説明

フレーバー又はフレグランス成分又は組成物を炭水化物マトリックス中に導入する方法

本発明は、有効成分、すなわちフレーバー又はフレグランスのデリバリーシステムを製造するホットメルト押出法において、ガラスを形成させるための押出生成物の急冷を低温冷却剤の冷媒、例えば液体窒素を用いて実施する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、カプセル化の分野に関する。本発明は、特に、揮発性成分又は組成物、例えばフレーバー又はフレグランス化合物、又はカプセル化による保護により利益を受け得る他の物質を、炭水化物を基礎とするマトリックス中に導入することに関する公知の方法の加工コスト及び安全性並びに最終製品の品質についての改善に関する。本発明は特に、固体のフレーバー又はフレグランス粒子状組成物の製造方法において、炭水化物材料の水溶液を製造し、前記溶液から水を蒸発させ、得られた濃縮溶液中に有効成分又は組成物を乳化させ、それをダイを介して冷媒中に押出してこの炭水化物/有効材料溶融物をガラス化し、そして最後に、このように得られた粒状組成物を乾燥させることを含む方法に関する。本発明にかかる方法は、冷却段階を、この溶融物を、特に選択された冷却手段、特に液体窒素又はその噴霧物と接触させるか、又は更には液体窒素で冷却された金属表面と接触させることにより行うことを特徴とする。
【0002】
カプセル化技術は、特にフレーバー及びフレグランス産業において、有効成分、すなわち香料及びフレーバーの揮発性及び不安定性により惹起される問題を緩和するため、広範に使用されている。実際にこれらの性質のために、これらの有効成分を最終消費者製品中への導入の前に、貯蔵又は加工の間に揮発性成分の損失が生ずることがある。更に、有効成分のカプセル化は、それらのマトリックス系からの適切かつ制御された放出を確保するため、又はそれらを酸化もしくは湿度から保護するためにも使用される。
【0003】
従って、揮発性及び不安定性のフレーバー又はフレグランス成分に関する安定性又は放出の問題を減らすか又は除くために、かかる成分を炭水化物マトリックス中にカプセル化してそれらの揮発性又は不安定性を減らす多くの試みが見られることは驚くべきことではない。このことは、このように得られた粒子を最終消費者製品中に導入する際か又はかかる製品を最終的に消費する際に引き続くフレーバー又はフレグランスの放出のために、フレーバー又はフレグランスの成分又は組成物を含有する安定性の易流動性の粉末の製造という結果をもたらす。
【0004】
従って、従来技術により、特にフレーバー産業において固体精油粒子状組成物を製造する多くの技術が発展した。これらの技術の中では、押出法は、一般に、マトリックスを構成する炭水化物材料の使用に基づいており、このマトリックスを溶融状態に加熱して、そして精油又はフレーバー成分と合して、そして押出し、最後に急冷してこのフレーバーを保護するガラスを形成させる。かかる方法により得られ、かつフレーバー及びフレグランス産業に使用される一般的な生成物は、有効成分が炭水化物ガラス全体にわたって液滴として均一分布した乾燥造粒デリバリーシステムである。
【0005】
本発明の分野に適当な方法の非常に初期の例の一つは、米国特許第3041180号(Swischer社)であり、これは、高温エマルションを有機冷媒中に押出することにより急冷溶融物ガラス化段階を実施し、その温度は室温ないし−18℃まで変動してよい上述の類型の方法を記載している。
【0006】
この分野における従来技術文献の他の重要な例は、米国特許第3704137号であり、これは、オイルと酸化防止剤と混合し、これとは別個に水、スクロース及びDE20未満の加水分解穀粒固体とを混合し、これらの2つの混合物を一緒に乳化し、得られた混合物を比較的低温の液体溶剤中に棒形で押出し、過剰の溶剤を除去し、そして最後に凝結防止剤を添加することにより形成された精油組成物を記載している。この例示された溶剤は、イソプロパノール(IPA)である。
【0007】
同様の方法に関する後続の特許は、米国特許第4610890号及び同第4707367号であり、これらは、精油を高い含有率で有する固体精油組成物を製造するにあたり、この組成物をショ糖、デンプン加水分解物及び乳化剤を含有する水溶液を形成させることにより製造する方法を記載している。この精油とこの水溶液とを閉じられた容器中で圧力制御下でブレンドして、均質溶融物を形成させ、これを更に比較的低温の有機溶剤中に押出し、乾燥させ、そして凝結防止剤と合する。ここでも、引用された低温有機溶剤はIPAである。
【0008】
上述の特許及びかかる文献中で参照されている他の特許は、単に、フレーバー又はフレグランス成分の種々のカプセル化マトリックス中への固定、特にホットメルト押出法の例による固定に関するかなりの量の特許文献を説明するものにすぎず、かつ本質的には、これらの文献は押出された溶融物を急冷するための冷却用液体の使用に訴え、その際、この冷却材料の温度はことによると−20℃の低さである全てカプセル化法を開示している。これらの事例の大多数においては、選択された有機液体はIPAである。
【0009】
一般に、この冷却用有機溶剤は、カプセル化物の製造において2つの重要な機能を果たす、すなわち、押出されたストランドを急速に冷却して、有効材料、すなわちフレグランス又はフレーバーを包囲する稠密な炭水化物ガラスを形成させ、かつ残留するいかなるフレーバー又はフレグランスオイルをも冷却/急冷されたストランドの表面から洗浄する。これらの両方の機能は、安定性の押出生成物を得るための基幹である。
【0010】
近年、IPAは、かかる方法において極めて多く使用される冷却手段である。しかしながら、かかる押出法におけるIPAの使用は、安全性及び環境問題に関するいくつかの欠点を有するのが一般的である。これは、11℃の引火点を有する可燃性材料であり、その蒸気は揮発性有機化合物(VOC)に分類され、こうして、消費されるIPAはその処理及び貯蔵のために特定の装置を要する危険な廃物と考えられる。更に、IPAは場合により押出材料中にカプセル化され、かつ最後の乾燥段階により完全には除去できないこともあることが観察されている。
【0011】
これらの従来技術文献の観点から見ると、フレーバー又はフレグランスを含有するカプセルもしくは粒子又は他の有効材料を製造する改善された方法のために、この方法の安全性及び効率を高め、かつ同様に得られる製品の質を、この製品の必須の特性、例えば湿分、ガラス転移温度(Tg)及びフレーバー含有率を実質的に変えることなく高めることが明らかに必要とされている。
【0012】
本発明の概要
目下のところ驚くべきことに、以下の段階:
a)有効成分又は組成物と、少なくとも1種の炭水化物材料及び場合により乳化剤の水溶液を有するマトリックスとを有効な温度及び撹拌条件下で合し、そしてブレンドして、適切な湿分含有率を有するこれらの均質な溶融物を得る段階;
b)この均質な溶融物を、ダイを介して押出する段階;
