説明

フレキシブルプリント配線板用基材入り接着シート及びその製造方法、多層フレキシブルプリント配線板、フレックスリジッドプリント配線板

【課題】多層フレキシブルプリント配線板やフレックスリジッドプリント配線板の加工時に樹脂組成物の粉落ちが無く、高い剛性を有し、成形性に優れ、加工が容易なフレキシブルプリント配線板用基材入り接着シートを提供する。
【解決手段】ポリイミド樹脂からなるフレキシブルプリント配線板5の接合に用いられる接着シート7に関する。前記接着シート7は、織布又は不織布である基材と樹脂組成物とからなる。前記樹脂組成物は、(a)一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、(b)前記(a)成分であるエポキシ樹脂と共通の溶媒に分散可能な数平均分子量が2000以上10000未満のポリカルボジイミド樹脂と、(c)イミダゾール系硬化剤と、を必須成分として含有する。前記(a)成分と(b)成分の比率は質量比で80:20〜20:80の範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント配線板の接合に用いられる接着シート及びその製造方法に関するものであり、また、前記接着シートを用いて得られる多層フレキシブルプリント配線板及びフレックスリジッドプリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の多層フレキシブルプリント配線板は、例えば、次のようにして製造されている。すなわち、両面銅張りしたポリイミド樹脂からなるフレキシブル基板材料の両側の銅箔を各々パターンエッチングして内層回路を形成した後、この両側の内層回路の形成面全体に、ポリイミド樹脂からなるカバーレイをそれぞれ圧着することによって、フレキシブルプリント配線板を作製する。そして、このフレキシブルプリント配線板の両面に片面銅張りした外層フレキシブル基板を接着剤を介在させて接合し、さらに加圧加工によって圧着することによって、電子部品を搭載するための多層部が形成されて、多層フレキシブルプリント配線板を得ることができる。
【0003】
一方、フレックスリジッドプリント配線板は、例えば、次のようにして製造されている。すなわち、基材に樹脂を含浸させて得られるプリプレグを積層することによって、リジッド基板材料を作製する。そして、このリジッド基板材料を、上記と同様にして作製されるフレキシブルプリント配線板に接着剤を介在させて接合すると共に積層することによって、フレックスリジッドプリント配線板を得ることができる。
【0004】
ここで、上記のようにポリイミド樹脂からなるフレキシブルプリント配線板の接合に用いられる接着剤としては、通常、エポキシ樹脂を変性してフィルム化したもの(例えば、特許文献1参照。)や、エポキシ樹脂を基材に含浸させて乾燥させたものが利用されている。
【特許文献1】特許第3506413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなフィルム形態の接着剤(ボンディングシート)や、エポキシ樹脂を基材に含浸させて乾燥させた接着剤については、各々に問題点がある。すなわち、前者のものについては、剛性が無いという問題点があり、一方、後者のものについては、打ち抜きやルーター加工時に半硬化状態のエポキシ樹脂が粉落ちしやすく、ビルドアップ時に粉がヒンジのカバーレイ部分等に飛散し、ダコン(打痕)の原因となるという問題点がある。
【0006】
このため、粉落ちの少ない熱可塑性ポリイミド等の接着剤を使用することも考えられるが、多層フレキシブルプリント配線板では、剛性が低くなり、精度の高い加工が困難になると共に、高い成形温度が必要となり、製造工程が制限されることとなる。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、多層フレキシブルプリント配線板やフレックスリジッドプリント配線板の加工時に樹脂組成物の粉落ちが無く、高い剛性を有し、成形性に優れ、加工が容易なフレキシブルプリント配線板用基材入り接着シート及びその製造方法、また、折り曲げても粉落ちが無く、高い剛性を有する多層フレキシブルプリント配線板及びフレックスリジッドプリント配線板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係るフレキシブルプリント配線板用基材入り接着シートは、ポリイミド樹脂からなるフレキシブルプリント配線板の接合に用いられる接着シートであって、前記接着シートは、織布又は不織布である基材と樹脂組成物とからなり、前記樹脂組成物は、
(a)一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、
(b)前記(a)成分であるエポキシ樹脂と共通の溶媒に分散可能な数平均分子量が2000以上10000未満のポリカルボジイミド樹脂と、
(c)イミダゾール系硬化剤と、
