説明

フォースセンサ

【課題】フォースセンサの小型化に伴い、外部からの荷重により支持部に機械的強度を越える応力が発生し、支持部が破壊する問題が発生した。
【解決手段】センサ基板とベース基板との間にストッパを設け、センサ基板の撓みを制限し、支持部に機械的強度を越える応力が発生することを防止した。よって、前記ストッパを設けることで、支持部が破壊することなく荷重を計測できる小型なフォースセンサを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷重測定用の歪検出素子を複数備えたセンサ基板をベース基板に接合してなるフォースセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、モバイル機器のタッチパネルやコントローラ等のユーザーインターフェース
に荷重測定用のフォースセンサが用いられている。フォースセンサは種々あるが、例えば
特許文献1に示されるピエゾ抵抗方式では、ダイヤフラム部を有するシリコン基板と、リム部とは反対側のダイヤフラム部に設けた複数のゲージ抵抗からなるブリッジ回路と、ダイヤフラム部と接着される中央部に凹部を有し、ブリッジ回路と電気的に接続する配線パッドを形成した絶縁性の基部と、ボンディングワイヤーにより配線パッドと電気的に接続したパッケージと、ダイヤフラム部上に設けた球とを備えている。
【0003】
この従来のフォースセンサは、球を介して受けた荷重に応じてダイヤフラム部が変位し、その変位量に応じてブリッジ回路の出力が変化することから、荷重を検出することができる。
【0004】
上述のフォースセンサは、実装されるモバイル機器のサイズに合わせて、小型化及び低
背化が要求される。しかし、球を介して変位部に荷重を与える従来構造では、球サイズが
大きく、低背化が難しい。球サイズを小さくすると、球の接触面積も小さくなるため狭い
エリアに荷重が集中することとなり、センサが壊れやすくなってしまう。
【0005】
また、従来構造では、基部に形成した配線パッドとパッケージとの電気的接続にボンディングワイヤーを用いているためにスペースを確保しなければならず、これによっても低背化が難しかった。
【0006】
上述の問題を解決するために、例えば、特許文献2に示されるフォースセンサは、変位部を構成するシリコン基板の表裏面の一方に受圧部を、他方に複数のピエゾ抵抗素子及び支持部、さらに、前記複数のピエゾ抵抗素子と電気的に接続した外部実装用の外部接続電極を設け、前記外部接続電極を介して容易に外部実装することを可能とし、従来構造の球、ベース基板、パッケージ及びワイヤーボンディングは不要とし、小型化及び低背化を可能とした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平5−77304号公報
【特許文献2】特願2009−267077号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】川田 雄一「材料力学―基礎と強度設計―」、昭和59年4月10日、裳華房P211
【非特許文献2】東京天文台「理科年表」、昭和58年11月30日、丸善P物25(441)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2に示される従来技術のフォースセンサにおいては、外部からの荷重は、先ず受圧部が受け、前記受圧部が受けた荷重により変位する変位部を通じて、支持部及び電気接続部に加重される。この荷重により前記支持部及び前記電気接続部には応力が生じる。
【0010】
前記フォースセンサを更に小型化するために、センサ基板及び前記支持部の平面寸法を小さくすると、前記支持部に生じる前記応力が、破壊する直前の最大応力である機械的強度を越えてしまい、前記支持部が破壊する問題が発生した。
【0011】
