説明

プログラマブル・コントローラ装置

【課題】 電源ユニット内で生成された例えば寿命情報などの情報を、外部配線などを施すことなく、PLC本体側で直接利用することが可能なPLC装置を提供すること。
【解決手段】 プログラマブル・コントローラ本体のCPUユニットには、ユーザ命令を介してアクセス可能なユーザアクセス領域を有するメモリが設けられ、電源ユニットには、当該電源ユニットに関する状態データを生成する状態データ生成手段が設けられ、さらにCPUユニットと電源ユニットとの間には、電源ユニットに設けられた状態データ生成手段にて生成される状態データを、CPUユニットに設けられたメモリのユーザアクセス領域に転送するためのデータ転送経路が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CPUユニットと1台又は2台以上のI/Oユニットとをバスラインを介して接続してなるプログラマブル・コントローラ本体と、プログラマブル・コントローラ本体に対して給電するための電源ユニットとを有するプログラマブル・コントローラ(以下、「PLC」と言う)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のPLCシステム全体の構成を示すブロック図が図14に示されている。図において、50aは本体装置、50b−1は第1増設装置、1Aは電源ユニット、2はCPUユニット、3はI/Oユニット、4は特殊機能ユニット、6は本体装置に設けられた外部接続用のバスコネクタ、7及び8は第1増設装置に設けられた外部接続用のバスコネクタ、PBはパラレルバスラインである。
【0003】
すなわち、このPLCシステムは、1台の本体装置50aと、1台または2台以上の増設用装置50b−1〜50b−nとを連結用バスラインPB′を介して接続してなるものである。
【0004】
本体装置50aは、CPUユニット2と1台または2台以上のI/Oユニット3,3,・・・と特殊機能ユニット4とをパラレルバスラインPBを介して接続してなるPLC本体と、このPLC本体に対して給電するための電源ユニット1Aとを含んでいる。
【0005】
第1増設装置50b−1は、1台または2台以上のI/Oユニット3,3,・・・と特殊機能ユニット4とをパラレルバスラインPBを介して接続してなる内部ユニット列と、これらユニット列に対して給電するための電源ユニット1Aとを含んでいる。
【0006】
なお、このようなPLCシステムは所謂ビルディング・ブロック型とも称され、バックプレーン上にパラレルバスラインPBを敷設してなる構造のものと、パラレルバスラインPBを分割してそれぞれのユニット内に敷設し、それらを直接につなぎ合わせるようにした構造のものとが知られている。
【0007】
このように、CPUユニット2と1台または2台以上のI/Oユニット3,3,・・・と特殊機能ユニット4とをパラレルバスラインPBを介して接続してなるPLC本体と、PLC本体に対して給電するための電源ユニット1Aとを有するPLC装置は従来より知られている。
【0008】
本体装置50aや第1増設装置50b−1に内蔵される電源ユニット1Aは、本体装置50a内のPLC本体や第1増設装置50b−1内のユニット列に対して給電するものであるから、電源ユニット1Aが故障すれば、本体装置50aや第1増設装置50b−1は動作不能となり、被制御対象に対して甚大な影響を与え兼ねない。
【0009】
ところが、この種の電源ユニット1Aは電解コンデンサなどの寿命部品を内蔵することから、経年劣化による故障を回避することはできない。
【0010】
そこで、電子機器に給電する従来の電源装置の中には、電源装置に内蔵する電解コンデンサの温度を測定し、その測定結果に基づいて電源装置の寿命を推測し、その推測結果を電源装置外表面に取り付けられた7セグメント表示器に表示させたり、あるいは寿命が規定値以下となったときスイッチングする外部出力用接点を設けるなどの対策が施されたものも存在する(特許文献1参照)。
【0011】
しかしながら、図14に示されるように、従来のPLC装置にあっては、CPUユニット2、I/Oユニット3、特殊機能ユニット4を含むPLC本体と電源ユニット1Aとの間にはそれらの間で情報伝達を行うための情報伝達経路は存在しない。しだがって、電源ユニット1A内に特許文献1に記載の寿命推測機能を組み込んだとしても、特別な外部配線を行わない限り電源ユニット1Aから得られる寿命情報を、PLC本体側で利用することができないという問題点がある。
【0012】
すなわち、電源ユニット1Aから得られる寿命情報などを、CPUユニット2のメモリ内の所定の領域(ユーザプログラムやシステムプログラムを構成する命令語からアクセス可能な領域)に取り込むことができれば、その情報をユーザプログラムやシステムプログラムで利用することによって、様々な有意義な応用が期待される。
【特許文献1】特開2003−243269号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この発明はこのような従来の問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、電源ユニット内で生成された例えば寿命情報などの情報を、外部配線などを施すことなく、PLC本体側で直接利用することが可能なPLC装置を提供することにある。
【0014】
この発明のさらに他の目的ならびに作用効果は、明細書の以下の記述を参照することにより、当業者であれば容易に理解されるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明のPLC装置は、CPUユニットと1台または2台以上のI/Oユニットとをバスラインを介して接続してなるPLC本体と、PLC本体に対して給電するための電源ユニットとを有する。
【0016】
PLC本体のCPUユニットには、ユーザプログラムを構成する命令語を介してアクセス可能なユーザアクセス領域を有するメモリが設けられ、電源ユニットには、当該電源ユニットに関する状態データを生成する状態データ生成手段が設けられる。ここで、「アクセス可能」とは、データの読み出し、又は書き込みが可能な、或いはその両方が可能な、を意味している。また、「ユーザプログラム」とは、PLCの利用者であるユーザによって作成、変更されるプログラムであり、このユーザプログラムをPLCにて実行することで、ユーザが希望する制御が可能となるのである。
【0017】
さらに、CPUユニットと電源ユニットとの間には、電源ユニットに設けられた状態データ生成手段にて生成される状態データを、CPUユニットに設けられたメモリのユーザアクセス領域に転送するためのデータ転送経路が設けられる。
【0018】
このような構成によれば、電源ユニットに設けられた状態データ生成手段にて生成された状態データを、CPUユニットに設けられたメモリのユーザアクセス領域に転送することが可能となるため、電源ユニットとCPUユニットとの間を特別な外部配線で接続したり、あるいは電源ユニットの出力をI/Oユニットを介してPLC本体に取り込むといった構成を採用せずとも、電源ユニットで生成された状態データをPLC本体側で任意に利用することが可能となる。
【0019】
