ベンズイミダゾールNF−カッパB阻害剤
本発明は、サイトカイン放出の増加に関連する疾患の予防及び/又は治療のための、一般式(Ihb)の化合物、又は酸又は塩との医薬的に許容されるその塩、又はその立体異性体に関し、式中、Y'は、O又はNR2'であり;Zは、N又はCR2'であり;Xは、NR2'、O又はSであり;R2'は、H、アルキル、−C(O)NR7、−C(O)Re、シクロアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;R3は、H、メチル、エチル、メトキシ、アミン、アルキルアミン、モルホリノ、N−メチルピペラジン、CF3、又はOCF3であり;R2aは、置換又は未置換のアリール、ベンジル又はヘテロアリールである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式(Ihb)の化合物、又はその立体異性体、又は酸又は塩基との医薬的に許容されるその塩、又は医薬的に許容されるこれらの化合物のプロドラッグに関する。本発明の化合物は、医薬として使用することができ、且つ哺乳類、特にヒトにおけるサイトカイン放出の増加に関連する疾患の治療に特に有用である。具体的には、これらは、ウイルス感染、例えばインフルエンザウイルス感染等が原因である疾患の予防及び/又は治療のために有用である。
【背景技術】
【0002】
NF−κB(核内因子−κB)は、relファミリーの真核性転写因子であり、ホモ又はヘテロ二量体として、不活性複合体において細胞質に局在する。主に、p50及びp65サブユニットからなるヘテロ二量体として存在し、IκBファミリー、通常IκB−αの阻害タンパク質に結合する(D, Thanos et al, Cell 80, 529, 1995)。NF−κBは、炎症性サイトカイン、UV照射、ホルボールエステル、細菌及びウイルス感染における、異なる刺激に応答して活性化される。刺激は、リン酸化及びその後のプロテアーゼによるIκB−αタンパク質の分解の結果として、IκBからのNF−κB放出を引き起こす(P.A. Baeuerle et al, Annu. Rev. Immunol. 12, 141, 1995)。それが放出されると、NF−κBは、特定のκB部位で、それがDNAに結合する場である核に移行し、その他のインターロイキン、TNF−α、NO−シンターゼ及びシクロオキシゲナーゼ2の中の、免疫性及び炎症性応答の制御に関与するタンパク質をコードする様々な遺伝子の転写を誘導する(S. Grimm et al, J. Biochem. 290, 297, 1993)。したがって、NF−κBは、免疫性及び炎症性応答の初期の介在物と考えられており、それは細胞増殖の制御及びリウマチ様関節炎(H. Beker et al, Clin. Exp. Immunol. 99, 325, 1995)、虚血(A. Salminen et al, Biochem. Biophys. Res. Comm. 212, 939, 1995)、動脈硬化症(A.S. Baldwin, Annals Rev. Immunol 212, 649, 1996)等の様々なヒトの疾患の病変形成、並びにAIDSの病変形成に関与する。
【0003】
NF−κB介在性遺伝子転写の阻害は、阻害タンパク質IκBのリン酸化の阻害、IκB分解の阻害、NF−κB(p50/p65)核内移行の阻害、NF−κB−DNA結合又はNF−κB−介在性DNA移行の阻害を介して達成される(J. C. Epinat et al., Oncogene 18, 6896, 1999)。
【0004】
サイトカインシグナル伝達の異常調節も、重度の感染性疾患、例えば敗血症性ショック又は鳥インフルエンザ感染等の重要な特徴である。敗血症性ショックは、細菌性感染に対する制御されないTNFα応答により引き起こされ、鳥インフルエンザ感染はいわゆる「サイトカインストーム」を特徴とし、いずれも患者の致死率が高い多発性器官不全をもたらす。最近では、NF−κBは、複数のウイルス、例えばインフルエンザAウイルス及びHIVの増殖に関与することが示されている。また、C型肝炎の増殖における重要な役割は、NF−κBが原因である。
【0005】
インフルエンザ感染は、通常の「インフルエンザ・シーズン」である冬期の間は感染者が数百万人になるような、毎年頻発する健康問題を引き起こす。Robert−Koch機関により発表された数によると、2002/3の冬、ドイツだけで16,000〜20,000人がインフルエンザ感染で死亡した。現在、疾患管理は主に2つの戦略に頼っている:ワクチン接種プログラム、及びウイルス表面又はノイラミニダーゼもしくはM2イオンチャネル様の膜貫通タンパク質を標的とする抗ウイルス薬である。ワクチン接種プログラムは、次のインフルエンザ流行を引き起こすはずの正しいウイルスサブタイプの予測、製品コスト、適時性、供給、分配、ワクチンの保存期間のような複数の欠点が問題となっている。異なるウイルス株の出現により、完全なワクチン接種の成果が無駄になってしまうこともある。一方、抗ウイルス薬物での治療は、疾患段階の初期で行われる場合、通常わずか1日又は2日だけ疾患の過程を減少させる。さらに、当該治療は、ウイルス性変異体の出現をもたらすこともあり、この変異体は当該薬物の抗ウイルス作用を回避でき、それが現在使用される抗ウイルス剤へ応答しないことが可能になる。現在は、抗インフルエンザ治療用として最も一般的に使用される2つの化合物は、オセルタミビル(商標名タミフルとしてRoche/Gileadから市販される)及びザミニビル(Zaminivir)(商標名リレンザとしてGSKから市販される)であり、いずれも感染細胞からのウイルス放出を阻止するノイラミニダーゼ阻害剤である。M2イオンチャネルブロッカーが細胞へのウイルスの侵入を阻害する、Novartis製のアマンタジンは、以前インフルエンザ療法で使用されていたが、ウイルスの耐性メカニズムが急速に広がるという問題がある。
【0006】
新たに出現する病原性及び感染性の高いインフルエンザウイルス株に直面し、新規な治療の選択肢が緊急に必要である。現在、口語的に「鳥インフルエンザ」と呼ばれるインフルエンザAサブタイプH5N1は、潜在的にパンデミックを引き起こすインフルエンザ株である。前世紀の大規模なインフルエンザ・パンデミックは、当初は、病原性及び感染性の高い鳥インフルエンザウイルスであり、それがヒト宿主に適合するとともに、ヒト伝染性になったものである。これまでH5N1は、動物からヒトに散発的に伝染しただけであったが、インフルエンザウイルスの高い変異率とその遺伝子構成のために、宿主適合及びヒトにおける自由な分配、つまり同時感染した宿主の異なるウイルスサブタイプとの間で適切な遺伝子交換が起こり得る。これまで317件のH5N1感染が報告されている。この患者のうち191人が死亡した(2007年6月29日までに)。現在、このような病原性の高いウイルス感染に罹患する患者のための利用できる治療の選択肢がない。H5N1に感染した者は、熱、寒気及び敗血症と同じような症状に苦しむ。数日後に免疫系により除去される通常のインフルエンザ感染とは異なり、H5N1のような高い病原性インフルエンザウイルスへの感染は、免疫細胞に大量のサイトカインを放出させ、いわゆるサイトカインストームをもたらし、免疫系を完全に無制御にし、且つ多発性器官不全による死亡を引き起こす。疾患段階の後期において有効なワクチン及び薬物活性が十分存在しない場合、インフルエンザを治療する新規な方法が必要である。
【0007】
本発明は、サイトカイン放出の増加に関連する疾患の予防及び/又は治療のための、一般式(Ihb)の化合物、又は酸又は塩基との医薬的に許容されるその塩、又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体に関する。
【0008】
【化1】
【0009】
上記式(Ihb)中、
Y'は、O又はNR2'であり;
Zは、N又はCR2'であり;
Xは、NR2'、O又はSであり;
R2'は、H、アルキル、−C(O)NR7、−C(O)Re、シクロアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
R3は、H、メチル、エチル、メトキシ、アミン、アルキルアミン、モルホリノ、N−メチルピペラジン、CF3、又はOCF3であり;
R2aは、置換又は未置換のアリール、ベンジル又はヘテロアリールであり;
R7、R7'、R8は、独立に、H、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
Reは、独立に、H、−CN、−OH、−SH、−CO2R4'、−C(O)R4'、−SO2R4'、−NR4'R5'、−C(O)NR7R8、−SO2−アルキル、−SO2R4'、−SO3R4'、−N=CR4'R5'、−NR4'C(O)R4"、−NR4'−CO−ハロアルキル、−NO2、−NR4'−SO2−ハロアルキル、−NR4'−SO2−アルキル、−NR4'−CO−アルキル、−NR4'(CH2)pヘテロアリール、アルキル、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、アルキルアミノ、アリール、ヒドロキシアルキルアミノ、アルコキシ、アルキルチオ、−O(CH2)p[O(CH2)p]qOCH3、−C(NR4")NR4'−ベンズイミダゾリル、−C(NR4")NR4'−ベンズチアゾリル、−C(NR4")NR4'−ベンズオキサゾリル、又はヘテロアリールであり;
R4'、R4"、R5'は、独立に、H、ハロゲン、アルキル、−C(NR7)NR7'R8、−(CH2)pアリール、ハロアルキル、−(CH2)pNR7R8、−C(O)NR7R8、−N=CR7R8、−NR7C(O)R8、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
p=1〜6であり、
q=1〜6である。
【0010】
式(Ihb)において、以下の置換基が、単独又は組み合わせで好ましい置換基である。
Zは、好ましくはCR2'である。
Y'は、好ましくはNR2'である。
【0011】
好ましい実施態様によれば、Y'のNR2'におけるR2'は、好ましくは置換又は未置換ヘテロアリールである。別の好ましい実施態様によれば、Y'のNR2'におけるR2'はアリールである。さらに別の好ましい実施態様によれば、Y'のNR2'におけるR2'はベンジルである。より好ましい実施態様によれば、Y'のNR2'におけるR2'はピリミジン又はトリアジンである。別のより好ましい実施態様によれば、Y'のNR2'におけるR2'は、置換又は未置換二環式ヘテロアリールであり、より好ましくはチエノピリミジン、キナゾリン、プリン、ピラゾロピリミジン又はトリアゾルピリミジンであり、さらにより好ましくはチエノピリミジンである。
【0012】
好ましい実施態様によれば、XはSである。別の好ましい実施態様によれば、XはOである。さらに別の好ましい実施態様によれば、XはNR2'である。
【0013】
R3は、好ましくはHである。
R2aは、好ましくはアリール又はヘテロアリールであり、より好ましくはフェニルである。
【0014】
本発明はまた、サイトカイン放出の増加に関連する疾患の予防及び/又は治療のための、一般式(Ihb−2)の化合物、又は酸又は塩基との医薬的に許容されるその塩、又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体に関する。
【0015】
【化2】
【0016】
上記式(Ihb−2)中、
R3'は、置換又は未置換のヘテロアリール又はアリールであり;
Xは、NR2'、O又はSであり;
R2'は、H、アルキル、−C(O)NR7、−C(O)Re、シクロアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
R2aは、置換又は未置換のアリール又はヘテロアリールであり;
R7、R7'、R8は、独立に、H、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
Reは、独立に、H、−CN、−OH、−SH、−CO2R4'、−C(O)R4'、−SO2R4'、ーNR4'R5'、−C(O)NR7R8、−SO2−アルキル、−SO2R4'、−SO3R4'、−N=CR4R5'、−NR4'C(O)R4"、−NR4'−CO−ハロアルキル、ーNO2、−NR4'−SO2−ハロアルキル、−NR4'−SO2−アルキル、−NR4'−CO−アルキル、−NR4'−(CH2)p−ヘテロアリール、アルキル、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、アルキルアミノ、アリール、ヒドロキシアルキルアミノ、アルコキシ、アルキルチオ、−O(CH2)p[O(CH2)p]qOCH3、−C(NR4")NR4'−ベンズイミダゾリル−、−C(NR4")NR4'−ベンズチアゾリル、−C(NR4")NR4'−ベンズオキサゾリル、又はヘテロアリールであり;
R4'、R4"、R5は、独立に、H、ハロゲン、アルキル、−C(NR7)NR7'R8、−(CH2)pアリール、ハロアルキル、−(CH2)pNR7R8、−C(O)NR7R8、−N=CR7R8、−NR7C(O)R8、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
pは1〜6であり;
qは1〜6である。
【0017】
本発明はまた、サイトカイン放出の増加に関連する疾患の予防及び/又は治療のための、一般式(Ihb−3)の化合物、又は酸又は塩基との医薬的に許容されるその塩、又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体に関する。
【0018】
【化3】
【0019】
上記式(Ihb−3)中、
R3は、置換又は未置換の二環式ヘテロアリールであり;
Xは、NR2'、O又はSであり;
R2'は、H、アルキル、−C(O)NR7、−C(O)Re、シクロアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
R7、R7'、R8は、独立に、H、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
Reは、独立に、H、−CN、−OH、−SH、−CO2R4'、−C(O)R4'、−SO2R4'、−NR4'R5'、−C(O)NR7R8、−SO2−アルキル、−SO2R4'、−SO3R4'、−N=CR4'R5'、−NR4'C(O)R4"、−NR4'−CO−ハロアルキル、−NO2、−NR4'−SO2−ハロアルキル、−NR4'−SO2−アルキル、−NR4'−CO−アルキル、−NR4'(CH2)pヘテロアリール、アルキル、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、アルキルアミノ、アリール、ヒドロキシアルキルアミノ、アルコキシ、アルキルチオ、−O(CH2)p[O(CH2)p]qOCH3、−C(NR4")NR4'−ベンズイミダゾリル、−C(NR4")NR4'−ベンズチアゾリル、−C(NR4")NR4'−ベンズオキサゾリル、又はヘテロアリールであり;
R4'、R4"、R5'は、独立に、H、ハロゲン、アルキル、−C(NR7)NR7'R8、−(CH2)pアリール、ハロアルキル、−(CH2)pNR7R8、−C(O)NR7R8、−N=CR7R8、−NR7C(O)R8、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
p=1〜6であり、
q=1〜6である。
【0020】
本発明はまた、サイトカイン放出の増加に関連する疾患の予防及び/又は治療のための、一般式(Ihb−4)の化合物、又は酸又は塩基との医薬的に許容されるその塩、又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体に関する。
【0021】
【化4】
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】化合物、例えば化合物4(濃度10μM)は、CD3/CD28で刺激されたマウス脾細胞における関連あるサイトカイン産生を阻害する。測定された全てのサイトカインは、24時間後に完全に阻害され、48時間後、大半のサイトカインの分泌は、DMSOコントロールの90%超と比較して非常に低下した。
【図2】IL−1ベータで刺激されたヒトPBMCにおいて、IL−6(図2A)及びIL−8(図2B)様サイトカインの分泌は、化合物4(cpd)用量依存的にブロックされる。
【図3】ODN2216で刺激されたヒトPBMCにおいて、IL−8(図3A)及びIFN−ガンマ(図3B)様サイトカインの分泌は、化合物4(cpd)用量依存的にブロックされる。
【図4】ODN1668で刺激されたヒトPBMCにおいて、IL−6(図4A)及びIL−8(図4B)様サイトカインの分泌は、化合物4(cpd)用量依存的にブロックされる。
【図5A−C】CL075で刺激されたヒトPBMCにおいて、IL−1ベータ(図5A)、IL−6(図5B)及びIL−8(図5C)様サイトカインの分泌は、化合物4(cpd)用量依存的にブロックされる。
【図5D−E】CL075で刺激されたヒトPBMCにおいて、IFN−ガンマ(図5D)及びTNF−アルファ(図5E)様サイトカインの分泌は、化合物4(cpd)用量依存的にブロックされる。
【図6】TNF−アルファで刺激されたヒトPBMCにおいて、IL−1ベータ(図6A)、IL−6(図6B)及びIL−8(図6C)様サイトカインの分泌は、化合物4(cpd)用量依存的にブロックされる。
【図7A−C】LPSで刺激されたヒトPBMCにおいて、IL−8(図7A)、IL−1ベータ(図7B)及びINF−ガンマ(図7C)様サイトカインの分泌は、化合物4(cpd)用量依存的にブロックされる。
【図7D−F】LPSで刺激されたヒトPBMCにおいて、TNF−アルファ(図7D)、IL−10(図7E)及びIL−6(図7F)様サイトカインの分泌は、化合物4(cpd)用量依存的にブロックされる。
【図8A−C】PHAで刺激されたヒトPBMCにおいて、IL−1ベータ(図8A)、IL−6(図8B)及びIL−2INF−ガンマ(図8C)様サイトカインの分泌は、化合物4(cpd)用量依存的にブロックされる。
【図8D−F】PHAで刺激されたヒトPBMCにおいて、IL−8(図8D)、IL−10(図8E)及びIL−12p70(図8F)様サイトカインの分泌は、化合物4(cpd)用量依存的にブロックされる。
【図8G−H】PHAで刺激されたヒトPBMCにおいて、INF−ガンマ(図8G)及びTNF−アルファ(図8H)様サイトカインの分泌は、化合物4(cpd)用量依存的にブロックされる。
【図9A−B】サイトカインの放出における化合物4の様々な濃度の影響を、刺激後48時間で測定した。PHAでの刺激後、IL−6(図9A)及びTNF−アルファ(図9B)分泌は、それぞれ0.2μM及び7.9μMのEC50値で、化合物4により阻害された。
【図9C】サイトカインの放出における化合物4の様々な濃度の影響を、刺激後48時間で測定した。PHAでの刺激後、INF−ガンマ(図9C)分泌は、9.0μMのEC50値で、化合物4により阻害された。
【図10A−B】サイトカインの放出における化合物4の様々な濃度の影響を、刺激後48時間で測定した。LPSでの刺激後、IL−6(図10A)及びTNF−アルファ(図10B)分泌は、それぞれ0.6μM及び12.6μMのEC50値で、化合物4により阻害された。
【図11】H5N1型特異的核酸及びIL−6及びIP−10のmRNAの産生阻害を、化合物4の存在下又は不存在下で、インフルエンザウイルス(H5N1)感染マウス由来の肺組織において解析した。化合物4葉、感染マウスの肺におけるH5N1特異的mRNA(図11A)の発現を低減させ、IL−6(図11B)及びIP−10(図11C)の転写も低減させた。
【図12】ウイルス増殖に対する化合物の抗ウイルス効果の解析。感染A549細胞におけるインフルエンザAウイルスのウイルス力価は、5μMの化合物4(KH1)と比較して、それぞれ4log単位(H5N1−株)及び5log単位(Fowl Plaqueウイルス、H7N7−株)減少する。H5N1:化合物4(KH1)の異なる濃度の未処理コントロールに関して、ウイルス力価の対数表記で示される。
【図13】ウイルス増殖に対する抗ウイルス効果の解析。感染A549細胞におけるインフルエンザAウイルスのウイルス力価は、5μMの化合物4(KH1)と比較して、それぞれ4log単位(H5N1−株)及び5log単位(Fowl Plaqueウイルス、H7N7−株)減少する。H7N7:化合物4(KH1)の異なる濃度の未処理コントロールに関して、ウイルス力価の対数表記で示される。
【図14】化合物4での処理後の細胞生存能力の決定。A549細胞をウイルスの不存在下、5μMの化合物4(KH1)で処理した。細胞生存率を、MTT染色で推定した。試験した96時間の時間範囲にわたって、細胞生存能力(%Zelluberleben)は、DMSO処理細胞(DMSO)及び未処理細胞(unbeh)で処理した細胞と、化合物4(KH1)で処理した細胞で同じであり、これは本発明の化合物が当該細胞に毒性効果を発揮しないことを実証するものである。
【図15】耐性現象の検出のための多継代実験。化合物4(KH1;5μM)、アマンタジン(5μM)、及びオセルタミビル(2μM)ウイルス、未処理コントロールを、耐性現象の検出のための多継代実験で試験した。アマンタジン及びオセルタミビルとは対照的に、化合物4は、5細胞継代サイクル後に、耐性メカニズム(図15A)及びウイルス耐性(図15B)の誘導を示さない(2つの独立した実験により示される)。
【図16】H7N7でのインフルエンザマウスモデル。0日目に、マウスをインフルエンザ株H7N7のLD50で感染させた。同日に、毎日i.p.による15 mg/kgの化合物4での処置を開始した。8日目に処置を停止し、14日目に実験を終結させた。この実験の結果は、動物の半分が死亡したコントロール群と比較して、感染マウスの完全な保護を示した(p<0.05)。
【図17】0日目に、マウスをインフルエンザ株H7N7のLD50で感染させた。同日に、毎日i.p.による15 mg/kgの化合物4での処置を開始した。4日目に処置を停止し、14日目に実験を終結させた。この実験の結果は、化合物4を5 mg/kg以上の用量で投与した場合、マウスの有意な保護を示した(p<0.05)。この結果は、それぞれ2 mg/kg(図17A)、5 mg/kg(図17B)及び10 mg/kg(図17C)の用量での結果を示す。
【図18】H5N1でのインフルエンザマウスモデル。0日目に、マウスをインフルエンザ株H5N1のLD50で感染させた。同日に、i.p.による一日2回の7.5 mg/kgの化合物4での処置を開始した。10日目に処置を停止し、14日目に実験を終結させた。この実験の結果は、感染マウスの有意な保護を示した(p<0.05)。
【図19】0日目に、マウスをインフルエンザ株H5N1のLD50で感染させた。4日目に、idで7.5 mg/kgの化合物4(図19A)及び毎日i.p.で15 mg/kgの化合物4(図19B)での処置を開始した。10日目に処置を停止し、14日目に実験を終結させた。この実験の結果は、感染マウスの有意な保護を示した(p<0.05)。
【図20】癌細胞データ。化合物4を、血液細胞系のパネルで、その抗癌活性を試験した。それは、腫瘍感受性の優れたスコアを示した。多発性骨髄腫由来の主要な細胞系列(5個中4個)は、上記の平均的感受性であった。
【図21】癌細胞データ。化合物4を、血液細胞系のパネルで、その抗癌活性を試験した。それは、腫瘍感受性の優れたスコアを示した。多発性骨髄腫由来の主要な細胞系列(5個中4個)は、上記の平均的感受性であった。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明によると、
アルキル基は、特に断りのない限り、直鎖又は分岐鎖のC1−C6−アルキル、好ましくは直鎖又は分岐鎖の1〜5個の炭素原子、直鎖又は分岐鎖のC2−C6−アルケニル又は直鎖又は分岐鎖のC2−C6−アルキニル基で、これらを、1又は複数の置換基R'で任意に置換することができ、
C1−C6−アルキル、C2−C6−アルケニル及びC2−C6−アルキニル残基は、−CH3、−C2H5、−CH=CH2、−C≡CH、−C3H7、−CH(CH3)2、−CH2−CH=CH2、−C(CH3)=CH2、−CH=CH−CH3、−C≡C−CH3、−CH2−C≡CH、−C4H9、−CH(CH3)−C2H5、−C(CH3)3、−C5H11、−C6H13、−C(R')3、−C2(R')5、−CH2−(R')3、−C3(R')7、−C2H4−C(R')3、−C2H4−CH=CH2、−CH=CH−C2H5、−CH=C(CH3)2、−CH2−CH=CH−CH3、−CH=CH−CH=CH2、−C2H4−C≡CH、−C≡C−C2H5、−CH2−C≡C−CH3、−C≡C−CH=CH2、−CH=CH−C≡CH、−C≡C−C≡CH、−C2H4−CH(CH3)2、−CH(CH3)−C3H7、−CH2−CH(CH3)−C2H5、−CH(CH3)−CH(CH3)2、−C(CH3)2−C2H5、−CH2−C(CH3)3、−C3H6−CH=CH2、−CH=CH−C3H7、−C2H4−CH=CH−CH3、−CH2−CH=CH−C2H5、−CH2−CH=CH−CH=CH2、−CH=CH−CH=CH−CH3、−CH=CH−CH2−CH=CH2、−C(CH3)=CH−CH=CH2、−CH=C(CH3)−CH=CH2、−CH=CH−C(CH3)=CH2、−CH2−CH=C(CH3)2、C(CH3)=C(CH3)2、−C3H6−C=CH、−C≡C−C3H7、−C2H4−C≡C−CH3、−CH2−C≡C−C2H5、−CH2−C≡C−CH=CH2、−CH2−CH=CH−C≡CH、−CH2−C≡C−C=CH、−C≡C−CH=CH−CH3、−CH=CH−C≡C−CH3、−C≡C−C≡C−CH3、−C≡C−CH2−CH=CH2、−CH=CH−CH2−C≡CH、−C≡C−CH2−C≡CH、−C(CH3)=CH−CH=CH2、−CH=C(CH3)−CH=CH2、−CH=CH−C(CH3)=CH2、−C(CH3)=CH−C≡CH、−CH=C(CH3)−C≡CH、−C≡C−C(CH3)=CH2、−C3H6−CH(CH3)2、−C2H4−CH(CH3)−C2H5、−CH(CH3)−C4H9、−CH2−CH(CH3)−C3H7、−CH(CH3)−CH2−CH(CH3)2、−CH(CH3)−CH(CH3)−C2H5、−CH2−CH(CH3)−CH(CH3)2、−CH2−C(CH3)2−C2H5、−C(CH3)2−C3H7、−C(CH3)2−CH(CH3)2、−C2H4−C(CH3)3、−CH(CH3)−C(CH3)3、−C4H8−CH=CH2、−CH=CH−C4H9、−C3H6−CH=CH−CH3、−CH2−CH=CH−C3H7、−C2H4−CH=CH−C2H5、−CH2−C(CH3)=C(CH3)2、−C2H4−CH=C(CH3)2、−C4H8−C≡CH、−C≡C−C4H9、−C3H6−C≡C−CH3、−CH2−C≡C−C3H7、−C2H4−C≡C−C2H5からなる群から選択されてもよく;
