説明

フラットパネルディスプレイ製造過程において基板上に銅層を作る改良方法

【課題】基板上に銅層を形成する場合において、低価格で環境にやさしい製造法を提供する。
【解決手段】フラットパネルディスプレイ製造過程において基板上に銅層を作る方法および装置であって、銅を基板上に無電極的に堆積し、銅相互接続層を形成する。銅源としてのCuSO5HO、錯化剤としての酒石酸カリウムナトリウム4HOまたはクエン酸三ナトリウム、還元剤としてのグリオキシル酸塩、グリオキシル酸またはリン酸ナトリウム、安定剤としての有機硫黄化合物、およびpH調節剤を含む銅溶液を使用し、基板上に銅相互接続層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2007年4月4日に出願された米国仮出願第10/910,091号の利益を主張し、これは参照によって全ての目的でそのまま本明細書に組入れられる。
背景
技術分野
この発明は一般に、TFT−LCDフラットパネルディスプレイ製造の分野に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は基板上に銅相互接続層を堆積させる方法に関する。
【0003】
発明の背景
トランジスタの作製に種々のエッチング過程が使用されている。しかしながら、銅のドライエッチングは有効ではない。なぜならば、大抵の銅化学種は揮発性が無く、および/またはエッチングガスおよび副生成物は大抵の場合、腐食性だからである。半導体産業においてダマシン法が開発されており、ビアホール(via−hole)を最初に作り、次にドライ法(スパッタリング)とウェット法(電気めっき)の組合せによって、ホールを銅で充填する。フラットパネルディスプレイ産業において、銅の使用は、半導体産業においてと同様に信号遅延を減らすと考えられているが、ダマシン法は適当と考えられていない。なぜならば、このような方法は、現行の配線方法よりもはるかに多くの工程を要し、大きな基板(例えば、G5 TFT−LCDパネルについては1.5m×1.8m)には必ずしも有効ではないからである。このような方法の使用は技術的ハードルを上げ、製造コストを増大させるであろうと予想される。他方で、銅のウェットエッチングも検討されている。しかしながら、銅相互接続の形状を制御することはさらに難しい。なぜならば、ウェットエッチングは異方性ではなく等方性だからである。
【0004】
無電極銅めっきは、PCB(プリント回路板)産業において長い歴史をもっており、めっき技術それ自体は既に成熟している。めっきは、共形の(conformal)、高品質な銅を、比較的低コストかつ低いプロセス温度で与える。銅相互接続のために、多くの銅溶液が商業的に利用可能である。最もありふれた銅溶液は、還元剤としてのホルマリン、および/または錯化剤としてのエチレンジアミン四酢酸(または「EDTA」)を含む。環境、健康および安全(EHS)基準で、ホルマリンは使用を最小化すべき製品である。なぜならばそれは人類に対して発癌性がある製品として知られているからである。それをより効果的にするために、このような製品を含む溶液を加熱して銅のめっき速度を向上することが推奨されている。しかしながら、それは既に室温で高い揮発性があり、それを加熱した場合は人類に対するリスクを増大させる。
【0005】
EDTAも、異なる理由で問題のある製品である。EDTAは、廃棄物処理デバイスで扱うのが困難な、安定な錯体を形成する。このような安定な錯体を分解するには大量の酸化剤の使用を要するので、この製品の使用は制限される。しかしながら、TFT−LCD製造のためのEDTAの使用は、極めて大量の酸化剤を要するであろう。このことは、この方法を極めて高価にするであろう。
【0006】
これら商業的に利用可能な銅溶液は、TFT−LCD用途に対して満足のいくものではない。なぜならば、得られる相互接続は乏しい厚さ均一性、ベース層に対する乏しい付着性、高い表面粗さおよび/またはめっきの再現性の欠如を有するからである。
