説明

プラズマ処理方法および装置におけるセグメント化されてバイアスされる周縁電極

【課題】一様なプラズマ処理を行うこと。
【解決手段】半導体用プラズマ処理装置における非一様性を低減させるためのシステム(40)であって、基板支持体(14)を囲み得る寸法のものとされ、かつ、少なくとも3個という複数のセグメントから形成された、リング形状電極(50)と;この電極の各セグメントに対して接続された電気エネルギー供給源と;この電気エネルギー供給源に対して接続されたコントローラ(60)と;を具備し、コントローラが、電極の各セグメントを順次的に励起するようにして電気エネルギーを供給するようにプログラムされており、これにより、基板支持体の周縁回りにおける基板の非一様性の処理に影響を与え得るものとされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、特許文献1〜3に関するものである。これら文献の記載内容は、参考のため、ここに組み込まれる。
【0002】
本発明は、特に半導体ウェハの製造に際し、高密度プラズマを生成するためのデバイスおよびシステムおよびプロセスに関するものである。本発明は、とりわけ、半導体プロセスにおいて使用されるような高密度誘導結合型プラズマ源に関するものである。
【背景技術】
【0003】
大きなアスペクト比を有したサブミクロン的な半導体ウェハ上にフィルムを成膜するに際しては、イオン化物理的気相蒸着(iPVD)プロセスおよび装置が有効である。特許文献4〜7に開示されたような特徴点は、連続したあるいは瞬時的な成膜プロセスやエッチングプロセスにおいて、特に好適である。連続的な成膜およびエッチングプロセスは、全く同じプロセスチャンバ内において、基板に対して適用することができる。これにより、真空状態を破壊することがない、すなわち、あるチャンバから他のチャンバへとウェハを移送する必要がない。装置構成に基づき、イオン化PVD成膜モードからエッチングモードへと、あるいは、エッチングモードからイオン化PVD成膜モードへと、迅速にモードを変更することができる。さらに、装置構成に基づき、成膜モード時におけるイオン化PVD成膜プロセス制御パラメータと、エッチングモード時におけるエッチングプロセス制御パラメータとを、同時に最適化することができる。これら利点の結果、金属化およびその後の電気メッキ充填操作に関し、ウェハを、優秀な品質でもってなおかつ高速度で処理することができる。
【0004】
イオン化PVDシステムの様々な利点にもかかわらず、最大性能でシステムを使用することには、未だわずかの制約が残されている。例えば、既存のハードウェアでは、幅広いプロセス圧力ウィンドウの全体にわたって同時的に、成膜プロセスとエッチングプロセスとの双方に関して、最適の一様性を得ることができない。環状のターゲットが、フラットフィールドの成膜一様性に関しては、優秀な条件をもたらすけれども、一様なエッチングプロセスのために大きなサイズの低圧プラズマを生成するための大面積誘導結合プラズマ(ICP)の使用は、幾何学的に制限される。基板に対して軸方向に位置合わせされたICP源が、ターゲットからスパッタリングされた金属蒸気をイオン化させてウェハの中央の特徴物を充填するに際しては最適なものではあるけれども、多くの場合、成膜プロセスおよびエッチングプロセスにおいてすなわち正味には成膜を行わない(NND)プロセスにおいて一様なエッチングをもたらさないような軸方向にピーク付きの高密度プラズマプロファイル生成する。ウェハ上において、バイアスが増大された領域においては、エッチングが起こる。そのため、成膜された金属(付着およびバリア特性のためには、TaN/Ta、および/または、シード層としてはCu)が、成膜時にウェハのフィールド領域から同時に除去されるものの、特徴物の側面においては残留する。プロセスの総合的結果として、特徴物の底部に薄膜が残る。
【0005】
成膜およびエッチングプロセスは、エッチングプロセスおよび成膜プロセスにおける完全に同じ非一様性の寄与を受けるという利点がある、あるいは、高度に一様なプロセスを受けるという利点がある。ウェハのところにおいて被覆率の対称性を改良したりまた非一様性を低減したりし得るよう、ウェハのところにおいて同一条件を生成するために、単一のまたは連続したような、バイアスリングまたは焦点合わせリングが使用されてきた。この場合、軸方向に対称的な手法を使用する。これにより、状況によっては、径方向の一様性を改良することができる。しかしながら、方位的な非一様性を改良することはできない。方位的な非一様性は、例えば、金属源からの静的磁界の相互作用によって、また、ICPアンテナの幾何形状によって、また、RF電力の供給位置によって、また、基板ホルダや成膜シールドやガス流れの熱的性能やRF的性能によって、また、他の要因によって、生成され得る。
【0006】
