説明

フレキシブルプリント配線板用樹脂組成物、樹脂フィルム、プリプレグ、樹脂付き金属箔、フレキシブルプリント配線板

【課題】高周波特性のみならず、屈曲性、成形性、引き剥がし強度及び難燃性に優れたフレキシブルプリント配線板を提供する。
【解決手段】フレキシブルプリント配線板用樹脂組成物に関する。(A)ポリフェニレンエーテル樹脂、(B)ジエン系及びゴム系から選ばれる架橋剤、(C)エポキシ樹脂、(D)硬化剤、(E)トリアリルイソシアヌレート及びトリアリルシアヌレートから選ばれるもの、(F)ホスファゼン化合物及び下記構造式(1)で示されるアルキルホスフィン酸アルミニウムから選ばれるものが必須成分として含有されている。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント配線板の製造に用いられるフレキシブルプリント配線板用樹脂組成物、樹脂フィルム、プリプレグ及び樹脂付き金属箔、並びにこれらのものを用いて形成され、携帯機器等に用いられるフレキシブルプリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、小型携帯機器等に用いられる配線基板の製造のための積層板については、高周波特性、特に誘電特性に優れ、屈曲性(フレキシブル性)が良好であることが望まれている。
【0003】
高周波特性に優れた積層板を得るにあたって、ガラスクロスに含浸させて使用するための樹脂成分としてポリフェニレンエーテル系樹脂が知られている。そして、本出願人によって、これを含有する樹脂組成物や積層板の製造方法が提案されてきている(例えば、特許文献1−4参照。)。
【0004】
しかし、フレキシブル性が求められる小型携帯機器等の用途としての配線基板の製造にこのようなポリフェニレンエーテル系樹脂を含有する組成物を用いることは実際的なものとはなっていない。
【0005】
その背景の理由の一つには、以下のような事情があった。
【0006】
すなわち、ポリフェニレンエーテル系樹脂は一般的に硬化後の柔軟性や屈曲性が必ずしも大きくないという問題がある。
【0007】
また、これまでフレキシブル基板を多層化して積層板とする場合、カバーレイで回路を保護した後に、片面フレキシブル基板を積層することにより多層化していた。しかし、この方法では、基板の厚みが厚く、携帯機器の小型・薄型化が難しくなるばかりか、工程が多くなるという問題があった。ここで、カバーレイの代わりに樹脂付き金属箔を用いれば、回路の保護と多層化が同時にでき、薄型化と工程の簡略化が可能となる。
【0008】
しかし、カバーレイでよく使用されているエポキシ樹脂にNBR樹脂を配合した樹脂組成物で樹脂付き金属箔を作製し、その成形性を評価すると、樹脂の充填性や成形後の外観に劣るという不具合が生じてしまうという問題があった。
【0009】
そのため、小型携帯機器用のフレキシブル配線板の製造にこれまでポリフェニレンエーテル系樹脂を用いることは現実的なものとして展望されていないのが実情である。
【0010】
他方、引き剥がし強度や難燃性についても更なる向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭62−109828号公報
【特許文献2】特開昭61−217239号公報
【特許文献3】特開昭62−148564号公報
【特許文献4】特許第3331737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、高周波特性のみならず、屈曲性、成形性、引き剥がし強度及び難燃性に優れたフレキシブルプリント配線板用樹脂組成物、樹脂フィルム、プリプレグ、樹脂付き金属箔、フレキシブルプリント配線板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の請求項1に係るフレキシブルプリント配線板用樹脂組成物は、(A)ポリフェニレンエーテル樹脂、(B)ジエン系及びゴム系から選ばれる架橋剤、(C)エポキシ樹脂、(D)硬化剤、(E)トリアリルイソシアヌレート及びトリアリルシアヌレートから選ばれるもの、(F)ホスファゼン化合物及び下記構造式(1)で示されるアルキルホスフィン酸アルミニウムから選ばれるものが必須成分として含有されていることを特徴とするものである。
【0014】
【化1】

【0015】