ここで、「電源ユニットとCPUユニットとの間に設けられたデータ転送経路」としては様々な構成を採用することができる。
【0020】
PLC本体を構成するCPUユニットと1台または2台以上のI/Oユニットとがパラレルバスラインを介して接続されている場合、電源ユニットとCPUユニットとの間に設けられるデータ転送経路としては、専用のシリアルバスラインにより構成することができる。
【0021】
PLC本体を構成するCPUユニットと1台または2台以上のI/Oユニットとがシリアルバスラインを介して接続されている場合、電源ユニットとCPUユニットとの間に設けられるデータ転送経路としては、前記シリアルバスラインを延長することにより構成することができる。
【0022】
PLC本体を構成するCPUユニットと1台または2台以上のI/Oユニットとがパラレルバスラインを介して接続される場合、電源ユニットとCPUユニットとの間に設けられるデータ転送経路としては、前記パラレルバスラインに対して、シリアル/パラレル変換器を介して、専用のシリアルバスラインを接続することにより構成することができる。
【0023】
PLC本体を構成するCPUユニットと1台または2台以上のI/Oユニットとがシリアルバスラインを介して接続される場合、電源ユニットとCPUユニットとの間に設けられるデータ転送経路としては、前記シリアルバスラインに対して、ゲート回路を介して、専用のシリアルバスラインを接続することにより構成することができる。
【0024】
本発明の好ましい実施の態様においては、PLC本体を構成するCPUユニットと1台または2台以上のI/Oユニットとを接続するバスラインは、連絡用バスラインを介して1台または2台以上の増設用装置とも接続可能とされる。この場合、CPUユニットに設けられたメモリのユーザアクセス領域には、各増設用装置のそれぞれに対応する専用領域が割り当てられる。
【0025】
このような構成によれば、本体装置に対して1台または2台以上の増設用装置が接続されたPLCシステムの場合には、本体装置の電源ユニットからの情報のみならず、増設用装置の電源ユニットからの情報についても、PLC本体側において任意に利用することが可能となり、一層の利便を向上することができる。
【0026】
本発明の好ましい実施の態様においては、CPUユニットに設けられたメモリのユーザアクセス領域に転送された状態データを演算用パラメータとして所定の演算を実行する専用命令がユーザプログラムを構成する命令語として使用できるようにされてもよい。
【0027】
このような構成によれば、ユーザプログラム中においてそのような専用命令を使用することにより、ユーザに特別に複雑なプログラムを組ませることなく、様々な便利な機能を実現させることができる。つまり、システム側において、電源ユニットからの情報に基づいて最適と思われる機能を予め組んでおき、ユーザ側においてはそれに対応する専用命令をユーザプログラム中に挿入するだけで、システム側から提供された便利な機能を簡単に利用することが可能となる。
【0028】
本発明の好ましい実施の態様においては、状態データ生成手段は、当該電源ユニットに関する指定された物理量を計測する計測手段を含み、計測手段により計測された物理量そのものを状態データとして出力するようにしてもよい。
【0029】
このような構成によれば、電源ユニット内の計測手段により計測された物理量そのものをCPUユニット内メモリのユーザアクセス領域に取り込むことができるため、そのような生の状態データそのものに基づいて電源ユニット内の状況を直接的に把握することができ、これに任意の演算処理あるいは判定処理を組み合わせることによって、電源ユニットの状況を的確に把握すると共に、これに対する適切な態様をとることが可能となる。
【0030】
本発明の好ましい実施の態様においては、状態データ生成手段は、当該電源ユニットに関する指定された物理量を計測する計測手段と、計測手段により計測された物理量と既知の相関とに基づいて特定の状態量を求める演算手段とを含み、演算手段により求められた状態量そのものを状態データとして出力するようにしてもよい。
【0031】
このような構成によれば、CPUユニット内メモリのユーザアクセス領域に取り込まれる状態データは、既に特定の状態量を示すものであるから、PLC本体側で演算処理を組み込むことなく、直ちに電源ユニットの状況を把握し、適切な対応をとることが可能となる。
【0032】
本発明の好ましい実施の態様においては、状態データ生成手段は、当該電源ユニットに関する指定された物理量を計測する計測手段と、計測手段により計測された物理量と既知の相関とに基づいて特定の状態量を求める演算手段と、計測手段により計測された物理量または演算手段により求められた状態量を所定の基準量と照合して状態判定を行う判定手段とを含み、判定手段による状態判定結果を状態データとして出力するようにしてもよい。
【0033】
このような構成によれば、CPUユニット内メモリのユーザアクセス領域に取り込まれる状態データは、電源ユニットに関する状態判定結果そのものとされているため、PLC本体側では、この状態データに基づき直ちに適切な対応をとることが可能となる。
【0034】
ここで、「当該電源ユニットに関する指定された物理量」としては、様々な物理量を採用することができる。
【0035】
すなわち、当該電源ユニットに関する指定された物理量としては、当該電源ユニットの受電側の電圧および/または電流とすることができる。
【0036】
このような構成を採用すれば、PLC本体側において何らかの電源異常が生じた場合、それが外部から電源ユニットに供給される商用電源の側に原因があるのか、あるいは電源ユニットそのものの故障なのかを的確に判定することが可能となる。
【0037】
当該電源ユニットに関する指定された物理量としては、当該電源ユニットの送電側の電圧および/または電流とすることができる。
【0038】
このような構成によれば、PLC本体側において何らかの電源異常が発生した場合、それが電源ユニットの送電それ自体に原因があるのか、あるいは電源ユニットからPLC本体へ至る配電系に原因があるのかを的確に判定することが可能となる。
【0039】
当該電源ユニットに関する指定された物理量としては、当該電源ユニット内の温度とすることもできる。
【0040】
このような構成によれば、PLC本体側において電源ユニット内の温度を把握することができるため、例えばPLC本体および電源ユニットが閉鎖型の制御盤に収容され、その制御盤に排気用ファン装置が組み込まれているような場合には、上述の温度情報を利用してこの排気用ファン装置をオンオフ制御することにより、過熱による電源ユニットの寿命低下を抑制することが可能となる。
【0041】
このとき、CPUユニットに設けられたメモリのユーザアクセス領域に転送された状態データである電源ユニット内温度が規定値を超えたとき、所定の出力をオンさせる専用命令がユーザプログラムを構成する命令語として使用できれば、この専用命令をユーザプログラム中で利用することにより、ユーザは制御盤の排気ファン装置の制御を簡単に実現させることができる。
【0042】
当該電源ユニットに関する指定された物理量としては、当該電源ユニットの通電積算時間とすることもできる。
【0043】