したがって、単純でありかつ低コストであるようなかつ高密度で一様なプラズマを生成し得るようなICP源が要望されている。
【特許文献1】米国特許出願シリアル番号第10/454,381号明細書(出願日は、2003年6月4日。公開番号は、US2005/0103444。)
【特許文献2】米国特許出願シリアル番号第10/717,268号明細書(出願日は、2003年11月19日。公開番号は、US2005/0103445。)
【特許文献3】米国特許出願シリアル番号第10/766,505号明細書(出願日は、2004年7月28日。)
【特許文献4】米国特許第6,287,435号明細書
【特許文献5】米国特許第6,080,287号明細書
【特許文献6】米国特許第6,197,165号明細書
【特許文献7】米国特許第6,132,564号明細書
【特許文献8】米国特許第6,719,886号明細書
【特許文献9】米国特許第6,755,945号明細書
【特許文献10】米国特許出願シリアル番号第10/873,908号明細書(出願日は、2004年6月22日。)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、特に300mmウェハに関しイオン化PVDによって高アスペクト比の特徴物に対して使用されるような同時的なあるいは順次的な成膜プロセスおよびエッチングプロセスにおいて一様なプラズマ処理に寄与し得るようなプラズマを生成して制御することである。
【0008】
本発明の他の目的は、方位的に対称なプラズマを形成すること、および、そのための制御方法を提供することである。これにより、方位的な非一様性を補償することができる。
【0009】
本発明の原理においては、プラズマカラムは、ウェハの周囲において様々な態様でもって方位的にオフセットされる。これにより、成膜とエッチングとからなるシステムの一様性(および、一様なカバレージ)を増大させることができる。
【0010】
本発明のある種の実施形態においては、バイアスされなおかつセグメント化されたデバイスを使用することにより、非一様性を方位的に制御することができる。このデバイスは、プラズマからのフラックスを幾何学的に制御し得るよう、ウェハの周囲において、周縁回りに電気的にバイアスされる複数のセグメントを使用することができる。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態においては、複数にセグメント化されたリング形状電極が使用され、なおかつ、このリング状電極が、基板支持体を取り囲み得る寸法のものとされ、これにより、半導体用プラズマ処理装置の非一様性が低減される。電極の各セグメントには、電気エネルギーが印加され、コントローラが、電極の各セグメントを順次的に励起し得るようにプログラムされている。
【0012】
電極は、真空処理チャンバと;このチャンバ内に配置されたスパッタリングターゲットと;チャンバに対して連結された高密度プラズマ源と;チャンバ内に配置された基板支持体であるとともに上記電極によって取り囲まれている基板支持体と;を具備している半導体基板処理装置の中に、設けることができる。電極の各セグメントに対しては、電気エネルギー供給源から、順次的に電気エネルギーが印加される。
【0013】
イオン化物理的気相蒸着(iPVD)プロセスにおけるフィルムの方位的非一様性は、セグメントによって基板支持体を囲み;各セグメントに対して電気的エネルギーを順次的に印加することによって、各セグメントを周期的に励起する;ことにより、改良される。
【0014】
いくつかの実施形態においては、プラズマに対して露出されるセグメントのバイアス表面積の比を変化させることにより、処理チャンバの内部におけるプラズマカラムの対称性に影響を及ぼすことができる。
【0015】
図示の実施形態においては、デバイスには、セグメントとして、少なくとも3個のセグメントが設けられる。各セグメントは、動的にバイアスされ、これにより、プラズマカラムに対して、回転的なインパクトを与えることができる。プラズマの一様性を、より効果的に制御し得るよう、より多数のセグメントを使用することができる。実用的な観点からは、6個〜8個が上限である。しかしながら、これよりも多くの数のセグメントを使用することができる。
【0016】
デバイスのセグメントは、様々なサイクル周波数でもってバイアスすることができ、また、各セグメントのそれぞれごとに様々な負荷サイクルでもってバイアスすることができ、また、セグメントどうしの間に様々な位相差を形成しつつバイアスすることができる。このように、プラズマカラムに対して完全にカスタム化された効果を生成することができ、これにより、特定のプラズマ処理システムにおいて存在し得るようなすべての方位的非一様性を補償することができる。セグメントに対しては、RFパワーあるいはDCパワーのいずれかを印加することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の上記のおよび他の目的や利点は、添付図面を参照しつつ、以下の詳細な説明を読むことにより、明瞭となるであろう。
