説明

ペダル装置

【課題】ペダル位置の調整とペダル反力の調整を同時に行えるペダル装置を提供する。
【解決手段】電動モータ13、ネジ機構14およびストッパ部15により構成されるペダル位置・反力調整装置7により、ペダルアーム4を踏み込み方向前後に移動させる。これにより、ペダルアーム4に備えられたカムフォロワ16も移動し、カム17を移動させる。このため、カム17の移動に伴ってバネ19が撓み、バネ19の弾性力がカム17に反力として加えられる。この反力がカム17およびカムフォロワ16を介してブレーキペダル2に加えられるため、ペダル位置・反力調整装置7によってペダルアーム4を移動させれば、反力調整を同時に行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキペダルやアクセルペダルといった車両用のペダル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1において、操作ペダルの踏み込み操作に伴う反力特性を機械式ペダルと同様にできるペダル反力装置が提案されている。このペダル反力装置には、操作ペダルの踏み込み操作に伴って機械的に変位させられるダンパ装置およびバネ部材が備えられている。そして、これらダンパ装置およびバネ部材により、踏み込み操作の変位量や変位量の変化速度に基づいて操作ペダルに踏み込み反力が付加され、その変位量の変化パターンすなわち踏み込み反力の変化パターンがカムによって機械的に設定されるようにしている。
【0003】
また、特許文献2において、ペダルの位置が可動な可動ペダル装置が提案されている。この可動ペダル装置では、ブラケットとペダル部材に跨ってリターンスプリングを配設すると共に、その連結点を所定位置に設定することにより、ペダル位置を可動にしている。
【特許文献1】特開2005−219687号公報
【特許文献2】特開2004−86567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2において、ペダル反力の調整を行うこと、および、ペダル位置を可動にすることについて開示されているが、ペダル位置の調整とペダル反力の調整を共に実現できるものは無い。これら双方を実現するためには、特許文献1、2に記載の2つの装置を両方備えることが考えられるが、それらを2つとも備えると装置の大型化を招くし、コスト高になるという問題がある。また、本来、ペダル位置はドライバごとに調整されるべきであり、ペダル反力はその調整されたペダル位置に応じて設定されるべきである。このため、特許文献1、2に記載の2つの装置を備えた場合でも物理的に独立した装置が備えられるだけであり、ペダル位置の調整とペダル反力の調整を別々に行わなければならず、ペダル位置の調整とペダル反力の調整を同時に行うことはできない。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、ペダル位置の調整とペダル反力の調整を同時に行える装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、ペダル(2)が回転軸(12)を中心として踏み込み方向に回動させられると、該回動に伴いペダル(2)に対して反力を発生させる反力発生装置(8)を備えると共に、ペダル(2)の踏み込み方向前後にペダルアーム(4)を移動させることでペダル(2)の初期位置を調整すると共に、該初期位置の調整に伴って、反力発生装置(8)が発生させる反力の調整を行うペダル位置・反力調整装置(7)を備えることを特徴としている。
【0007】
このように、ペダル位置・反力調整装置(7)にてペダルアーム(4)を踏み込み方向前後に移動させることで反力発生機構にて発生させられる反力が調整できるようにしている。このため、ペダル位置・反力調整装置(7)を駆動することにより、これらペダル位置調整と反力調整の双方を同時に行うことが可能となる。
【0008】
例えば、請求項2に記載したように、ペダル装置は、ペダル部(3)とペダルアーム(4)とを有し、車体壁面(10)に対して保持される回転軸(12)を中心として揺動するペダル(2)と、ペダルアーム(4)に備えられ、ペダル(2)の揺動に伴って回転軸(12)を中心として移動するカムフォロワ(16)と、車体壁面(10)に対して保持される支持軸(18)を中心として回動し、カムフォロワ(16)に接すると共に、カムフォロワ(16)の移動に伴って支持軸(18)を中心として回動させられるカム(17)と、支持軸(18)に備えられ、カム(17)に対して該カム(17)がペダル(2)の踏み込みによって回転軸(12)を中心として回動させられるほど大きな弾性力を付与するバネ(19)と、ペダル(2)の初期位置を踏み込み方向前後にペダルアーム(4)を移動させることで位置調整を行うと共に、該位置調整に伴って、カム(17)およびカムフォロワ(16)を介してバネ(19)の弾性力が作用することにより発生させられるペダル(2)の反力の調整を行うペダル位置・反力調整装置(7)と、を具備した構成とすることができる。
