説明

ホスファチジルイノシトール3−キナーゼのテトラヒドロチアゾロピリジン阻害剤

本発明は、PI3K、特にPI3Kγの阻害剤として有用な式(I)


の化合物に関する。本発明はまた、該化合物を含む薬学的に許容される組成物、ならびに種々の疾患、状態または障害の処置における該組成物の使用方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)の阻害剤として有用な化合物に関する。本発明はまた、本発明の化合物を含む薬学的に許容される組成物、および種々の障害の処置における該組成物の使用法を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
PI3Kは、膜脂質ホスファチジルイノシトール(PI)のイノシトール環の3'−OHのリン酸化を触媒し、PI3−ホスフェート[PI(3)P、PIP]、PI3、4−ビスホスフェート[PI(3,4)P2、PIP2]およびPI3,4,5−トリスホスフェート[PI(3,4,5)P3、PIP3]を生じる脂質キナーゼファミリーである。PI(3,4)P2およびPI(3,4,5)P3は、種々の細胞内シグナル伝達タンパク質を捕捉するための部位として作用し、順々にシグナル伝達複合体を形成して細胞外シグナルを原形質膜の細胞質表面へ伝達する。
【0003】
これまでに、クラスIのPI3Kを含む8種の哺乳動物PI3Kが同定されている。クラスIaは、PI3Kα、PI3KβおよびPI3Kδを含む。クラスIaの酵素は全て、SH2ドメインを含むp85アダプターサブユニットと結合した触媒サブユニット(p110α、p110βまたはp110δ)を含むヘテロ二量体複合体である。クラスIaのPI3Kは、チロシンキナーゼシグナル伝達を介して活性化し、細胞増殖および生存に関与する。PI3KαおよびPI3Kβはまた、種々のヒト癌における腫瘍形成にも関与する。故に、PI3KαおよびPI3Kβの薬理学的阻害剤は、種々のタイプの癌の処置に有用である。
【0004】
クラスIbのPI3Kの唯一のメンバーであるPI3Kγは、触媒サブユニットp110γで構成され、それはp101調節サブユニットと結合する。PI3Kγは、ヘテロ三量体Gタンパク質のβγサブユニットとの結合を介してGタンパク質共役受容体(GPCR)により制御される。PI3Kγは主に造血細胞および心筋細胞で発現され、炎症およびマスト細胞機能に関与する。故に、PI3Kγの薬理学的阻害剤は、種々の炎症性疾患、アレルギーおよび心血管疾患の処置に有用である。
【0005】
多数のPI3K阻害剤が開発されているが、自己免疫性疾患、炎症性疾患、癌、アレルギー性疾患、喘息および呼吸器疾患のような種々の障害および疾患を処置するためにはPI3Kを阻害する、さらなる化合物が必要とされる。従って、PI3Kの阻害剤として有用なさらなる化合物の開発が望まれ得る。
【発明の概要】
【0006】
発明の概要
本発明の化合物、およびその薬学的に許容される組成物が、PI3K、特にPI3Kγの阻害剤として有効であることを見いだした。従って、本発明は、一般式:
【化1】


(式中、R、R、R、XおよびXはそれぞれ、本明細書に定義の通りである。)
で示される化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0007】
本発明はまた、式Iの化合物および薬学的に許容される担体、アジュバントまたはビークルを含む医薬組成物を提供する。これらの化合物および医薬組成物は、自己免疫性疾患およびCNSの炎症性疾患を含む種々の障害の処置またはその重篤度の軽減に有用である。
【0008】
本発明により提供される化合物および組成物はまた、生物学的および病理学的事象におけるPI3Kの研究;そのようなキナーゼにより仲介される細胞内シグナル伝達経路の研究;および、新規キナーゼ阻害剤の比較評価、にも有用である。
【0009】
発明の詳細な説明
定義および一般的用語
本明細書で用いられているように、他に特記しない限り、以下の定義が用いられ得る。本発明の目的に関して、化学元素は、元素周期表、CAS version, the Handbook of Chemistry and Physics, 75th Ed(1994)に従って同定する。さらに、有機化学の一般的原理は、“Organic Chemistry”, Thomas Sorrell, University Science Books, Sausalito: 1999および“March's Advanced Organic Chemistry”, 5th Ed., Smith, M.B. and March, J., eds. John Wiley & Sons, New York: 2001(引用によりその内容全体を本明細書中に包含させる。)に記載されている。