請求項2に係る発明は、請求項1において、(B)成分として、1,2−ポリブタジエン、1,4−ポリブタジエン、スチレンブタジエンコポリマー、マレイン変性1,2−ポリブタジエン、アクリル変性1,2−ポリブタジエン、エポキシ変性1,2−ポリブタジエン及びゴム類から選ばれるものが用いられていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2において、(D)成分として、ジシアンジアミドが用いられていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、(A)〜(E)成分の合計量に対して(A)(B)成分の合計量が40〜70質量%であると共に、フレキシブルプリント配線板用樹脂組成物全量に対して(F)成分の含有量が5〜35質量%であることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の請求項5に係る樹脂フィルムは、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板用樹脂組成物がフィルム状に成形されていることを特徴とするものである。
【0019】
本発明の請求項6に係るプリプレグは、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板用樹脂組成物が基材に含浸されて半硬化状態となっていることを特徴とするものである。
【0020】
本発明の請求項7に係る樹脂付き金属箔は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板用樹脂組成物が金属箔に塗布されて半硬化状態となっていることを特徴とするものである。
【0021】
本発明の請求項8に係るフレキシブルプリント配線板は、請求項5に記載の樹脂フィルム、請求項6に記載のプリプレグ、請求項7に記載の樹脂付き金属箔のうちの少なくとも1種類を用いて形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の請求項1に係るフレキシブルプリント配線板用樹脂組成物によれば、ポリフェニレンエーテル樹脂によって、高周波特性、屈曲性及び成形性を高めることができ、エポキシ樹脂によって、引き剥がし強度を高めることができると共に、ホスファゼン化合物及び上記構造式(1)で示されるアルキルホスフィン酸アルミニウムから選ばれるものによって、難燃性を高めることができるものである。
【0023】
請求項2に係る発明によれば、他の架橋剤を用いる場合に比べて、屈曲性をさらに高めることができるものである。
【0024】
請求項3に係る発明によれば、他の硬化剤を用いる場合に比べて、引き剥がし強度をさらに高めることができるものである。
【0025】
請求項4に係る発明によれば、屈曲性、成形性及び難燃性をさらに高めることができるものである。
【0026】
本発明の請求項5に係る樹脂フィルムによれば、ポリフェニレンエーテル樹脂によって、高周波特性、屈曲性及び成形性を高めることができ、エポキシ樹脂によって、引き剥がし強度を高めることができると共に、ホスファゼン化合物及び上記構造式(1)で示されるアルキルホスフィン酸アルミニウムから選ばれるものによって、難燃性を高めることができるものである。
【0027】
本発明の請求項6に係るプリプレグによれば、ポリフェニレンエーテル樹脂によって、高周波特性、屈曲性及び成形性を高めることができ、エポキシ樹脂によって、引き剥がし強度を高めることができると共に、ホスファゼン化合物及び上記構造式(1)で示されるアルキルホスフィン酸アルミニウムから選ばれるものによって、難燃性を高めることができるものである。
【0028】
本発明の請求項7に係る樹脂付き金属箔によれば、ポリフェニレンエーテル樹脂によって、高周波特性、屈曲性及び成形性を高めることができ、エポキシ樹脂によって、引き剥がし強度を高めることができると共に、ホスファゼン化合物及び上記構造式(1)で示されるアルキルホスフィン酸アルミニウムから選ばれるものによって、難燃性を高めることができるものである。
【0029】
本発明の請求項8に係るフレキシブルプリント配線板によれば、ポリフェニレンエーテル樹脂によって、高周波特性、屈曲性及び成形性を高めることができ、エポキシ樹脂によって、引き剥がし強度を高めることができると共に、ホスファゼン化合物及び上記構造式(1)で示されるアルキルホスフィン酸アルミニウムから選ばれるものによって、難燃性を高めることができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0031】
本発明においてフレキシブルプリント配線板用樹脂組成物は、(A)ポリフェニレンエーテル樹脂、(B)ジエン系及びゴム系から選ばれる架橋剤、(C)エポキシ樹脂、(D)硬化剤、(E)トリアリルイソシアヌレート及びトリアリルシアヌレートから選ばれるもの、(F)ホスファゼン化合物及び上記構造式(1)で示されるアルキルホスフィン酸アルミニウムから選ばれるものを必須成分として含有するものである。