【0018】
図1は、従来技術によるあるタイプのイオン化物理的気相蒸着装置を示す断面図であって、本発明のある種の実施形態を組み込み得るものである。
【0019】
図2Aは、本発明のある種の実施形態に基づく処理システムを簡略化して示す断面図である。
【0020】
図2Bは、図2Aと同様の断面図であって、本発明の他の実施形態に基づく処理システムを示している。
【0021】
図3Aは、図2Aのシステムにおけるバイアス電極の一実施形態を示す斜視図である。
【0022】
図3Bは、図2Aのシステムにおけるバイアス電極の他の実施形態を示す斜視図である。
【0023】
図3Cは、図3Aおよび図3Bのバイアス電極の一部を拡大して示す斜視図である。
【0024】
図4Aは、図2Bのシステムにおけるバイアス電極の一実施形態を示す斜視図である。
【0025】
図4Bは、図2Bのシステムにおけるバイアス電極の他の実施形態を示す斜視図である。
【0026】
図4Cは、図4Aのバイアス電極の一部を拡大して示す斜視図である。
【0027】
図5A〜図5Dは、本発明のある種の実施形態に関し、ある種の交流バイアスシーケンスを適用した結果を示すグラフである。
【0028】
本発明の技術思想は、例えばスパッタエッチングおよび成膜プロセスを行うためのものとかプラズマ増強CVD(PECVD)プロセスを行うためのものとかイオン化PVD(iPVD)プロセスを行うためのものとか反応性イオンエッチング(RIE)を行うためのものとかといったような、様々なプラズマ処理システムにおいて使用することができる。本発明による技術思想は、例えば図1に示す装置10を使用するプロセスといったような標準的な熱プロセスを実施するためのiPVDシステムにおいて好適に適用することができる。iPVDタイプの半導体ウェハ処理装置の例は、特許文献4,5,8に開示されている。これら文献の記載内容は、参考のため、ここに組み込まれる。本発明のいくつかの実施形態に関し、図1の装置10を例として説明する。しかしながら、本発明は、他のタイプのシステムに対して適用することもできる。
【0029】
図示されているiPVD装置10は、真空処理チャンバ12と、このチャンバ12を規定しているチャンバ壁11と、このチャンバ壁11の頂部に形成された開口13と、この開口13のところに取り付けられたイオン化スパッタ材料源20と、を備えている。イオン化スパッタ材料源20は、開口13をシールしている。これにより、チャンバ12内の真空と、外部の大気雰囲気と、を隔離している。チャンバ12の内部には、ウェハ支持体14が設けられている。ウェハ支持体14は、開口13に対向している一方の面上に、処理対象をなす半導体ウェハ15を保持する。イオン化材料源20は、マグネトロンカソードアセンブリ21を備えている。マグネトロンカソードアセンブリ21は、環状ターゲット22を有している。環状ターゲット22は、コーティング材料の供給源であり、限定するものではないけれども、典型的には、金属の供給源である。カソードアセンブリは、さらに、ターゲット22に対して負のDCスパッタ電位を印加するための電源(図示せず)と、ターゲット22の背面側に配置された永久磁石アセンブリ23と、を備えている。永久磁石アセンブリ23は、ターゲット22の表面全体にわたってDC電位によって励起された電子を拘束し、これにより、一次プラズマを形成し、チャンバ内のガスをイオン化させて、ターゲット22から材料をスパッタリングする。
【0030】
イオン化材料源20においては、ターゲット22は、環状のものとされていて、誘電体ウィンドウ25を囲んでいる。誘電体ウィンドウ25は、典型的には、石英またはアルミナから形成され、中央部分においてターゲット22に対してシールされている。ターゲット22およびウィンドウ25は、チャンバ壁11と一緒に、チャンバ12のための真空容器の一部を形成している。RF ICP源24が、ウィンドウ25のところに配置されており、チャンバ12内へとRFエネルギーを供給する。これにより、チャンバ12内には、二次的な高密度誘導結合プラズマが励起される。RF ICP源24は、ウィンドウ25の大気雰囲気側に配置されたアンテナすなわちコイル26と、チャンバ12の内部においてウィンドウ25をカバーしている成膜バッフルすなわちシールド27と、を備えている。RF電源(図示せず)が、適切なマッチングネットワークを介して、アンテナ26のリード線に対して、接続されている。典型的には、RF電源は、13.56MHzという商用周波数で動作する。iPVDのためのチャンバ12の中の圧力は、通常は、10mTorr〜150mTorrという範囲内である。
【0031】