【0009】
このような構成では、ペダルアーム(4)を踏み込み方向前後に移動させると、ペダルアーム(4)に備えられたカムフォロワ(16)が移動するため、それによりカム(17)の位置も移動させられる。したがって、カム(17)に対して作用するバネ(19)の弾性力を変化させられる。これにより、請求項1の効果を得ることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、バネ(19)を支持軸(18)に対して巻回した捩りバネにて構成し、支持軸(18)に対して同軸的に配置することを特徴としている。
【0011】
このように、バネ(19)を捩りバネにて構成すれば、支持軸(18)に対して巻回させることができるため、省スペース化を図ることが可能となる。
【0012】
この場合、請求項4に記載したように、捩りバネ(19)の一端をカム(17)におけるストッパ部(17f)にて係止させ、捩りバネ(19)の他端を捩りバネ(19)の撓み量を調整することにより反力の調整を行う調整部(20〜22)に固定することができる。
【0013】
このようにすれば、バネ(19)の弾性力を調整部(20〜22)でも調整することができるため、ペダル位置・反力調整装置(7)による調整に加えて、さらに反力調整を行うことが可能となる。
【0014】
請求項5に記載の発明では、カム(17)は、カムフォロワ(16)と接触する面(17a)がペダル(2)のストローク量に対する反力の特性を設定する形状とされていることを特徴としている。
【0015】
カム(17)のうちカムフォロワ(16)と接触する面(17a)の形状に基づいて、ペダル(2)のストローク量に対する反力の特性を変えることができる。このため、その面(17a)の形状を所望のペダル(2)のストローク量に対する反力の特性に応じた形状にすれば、その特性を得ることができる。
【0016】
また、請求項6に記載したように、ペダル位置・反力調整装置(7)は、例えば、電動モータ(13)と、電動モータ(13)によって伸長収縮させられるネジ機構(14)と、ネジ機構(14)の伸長収縮に伴ってペダルアーム(4)を踏み込み方向前後に移動させるストッパ部(15)と、を有した構成とされる。
【0017】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0019】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態では、本発明の一実施形態にかかるペダル装置をブレーキペダル装置に適用した場合について説明する。図1は、本実施形態にかかるブレーキペダル装置が適用されるブレーキシステムの概略構成を示したブロック図である。また、図2は、本実施形態にかかるブレーキペダル装置の側面図である。以下、これらの図を参照して本実施形態にかかるブレーキペダル装置について説明する。
【0020】
図1に示すブレーキシステムは、ブレーキペダル装置1の操作量を検出し、それに応じて電動モータ(図示せず)を駆動することで各車輪FL〜RRに対して制動力を発生させる所謂ブレーキバイワイヤシステムである。
【0021】
具体的には、ブレーキペダル装置1に備えられたブレーキペダル2のペダル部3が踏み込まれ、ペダルアーム4がそれに伴って揺動させられると、その操作量がストロークセンサや踏力センサなどのペダル操作量センサ5にて検出される。そして、ペダル操作量センサ5の検出信号がブレーキ制御装置(以下、ECUという)6に入力されることでブレーキペダル2の操作量が検出され、ECU6が図示しない電動モータなどのアクチュエータを駆動することにより、各車輪FL〜RRに対して制動力を発生させる。
【0022】
