説明

フレキシブル基板用積層体及び熱伝導性ポリイミドフィルム

【課題】放熱特性、高反射率、寸法変化率に優れ、薄膜においても優れた耐引き裂き性を有する白色熱伝導性フレキシブル基板用積層体及び白色熱伝導性ポリイミドフィルムを提供する。
【解決手段】フレキシブル基板用積層体又は熱伝導性ポリイミドフィルムを構成するポリイミド樹脂層を2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニルと芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位を50〜100モル%含有するポリイミド樹脂に熱伝導性フィラーが20〜65wt%の範囲で含有されたフィラー含有ポリイミド樹脂層(i)を有する層とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学基板、放熱基板やフレキシブル回路基板に用いられる熱伝導性に優れたフレキシブル基板用積層体及び熱伝導性ポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話に代表される電子機器の小型化、軽量化に対する要求は益々高まってきており、機器の小型化、軽量化に有利なフレキシブル回路基板は電子技術分野において広く使用されるようになってきている。そして、その中でもポリイミド樹脂を絶縁層とするフレキシブル回路基板は、その耐熱性、耐薬品性などが良好なことから従来から広く用いられている。最近では電子機器の小型化により、回路の集積度は上がってきており、情報処理の高速化とも相まって、機器内に生じる熱の放熱手段が注目されている。
【0003】
放熱性に優れたフレキシブル回路基板を提供するために、熱伝導率の高い金属回路からの放熱に加えて絶縁層を構成するポリイミド樹脂層からの放熱、すなわち熱伝導率の向上が求められる。ポリイミド層の熱伝導率を向上させるには、一定組成の場合は加熱処理条件を調整してポリイミド層の配向度を高める方法、また配向性の高い組成に変更する方法、そして、樹脂に高熱伝導性の無機フィラーを高充填する方法が挙げられる。
【0004】
これまで、ポリイミドフィルム作製時の加熱処理条件により熱伝導率を向上させる検討がなされている(特許文献1)。これは、ポリアミド酸を支持体上で一部イミド化しゲルフィルムとした後、支持体より剥離して加熱処理を行う過程において、ゲルフィルムの溶媒残存率と剥離後固定具による両端把持の条件を制御することで面方向の配向性を抑えて厚み方向の熱伝導率を高めるものである。しかしながら、フィルム成形の条件が繁雑であり、かつ、加熱処理に長時間を要するため作製が容易でないという欠点を有していた。また、ポリイミド樹脂にフィラーを30重量%未満の範囲で含有させてもよいという記載はあるものの、可撓性やポリイミドの持つ良好な特性を維持しつつ熱伝導率を向上させるには限界があった。
【0005】
一般に、放熱性は材料の熱伝導率に加えてその形状にも依存する。ポリイミド樹脂などの低熱伝導材料では特に、ブロック成形体よりも薄膜の方が伝熱し易くなる。しかしながら、熱伝導率向上のために、樹脂中に熱伝導性フィラーを充填すると、樹脂は脆くなる傾向がある。また、高熱伝導性の可撓性材料とするために、材料の厚みを低減しフィラーを高充填すると、フィラー充填に伴う機械強度の低下が相まって、ポリイミド層はさらに脆くなる。そのため、薄膜でも充分な耐引裂き性などの強度の大きなポリイミド層を有する熱伝導性フレキシブル基板用積層体や熱伝導性ポリイミドフィルムの開発が望まれていた。
【0006】
熱伝導性フィラーは球状のものが多いが、特許文献2のように鱗片状の窒化ホウ素と粒形状の金属酸化物の混合フィラーを用いた高熱放散材組成物も記載されている。しかし、ここで記載されている材料は樹脂の熱変形温度が−30〜130℃であり、半導体が高温実装されるような耐熱性が要求される配線基板用途には不適当な材料である。
【0007】
一方、電子機器は益々軽量化、小型化、薄型化の傾向にあり、電子部品を収容するスペースは狭くなってくる。例えば、発光素子であるチップLEDもさらに軽量化、小型化が求められるとともに、基板に対しても反射率及び白色度の高いものが求められることがある。
【0008】
このような要求に応えるため、例えば、LED基板用の高分子フィルムにも優れた白色性、柔軟性、耐熱性が要求されるようになっている。LED実装用途を目的として、脂肪族モノマーを用いたポリイミド及び無機系微粒子等の白色顔料を混合した樹脂組成物から白色性ポリイミドフィルムを得ることが知られている(特許文献3、4)。しかし、白色顔料の添加はフィルム強度の低下、熱伝導率の向上が困難などの問題が生じる。
【0009】
一方、高分子材料の中で、液晶高分子(LCP)によるフィルム材料は白色を示すものとして知られているが、熱伝導率が依然不足するとともに、耐熱性も十分ではない。以上のことから、白色による高反射率を示し、高い熱伝導特性を有し、耐熱性、寸法安定性、耐折性に優れる絶縁層を有するフレキシブル基板用積層体やそのような特性を示す熱伝導性ポリイミドフィルムの提供が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−274040号公報
【特許文献2】特開平5‐16296号公報
【特許文献3】特開平5−9437号公報
【特許文献4】特開2006−110999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明の目的は、白色で、高い熱伝導率を示し、耐熱性、寸法安定性及び耐折性にも優れるフレキシブル基板用積層体とそのような特性を有する熱伝導性ポリイミドフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記課題を解決するために検討を重ねた結果、特定構造を有するポリイミド樹脂に熱伝導性フィラーを特定範囲の割合で分散させることで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、ポリイミド樹脂層の片面又は両面に金属層を有する積層体において、当該ポリイミド樹脂層は下記一般式(1)で表される構造単位を50〜100モル%含有するポリイミド樹脂に熱伝導性フィラーが20〜65wt%の範囲で含有されたフィラー含有ポリイミド樹脂層(i)を少なくとも1層有するものであることを特徴とするフレキシブル基板用積層体である。