を必須成分として含有すると共に、前記(a)成分と(b)成分の比率は質量比で80:20〜20:80の範囲であることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、織布として、ガラスクロスを用いて成ることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1において、不織布として、ガラス不織布又は有機繊維を用いて成ることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項4に係る多層フレキシブルプリント配線板1は、請求項1乃至3のいずれかに記載のフレキシブルプリント配線板用基材入り接着シート7を用いてポリイミド樹脂からなるフレキシブルプリント配線板5に外層フレキシブル基板6を接合して成ることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項5に係るフレックスリジッドプリント配線板21は、請求項1乃至3のいずれかに記載のフレキシブルプリント配線板用基材入り接着シート27を用いてポリイミド樹脂からなるフレキシブルプリント配線板25に外層積層板26を接合して成ることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の請求項6に係るフレキシブルプリント配線板用基材入り接着シートの製造方法は、ポリイミド樹脂からなるフレキシブルプリント配線板の接合に用いられる接着シートの製造方法であって、
(a)一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、
(b)前記(a)成分であるエポキシ樹脂と共通の溶媒に分散可能な数平均分子量が2000以上10000未満のポリカルボジイミド樹脂と、
(c)イミダゾール系硬化剤と、
を必須成分として含有する樹脂組成物を前記溶媒に分散させることによってワニスを調製し、前記ワニスを織布又は不織布である基材に含浸させた後に乾燥させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に係るフレキシブルプリント配線板用基材入り接着シートによれば、粉落ちを防止することができ、高い剛性を得ることができると共に、ボイドの発生を防止して成形性を高く得ることができるものである。
【0015】
請求項2の発明によれば、剛性をさらに高めることができるものである。
【0016】
請求項3の発明によれば、剛性をさらに高めることができるものである。
【0017】
本発明の請求項4に係る多層フレキシブルプリント配線板によれば、折り曲げても粉落ちが発生しにくい上に、高い剛性を得ることができるものである。
【0018】
本発明の請求項5に係るフレックスリジッドプリント配線板によれば、フレキ部で折り曲げても粉落ちが発生しにくい上に、高い剛性を得ることができるものである。
【0019】
本発明の請求項6に係るフレキシブルプリント配線板用基材入り接着シートの製造方法によれば、粉落ちを防止することができ、高い剛性及び成形性を有する接着シートを得ることができるものである。
【0020】
しかも、本発明によれば、多層フレキシブルプリント配線板及びフレックスリジッドプリント配線板はいずれも高いガラス転移点を有するものとなり、また、吸水率も低くなって信頼性を高く得ることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
本発明に係るフレキシブルプリント配線板用基材入り接着シート(以下単に「接着シート」ともいう。)は、ポリイミド樹脂からなるフレキシブルプリント配線板の接合に用いられるものである。ここで、ポリイミド樹脂からなるフレキシブルプリント配線板とは、可撓性及び絶縁性のあるポリイミドフィルムの表面に回路パターンを形成した配線板を意味する。
【0023】
そして、前記接着シートは、織布又は不織布である基材と樹脂組成物とからなり、前記樹脂組成物は、以下に詳細に説明する(a)〜(c)成分を必須成分として含有する。
【0024】
本発明において(a)成分としては、一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を用いる。このようなエポキシ樹脂としては、従来から公知のものを用いることができ、積層板に使用されるものであれば、特に限定されるものではない。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、多官能型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、リン変性エポキシ樹脂等を挙げることができ、これらのエポキシ樹脂はそれぞれ単独で使用したり、あるいは混合して使用したりすることができる。
【0025】