本実施形態のブレーキペダル装置1は、ブレーキペダル2が上から吊り下げられた吊り下げ式とされている。このブレーキペダル装置1には、ブレーキペダル2に加えてペダル位置・反力調整装置7と反力発生装置8が備えられている。ペダル位置・反力調整装置7は、ペダルアーム4の位置を踏み込み方向前後に調整するものであり、反力発生装置8は、ブレーキペダル2に所定の反力を付与するものである。これらペダル位置・反力調整装置7および反力発生装置8は、ドライバが例えば車室内におけるインストルメントパネル(図示せず)に設置された操作スイッチ9a、9bを操作することにより駆動される。例えば、操作スイッチ9aはブレーキペダル2の位置を前後のいずれに調整するか、および、調整終了の3つの切替えが行え、操作スイッチ9bは、発生させる反力の大小のいずれに調整するか、および、調整終了の3つの切替が行えるものとされる。このため、各操作スイッチ9a、9bの切替え状態に応じた信号がECU6に入力され、ECU6からペダル位置・反力調整装置7や反力発生装置8に対して制御信号が出力される。これに基づき、ペダル位置・反力調整装置7や反力発生装置8が駆動される。
【0023】
図2は、図1に示すブレーキシステムに適用されたブレーキペダル装置1の詳細構造を示した側面図である。
【0024】
図2に示すように、車室内の車体壁面10において、車体壁面10から垂直方向(車両前後方向)に突き出すようにブラケット11が備えられている。そして、車体壁面10もしくはブラケット11に対して、ブレーキペダル装置1の各種構成要素が固定された構造とされている。
【0025】
ブレーキペダル装置1は、上述したように、ブレーキペダル2とペダル位置・反力調整装置7および反力発生装置8を備えた構成とされている。
【0026】
ブレーキペダル2は、ペダルアーム4の一端側にペダル部3が備えられ、他端がブラケット11に保持された回転軸12に支持されることで、回転軸12を中心として揺動可能、つまり車両前後方向に移動可能とされている。
【0027】
ペダル位置・反力調整装置7は、電動モータ13、ネジ機構14およびストッパ部15を備えた構成とされている。
【0028】
電動モータ13は、ブレーキペダル2のペダルアーム4よりも運転席側(ドライバ側)に配置され、ブラケット11の先端位置の保持面(車体壁面10と並行とした面)に固定されている。上述したECU6からの制御信号のうち、ペダル位置・反力調整装置7に対して出力される制御信号は、この電動モータ13を駆動する信号として用いられる。
【0029】
ネジ機構14は、電動モータ13によって駆動され、長手方向(紙面左右方向)に伸長収縮させられることにより、ストッパ部15を車両前後方向に移動させる。
【0030】
ストッパ部15は、ペダルアーム4の一端面、具体的には運転席側(車両後方側)の端面に当接することで、ペダルアーム4の可動範囲を規制する。すなわち、上述したようにペダルアーム4は回転軸12を中心として揺動可能とされているが、ペダルアーム4の車両後方側の移動可能範囲はストッパ部15と接する位置までとされ、ペダルアーム4がストッパ部15と接する位置がブレーキペダル2の初期位置となる。
【0031】
反力発生装置8は、カムフォロワ16、カム17、支持軸18、バネ19、固定部20、ネジ機構21および電動モータ22を備えた構成とされている。これらのうち、カムフォロワ16、カム17、支持軸18およびバネ19が実際に反力を発生させる反力発生機構として機能し、固定部20、ネジ機構21および電動モータ22が発生させる反力の調整を行う調整部として機能する。
【0032】
カムフォロワ16は、ペダルアーム4の移動をカム17に伝える働きと、カム17を通じてペダルアーム4に対して反力を付与する働きを行う。このカムフォロワ16は、ペダルアーム4の側面に固定されており、カム17と接触しつつ、カム17に対して摺動容易となるように例えば円形とされている。
【0033】
カム17は、支持軸18を回転軸12として回転可能に支持されている。カム17の形状は任意であるが、カムフォロワ16と接触する面17aの形状は、要求される反力特性に応じて設計されている。つまり、ブレーキペダル2の踏み込みによりカムフォロワ16がブレーキペダル2と共に回転軸12を中心として揺動させられたときにカム17がカムフォロワ16に押し上げられて移動させられるが、カムフォロワ16の移動(軌跡)に対してカムフォロワ16とカム17の面17aの接触位置が変わる。この接触位置から支持軸18までの距離などが面17aの形状によって調整されることにより、所望の反力特性が得られる。
【0034】