【0032】
(A)成分であるポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)等を用いることができる。(A)成分の含有量は、(A)〜(E)成分の合計量に対して、20〜60質量%であることが好ましい。(A)成分の含有量が20質量%未満であると、高周波特性及び屈曲性を高めることができないおそれがあり、逆に(A)成分の含有量が60質量%を超えると、成形性が低下するおそれがある。
【0033】
(B)成分であるジエン系及びゴム系から選ばれる架橋剤としては、1,2−ポリブタジエン、1,4−ポリブタジエン、スチレンブタジエンコポリマー、マレイン変性1,2−ポリブタジエン、アクリル変性1,2−ポリブタジエン、エポキシ変性1,2−ポリブタジエン及びゴム類から選ばれるものを用いるのが好ましい。このような架橋剤を用いることによって、他の架橋剤を用いる場合に比べて、屈曲性をさらに高めることができるものである。(B)成分の含有量は、(A)〜(E)成分の合計量に対して、10〜40質量%であることが好ましい。(B)成分の含有量が10質量%未満であると、屈曲性が低下するおそれがあり、逆に(B)成分の含有量が40質量%を超えると、耐熱性が低下するおそれがある。
【0034】
特に(A)(B)成分の合計量は、(A)〜(E)成分の合計量に対して、40〜70質量%であることが好ましい。これにより、高周波特性及び屈曲性をさらに高めることができるものである。しかし、(A)(B)成分の合計量が40質量%未満であると、上記のような効果を十分に得ることができないおそれがあり、逆に(A)(B)成分の合計量が70質量%を超えると、成形性や耐熱性が低下するおそれがある。
【0035】
(C)成分であるエポキシ樹脂としては、例えば、ビフェニル骨格を含むフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、酸化型エポキシ樹脂等を用いることができる。このうちグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、アルコール型エポキシ樹脂等を例示することができる。またグリシジルエステル型エポキシ樹脂としては、ヒドロフタル酸型エポキシ樹脂、ダイマー酸型エポキシ樹脂等を例示することができる。またグリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、芳香族アミン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂等を例示することができる。また酸化型エポキシ樹脂としては、脂環型エポキシ樹脂等を例示することができる。さらにナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノール骨格とビフェニル骨格を有するノボラック型エポキシ樹脂(ビフェニルノボラックエポキシ樹脂)、リン変性エポキシ樹脂等を用いることができるが、ハロゲンは含有しないものを用いるのが好ましい。(C)成分の含有量は、(A)〜(E)成分の合計量に対して、10〜50質量%であることが好ましい。(C)成分の含有量が10質量%未満であると、引き剥がし強度を高めることができないおそれがあり、逆に(C)成分の含有量が50質量%を超えると、柔軟性が低下するおそれがある。
【0036】
(D)成分である硬化剤としては、エポキシ樹脂の硬化剤であれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリアミン、変性ポリアミン、酸無水物、ヒドラジン誘導体、ポリフェノール等を用いることができる。このうちポリアミン系の硬化剤としては、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン等を例示することができる。さらにこのうち脂肪族ポリアミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、m−キシレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン等を例示することができる。また脂環式ポリアミンとしては、イソフォロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、ラロミン等を例示することができる。また芳香族ポリアミンとしては、ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォン等を例示することができる。