また、エポキシ樹脂のエポキシ基数としては、一分子中に2個以上であれば、特に制限されるものではないが、製造を考慮すれば、エポキシ基が5個以下のエポキシ樹脂を用いるのが良い。なお、前記エポキシ基数は、エポキシ樹脂が分子量分布を有するため、1分子当たりのエポキシ基の平均を意味する。
【0026】
本発明において(b)成分としては、粒子形状のポリカルボジイミド樹脂を用いる。このようなポリカルボジイミド樹脂としては、例えば、特開昭51−61599号公報に開示されている方法、L.M.Alberinらの方法(J.Appl.Polym.Sci.,21,1999(1977))、あるいは特開平2−292316号公報等に開示されている方法等によって製造することができるもの、すなわち、有機ポリイソシアネートからイソシアネートのカルボジイミド化を促進する触媒の存在下に製造することができるものの1種又はそれらの混合物を挙げることができる。
【0027】
上記方法において、ポリカルボジイミド樹脂の合成原料である有機ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートやこれらの混合物を使用することができ、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−と2,6−トリレンジイソシアネートの混合物、粗トリレンジイソシアネート、粗メチレンジフェニルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメチレントリイソシアネート、キシレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、3,3’−ジメトキシ−ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等あるいはこれらの混合物を例示することができる。
【0028】
特に、本発明で使用するポリカルボジイミド樹脂の合成原料である前記有機ポリイソシアネートは、耐熱性や反応性の点から、芳香族ポリイソシアネートであることが好ましい。この「芳香族ポリイソシアネート」とは、ベンゼン環に直結しているイソシアネートが一分子中に2個以上存在するイソシアネートを意味する。特に材料の汎用性が高いという理由から、好ましく使用される芳香族ポリイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI),トリレンジイソシアネート(TDI)を挙げることができる。
【0029】
上記有機ポリイソシアネートからのポリカルボジイミド樹脂の合成は、イソシアネートのカルボジイミド化を促進する触媒の存在下に行われるのであり、このようなカルボジイミド化触媒としては、例えば、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド等のリン系化合物を挙げることができ、特に好ましいものとしては、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシドを挙げることができる。
【0030】
前記有機ポリイソシアネートからのポリカルボジイミド樹脂の合成は、無溶媒でも行うことができるが、適宜の溶媒中で行うこともできる。溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、ジオキソラン等の脂環式エーテル:ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素:クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、パークレン、トリクロロエタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、あるいはシクロヘキサノンやメチルエチルケトン等を用いることができるが、ポリカルボジイミド樹脂と(a)成分であるエポキシ樹脂とが分散可能な共通の溶媒を用いることが、ポリカルボジイミド樹脂を溶媒から一旦分離することなくワニスを調製することができるので、好ましい。このような溶媒としては、トルエン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等を挙げることができる。
【0031】
上記ポリカルボジイミド樹脂の合成反応における反応温度としては、特に限定されるものではないが、例えば、40℃〜溶媒の沸点までであることが好ましく、また、原料である有機ポリイソシアネートの濃度としては、溶媒を含むカルボジイミド化反応開始時の全量に対して、5〜50質量%、好ましくは10〜35質量%である。なお、有機ポリイソシアネートの濃度が5質量%未満では、ポリカルボジイミド樹脂の合成に時間を要するため経済的ではなく、逆に50質量%を超えると、合成中に反応系がゲル化するおそれがあり、いずれも好ましくない。
【0032】