R'は、独立に、H、−CO2R''、−CONHR''、−CR''O、−SO2NR''、−NR''−CO−ハロアルキル、−NO2、−NR''−SO2−ハロアルキル、−NR''−SO2−アルキル、−SO2−アルキル、−NR''−CO−アルキル、−CN、アルキル、シクロアルキル、アルキルアミノ、アルコキシ、−OH、−SH、アルキルチオ、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルキルオキシ、アリール、又はへテロアリールであり;
R''は、独立に、H、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり;
シクロアルキル基は、炭素原子を3〜8個、好ましくは4〜8個含有する非芳香族環系のことを言い、ここで環中の1又は複数の炭素原子は、基Eにより置換することができ、ここでEは、O、S、SO、SO2、N、又はNR''であり、R''は、上記の定義の通りであり;C3−C8−シクロアルキル残基は、−シクロ−C3H5、−シクロ−C4H7、−シクロ−C5H9、−シクロ−C6H11、−シクロ−C7H13、−シクロ−C8H15、モルホリン−4−イル、ピペラジニル、1−アルキルピペラジン−4−イルから選択され;
アルコキシ基は、O−アルキル基のことを言い、該アルキル基は上記の定義の通りであり、該アルコキシ基は、好ましくはメトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ又はペントキシ基であり;
アルキルチオ基は、S−アルキル基のことを言い、該アルキルは上記の定義の通りであり;
ハロアルキル基は、1〜5個のハロゲン原子で置換されるアルキル基のことを言い、該アルキル基は、上記の定義の通りであり;該ハロアルキル基は、好ましくは、−C(R10)3、−CR10(R10')2、−CR10(R10')R10"、−C2(R10)5、−CH2−C(R10)3、−CH2−CR10(R10')2、−CH2−CR10(R10')R10"、−C3(R10)7、又は−C2H4−C(R10)3、であり、ここでR10、R10'、R10"はF、Cl、Br又はIであり、好ましくはFである。
ヒドロキシアルキル基は、HO−アルキル基のことを言い、該アルキル基は上記の定義の通りであり;
ハロアルコキシ基は、1〜5個のハロゲン原子で置換されるアルコキシ基のことを言い、該アルキル基は、上記の定義の通りであり;該ハロアルキルオキシ基は、好ましくは、−OC(R10)3、−OCR10(R10')2、−OCR10(R10')R10"、−OC2(R10)5、−OCH2−C(R10)3、−OCH2−CR10(R10')2、−OCH2−CR10(R10')R10"、−OC3(R10)7又は−OC2H4−C(R10)3であり、ここでR10、R10'、R10"はF、Cl、Br又はIであり、好ましくはFであり;
ヒドロキシアルキルアミノ基は、(HO−アルキル)2−N−基又はHO−アルキル−NH−基のことを言い、該アルキル基は上記の定義の通りであり;
アルキルアミノ基は、HN−アルキル又はN−ジアルキル基のことを言い、該アルキル基は、上記の定義の通りであり;
ハロゲン基は、塩素、臭素、フッ素又はヨウ素であり;
アリール基は、5〜15個の炭素原子を有する芳香族の基であり、これは1又は複数の置換基R'で任意に置換することができ、ここでR'は、上記の定義の通りであり;該アリール基は、好ましくは、ベンジル基、フェニル基、−o−C6H4−R'、−m−C6H4−R'、−p−C6H4−R'、1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントラセニル、又は2−アントラセニルであり;
ヘテロアリール基は、O、N、及びSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、5−又は6−員のヘテロシクリル基のことを言う。このヘテロシクリル基は、別の芳香環と融合することができる。例えば、この基は、チアゾロール、チアゾル−2−イル、チアゾル−4−イル、チアゾル−5−イル、イソチアゾル−3−イル、イソチアゾル−4−イル、イソチアゾル−5−イル、オキサゾル−2−イル、オキサゾル−4−イル、オキサゾル−5−イル、イソオキサゾル−3−イル、イソオキサゾル−4−イル、イソオキサゾル−5−イル、ベンゾオキサゾル−2−イル、ベンゾオキサゾル−4−イル、ベンゾオキサゾル−5−イル、ベンゾイソオキサゾル−3−イル、ベンゾイソオキサゾル−4−イル、ベンゾイソオキサゾル−5−イル、1,2,4−オキサジアゾル−3−イル、1,2,4−オキサジアゾル−5−イル、1,2,5−オキサジアゾル−3−イル、1,2,5−オキサジアゾル−4−イル、1,2,4−チアジアゾル−3−イル、1,2,4−チアジアゾル−5−イル、イソチアゾル−3−イル、イソチアゾル−4−イル、イソチアゾル−5−イル、ベンゾイソチアゾル−3−イル、ベンゾイソチアゾル−4−イル、ベンゾイソチアゾル−5−イル、1,2,5−チアジアゾル−3−イル、1−イミダゾリル、2−イミダゾリル、1,2,5−チアジアゾル−4−イル、4−イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル−4−イル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、2−フラニル、3−フラニル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジニル、3−ピリジニル、4−ピリジル、2−ピラニル、3−ピラニル、4−ピラニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、6−ピリミジニル、2,4−ジメトキシ−6−ピリミジニル、3−ピリダジニル、4−ピリダジニル、2−ピラジニル、1−ピラゾリル、3−ピラゾリル、4−ピラゾリル、1,2,3−トリアゾル−4−イル、1,2,3−トリアゾル−5−イル、1,2,4−トリアゾル−3−イル、1,2,4−トリアゾル−5−イル、1,3,5−トリアゾル−6−イル、2,4−ジメトキシ−1,3,5−トリアゾル−6−イル、1H−テトラゾル−2−イル、1H−テトラゾル−3−イル、テトラゾリル、アクリジル、フラザン、インダゾリル、フェナジニル、カルバゾリル、フェノキサジニル、インドリジン、2−インドリル、3−インドリル、4−インドリル、5−インドリル、6−インドリル、7−インドリル、1−イソインドリル、3−イソインドリル、4−イソインドリル、5−イソインドリル、6−イソインドリル、7−イソインドリル、2−インドリニル、3−インドリニル、4−インドリニル、5−インドリニル、6−インドリニル、7−インドリニル、ベンゾ[b]フラニル、ベンゾフラザン、ベンゾチオフラザン、ベンゾトリアゾル−1−イル、ベンゾトリアゾル−4−イル、ベンゾトリアゾル−5−イル、ベンゾトリアゾル−6−イル、ベンゾトリアゾル−7−イル、ベンゾトリアジン、ベンゾ[b]チオフェニル、ベンズイミダゾル−2−イル、1H−ベンズイミダゾリル、ベンズイミダゾル−4−イル、ベンズイミダゾル−5−イル、ベンズイミダゾル−6−イル、ベンズイミダゾル−7−イル、ベンゾチアゾリル、キナゾリニル、キノキサゾリニル、シンノリン、キノリニル、テトラヒドロキノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロ−イソキノリニル、プリン、フタラジン、プテリジン、チアテトラアザインデン、チアトリアザインデン、イソチアゾロピラジン、イソチアゾロピリミジン、ピラゾロトリアジン、ピラゾロピリミジン、テトラ−ヒドロチエノ[3,4−d]イミダゾル−2−オン、ピラゾロ[5,1−c][1,2,4]トリアジン、2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]−ジオキシン−2−イル、2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]−ジオキシン−3−イル、2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]−ジオキシン−5−イル、2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]−ジオキシン−6−イル、2,6−ジメトキシピリミジン−3−イル、2,6−ジメトキシピリミジン−4−イル、イミダゾピリダジン、イミダゾピリミジン、イミダゾピリジン、イミダゾロトリアジン、トリアゾロトリアジン、トリアゾロピリジン、トリアゾロピラジン、トリアゾロピリミジン、又は4−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イル、1−フロ[2,3−c]ピリジン−4−イル、1−フロ[2,3−c]ピリジン−5−イル、1−フロ[2,3−c]ピリジン−3−イル、及びトリアゾロピリダジン基から選択できる。このヘテロシクロ基は、1又は複数のR'で置換でき、ここでR'は上記の定義の通りである。
【0024】
式(Ihb)の化合物は、様々な方法により得てもよい。
【0025】
ピペリジン−4イル−チアゾール−4−カルボキサミドを、文献に記載される様々な方法により調製することができる。ある例は、Houben-Weyl, 2002, 730に記載の通りに、適切な2,5−ジヒドロチアゾールの酸化である。該ジヒドロチアゾールを、同じ参考文献又はYou, S., Razavi, Η., Kelly, J.W. Angew. Chem, 2003, 115, 87又はKatritzky, AR., Cai, C, Suzuki, K., Singh, SK. J. Org. Chem. 2004, 69, 811-814及び両方の論文の参考文献に記載の方法により合成することもできる。別法としては、Yasuchika, S. et. al. Heterocycles, Vol. 57, No. 5, 2002に記載のものがある。チアゾール環の2位にピペラジン−4−イル置換基を保有する、本発明の化合物は、例えば、以下のスキームに示すように調製することができる。この合成経路は、部分的に国際公開第2004/058750号に記載されている。
【0026】
【化5】
【0027】
2−(1−(tert−ブトキシカルボニル)ピペラジン−4−イル)チアゾール−4−カルボン酸を、DMF中、HBTU、DIPEAとカップリングすることにより適切なR1アミドに変換できる。異なるR'−アミンは、市販品であるか、又は容易に合成して得る。標準的な条件下、例えば、0℃、2〜3時間のTFAでの処理、又は2〜3時間の4N HClでの処理により、Boc保護基を除去できる。その後、脱保護ピペリジン誘導体HCl塩を、以下の対応するアミド、尿素及びN−ヘテロシクロ類似体に変換できる。
【0028】
尿素置換ピペリジン化合物は、DIPEAの存在下、市販のイソシアネートとカップリングすることにより合成できる。ヘテロ環で置換されたピペリジン化合物を、標準的方法、例えば、塩基の存在下、対応するクロロへテロサイクルでカップリングする等の方法により合成できる。あるいは、ヘテロサイクルで置換されたピペリジン化合物を、パラジウム媒介クロスカップリングにより得ることができる。さらに別法として、ヒドロキシピリジン誘導体を、HBTUカップリング法によりピペリジン化合物とカップリングできる。
【0029】
チアゾール環の2位にピペリジン−4−イル置換基を有する、本発明の化合物への別の経路を、以下のスキームに示す。
【0030】
【化6】
【0031】
標準的な条件下、例えば、0℃、2〜3時間のTFAでの処理、又は2〜3時間の4N HClでの処理により、Boc保護基を除去できる。その後、脱保護ピペリジン誘導体HCl塩を、上記の様々な方法により対応するN−ヘテロシクロ類似体に変換できる。
【0032】
上記の式(Ihb)の化合物について、「立体異性体」なる用語は、シス/トランス又はE/Z異性を意味する。より具体的には、本発明の化合物の様々な置換基に存在する可能性ある二重結合は、E又はZ配置をとることができる。この純粋又は不純な幾何異性体は、単独で又は混合物として、式(Ihb)の化合物の必須部分を形成する。「立体異性体」なる用語は、単独又は混合物としての全ての異性体であり、当該分子において、1又は複数の対象軸及び/又は中心が存在することにより、偏光ビームが回転する。より具体的には、純粋型又は混合物としてのエナンチオマー及びジアステレオマーがある。
【0033】
本発明で使用される式(Ihb)の化合物は、無機又は有機の酸又は塩基で塩を形成できる。医薬的に許容される塩の例には、限定のない、非毒性の無機又は有機の塩、例えば、酢酸由来の酢酸誘導体、アコニット酸由来のアコニット誘導体、アスコルビン酸由来のアスコルビン酸誘導体、安息香酸由来の安息香酸誘導体、ケイ酸由来のケイ酸誘導体、クエン酸由来のクエン酸誘導体、エンボン酸由来のエンボン酸誘導体、ヘプタン酸由来のエナンテート(enantate)、ギ酸由来のギ酸誘導体、フマル酸由来のフマル酸誘導体、グルタミン酸由来のグルタミン誘導体、グリコール酸由来のグリコール酸誘導体、乳酸由来の乳酸誘導体、マレイン酸由誘導体、来のマレイン酸誘導体、マロン酸由来のマロン酸誘導体、マンデル酸由来のマンデル酸、メタンスルホン酸由来のメタンスルホン酸誘導体、ナフタリン−2−スルホン酸由来のナフタリン−2−スルホン酸誘導体、硝酸由来の硝酸誘導体、過塩素酸由来の過塩素酸誘導体、リン酸由来のリン酸誘導体、フタル酸由来のフタル酸誘導体、サリチル酸由来のサリチル酸誘導体、ソルビン酸由来のソルビン酸誘導体、ステアリン酸由来のステアリン酸誘導体、コハク酸由来のコハク酸誘導体、硫酸由来の硫酸誘導体、酒石酸由来の酒石酸誘導体、p−トルエン−スルホン酸由来のトルエン−p−スルホン酸誘導体等がある。当該塩は、当業者に既知又は従来技術に記載の方法で作製できる。
【0034】
医薬的に許容されると考えられない、シュウ酸由来のシュウ酸塩のような他の塩が、式(Ihb)の化合物の製造のための中間体又はその医薬的に許容される塩、又はその医薬的に許容されるプロドラッグ又は立体異性体として適切である可能性がある。
【0035】
本発明は、上記の通り医薬的に許容される塩を含むが、キラルアミンと共に得られる塩等、式(Ihb)の化合物の好適な分離又は結晶化をさせる塩も含む。
【0036】
上記式(Ihb)の化合物は、これらの化合物のプロドラッグも含んでなる。本明細書で使用される「プロドラッグ」なる用語は、それ自身は医薬的に活性でははいが(「プロドラッグ」)、患者に投与されると、インビボ(in vivo)で、すなわち化合物が投与される対象において、その医薬的活性状態(式(Ihb)の化合物)に、化学的及び/又は生物学的に変換する化合物のことを言う。プロドラッグには、例えば、本発明の化合物であって、患者に投与されると、ヒドロキシ、アミン又はスルフヒドリル基が、ヒドロキシ、アミン又はスルフヒドリル基で開裂する任意の基に結合する化合物がある。すなわち、プロドラッグの代表的な例には、限定するものではないが、本発明の化合物の、アルコール、スルフヒドリル及びアミン官能基の、酢酸、ギ酸及び安息香酸誘導体がある。さらに、カルボン酸(−COOH)の場合、メチルエステル、エチルエステル、ダブルエステル等のエステルを使用してもよい。エステルは、独自に活性があっても、及び/又は人体中のインビボ条件下で加水分解性があってもよい。
【0037】
本発明の「治療」は、疾患の完全又は部分的な治癒、又は疾患の回復、又は所与の疾患の進行の停止を意味する。
【0038】
本発明の化合物は、ウイルスにより引き起こされる感染性疾患、例えば哺乳類、例えばヒトにおける日和見性感染症の予防及び/又は治療に使用できる。当該方法は、ある量の一般式(Ihb)の少なくとも1つの化合物を、該哺乳類に投与することを含んでなる。本発明の化合物及びそれが調製される医薬品は、インフルエンザウイルス感染、より具体的にはインフルエンザAウイルス感染により引き起こされる疾患の治療に特に有用である。
【0039】
インフルエンザ感染後に、細胞は、体から侵入病原を除去するための防御メカニズムとしてNF−κBシグナル伝達経路のスイッチを入れる。ヒト環境に適合した、他の多数のウイルスと同様に、インフルエンザウイルスは、免疫系を回避するため、増殖のためのこの経路を使用する。
【0040】
本発明の化合物を、ウイルス感染、特にH1N1、H5N1、H2N2、又はH3N2等のインフルエンザAウイルスサブタイプへの感染の、NF−κBを阻害することによる治療に使用できる。この細胞経路への侵入は、疾患の過程において少なくとも2つの正の影響を与えることになる。NF−κBシグナル伝達経路の阻害は、ウイルスのさらなる複製を妨害し、それを感染細胞に限定し、治療される人の体内の疾患拡散及びウイルスに細胞を離れさせないことにより他の人々への疾患の伝染を停止させる。さらにサイトカイン放出の阻害は、過活動性免疫系の悪影響の低減及び「サイトカインストーム」のブロックにより感染した患者の症状を回復させるべきである。本文脈における「サイトカインストーム」は、ほとんど完全に免疫系を異常調節するサイトカインの増加が特徴である。サイトカイン放出の増加には、免疫系の異常調節の存在下及び不存在下でのサイトカイン放出の増加があり、ここで免疫系の異常調節の存在下でのサイトカイン放出の増加もサイトカインストームと呼ばれる。第三の態様は、抗ウイルス医薬の使用法による耐性の発生である。現在、アマンタジン、タミフル及びリレンザ様の利用可能な抗インフルエンザ薬物がタンパク質をコードする。ウイルスゲノムの変異率が高いために、これらの薬物により作られる選択圧が、新規で、より適合し、且つ薬物耐性のあるウイルスクレードの出現をもたらす。ウイルス増殖に必須な宿主タンパク質及び経路を標的とし、侵入する生物により乗っ取ることは、当該ウイルスへの直接的選択圧を回避する新規で前例のないアプローチである。NF−κBを標的とする薬物では、薬物標的がウイルス因子ではなく細胞起源であるために、当該薬物への耐性は発生しないことが期待される。すなわち、当該ウイルスは、単純な変異又は遺伝子交換による当該新規な医薬への適合ができなくなり、その結果耐性形成が阻止される。すなわち、本発明による化合物は、薬物耐性ウイルス変異体の出現に有利に働かないはずである。さらに、選択されたサイトカイン、特にインフルエンザウイルス複製への阻害効果が既に示されているインターフェロンの応用と、本処置との組み合わせが可能なはずである。サイトカインの過産生を下方制御し、同時に、疾患の発生に改善する影響を示す選択されたサイトカインを提供することが可能になるはずである。
【0041】
すなわち、ある実施態様によれば、本発明は、哺乳類、特にヒトにおけるサイトカイン増加に関連する疾患の予防及び/又は治療のための医薬における使用のための、所望の場合は適切なアジュバント及び添加剤との、式(Ihb)の化合物、又は医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体の使用に関する。
【0042】
異常調節されたサイトカイン放出に関連する疾患は、例えば、移植変対宿主病(GVHD)、成人呼吸促進症候群(ARDS)、敗血症及び毒物ショック症候群、天然痘、全身性炎症反応症候群(SIRS)、重特性急性呼吸症候群(SARS)、炭疽感染、デング出血熱/デングショック症候群、喘息及び枯草熱、及び2型糖尿病及びメタボリックシンドロームであり、ここでもサイトカインの放出が異常調節される。
すなわち、本発明の化合物は、上記の疾患の予防及び/又は治療のために使用される。
【0043】
好ましい実施態様よれば、本発明は、ウイルス感染により引き起こされる疾患の予防及び/又は治療のための医薬における使用のための、所望の場合は適切なアジュバント及び添加剤との、式(Ihb)の化合物、又は医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体の使用に関する。
【0044】
従って、より好ましい実施態様によれば、本発明は、インフルエンザウイルス感染、特にインフルエンザAウイルス感染により引き起こされる疾患の予防及び/又は治療のための医薬における使用のための、所望の場合は適切なアジュバント及び添加剤との、式(Ihb)の化合物、又は医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体の使用に関する。
【0045】
別のさらにより好ましい実施態様によれば、本発明は、インフルエンザウイルス感染、特にサイトカイン放出の増加に関連するインフルエンザウイルス感染に関連する疾患の予防及び/又は治療のための医薬における使用のための、所望の場合は適切なアジュバント及び添加剤との、式(Ihb−2)の化合物、又は医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体の使用に関する。式(Ihb−2)の化合物は、サイトカインストームに関連するインフルエンザウイルス感染に関連する疾患の予防及び/又は治療のために特に有用である。
【0046】
別のさらにより好ましい実施態様によれば、本発明は、インフルエンザウイルス感染、特にサイトカイン放出の増加に関連するインフルエンザウイルス感染に関連する疾患の予防及び/又は治療のための医薬における使用のための、所望の場合は適切なアジュバント及び添加剤との、式(Ihb−3)の化合物、又は医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体の使用に関する。式(Ihb−3)の化合物は、サイトカインストームに関連するインフルエンザウイルス感染に関連する疾患の予防及び/又は治療のために特に有用である。
【0047】
別のさらにより好ましい実施態様によれば、本発明は、インフルエンザウイルス感染、特にサイトカイン放出の増加に関連するインフルエンザウイルス感染に関連する疾患の予防及び/又は治療のための医薬における使用のための、所望の場合は適切なアジュバント及び添加剤との、式(Ihb−4)の化合物、又は医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体の使用に関する。式(Ihb−4)の化合物は、サイトカインストームに関連するインフルエンザウイルス感染に関連する疾患の予防及び/又は治療のために特に有用である。
【0048】
さらにより好ましい実施態様によれば、本発明は、トリインフルエンザの予防及び/又は治療のための医薬における使用のための、所望の場合は適切なアジュバント及び添加剤との、式(Ihb)の化合物、又は医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体の使用に関する。
【0049】
さらにより好ましい実施態様によれば、本発明は、トリインフルエンザの予防及び/又は治療のための医薬における使用のための、所望の場合は適切なアジュバント及び添加剤との、式(Ihb−2)の化合物、又は医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体の使用に関する。
【0050】
さらにより好ましい実施態様によれば、本発明は、トリインフルエンザの予防及び/又は治療のための医薬における使用のための、所望の場合は適切なアジュバント及び添加剤との、式(Ihb−3)の化合物、又は医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体の使用に関する。
【0051】
さらにより好ましい実施態様によれば、本発明は、トリインフルエンザの予防及び/又は治療のための医薬における使用のための、所望の場合は適切なアジュバント及び添加剤との、式(Ihb−4)の化合物、又は医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体の使用に関する。
【0052】
本発明の化合物は、インフルエンザサブタイプH1N1、H5N1、H3N2及びH2N2の1又は複数への感染に関連する疾患の予防及び/又は治療における使用に非常に適する。
【0053】
別のさらにより好ましい実施態様によれば、本発明は、例えばインフルエンザサブタイプH1N1、H5N1、H3N2及びH2N2により引き起こされる、トリインフルエンザの予防及び/又は治療のための医薬における使用のための、所望の場合は適切なアジュバント及び添加剤との、式(Ihb)の化合物、又は医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体の使用に関する。