低いガス圧力および低いガス密度でプロセスが実行されるような標準的なPVDシステムおよびiPVDシステムにおいては、スパッタリングされた粒子は、ターゲットからある種の運動エネルギーを有して放出され、ほぼ直線的に基板に向けてかつ基板上へと進行する。これら粒子は、基板上へと分散して到着する。すなわち、部分的には、ターゲットおよび基板に関連した幾何形状の関数として、分散して到着する。熱的なシステムにおいては、より大きな圧力およびより大きなガス密度が使用され、これにより、ターゲットと基板との間において、スパッタ材料とガス原子との多数の衝突が起こることとなる。これにより、スパッタ材料は、初期的な運動エネルギーを失い、最終的には、スパッタ材料のエネルギーは、実質的に、背景ガスの熱運動だけに基づくエネルギーとなる。この材料は、プラズマ内においてランダム化され、プラズマシースを横切って基板上へと案内される。チャンバ寸法や他の幾何形状に依存して、熱的プロセスは、30mTorr〜50mTorrにおいて開始され、最大でも100mTorrにおいて開始される。
【0032】
図1のシステムを使用したiPVDの場合には、単一チャンバ内において実行される成膜とエッチングとの連続的プロセスが、有利であることがわかっている。そのようなプロセスの一例は、特許文献9に開示されている。この文献の記載内容は、参考のため、その全体がここに組み込まれる。特許文献9におけるプロセスおよび装置においては、連続的な成膜ステップとエッチングステップとが使用され、これにより、大きなアスペクト比を有したサブミクロン的なデバイスの場合に発生する問題点が克服される。成膜−エッチングプロセスにおいては、まず最初に、例えばタンタル(Ta)や窒化タンタル(TaN)や銅(Cu)といったような金属からなる薄層を成膜し、その後に、好ましくは成膜を停止させた後に、好ましくはアルゴン(Ar)等のイオン化したガスを使用することによって、イオンエッチングステップを行う。エッチングステップにおいては、ウェハの上面および底面の双方のフィーエリア上において、成膜ステップ時に成膜した量と比較して、より少ない量の材料を除去する。これにより、プロセスサイクルの終了時点では、合計としては成膜が行われる。成膜−エッチングサイクルは、必要な回数だけ、繰り返すことができる。これにより、所望の結果を得ることができる。成膜時間やエッチング時間や成膜速度やエッチング速度や他の成膜パラメータや他のエッチングパラメータをバランスさせることにより、オーバーハング成長を、除去または最小化することができる。オーバーハング成膜および底部成膜は、エッチングバックされ、少なくとも部分的に、側壁へと再分散される。
【0033】
例えばシステム10といったような処理システムは、最大の注意を払ってコンピュータシミュレーションによって構成されている。しかしながら、多くの場合、プラズマを使用した実際のプロセスを実施した場合には、いくつかのハードウェア構成部材が衝撃を受け、それら構成部材とプラズマとの相互作用のために、ウェハのところにおける処理が非一様なものとなってしまう。例えば、非一様性は、プロセス条件を変更した場合に発生し得る。例えば、金属源20の磁石23からの静的磁界と相互作用した場合や、ICP源24のアンテナの幾何形状が変化した場合や、RFの供給場所が変化した場合や、基板支持体14や成膜シールドやガス流れや二次プラズマの不安定さやチャンバ12内における様々なプラズマプロセスの熱的性能やRF的性能が変化した場合、等に発生し得る。
【0034】
連続的な成膜プロセスおよびエッチングプロセスにおいては、熱的プラズマが生成される高圧の場合には、サイクルのエッチングの際の材料の再成膜は、低圧の場合と比較して、より大きい。発生する正味のエッチングは、エッチング速度と、再成膜速度と、の差である。この場合、エッチング速度は、かなり一様である。再成膜速度は、ウェハの中央においては、かなり一様なものと考えられるものの、しかしながら、ウェハのエッジ(周縁部)においては、遅いものとなる。ウェハエッジのところにおける効果は、チャンバの周縁回りにおけるチャンバ構造によって影響を受け、ウェハの周縁回りにおいて一定ではなくなり、ウェハ回りにおいて変動する非一様性を引き起こす。周縁焦点合わせリングが、ウェハの半径方向におけるそのような非一様性を変更する。それは、再成膜速度が低下する半径部分を、ウェハエッジを超えた位置にまで、移動させるからである。単純なリングでは、周縁方向のすなわち方位方向の非一様性を修正することができない。
【0035】
