルール4、5の端面4a、5aに塗布する。そして、2本の光ファイバ2、3を円筒状のスリーブ7の両側から挿入し、接着剤が塗付されたフェルール4、5同士を突き合わせて接合する。さらに、接着剤でフェルール4、5とスリーブ7とを固定する。
【0057】
図8(b)に示すように、最終的に得られる間隔Δは、2本の光ファイバ2、3のエッチング深さtの和であるΔ=2tとなる。つまり、Δ=2tの関係および図7に示されたようなエッチング時間とエッチング深さとの関係に基づいて、エッチング段階(I)で所望の間隔Δを得るためのエッチング深さt(=t1+t2)およびエッチング時間を決定することができる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態のファイバエタロンは、間隙の間隔を調整することにより、所望の中心波長のレーザ光を選択的に反射することが可能である。また、本実施形態のファイバエタロンは、少なくとも一方が凹状の端面を有する2本の光ファイバの端面同士を対向させてなる簡単な構造を有しているため、安価でかつ簡易に製造することができる。
【0059】
また、本実施形態のファイバエタロンは、スリーブ内でフェルールの対向する端面同士が突き合わされて接合されるため、間隙の間隔を確実に固定し、高精度に所望の発振波長のレーザ光を反射することが可能である。
【0060】
(第2の実施形態)
本発明に係るファイバファブリペローエタロンを備えた外部共振器型半導体レーザの実施形態を図9を用いて説明する。図9(a)は外部共振器型半導体レーザ10の上面図、図9(b)は図9(a)のA−A線断面図である。なお、図9では、フェルール4、5およびスリーブ7の図示を省略している。
【0061】
外部共振器型半導体レーザ10は、図9に示すように、第1の実施形態のファイバエタロン1と、内部が中空である直方体状のパッケージ8と、を備える。パッケージ8の内部には、ファイバエタロン1の光ファイバ2の端面2bに向かって光を出射するゲインチップ11と、ゲインチップ11から出射される光を集光するレンズ12と、周囲温度を検出するサーミスタ13と、サーミスタ13によって検出された周囲温度に基づいてゲインチップ11の温度制御を行うTEC(Thermo Electrical Cooler)14と、が格納されている。
【0062】
ここで、ファイバエタロン1の間隙6の間隔Δは、ゲインチップ11の光学利得のピークとなる波長と、[数6]に示された中心波長λcとが一致するように設定されることが好ましい。
【0063】
パッケージ8は、本体部8aと、ファイバエタロン1が挿通される光ファイバ挿通パイプ8bと、蓋部材8c(図9(a)には図示せず)と、を備えている。ファイバエタロン1は、例えばフェルール、接着剤、金属封止剤、または樹脂封止剤等の固定部材15によって光ファイバ挿通パイプ8bに固定されている。ファイバエタロン1の光ファイバ3の端部には光出力用のコネクタ16が形成されている。
【0064】
さらに、外部共振器型半導体レーザ10は、パッケージ8の内部に、ゲインチップ11を載置するためのサブマウント17と、レンズ12を保持するレンズホルダ18と、サーミスタ13、サブマウント17、およびレンズホルダ18を固定する基板19と、を備えている。基板19は、パッケージ8の内部の底面に固定された上述のTEC14上に固定されている。基板19は、例えば、銅タングステン(CuW)等の材料により形成されている。
【0065】
ゲインチップ11は、複数の半導体層が積層されることにより構成されており、これらの半導体層は、組成や、ドープされる不純物の種類、量が互いに異なっている。また、ゲインチップ11は、劈開によって形成された後方端面11aおよび出射端面11bと、後方端面11aから出射端面11bにかけて設けられ、駆動電流が供給されることによって光を発生させるストライプ状の活性層11cとを有し、活性層11cにおいて発生した光を出射端面11bから出射する構成を有している。
【0066】
これにより、光を発生するゲインチップ11の後方端面11aと、光反射器として機能するファイバエタロン1とによって、光共振器が構成される。なお、ゲインチップ11の出射端面11bには反射防止膜が、後方端面11aには反射膜がそれぞれ形成されていてもよい。なお、ファイバエタロン1によって反射された光をゲインチップ11に戻す必要があるので、パッケージ8中にアイソレータは設けない。
【0067】
TEC14は、吸熱側基板14aと、放熱側基板14bと、これらの基板14a、14bに挟まれた半導体素子14cにより構成されており、基板19と吸熱側基板14aとが密着されることにより、ゲインチップ11から発生した熱を吸熱し、ゲインチップ11の温度を一定に保つようになっている。
【0068】
次に、以上のように構成された外部共振器型半導体レーザ10の動作を説明する。
ゲインチップ11に駆動電流が供給されると活性層11cにおいて光が発生する。活性層11cにおいて発生した光は、ゲインチップ11の出射端面11bから出射されてレンズ12に入射される。レンズ12において集光された光はファイバエタロン1の光ファイバ2に入射される。
【0069】
ファイバエタロン1に入射された光のうち、特定の中心波長λcの光が間隙6の端面2a、3aにおいて反射され、光ファイバ2、レンズ12を介して再びゲインチップ11に戻り、ゲインチップ11の後方端面11aにおいて反射される。
【0070】
ゲインチップ11の後方端面11aとファイバエタロン1との間で光反射が繰り返されると、特定の中心波長λcでレーザ発振が生じる。このようにして生じたレーザ光はファイバエタロン1の光ファイバ2の端面2bを介してコネクタ16に到達する。なお、この中心波長λcのレーザ光は、複数の縦モードの波長成分を含んでいる。
【0071】