本実施形態では、図2に示されるように、カム17の面17aは、ブレーキペダル2が初期位置の状態のときにカムフォロワ16と接する側の先端位置が平坦部17bとされている。また、カム17の面17aのうち、平坦部17bよりも支持軸18側、つまりブレーキペダル2が初期位置から踏み込まれたときにカムフォロワ16と接する箇所において、平坦部17bに対してカムフォロワ16側に傾斜させられた傾斜部17cとされている。そして、さらに支持軸18側に近づくと、カム17の面17aは再び平坦部17dとされている。
【0035】
また、カム17のうちカムフォロワ16と接する側と反対側の先端位置には、支持軸18に対して回転可能に係合される係合部17eと、バネ19の弾性力を受け止めるためのストッパ部17fが備えられている。係合部17eは、支持軸18が嵌め込まれる丸穴もしくは支持軸18内に嵌め込まれる軸部を備えた部材とされる。ストッパ部17fは、バネ19の一端を係止する。
【0036】
支持軸18は、ブラケット11に対して固定、もしくは、回転可能に保持されている。支持軸18は円筒形状とされており、その中心軸がブラケット11の壁面に対して垂直方向に向けられている。そして、例えばカム17の一端に丸穴が形成されており、この丸穴内に支持軸18が嵌め込まれることで、カム17が支持軸18を中心として回転可能となっている。
【0037】
バネ19は、捩りバネにて構成されており、支持軸18に巻回されている。このように、バネ19を支持軸18に対して同軸的に配置することにより、省スペース化を図っている。バネ19の一端は、上述したようにストッパ部17fに係止されており、他端は、固定部20に固定されている。このバネ19は、カム17が支持軸18を中心として回動させられると、バネ19の中心軸を中心として撓む(収縮させられる)。このため、バネ19の撓みによる弾性力がカム17に対して反力として加えられ、カム17の回動量が大きくなる程バネ19の撓み量が多くなるため、カム17に対して加えられる反力も大きくなる。
【0038】
固定部20は、バネ19の他端を固定すると共に、バネ19の他端の位置を調整することにより、バネ19による反力特性を調整するためのものである。
【0039】
ネジ機構21は、電動モータ22によって駆動され、長手方向に沿ってに伸長収縮させられることにより、固定部20をその方向に移動させる。これにより、固定部20と共にバネ19の一端の位置が調整される。
【0040】
電動モータ22は、車体壁面10に対して固定され、ネジ機構21の駆動に用いられる。上述したECU6からの制御信号のうち、反力発生装置8に対して出力される制御信号は、この電動モータ22を駆動する信号として用いられる。
【0041】
以上のような構造により、本実施形態にかかるブレーキペダル装置1が構成されている。次に、このようなブレーキペダル装置1の動作について説明する。図3に、ペダル位置調整の様子を示したブレーキペダル装置1の側面図を示し、この図を参照して説明する。
【0042】
まず、ブレーキペダル2がドライバによって踏み込まれる前には、バネ19の弾性力がカム17を紙面反時計回りに回動させる方向に加わる。このため、カムフォロワ16がカム17によって押し付けられ、ブレーキペダル2をストッパ部15に当接させる。このため、図3(a)に示すように、ブレーキペダル2は初期位置に位置する。
【0043】
続いて、ブレーキペダル2がドライバによって踏み込まれると、ブレーキペダル2が回転軸12を中心として揺動させられ、それに伴ってカムフォロワ16も回転軸12を中心として揺動させられる。そして、カムフォロワ16によってカム17の面17aに対して踏力に対応する力が加えられ、カム17が支持軸18を中心として紙面時計回りに回動させられる。これにより、バネ19が撓み、カム17に対して撓み量に応じた反力を加えることになり、それがカムフォロワ16を介してブレーキペダル2に加えられる。このようにして、ドライバの踏力に対する反力を発生させることが可能となる。
【0044】
また、ペダル位置・反力調整装置7によりブレーキペダル2の位置調整を行う際には、ブレーキペダル2の位置を前方に調整すべく操作スイッチ9aを切替える。これにより、電動モータ13が駆動され、ネジ機構14が伸長される。このため、図3(b)に示すように、ストッパ部15がペダルアーム4を踏み込み方向前方に移動させる方向に移動し、ブレーキペダル2の初期位置が図3(a)の場合と比べて前方に調整される。逆に、ペダルアーム4の位置を踏み込み方向後方に調整すべく操作スイッチ9aを切替えると、電動モータ13が駆動され、ネジ機構14が収縮される。このため、ストッパ部15がブレーキペダル2を後方に移動させる方向に移動し、図3(a)に示すように、ブレーキペダル2の位置が後方に調整される。そして、このようなブレーキペダル2の位置調整に伴って、カムフォロワ16の位置も変動し、それに伴ったカム17が支持軸18を中心として回動させられるため、バネ19が撓み、発生させられる反力も同時に調整される。