【0054】
別のさらにより好ましい実施態様によれば、本発明は、例えばインフルエンザサブタイプH1N1、H5N1、H3N2及びH2N2により引き起こされる、トリインフルエンザの予防及び/又は治療のための医薬における使用のための、所望の場合は適切なアジュバント及び添加剤との、式(Ihb−2)の化合物、又は医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体の使用に関する。
【0055】
別のさらにより好ましい実施態様によれば、本発明は、例えばインフルエンザサブタイプH1N1、H5N1、H3N2及びH2N2により引き起こされる、トリインフルエンザの予防及び/又は治療のための医薬における使用のための、所望の場合は適切なアジュバント及び添加剤との、式(Ihb−3)の化合物、又は医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体の使用に関する。
【0056】
別のさらにより好ましい実施態様によれば、本発明は、例えばインフルエンザサブタイプH1N1、H5N1、H3N2及びH2N2により引き起こされる、トリインフルエンザの予防及び/又は治療のための医薬における使用のための、所望の場合は適切なアジュバント及び添加剤との、式(Ihb−4)の化合物、又は医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体の使用に関する。
【0057】
発明の化合物、特に特定化合物Ihb−4は、1)非常に強力なNF−κB受容体遺伝子アッセイ阻害剤であり(IC50が100 nm範囲内);2)非毒性であり;3)ヒトリンパ球及びマウスT細胞増殖を阻害し;4)サイトカイン放出を実際に阻害し;5)宿主細胞生物能力を維持する間、インフルエンザウイルス複製を阻害し;ウイルス耐性を誘導せず;及びINF−αとの組み合わせで使用する場合、相乗的な抗ウイルス効果を有し;6)インフルエンザマウスモデルにおけるインビボ(in vivo)での有効性を示し;及び7)多数のヒトガン細胞系、特に多発性骨髄腫に対する活性を示す。
【0058】
本明細書に記載の通り、トリインフルエンザは、インフルエンザAウイルスサブタイプ、特にインフルエンザAサブタイプH5N1、H1N1(スペイン風邪)、H2N2(アジア風邪)及びH3N2(ホンコン風邪)により引き起こされる。上記の全てのインフルエンザ型は、サイトカイン放出の増加に関連する。本発明の主題は、感染した人の体内におけるサイトカイン放出の増加を引き起こすインフルエンザ型における、式(Ihb)の化合物又は医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体の使用である。
【0059】
さらに、本発明は、式(Ihb)の化合物又は医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体の、有効量を投与することを含んでなる、疾患の治療又は予防に関する。
【0060】
本発明はまた、式(Ihb)の化合物を、遊離状態又は医薬的に許容される塩及び医薬的に許容されるプロドラッグの状態で、医薬的に許容される希釈剤又はその担体と共に含んでなる、医薬組成物を提供する。
【0061】
式(Ihb)の化合物及びその医薬的に許容される塩を、動物、好ましくは哺乳類に、特にヒトに、治療物そのものとして、別の物との混合物として、又は腸内又は非経口使用が可能で、且つ式(Ihb)の化合物又はその塩の少なくとも1つの有効量を、慣習的な医薬的に無害な賦形剤及び添加剤に加えて活性成分として含有する、医薬製剤の状態で投与できる。式(Ihb)の化合物はまた、生理学的に許容される酸及び塩基と、それぞれの当該化合物を反応させることにより得ることができる塩の状態で投与することができる。
【0062】
本発明に係る式(Ihb)の化合物を含有する医薬及び応用物の製造は、周知の医薬的方法により行うことができる。
【0063】
治療における使用のための本発明に係る式(Ihb)の化合物を、未処理の化学化合物の状態で投与してもよいが、1又は複数のアジュバント、賦形剤、担体、緩衝剤、希釈剤及び/又の従来的な医薬補剤と共に、医薬組成物に、活性成分を任意に生理学的に許容される塩の状態で導入することが好ましい。当該化合物の塩は、無水物又は溶媒和物であってもよい。
【0064】
好ましい実施態様によれば、本発明は、本発明に係る式(Ihb)の化合物、その医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又は立体異性体を、1又は複数の医薬的に許容されるその担体、及び任意に他の医薬的及び/又は生理学的成分と共に含んでなる医薬を提供する。担体は、製剤の他の成分と適合し、その受容者に無害であるという意味で、「許容され」なければならない。
【0065】
本発明の医薬は、経口、経直腸、経気管支、経鼻、局所、経頬、舌下、経皮、経膣又は非経口(例えば、皮膚、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、動脈内、大脳内、眼球内の注射又は注入)投与に適するもの、又は吸入又は吹送による投与、例えば粉末及び液体エアロゾル投与、又は持続放出系による投与に適する状態のものであってもよい。持続放出系の好適な例には、本発明の化合物を含有する固形疎水性ポリマーの、例えばフィルム又はマイクロカプセル等の形成品の状態でもよい、吹送マトリクスがある。
【0066】
すなわち、本発明の化合物を、従来のアジュバント、担体、又は希釈剤と共に、医薬の状態及びその単位投薬形態にしてもよい。当該状態には、固形、及び特に錠剤、充填カプセル、粉末及びペレット状態、及び液体、特に水性又は非水性溶液、懸濁物、エマルション、エリキシル、及び同等物を充填するカプセルがあり、経口使用については全て、直腸投与については坐剤、及び非経口使用については滅菌注射溶液がある。当該医薬及びその単位投薬形態は、追加の活性化合物又は主成分の存在下又は不存在下で、従来の比率で従来の成分を含んでもよく、そして当該単位投薬形態は使用される意図する一日投薬範囲に相当する活性成分の任意の好適な有効量を含有してもよい。
【0067】
本発明に係る化合物は、様々な範囲の経口及び非経口の投薬形態で投与することができる。以下の投薬形態が、活性成分として本発明に係る式(Ihb)の化合物か、又はその医薬的に許容される塩もしくは立体異性体のいずれかを含んでもよいことは、当業者に明らかとなるはずである。
【0068】
式(Ihb)の化合物から医薬を調製するため、医薬的に許容される担体は、固体でも、液体でもよい。固体状態の製剤には、粉末、錠剤、丸薬、カプセル、カシェ剤(cachet)、坐剤、及び分散性顆粒がある。固体担体は、1又は複数の物質でもよく、希釈剤、香料、可溶化剤、流動促進剤、懸濁剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、又はカプセル化物質として機能してもよい。
【0069】
粉末において、当該担体は、微粉砕固体であり、微粉砕活性成分との混合物である。錠剤においては、当該活性成分は、好適な比率で必要な結合力を有する担体と混合され、且つ所望の形状及び大きさに圧縮される。好適な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、乳糖、ペクチン、デキストリン、スターチ、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロールナトリウム、低融点ワックス、ココアバター等である。「調製物(preparation)」なる用語には、カプセル内において、担体の存在下又は不存在下で、活性成分が担体に囲まれてそれと結合状態にあるカプセルを提供する担体としてのカプセル化物質を有する、活性化合物の製剤が含まれることが意図される。同様に、カシェ剤及びトローチ剤が含まれる。錠剤、粉末、カプセル、丸薬、カシェ剤、及びトローチを、経口投与に適する固形状態として使用できる。
【0070】
坐剤の調製では、脂肪酸グリセリド又はココアバター等の低融点ワックスが最初に溶解し、活性成分は攪拌によりそこへ均一に分散する。その後、融解した均一混合物を、一般的大きさの型に空け、冷却し、凝固させる。経膣投与に適する組成物を、活性成分に加えて、当業者が適切であると知られるような担体を含有する、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレーとして提示してもよい。液体調製物には、溶液、懸濁物、及びエマルション、例えば水又は水−プロピレングリコール溶液等がある。例えば、注射液調製物は、水性ポリエチレングリコール溶液における溶液として製剤化することができる。
【0071】
すなわち、本発明に係る式(Ihb)の化合物は、非経口投与(例えば注入、例えばボーラス注射又は持続注入)のために製剤化してもよく、アンプル、予備充填シリンジ、少量注入又は保存剤を添加したマルチ用量容器中の単位投薬形態で提供してもよい。組成物は、油性又は水性媒体中の懸濁物、溶液、又はエマルション等の形態をとってもよく、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤等の製剤化の剤を含有してもよい。あるいは、活性成分は、好適な媒体、例えば発熱物質フリーの滅菌水で使用前に組成する、滅菌固体の無菌単離又は溶液からの凍結乾燥により得られる粉末状態でもよい。
【0072】
経口使用に適する水溶液を、水中に活性成分を溶解させ、所望の好適な着色料、香料、安定化剤及び濃縮剤を添加することにより調製することができる。経口使用に適する水溶液を、天然又は合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、又はその他の周知の懸濁剤等の粘着性物質と共に、水中に微粉砕活性成分を分散させで作製することができる。
【0073】
使用直前に、経口投与のための液体状態に変換することを意図する、固体状態の調製物も含まれる。当該液体状態は、溶液、懸濁物、及びエマルションがある。これらの調製物は、活性成分に加え、着色料、香料、安定化剤、緩衝剤、人工及び天然甘味料、分散剤、濃縮剤、可溶化剤等を含んでもよい。
【0074】
本発明のある実施態様によれば、医薬を、局所的又は全身的又は2つの経路の組み合わせで投与する。
【0075】
本発明の特に好ましい実施態様によれば、医薬を局所的に投与する。これは、可能性ある副作用を低減すると共に、疾患に冒された部分に必要な治療を限定する。
【0076】
好ましくは、医薬を、軟膏、ゲル、プラスター、エマルション、ローション、フォーム、混合相又は両親媒性エマルション系(油/水−水/油混合相)のクリーム、リポソーム、伝達物質(transfersome)、ペースト又は粉末の状態で調製する。
【0077】
軟膏及びクリームを、例えば好適な濃縮及び/又はゲル化剤を添加し、水性又は油性基材と共に製剤化してもよい。ローションを、水性又は油性基材と共に製剤化すると共に、一般的に1又は複数の乳化剤、安定化剤、分散化剤、懸濁剤、濃縮剤、又は着色剤も含有することになる。
【0078】
口中の局所投与に適する組成物には、風味基材、通常はスクロース及びアカシア又はトラガカント中に活性成分を含んでなるトローチ剤(lozenge);ゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシア等の不活性基材中に活性成分を含んでなるトローチ(pastille);及び好適な液体担体中に活性成分を含んでなる口中洗浄剤がある。
【0079】
溶液又は懸濁物を、例えばスポイト、ピペット又はスプレー等の従来手法により鼻腔に直接投与する。組成物は単一又はマルチ用量の状態で提供されてもよい。スポイト又はピペットでの後者の場合、適切な既定量の溶液又は懸濁物を患者に投与することによりこれを達成してもよい。スプレーの場合、例えばスプレーポンプの計量霧化方法によりこれを達成してもよい。
【0080】
気道への投与を、クロロフルオロカーボン(CFC)、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロエタン、又はジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又はその他の好適なガス等の好適な推進剤と共に加圧パックされた状態で、活性成分が提供されるエアロゾルにより達成してもよい。エアロゾルは一般的にレシチン等の界面活性剤を含有してもよい。薬物の用量を、計量バルブで制御してもよい。
【0081】
あるいは、活性成分を乾燥粉末、例えば、ラクトース、スターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリドン(PVP)等のスターチ誘導体等の好適な粉末基材における化合物の混合粉末の状態で提供してもよい。従来的には、粉末担体は、鼻腔内でゲルになる。粉末組成物を、投与例えばゼラチンのカプセル又はカートリッジ、又は粉末が吸入器により投与されるブリスター包装等の、単位投薬形態で提供してもよい。
【0082】
鼻腔内組成物などの気道への投与が意図される組成物において、化合物は通常、小粒子サイズ、例えば5ミクロン以下のオーダーである。当該粒子サイズを、例えば微粒子化(micronization)等の当業者に既知の方法で得てもよい。
【0083】
所望の場合は、活性成分の持続放出の提供に適合させた組成物を使用してもよい。
【0084】
好ましくは医薬調製物は単位投薬形態である。当該形態において、調製物を、適切な量の活性成分を含有する単位用量に細分する。単位投薬形態を、包装した調製物、包装した錠剤、カプセル、及びバイアル又はアンプル中の粉末等の、別々の量の調製物を含有する包装とすることができる。また、単位投薬形態は、カプセル、錠剤、カシェ剤、又はトローチ剤それ自身とすることができ、又はそれを包装形態におけるこれらの任意の適切な個数にすることができる。経口投与のための錠剤又はカプセル及び静脈投与及び持続注入のための液体が、好ましい組成物である。
【0085】
製剤化及び投与のためのさらに詳細な技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences (Maack Publishing Co. Easton, Pa.)の最新版で示されるものでもよい。
【0086】
医薬組成物は、2以上の式(Ihb)の化合物、又はその医薬的に許容される塩、及び他の治療的活性物質を含有することもできる。
【0087】
すなわち、本発明の化合物を、1つの化合物単独の状態で、又は他の活性化合物、例えば、既述の疾患の治療用として既知の医薬との組み合わせで使用することができ、ここで後者の場合は、有利な、追加の、増幅した効果がある。ヒトへの投与に適する量は、5〜500 mgの範囲であってもよい。
【0088】
驚くべきことに、本発明の化合物と、インターフェロン−αとの組み合わせは、強力な相乗的抗ウイルス効果をもたらす一方、毒性は2つの剤の組み合わせにより拮抗される。とりわけ、本発明の化合物、特に式(Ihb−4)の化合物と、INFαの組み合わせは、リバビリンとのIFNα組み合わせと比較して、抗ウイルス効果及び毒性拮抗性においてより強力な相乗効果を示す。
【0089】
別の実施態様によれば、本発明の化合物又はその組成物は、サイトカイン放出の増加に関連する疾患の予防及び/又は治療のために使用することができ、ここで、当該化合物又は組成物はインターフェロンアルファとの組み合わせで投与される。
【0090】
医薬調製物を調製するために、医薬的に不活性な無機又は有機賦形剤を使用することができる。丸薬、錠剤、被覆錠剤及び硬ゼラチンカプセルを調製するため、例えば、ラクトース、コーンスターチ又はその誘導体、タルク、ステアリン酸又はその塩等を使用できる。軟ゼラチンカプセル又は坐剤のための賦形剤は、例えば、脂質、ワックス、半固体及び液体ポリオール、天然又は硬化オイル等である。溶液及びシロップのための好適な賦形剤は、例えば水、スクロース、不活性糖、グルコース、ポリオール等である。注射溶液の調製のための好適な賦形剤は、例えば、水、アルコール、グリセロール、ポリオール又は植物油である。
【0091】
用量を、幅広い範囲で変化させることができ、各々の個別の場合に個別の症状に適するようにする。上記の使用について適切な投薬は、投与の態様、治療される症状及び所望の効果によって変化することになる。ただし一般的には、約1〜100 mg/動物体重kg、好ましくは1〜50 mg/kgの投薬比率で、満足のいく結果に到達する。一般的には、より大きな哺乳類、例えばヒトに対する好適な投薬比率は、約10 mg〜3 g/日のオーダーであり、一般的には一度、1日に2〜4回に分割した用量で投与されるか、持続放出形態で投与される。
【0092】
一般的には、ヒト1人当たりおよそ10 mg〜5000 mg、好ましくは50〜500 mgの一日用量が、経口投与の場合は適切である。他の投与形態の場合も、一日用量は同様の範囲である。局所送達では、肌の浸透性、疾患の種類及び感受性、及び製剤の種類及び塗布頻度への依存性によって、医薬の中の活性化合物の濃度の違いは、局所塗布による治療効果を引き出すために十分な可能性がある。好ましくは、活性化合物の濃度又はその医薬的に許容される塩又は生理的な機能的誘導体又はその立体異性体の、本発明の医薬における濃度は、1 μmol/l〜100 mmol/lの範囲である。
【0093】
以下の実施例及び図は、本発明の好ましい実施態様を実証するために示される。以下の実施例で開示された技術は、本発明の実施に際して十分に機能するよう発明者等により発見された技術であるため、その実施のための好ましい態様と考えられることを、当業者は理解するべきである。ただし、本開示について、添付の請求の範囲において示される発明の精神及び範囲を逸脱しない限り、開示される特定の実施態様において多くの変更がなされることを当業者は理解すべきである。全ての引用文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0094】
実施例
略語:min、分;h、時間;r.t.、室温;t−、tert−。
NMRスペクトル:Bruker Avance 300 MHz。スペクトルは、内部標準として残存溶媒ピークを用いて、それぞれ300 MHz(1H−NMR)で記録された。
【0095】
【化7】
【0096】
分析LC/ESI−MS:2 x Waters 600 Multisolvent Delivery System。50μlサンプルループ。カラム、Chromolitli Speed ROD RP18e (Merck, Darmstadt)、50×4.6mm、2μmプレフィルター(Merck)。溶離液A、H2O+0.1% HCO2H;溶離液B、MeCN。グラジエント、5%B〜100%Bを5分以内;流速、3ml/分。電子スプレー源を装備するWaters LCZ single quadrupol mass spectrometer。MS法、MS8minPM-80-800-20V;陽/陰イオンモードスキャン、1秒にm/z80〜800;キャピラリー、3.5 kV;コーン電圧、20 V;倍増電圧、400 V;プローブ及び脱溶媒和ガス温度、それぞれ120℃及び350℃。Waters 2487 Dual λ Absorbance Detector、254 nmでセットする。
調製HPLC−MS:調製用ポンプヘッドを装備したWaters 600 Multisolvent Delivery System。2000μl又は5000μlサンプルループ。X-Terra RP 18ガードカートリッジ(7 μm、19 x 10 mm)付きの、カラム、Waters X-Terra RPl 8(7 μm、19 x 150 mm)を20 ml/分の流速で使用、又はX-Terra RP 18ガードカートリッジ(7 μm、19 x 10 mm)付きの、YMC ODS-A, (120Å、40 x 150 mm)を50 ml/分の流速で使用。溶媒組成:MeCN−H2O−HCO2Hが80:20:0.05(v:v:v)。溶離液A、H2O+0.1% HCO2H;溶離液B、MeCN。サンプルに合わせて、5〜100%溶離液Bの異なる線形グラジエント。注入量:サンプルによって500 μl〜2000 μl。電子スプレー源を装備するWaters ZQ single quadrupol mass spectrometer。陽又は陰イオンモードスキャン、1秒にm/z80〜800;キャピラリー、3.5 kV又は3.0 kV;コーン電圧、20 V;倍増電圧、400 V;プローブ及び脱溶媒和ガス温度、それぞれ120℃及び350℃。質量トリガーフラクションコレクションを備える、Waters Fraction Collector II。Waters 996フォトダイオードアレイ検出器。
【0097】
4−(メトキシ−メチル−カルボニル)−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルの合成
ピペリジン−1,4−ジカルボン酸モノ−tert−ブチルエステル(1.0 当量, 21.8 mmol)を、不活性条件下、35 mlのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解した。O,N−ジメチル−ヒドロキシルアミン塩酸塩(1.03 当量, 22.5 mmol)、ベンゾトリアゾル−1−オール一水和物(1.03 当量, 22.5 mmol)及びトリエチルアミン(1.5 当量, 32.7 mmol)を添加した。反応混合物を0℃に冷却し、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド塩酸塩(1.0 当量, 21.8 mmol)を10分間にわたり添加し、混合物を0℃で1時間及び室温で18時間、勢いよく攪拌した。
溶媒を真空下で除去し、残存物を400 mlの酢酸エチルに懸濁した。有機層を、100mlの1Mクエン酸及び炭酸ナトリウム水溶液で3回、100mlのブラインで2回抽出し、MgSO4で乾燥させ、濾過した。溶媒を除去し、残存物を蒸留により精製し、収率が80%であった。
【0098】
4−ホルミル−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルの合成
4−(メトキシ−メチル−カルボニル)−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(1.0 当量、16.4 mmol)を、不活性雰囲気下で100 mlの乾燥テトラヒドロフランに溶解した。この溶液を1時間にわたり滴下しながら、−50℃で添加し、70 mlの乾燥テトラヒドロフラン中のリチウムアラナート(lithiumalanate)(3.0 当量、49.6 mmol)の懸濁物とした。混合物添加の間、温度を−50℃に保ち、その後3時間で0℃まで戻した。
混合物を−78℃で冷却し、100 mlの1Mクエン酸で慎重に反応停止させた。混合物を室温まで温め、400 mlの酢酸エチルで希釈した。相を分離し、水相を70 mlの酢酸エチルで3回抽出した。混合した有機層を、100mlの1Mクエン酸及び炭酸ナトリウム水溶液で3回、100mlのブラインで2回抽出し、MgSO4で乾燥させ、濾過した。溶媒を除去し、残存物を蒸留により精製し、収率が85%であった。
【0099】
4−(4−エトキシカルボニル−4,5−ジヒドロ−チアゾル−2−イル)−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルの合成
4−ホルミル−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(1.0 当量、13 mmol)を、不活性条件下、40 mlトルエンに溶解させた。この溶液に、L−システインエチルエステル塩酸塩(1.6 当量、21 mmol)及びトリエチルアミン(1.6 当量、21 mmol)を添加した。混合物を14時間還流させた。発生した水をDean&Starkトラップで除去した。溶媒を除去し、残存物を100 mlの酢酸エチルに溶解させた。有機相を、50 mlの1Mクエン酸、炭酸水素カリウム水溶液で3回及び50 mlのブラインで2回抽出し、MgSO4で乾燥させ、濾過した。溶媒を除去し、残存物をシリカゲルクロマトグラフィでPE/EA4:1グラジエントを用いて精製し、収率が75%であった。
【0100】
4−(4−エトキシカルボニル−チアゾル−2−イル)−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルの合成
4−(4−エトキシカルボニル−4,5−ジヒドロ−チアゾル−2−イル)−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(1.0 当量、8.7 mmol)を、不活性条件下、160 mlのトルエンに溶解した。この溶液に、MnO2(15.0 当量、130 mmol)を添加した。反応物を攪拌しながら、5時間70℃に加熱した。混合物をセライトで濾過し、濾過剤を30 mlのトルエン及び酢酸エチルで3回洗浄した。混合した有機層を、真空内で蒸留した。残存物をシリカゲルクロマトグラフィで、DCM/MeOH95:5グラジエントを用いて精製した。収率は30%。
【0101】
C末端機能付与
4−(4−エトキシカルボニル−チアゾル−2−イル)−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(1.0 当量、2.9 mmol)を、不活性ガスの下、40 mlのジオキサンに溶解させた。1.5 mlの2N NaOHを10分間にわたり滴下しながら添加した。その後混合物を2時間室温で攪拌した。
