説明

ファブリペロー干渉計及びその製造方法

【課題】従来よりも分光帯域の広いファブリペロー干渉計及びその製造方法を提供する。
【解決手段】第1ミラー構造体と第2ミラー構造体とがギャップを介して対向配置されたファブリペロー干渉計であって、第1ミラー構造体を構成する第1ミラーと第1電極、及び、第2ミラー構造体を構成する第2ミラーと第2電極、の少なくとも一方が電気的に絶縁分離されている。また、電圧が印加されない初期状態で、第1電極を含む電気的に結合された部分と、第2電極を含む電気的に結合された部分との対向距離deiが、第1ミラーと第2ミラーとの対向距離dmiよりも長くされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1ミラー構造体と第2ミラー構造体とがギャップを介して対向配置されてなるファブリペロー干渉計及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ファブリペロー干渉計の小型化を目的として、MEMS(MicroElectro Mechanical Systems)技術を利用したファブリペロー干渉計が提案されている(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1に示されるファブリペロー干渉計では、多結晶シリコン層(高屈折率層)の間に二酸化シリコン層(低屈折率層)を配置してなる一対のミラー構造体が、エアギャップ(ギャップ)を介して対向配置されており、多結晶シリコン層間に二酸化シリコン層が介在された部分が光学多層膜構造のミラーとなっている。また、各ミラー構造体の多結晶シリコン層には、不純物がドーピングされてなる電極が形成されている。
【0004】
一方、特許文献2に示されるファブリペロー干渉計では、多結晶シリコン等からなる高屈折率層の間に低屈折率層としての空気層を部分的に配置してなる一対のミラー構造体が、エアギャップ(ギャップ)を介して対向配置されている。各ミラー構造体では、機械的強度を確保すべく、高屈折率層同士が部分的に直接接触されて補強部をなしており、これにより、高屈折率層間に空気層が介在された光学多層膜構造のミラー(エアミラー)が、複数個に細分化されている。また、各ミラー構造体の高屈折率層におけるミラー周辺部分には、不純物がドーピングされた拡散層による配線部(電極)が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3457373号公報
【特許文献2】特開2008−134388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に示されるファブリペロー干渉計では、各ミラー構造体の電極に印加される電圧に基づいて生じる静電気力により、エアギャップ上に位置する一方のミラー構造体が変位し、これによりギャップが変化して、ギャップにおける各ミラー構造体のミラーの対向距離dmに応じた波長の光を選択的に透過させるようになっている。
【0007】
このとき、透過光の波長λは、下記式で示される。nは干渉計の次数を表す整数である。したがって、1次光(n=1)に着目すれば、透過光の波長λは、ギャップにおけるミラーの対向距離dmの2倍となる。
(数1)λ=2×dm/n
ところで、上記したファブリペロー干渉計のように、各構造体(各ミラー構造体)の電極に印加される電圧に基づいて生じる静電気力により、構造体(ミラー構造体)が変位し、これによりギャップが変化する構成のものでは、ギャップにおける電極同士の対向距離をde、対向距離deのうち、電圧が印加されない状態での対向距離をdeiとすると、対向距離deがdeiに対して1/3狭まった状態、すなわち対向距離deがdei×2/3となった状態、がプルイン(pull-in)限界である。したがって、ギャップにおける電極同士の対向距離deの変化量がdeiの1/3を超えると、静電気力がばね復元力を上回り(プルイン現象が生じて)、構造体同士が接触してしまう(例えば特開2004−226362号公報参照)。
【0008】
特許文献1,2に代表される従来のファブリペロー干渉計では、高屈折率層である多結晶シリコンに部分的に不純物をドーピングして電極としているため、各ミラー構造体において、高屈折率層全体が同電位となる。換言すれば、不純物がドーピングされていない部分、例えばミラーを構成する高屈折率層の部分も電極と電気的に結合されており、電極と同電位となる。このため、ミラー部分も、静電気力の生じる電極として実質的に作用し、電圧が印加されない状態でのギャップにおけるミラーの対向距離をdmiとすると、対向距離dmがdmiに対して1/3狭まった状態、すなわち対向距離dmがdmi×2/3となった状態、がプルイン限界となる。以上から、従来のファブリペロー干渉計では、ギャップにおける各ミラー構造体のミラーの対向距離dmをdmi×2/3〜dmiの範囲内、ひいては透過光の波長λをdmi×4/3〜2×dmiの範囲内(n=1の場合)でしか制御することができなかった。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑み、従来よりも分光帯域の広いファブリペロー干渉計及びその製造方法を提供することを目的とする。換言すれば、電圧が印加されない状態でのミラーの対向距離をdmiとすると、dmi×1/3を超えて変位させることができる(従来のプルイン限界を超えて変位させることのできる)ファブリペロー干渉計及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する為に請求項1に記載の発明は、第1ミラー構造体と第2ミラー構造体とがギャップを介して対向配置され、ギャップを介した対向部位として、第1ミラー構造体が、第1ミラーと、不純物が導入されてなる第1電極とを有し、第2ミラー構造体が、第1ミラーに対向する第2ミラーと、不純物が導入されてなり、第1電極に対向する第2電極とを有し、第1電極と第2電極の間に印加された電圧に基づいて生じる静電気力により、ギャップが変化され、ギャップにおける第1ミラーと第2ミラーとの対向距離dmに応じた波長の光を選択的に透過させるファブリペロー干渉計に関するものである。そして、第1ミラーと第1電極、及び、第2ミラーと第2電極、の少なくとも一方が電気的に絶縁分離され、電圧が印加されない状態で、第1電極を含む電気的に結合された部分と、第2電極を含む電気的に結合された部分との対向距離deiが、第1ミラーと第2ミラーとの対向距離dmiよりも長くされていることを特徴とする。
【0011】
本発明では、第1ミラー構造体を構成する第1ミラーと第1電極、第2ミラー構造体を構成する第2ミラーと第2電極、の少なくとも一方が電気的に絶縁分離されている。したがって、ギャップを変化させるべく第1電極と第2電極の間に電圧を印加しても、電極と絶縁分離された側のミラーは、電極と同電位とはならない。これにより、第1ミラーと第2ミラーとの間で静電気力が殆ど生じないか、全く生じない構成となっており、プルイン限界は、第1電極を含む電気的に結合された部分(換言すれば第1電極と同電位の部分)と、第2電極を含む電気的に結合された部分(換言すれば、第2電極と同電位の部分)との対向距離deに依存することとなる。
【0012】
また、上記対向距離deのうち、電圧が印加されない状態での対向距離deiが、第1ミラーと第2ミラーとの対向距離dmiよりも長くなっている(dei>dmi)。したがって、第1電極を含む電気的に結合された部分と第2電極を含む電気的に結合された部分との対向距離deを、下記式2に示すプルイン限界での対向距離depとする、すなわちdeiの状態からdei×1/3変化させると、第1ミラーと第2ミラーとの対向距離dmpを、下記式3とすることができる。
(数2)dep=dei×2/3
(数3)dmp=dmi−(dei×1/3)
ここで、上記のごとく、dei>dmiであるから、dei×1/3>dmi×1/3である。したがって、本発明によれば、電圧が印加されない状態での第1ミラーと第2ミラーとの対向距離dmiに対し、dmi×1/3を超えて変位させることができ、これにより従来よりも分光帯域を広くすることができる。なお、上記において、dep,dmpは、プルイン限界での対向距離を示している。
【0013】
具体的な構成としては、請求項2に記載のように、第1ミラー構造体及び第2ミラー構造体のうちの一方のミラー構造体において、ミラーが電極に対して、他方のミラー構造体側に凸とされた構成とすると良い。
【0014】
このように、同一のミラー構造体の電極に対してミラーを他方のミラー構造体側(ギャップ側)に凸とすることで、ミラー部分を凸としない構造に比べ、ミラー間の対向距離dmiを短くすることができる。これにより、対向距離dmiを、第1電極を含む電気的に結合された部分と第2電極を含む電気的に結合された部分との対向距離deiよりも短くすることが可能となる。
【0015】
特に、請求項3に記載のように、ミラーが電極に対して凸とされたミラー構造体において、ミラーと電極とが電気的に絶縁分離された構成とすると良い。ミラーが電極に対して凸とされたミラー構造体において、ミラーと電極とが電気的に結合されていると、ミラーの部分が実質的に電極として作用するため、対向距離deiとして、ミラーを含む凸の部分と、他方のミラー構造体の電極と電気的に結合された部分との対向距離(de2)も考慮しなければならない。これに対し、上記発明によれば、ミラーを含む凸の部分が電極と絶縁分離されているため、上記対向距離de2を考慮しなくとも良い。したがって、設計が容易となる。また、変位方向に対して垂直な方向において、絶縁分離領域の幅を狭くし、体格を小型化することもできる。
【0016】
請求項4に記載のように、電圧が印加されない状態で、第1電極を含む電気的に結合された部分と第2電極を含む電気的に結合された部分との対向距離deiが、下記式を満たして設定されると良い。
(数4)dei≧3×dmi
本発明によれば、上記した数式3,4の関係から明らかなように、プルイン現象が生じることなく、第1ミラーと第2ミラーとを互いに接触させることができる。したがって、分光帯域をより広くすることができる。なお、1次光(n=1)に着目すれば、透過光の波長λを0〜2×dmiの範囲内とすることができる。
【0017】
請求項5に記載のように、透過光の波長域をλmin以上λmax以下とすると、電圧が印加されない状態で、第1電極を含む電気的に結合された部分と第2電極を含む電気的に結合された部分との対向距離deiが、下記式を満たして設定されても良い。
(数5)dei≧3×(1−λmin/λmax)×dmi
これによれば、λmin以上λmax以下の光を透過させることが可能となる。なお、上記数式5の詳細については後述する。