【0010】
本明細書で記載の通り、本発明の化合物は、一般的に本発明の特定のクラス、サブクラスおよび化学種により説明または例示しているように、所望により1個以上の置換基で置換されていてよい。“所望により置換されていてよい”という記載は、“置換または非置換”という記載と互換的に用いられ得る。一般に、用語“置換”は、用語“所望により”が前にあってもなくても、ある構造の1個以上の水素ラジカルの、特定の置換基ラジカルでの置換を意味する。他に特記しない限り、所望により置換されていてよい基は、該基の各置換可能な位置に置換基を有してよい。ある構造において2個以上の位置が特定の基から選択された2個以上の置換基で置換されていてよいとき、該置換基は、それぞれの位置で同一でも異なっていてもよい。
【0011】
本明細書に記載の通り、用語“所望により置換されていてよい”が列挙される基の前にあるとき、該用語は、その後ろに列挙された置換され得る基の全てに関する。例えば、Xが、ハロゲン;所望により置換されていてよいC1−3アルキルまたはフェニルであるとき、Xは、所望により置換されていてよいアルキルまたは所望により置換されていてよいフェニルの何れかであり得る。同様に、用語“所望により置換されていてよい”が列挙される基の後ろにあるとき、該用語はまた、他に特記しない限り、その前に列挙された置換され得る基の全てに関する。例えば、Xが、ハロゲン、C1−3アルキルまたはフェニルであって、Xが、所望によりJで置換されていてよいとき、C1−3アルキルおよびフェニルは両方とも、所望によりJにより置換されていてよい。当業者には明らかである通り、H、ハロゲン、NO、CN、NH、OHまたはOCFのような基は、それらが置換可能な基ではないために含まれ得ない。置換基ラジカルまたは構造が、“所望により置換されていてよい”と同定または定義されないとき、該置換基ラジカルまたは構造は非置換である。
【0012】
本発明により計画される置換基の組合せは、好ましくは、安定なまたは化学的に実行可能な化合物の形成をもたらす組み合わせである。本明細書で用いる“安定な”は、それらの製造、検出、および好ましくはそれらの回収、精製、ならびに本明細書に開示の1つ以上の目的のための使用を可能にする条件に付されたときに、実質的に変化しない化合物を意味する。ある態様において、安定な化合物または化学的に実行可能な化合物は、40℃以下の温度で、湿気または他の化学反応条件の非存在下に維持したとき、少なくとも1週間実質的に変化しないものである。
【0013】
本明細書で用いる用語“脂肪族”または“脂肪族基”は、完全に飽和であるか、または1個以上の不飽和単位を含む、直鎖(すなわち、非置換)または分枝鎖の、置換または非置換炭化水素鎖を意味する。他に特記されない限り、脂肪族基は、1−20個の炭素原子を含む。いくつかの態様において、脂肪族基は、1−10個の炭素原子を含む。他の態様において、脂肪族基は、1−8個の炭素原子を含む。さらに他の態様において、脂肪族基は、1−6個の炭素原子を含み、さらに他の態様において、脂肪族基は、1−4個の炭素原子を含む。好適な脂肪族基には、直鎖または分枝鎖の、置換または非置換アルキル、アルケニル、またはアルキニル基が含まれるが、これらに限定されない。脂肪族基のさらなる例には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソブチル、ビニルおよびsec−ブチルが含まれる。本明細書で用いる用語“アルキル”および接頭辞“alk−”は、直鎖および分枝状飽和炭素鎖の両方を包含する。本明細書で用いる用語“アルキレン”は、飽和二価の直鎖または分枝鎖炭化水素基であって、メチレン、エチレン、イソプロピレンなどが例示される。本明細書で用いる用語“アルキリデン”は、二価の直鎖アルキル結合基を意味する。本明細書で用いる用語“アルケニル”は、1個以上の炭素−炭素二重結合を含む一価の直鎖または分枝鎖炭化水素基を意味する。本明細書で用いる用語“アルキニル”は、1個以上の炭素−炭素三重結合を含む一価の直鎖または分枝鎖炭化水素基を意味する。
【0014】