【0007】
結果として、既存のものよりも環境に優しく、同様の用途で現在使用されている溶液の欠点を持たない、TFT−LCD銅相互接続のための銅めっき溶液に対する需要がある。
【0008】
簡単な概要
フラットパネルTFT−LCD製造環境において銅めっき基板を作る新規な方法をここに開示する。
【0009】
実施態様において、フラットパネルディスプレイデバイスの製造に使用するための銅めっき基板を作る方法であって、この方法は、基板を提供し、基板の一部に触媒層を提供することを含む。次にこの部分を銅溶液に暴露することによって、基板の少なくとも触媒部分に銅層を無電極的に適用する。銅溶液は銅源としてのCUSO 5HO、酒石酸カリウムナトリウム 4HOまたはクエン酸三ナトリウム 2HOを含んでもよい錯化剤、グリオキシル酸塩、グリオキシル酸(glyoxilic acid)、またはリン酸ナトリウム HOを含んでもよい還元剤、安定剤としての有機硫黄化合物、および室温にて溶液のpHを9ないし12.5に調節する調節剤を含む。
【0010】
本発明の他の実施態様は、限定せずに以下の1つ以上の特徴を含んでもよい。
【0011】
−触媒層を、およそ15℃ないしおよそ35℃の温度、かつおよそ5秒ないしおよそ3分の時間でコンディショニングする。
【0012】
−およそ1〜3体積%の水素(窒素バランス)を含んだ雰囲気下で基板を加熱することによって銅めっき基板をアニールする。
【0013】
−酸化を制限するキャッピング層を銅層上に提供し、キャッピング層はNiPまたはNiXP層であり(XはW、Mo、またはReから選択される耐火金属)、キャッピング層はおよそ100nmからおよそ300nmの厚さである。
【0014】
−NHOH溶液中のAgNOの混合物にベース層を暴露することによってベース層上に薄い触媒銀層を提供することにより触媒層を提供し、混合物はおよそ0.01%ないしおよそ1%のNHOH溶液中におよそ0.1g/Lないしおよそ10g/LのAgNOを含み、より好ましくは混合物はおよそ0.1%ないしおよそ0.5%のNHOH溶液中におよそ1g/Lないしおよそ5g/LのAgNOを含む。
【0015】
−NHOH溶液中の(NH)4PdClの混合物にベース層を暴露することによってベース層上に薄い触媒パラジウム層を提供することにより触媒層を提供し、混合物はおよそ0.01%ないしおよそ1%のNHOH溶液中におよそ0.01g/Lないしおよそ1.0g/Lの(NH)4PdClを含み、より好ましくは混合物はおよそ0.01%ないしおよそ1%のNHOH溶液中におよそ0.3g/Lないしおよそ0.7g/Lの(NH)4PdClを含む。
【0016】
−銅めっき溶液はさらに、およそ0.1g/Lないしおよそ10g/LのNiSO 6HOを含む。
【0017】
−およそ0.01%ないしおよそ5%、より好ましくは0.1ないし2%のグリオキシル酸塩またはホスフィン酸塩を溶液中に含む混合物に触媒層を暴露することによって触媒層をコンディショニングする。
【0018】
−およそ0.1g/Lないしおよそ5g/L、より好ましくは0.5g/Lないし3g/Lのジメチルアミンボラン(DMAB)を溶液中に含む混合物に触媒層を暴露することによって触媒層をコンディショニングする。
【0019】
−銅溶液は、およそ2g/L〜15g/LのCuSO 5HOを含む。
【0020】
−銅溶液は、およそ40g/L〜100g/L、より好ましくはおよそ65g/L〜85g/Lの酒石酸カリウムナトリウム 4HOを含む。
【0021】
−銅溶液は、およそ10g/L〜100g/L、より好ましくはおよそ50g/L〜90g/Lのクエン酸三ナトリウム 2HOを含む。
【0022】
−銅溶液は、およそ0.01〜5体積%のグリオキシル酸塩またはグリオキシル酸を含む。