反応物を2N HClで中性化し、溶媒を真空下で蒸発させた。残存物を50 mlの酢酸エチルに溶解させた。有機層を10 mlの1Mクエン酸及び水で3回抽出し、MgSO4で乾燥させ、濾過した。溶媒を除去し、残存物を真空下で乾燥させた。収率は95%。
【0102】
4−(4−カルボキシ−チアゾル−2−イル)−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(1 当量)を、不活性条件下、乾燥ジメチルアセトアミド(0,03 mmol/ml)に溶解させた。この溶液に、アリール−又はアルキルアミン(1 当量)、ジイソプロピルエチルアミン(2 当量)及びO−ベンゾトリアゾル−1−イル−N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(2 当量)を添加した。反応混合物を12時間室温で攪拌した。溶媒を真空下で除去し、残存物を酢酸エチルに溶解させた。有機層を1Mのクエン酸、炭酸水素カリウム水溶液で3回、ブラインで2回抽出し、MgSO4で乾燥させ、濾過した。溶媒を除去し、残存物をシリカゲルクロマトグラフィでDCM/MeOH95:5グラジエントを用いて精製した。収率は40〜80%。
【0103】
N−末端機能付与
N−保護物質を、不活性条件下、4M HCl/ジオキサン(濃度、1mlHCl/ジオキサン中0.03 mmol基質)で処理し、室温で2時間攪拌した。溶媒を真空下で除去し、さらなる精製を行わず遊離アミンのHCl塩を得た。
当該遊離アミン化合物(1 当量)を不活性条件下で、乾燥ジメチルアセトアミド(0.03 mmol/ml)に溶解させた。この溶液に、1 当量のヘテロアリールハロゲニド、ジイソプロピルエチルアミン(3 当量)をこの順序で添加し、反応混合物を3〜5時間、80〜90℃で加熱した。
溶媒を真空下で除去し、残存物を酢酸エチルに溶解させた。有機層を1Mクエン酸、炭酸水素カリウム水溶液で3回、ブラインで2回洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過した。溶媒を除去し、残存物をシリカゲルクロマトグラフィでDCM/MeOH95:5グラジエントを用いて精製した。収率は40〜80%。
【0104】
本発明の式(Ihb)の例示的な化合物には、限定するものではないが、以下のものがある。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
【表3】
【0108】
NK−κB−誘導性炎症の阻害
化合物の抗炎症活性を決定するために、Cell Culture Service GmBH製のPRINCESS(登録商標) NINA Instant Assayを使用した。このアッセイは、96ウェル平底プレートに事前播種された、組み換え体A549−NF−κB−SEAPレポーター細胞を基にする。SEAP(選択胚アルカリホスファターゼ)のための形質移入レポーター遺伝子をNF−κB応答要素の転写制御下にするため、このレポーターの発言をTNF−αでの刺激で活性化する。培養物上清におけるSEAPセレクションは、化学発光物質CSPD(登録商標)により検出できる。NF−κB活性化を阻害する試験化合物は、SEAP活性を低減し、発光の読み出しを低減させる。その後、37℃、5%CO2及び90%相対湿度で18時間の再活性化を行い、細胞を、0.01〜100 μMの試験化合物と共に、4.5時間インキュベートし、その後2 ng/mlのTNF−αで刺激した。TNF−αで22時間刺激した後、内因性のホスファターゼを不活性化し、CSPD(登録商標)物質を40分補充した。その後、Tecan Ultraリーダーを用いて、相対光単位(relative light units)(RLU)として発光を測定することにより、SEAR活性を定量化した。各々のデータ点を4重に記録し、フィッティング機能及びMicrosoft Excel Solverを用いてEC50値を計算した。
【0109】
T−リンパ球増殖アッセイ:
刺激された末梢血単球(PBMC)の阻害。
ACCUSPIN(商標) System Histopaque(登録商標)-1077を用いて、健常なボランティアからPBMCを単離し、洗浄し、そしてRPMI 1640-Glutamax培地中(10%のウシ胎児血清、4 mMのL−グルタミン、100単位/mlのペニシリン及び100μg/mlのストレプトマイシンを含有する)に106細胞/mlで再懸濁した。細胞を、試験化合物又はブランク媒体の存在下、phytohemo agglutininで48時間刺激した。インキュベーション期間の終了4時間前に、増殖細胞を標識するために5−ブロモ−2’−デソキシウリジン(BrdU)を添加した。インキュベーション後、細胞を遠心分離により分離し、培養上清を除去した。組み込まれたBrdUを、酵素結合型免疫吸着分析により定量した。IC50値(50%阻害のために必要な阻害剤の濃度)を決定するため、少なくとも4つの異なる阻害剤濃度をアプライした。各々のデータは3重に記録した。曲線を好適なプログラムでフィッティングさせた。T−リンパ球増殖アッセイで得られた結果から、本発明の化合物は、炎症性疾患又はT細胞と関連する疾患の治療に適する。
【0110】
ヒトPBMCのサイトカイン産生の分析
PBMCを、Tリンパ球増殖アッセイのために単離した、洗浄し、そして、10%ウシ胎児血清及び4 mMのL−グルタミンを含有するRPMI1640−Gmtamax-Medium、100単位/mlのペニシリン及び100μg/mlのストレプトマイシン中で細胞、106/mlに再懸濁した。細胞を、2.5又は25μMの化合物、又はネガティブコントロールとして同量のDMSOで処理し、その後、以下の刺激剤のうちの1つで刺激した。刺激剤は、2 μg/mlのphytohemeagglutinin、10 ng/mlのIL−1ベータ、10 ng/mlのTNF−アルファ、2.5 μg/mlのCL075、1 μg/mlのリポ多糖類(LPS)、1 μMのODN2006、又は1 μMのODN1668である。サイトカイン産生を、24、48及び72時間後に、ルミネックス・バイオプレックス・システム(luminex bioplex system)を用い、その製品指示書に従って、上清中で分析した。
【0111】
以下の配列を有するオリゴヌクレオチドをTiB−Molbiol(Berlin、ドイツ)により合成し、ここでsはホスホロチオエート結合を示す。PPS及びPHAを、Sigrna-Aldrich (Taufkirchen, ドイツ)、IL−1ベータ及びTNF−アルファをStrathman Biotec GmbH (Hamburg,ドイツ)から入手した。
【0112】
【化8】
【0113】
マウス脾細胞のサイトカイン産生の分析
脾細胞を、メスのBALB/CanNCrl マウス (Charles River Laboratories)から単離し、洗浄し、脾細胞培地(RPMI-培地, 5% 熱不活性化ウシ胎児血清, 20mM HEPES, 50μM 2-メルカプトエタノール, 1% PEN/ステップ溶液(Step solution) (PAN Biotech)で再懸濁した。細胞を試験物質又はコントロールのDMSOで処理し、CD3-被覆又は未被覆の96ウェルプレートに播種した。CD−3被覆プレート中の細胞を、抗−CD28でさらに刺激した。37℃で24又は48時間インキュベーション後、ウェルを回収し、ルミネックス法でマーカーサイトカインの測定をするまで細胞未含有培養上清を−80℃で凍結させた。
【0114】
H5N1トリインフルエンザ感染マウス肺組織における、インフルエンザウイルス特異的核酸及びIL−6及びIP−10の分析
マウスをトリインフルエンザウイルスH5N1(MB1株)に感染させ、2日間化合物4で(一日、15 mg/kg、i.p.)治療した。2日後、マウスを犠牲にし、肺組織からRNAを抽出した。インフルエンザ特異的なリアルタイムPCRを、関節(artus)Qiagen RT−PCRキットで行った。サイトカイン/チェルノカイン(chernokine)特異的リアルタイムPCRを、Qiagen RT−PCRキットで行った。
【0115】
インフルエンザウイルス複製の阻害
A549細胞を、病原性の高いトリインフルエンザウイルス株(例えば、H5N1、H7N7、H2N3)又はヒトインフルエンザウイルス様々な株(例えばH1N1)で16時間感染させた(MOI=0〜001)。細胞を、異なる濃度の化合物又は溶媒(DMSO)でインキュベートした。次世代ウイルスの力価を、プラークアッセイで決定した。DMSOコントロールのウイルス数を100%と規定した。
【0116】
細胞生存能力の決定
発明の化合物でインキュベートした細胞系列(例えば、A549)を、MTT染色で細胞生存能力の評価を行った。
【0117】
耐性現象の分析
A549細胞を、トリプラークウイルス(インフルエンザ株、H7N7)、MOI=0.01で感染させ、物質の存在下又は不存在下で24時間インキュベートした。各サンプルの上清を回収し、MDCK細胞でプラークアッセイによりウイルス力価を決定した。次に、上清を標準化し、A549細胞の第二継代細胞を、第一代と同じ濃度、同じウイルス数で感染させた。この作業を第五継代細胞まで繰返した。
【0118】
インフルエンザマウスモデル
メスBalb/C又はC57BI/6マウスを、LD50用量のインフルエンザウイルスで鼻内に感染させた。感染の日(0日目)又は数日のものとして感染後4日目で、i.v.又はi.pで毎日1回又は2回、化合物を投与した。治療群の生存しているマウスの数を、感染14日目と、非治療コントロール群で比較した。確認のために、全ての動物について感染ウイルス抗体力価を決定した。
【0119】
癌細胞試実験
23細胞系列を、ATCC(Rockville, MD)、DSMZ(Braunschweig, Germany)又はECACC(Wiltshire, UK)から購入した。細胞を1週間に1回又は2回定期的に継代培養した。これらを、20代以下まで培地中で継続した。全ての細胞を、10%のウシ胎児血清(PAA、Colbe、ドイツ)及び0.1%ゲンタマイシン(PAA、Colbe、ドイツ)を補ったRPMI1640倍地(PAA、Colbe、ドイツ)中で、加湿化雰囲気(95%空気、5%CO2)下、37℃で増殖させた。
【0120】
修正プロピジウムヨウ素アッセイを、物質の抗癌活性を評価するために使用した。簡単に言うと、細胞懸濁物を、対数期の培養液から取り、計数し、細胞系列に応じた細胞密度(20,000〜100,000細胞/ウェル)で、96ウェル平底マイクロタイタープレートに播種した。細胞に対数増殖を再開させる24時間の回復期の後、10 μlの培養培地(6コントロールウェル/プレート)又は試験化合物を含有する培養培地を、当該細胞に添加した。試験物質を、0.003〜30μMの範囲の5つの濃度で3重にアプライした。連続薬物暴露4日後、50 μlのヨウ化プロピジウム(PI)水溶液を、当該ウェルに添加した(PIの終濃度7 μg/ml)。PIは未処理の細胞膜を通過せず、死細胞の核のみに侵入する。30分のインキュベーション期間後、Cytofluor 4000マイクロプレートリーダー(励起530 nm、発光620 nm)を用いて蛍光(FU1)を測定し、死細胞の測定値を直接求めた。その後、マイクロプレートを−200℃で24時間置き、全ての細胞を死滅させた。プレートを解凍し、第二蛍光を測定(FU2)後、生細胞の量をFU2からFU1を引くことにより計算した。AU化合物/試験細胞系列の組み合わせを、3〜4つの独立した実験で試験した。各実験において、全てのデータ点を三重に決定した。計算には、三重のデータの平均値を用いた。
【0121】
増殖阻害を、試験及びコントロールのウェル(試験/コントロール×100T/C)[%]の蛍光比率として表現した。T/C値に基づき、IC50/IC70/IC90値(それぞれ細胞増殖を50%(T/C=50%)、70%(T/C=30%)及び90%(T/C=10%)阻害するのに必要な薬物濃度)を、二点間のカーブフィッティングの原理により、化合物濃度対細胞生存能力(T/C)をプロットすることにより計算した。平均IC50及びIC70値を、xは特定の腫瘍細胞系列を、nは被検腫瘍細胞系列の総数を表す以下の等式で記載する。IC50又はIC70値が試験する濃度範囲内で決定できない場合(化合物が活性であり過ぎるか、活性がないかのいずれかにより)、被検の最低又は最高濃度を計算に使用した。
【0122】
【数1】
【0123】
抗腫瘍活性及び腫瘍選択性を、IC50又はIC70平均グラフプレゼンテーションを用いて評価した。これらは、平均IC50/IC70値に対する各細胞の個別のIC50/IC70値の分布を示す。平均IC50/IC70値からの個別のIC50/IC70値の偏差は、対数スケールの軸上に棒として表される。左の棒は、平均IC70値より低いIC50/IC70値(感受性のある細胞系列)を表し、右の棒は、より高い個別のIC50/IC70値(耐性細胞系列)を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式(Ihb)の化合物、又はその立体異性体、又は酸又は塩基との医薬的に許容されるその塩、又は医薬的に許容されるこれらの化合物のプロドラッグに関する。本発明の化合物は、医薬として使用することができ、且つ哺乳類、特にヒトにおけるサイトカイン放出の増加に関連する疾患の治療に特に有用である。具体的には、これらは、ウイルス感染、例えばインフルエンザウイルス感染等が原因である疾患の予防及び/又は治療のために有用である。
【背景技術】
【0002】
NF−κB(核内因子−κB)は、relファミリーの真核性転写因子であり、ホモ又はヘテロ二量体として、不活性複合体において細胞質に局在する。主に、p50及びp65サブユニットからなるヘテロ二量体として存在し、IκBファミリー、通常IκB−αの阻害タンパク質に結合する(D, Thanos et al, Cell 80, 529, 1995)。NF−κBは、炎症性サイトカイン、UV照射、ホルボールエステル、細菌及びウイルス感染における、異なる刺激に応答して活性化される。刺激は、リン酸化及びその後のプロテアーゼによるIκB−αタンパク質の分解の結果として、IκBからのNF−κB放出を引き起こす(P.A. Baeuerle et al, Annu. Rev. Immunol. 12, 141, 1995)。それが放出されると、NF−κBは、特定のκB部位で、それがDNAに結合する場である核に移行し、その他のインターロイキン、TNF−α、NO−シンターゼ及びシクロオキシゲナーゼ2の中の、免疫性及び炎症性応答の制御に関与するタンパク質をコードする様々な遺伝子の転写を誘導する(S. Grimm et al, J. Biochem. 290, 297, 1993)。したがって、NF−κBは、免疫性及び炎症性応答の初期の介在物と考えられており、それは細胞増殖の制御及びリウマチ様関節炎(H. Beker et al, Clin. Exp. Immunol. 99, 325, 1995)、虚血(A. Salminen et al, Biochem. Biophys. Res. Comm. 212, 939, 1995)、動脈硬化症(A.S. Baldwin, Annals Rev. Immunol 212, 649, 1996)等の様々なヒトの疾患の病変形成、並びにAIDSの病変形成に関与する。
【0003】
NF−κB介在性遺伝子転写の阻害は、阻害タンパク質IκBのリン酸化の阻害、IκB分解の阻害、NF−κB(p50/p65)核内移行の阻害、NF−κB−DNA結合又はNF−κB−介在性DNA移行の阻害を介して達成される(J. C. Epinat et al., Oncogene 18, 6896, 1999)。
【0004】
サイトカインシグナル伝達の異常調節も、重度の感染性疾患、例えば敗血症性ショック又は鳥インフルエンザ感染等の重要な特徴である。敗血症性ショックは、細菌性感染に対する制御されないTNFα応答により引き起こされ、鳥インフルエンザ感染はいわゆる「サイトカインストーム」を特徴とし、いずれも患者の致死率が高い多発性器官不全をもたらす。最近では、NF−κBは、複数のウイルス、例えばインフルエンザAウイルス及びHIVの増殖に関与することが示されている。また、C型肝炎の増殖における重要な役割は、NF−κBが原因である。
【0005】
インフルエンザ感染は、通常の「インフルエンザ・シーズン」である冬期の間は感染者が数百万人になるような、毎年頻発する健康問題を引き起こす。Robert−Koch機関により発表された数によると、2002/3の冬、ドイツだけで16,000〜20,000人がインフルエンザ感染で死亡した。現在、疾患管理は主に2つの戦略に頼っている:ワクチン接種プログラム、及びウイルス表面又はノイラミニダーゼもしくはM2イオンチャネル様の膜貫通タンパク質を標的とする抗ウイルス薬である。ワクチン接種プログラムは、次のインフルエンザ流行を引き起こすはずの正しいウイルスサブタイプの予測、製品コスト、適時性、供給、分配、ワクチンの保存期間のような複数の欠点が問題となっている。異なるウイルス株の出現により、完全なワクチン接種の成果が無駄になってしまうこともある。一方、抗ウイルス薬物での治療は、疾患段階の初期で行われる場合、通常わずか1日又は2日だけ疾患の過程を減少させる。さらに、当該治療は、ウイルス性変異体の出現をもたらすこともあり、この変異体は当該薬物の抗ウイルス作用を回避でき、それが現在使用される抗ウイルス剤へ応答しないことが可能になる。現在は、抗インフルエンザ治療用として最も一般的に使用される2つの化合物は、オセルタミビル(商標名タミフルとしてRoche/Gileadから市販される)及びザミニビル(Zaminivir)(商標名リレンザとしてGSKから市販される)であり、いずれも感染細胞からのウイルス放出を阻止するノイラミニダーゼ阻害剤である。M2イオンチャネルブロッカーが細胞へのウイルスの侵入を阻害する、Novartis製のアマンタジンは、以前インフルエンザ療法で使用されていたが、ウイルスの耐性メカニズムが急速に広がるという問題がある。
【0006】
新たに出現する病原性及び感染性の高いインフルエンザウイルス株に直面し、新規な治療の選択肢が緊急に必要である。現在、口語的に「鳥インフルエンザ」と呼ばれるインフルエンザAサブタイプH5N1は、潜在的にパンデミックを引き起こすインフルエンザ株である。前世紀の大規模なインフルエンザ・パンデミックは、当初は、病原性及び感染性の高い鳥インフルエンザウイルスであり、それがヒト宿主に適合するとともに、ヒト伝染性になったものである。これまでH5N1は、動物からヒトに散発的に伝染しただけであったが、インフルエンザウイルスの高い変異率とその遺伝子構成のために、宿主適合及びヒトにおける自由な分配、つまり同時感染した宿主の異なるウイルスサブタイプとの間で適切な遺伝子交換が起こり得る。これまで317件のH5N1感染が報告されている。この患者のうち191人が死亡した(2007年6月29日までに)。現在、このような病原性の高いウイルス感染に罹患する患者のための利用できる治療の選択肢がない。H5N1に感染した者は、熱、寒気及び敗血症と同じような症状に苦しむ。数日後に免疫系により除去される通常のインフルエンザ感染とは異なり、H5N1のような高い病原性インフルエンザウイルスへの感染は、免疫細胞に大量のサイトカインを放出させ、いわゆるサイトカインストームをもたらし、免疫系を完全に無制御にし、且つ多発性器官不全による死亡を引き起こす。疾患段階の後期において有効なワクチン及び薬物活性が十分存在しない場合、インフルエンザを治療する新規な方法が必要である。
【0007】
本発明は、サイトカイン放出の増加に関連する疾患の予防及び/又は治療のための、一般式(Ihb)の化合物、又は酸又は塩基との医薬的に許容されるその塩、又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体に関する。
【0008】
【化1】
【0009】
上記式(Ihb)中、
Y'は、O又はNR2'であり;
Zは、N又はCR2'であり;
Xは、NR2'、O又はSであり;
R2'は、H、アルキル、−C(O)NR7、−C(O)Re、シクロアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
R3は、H、メチル、エチル、メトキシ、アミン、アルキルアミン、モルホリノ、N−メチルピペラジン、CF3、又はOCF3であり;
R2aは、置換又は未置換のアリール、ベンジル又はヘテロアリールであり;
R7、R7'、R8は、独立に、H、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
Reは、独立に、H、−CN、−OH、−SH、−CO2R4'、−C(O)R4'、−SO2R4'、−NR4'R5'、−C(O)NR7R8、−SO2−アルキル、−SO2R4'、−SO3R4'、−N=CR4'R5'、−NR4'C(O)R4"、−NR4'−CO−ハロアルキル、−NO2、−NR4'−SO2−ハロアルキル、−NR4'−SO2−アルキル、−NR4'−CO−アルキル、−NR4'(CH2)pヘテロアリール、アルキル、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、アルキルアミノ、アリール、ヒドロキシアルキルアミノ、アルコキシ、アルキルチオ、−O(CH2)p[O(CH2)p]qOCH3、−C(NR4")NR4'−ベンズイミダゾリル、−C(NR4")NR4'−ベンズチアゾリル、−C(NR4")NR4'−ベンズオキサゾリル、又はヘテロアリールであり;
R4'、R4"、R5'は、独立に、H、ハロゲン、アルキル、−C(NR7)NR7'R8、−(CH2)pアリール、ハロアルキル、−(CH2)pNR7R8、−C(O)NR7R8、−N=CR7R8、−NR7C(O)R8、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
p=1〜6であり、
q=1〜6である。
【0010】
式(Ihb)において、以下の置換基が、単独又は組み合わせで好ましい置換基である。
Zは、好ましくはCR2'である。
Y'は、好ましくはNR2'である。
【0011】
好ましい実施態様によれば、Y'のNR2'におけるR2'は、好ましくは置換又は未置換ヘテロアリールである。別の好ましい実施態様によれば、Y'のNR2'におけるR2'はアリールである。さらに別の好ましい実施態様によれば、Y'のNR2'におけるR2'はベンジルである。より好ましい実施態様によれば、Y'のNR2'におけるR2'はピリミジン又はトリアジンである。別のより好ましい実施態様によれば、Y'のNR2'におけるR2'は、置換又は未置換二環式ヘテロアリールであり、より好ましくはチエノピリミジン、キナゾリン、プリン、ピラゾロピリミジン又はトリアゾルピリミジンであり、さらにより好ましくはチエノピリミジンである。
【0012】
好ましい実施態様によれば、XはSである。別の好ましい実施態様によれば、XはOである。さらに別の好ましい実施態様によれば、XはNR2'である。
【0013】
R3は、好ましくはHである。
R2aは、好ましくはアリール又はヘテロアリールであり、より好ましくはフェニルである。
【0014】
本発明はまた、サイトカイン放出の増加に関連する疾患の予防及び/又は治療のための、一般式(Ihb−2)の化合物、又は酸又は塩基との医薬的に許容されるその塩、又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体に関する。
【0015】
【化2】
【0016】
上記式(Ihb−2)中、
R3'は、置換又は未置換のヘテロアリール又はアリールであり;
Xは、NR2'、O又はSであり;
R2'は、H、アルキル、−C(O)NR7、−C(O)Re、シクロアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
R2aは、置換又は未置換のアリール又はヘテロアリールであり;
R7、R7'、R8は、独立に、H、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
Reは、独立に、H、−CN、−OH、−SH、−CO2R4'、−C(O)R4'、−SO2R4'、ーNR4'R5'、−C(O)NR7R8、−SO2−アルキル、−SO2R4'、−SO3R4'、−N=CR4R5'、−NR4'C(O)R4"、−NR4'−CO−ハロアルキル、ーNO2、−NR4'−SO2−ハロアルキル、−NR4'−SO2−アルキル、−NR4'−CO−アルキル、−NR4'−(CH2)p−ヘテロアリール、アルキル、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、アルキルアミノ、アリール、ヒドロキシアルキルアミノ、アルコキシ、アルキルチオ、−O(CH2)p[O(CH2)p]qOCH3、−C(NR4")NR4'−ベンズイミダゾリル−、−C(NR4")NR4'−ベンズチアゾリル、−C(NR4")NR4'−ベンズオキサゾリル、又はヘテロアリールであり;
R4'、R4"、R5は、独立に、H、ハロゲン、アルキル、−C(NR7)NR7'R8、−(CH2)pアリール、ハロアルキル、−(CH2)pNR7R8、−C(O)NR7R8、−N=CR7R8、−NR7C(O)R8、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
pは1〜6であり;
qは1〜6である。
【0017】