また、上記ポリカルボジイミド樹脂としては、数平均分子量が2000以上10000未満であることが必要とされる。数平均分子量が2000未満であると、粉落ちが発生し、逆に数平均分子量が10000以上であると、ワニスの粘度が上昇し、基材への含浸性が低下したり、ボイドが発生するなどして成形性が低下したりするものである。
【0033】
また、本発明で使用するポリカルボジイミド樹脂としては、残存イソシアネートのカルボジイミド化反応に起因するボイド発生が見られる場合などには、必要に応じてモノイソシアネート等のカルボジイミド化合物の末端イソシアネートと反応する化合物を末端封止剤として用いて、適当な重合度に制御したものを使用することもできる。
【0034】
上記末端封止剤として使用することができるモノイソシアネートとしては、フェニルイソシアネート、(オルト、メタ、パラ)−トリルイソシアネート、ジメチルフェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、メチルイソシアネート等を例示することができる。
【0035】
また、上記の他にも、末端封止剤として末端イソシアネートと反応し得る化合物として、脂肪族化合物、芳香族化合物、脂環族化合物であって、例えば、−OH基を持つメタノール、エタノール、フェノール、シクロヘキサノール、N−メチルエタノールアミン、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル等:−NH基を持つブチルアミン、シクロヘキシルアミン等:−COOH基を持つプロピオン酸、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸等:−SH基を持つエチルメルカプタン、アリルメルカプタン、チオフェノール等や、−NHアルキル末端を有する化合物を挙げることができる。
【0036】
ポリカルボジイミド樹脂は、特許第3506413号公報にも記載されているように、エポキシ樹脂との混合物により、フィルム状の形態をとり、接着シートの可撓性を改善することができ、それによって打ち抜きやルーター加工時において接着シートの端面からの樹脂の粉落ちを極めて低減することが可能である。
【0037】
ここで、(a)(b)成分の樹脂が分散可能な共通の溶媒としては、トルエン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等を挙げることができ、これらの溶媒はそれぞれ1種のみを使用したり、あるいは2種以上の混合溶媒として使用したりすることができる。ポリカルボジイミド樹脂とエポキシ樹脂が分散可能な共通の溶媒を用いると、(a)(b)成分の樹脂を混合して、基材に含浸させるためのワニスを調製する際に、エポキシ樹脂とポリカルボジイミド樹脂が分離することなく、相溶性の高いワニスを得ることができると共に、(a)成分が(b)成分を取り込んだ粒子状の結晶物となる。そして、このようにして調製されるワニスを用いることにより、他のエポキシ樹脂や硬化剤などを併用しても、ポリカルボジイミド樹脂との副反応が起こらず、ワニスは長期間安定になる。なお、副反応が起きると、ワニスが増粘やゲル化を起こして、基材に含浸させることが困難になる。
【0038】
そして、このようにして調製されるワニスを用いることにより、接着シートを製造する場合に、ワニスが形成する接着樹脂層内でエポキシ樹脂とポリカルボジイミド樹脂とが分離することがなく、均一な状態で存在することとなるため、均質な接着シートを得ることが可能となる。
【0039】
また、上述した(a)成分と(b)成分の比率は質量比で80:20〜20:80の範囲であることが必要とされる。(b)成分であるポリカルボジイミド樹脂の配合量が、(a)成分であるエポキシ樹脂との合計量に対して、20質量%未満であると、加工時の粉落ち防止効果が無くなるものであり、逆に、80質量%を超えると、成形性を確保することが困難となるものである。
【0040】
本発明において(c)成分としては、樹脂組成物を硬化させるためにイミダゾール系硬化剤を用いる。イミダゾール系硬化剤としては、エポキシ樹脂の硬化剤であれば、特に限定されるものではないが、例えば、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)、2−フェニルイミダゾール(2PZ)、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(2P4MHZ)等を用いることができる。イミダゾール系硬化剤の配合量は適宜に設定することができる。
【0041】
本発明において樹脂組成物は、上述した(a)〜(c)成分を必須成分として含有するものであるが、前記樹脂組成物の調製時には、さらに難燃助剤・増粘剤等の役割を果たす添加剤(フィラー)を用いることもできる。この添加剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、シリカ粉末、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水和物の粉末、タルク、クレー等の粘土鉱物の粉末といった無機フィラー等を用いることができる。添加剤は、1種のみを用いることができるほか、2種以上を混合して用いることもできる。添加剤の配合量は適宜に設定することができる。