c)この溶融物を冷却する段階;
d)得られた材料を、それがダイを出る際か又はこの溶融物を冷却した後に細断、切断、粉砕又は粉末化する段階;及び
e)場合により乾燥させる段階を含み、
段階c)の溶融物の冷却を、押出された材料と−25℃未満の温度を有する冷媒とを接触させることにより実施する、有効成分、更には「有効」、すなわちフレーバー又はフレグランス成分又は組成物と称される有効成分をカプセル化する方法を提供することにより、従来技術の方法が直面する欠点を解消した。
【0013】
好ましくは、この冷媒は、−50℃〜−200℃の温度を有し、特に好ましくは、この冷媒は液体窒素又は液体窒素により冷却された金属表面である。この特に好ましい本発明にかかる方法の実施態様によれば、この押出された溶融物の冷却は、液体窒素浴中への押出により行う。
【0014】
液体窒素の極めて低い温度(−196℃)にもかかわらず、かつかかる低温で見込まれるものとは異なり、粒子中の亀裂又は割れの発生が観察されないことを確証した。更に、この粒子状材料の物理的特性、及びカプセル化されたフレグランス又はフレーバーオイルの含有率は、同様に粒子上の表面のオイルレベルのために顕著により高い温度で低温有機溶剤を使用する従来技術の方法を用いて得られたものと同様である。換言すれば、かかる低温の悪影響は観察されず、かつこのことは全く見込まれない結果であった。
【0015】
他方、本発明は、この種の公知の従来技術と比べて安全であり、かつ迅速及び効率的なガラス形成をもたらす方法を提供する。液体窒素は、不燃性、非毒性であり、かつ天然物である。これらの粒子の分離及び消費された液体窒素の廃棄は、空気への蒸発により行う。このように、本発明によれば、現在の方法では一般的なIPA浴を排除でき、かつほとんどのIPAの除去のための最後の段階で現在使用されている装置及びIPA処理装置、例えばかかるVOCの冷却、回収及びその廃棄に必要な装置の簡易化が可能になる。このことは、回分法であろうと連続法であろうと全ての公知の製造方法に適用されるので、本発明にかかる方法は費用対効果がより大きい。
【0016】
上記引用した従来技術は、−20℃未満の温度での冷却/急冷材料の考えられる使用に関しては全く触れていない。それというのも、実際、極端に低い温度は押出ストランドの粉砕をもたらすか、又は例えばIPA冷却を用いて得られた押出品と比較した場合に少なくとも異なる表面形態を示すことが見込まれていたからである。液体窒素の使用は、液体を急冷手段としてホットメルト型押出工程に使用することに関する全ての利点、例えばこの液体と押出ダイの穴の稠密状態をもたらす押出ストランドとの最適な接触を提供する一方で、有機溶剤、特にIPAを使用する公知の従来法に関する欠点を回避することを確証した。IPAは、粒子をバルクの冷媒及び繰り返しのその使用のための循環から分離するための機械的手段の必要性を含む一方で、液体窒素は空気中で蒸発し、かつ環境的理由のための回収を必要としない。更に、液体窒素を使用した場合には、残留するカプセル化された液体がその粒子中に存在しないことが観察された。このように、得られた固体生成物、すなわちカプセル化されたフレーバー又はフレグランスからなる本発明の組成物は、IPA又はかかる冷媒残留物を実質的に有しない。液体窒素の使用はまた、現在の方法では製造することができない粒子状フレーバー又はフレグランス組成物の製造をもたらす。それというのも、有機溶剤、すなわちIPA中での炭水化物マトリックスの溶解度のためか又は押出時点では、そのTg(ガラス転移温度)がIPA冷却温度と比べて低いとからである。
【0017】
図面の簡単な説明
図1及び図2は、それぞれIPA、液体窒素中への押出を含む本発明にかかる方法により得られた生成物のうち、実施例3に記載された条件下で撮影された写真を示している。
【0018】
図3及び図4は、それぞれIPA、液体窒素中への押出を含む本発明にかかる方法により得られた生成物の走査型電子顕微鏡(SEM)像を示している。
【0019】
好ましい実施態様の詳細な説明
本発明を、以下により詳細に説明する。
【0020】
本明細書の内容において、用語「含む」は、「他のものの中に有する」の意味と解される。「のみから成る」と理解されるべきではない。
【0021】
本発明は、上記引用した固体粒子状組成物、すなわちフレーバー又はフレグランス粒子状組成物の製造方法に関する。本発明にかかる実施態様によれば、この冷却段階は、溶融物を液体窒素浴中に押出することにより実施する。
【0022】
上述の方法は、使用される材料に顕著に依存し、かつ本方法の第1の段階において添加され、第1の段階において適切な湿分含有率を得るために乾燥段階の間に減らされるべき水の量に依存し、許容され得るガラス転移温度(Tg)を有する最終生成物をもたらす多様な押出技術を含む。実際、重要なガラス転移温度は、大部分の用途のためには好ましくは少なくとも20℃より高く、特に好ましくは40℃より高い。しかしながら、幾つかの場合においては、周囲温度未満のガラス転移温度を有するデリバリーシステムを製造することが有益であってよく、これはWO96/11589に記載されており、その内容は参照をもって開示されたものとする。従って、本発明において水が利用される割合は、当業者がマトリックス中に使用される炭水化物ガラス及び必要とされる最終生成物のTgの関数として調節及び選択可能な値の広い範囲内で変動する。第1の段階における好ましい湿分含有率は、12質量%未満である。
【0023】
本発明にかかる方法は、回分的に又は連続的に実施してよい。特に回分式の実施態様によれば、溶融物を、有効材料をカプセル化するガラスに冷却及び急冷する手段を除き、本方法のための一般的な条件は、例えば米国特許第4610890号及び同第4707367号の例に記載されているようなフレーバーのカプセル化方法の条件と同様であり、その内容は参照をもって開示されたものとする。この類型の方法により得られた生成物は、溶融物の形成及びこの溶融物の適切な温度での押出に基づいている。一般的には、材料又は組成物を合し、そしてショ糖、デンプン加水分解物及び場合により乳化剤の水性混合物とブレンドし、次いでこの水性混合物を水の沸点か又はそれよりわずかに高い温度、しかし好ましくは130℃以下に加熱して均質な溶融物を形成させ、それを次いでダイを介して押出する。次いで、このダイを出る溶融塊を、冷却前に依然としてプラスチック状態のままで細断してもよいし(溶融造粒か又は湿式造粒技術)、直接冷却して、粉砕前に形状及びサイズを押出パラメータの関数として調節できる押出固体を形成させてもよい。本発明によれば、細断された押出物か又は溶融ストランドは、それがダイを出る際に液体窒素中に入れるか又は液体窒素浴により冷却された容器中に入れて急冷させ、そしてフレーバー又はフレグランス成分又は組成物をカプセル化する非晶質ガラスを形成する。次いで、このように冷却されたストランド又は粒子を、いかなる機械的分離装置をも必要とせずに回収する。
【0024】