【0018】
特に請求項6に記載のように、電圧が印加されない状態で、対向距離deiが下記式を満たして設定されると、CO(4.2μm)、エタノール(3.4μm)、水蒸気(2.6μm)を1つの干渉計にて1次光(n=1)で検出することが可能となる。このような干渉計は、飲酒検知センサに好適である。なお、カッコ内の数値は、各ガスの赤外線吸収波長を示している。
(数6)dei≧1.1×dmi
また、請求項7に記載のように、電圧が印加されない状態で、対向距離deiが、下記式を満たして設定されると、エタノールの9.5μmの波長も検出することができる。したがって、CO(4.2μm)、エタノール(3.4μm,9.5μm)、水蒸気(2.6μm)を1つの干渉計にて1次光(n=1)で、より正確に検出することが可能となる。なお、カッコ内の数値は、各ガスの赤外線吸収波長を示している。
(数7)dei≧2.2×dmi
上記した発明では、電極と絶縁分離されたミラーを所定電位に固定せず、浮遊電位としても良い。しかしながら、請求項8に記載のように、第1ミラーと第1電極、及び、第2ミラーと第2電極のうち、一方のみにおいてミラーと電極とが電気的に分離され、他方においてミラーと電極とが電気的に結合され、第1ミラー及び第2ミラーのうち、電極と電気的に分離されたミラーが、他方の電極と同電位とされる構成とすることが好ましい。
【0019】
これによれば、第1ミラーと第2ミラーとが同電位となり、第1ミラーと第2ミラーとの間で静電気力が生じないため、第1ミラー及び第2ミラーの少なくとも一方を浮遊電位とする構成に比べて、分光帯域をより広くすることができる。また、第1ミラーと第2ミラーとの間で静電気力が生じないため、ギャップを所望の間隔に制御しやすい。
【0020】
また、請求項9に記載のように、第1ミラー構造体と第2ミラー構造体とのギャップを介した対向部位において、第1電極及び第2電極がそれぞれの対向部位の中央領域に設けられ、第1ミラー及び第2ミラーが、中央領域を取り囲むそれぞれの周辺領域に設けられた構成としても良い。また、請求項10に記載のように、第1ミラー構造体と第2ミラー構造体とのギャップを介した対向部位において、第1ミラー及び第2ミラーがそれぞれの対向部位の中央領域に設けられ、第1電極及び第2電極が、中央領域を取り囲むそれぞれの周辺領域に設けられた構成としても良い。
【0021】
請求項9の場合、電極が支持体から遠い中央領域となるので、ミラー構造体(静電気力の作用する電極部分)のばね定数を請求項10よりも小さくし、これにより、所定ギャップとする際の印加電圧を、請求項10の構成よりも低減することができる。一方、請求項10の場合、支持体から遠い中央領域にミラーが存在するため、電圧を印加した状態でも、ミラー部分が互いに平行状態を維持しやすく、これにより、請求項9の構成に比べて干渉計を小型化しつつ透過波長の半値幅(FWHM)を低減することができる。
【0022】
請求項11に記載のように、第1ミラー構造体及び第2ミラー構造体において、第1ミラー及び第2ミラーは、シリコン及びゲルマニウムの少なくとも一方を含む半導体薄膜からなる高屈折率層の間に、該高屈折率層よりも低屈折率の低屈折率層を介在させてなる光学多層膜構造を有しており、第1電極及び第2電極は、高屈折率層に、p導電型又はn導電型の不純物が導入されてなる構成を採用すると良い。
【0023】
シリコン及びゲルマニウムの少なくとも一方を含む半導体薄膜は、波長2〜10μm程度の赤外光に対して透明であるので、赤外線ガス検出器の波長選択フィルターとして好適となる。例えば、上記した飲酒検知センサにも好適である。
【0024】
請求項12に記載のように、空気又は真空を低屈折率層とする干渉計を採用すると、高屈折率層の屈折率nH(例えばSiでは3.45、Geでは4)と低屈折率層の屈折率nL(例えば空気では1)とのn比(nH/nL)を大きく(例えば3.3以上と)して、上記した波長の赤外光を選択的に透過させることが可能となる。
【0025】
請求項13に記載の発明は、請求項2に記載のファブリペロー干渉計の製造方法であり、基板の一面上に、第1ミラー構造体のうち、第1ミラーの少なくとも一部と、第1電極を形成する工程と、第1ミラー構造体上に犠牲層を形成する工程と、犠牲層をパターニングし、犠牲層における第1ミラー構造体とは反対側の表面に、第2ミラーの形成領域に対応した凹部を形成する工程と、凹部を有する犠牲層の表面上に、第2ミラー構造体のうち、第2ミラーの少なくとも一部と、第2電極を形成する工程と、第2ミラー構造体の形成後、犠牲層をエッチングしてギャップを形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0026】
このように、犠牲層の表面に形成した凹部に第2ミラー構造体の第2ミラーを形成し、犠牲層表面の凹部周辺に第2電極を形成することで、第2ミラー構造体の第2ミラーが第1ミラー構造体側に凸のファブリペロー干渉計を得ることができる。
【0027】
請求項14に記載の発明は、請求項2に記載のファブリペロー干渉計の製造方法であって、基板をパターニングし、基板の一面に第1ミラーの形成領域に対応した凸部を形成する工程と、凸部を有する基板の一面上に、第1ミラー構造体のうち、第1ミラーの少なくとも一部と、第1電極を形成する工程と、第1ミラー構造体上に犠牲層を形成する工程と、犠牲層における第1ミラー構造体とは反対側の表面を平坦化する工程と、平坦化した犠牲層の表面上に、第2ミラー構造体のうち、第2ミラーの少なくとも一部と、第2電極を形成する工程と、第2ミラー構造体の形成後、犠牲層をエッチングしてギャップを形成する工程と、を備えることを特徴とする
このように、基板の一面に形成した凸部上に第1ミラー構造体の第1ミラーを形成するとともに、基板一面の凸部周辺に第1電極を形成し、基板一面の凹凸に倣った表面形状を有する犠牲層の表面を平坦化した後に第2ミラー構造体を形成することで、第1ミラー構造体の第1ミラーが第2ミラー構造体側に凸のファブリペロー干渉計を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施形態に係るファブリペロー干渉計の概略構成を示す断面図であり、(a)は電圧が印加されない初期状態、(b)は(a)の状態から最大変位Δdmaxさせた状態を示している。
【図2】初期状態における電極間距離dei及びミラー間距離dmiの比dei/dmiと最大変位Δdmaxとの関係を示す図である。
【図3】図1に示すファブリペロー干渉計の具体例を示す第2ミラー構造体側から見た平面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】ファブリペロー干渉計の製造工程のうちの一工程を示す断面図である。
【図6】ファブリペロー干渉計の製造工程のうちの一工程を示す断面図である。
【図7】ファブリペロー干渉計の製造工程のうちの一工程を示す断面図である。
【図8】ファブリペロー干渉計の製造工程のうちの一工程を示す断面図である。
【図9】ファブリペロー干渉計の製造工程のうちの一工程を示す断面図である。
【図10】ファブリペロー干渉計の製造工程のうちの一工程を示す断面図である。
【図11】変形例を示す断面図である。
【図12】第2実施形態に係るファブリペロー干渉計の概略構成を示す断面図である。
【図13】第3実施形態において、数式17に示すdei/dmiとλmin/λmaxとの関係を示す図である。
【図14】第4実施形態に係るファブリペロー干渉計のうち、第1ミラー構造体の概略構成を示す平面図である。
【図15】第5実施形態に係るファブリペロー干渉計の概略構成を示す断面図である。
【図16】ファブリペロー干渉計のうち、第1ミラー構造体の概略構成を示す平面図である。
【図17】第6実施形態に係るファブリペロー干渉計の概略構成を示す断面図である。
【図18】図17に示すファブリペロー干渉計の具体例を示す断面図である。
【図19】ファブリペロー干渉計の製造工程のうちの一工程を示す断面図である。
【図20】ファブリペロー干渉計の製造工程のうちの一工程を示す断面図である。
【図21】ファブリペロー干渉計の製造工程のうちの一工程を示す断面図である。
【図22】ファブリペロー干渉計の製造工程のうちの一工程を示す断面図である。
【図23】ファブリペロー干渉計の製造工程のうちの一工程を示す断面図である。
【図24】ファブリペロー干渉計の製造工程のうちの一工程を示す断面図である。
【図25】変形例を示す断面図である。
【図26】その他変形例を示す断面図である。
【図27】その他変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るファブリペロー干渉計の概略構成を示す断面図であり、(a)は電圧が印加されない初期状態、(b)は(a)の状態からプルイン限界までの最大変位Δdmaxさせた状態を示している。図1では、第1ミラーM1に対して、第2ミラーM2の厚みを厚く図示しているが、これは、第2ミラーM2が第2電極75よりも第1ミラー構造体30側に凸であって、これにより、dei>dmiであることを示すためのものであり、両ミラーM1,M2の厚みを特に規定するものではない。また、図1では、ミラー構造体30,70として、エアギャップAGを介した対向部位のみを示している。図2は、初期状態における電極間距離dei及びミラー間距離dmiの比dei/dmiと最大変位Δdmaxとの関係を示す図である。
【0030】
なお、以下においては、第1ミラー構造体と第2ミラー構造体との間のギャップがエアギャップAG(空隙)である例を示す。また、ファブリペロー干渉計(ミラー構造体)の変位方向を単に変位方向と示し、該変位方向に垂直な方向を単に垂直方向と示す。また、2つのミラー構造体30,70のうち、第2ミラー構造体70のみが変位する構造の例を示す。
【0031】
図1(a),(b)に示すように、本実施形態に係るファブリペロー干渉計100は、エアギャップAGを介して対向配置された第1ミラー構造体30及び第2ミラー構造体70を備えている。また、エアギャップAGを介した対向部位として、第1ミラー構造体30は、第1ミラーM1と、不純物が導入されてなる第1電極35とを有し、第2ミラー構造体70は、エアギャップAGを介して第1ミラーM1に対向する第2ミラーM2と、不純物が導入されてなり、エアギャップAGを介して第1電極35に対向する第2電極75とを有している。そして、第1電極35と第2電極75の間に印加される電圧に基づいて生じる静電気力により第2ミラー構造体70が変位し、これによりエアギャップAGが変化する。そして、エアギャップAGにおける第1ミラーM1と第2ミラーM2との対向距離dmに応じた波長の光を選択的に透過させるようになっている。このように、ファブリペロー干渉計100では、第1ミラー構造体30が所謂固定ミラー側、第2ミラー構造体70が電圧の印加によって変位する可動ミラー側となっている。