また酸無水物としては、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、脂肪族二塩基酸ポリ無水物等を例示することができる。またポリフェノール系の硬化剤としては、フェノールノボラック、キシレンノボラック、ビスAノボラック、トリフェニルメタンノボラック、ビフェニルノボラック、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック、テルペンフェノールノボラック等を例示することができる。さらにアミノトリアジンノボラック樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等を用いることができる。特に(D)成分としては、ジシアンジアミドを用いるのが好ましい。このような硬化剤を用いると、他の硬化剤を用いる場合に比べて、引き剥がし強度をさらに高めることができ、また樹脂フィルム、プリプレグ、樹脂付き金属箔の長期間の製品保存安定性を高めることができると共に、フレキシブルプリント配線板の難燃性、耐薬品性を高めることができるものである。(D)成分の含有量は、(A)〜(E)成分の合計量に対して、0.5〜30質量%であることが好ましい。(D)成分の含有量が0.5質量%未満であると、エポキシ樹脂が十分に硬化せず、耐熱性や引き剥がし強度が低下するおそれがあり、逆に(D)成分の含有量が30質量%を超えると、未反応の硬化剤により耐熱性が低下するおそれがある。
【0037】
(E)成分であるトリアリルイソシアヌレート(TAIC)及びトリアリルシアヌレート(TAC)から選ばれるものの含有量は、(A)〜(E)成分の合計量に対して、5〜40質量%であることが好ましい。(E)成分の含有量が5質量%未満であると、フレキシブルプリント配線板用樹脂組成物の相溶性が低下するおそれがあり、逆に(E)成分の含有量が40質量%を超えると、柔軟性や接着性を高めることができないおそれがある。
【0038】
(F)成分であるホスファゼン化合物及び上記構造式(1)で示されるアルキルホスフィン酸アルミニウムから選ばれるものは難燃剤であるが、この含有量は、フレキシブルプリント配線板用樹脂組成物全量に対して、5〜35質量%であることが好ましい。これにより、難燃性をさらに高めることができるものである。しかし、(F)成分の含有量が5質量%未満であると、上記のような効果を十分に得ることができないおそれがあり、逆に(F)成分の含有量が35質量%を超えると、柔軟性、引き剥がし強度及び耐熱性が低下するおそれがある。
【0039】
そして、フレキシブルプリント配線板用樹脂組成物は、(A)〜(F)成分を必須成分として配合し、さらにジクミルパーオキサイド(DCP)等の開始剤や、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)等の反応促進剤を任意成分として配合することによって調製することができる。
【0040】
このようにして得られたフレキシブルプリント配線板用樹脂組成物にあっては、ポリフェニレンエーテル樹脂によって、高周波特性、屈曲性及び成形性を高めることができ、エポキシ樹脂によって、引き剥がし強度を高めることができると共に、ホスファゼン化合物及び上記構造式(1)で示されるアルキルホスフィン酸アルミニウムから選ばれるものによって、難燃性を高めることができるものである。
【0041】
次に、上記フレキシブルプリント配線板用樹脂組成物を適宜樹脂液(ワニス)として用いて、樹脂フィルム、プリプレグ、樹脂付き金属箔を製造することができ、さらにこれらのものを用いて、フレキシブルプリント配線板を製造することができる。
【0042】
すなわち、樹脂フィルムは、フレキシブルプリント配線板用樹脂組成物をフィルム状に成形すると共に、これを半硬化状態(Bステージ状態)となるまで加熱乾燥することによって製造することができる。またプリプレグは、フレキシブルプリント配線板用樹脂組成物をガラスクロス等の基材に含浸させ、これを半硬化状態となるまで加熱乾燥することによって製造することができる。また樹脂付き金属箔は、フレキシブルプリント配線板用樹脂組成物を銅箔等の金属箔に塗布し、これを加熱乾燥して半硬化状態の接着性樹脂層を形成することによって製造することができる。さらにフレキシブルプリント配線板は、樹脂フィルム、プリプレグ、樹脂付き金属箔のうちの少なくとも1種類を用いて形成されているが、具体的には、例えば、ポリイミドフィルム等をコア材として用い、このコア材の片面又は両面に樹脂フィルム、プリプレグ、樹脂付き金属箔のうちのいずれかのものを貼り合わせた後、適宜回路形成及び層間接続を行うことによって、フレキシブルプリント配線板を製造することができる。