第1の実施形態で述べたように、間隔Δを変化させることによってファイバエタロン1の反射特性は変化するため、ゲインチップ11の後方端面11aとファイバエタロン1との間で光反射が繰り返されることによって得られる、外部共振器型半導体レーザ10から出射されるレーザ光のスペクトル特性(発振波長)も間隔Δに応じて変化する。即ち、間隔Δを調整することによって、所望の発振波長のレーザ光を外部共振器型半導体レーザ10から出射させることができる。
【0072】
また、既に述べたように、間隔Δが広すぎる(FSRおよび半値幅が狭すぎる)と複数の中心波長でレーザ発振が起こりやすくなる。間隔Δが20〜30μm程度であると、ゲインチップ11の温度が例えば70℃程度の高温においてTEC14による制御なしでも単一の中心波長を持つレーザ光を得られるため好ましい。
【0073】
以上説明したように、本実施形態の外部共振器型半導体レーザは、第1の実施形態のファイバエタロンを備えるため、所望の中心波長のレーザ光を出射できる。また、本実施形態の外部共振器型半導体レーザは、簡単な構造を有しているため、安価でかつ簡易に製造することができる。
【0074】
(第3の実施形態)
次に、本発明に関する第3の実施形態のラマン増幅器について図10、図11を用いて説明する。図10は第2の実施形態の外部共振器型半導体レーザを励起光用光源として用いたラマン増幅器50のブロック図を示している。ここでは、励起光波長(励起光の中心波長)として2つの波長λ1、λ2を用いた例を説明する。
【0075】
ラマン増幅器50は、偏波面が互いに異なる波長λ1の励起光をそれぞれ出射する2つの外部共振器型半導体レーザ10A、10Bと、偏波面が互いに異なる波長λ2の励起光をそれぞれ出射する2つの外部共振器型半導体レーザ10C、10Dと、外部共振器型半導体レーザ10A〜10Dからの出射光が励起光として入射され、誘導ラマン増幅により信号光を増幅する増幅用光ファイバ51と、を備えている。
【0076】
さらに、ラマン増幅器50は、外部共振器型半導体レーザ10A、10Bからの出射光を偏波合成する偏波合成カプラ52と、外部共振器型半導体レーザ10C、10Dからの出射光を偏波合成する偏波合成カプラ53と、偏波合成カプラ52、53からの出力光を合波するWDMカプラ54と、増幅用光ファイバ51で増幅された信号光とWDMカプラ54からの出力光を合波するWDMカプラ55と、を備えている。
【0077】
外部共振器型半導体レーザ10A、10Bは、ゲインチップ11A、11Bおよび光ファイバが偏波保持ファイバであるファイバエタロン1A、1Bを有し、偏波面が互いに異なる中心波長λ1の励起光をコネクタ(図10においては図示せず)を介してそれぞれ出射する。
【0078】
また、外部共振器型半導体レーザ10C、10Dは、ゲインチップ11C、11Dおよび光ファイバが偏波保持ファイバであるファイバエタロン1C、1Dを有し、偏波面が互いに異なる中心波長λ2の励起光をコネクタ(図10においては図示せず)を介してそれぞれ出射する。
【0079】
外部共振器型半導体レーザ10A〜10Dで発生された励起光は、その中心波長λ1、λ2毎に偏波合成カプラ52、53で偏波合成され、各偏波合成カプラ52、53の出力光がWDMカプラ54で合波され、WDMカプラ54および増幅用光ファイバ51と結合されたWDMカプラ55を介して増幅用光ファイバ51に入射される。
【0080】
なお、これらの中心波長λ1、λ2の励起光は、第2の実施形態で述べたように複数の縦モードの波長成分を含んでいる。これにより、増幅用光ファイバ51における誘導ブリルアン散乱が抑制され、信号光を長距離にわたってファイバ伝送させることが可能となる。
【0081】
図11は、励起光波長λ1、λ2と利得との関係を模式的に示すグラフである。増幅用光ファイバ51に入射された励起光により、増幅用光ファイバ51において誘導ラマン散乱が生じ、図11に示すように、励起光波長λ1、λ2から100nm程度長波長側に利得gが生じる。この状態で増幅用光ファイバ51に信号光が入射されると、増幅用光ファイバ51中に生じた利得gによって信号光が増幅される。
【0082】
なお、本実施形態のように、複数の励起光波長λ1〜λn(λ1<...<λn)(n≧2)を用いる構成にあっては、最小の励起光波長λ1と最大の励起光波長λnとの波長差を100nm以内とすることが好ましい。これは、励起光と信号光とが重複することによる信号光の波形劣化を防止するためである。
【0083】
以上説明したように、本実施形態のラマン増幅器は、第2の実施形態の外部共振器型半導体レーザを備えるため、ラマン増幅の利得特性の安定化、広帯域化および平坦化を実現することができる。
【符号の説明】
【0084】
1、1A、1B、1C、1D ファイバファブリペローエタロン(ファイバエタロン)
2、3 光ファイバ
2a、3a 端面
4、5 フェルール
6 間隙
7 スリーブ
10、10A、10B、10C、10D 外部共振器型半導体レーザ
11、11A、11B、11C、11D ゲインチップ
11a 後方端面
11b 出射端面
11c 活性層
16 コネクタ
50 ラマン増幅器
51 増幅用光ファイバ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバファブリペローエタロンとその製造方法、外部共振器型半導体レーザ、ラマン増幅器に関し、特に発振波長を安定化させる構造を有するファイバファブリペローエタロンとその製造方法、外部共振器型半導体レーザ、ラマン増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネット上で提供されるサービスの多様化に伴い、光ファイバ通信の通信容量の一層の拡大が必要となっている。
【0003】
光ファイバ通信の長距離化および大容量化に大きな役割を果たしているのが光ファイバ増幅器であり、エルビウム添加ファイバ増幅器(Erbium Doped Fiber Amplifier、以下、EDFAと記す)の実用化によって長距離光ファイバ通信技術が大きく前進した。
【0004】