【0045】
さらに、反力調整のみを行う場合、もしくはペダル位置・反力調整装置7による反力調整に加えて更なる反力調整を行う場合には、反力発生装置8によってその調整を行う。具体的には、発生させる反力が大きくなるように調整すべく操作スイッチ9bを切替えると、電動モータ22が駆動され、ネジ機構21が収縮される。このため、ストッパ部20がバネ19を撓ませ、バネ19の弾性力がカム17およびカムフォロワ16を介してよりブレーキペダル2に加えられる。これにより、ブレーキペダル2に対して発生させられる反力が大きくされる。逆に、発生させる反力が小さくなるように調整すべく操作スイッチ9bを切替えると、電動モータ22が駆動され、ネジ機構21が伸長される。このため、ストッパ部20によるバネ19の撓み量が少なくされる。これにより、ブレーキペダル2に対して発生させられる反力が小さくされる。
【0046】
このように、本実施形態のブレーキペダル装置1では、ペダル位置・反力調整装置7にてペダルアーム4を踏み込み方向前後に移動させることで反力発生装置8内の反力発生機構にて発生させられる反力が調整できるようにしている。このため、ペダル位置・反力調整装置7を駆動することにより、これらペダル位置調整と反力調整の双方を同時に行うことが可能となる。
【0047】
図4は、ペダル位置調整を行うことにより、ブレーキペダル2の初期位置を車両後方(ドライバに近い側)にしたときと車両前方(ドライバから遠い側)にしたときのストローク量−踏力特性を示した図である。この図中の範囲Aおよび範囲Bは、必要な踏力を得るために必要なストローク量の範囲を示している。この図のうち範囲Aが図3(a)のようにブレーキペダル2が後方に位置している場合を示しており、範囲Bが図3(b)のようにブレーキペダル2が前方に位置している場合を示している。
【0048】
例えば女性のようにブレーキペダル2の初期位置をドライバ側に近づけたい場合には、図3(a)に示されるようにブレーキペダル2を後方に位置させるようにする。この場合には、図4中の範囲Aが用いられ、ストロークに対して比較的小さな踏力で必要な制動力が得られるようにすることができる。一方、例えば男性のようにブレーキペダル2の初期位置をドライバ側から遠ざけたい場合には、図3(b)に示されるようにブレーキペダル2を前方に位置させるようにする。この場合には、図4中の範囲Bが用いられ、ストロークに対して比較的大きな踏力を発生させなければ必要な制動力が得られないようにすることができる。
【0049】
さらに、本実施形態のブレーキペダル装置1では、ペダル位置・反力調整装置7の他に、さらに反力発生装置8を備えた構造としている。このため、反力発生装置8による反力調整も行うことが可能である。
【0050】
図5は、反力発生装置8によりペダルストローク量−踏力特性を変化させた場合の特性図である。この図に示すように、特性Cの状態から電動モータ22を駆動してネジ機構21を収縮させ、固定部20を図2中の右方向(車体壁面10側)に移動させると、その分バネ19が撓み、ストローク量−踏力特性がオフセットされる。このように、反力発生装置8を作動させることにより、ストローク量−踏力特性を調整することも可能となる。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態のブレーキペダル装置1は、第1実施形態に対してブレーキペダル装置1の形式を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0051】
図6は、本実施形態にかかるブレーキペダル装置1の側面図である。第1実施形態では、吊り下げ式のブレーキペダル装置1について説明しているが、本実施形態では、図6に示されるように、ブレーキペダル2が床面10aから突き出すように設定されたオルガン式のブレーキペダル装置1を採用している。
【0052】