本方法の最終段階は乾燥段階であり、その目的は押出生成物の湿分含有率を所望の水準まで減らすことである。これらの粒子を乾燥させた後に、これらを凝結防止剤/易流動化剤、例えば二酸化ケイ素と混合し、そしてふるいにかけてサイズ規格に適合させる。
【0025】
液体窒素冷却による急冷段階は、従来公知の回分法、例えば詳細は上述の米国特許に記載された方法及び連続法の両方を用いて使用することが有利である。特に、2004年3月10日に出願され、かつ2003年3月19日の優先権を主張する国際特許出願WO2004/082393に開示された連続法に適用することが有利であり得、これは参照をもって開示されたものとする。
【0026】
この文献は、完全に連続的に実施し、かつこの方法の連続的設計においては、一方では炭水化物材料の水溶液の濃縮に際して水の蒸発を段階a)で提供し、他方では押出前に炭水化物と有効成分との混合物の冷却を提供する2つの熱交換器を含むという事実を特徴とする方法を詳細に記載している。この第1の熱交換器の存在により、炭水化物水溶液の正確な濃縮が可能になる一方で、この溶液のこの熱交換器中での平均滞留時間を最小に維持してマトリックスをなす炭水化物成分の損傷を減らす。他方、第2の熱交換器は、炭水化物と有効成分との混合物を所望の押出温度に冷却する正確な経路を提供し、その際、この工程の終盤で、フレーバー又はフレグランスの保持性の点で、かつ特に揮発性材料の保持性に関してより一定な生成物を提供する。更に、この押出温度の正確な制御により、最終的に得られる粒子状組成物のサイズ分布のより良好な制御が可能である。
【0027】
このように、連続的に実施されるホットメルト型押出法に関する本発明にかかる特定の実施態様によれば、固体フレーバー又はフレグランス粒子状組成物の製造方法は、上述の段階を含み、全ての段階は連続的に実施し、かつ段階a)で形成された均質な溶融物はこの段階のための連続法経路の設計に適切に配置された2つの熱交換器により得られる。最初に、炭水化物材料の水溶液を第1の熱交換器により濃縮してこのシロップ中の水の量を減らし、そしてカプセル化されるべきフレーバー又はフレグランス材料と混合し、次いでこれらの混合物、すなわちシロップ/有効材料混合物を第2の熱交換器の表面上を導通させてそれに所望の押出温度値をもたらす。本方法の段階b)及びd)は変わらないままであり、そしてこの押出された材料の急冷を上述したように液体窒素冷却により実施する。
【0028】
連続法は、全ての操作をほぼ手動で行う回分法とは異なり、コンピュータ制御された方法を意味する。実質的に、本発明にかかる方法のこの実施態様の異なる加工段階は、適切にサイズ化し、かつ一緒に接続された場合に組み合わされて連続法をなす装置の異なる部分によりそれぞれ実施する。この連続法により、この方法の変数、特に押出温度を正確に制御することが可能になり、従って一定の品質の最終生成物を提供することが可能になる。更に、回分法の態様と比較すると、この方法によれば、製造される容量がより大きいために最終生成物の製造コストを低減することができる。実際、例えば上述の従来技術からの方法において開示されている回分条件によれば、組み合わされ、かつマトリックス中に乳化されるオイルの量の多くとも約75〜85質量%をカプセル化することが可能になる一方で、本発明にかかる連続法により、濃縮キャンディと合される90%を上回る有効成分を効率的にカプセル化することが可能になる。
【0029】
段階a)の蒸発及び冷却操作において使用される熱交換器は、それぞれ、掃引式(swept)及び掻取式の表面を有する熱交換器である。
【0030】
表面掃引式か又は表面掻取式の熱交換器は、基本的には、仕上内部表面を有する円筒、ほぼ円筒軸上に設けられたロータ、及びこのロータの回転方向に応じて連続的に掃引又は掻取る、掻取用又は掃引用ブレードを設けるためのロータにより保持されたピン又は他の手段、内部円筒壁からの加熱された又は冷却された液体の層からなり、その際に加熱又は冷却は通常、熱交換器円筒を包囲する環形ジャケット中の熱媒又は冷媒により行われる。この類型の表面掃引式又は表面掻取式の熱交換器は、例えば米国特許第3633664号に開示されている。場合により、米国特許第4073339号に開示されているように、ロータの円筒状外表面を加熱又は冷却するために第2の熱交換器のための通路が存在していてよいので、ジャケット付きの円筒中のチャンバを導通する生成物塊状物を、同時に、掻取手段の作用によりこの塊状物を混合しながら、塊状物の外側及び内側の両方から加熱又は冷却することができる。
【0031】
他の多くの型の表面掃引式又は表面掻取式の熱交換器は、文献、例えば米国特許第3955617号又は同第5518067号に記載されており、後者特許文献中に開示された装置は、所定の粘度を有する流体の加熱又は冷却に特に採用される。本発明は、1種の特定の型の熱交換器に限定されるものではない。本発明にかかる連続法の目的には、商業的に入手可能な多くの型の装置が好適である。従って、装置のより詳細な記載はここでは必要でない。それというのも、これはこの文献に十分記載されており、かつ当業者により十分公知だからである。
【0032】
第1の熱交換器は、好ましくは表面掃引式熱交換器であり、これにより炭水化物材料か又はシロップの最初の水溶液から水を蒸発させて濃縮された炭水化物溶液か又はキャンディを形成させることが可能になる。かかる熱交換器の存在は、シロップか又はキャンディの平均暴露滞留時間を減らして加熱する効率的な手段を提供する。このことは、回分法に関して、マトリックスの炭水化物成分にわたる加熱のために考えられる損傷を有利に減らすという点で更に改善する。結果として、スクロースが炭水化物材料の中に存在する特定の場合において、この炭水化物の褐変及びオフフレーバーの発生の危険は最小限になる。更に、マトリックスがゴム材料を有する他の特定の場合に、過剰の熱暴露はこのゴム材料の乳化特性に不利益な影響を及ぼすことがある。ここで再び、かかる欠点は本発明の方法により最小限になる。
【0033】
他方、本発明にかかる連続法における前記の第1の熱交換器の存在は、蒸発用の熱交換器へのシロップの供給速度を制御し、かつ結果として、濃縮され形成されたキャンディは色及びフレーバー又はフレグランスが均一であることを含意する。このことはまた、蒸発段階のばらつきが個々のバッチ間の(炭水化物のカラメル化からの)視覚的及びフレーバーの差異をもたらすことがある回分法についての改善である。
【0034】