【0023】
−銅溶液は、およそ5g/Lないしおよそ50g/Lのホスフィン酸ナトリウムを含む。
【0024】
−安定剤は、およそ1ppbないしおよそ100ppbのチオ尿素を含む。
【0025】
−銅溶液を加熱せずに、実質的に室温、好ましくはおよそ15℃ないしおよそ35℃の温度で銅層を提供する。
【0026】
−ホルマリンもエチレンジアミン四酢酸(EDTA)も含まない銅溶液によって銅層を提供する。
【0027】
上記のことは、本発明の特徴および技術的な利点をむしろ広く概説しており、以下の発明の詳細な説明がより良く理解されるであろう。本発明の請求項の主題を形成する本発明のさらなる特徴および利点は、この後に記載されるであろう。開示する概念および具体的な実施態様は、本発明と同様の目的を実行する他の構成を修飾または設計する根拠として容易に利用してもよいことが、当業者にはわかるであろう。このような均等の構成は、添付の請求項で明らかになるように本発明の精神および範囲から逸脱しないということも、当業者にわかるであろう。
【0028】
本発明の性質および目的のさらなる理解のために、添付の図と関連して、以下の詳細な説明を参照すべきである。ここで類似の要素は、同一または類似の参照番号を与えられる。
【0029】
好ましい実施態様の説明
一般に、本発明はフラットパネルディスプレイデバイスの製造に使用するための銅めっき基板を作る方法に関し、この方法は、基板を提供し、基板の一部に触媒層を提供することを含む。次に、この部分を銅溶液に暴露することによって、基板の少なくとも触媒部分に銅層を無電極的に適用する。銅溶液は銅源としてのCuSO 5HO、酒石酸カリウムナトリウム 4HOまたはクエン酸三ナトリウム 2HOを含んでもよい錯化剤、グリオキシル酸塩、グリオキシル酸、またはリン酸ナトリウム HOを含んでもよい還元剤、安定剤としての有機硫黄化合物、および室温にて溶液のpHを9〜12.5に調節する調節剤を含む。
【0030】
いくつかの実施態様においては、触媒化工程を15℃ないし35℃の範囲の室温で行う。或る実施態様においては、触媒に先立って、NHOH溶液中のAgNOを用いて、基板上に堆積されるベース層上(ベース層は、XがW、Mo、Reのような耐火金属であるNiPおよびNiXP層でもよい)に薄い触媒銀層を形成してもよい。例えば、0.01%ないし1%のNHOH溶液中の0.1g/Lないし10g/LのAgNOを使用する。より好ましくは、0.1%ないし0.5%のNHOH溶液中に1g/Lないし5g/LのAgNOを含む溶液を使用する。
【0031】
他の実施態様においては、NHOH溶液中の(NH)4PdClを使用して、NiPまたはNiXPベース層上に薄い触媒パラジウム層を実行してもよい。例えば、0.01%ないし1%のNHOH溶液中の0.1g/Lないし1.0g/Lの(NH)4PdCl、より好ましくは0.1%ないし0.5%のNHOH溶液中の0.3g/Lないし0.7g/Lの(NH)4PdClを使用する。各々の触媒化工程は、適当な時間、例えば5秒ないし3分間行ってもよい。次に、それをDIW(脱イオン水)ですすぐ。
【0032】
いくつかの実施態様においては、触媒層をコンディショニング溶液に暴露することによって触媒層をコンディショニングしてもよい。通常、この工程は15℃ないし35℃の範囲の室温、かつおよそ10秒ないしおよそ5分の時間で行う。或る実施態様によれば、0.01%ないし5%、より好ましくは0.1ないし2%のグリオキシル酸塩またはホスフィン酸塩を含む溶液を、コンディショニング溶液として使用してもよい。他の実施態様によれば、0.1g/Lないし5g/L、より好ましくは0.5g/Lないし3g/LのDMAB(ジメチルアミンボラン)を含む溶液を、コンディショニング溶液として使用してもよい。
【0033】