このような構成によれば、こうして得られた当該電源ユニットの通電積算時間を比較命令などのユーザ命令を介して基準値と照合することで、PLC本体側において、当該電源ユニットの交換時期を確実に把握し、適切な対応(プログラマブル表示器への表示あるいは警告ブザーの鳴動)などを実現することができる。
【0044】
本発明の好ましい実施の態様においては、当該電源ユニットに関する指定された物理量が電源回路に組み込まれた電解コンデンサの温度であり、かつ特定の状態量が当該電源ユニットの交換時期残時間であってもよい。
【0045】
このような構成によれば、PLC本体側において当該電源ユニットの交換時期残時間を直接的に把握することができるため、これを基準値と比較するなどによって、交換時期を把握し適切な対応(プログラマブル表示器への表示、警告ブザーの鳴動など)を容易に実現することができる。
【0046】
このとき、CPUユニットに設けられたメモリのユーザアクセス領域に転送された状態データである交換時期残時間が規定値を下回ったとき、所定の出力をオンさせる専用命令がユーザプログラムを構成する命令語として使用できるようにしてもよい。
【0047】
このような構成によれば、この専用命令をユーザプログラム中で採用することにより、ユーザは電源ユニットが寿命に達する前に、その交換時期を適切に把握することが可能となる。
【0048】
以上述べた本発明の様々な機能は、1台の本体装置と、1台または2台以上の増設用装置とを連結用バスラインを介して接続してなるPLCシステムにも同様に採用することができる。
【0049】
すなわち、このPLCシステムは、1台の本体装置と、1台または2台以上の増設用装置とを連結用バスラインを介して接続してなるものである。
【0050】
本体装置は、CPUユニットと1台または2台以上のI/Oユニットとをバスラインを介して接続してなるPLC本体と、PLC本体に対して給電するための電源ユニットとを含んでいる。
【0051】
PLC本体のCPUユニットには、ユーザ命令を介してアクセス可能な号機別ユーザアクセス領域を有するメモリが設けられ、かつ電源ユニットには、当該電源ユニットに関する状態データを生成する状態データ生成手段が設けられる。
【0052】
一方、増設用装置のそれぞれは、バスラインを介して接続された1台または2台以上の増設用I/Oユニットと、それらの増設用I/Oユニットに対して給電するための増設用電源ユニットを含んでいる。
【0053】
増設用電源ユニットには、当該増設用電源ユニットに関する状態データを生成する状態データ生成手段が設けられる。
【0054】
さらに、本体装置のCPUユニットと電源ユニットとの間、並びに、本体装置のCPUユニットと増設用装置の増設用電源ユニットとの間には、電源ユニットに設けられた状態データ生成手段、並びに、増設用装置の増設用電源ユニットに設けられた状態データ生成手段にて生成される状態データを、本体装置のCPUユニットに設けられたメモリの号機別ユーザアクセス領域に転送するためのデータ転送経路が設けられる。
【0055】
このような構成によれば、本体装置の電源ユニットからの状態データのみならず、増設用装置の電源ユニットからの状態データについても、PLC本体側で利用することが可能となり、電源ユニットに関するシステム全体の状況を統括的に管理することが可能となる。
【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、電源ユニットに設けられた状態データ生成手段にて生成される状態データを、CPUユニットに設けられたメモリのユーザアクセス領域に転送することができるため、電源ユニットとPLC本体との間を別途配線で結ぶことなく、PLC本体側において電源ユニットからの状態データをユーザプログラムまたはシステムプログラムにおいて任意に利用することが可能となり、この種のPLCの使い勝手を格段に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
以下に、本発明の好適な実施の一形態であるPLCシステムを図1〜図13を参照しながら詳細に説明する。
【0058】
本発明が適用された電源ユニットの電気的ハードウェア構成を示すブロック図が図1に示されている。同図に示されるように、この電源ユニット1には、外部から商用交流電源(例えば、AC100V,AC200Vなど)を受電するための受電端子として機能する端子台101と、内部で生成された直流安定化電源をPLC本体への内部出力電源ライン(PWR)へと送電するための送電端子として機能するコネクタ102とを有する。なお、号機スイッチ103は、当該電源ユニット1の装置番号(N)を設定するためのスイッチであり、例えばDIPスイッチなどで構成することができる。
【0059】
入力側回路104は、端子台101から得られる交流を整流して直流に変換した後、この直流をスイッチングすることで所定周波数の交流に再変換する機能を有する回路であり、すなわち交直変換機能と直交変換機能とを備えた回路である。
【0060】
トランス(変圧器)は、入力側回路104から得られる交流電圧を変圧し、出力側回路106へと供給する。
【0061】
出力側回路106は、変圧器(トランス)105から得られる交流を整流安定化して直流安定化電源を得、これを送電端子であるコネクタ102からPLC本体へ通ずる給電路である内部出力電源ライン(PWR)へと出力する。
【0062】
このように、電源ユニット1内の電源回路は、入力側回路104と変圧器(トランス)105と出力側回路106とを含んでいる。
【0063】
一方、この電源ユニット1の内部には、当該電源ユニットに関する状態データを生成するために、様々な検出器が設けられている。すなわち、電圧・電流検出器107は、当該電源ユニットの受電側の電圧および/または電流を検出する。温度検出器108は、当該電源ユニット内の温度を検出する。この例にあっては、当該電源ユニット内の温度として、特に、電源回路に組み込まれた電解コンデンサの温度を検出する。電圧・電流検出器109は、当該電源ユニットの送電側の電圧および/または電流を検出する。
【0064】
これらの検出器107,108,109で検出された検出値(物理量)は、マイコン110に読み込まれる。マイコン110はこれらの物理量に基づいて当該電源ユニットの状態データを生成する。
【0065】
マイコン110が実行する状態データ生成処理は、第1の状態データ生成処理と、第2の状態データ生成処理と、第3の状態データ生成処理との何れかにより行われる。
【0066】
ここで、第1の状態データ生成処理とは、当該電源ユニットに関する指定された物理量を計測する計測手段(温度検出器108、電圧・電流検出器107,109などに相当)により計測された物理量そのものを状態データとして生成出力する処理である。
【0067】
また、第2の状態データ生成処理とは、当該電源ユニットに関する指定された物理量を計測する計測手段により計測された物理量と既知の相関とに基づいて特定の状態量を求める演算手段を含み、この演算手段により求められた状態量そのものを状態データとして出力するものである。
【0068】