本発明の範囲内で使用される第2の熱交換器により、押出されるキャンディ有効混合物(エマルション)を、本方法の第4の段階において正確でかつ規定された温度に冷却することが可能になる。特に当業者には、全てのホットメルト型押出法において、マトリックス材料、湿分及び有効成分又は組成物の所与の組合せにとって、最適な押出温度が存在することが知られている。実際、この押出温度が高すぎる場合には、エマルションが分離すること、仕上生成物中の低い揮発物含有率がもたらされること、並びにダイ穴を出る際にこうして蒸発分離しうる低沸点成分が分解することを惹起することがある。更に、かかる温度条件は、最終生成物中の低い有効物含有率、フレーバー又はフレグランスのプロファイルの変化、及びダイを出るストランドの膨張による押出生成物のストランドの弱化をももたらすことがある。他方、押出温度が低すぎる場合には、この混合物は高い粘度のために押出することが困難であり、従って押出するためにより高い圧力条件を必要とし、このことは、ダイを出るストランドの直径の制御が不十分になることがある。この低い温度は、長い押出時間をもたらすことも考えられ、これは押出量に悪影響を与える。
【0035】
目下のところ、押出回分法においては、押出温度を十分に制御することはできない。実際、容器のジャケット温度は調節されるが、押出前に材料の最終温度に大きな影響を与えることはできない。しかしながら、このことは、本発明の連続法において、この混合物が乳化装置を出た後に、このエマルションは熱交換器、好ましくは表面掻取式熱交換器に導通させ、この混合物を正確な所望の押出温度に冷却して改善される。結果として、本方法の終盤に形成された生成物は、有効成分の保留性において、特に高揮発性成分に関してよりいっそう均一である。更に、押出温度のより良好な制御により、狭いサイズ分布を有する粒子状組成物を製造することが可能になり、又は換言すれば、この粒度の制御を改善することが可能になる。
【0036】
本発明にかかる方法の他の態様及び利点は、上述の国際特許出願に含まれる詳細な説明中に開示される。
【0037】
本発明にかかる方法の全ての実施態様の第1の段階は、少なくとも1種の炭水化物材料の水溶液の製造であり、前記溶液は「シロップ」と称される。炭水化物材料としては、押出技術を介して加工して乾燥押出固体を形成することができる任意の炭水化物か又は炭水化物誘導体を使用することができる。好適な材料の特定の例は、例えばスクロース、グルコース、ラクトース、レブロース、フルクトース、マルトース、リボース、デキストローズ、イソマルト、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール、ペンタトール(pentatol)、アラビノース、ペントース、キシロース、ガラクトース、水素化されたデンプン加水分解物、マルトデキストリン、寒天、カラゲナン、他のゴム、ポリデキストローズ、合成ポリマー、例えばポリビニルアルコール、半合成ポリマー、例えばスクシニル化デンプン、セルロースエーテル、タンパク質、例えばゼラチン、並びにそれらの誘導体及び混合物からなる群から選択されるものである。
【0038】
本発明の特別な実施態様によれば、マルトデキストリン又はマルトデキストリンと、スクロース、グルコース、ラクトース、レブロース、マルトース、フルクトース、イソマルト、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール及び水素化されたデンプン加水分解物からなる群から選択された少なくとも1つの材料との混合物、好ましくは20を上回らない(≦20)デキストローズ当量、特に好ましくは18のDEを有するマルトデキストリンを使用する。
【0039】
上述の炭水化物材料は本発明により一例として挙げられており、かつそれらは本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。多糖類を特定の例として上述したが、押出可能であり、かつ押出型の製品用に好適な材料であると今後示唆されてよいフレーバー又はフレグランス用途又は食料又は他の食事用途に好適な押出固体の製造においてマトリックス材料として現在使用されている任意の材料が本発明の目的にとって十分であり、従ってこれにより本発明に含まれることは明らかである
炭水化物材料は、マルトデキストリンを好ましくは30〜70質量%、特に好ましくは40〜60質量%有する。
【0040】
炭水化物材料は、スクロースを好ましくは40〜60質量%、特に好ましくは30〜49質量%有する。
【0041】
本発明の第1の段階において製造される水溶液又はシロップは、一般に、この溶液の全質量に対して、水12〜40質量%、好ましくは18〜25質量%を含有する。
【0042】
このシロップを製造するために、以下のとおり進行する。水の一部を混合槽中に計量供給する。炭水化物材料を、所望の量に達するまで乾燥固体質量槽に回分的に添加するか又は搬送する。この材料を、水を収容する混合槽中に滴下させる。水の第2の部分を、この槽中の炭水化物の頂部上に噴霧して湿潤及び分散を促進する。マトリックスが1種より多い炭水化物成分を有する場合には、この方法を繰り返す。また、この混合槽中に、他のマトリックス成分、例えばpH調節剤、乳化剤、ゴム又は着色剤を必要に応じて添加してよい。例えば、好適な乳化剤には、モノグリセリド及びジグリセリドのスルホアセテート並びにポリグリセロールエステル、レシチン及び変性レシチンが含まれる。これらの乳化剤を一例として挙げたが、しかしこれらは本発明を限定するものとして解釈されるべきではない、それというのも、疎水性部分及び親水性部分を有する任意の乳化剤が本発明の範囲内で使用することができるからである。この混合槽の内容物を高剪断で混合して均質な分散液を形成させる。この分散液を、その底部に位置する加熱槽に重力により更に移送させる。この分散液を、この槽から抽出するか又は多管式熱交換器を介して連続的にポンプ輸送し、そしてこの高温槽にループで戻す。このシロップを約60〜80℃、好ましくは70〜80℃に加熱して溶液を形成させる。このシロップを所望の温度に加熱した後に、濃縮及び更なる加工のために貯蔵槽に移送する。
【0043】
次いで、このシロップから水を蒸発させて、濃縮された炭水化物溶液又は溶融物を形成させる。この濃縮後のこれらの湿分含有率は、マトリックス組成及び導入されるべき有効成分の質に応じて変動する。一般に、このキャンディの湿分は、この濃縮溶液の全質量に対して2〜11質量%、好ましくは3.5〜7質量%の間で変動する。好ましくは、この湿分含有率は12質量%を上回らない。
【0044】
実際、本発明にかかる連続法においては、この混合物を保持槽から、水を蒸発させてキャンディ中の所望の水分レベルを達成される表面掃引式熱交換器を介してポンプ輸送する。一般に、熱交換器の温度は105〜150℃である。特定の実施態様においては、この温度は115〜135℃である。この温度はマトリックス組成の関数として調節する。この熱交換器の内容物を槽中に排出し、この槽中で蒸発した水を雰囲気に排気し、そして濃縮されたキャンディはこの槽の底部に降下する。
【0045】