【化1】

(式中、Ar1は芳香環を1個以上有する4価の有機基である。)
【0014】
また、本発明は、上記一般式(1)で表される構造単位を50〜100モル%含有するポリイミド樹脂に熱伝導性フィラーが20〜65wt%の範囲で含有されたフィラー含有ポリイミド樹脂層(i)を少なくとも1層有することを特徴とする熱伝導性ポリイミドフィルムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のフレキシブル基板用積層体及び熱伝導性ポリイミドフィルムは、反射率及び白色度が高く、熱伝導特性に優れる他、寸法安定性や耐熱性に優れ、耐引裂き性も良好であり、光反射性が要求されるような光学材料や放熱材料に有用であり、例えば、白色LED反射基板、小型電子機器部品、印刷材料の基材として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明のフレキシブル基板用積層体(以下、単に積層体とも言う)は、絶縁層であるポリイミド樹脂層と金属層からなり、ポリイミド樹脂層の片面又は両面に金属層を有する。ポリイミド樹脂層の少なくとも1層は、一般式(1)で表される構造単位を50〜100モル%含有するポリイミド樹脂中に熱伝導性フィラーが20〜65wt%含有されているフィラー含有ポリイミド樹脂層(i)である。ポリイミド樹脂層は、単層であっても複数層であってもよく、フィラー含有ポリイミド樹脂層(i)のみからなるものであっても、これとは別にフィラーを含有しないポリイミド樹脂層(ii)を有していてもよい。フィラーを含有しないポリイミド樹脂層(ii)を併用する場合、それを構成するポリイミド樹脂はフィラーを含有しない状態で白色か透明であることが好ましい。また、ポリイミド樹脂層(ii)の厚みは、フィラー含有ポリイミド樹脂層(i)の1/100〜1/2の範囲、好ましくは1/20〜1/3の範囲とすることがよい。フィラーを含有しないポリイミド樹脂層(ii)を有する場合、それが金属層に接するようにすれば、金属層と絶縁層の接着性が向上する。
【0017】
本発明の高熱伝導性ポリイミドフィルムは、上記フレキシブル基板用積層体のポリイミド樹脂層と同様な構成を有する。すなわち、フィラー含有ポリイミド樹脂層(i)を有する。そして、フレキシブル基板用積層体から金属層を除去して得られる絶縁層のフィルムは、本発明の熱伝導性ポリイミドフィルムとなる。本発明のフレキシブル基板用積層体は、本発明の熱伝導性ポリイミドフィルムの層を絶縁層として有するものということもできる。従って、以下、特に断りのない限り、フレキシブル基板用積層体の絶縁層となるポリイミド樹脂層に関する説明は、熱伝導性ポリイミドフィルムのポリイミド樹脂層の説明でもあると理解される。
【0018】
本発明のフレキシブル基板用積層体のポリイミド樹脂層、及び熱伝導性ポリイミドフィルムのポリイミド樹脂層(以下、単にポリイミドフィルムとも言う)におけるフィラー含有ポリイミド樹脂層(i)のポリイミド樹脂は、一般式(1)で表される構造単位を50〜100モル%含有するポリイミド樹脂を構成要素とし、ポリイミド樹脂は熱伝導性フィラーを分散するマトリックスとしての役割を果たす。ポリイミド樹脂は、一般的にはジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させて得られる。上記一般式(1)において、Ar1は芳香環を1個以上有する4価の有機基であるが、上記のような観点からは、芳香族テトラカルボン酸二無水物から生じる残基ともいえる。したがって、Ar1は使用する芳香族テトラカルボン酸二無水物を説明することで理解される。また、一般式(1)中のジアミン残基は使用するジアミンを説明することで理解される。
【0019】
一般式(1)におけるAr1を生じる芳香族テトラカルボン酸二無水物は、特に限定されるものではないが、具体例を挙げると、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸(BPDA)、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、2,6-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-テトラクロロナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3'',4,4''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3'',4''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ペリレン-2,3,8,9-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-4,5,10,11-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-5,6,11,12-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,7,8-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1, 