上記の非一様性は、周縁バイアス制御システム40を使用して、追加的な制御パラメータを導入することにより、最小化される。そのような制御パラメータの一例は、特許文献10において、既に提案されている。この文献の記載内容は、参考のため、その全体がここに組み込まれる。本発明においては、システム40は、図2Aに示すように、バイアス電極50と、コントローラ60と、を備えている。ここで、バイアス電極50は、環状をなすバイアスリング50aという態様のものとされている。周縁バイアス制御システム40は、ウェハ15のところに、一様な条件を生成し、これにより、ウェハ15に関する対称性と一様性とを改良することができる。これは、非対称性とか非一様性とかを引き起こす可能性のあるチャンバ構成部材の影響およびプロセスの影響をオフセットし得るからである。バイアス電極50は、有利には、単一の連続したバイアスリングまたは焦点合わせリングとされ、これにより、軸方向の非対称性を解消することができて、径方向の非一様性を改良することができる。同様の効果は、図2Bに示すような、バイアス電極50の代替構成においても得ることができる。この場合、バイアス電極50は、円筒状リング50cという態様のものとされている。連続したリングでは、方位的な非一様性を改良し得ないけれども、このバイアス電極50は、セグメント化された電極である。すなわち、複数のセグメントが、選択的にバイアスされる、つまり、コントローラ60によって個別的に制御される。これにより、方位的な非一様性に関しての方位的な制御を行うことができる。電極50をなす複数の周縁セグメントは、ウェハ15回りにおいて電気的にバイアスされる。これにより、プラズマからのフラックスを制御することができ、プラズマに対して露出されるバイアス表面積の比を変化させることができる。これにより、処理チャンバ12の内部におけるプラズマカラムの対称性に影響を及ぼすことができる。
【0036】
電極50には、電極50aとして、少なくとも3つのセグメントが設けられる。図3Aの例においては、それぞれが90°をなす4つのセグメント51が設けられている。これらセグメント51は、コントローラ60によって選択的にバイアスされる。これにより、プラズマカラムに対して回転効果を引き起こすことができる。プラズマの一様性をより効果的に制御し得るよう、より多くのセグメントを使用することができる。例えば、図3Bに示すように、それぞれが60°をなす6個のセグメント52を、電極50bとして使用することができる。同様にして、より多数のセグメントを使用することができる。しかしながら、より多数のセグメントを使用すれば、複雑さが増大し、配線が増大し、鉛直方向軸線から離間したプラズマカラムに対しての有効セグメント面積およびインパクトが減少する。よって、6〜8個のセグメントが、実際的な上限である。
【0037】
セグメント51,52は、様々なサイクル周波数でもって、あるいは、様々な負荷サイクルでもって、あるいは、様々な位相差でもって、あるいは、様々なサイクル周波数と様々な負荷サイクルと様々な位相差との様々な組合せでもって、バイアスされる。このように、プラズマカラムに対して完全にカスタム化された効果を生成することができ、これにより、特定のプラズマ処理システムにおいて存在し得るようなすべての方位的非一様性を補償することができる。セグメント51,52に対しては、RFパワー(1〜50MHz)あるいはDCパワーのいずれかを印加することができる。これにより、セグメントに対して電力を印加して、1Hz〜数十kHzというサイクルで動作させることができる。
【0038】
プラズマ処理システム20は、基板ホルダ14を備えており、この基板ホルダ14は、マッチングネットワーク31を介して、RF電源32に対して接続されている。図3Aは、バイアスリング50aをなす4つのセグメント51を示している。これらセグメント51は、ウェハホルダ14を囲んでいる。個々のセグメント51は、ギャップ53(図3C参照)によって、互いに電気的に絶縁されている。各セグメント51は、各セグメント51に対して均等にRFパワーを伝達するパワースプリッター56を介して、RF電源55に対して接続されている。パワースプリッター56からの出力は、マッチングネットワーク57およびRFスイッチ58に対して接続され、その後、各セグメント51に対して接続されている。
【0039】
図3Bは、6個の平面状セグメント52から構成された同様のデバイスを示している。ホルダ14上のウェハ15は、6個の電極セグメント52によって囲まれている。6個の電極セグメント52は、幾何形状的には、セグメント化されたリング50bを形成している。個々のセグメント52は、同様に、図3Cのギャップ53によって、互いに電気的に絶縁されている。各セグメント52は、各セグメント52に対して均等にRFパワーを伝達するパワースプリッター56を介して、RF電源55に対して接続されている。パワースプリッター56からの出力は、図3Aのリング50aの場合と同様に、マッチングネットワーク57およびRFスイッチ58に対して接続され、その後、各セグメント51に対して接続されている。
【0040】