「有効」又は「有効成分又は組成物」と称される組成物、例えばフレーバー又はフレグランス組成物、ビタミン又は酸化防止剤、代用糖又は栄養補助剤、例えばポリ不飽和脂肪酸をこのキャンディ全体にわたって分散させて、押出されるべき混合物を形成させる。好ましい実施態様によれば、この有効物はフレーバー又はフレグランス成分又は組成物である。本発明にかかる方法において使用される用語フレーバー又はフレグランス成分又は組成物は、天然及び合成の両方に由来する種々のフレーバー及びフレグランス材料を規定するものと考えられる。これらには、単独化合物及び混合物が含まれる。本発明にかかる方法は、液体又は固体の形、親水性又は疎水性であってよいカプセル化される揮発性でかつ不安定な成分の製造に利用することができる。かかる成分の特定の例は、最近の文献、例えばPerfume and Flavor Chemicals、S. Arctander著、Montclair N.J.(USA); Fenaroli's Handbook of flavour Ingredinets、CRC Press又はSynthetic Food Adjuncts by M.B.Jacobs、van Nostrand Co., Inc.に見出され得るものであり、かつ消費者製品に賦香、フレーバー付与及び/又はアロマタイジングを行う、すなわち香り又は味を消費者製品に付与する当業者に十分公知である。
【0046】
本発明にかかる方法により、天然抽出物をカプセル化することもできる。これらの抽出物は、とりわけ例えば柑橘類の抽出物、例えばレモンオイル、オレンジオイル、ライムオイル、グレープフルーツオイル又はマンダリンオイル又はコーヒーオイル、紅茶オイル、ミントオイル、ココアオイル、バニラオイル又はハーブとスパイスの精油である。
【0047】
デリバリーシステムに有効成分を効率的にカプセル化するためには、この有効成分を小さな液滴としてマトリックス材料全体にわたって均一に分散させなければならないことは公知である。有利には、本発明の連続法によれば、本方法の前段階において得られた濃縮混合物は固定速度でその槽を出て、そしてこれをインライン型高剪断ホモジナイザーを介してポンプ輸送する。この均質化装置の直前で、この有効成分を加工ライン中へ固定速度で計量供給する。この均質化装置における滞留時間は、10秒未満である。
【0048】
更に、回分法と比較すると、この方法の連続式実施態様により混合物の高剪断条件への暴露時間を短縮することが可能になる。粘稠なマトリックス内部での高剪断ブレードの作用は摩擦のために顕著な量の熱を発生させるので、この連続式態様は熱不安定性成分の損傷の防止に寄与する。更に、均一な湿分含有率のキャンディの一定の流れへの有効成分の添加の均一な速度は、本発明の回分法の個々のバッチと比較すると一定した仕上生成物をもたらす。
【0049】
この連続式の実施態様においては、炭水化物及び有効成分(すなわち、フレーバー又はフレグランス)エマルションが表面を導通する第2の熱交換器は、好ましくは、上記で説明した限界間で最適化された温度に混合物を冷却する表面掻取式熱交換器である。一般には、押出温度は102〜135℃、好ましくは112〜130℃である。この押出温度は、マトリックス組成、及びフレーバー又はフレグランス材料の組成及びレベルの関数として最適化する。当業者は、この最適化温度を規定することができる。次いで熱交換器は、特に正確にこの温度に到達することを可能にし、かつこの制御を介して、有効成分の保留性の点で有利には均一な生成物、並びに最終的な粒子状組成物サイズのより良好な制御を提供することを可能にする。
【0050】
回分法及び連続法の両方において、押出段階は、溶融混合物をダイ穴に強制的に通過させ、こうして生成物のストランドを形成させ、このストランドが冷浴、好ましくは液体窒素浴中へ降下することである。上記で指摘したように、この押出工程の制御は、生成物の質及び収率にとって極めて重要である。更に、本発明の連続式の実施態様によれば、固定速度で作動して一定の押出速度をもたらすポンプを供給してよい。本発明の範囲内においては、一般的な連続式の押出圧力は、1〜3×105Paの範囲内である。従って、これらの低い押出圧力のために、回分法と比較するとダイ穴の出口でのストランドの直径の膨張は最小化され、かつサイズの良好な均一性を得ることができる。更に、相の分離が良好に回避される。全熱暴露時間は、製造される全ての材料にとって均一であり、かつ最終的にはこの均一な押出速度は、回分法の場合に見込まれる直径と比較して均一なストランド直径を有利にもたらす。
【0051】
この押出されたストランドは、液体窒素冷却手段に降下し、そしてこれは極めて迅速な冷却を提供して、この溶融ストランドを非晶質ガラスに変換し、次いで上述のように乾燥させる。
【0052】
本発明の連続法においては、これらの粒子を好ましくは多段型乾燥器か又は流動床乾燥器の何れかの中で、それぞれ一般的な滞留時間の2時間か又は45分で乾燥及び冷却する。これらの乾燥器は一例として挙げられる。それというのも、任意の公知の他の型の連続式乾燥器も良好に機能するからである。
【0053】
上述したように、本発明にかかる方法によれば、カプセル化された冷却用液体、すなわち液体窒素を含有しない押出生成物を得ることが可能になる。
【0054】
液体窒素冷却による急冷段階は、一般には、有効材料、特にフレーバー又はフレグランス材料をカプセル化する非晶質ガラスの形成を目的とした急冷媒中への押出されたストランドのガラス化を含む任意の従来のホットメルト型の押出法に適用することができる。このように、この導入全体にわたって引用した特許に記載された従来技術の全ての方法に一般に適用することができ、かつ最近の特許文献WO01/74178、US5709895、WO02/65858及びUS6607778及び極めて関係のある例に記載された方法の範囲においても適当である。かかる公知の全ての方法は、有利には、一般に該文献に記載されている冷却用有機溶剤を置き換えるために液体窒素を使用する急冷段階を含むことができ、かつかかる置き換えは当業者により目下この特許出願に記載された様式で容易に実施されるので、本発明の範囲は、かかる段階a)、b)及びc)を実施する全ての種々の様式を含み、かつ溶融押出物の急冷に関して教示を導入するために改良されたこれらの段階に関するかかる従来技術文献の内容は参照をもって開示されたものとする。
【0055】
上述の本方法により得られた本発明の押出固体は、特に、それに含まれる親水性又は疎水性のフレーバー付与又は賦香成分の運搬に適切である。これらの押出固体は、一般に、湿分及び酸素に対して安定であり、かつそれにカプセル化された賦香又はフレーバー付与成分又は組成物の分解を回避する造粒生成物である。これは、これらの成分がこの非晶質押出マトリックスに均質かつ均一に分布し、かつ完全にその中に導入されるという事実の結果である。これらの造粒生成物は処理することが顕著に容易である。それというのも、これらが導入される食品、粉末飲料、チューインガム、医薬品、練り歯磨及び他の食用及び消費者製品に加工する際に、これらが粉塵量をそれほど生じさせないからである。この生成物を香料消費者製品に使用する場合、一般に固体か又はクリーム状製品、特に石鹸、化粧品及び粉末界面活性剤中に導入される。一般に、味又は香りを付与又は改良するために押出粒子状組成物が現在使用されている任意の消費者製品が、本発明の対象である。本発明はまた、本明細書中に記載された方法により得られ、かつ急冷用溶剤を実質的に有しない粒子状フレーバー及びフレグランス組成物を含む。