【0043】
このようにして得られた樹脂フィルム、プリプレグ、樹脂付き金属箔、フレキシブルプリント配線板にあっては、いずれも上記フレキシブルプリント配線板用樹脂組成物を材料として形成されているので、ポリフェニレンエーテル樹脂によって、高周波特性を高めることができ、エポキシ樹脂によって、引き剥がし強度及び屈曲性を高めることができると共に、ホスファゼン化合物及び上記構造式(1)で示されるアルキルホスフィン酸アルミニウムから選ばれるものによって、難燃性を高めることができるものである。なお、樹脂付き金属箔はボンディングシートやカバーレイと同様にビルドアップ絶縁シートとして用いることができると共に、シールド機能を持ち合わせたカバーレイとして用いることができる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0045】
(A)成分として、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)を用いた。
【0046】
(B)成分として、(B1)スチレンブタジエンコポリマー(旭化成ケミカルズ(株)製「タフプレンA」)、(B2)1,2−ポリブタジエン(JSR(株)製「RB820」)を用いた。
【0047】
(C)成分として、(C1)ビフェニル骨格を含むフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC−3000」)、(C2)ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP−7200」)を用いた。
【0048】
(D)成分として、ジシアンジアミド(ナカライテスク(株)製)を用いた。
【0049】
(E)成分として、(E1)トリアリルイソシアヌレート(日本化成(株)製)、(E2)トリアリルシアヌレート((株)武蔵野化学研究所製)を用いた。
【0050】
(F)成分として、(F1)ホスファゼン化合物(大塚化学(株)製「SPB−100」)、(F2)上記構造式(1)で示されるアルキルホスフィン酸アルミニウム(R及びRはエチル基)を用いた。
【0051】
そして、実施例1〜6及び比較例1のフレキシブルプリント配線板用樹脂組成物は次のようにして調製した。すなわち、セパラブルフラスコに下記表1に示す配合量で(A)〜(C)成分、(E)成分、(F)成分を入れた後、これを攪拌しながら、オイルバスで80℃まで昇温した。そして80℃で1時間攪拌して樹脂が溶解したことを確認した後、オイルバスを取り除き、20℃の水で冷やした。その後、(D)成分、開始剤としてジクミルパーオキサイド(日油(株)製「パークミルD」)及び反応促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業(株)製)を加えて攪拌することによって、25℃の樹脂液としてフレキシブルプリント配線板用樹脂組成物を得た。なお、これは平均粒径が約15μmの粒子が分散している不透明な分散液であった。
【0052】
次に、コンマコーター及びこれに接続された乾燥機を用いて、厚み12μmの銅箔の片面に上記のようにして得られた樹脂液を塗工・乾燥し、乾燥後の厚みが50μmの接着性樹脂層を形成することによって、樹脂付き銅箔を製造した。
【0053】
そしてこのようにして得られた樹脂付き銅箔について、銅箔引き剥がし強度、ポリイミド引き剥がし強度、半田耐熱性、耐マイグレーション性、成形性(成形後の外観)、屈曲性、難燃性を評価した。これらの各評価に用いたサンプルの作製条件及び評価条件を以下に示し、評価結果を下記表1に示す。
【0054】
(1)銅箔引き剥がし強度は、厚み25μmのポリイミドフィルムの両面に樹脂付き銅箔の接着性樹脂層が形成された面を貼り合わせ、180℃で1時間加熱加圧成形することによってサンプルを作製し、このサンプルの銅箔を90°方向に引き剥がしたときの引き剥がし強度により評価した。
【0055】
(2)ポリイミド引き剥がし強度は、厚み25μmのポリイミドフィルムの両面に樹脂付き銅箔の接着性樹脂層が形成された面を貼り合わせ、180℃で1時間加熱加圧成形することによってサンプルを作製し、まずこのサンプルの片面の樹脂付き銅箔を引き剥がした後に、ポリイミドフィルムを90°方向に引き剥がしたときの引き剥がし強度により評価した。
【0056】