【0042】
そして、接着シートは、次のようにして製造することができる。
【0043】
まず、上述した(a)〜(c)成分を配合し、必要に応じて製膜化剤などの添加剤を加えることによって、樹脂組成物のワニスを調製する。次に、このワニスを織布又は不織布である基材に含浸させる。このとき、樹脂含有率は、接着シート全量に対して30〜80質量%に設定することができる。その後、ワニスを含浸させた基材を、例えば、130〜180℃の温度で2〜20分間加熱することで溶媒を除去して乾燥させると共に半硬化状態(Bステージ化)にすることによって、接着シートを得ることができる。
【0044】
ここで、織布としては、ガラスクロスを用いるのが好ましい。ガラスクロスはその他の織布よりも高い剛性を有するので、接着シートの剛性をさらに高めることができるものである。一方、不織布としては、ガラス不織布(ガラスペーパー)又は有機繊維を用いるのが好ましい。ガラス不織布及び有機繊維はその他の不織布よりも高い剛性を有するので、接着シートの剛性をさらに高めることができるものである。なお、有機繊維としては、特に限定されるものではないが、例えば、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリイミド繊維、ポリアクリル繊維等を用いることができる。また、上記織布又は不織布の厚さは0.2mm以下であることが好ましい。
【0045】
そして、上記のような基材を用いることにより、従来のフィルム形態のボンディングシートよりも剛性の高い接着シートを得ることができ、配線板の加工が容易となる。このようにして得られた接着シートにあっては、打ち抜きやルーター加工時において粉落ちを防止することができ、また、成形時においてはボイドの発生を防止して成形性を高く得ることができると共に、成形後においては高い剛性を得ることができるものである。特に、後述する多層フレキシブルプリント配線板やフレックスリジッドプリント配線板において、多層部の層数を増加させていっても、本発明に係る接着シートを用いることにより、フレキ部に対して求められる高い剛性を十分に確保することができる。
【0046】
次に、上記のようにして得られた接着シートをポリイミド樹脂からなるフレキシブルプリント配線板の接合に用いる具体例について説明する。
【0047】
図1は本発明に係る接着シート7を用いて製造される多層フレキシブルプリント配線板1の一例を示す。本発明において多層フレキシブルプリント配線板1とは、ポリイミド樹脂等のように可撓性のある樹脂からなるフレキシブル基板のみを多層化したものを意味するが、この多層フレキシブルプリント配線板1は、前記接着シート7を用いてポリイミド樹脂からなるフレキシブルプリント配線板5に外層フレキシブル基板6を接合することによって、製造することができる。
【0048】
具体的には、ポリイミドフィルム等のポリイミド樹脂からなるフレキシブル基板材料2の両面に内層回路3を形成し、両面の内層回路3同士をスルーホール10で電気的に接続した後、フレキシブル基板材料2の表面をポリイミド樹脂からなるカバーレイ4で被覆することによって、フレキシブルプリント配線板5を作製することができる。なお、カバーレイ4は特に用いなくてもよい。
【0049】
そして、接着シート7を用いて、フレキシブルプリント配線板5にポリイミド樹脂からなる外層フレキシブル基板6を接合することによって、外層フレキシブルプリント配線板1を得ることができる。ここで、前記外層フレキシブル基板6は、ポリイミドフィルム等のポリイミド樹脂からなるフレキシブル基板材料11の両面に外層回路12を形成し、両面の外層回路12同士をスルーホール13で電気的に接続した後、フレキシブル基板材料11の片面をポリイミド樹脂からなるフレキシブル基板材料14で被覆することによって、作製されている。外層フレキシブル基板6を接合した後、内層回路3及び外層回路12間をスルーホール18で電気的に接続する。また、図1に示すように、フレキシブルプリント配線板5に外層フレキシブル基板6を複数箇所に接合するようにしてもよい。このようにすると、外層フレキシブル基板6が接合されている箇所には多層部8が形成され、一方、外層フレキシブル基板6が接合されずにフレキシブルプリント配線板5が外部に露出している箇所には可撓性を持つフレキシブルなフレキ部9が形成されることとなる。
【0050】
上記のように、接着シート7の両面はいずれもポリイミド樹脂と接することとなる。すなわち、接着シート7の一方の面は、カバーレイ4を構成するポリイミド樹脂と接し、他方の面は、外層フレキシブル基板6を構成するポリイミド樹脂と接することとなる。なお、カバーレイ4を用いない場合には、接着シート7の一方の面は、フレキシブル基板材料2を構成するポリイミド樹脂と接することとなる。また、図1に示すように、複数の多層部8の間にフレキ部9を形成しておけば、多層フレキシブルプリント配線板1をフレキ部9で折り曲げることができるものであり、特に、本発明に係る接着シート7を用いて製造された多層フレキシブルプリント配線板1であれば、折り曲げても粉落ちが発生しにくい上に、ボイドの発生を防止し、高い剛性を得ることができるものである。