いくつかの実施態様において、銅めっき溶液は2g/Lないし15g/LのCuSO 5HOを銅源として含む。この溶液は酒石酸またはクエン酸化合物のような錯化剤を含んでいてもよい。例えば、溶液は40g/Lないし100g/Lの酒石酸カリウムナトリウム 4HO、または10g/Lないし100g/Lのクエン酸三ナトリウム 2HOを含んでもよい。
【0034】
いくつかの実施態様において、銅溶液はグリオキシル酸塩およびホスフィン酸塩化合物の群から選択した還元剤を含んでもよい。例えば、溶液は0.01%ないしおよそ5%のグリオキシル酸または5g/Lないしおよそ50g/Lのホスフィン酸ナトリウム HOを含んでもよい。
【0035】
いくつかの実施態様において、ニッケル化合物を溶液に加えて銅めっきを促進させてもよい。例えば、溶液は0.1g/L〜10g/LのNiSO 6HOを含んでいてもよい。溶液は、安定剤として働く有機硫黄化合物を含んでいてもよい。例えば、溶液はおよそ1ppbないし100ppbのチオ尿素を含んでいてもよい。溶液のpHを、NaOHまたはNHOHのようなアルカリ溶液を用いて9ないし12.5の範囲に調節してもよい。
【0036】
銅溶液を触媒層の少なくとも一部に適用する場合、電極無しで接触を通じてめっきが生じることにおいて、それは無電極的に適用されるであろう。通常、めっき時間は所望される厚さによって決定され、通常、その時間は1分ないし60分の範囲、より好ましくは3分ないし30分であり、数百ナノメートルの銅層を得る。次に基板をDIWですすぎ、余分な銅溶液を除去してもよい。
【0037】
いくつかの実施態様においては、銅層を適用した後に基板をアニールしてもよい。銅めっき工程を実行した後に、試料を例えば400℃で1時間、または150℃で3時間、通常の方法で加熱してもよい。1〜10%の水素(窒素バランス)を含む雰囲気下、大気圧または減圧にてアニールを行ってもよい。
【0038】
いくつかの実施態様において、キャッピング層を銅層の上に追加し、銅層のあらゆる化学反応(すなわち、酸化)を防いでもよい。或る実施態様によれば、10nmないし300nmのNiPまたはNiXP(XはW、Mo、Reのような耐火金属)を無電極的に銅層の上に適用してもよい。
【0039】
いくつかの実施態様において、銅めっき溶液を調製し、銅層を室温に近い温度条件(例えばおよそ15℃ないしおよそ35℃)のもとで提供してもよい。いくつかの実施態様において、銅めっき溶液は、既知の環境、健康および安全上の問題を有する既知の発がん性物質であるホルマリンを含まない。同様に、銅めっき溶液は、数多くの安全上の問題をもたらす錯化剤として一般に使用されるエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、その他の物質を含まない。
【0040】
ここで図1を参照して、フラットパネルディスプレイデバイスの製造に使用するための基板上に銅層を提供する、本発明による方法の実施態様をこの後に記載する。一般に、図1は、フラットパネル製造過程を示し、参照文字(a)〜(h)はこれらの工程についての或る経時的な順序を示す。
【0041】
或る実施態様において、NiPまたはNiPXのいずれかのベース層2が次に提供される基板1を提供する。典型的にベース層2よりも薄い触媒層3を、ベース層2の上部上に提供する。次に触媒層3を任意でコンディショニングしてもよい。次に銅層4を触媒層3の上部上に無電極的に堆積してもよい。典型的に、触媒層の少なくとも一部を銅めっき溶液に接触させることによって銅層を提供してもよい。当業者に既知の方法によれば、フォトレジスト5のパターンを銅層4の上に堆積し、トレンチのパターン7および8を描いてもよい。当業者に既知の方法によれば、トレンチ7および8の下に位置する層2、3、および4を、次にウェットエッチング溶液で除去する。次に層5および6の残りの部分を溶解し、2つの相互接続トラックのスタックを提供する(それぞれ、基板1上の2a、3a、4aおよび2b、3bおよび4b)。次に基板1およびトラックを熱源9によって熱処理してもよい。次に相互接続トラックを保護層10および11でキャップしてもよい。