(3)半田耐熱性は、厚み25μmのポリイミドフィルムの両面に樹脂付き銅箔の接着性樹脂層が形成された面を貼り合わせ、180℃で1時間加熱加圧成形することによってサンプルを作製し、これを288℃に加熱した半田浴に60秒間浸漬した後、外観を観察することにより評価した。膨れやはがれ等の外観異常の発生がないものを「合格」とし、これ以外のものを「不合格」とした。
【0057】
(4)耐マイグレーション性は、片面フレキシブルプリント配線板に櫛形電極を設けた試験片に、樹脂付き銅箔の接着性樹脂層が形成された面を貼り合わせ、180℃で1時間加熱加圧成形することによってサンプルを作製し、このサンプルを用いて85℃/85%RHの環境下で10Vの電圧を250時間印加するテストを行うことによって評価した。そしてこのテスト後のマイグレーション度合いを目視にて評価した。マイグレーションが発生していないものを「合格」とし、これ以外のものを「不合格」とした。
【0058】
(5)成形性(成形後の外観)は、片面35μm厚みの圧延銅箔のフレキシブルプリント配線板に櫛形パターンを設けて形成した試験片に、樹脂付き銅箔の接着性樹脂層が形成された面を貼り合わせ、180℃で1時間加熱加圧成形することによってサンプルを作製し、このサンプルの外観を目視にて観察することにより評価した。パターン間が全て樹脂で充填されているものを「合格」とし、これ以外のものを「不合格」とした。
【0059】
(6)屈曲性は、MIT法によって試験を行い、測定条件をR=0.38mm、荷重500gに設定し、回路の導通が取れなくなるまでの折り曲げ回数により評価した。
【0060】
(7)難燃性は、UL94に準じて94VTMの難燃性の判定基準で評価した。
【0061】
【表1】

【0062】
上記表1にみられるように、各実施例のものは、銅箔引き剥がし強度、ポリイミド引き剥がし強度及び半田耐熱性が良好であり、屈曲性が高くフレキシブルプリント配線板などに要求される屈曲性を満足するものであり、さらに耐マイグレーション性及び成形性に優れているものであることが確認された。またハロゲン系難燃剤を用いていないので、有毒ガスや発煙の少ない材料となるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリフェニレンエーテル樹脂、(B)ジエン系及びゴム系から選ばれる架橋剤、(C)エポキシ樹脂、(D)硬化剤、(E)トリアリルイソシアヌレート及びトリアリルシアヌレートから選ばれるもの、(F)ホスファゼン化合物及び下記構造式(1)で示されるアルキルホスフィン酸アルミニウムから選ばれるものが必須成分として含有されていることを特徴とするフレキシブルプリント配線板用樹脂組成物。
【化1】

【請求項2】
(B)成分として、1,2−ポリブタジエン、1,4−ポリブタジエン、スチレンブタジエンコポリマー、マレイン変性1,2−ポリブタジエン、アクリル変性1,2−ポリブタジエン、エポキシ変性1,2−ポリブタジエン及びゴム類から選ばれるものが用いられていることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板用樹脂組成物。
【請求項3】
(D)成分として、ジシアンジアミドが用いられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフレキシブルプリント配線板用樹脂組成物。
【請求項4】
(A)〜(E)成分の合計量に対して(A)(B)成分の合計量が40〜70質量%であると共に、フレキシブルプリント配線板用樹脂組成物全量に対して(F)成分の含有量が5〜35質量%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板用樹脂組成物がフィルム状に成形されていることを特徴とする樹脂フィルム。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板用樹脂組成物が基材に含浸されて半硬化状態となっていることを特徴とするプリプレグ。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板用樹脂組成物が金属箔に塗布されて半硬化状態となっていることを特徴とする樹脂付き金属箔。
【請求項8】
請求項5に記載の樹脂フィルム、請求項6に記載のプリプレグ、請求項7に記載の樹脂付き金属箔のうちの少なくとも1種類を用いて形成されていることを特徴とするフレキシブルプリント配線板。

【公開番号】特開2010−222408(P2010−222408A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68756(P2009−68756)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】