説明

プリント配線基板用樹脂付き金属箔およびプリント配線基板

【課題】 電源−グランド層共振を抑えることができ、かつ設計の自由度が高いプリント配線基板、および該プリント配線基板を得るための樹脂付き金属箔を提供する。
【解決手段】 金属箔11と、金属箔11上に設けられた樹脂層12と、樹脂層12の表面に形成された、磁性金属材料を含むノイズ抑制層13とを有する樹脂付き金属箔10を用い、樹脂付き金属箔10を、プリプレグを介して、かつ金属箔11からなる電源層とグランド層との間にノイズ抑制層13が位置するように複数積層してプリント配線基板20を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板用樹脂付き金属箔およびこれを用いたプリント配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器には小型化、軽量化が求められており、プリント配線基板の多層化が進んでいる。該プリント配線基板は、例えば、ガラス布等の補強材にエポキシ樹脂等の樹脂を含浸させたプリプレグを銅箔の上に設けた「樹脂付き銅箔」を、複数積層することにより得られる。
しかし、多層化されたプリント配線基板においては、電源層およびグランド層を構成する銅箔がプリント配線基板のほぼ全面にわたって拡がり、これら銅箔が、周端部が開放した平行平板構造をとるため、電源層とグランド層との間で共振(電源−グランド層共振)が起こり、基板の周端部から電磁波ノイズが発生する。
【0003】
電源−グランド層共振が抑えられたプリント配線基板としては、第1のグランド層に形成されるグランド領域と、第2のグランド層に形成されるグランド領域との間を電気的に接続する層間接続部材と、第1のグランド層および第2のグランド層の少なくとも一方に配線される電源線とが設けられたものが提案されている(特許文献1)。
しかし、該プリント配線基板においては、層間接続部材を設ける必要がある、各グランド層と電源線との位置関係に制限がある等のため、設計の自由度が著しく低くいという問題がある。
【0004】
特許文献2には、プリント配線基板の両面に、板状磁性粒子と板状非磁性粒子と結合剤を配したソルダレジスト層を形成したものが提案されている。
しかし、該プリント配線基板におけるソルダレジスト層は、信号配線から発生してしまった電磁波ノイズがプリント配線基板の外部に漏れることを防ぐものであって、電源−グランド層共振を抑えるものではない。よって、信号配線から発生した電磁波ノイズ、または電源−グランド層共振によって発生した電磁波ノイズによって、プリント配線基板自身(例えば、実装された電子部品、他の信号配線等)が影響を受けてしまう。
【特許文献1】特開2003−163467号公報
【特許文献2】特開平9−283939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって本発明の目的は、電源−グランド層共振を抑えることができ、かつ設計の自由度が高いプリント配線基板、および該プリント配線基板を得るための樹脂付き金属箔を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプリント配線基板用樹脂付き金属箔は、金属箔と、該金属箔上に設けられた樹脂層と、該樹脂層の表面に形成された、磁性金属材料を含むノイズ抑制層とを有することを特徴とする。
前記ノイズ抑制層は、磁性金属材料を前記樹脂層の表面に、反応性ガス雰囲気下でスパッタリング法にて物理的に蒸着させて形成された層であることが好ましい。
前記磁性金属材料は、ニッケルまたはニッケルを含む合金であることが好ましい。
【0007】
前記ノイズ抑制層の表面抵抗の実測値から換算した体積抵抗率R1(Ω・cm)と磁性金属材料の体積抵抗率R0(Ω・cm)とが、0.5≦logR1−logR0≦3を満足することが好ましい。
前記樹脂層の表面に、ノイズ抑制層がない非ノイズ抑制部が形成されていてもよい。
本発明のプリント配線基板は、本発明のプリント配線基板用樹脂付き金属箔を、プリプレグを介して、かつ前記金属箔からなる電源層とグランド層との間に前記ノイズ抑制層が位置するように、複数積層してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のプリント配線基板樹脂付き金属箔によれば、電源−グランド層共振を抑えることができ、かつ設計の自由度が高いプリント配線基板を得ることができる。
本発明のプリント配線基板は、電源−グランド層共振を抑えることができ、かつ設計の自由度が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<樹脂付き金属箔>