【0056】
本明細書では、「急冷用溶剤」は例えば押出ダイから来る溶融材料を急冷又は冷却するために慣用的に使用され、こうして有効物質、例えばフレーバー又はフレグランスを包囲するガラスを提供する任意の媒体であると解する。この急冷用溶剤は、一般には低温有機溶剤、例えばヘキサン、しかしより慣用的にはイソプロパノール(IPA)である。代替的に、この低温液体は、リモネン、及び/又は大量のリモネンを有する柑橘系果物の植物抽出物であってよい。更に、幾つかの溶剤の混合物を慣用の方法で使用してもよい。
【0057】
本発明によれば、好ましくは、冷却手段として、液体窒素浴を使用し、これにより上述の慣用の急冷用溶剤を実質的に有しない新規な押出生成物がもたらされる。
【0058】
本発明によれば、フレーバー又はフレグランス以外の材料を有利に押出し、こうしてガラスマトリックス中に包囲させることができる。この例は、機能添加剤、例えば代用糖材料、ビタミン及び食事又は栄養補助剤である。特に、ポリ不飽和脂肪酸(以下、PUFASと称する)又は市販のPUFASリッチのオイルのような成分は、かかる材料を酸素作用から効率的に保護する本発明によるカプセル化により利益を受け得る。この酸素作用は、酸敗臭の発生、並びに、香り及び味の消失をもたらす。本発明のこれらの好ましい実施態様は、酸化及び湿度に対して安定したままで、かつ不快な味を発生させないPUFASリッチのオイルを有する粒子を提供することができる。
【0059】
PUFASリッチのオイルは市販されている。かかるオイルは、種々の由来、例えば魚か又は藻類であってよい。これらは、例えば分子蒸留によりPUFASリッチにすることができる。
【0060】
本方法の実施態様か又は本発明にかかる粒子においては、PUFASリッチのオイルは、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、アラキドン酸(ARA)及びこれらの少なくとも2種の任意の混合物からなる群から選択されたPUFASを含む。
【0061】
このPUFAリッチのオイルは、場合により酸化防止剤と一緒に供給してよい。例えば、酸化防止剤が供給されたオイルは、添加されたアスコルビン酸(ビタミンC)、トコフェロール(ビタミンE)又はそれらの両方を有してよい。トコフェロールは、α−、γ−、又はδ−トコフェロール又はこれらの2種以上を有する混合物であってよく、これは市販されている。
【0062】
トコフェロールは、油溶性であり、かつこの酸化防止剤を有する供給されたオイルの0.05〜2%、好ましくは0.1〜0.9%の範囲内の量で容易に添加してよい。
【0063】
アスコルビン酸は、一般に、例えばこの供給されたオイルの0.05〜5%の量で添加してもよい。
【0064】
また本発明にかかる方法を、上述の任意の組成物、すなわちビタミン、酸化防止剤及び他の食料又は栄養成分を個別的にカプセル化するために有利に使用することは当然である。
【0065】
一般的に、本発明にかかる方法は、慣用的に押出を介して加工することができる任意の製品か又は有効成分もしくは組成物のカプセル化に使用することが有利である。この例は、特にフレーバー、フレグランス、栄養及び/又は化粧品成分、並びに市販の消費者製品に関する現在の文献中に容易に見出すことができる。
【0066】
実施例
本発明を以下の実施例においてより詳細に記載し、その際、温度は摂氏温度であり、省略形は当業者において慣用の意味を有する。
【0067】
実施例1
本発明による回分法
以下の成分を、示された割合で用いて、回分式法を使用して押出生成物を製造した。
【0068】
成分 グラム 乾燥%
マルトデキストリン18DE 9660 46.26
スクロース 8920 42.72
オレンジオイル 2100 10.06
レシチン 200 0.96
5200
26100 100.00
マルトデキストリン及びスクロースを水中に溶解させ、そして130℃に加熱して含水率を約6質量%に減らした。レシチンをオレンジオイル中に溶解させ、次いで撹拌しつつ混合して均一な溶融物を形成させた。この混合物を0.8mmの穴を有するダイプレートを介して、3バールの圧力下で、約30リットルの液体窒素を含有する受取容器中に浸漬させた0.5mmの穿孔を有するバスケット中に押出した。この押出を完了させた後に、このバスケット中に回収された低温ストランドをこの液体窒素浴から取り出して、乾燥器中に入れた。乾燥後に、1%の二酸化ケイ素を易流動化剤として添加した。この最終生成物は、フレーバー9.8質量%、湿分4.3%を含有し、かつ46℃のガラス転移温度を有していた。
【0069】
実施例2
本発明による連続法
以下の組成:
成分 質量部
スクロース 40
マルトデキストリン18DE 40
水 20
のシロップ溶液を、80℃で第1の熱交換器中に8.0kg/分の速度でポンプ輸送した。
【0070】
蒸気(約150℃)をこの熱交換器のジャケットに供給して、水をこのシロップから蒸発させた。蒸気温度及び流量を調節して、蒸発後に所望の湿分含有率を得た。この熱交換器における滞留時間は、2分であった。
【0071】
この濃縮されたシロップと水を第1の熱交換器から槽中に出し、この水蒸気を除去した。
【0072】
この槽からこの溶融物をポンプにより除去し、そしてフレーバーオイル(冷圧オレンジオイル96質量部、レシチン4質量部の混合物)を加工ラインに1.5kg/分の速度で注入した。
【0073】
この溶融物及びフレーバーオイルの混合物を10秒にわたりインライン型高剪断混合機に導通させ、エマルションを形成させた。
【0074】
このエマルションを第2の熱交換器に導通させ、120℃の温度に冷却し、該温度はこの熱交換器の出口で測定された。この熱交換器のジャケットを流通する媒体(熱水)の温度を調節して、このエマルションの出口温度を制御した。次いでこの生成物を押出ダイに導通させ、液体窒素中に入れた。ここで得られた粒子を流動床乾燥器中で45分の滞留時間で乾燥させた。
【0075】
得られた粒子は、この粒子の全質量に対してオレンジオイル16.8質量%及び湿分4質量%を含有しており、かつ最初に合された冷圧オイルの95%がこの工程の終盤でカプセル化された形で見出された。
【0076】
実施例3
比較例
実施例1に記載したものと同様の、それぞれオレンジオイル10%を含有する2つの20kgの炭水化物マトリックスの予備バッチを、回分法と同様に押出して液体窒素、又はイソプロピルアルコール(IPA)中に入れ、次いで乾燥させた。以下の工程は、実施例1で上述したものと同様であった。これらの最終生成物を比較した−これらは、同じものが生じ、かつオレンジオイルの香りは有しなかった。この最終生成物の分析によれば、湿分含有率、ガラス転移温度又はフレーバー含有率に関して押出冷却の2つの方法の差異は示されなかった。2種の冷却処理を用いて得られた試料間での表面形態の識別できる差異は、拡大撮影か又は走査型電子顕微鏡(SEM)により試験した際には見られなかった。
