説明

ペースト塗布装置およびペースト塗布方法

【課題】電子部品素体の表面に所定のパターンでペーストを塗布する場合に、滲みがなく形状精度の高い塗布パターンを確実に形成することが可能なペースト塗布装置およびそれを用いたペースト塗布方法を提供する。
【解決手段】ペースト2が充填されるスリット3を備え、一方主面4側に電子部品素体20が配置されるスリット板5と、スリット板の他方主面7側に配設される弾性体からなる閉成部材8と、閉成部材8を押圧して、スリット内に充填されたペーストを一方主面側開口部9から吐出させる押圧部材10と、保持穴23の内周部に弾性部材22を配設することにより形成され、ペーストを塗布する工程において、電子部品素体がスリット板から離れる方向に移動することを阻止するストッパ部25を備えた素体保持機構部24を有する保持治具30とを備えた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ペースト塗布装置およびペースト塗布方法に関し、詳しくは、電子部品素体の表面に、導電ペーストなどのペーストを塗布するために用いられるペースト塗布装置およびペースト塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チップ型の電子部品には、例えば、図6に示すように、電子部品素体70の両端側に一対の外部電極81a,81bが形成され、中央部にも側面電極82a,82bが形成された3端子型の電子部品80がある。
【0003】
そして、このような電子部品80の側面電極82a,82bを形成するために用いられる塗布装置として、図7に示すようなペースト塗布装置が提案されている(特許文献1)。
【0004】
このペースト塗布装置51は、電子部品素体70の表面に、所定のパターン(帯状のパターン)でペーストを塗布するための装置であって、ペースト52が充填されるスリット53を備え、一方主面側54にペースト52を塗布すべき電子部品素体70が配置されるスリット板55と、スリット53の他方主面側開口部56を塞ぐように、スリット板55の他方主面側57に配設される弾性体からなる閉成部材58と、閉成部材58をスリット53内に向かって弾性変形させるように押圧して、スリット板55のスリット53内に充填されたペースト52を一方主面側開口部59から吐出させる突起部60を有する押圧部材61とを備えている。
そして、押圧部材61により、閉成部材58を介してスリット53内のペースト52を押圧することにより、一方主面側開口部59から吐出されるペースト52が電子部品素体70の側面に塗布されるように構成されている。
【0005】
ところで、従来は、電子部品素体70にペーストを塗布するにあたって、例えば、図8に示すように、電子部品素体70を収容、保持する貫通孔71の内周面71aにゴムなどからなる弾性部材72を配設することにより形成した素体保持機構部73を備えた保持治具(ホールディングプレート)74を用いて電子部品素体70を保持した状態で、電子部品素体70にペーストを塗布するようにしている。なお、従来は、素体保持機構部73の幅Whを電子部品素体70の幅Wよりも0.1mm程度小さくして、素体保持機構部73の内周面と電子部品素体70の表面との摩擦力により電子部品素体70が保持されるようにしている。
【0006】
しかしながら、図8に示す保持治具(ホールディングプレート)74においては、上述のように、一方の主面側と他方の主面側の平面断面積が同じである貫通孔71の内周面にゴムなどの弾性部材72を配設した素体保持機構部(貫通孔)73に電子部品素体70を保持させるようにしており、素体保持機構部73の内周面と電子部品素体70の側面との摩擦力により電子部品素体70が保持されていることから、保持治具(ホールディングプレート)74により電子部品素体70を保持した状態で、図7の押圧部材61により、閉成部材58を介してスリット53内のペースト52を押圧し、一方主面側開口部59からペースト52を吐出させて電子部品素体70に塗布する際に、ペースト52の吐出圧が電子部品素体70の保持力(電子部品素体をスリット板55に押圧する圧力)よりも大きくなると、電子部品素体70が素体保持機構部73の内部で位置ずれ(後退)し、電子部品素体70とスリット板55との間に隙間が形成されてしまうことになる。