本発明の目的は、ストッパを設けることで、前記支持部が破壊することなく荷重を計測することができる小型なフォースセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のフォースセンサは、外部からの荷重を受ける受圧部と前記外部からの荷重により変位量が変化する変位部と前記変位量に応じて電気抵抗が変化する歪検出素子とを備えたセンサ基板と、前記センサ基板と接合されたベース基板とを有し、前記センサ基板と前記ベース基板とは前記変位部が変位自在となるよう支持する支持部により接合してなり、前記センサ基板は、前記ベース基板に対向する一方の面に前記歪検出素子及び前記支持部よりも基板周縁に位置して前記歪検出素子と電気的に接続したセンサ側電気接続部を有し、他方の面に前記受圧部を有しており、前記ベース基板は、前記支持部よりも基板周縁に位置して前記センサ側電気接続部に接合するベース側電気接続部を有しており、前記変位部の変位量を制限するようにストッパが設けられたことを特徴とする。
【0013】
このような態様であれば、前記ストッパが前記変位部の変位量を制限し、機械的強度を越える応力が前記支持部に生じることを防止するので、前記支持部が破壊することは無くなった。
【0014】
よって、本発明によれば、ストッパを設けることで、前記支持部が破壊することなく荷重を計測することができる小型なフォースセンサを提供することが可能となった。
【0015】
前記センサ基板が、シリコンからなることが好ましい。
このような態様であれば、通常の半導体プロセス技術により前記センサ基板を容易に製作することがきる。
【0016】
前記歪検出素子が、ピエゾ抵抗素子であることが好ましい。
このような態様であれば、前記ピエゾ抵抗素子が高感度な素子であることを考えると、高感度なフォースセンサを得ることができる。
【0017】
前記ストッパを前記支持部よりも基板内側に位置して前記ベース基板に対向する前記センサ基板の一方の面に設けることは、前記変位部の変位量を制限することに有効である。
前記支持部よりも基板内側に位置する前記受圧部が外部から荷重を受けるため、前記支持部よりも基板内側に位置する部分が大きく撓む。よって、前記支持部よりも基板内側に位置して前記ベース基板に対向する前記センサ基板の一方の面に前記ストッパを設けることで、前記ストッパは前記変位部の変位量を制限することができる。
【0018】
前記ストッパを前記支持部よりも基板内側に位置して前記センサ基板に対向する前記ベース基板の一方の面に設けることは、前記変位部の変位量を制限することに有効である。
前記支持部よりも基板内側に位置する前記受圧部が外部から荷重を受けるため、前記支持部よりも基板内側に位置する部分が大きく撓む。よって、前記支持部よりも基板内側に位置して前記センサ基板に対向する前記ベース基板の一方の面に前記ストッパを設けることで、前記ストッパは前記変位部の変位量を制限することができる。
【0019】
前記ストッパを前記支持部よりも基板内側に位置して前記ベース基板に対向する前記センサ基板の一方の面に及び前記支持部よりも基板内側に位置して前記センサ基板に対向する前記ベース基板の一方の面にそれぞれ設けることは、前記変位部の変位量を制限することに有効である。
前記支持部よりも基板内側に位置する前記受圧部が外部から荷重を受けるため、前記支持部よりも基板内側に位置する部分が大きく撓む。よって、前記支持部よりも基板内側に位置して前記ベース基板に対向する前記センサ基板の一方の面に及び前記支持部よりも基板内側に位置して前記センサ基板に対向する前記ベース基板の一方の面にそれぞれ前記ストッパを設けることで、前記ストッパは前記変位部の変位量を制限することができる。
【0020】
前記ストッパが、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、白金、タンタル、鉄、金いずれかの金属または2つ以上からなる合金またはシリコン、ガラス、酸化シリコン、窒化シリコン、絶縁セラミックからなる単層膜または積層膜であることが好ましい。
このような態様であれば、前記ストッパは、半導体プロセス技術であるスパッタ技術、酸化技術及び微細加工技術の組み合わせにより容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ストッパが変位部の変位量を制限し、機械的強度を越える応力が支持部に生じることを防止するので、前記支持部は破壊することは無くなった。
【0022】
よって、本発明によれば、ストッパを設けることで、前記支持部が破壊することなく荷重を計測することができる小型なフォースセンサを提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第一の実施形態であるフォースセンサ1の図2におけるI−I線に沿って切断した断面略図である。