本実施形態のブレーキペダル装置1は、第1実施形態に対してブレーキペダル装置1の各構成要素を第1実施形態に対して上下反対向きに配置したような構造とされている。具体的には、車体壁面10から垂直方向に突き出すように配置されたブラケット11に対して支持軸8が備えられているが、ブレーキペダル2は車体壁面10のうち車室内の床面10aを構成する部分から突き出すように配置されている。ブレーキペダル2におけるペダルアーム4の一端の回転軸12が車体壁面10に対して備えられた固定部30に回動可能に保持されている。そして、ペダルアーム4の一端のうち回転軸12よりもペダル部3とは反対側の位置において、車体壁面10よりも内側の位置にペダル位置・反力調整装置7が備えられている。このペダル位置・反力調整装置7は、ペダル部3がドライバ側に揺動することを規制するように、ブレーキペダル2よりも車両前方側に配置されている。
【0053】
また、カムフォロワ16は回転軸12よりもペダル部3側に配置されており、カム17はカムフォロワ16よりも回転軸12側に配置されている。そして、カム17の面17aは上方を向けられ、ブレーキペダル2が踏み込まれてカムフォロワ16が回転軸12を中心として回動させられたときに、それを面17aで受け止められるように構成されている。なお、バネ19の配置やストッパ部17fの配置なども、第1実施形態に対して上下逆向きにされ、第1実施形態と同様の働きを行うようにされている。
【0054】
以上説明した本実施形態のブレーキペダル装置1のように、吊り下げ式ではなくオルガン式のものにしても、第1実施形態と同様の動作を行うことが可能であり、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0055】
(他の実施形態)
上記第1、第2実施形態では、カム17の面17aの形状が平坦部17b、傾斜部17cおよび平坦部17dを有する形状としたが、面17aの形状を適宜変更することにより、ストローク量−踏力特性を変化させることが可能である。また、カムフォロワ16とカム17とが接触する初期位置を変更することによっても、ストローク踏力特性を調整することが可能である。
【0056】
また、上記第1実施形態では、ペダル位置・反力調整装置7をブレーキペダル2の回転軸12に対してペダル部3側に配置すると共に、ペダルアーム4よりも車両後方に配置している。しかしながら、これは単なる一例であり、他の配置としても構わない。例えば、ペダルアーム4を回転軸12から更に上方に伸ばし、ペダルアーム4のうち回転軸12よりも上方においてペダルアーム4よりも車両前方にペダル位置・反力調整装置7を配置するようにしても良い。
【0057】
同様に、第2実施形態では、ペダル位置・反力調整装置7をブレーキペダル2の回転軸12に対してペダル部3と反対側に配置すると共に、ペダルアーム4よりも車両前方に配置している。しかしながら、これは単なる一例であり、他の配置としても構わない。例えば、回転軸12よりもペダル部3側において、ペダルアーム4よりも車両後方にペダル位置・反力調整装置7を配置するようにしても良い。ただし、オルガン式の場合、その位置にペダル位置・反力調整装置7を配置するとドライバの足に当たる可能性もあるため、好ましくは第2実施形態の配置とすると良い。
【0058】
また、上記第1実施形態では、ペダル位置・反力調整装置7に加えて反力発生装置8を備えた構造について説明した。第2実施形態では、ペダル位置・反力調整装置7のみが備えられ、反力発生装置8については備えられていない構造を示したが、第1実施形態と同様に反力発生装置8を備えた構造とすることもできる。
【0059】
また、上記第1、第2実施形態ではブレーキペダル2に対して反力を発生させるためにバネ19の弾性力を用い、かつ、省スペース化を図るために、支持軸18と同軸的に配置できる捩りバネによってバネ19を構成しているが、必ずしもバネ19でなくても良いし、捩りバネでなくても良い。例えば、ストロークシミュレータのようなシリンダ内にバネが配置された構造であっても構わない。
【0060】
なお、上記第1、第2実施形態では、ペダル装置としてブレーキペダル装置1を例に挙げて説明したが、その他のペダル装置、具体的にはアクセルペダル装置に対しても本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるブレーキペダル装置1が適用されるブレーキシステムの概略構成を示したブロック図である。
【図2】図1に示すブレーキシステムに備えられたブレーキペダル装置1の側面図である。
【図3】ペダル位置調整の様子を示したブレーキペダル装置1の側面図である。
【図4】ペダル位置調整を行うことにより、ブレーキペダル2の初期位置を車両後方にしたときと車両前方にしたときのストローク量−踏力特性を示した図である。