そして、電子部品素体70とスリット板55との間に隙間が存在している状態でペースト52が塗布されると、ペースト52がスリット53の幅方向などに広がって塗布され、塗布パターンの周辺部に滲みが発生し、側面電極となる印刷パターンの直線性が悪化するなどの問題点がある。
【特許文献1】特開2000−340451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明は、上記問題点を解決するものであり、電子部品素体の表面に所定のパターンでペーストを塗布する場合に、滲みのない所望の形状を有する塗布パターンを確実に形成することが可能なペースト塗布装置およびそれを用いたペースト塗布方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本願発明(請求項1)のペースト塗布装置は、
電子部品素体の表面に所定のパターンでペーストを塗布するための装置であって、
前記電子部品素体に塗布すべきペーストが充填されるスリットを備え、一方主面側にペーストを塗布すべき前記電子部品素体が配置されるスリット板と、
前記スリット板の他方主面側に配設される、弾性体からなる閉成部材と、
前記閉成部材を前記スリット板に向かって弾性変形させるように押圧して、前記スリット板のスリット内に充填されたペーストを加圧し、スリットの一方主面側開口部から吐出させる押圧部材と、
前記電子部品素体を保持し、前記ペーストを前記電子部品素体に塗布する工程では、前記電子部品素体の所定の面を前記スリット板の一方主面に当接させた状態で保持する保持治具であって、前記電子部品素体を保持するための保持穴の内周部に弾性部材を配設することにより形成され、前記ペーストを前記電子部品素体に塗布する工程において、前記電子部品素体が前記スリット板から離れる方向に移動することを阻止するストッパ部を備えた素体保持機構部を有する保持治具と、
を具備することを特徴としている。
【0009】
また、請求項2のペースト塗布装置は、前記保持治具の前記ストッパ部が、前記スリット板と対向する面側から逆の面側に向かって、前記弾性部材を備えた前記素体保持機構部の開口部面積が、連続的に小さくなるように構成されたテーパ部であることを特徴としている。
【0010】
また、請求項3のペースト塗布装置は、前記保持治具の前記ストッパ部が、前記スリット板と対向する面側から逆の面側に向かって、前記弾性部材を備えた素体保持機構部の開口部面積が、段階的に小さくなるように構成された段付き構造部であることを特徴としている。
【0011】
また、請求項4のペースト塗布装置は、前記保持治具の素体保持機構部が貫通孔の内周部に弾性部材を配設することにより形成されており、かつ、前記ストッパ部が、貫通孔の内周部に弾性部材を配設することにより形成された前記素体保持機構部の前記スリット板と対向する面側とは逆の面側の開口部を塞ぐように配設される背板であることを特徴としている。
【0012】
また、本願発明(請求項5)のペースト塗布方法は、
請求項1〜4のいずれかに記載のペースト塗布装置を用いたペースト塗布方法であって、
前記スリット板のスリット内にペーストを供給する工程と、
前記スリット板の一方主面に、前記保持治具に保持された電子部品素体を所定の圧力で押圧して当接させる工程と、
前記押圧部材により前記閉成部材を押圧し、スリット内のペーストを加圧して、電子部品素体を前記スリット板の一方主面に押圧する圧力より小さい圧力でペーストをスリットから吐出させ、電子部品素体に塗布する工程と
を具備することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本願発明(請求項1)のペースト塗布装置は、ペーストが充填されるスリットを備え、一方主面側にペーストを塗布すべき電子部品素体が配置されるスリット板と、スリット板の他方主面側に配設される弾性体からなる閉成部材と、閉成部材をスリット板に向かって弾性変形させるように押圧して、スリット板のスリット内に充填されたペーストを加圧し、スリットの一方主面側開口部から吐出させる押圧部材と、電子部品素体を保持するための保持穴の内周部に弾性部材を配設することにより形成され、ペーストを電子部品素体に塗布する工程において、電子部品素体がスリット板から離れる方向に移動することを阻止するストッパ部を備えた素体保持機構部を有する保持治具とを備えているので、ペーストを電子部品素体に塗布する工程で、電子部品素体の所定の面をスリット板の一方主面に当接させた状態(電子部品素体とスリット板の間に隙間がなく塗布されるペーストの滲みが生じにくい状態)で確実に保持することが可能になり、電子部品素体に滲みがなく形状精度の高い塗布パターンを形成することが可能になる。