本発明はまた、サイトカイン放出の増加に関連する疾患の予防及び/又は治療のための、一般式(Ihb−3)の化合物、又は酸又は塩基との医薬的に許容されるその塩、又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体に関する。
【0018】
【化3】
【0019】
上記式(Ihb−3)中、
R3は、置換又は未置換の二環式ヘテロアリールであり;
Xは、NR2'、O又はSであり;
R2'は、H、アルキル、−C(O)NR7、−C(O)Re、シクロアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
R7、R7'、R8は、独立に、H、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
Reは、独立に、H、−CN、−OH、−SH、−CO2R4'、−C(O)R4'、−SO2R4'、−NR4'R5'、−C(O)NR7R8、−SO2−アルキル、−SO2R4'、−SO3R4'、−N=CR4'R5'、−NR4'C(O)R4"、−NR4'−CO−ハロアルキル、−NO2、−NR4'−SO2−ハロアルキル、−NR4'−SO2−アルキル、−NR4'−CO−アルキル、−NR4'(CH2)pヘテロアリール、アルキル、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、アルキルアミノ、アリール、ヒドロキシアルキルアミノ、アルコキシ、アルキルチオ、−O(CH2)p[O(CH2)p]qOCH3、−C(NR4")NR4'−ベンズイミダゾリル、−C(NR4")NR4'−ベンズチアゾリル、−C(NR4")NR4'−ベンズオキサゾリル、又はヘテロアリールであり;
R4'、R4"、R5'は、独立に、H、ハロゲン、アルキル、−C(NR7)NR7'R8、−(CH2)pアリール、ハロアルキル、−(CH2)pNR7R8、−C(O)NR7R8、−N=CR7R8、−NR7C(O)R8、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
p=1〜6であり、
q=1〜6である。
【0020】
本発明はまた、サイトカイン放出の増加に関連する疾患の予防及び/又は治療のための、一般式(Ihb−4)の化合物、又は酸又は塩基との医薬的に許容されるその塩、又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体に関する。
【0021】
【化4】
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】化合物、例えば化合物4(濃度10μM)は、CD3/CD28で刺激されたマウス脾細胞における関連あるサイトカイン産生を阻害する。測定された全てのサイトカインは、24時間後に完全に阻害され、48時間後、大半のサイトカインの分泌は、DMSOコントロールの90%超と比較して非常に低下した。
【図2】IL−1ベータで刺激されたヒトPBMCにおいて、IL−6(図2A)及びIL−8(図2B)様サイトカインの分泌は、化合物4(cpd)用量依存的にブロックされる。
【図3】ODN2216で刺激されたヒトPBMCにおいて、IL−8(図3A)及びIFN−ガンマ(図3B)様サイトカインの分泌は、化合物4(cpd)用量依存的にブロックされる。
【図4】ODN1668で刺激されたヒトPBMCにおいて、IL−6(図4A)及びIL−8(図4B)様サイトカインの分泌は、化合物4(cpd)用量依存的にブロックされる。
【図5A−C】CL075で刺激されたヒトPBMCにおいて、IL−1ベータ(図5A)、IL−6(図5B)及びIL−8(図5C)様サイトカインの分泌は、化合物4(cpd)用量依存的にブロックされる。
【図5D−E】CL075で刺激されたヒトPBMCにおいて、IFN−ガンマ(図5D)及びTNF−アルファ(図5E)様サイトカインの分泌は、化合物4(cpd)用量依存的にブロックされる。
【図6】TNF−アルファで刺激されたヒトPBMCにおいて、IL−1ベータ(図6A)、IL−6(図6B)及びIL−8(図6C)様サイトカインの分泌は、化合物4(cpd)用量依存的にブロックされる。
【図7A−C】LPSで刺激されたヒトPBMCにおいて、IL−8(図7A)、IL−1ベータ(図7B)及びINF−ガンマ(図7C)様サイトカインの分泌は、化合物4(cpd)用量依存的にブロックされる。
【図7D−F】LPSで刺激されたヒトPBMCにおいて、TNF−アルファ(図7D)、IL−10(図7E)及びIL−6(図7F)様サイトカインの分泌は、化合物4(cpd)用量依存的にブロックされる。
【図8A−C】PHAで刺激されたヒトPBMCにおいて、IL−1ベータ(図8A)、IL−6(図8B)及びIL−2INF−ガンマ(図8C)様サイトカインの分泌は、化合物4(cpd)用量依存的にブロックされる。
【図8D−F】PHAで刺激されたヒトPBMCにおいて、IL−8(図8D)、IL−10(図8E)及びIL−12p70(図8F)様サイトカインの分泌は、化合物4(cpd)用量依存的にブロックされる。
【図8G−H】PHAで刺激されたヒトPBMCにおいて、INF−ガンマ(図8G)及びTNF−アルファ(図8H)様サイトカインの分泌は、化合物4(cpd)用量依存的にブロックされる。
【図9A−B】サイトカインの放出における化合物4の様々な濃度の影響を、刺激後48時間で測定した。PHAでの刺激後、IL−6(図9A)及びTNF−アルファ(図9B)分泌は、それぞれ0.2μM及び7.9μMのEC50値で、化合物4により阻害された。
【図9C】サイトカインの放出における化合物4の様々な濃度の影響を、刺激後48時間で測定した。PHAでの刺激後、INF−ガンマ(図9C)分泌は、9.0μMのEC50値で、化合物4により阻害された。
【図10A−B】サイトカインの放出における化合物4の様々な濃度の影響を、刺激後48時間で測定した。LPSでの刺激後、IL−6(図10A)及びTNF−アルファ(図10B)分泌は、それぞれ0.6μM及び12.6μMのEC50値で、化合物4により阻害された。
【図11】H5N1型特異的核酸及びIL−6及びIP−10のmRNAの産生阻害を、化合物4の存在下又は不存在下で、インフルエンザウイルス(H5N1)感染マウス由来の肺組織において解析した。化合物4葉、感染マウスの肺におけるH5N1特異的mRNA(図11A)の発現を低減させ、IL−6(図11B)及びIP−10(図11C)の転写も低減させた。
【図12】ウイルス増殖に対する化合物の抗ウイルス効果の解析。感染A549細胞におけるインフルエンザAウイルスのウイルス力価は、5μMの化合物4(KH1)と比較して、それぞれ4log単位(H5N1−株)及び5log単位(Fowl Plaqueウイルス、H7N7−株)減少する。H5N1:化合物4(KH1)の異なる濃度の未処理コントロールに関して、ウイルス力価の対数表記で示される。
【図13】ウイルス増殖に対する抗ウイルス効果の解析。感染A549細胞におけるインフルエンザAウイルスのウイルス力価は、5μMの化合物4(KH1)と比較して、それぞれ4log単位(H5N1−株)及び5log単位(Fowl Plaqueウイルス、H7N7−株)減少する。H7N7:化合物4(KH1)の異なる濃度の未処理コントロールに関して、ウイルス力価の対数表記で示される。
【図14】化合物4での処理後の細胞生存能力の決定。A549細胞をウイルスの不存在下、5μMの化合物4(KH1)で処理した。細胞生存率を、MTT染色で推定した。試験した96時間の時間範囲にわたって、細胞生存能力(%Zelluberleben)は、DMSO処理細胞(DMSO)及び未処理細胞(unbeh)で処理した細胞と、化合物4(KH1)で処理した細胞で同じであり、これは本発明の化合物が当該細胞に毒性効果を発揮しないことを実証するものである。
【図15】耐性現象の検出のための多継代実験。化合物4(KH1;5μM)、アマンタジン(5μM)、及びオセルタミビル(2μM)ウイルス、未処理コントロールを、耐性現象の検出のための多継代実験で試験した。アマンタジン及びオセルタミビルとは対照的に、化合物4は、5細胞継代サイクル後に、耐性メカニズム(図15A)及びウイルス耐性(図15B)の誘導を示さない(2つの独立した実験により示される)。
【図16】H7N7でのインフルエンザマウスモデル。0日目に、マウスをインフルエンザ株H7N7のLD50で感染させた。同日に、毎日i.p.による15 mg/kgの化合物4での処置を開始した。8日目に処置を停止し、14日目に実験を終結させた。この実験の結果は、動物の半分が死亡したコントロール群と比較して、感染マウスの完全な保護を示した(p<0.05)。
【図17】0日目に、マウスをインフルエンザ株H7N7のLD50で感染させた。同日に、毎日i.p.による15 mg/kgの化合物4での処置を開始した。4日目に処置を停止し、14日目に実験を終結させた。この実験の結果は、化合物4を5 mg/kg以上の用量で投与した場合、マウスの有意な保護を示した(p<0.05)。この結果は、それぞれ2 mg/kg(図17A)、5 mg/kg(図17B)及び10 mg/kg(図17C)の用量での結果を示す。
【図18】H5N1でのインフルエンザマウスモデル。0日目に、マウスをインフルエンザ株H5N1のLD50で感染させた。同日に、i.p.による一日2回の7.5 mg/kgの化合物4での処置を開始した。10日目に処置を停止し、14日目に実験を終結させた。この実験の結果は、感染マウスの有意な保護を示した(p<0.05)。
【図19】0日目に、マウスをインフルエンザ株H5N1のLD50で感染させた。4日目に、idで7.5 mg/kgの化合物4(図19A)及び毎日i.p.で15 mg/kgの化合物4(図19B)での処置を開始した。10日目に処置を停止し、14日目に実験を終結させた。この実験の結果は、感染マウスの有意な保護を示した(p<0.05)。
【図20】癌細胞データ。化合物4を、血液細胞系のパネルで、その抗癌活性を試験した。それは、腫瘍感受性の優れたスコアを示した。多発性骨髄腫由来の主要な細胞系列(5個中4個)は、上記の平均的感受性であった。
【図21】癌細胞データ。化合物4を、血液細胞系のパネルで、その抗癌活性を試験した。それは、腫瘍感受性の優れたスコアを示した。多発性骨髄腫由来の主要な細胞系列(5個中4個)は、上記の平均的感受性であった。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明によると、
アルキル基は、特に断りのない限り、直鎖又は分岐鎖のC1−C6−アルキル、好ましくは直鎖又は分岐鎖の1〜5個の炭素原子、直鎖又は分岐鎖のC2−C6−アルケニル又は直鎖又は分岐鎖のC2−C6−アルキニル基で、これらを、1又は複数の置換基R'で任意に置換することができ、
C1−C6−アルキル、C2−C6−アルケニル及びC2−C6−アルキニル残基は、−CH3、−C2H5、−CH=CH2、−C≡CH、−C3H7、−CH(CH3)2、−CH2−CH=CH2、−C(CH3)=CH2、−CH=CH−CH3、−C≡C−CH3、−CH2−C≡CH、−C4H9、−CH(CH3)−C2H5、−C(CH3)3、−C5H11、−C6H13、−C(R')3、−C2(R')5、−CH2−(R')3、−C3(R')7、−C2H4−C(R')3、−C2H4−CH=CH2、−CH=CH−C2H5、−CH=C(CH3)2、−CH2−CH=CH−CH3、−CH=CH−CH=CH2、−C2H4−C≡CH、−C≡C−C2H5、−CH2−C≡C−CH3、−C≡C−CH=CH2、−CH=CH−C≡CH、−C≡C−C≡CH、−C2H4−CH(CH3)2、−CH(CH3)−C3H7、−CH2−CH(CH3)−C2H5、−CH(CH3)−CH(CH3)2、−C(CH3)2−C2H5、−CH2−C(CH3)3、−C3H6−CH=CH2、−CH=CH−C3H7、−C2H4−CH=CH−CH3、−CH2−CH=CH−C2H5、−CH2−CH=CH−CH=CH2、−CH=CH−CH=CH−CH3、−CH=CH−CH2−CH=CH2、−C(CH3)=CH−CH=CH2、−CH=C(CH3)−CH=CH2、−CH=CH−C(CH3)=CH2、−CH2−CH=C(CH3)2、C(CH3)=C(CH3)2、−C3H6−C=CH、−C≡C−C3H7、−C2H4−C≡C−CH3、−CH2−C≡C−C2H5、−CH2−C≡C−CH=CH2、−CH2−CH=CH−C≡CH、−CH2−C≡C−C=CH、−C≡C−CH=CH−CH3、−CH=CH−C≡C−CH3、−C≡C−C≡C−CH3、−C≡C−CH2−CH=CH2、−CH=CH−CH2−C≡CH、−C≡C−CH2−C≡CH、−C(CH3)=CH−CH=CH2、−CH=C(CH3)−CH=CH2、−CH=CH−C(CH3)=CH2、−C(CH3)=CH−C≡CH、−CH=C(CH3)−C≡CH、−C≡C−C(CH3)=CH2、−C3H6−CH(CH3)2、−C2H4−CH(CH3)−C2H5、−CH(CH3)−C4H9、−CH2−CH(CH3)−C3H7、−CH(CH3)−CH2−CH(CH3)2、−CH(CH3)−CH(CH3)−C2H5、−CH2−CH(CH3)−CH(CH3)2、−CH2−C(CH3)2−C2H5、−C(CH3)2−C3H7、−C(CH3)2−CH(CH3)2、−C2H4−C(CH3)3、−CH(CH3)−C(CH3)3、−C4H8−CH=CH2、−CH=CH−C4H9、−C3H6−CH=CH−CH3、−CH2−CH=CH−C3H7、−C2H4−CH=CH−C2H5、−CH2−C(CH3)=C(CH3)2、−C2H4−CH=C(CH3)2、−C4H8−C≡CH、−C≡C−C4H9、−C3H6−C≡C−CH3、−CH2−C≡C−C3H7、−C2H4−C≡C−C2H5からなる群から選択されてもよく;
R'は、独立に、H、−CO2R''、−CONHR''、−CR''O、−SO2NR''、−NR''−CO−ハロアルキル、−NO2、−NR''−SO2−ハロアルキル、−NR''−SO2−アルキル、−SO2−アルキル、−NR''−CO−アルキル、−CN、アルキル、シクロアルキル、アルキルアミノ、アルコキシ、−OH、−SH、アルキルチオ、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルキルオキシ、アリール、又はへテロアリールであり;
R''は、独立に、H、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり;
シクロアルキル基は、炭素原子を3〜8個、好ましくは4〜8個含有する非芳香族環系のことを言い、ここで環中の1又は複数の炭素原子は、基Eにより置換することができ、ここでEは、O、S、SO、SO2、N、又はNR''であり、R''は、上記の定義の通りであり;C3−C8−シクロアルキル残基は、−シクロ−C3H5、−シクロ−C4H7、−シクロ−C5H9、−シクロ−C6H11、−シクロ−C7H13、−シクロ−C8H15、モルホリン−4−イル、ピペラジニル、1−アルキルピペラジン−4−イルから選択され;
アルコキシ基は、O−アルキル基のことを言い、該アルキル基は上記の定義の通りであり、該アルコキシ基は、好ましくはメトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ又はペントキシ基であり;
アルキルチオ基は、S−アルキル基のことを言い、該アルキルは上記の定義の通りであり;
ハロアルキル基は、1〜5個のハロゲン原子で置換されるアルキル基のことを言い、該アルキル基は、上記の定義の通りであり;該ハロアルキル基は、好ましくは、−C(R10)3、−CR10(R10')2、−CR10(R10')R10"、−C2(R10)5、−CH2−C(R10)3、−CH2−CR10(R10')2、−CH2−CR10(R10')R10"、−C3(R10)7、又は−C2H4−C(R10)3、であり、ここでR10、R10'、R10"はF、Cl、Br又はIであり、好ましくはFである。
ヒドロキシアルキル基は、HO−アルキル基のことを言い、該アルキル基は上記の定義の通りであり;
ハロアルコキシ基は、1〜5個のハロゲン原子で置換されるアルコキシ基のことを言い、該アルキル基は、上記の定義の通りであり;該ハロアルキルオキシ基は、好ましくは、−OC(R10)3、−OCR10(R10')2、−OCR10(R10')R10"、−OC2(R10)5、−OCH2−C(R10)3、−OCH2−CR10(R10')2、−OCH2−CR10(R10')R10"、−OC3(R10)7又は−OC2H4−C(R10)3であり、ここでR10、R10'、R10"はF、Cl、Br又はIであり、好ましくはFであり;
ヒドロキシアルキルアミノ基は、(HO−アルキル)2−N−基又はHO−アルキル−NH−基のことを言い、該アルキル基は上記の定義の通りであり;
アルキルアミノ基は、HN−アルキル又はN−ジアルキル基のことを言い、該アルキル基は、上記の定義の通りであり;
ハロゲン基は、塩素、臭素、フッ素又はヨウ素であり;
アリール基は、5〜15個の炭素原子を有する芳香族の基であり、これは1又は複数の置換基R'で任意に置換することができ、ここでR'は、上記の定義の通りであり;該アリール基は、好ましくは、ベンジル基、フェニル基、−o−C6H4−R'、−m−C6H4−R'、−p−C6H4−R'、1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントラセニル、又は2−アントラセニルであり;
ヘテロアリール基は、O、N、及びSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、5−又は6−員のヘテロシクリル基のことを言う。このヘテロシクリル基は、別の芳香環と融合することができる。例えば、この基は、チアゾロール、チアゾル−2−イル、チアゾル−4−イル、チアゾル−5−イル、イソチアゾル−3−イル、イソチアゾル−4−イル、イソチアゾル−5−イル、オキサゾル−2−イル、オキサゾル−4−イル、オキサゾル−5−イル、イソオキサゾル−3−イル、イソオキサゾル−4−イル、イソオキサゾル−5−イル、ベンゾオキサゾル−2−イル、ベンゾオキサゾル−4−イル、ベンゾオキサゾル−5−イル、ベンゾイソオキサゾル−3−イル、ベンゾイソオキサゾル−4−イル、ベンゾイソオキサゾル−5−イル、1,2,4−オキサジアゾル−3−イル、1,2,4−オキサジアゾル−5−イル、1,2,5−オキサジアゾル−3−イル、1,2,5−オキサジアゾル−4−イル、1,2,4−チアジアゾル−3−イル、1,2,4−チアジアゾル−5−イル、イソチアゾル−3−イル、イソチアゾル−4−イル、イソチアゾル−5−イル、ベンゾイソチアゾル−3−イル、ベンゾイソチアゾル−4−イル、ベンゾイソチアゾル−5−イル、1,2,5−チアジアゾル−3−イル、1−イミダゾリル、2−イミダゾリル、1,2,5−チアジアゾル−4−イル、4−イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル−4−イル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、2−フラニル、3−フラニル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジニル、3−ピリジニル、4−ピリジル、2−ピラニル、3−ピラニル、4−ピラニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、6−ピリミジニル、2,4−ジメトキシ−6−ピリミジニル、3−ピリダジニル、4−ピリダジニル、2−ピラジニル、1−ピラゾリル、3−ピラゾリル、4−ピラゾリル、1,2,3−トリアゾル−4−イル、1,2,3−トリアゾル−5−イル、1,2,4−トリアゾル−3−イル、1,2,4−トリアゾル−5−イル、1,3,5−トリアゾル−6−イル、2,4−ジメトキシ−1,3,5−トリアゾル−6−イル、1H−テトラゾル−2−イル、1H−テトラゾル−3−イル、テトラゾリル、アクリジル、フラザン、インダゾリル、フェナジニル、カルバゾリル、フェノキサジニル、インドリジン、2−インドリル、3−インドリル、4−インドリル、5−インドリル、6−インドリル、7−インドリル、1−イソインドリル、3−イソインドリル、4−イソインドリル、5−イソインドリル、6−イソインドリル、7−イソインドリル、2−インドリニル、3−インドリニル、4−インドリニル、5−インドリニル、6−インドリニル、7−インドリニル、ベンゾ[b]フラニル、ベンゾフラザン、ベンゾチオフラザン、ベンゾトリアゾル−1−イル、ベンゾトリアゾル−4−イル、ベンゾトリアゾル−5−イル、ベンゾトリアゾル−6−イル、ベンゾトリアゾル−7−イル、ベンゾトリアジン、ベンゾ[b]チオフェニル、ベンズイミダゾル−2−イル、1H−ベンズイミダゾリル、ベンズイミダゾル−4−イル、ベンズイミダゾル−5−イル、ベンズイミダゾル−6−イル、ベンズイミダゾル−7−イル、ベンゾチアゾリル、キナゾリニル、キノキサゾリニル、シンノリン、キノリニル、テトラヒドロキノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロ−イソキノリニル、プリン、フタラジン、プテリジン、チアテトラアザインデン、チアトリアザインデン、イソチアゾロピラジン、イソチアゾロピリミジン、ピラゾロトリアジン、ピラゾロピリミジン、テトラ−ヒドロチエノ[3,4−d]イミダゾル−2−オン、ピラゾロ[5,1−c][1,2,4]トリアジン、2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]−ジオキシン−2−イル、2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]−ジオキシン−3−イル、2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]−ジオキシン−5−イル、2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]−ジオキシン−6−イル、2,6−ジメトキシピリミジン−3−イル、2,6−ジメトキシピリミジン−4−イル、イミダゾピリダジン、イミダゾピリミジン、イミダゾピリジン、イミダゾロトリアジン、トリアゾロトリアジン、トリアゾロピリジン、トリアゾロピラジン、トリアゾロピリミジン、又は4−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イル、1−フロ[2,3−c]ピリジン−4−イル、1−フロ[2,3−c]ピリジン−5−イル、1−フロ[2,3−c]ピリジン−3−イル、及びトリアゾロピリダジン基から選択できる。このヘテロシクロ基は、1又は複数のR'で置換でき、ここでR'は上記の定義の通りである。
【0024】
式(Ihb)の化合物は、様々な方法により得てもよい。
【0025】
ピペリジン−4イル−チアゾール−4−カルボキサミドを、文献に記載される様々な方法により調製することができる。ある例は、Houben-Weyl, 2002, 730に記載の通りに、適切な2,5−ジヒドロチアゾールの酸化である。該ジヒドロチアゾールを、同じ参考文献又はYou, S., Razavi, Η., Kelly, J.W. Angew. Chem, 2003, 115, 87又はKatritzky, AR., Cai, C, Suzuki, K., Singh, SK. J. Org. Chem. 2004, 69, 811-814及び両方の論文の参考文献に記載の方法により合成することもできる。別法としては、Yasuchika, S. et. al. Heterocycles, Vol. 57, No. 5, 2002に記載のものがある。チアゾール環の2位にピペラジン−4−イル置換基を保有する、本発明の化合物は、例えば、以下のスキームに示すように調製することができる。この合成経路は、部分的に国際公開第2004/058750号に記載されている。
【0026】
【化5】
【0027】
2−(1−(tert−ブトキシカルボニル)ピペラジン−4−イル)チアゾール−4−カルボン酸を、DMF中、HBTU、DIPEAとカップリングすることにより適切なR1アミドに変換できる。異なるR'−アミンは、市販品であるか、又は容易に合成して得る。標準的な条件下、例えば、0℃、2〜3時間のTFAでの処理、又は2〜3時間の4N HClでの処理により、Boc保護基を除去できる。その後、脱保護ピペリジン誘導体HCl塩を、以下の対応するアミド、尿素及びN−ヘテロシクロ類似体に変換できる。
【0028】
尿素置換ピペリジン化合物は、DIPEAの存在下、市販のイソシアネートとカップリングすることにより合成できる。ヘテロ環で置換されたピペリジン化合物を、標準的方法、例えば、塩基の存在下、対応するクロロへテロサイクルでカップリングする等の方法により合成できる。あるいは、ヘテロサイクルで置換されたピペリジン化合物を、パラジウム媒介クロスカップリングにより得ることができる。さらに別法として、ヒドロキシピリジン誘導体を、HBTUカップリング法によりピペリジン化合物とカップリングできる。
【0029】
チアゾール環の2位にピペリジン−4−イル置換基を有する、本発明の化合物への別の経路を、以下のスキームに示す。
【0030】
【化6】
【0031】
標準的な条件下、例えば、0℃、2〜3時間のTFAでの処理、又は2〜3時間の4N HClでの処理により、Boc保護基を除去できる。その後、脱保護ピペリジン誘導体HCl塩を、上記の様々な方法により対応するN−ヘテロシクロ類似体に変換できる。
【0032】