用語“シクロ脂肪族”(または“炭素環”)は、単環式C−C炭化水素または二環式C−C12炭化水素を意味し、それは、完全に飽和であるか、または1個以上の不飽和単位を含むが、芳香族性ではなく、分子の残りの部分とただ1つの結合点を有し、そして該二環式環系中の個々の環は3−7員環である。好適なシクロ脂肪族基には、シクロアルキル、シクロアルケニルおよびシクロアルキニルが含まれるが、これらに限定されない。脂肪族基のさらなる例には、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチルおよびシクロヘプテニルが含まれる。
【0015】
本明細書で用いる用語“ヘテロ環”、“ヘテロシクリル”、“ヘテロシクロ脂肪族”または“ヘテロ環式”は、単環式、二環式または三環式環系を意味し、ここで、環系の少なくとも1個の環は、同一または異なる1個以上のヘテロ原子を含み、そして、完全に飽和であるか、または1個以上の不飽和単位を含むが、芳香族性ではなく、分子の残りの部分とただ1つの結合点を有する。いくつかの態様において、“ヘテロ環”、“ヘテロシクリル”、“ヘテロシクロ脂肪族”または“ヘテロ環式”基は、3ないし14環員を有し、ここで、1以上の環員は酸素、硫黄、窒素またはリンから独立して選択されるヘテロ原子であり、この環系の各環は3〜8環員を含む。
【0016】
ヘテロ環式環の例には、単環系:2−テトラヒドロフラニル、3−テトラヒドロフラニル、2−テトラヒドロチオフェニル、3−テトラヒドロチオフェニル、2−モルホリノ、3−モルホリノ、4−モルホリノ、2−チオモルホリノ、3−チオモルホリノ、4−チオモルホリノ、1−ピロリジニル、2−ピロリジニル、3−ピロリジニル、1−テトラヒドロピペラジニル、2−テトラヒドロピペラジニル、3−テトラヒドロピペラジニル、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、1−ピラゾリニル、3−ピラゾリニル、4−ピラゾリニル、5−ピラゾリニル、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−ピペリジニル、2−チアゾリジニル、3−チアゾリジニル、4−チアゾリジニル、1−イミダゾリジニル、2−イミダゾリジニル、4−イミダゾリジニル、5−イミダゾリジニル;および、二環系:3−1H−ベンズイミダゾール−2−オン、3−(1−アルキル)−ベンズイミダゾール−2−オン、インドリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ベンゾチオラン、ベンゾジチアン、および1,3−ジヒドロ−イミダゾール−2−オンが含まれるが、これらに限定されない。
【0017】
用語“ヘテロ原子”は、酸素、硫黄、窒素、リンまたはケイ素(窒素、硫黄またはリンの任意の酸化形態;塩基性窒素の第四級形態;またはヘテロ環式環の置換可能な窒素、例えば、N(3,4−ジヒドロ−2H−ピロリルの場合)、NH(ピロリジニルの場合)またはNR(N−置換ピロリジニルの場合)を含む)の1個以上を意味する。
【0018】
本明細書で用いる用語“不飽和”は、ある部分が1個以上の不飽和単位を有することを意味する。
【0019】
本明細書で用いる用語“アルコキシ”または“チオアルキル”は、酸素原子(“アルコキシ”)または硫黄原子(“チオアルキル”)を介して主炭素鎖に結合した、上記に定義のアルキル基を意味する。
【0020】
用語“ハロアルキル”、“ハロアルケニル”および“ハロアルコキシ”は、場合によっては1個以上のハロゲン原子で置換されていてもよい、アルキル、アルケニルまたはアルコキシを意味する。用語“ハロゲン”は、F、Cl、BrまたはIを意味する。
【0021】
単独で用いられるか、または“アラルキル”、“アラルコキシ”もしくは“アリールオキシアルキル”のようなより大きな部分の一部として用いられる用語“アリール”は、全部で6ないし14環員を有する単環式、二環式または三環式環系を意味する(この環系は、分子の残りの部分とただ1つの結合点を有し、この系の少なくとも1つの環は芳香族性であり、この系の各環は3〜7環員を含む)。用語“アリール”は、“アリール環”と互換的に使用できる。アリール環の例には、フェニル、ナフチルおよびアントラセンが含まれる。
【0022】
単独で用いられるか、または“へテロアラルキル”もしくは“ヘテロアリールアルコキシ”のようなより大きな部分の一部として用いられる用語“ヘテロアリール”は、全部で5ないし14環員を有する単環式、二環式および三環式環系を意味する(この環系は、分子の残りの部分とただ1つの結合点を有し、この系の少なくとも1つの環は芳香族性であり、この系の少なくとも1つ環は、窒素、酸素、硫黄またはリンから独立して選択される1個以上のヘテロ原子を含み、この系の各環は3〜7環員を含む)。用語“ヘテロアリール”は、“ヘテロアリール環”または“ヘテロ芳香族”と互換的に使用できる。