さらに、EDFAの増幅帯域が1.55μm付近である程度の広がりを持っていたため、波長の異なる信号光を1本の光ファイバに同時に通すことで通信容量を飛躍的に拡大する波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing、以下、WDMと記す)通信技術が注目され、急激に発展した。
【0005】
しかしながら、EDFAの増幅帯域は光ファイバの低損失帯域よりも狭いため、最近では、EDFAの増幅帯域よりもさらに広い波長帯域の信号光を増幅できるラマン増幅器がEDFAとともに併用されている。
【0006】
ラマン増幅器は、励起光を出射する増幅用光源と、該増幅用光源から出射された励起光が入射される増幅用光ファイバと、を備えており、励起光の波長を変化させることによって任意の波長帯の信号光を増幅することが可能な光増幅器である。
【0007】
励起光が増幅用光ファイバに入射されると、増幅用光ファイバにおいて誘導ラマン散乱が生じ、励起光の中心波長(以下、励起光波長と記す)から100nm程度長波長側に利得が生じる。このとき、信号光が増幅用光ファイバに入射されると、上述の増幅用光ファイバ中に生じた利得によって励起光波長から100nm程度長い波長の信号光が増幅される。従って、ラマン増幅器は、励起光波長が変動すると、増幅用光ファイバにおいて増幅される信号光の利得も変動するため、増幅すべき波長を適切に増幅できなくなってしまう。
【0008】
従って、信号光の増幅率を安定させるためには、励起光波長が正確に制御される必要がある。このため、FBG(Fiber Bragg Grating)を用いた外部共振器型半導体レーザ(External Cavity Laser Diode、以下、ECLDと記す)が増幅用光源として実用化された。
【0009】
このようなECLDとして、従来、ゲインチップの前方端面から出射される光を、FBGが形成された光ファイバに入射させ、FBGにより反射された光をゲインチップに帰還させ、ゲインチップの後方端面によりこの光を反射させて再びFBGに入射させることを繰り返すことによって、特定波長でレーザ発振させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
この特許文献1に記載のECLDにおいては、FBGは、ゲルマニウムがドープされたコア部を有する光ファイバの一部に紫外レーザ光を照射させることにより、光ファイバの所定長さの範囲のコア部の屈折率を長手方向に周期的に変化させてなるものである。このFBGが形成された光ファイバに入射された光のうち、特定波長(λ=2nΛ)(nは光ファイバコアの実効屈折率、Λはグレーティング周期)の光のみがFBGで反射される。
【0011】
さらに、ラマン増幅器の利得特性の広帯域化および平坦化を実現するためには、増幅すべき波長帯域に応じた複数の中心波長を有する励起光が増幅用光ファイバに入射される必要がある。このため従来は、複数の励起光波長それぞれに対応するFBGが光ファイバに形成されていた(例えば、特許文献2参照)。
【0012】
図12は、特許文献2に開示されたような従来のラマン増幅器の構成の模式図である。従来のラマン増幅器は、例えば中心波長λ1、λ2の励起光を出射する半導体レーザ100A、100B、100C、100Dと、FBG101A、101B、101C、101Dと、偏波合成カプラ102、103と、WDMカプラ104、105と、増幅用光ファイバ106と、を備えている。
【0013】
半導体レーザ100A〜100Dで発生される励起光は、その中心波長λ1、λ2毎に偏波合成カプラ102、103で偏波合成され、各偏波合成カプラ102、103の出力光がWDMカプラ104で合波され、WDMカプラ105を介して増幅用光ファイバ106に入射される。半導体レーザ100A〜100Dから各偏波合成カプラ102、103の間は偏波保持ファイバ107で接続され、偏波面が異なる2つの励起光が各偏波合成カプラ102、103で合成されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第96/27929号パンフレット
【特許文献2】特開2000−98433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献1、2に示されたFBGを用いたECLDにおいては、上述のように増幅すべき波長帯域に対応する複数のFBGが光ファイバに形成されなければならないため、作製に対する時間およびコストがかかるという問題があった。
【0016】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、安価でかつ簡単な構造を有し、所望の発振波長のレーザ光を選択的に反射することが可能なファイバファブリペローエタロンとその製造方法、外部共振器型半導体レーザ、ラマン増幅器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のファイバファブリペローエタロンは、第1および第2の光ファイバと、前記第1および第2の光ファイバをそれぞれ挿通させる2つのフェルールと、前記フェルールを固定し、前記第1および第2の光ファイバの端面同士を光軸方向に所定間隔の間隙を設けて対向させる円筒状のスリーブと、を備え、前記端面のうちの少なくとも一方が凹状の端面である構成を有している。
【0018】
この構成により、間隙の間隔を調整することにより所望の中心波長のレーザ光を選択的に反射することが可能であるため、安価でかつ簡単な構造を有するエタロンを実現できる。
【0019】
また、本発明のファイバファブリペローエタロンは、前記第1および第2の光ファイバが、シングルモードファイバまたは偏波保持ファイバである構成を有していてもよい。
【0020】
本発明のファイバファブリペローエタロンの製造方法は、2つのフェルールにそれぞれ挿通された第1および第2の光ファイバのうち、少なくとも一方の光ファイバの端部をフッ化水素酸(HF)を含むエッチング溶液に浸してエッチングすることにより、該端部に凹状の端面を形成するエッチング段階と、前記第1および第2の光ファイバを円筒状のスリーブの両側から挿入して前記2つのフェルールを突き合わせて固定し、前記2本の光ファイバの端面同士を光軸方向に所定間隔の間隙を設けて対向させる光ファイバ固定段階と、を含む構成を有している。