また、第3の状態データ生成処理とは、当該電源ユニットに関する指定された物理量を計測する計測手段により計測された物理量と既知の相関とに基づいて特定の状態量を求める演算手段と、計測手段により計測された物理量または演算手段により求められた状態量を所定の基準量と照合して状態判定を行う判定手段とを含み、判定手段による状態判定結果を状態データとして出力するものである。
【0069】
このとき、状態判定に必要な「所定の基準量」については、内部メモリ(不揮発性)111に予め格納されている。この内部メモリへの格納は、後に詳細に説明するように、CPUユニット側から送られてきたアラーム出力設定値をマイコン110が受信し、内部メモリ111に書き込むことにより行われる。
【0070】
先に説明したように、電源ユニット1には装置番号(N)が設定可能とされている。この装置番号(N)の設定は、号機スイッチ103から得られる設定データ、またはCPU通信用シリアルバス(SB)から受信された設定データを、マイコン110を介して内部メモリ(不揮発性)111に格納することにより行うことができる。
【0071】
この電源ユニット1は、コネクタ102を介して、給電のための内部出力電源ライン(PWR)、データ通信のためのCPU通信用シリアルバス(SB)、装置番号受信のための信号線(NL)に接続可能とされる。
【0072】
次に、PLCシステム全体の構成を示すブロック図(その1)が図2に示されている。このPLCシステムは、1台の本体装置10aと、1台若しくは2台以上の増設用装置10b−1,10b−2,・・・とを含んでいる。
【0073】
本体装置10aは、1台のCPUユニット2と、1台または2台以上のI/Oユニット3,3,・・・と、特殊機能ユニット4とを含むPLC本体と、このPLC本体に対して給電を行うための電源ユニット1とを含んでいる。なお、103は号機スイッチである。号機スイッチ103は、例えばDIPスイッチで構成してもよいし、本体装置や増設装置がバスラインを備えたバックプレーン上に各種ユニットを結合して構成されるタイプのPLCシステムの場合は、バックプレーン上の所定箇所に配置されたジャンパピン等で構成してもよい。
【0074】
PLC本体を構成するCPUユニット2と、1台または2台以上のI/Oユニット3と、特殊機能ユニット4とは、パラレルバスラインPBを介して共通接続されている。この例にあっては、本体装置10aの電源ユニット1は装置番号0に設定されている。
【0075】
一方、増設用装置10b−1,10b−2,・・・は、1台または2台以上のI/Oユニット3,3,・・・と特殊機能ユニット4とを含む本体部と、この本体部に対して電源を供給する電源ユニット1とを含んでいる。なお、103は号機スイッチである。
【0076】
本体部を構成する1台または2台以上のI/Oユニット3,3,・・・と特殊機能ユニット4とはパラレルバスラインPBを介して共通接続されている。この例では、第1増設装置10b−1の電源ユニット1は装置番号1に、第2増設装置10b−2の電源ユニット1は装置番号2にそれぞれ設定されている。
【0077】
本体装置10a及び各増設用装置10b−1,10b−2のそれぞれには、本発明に関連して、新たにシリアルバスラインSBと装置番号ラインNLとが設けられる。
【0078】
本体装置10a,各増設用装置10b−1,10b−2,・・・内に存在する3本のライン(PB,SB,NL)は、連絡用ライン(PB′,SB′,NL′)を介して順に結ばれている。
【0079】
シリアルバスラインSBの系統上には、本体装置のCPUユニット2と、本体装置の電源ユニット1と、各増設用装置の電源ユニット1とが共通に接続される。また、装置番号ラインNL上には、本体装置内の電源ユニット1と各増設用装置内の電源ユニット1とがそれぞれ共通に接続される。なお、符号5は、これらの装置を芋づる的に順次接続した場合、接続順にアドレスが割り当てられるように構成するためのプラス1加算機である。
【0080】
以上の構成によれば、本体装置10aのCPUユニット1と電源ユニット2との間、並びに、本体装置10aのCPUユニット2と増設用装置10b−1,10b−2の増設用電源ユニット1との間には、各電源ユニット1に設けられた状態データ生成手段(マイコンで構成)、並びに、増設用装置の増設用電源ユニットに設けられた状態データ生成手段にて生成される状態データを、本体装置10aのCPUユニット2に設けられたメモリの号機別ユーザアクセス領域に転送するためのデータ転送経路が設けられることとなる。
【0081】
なお、図2において、符号6,7,8,9,10は、外部接続用の双方向バスコネクタである。
【0082】
次に、CPUユニット2の内部構成を簡単に説明する。CPUユニット2は、図示しないが、マイクロプロセッサとASICとメモリとを含んで構成される。CPUユニット2はそれら構成要素を適宜作動することにより、共通処理、入出力リフレッシュ処理、命令実行処理、システムサービス処理をサイクリックに実行しながらPLCとしての機能を実現する。この種の処理の詳細は当業者に周知であるから説明は省略する。
【0083】
CPUユニットのメモリマップが図3に示されている。同図に示されるように、CPUユニットの内部メモリは、システムメモリ領域A1とワークメモリ領域A2とユーザプログラムメモリ領域A3とシステム設定領域A4とI/Oデータ領域A5と電源ステータス領域A6とを含んでいる。これらの領域の中で、I/Oデータ領域A5と電源ステータス領域A6とについては、ユーザプログラムを構成する命令語を介してアクセス可能なユーザアクセス領域とされている。
【0084】
電源ステータス領域A6は、本体装置領域と各増設用装置領域とに分割されている。本体装置領域は、図中右側に拡大して示されるように、交換時期残時間データ領域A600、通電積算時間データ領域A601、出力電流データ領域A602、出力電圧データ領域A603、内部温度データ領域A604、交換時期残時間アラーム出力設定領域A605、通電積算時間アラーム出力設定領域A606、出力電流アラーム出力設定領域A607、出力電圧アラーム出力設定領域A608、内部温度アラーム出力設定領域A609を含んでいる。
【0085】
領域A600〜A604は、ユーザプログラムを構成する命令語からデータの読み出しのみ可能な領域(リードオンリー領域)であって、これらの領域には、後述する電源ユニットとの交信で得られた各データが格納される。一方、領域A605〜609は、ユーザプログラムを構成する命令語からデータの読み出しや書き込みが可能な領域(リード/ライト可能領域)であって、これらの領域には、通信を介して電源ユニットに設定されるべき設定値が格納されている。なお、図には示されていないが、各増設用装置エリアについても、リードオンリー領域とリード/ライト可能領域とが設けられ、それらの領域には同様なデータが格納されている。
【0086】
なお、先に説明した電源ユニット1内の内部メモリ111には、図3のメモリマップにおけるリード/ライト可能領域に格納された各アラーム出力設定データが格納される。
【0087】
次に、本発明に関連してCPUユニットと各電源ユニット(0〜N号機)との間で実行される初期処理を示すフローチャートが図4及び図5に示されている。
【0088】