【0042】

以下の非限定的な例を提供し、さらに本発明の実施態様を説明する。しかしながら、例は全ての包括を意図しておらず、ここに記載される本発明の範囲の限定を意図していない。
【0043】
例1
銅めっきに先立って、周知の無電極めっき方法を用いて50nmのNiP層をベース基板上にめっきした。次に試料をAgNO溶液(0.3%のNHOH中に1.5g/LのAgNO)に30秒間浸漬し、次に脱イオン水(DIW)ですすぎ、
a)CuSO 5HO:7.5g/L、
b)CKNaO 5HO:85g/L、
c)NiSO 6HO:1g/、
d)グリオキシル酸:0.8%wtおよび
e)チオ尿素:5ppb
を含む銅めっき溶液に浸す。
【0044】
NaOHで溶液のpHを12に調節し、溶液を室温に維持した。
【0045】
次に試料を、150℃で3時間、H/N雰囲気下(1%−99%)でアニールした。NiP層上にめっきされた銅層はベース基板に対して良好な付着性を示した。原子間力顕微鏡(AFM)によってなされた表面分析は、わずかな粗さしか示さなかった。オージェ電子分光(AES)によってなされた深さ方向分析は、銅層中にわずかな不純物しか示さなかった。
【0046】
例2
60g/LのCKNaO 5HOを含み、かつ11.5のpHを持つ銅溶液を使用し、他の全ての条件は例1と同じにした。NiP層上にめっきされた銅はベース基板に対して良好な付着性を示した。AFMによる表面分析はわずかな粗さしか示さなかった。AESによる深さ方向分析は銅層中にわずかな不純物しか示さなかった。
【0047】
例3
グリオキシル酸濃度の濃度が0.2%であることを除いて、銅めっき工程を例1中と同じ条件で実行した。NiP層上にめっきされた銅はベース基板に対して良好な付着性を示した。AFMによる表面分析はわずかな粗さしか示さなかった。AESによる深さ方向分析は銅層中にわずかな不純物しか示さなかった。還元剤濃度(グリオキシル酸)の減少は、低いめっき速度に帰着した。
【0048】
例4
溶液のpHを11.0に維持し、かつグリオキシル酸の濃度が1.8%であることを除いて、銅めっき工程を例1中と同じ条件で実行した(より高いグリオキシル酸の濃度は、めっき速度を速めた)。NiP層上にめっきされた銅はベース基板に対して良好な付着性を示した。AFMによる表面分析はわずかな粗さしか示さなかった。AESによる深さ方向分析は銅層中にわずかな不純物しか示さなかった。
【0049】
例5
銅めっき工程に先立ってNiPの代わりに50nmのNiXP(XはW、MoまたはRe)を基板上にめっきしたことを除いて、銅めっき工程を例1中と同じ条件で実行した。NiXP層上にめっきされた銅はベース基板に対して良好な付着性を示した。AFMによる表面分析はわずかな粗さしか示さなかった。AESによる深さ方向分析は銅層中にわずかな不純物しか示さなかった。
【0050】
例6
銅めっきに先立って、周知の無電極めっき方法を用いて50nmのNiP層をベース基板上にめっきした。次に試料を(NH)4PdCl溶液(0.2%のNHOH中に0.6g/Lの(NHPdCl)に2分間浸漬し、次に、
a)CuSO 5HO:6.0g/L、
b)Na 2HO:15.3g/L、
c)NiSO6HO:0.5g/Lおよび
d)NaHPOO:28.6g/L
を含む銅めっき溶液に浸した。
【0051】
BOおよびNaOHバッファーの追加により、溶液のpHを9.5に調節し、65℃に維持した。
【0052】
銅をNiP層上にめっきし、銅層は例1ないし5のような良好な特性を示した。
【0053】
以下の違いはあるが、例1と同様の条件で比較例を実行した。
【0054】
比較例1