【0021】
この構成により、間隙の間隔を調整することにより所望の中心波長のレーザ光を選択的に反射することが可能であり、安価でかつ簡単な構造を有するエタロンを実現できる。
【0022】
本発明の外部共振器型半導体レーザは、劈開によって形成された後方端面および出射端面と、該後方端面から該出射端面にかけて設けられ、駆動電流が供給されることによって光を発生させる活性層とを有し、該活性層において発生された光を該出射端面から出射するゲインチップと、前記出射端面から出射された光が前記第1の光ファイバを介して入射される上記のファイバファブリペローエタロンと、を備え、前記後方端面と前記ファイバファブリペローエタロンとの間で光共振器が構成される。
【0023】
この構成により、所望の中心波長のレーザ光を出射できるとともに、より安価でかつ簡単な構造を有する外部共振器型半導体レーザを実現できる。
【0024】
また、本発明の外部共振器型半導体レーザは、前記ゲインチップの前記出射端面に反射防止膜が設けられている構成を有していてもよい。
【0025】
本発明のラマン増幅器は、上記の外部共振器型半導体レーザと、前記外部共振器型半導体レーザの前記第2の光ファイバから出射されたレーザ光が励起光として入射され、誘導ラマン増幅を生じさせる増幅用光ファイバと、を備えた構成を有している。
この構成により、ラマン増幅の利得特性の安定化、広帯域化および平坦化を実現できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、安価でかつ簡単な構造を有し、所望の発振波長のレーザ光を選択的に反射することが可能なファイバファブリペローエタロンとその製造方法、外部共振器型半導体レーザ、ラマン増幅器を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るファイバエタロンの構造を示す模式図
【図2】本発明に係るファイバエタロンの構成を示す光軸に沿った断面図
【図3】本発明に係るファイバエタロンの反射特性を示すグラフ
【図4】本発明に係るファイバエタロンの透過率が最小となる場合の中心波長λcと間隔Δとの関係を示すグラフ
【図5】本発明に係るファイバエタロンの反射特性のサイドモード間隔および半値幅を示すグラフ
【図6】エッチング前とエッチング後の光ファイバの端部を模式的に示す光軸に沿った断面図
【図7】エッチング時間に対するエッチング深さを示すグラフ
【図8】固定前と固定後の2本の光ファイバを示す光軸に沿った断面図
【図9】本発明に係るファイバエタロンを備えた外部共振器型半導体レーザの上面図および断面図
【図10】本発明に係る外部共振器型半導体レーザを備えたラマン増幅器の構成を示すブロック図
【図11】励起光波長と利得との関係を示すグラフ
【図12】従来のラマン増幅器の構成を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係るファイバファブリペローエタロンとその製造方法、外部共振器型半導体レーザ、ラマン増幅器の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0029】
(第1の実施形態)
本発明に係るファイバファブリペローエタロンの第1の実施形態を図1〜図8を用いて説明する。図1はファイバファブリペローエタロン(以下、ファイバエタロンと記す)1の構造を示す模式図である。図2は、ファイバエタロン1の光軸を含む要部の断面図である。
【0030】
ファイバエタロン1は、図1、図2に示すように、それぞれコア部21、31およびクラッド部22、32を有する第1および第2の光ファイバ2、3(以下、単に光ファイバ2、3と記す)をそれぞれ挿通させる2つのフェルール4、5と、フェルール4、5を固定し、光ファイバ2、3のコア部21、31の端面(以下、コア端面と記す)21a、31a同士を光軸方向に所定間隔Δ(以下、単に間隔Δと記す)の間隙6を設けて対向させる円筒状のスリーブ7と、を備えている。なお、図1はスリーブ7の一部を破断して示している。
【0031】
光ファイバ2、3は、シングルモードファイバ(偏波を保持しないもの)またはパンダファイバ等の偏波保持ファイバである。光ファイバ2、3の先端部分の周囲にはフェルール4、5がそれぞれ取り付けられており、フェルール4、5の中心に光ファイバ2、3が位置している。フェルール4、5がスリーブ7の両端からそれぞれスリーブ7内に挿入されることによって、光ファイバ2、3は光軸が互いに一致した状態で固定されている。
【0032】
光ファイバ2、3の互いに対向する端面2a、3aは、上述のコア端面21a、31aと、クラッド部22、32の端面(以下、クラッド端面と記す)22a、32aからなる。コア端面21a、31aのうち少なくとも一方は凹状の端面である。なお、図2(a)は、コア端面21a、31aの両方が凹状の端面である例を示しており、一方、図2(b)は、コア端面21aが光軸に対して垂直な平面であり、コア端面31aのみが凹状の端面である例を示している。
【0033】
スリーブ7においては、その長手方向に1本のスリット7aが形成されている。スリット7aによってスリーブ7の径(内径および外径)がわずかに広がるので、フェルール4、5の外径がスリーブ7の内径とほぼ等しい、または、フェルール4、5の外径がスリーブ7の内径よりわずかに大きくても、フェルール4、5をスリーブ7内にきつく挿入することができる。また、スリット7aは、フェルール4、5をスリーブ7内にきつく挿入するときの空気の逃げに役立つ。
【0034】
一般にエタロンは、様々な波長を含む光のうちの特定波長の光のみを通過(透過)させるフィルタ(光周波数フィルタ)として用いられるが、本発明のファイバエタロン1は光周波数フィルタとしてではなく、特定波長の光を反射する光反射器として用いられる。