図4において処理が開始されると、各ユニットは電源投入と共に起動される。なお、この例にあっては、本体装置の電源ユニットは0号機、第1増設装置の電源ユニットは1号機、第2増設装置の電源ユニットは2号機に割り当てられている。また、0号機と2号機とは本発明に係る通信処理をサポートしているのに対し、1号機は通信処理をサポートしていない従来形式のものとされている。
【0089】
以上の前提において処理が開始されると、まずCPUユニットの側では、初期処理が開始されるのに対し(ステップ101)、1号機を除く各電源ユニットの側では、号機スイッチ103から得られる設定データ、または装置番号ラインNLから得られる設定データに基づいて、自機の号機番号確認を行う(ステップ201、401)。
【0090】
その後、各電源ユニットにおいては、内部状態の監視(状態データ生成処理に相当)を行うと共に、その監視結果を内部メモリ(不揮発性)111に格納する処理を繰り返す(ステップ202,402)。
【0091】
一方、CPUユニットの側では、適当なタイミングにおいて、0号機へのコマンド送信を行うことにより(ステップ102)、電源ユニット0号機への送信要求を行い、以後レスポンス待ちの状態となる(ステップ103)。
【0092】
一方、送信要求コマンドを受け付けた0号機においては、送信要求コマンドの内容を解読実行し(ステップ203)、CPUユニットへとレスポンス送信を行い(ステップ204)、以後、内部状態の監視ならびに内部メモリ111への状態確認処理を繰り返す(ステップ205)。他方、CPUユニットの側では、0号機からのレスポンス確認を行い、受信データをメモリ内の該当するエリアへと格納する(ステップ104)。
【0093】
以後、CPUユニットの側では、号機番号を1号機、2号機、3号機・・・N号機と変更しては、以上の処理を繰り返す(ステップ105〜113)。また、1号機を除く各電源ユニットにおいては、内部状態の監視ならびに不揮発性メモリへの状態確認処理が繰り返される(ステップ402)。
【0094】
こうして、全ての号機に対する送信要求コマンドの送信が終了すると、CPUユニットの側では、通信対象電源ユニットが0号機と2号機とであることを確認し、これをメモリ内の所定エリアに登録する。以後、この登録された号機番号(0号機、2号機)のみに対して、送信要求コマンドの送信が行われる。
【0095】
次に、本発明に関連してCPUユニットと各電源ユニット(0〜N号機)との間で実行される通常処理を示すフローチャートが図6に示されている。
【0096】
同図において処理が開始されると、まずCPUユニットの側では、共通処理、入出力更新処理、命令実行処理、システムサービス処理などの基本処理(ステップ501)を実行しつつ、その合間に、0号機に対して状態データ要求コマンドの送信を行う(ステップ502)。
【0097】
一方、電源ユニットの0号機の側では、内部状態監視処理ならびに不揮発性メモリへの状態格納処理を実行しつつ(ステップ601)、CPUユニットから自機宛コマンドが受信されるのを待って(ステップ602)、コマンドで指定された要求データを、内部メモリ111から読み出して、送信用データを生成し、これをCPU側へとレスポンスとして送信する(ステップ603)。
【0098】
続いて、CPUユニットの側では、0号機からのレスポンスを確認し、これをCPU内部データエリアに反映させる(ステップ504)。ここでCPU内部データエリアとは、図3のメモリマップに示される領域A600〜A604に相当する。
【0099】
続いて、CPUユニットの側では、CPU内部設定データエリアに変更の有無を確認する(ステップ505)。ここでCPU内部設定データエリアとは、図3のメモリマップにおける領域A605〜A609に相当する。つまり、CPU内部設定データエリアの変更有無とは、ユーザが設定値を変更したかどうかを確認するものである。
【0100】
ここで、CPU内部設定データエリアに変更ありと判定されれば、以後0号機へと設定データコマンドの送信処理が行われる(ステップ506)。一方、これに対する電源ユニットの0号機の側では、CPUユニットからの自機宛コマンドを受信すると(ステップ604)、CPUからの設定データを自機の内部メモリ111へと書き込み(ステップ605)、CPUへ書き込み完了レスポンスを送信する(ステップ606)。
【0101】
これを受けたCPUユニットの側では、0号機からのレスポンスを確認した後(ステップ507)、以後同様な処理を0号機から2号機へと変更してアクセス実施を行い(ステップ508)、以後次サイクルへの移行が行われる(ステップ509)。
【0102】
以上図4及び図5に示す初期処理、ならびに、図6に示される通常処理が実行される結果、電源ユニット0号機及び2号機で生成された状態データ(この例では、交換時期残時間データ、通電積算時間データ、出力電流データ、出力電圧データ、内部温度データ)は、図3のメモリマップに示されるように、CPU内のメモリの電源ステータス領域A6に転送して格納され、以後これらのデータをユーザ命令を介して適宜参照することにより、PLC本体側で様々な制御が可能となるのである。
【0103】
さらに、CPUユニットの側で、領域A605〜A609において設定値の変更が行われれば、新たな設定値はCPUユニットの側から各電源ユニットの側へと送られ、各電源ユニット内の内部メモリ111に図3のメモリマップと同様にして格納される。
【0104】
そして、各電源ユニットの側では、第1〜第3の状態データ生成処理の何れかを実行することによって、計測処理、状態データ生成処理、判定処理を実行し、それらの実行結果を、図示しない適宜な送受信処理を介して、CPUユニット側へと送信し、これをI/Oデータ領域A5あるいは電源ステータス領域A6の図示しない領域へと格納させ、ユーザプログラムやシステムプログラムへの利用へと供するのである。
【0105】
なお、以上図2に示される例にあっては、電源ユニットに設けられた状態データ生成手段(マイコンで構成)にて生成される状態データを、CPUユニットに設けられたメモリのユーザアクセス領域に転送するためのデータ転送経路として、シリアルバスラインSBおよび号機番号ラインNLを示したが、これは一例に過ぎない。
【0106】
PLCシステム全体の構成を示すブロック図(その2)が図7に示されている。なお、同図において、図2のブロック図(その1)と同一構成部分については同符号を付して説明は省略する。
【0107】
この例にあっては、PLC本体を構成するCPUユニット2と1台または2台以上のI/Oユニット3とは、シリアルバスラインSBを介して接続されている。このような場合、電源ユニット1とCPUユニット2との間に設けられたデータ転送経路としては、シリアルバスラインSBを延長することにより構成することができる。
【0108】
PLCシステムの全体の構成を示すブロック図(その3)が図8に示されている。なお、同図において図2のブロック図(その1)と同一構成部分については同符号を付して説明は省略する。
【0109】