【0032】
特に本実施形態では、第1ミラー構造体30において、第1ミラーM1と第1電極35との間に絶縁分離領域36が設けられ、これにより、第1ミラーM1と第1電極35とが電気的に分離されている。一方、第2ミラー構造体70を構成する第2ミラーM2と第2電極75とは電気的に結合されており、第2ミラーM2は、第2電極75と同電位とされる構成となっている。
【0033】
このように、本実施形態に係るファブリペロー干渉計100では、第1ミラー構造体30を構成する第1ミラーM1と第1電極35が電気的に絶縁分離されている。したがって、エアギャップAGを変化させるべく第1電極35と第2電極75の間に電圧を印加しても、第1電極35と絶縁分離された第1ミラーM1は、第1電極35と同電位とはならない。これにより、第1ミラーM1と第2ミラーM2との間で静電気力が殆ど生じないか、全く生じない状態となり、プルイン限界は、第1電極35を含み、第1電極35と電気的に結合された領域E1(以下、単に領域E1と示す)と、第2電極75を含み、第2電極75と電気的に結合された領域E2(以下、単に領域E2と示す)との対向距離deに依存することとなる。なお、図1(a),(b)では、領域E1として第1電極35のみを含み、領域E2として、第2電極75及び第2ミラーM2を含んでいる。
【0034】
さらに、電極35,75間に電圧が印加されない初期状態(以下、単に初期状態と示す)で、図1(a)に示すように、第2ミラー構造体70において、第2ミラーM2が第2電極75に対して第1ミラー構造体30側に凸となっている。また、絶縁分離領域36が、第2ミラー構造体70における第2ミラーM2を含む凸部78を除く部分(図1の場合、第2電極75)と少なくとも対向している。換言すれば、領域E1が、第2ミラー構造体70における第2ミラーM2を含む凸部78とは対向しておらず、凸部78を除く部分(図1では第2電極75)のみと対向している。そして、このような構造を採用することにより、初期状態で、領域E1と領域E2との対向距離deiが、第1ミラーM1と第2ミラーM2との対向距離dmiよりも長くなっている(dei>dmi)。
【0035】
なお、対向距離deiは、初期状態で、エアギャップAGにおける領域E1と領域E2との対向距離のうちで最短部分の距離である。本実施形態では、凸部78を有する第2ミラー構造体70側ではなく、第1ミラー構造体30側に絶縁分離領域36を設けており、領域E1と領域E2との対向距離deとしては、図1(a)に示すように、第1電極35(領域E1)と第2電極75間の対向距離de1だけでなく、第1電極35(領域E1)と凸部78(第2ミラーM2)との対向距離de2も考慮しなければならない。
【0036】
本実施形態では、対向距離de1が、初期状態において対向距離deiとなり、且つ、電圧を印加した状態(変位状態)でも、領域E1と領域E2との最短部分となるよう、第2電極75からの凸部78(第2ミラーM2)の突出長さと、絶縁分離領域36の垂直方向の幅を設定している。このように、第1電極35(領域E1)と第2電極75間の対向距離de1を対向距離deiとなるようにすると、対向距離deと対向距離dmの変化方向が上記変位方向で略一致するので、変位方向に対して斜めの距離である対向距離de2を対向距離deiとするよりも、ファブリペロー干渉計100の設計を簡素化することができる。
【0037】
ここで、領域E1と領域E2との対向距離deを、初期状態(dei)から、プルイン限界のΔdmax(=dei×1/3)変位させて、下記式8に示すプルイン限界での対向距離depとすると、このときの第1ミラーM1と第2ミラーM2との対向距離dm(=dmp)は、下記式9で示す値となる。
(数8)dep=dei×2/3
(数9)dmp=dmi−(dei×1/3)
本実施形態に係るファブリペロー干渉計100では、上記のごとく、dei>dmiであるから、数式9に示す括弧内において、dei×1/3>dmi×1/3である。したがって、本実施形態によれば、電圧が印加されない状態での第1ミラーM1と第2ミラーM2との対向距離dmiに対し、dmi×1/3を超えて第2ミラー構造体70を変位させることができる。すなわち、従来よりも分光帯域を広くすることができる。
【0038】
また、上記したプルイン限界までの最大変位Δdmaxは、下記式で示すことができる。
(数10)Δdmax/dmi=(dei/dmi)×1/3
図2は、数式10に示す、最大変位Δdmaxとdei/dmiとの関係を図に示したものである。図2からも明らかなように、dei/dmi=3とすると、Δdmax/dmi=1とすることができる。すなわち、ミラーM1,M2同士を互いに接触させることができる。したがって、下記式を満たすように、領域E1と領域E2との対向距離deiが設定されることがより好ましい。
(数11)dei≧3×dmi
これによれば、プルイン現象が生じることなく、第1ミラーM1と第2ミラーM2とを互いに接触させることができる。すなわち、したがって、分光帯域をより広くすることができる。なお、1次光(n=1)に着目すれば、透過光の波長λを0〜2×dmiの範囲内とすることができる。
【0039】
次に、上記したファブリペロー干渉計100の具体的な構成例について説明する。図3は、図1に示すファブリペロー干渉計の具体例を示す第2ミラー構造体側から見た平面図である。図3においては、便宜上、第1ミラー構造体の絶縁分離領域を破線で示している。図4は、図3のIV−IV線に沿う断面図である。
【0040】
以下に示すファブリペロー干渉計100は、所謂エアミラー構造のファブリペロー干渉計であり、本出願人による特開2008−134388号公報に示されるものと基本構造が同じである。したがって、ミラーM1,M2などの詳細構造については説明を割愛し、異なる部分を重点的に説明する。
【0041】
図4に示すように、本実施形態に係るファブリペロー干渉計100では、基板10として、例えば単結晶シリコンからなる平面矩形状の半導体基板を採用している。この基板10の一面側表層には、不純物がドーピングされてなる吸収領域11が、垂直方向において、第1ミラーM1及び第2ミラーM2による分光領域を除く領域に選択的に設けられており、これにより、分光領域外での光の透過を抑制するようになっている。また、基板10の平坦な一面上には、絶縁分離領域36を形成する際のエッチングストッパとして機能する絶縁膜12が略均一の厚みをもって形成されている。本実施形態では、絶縁膜12として、シリコン窒化膜を採用している。そして、絶縁膜12を介して、基板10の一面上に第1ミラー構造体30が配置されている。
【0042】
第1ミラー構造体30は、所謂固定ミラー側の構造体であり、空気よりも屈折率の高い材料、例えばシリコン及びゲルマニウムの少なくとも一方を含む半導体薄膜からなり、基板10の一面全面に絶縁膜12を介して積層された高屈折率下層31と、該高屈折率下層31に同じくシリコンなどの高屈折率材料からなり、高屈折率下層31上に積層された高屈折率上層32とにより構成されている。本実施形態においては、高屈折率層31,32が、ともにポリシリコンからなる。
【0043】
そして、変位方向において、高屈折率下層31と高屈折率上層32との間に、低屈折率層としての空気層33が介在された部位が、実際にミラーとして機能する光学多層膜構造の第1ミラーM1となっている。このように、第1ミラーM1は空気層33が介在されたエアミラーとなっている。また、第1ミラーM1は、高屈折率下層31に高屈折率上層32が接してなる連結部C1(図示略、図3に示す連結部C2参照)により、複数個に分割(細分化)されており、各第1ミラーM1は連結部C1によって互いに連結されている。
【0044】
本実施形態では、第1ミラー構造体30と第2ミラー構造体70とで、各ミラーM1,M2と各連結部C1,C2のレイアウトがそれぞれ一致している。なお、連結部C1は、隣接する第1ミラーM1間の高屈折率下層31と高屈折率上層32とが接触する部分である。高屈折率下層31と高屈折率上層32とは、第1ミラーM1の形成領域以外では、上記した連結部C1を除く部分でも、高屈折率層31,32同士が接触している。
【0045】
なお、図4に示す符号34は、第1ミラー構造体30において、第1ミラーM1における空気層33の上面を覆う高屈折率上層32の部分に形成された貫通孔であり、この貫通孔34を介してエッチングすることで、空気層33が形成されている。この貫通孔34は、細分化された各ミラーM1にそれぞれ形成されている。
【0046】
上記した複数の第1ミラーM1は、後述する第2ミラーM2同様、基板10に対応して平面矩形状を有する第1ミラー構造体30の中央領域に形成されている。また、第1ミラー構造体30において、第1ミラーM1の形成された中央領域を取り囲む周辺領域には、少なくともエアギャップAG側の高屈折率上層32に、p導電型又はn導電型の不純物が導入されて第1電極35が形成されている。本実施形態では、ポリシリコンからなる高屈折率層31,32に硼素(B)がイオン注入されてp導電型の第1電極35が形成されている。そして、垂直方向において、第1ミラーM1の形成された中央領域と、第1電極35の形成された周辺領域との間に、絶縁分離領域36としての溝(トレンチ)が形成されている。
【0047】
この絶縁分離領域36は、互いに接触する2つの高屈折率層31,32を貫通しつつ、図3に破線で示すように平面円環状に設けられており、この絶縁分離領域36により、第1ミラーM1(及び連結部C1)の形成された中央領域と、第1電極35の形成された周辺領域とが、電気的且つ機械的に分離されている。このように絶縁分離領域36としての溝(空隙)を採用しても、第1ミラー構造体30は、基板10上に固定された固定ミラー側の構造体であるので、第1ミラーM1の形成された中央領域と、第1電極35の形成された周辺領域との間に作用する静電気力による変位は考慮しなくとも良い。なお、本実施形態では、図3に示す環状の絶縁分離領域36よりも外側の領域のほぼ全域が第1電極35となっている。
【0048】
絶縁分離領域36は、少なくとも第2ミラー構造体70における第2ミラーM2の形成された凸部78を除く部分(第2電極75の形成された部分)と対向するように形成されている。この配置と凸部78とにより、領域E1と領域E2との対向距離deiが第1ミラーM1と第2ミラーM2との対向距離deiよりも長くなっている。また、絶縁分離領域36は、領域E1と領域E2との対向距離deのうち、領域E1と第2電極75との対向距離de1が、領域E1と第2ミラーM2との対向距離de2よりも短く、領域E1と領域E2との対向距離deのうちで最短となる(初期状態でdeiとなる)ように、垂直方向における位置及び幅が設定されている。