【0035】
本実施形態のファイバエタロン1に、中心波長λの光が光軸に対して角度θで入射したときの光の透過率T(λ)は近似的に次式によって表される。
【数1】
【0036】
[数1]において、A1、A2は2つの部分透過ミラーとしての端面2a、3aそれぞれの光吸収率を、R1、R2は端面2a、3aそれぞれの反射率を表す。さらに、[数1]におけるδは、次式によって表される。
【数2】
【0037】
[数2]において、nは間隙6に含まれる媒質に基づく屈折率を表す。θは、上述のようにファイバエタロン1への光の入射角度である。
【0038】
また、ファイバエタロン1の反射率R(λ)は、上述した透過率T(λ)を用いて次式のように表される。
【数3】
【0039】
[数1]におけるR1、R2は、ファイバエタロン1の場合、R1=R2=Rであり、端面2a、3aにおける光吸収率についてはA1=A2=0である。さらに、[数2]における屈折率nは間隙6がエアギャップであるとしてn=1とし、光の入射角度θは0度とする。このようにして、[数1]〜[数3]に基づいて、ファイバエタロン1の透過率T(λ)および反射率R(λ)はそれぞれ[数4]、[数5]のように表される。
【数4】
【数5】
【0040】
図3は、ファイバエタロン1の上記反射率R(λ)に基づく反射特性を、横軸をファイバエタロン1への入射光の波長(nm)、縦軸を反射率(%)とするグラフ上に示すものである。図3においては、R=3.4%、Δ=20μmとした場合の反射特性を示している。この場合においては、入射光の中心波長λが約1403nmまたは約1455nmのときに、ファイバエタロン1の反射率が最も高くなることが分かる。
【0041】
さらに、[数5]から分かるように、間隔Δを変化させることによってファイバエタロン1の反射特性は変化する。所望の中心波長λに対するファイバエタロン1の反射率R(λ)を最大にするには(即ち、透過率T(λ)を最小にするには)、[数5]において(2πΔ/λ)を(π/2)の整数倍とすればよく、このときの中心波長λcと間隔Δの関係は次式で与えられる。
【数6】
【0042】
図4は、透過率T(λ)が最小となる場合の中心波長λcと間隔Δとの関係を示すグラフである。各実線は異なるmの値に対応している。このグラフから所望の中心波長λcを実現するための間隔Δを得ることができる。図中の破線は中心波長λcが1.46μmである場合を示すものであり、透過率T(λc)が最小となる間隔Δが離散的に複数点存在することが分かる。
【0043】
また、間隔Δを変化させることによって、ファイバエタロン1の反射特性のサイドモード間隔(FSR)および半値幅も変化する。図5は、間隔Δに対する反射特性のFSRおよび半値幅を示すグラフである。図5においては、R=3.4%、n=1、θ=0度の場合のデータを示している。
【0044】
このグラフから、間隔Δが広くなるとFSRおよび半値幅が狭くなることが分かる。しかしながら、例えば、ファイバエタロン1と、ファイバエタロン1の光ファイバ2または光ファイバ3に向かって光を出射するゲインチップとの間で光共振器を形成する場合に上記のFSRおよび半値幅が狭すぎると、複数の発振波長(中心波長)のレーザ発振が起こりやすくなる。即ち、単一の中心波長を持つレーザ光を得るためのファイバエタロン1の間隔Δの値には制限(上限)がある。
【0045】
従って、ファイバエタロン1において、[数6]から得られる所望の中心波長λcを実現する間隔Δのうち、上記の上限以下の間隔Δを採用することにより、単一の中心波長λcのレーザ光を選択的に反射することができる。
【0046】
なお、上述した実施例では、ファイバエタロン1の端面2a、3aに特段のコーティングが施されていないが、端面2a、3aに、反射膜または反射防止膜のコーティングが形成されていてもよい。このコーティングにより、反射率および半値幅の制御を行うこともできる。
【0047】
以下、本発明に係るファイバエタロン1の製造方法の一例を図6〜図8を用いて説明する。
【0048】
本発明に係るファイバエタロンの製造方法は、2つのフェルール4、5にそれぞれ挿通された2本の光ファイバ2、3のうち、少なくとも一方の光ファイバの端部をフッ化水素酸(HF)を含むエッチング溶液に浸してエッチングすることにより、該端部に凹状の端面を形成するエッチング段階(I)と、2本の光ファイバ2、3を円筒状のスリーブ7の両側から挿入して2つのフェルール4、5を突き合わせて固定し、2本の光ファイバ2、3の端面2a、3a同士を光軸方向に所定間隔の間隙6を設けて対向させる光ファイバ固定段階と、を含む。
【0049】
なお、以下では、エッチング段階(I)において2本の光ファイバ2、3の両方をエッチングする場合を例にとって説明する。
【0050】
エッチング段階(I)においては、まず、シングルモードファイバまたは偏波保持ファイバである2本の光ファイバ2、3を用意する。光ファイバ2、3の端部には予めフェルール4、5が取り付けられている。光ファイバ2、3のコア部21、31およびクラッド部22、32の端面は光軸に対して垂直に切り出されている。
【0051】
そして、エッチング溶液に2本の光ファイバ2、3のフェルール4、5が取り付けられた側の端部を浸してエッチングを行う。エッチング溶液としては、例えば市販のフッ化水素酸(HF)(50重量%)と純水との混合液(以下、HF混合液と記す)を用意する。HF混合液は、コア部21、31に対するエッチング速度がクラッド部22、32に対するエッチング速度よりも大きいため、光ファイバ2、3の端部に凹状の端面を形成することができる。
【0052】
また、HF混合液中のフッ化水素酸(HF)の割合が低いほどエッチング速度は遅くなるため、フッ化水素酸(HF)と純水との体積比を調整することにより、所望のエッチング速度を実現することができる。
【0053】