上記の式(Ihb)の化合物について、「立体異性体」なる用語は、シス/トランス又はE/Z異性を意味する。より具体的には、本発明の化合物の様々な置換基に存在する可能性ある二重結合は、E又はZ配置をとることができる。この純粋又は不純な幾何異性体は、単独で又は混合物として、式(Ihb)の化合物の必須部分を形成する。「立体異性体」なる用語は、単独又は混合物としての全ての異性体であり、当該分子において、1又は複数の対象軸及び/又は中心が存在することにより、偏光ビームが回転する。より具体的には、純粋型又は混合物としてのエナンチオマー及びジアステレオマーがある。
【0033】
本発明で使用される式(Ihb)の化合物は、無機又は有機の酸又は塩基で塩を形成できる。医薬的に許容される塩の例には、限定のない、非毒性の無機又は有機の塩、例えば、酢酸由来の酢酸誘導体、アコニット酸由来のアコニット誘導体、アスコルビン酸由来のアスコルビン酸誘導体、安息香酸由来の安息香酸誘導体、ケイ酸由来のケイ酸誘導体、クエン酸由来のクエン酸誘導体、エンボン酸由来のエンボン酸誘導体、ヘプタン酸由来のエナンテート(enantate)、ギ酸由来のギ酸誘導体、フマル酸由来のフマル酸誘導体、グルタミン酸由来のグルタミン誘導体、グリコール酸由来のグリコール酸誘導体、乳酸由来の乳酸誘導体、マレイン酸由誘導体、来のマレイン酸誘導体、マロン酸由来のマロン酸誘導体、マンデル酸由来のマンデル酸、メタンスルホン酸由来のメタンスルホン酸誘導体、ナフタリン−2−スルホン酸由来のナフタリン−2−スルホン酸誘導体、硝酸由来の硝酸誘導体、過塩素酸由来の過塩素酸誘導体、リン酸由来のリン酸誘導体、フタル酸由来のフタル酸誘導体、サリチル酸由来のサリチル酸誘導体、ソルビン酸由来のソルビン酸誘導体、ステアリン酸由来のステアリン酸誘導体、コハク酸由来のコハク酸誘導体、硫酸由来の硫酸誘導体、酒石酸由来の酒石酸誘導体、p−トルエン−スルホン酸由来のトルエン−p−スルホン酸誘導体等がある。当該塩は、当業者に既知又は従来技術に記載の方法で作製できる。
【0034】
医薬的に許容されると考えられない、シュウ酸由来のシュウ酸塩のような他の塩が、式(Ihb)の化合物の製造のための中間体又はその医薬的に許容される塩、又はその医薬的に許容されるプロドラッグ又は立体異性体として適切である可能性がある。
【0035】
本発明は、上記の通り医薬的に許容される塩を含むが、キラルアミンと共に得られる塩等、式(Ihb)の化合物の好適な分離又は結晶化をさせる塩も含む。
【0036】
上記式(Ihb)の化合物は、これらの化合物のプロドラッグも含んでなる。本明細書で使用される「プロドラッグ」なる用語は、それ自身は医薬的に活性でははいが(「プロドラッグ」)、患者に投与されると、インビボ(in vivo)で、すなわち化合物が投与される対象において、その医薬的活性状態(式(Ihb)の化合物)に、化学的及び/又は生物学的に変換する化合物のことを言う。プロドラッグには、例えば、本発明の化合物であって、患者に投与されると、ヒドロキシ、アミン又はスルフヒドリル基が、ヒドロキシ、アミン又はスルフヒドリル基で開裂する任意の基に結合する化合物がある。すなわち、プロドラッグの代表的な例には、限定するものではないが、本発明の化合物の、アルコール、スルフヒドリル及びアミン官能基の、酢酸、ギ酸及び安息香酸誘導体がある。さらに、カルボン酸(−COOH)の場合、メチルエステル、エチルエステル、ダブルエステル等のエステルを使用してもよい。エステルは、独自に活性があっても、及び/又は人体中のインビボ条件下で加水分解性があってもよい。
【0037】
本発明の「治療」は、疾患の完全又は部分的な治癒、又は疾患の回復、又は所与の疾患の進行の停止を意味する。
【0038】
本発明の化合物は、ウイルスにより引き起こされる感染性疾患、例えば哺乳類、例えばヒトにおける日和見性感染症の予防及び/又は治療に使用できる。当該方法は、ある量の一般式(Ihb)の少なくとも1つの化合物を、該哺乳類に投与することを含んでなる。本発明の化合物及びそれが調製される医薬品は、インフルエンザウイルス感染、より具体的にはインフルエンザAウイルス感染により引き起こされる疾患の治療に特に有用である。
【0039】
インフルエンザ感染後に、細胞は、体から侵入病原を除去するための防御メカニズムとしてNF−κBシグナル伝達経路のスイッチを入れる。ヒト環境に適合した、他の多数のウイルスと同様に、インフルエンザウイルスは、免疫系を回避するため、増殖のためのこの経路を使用する。
【0040】
本発明の化合物を、ウイルス感染、特にH1N1、H5N1、H2N2、又はH3N2等のインフルエンザAウイルスサブタイプへの感染の、NF−κBを阻害することによる治療に使用できる。この細胞経路への侵入は、疾患の過程において少なくとも2つの正の影響を与えることになる。NF−κBシグナル伝達経路の阻害は、ウイルスのさらなる複製を妨害し、それを感染細胞に限定し、治療される人の体内の疾患拡散及びウイルスに細胞を離れさせないことにより他の人々への疾患の伝染を停止させる。さらにサイトカイン放出の阻害は、過活動性免疫系の悪影響の低減及び「サイトカインストーム」のブロックにより感染した患者の症状を回復させるべきである。本文脈における「サイトカインストーム」は、ほとんど完全に免疫系を異常調節するサイトカインの増加が特徴である。サイトカイン放出の増加には、免疫系の異常調節の存在下及び不存在下でのサイトカイン放出の増加があり、ここで免疫系の異常調節の存在下でのサイトカイン放出の増加もサイトカインストームと呼ばれる。第三の態様は、抗ウイルス医薬の使用法による耐性の発生である。現在、アマンタジン、タミフル及びリレンザ様の利用可能な抗インフルエンザ薬物がタンパク質をコードする。ウイルスゲノムの変異率が高いために、これらの薬物により作られる選択圧が、新規で、より適合し、且つ薬物耐性のあるウイルスクレードの出現をもたらす。ウイルス増殖に必須な宿主タンパク質及び経路を標的とし、侵入する生物により乗っ取ることは、当該ウイルスへの直接的選択圧を回避する新規で前例のないアプローチである。NF−κBを標的とする薬物では、薬物標的がウイルス因子ではなく細胞起源であるために、当該薬物への耐性は発生しないことが期待される。すなわち、当該ウイルスは、単純な変異又は遺伝子交換による当該新規な医薬への適合ができなくなり、その結果耐性形成が阻止される。すなわち、本発明による化合物は、薬物耐性ウイルス変異体の出現に有利に働かないはずである。さらに、選択されたサイトカイン、特にインフルエンザウイルス複製への阻害効果が既に示されているインターフェロンの応用と、本処置との組み合わせが可能なはずである。サイトカインの過産生を下方制御し、同時に、疾患の発生に改善する影響を示す選択されたサイトカインを提供することが可能になるはずである。
【0041】
すなわち、ある実施態様によれば、本発明は、哺乳類、特にヒトにおけるサイトカイン増加に関連する疾患の予防及び/又は治療のための医薬における使用のための、所望の場合は適切なアジュバント及び添加剤との、式(Ihb)の化合物、又は医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体の使用に関する。
【0042】
異常調節されたサイトカイン放出に関連する疾患は、例えば、移植変対宿主病(GVHD)、成人呼吸促進症候群(ARDS)、敗血症及び毒物ショック症候群、天然痘、全身性炎症反応症候群(SIRS)、重特性急性呼吸症候群(SARS)、炭疽感染、デング出血熱/デングショック症候群、喘息及び枯草熱、及び2型糖尿病及びメタボリックシンドロームであり、ここでもサイトカインの放出が異常調節される。
すなわち、本発明の化合物は、上記の疾患の予防及び/又は治療のために使用される。
【0043】
好ましい実施態様よれば、本発明は、ウイルス感染により引き起こされる疾患の予防及び/又は治療のための医薬における使用のための、所望の場合は適切なアジュバント及び添加剤との、式(Ihb)の化合物、又は医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体の使用に関する。
【0044】
従って、より好ましい実施態様によれば、本発明は、インフルエンザウイルス感染、特にインフルエンザAウイルス感染により引き起こされる疾患の予防及び/又は治療のための医薬における使用のための、所望の場合は適切なアジュバント及び添加剤との、式(Ihb)の化合物、又は医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体の使用に関する。
【0045】
別のさらにより好ましい実施態様によれば、本発明は、インフルエンザウイルス感染、特にサイトカイン放出の増加に関連するインフルエンザウイルス感染に関連する疾患の予防及び/又は治療のための医薬における使用のための、所望の場合は適切なアジュバント及び添加剤との、式(Ihb−2)の化合物、又は医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体の使用に関する。式(Ihb−2)の化合物は、サイトカインストームに関連するインフルエンザウイルス感染に関連する疾患の予防及び/又は治療のために特に有用である。
【0046】
別のさらにより好ましい実施態様によれば、本発明は、インフルエンザウイルス感染、特にサイトカイン放出の増加に関連するインフルエンザウイルス感染に関連する疾患の予防及び/又は治療のための医薬における使用のための、所望の場合は適切なアジュバント及び添加剤との、式(Ihb−3)の化合物、又は医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体の使用に関する。式(Ihb−3)の化合物は、サイトカインストームに関連するインフルエンザウイルス感染に関連する疾患の予防及び/又は治療のために特に有用である。
【0047】
別のさらにより好ましい実施態様によれば、本発明は、インフルエンザウイルス感染、特にサイトカイン放出の増加に関連するインフルエンザウイルス感染に関連する疾患の予防及び/又は治療のための医薬における使用のための、所望の場合は適切なアジュバント及び添加剤との、式(Ihb−4)の化合物、又は医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体の使用に関する。式(Ihb−4)の化合物は、サイトカインストームに関連するインフルエンザウイルス感染に関連する疾患の予防及び/又は治療のために特に有用である。
【0048】
さらにより好ましい実施態様によれば、本発明は、トリインフルエンザの予防及び/又は治療のための医薬における使用のための、所望の場合は適切なアジュバント及び添加剤との、式(Ihb)の化合物、又は医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体の使用に関する。
【0049】
さらにより好ましい実施態様によれば、本発明は、トリインフルエンザの予防及び/又は治療のための医薬における使用のための、所望の場合は適切なアジュバント及び添加剤との、式(Ihb−2)の化合物、又は医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体の使用に関する。
【0050】
さらにより好ましい実施態様によれば、本発明は、トリインフルエンザの予防及び/又は治療のための医薬における使用のための、所望の場合は適切なアジュバント及び添加剤との、式(Ihb−3)の化合物、又は医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体の使用に関する。
【0051】
さらにより好ましい実施態様によれば、本発明は、トリインフルエンザの予防及び/又は治療のための医薬における使用のための、所望の場合は適切なアジュバント及び添加剤との、式(Ihb−4)の化合物、又は医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体の使用に関する。
【0052】
本発明の化合物は、インフルエンザサブタイプH1N1、H5N1、H3N2及びH2N2の1又は複数への感染に関連する疾患の予防及び/又は治療における使用に非常に適する。
【0053】
別のさらにより好ましい実施態様によれば、本発明は、例えばインフルエンザサブタイプH1N1、H5N1、H3N2及びH2N2により引き起こされる、トリインフルエンザの予防及び/又は治療のための医薬における使用のための、所望の場合は適切なアジュバント及び添加剤との、式(Ihb)の化合物、又は医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体の使用に関する。
【0054】
別のさらにより好ましい実施態様によれば、本発明は、例えばインフルエンザサブタイプH1N1、H5N1、H3N2及びH2N2により引き起こされる、トリインフルエンザの予防及び/又は治療のための医薬における使用のための、所望の場合は適切なアジュバント及び添加剤との、式(Ihb−2)の化合物、又は医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体の使用に関する。
【0055】
別のさらにより好ましい実施態様によれば、本発明は、例えばインフルエンザサブタイプH1N1、H5N1、H3N2及びH2N2により引き起こされる、トリインフルエンザの予防及び/又は治療のための医薬における使用のための、所望の場合は適切なアジュバント及び添加剤との、式(Ihb−3)の化合物、又は医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体の使用に関する。
【0056】
別のさらにより好ましい実施態様によれば、本発明は、例えばインフルエンザサブタイプH1N1、H5N1、H3N2及びH2N2により引き起こされる、トリインフルエンザの予防及び/又は治療のための医薬における使用のための、所望の場合は適切なアジュバント及び添加剤との、式(Ihb−4)の化合物、又は医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体の使用に関する。
【0057】
発明の化合物、特に特定化合物Ihb−4は、1)非常に強力なNF−κB受容体遺伝子アッセイ阻害剤であり(IC50が100 nm範囲内);2)非毒性であり;3)ヒトリンパ球及びマウスT細胞増殖を阻害し;4)サイトカイン放出を実際に阻害し;5)宿主細胞生物能力を維持する間、インフルエンザウイルス複製を阻害し;ウイルス耐性を誘導せず;及びINF−αとの組み合わせで使用する場合、相乗的な抗ウイルス効果を有し;6)インフルエンザマウスモデルにおけるインビボ(in vivo)での有効性を示し;及び7)多数のヒトガン細胞系、特に多発性骨髄腫に対する活性を示す。
【0058】
本明細書に記載の通り、トリインフルエンザは、インフルエンザAウイルスサブタイプ、特にインフルエンザAサブタイプH5N1、H1N1(スペイン風邪)、H2N2(アジア風邪)及びH3N2(ホンコン風邪)により引き起こされる。上記の全てのインフルエンザ型は、サイトカイン放出の増加に関連する。本発明の主題は、感染した人の体内におけるサイトカイン放出の増加を引き起こすインフルエンザ型における、式(Ihb)の化合物又は医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体の使用である。
【0059】
さらに、本発明は、式(Ihb)の化合物又は医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又はその立体異性体の、有効量を投与することを含んでなる、疾患の治療又は予防に関する。
【0060】
本発明はまた、式(Ihb)の化合物を、遊離状態又は医薬的に許容される塩及び医薬的に許容されるプロドラッグの状態で、医薬的に許容される希釈剤又はその担体と共に含んでなる、医薬組成物を提供する。
【0061】
式(Ihb)の化合物及びその医薬的に許容される塩を、動物、好ましくは哺乳類に、特にヒトに、治療物そのものとして、別の物との混合物として、又は腸内又は非経口使用が可能で、且つ式(Ihb)の化合物又はその塩の少なくとも1つの有効量を、慣習的な医薬的に無害な賦形剤及び添加剤に加えて活性成分として含有する、医薬製剤の状態で投与できる。式(Ihb)の化合物はまた、生理学的に許容される酸及び塩基と、それぞれの当該化合物を反応させることにより得ることができる塩の状態で投与することができる。
【0062】
本発明に係る式(Ihb)の化合物を含有する医薬及び応用物の製造は、周知の医薬的方法により行うことができる。
【0063】
治療における使用のための本発明に係る式(Ihb)の化合物を、未処理の化学化合物の状態で投与してもよいが、1又は複数のアジュバント、賦形剤、担体、緩衝剤、希釈剤及び/又の従来的な医薬補剤と共に、医薬組成物に、活性成分を任意に生理学的に許容される塩の状態で導入することが好ましい。当該化合物の塩は、無水物又は溶媒和物であってもよい。
【0064】
好ましい実施態様によれば、本発明は、本発明に係る式(Ihb)の化合物、その医薬的に許容される塩又は医薬的に許容されるプロドラッグ、又は立体異性体を、1又は複数の医薬的に許容されるその担体、及び任意に他の医薬的及び/又は生理学的成分と共に含んでなる医薬を提供する。担体は、製剤の他の成分と適合し、その受容者に無害であるという意味で、「許容され」なければならない。
【0065】
本発明の医薬は、経口、経直腸、経気管支、経鼻、局所、経頬、舌下、経皮、経膣又は非経口(例えば、皮膚、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、動脈内、大脳内、眼球内の注射又は注入)投与に適するもの、又は吸入又は吹送による投与、例えば粉末及び液体エアロゾル投与、又は持続放出系による投与に適する状態のものであってもよい。持続放出系の好適な例には、本発明の化合物を含有する固形疎水性ポリマーの、例えばフィルム又はマイクロカプセル等の形成品の状態でもよい、吹送マトリクスがある。
【0066】
すなわち、本発明の化合物を、従来のアジュバント、担体、又は希釈剤と共に、医薬の状態及びその単位投薬形態にしてもよい。当該状態には、固形、及び特に錠剤、充填カプセル、粉末及びペレット状態、及び液体、特に水性又は非水性溶液、懸濁物、エマルション、エリキシル、及び同等物を充填するカプセルがあり、経口使用については全て、直腸投与については坐剤、及び非経口使用については滅菌注射溶液がある。当該医薬及びその単位投薬形態は、追加の活性化合物又は主成分の存在下又は不存在下で、従来の比率で従来の成分を含んでもよく、そして当該単位投薬形態は使用される意図する一日投薬範囲に相当する活性成分の任意の好適な有効量を含有してもよい。
【0067】
本発明に係る化合物は、様々な範囲の経口及び非経口の投薬形態で投与することができる。以下の投薬形態が、活性成分として本発明に係る式(Ihb)の化合物か、又はその医薬的に許容される塩もしくは立体異性体のいずれかを含んでもよいことは、当業者に明らかとなるはずである。
【0068】
式(Ihb)の化合物から医薬を調製するため、医薬的に許容される担体は、固体でも、液体でもよい。固体状態の製剤には、粉末、錠剤、丸薬、カプセル、カシェ剤(cachet)、坐剤、及び分散性顆粒がある。固体担体は、1又は複数の物質でもよく、希釈剤、香料、可溶化剤、流動促進剤、懸濁剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、又はカプセル化物質として機能してもよい。
【0069】
粉末において、当該担体は、微粉砕固体であり、微粉砕活性成分との混合物である。錠剤においては、当該活性成分は、好適な比率で必要な結合力を有する担体と混合され、且つ所望の形状及び大きさに圧縮される。好適な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、乳糖、ペクチン、デキストリン、スターチ、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロールナトリウム、低融点ワックス、ココアバター等である。「調製物(preparation)」なる用語には、カプセル内において、担体の存在下又は不存在下で、活性成分が担体に囲まれてそれと結合状態にあるカプセルを提供する担体としてのカプセル化物質を有する、活性化合物の製剤が含まれることが意図される。同様に、カシェ剤及びトローチ剤が含まれる。錠剤、粉末、カプセル、丸薬、カシェ剤、及びトローチを、経口投与に適する固形状態として使用できる。
【0070】
坐剤の調製では、脂肪酸グリセリド又はココアバター等の低融点ワックスが最初に溶解し、活性成分は攪拌によりそこへ均一に分散する。その後、融解した均一混合物を、一般的大きさの型に空け、冷却し、凝固させる。経膣投与に適する組成物を、活性成分に加えて、当業者が適切であると知られるような担体を含有する、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレーとして提示してもよい。液体調製物には、溶液、懸濁物、及びエマルション、例えば水又は水−プロピレングリコール溶液等がある。例えば、注射液調製物は、水性ポリエチレングリコール溶液における溶液として製剤化することができる。
【0071】
すなわち、本発明に係る式(Ihb)の化合物は、非経口投与(例えば注入、例えばボーラス注射又は持続注入)のために製剤化してもよく、アンプル、予備充填シリンジ、少量注入又は保存剤を添加したマルチ用量容器中の単位投薬形態で提供してもよい。組成物は、油性又は水性媒体中の懸濁物、溶液、又はエマルション等の形態をとってもよく、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤等の製剤化の剤を含有してもよい。あるいは、活性成分は、好適な媒体、例えば発熱物質フリーの滅菌水で使用前に組成する、滅菌固体の無菌単離又は溶液からの凍結乾燥により得られる粉末状態でもよい。
【0072】
経口使用に適する水溶液を、水中に活性成分を溶解させ、所望の好適な着色料、香料、安定化剤及び濃縮剤を添加することにより調製することができる。経口使用に適する水溶液を、天然又は合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、又はその他の周知の懸濁剤等の粘着性物質と共に、水中に微粉砕活性成分を分散させで作製することができる。
【0073】
使用直前に、経口投与のための液体状態に変換することを意図する、固体状態の調製物も含まれる。当該液体状態は、溶液、懸濁物、及びエマルションがある。これらの調製物は、活性成分に加え、着色料、香料、安定化剤、緩衝剤、人工及び天然甘味料、分散剤、濃縮剤、可溶化剤等を含んでもよい。
【0074】
本発明のある実施態様によれば、医薬を、局所的又は全身的又は2つの経路の組み合わせで投与する。
【0075】
本発明の特に好ましい実施態様によれば、医薬を局所的に投与する。これは、可能性ある副作用を低減すると共に、疾患に冒された部分に必要な治療を限定する。
【0076】
好ましくは、医薬を、軟膏、ゲル、プラスター、エマルション、ローション、フォーム、混合相又は両親媒性エマルション系(油/水−水/油混合相)のクリーム、リポソーム、伝達物質(transfersome)、ペースト又は粉末の状態で調製する。
【0077】
軟膏及びクリームを、例えば好適な濃縮及び/又はゲル化剤を添加し、水性又は油性基材と共に製剤化してもよい。ローションを、水性又は油性基材と共に製剤化すると共に、一般的に1又は複数の乳化剤、安定化剤、分散化剤、懸濁剤、濃縮剤、又は着色剤も含有することになる。
【0078】
口中の局所投与に適する組成物には、風味基材、通常はスクロース及びアカシア又はトラガカント中に活性成分を含んでなるトローチ剤(lozenge);ゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシア等の不活性基材中に活性成分を含んでなるトローチ(pastille);及び好適な液体担体中に活性成分を含んでなる口中洗浄剤がある。
【0079】
溶液又は懸濁物を、例えばスポイト、ピペット又はスプレー等の従来手法により鼻腔に直接投与する。組成物は単一又はマルチ用量の状態で提供されてもよい。スポイト又はピペットでの後者の場合、適切な既定量の溶液又は懸濁物を患者に投与することによりこれを達成してもよい。スプレーの場合、例えばスプレーポンプの計量霧化方法によりこれを達成してもよい。
【0080】
気道への投与を、クロロフルオロカーボン(CFC)、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロエタン、又はジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又はその他の好適なガス等の好適な推進剤と共に加圧パックされた状態で、活性成分が提供されるエアロゾルにより達成してもよい。エアロゾルは一般的にレシチン等の界面活性剤を含有してもよい。薬物の用量を、計量バルブで制御してもよい。
【0081】
あるいは、活性成分を乾燥粉末、例えば、ラクトース、スターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリドン(PVP)等のスターチ誘導体等の好適な粉末基材における化合物の混合粉末の状態で提供してもよい。従来的には、粉末担体は、鼻腔内でゲルになる。粉末組成物を、投与例えばゼラチンのカプセル又はカートリッジ、又は粉末が吸入器により投与されるブリスター包装等の、単位投薬形態で提供してもよい。
【0082】