図1は、本発明のプリント配線基板用樹脂付き金属箔(以下、単に「樹脂付き金属箔」と記す。)の一例を示す概略断面図である。樹脂付き金属箔10は、金属箔11と、該金属箔11上に設けられた樹脂層12と、該樹脂層12の表面に形成された、磁性金属材料を含むノイズ抑制層13とを有するものである。
【0010】
金属箔11としては、銅箔、アルミニウム箔、ニッケル箔、スズ箔等が挙げられる。これらのうち、銅箔が好ましい。銅箔としては、電解銅箔、圧延銅箔等が挙げられる。
金属箔11の厚さは、3〜50μmが好ましい。
【0011】
樹脂層12は、プリント配線基板の製造の際の加熱に耐え、かつプリント配線基板に要求される耐熱性を有することが好ましい。また、誘電率、誘電正接等、プリント配線基板の設計に必要とされる特性値が既知であるのものが好ましい。よって、樹脂層12の材質としては、ポリイミド、エポキシ樹脂;ガラス布等の補強材に、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリ四フッ化エチレン、ポリフェニレンエーテル等の樹脂を含浸させた強化樹脂等が好ましい。強化樹脂の状態は、B−ステージ(半硬化状態)であってもよく、C−ステージ(硬化状態)であってもよい。
【0012】
樹脂層12の厚さは、0.5〜125μmが好ましい。樹脂層12が厚すぎると、プリント配線基板が厚くなり、また、ノイズ抑制効果が不充分となるおそれがある。樹脂層12が薄すぎると、金属箔11とノイズ抑制層13との絶縁の維持が困難となるおそれがある。
【0013】
ノイズ抑制層13は、磁性金属材料を含む層であり、例えば、樹脂層12上に、独立した複数のナノメーターレベルの磁性金属材料のマイクロクラスターと、これらの間に形成される磁性金属材料の存在しない欠陥とから構成される層である。
【0014】
図2は、樹脂付き金属箔10を、ノイズ抑制層13(上面)側から見た模式図であり、図3は、樹脂付き金属箔10の斜視模式図である。マイクロクラスター14は、樹脂層12上に磁性金属材料が非常に薄く物理的に蒸着されて形成されたものであり、充分な金属薄膜になっていない。マイクロクラスター14が互いに接触して集団化しているものの、集団化したマイクロクラスター14の間には、磁性金属材料の存在しない欠陥が多く存在しており、集団化したマイクロクラスター14はそれぞれ独立している。
【0015】
ここで、磁性金属材料のマイクロクラスターとは、数十〜数十万個程度の磁性金属原子が集合して形成される集団である。該マイクロクラスターの凝集が進むと、超微粒子、微粒子、金属薄膜となるが、マイクロクラスターは、超微粒子になる手前のものであり、超微粒子、微粒子、金属薄膜とは明確に区別されるものである。
【0016】
図4は、樹脂層12表面に形成されたノイズ抑制層13の表面を観察したフィールドエミッション走査電子顕微鏡像である。図5は、ノイズ抑制層13の膜厚方向断面の高分解能透過型電子顕微鏡像である。また、図6は、ノイズ抑制層13の電子線回折像である。図4〜図6から、非常に小さな結晶として数Å間隔の磁性金属原子が配列された結晶格子(マイクロクラスター)、および非常に小さい範囲で磁性金属材料が存在しない欠陥が認められる。すなわち、マイクロクラスター同士の間隔が空いた状態であり、明確な粒界は認められない。各マイクロクラスターの結晶方位は、無秩序であると認められ、磁性金属材料からなる均質な金属薄膜、超微粒子、微粒子等には成長していない。
【0017】
ノイズ抑制層13の厚さは、5〜200nmが好ましい。ノイズ抑制層13の厚さを5nm以上とすることにより、充分なノイズ抑制効果を発揮させることができる。一方、ノイズ抑制層13の厚さが200nmを超えると、マイクロクラスター14が凝集し、磁性金属材料からなる均質な金属薄膜が形成され、バルクの磁性金属材料に戻ってしまい、金属反射が強まり、ノイズ抑制効果も小さくなり、実効的ではない。ここで、ノイズ抑制層13の厚さとは、欠陥を含めたノイズ抑制層13全体の平均厚さである。
【0018】
本発明においては、ノイズ抑制層13が、単なる金属薄膜層として存在するのではなく、マイクロクラスター14が集団化した状態で存在することが重要である。このような状態は、ノイズ抑制層13の表面抵抗の実測値から換算した体積抵抗率R1(Ω・cm)と磁性金属材料の体積抵抗率R0(Ω・cm)(文献値)との関係から確認することができる。すなわち、体積抵抗率R1と体積抵抗率R0とが、0.5≦logR1−logR0≦3を満足する場合に、磁性金属材料のマイクロクラスター14が、非常に近接した状態で、かつ個々が独立して存在することになり、優れたノイズ抑制効果が発揮される。
【0019】
樹脂付き金属箔10は、磁性金属材料を樹脂層12の表面に物理的に蒸着させ、樹脂層12の表面にノイズ抑制層13を形成することによって製造される。
ノイズ抑制層13の形成方法としては、磁性金属材料を何らかの方法で気化させ、近傍に置いた樹脂層12の表面上に堆積させる物理蒸着法(PVD)を適用することができる。