なお、エッチング溶液として、フッ化水素酸(HF)(50重量%)とフッ化アンモニウム(NH4F)溶液(40重量%)との混合液であるバッファードフッ酸を用いてもよい。しかしながら、バッファードフッ酸中のフッ化アンモニウム(NH4F)溶液のフッ化水素酸(HF)に対する体積比が所定値を超えると、コア部21、31に対するエッチング速度がクラッド部22、32に対するエッチング速度よりも小さくなってしまい、光ファイバ2、3の端部に凸状の端面が形成されてしまうため注意が必要である。
【0054】
図6はエッチング前(a)とエッチング後(b)の光ファイバ2、3の端部を模式的に示す光軸に沿った断面図である。ここで、エッチングにより形成されたクラッド端面22a、32aとコア端面21a、31aの光軸方向の最大距離をコアエッチング深さt1とする。また、フェルール4、5の端面4a、5aとクラッド端面22a、32aの光軸方向の最小距離をクラッドエッチング深さt2とする。さらに、フェルール4、5の端面4a、5aとコア端面21a、31aの光軸方向の最大距離をエッチング深さt(=t1+t2)とする。
【0055】
例えばエッチング溶液として、フッ化水素酸(HF)と純水との体積比が1:1であるHF混合液を用いた場合には、エッチング時間に対するコアエッチング深さt1およびクラッドエッチング深さt2の実験結果では図7のグラフに示すようになった。
【0056】
図8に光ファイバ固定段階(II)における、固定前(a)と固定後(b)の光ファイバ2、3の光軸に沿った断面図を示す。光ファイバ固定段階(II)においては、まず透光性の接着剤をフェルール4、5の端面4a、5aに塗布する。そして、2本の光ファイバ2、3を円筒状のスリーブ7の両側から挿入し、接着剤が塗付されたフェルール4、5同士を突き合わせて接合する。さらに、接着剤でフェルール4、5とスリーブ7とを固定する。
【0057】
図8(b)に示すように、最終的に得られる間隔Δは、2本の光ファイバ2、3のエッチング深さtの和であるΔ=2tとなる。つまり、Δ=2tの関係および図7に示されたようなエッチング時間とエッチング深さとの関係に基づいて、エッチング段階(I)で所望の間隔Δを得るためのエッチング深さt(=t1+t2)およびエッチング時間を決定することができる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態のファイバエタロンは、間隙の間隔を調整することにより、所望の中心波長のレーザ光を選択的に反射することが可能である。また、本実施形態のファイバエタロンは、少なくとも一方が凹状の端面を有する2本の光ファイバの端面同士を対向させてなる簡単な構造を有しているため、安価でかつ簡易に製造することができる。
【0059】
また、本実施形態のファイバエタロンは、スリーブ内でフェルールの対向する端面同士が突き合わされて接合されるため、間隙の間隔を確実に固定し、高精度に所望の発振波長のレーザ光を反射することが可能である。
【0060】
(第2の実施形態)
本発明に係るファイバファブリペローエタロンを備えた外部共振器型半導体レーザの実施形態を図9を用いて説明する。図9(a)は外部共振器型半導体レーザ10の上面図、図9(b)は図9(a)のA−A線断面図である。なお、図9では、フェルール4、5およびスリーブ7の図示を省略している。
【0061】
外部共振器型半導体レーザ10は、図9に示すように、第1の実施形態のファイバエタロン1と、内部が中空である直方体状のパッケージ8と、を備える。パッケージ8の内部には、ファイバエタロン1の光ファイバ2の端面2bに向かって光を出射するゲインチップ11と、ゲインチップ11から出射される光を集光するレンズ12と、周囲温度を検出するサーミスタ13と、サーミスタ13によって検出された周囲温度に基づいてゲインチップ11の温度制御を行うTEC(Thermo Electrical Cooler)14と、が格納されている。
【0062】
ここで、ファイバエタロン1の間隙6の間隔Δは、ゲインチップ11の光学利得のピークとなる波長と、[数6]に示された中心波長λcとが一致するように設定されることが好ましい。
【0063】
パッケージ8は、本体部8aと、ファイバエタロン1が挿通される光ファイバ挿通パイプ8bと、蓋部材8c(図9(a)には図示せず)と、を備えている。ファイバエタロン1は、例えばフェルール、接着剤、金属封止剤、または樹脂封止剤等の固定部材15によって光ファイバ挿通パイプ8bに固定されている。ファイバエタロン1の光ファイバ3の端部には光出力用のコネクタ16が形成されている。
【0064】
さらに、外部共振器型半導体レーザ10は、パッケージ8の内部に、ゲインチップ11を載置するためのサブマウント17と、レンズ12を保持するレンズホルダ18と、サーミスタ13、サブマウント17、およびレンズホルダ18を固定する基板19と、を備えている。基板19は、パッケージ8の内部の底面に固定された上述のTEC14上に固定されている。基板19は、例えば、銅タングステン(CuW)等の材料により形成されている。
【0065】
ゲインチップ11は、複数の半導体層が積層されることにより構成されており、これらの半導体層は、組成や、ドープされる不純物の種類、量が互いに異なっている。また、ゲインチップ11は、劈開によって形成された後方端面11aおよび出射端面11bと、後方端面11aから出射端面11bにかけて設けられ、駆動電流が供給されることによって光を発生させるストライプ状の活性層11cとを有し、活性層11cにおいて発生した光を出射端面11bから出射する構成を有している。
【0066】
これにより、光を発生するゲインチップ11の後方端面11aと、光反射器として機能するファイバエタロン1とによって、光共振器が構成される。なお、ゲインチップ11の出射端面11bには反射防止膜が、後方端面11aには反射膜がそれぞれ形成されていてもよい。なお、ファイバエタロン1によって反射された光をゲインチップ11に戻す必要があるので、パッケージ8中にアイソレータは設けない。
【0067】