【0014】
なお、ストッパ部は、ペーストを電子部品素体に塗布する工程において、電子部品素体がスリット板から離れる方向に移動することを阻止することができるように構成されていればよく、好ましい具体的構成としては、本願請求項2〜4のような構成が示されるが、さらにその他の構成とすることも可能である。
なお、素体保持機構部(すなわち、保持穴やその内周部に弾性部材を配設した状態の素体保持機構部)の平面形状に特別の制約はなく、四角形、円形、ひし形など種々の形状とすることが可能である。
【0015】
また、請求項2のペースト塗布装置のように、保持治具のストッパ部として、スリット板と対向する面側から逆の面側に向かって、弾性部材を備えた素体保持機構部の開口部面積が、連続的に小さくなるように構成されたテーパ部を設けることにより、電子部品素体の所定の面をスリット板の一方主面に当接させた状態(電子部品素体とスリット板の間に隙間がなく塗布されるペーストの滲みが生じにくい状態)でより確実に保持することが可能になり、電子部品素体に滲みがなく形状精度の高い塗布パターンを形成することが可能になる。
また、ストッパとして上述のようなテーパ部を設けることにより、比較的簡単な構成で、様々な寸法、形状の電子部品素体に対応することが可能になり、本願発明をさらに実効あらしめることが可能になる。
なお、テーパ部は直線的に開口部面積が変化するような形状の場合に限らず、曲線的に開口部面積が変化するような形状とすることも可能である。また、保持治具の厚み方向の全体にテーパ部が設けられている場合に限らず、保持治具の厚み方向の一部にテーパ部が設けられているような形状とすることも可能である。
【0016】
また、請求項3のペースト塗布装置のように、保持治具のストッパ部として、スリット板と対向する面側から逆の面側に向かって、弾性部材を備えた素体保持機構部の開口部面積が、段階的に小さくなるように構成された段付き構造部を設けることにより、段付き構造部にて、電子部品素体の所定の面をスリット板の一方主面に当接させた状態(電子部品素体とスリット板の間に隙間がなく塗布されるペーストの滲みが生じにくい状態)でさらに確実に保持することが可能になり、電子部品素体に滲みがなく形状精度の高い塗布パターンを形成することが可能になる。
また、本願発明においては、この請求項3の段付き構造と、上記請求項2のテーパ部を備えた構造の組み合わせとすることも可能である。
【0017】
また、請求項4のペースト塗布装置のように、保持治具の素体保持機構部を貫通孔の内周部に弾性部材を配設することにより形成し、かつ、ストッパとして、貫通孔の内周部に弾性部材を配設することにより形成された素体保持機構部のスリット板と対向する面側とは逆の面側の開口部を塞ぐように背板を配設するようにした場合、背板により、電子部品素体の所定の面をスリット板の一方主面に当接させた状態(電子部品素体とスリット板の間に隙間がなく塗布されるペーストの滲みが生じにくい状態)でさらに確実に保持することが可能になり、電子部品素体に滲みがなく形状精度の高い塗布パターンを形成することが可能になる。
なお、保持治具と背板とを別体として構成することが可能になるため、背板の構造などを適切に設定する(例えば、背板の下面を平坦にしたり、下面に凸部を設けたりする)ことにより、ストッパ位置の調整などの自由度を向上させることが可能になり、本願発明をさらに実効あらしめることができる。
【0018】