【0051】
一方、図2は本発明に係る接着シート27を用いて製造されるフレックスリジッドプリント配線板21の一例を示す。本発明においてフレックスリジッドプリント配線板21とは、ポリイミド樹脂等のように可撓性のある樹脂からなるフレキシブル基板と、ガラスエポキシ等のように柔軟性のないリジッド基板とを多層化したものを意味するが、このフレックスリジッドプリント配線板21は、前記接着シート27を用いてポリイミド樹脂からなるフレキシブルプリント配線板25に外層積層板26を接合することによって、製造することができる。
【0052】
具体的には、図1の場合と同様に、ポリイミドフィルム等のポリイミド樹脂からなるフレキシブル基板材料22の両面に内層回路23を形成した後、フレキシブル基板材料22の表面をポリイミド樹脂からなるカバーレイ24で被覆することによって、フレキシブルプリント配線板25を作製することができる。なお、カバーレイ24は特に用いなくてもよい。
【0053】
そして、接着シート27を用いて、フレキシブルプリント配線板25に外層積層板26を接合することによって、フレックスリジッドプリント配線板21を得ることができる。ここで、前記外層積層板26は、ガラスクロス等の基材にエポキシ樹脂等の樹脂を含浸乾燥させたものを複数積層し、その両面に銅箔等の金属箔を重ねて加熱加圧成形した後、エッチングにより外層回路30を形成することによって、作製することができる。また、ビルドアップ法により、外層積層板26の層数を適宜に増加させてもよい。外層積層板26を接合した後、内層回路23及び外層回路30間をスルーホール31で電気的に接続する。また、図2に示すように、フレックスリジッドプリント配線板21を製造する際には、フレキシブルプリント配線板25に外層積層板26を複数箇所に接合するようにしている。このようにして、外層積層板26が接合されている箇所にはリジッドな多層部28を形成し、一方、外層積層板26が接合されずにフレキシブルプリント配線板25が外部に露出している箇所には可撓性を持つフレキシブルなフレキ部29を形成する。
【0054】
上記のように、接着シート27の少なくとも片面はポリイミド樹脂と接することとなる。すなわち、接着シート27の一方の面は、カバーレイ24を構成するポリイミド樹脂と接し、他方の面は、外層積層板26を構成するエポキシ樹脂等の樹脂と接することとなる。なお、カバーレイ24を用いない場合には、接着シート27の一方の面は、フレキシブル基板材料22を構成するポリイミド樹脂と接することとなる。また、図2に示すように、複数の多層部28の間にフレキ部29を形成しているので、フレックスリジッドプリント配線板21をフレキ部29で折り曲げることができるものであり、特に、本発明に係る接着シート27を用いて製造されたフレックスリジッドプリント配線板21であれば、フレキ部29で折り曲げても粉落ちが発生しにくい上に、ボイドの発生を防止し、高い剛性を得ることができるものである。
【0055】
上記のような多層フレキシブルプリント配線板あるいはフレックスリジッドプリント配線板でのフレキシブルプリント配線板の接合に本発明に係る接着シートを用いることにより、打ち抜き加工時の接着シートから生じる粉落ちが低減され、特に、多層フレキシブルプリント配線板では、接着シートの基材により全体の剛性も向上させることができる。しかも、本発明によれば、多層フレキシブルプリント配線板及びフレックスリジッドプリント配線板はいずれも高いガラス転移点を有するものとなり、また、吸水率も低くなって信頼性を高く得ることができるものである。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。
【0057】
<実施例1〜4の樹脂組成物のワニスの調製>
エポキシ樹脂として、ダウ・ケミカル社製臭素化エポキシ樹脂「DER530A80」(エポキシ当量430g/eq、固形分濃度80wt%)のアセトン溶解液と、東都化成社製リン変性エポキシ樹脂「FX305EK70」(エポキシ当量500g/eq、固形分濃度70wt%)のメチルエチルケトン溶解液とを用いた。
【0058】
ポリカルボジイミド樹脂は、ジフェニルメタンジイソシアネートを原料とし、トルエン:メチルエチルケトン(MEK)=8:2(質量比)の混合溶媒を用いて、数平均分子量を約5000にしたものを用いた。この樹脂溶液に、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量180g/eq)を、ポリカルボジイミド樹脂:エポキシ樹脂=2:1(質量比)の割合で混合して、粒子状の結晶物として用いた。