2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,9,10-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4'-オキシジフタル酸二無水物、(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、ジ(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、ジ(ヘプタフルオロプロピル)ピロメリット酸二無水物、ペンタフルオロエチルピロメリット酸二無水物、ビス{3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェノキシ}ピロメリット酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、5,5'-ビス(トリフルオロメチル)-3,3',4,4'-テトラカルボキシビフェニル二無水物、2,2',5,5'-テトラキス(トリフルオロメチル)-3,3',4,4'-テトラカルボキシビフェニル二無水物、5,5'-ビス(トリフルオロメチル)-3,3',4,4'-テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物、5,5'-ビス(トリフルオロメチル)-3,3',4,4'-テトラカルボキシベンゾフェノン二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ベンゼン二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}トリフルオロメチルベンゼン二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)トリフルオロメチルベンゼン二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゼン二無水物、2,2-ビス{(4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ビフェニル二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ジフェニルエーテル二無水物又はビス(ジカルボキシフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル二無水物などが挙げられ、これらを単独で使用してもよく又は2種以上併用することもできる。
【0020】
これらの中でも、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸(BPDA)又は2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)が好ましく、これらを単独で用いても併用してもよい。
【0021】
一方、必須原料成分として使用されるジアミンは、式(2)に示す2,2'-ビス(トリフルオロメチル)- 4,4'-ジアミノビフェニル(TFMB)であり、これをポリイミド樹脂の構造単位中50〜100モル%、好ましくは70〜100モル%の範囲で含有する。この場合、その一部としてTFMB以外の他の芳香族ジアミンを併用することができる。
【0022】
【化2】

【0023】
TFMBと併用して用いられる他の芳香族ジアミンとしては、特に限定されるものではないが具体例を挙げると、4,6-ジメチル-m-フェニレンジアミン、2,5-ジメチル-p-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノメシチレン、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,5,3',5'-テトラメチル-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、2,4-トルエンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルプロパン、3,3'-ジアミノジフェニルプロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエタン、3,3'-ジアミノジフェニルエタン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,3'-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジアミノジフェニルスルホン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,3'-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジジン、3,3'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメトキシベンジジン、4,4"-ジアミノ-p-ターフェニル、3,3"-ジアミノ-p-ターフェニル、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジン、4-(1H,1H,11H-エイコサフルオロウンデカノキシ)-1,3-ジアミノベンゼン、4-(1H,1H-パーフルオロ-1-ブタノキシ)-1,3-ジアミノベンゼン、4-(1H,1H-パーフルオロ-1-ヘプタノキシ)-1,3-ジアミノベンゼン、4-(1H,1H-パーフルオロ-1-オクタノキシ)-1,3-ジアミノベンゼン、4-ペンタフルオロフェノキシ-1,3-ジアミノベンゼン、4-(2,3,5,6-テトラフルオロフェノキシ)-1,3-ジアミノベンゼン、4-(4-フルオロフェノキシ)-1,3-ジアミノベンゼン、4-(1H,1H,2H,2H−パーフルオロ-1-ヘキサノキシ)-1,3-ジアミノベンゼン、4-(1H,1H,2H,2H-パーフルオロ−1-ドデカノキシ)-1,3-ジアミノベンゼン、(2,5)-ジアミノベンゾトリフルオライド、ジアミノテトラ(トリフルオロメチル)ベンゼン、ジアミノ(ペンタフルオロエチル)ベンゼン、2,5-ジアミノ(パーフルオロヘキシル)ベンゼン、2,5-ジアミノ(パーフルオロブチル)ベンゼン、3,3'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル、オクタフルオロベンジジン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3-ビス(アニリノ)ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(アニリノ)オクタフルオロブタン、1,5-ビス(アニリノ)デカフルオロペンタン、1,7-ビス(アニリノ)テトラデカフルオロヘプタン、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,3'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,3',5,5'-テトラキス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,3'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノベンゾフェノン、4,4'-ジアミノ-p-テルフェニル、1,4-ビス(p-アミノフェニル)ベンゼン、p-(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、ビス(アミノフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、ビス(アミノフェノキシ)テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゼン、2,2-ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス{4-(3-アミノフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス{4-(2-アミノフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス{4-(4-アミノフェノキシ)-3,5-ジメチルフェニル}ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス{4-(4-アミノフェノキシ)-3.5-ジトリフルオロメチルフェニル}ヘキサフルオロプロパン、4,4'-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ビス(4-アミノ-3-トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4'-ビス(3-アミノ-5-トリフルオロメチルフェノキシ)ジフェニルスルホン、2,2-ビス{4-(4-アミノ-3-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン、ビス{(トリフルオロメチル)アミノフェノキシ}ビフェニル、ビス〔{(トリフルオロメチル)アミノフェノキシ}フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、ビス{2-〔(アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロイソプロピル}ベンゼン、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)オクタフルオロビフェニルなどが挙げられ、これらを単独で使用してもよく又は2種以上併用することもできる。
【0024】
フィラー含有ポリイミド樹脂層(i)のポリイミド樹脂は、後記する公知のポリイミドの合成方法によって製造することができるが、その分子量については、好ましくは重量平均分子量が10万〜80万、より好ましくは15万〜80万の範囲にあるポリイミド前駆体であるポリアミド酸をイミド化して得られる。重量平均分子量の値が10万に満たないと、フィルムの引裂き伝播抵抗が弱くなる傾向があり、80万を超えると均一なフィルムの作製が困難となる恐れがある。重量平均分子量はGPC法によってポリスチレン換算の値を求めることができる。なお、ポリアミド酸をイミド化して得られるポリイミド樹脂の重量平均分子量も、ポリアミド酸状態で測定されるものと略等しいため、ポリアミド酸の重量平均分子量をもってポリイミド樹脂の重量平均分子量と見做すことができる。
【0025】
フィラー含有ポリイミド樹脂層(i)中には、熱伝導性フィラーが一定割合で含有されている。熱伝導性フィラーとしては、高熱伝導性のフィラーが好ましく、具体的には、アルミニウム、銅、ニッケル、シリカ、ダイヤモンド、アルミナ、マグネシア、ベリリア、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素が挙げられ、これらのフィラー形状は球状、板状の物の他、針状など特に限定されるものではない。これらの中でも、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素及びマグネシアから選ばれる少なくとも1種類以上のフィラーが好ましい。
【0026】
熱伝導性フィラーに球状フィラーを用いる場合には、球状の平均粒子径は0.3〜15μmの範囲にあることが好ましく、1〜8μmの範囲にあることがより好ましい。熱伝導性フィラーの平均粒子径が小さいと、個々のフィラー内部での熱伝導が小さくなり、結果としてポリイミド樹脂層の熱伝導率が向上しない。また、粒子同士が凝集を起こしやすくなり、均一に分散させることが困難となる。一方、大きいと、ポリイミド樹脂層への可能な充填率が低下し、かつフィラーと樹脂との界面の影響によりポリイミドフィルムが脆くなる傾向にある。したがって、上記範囲が好ましい。
【0027】