この例にあっては、PLC本体を構成するCPUユニット2と1台または2台以上のI/Oユニット3とは、パラレルバスラインPBを介して接続されている。このような場合、電源ユニット1とCPUユニット2との間に設けられたデータ転送経路としては、前記パラレルバスラインPBに対して、シリアル/パラレル変換器11を介して、専用のシリアルバスラインSBを接続することにより構成することができる。このシリアル/パラレル変換器11に制御バスで制御可能なイネーブルレジスタを搭載することで、CPUユニットがアクセスしたい増設装置の電源ユニットだけにアクセスすることが可能となり、先の構成の中で、号機を設定するためのスイッチや制御信号を必要としたが、これらが必要なくなる他、電源ユニット専用のバスも必要なくなる。
【0110】
次に、PLCシステム全体の構成を示すブロック図(その4)が図9に示されている。なお、同図において前記図3のブロック図(その1)と同一構成部分については、同符号を付して説明は省略する。
【0111】
この例にあっては、PLC本体を構成するCPUユニット2と1台または2台以上のI/Oユニット3とは、シリアルバスラインSBを介して接続されている。このような場合、電源ユニット1とCPUユニット2との間に設けられたデータ転送経路としては、前記シリアルバスラインSBに対して、ゲート回路12を介して、専用のシリアルバスラインSB−1を接続することにより構成することができる。この場合にも、ゲート回路12は、専用バスで開閉可能とされる。この例にあっても、ブロック図(その4)と同様に、余分なスイッチやバスを必要としない利点がある。
【0112】
次に、本発明の作用を説明する概念図が図10に示されている。図において、1は電源ユニット、1aはマイコン、1bは電源内部回路、2はCPUユニット、2aはマイコン、2bは内部メモリである。
【0113】
図から明らかなように、電源ユニット1内においては、マイコン1aによって電源内部回路の状態確認が常時行われている。電源ユニット1とCPUユニット2との間では、寿命データの送受信が行われる。CPUユニット2の側では、受信された寿命データは内部メモリ2bに格納される。このように、本発明にあっては、電源ユニットの内部状態は常時CPUユニット2内の内部メモリ2bに反映される。そのため、この内部メモリ2bの状態をユーザプログラムまたはシステムプログラムで利用することによって、様々な制御が可能となる。
【0114】
電源寿命の通知方法の一例を示す説明図が図11に示されている。図において10はPLC、20は監視モニタ、201は表示器、202はブザー、203はランプである。
【0115】
この例にあっては、図10に示される内部メモリ2bの状態をユーザプログラムあるいはシステムプログラムで参照することによって、様々な形態で電源寿命の通知を行っている。例えば、イーサネット(登録商標)などによる通信を介して、PLC10と遠隔設置された監視モニタ20とを結び、CPUユニットの内部メモリ2bの内容に基づき、電源寿命が規定値を下回ると判定された場合、監視モニタ20に対してその旨の通知を行えば、PLC10の設置現場にいなくとも電源寿命が達したことを監視モニタ20を介して確認することができる。もちろん、PLC10の設置現場においても、表示器201において、電源の状態を表示し、任意の設定範囲になったら警報を表示したり、ブザー202においては任意の設定範囲になったらブザーを鳴らしたり、ランプ203においては任意の設定範囲になったらランプを点灯させるなどの制御により、電源寿命をオペレータに通知することができる。
【0116】
電源交換時期の別の通知方法の例の説明図が図12に示されている。同図(a)に示されるように、この例にあっては、専用命令301が定義されている。この専用命令301にあっては、本体装置上の電源ユニットの交換時期残時間データが1年に満たなくなった場合に「真」となる。この例では、「常時ON」フラグを指定する接点302と専用命令301とがAND条件で結合されている。「常時ON」フラグを指定する接点302は、常に「真」となるため専用命令301が「真」となる場合、出力命令303で指定される「出力1」に該当する所定の内部メモリをONすることができる。その結果として、電源交換時期を外部へ通知することができる。この専用命令301を使用すれば、MOV命令やCOMP命令を利用せずとも、電源交換時期の通知機能をユーザプログラムを構成する命令語で実現することができる。すなわち、同図(b)に示されるように、電源ユニット305、CPUユニット304、入出力ユニット(I/Oユニット)306を有するような場合、入出力ユニット306の「出力1」(出力命令303で指定されたもの)に対応する信号出力用端子を警報ランプ307に接続することによって、交換時期残時間が1年に満たなくなった場合、警報ランプ307を点灯させてその状態を通知することができる。この例の専用命令301の他の構成としては、専用命令301内で「出力1」を指定できるようにしても良い。
【0117】
電源温度による制御盤温度制御例の説明図が図13に示されている。同図(a)に示されるように、この例にあっても、専用命令401が定義されている。この専用命令401は、本体装置上の電源ユニットの内部温度データが50℃を超えた場合に「真」となる。この例では、「常時ON」フラグを指定する接点402と専用命令401とがAND条件で結合されている。「常時ON」フラグを指定する接点402は常に「真」となるため専用命令401が「真」となる場合、出力命令403で指定される「出力1」に該当する所定の内部メモリをONすることができる。その結果として、電源ユニットの内部温度が所定の温度を越えたことを外部へ通知することができる。このような専用命令を利用することにより、ユーザは電源ユニットの過熱による寿命低下を抑制することができる。すなわち、同図(b)に示されるように、密閉型の制御盤404内に、電源ユニット406、CPUユニット405、入出力ユニット407が収容されているような場合、その制御盤に排気用の外部ファン408を設けると共に、この排気用外部ファンのモータを入出力ユニットの「出力1」(出力命令403で指定されたもの)に対応する信号出力用端子を介して駆動するように構成する。
【0118】
このような構成によれば、ユーザプログラム中において専用命令401を使用して外部ファン408のモータを駆動することにより、やはりMOV命令やCOMP命令を利用することなく、電源ユニットの内部温度データが50℃を超える期間に限って、外部ファン408を駆動することにより、密閉型制御盤404内を強制冷却して、電源ユニット406の過熱による寿命低下を可及的に防止することができる。この例の専用命令401の他の構成としては、専用命令401内で「出力1」を指定できるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明によれば、電源ユニットに設けられた状態データ生成手段にて生成される状態データを、CPUユニットに設けられたメモリのユーザアクセス領域に転送するようにしたため、ユーザプログラムまたはシステムプログラムによってこの状態データを参照して適宜な機能を組み込めば、電源ユニットの状態データに基づいて必要とされる様々な機能を、従前のようにCPUユニットと電源ユニットとの間を外部配線で結ぶことなく、容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】電源ユニットの電気的ハードウェア構成を示すブロック図である。