図4Aは、4個の円筒状セグメント61から構成された同様のデバイス50cを示している。ホルダ14上のウェハ15は、4個の電極セグメント61によって囲まれている。4個の電極セグメント61は、幾何形状的には、ウェハ回りにおいて、セグメント化された表面領域を形成している。個々のセグメント61は、ギャップ54(図4C参照)によって、互いに電気的に絶縁されている。各セグメントは、各セグメントに対して均等にRFパワーを伝達するパワースプリッター56を介して、RF電源55に対して接続されている。パワースプリッター56からの出力は、マッチングネットワーク57およびRFスイッチ58に対して接続され、その後、各セグメントに対して接続されている。
【0041】
セグメント化されたデバイス50の表面積が、ウェハ15の表面積と同等であるかあるいはそれよりも大きいことのために、なおかつ、デバイス50がバイアスされていることのために、デバイス50の表面の再スパッタリング、すなわち、デバイス50の表面上に成膜されたコーティング膜の再スパッタリングが、行われる。この再スパッタリングは、ウェハ15上への再成膜に寄与することができる。セグメント化電極50cからウェハ15へのこの再スパッタリングを防止し得るようあるいは低減し得るよう、セグメント化デバイス50cは、図4Bに示すように、グリッド50dの態様とすることができる。穴開き電極を使用しても、同様の効果を得ることができる。図4Bは、ワイヤグリッドの態様とされた4個の円筒形セグメント62から構成されたデバイス50dを示している。平面状のセグメント化グリッドを使用することができる。あるいは、平面状のセグメント化電極セグメントと、円筒形セグメント化電極セグメントと、の組合せを使用することができる。あるいは、例えばセグメント61のような連続表面と、例えばセグメント62のようなグリッド状表面と、のいずれかを使用することができる。
【0042】
個々のセグメント51,52,61,62は、例えば図5Aのグラフに示すようにして、RFパワーによって順次的にバイアスされる。このようなシーケンスは、ウェハ回りに回転する電界を形成し、この電界がプラズマと相互作用して、プラズマカラムをチャンバ12の内部においてオフセットさせる。サイクル期間75の長さは、与えられたウェハに関する処理時間の中で複数回の回転が起こり得るように、選択される。このことは、個々のセグメントが、4個のセグメント化リング50a,50c,50dの場合には、25%という負荷サイクル76でもって、少なくとも数Hzのパルスが印加されることを意味している。隣接しているセグメントどうしの間の位相差は、互いに同様である。6個のセグメント構成50bの場合には、17%という負荷サイクルと、同様の位相差と、が起こる。しかしながら、各セグメントに関する負荷サイクルは、増減させることができる。あるいは、隣接するセグメントの間においてオーバーラップさせることができる。これにより、隣接するセグメントの間に電界を生成して、特定のプロセスにおける方位的な非一様性を補償することができる。負荷サイクルおよびシステムの他の動作は、コントローラ70によって制御することができる。負荷サイクルの典型的な範囲は、例えば、4個のセグメント50の場合には、20%〜50%であり、6個のセグメントからなるシステムの場合には、10%〜60%である。例えば図5Bに示すような、4個のセグメント化バイアスリングに関しての、増大させた負荷サイクル77により、オーバーラップ期間78を形成することができる。オーバーラップ期間78においては、互いに隣接する2つのセグメントが同時的にバイアスされており、このため、有効面積を2倍とすることができ、プラズマカラムに対しての効果をより大きなものとすることができる。典型的なサイクル周波数は、1〜100Hzである。しかしながら、サイクル周波数は、1kHzとか、数十kHzとか、にまで増大させることができる。タイミングは、典型的には、すべてのセグメントが1サイクル内において順次的に給電されるように、選択される。しかしながら、これは必須ではない。
【0043】
セグメントのバイアスは、RFパワーによっても、また、パルス的なDCパワーによっても、行うことができる。図5Cは、互いに対向して配置されたセグメントどうしに対しての両極性バイアスの例を示している。これにより、プラズマカラムに対して、バイアスセグメントによって決まる径方向に沿っての、協働的な力を印加することができる。
【0044】
図5Dは、各セグメントが変調されたパルス周波数でもってバイアスされるような、他のパルスシーケンスを示している。上記すべての実施形態において、セグメント化バイアスデバイスに対しての供給パワーレベルは、典型的には、100W〜数kWという範囲である。周波数範囲は、1MHz〜50MHzとされる。あるいは、パルス型のDC電源や、単一極性の電源や、両極性の電源、が使用される。
【0045】
マイクロプロセッサをベースとしたコントローラ70が、個々のセグメントのパルスシーケンスを制御する。様々なセグメントを、様々な負荷サイクルでもって励起することができる。これにより、非対称性を生成することができ、これにより、方位的な非一様性を補償することができる。
【0046】