鼻腔内組成物などの気道への投与が意図される組成物において、化合物は通常、小粒子サイズ、例えば5ミクロン以下のオーダーである。当該粒子サイズを、例えば微粒子化(micronization)等の当業者に既知の方法で得てもよい。
【0083】
所望の場合は、活性成分の持続放出の提供に適合させた組成物を使用してもよい。
【0084】
好ましくは医薬調製物は単位投薬形態である。当該形態において、調製物を、適切な量の活性成分を含有する単位用量に細分する。単位投薬形態を、包装した調製物、包装した錠剤、カプセル、及びバイアル又はアンプル中の粉末等の、別々の量の調製物を含有する包装とすることができる。また、単位投薬形態は、カプセル、錠剤、カシェ剤、又はトローチ剤それ自身とすることができ、又はそれを包装形態におけるこれらの任意の適切な個数にすることができる。経口投与のための錠剤又はカプセル及び静脈投与及び持続注入のための液体が、好ましい組成物である。
【0085】
製剤化及び投与のためのさらに詳細な技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences (Maack Publishing Co. Easton, Pa.)の最新版で示されるものでもよい。
【0086】
医薬組成物は、2以上の式(Ihb)の化合物、又はその医薬的に許容される塩、及び他の治療的活性物質を含有することもできる。
【0087】
すなわち、本発明の化合物を、1つの化合物単独の状態で、又は他の活性化合物、例えば、既述の疾患の治療用として既知の医薬との組み合わせで使用することができ、ここで後者の場合は、有利な、追加の、増幅した効果がある。ヒトへの投与に適する量は、5〜500 mgの範囲であってもよい。
【0088】
驚くべきことに、本発明の化合物と、インターフェロン−αとの組み合わせは、強力な相乗的抗ウイルス効果をもたらす一方、毒性は2つの剤の組み合わせにより拮抗される。とりわけ、本発明の化合物、特に式(Ihb−4)の化合物と、INFαの組み合わせは、リバビリンとのIFNα組み合わせと比較して、抗ウイルス効果及び毒性拮抗性においてより強力な相乗効果を示す。
【0089】
別の実施態様によれば、本発明の化合物又はその組成物は、サイトカイン放出の増加に関連する疾患の予防及び/又は治療のために使用することができ、ここで、当該化合物又は組成物はインターフェロンアルファとの組み合わせで投与される。
【0090】
医薬調製物を調製するために、医薬的に不活性な無機又は有機賦形剤を使用することができる。丸薬、錠剤、被覆錠剤及び硬ゼラチンカプセルを調製するため、例えば、ラクトース、コーンスターチ又はその誘導体、タルク、ステアリン酸又はその塩等を使用できる。軟ゼラチンカプセル又は坐剤のための賦形剤は、例えば、脂質、ワックス、半固体及び液体ポリオール、天然又は硬化オイル等である。溶液及びシロップのための好適な賦形剤は、例えば水、スクロース、不活性糖、グルコース、ポリオール等である。注射溶液の調製のための好適な賦形剤は、例えば、水、アルコール、グリセロール、ポリオール又は植物油である。
【0091】
用量を、幅広い範囲で変化させることができ、各々の個別の場合に個別の症状に適するようにする。上記の使用について適切な投薬は、投与の態様、治療される症状及び所望の効果によって変化することになる。ただし一般的には、約1〜100 mg/動物体重kg、好ましくは1〜50 mg/kgの投薬比率で、満足のいく結果に到達する。一般的には、より大きな哺乳類、例えばヒトに対する好適な投薬比率は、約10 mg〜3 g/日のオーダーであり、一般的には一度、1日に2〜4回に分割した用量で投与されるか、持続放出形態で投与される。
【0092】
一般的には、ヒト1人当たりおよそ10 mg〜5000 mg、好ましくは50〜500 mgの一日用量が、経口投与の場合は適切である。他の投与形態の場合も、一日用量は同様の範囲である。局所送達では、肌の浸透性、疾患の種類及び感受性、及び製剤の種類及び塗布頻度への依存性によって、医薬の中の活性化合物の濃度の違いは、局所塗布による治療効果を引き出すために十分な可能性がある。好ましくは、活性化合物の濃度又はその医薬的に許容される塩又は生理的な機能的誘導体又はその立体異性体の、本発明の医薬における濃度は、1 μmol/l〜100 mmol/lの範囲である。
【0093】
以下の実施例及び図は、本発明の好ましい実施態様を実証するために示される。以下の実施例で開示された技術は、本発明の実施に際して十分に機能するよう発明者等により発見された技術であるため、その実施のための好ましい態様と考えられることを、当業者は理解するべきである。ただし、本開示について、添付の請求の範囲において示される発明の精神及び範囲を逸脱しない限り、開示される特定の実施態様において多くの変更がなされることを当業者は理解すべきである。全ての引用文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0094】
実施例
略語:min、分;h、時間;r.t.、室温;t−、tert−。
NMRスペクトル:Bruker Avance 300 MHz。スペクトルは、内部標準として残存溶媒ピークを用いて、それぞれ300 MHz(1H−NMR)で記録された。
【0095】
【化7】
【0096】
分析LC/ESI−MS:2 x Waters 600 Multisolvent Delivery System。50μlサンプルループ。カラム、Chromolitli Speed ROD RP18e (Merck, Darmstadt)、50×4.6mm、2μmプレフィルター(Merck)。溶離液A、H2O+0.1% HCO2H;溶離液B、MeCN。グラジエント、5%B〜100%Bを5分以内;流速、3ml/分。電子スプレー源を装備するWaters LCZ single quadrupol mass spectrometer。MS法、MS8minPM-80-800-20V;陽/陰イオンモードスキャン、1秒にm/z80〜800;キャピラリー、3.5 kV;コーン電圧、20 V;倍増電圧、400 V;プローブ及び脱溶媒和ガス温度、それぞれ120℃及び350℃。Waters 2487 Dual λ Absorbance Detector、254 nmでセットする。
調製HPLC−MS:調製用ポンプヘッドを装備したWaters 600 Multisolvent Delivery System。2000μl又は5000μlサンプルループ。X-Terra RP 18ガードカートリッジ(7 μm、19 x 10 mm)付きの、カラム、Waters X-Terra RPl 8(7 μm、19 x 150 mm)を20 ml/分の流速で使用、又はX-Terra RP 18ガードカートリッジ(7 μm、19 x 10 mm)付きの、YMC ODS-A, (120Å、40 x 150 mm)を50 ml/分の流速で使用。溶媒組成:MeCN−H2O−HCO2Hが80:20:0.05(v:v:v)。溶離液A、H2O+0.1% HCO2H;溶離液B、MeCN。サンプルに合わせて、5〜100%溶離液Bの異なる線形グラジエント。注入量:サンプルによって500 μl〜2000 μl。電子スプレー源を装備するWaters ZQ single quadrupol mass spectrometer。陽又は陰イオンモードスキャン、1秒にm/z80〜800;キャピラリー、3.5 kV又は3.0 kV;コーン電圧、20 V;倍増電圧、400 V;プローブ及び脱溶媒和ガス温度、それぞれ120℃及び350℃。質量トリガーフラクションコレクションを備える、Waters Fraction Collector II。Waters 996フォトダイオードアレイ検出器。
【0097】
4−(メトキシ−メチル−カルボニル)−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルの合成
ピペリジン−1,4−ジカルボン酸モノ−tert−ブチルエステル(1.0 当量, 21.8 mmol)を、不活性条件下、35 mlのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解した。O,N−ジメチル−ヒドロキシルアミン塩酸塩(1.03 当量, 22.5 mmol)、ベンゾトリアゾル−1−オール一水和物(1.03 当量, 22.5 mmol)及びトリエチルアミン(1.5 当量, 32.7 mmol)を添加した。反応混合物を0℃に冷却し、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド塩酸塩(1.0 当量, 21.8 mmol)を10分間にわたり添加し、混合物を0℃で1時間及び室温で18時間、勢いよく攪拌した。
溶媒を真空下で除去し、残存物を400 mlの酢酸エチルに懸濁した。有機層を、100mlの1Mクエン酸及び炭酸ナトリウム水溶液で3回、100mlのブラインで2回抽出し、MgSO4で乾燥させ、濾過した。溶媒を除去し、残存物を蒸留により精製し、収率が80%であった。
【0098】
4−ホルミル−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルの合成
4−(メトキシ−メチル−カルボニル)−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(1.0 当量、16.4 mmol)を、不活性雰囲気下で100 mlの乾燥テトラヒドロフランに溶解した。この溶液を1時間にわたり滴下しながら、−50℃で添加し、70 mlの乾燥テトラヒドロフラン中のリチウムアラナート(lithiumalanate)(3.0 当量、49.6 mmol)の懸濁物とした。混合物添加の間、温度を−50℃に保ち、その後3時間で0℃まで戻した。
混合物を−78℃で冷却し、100 mlの1Mクエン酸で慎重に反応停止させた。混合物を室温まで温め、400 mlの酢酸エチルで希釈した。相を分離し、水相を70 mlの酢酸エチルで3回抽出した。混合した有機層を、100mlの1Mクエン酸及び炭酸ナトリウム水溶液で3回、100mlのブラインで2回抽出し、MgSO4で乾燥させ、濾過した。溶媒を除去し、残存物を蒸留により精製し、収率が85%であった。
【0099】
4−(4−エトキシカルボニル−4,5−ジヒドロ−チアゾル−2−イル)−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルの合成
4−ホルミル−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(1.0 当量、13 mmol)を、不活性条件下、40 mlトルエンに溶解させた。この溶液に、L−システインエチルエステル塩酸塩(1.6 当量、21 mmol)及びトリエチルアミン(1.6 当量、21 mmol)を添加した。混合物を14時間還流させた。発生した水をDean&Starkトラップで除去した。溶媒を除去し、残存物を100 mlの酢酸エチルに溶解させた。有機相を、50 mlの1Mクエン酸、炭酸水素カリウム水溶液で3回及び50 mlのブラインで2回抽出し、MgSO4で乾燥させ、濾過した。溶媒を除去し、残存物をシリカゲルクロマトグラフィでPE/EA4:1グラジエントを用いて精製し、収率が75%であった。
【0100】
4−(4−エトキシカルボニル−チアゾル−2−イル)−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルの合成
4−(4−エトキシカルボニル−4,5−ジヒドロ−チアゾル−2−イル)−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(1.0 当量、8.7 mmol)を、不活性条件下、160 mlのトルエンに溶解した。この溶液に、MnO2(15.0 当量、130 mmol)を添加した。反応物を攪拌しながら、5時間70℃に加熱した。混合物をセライトで濾過し、濾過剤を30 mlのトルエン及び酢酸エチルで3回洗浄した。混合した有機層を、真空内で蒸留した。残存物をシリカゲルクロマトグラフィで、DCM/MeOH95:5グラジエントを用いて精製した。収率は30%。
【0101】
C末端機能付与
4−(4−エトキシカルボニル−チアゾル−2−イル)−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(1.0 当量、2.9 mmol)を、不活性ガスの下、40 mlのジオキサンに溶解させた。1.5 mlの2N NaOHを10分間にわたり滴下しながら添加した。その後混合物を2時間室温で攪拌した。
反応物を2N HClで中性化し、溶媒を真空下で蒸発させた。残存物を50 mlの酢酸エチルに溶解させた。有機層を10 mlの1Mクエン酸及び水で3回抽出し、MgSO4で乾燥させ、濾過した。溶媒を除去し、残存物を真空下で乾燥させた。収率は95%。
【0102】
4−(4−カルボキシ−チアゾル−2−イル)−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(1 当量)を、不活性条件下、乾燥ジメチルアセトアミド(0,03 mmol/ml)に溶解させた。この溶液に、アリール−又はアルキルアミン(1 当量)、ジイソプロピルエチルアミン(2 当量)及びO−ベンゾトリアゾル−1−イル−N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(2 当量)を添加した。反応混合物を12時間室温で攪拌した。溶媒を真空下で除去し、残存物を酢酸エチルに溶解させた。有機層を1Mのクエン酸、炭酸水素カリウム水溶液で3回、ブラインで2回抽出し、MgSO4で乾燥させ、濾過した。溶媒を除去し、残存物をシリカゲルクロマトグラフィでDCM/MeOH95:5グラジエントを用いて精製した。収率は40〜80%。
【0103】
N−末端機能付与
N−保護物質を、不活性条件下、4M HCl/ジオキサン(濃度、1mlHCl/ジオキサン中0.03 mmol基質)で処理し、室温で2時間攪拌した。溶媒を真空下で除去し、さらなる精製を行わず遊離アミンのHCl塩を得た。
当該遊離アミン化合物(1 当量)を不活性条件下で、乾燥ジメチルアセトアミド(0.03 mmol/ml)に溶解させた。この溶液に、1 当量のヘテロアリールハロゲニド、ジイソプロピルエチルアミン(3 当量)をこの順序で添加し、反応混合物を3〜5時間、80〜90℃で加熱した。
溶媒を真空下で除去し、残存物を酢酸エチルに溶解させた。有機層を1Mクエン酸、炭酸水素カリウム水溶液で3回、ブラインで2回洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過した。溶媒を除去し、残存物をシリカゲルクロマトグラフィでDCM/MeOH95:5グラジエントを用いて精製した。収率は40〜80%。
【0104】
本発明の式(Ihb)の例示的な化合物には、限定するものではないが、以下のものがある。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
【表3】
【0108】
NK−κB−誘導性炎症の阻害
化合物の抗炎症活性を決定するために、Cell Culture Service GmBH製のPRINCESS(登録商標) NINA Instant Assayを使用した。このアッセイは、96ウェル平底プレートに事前播種された、組み換え体A549−NF−κB−SEAPレポーター細胞を基にする。SEAP(選択胚アルカリホスファターゼ)のための形質移入レポーター遺伝子をNF−κB応答要素の転写制御下にするため、このレポーターの発言をTNF−αでの刺激で活性化する。培養物上清におけるSEAPセレクションは、化学発光物質CSPD(登録商標)により検出できる。NF−κB活性化を阻害する試験化合物は、SEAP活性を低減し、発光の読み出しを低減させる。その後、37℃、5%CO2及び90%相対湿度で18時間の再活性化を行い、細胞を、0.01〜100 μMの試験化合物と共に、4.5時間インキュベートし、その後2 ng/mlのTNF−αで刺激した。TNF−αで22時間刺激した後、内因性のホスファターゼを不活性化し、CSPD(登録商標)物質を40分補充した。その後、Tecan Ultraリーダーを用いて、相対光単位(relative light units)(RLU)として発光を測定することにより、SEAR活性を定量化した。各々のデータ点を4重に記録し、フィッティング機能及びMicrosoft Excel Solverを用いてEC50値を計算した。
【0109】
T−リンパ球増殖アッセイ:
刺激された末梢血単球(PBMC)の阻害。
ACCUSPIN(商標) System Histopaque(登録商標)-1077を用いて、健常なボランティアからPBMCを単離し、洗浄し、そしてRPMI 1640-Glutamax培地中(10%のウシ胎児血清、4 mMのL−グルタミン、100単位/mlのペニシリン及び100μg/mlのストレプトマイシンを含有する)に106細胞/mlで再懸濁した。細胞を、試験化合物又はブランク媒体の存在下、phytohemo agglutininで48時間刺激した。インキュベーション期間の終了4時間前に、増殖細胞を標識するために5−ブロモ−2’−デソキシウリジン(BrdU)を添加した。インキュベーション後、細胞を遠心分離により分離し、培養上清を除去した。組み込まれたBrdUを、酵素結合型免疫吸着分析により定量した。IC50値(50%阻害のために必要な阻害剤の濃度)を決定するため、少なくとも4つの異なる阻害剤濃度をアプライした。各々のデータは3重に記録した。曲線を好適なプログラムでフィッティングさせた。T−リンパ球増殖アッセイで得られた結果から、本発明の化合物は、炎症性疾患又はT細胞と関連する疾患の治療に適する。
【0110】
ヒトPBMCのサイトカイン産生の分析
PBMCを、Tリンパ球増殖アッセイのために単離した、洗浄し、そして、10%ウシ胎児血清及び4 mMのL−グルタミンを含有するRPMI1640−Gmtamax-Medium、100単位/mlのペニシリン及び100μg/mlのストレプトマイシン中で細胞、106/mlに再懸濁した。細胞を、2.5又は25μMの化合物、又はネガティブコントロールとして同量のDMSOで処理し、その後、以下の刺激剤のうちの1つで刺激した。刺激剤は、2 μg/mlのphytohemeagglutinin、10 ng/mlのIL−1ベータ、10 ng/mlのTNF−アルファ、2.5 μg/mlのCL075、1 μg/mlのリポ多糖類(LPS)、1 μMのODN2006、又は1 μMのODN1668である。サイトカイン産生を、24、48及び72時間後に、ルミネックス・バイオプレックス・システム(luminex bioplex system)を用い、その製品指示書に従って、上清中で分析した。
【0111】
以下の配列を有するオリゴヌクレオチドをTiB−Molbiol(Berlin、ドイツ)により合成し、ここでsはホスホロチオエート結合を示す。PPS及びPHAを、Sigrna-Aldrich (Taufkirchen, ドイツ)、IL−1ベータ及びTNF−アルファをStrathman Biotec GmbH (Hamburg,ドイツ)から入手した。
【0112】
【化8】
【0113】
マウス脾細胞のサイトカイン産生の分析
脾細胞を、メスのBALB/CanNCrl マウス (Charles River Laboratories)から単離し、洗浄し、脾細胞培地(RPMI-培地, 5% 熱不活性化ウシ胎児血清, 20mM HEPES, 50μM 2-メルカプトエタノール, 1% PEN/ステップ溶液(Step solution) (PAN Biotech)で再懸濁した。細胞を試験物質又はコントロールのDMSOで処理し、CD3-被覆又は未被覆の96ウェルプレートに播種した。CD−3被覆プレート中の細胞を、抗−CD28でさらに刺激した。37℃で24又は48時間インキュベーション後、ウェルを回収し、ルミネックス法でマーカーサイトカインの測定をするまで細胞未含有培養上清を−80℃で凍結させた。
【0114】
H5N1トリインフルエンザ感染マウス肺組織における、インフルエンザウイルス特異的核酸及びIL−6及びIP−10の分析
マウスをトリインフルエンザウイルスH5N1(MB1株)に感染させ、2日間化合物4で(一日、15 mg/kg、i.p.)治療した。2日後、マウスを犠牲にし、肺組織からRNAを抽出した。インフルエンザ特異的なリアルタイムPCRを、関節(artus)Qiagen RT−PCRキットで行った。サイトカイン/チェルノカイン(chernokine)特異的リアルタイムPCRを、Qiagen RT−PCRキットで行った。
【0115】
インフルエンザウイルス複製の阻害
A549細胞を、病原性の高いトリインフルエンザウイルス株(例えば、H5N1、H7N7、H2N3)又はヒトインフルエンザウイルス様々な株(例えばH1N1)で16時間感染させた(MOI=0〜001)。細胞を、異なる濃度の化合物又は溶媒(DMSO)でインキュベートした。次世代ウイルスの力価を、プラークアッセイで決定した。DMSOコントロールのウイルス数を100%と規定した。
【0116】
細胞生存能力の決定
発明の化合物でインキュベートした細胞系列(例えば、A549)を、MTT染色で細胞生存能力の評価を行った。
【0117】
耐性現象の分析
A549細胞を、トリプラークウイルス(インフルエンザ株、H7N7)、MOI=0.01で感染させ、物質の存在下又は不存在下で24時間インキュベートした。各サンプルの上清を回収し、MDCK細胞でプラークアッセイによりウイルス力価を決定した。次に、上清を標準化し、A549細胞の第二継代細胞を、第一代と同じ濃度、同じウイルス数で感染させた。この作業を第五継代細胞まで繰返した。
【0118】
インフルエンザマウスモデル
メスBalb/C又はC57BI/6マウスを、LD50用量のインフルエンザウイルスで鼻内に感染させた。感染の日(0日目)又は数日のものとして感染後4日目で、i.v.又はi.pで毎日1回又は2回、化合物を投与した。治療群の生存しているマウスの数を、感染14日目と、非治療コントロール群で比較した。確認のために、全ての動物について感染ウイルス抗体力価を決定した。
【0119】
癌細胞試実験
23細胞系列を、ATCC(Rockville, MD)、DSMZ(Braunschweig, Germany)又はECACC(Wiltshire, UK)から購入した。細胞を1週間に1回又は2回定期的に継代培養した。これらを、20代以下まで培地中で継続した。全ての細胞を、10%のウシ胎児血清(PAA、Colbe、ドイツ)及び0.1%ゲンタマイシン(PAA、Colbe、ドイツ)を補ったRPMI1640倍地(PAA、Colbe、ドイツ)中で、加湿化雰囲気(95%空気、5%CO2)下、37℃で増殖させた。
【0120】
修正プロピジウムヨウ素アッセイを、物質の抗癌活性を評価するために使用した。簡単に言うと、細胞懸濁物を、対数期の培養液から取り、計数し、細胞系列に応じた細胞密度(20,000〜100,000細胞/ウェル)で、96ウェル平底マイクロタイタープレートに播種した。細胞に対数増殖を再開させる24時間の回復期の後、10 μlの培養培地(6コントロールウェル/プレート)又は試験化合物を含有する培養培地を、当該細胞に添加した。試験物質を、0.003〜30μMの範囲の5つの濃度で3重にアプライした。連続薬物暴露4日後、50 μlのヨウ化プロピジウム(PI)水溶液を、当該ウェルに添加した(PIの終濃度7 μg/ml)。PIは未処理の細胞膜を通過せず、死細胞の核のみに侵入する。30分のインキュベーション期間後、Cytofluor 4000マイクロプレートリーダー(励起530 nm、発光620 nm)を用いて蛍光(FU1)を測定し、死細胞の測定値を直接求めた。その後、マイクロプレートを−200℃で24時間置き、全ての細胞を死滅させた。プレートを解凍し、第二蛍光を測定(FU2)後、生細胞の量をFU2からFU1を引くことにより計算した。AU化合物/試験細胞系列の組み合わせを、3〜4つの独立した実験で試験した。各実験において、全てのデータ点を三重に決定した。計算には、三重のデータの平均値を用いた。
【0121】
増殖阻害を、試験及びコントロールのウェル(試験/コントロール×100T/C)[%]の蛍光比率として表現した。T/C値に基づき、IC50/IC70/IC90値(それぞれ細胞増殖を50%(T/C=50%)、70%(T/C=30%)及び90%(T/C=10%)阻害するのに必要な薬物濃度)を、二点間のカーブフィッティングの原理により、化合物濃度対細胞生存能力(T/C)をプロットすることにより計算した。平均IC50及びIC70値を、xは特定の腫瘍細胞系列を、nは被検腫瘍細胞系列の総数を表す以下の等式で記載する。IC50又はIC70値が試験する濃度範囲内で決定できない場合(化合物が活性であり過ぎるか、活性がないかのいずれかにより)、被検の最低又は最高濃度を計算に使用した。
【0122】
【数1】
【0123】
抗腫瘍活性及び腫瘍選択性を、IC50又はIC70平均グラフプレゼンテーションを用いて評価した。これらは、平均IC50/IC70値に対する各細胞の個別のIC50/IC70値の分布を示す。平均IC50/IC70値からの個別のIC50/IC70値の偏差は、対数スケールの軸上に棒として表される。左の棒は、平均IC70値より低いIC50/IC70値(感受性のある細胞系列)を表し、右の棒は、より高い個別のIC50/IC70値(耐性細胞系列)を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイトカイン放出の増加に関連する疾患の予防及び/又は治療のための、一般式(Ihb)
【化1】
(式中、
Y'は、O又はNR2'であり;
Zは、N又はCR2'であり;