【0020】
物理蒸着法を磁性金属材料の気化方法で分類すると、蒸発系とスパッタ系に分けられる。蒸発系としては、EB蒸着法、イオンプレーティング法等が挙げられる。スパッタ系としては、マグネトロンスパッタリング法、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリング法等のスパッタリング法が挙げられる。これらのうち、スパッタリング法が、ノイズ抑制層13の厚さ制御、樹脂層12の熱ダメージの低さの点から好ましい。
【0021】
磁性金属材料としては、鉄、ニッケル、コバルト、これらを含む合金が挙げられる。合金としては、Fe−Ni、Fe−Co、Fe−Cr、Fe−Si、Fe−Al、Fe−Cr−Si、Fe−Cr−Al、Fe−Al−Si等が挙げられる。これらの磁性金属材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の組み合わせて用いてもよい。ニッケルまたはニッケルを含む合金は、酸化に対して抵抗力があるため、好ましい。
【0022】
磁性金属材料の蒸着質量は、膜厚換算で5〜200nmが好ましい。5nm以上とすることでノイズ抑制のための充分な質量を確保することができ、200nm以下とすることで、マイクロクラスター状態を維持し、ノイズ抑制効果を得ることが可能となる。蒸着質量は、ガラス、シリコン等の硬質基体上に同条件で磁性金属材料を蒸着し、堆積した厚さを測定し、平均することによって求められる。
【0023】
磁性金属材料の蒸着質量が多くなると、マイクロクラスター状態が得られにくくなり、具体的には20nm程度以上では、通常のスパッタリング法では単なる金属薄膜層に成長しやすい傾向がある。そこで、磁性金属材料の蒸着時に、通常のアルゴンガスに加え、窒素、酸素、硫化水素、シラン等の反応性ガスを導入することで、マイクロクラスター状態を安定化させることが好ましい。特に、窒素ガスを使用することで、磁性金属材料が堆積する際の巨大結晶化が阻害され、極めて安定化されたマイクロクラスター状態とすることができる。
【0024】
<プリント配線基板>
図7は、本発明のプリント配線基板の一例を示す概略断面図である。プリント配線基板20は、パターン加工を施した信号配線層21と、グランド層22と、パターン加工を施した電源層23と、グランド層24と、パターン加工を施した電源層25と、グランド層26とが、絶縁層27または絶縁層28を介して積層されたものであり、グランド層22と電源層23との間、電源層23とグランド層24との間、グランド層24と電源層25との間、電源層25とグランド層26との間には、ノイズ抑制層13が設けられている。
また、電源層23、25と、信号配線層21とを電気的に接続するスルーホール29が形成されている。
【0025】
信号配線層21、グランド層22、24、26、電源層23、25は、銅箔等の金属箔からなる層であり、導電性を有する層である。特に、グランド層24、26、電源層23、25は、樹脂付き金属箔10の金属箔11に由来する層である。
【0026】
絶縁層27、28は、ガラス布等の補強材にエポキシ樹脂等の樹脂を含浸させたプリプレグを硬化させた層である。特に、絶縁層28は、樹脂付き金属箔10の樹脂層12に由来する層である。
【0027】
プリント配線基板20は、樹脂付き金属箔10を、プリプレグを介して、かつ金属箔11からなる電源層とグランド層との間にノイズ抑制層13が位置するように、複数積層することによって得られる。
具体的は、(i)樹脂付き金属箔10、プリプレグ、樹脂付き金属箔10、プリプレグ、樹脂付き金属箔10、プリプレグ、樹脂付き金属箔10、プリプレグ、ノイズ抑制層のない通常の樹脂付き金属箔、ノイズ抑制層のない通常の樹脂付き金属箔の順で積層し、これらを一括して加熱プレスする方法;(ii)樹脂付き金属箔10、プリプレグ、樹脂付き金属箔10の順で積層し、これらを加熱プレスした後、さらにこの上に、樹脂付き金属箔10、またはノイズ抑制層のない通常の樹脂付き金属箔を積層し、加熱プレスする工程を順次繰り返す方法、等によって製造される。
【0028】
スルーホール29またはビアホール(図示略)は、(a)上記(i)の方法で得られたプリント配線基板20、または上記(ii)の方法の途中で得られた積層体に、ドリル等で穴を開け、穴の内壁に銅メッキ等を施す方法;(b)樹脂付き金属箔10、プリプレグ、ノイズ抑制層のない通常の樹脂付き金属箔に、あらかじめ、スルーホール29またはビアホールに対応する穴を形成しておき、これらを積層した後に穴の内壁に銅メッキ等を施す方法、等によって形成される。穴の大きさは、スルーホール29またはビアホールと、グランド層およびノイズ抑制層13との間の絶縁を確保するために、最終的に形成されるスルーホール29またはビアホールよりも大きくすることが好ましい。