TEC14は、吸熱側基板14aと、放熱側基板14bと、これらの基板14a、14bに挟まれた半導体素子14cにより構成されており、基板19と吸熱側基板14aとが密着されることにより、ゲインチップ11から発生した熱を吸熱し、ゲインチップ11の温度を一定に保つようになっている。
【0068】
次に、以上のように構成された外部共振器型半導体レーザ10の動作を説明する。
ゲインチップ11に駆動電流が供給されると活性層11cにおいて光が発生する。活性層11cにおいて発生した光は、ゲインチップ11の出射端面11bから出射されてレンズ12に入射される。レンズ12において集光された光はファイバエタロン1の光ファイバ2に入射される。
【0069】
ファイバエタロン1に入射された光のうち、特定の中心波長λcの光が間隙6の端面2a、3aにおいて反射され、光ファイバ2、レンズ12を介して再びゲインチップ11に戻り、ゲインチップ11の後方端面11aにおいて反射される。
【0070】
ゲインチップ11の後方端面11aとファイバエタロン1との間で光反射が繰り返されると、特定の中心波長λcでレーザ発振が生じる。このようにして生じたレーザ光はファイバエタロン1の光ファイバ2の端面2bを介してコネクタ16に到達する。なお、この中心波長λcのレーザ光は、複数の縦モードの波長成分を含んでいる。
【0071】
第1の実施形態で述べたように、間隔Δを変化させることによってファイバエタロン1の反射特性は変化するため、ゲインチップ11の後方端面11aとファイバエタロン1との間で光反射が繰り返されることによって得られる、外部共振器型半導体レーザ10から出射されるレーザ光のスペクトル特性(発振波長)も間隔Δに応じて変化する。即ち、間隔Δを調整することによって、所望の発振波長のレーザ光を外部共振器型半導体レーザ10から出射させることができる。
【0072】
また、既に述べたように、間隔Δが広すぎる(FSRおよび半値幅が狭すぎる)と複数の中心波長でレーザ発振が起こりやすくなる。間隔Δが20〜30μm程度であると、ゲインチップ11の温度が例えば70℃程度の高温においてTEC14による制御なしでも単一の中心波長を持つレーザ光を得られるため好ましい。
【0073】
以上説明したように、本実施形態の外部共振器型半導体レーザは、第1の実施形態のファイバエタロンを備えるため、所望の中心波長のレーザ光を出射できる。また、本実施形態の外部共振器型半導体レーザは、簡単な構造を有しているため、安価でかつ簡易に製造することができる。
【0074】
(第3の実施形態)
次に、本発明に関する第3の実施形態のラマン増幅器について図10、図11を用いて説明する。図10は第2の実施形態の外部共振器型半導体レーザを励起光用光源として用いたラマン増幅器50のブロック図を示している。ここでは、励起光波長(励起光の中心波長)として2つの波長λ1、λ2を用いた例を説明する。
【0075】
ラマン増幅器50は、偏波面が互いに異なる波長λ1の励起光をそれぞれ出射する2つの外部共振器型半導体レーザ10A、10Bと、偏波面が互いに異なる波長λ2の励起光をそれぞれ出射する2つの外部共振器型半導体レーザ10C、10Dと、外部共振器型半導体レーザ10A〜10Dからの出射光が励起光として入射され、誘導ラマン増幅により信号光を増幅する増幅用光ファイバ51と、を備えている。
【0076】
さらに、ラマン増幅器50は、外部共振器型半導体レーザ10A、10Bからの出射光を偏波合成する偏波合成カプラ52と、外部共振器型半導体レーザ10C、10Dからの出射光を偏波合成する偏波合成カプラ53と、偏波合成カプラ52、53からの出力光を合波するWDMカプラ54と、増幅用光ファイバ51で増幅された信号光とWDMカプラ54からの出力光を合波するWDMカプラ55と、を備えている。
【0077】
外部共振器型半導体レーザ10A、10Bは、ゲインチップ11A、11Bおよび光ファイバが偏波保持ファイバであるファイバエタロン1A、1Bを有し、偏波面が互いに異なる中心波長λ1の励起光をコネクタ(図10においては図示せず)を介してそれぞれ出射する。
【0078】
また、外部共振器型半導体レーザ10C、10Dは、ゲインチップ11C、11Dおよび光ファイバが偏波保持ファイバであるファイバエタロン1C、1Dを有し、偏波面が互いに異なる中心波長λ2の励起光をコネクタ(図10においては図示せず)を介してそれぞれ出射する。
【0079】
外部共振器型半導体レーザ10A〜10Dで発生された励起光は、その中心波長λ1、λ2毎に偏波合成カプラ52、53で偏波合成され、各偏波合成カプラ52、53の出力光がWDMカプラ54で合波され、WDMカプラ54および増幅用光ファイバ51と結合されたWDMカプラ55を介して増幅用光ファイバ51に入射される。
【0080】
なお、これらの中心波長λ1、λ2の励起光は、第2の実施形態で述べたように複数の縦モードの波長成分を含んでいる。これにより、増幅用光ファイバ51における誘導ブリルアン散乱が抑制され、信号光を長距離にわたってファイバ伝送させることが可能となる。
【0081】
図11は、励起光波長λ1、λ2と利得との関係を模式的に示すグラフである。増幅用光ファイバ51に入射された励起光により、増幅用光ファイバ51において誘導ラマン散乱が生じ、図11に示すように、励起光波長λ1、λ2から100nm程度長波長側に利得gが生じる。この状態で増幅用光ファイバ51に信号光が入射されると、増幅用光ファイバ51中に生じた利得gによって信号光が増幅される。
【0082】
なお、本実施形態のように、複数の励起光波長λ1〜λn(λ1<...<λn)(n≧2)を用いる構成にあっては、最小の励起光波長λ1と最大の励起光波長λnとの波長差を100nm以内とすることが好ましい。これは、励起光と信号光とが重複することによる信号光の波形劣化を防止するためである。
【0083】
以上説明したように、本実施形態のラマン増幅器は、第2の実施形態の外部共振器型半導体レーザを備えるため、ラマン増幅の利得特性の安定化、広帯域化および平坦化を実現することができる。
【符号の説明】
【0084】