Xは、NR2'、O又はSであり;
R2'は、H、アルキル、−C(O)NR7、−C(O)Re、シクロアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
R3は、H、メチル、エチル、メトキシ、アミン、アルキルアミン、モルホリノ、N−メチルピペラジン、CF3、又はOCF3であり;
R2aは、置換又は未置換のアリール、ベンジル又はヘテロアリールであり;
R7、R7'、R8は、独立に、H、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
Reは、独立に、H、−CN、−OH、−SH、−CO2R4'、−C(O)R4'、−SO2R4'、−NR4'R5'、−C(O)NR7R8、−SO2−アルキル、−SO2R4'、−SO3R4'、−N=CR4'R5'、−NR4'C(O)R4"、−NR4'−CO−ハロアルキル、−NO2、−NR4'−SO2−ハロアルキル、−NR4'−SO2−アルキル、−NR4'−CO−アルキル、−NR4'(CH2)pヘテロアリール、アルキル、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、アルキルアミノ、アリール、ヒドロキシアルキルアミノ、アルコキシ、アルキルチオ、−O(CH2)p[O(CH2)p]qOCH3、−C(NR4")NR4'−ベンズイミダゾリル、−C(NR4")NR4'−ベンズチアゾリル、−C(NR4")NR4'−ベンズオキサゾリル、又はヘテロアリールであり;
R4'、R4"、R5'は、独立に、H、ハロゲン、アルキル、−C(NR7)NR7'R8、−(CH2)pアリール、ハロアルキル、−(CH2)pNR7R8、−C(O)NR7R8、−N=CR7R8、−NR7C(O)R8、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
p=1〜6であり、
q=1〜6であり、
シクロアルキル基は、炭素原子を3〜8個含有する非芳香族環系のことを言い、ここで環中の1又は複数の炭素原子は、基Eにより置換することができ、ここでEは、O、S、SO、SO2、N、又はNR''であり、
R''は、独立に、H、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり;
アリール基は、5〜15個の炭素原子を有する芳香族の基のことを言い、1又は複数の置換基R'で任意に置換することができ、
R'は、独立に、H、−CO2R''、−CONHR''、−CR''O、−SO2NR''、−NR''−CO−ハロアルキル、−NO2、−NR''−SO2−ハロアルキル、−NR''−SO2−アルキル、−SO2−アルキル、−NR''−CO−アルキル、−CN、アルキル、シクロアルキル、アルキルアミノ、アルコキシ、−OH、−SH、アルキルチオ、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルキルオキシ、アリール、又はへテロアリールであり;
ヘテロアリール基は、O、N、及びSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、5−又は6−員のヘテロシクリル基のことを言い、これは別の芳香環と融合してもよい)
の化合物、又は酸又は塩基との医薬的に許容されるその塩、又はその立体異性体、又は開裂可能なその酢酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、スルフヒドリル、アミン又はエステル誘導体であるそのプロドラッグ。
【請求項2】
サイトカイン放出の増加に関連する疾患の予防及び/又は治療のための、一般式(Ihb−2)
【化2】
(式中、
R3'は、置換又は未置換のヘテロアリール又はアリールであり;
Xは、NR2'、O又はSであり;
R2'は、H、アルキル、−C(O)NR7、−C(O)Re、シクロアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
R2aは、置換又は未置換のアリール又はヘテロアリールであり;
R7、R7'、R8は、独立に、H、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
Reは、独立に、H、−CN、−OH、−SH、−CO2R4'、−C(O)R4'、−SO2R4'、−NR4'R5'、−C(O)NR7R8、−SO2−アルキル、−SO2R4'、−SO3R4'、−N=CR4R5'、−NR4'C(O)R4"、−NR4'−CO−ハロアルキル、−NO2、−NR4'−SO2−ハロアルキル、−NR4'−SO2−アルキル、−NR4'−CO−アルキル、−NR4'−(CH2)pヘテロアリール、アルキル、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、アルキルアミノ、アリール、ヒドロキシアルキルアミノ、アルコキシ、アルキルチオ、−O(CH2)p[O(CH2)p]qOCH3、−C(NR4")NR4'−ベンズイミダゾリル−、−C(NR4")NR4'−ベンズチアゾリル、−C(NR4")NR4'−ベンズオキサゾリル、又はヘテロアリールであり;
R4'、R4"、R5は、独立に、H、ハロゲン、アルキル、−C(NR7)NR7'R8、−(CH2)pアリール、ハロアルキル、−(CH2)pNR7R8、−C(O)NR7R8、−N=CR7R8、−NR7C(O)R8、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
pは1〜6であり;
qは1〜6である)
の請求項1に記載の化合物、又は酸又は塩基との医薬的に許容されるその塩、又はその立体異性体、又は開裂可能なその酢酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、スルフヒドリル、アミン又はエステル誘導体であるそのプロドラッグ。
【請求項3】
サイトカイン放出の増加に関連する疾患の予防及び/又は治療のための、一般式(Ihb−3)
【化3】
(式中、
R3は、置換又は未置換の二環式ヘテロアリールであり;
Xは、NR2'、O又はSであり;
R2'は、H、アルキル、−C(O)NR7、−C(O)Re、シクロアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
R7、R7'、R8は、独立に、H、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
Reは、独立に、H、−CN、−OH、−SH、−CO2R4'、−C(O)R4'、−SO2R4'、−NR4'R5'、−C(O)NR7R8、−SO2−アルキル、−SO2R4'、−SO3R4'、−N=CR4'R5'、−NR4'C(O)R4"、−NR4'−CO−ハロアルキル、−NO2、−NR4'−SO2−ハロアルキル、−NR4'−SO2−アルキル、−NR4'−CO−アルキル、−NR4'(CH2)pヘテロアリール、アルキル、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、アルキルアミノ、アリール、ヒドロキシアルキルアミノ、アルコキシ、アルキルチオ、−O(CH2)p[O(CH2)p]qOCH3、−C(NR4")NR4'−ベンズイミダゾリル、−C(NR4")NR4'−ベンズチアゾリル、−C(NR4")NR4'−ベンズオキサゾリル、又はヘテロアリールであり;
R4'、R4"、R5'は、独立に、H、ハロゲン、アルキル、−C(NR7)NR7'R8、−(CH2)pアリール、ハロアルキル、−(CH2)pNR7R8、−C(O)NR7R8、−N=CR7R8、−NR7C(O)R8、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
p=1〜6であり、
q=1〜6である)
の請求項2に記載の化合物、又は酸又は塩基との医薬的に許容されるその塩、又はその立体異性体、又は開裂可能なその酢酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、スルフヒドリル、アミン又はエステル誘導体であるそのプロドラッグ。
【請求項4】
サイトカイン放出の増加に関連する疾患の予防及び/又は治療のための、式(Ihb−4)
【化4】
の請求項3に記載の化合物、又は酸又は塩基との医薬的に許容されるその塩、又はその立体異性体、又は開裂可能なその酢酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、スルフヒドリル、アミン又はエステル誘導体であるそのプロドラッグ。
【請求項5】
サイトカイン放出の増加に関連する疾患の予防及び/又は治療のための、請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物、及び医薬的に許容される担体又は希釈剤を含んでなる、医薬組成物。
【請求項6】
ウイルス感染が原因である、サイトカイン放出の増加に関連する疾患の治療のための、請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物、又は請求項5の組成物。
【請求項7】
インフルエンザウイルス感染が原因である、サイトカイン放出の増加に関連する疾患の治療のための、請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物、又は請求項5の組成物。
【請求項8】
サブタイプH5N1、H2N2、H1N1又はH3N2の1又は複数のインフルエンザウイルス感染が原因である、サイトカイン放出の増加に関連する疾患の治療のための、請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物、又は請求項5の組成物。
【請求項9】
細菌感染が原因である、サイトカイン放出の増加に関連する疾患の治療のための、請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物、又は請求項5の組成物。
【請求項10】
サイトカイン放出の増加に関連する疾患であって、それが炎症性疾患である疾患の治療のための、請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物、又は請求項5の組成物。
【請求項11】
サイトカイン放出の増加に関連する疾患であって、それが癌である疾患の治療のための、請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物、又は請求項5の組成物。
【請求項12】
サイトカイン放出の増加に関連する疾患であって、それが脳卒中又は敗血症である疾患の治療のための、請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物、又は請求項5の組成物。
【請求項13】
INFαとの組み合わせで投与される、サイトカイン放出の増加に関連する疾患の予防及び/又は治療のための、請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物、又は請求項5の組成物。
【請求項14】
INFαとの組み合わせで投与される、サイトカイン放出の増加に関連するインフルエンザウイルス感染の予防及び/又は治療のための、請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物、又は請求項5の組成物。
【請求項15】
サブタイプH1N1、H5N1、H2N2又はH3N2の1又は複数のインフルエンザウイルス感染が原因である、サイトカイン放出の増加に関連する疾患の予防及び/又は治療のための、請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物、又は請求項5の組成物。
【請求項1】
サイトカイン放出の増加に関連する疾患の予防及び/又は治療のための、一般式(Ihb)
【化1】
(式中、
Y'は、O又はNR2'であり;
Zは、N又はCR2'であり;
Xは、NR2'、O又はSであり;
R2'は、H、アルキル、−C(O)NR7、−C(O)Re、シクロアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
R3は、H、メチル、エチル、メトキシ、アミン、アルキルアミン、モルホリノ、N−メチルピペラジン、CF3、又はOCF3であり;
R2aは、置換又は未置換のアリール、ベンジル又はヘテロアリールであり;
R7、R7'、R8は、独立に、H、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
Reは、独立に、H、−CN、−OH、−SH、−CO2R4'、−C(O)R4'、−SO2R4'、−NR4'R5'、−C(O)NR7R8、−SO2−アルキル、−SO2R4'、−SO3R4'、−N=CR4'R5'、−NR4'C(O)R4"、−NR4'−CO−ハロアルキル、−NO2、−NR4'−SO2−ハロアルキル、−NR4'−SO2−アルキル、−NR4'−CO−アルキル、−NR4'(CH2)pヘテロアリール、アルキル、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、アルキルアミノ、アリール、ヒドロキシアルキルアミノ、アルコキシ、アルキルチオ、−O(CH2)p[O(CH2)p]qOCH3、−C(NR4")NR4'−ベンズイミダゾリル、−C(NR4")NR4'−ベンズチアゾリル、−C(NR4")NR4'−ベンズオキサゾリル、又はヘテロアリールであり;
R4'、R4"、R5'は、独立に、H、ハロゲン、アルキル、−C(NR7)NR7'R8、−(CH2)pアリール、ハロアルキル、−(CH2)pNR7R8、−C(O)NR7R8、−N=CR7R8、−NR7C(O)R8、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
p=1〜6であり、
q=1〜6であり、
シクロアルキル基は、炭素原子を3〜8個含有する非芳香族環系のことを言い、ここで環中の1又は複数の炭素原子は、基Eにより置換することができ、ここでEは、O、S、SO、SO2、N、又はNR''であり、
R''は、独立に、H、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり;
アリール基は、5〜15個の炭素原子を有する芳香族の基のことを言い、1又は複数の置換基R'で任意に置換することができ、
R'は、独立に、H、−CO2R''、−CONHR''、−CR''O、−SO2NR''、−NR''−CO−ハロアルキル、−NO2、−NR''−SO2−ハロアルキル、−NR''−SO2−アルキル、−SO2−アルキル、−NR''−CO−アルキル、−CN、アルキル、シクロアルキル、アルキルアミノ、アルコキシ、−OH、−SH、アルキルチオ、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルキルオキシ、アリール、又はへテロアリールであり;
ヘテロアリール基は、O、N、及びSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、5−又は6−員のヘテロシクリル基のことを言い、これは別の芳香環と融合してもよい)
の化合物、又は酸又は塩基との医薬的に許容されるその塩、又はその立体異性体、又は開裂可能なその酢酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、スルフヒドリル、アミン又はエステル誘導体であるそのプロドラッグ。
【請求項2】
サイトカイン放出の増加に関連する疾患の予防及び/又は治療のための、一般式(Ihb−2)
【化2】
(式中、
R3'は、置換又は未置換のヘテロアリール又はアリールであり;
Xは、NR2'、O又はSであり;
R2'は、H、アルキル、−C(O)NR7、−C(O)Re、シクロアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
R2aは、置換又は未置換のアリール又はヘテロアリールであり;
R7、R7'、R8は、独立に、H、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
Reは、独立に、H、−CN、−OH、−SH、−CO2R4'、−C(O)R4'、−SO2R4'、−NR4'R5'、−C(O)NR7R8、−SO2−アルキル、−SO2R4'、−SO3R4'、−N=CR4R5'、−NR4'C(O)R4"、−NR4'−CO−ハロアルキル、−NO2、−NR4'−SO2−ハロアルキル、−NR4'−SO2−アルキル、−NR4'−CO−アルキル、−NR4'−(CH2)pヘテロアリール、アルキル、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、アルキルアミノ、アリール、ヒドロキシアルキルアミノ、アルコキシ、アルキルチオ、−O(CH2)p[O(CH2)p]qOCH3、−C(NR4")NR4'−ベンズイミダゾリル−、−C(NR4")NR4'−ベンズチアゾリル、−C(NR4")NR4'−ベンズオキサゾリル、又はヘテロアリールであり;
R4'、R4"、R5は、独立に、H、ハロゲン、アルキル、−C(NR7)NR7'R8、−(CH2)pアリール、ハロアルキル、−(CH2)pNR7R8、−C(O)NR7R8、−N=CR7R8、−NR7C(O)R8、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
pは1〜6であり;
qは1〜6である)
の請求項1に記載の化合物、又は酸又は塩基との医薬的に許容されるその塩、又はその立体異性体、又は開裂可能なその酢酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、スルフヒドリル、アミン又はエステル誘導体であるそのプロドラッグ。
【請求項3】
サイトカイン放出の増加に関連する疾患の予防及び/又は治療のための、一般式(Ihb−3)
【化3】
(式中、
R3は、置換又は未置換の二環式ヘテロアリールであり;
Xは、NR2'、O又はSであり;
R2'は、H、アルキル、−C(O)NR7、−C(O)Re、シクロアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
R7、R7'、R8は、独立に、H、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
Reは、独立に、H、−CN、−OH、−SH、−CO2R4'、−C(O)R4'、−SO2R4'、−NR4'R5'、−C(O)NR7R8、−SO2−アルキル、−SO2R4'、−SO3R4'、−N=CR4'R5'、−NR4'C(O)R4"、−NR4'−CO−ハロアルキル、−NO2、−NR4'−SO2−ハロアルキル、−NR4'−SO2−アルキル、−NR4'−CO−アルキル、−NR4'(CH2)pヘテロアリール、アルキル、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、アルキルアミノ、アリール、ヒドロキシアルキルアミノ、アルコキシ、アルキルチオ、−O(CH2)p[O(CH2)p]qOCH3、−C(NR4")NR4'−ベンズイミダゾリル、−C(NR4")NR4'−ベンズチアゾリル、−C(NR4")NR4'−ベンズオキサゾリル、又はヘテロアリールであり;
R4'、R4"、R5'は、独立に、H、ハロゲン、アルキル、−C(NR7)NR7'R8、−(CH2)pアリール、ハロアルキル、−(CH2)pNR7R8、−C(O)NR7R8、−N=CR7R8、−NR7C(O)R8、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、アルキルアミノ、ヘテロアリール、又はアリールであり;
p=1〜6であり、
q=1〜6である)
の請求項2に記載の化合物、又は酸又は塩基との医薬的に許容されるその塩、又はその立体異性体、又は開裂可能なその酢酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、スルフヒドリル、アミン又はエステル誘導体であるそのプロドラッグ。
【請求項4】
サイトカイン放出の増加に関連する疾患の予防及び/又は治療のための、式(Ihb−4)
【化4】
の請求項3に記載の化合物、又は酸又は塩基との医薬的に許容されるその塩、又はその立体異性体、又は開裂可能なその酢酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、スルフヒドリル、アミン又はエステル誘導体であるそのプロドラッグ。
【請求項5】
サイトカイン放出の増加に関連する疾患の予防及び/又は治療のための、請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物、及び医薬的に許容される担体又は希釈剤を含んでなる、医薬組成物。
【請求項6】
ウイルス感染が原因である、サイトカイン放出の増加に関連する疾患の治療のための、請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物、又は請求項5の組成物。
【請求項7】
インフルエンザウイルス感染が原因である、サイトカイン放出の増加に関連する疾患の治療のための、請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物、又は請求項5の組成物。
【請求項8】
サブタイプH5N1、H2N2、H1N1又はH3N2の1又は複数のインフルエンザウイルス感染が原因である、サイトカイン放出の増加に関連する疾患の治療のための、請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物、又は請求項5の組成物。
【請求項9】
細菌感染が原因である、サイトカイン放出の増加に関連する疾患の治療のための、請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物、又は請求項5の組成物。
【請求項10】
サイトカイン放出の増加に関連する疾患であって、それが炎症性疾患である疾患の治療のための、請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物、又は請求項5の組成物。
【請求項11】
サイトカイン放出の増加に関連する疾患であって、それが癌である疾患の治療のための、請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物、又は請求項5の組成物。
【請求項12】
サイトカイン放出の増加に関連する疾患であって、それが脳卒中又は敗血症である疾患の治療のための、請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物、又は請求項5の組成物。
【請求項13】
INFαとの組み合わせで投与される、サイトカイン放出の増加に関連する疾患の予防及び/又は治療のための、請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物、又は請求項5の組成物。
【請求項14】
INFαとの組み合わせで投与される、サイトカイン放出の増加に関連するインフルエンザウイルス感染の予防及び/又は治療のための、請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物、又は請求項5の組成物。
【請求項15】
サブタイプH1N1、H5N1、H2N2又はH3N2の1又は複数のインフルエンザウイルス感染が原因である、サイトカイン放出の増加に関連する疾患の予防及び/又は治療のための、請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物、又は請求項5の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A−C】
【図5D−E】
【図6】
【図7A−C】
【図7D−F】
【図8A−C】
【図8D−F】
【図8G−H】
【図9A−B】
【図9C】
【図10A−B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A−C】
【図5D−E】
【図6】
【図7A−C】
【図7D−F】
【図8A−C】
【図8D−F】
【図8G−H】
【図9A−B】
【図9C】
【図10A−B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2012−502881(P2012−502881A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525369(P2010−525369)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/062611
【国際公開番号】WO2009/037357
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(507208200)4エスツェー アクチェンゲゼルシャフト (17)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/062611
【国際公開番号】WO2009/037357
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(507208200)4エスツェー アクチェンゲゼルシャフト (17)
【Fターム(参考)】
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