また、本願発明(請求項5)のペースト塗布方法は、上記本願発明(請求項1〜4のいずれかに記載の発明)のペースト塗布装置を用い、スリット板のスリット内にペーストを供給する工程、保持治具に保持された電子部品素体をスリット板の一方主面に所定の圧力で押圧する工程、押圧部材により閉成部材を押圧して電子部品素体をスリット板の一方主面に押圧する圧力より小さい圧力でペーストをスリットから吐出させ、電子部品素体に塗布する工程、の各工程を経てペーストを塗布するようにしているので、ペーストを電子部品素体に塗布する際に、電子部品素体の所定の面をスリット板の一方主面に当接させた状態(電子部品素体とスリット板の間に隙間がなく塗布されるペーストの滲みが生じにくい状態)で確実に保持することが可能になり、電子部品素体に滲みがなく形状精度の高い塗布パターンを形成することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本願発明の実施例を示して、本願発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【実施例1】
【0020】
図1および図2は、それぞれ、本願発明の実施例1にかかるペースト塗布装置の要部構成を示す図である。なお、図1および図2において同一符号を付した部分は同一または相当する部分を示している。
【0021】
この実施例1のペースト塗布装置は、いずれも、図3に示すような、電子部品素体20の側面20aに複数の電極(側面電極)21を備えた構造を有する電子部品(例えばアレイタイプの電子部品)40を製造する工程で、側面電極21を形成するための導電ペーストを電子部品素体20の側面20aに塗布するのに用いられるペースト塗布装置である。
【0022】
これらのペースト塗布装置1は、図1および図2に示すように、電子部品素体20に塗布すべきペースト2が充填される複数のスリット3を備え、一方主面4側にペースト2を塗布すべき電子部品素体20が配置されるスリット板5と、スリット3の他方主面側開口部6と連通するペースト溜まり(ヘッダ)6aの開口部を塞ぐように、スリット板5の他方主面7側に配設される、弾性体からなる閉成部材8と、閉成部材8をスリット3内に向かって弾性変形させるように押圧して、スリット板5のスリット3内に充填されたペースト2を一方主面側開口部9から吐出させる押圧部材10を備えている。なお、押圧部材10の上面側には、凸部10aが配設されており、閉成部材8をスリット3内に向かって確実に押圧して、弾性変形させることができるように構成されている。
【0023】
さらに、この実施例1のペースト塗布装置1は、電子部品素体20を保持し、ペースト2を電子部品素体20に塗布する工程では、電子部品素体20の所定の面(この実施例では側面20a)をスリット板5の一方主面4に当接させた状態で保持する保持治具30を備えている。この保持治具30は、電子部品素体20を保持するための保持穴(この実施例1では貫通孔(ただし、図1および図2のペースト塗布装置1の構成では、不貫通孔とすることも可能である))23の内周部に弾性部材22を配設することにより形成された素体保持機構部24を備えており、素体保持機構部24は、ペースト2を電子部品素体20に塗布する工程において、電子部品素体20がスリット板5から離れる方向に移動することを阻止するストッパ部25を備えている。
【0024】
なお、図1のペースト塗布装置1においては、保持穴23の内周部に弾性部材22を配設することにより形成された素体保持機構部24の開口部面積(平面面積)が、スリット板5と対向する面30a側から逆の面30b側に向かって連続的に小さくなるように構成されており、この素体保持機構部24のテーパ部26が、ペースト2を電子部品素体20に塗布する工程において、電子部品素体20がスリット板5から離れる方向に移動することを阻止するストッパ部25として機能するように構成されている。
【0025】
また、図2のペースト塗布装置1において、素体保持機構24は、保持穴23の内周部に弾性部材22を配設することにより形成された素体保持機構部24の開口部面積(平面面積)が、スリット板5と対向する面30a側から逆の面30b側に向かって段階的に小さくなるような段付き構造を有しており、この素体保持機構部24の段付き構造部27が、ペースト2を電子部品素体20に塗布する工程において、電子部品素体20がスリット板5から離れる方向に移動することを阻止するストッパ部25として機能するように構成されている。
【0026】
次に、上記実施例1のペースト塗布装置1を用いて、電子部品素体にペーストを塗布する方法について説明する。
なお、ここでは、図3に示すような、電子部品素体20の側面20aに複数の電極(側面電極)21を備えた構造を有する電子部品を製造するにあたって、側面電極21となる導電ペーストを電子部品素体20の側面20aに塗布する場合を例にとって説明する。