また、熱伝導性フィラーに板状フィラーを用いる場合には、平均長径DLが0.1〜15μmの範囲のものが好ましく、0.5〜10μmの範囲のものがより好ましい。最適な板状フィラーは、平均長径DLが1〜9μmの窒化ホウ素である。平均長径DLが小さいと、熱伝導率が低く、熱膨張係数が大きくなり、板状の効果が小さくなってしまう。大きいと製膜時に配向させることは困難となる。したがって、上記範囲が好ましい。ここで、平均長径DLとは板状フィラーの長手直径の平均値を意味する。なお、本発明で板状フィラーという場合、フィラー形状が板状、燐片状のフィラーで、平均厚みが、表面部の平均長径又は平均短径より十分に小さいもの(好ましくは1/2以下)をいう。また、平均径はメディアン径を意味し、モード径は上記範囲で1つであることがよく、これは球状フィラーについても同様である。
【0028】
フィラー含有ポリイミド樹脂層(i)中の熱伝導性フィラーの含有割合は、20〜65wt%の範囲である。好ましくは25〜50wt%の範囲、特に、30〜40wt%の範囲であることが好ましい。熱伝導性フィラーの含有割合が、20wt%に満たないと、放熱基板やフレキシブル回路基板とした際の放熱特性が十分でなく、また、65wt%を超えると屈曲性などの低下が顕著となり、また、ポリイミド樹脂層の強度も低下する。
【0029】
本発明においてはポリイミド樹脂層を複数層とすることもできるが、その場合、フィラー含有ポリイミド樹脂層(i)の他に、フィラーを含有しないポリイミド樹脂層(ii)を設けることが好ましい。ポリイミド樹脂層(ii)を構成するポリイミド樹脂は、無色透明であることが好ましく、このようなポリイミド樹脂としては、一般式(3)で表される構造単位を主要成分とするものが挙げられる。好ましくは、ポリイミド樹脂中、一般式(3)で表される構造単位を70モル%以上含有するものである。一般式(3)で表される構造単位を主要成分とするポリイミド樹脂層は、ガラス転位点が低く、金属層との接着性が良好で、光透過率が優れる。
【0030】
【化3】

【0031】
ポリイミド樹脂層(ii)を構成するポリイミド樹脂は、上記一般式で用いられる構造単位を構成する芳香族テトラカルボン酸二無水物やジアミン以外の他の公知の芳香族テトラカルボン酸二無水物やジアミンを併用することができる。併用することが出来る芳香族テトラカルボン酸二無水物やジアミンとしては、一般式(1)の説明で列挙した各種の芳香族テトラカルボン酸二無水物やジアミンが挙げられ、それぞれ単独で用いても、併用してもよい。
【0032】
本発明の積層体又は本発明のポリイミドフィルムを構成するポリイミド樹脂層の熱伝導率は、平面方向で1.0W/mK以上であることが有利であるが、更には、平面方向で2.5W/mK以上であることが好ましい。この特性とポリイミド樹脂層の他の諸特性を満たすことで放熱基板などに用いられるより優れた高熱伝導性ポリイミドフィルムやフレキシブル基板用積層体とすることができる。なお、上記ポリイミド樹脂層が複数のポリイミド樹脂層からなる場合は、全体としてのポリイミド樹脂層の特性であると理解される。以下に説明する厚み、引裂伝播抵抗及び熱膨張係数についても同様である。また、本発明の積層体の波長450nmにおける反射率が50%以上であることが好ましく、この反射率が低いと白色度が低下する傾向にある。
【0033】
ポリイミド樹脂層の好ましい厚み範囲は、5〜50μmの範囲であり、より好ましくは5〜35μm、特に好ましくは10〜30μmである。そして本発明では、ポリイミド樹脂層の厚みが5〜50μmの範囲にあり、引裂伝播抵抗が1.0〜8.0kN/mの範囲とすることで、破断や変形の生じにくい折り曲げ性と耐引裂き性に優れたフレキシブル基板用積層体やポリイミドフィルムとすることができる。
【0034】
本発明において、ポリイミド樹脂層の熱膨張係数は、30×10-6/K以下とすることが好ましく、有利には25×10-6/K以下とすることで、フレキシブル配線基板などに適用したときにカール等の変形を抑制することができる。
【0035】
次に、本発明のフレキシブル基板用積層体で用いられる金属層について説明する。金属層の種類は、特に限定されるものではなく、使用目的に応じて、銅箔、銅合金箔、ステンレス箔、アルミニウム箔などから適宜選択して用いることができる。配線回路基板用途には、銅箔又は銅合金箔が好ましく、これらは市販されているものを用いることができる。金属層の厚みは3〜70μmの範囲が好ましく、5〜30μmの範囲がより好ましい。
【0036】
本発明のフレキシブル基板用積層体や熱伝導性ポリイミドフィルムを製造する方法は、特に限定されるものではなく公知の手法を採用することができる。
【0037】
まず、フレキシブル基板用積層体の代表的な例を示せば、ポリイミド樹脂層の原料であるポリイミド前駆体樹脂であるポリアミド酸の樹脂溶液を、金属層となる銅箔等の金属箔上に直接流延塗布して150℃以下の温度である程度溶媒を乾燥除去し、その後更にイミド化のために100〜450℃、好ましくは300〜450℃の温度範囲で5〜40分間程度の熱処理を行って金属層上にポリイミド樹脂からなる絶縁層を形成する方法が一般的である。ポリイミド樹脂層を2層以上のポリイミド層とする場合、第一のポリアミド酸の樹脂溶液を塗布、乾燥したのち、第二のポリアミド酸の樹脂溶液を塗布、乾燥し、以下同様にして第三以下のポリアミド酸の樹脂溶液を順次、塗布、乾燥したのち、まとめて300〜450℃の温度範囲で5〜40分間程度の熱処理を行って、イミド化を行うことがよい。熱処理の温度が100℃より低いとポリイミドの脱水閉環反応が十分に進行せず、450℃を超えると、ポリイミド樹脂層及び銅箔が酸化等により劣化するおそれがある。なお、本発明においては、ポリイミド樹脂層の少なくとも1層は、熱伝導性フィラーを含有するポリアミド酸が用いられることになる。
【0038】
このようにして得られたフレキシブル基板用積層体はポリイミド樹脂層の片面に金属層を有するものであるが、両面フレキシブル基板用積層体とすることもできる。両面フレキシブル基板用積層体を得るためには、片面フレキシブル基板用積層体を形成した後、互いにポリイミド樹脂層を向き合わせて熱プレスによって圧着し形成することや、片面銅張積層板のポリイミド樹脂層に銅箔を圧着し形成すること等により得ることができる。この場合、金属層と接するポリイミド樹脂層は、ポリイミド樹脂層(ii)とすることが好ましい。