【0049】
なお、図4に示す例では、第1ミラー構造体30において、周辺領域における絶縁分離領域36側の一部に、イオン注入されていない高屈折率層31,32の部分が、絶縁分離領域36に隣接して環状に残っている。すなわち、第1電極35を含み、第1電極35と電気的に結合された領域E1として、イオン注入されていない高屈折率層31,32の上記環状部分と、第1電極35とを含んでいる。しかしながら、絶縁分離領域36よりも外側の周辺領域全域を第1電極35としても良い。
【0050】
また、周辺領域において、第2ミラー構造体70のメンブレンMEMとの対向部位を除く周辺領域の高屈折率上層32上に、Au/Cr等からなるパッド37が形成されている。このパッド37は、高屈折率層31,32に形成された不純物の拡散層よりなる第1電極35とオーミック接触されている。
【0051】
この第1ミラー構造体30における高屈折率上層32上の、メンブレンMEMと対向する部分を除く部位には、支持体50が局所的に配置されている。この支持体50は、第1ミラー構造体30上に第2ミラー構造体70を支持するとともに、第1ミラー構造体30と第2ミラー構造体70との間に、エアギャップAGを構成するためのスペーサとしての機能を果たすものである。すなわち、この支持体50の変位方向の厚みも、対向距離de1などを設定する上で重要である。本実施形態では、電極35,75に接するため支持体50がシリコン酸化膜からなり、支持体50における第2ミラー構造体70のメンブレンMEMに対応する中央部位がくり抜かれた構造となっている。また、メンブレンMEMよりも外側の部位にも、パッド37を形成するための開口部51が形成されている。
【0052】
第2ミラー構造体70は、所謂可動ミラー側の構造体であり、空気よりも屈折率の高い材料、例えばシリコン及びゲルマニウムの少なくとも一方を含む半導体薄膜からなり、エアギャップAGを架橋して支持体50の表面上に配置された高屈折率下層71と、該高屈折率下層71に同じくシリコンなどの高屈折率材料からなり、高屈折率下層71上に積層された高屈折率上層72とにより構成されている。本実施形態においては、高屈折率層71,72が、ともにポリシリコンからなる。
【0053】
そして、変位方向において、高屈折率下層71と高屈折率上層72との間に、低屈折率層としての空気層73が介在された部位が、実際にミラーとして機能する光学多層膜構造の第2ミラーM2となっている。このように、第2ミラーM2も空気層73が介在されたエアミラーとなっている。この第2ミラーM2を構成する高屈折率下層71のエアギャップAG側表面と、上記した第1ミラーM1を構成する高屈折率上層32のエアギャップAG側表面とは、電極35,75に電圧が印加されない状態で略平行となっている。
【0054】
また、第2ミラーM2も、高屈折率下層71に高屈折率上層72が接してなる連結部C2により、図3に示すように、複数個(本実施形態では19個)に分割(細分化)されており、各第2ミラーM2は連結部C2によって互いに連結されている。なお、連結部C2は、隣接する第2ミラーM2間の高屈折率下層71と高屈折率上層72との接触部分であり、高屈折率下層71と高屈折率上層72は、第2ミラーM2の形成領域以外では、上記した連結部C2を除く部分でも、両高屈折率層71,72同士が接触している。
【0055】
なお、図3及び図4に示す符号74は、第2ミラー構造体70において、第2ミラーM2における空気層73の上面を覆う高屈折率上層72の部分に形成された貫通孔であり、この貫通孔74を介してエッチングすることで、空気層73が形成されている。この貫通孔74は、細分化された各ミラーM2にそれぞれ形成されている。
【0056】
上記した複数の第2ミラーM2は、連結部C2とともに、基板10に対応して平面矩形状を有する第2ミラー構造体70の中央領域に形成されている。また、第2ミラー構造体70において、第2ミラーM2の形成された中央領域を取り囲む周辺領域には、高屈折率層71,72に、p導電型又はn導電型の不純物が導入されて第2電極75が形成されている。この第2電極75は、高屈折率層71,72におけるイオン注入されていない部分と接している。すなわち、第2ミラーM2は、第2電極75と電気的且つ機械的に結合されており、第2ミラー構造体70全体が、第2電極75と同電位の領域E2となっている。そして、第2ミラーM2及び連結部C2の形成された中央領域と、該中央領域を取り囲み、第2電極75の形成された周辺領域うちエアギャップAGを架橋する部分(エアギャップAG上に位置する部分)とにより、上記したメンブレンMEMが構成されている。
【0057】
さらに、図4に示すように、エアギャップAG側から見て、第2ミラーM2及び連結部C2の形成部分が、第2電極75の形成部分に対して第1ミラー構造体30側(エアギャップAG側)に凸部78とされている。すなわち、第2ミラー構造体70が凸部78を有し、凸部78に第2ミラーM2及び連結部C2が形成され、凸部78を除く部分(凸部78の周辺部分)に第2電極75が形成されている。そして、この凸部78と上記した絶縁分離領域36により、領域E1と領域E2との対向距離deiが、第1ミラーM1と第2ミラーM2との対向距離dmiよりも長くなっている。
【0058】
特に本実施形態では、上記数式10を満たして両ミラー構造体30,70及び支持体50が設定されている。なお、第2ミラーM2が凸とは、第2ミラーM2を構成する高屈折率下層71の部分が、変位方向において、第2電極75におけるエアギャップAG側の面よりも第1ミラー構造体30に近い位置であれば良い。
【0059】
なお、本実施形態では、図3に示すように、第2ミラー構造体70の凸部78の裏面側が平面円形状の凹部79となっており、垂直方向において、凹部79の底部に、第2ミラーM2及び連結部C2が位置している。上記した凸部78の変位方向の突出長さ及び垂直方向の大きさは、凸部78の底部と側部との角部外面と領域E1との対向距離de2が、領域E1と領域E2との対向距離deのうちの最短とならず、且つ、領域E1と領域E2との対向距離deiが、第1ミラーM1と第2ミラーM2との対向距離dmiとの所定の関係を満たすように、上記した絶縁分離領域36とともに設定されている。
【0060】
なお、図4に示す例では、第2ミラー構造体70において、凸部78の周辺領域のほぼ全域が第2電極75とされる例を示したが、第2電極75の形成領域は上記例に限定されるものではない。不純物を導入すると透過性が落ちるため、第2ミラー構造体70のうち、第2ミラーM2を除く部分であれば、不純物を導入して第2電極75とすることができる。
【0061】
また、図3及び図4に示す符号76は、第2ミラー構造体70のメンブレンMEMのうち、第2ミラーM2の形成領域を除く部分に形成された貫通孔であり、この貫通孔76を介してエッチングすることで、エアギャップAG、空気層33、絶縁分離領域36が形成されている。また、符号77は、メンブレンMEMよりも外側における第2電極75(高屈折率上層72)上に形成された、Au/Cr等からなるパッドである。
【0062】
このように、ミラー構造体30,70を構成する高屈折率層31,32,71,72として、ポリシリコンを採用すると、波長2〜10μm程度の赤外光に対して透明であるので、赤外線ガス検出器の波長選択フィルターとして好適である。なお、ポリシリコン以外にも、ポリゲルマニウムやポリシリコンゲルマニウムなど、シリコン及びゲルマニウムの少なくとも一方を含む半導体薄膜を採用すると、同様の効果を期待することができる。
【0063】
加えて、上記したように、ミラーM1,M2の低屈折率層として空気層33,73を採用すると、高屈折率層の屈折率nH(例えばSiでは3.45、Geでは4)と低屈折率層の屈折率nL(空気では1)とのn比(nH/nL)を大きく(例えば3.3以上と)して、上記した波長2〜10μm程度の赤外光を選択的に透過させることのできるファブリペロー干渉計100を安価に実現することができる。
【0064】
次に、上記したファブリペロー干渉計100の製造方法の一例について説明する。図5〜図10は、図4に示したファブリペロー干渉計の製造方法を示す断面図であり、図5から順に推移する。
【0065】
先ず、図5に示すように、基板10として、単結晶シリコンからなる半導体基板を準備し、基板10の一面側表層のうち、ミラーM1,M2による分光領域を除く部分に、硼素(B)などの不純物を導入して吸収領域11を形成する。次いで、基板10の平坦な一面全面に、シリコン窒化膜などからなる絶縁膜12を均一に堆積形成する。この絶縁膜12は、絶縁分離領域36としての溝を形成する際のエッチングストッパとして機能する。
【0066】
そして、絶縁膜12上に、ポリシリコンなどからなる高屈折率下層31、シリコン酸化膜などからなる低屈折率層33aの順に、堆積形成する。次いで、低屈折率層33aの表面にレジストなどからなるマスク(図示略)を形成し、該マスクを介して低屈折率層33aをエッチング(例えばRIEなどの異方性のドライエッチング)し、図6に示すように、低屈折率層33aをパターニングする。このパターニングされた低屈折率層33aは、後にエッチングされて、第1ミラーM1の空気層33となる。次に、マスクを除去し、低屈折率層33aを覆うように、高屈折率下層31上に、ポリシリコンなどからなる高屈折率上層32を堆積形成する。
【0067】
次いで、高屈折率上層32の表面にマスク(図示略)を形成し、該マスクを介して高屈折率層31,32をエッチング(例えばRIEなどの異方性のドライエッチング)し、高屈折率層31,32を貫通する絶縁分離領域36としての溝(トレンチ)を所定位置に形成する。また、低屈折率層33a上における高屈折率上層32の一部に、低屈折率層33aに達する貫通孔34を形成する。そして、マスクを除去した後、高屈折率上層32の表面に新たなマスクを形成し、該マスクを介して、高屈折率層31,32に不純物をイオン注入する。このイオン注入では、第1ミラーM1となる領域に不純物が存在すると、光が不純物によって吸収されることとなるため、絶縁分離領域36よりも外側の周辺領域にのみに選択的に不純物をイオン注入する。このイオン注入により、第1電極35が形成される。
【0068】
なお、第1ミラー構造体30の形成においては、第1電極35を形成した後、高屈折率層31,32をエッチングして、絶縁分離領域36としての溝を形成しても良い。
【0069】