【図2】第一の実施形態であるフォースセンサ1を上面側から見て示す平面略図である。
【図3】第一の実施形態であるフォースセンサ1のセンサ基板を下面側から見て示す平面略図である。
【図4】第一の実施形態であるフォースセンサ1のベース基板を上面側から見て示す平面略図である。
【図5】第一の変形例であるフォースセンサの断面略図である。
【図6】第二の変形例であるフォースセンサの断面略図である。
【図7】第一の実施形態であるフォースセンサ1の支持部の内径をパラメータとした支持部に加重される応力とセンサ基板の最大撓みの関係を示している。
【図8】第一の実施形態であるフォースセンサ1のシリコン基板の厚さをパラメータとした支持部に加重される応力とセンサ基板の最大撓みの関係を示している。
【図9】第一の実施形態であるフォースセンサ1の支持部に加重される応力と支持部の内径との関係を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は本発明を適用した第一の実施形態であるフォースセンサ1の図2におけるI−I線に沿って切断した断面略図、図2はフォースセンサ1を上面側から見て示す平面略図、図3はセンサ基板11を下面側から見て示す平面略図である。フォースセンサ1は、ピエゾ抵抗方式のフォースセンサであって、巨視的な凹凸のない一定厚さのセンサ基板11を備えている。センサ基板11は、平面矩形状をなし、その中央部が荷重により変位する変位部12を備える。
【0025】
センサ基板11の表面11aには、図1、図2に示されるように、外部からの荷重を受ける受圧部13が設けられている。受圧部13は、変位部12の上に隆起した円柱状の凸型である。この受圧部13は、ニッケル合金またはシリコン(センサ基板11と同一材質)からなる。受圧部13は省略可能であるが、変位部12上に受圧部13を設けることでセンサ感度を安定させることができる。
【0026】
センサ基板11の裏面11bには、図3に示すように、ストッパ20、歪検出素子として複数のピエゾ抵抗素子15、複数のセンサ側電気接続部16a、複数の回路配線部17及びセンサ側支持部18aが設けられている。なお、歪検出素子としては、圧電材料を用いたもの等が他に挙げられる。
一方、ベース基板10のセンサ基板に対向する面には、図4に示すように、複数のベース側電気接続部16b、ベース側支持部18b及び複数の外部接続電極19が設けられている。
【0027】
ストッパ20は、センサ側支持部18aよりもセンサ基板11の内側に設けられている。ピエゾ抵抗素子15は、変位部12の周縁部に沿って配置され、複数のセンサ側電気接続部16aは、複数のピエゾ抵抗素子15よりも更にセンサ基板11の周縁側に設けられている。
【0028】
センサ側支持部18aは、複数のセンサ側電気接続部16aと複数のピエゾ抵抗素子15の間に少なくとも一部が複数のピエゾ抵抗素子15と平面的に重複するように配置され、受圧部13を中心にして平面円形の筒状体に設けられている。このように配置することにより、センサ感度を向上させるとともに安定させることができる。
【0029】
受圧部13で受けた荷重により変位部12が変位すると、その変位量に応じて複数のピエゾ抵抗素子15の電気抵抗が変化し、この複数のピエゾ抵抗素子15によって構成されたブリッジ回路の中点電位が変化し、この中点電位がセンサ出力として出力される。複数のピエゾ抵抗素子15には複数の回路配線部17がそれぞれ接続されており、この複数の回路配線部17を介して複数のセンサ側電気接続部16aと電気的に接続されている。複数のピエゾ抵抗素子15と複数の回路配線部17は、絶縁膜によって覆われている。複数のセンサ側電気接続部16aは、複数のベース側電気接続部16bを介して、複数の外部接続電極19に電気的に接続されており、この複数の外部接続電極19を介して外部に出力される。
【0030】
第一の実施形態では、図3に示すように、ストッパ20は平面円形の柱状体であるが、この変形は可能である。例えば、平面矩形の柱状体も可能である。
【0031】
第一の実施形態では、図3、図4に示すように、センサ側支持部18a及びベース側支持部18bは平面円形の筒状体であるが、この変形は可能である。例えば、平面矩形の筒状体、平面矩形の筒状体を複数に分割したもの、平面円形の筒状体を複数に分割したもの、複数の平面円形の柱状体、複数の平面矩形の柱状体も可能である。