【0029】
金属箔11を信号配線、電源配線等のパターンにあらかじめ加工する、または、金属箔11にスルーホール、ビアホール等に対応した穴をあらかじめ形成してもよく;エッチング等によって、上記(ii)の方法の途中で得られた積層体の表面の金属箔11を、信号配線、電源配線等のパターンに加工する、または、該金属箔11にスルーホール、ビアホール等に対応した穴を形成してもよい。
【0030】
また、樹脂付き金属箔10には、ノイズ抑制層がない非ノイズ抑制部をあらかじめ形成しておいてもよい。非ノイズ抑制部は、スルーホールまたはビアホールに対応した位置、信号配線層21の信号配線に対応した位置等に形成することが好ましい。信号配線層21の信号配線の近傍にノイズ抑制層13が配置された場合、信号配線を流れる信号電流の波形がなまる(方形波の角の部分が丸くなる)おそれがある。
【0031】
非ノイズ抑制部の形成方法としては、ノイズ抑制層13にレーザーをあて、ノイズ抑制層13をアブレーションさせ、除去する方法;ノイズ抑制層13を残す部分にマスキングをし、マグキングされた部分以外のノイズ抑制層13をエッチングによって除去する方法;非ノイズ抑制部に対応した樹脂層12の表面にマスキングをし、マグキングされた部分以外に磁性金属材料を物理的に蒸着させる方法、等が挙げられる。
【0032】
以上説明したプリント配線基板20にあっては、電源層とグランド層との間に磁性金属材料を含むノイズ抑制層13が設けられているため、電源層とグランド層との間の電磁気的な結合を遮蔽し、電源−グランド層共振を抑えることができる。その結果、基板の周端部から電磁波ノイズが発生することを抑えることができる。また、電源層とグランド層との間に磁性金属材料を含むノイズ抑制層13を設けるだけでよいため、層間接続部材を設ける必要がなく、電源層とグランド層との位置関係にも制限がない。よって、プリント配線基板20の設計の自由度が高い。
【0033】
なお、本発明のプリント配線基板は、図示例のプリント配線基板20には限定はされず、本発明の樹脂付き金属箔を用いて得られたものであれば、どのような形態のものであってもよい。
また、電源層またはグランド層と、信号配線層との間にノイズ抑制層を設けてもよいが、信号配線層の近傍にノイズ抑制層を設けた場合、信号配線を流れる信号電流の波形がなまる(方形波の角の部分が丸くなる)おそれがあるため、信号配線層の近傍にノイズ抑制層を設けないことが好ましい。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を示す。
〔実施例1〕
樹脂付き銅箔(三井金属鉱業(株)製、商品名「MHCG100G」、厚さ18μmの銅箔上に、ガラス布にエポキシ樹脂を含浸させた厚さ50μmのプリプレグを設けたもの)の樹脂層上に、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリング法により、以下の条件で、磁性金属材料であるニッケルを物理的に蒸着させて、ノイズ抑制層を形成し、ノイズ抑制層を有する樹脂付き銅箔を得た。
(条件)樹脂層の温度:常温(25℃)、ニッケルの蒸着質量(膜厚換算):25nm、反応ガス雰囲気:アルゴンガス60sccmおよび窒素ガス20sccm、電力:2kW。
【0035】
ノイズ抑制層を有する樹脂付き銅箔について、ノイズ抑制層の表面抵抗を、ダイアインスツルメンツ製、MCP−T600により、測定電圧10Vで直流4端子法で測定し、測定点数5点の平均値を求め、さらにこの平均値値とノイズ抑制層の厚さとから体積抵抗率R1(Ω・cm)を算出した。体積抵抗率R1は、4.75×10-4Ω・cmであった。ニッケルの体積抵抗率R0(文献値)は、7.24×10-6Ω・cmであり、logR1−logR0は1.80となり、0.5≦logR1−logR0≦3の関係を満足した。
【0036】
樹脂付き金属箔10として、ノイズ抑制層を有する樹脂付き銅箔を用い、図7に示すようなプリント配線基板20を製造した。
YAGレーザー加工機を用いて、樹脂付き金属箔10のノイズ抑制層13に、スルーホール29に対応した1.2mmの非ノイズ抑制部をあらかじめ形成した。また、エッチングにより、電源層13、15となる金属箔11をあらかじめ電源配線のパターンに加工し、また、グランド層14となる金属箔11にスルーホール29に対応した1.2mm穴をあらかじめ形成した。
【0037】
別途、ノイズ抑制層のない樹脂付き銅箔(三井金属鉱業(株)製、商品名「MHCG100G」)を用意し、信号配線層21となる銅箔をあらかじめ信号配線のパターンに加工し、グランド層22となる銅箔にスルーホール29に対応した1.2mm穴をあらかじめ形成した。