【0039】
次に、熱伝導性ポリイミドフィルムの製造例について説明する。熱伝導性ポリイミドフィルムの製造例としては、上記フレキシブル基板用積層体のごとく、金属箔とポリイミド樹脂との積層体を製造した後、金属箔を剥離又はエッチングにより除去して、ポリイミドフィルムとする方法や、任意の支持基体上にポリイミド樹脂層の原料であるポリアミド酸の樹脂溶液を流延塗布してフィルム状に成型し、支持基体上で加熱乾燥することにより自己支持性を有するゲルフィルムとした後、支持体より剥離して、更に高温で熱処理してイミド化させてポリイミドフィルムとする方法が挙げられる。なお、本発明においては、ここでもポリイミド樹脂層の少なくとも1層に、熱伝導性フィラーを含有するポリアミド酸が用いられることになる。このポリイミドフィルムを絶縁層としたフレキシブル基板用積層体とするには、ポリイミドフィルムに直接、又は任意の接着剤を介して金属箔を加熱圧着する方法や、金属蒸着等によって金属層を形成する方法が一般的である。
【0040】
なお、上記において、金属箔や支持基体上へのポリアミド酸の樹脂溶液の塗布は、公知の方法で行うことが出来、例えば、バーコード方式、グラビアコート方式、ロールコート方式、ダイコート方式等から適宜選択して採用することができる。
【0041】
本発明において、ポリイミド樹脂層(i)を形成するために用いられる熱伝導性フィラーを含有するポリアミド酸の樹脂溶液は、ポリアミド酸の樹脂溶液に熱伝導性フィラーを直接配合してもよく、また、フィラー分散性を考慮し、原料(酸二無水物成分又はジアミン成分)の一方を投入した反応溶媒に予め熱伝導性フィラーを配合し、攪拌下に重合を進行させてもよい。
【0042】
上記したとおり、本発明におけるポリイミド樹脂層は、ポリイミド樹脂層(i)を有していれば単層である必要はなく、複数層としてもよい。絶縁層を複数層とする場合には、ポリイミド樹脂層(i)を主なポリイミド樹脂層とし、すべての層に熱伝導性フィラーを含有させてフィラー含有ポリイミド樹脂層としてもよいが、フィラーを含有しないポリイミド樹脂層(ii)を金属層とポリイミド樹脂層(i)との間に介在させることが、フィラーの滑落防止や接着性向上の観点から好ましい。なお、本発明はフィラー含有ポリイミド樹脂層(i)と金属箔とを接着するための接着剤を用いることを除外するものではなく、ポリイミド樹脂層の両面に金属層を有する両面フレキシブル基板用積層体において接着層を介在させる場合には、全絶縁層の厚みの30%未満の範囲が好ましく、20%未満がより好ましく、ポリイミド樹脂層の片面のみに金属層を有する片面フレキシブル基板用積層体においては、ポリイミド樹脂層の厚みの15%未満の範囲が好ましく、10%未満がより好ましい。そして、接着剤層は絶縁層の一部を構成するので、ポリイミド樹脂層であることが好ましい。
【0043】
本発明において、ポリイミド樹脂層を形成するためのポリアミド酸は、上記芳香族テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを実質的に等モル使用し、有機極性溶媒中で重合する公知の方法によって製造することができる。具体的には、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)などの溶剤に、撹拌下、ポリイミド原料となるジアミンと芳香族テトラカルボン酸無水物を添加し、室温で3〜5時間程度かけて重合を進行させて得ることができる。ここで、ポリアミド酸の樹脂溶液に熱伝導性フィラーを含有させる場合には、原料ジアミンや酸無水物を配合する前に、予め熱伝導性フィラーを投入してもよく、また、一定の重合度に達した後に、熱伝導性フィラーを投入してもよい。なお、必要に応じて、フィラーを含有するポリアミド酸の作製過程又は作製後に、生じた凝集フィラーや粗大粒子状の異物をストレーナーや濾過装置を用いて除去するとよい。これらの操作により、ポリイミド樹脂中に熱伝導フィラーが均一に分散した熱伝導性ポリイミドフィルムとすることができる。
【0044】
また、ポリイミド樹脂層には、加工助剤、抗酸化剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、界面活性剤、分散剤、沈降防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤など熱伝導性フィラー以外の他の有機添加剤または無機フィラーなどの追加の添加物を含むことができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例に基づいて本発明の内容を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0046】
本実施例に用いた略号は以下の化合物を示す。
TFMB:2,2'-ビス(トリフルオロメチル)- 4,4'-ジアミノビフェニル
BAPS:ビス[4-(アミノフェノキシ)フェニル]スルホン
BAPP:2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパン
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BPDA:3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
6FDA:2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物
【0047】
また、実施例中の各種物性の測定方法を以下に示す。なお、以下ポリイミドフィルムと表現したものは、銅箔を支持基体とした積層体の銅箔をエッチング除去して得られたポリイミドフィルムを指し、下記括弧内の数値は試験用に切り出したサンプルのサイズを示す。
【0048】
[引裂き伝播抵抗の測定]