【0077】
拡大撮影による試験は、同じマトリックスの仕上生成物において、表面光沢、細溝(押出からの)及び割れに関して視覚的な差異があるかどうかを確認するために行った。この微細表面細部を試験するために、これらの粒子をSEMを使用して試験した。極端に低い温度の液体窒素がこれらの粒子の割れ又は亀裂をもたらすかどうかは特に重要である。拡大撮影により、多数の粒子を試験することができ、かつそれぞれの生成物についての典型的な外観の一般的な見解を定めることができた。このSEMは、より顕著に表面の詳細な試験を可能にするが、これを単一の粒子に限定されるものであった。これらの生成物を試験する条件は、以下のとおりであった。
【0078】
ガラス転移温度(Tg):これはPerkin−Elmer DSC7を用いて測定した。試料(それぞれ約10mg)を−20℃に冷却し、5分維持した。温度を、10℃/分で120℃に上げ、次いで−20℃の温度で急冷した。5分維持した後に、この温度を10℃/分の速度で120℃に上げた。Tgは、再走査の熱流の曲線の変曲により測定した。それぞれの生成物の複製試料を流した。
【0079】
粒子写真:これは、Canon EF MP−E 65mm1−5Xマクロレンズを備えたCanon EOS 1DS 35mmデジタルカメラ体(11mピクセル)を用いて撮影した。試料を、Macro Twin Lite MT−24EXフラッシュ装置により照光した。
【0080】
走査型電子顕微鏡(SEM):試料を両面テープを備えたSEMのスタブ上に取り付け、約3分にわたってアルゴンガス下でBalzers SCD020 Sputter−coaterを使用して金−パラジウムで被覆した。これらの像のためのSEM装置は、15kVに調節されたJEOL JSM35C Electron Microscopeであった。
【0081】
IPAか又は液体窒素の何れかの中に押出された生成物の拡大撮影による視覚試験を図1及び2に示し、これらから差異は認識できなかった。同様に、SEMによってはこれらの生成物は区別できなかった。図3及び4における低倍率で見られる表面の皺は、両方の試料に見られ、かつこれらの2種の試料の細部の表面構造は高倍率で同じである。これら2種の生成物の類似性は、以下に示す分析データからも明らかである。
【0082】
第1表:IPA又は液体窒素中に押出された生成物の分析データ
【表1】

【0083】
これら2種の生成物のTg値は、測定された湿分含有率では一般的である。これらの生成物からのオレンジの香りの欠如により、両方の生成物について残留する表面のオレンジオイルがわずかであることが示された。
【0084】
同様の試験を、広範なマトリックス材料を有する種々の他の試料を用いて実施した。これら2種の冷却法を常に比較し、そして得られた結果は常に一貫していた、すなわち、これらの試験により、液体窒素中への押出は、IPA中への押出により製造された生成物と同様の湿分、Tg及びフレーバー含有率を有する粒子をもたらし、その際、唯一明らかな差異は、本発明により加工された試料中にいかなる微量のカプセル化IPAも存在しないことであることが示された。
【0085】
液体窒素の極端に低い温度(−196℃)は、拡大撮影又はSEMにより試験した際にIPA押出材料と比較して押出された粒子中に亀裂又は割れをもたらさなかった。これらの処理の間での粒子の形態の顕著な差異は見られなかった。
【0086】
これらの試験により、液体窒素中への押出は、粒子の物理的構造の損傷もその特性の変化も与えないことが示され、このことは予想とは異なるものであった。
【0087】
実施例4
魚油粒子の製造
アラビアゴム20質量%水溶液を調製した。この溶液3.166kgと、水3.66kgとを、10バールまでの圧力に耐えるのに好適でありかつ底部上にダイ穴を備えた出口弁を有する槽中で混合した。この槽は、機械的撹拌器を備えるものであった。
【0088】
この溶液に、DE=18のマルトデキストリン7.5kg、スクロース9.96kg及びレシチン16gを添加した。
【0089】
得られた炭水化物の水性混合物を、約8〜10質量%の含水率を有する濃縮シロップが得られるまで、撹拌しつつ加熱した。これは約115℃の温度で生じた。
【0090】
この濃縮シロップ中に魚油1.7kgを撹拌しつつ乳化させ、エマルションを得た。
【0091】
次いでこのエマルションを約130℃に加熱し、そしてこの槽を5バールまでの窒素で加圧した。次いで、この底部の出口弁を開放し、次いでこのエマルションをダイに押出して長く薄いストランドを形成させ、それをブレードインペラを備えた液体窒素を含有する容器中に降下させた。
【0092】
この押出を完了させた後に、この容器中に回収された低温ストランドをこの液体窒素浴から取り出して、乾燥器中に入れた。乾燥後に、1%の二酸化ケイ素を易流動化剤として添加した。この最終生成物は、魚油8.5質量%を含有していた。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】IPA中への押出を含む本発明にかかる方法により得られた生成物のうち、実施例3に記載された条件下で撮影された写真を示している
【図2】液体窒素中への押出を含む本発明にかかる方法により得られた生成物のうち、実施例3に記載された条件下で撮影された写真を示している
【図3】IPA中への押出を含む本発明にかかる方法により得られた生成物の走査型電子顕微鏡(SEM)像を示している
【図4】液体窒素中への押出を含む本発明にかかる方法により得られた生成物の走査型電子顕微鏡(SEM)像を示している

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分又は組成物をカプセル化する方法において、以下の段階:
a)有効成分又は組成物と、少なくとも1種の炭水化物材料及び場合により乳化剤の水溶液を有するマトリックスとを有効な温度及び撹拌条件下で合し、そしてブレンドして、適切な湿分含有率を有するこれらの均質溶融物を製造する段階;
b)この均質溶融物を、ダイを介して押出する段階;
c)この溶融物を冷却する段階;
d)得られた材料を、それがダイを出る際か又はこの溶融物を冷却した後に細断、切断、粉砕又は粉末化する段階;及び
e)場合により乾燥させる段階を含み、
段階c)の溶融物の冷却を、押出された材料と−25℃未満の温度を有する冷媒とを接触させることにより実施する方法。
【請求項2】
冷媒が−50℃〜−200℃の温度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
冷媒が液体窒素である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
押出温度が90〜130℃であり、かつ溶融した均質混合物を、それがダイを出る際に細断して、マトリックス担体材料と実質的に同じであるガラス転移温度Tgを有する生成物を提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