次に、マスクを除去し、図7に示すように、高屈折率膜上層32の表面全面に、シリコン酸化膜などの犠牲層50aを堆積形成する。これにより、貫通孔34内、及び、絶縁分離領域36としての溝内にも、犠牲層50aが配置される。犠牲増50aの構成材料としては、電気絶縁材料であれば特に限定されるものではないが、好ましくは低屈折率層33aと同一材料とすると良い。この犠牲層50aは、主として、後にエアギャップAGが形成されて支持体50となる部位である。したがって、犠牲層50aの膜厚は、電圧が印加されない初期状態での、第1ミラー構造体30と第2ミラー構造体70との対向距離と等しい厚さとする。
【0070】
上記したように、初期状態でのミラー間の対向距離dmiと、電極間の対向距離dei(de1)とは異なり、dei>dmiである。換言すれば、第2ミラー構造体70を構成する第2ミラーM2が、第2電極75よりも第1ミラー構造体30側に凸となる。そこで、本実施形態では、図8に示すように、犠牲層50aにおける第1ミラー構造体30とは反対側の表面にマスク(図示略)を形成し、該マスクを介して犠牲層50aをエッチング(例えばRIEなどの異方性のドライエッチング)する。そして、これにより、第2ミラーM2を含む中央領域、換言すれば第2ミラー構造体70の凸部78に対応した凹部52を形成する。
【0071】
犠牲層50aに凹部52を形成した後、図9に示すように、凹部52を含む犠牲層50aの表面全面に、ポリシリコンなどからなる高屈折率下層71を堆積形成し、次いで、シリコン酸化膜などからなる低屈折率層73aを堆積形成する。次に、低屈折率層73aの表面に、レジストなどからなるマスク(図示略)を形成し、該マスクを介して低屈折率層73aをエッチングし、第2ミラーM2となる部位のみを選択的に残す。具体的には、上記したように、凹部52の底部上に第2ミラーM2が形成されるように、低屈折率層73aをパターニングする。そして、マスクを除去後、パターニングされた低屈折率層73aを覆うように、高屈折率下層71上に、ポリシリコンなどからなる高屈折率上層72を堆積形成する。これにより、第2ミラー構造体70の凸部78が形成される。
【0072】
次に、高屈折率上層72の表面に新たなマスクを形成し、該マスクを介して、高屈折率層71,72に不純物をイオン注入する。このイオン注入では、第2ミラー構造体70の凸部78を除く部分、換言すれば犠牲層50aにおける凹部52の周辺領域上に位置する高屈折率層71,72の部分、のみに選択的に不純物をイオン注入する。このイオン注入により、変位方向において、第2ミラーM2よりも第1ミラー構造体30から離れた位置に、第2電極75が形成される。
【0073】
この後、必要に応じて基板10における一面の裏面を研削・研磨する。そして、マスクを除去した後、高屈折率上層72の表面に新たなマスクを形成し、高屈折率層71,72を、エッチングにより選択的に除去する。これにより、高屈折率層71,73を貫通する貫通孔76が形成される。また、低屈折率層73a上における高屈折率上層72の一部に、低屈折率層73aに達する貫通孔74が形成される。
【0074】
次いで、貫通孔76を通じて、犠牲層50aにおけるエアギャップAGを形成すべき部位をエッチングしてエアギャップAGを形成する。このとき、絶縁分離領域36を埋めていた犠牲層50aも、絶縁膜12をエッチングストッパとして除去され、絶縁分離領域36がエアギャップAGに連通する溝(空隙)となる。さらには、貫通孔34,74を介して、低屈折率層33a,73aをエッチングして、空気層33,73を形成する。本実施形態では、これらエッチングが、フッ酸(HF)の気相エッチングにより同一工程で実施される。このエッチングにより、エアギャップAGが形成されるとともに支持体50も形成される。また、空気層33,73が形成されるとともにミラーM1,M2も形成される。そして、開口部51、パッド37,77の形成を経て、図4に示したファブリペロー干渉計100を得ることができる。
【0075】
なお、本実施形態では、絶縁分離領域36として、第1ミラーM1と第1電極35とを電気的且つ機械的に分離する溝(空隙)の例を示した。しかしながら、第1ミラーM1と第1電極35とを電気的に絶縁分離する絶縁分離領域36としては、上記例に限定されるものではない。図11に示すように、例えばp導電型の第1電極35に対し、n導電型の不純物拡散領域を絶縁分離領域36としても良い。この場合、第1ミラーM1と第1電極35とは電気的に分離されるものの、機械的には結合された構造となる。また、トレンチ内に電気絶縁材料が充填された絶縁分離領域36としても良い。図11は、変形例を示す断面図であり、図4に対応している。
【0076】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るファブリペロー干渉計について説明する。図12は、第2実施形態に係るファブリペロー干渉計の概略構成を示す断面図であり、上記した図4に対応している。
【0077】
第2実施形態に係るファブリペロー干渉計は、第1ミラー構造体30において、第1ミラーM1(を構成する高屈折率層31,32)と第1電極35とが電気的に結合され、凸部78を有する第2ミラー構造体70において、第2ミラーM2(を構成する高屈折率層71,72)と第2電極75とが電気的に絶縁分離されている点で、第1実施形態に示したファブリペロー干渉計100と異なっている。それ以外の構成は同じである。
【0078】
図12に示すように、第1ミラー構造体30は、第1実施形態に示した絶縁分離領域36の部分にも、第1電極35が形成されている。すなわち、第1ミラーM1が形成され、不純物の導入されていない中央領域と、第1電極35の形成された周辺領域とが隣接して形成され、第1ミラーM1を含む中央領域が、第1電極35と電気的に結合された領域E1の一部となっている。
【0079】
一方、第2ミラー構造体70は、第2ミラーM2が形成された凸部78を含む中央領域と、第2電極75の形成された周辺領域との間に、絶縁分離領域80が形成されている。この絶縁分離領域80は、メンブレンMEMの一部であり、第2ミラーM2と第2電極75とを電気的に絶縁分離するとともに、中央領域と周辺領域とを機械的に連結する機能を果たす。このため、絶縁分離領域80としては、例えばp導電型の第2電極75に対し、n導電型の不純物拡散領域を採用することができる。この絶縁分離領域80は、第2ミラー構造体70において、凸部78に第2ミラーM2が位置し、凸部78を除く部分に第2電極75が位置するように、凸部78を除く部分、及び、凸部78における第2ミラーM2及び連結部C2を除く部分、の少なくとも一方に形成されれば良い。本実施形態では、図12に示すように、凸部78を除く部分に形成されている。
【0080】
このように、第2ミラーM2が第2電極75に対して凸とされた第2ミラー構造体70において、第2ミラーM2と第2電極75とが絶縁分離領域80により電気的に分離された構成とすると、第2ミラー構造体70の凸部78(を構成する高屈折率層71,72)が、第2電極75と電気的に分離されるので、第1実施形態のように、凸部78と領域E1との対向距離de2を考慮しなくとも良い。したがって、ファブリペロー干渉計100の設計が容易となる。また、対向距離de2を考慮しなくとも良いので、垂直方向において、絶縁分離領域80の幅を絶縁分離領域36の幅よりも狭くし、これにより、ファブリペロー干渉計100の体格を小型化することもできる。
【0081】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係るファブリペロー干渉計について説明する。第3実施形態に係るファブリペロー干渉計は、第1実施形態に示したファブリペロー干渉計100と基本的な構造は同じである。異なる点は、上記した数式11の関係に代えて、下記式を満たして設定されている点である。なお、透過光の波長域をλmin以上λmax以下とする。
(数12) dei≧3×(1−λmin/λmax)×dmi
以下に、数式12について説明する。第1ミラーM1と第2ミラーM2との対向距離がdmi、すなわち電圧が印加されない初期状態のとき、対向距離dmは最も長くなり、このときの透過光の波長はλmaxとなる。したがって、対向距離dmiと波長λmaxには、下記式の関係が成り立つ。
(数13)dmi=λmax×1/2
一方、第2ミラー構造体70が、プルイン限界まで最大変位Δdmaxしたとき、透過光の波長はλminとなる。したがって、対向距離dmi、最大変位Δdmax、波長λminには、下記式の関係が成り立つ。
(数14)dmi−Δdmax=λmin×1/2
そこで、透過光の波長帯域としてλminを含むには、下記式を満たせば良い。
(数15)dmi−Δdmax≦λmin×1/2
次いで、数式15を数式13で除する(数式15/数式13)と、下記式を得ることができる。
(数16)1−Δdmax/dmi≦λmin/λmax
また、最大変位Δdmaxは、対向距離dmi,deiを用いて下記式のように示すことができる。
(数17)Δdmax/dmi=dei/dmi×1/3
したがって、数式16,17より、選択的に透過させる波長域をλmin以上λmax以下としたときの構造要件である上記数式12を導き出すことができる。
【0082】
このように、本実施形態に係るファブリペロー干渉計100では、上記数式12を満たして、各ミラー構造体30,70の構造及び配置が決定されている。したがって、λmin以上λmax以下の範囲内の光を透過させることができる。
【0083】
なお、数式12において、右辺=左辺とすると、下記式を導き出すことができる。
(数18)dei/dmi=3×(1−λmin/λmax)
図13は、数式18に示すdei/dmiとλmin/λmaxとの関係を示したものである。また、代表的なガスの赤外線吸収波長は以下の通りである。CO(4.2μm)、エタノール(3.4μm)、水蒸気(2.6μm)。
【0084】
CO、エタノール、水蒸気を1つのファブリペロー干渉計100にて、1次光(n=1)で検出するには、λmin/λmaxが0.62(≒2.6/4.2)であるから、下記式を満たして設定すれば良い。
(数19)dei≧1.1×dmi
これによれば、CO、エタノール、水蒸気を1つのファブリペロー干渉計100にて1次光で検出することが可能となる。このようなファブリペロー干渉計100は、飲酒検知センサに好適である。
【0085】
また、上記したように、エタノールの別の赤外線吸収波長は9.5μmにある。したがって、この9.5μmをλmaxとすると、λmin/λmaxが0.27(≒2.6/9.5)となる。したがって、上記したファブリペロー干渉計100において、下記式を満たして設定すれば良い。
(数20)dei≧2.2×dmi