NiPまたはNiXP層を先に堆積せずに、ベース基板上に銅を試験的にめっきした。乏しい均一性および/または基板に対する乏しい付着性しか持たない銅の堆積が観察された。
【0055】
比較例2
触媒化工程を実行せずに、ベース基板上に銅をめっきした。銅の堆積は観察されなかった。
【0056】
同様にして、AgNOおよび/またはNHOHの濃度が、それぞれAgNOについて0.1g/lないし10g/l、およびNH4OHについて0.01%ないし1%の範囲外で触媒化工程を実行した場合は、銅層堆積の再現性は満足いくものではなかった。
【0057】
比較例3
グリオキシル酸濃度を0.01%未満にして、ベース基板上に試験的に銅をめっきした。観察されるめっき速度が極めて低いか、銅の堆積が実行されないかのいずれかであった。逆に、グリオキシル酸濃度を5%超に増大させた場合、めっき速度は良好に維持されたが、溶液が不安定になり、すぐに分解した。
【0058】
比較例4
有機硫黄化合物を銅溶液中に加えなかった。基板上への銅堆積または均一性または銅層の付着性に目立った変化は無かった。しかしながら、銅溶液はより不安定になり、短い時間のうちに分解した。逆に、有機硫黄化合物の濃度が100ppbを超える場合、めっき速度は極めて遅くなり、適当な厚さの銅層は得られなかった。
【0059】
比較例5
銅溶液を35℃超の温度まで加熱した。めっき速度はいまだ十分に良好だったが、溶液は不安定になり、すぐに分解した。
【0060】
比較例6
KNaO 5HOの濃度を40g/L未満に維持したが、次に銅溶液は迅速に、ランダムに予期せぬ沈殿を生じた。逆に、製品の濃度を100g/L超に維持した場合、めっきの再現性は乏しくなった。
【0061】
比較例7
銅溶液のpHを9未満に調節した。銅めっきは観察されなかった。他方で、pHを12.5超に維持した場合、めっき速度は速くなったが、銅層の付着性が乏しく、より短い溶液の貯蔵時間しか観察されなかった。
【0062】
この発明の実施態様を示し、記載したが、この発明の精神または教示から逸脱することなく、それらの修飾が当業者によってなされるであろう。ここに記載した実施態様は例示的なだけで、限定ではない。本発明の範囲内で、組成および方法の多くの変形および修飾が可能である。したがって保護の範囲はここに記載した実施態様に限定されないが、以下の請求項によってのみ限定され、その範囲は請求項の内容の全ての均等物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、基板上に銅層を提供するための、本発明による1つの実施態様の模式図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に銅相互接続層を無電極的に堆積させることによって、フラットパネルディスプレイデバイスの製造に使用するための基板上に銅層を作る方法であって、
a)基板を提供し、
b)基板の少なくとも一部に触媒層を提供し、
c)触媒部分を銅溶液に暴露することによって、基板の触媒部分の少なくとも一部上に銅層を提供し、それによって銅めっき基板を形成する
ことを含み、銅溶液は、
1)銅源としてのCuSO 5HO、
2)酒石酸カリウムナトリウム 4HOまたはクエン酸三ナトリウム 2HOを含む錯化剤、
3)グリオキシル酸塩、グリオキシル酸またはリン酸ナトリウム HOから選択される少なくとも1つの要素を含む還元剤、
4)有機硫黄化合物を含む安定剤および
5)銅溶液のpHを室温で9ないし12.5に調節するpH調節剤
を含む方法。
【請求項2】
さらに、銅層の提供に先立って、触媒層をコンディショニングすることを含み、コンディショニングをおよそ15℃ないしおよそ35℃の温度で行い、コンディショニングをおよそ5秒〜3分の時間にわたって行う請求項1の方法。
【請求項3】
さらに、銅めっき基板をアニールすることを含み、アニールは、およそ1体積%ないし3体積%の水素(窒素バランス)を含む雰囲気下で基板を加熱することを含む請求項1の方法。