【0032】
第一の実施形態では、図3、図4に示すように、複数のセンサ側電気接続部16a及び複数のベース側電気接続部16bは、平面矩形の柱状体であり平面矩形状をなすセンサ基板11の裏面11bの4つの角部に及び4つのセンサ側電気接続部16aに対向するベース基板10の4つの位置に配置されている。この複数のセンサ側電気接続部16a及び複数のベース側電気接続部16bは、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、白金、タンタル、鉄、金いずれかまたは2つ以上を含む合金からなる単層膜または積層膜であることが好ましい。
【0033】
第一の実施形態では、図3、図4に示すように、複数のセンサ側電気接続部16a及び複数のベース側電気接続部16bは平面矩形の柱状体であるが、この変形は可能である。例えば、平面円形の柱状体も可能である。
【0034】
センサ側支持部18a、ベース側支持部18b及びストッパ20は、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、白金、タンタル、鉄、銅いずれかまたは2つ以上を含む合金またはシリコン、ガラス、酸化シリコン、窒化シリコン、絶縁セラミックからなる単層膜または積層膜であることが好ましい。
【0035】
上述のような態様であれば、複数のセンサ側電気接続部16a、複数のベース側電気接続部16b、センサ側支持部18a、ベース側支持部18b及びストッパ20は、例えば、半導体プロセス技術であるスパッタ技術、酸化技術または微細加工技術等の組み合わせにより形成できる。
また、複数のセンサ側電気接続部16a、センサ側支持部18a及びストッパ20の材質を同じに選べば、同じ工程により形成でき経済的である。
また、複数のベース側電気接続部16b及びベース側支持部18bの材質を同じに選べば、同じ工程により形成でき経済的である。
【0036】
第一の実施形態では、フォースセンサ1は、複数のセンサ側電気接続部16a及びセンサ側支持部18aと複数のベース側電気接続部16b及びベース側支持部18bをそれぞれ対向させ、受圧部13を介してセンサ基板11からベース基板10に高荷重をかけることで、センサ基板11とベース基板10とを接合することにより製作される。
【0037】
センサ基板11に高荷重がかかると、複数のセンサ側電気接続部16a及びセンサ側支持部18aは、それぞれ複数のベース側電気接続部16b及びベース側支持部18bに圧着されて少なくとも一部が複数のベース側電気接続部16b及びベース側支持部18b内に埋め込まれ接合される。
【0038】
図1に示すように、センサ側支持部18aとベース側支持部18bとは、圧着により接合されて支持部18を形成する。よって、この接合されたセンサ側支持部18aとベース側支持部18bとを、以下では支持部18と記述する。
【0039】
第一の実施形態では、支持部18は、センサ側支持部18aとベース側支持部18bとの接合により形成されるが、その変形は可能である。センサ基板11のみにセンサ側支持部18aを設けるか、またはベース基板10のみにベース側支持部18bを設けて、センサ基板11とベース基板10とを圧着により接合する変形例も可能である。
【0040】
第一の実施形態によれば、支持部18よりもセンサ基板11の内側に位置してセンサ基板11の裏面11bに設けられたストッパ20が変位部12の変位量を制限し、支持部18に機械的強度を越える応力が生じることを防止するので、支持部18は破壊することはない。
【0041】
第一の実施形態では、ストッパ20はセンサ基板11の裏面11bに設けられたが、この変形は可能である。例えば、ベース側支持部18bよりもベース基板10の内側に位置してベース基板10のセンサ基板11に対向する面にストッパ20を設けることは可能である。この第一の変形例を図5に示した。なお、図5は、図2のI−I線に沿って切断した断面に相当するものである。
【0042】
第一の実施形態では、ストッパ20はセンサ基板11の裏面11bに設けられたが、この変形は可能である。例えば、センサ側支持部18aよりもセンサ基板11の内側に位置してセンサ基板11の裏面11bとベース側支持部18bよりもベース基板10の内側に位置してベース基板10のセンサ基板11に対向する面とのそれぞれに、ストッパ20を設けることは可能である。この第二の変形例を図6に示した。なお、図6は、図2のI−I線に沿って切断した断面に相当するものである。