ポリイミドフィルム(63.5mm×50mm)を準備し、試験片に長さ12.7mmの切り込みを入れ、東洋精機製の軽荷重引裂き試験機を用い、ASTM D1922に準拠し測定した。
【0049】
[熱膨張係数(CTE)の測定]
ポリイミドフィルム(3mm×15mm)を、熱機械分析(TMA)装置にて5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度で30℃から260℃の温度範囲で引張試験を行った。温度に対するポリイミドフィルムの伸び量から熱膨張係数を測定した。
[弾性率(E')の測定]
テンションテスターを用い、幅12.4mm、長さ160mmのポリイミドフィルムを10kgの荷重を加えながら50mm/minで引っ張り試験を行い、25℃における引張り弾性率(E’)を求めた。
【0050】
[面方向の熱伝導率(λxy)]
ポリイミドフィルム(30mm×5mm)を、光交流法による面方向の熱拡散率(アルバック理工製Laser PIT装置)、示差走査熱量測定(DSC)による比熱、水中置換法による密度をそれぞれ測定し、これらの結果をもとに面方向の熱伝導率を算出した。
【0051】
[引剥し強度(ピール強度)]
積層体の銅箔層を幅1.0mm、長さ180mmの長矩形にパターンエッチングし、そのパターンが中央になるように、幅20mm、長さ200mmに試験片を切り抜き、IPC−TM−650.2.4.19により常温での180°引剥し試験を行った。
【0052】
[光反射率]
ポリイミドフィルム(50mm×50mm)を日本電色工業株式会社製のSpectro Photometer SD5000装置にて、450nmにおける反射率を求めた。
【0053】
[白色度]
ポリイミドフィルム(50mm×50mm)を日本電色工業株式会社製のSpectro Photometer SD5000装置にて、JISZ8715(色の表示法−白色度)に記載されている白色度を求めた。
【0054】
[光透過率]
ポリイミドフィルム(50mm×50mm×25μm)をU4000形自記分光光度計にて、500nmにおける光透過率を求めた。
[黄色度(YI)]
ポリイミドフィルム(50mm×50mm)をU4000形自記分光光度計にて、光源C使用し、JISK7105に準じて黄色度を求めた。
【0055】
合成例1〜4
ポリアミド酸a〜dを合成するため、攪拌装置を備えた1000mlセパラブルフラスコを窒素気流下で、表1中に示したジアミンを攪拌しながら加え溶解させた後、攪拌を維持したまま、表1中に示したテトラカルボン酸二無水物を加えた。その後、室温で4時間攪拌を続けて重合反応を行い、ポリイミド前駆体となるポリアミド酸の粘稠な溶液を得た。
【0056】
【表1】

【0057】
実施例1
合成例1で得られたポリアミド酸a100重量部に、熱伝導性フィラーとして分級機により30μm以上の粒子を取除いた板状窒化ホウ素(電気化学(株)社製、商品名:HGPE、鱗片形状、平均長径4.5μm)30重量部を配合し、均一になるまで遠心攪拌機で混合し、熱伝導性フィラーを全固形分に対して30wt%含有するワニスAを得た。続いて、得られたワニスAを、厚さ12μm、表面粗度(Rz)0.3μmの電解銅箔上に、アプリケータを用いて熱処理後の膜厚が約25μmとなるように塗布し、130℃で1〜10分間乾燥した後、更に130℃、145℃、160℃、180℃、200℃、220℃、280℃、320℃、360℃で各4〜15分段階的な熱処理を行い、銅箔上に単層で白色のポリイミド層を有する積層体を得た。得られた積層体について、それぞれ塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去し白色ポリイミドフィルムを作成し、熱膨張係数(CTE)、引き裂き伝播抵抗、弾性率、熱拡散率、光反射率、白色度を求めた。各測定結果を表2に示す。
【0058】
実施例2
熱伝導性フィラーの量を30wt%から40wt%に変更した以外は、実施例1と同様に行った。得られた積層体とポリイミドフィルムの各種特性を表2に示す。
【0059】
実施例3
ポリアミド酸aに代えて、合成例2で得られたポリアミド酸bを用いた以外は、実施例1と同様に行った。得られた積層体とポリイミドフィルムの各種特性を表2に示す。
【0060】
実施例4
ポリアミド酸aに代えて、合成例2で得られたポリアミド酸bを用い、熱伝導性フィラーの量を30wt%から50wt%に変更した以外は、実施例1と同様に行った。得られた積層体とポリイミドフィルムの各種特性を表2に示す。
【0061】
比較例1
熱伝導性フィラーを配合しなかったこと以外は、実施例1と同様に行った。得られた積層体とポリイミドフィルムの各種特性を表2に示す。得られた積層体とポリイミドフィルム樹脂層は透明で、熱伝導率が1W/mK未満と低かった。光透過率を測定し、表2に示した。
【0062】
比較例2
合成例2で得られたポリアミド酸bを用い、熱伝導性フィラーを配合しなかったこと以外は、実施例1と同様に行った。得られた積層体とポリイミドフィルムの樹脂層は透明で、熱伝導率が1W/mK未満と低かった。光透過率を測定し、表2に示した。
【0063】
比較例3
熱伝導性フィラーを合成例2で得られたポリアミド酸bに10重量部添加した以外は、実施例3と同様に行った。得られた積層体とポリイミドフィルムの樹脂層は白色を示したが、熱伝導率が1W/mK未満と低かった。
【0064】
比較例4
熱伝導性フィラーを合成例2で得られたポリアミド酸bに70重量部添加した以外は、実施例3と同様に行った。得られた積層体とポリイミドフィルムの樹脂層は白色を示したが脆く、丈夫なフィルムは得られなかった。そのため、他の評価は行わなかった。
【0065】
【表2】

【0066】
実施例5