【0023】
ヘテロアリール環のさらなる例には、単環系:2−フラニル、3−フラニル、N−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル、3−イソキサゾリル、4−イソキサゾリル、5−イソキサゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、N−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、ピリダジニル(例えば、3−ピリダジニル)、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、テトラゾリル(例えば、5−テトラゾリル)、トリアゾリル(例えば、2−トリアゾリルおよび5−トリアゾリル)、2−チエニル、3−チエニル、ピラゾリル(例えば、2−ピラゾリル)、イソチアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,3−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、ピラジニル、1,3,5−トリアジニル、および二環系:ベンゾイミダゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、インドリル(例えば、2−インドリル)、プリニル、キノリニル(例えば、2−キノリニル、3−キノリニル、4−キノリニル)、およびイソキノリニル(例えば、1−イソキノリニル、3−イソキノリニル、または4−イソキノリニル)が含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
いくつかの態様において、アリール基(アラルキル、アラルコキシ、アリールオキシアルキルなどを含む)またはヘテロアリール基(ヘテロアラルキル、ヘテロアリールアルコキシなどを含む)は、1個以上の置換基を含み得る。アリールまたはヘテロアリール基の不飽和炭素原子上の好適な置換基には、ハロゲン;−R;−OR;−SR;1,2−メチレンジオキシ;1,2−エチレンジオキシ;所望によりRで置換されていてよいフェニル(Ph);所望によりRで置換されていてよい−O(Ph);所望によりRで置換されていてよい−(CH1−2(Ph);所望によりRで置換されていてよい−CH=CH(Ph);−NO;−CN;−N(R;−NRC(O)R;−NRC(S)R;−NRC(O)N(R;−NRC(S)N(R;−NRC(O)OR;−NRNRC(O)R;−NRNRC(O)N(R;−NRNRC(O)OR;−C(O)C(O)R;−C(O)CHC(O)R;−C(O)OR;−C(O)R;−C(S)R;−C(O)N(R;−C(S)N(R;−B(OR;−OC(O)N(R;−OC(O)R;−C(O)N(OR)R;−C(NOR)R;−S(O);−S(O);−S(O)N(R;−S(O)R;−NRS(O)N(R;−NRS(O);−N(OR)R;−C(=NH)−N(R;−(CH0−2NHC(O)R;−L−R;−L−N(R;−L−SR;−L−OR;−L−(C3−10シクロ脂肪族)、−L−(C6−10アリール)、−L−(5−10員のヘテロアリール)、−L−(5−10員のヘテロシクリル)、オキソ、C1−4ハロアルコキシ、C1−4ハロアルキル、−L−NO、−L−CN、−L−OH、−L−CF;または、同一炭素または異なる炭素上の2個の置換基(それらは、それらが結合する炭素またはその間にある炭素(intervening carbon)と一体となって、5−7員の飽和、不飽和または部分的飽和環を形成する。)(ここで、Lは、C1−6アルキレン基であり、その3個までのメチレン単位が、−NH−、−NR−、−O−、−S−、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)CO−、−C(O)−、−C(O)NH−、−C(O)NR−、−C(=N−CN)、−NHCO−、−NRCO−、−NHC(O)O−、−NRC(O)O−、−S(O)NH−、−S(O)NR−、−NHS(O)−、−NRS(O)−、−NHC(O)NH−、−NRC(O)NH−、−NHC(O)NR−、−NRC(O)NR、−OC(O)NH−、−OC(O)NR−、−NHS(O)NH−、−NRS(O)NH−、−NHS(O)NR−、−NRS(O)NR−、−S(O)−、または−S(O)−で置換され、そしてRは、それぞれ独立して、水素、所望により置換されていてよいC1−6脂肪族、非置換5−6員のヘテロアリール環またはヘテロ環式環、フェニル、または−CH(Ph)から選択されるか、または、同一置換基または異なる置換基上の2個の独立して存在するRは、各R基が結合する原子(複数可)と一体となって、5−8員のヘテロシクリル、アリールもしくはヘテロアリール環、または3−8員のシクロアルキル環を形成し、ここで、該ヘテロアリールまたはヘテロシクリル環は、窒素、酸素または硫黄から独立して選択される1ないし3個のヘテロ原子を有する。)