【0043】
センサ基板11は受圧部13が位置する箇所に最大の撓みを持つので、ストッパ20は、センサ基板11の前記箇所に位置する裏面11bに、及びベース基板10のセンサ基板11に対向する面の前記箇所に対応する位置に設けることが好ましい。このような態様であれば、ストッパ20は、確実に変位部12の変位量を制限することができる。
【0044】
非特許文献1によると、周辺が固定された円板の中心に集中荷重が加えられた時の最大撓みδmは、その平面中心に発生し、式(1)によって表わせる。
δm=12(1−ν)Pa/16πEh (1)
ただし、ν=円板のポアソン比、P=円板の中心に加えられた集中荷重、a=円板の半径、E=円板のヤング率、h=円板の厚さ
である。
【0045】
式(1)を変形して、
P=16δmπEh/12(1−ν)a (2)
を得る。
【0046】
以下の計算では、計算が複雑になることを避けるために電気接続部16に加重される応力を無視して、支持部18に加重される応力のみを考慮して計算したが、本発明の有効性を証明する目的としては問題ないと考える。
【0047】
図1、図3及び図4に、第一の実施形態であるフォースセンサ1の図2のI−I線に沿って切断した断面略図、センサ基板11の裏面11bの平面略図及びベース基板10のセンサ基板11に対向する面の平面略図を示す。センサ基板11の表面11aに受圧部13が設けられ、センサ基板11の裏面11bにセンサ側支持部18a及びストッパ20が設けられている。センサ基板11、受圧部13、センサ側支持部18a及びストッパ20は平面中心を一致させている。また、フォースセンサ1はセンサ側支持部18aとベース側支持部18bが接合されて製作されている。上述の円板の半径aはセンサ基板11の中心からセンサ側支持部18aの内縁までの距離である内径に当たる。また、上述の円板の厚さhはセンサ基板11の厚さに当る。
【0048】
支持部18の外径をbとすると、支持部18に加重される応力σは、式(2)を支持部18の面積で割って、
σ=16δmπEh/(12(1−ν)aπ(b−a))
=16δmEh/(12(1−ν)a(b−a)) (3)
と求まる。
【0049】
支持部18の幅をwとすると、支持部18に加重される応力σは、式(3)から、
σ=16δmEh/(12(1−ν)a((a+w)−a)) (4)
と求まる。
【0050】
受圧部13に加えられた荷重は、センサ基板11を支える支持部18に加重される。第一の実施形態では、支持部18の幅wは50μm、センサ基板11の厚さhは200μmである。また、センサ基板11はシリコンであるので、E=1.3×1011N/m、ν=0.28である。図7に、式(4)に前記の値を代入して計算した、支持部18に加重される応力σとセンサ基板11の最大撓みδmの関係を示した。
【0051】
以下の表1に非特許文献2に記載された破壊する直前の最大の引張り応力である引張り強さを示した。引張り強さは機械的強度とも言われ、本発明では機械的強度と記述した。各部材は、その機械的強度が加重されると破壊する。今回の場合は、支持部18には圧縮応力が加重されるが、機械的強度と同じ値の圧縮応力が加重されると、支持部18が破壊すると仮定した。
【表1】

【0052】
図7と表1を見ると、第一の実施形態では支持部18が金を含む構成であるので、表1より最小の機械的強度は2.0×10N/mであり、これに相当する最大撓みδmは、支持部18の内径aが150μmであるので、図7より0.05μmに相当する。よって、0.05μm以上にセンサ基板11が撓むと、支持部18には機械的強度以上の応力が加重され、支持部18は破壊する。この破壊を防ぐには、センサ基板11を0.05μm以上に撓ませなければよい。
【0053】
図7を見ると、支持部18の内径に当たる円板の半径aが小さくなると、即ち、フォースセンサ1が小型化され、支持部18の内径が小さくなると、最大撓みδmが同じ時、支持部18にはより大きな応力が加重されていることが分かる。よって、支持部18の内径を小さくする場合には、支持部18に生じる応力が機械的強度以下になるように、最大撓みδmも小さくする必要がある。最大撓みδmはセンサ基板11とベース基板10とを隔てる距離、即ち、支持部18の厚さであるので、支持部18の厚さを薄くする必要がある。