【0059】
また、硬化剤として、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)を用いた。
【0060】
そして、上記エポキシ樹脂とポリカルボジイミド樹脂とを所定の組成比(下記[表1]参照)になるように配合し、さらに一部のもの(実施例3、4)については、無機フィラーとして水酸化アルミニウムを加え、特殊機化工業社製「ホモミキサー」で、約1000rpmにて約90分間混合してワニスを調製した。その後、このワニスに、硬化剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)を配合し、再度約15分間攪拌して、その後脱気することによって、樹脂組成物のワニスを調製した。なお、下記[表1]に記載の各組成比は質量部を意味する。
【0061】
<比較例1、2の樹脂組成物のワニスの調製>
エポキシ樹脂として、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成社製「YDB−500」:エポキシ当量500g/eq)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成社製「YDCN−220」:エポキシ当量220g/eq)を用いた。
【0062】
また、硬化剤として、ジシアンジアミド(分子量84、理論活性水素当量21)、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)、溶媒として、メチルエチルケトン(MEK)、メトキシプロパノール(MP)、ジメチルフォルムアミド(DMF)を用いた。
【0063】
また、ポリカルボジイミド樹脂として、特許第3506413号公報の実施例1に記載されているものを用いた(段落[0034]参照)。すなわち、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネートとフェニルイソシアネート等を用いて合成したものであり、数平均分子量は20000のものである。
【0064】
そして、比較例1については、上記エポキシ樹脂とポリカルボジイミド樹脂とを所定の組成比(下記[表1]参照)になるように配合し、特殊機化工業社製「ホモミキサー」で、約1000rpmにて約90分間混合してワニスを調製した。その後、このワニスに、硬化剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)を配合し、再度約15分間攪拌して、その後脱気することによって、樹脂組成物のワニスを調製した。
【0065】
また、比較例2については、上記2種類のエポキシ樹脂を所定の組成比(下記[表1]参照)になるように配合し、特殊機化工業社製「ホモミキサー」で、約1000rpmにて約90分間混合してワニスを調製した。その後、このワニスに、硬化剤であるジシアンジアミド及び2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)を配合し、再度約15分間攪拌して、その後脱気することによって、樹脂組成物のワニスを調製した。
【0066】
<比較例3>
接着シート(基材なしフィルム)として、ニッカン工業社製「ニカフレックスSAFD」(厚さ:40μm)を用いた。
【0067】
<接着シートの製造>
基材である織布として、日東紡績社製ガラスクロス2116タイプ「WEA116E」(厚さ0.1mm)を用い、また、基材である不織布として、アラミド繊維不織布(デュポン社製「サーマウント」坪量30g=厚さ0.04mm)を用いた。
【0068】
そして、樹脂含有率が接着シート全量に対して40〜80質量%となるように、上記のようにして調製したワニスを基材に含浸させた。その後、これを非接触タイプの加熱ユニットにより約130〜180℃の温度で5分間加熱し、ワニス中の溶媒を乾燥除去すると共に半硬化のBステージ状態にすることによって、接着シートを製造した。
【0069】
上記のようにして得られた各接着シートを用い、粉落ち試験、成形性の評価、弾性率の測定を行った。
【0070】
<粉落ち試験>
10cm角の接着シートをカッターナイフで5mm幅に短冊状に10本切り出し、切り出した端面から発生した樹脂粉の質量を測定した。
【0071】
<成形性>
厚さ0.2mmの積層板(松下電工社製「R−1766」:銅箔の厚さ35μm)の表面の銅箔をエッチングで除去することによって回路形成し、さらに内層処理(黒化処理)を施した。この積層板とフレキシブルプリント配線板(松下電工社製「R−F775」:銅箔の厚さ18μm)との間に接着シートを層間絶縁材料として介在させて積層し、プレスの成形最高温度180℃で90分間加熱しながら、2.94MPaで加圧することによって、図2に示すような多層配線基板を製造した。そして、内層回路が形成されている部分におけるボイドの発生の有無を確認した。
【0072】
<弾性率>