厚み12μm、表面粗度Rz0.3μmの電解銅箔上に、合成例3で得られたポリアミド酸溶液cを硬化後の厚みが1μmとなるように塗布し、125℃で加熱乾燥し溶剤を除去した。次に、その上に実施例2で得られたワニスBを硬化後の厚みが20μmとなるように塗布し、125℃で加熱乾燥し溶剤を除去した。更に、その上にポリアミド酸溶液cを硬化後の厚みが1μmとなるように塗布し、125℃で加熱乾燥し溶剤を除去した。この後、130℃、145℃、160℃、200℃、280℃、320℃、360℃で各4〜15分段階的な熱処理を行って、銅箔上に3層のポリイミド層からなる配線基板用積層体LM1を作成した。銅箔上のポリイミド層の厚みは、金属箔側から順に2/22/2μmである。この積層体LM1について、ピール強度を測定したところ、0.8kN/mであった。また、配線基板用積層体の銅箔をエッチングにより除去し、ポリイミドフィルムPF9を得た。熱膨張係数(CTE)、引き裂き伝播抵抗、熱拡散率、熱伝導率について評価を行った。評価結果を表3に示す。なお、ポリアミド酸溶液cを用い作成した26μm単膜の500nmにおける光透過率は80%であり、YIが16、透明である。
【0067】
実施例6
実施例5において、ワニスBの代わりに、実施例4で得られたワニスDを用いた以外は実施例5と同様に行い、積層体LM2を得た。銅箔をエッチングにより除去し、白色熱伝導ポリイミドフィルムPF10を得た。評価結果を表3に示す。
【0068】
比較例5
実施例5において、ポリアミド酸溶液cの代わりに、合成例4で得られたポリアミド酸溶液dを用いた以外は実施例5と同様に行い、積層体LM3を得た。銅箔をエッチングにより除去し、黄色熱伝導ポリイミドフィルムPF11を得た。評価結果を表3に示す。なお、ポリアミド酸溶液dを用い作成した10μm単膜の500nmにおける光透過率は75.6%であり、YIが53.6、黄色い色である。
【0069】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のフレキシブル基板用積層体や熱伝導性ポリイミドフィルムは、フィラーを含有しながら可撓性を有し、放熱特性、高反射率、寸法安定性に優れ、薄膜においても優れた耐引き裂き性を有する産業上の利用可能性の高いものである。したがって、白色LEDの反射基板用途など様々な放熱反射に係る光学材料として有用である。例えば、印刷・複写装置などのOA機器、携帯・モバイル機器の小型通信機器、テレビ、ビデオ、DVD、冷蔵庫、照明などの家電製品用部品として最適である他、放熱を要求される自動車の部品や光学機器、熱交換器、情報記録材料としてのハードディスクドライブ部品(ハードディスクハブ、ハードディスク基板、磁気ヘッド、サスペンション、アクチュエーターなど)に用いることができる他、これら意外にもLSIパッケージ等の半導体装置、センサー、LEDランプ、発光ダイオード用基板、コネクター、コイルボビン、コンデンサー、スピーカー、電磁波シールド材などにも適用することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド樹脂層の片面又は両面に金属層を有する積層体において、当該ポリイミド樹脂層は下記一般式(1)で表される構造単位を50〜100モル%含有するポリイミド樹脂に熱伝導性フィラーが20〜65wt%の範囲で含有されたフィラー含有ポリイミド樹脂層(i)を少なくとも1層有するものであることを特徴とするフレキシブル基板用積層体。
【化1】

(式中、Ar1は芳香環を1個以上有する4価の有機基である。)
【請求項2】
ポリイミド樹脂層における面方向での熱伝導率が1W/mK以上、450nmにおける光反射率が50%以上である請求項1記載のフレキシブル基板用積層体。
【請求項3】
ポリイミド樹脂層の熱膨張係数が30ppm/K以下である請求項1又は2に記載のフレキシブル基板用積層体。
【請求項4】
ポリイミド樹脂層にフィラーを含有しないポリイミド樹脂層(ii)を有し、当該ポリイミド樹脂層(ii)は無色透明である請求項1〜3の何れかに記載のフレキシブル基板用積層体。
【請求項5】
熱伝導性フィラーがシリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素及びマグネシアから選ばれる少なくとも1種類以上のフィラーであり、平均粒子径が0.3〜15μmの範囲にある請求項1〜4の何れかに記載のフレキシブル基板用積層体。
【請求項6】
ポリイミド樹脂層の引裂き伝播抵抗が1.0〜8.0kN/mにある請求項1〜5に記載のフレキシブル基板用積層体。
【請求項7】
下記一般式(1)で表される構造単位を50〜100モル%含有するポリイミド樹脂に熱伝導性フィラーが20〜65wt%の範囲で含有されたフィラー含有ポリイミド樹脂層(i)を少なくとも1層有することを特徴とする熱伝導性ポリイミドフィルム。
【化2】

(式中、Ar1は芳香環を1個以上有する4価の有機基である。)
【請求項8】
面方向での熱伝導率が1W/mK以上、450nmにおける光反射率が50%以上である請求項7記載の熱伝導性ポリイミドフィルム。
【請求項9】
熱膨張係数が30ppm/K以下である請求項7又は8に記載の熱伝導性ポリイミドフィルム。
【請求項10】
フィラーを含有しないポリイミド樹脂層(ii)を有し、当該ポリイミド樹脂層(ii)は無色透明である請求項7〜9の何れかに記載の熱伝導性ポリイミドフィルム。
【請求項11】
熱伝導性フィラーがシリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素及びマグネシアから選ばれる少なくとも1種類以上のフィラーであり、平均粒子径が0.3〜15μmの範囲にある請求項7〜10の何れかに記載の熱伝導性ポリイミドフィルム。
【請求項12】
引裂き伝播抵抗が1.0〜8.0kN/mにある請求項7〜11の何れかに記載の熱伝導性ポリイミドフィルム。

【公開番号】特開2010−201625(P2010−201625A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46476(P2009−46476)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】