【図2】PLCシステム全体の構成を示すブロック図(その1)である。
【図3】CPUユニットのメモリマップを示す図である。
【図4】本発明に関連してCPUユニットと各電源ユニット(0〜N号機)との間で実行される初期処理を示すフローチャート(その1)である。
【図5】本発明に関連してCPUユニットと各電源ユニット(0〜N号機)との間で実行される初期処理を示すフローチャート(その2)である。
【図6】本発明に関連してCPUユニットと各電源ユニット(0〜N号機)との間で実行される通常処理を示すフローチャートである。
【図7】PLCシステム全体の構成を示すブロック図(その2)である。
【図8】PLCシステム全体の構成を示すブロック図(その3)である。
【図9】PLCシステム全体の構成を示すブロック図(その4)である。
【図10】本発明の作用を説明する概念図である。
【図11】電源寿命の通知方法例を示す説明図である。
【図12】電源交換時期の通知方法例の説明図である。
【図13】電源温度による制御盤温度制御例の説明図である。
【図14】従来のPLCシステム全体の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0121】
1 電源ユニット
1a マイコン
1b 電源内部回路
2 CPUユニット
2a マイコン
2b 内部メモリ
3 I/Oユニット
4 特殊機能ユニット
5 プラス1加算機
6,7,8,9,10 外部接続用のバスコネクタ
11 シリアル/パラレル変換器
12 ゲート回路
10 PLC
20 監視モニタ
101 端子台
102 コネクタ
103 号機スイッチ
104 入力側回路
105 変圧器(トランス)
106 出力側回路
107 電圧・電流検出器
108 温度検出器
109 電圧・電流検出器
110 マイコン
111 内部メモリ
201 表示器
202 ブザー
203 ランプ
A1 システムメモリ領域
A2 ワークメモリ領域
A3 ユーザプログラムメモリ領域
A4 システム設定領域
A5 I/Oデータ領域
A6 電源ステータス領域
A600 交換時期残時間データ領域
A601 通電積算時間データ領域
A602 出力電流データ領域
A603 出力電圧データ領域
A604 内部温度データ領域
A605 交換時期残時間アラーム出力設定領域
A606 通電積算時間アラーム出力設定領域
A607 出力電流アラーム出力設定領域
A608 出力電圧アラーム出力設定領域
A609 内部温度アラーム出力設定領域
NL 装置番号設定ライン
PWR 内部出力電源供給ライン
SB CPU通信用シリアルバス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CPUユニットと1台又は2台以上のI/Oユニットとをバスラインを介して接続してなるプログラマブル・コントローラ本体と、プログラマブル・コントローラ本体に対して給電するための電源ユニットとを有し、
プログラマブル・コントローラ本体のCPUユニットには、ユーザプログラムを構成する命令語を介してアクセス可能なユーザアクセス領域を有するメモリが設けられ、
電源ユニットには、当該電源ユニットに関する状態データを生成する状態データ生成手段が設けられ、さらに
CPUユニットと電源ユニットとの間には、
電源ユニットに設けられた状態データ生成手段にて生成される状態データを、CPUユニットに設けられたメモリのユーザアクセス領域に転送するためのデータ転送経路が設けられている、ことを特徴とするプログラマブル・コントローラ装置。
【請求項2】
プログラマブル・コントローラ本体を構成するCPUユニットと1台又は2台以上のI/Oユニットとは、パラレルバスラインを介して接続されており、かつ
電源ユニットとCPUユニットとの間に設けられたデータ転送経路が、専用のシリアルバスラインにより構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のプログラマブル・コントローラ装置。
【請求項3】
プログラマブル・コントローラ本体を構成するCPUユニットと1台又は2台以上のI/Oユニットとは、シリアルバスラインを介して接続されており、かつ
電源ユニットとCPUユニットとの間に設けられたデータ転送経路が、前記シリアルバスラインを延長することにより構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のプログラマブル・コントローラ装置。
【請求項4】
プログラマブル・コントローラ本体を構成するCPUユニットと1台又は2台以上のI/Oユニットとは、パラレルバスラインを介して接続されており、かつ
電源ユニットとCPUユニットとの間に設けられたデータ転送経路が、前記パラレルバスラインに対して、シリアル/パラレル変換器を介して、専用のシリアルバスラインを接続することにより構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のプログラマブル・コントローラ装置。
【請求項5】
プログラマブル・コントローラ本体を構成するCPUユニットと1台又は2台以上のI/Oユニットとは、シリアルバスラインを介して接続されており、かつ
電源ユニットとCPUユニットとの間に設けられたデータ転送経路が、前記シリアルバスラインに対して、ゲート回路を介して、専用のシリアルバスラインを接続することにより構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のプログラマブル・コントローラ装置。
【請求項6】
プログラマブル・コントローラ本体を構成するCPUユニットと1台又は2台以上のI/Oユニットとを接続するバスラインは、連絡用バスラインを介して1台又は2台以上の増設用装置とも接続可能とされ、かつ
CPUユニットに設けられたメモリのユーザアクセス領域には、各増設用装置のそれぞれに対応する専用領域が割り当てられている、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のプログラマブル・コントローラ装置。
【請求項7】
CPUユニットに設けられたメモリのユーザアクセス領域に転送された状態データを演算用パラメータとして所定の演算を実行する専用命令がユーザプログラムを構成する命令語として使用できる、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のプログラマブル・コントローラ装置。
【請求項8】
状態データ生成手段は、当該電源ユニットに関する指定された物理量を計測する計測手段を含み、計測手段により計測された物理量そのものを状態データとして出力する、ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のプログラマブル・コントローラ装置。
【請求項9】
状態データ生成手段は、当該電源ユニットに関する指定された物理量を計測する計測手段と、計測手段により計測された物理量と既知の相関とに基づいて特定の状態量を求める演算手段とを含み、演算手段により求められた状態量そのものを状態データとして出力する、ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のプログラマブル・コントローラ装置。