【請求項4】
さらに、銅層上に酸化を制限するキャッピング層を提供することを含み、
a)キャッピング層はNiPまたはNiXP層であって、XはW、Mo、およびReからなる群より選択される耐火金属であり、
b)キャッピング層はおよそ10nmないしおよそ300nmの厚さである
請求項1の方法。
【請求項5】
さらに、触媒層の提供に先立って基板上にベース層を提供することを含み、ベース層はNiPまたはNiXP層を含み、XはW、Mo、およびReからなる群より選択される耐火金属である請求項1の方法。
【請求項6】
触媒層の提供が、ベース層をNHOH溶液中のAgNOの混合物に暴露することによってベース層上に薄い触媒銀層を提供することを含み、混合物が、およそ0.01%ないしおよそ1%のNHOH溶液中におよそ0.1g/Lないしおよそ10g/LのAgNOを含む請求項5の方法。
【請求項7】
触媒層の提供が、ベース層をNHOH溶液中の(NH)4PdClの混合物に暴露することによってベース層上に薄い触媒パラジウム層を提供することを含み、混合物が、およそ0.01%ないしおよそ1%のNHOH溶液中におよそ0.1g/Lないしおよそ1.0g/Lの(NH)4PdClを含む請求項5の方法。
【請求項8】
さらに銅めっき溶液がおよそ0.1g/L〜10g/LのNiSO 6HOを含む請求項1の方法。
【請求項9】
さらに、およそ0.01%〜5%のグリオキシル酸塩またはホスフィン酸塩を溶液中に含むコンディショニング混合物に触媒層を暴露することによって触媒層をコンディショニングすることを含む、請求項2の方法。
【請求項10】
さらに、およそ0.1g/L〜5g/Lのジメチルアミンボラン(DMAB)を溶液中に含むコンディショニング混合物に触媒層を暴露することによって触媒層をコンディショニングすることを含む、請求項2の方法。
【請求項11】
銅溶液がおよそ2g/L〜15g/LのCuSO 5HOを含む請求項1の方法。
【請求項12】
銅溶液がおよそ40g/L〜100g/Lの酒石酸カリウムナトリウム 4HOを含む請求項1の方法。
【請求項13】
銅溶液がおよそ65g/L〜85g/Lの酒石酸カリウムナトリウム 4HOを含む請求項12の方法。
【請求項14】
銅溶液がおよそ10g/L〜100g/Lのクエン酸三ナトリウム 2HOを含む請求項1の方法。
【請求項15】
銅溶液がおよそ50g/L〜90g/Lのクエン酸三ナトリウム 2HOを含む請求項14の方法。
【請求項16】
銅溶液がおよそ0.01〜5体積%のグリオキシル酸塩またはグリオキシル酸を含む請求項1の方法。
【請求項17】
銅溶液がおよそ5g/L〜50g/Lのホスフィン酸ナトリウムを含む請求項1の方法。
【請求項18】
安定剤がおよそ1ppbないしおよそ100ppbのチオ尿素を含む請求項1の方法。
【請求項19】
さらに、銅溶液を加熱することなく銅層を室温で提供することを含む、請求項1の方法。
【請求項20】
さらに、ホルマリンもエチレンジアミン四酢酸(EDTA)も含まない銅溶液によって銅層を提供することを含む、請求項1の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−9097(P2009−9097A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−96455(P2008−96455)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(591036572)レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード (438)
【出願人】(592041786)インダストリアル テクノロジー リサーチ インスティテュート (10)
【Fターム(参考)】