【0027】
(1)まず、スリット板5のスリット3内にペースト2を供給する。
(2)それから、スリット板5の一方主面4に、保持治具30に保持された電子部品素体20を所定の圧力で押圧して電子部品素体20の側面20aを当接させる。
(3)次に、押圧部材10により閉成部材8を押圧し、スリット3内のペースト2を加圧して、電子部品素体20をスリット板5の一方主面4に押圧する圧力より小さい圧力でペースト2をスリット3から吐出させ、電子部品素体20の側面20aに塗布する。
【0028】
これにより、ペースト2を電子部品素体20の側面20aに塗布する際に、電子部品素体20の側面20aをスリット板5の一方主面4に当接させた状態(電子部品素体20の側面20aとスリット板5の間に隙間がなく塗布されるペースト2の滲みが生じにくい状態)で確実に保持することが可能になり、電子部品素体20の側面20aに滲みがなく形状精度の高い塗布パターンを形成することが可能になる。
【0029】
なお、上記実施例1のペースト塗布装置を用いた場合、塗布パターンの塗布幅の最大値と最小値の差を例えば、従来のペースト塗布装置を用いた場合の30μmから20μmに減少させることが可能になり、塗布パターンの長手方向に沿う方向の直線性を向上させることが可能になる。
【0030】
図1および図2に示した、この実施例1のペースト塗布装置1は、上述のように構成されており、電子部品素体20を保持し、ペースト2を電子部品素体20に塗布する際に、電子部品素体20の側面20aをスリット板5の一方主面4に当接させた状態で保持することができるように構成された保持治具30を備えているので、電子部品素体20とスリット板5の間に隙間がない状態でペースト2を電子部品素体20の側面20aに塗布することが可能になり、電子部品素体20の側面20aに滲みがなく形状精度の高い塗布パターンを形成することができる。
【0031】
なお、図1のペースト塗布装置1のように、テーパ部26を設けてストッパ部25とするようにした場合、比較的簡単な構成で、様々な寸法、形状の電子部品素体に対応することが可能になり、本願発明をさらに実効あらしめることができる。
【0032】
また、図2のペースト塗布装置1のように、段付き構造部27を設けてストッパ部25とするようにした場合、ペースト2を電子部品素体20に塗布する際に、段付き構造部27により、電子部品素体20の側面20aをスリット板5の一方主面4に当接させた状態でさらに確実に保持することが可能になり、電子部品素体20に滲みがなく形状精度の高い塗布パターンを効率よく形成することが可能になる。
【0033】
したがって、上述のような実施例1のペースト塗布装置を用いることにより、図3に示すような、電子部品素体20の側面20aに複数の電極(側面電極)21を備えた構造を有する電子部品40を効率よく製造することができる。
【実施例2】
【0034】
図4および図5はいずれも、本願発明の他の実施例(実施例2)にかかるペースト塗布装置の要部構成を示す図である。なお、図4および図5において、図1および図2と同一符号を付した部分は同一または相当する部分を示している。
【0035】
また、この実施例2のペースト塗布装置1も、図3に示すような、電子部品素体20の側面20aに複数の電極(側面電極)21を備えた構造を有する電子部品40を製造するにあたって、側面電極21となる導電ペーストを電子部品素体20の側面20aに塗布するためのペースト塗布装置である。
【0036】
この実施例2のペースト塗布装置1においては、図4,図5に示すように、素体保持機構部24は、電子部品素体20を保持するための保持穴(貫通孔)23の内周部に弾性部材22を配設するとともに、内周部に弾性部材22が配設された保持穴(貫通孔)23の、スリット板5と対向する面30a側とは逆の面30b側の開口部24aを塞ぐように、スリット板5と対向する面30a側とは逆の面30b側に背板28を配設することにより形成されている。
【0037】
なお、素体保持機構部24の幅は、例えば電子部品素体20の幅よりも小さく形成されており、素体保持機構部24の内周面と電子部品素体20の表面との摩擦力により電子部品素体20が保持されるように構成されている。
そして、スリット板5と対向する面30a側とは逆の面30b側に、保持穴(貫通孔)23の開口部24aを塞ぐように配設された背板28がストッパ部25として機能するように構成されている。