成形後の厚さが1.6mmとなるように、接着シートの両面に銅箔を配置したものをプレスの成形最高温度180℃で90分間加熱しながら、2.94MPaで加圧して積層成形することによって、両面銅張積層板を作製した。そして、この両面銅張積層板の表面の銅箔を全面エッチングして測定試料を作製し、この測定試料について、JIS C6481に準拠して弾性率を測定した。
【0073】
上記粉落ち試験、成形性の評価、弾性率の測定の結果を下記[表1]に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
上記[表1]にみられるように、実施例1〜4の接着シートについてはいずれも、粉落ちを防止することができ、高い剛性を得ることができると共に、ボイドの発生を防止して成形性を高く得ることができるものであることが確認される。
【0076】
これに対して、数平均分子量が10000を超えるポリカルボジイミド樹脂を用いた比較例1の接着シートについては、ボイドが発生し、成形性が低下することが確認される。また、ポリカルボジイミド樹脂を全く用いなかった比較例2の接着シートについては、粉落ちを防止できないことが確認される。また、基材入りではない比較例3の接着シートについては、剛性が低下することが確認される。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係る多層フレキシブルプリント配線板の一例を示す断面図である。
【図2】本発明に係るフレックスリジッドプリント配線板の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1 多層フレキシブルプリント配線板
5 フレキシブルプリント配線板
6 外層フレキシブル基板
7 接着シート
21 フレックスリジッドプリント配線板
25 フレキシブルプリント配線板
26 外層積層板
27 接着シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド樹脂からなるフレキシブルプリント配線板の接合に用いられる接着シートであって、前記接着シートは、織布又は不織布である基材と樹脂組成物とからなり、前記樹脂組成物は、
(a)一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、
(b)前記(a)成分であるエポキシ樹脂と共通の溶媒に分散可能な数平均分子量が2000以上10000未満のポリカルボジイミド樹脂と、
(c)イミダゾール系硬化剤と、
を必須成分として含有すると共に、前記(a)成分と(b)成分の比率は質量比で80:20〜20:80の範囲であることを特徴とするフレキシブルプリント配線板用基材入り接着シート。
【請求項2】
織布として、ガラスクロスを用いて成ることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板用基材入り接着シート。
【請求項3】
不織布として、ガラス不織布又は有機繊維を用いて成ることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板用基材入り接着シート。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のフレキシブルプリント配線板用基材入り接着シートを用いてポリイミド樹脂からなるフレキシブルプリント配線板に外層フレキシブル基板を接合して成ることを特徴とする多層フレキシブルプリント配線板。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載のフレキシブルプリント配線板用基材入り接着シートを用いてポリイミド樹脂からなるフレキシブルプリント配線板に外層積層板を接合して成ることを特徴とするフレックスリジッドプリント配線板。
【請求項6】
ポリイミド樹脂からなるフレキシブルプリント配線板の接合に用いられる接着シートの製造方法であって、
(a)一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、
(b)前記(a)成分であるエポキシ樹脂と共通の溶媒に分散可能な数平均分子量が2000以上10000未満のポリカルボジイミド樹脂と、
(c)イミダゾール系硬化剤と、
を必須成分として含有する樹脂組成物を前記溶媒に分散させることによってワニスを調製し、前記ワニスを織布又は不織布である基材に含浸させた後に乾燥させることを特徴とするフレキシブルプリント配線板用基材入り接着シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−299175(P2006−299175A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−126104(P2005−126104)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)
【Fターム(参考)】