【請求項10】
状態データ生成手段は、当該電源ユニットに関する指定された物理量を計測する計測手段と、計測手段により計測された物理量と既知の相関とに基づいて特定の状態量を求める演算手段と、計測手段により計測された物理量又は演算手段により求められた状態量を所定の基準量と照合して状態判定を行う判定手段とを含み、判定手段による状態判定結果を状態データとして出力する、ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のプログラマブル・コントローラ装置。
【請求項11】
当該電源ユニットに関する指定された物理量が、当該電源ユニットの受電側の電圧及び/又は電流である、ことを特徴とする請求項8に記載のプログラマブル・コントローラ装置。
【請求項12】
当該電源ユニットに関する指定された物理量が、当該電源ユニットの送電側の電圧及び/又は電流である、ことを特徴とする請求項8に記載のプログラマブル・コントローラ装置。
【請求項13】
当該電源ユニットに関する指定された物理量が、当該電源ユニット内の温度である、ことを特徴とする請求項8に記載のプログラマブル・コントローラ装置。
【請求項14】
CPUユニットに設けられたメモリのユーザアクセス領域に転送された状態データである電源ユニット内温度が規定値を越えたとき、所定の出力をオンさせる専用命令がユーザプログラムを構成する命令語として使用できる、ことを特徴とする請求項13に記載のプログラマブル・コントローラ装置。
【請求項15】
当該電源ユニットに関する指定された物理量が、当該電源ユニットの通電積算時間である、ことを特徴とする請求項8に記載のプログラマブル・コントローラ装置。
【請求項16】
当該電源ユニットに関する指定された物理量が電源回路に組み込まれた電解コンデンサの温度であり、かつ特定の状態量が当該電源ユニットの交換時期残時間である、ことを特徴とする請求項9又は10に記載のプログラマブル・コントローラ装置。
【請求項17】
CPUユニットに設けられたメモリのユーザアクセス領域に転送された状態データである交換時期残時間が規定値を下回ったとき、所定の出力をオンさせる専用命令がユーザプログラムを構成する命令語として使用できる、ことを特徴とする請求項13に記載のプログラマブル・コントローラ装置。
【請求項18】
1台の本体装置と、1台又は2台以上の増設用装置とを連結用バスラインを介して接続してなり、
本体装置は、
CPUユニットと1台又は2台以上のI/Oユニットとをバスラインを介して接続してなるプログラマブル・コントローラ本体と、
プログラマブル・コントローラ本体に対して給電するための電源ユニットとを含み、
プログラマブル・コントローラ本体のCPUユニットには、ユーザ命令を介してアクセス可能な号機別ユーザアクセス領域を有するメモリが設けられ、かつ
電源ユニットには、当該電源ユニットに関する状態データを生成する状態データ生成手段が設けられ、
増設用装置のそれぞれは、
バスラインを介して接続された1台又は2台以上の増設用I/Oユニットと、
それらの増設用I/Oユニットに対して給電するための増設用電源ユニットとを含み、
増設用電源ユニットには、当該増設用電源ユニットに関する状態データを生成する状態データ生成手段が設けられ、さらに
本体装置のCPUユニットと電源ユニットとの間、並びに、本体装置のCPUユニットと増設用装置の増設用電源ユニットとの間には、電源ユニットに設けられた状態データ生成手段、並びに、増設用装置の増設用電源ユニットに設けられた状態データ生成手段にて生成される状態データを、本体装置のCPUユニットに設けられたメモリの号機別ユーザアクセス領域に転送するためのデータ転送経路が設けられている、ことを特徴とするプログラマブル・コントローラ・システム。
【請求項19】
外部から受電するための受電端子と、
プログラマブル・コントローラ本体へと送電するための送電端子と、
受電端子から得られる交流を整流して直流に変換したのち、この直流をスイッチングすることで所定周波数の交流に再変換する入力側回路と、
入力側回路から得られる交流を変圧する変圧器と、
変圧器から得られる交流を整流安定化して直流安定化電源を得、これを送電端子からPLC本体へ通ずる給電路へと送出する出力側回路と、
当該電源ユニットに関する状態データを生成する状態データ生成手段と、
状態データ生成手段にて生成された状態データをPLC本体へ通ずるバスラインへと送出する送信手段とを具備する、ことを特徴とするプログラマブル・コントローラの電源ユニット。
【請求項20】
状態データ生成手段は、当該電源ユニットに関する指定された物理量を計測する計測手段を含み、計測手段により計測された物理量そのものを状態データとして出力する、ことを特徴とする請求項19に記載のプログラマブル・コントローラの電源ユニット。
【請求項21】
状態データ生成手段は、当該電源ユニットに関する指定された物理量を計測する計測手段と、計測手段により計測された物理量と既知の相関とに基づいて特定の状態量を求める演算手段とを含み、演算手段により求められた状態量そのものを状態データとして出力する、ことを特徴とする請求項19に記載のプログラマブル・コントローラの電源ユニット。
【請求項22】
状態データ生成手段は、当該電源ユニットに関する指定された物理量を計測する計測手段と、計測手段により計測された物理量と既知の相関とに基づいて特定の状態量を求める演算手段と、計測手段により計測された物理量又は演算手段により求められた状態量を所定の基準量と照合して状態判定を行う判定手段とを含み、判定手段による状態判定結果を状態データとして出力する、ことを特徴とする請求項19に記載のプログラマブル・コントローラの電源ユニット。
【請求項23】
当該電源ユニットに関する指定された物理量が、当該電源ユニットの受電側の電圧及び/又は電流である、ことを特徴とする請求項20に記載のプログラマブル・コントローラ装置。
【請求項24】
当該電源ユニットに関する指定された物理量が、当該電源ユニットの送電側の電圧及び/又は電流である、ことを特徴とする請求項20に記載のプログラマブル・コントローラ装置。
【請求項25】
当該電源ユニットに関する指定された物理量が、当該電源ユニット内の温度である、ことを特徴とする請求項20に記載のプログラマブル・コントローラ装置。
【請求項26】
当該電源ユニットに関する指定された物理量が、当該電源ユニットの通電積算時間である、ことを特徴とする請求項20のいずれかに記載のプログラマブル・コントローラ装置。
【請求項27】
当該電源ユニットに関する指定された物理量が電源回路に組み込まれた電解コンデンサの温度であり、かつ特定の状態量が当該電源ユニットの交換時期残時間である、ことを特徴とする請求項21又は22に記載のプログラマブル・コントローラ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2006−294007(P2006−294007A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−69110(P2006−69110)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】