【0038】
なお、図4のペースト塗布装置1においては、保持治具30のストッパ部25を構成する背板28(28a)として、平坦な板状部材が用いられている。
一方、図5のペースト塗布装置1においては、保持治具30のストッパ部25を構成する背板28(28b)として、下面側に、電子部品素体20の上面を押圧する凸部29が配設された板状部材が用いられている。
【0039】
この実施例2のペースト塗布装置1のように、ストッパ部25として、保持治具30のスリット板5と対向する面30a側とは逆の面30b側に、保持穴(貫通孔)23の開口部24aを塞ぐように背板28(28a,28b)を配設した場合にも、ペースト2を電子部品素体20に塗布する際に、背板28(28a,28b)により、電子部品素体20の側面20aをスリット板5の一方主面4に当接させた状態(電子部品素体20の側面20aとスリット板5の間に隙間がなく塗布されるペースト2の滲みが生じにくい状態)で確実に保持することが可能になり、電子部品素体20の側面20aに滲みがなく形状精度の高い塗布パターンを形成することが可能になる。
【0040】
また、上記実施例2の構成においては、保持治具30と、背板28(28a,28b)を別体とすることが可能になるため、背板28(28a,28b)の構造などを適切に設定する(例えば、背板の下面を平坦にしたり、下面に凸部を設けたり、凸部の形状を調整したりする)ことにより、ストッパ位置の調整などの自由度を向上させることが可能になり、本願発明をさらに実効あらしめることができる。
【0041】
なお、上記実施例では複数のスリットから同時にペーストを供給して、複数の塗布パターン(側面電極)を同時に形成する場合を例にとって説明したが、本願発明においてスリットの数に特別の制約はなく、スリットが単数の場合や、スリットの数が上記実施例の場合とは異なる複数の場合にも適用することが可能である。
【0042】
また、上記実施例では、帯状のパターンとなるようにペーストを塗布する場合を例にとって説明したが、本願発明は、塗布すべきペーストパターンに特別の制約はなく、種々の塗布パターンでペーストを塗布する場合に広く適用することが可能である。
【0043】
また、上記実施例では、電子部品素体の側面に電極(側面電極)を形成する場合を例にとって説明したが、本願発明は、電子部品素体の側面に電極を形成する場合に限らず、上面や下面、あるいは端面など、電子部品素体の種々の面に電極を形成する場合に広く適用することが可能である。
【0044】
また、上記実施例では、ペーストが導電ペーストである場合を例にとって説明したが、本願発明は、導電ペーストに限らず、抵抗ペーストや絶縁体ペーストなどの種々のペーストを塗布する場合に広く適用することが可能であり、その場合にも同様の作用効果を得ることができる。
【0045】
本願発明はさらにその他の点においても上記実施例に限定されるものではなく、ストッパ部の具体的な構成、素体保持機構部を構成する保持穴や保持穴に配設される弾性部材の材質や構造、スリット板、閉成部材、および押圧部材の材質や構成、細部の構造などに関し、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
上述のように、本願発明によれば、電子部品素体の所定の面をスリット板の一方主面に確実に当接させた状態(電子部品素体とスリット板の間に隙間がなく塗布されるペーストの滲みが生じにくい状態)でペーストを電子部品素体に塗布することが可能で、電子部品素体に滲みがなく形状精度の高い塗布パターンを形成することができる。
したがって、本願発明は、電子部品素体の表面に種々のペースト(導電ペースト、抵抗ペースト、絶縁体ペーストなど)を塗布する工程を経て製造される電子部品の製造工程に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本願発明の一実施例(実施例1)にかかるペースト塗布装置の要部構成を示す図である。
【図2】本願発明の一実施例(実施例1)にかかる他のペースト塗布装置の要部構成を示す図である。
【図3】本願発明の一実施例にかかるペースト塗布装置を用いてペーストを印刷する工程を経て形成される側面電極を備えた電子部品を示す斜視図である。