【図5】反力発生装置8によりペダルストローク量−踏力特性を変化させた場合の特性図である。
【図6】本発明の第2実施形態にかかるブレーキペダル装置1の側面図である。
【符号の説明】
【0062】
1…ブレーキペダル装置、2…ブレーキペダル、3…ペダル部、4…ペダルアーム、7…反力調整装置、8…反力発生装置、9a、9b…操作スイッチ、10…車体壁面、10a…床面、11…ブラケット、12…回転軸、13…電動モータ、14…ネジ機構、15…ストッパ部、16…カムフォロワ、17…カム、18…支持軸、19…バネ、20…ストッパ部、20…固定部、21…ネジ機構、22…電動モータ、30…固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペダル部(3)とペダルアーム(4)とを有し、車体壁面(10)に対して保持される回転軸(12)を中心として揺動するペダル(2)と、
前記ペダル(2)が前記回転軸(12)を中心として踏み込み方向に回動させられると、該回動に伴い前記ペダル(2)に対して反力を発生させる反力発生装置(8)と、
前記ペダル(2)の踏み込み方向前後に前記ペダルアーム(4)を移動させることで該ペダル(2)の初期位置の調整を行うと共に、該初期位置の調整に伴って、前記反力発生装置(8)が発生させる反力の調整を行うペダル位置・反力調整装置(7)と、を具備していることを特徴とするペダル装置。
【請求項2】
ペダル部(3)とペダルアーム(4)とを有し、車体壁面(10)に対して保持される回転軸(12)を中心として揺動するペダル(2)と、
前記ペダルアーム(4)に備えられ、前記ペダル(2)の揺動に伴って前記回転軸(12)を中心として移動するカムフォロワ(16)と、
前記車体壁面(10)に対して保持される支持軸(18)を中心として回動し、前記カムフォロワ(16)に接すると共に、前記カムフォロワ(16)の移動に伴って前記支持軸(18)を中心として回動させられるカム(17)と、
前記支持軸(18)に備えられ、前記カム(17)に対して該カム(17)が前記ペダル(2)の踏み込みによって前記回転軸(12)を中心として回動させられるほど大きな弾性力を付与するバネ(19)と、
前記ペダル(2)の踏み込み方向前後に前記ペダルアーム(4)を移動させることで該ペダル(2)の初期位置の調整を行うと共に、該初期位置の調整に伴って、前記カム(17)および前記カムフォロワ(16)を介して前記バネ(19)の弾性力が作用することにより発生させられる前記ペダル(2)の反力の調整を行うペダル位置・反力調整装置(7)と、を具備していることを特徴とするペダル装置。
【請求項3】
前記バネ(19)は、前記支持軸(18)に対して巻回された捩りバネであり、該支持軸(18)に対して同軸的に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のペダル装置。
【請求項4】
前記捩りバネ(19)の一端は前記カム(17)におけるストッパ部(17f)にて係止されており、前記捩りバネ(19)の他端は前記捩りバネ(19)の撓み量を調整することにより前記反力の調整を行う調整部(20〜22)に固定されていることを特徴とする請求項3に記載のペダル装置。
【請求項5】
前記カム(17)は、前記カムフォロワ(16)と接触する面(17a)が前記ペダル(2)のストローク量に対する前記反力の特性を設定する形状とされていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1つに記載のペダル装置。
【請求項6】
前記ペダル位置・反力調整装置(7)は、電動モータ(13)と、前記電動モータ(13)によって収縮させられるネジ機構(14)と、前記ネジ機構(14)の伸長収縮に伴って前記ペダルアーム(4)を前記踏み込み方向前後に移動させるストッパ部(15)と、を有して構成されていることを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1つに記載のペダル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−26569(P2010−26569A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183679(P2008−183679)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】