【0054】
センサ基板11を0.05μm以上に撓ませないためには、支持部18の厚さは0.05μm以下に、及びセンサ側電気接続部16aとベース側電気接続部16bとの厚みの和を0.05μm以下にすることが必要である。
【0055】
支持部18の厚さを0.05μm以下にできればストッパ20を設ける必要はない。ところが、支持部18は二つの金層を圧着する金属接合により形成するが、圧着による金属接合を安定的に行なうためには、それぞれの金層の厚みは0.1μm以上が必要である。よって、前記金属接合による手法では、センサ基板11とベース基板10とを隔てる距離を0.05μm以下にして、センサ基板11の最大撓みδmを0.05μm以下にすることはできなかった。
【0056】
一方、第一の実施形態では、センサ基板11とベース基板10とを隔てる距離は0.22μmに設定されているので、その厚さが0.17μm以上に設定したストッパ20をセンサ基板11の中心に位置して裏面11bに設けることにより、センサ基板11の最大撓みδmを0.05μm以下にすることを可能にした。
【0057】
本発明によれば、ストッパ20の厚みを調整することにより支持部18に機械的強度以上の応力が加重されることを防止できるので、フォースセンサの更なる小型化を可能とした。
【0058】
図8を見ると、センサ基板11の厚さに当る円板の厚さhを薄くすると、最大撓みδmが同じ時、支持部18により小さい応力が加重されることが分かる。よって、フォースセンサの小型化を進めるために支持部18の内径を小さくする時に、支持部18に生じる応力を機械的強度以下にすることは、センサ基板11の厚さを薄くすることによっても可能である。なお、図8は、式(4)に、支持部18の内径a=150μm、支持部18の幅w=50μm、E=1.3×1011N/m、ν=0.28を代入して計算した。
【0059】
よって、センサ基板11の厚さを調整することにより支持部18に機械的強度以上の応力が加重されることを防止できるので、センサ基板11の厚さを調整する方法によっても、フォースセンサの小型化を進めることは可能である。
【0060】
ところが、第一の実施形態では、センサ基板11の厚さは200μmに設定している。センサ基板11の厚さを薄くすると製造工程の作業時に割れ等の破損が発生し易くなるので、センサ基板11の厚さを200μm以下にすることは難しい。
【0061】
また、センサ基板11の厚さを薄くすると、受圧部13が受ける荷重によりセンサ基板11内に生じる応力が大きくなり機械的強度を越える危険性が増す。よって、センサ基板11の厚さは、検知する荷重範囲を考慮して適切に決める必要がある。
【0062】
支持部18の材質を機械的強度が高いものに変更する場合を考える。例えば、タンタルを選ぶと、表1より機械的強度は8.0×10N/mである。第一の実施形態の支持部18の厚さは0.22μmに設定されており、この値にセンサ基板11が撓むと、図7より支持部18の荷重応力は約8.0×10N/mである。よって、第一の実施形態では、支持部18の材質をタンタルに選べば、ストッパ20を設けなくても、支持部18はほぼ破壊することはない。
【0063】
ところが、支持部18の材質がタンタルの場合でも、フォースセンサ1を小型化するために、図7でa=125μmに選択した場合には、タンタルの機械的強度8.0×10N/mに相当する最大撓みδmは約0.125μmであり、その厚さが0.095μm以上であるストッパ20が必要になる。よって、支持部18の材質を機械的強度の高いものに変更する場合でも、フォースセンサ1の小型化にストッパ20は有効である。
【0064】
支持部18の荷重応力を小さくするために、センサ基板11に接する支持部18の面積を大きくすることが考えられる。外径を大きくすることは小型化に反するので、内径を小さくして、前記面積を大きくすることを考える。
【0065】
図9に、第一の実施形態である支持部18の外径200μmを一定にして、支持部18の内径を小さくする条件で、式(3)を使って計算した支持部18に加重される応力σと支持部18の内径aの関係を示した。なお、図9は、式(3)に、支持部18の外径b=200μm、センサ基板11の厚さh=200μm、E=1.3×1011N/m、ν=0.28、δmは0.22μmを代入して計算した。
【0066】