これによれば、エタノールの9.5μmの波長も検出することができる。したがって、CO、エタノール、水蒸気を、1次光(n=1)で、より正確に検出することが可能となる。
【0086】
なお、本実施形態に記載の構成を、第1実施形態の変形例、第2実施形態の構成と、それぞれ組み合わせても良いのは言うまでもない。
【0087】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係るファブリペロー干渉計について説明する。図14は、第4実施形態に係るファブリペロー干渉計のうち、第1ミラー構造体の概略構成を示す平面図である。
【0088】
第4実施形態に係るファブリペロー干渉計は、第1実施形態に示したファブリペロー干渉計100と基本的な構造は同じである。異なる点は、第1電極35と電気的に絶縁分離された第1ミラーM1(を構成する高屈折率層31,32)が、第2ミラー構造体70の第2電極75(領域E2)と同電位とされる点である。
【0089】
この点の一例としては、ファブリペロー干渉計100において、第1ミラーM1(を構成する高屈折率層31,32)が、第2ミラー構造体70の第2電極75(領域E2)と、ワイヤなどの電気中継部材を介して電気的に接続された構造を示すことができる。これによれば、第1ミラーM1と第2電極75(領域E2)とが同電位となる。
【0090】
また、上記点を別の言い方をすれば、ファブリペロー干渉計100におけるメンブレンMEMの駆動方法として、一方のミラー構造体(第1ミラー構造体30)において電極(第1電極35)と電気的に絶縁分離されたミラー(第1ミラーM1)を、他方のミラー構造体(第2ミラー構造体70)の電極及びミラー(第2電極75及び第2ミラーM2)と同電位としつつ、両電極35,70間に印加する電圧に基づいて生じる静電気力により、エアギャップAGを変化させるとも言える。
【0091】
このような構成を実現するため、図14に示すように、第1ミラー構造体30において、第1ミラーM1及び連結部C1の形成された平面円形状の中央領域に対し、延設部38が連結され、この延設部38が、第1実施形態の周辺領域に相当する部分まで延設されている。この延設部38は、高屈折率層31,32同士が接触されてなる。そして、この延設部38の端部における高屈折率上層32の表面に、Au/Cr等からなるパッド39が形成されている。なお、第1ミラーM1及び連結部C1の形成された中央領域と延設部38に形成された不純物の拡散層よりなる配線(図示略)とオーミック接触されている。不純物は光を吸収するため、不純物による配線は、第1ミラーM1を除く部分に形成されている。本実施形態では、間に中央領域を挟むように、対向位置に延設部38がそれぞれ形成されている。
【0092】
そして、中央領域及び延設部38を取り囲むように、絶縁分離領域36としての溝(空隙)が形成されている。なお、図示しないが、パッド39も、パッド37と支持体50に設けられた開口部51との関係同様、支持体50に形成された開口部(図示略)を介して外部に露出されており、ワイヤなどが接続可能な構造となっている。
【0093】
上記構成により、本実施形態では、第1ミラーM1と第1電極35とが電気的に分離され、第2ミラーM2と第2電極75とが電気的に結合された構造において、第1ミラーM1を、第2電極75と同電位とすることができる。したがって、第2ミラー構造体70のメンブレンMEMを変位(駆動)させるべく、第1電極35と第2電極75の間に電圧を印加した際に、第1ミラーM1が、第2電極75、ひいては第2ミラーM2と同電位となり、第1ミラーM1と第2ミラーM2との間で静電気力が生じない。これにより、第1ミラーM1を浮遊電位とする構成(第1実施形態参照)に比べて、分光帯域をより広くすることができる。また、第1ミラーM1と第2ミラーM2との間で静電気力が生じないため、エアギャップAGを所望の間隔に制御しやすいという利点もある。
【0094】
なお、本実施形態に記載の構成を、第1実施形態の変形例、第2実施形態の構成、第3実施形態の構成と、それぞれ組み合わせても良いのは言うまでもない。
【0095】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態に係るファブリペロー干渉計について説明する。図15は、第5実施形態に係るファブリペロー干渉計の概略構成を示す断面図である。図16は、ファブリペロー干渉計のうち、第1ミラー構造体の概略構成を示す平面図である。
【0096】
第5実施形態に係るファブリペロー干渉計は、第1実施形態に示したファブリペロー干渉計100と基本的な構造は同じである。異なる点は、図15及び図16に示すように、各ミラー構造体30,70において、電極35,75の少なくとも一部が中央領域に形成され、電極35,75の形成された中央領域を取り囲む周辺領域にミラーM1,M2がそれぞれ形成されている点である。
【0097】
図16においては、第1ミラー構造体30を示しており、符号M1aは、第1ミラーM1(及び連結部C1)の形成された領域を示している。この第1ミラー形成領域M1aの構造は、第1実施形態で示した、第1ミラーM1の形成領域である中央領域の構造と基本的に同じである。
【0098】
図16に示すように、平面矩形状の第1ミラー構造体30では、平面円形状の中央領域に第1電極35が形成され、中央領域を取り囲む周辺領域に第1ミラーM1が形成されている。また、中央領域(第1電極35)は、連結部40を介して、第1ミラー形成領域M1aよりも外側の最外部41と連結されており、この最外部41における高屈折率上層32の表面上に、第1電極35のパッド37が形成されている。すなわち、第1ミラー形成領域M1aは、図16に示すように、平面略C字状となっており、第1ミラー形成領域M1aのC字端部間に連結部40が設けられている。なお、連結部40及び最外部41では、高屈折率層31,32同士が接触しており、中央領域における第1電極35同様、不純物が注入されている。すなわち、中央領域、連結部40、及び最外部41が第1電極35となっている。
【0099】
また、第1ミラー形成領域M1aには、第4実施形態同様、延設部38が連結され、この延設部38が、第1実施形態の周辺領域に相当する部分まで延設されている。また、延設部38の端部における高屈折率上層32の表面に、Au/Cr等からなるパッド39が形成されている。すなわち、第1ミラーM1を第2ミラー構造体70の第2電極75、ひいては第2ミラーM2と同電位にできる構造となっている。
【0100】
そして、第1電極35の形成された中央領域、連結部40、最外部41と、第1ミラー形成領域M1a及び延設部38とが、絶縁分離領域36としての溝(空隙)によって、電気的且つ機械的に分離されている。すなわち、第1ミラーM1と第1電極35とが電気的に絶縁分離されている。
【0101】
一方、第2ミラー構造体70では、その中央領域に第2電極75が形成されている。そして、中央領域を取り囲む周辺領域に第2ミラーM2が形成されている。この第2ミラーM2は、第1ミラーM1に対応して平面略C字状の領域(図示略)に形成されている。そして、上記連結部40同様、第2ミラー形成領域のC字端部間に設けられた連結部(図示略)を介して、第2電極75が、対応するパッド77と電気的に接続されている。
【0102】
このようなファブリペロー干渉計100では、支持体50から遠い位置にある中央領域に第1電極35及び第2電極75が形成されている。換言すれば、メンブレンMEMにおいて、撓み易い中央に第2電極75が形成されている。これにより、第2ミラー構造体70のメンブレンMEMのばね定数が、第1実施形態に示したものよりも小さくなっている。したがって、所定のエアギャップAGとする際の印加電圧を、第1実施形態に示した構成よりも低減することができる。
【0103】
なお、第1実施形態に示したように、支持体50から遠い位置にある中央領域にミラーM1,M2が形成されていると、電圧を印加した状態でも、ミラーM1,M2が互いに平行状態を維持しやすい。これにより、本実施形態に示した構成に比べて、ファブリペロー干渉計100を小型化しつつ透過波長の半値幅(FWHM)を低減することができる。
【0104】
また、本実施形態に係るファブリペロー干渉計100の製造方法については、第1実施形態に示した方法と同じであるので、その記載を省略する。
【0105】
また、本実施形態に記載の構成を、第1実施形態の変形例、第2実施形態の構成、第3実施形態の構成と、それぞれ組み合わせても良いのは言うまでもない。さらには、第1実施形態同様、第1ミラーM1を浮遊電位としても良いのは言うまでもない。
【0106】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態に係るファブリペロー干渉計について説明する。図17は、第6実施形態に係るファブリペロー干渉計の概略構成を示す断面図である。図17では、第2ミラーM2に対して、第1ミラーM1の厚みを厚く図示しているが、これは、第1ミラーM1が第1電極35よりも第2ミラー構造体70側に凸であって、これにより、dei>dmiであることを示すためのものであり、両ミラーM1,M2の厚みを特に規定するものではない。また、図1では、ミラー構造体30,70として、エアギャップAGを介した対向部位のみを示している。
【0107】
第6実施形態に係るファブリペロー干渉計は、上記実施形態に示したファブリペロー干渉計100と基本的な構造は同じである。異なる点は、図17に示すように、第2ミラー構造体70ではなく、第1ミラー構造体30に凸部42が形成され、この凸部42に第1ミラーM1が、凸部42を除く部分に第1電極35が、それぞれ形成されている点である。
【0108】
なお、図17に示す例では、第1ミラー構造体30において、第1ミラーM1と第1電極35とが、絶縁分離領域36により電気的に分離されている。一方、第2ミラー構造体70では、第2ミラーM2と第2電極75とが電気的に結合され、第2ミラーM2が、第2電極75の電気的な結合領域E2に含まれている。すなわち、凸部42を有するミラー構造体30側に絶縁分離領域36が形成されているので、凸部42と領域E2との対向距離(図1の対向距離de2に相当)を考慮しなくとも良い。したがって、第2実施形態同様、ファブリペロー干渉計100の設計が容易となる。また、垂直方向において、絶縁分離領域36の幅を狭くし、これにより、ファブリペロー干渉計100の体格を小型化することもできる。
【0109】