1、1A、1B、1C、1D ファイバファブリペローエタロン(ファイバエタロン)
2、3 光ファイバ
2a、3a 端面
4、5 フェルール
6 間隙
7 スリーブ
10、10A、10B、10C、10D 外部共振器型半導体レーザ
11、11A、11B、11C、11D ゲインチップ
11a 後方端面
11b 出射端面
11c 活性層
16 コネクタ
50 ラマン増幅器
51 増幅用光ファイバ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の光ファイバ(2、3)と、
前記第1および第2の光ファイバをそれぞれ挿通させる2つのフェルール(4、5)と、
前記フェルールを固定し、前記第1および第2の光ファイバの端面(2a、3a)同士を光軸方向に所定間隔の間隙(6)を設けて対向させる円筒状のスリーブ(7)と、を備え、
前記端面のうちの少なくとも一方が凹状の端面であることを特徴とするファイバファブリペローエタロン。
【請求項2】
前記第1および第2の光ファイバが、シングルモードファイバまたは偏波保持ファイバである請求項1に記載のファイバファブリペローエタロン。
【請求項3】
2つのフェルール(4、5)にそれぞれ挿通された第1および第2の光ファイバ(2、3)のうち、少なくとも一方の光ファイバの端部をフッ化水素酸(HF)を含むエッチング溶液に浸してエッチングすることにより、該端部に凹状の端面を形成するエッチング段階と、
前記第1および第2の光ファイバを円筒状のスリーブ(7)の両側から挿入して前記2つのフェルールを突き合わせて固定し、前記2本の光ファイバの端面(2a、3a)同士を光軸方向に所定間隔の間隙(6)を設けて対向させる光ファイバ固定段階と、を含むファイバファブリペローエタロンの製造方法。
【請求項4】
劈開によって形成された後方端面(11a)および出射端面(11b)と、該後方端面から該出射端面にかけて設けられ、駆動電流が供給されることによって光を発生させる活性層(11c)とを有し、該活性層において発生された光を該出射端面から出射するゲインチップ(11、11A、11B、11C、11D)と、
前記出射端面から出射された光が前記第1の光ファイバを介して入射される請求項1または請求項2に記載のファイバファブリペローエタロン(1、1A、1B、1C、1D)と、を備え、
前記後方端面と前記ファイバファブリペローエタロンとの間で光共振器が構成されることを特徴とする外部共振器型半導体レーザ。
【請求項5】
前記ゲインチップの前記出射端面に反射防止膜が設けられている請求項4に記載の外部共振器型半導体レーザ。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の外部共振器型半導体レーザ(10、10A、10B、10C、10D)と、
前記外部共振器型半導体レーザの前記第2の光ファイバから出射されたレーザ光が励起光として入射され、誘導ラマン増幅を生じさせる増幅用光ファイバ(51)と、を備えたラマン増幅器。
【請求項1】
第1および第2の光ファイバ(2、3)と、
前記第1および第2の光ファイバをそれぞれ挿通させる2つのフェルール(4、5)と、
前記フェルールを固定し、前記第1および第2の光ファイバの端面(2a、3a)同士を光軸方向に所定間隔の間隙(6)を設けて対向させる円筒状のスリーブ(7)と、を備え、
前記端面のうちの少なくとも一方が凹状の端面であることを特徴とするファイバファブリペローエタロン。
【請求項2】
前記第1および第2の光ファイバが、シングルモードファイバまたは偏波保持ファイバである請求項1に記載のファイバファブリペローエタロン。
【請求項3】
2つのフェルール(4、5)にそれぞれ挿通された第1および第2の光ファイバ(2、3)のうち、少なくとも一方の光ファイバの端部をフッ化水素酸(HF)を含むエッチング溶液に浸してエッチングすることにより、該端部に凹状の端面を形成するエッチング段階と、
前記第1および第2の光ファイバを円筒状のスリーブ(7)の両側から挿入して前記2つのフェルールを突き合わせて固定し、前記2本の光ファイバの端面(2a、3a)同士を光軸方向に所定間隔の間隙(6)を設けて対向させる光ファイバ固定段階と、を含むファイバファブリペローエタロンの製造方法。
【請求項4】
劈開によって形成された後方端面(11a)および出射端面(11b)と、該後方端面から該出射端面にかけて設けられ、駆動電流が供給されることによって光を発生させる活性層(11c)とを有し、該活性層において発生された光を該出射端面から出射するゲインチップ(11、11A、11B、11C、11D)と、
前記出射端面から出射された光が前記第1の光ファイバを介して入射される請求項1または請求項2に記載のファイバファブリペローエタロン(1、1A、1B、1C、1D)と、を備え、
前記後方端面と前記ファイバファブリペローエタロンとの間で光共振器が構成されることを特徴とする外部共振器型半導体レーザ。
【請求項5】
前記ゲインチップの前記出射端面に反射防止膜が設けられている請求項4に記載の外部共振器型半導体レーザ。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の外部共振器型半導体レーザ(10、10A、10B、10C、10D)と、
前記外部共振器型半導体レーザの前記第2の光ファイバから出射されたレーザ光が励起光として入射され、誘導ラマン増幅を生じさせる増幅用光ファイバ(51)と、を備えたラマン増幅器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−118044(P2011−118044A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273604(P2009−273604)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】
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