ある種の応用においては、方位的な非一様性を取り扱い得るよう、可変的な角度的長さを有した複数のセグメントを使用したり、RFパワーに対しての様々な結合比率を使用したり、あるいは、これら技術思想の様々な組合せを使用したり、することが有利である。例えば、電源からのRFパワーは、2つの主要ラインだけに分離することができ、それぞれのラインに、複数のセグメントを接続することができる。ウェハの周縁回りにおいて、セグメントの角度的な長さを変更することにより、あるいは、各セグメントの面積を変更することにより、あるいは、各セグメントの他の電気的性質を変更することにより、再成膜効果に対する非線形的影響を生成することができる。これにより、プラズマプロセスの方位的プロファイルにおける任意の特定の非一様性を調節することができる。これに代えて、セグメントに対して供給されるエネルギーの電気的特性を変更することにより、例えば電圧値や周波数や波形等を変更することにより、成膜プロファイルや他の処理プロファイルに関して、電極による修正効果を変更することができる。
【0047】
本発明の例示としてのいくつかの特定の実施形態について詳細に上述したけれども、当業者であれば、本発明の新規な特徴点および利点から実質的に逸脱することなく、上記実施形態を様々に変更可能であることは、理解されるであろう。したがって、そのようなすべての変更は、本発明の範囲内に属するものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】従来技術によるあるタイプのイオン化物理的気相蒸着装置を示す断面図であって、本発明のある種の実施形態を組み込み得るものである。
【図2A】本発明のある種の実施形態に基づく処理システムを簡略化して示す断面図である。
【図2B】図2Aと同様の断面図であって、本発明の他の実施形態に基づく処理システムを示している。
【図3A】図2Aのシステムにおけるバイアス電極の一実施形態を示す斜視図である。
【図3B】図2Aのシステムにおけるバイアス電極の他の実施形態を示す斜視図である。
【図3C】図3Aおよび図3Bのバイアス電極の一部を拡大して示す斜視図である。
【図4A】図2Bのシステムにおけるバイアス電極の一実施形態を示す斜視図である。
【図4B】図2Bのシステムにおけるバイアス電極の他の実施形態を示す斜視図である。
【図4C】図4Aのバイアス電極の一部を拡大して示す斜視図である。
【図5A】本発明のある種の実施形態に関し、ある種の交流バイアスシーケンスを適用した結果を示すグラフである。
【図5B】本発明のある種の実施形態に関し、ある種の交流バイアスシーケンスを適用した結果を示すグラフである。
【図5C】本発明のある種の実施形態に関し、ある種の交流バイアスシーケンスを適用した結果を示すグラフである。
【図5D】本発明のある種の実施形態に関し、ある種の交流バイアスシーケンスを適用した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0049】
10 iPVD装置
12 真空処理チャンバ
14 ウェハ支持体(基板支持体)
15 半導体ウェハ(半導体基板)
20 イオン化スパッタ材料源
22 環状ターゲット
32 RF電源
40 周縁バイアス制御システム
50 バイアス電極
50a バイアスリング
50b 電極
50c 円筒状リング
51 セグメント
52 セグメント
60 コントローラ
61 円筒状セグメント
70 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体用プラズマ処理装置における非一様性を低減させるためのシステムであって、
基板支持体を囲み得る寸法のものとされ、かつ、少なくとも3個という複数のセグメントから形成された、リング形状電極と;
この電極の前記各セグメントに対して接続された電気エネルギー供給源と;
この電気エネルギー供給源に対して接続されたコントローラと;
を具備し、
前記コントローラが、前記電極の前記各セグメントを順次的に励起するようにして電気エネルギーを供給するようにプログラムされており、
これにより、前記基板支持体の周縁回りにおける基板の非一様性の処理に影響を与え得るものとされていることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムにおいて、
前記コントローラが、前記電極の前記各セグメントに対して印加されるエネルギーの負荷サイクルを変更し得るようにプログラムされていることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1記載のシステムにおいて、
前記コントローラが、前記基板支持体の周囲において、複数のサイクルにわたって、複数のセグメントを順次的に励起し得るようにプログラムされていることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1記載のシステムにおいて、