式(3)を支持部18の内径aで微分しdσ/da=0の条件より、支持部18に加重される応力σの支持部18の内径aに対する最小値を計算する。その結果、支持部18の内径aがb/20.5で支持部18に加重される応力σが最小になることが分かる。但し、bは支持部18の外径である。この値を、第一の実施形態の数値を使って計算すると、141μmとなる。これは、図9によっても確認できる。
【0067】
図9を見て分かるように、支持部18に加重される応力σが最小になるように支持部18の内径を設定しても、支持部18に加重される応力σは金の機械的強度2.0×10N/mを越えており、前記内径の最適化のみでは支持部18の破壊は避けられず、ストッパ20が必要であることが分かる。
【0068】
上述の計算より、支持部18の内径は、b/20.5±20μmに設定することが好ましい。但し、bは支持部18の外径である。
【符号の説明】
【0069】
1 フォースセンサ
10 ベース基板
11 センサ基板
11a 表面
11b 裏面
12 変位部
13 受圧部
15 ピエゾ抵抗素子
16 電気接続部
16a センサ側電気接続部
16b ベース側電気接続部
17 回路配線部
18 支持部
18a センサ側支持部
18b ベース側支持部
19 外部接続電極
20 ストッパ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの荷重を受ける受圧部と、
前記外部からの荷重により変位量が変化する変位部と、
前記変位量に応じて電気抵抗が変化する歪検出素子と、
を備えたセンサ基板と、
前記センサ基板と接合されたベース基板と、
を有し、
前記センサ基板と前記ベース基板とは前記変位部が変位自在となるよう支持する支持部により接合してなり、
前記センサ基板は、前記ベース基板に対向する一方の面に前記歪検出素子及び前記支持部よりも基板周縁に位置して前記歪検出素子と電気的に接続したセンサ側電気接続部を有し、他方の面に前記受圧部を有しており、
前記ベース基板は、前記支持部よりも基板周縁に位置して前記センサ側電気接続部に接合するベース側電気接続部を有しており、
前記変位部の変位量を制限するようにストッパが設けられたことを特徴とするフォースセンサ。
【請求項2】
前記センサ基板が、シリコンからなることを特徴とする請求項1に記載のフォースセンサ。
【請求項3】
前記歪検出素子が、ピエゾ抵抗素子であることを特徴とする請求項2に記載のフォースセンサ。
【請求項4】
前記ストッパが、前記支持部よりも基板内側に位置して前記ベース基板に対向する前記センサ基板の一方の面に設けられたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフォースセンサ。
【請求項5】
前記ストッパが、前記支持部よりも基板内側に位置して前記センサ基板に対向する前記ベース基板の一方の面に設けられたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフォースセンサ。
【請求項6】
前記ストッパが、前記支持部よりも基板内側に位置して前記ベース基板に対向する前記センサ基板の一方の面に及び前記支持部よりも基板内側に位置して前記センサ基板に対向する前記ベース基板の一方の面に、それぞれ設けられたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフォースセンサ。
【請求項7】
前記ストッパが、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、白金、タンタル、鉄、金いずれかの金属または2つ以上からなる合金またはシリコン、ガラス、酸化シリコン、窒化シリコン、絶縁セラミックからなる単層膜または積層膜であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のフォースセンサ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−68181(P2012−68181A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214703(P2010−214703)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】