次に、上記したファブリペロー干渉計100の具体的な構成例について説明する。図18は、図17に示すファブリペロー干渉計の具体例を示す断面図である。図18に示す構成は、第5実施形態に示した構成同様、各ミラー構造体30,70において、電極35,75の少なくとも一部が中央領域に形成され、電極35,75の形成された中央領域を取り囲む周辺領域にミラーM1,M2がそれぞれ形成されている。第5実施形態と異なる点は、第1ミラー構造体30に凸部42が形成されている点であり、以下においては、異なる点を重点的に説明する。
【0110】
図18に示すファブリペロー干渉計100においても、基板10として、例えば単結晶シリコンからなる平面矩形状の半導体基板を採用している。そして、基板10の一面には、凸部42(第1ミラーM1)の形成領域に対応して凸部10aが形成されている。この凸部10aは、図示しないが、第5実施形態に示した第1ミラー形成領域M1a同様、中央の第1電極35を取り囲む、平面略C字状に設けられている。
【0111】
凸部10aを有する基板10の一面側表層には、不純物がドーピングされてなる吸収領域11が、垂直方向において、第1ミラーM1及び第2ミラーM2による分光領域を除く領域に選択的に設けられている。また、基板10の一面上には、絶縁分離領域36を形成する際のエッチングストッパとして機能する絶縁膜12が形成されている。そして、絶縁膜12を介して、基板10の一面上に第1ミラー構造体30が配置されている。
【0112】
第1ミラー構造体30の構成は、上記した第5実施形態とほぼ同じ構造となっている。平面矩形状の第1ミラー構造体30では、平面円形状の中央領域に、高屈折率層31,32に不純物を注入してなる第1電極35が形成され、中央領域を取り囲む周辺領域に第1ミラーM1が形成されている。
【0113】
本実施形態では、基板10の凸部10a上において、高屈折率下層31と高屈折率上層32との間に低屈折率層としての空気層33が介在され、光学多層膜構造の第1ミラーM1が構成されている。そして、第1ミラー構造体30において、第1ミラーM1を含む凸部10a上の部分が、第1ミラー構造体30において第2ミラー構造体70側に突出した凸部42となっている。この凸部42(第1ミラーM1)は、図示しないが、上記した凸部10aに対応して、平面略C字状となっている。
【0114】
また、中央領域(第1電極35)は、図示しない連結部(図16の連結部40参照)を介して、第1ミラーM1よりも外側の最外部41と連結されており、この最外部41における高屈折率上層32の表面上に、第1電極35のパッド37が形成されている。すなわち、第1ミラーM1が形成された凸部42のC字状端部間に連結部が設けられている。なお、第1電極35とパッド37とを電気的に接続する部分(連結部及び最外部41)では、高屈折率層31,32同士が接触しており、中央領域における第1電極35同様、不純物が注入されている。すなわち、中央領域、連結部、及び最外部41が第1電極35となっている。
【0115】
そして、第1電極35の形成された中央領域、連結部、最外部41と、第1ミラーM1が形成された領域とが、絶縁分離領域36としての溝(空隙)によって、電気的且つ機械的に分離されている。すなわち、第1ミラーM1と第1電極35とが電気的に絶縁分離されている。
【0116】
一方、第1ミラー構造体30上に支持体50を介して配置された第2ミラー構造体70は、凸部78が形成されていない点を除けば、第5実施形態に示した構造と同じ構造となっている。すなわち、第2ミラー構造体70では、その中央領域に高屈折率層71,72に不純物を注入してなる第2電極75が形成されている。そして、中央領域を取り囲む周辺領域に第2ミラーM2が形成されている。この第2ミラーM2は、上記したように第1ミラーM1に対応して形成され、高屈折率下層71と高屈折率上層72との間に低屈折率層としての空気層73が介在されてなる光学多層膜構造のエアミラーとなっている。
【0117】
この第2ミラーM2も、第1ミラーM1に対応して平面略C字状の領域(図示略)に形成されている。そして、上記連結部同様、第2ミラー形成領域のC字端部間に設けられた連結部(図示略)を介して、第2電極75が、対応するパッド77と電気的に接続されている。
【0118】
このように、本実施形態に係るファブリペロー干渉計100においても、支持体50から遠い位置にある中央領域に第1電極35及び第2電極75が形成されている。換言すれば、メンブレンMEMにおいて、撓み易い中央に第2電極75が形成されている。これにより、第2ミラー構造体70のメンブレンMEMのばね定数が、第1実施形態に示したものよりも小さくなっている。したがって、所定のエアギャップAGとする際の印加電圧を、第1実施形態に示した構成よりも低減することができる。
【0119】
次に、上記したファブリペロー干渉計100の製造方法の一例について説明する。図19〜図24は、図18に示したファブリペロー干渉計の製造方法を示す断面図であり、図19から順に推移する。
【0120】
先ず、図19に示すように、基板10として、単結晶シリコンからなる半導体基板を準備し、基板10の一面側をパターニングして、第1ミラー構造体30の凸部42(第1ミラーM1)の形成される部分に凸部10aを形成する。
【0121】
凸部10aの形成後、図20に示すように、凸部10aを有する基板10の一面側表層のうち、ミラーM1,M2による分光領域を除く部分に、硼素(B)などの不純物を導入して吸収領域11を形成する。次いで、基板10の一面全面に、シリコン窒化膜などからなる絶縁膜12を均一に堆積形成する。そして、絶縁膜12上に、ポリシリコンなどからなる高屈折率下層31、シリコン酸化膜などからなる低屈折率層33aの順に、堆積形成する。
【0122】
次いで、図21に示すように、低屈折率層33aの表面にレジストなどからなるマスク(図示略)を形成し、該マスクを介して低屈折率層33aをエッチング(例えばRIEなどの異方性のドライエッチング)し、低屈折率層33aをパターニングする。このパターニングされた低屈折率層33aは、後にエッチングされて、第1ミラーM1の空気層33となる。次に、マスクを除去し、低屈折率層33aを覆うように、高屈折率下層31上に、ポリシリコンなどからなる高屈折率上層32を堆積形成する。
【0123】
次いで、高屈折率上層32の表面にマスク(図示略)を形成し、該マスクを介して高屈折率層31,32をエッチング(例えばRIEなどの異方性のドライエッチング)し、高屈折率層31,32を貫通する絶縁分離領域36としての溝(トレンチ)を所定位置に形成する。また、低屈折率層33a上における高屈折率上層32の一部に、低屈折率層33aに達する貫通孔34を形成する。そして、マスクを除去した後、高屈折率上層32の表面に新たなマスクを形成し、該マスクを介して、高屈折率層31,32に不純物をイオン注入する。このイオン注入により、第1電極35(及び連結部、最外部41等)が形成される。
【0124】
なお、第1ミラー構造体30の形成においては、第1電極35を形成した後、高屈折率層31,32をエッチングして、絶縁分離領域36としての溝を形成しても良い。
【0125】
次に、マスクを除去し、高屈折率膜上層32の表面全面に、シリコン酸化膜などの犠牲層50aを堆積形成する。これにより、貫通孔34内、及び、絶縁分離領域36としての溝内にも、犠牲層50aが配置される。このとき、基板10に凸部10aを設けているため、犠牲層50aの表面も図21に示すように凹凸状となる。なお、犠牲増50aの構成材料としては、電気絶縁材料であれば特に限定されるものではないが、好ましくは低屈折率層33aと同一材料とすると良い。
【0126】
次に、図22に示すように、犠牲層50aの表面をCMP等により研磨し、平坦化する。この処理により、最終的に領域E1,E2間の対向距離deiがミラー間の対向距離dmiとなる。
【0127】
犠牲層50aを平坦化処理した後、図23に示すように、犠牲層50aの表面全面に、ポリシリコンなどからなる高屈折率下層71を堆積形成し、次いで、シリコン酸化膜などからなる低屈折率層73aを堆積形成する。次に、低屈折率層73aの表面に、レジストなどからなるマスク(図示略)を形成し、該マスクを介して低屈折率層73aをエッチングし、第2ミラーM2となる部位のみを選択的に残す。そして、マスクを除去後、パターニングされた低屈折率層73aを覆うように、高屈折率下層71上に、ポリシリコンなどからなる高屈折率上層72を堆積形成する。
【0128】
次に、高屈折率上層72の表面に新たなマスクを形成し、該マスクを介して、高屈折率層71,72に不純物をイオン注入する。このイオン注入により、第2電極75(及び連結部等)が形成される。
【0129】
この後、必要に応じて基板10における一面の裏面を研削・研磨する。そして、マスクを除去した後、高屈折率上層72の表面に新たなマスクを形成し、高屈折率層71,72を、エッチングにより選択的に除去する。これにより、高屈折率層71,73を貫通する貫通孔76が形成される。また、低屈折率層73a上における高屈折率上層72の一部に、低屈折率層73aに達する貫通孔74が形成される。
【0130】
次いで、図24に示すように、貫通孔76を通じて、犠牲層50aにおけるエアギャップAGを形成すべき部位をエッチングしてエアギャップAGを形成する。このとき、絶縁分離領域36を埋めていた犠牲層50aも、絶縁膜12をエッチングストッパとして除去され、絶縁分離領域36がエアギャップAGに連通する溝(空隙)となる。さらには、貫通孔34,74を介して、低屈折率層33a,73aをエッチングして、空気層33,73を形成する。本実施形態では、これらエッチングが、フッ酸(HF)の気相エッチングにより同一工程で実施される。このエッチングにより、エアギャップAGが形成されるとともに支持体50も形成される。また、空気層33,73が形成されるとともにミラーM1,M2も形成される。そして、開口部51、パッド37などの形成を経て、図18に示したファブリペロー干渉計100を得ることができる。
【0131】
上記したように本実施形態では、基板10の一面に凸部10aを形成、形成した凸部10a上に第1ミラー構造体30の第1ミラーM1を形成するとともに基板一面の凸部周辺に第1電極35を形成、基板一面の凹凸に倣った表面形状を有する犠牲層50aの表面を平坦化、平坦化後に第2ミラー構造体70を形成、するため、第1実施形態に示した第2ミラー構造体70側に凸部78を設ける構成よりも、製造工程が複雑となる。逆に言えば、第2ミラー構造体70側に凸部78を有するファブリペロー干渉計100の方が、製造工程を簡素化することが可能である。
【0132】
なお、本実施形態では、電極35,75が中央領域に形成される例を示した。しかしながら、図25に示すように、第1実施形態同様、ミラーM1,M2が中央領域に形成され、電極35,75が中央領域を取り囲む周辺領域に形成される構成としても良い。図25は、変形例を示す断面図である。