【図4】本願発明の他の実施例(実施例2)にかかるペースト塗布装置の要部構成を示す図である。
【図5】本願発明の他の実施例(実施例2)にかかる他のペースト塗布装置の要部構成を示す図である。
【図6】側面電極を備えた3端子型電子部品を示す斜視図である。
【図7】従来のペースト塗布装置を示す図である。
【図8】従来の電子部品素体の保持治具の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1 ペースト塗布装置
2 ペースト
3 スリット
4 一方主面
5 スリット板
6 他方主面側開口部
6a ペースト溜まり(ヘッダ)
7 他方主面
8 閉成部材
9 一方主面側開口部
10 押圧部材
10a 凸部
20 電子部品素体
20a 側面
21 側面電極
22 弾性部材
23 貫通孔(保持穴)
24 素体保持機構部
24a 開口部
25 ストッパ部
26 テーパ部
27 段付き構造部
28(28a) 背板
28(28b) 背板
29 凸部
30 保持治具
30a スリット板と対向する面
30b スリット板と対向する面と逆の面
40 電子部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品素体の表面に所定のパターンでペーストを塗布するための装置であって、
前記電子部品素体に塗布すべきペーストが充填されるスリットを備え、一方主面側にペーストを塗布すべき前記電子部品素体が配置されるスリット板と、
前記スリット板の他方主面側に配設される、弾性体からなる閉成部材と、
前記閉成部材を前記スリット板に向かって弾性変形させるように押圧して、前記スリット板のスリット内に充填されたペーストを加圧し、スリットの一方主面側開口部から吐出させる押圧部材と、
前記電子部品素体を保持し、前記ペーストを前記電子部品素体に塗布する工程では、前記電子部品素体の所定の面を前記スリット板の一方主面に当接させた状態で保持する保持治具であって、前記電子部品素体を保持するための保持穴の内周部に弾性部材を配設することにより形成され、前記ペーストを前記電子部品素体に塗布する工程において、前記電子部品素体が前記スリット板から離れる方向に移動することを阻止するストッパ部を備えた素体保持機構部を有する保持治具と、
を具備することを特徴とするペースト塗布装置。
【請求項2】
前記保持治具の前記ストッパ部が、前記スリット板と対向する面側から逆の面側に向かって、前記弾性部材を備えた前記素体保持機構部の開口部面積が、連続的に小さくなるように構成されたテーパ部であることを特徴とする請求項1記載のペースト塗布装置。
【請求項3】
前記保持治具の前記ストッパ部が、前記スリット板と対向する面側から逆の面側に向かって、前記弾性部材を備えた素体保持機構部の開口部面積が、段階的に小さくなるように構成された段付き構造部であることを特徴とする請求項1記載のペースト塗布装置。
【請求項4】
前記保持治具の素体保持機構部が貫通孔の内周部に弾性部材を配設することにより形成されており、かつ、前記ストッパ部が、貫通孔の内周部に弾性部材を配設することにより形成された前記素体保持機構部の前記スリット板と対向する面側とは逆の面側の開口部を塞ぐように配設される背板であることを特徴とする請求項1記載のペースト塗布装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のペースト塗布装置を用いたペースト塗布方法であって、
前記スリット板のスリット内にペーストを供給する工程と、
前記スリット板の一方主面に、前記保持治具に保持された電子部品素体を所定の圧力で押圧して当接させる工程と、
前記押圧部材により前記閉成部材を押圧し、スリット内のペーストを加圧して、電子部品素体を前記スリット板の一方主面に押圧する圧力より小さい圧力でペーストをスリットから吐出させ、電子部品素体に塗布する工程と
を具備することを特徴とするペースト塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−49517(P2006−49517A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−227182(P2004−227182)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】