これら樹脂付き金属箔10を、ガラス布にエポキシ樹脂を含浸させた厚さ50μmのプリプレグを介して、かつ金属箔11からなる電源層とグランド層との間にノイズ抑制層13が位置するように積層し、さらにこの上に、グランド層22となる樹脂付き銅箔信号配線層21となる樹脂付き銅箔を積層し、これらを加熱プレスしてプリント配線基板20を得た。
【0038】
ついで、ドリルを用いてプリント配線基板20に直径1.0mmの穴を開け、穴の内壁に銅メッキを施し、スルーホール29を形成した。
ついで、信号配線層21上に、電源、信号発生用IC、およびアンプを、ハンダ付けによって実装し、電子部品が実装されたプリント配線基板20を得た。
【0039】
〔比較例1〕
樹脂付き銅箔にノイズ抑制層をを設けない以外は、実施例1と同様にして、電子部品が実装されたプリント配線基板を得た。
【0040】
〔評価〕
小型電波暗室内にて、プリント配線基板に0.13〜3GHzの高周波電流を流し、プリント配線基板の周端部から放出される電磁波を測定した。アンテナとしてログペリオディックアンテナを用い、測定器としてアジレントテクノロジー社製、EMCアナライザ「HP8594EM」を用い、3m法で測定を行った。
1GHzの周波数において、比較例1のプリント配線基板では51.16dBμVの電磁波が測定されたのに対し、実施例1のプリント配線基板では36.23dBμVにとどまり、約15dBの減衰効果が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の樹脂付き銅箔は、プリント配線基板は、電源−グランド層共振による電磁波ノイズの発生が問題となるような、0.5GHz以上の高周波電流が流れるプリント配線基板として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の樹脂付き銅箔の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の樹脂付き銅箔の上面模式図である。
【図3】本発明の樹脂付き銅箔の斜視模式図である。
【図4】ノイズ抑制層の表面のフィールドエミッション走査電子顕微鏡像である。
【図5】ノイズ抑制層の断面の高分解能透過型電子顕微鏡像である。
【図6】ノイズ抑制層の電子線回折像である。
【図7】本発明のプリント配線基板の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0043】
10 樹脂付き金属箔
11 金属箔
12 樹脂層
13 ノイズ抑制層
14 マイクロクラスター
20 プリント配線基板
21 信号配線層
22 グランド層
23 電源層
24 グランド層
25 電源層
26 グランド層
27 絶縁層
28 絶縁層
29 スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔と、
該金属箔上に設けられた樹脂層と、
該樹脂層の表面に形成された、磁性金属材料を含むノイズ抑制層と
を有することを特徴とするプリント配線基板用樹脂付き金属箔。
【請求項2】
前記ノイズ抑制層が、磁性金属材料を前記樹脂層の表面に、反応性ガス雰囲気下でスパッタリング法にて物理的に蒸着させて形成された層であることを特徴とする請求項1記載のプリント配線基板用樹脂付き金属箔。
【請求項3】
前記磁性金属材料が、ニッケルまたはニッケルを含む合金であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のプリント配線基板用樹脂付き金属箔。
【請求項4】
前記ノイズ抑制層の表面抵抗の実測値から換算した体積抵抗率R1(Ω・cm)と磁性金属材料の体積抵抗率R0(Ω・cm)とが、0.5≦logR1−logR0≦3を満足することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のプリント配線基板用樹脂付き金属箔。
【請求項5】
前記樹脂層の表面に、ノイズ抑制層がない非ノイズ抑制部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のプリント配線基板用樹脂付き金属箔。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載のプリント配線基板用樹脂付き金属箔を、プリプレグを介して、かつ前記金属箔からなる電源層とグランド層との間に前記ノイズ抑制層が位置するように、複数積層してなることを特徴とするプリント配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−297628(P2006−297628A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−118845(P2005−118845)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】