前記電気エネルギー供給源が、前記電極の前記各セグメントに対して接続されたRF電源を備えていることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1記載のシステムにおいて、
前記電気エネルギー供給源が、前記電極の前記各セグメントに対して選択的に接続可能とされたRF電源を備えていることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1記載のシステムにおいて、
前記電極が、互いに絶縁されておりかつ前記基板支持体を囲んでいる4個〜6個のセグメントを備えていることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項6記載のシステムにおいて、
前記電極が、環状ディスクであることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項6記載のシステムにおいて、
前記電極が、円筒体であることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項8記載のシステムにおいて、
前記セグメントが、メッシュから形成されていることを特徴とするシステム。
【請求項10】
iPVD装置であって、
請求項1記載のシステムを備えていることを特徴とするiPVD装置。
【請求項11】
半導体基板の処理装置であって、
真空処理チャンバと;
このチャンバ内に配置されたスパッタリングターゲットと;
前記チャンバに対して連結された高密度プラズマ源と;
前記チャンバ内に配置された基板支持体と;
この基板支持体を囲んでおり、かつ、少なくとも3個という複数のセグメントから形成された、リング形状電極と;
この電極の前記各セグメントに対して接続された電気エネルギー供給源と;
この電気エネルギー供給源に対して接続されかつ前記電極の前記各セグメントを順次的に励起するように構成されたコントローラと;
を具備していることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項11記載の装置において、
前記コントローラが、前記電極の前記各セグメント励起するようにプログラムされ、
これにより、前記基板支持体の周縁回りにおける基板の非一様性の処理に影響を与え得るものとされ、
これにより、基板の処理において方位的な非一様性を低減させ得るものとされていることを特徴とする装置。
【請求項13】
イオン化物理的気相蒸着プロセスにおいてフィルムの方位的非一様性を改良するための方法であって、
セグメントによって基板支持体を囲み;
各セグメントに対して電気的エネルギーを順次的に印加することによって、各セグメントを周期的に励起する;
ことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13記載の方法において、
前記セグメントとして、少なくとも3個のセグメントを設け、
前記セグメントの前記励起に際しては、複数のサイクルの各々において順次的に各セグメントをバイアスすることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項13記載の方法において、
前記セグメントに対してエネルギーを供給するに際しての負荷サイクルを制御し、
これにより、基板の方位的非一様性を低減させることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15記載の方法において、
前記負荷サイクルの前記制御に際しては、様々なセグメントに対して互いに異なる態様で電気エネルギーを供給し、
これにより、基板の方位的非一様性を低減させることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項13記載の方法において、
基板に対して、一連をなす成膜プロセスとエッチングプロセスとを順次的に行うことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項13記載の方法において、
様々なセグメントに対して互いに異なる態様で電気エネルギーを供給し、
これにより、基板の方位的非一様性を低減させることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【公開番号】特開2007−46160(P2007−46160A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−211301(P2006−211301)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(505390680)ト−キョ−・エレクトロン・アメリカ・インコーポレーテッド (64)
【Fターム(参考)】