マトリックスが3〜12質量%の湿分を有する炭水化物溶融物からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
全ての段階を連続的に実施し、かつ段階a)において形成された均質溶融物を、この連続法の段階a)の設計に適切に配置された2つの熱交換器により得る、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
炭水化物材料の水溶液を第1の熱交換器を介して濃縮してその水の量を減らし、そしてカプセル化されるべき有効材料と混合し、次いでこの混合物、すなわち炭水化物/有効材料混合物を第2の熱交換器の表面上を通過させ、押出されるべき前記混合物に所望の押出温度値をもたらす、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第1の熱交換器が表面掃引式熱交換器である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第2の熱交換器が表面掻取式熱交換器である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
炭水化物溶液を第1の熱交換器で105〜150℃の温度に加熱する、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
第1の熱交換器における溶液の平均滞留時間が1〜10分である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
段階a)の水溶液がこの溶液の全質量に対して12〜40質量%の水を含有する、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
段階a)の水溶液を、出発材料を乾燥固体質量槽から混合槽及び加熱槽に搬送し、次いでこの加熱槽から多管式熱交換器を介してポンプ輸送し、この高温槽にループで返送することにより製造する、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
第1の熱交換器での濃縮段階の終盤での混合物が2〜11質量%の湿分含有率を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
混合物の滞留時間が1分未満の高剪断ホモジナイザーにより、有効材料の混合を実施する、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
混合物を押出前に102〜135℃の温度に冷却する、請求項7に記載の方法。
【請求項17】
押出段階を1×105〜6×105Paの圧力で実施する、請求項7に記載の方法。
【請求項18】
フレーバーもしくはフレグランス有効材料、ビタミン、酸化防止剤、栄養補助剤もしくはポリ不飽和脂肪酸、又はこれらの源の押出のための、請求項1から17までの何れか1項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法により得られ、かつ冷媒を実質的に有しない、有効成分又は組成物の押出されたデリバリーシステム。
【請求項20】
フレグランスもしくはフレーバー有効材料、ビタミン、酸化防止剤、栄養補助剤もしくはポリ不飽和脂肪酸、又はこれらの源の運搬のための、請求項19に記載の押出されたデリバリーシステム。
【請求項21】
全ての段階を連続的に実施し、かつ段階a)で形成された均質溶融物を、この連続法の段階a)の設計に適切に配置された2つの熱交換器により得て、その際、炭水化物材料の水溶液を第1の熱交換器を介して濃縮してこの溶液中の水の量を減らして、そしてカプセル化されるべき有効材料と混合し、次いで、この混合物、すなわち炭水化物溶液/有効材料混合物を第2の熱交換器の表面上を通過させ、押出されるべき前記混合物に所望の押出温度値をもたらす方法により得られる、請求項19に記載の押出されたデリバリーシステム。
【請求項22】
ショ糖か又はショ糖誘導体のマトリックスを有する、請求項19に記載の押出されたデリバリーシステム。
【請求項23】
マトリックスが、スクロース、グルコース、ラクトース、レブロース、フルクトース、マルトース、リボース、デキストローズ、イソマルト、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール、ペンタトール、アラビノース、ペントース、キシロース、ガラクトース、水素化されたデンプン水解物、マルトデキストリン、STABILITE(R)、寒天、カラゲナン、ゴム、ポリデキストローズ、並びにこれらの誘導体及び混合物からなる群から選択された、請求項22に記載の押出されたデリバリーシステム。
【請求項24】
マトリックスがマルトデキストリンか又はマルトデキストリン混合物と、スクロース、グルコース、ラクトース、レブロース、マルトース、フルクトース、イソマルト、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール及び水素化トウモロコシシロップを有する群から選択された少なくとも1種の材料から形成された、請求項22に記載の押出されたデリバリーシステム。
【請求項25】
マトリックスが、場合により20よりも小さいDE当量を有するマルトデキストリンを有する、請求項22に記載の押出されたデリバリーシステム。
【請求項26】
有効成分として請求項20に記載の押出されたデリバリーシステムを有する消費者製品。
【請求項27】
フレーバー付与された組成物か又はフレーバー付与用組成物、チューインガムか又は咀嚼が必要な軟質菓子、アイスクリーム、ビスケット、医薬組成物か又は練り歯磨の形である、請求項26に記載の消費者製品。
【請求項28】
ポリ不飽和脂肪酸を有する組成物の形である、請求項26に記載の消費者製品。
【請求項29】
賦香された組成物か又は賦香用組成物、石鹸、化粧品調製物、消臭剤か又は固体界面活性剤もしくは洗浄用製品の形である、請求項26に記載の消費者製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−510695(P2008−510695A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526600(P2007−526600)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【国際出願番号】PCT/IB2005/002412
【国際公開番号】WO2006/038067
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1,route des Jeunes, CH−1211 Geneve 8, Switzerland
【Fターム(参考)】