【0133】
なお、本実施形態に記載の構成を、第1実施形態の変形例、第2実施形態の構成、第3実施形態の構成、第4実施形態の構成と、それぞれ組み合わせても良いのは言うまでもない。
【0134】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0135】
本実施形態では、基板10として、一面側表層に吸収領域11を有するとともに、一面上に絶縁膜12を備えた半導体基板の例を示した。しかしながら、基板10としては上記例に限定されるものではなく、ガラスなどの絶縁基板を採用することも可能である。その場合、絶縁膜12を不要とすることができる。
【0136】
また、吸収領域11についても、蒸着などにより、基板10の表面に形成されたものを採用することもできる。例えば、第1ミラー構造体30などが形成される側の面の裏面上に形成されても良い。
【0137】
本実施形態では、第1ミラーM1及び第2ミラーM2として、高屈折率層間に低屈折率層としての空気層を介在させてなる光学多層膜構造の例を示した。しかしながら、ミラーの構成は上記例に限定されるものではない。低屈折率層としては、空気層33,73に代えて、シリコン酸化膜などの固体、液体、空気以外の気体、ゾル、ゲル、真空などを採用しても良い。
【0138】
本実施形態では、ミラー構造体30,70のうち、第1ミラー構造体30のみに凸部42を設けるか、第2ミラー構造体70のみに凸部78を設ける例を示した。しかしながら、例えば図26に示すように、両ミラー構造体30,70に、凸部42,78をそれぞれ設けた構成とすることも可能である。これによれば、初期状態で、第1ミラーM1と第2ミラーM2との対向距離dmiをより狭くすることができる。図26は、その他変形例を示す断面図である。図26では、第1ミラー構造体30側に絶縁分離領域36を設けているが、絶縁分離領域36に代えて、第2ミラー構造体70側に絶縁分離領域80を設けた構成としても良い。
【0139】
本実施形態では、ミラー構造体30,70のうち、第1ミラー構造体30のみに絶縁分離領域36を設けるか、第2ミラー構造体70のみに絶縁分離領域80を設ける例を示した。しかしながら、例えば図27に示すように、両ミラー構造体30,70に、絶縁分離領域36,80をそれぞれ設けた構成とすることも可能である。図27は、その他変形例を示す断面図である。図27では、第2ミラー構造体70側に凸部78を設けているが、第1ミラー構造体30側に凸部42を設けた構成としても良い。さらに、上記した構成において、図14に示した延設部及びパッドを、各ミラーM1,M2に対して設けると、パッドを介して両ミラーM1,M2を同電位とすることもできる。この場合、両電極35,75に電圧を印加してメンブレンMEMを変位させる際に、ミラーM1,M2間に静電気力が作用しないので、変位量を精度良く制御することができる。
【0140】
本実施形態では、光学多層膜構造の第1ミラーM1及び第2ミラーM2を構成する各膜の厚さについて特に言及しなかった。しかしながら、ミラーM1,M2を構成する高屈折率層31,32,71,72と低屈折率層33,73の厚みを、光学長で、所定の検出対象波長に対して全て1/4程度とすると、吸収スペクトルの半値巾(FWHM)を小さくし、ひいては検出精度を向上することができる。
【符号の説明】
【0141】
10・・・基板
10a・・・凸部
30・・・第1ミラー構造体
35・・・第1電極
36・・・絶縁分離領域
50・・・支持体
70・・・第2ミラー構造体
75・・・第2電極
100・・・ファブリペロー干渉計
AG・・・エアギャップ(ギャップ)
E1・・・第1電極と電気的に結合された領域
E2・・・第2電極と電気的に結合された領域
M1・・・第1ミラー
M2・・・第2ミラー
MEM・・・メンブレン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ミラー構造体と第2ミラー構造体とがギャップを介して対向配置され、
前記ギャップを介した対向部位として、
前記第1ミラー構造体は、第1ミラーと、第1電極とを有し、
前記第2ミラー構造体は、前記第1ミラーに対向する第2ミラーと、前記第1電極に対向する第2電極とを有し、
前記第1電極と前記第2電極の間に印加された電圧に基づいて生じる静電気力により、前記ギャップが変化され、前記ギャップにおける前記第1ミラーと前記第2ミラーとの対向距離dmに応じた波長の光を選択的に透過させるファブリペロー干渉計であって、
前記第1ミラーと前記第1電極、及び、前記第2ミラーと前記第2電極、の少なくとも一方が電気的に絶縁分離され、
前記電圧が印加されない状態で、前記第1電極を含む電気的に結合された部分と、前記第2電極を含む電気的に結合された部分との対向距離deiが、前記第1ミラーと前記第2ミラーとの対向距離dmiよりも長いことを特徴とするファブリペロー干渉計。
【請求項2】
前記第1ミラー構造体及び前記第2ミラー構造体のうちの一方のミラー構造体において、前記ミラーが前記電極に対して、他方のミラー構造体側に凸とされていることを特徴とする請求項1に記載のファブリペロー干渉計。
【請求項3】
前記ミラーが前記電極に対して凸とされたミラー構造体において、前記ミラーと前記電極とが電気的に絶縁分離されていることを特徴とする請求項2に記載のファブリペロー干渉計。
【請求項4】
前記電圧が印加されない状態で、前記第1電極を含む電気的に結合された部分と、前記第2電極を含む電気的に結合された部分との対向距離deiが、下記式を満たして設定されていることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載のファブリペロー干渉計。
(数21)dei≧3×dmi
【請求項5】
選択的に透過させる前記光の波長域としてλmin以上λmax以下とすると、
前記電圧が印加されない状態で、前記第1電極を含む電気的に結合された部分と、前記第2電極を含む電気的に結合された部分との対向距離deiが、下記式を満たして設定されていることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載のファブリペロー干渉計。
(数22)dei≧3×(1−λmin/λmax)×dmi
【請求項6】
前記電圧が印加されない状態で、前記第1電極を含む電気的に結合された部分と、前記第2電極を含む電気的に結合された部分との対向距離deiが、下記式を満たして設定されていることを特徴とする請求項5に記載のファブリペロー干渉計。
(数23)dei≧1.1×dmi
【請求項7】
前記電圧が印加されない状態で、前記第1電極を含む電気的に結合された部分と、前記第2電極を含む電気的に結合された部分との対向距離deiが、下記式を満たして設定されていることを特徴とする請求項5に記載のファブリペロー干渉計。
(数24)dei≧2.2×dmi
【請求項8】
前記第1ミラーと前記第1電極、及び、前記第2ミラーと前記第2電極のうち、いずれか一方において前記ミラーと前記電極とが電気的に分離され、他方において前記ミラーと前記電極とが電気的に結合され、
前記第1ミラー及び前記第2ミラーのうち、対応する前記電極と電気的に分離されたミラーが、他方の前記電極と同電位とされていることを特徴とする請求項1〜7いずれか1に記載のファブリペロー干渉計。
【請求項9】
前記第1ミラー構造体と前記第2ミラー構造体との前記ギャップを介した対向部位において、前記第1電極及び前記第2電極がそれぞれの中央領域に設けられ、前記第1ミラー及び前記第2ミラーが、前記中央領域を取り囲むそれぞれの周辺領域に設けられていることを特徴とする請求項1〜8いずれか1項に記載のファブリペロー干渉計。
【請求項10】
前記第1ミラー構造体と前記第2ミラー構造体との前記ギャップを介した対向部位において、前記第1ミラー及び前記第2ミラーがそれぞれの中央領域に設けられ、前記第1電極及び前記第2電極が、前記中央領域を取り囲むそれぞれの周辺領域に設けられていることを特徴とする請求項1〜8いずれか1項に記載のファブリペロー干渉計。
【請求項11】
前記第1ミラー構造体及び前記第2ミラー構造体において、
前記第1ミラー及び前記第2ミラーは、シリコン及びゲルマニウムの少なくとも一方を含む半導体薄膜からなる高屈折率層の間に、該高屈折率層よりも低屈折率の低屈折率層を介在させてなる光学多層膜構造を有しており、
前記第1電極及び前記第2電極は、前記高屈折率層に、p導電型又はn導電型の不純物が導入されてなることを特徴とする請求項1〜10いずれか1項に記載のファブリペロー干渉計。
【請求項12】
前記低屈折率層は、空気又は真空であることを特徴とする請求項11に記載のファブリペロー干渉計。
【請求項13】
請求項3に記載のファブリペロー干渉計の製造方法であって、
基板の一面上に、前記第1ミラー構造体のうち、前記第1ミラーの少なくとも一部と、前記第1電極を形成する工程と、
前記第1ミラー構造体上に犠牲層を形成する工程と、
前記犠牲層をパターニングし、前記犠牲層における前記第1ミラー構造体とは反対側の表面に、前記第2ミラーの形成領域に対応した凹部を形成する工程と、
前記凹部を有する犠牲層の表面上に、前記第2ミラー構造体のうち、前記第2ミラーの少なくとも一部と、前記第2電極を形成する工程と、
前記第2ミラー構造体の形成後、前記犠牲層をエッチングして前記ギャップを形成する工程と、を備えることを特徴とするファブリペロー干渉計の製造方法。
【請求項14】
請求項3に記載のファブリペロー干渉計の製造方法であって、
基板をパターニングし、前記基板の一面に前記第1ミラーの形成領域に対応した凸部を形成する工程と、
前記凸部を有する基板の一面上に、前記第1ミラー構造体のうち、前記第1ミラーの少なくとも一部と、前記第1電極を形成する工程と、
前記第1ミラー構造体上に犠牲層を形成する工程と、
前記犠牲層における前記第1ミラー構造体とは反対側の表面を平坦化する工程と、
平坦化した前記犠牲層の表面上に、前記第2ミラー構造体のうち、前記第2ミラーの少なくとも一部と、前記第2電極を形成する工程と、
前記第2ミラー構造体の形成後、前記犠牲層をエッチングして前記ギャップを形成する工程と、を備えることを特徴とするファブリペロー干渉計の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2011−27780(P2011−27780A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170310(P2009−170310)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】