が含まれる。Rの脂肪族基上の限定されない任意の置換基には、−NH、−NH(C1−4脂肪族)、−N(C1−4脂肪族)、ハロゲン、C1−4脂肪族、−OH、−O(C1−4脂肪族)、−NO、−CN、−C(O)OH、−C(O)O(C1−4脂肪族)、−O(ハロC1−4脂肪族)、またはハロC1−4脂肪族(ここで、Rの上記C1−4脂肪族基はそれぞれ、非置換である。)が含まれる。
【0025】
いくつかの態様において、脂肪族もしくはヘテロ脂肪族基、または非芳香族性ヘテロ環式環は、1個以上の置換基を含み得る。脂肪族もしくはヘテロ脂肪族基、または非芳香族性ヘテロ環式環の飽和炭素上の好適な置換基は、アリールまたはヘテロアリール基の不飽和炭素について上記に列記のもの、ならびにさらなる以下:=O、=S、=NNHR、=NN(R、=NNHC(O)R、=NNHC(O)O(アルキル)、=NNHS(O)(アルキル)、または=NR(式中、Rは、それぞれ独立して、水素または所望により置換されていてよいC1−8脂肪族から選択される。)から選択される。Rの脂肪族基上の任意の置換基は、−NH、−NH(C1−4脂肪族)、−N(C1−4脂肪族)、ハロゲン、−C1−4脂肪族、−OH、−O(C1−4脂肪族)、−NO、−CN、−C(O)OH、−C(O)O(C1−4脂肪族)、−C(O)NH、−C(O)NH(C1−4脂肪族)、−C(O)N(C1−4脂肪族)、−O(ハロ−C1−4脂肪族)、およびハロ(C1−4脂肪族)(ここで、Rの上記C1−4脂肪族基はそれぞれ、非置換であるか、または同一窒素上の2個のRは、窒素と一体となって、窒素、酸素および硫黄から独立して選択される1−3個のヘテロ原子を有する5−8員のヘテロシクリルまたはヘテロアリール環を形成する。)から選択される。
【0026】
いくつかの態様において、非芳香族性ヘテロ環式環の窒素上の任意の置換基には、R、−N(R、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−S(O)、−S(O)N(R、−C(=S)N(R、−C(=NH)−N(R、または−NRS(O)(式中、Rは、水素、所望により置換されていてよいC1−6脂肪族、所望により置換されていてよいフェニル、所望により置換されていてよい−O(Ph)、所望により置換されていてよい−CH(Ph)、所望により置換されていてよい−(CH1−2(Ph)、所望により置換されていてよい−CH=CH(Ph)、または酸素、窒素もしくは硫黄から独立して選択される1−4個のヘテロ原子を有する非置換5−6員のヘテロアリールもしくはヘテロ環式環であるか、または同一置換基または異なる置換基上の2個の独立して存在するRは、各R基が結合する原子(複数可)と一体となって、5−8員のヘテロシクリル、アリールもしくはヘテロアリール環、または3−8員のシクロアルキル環を形成し、ここで、該ヘテロアリールまたはヘテロシクリル環は、窒素、酸素または硫黄から独立して選択される1ないし3個のヘテロ原子を有する。)が含まれる。Rの脂肪族基またはフェニル環上の任意の置換基は、−NH、−NH(C1−4脂肪族)、−N(C1−4脂肪族)、ハロゲン、C1−4脂肪族、−OH、−O(C1−4脂肪族)、−NO、−CN、−C(O)OH、−C(O)O(C1−4脂肪族)、−O(ハロC1−4脂肪族)、またはハロ(C1−4脂肪族)(ここで、Rの上記C1−4脂肪族基はそれぞれ、非置換である。)から選択される。
【0027】
上記の通り、いくつかの態様において、2個の独立して存在するR(または、R、もしくは本明細書に同様に定義される任意の他の可変基)は、各可変基が結合する原子(複数可)と一体となって、5−8員のヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリール環もしくは3−8員のシクロアルキル環を形成し得る。2個の独立して存在するR(またはR、もしくは本明細書に同様に定義される任意の他の可変基)が、各可変基が結合する原子(複数可)と一体となるとき形成される環の例には、a)2個の独立して存在するR(または、R、もしくは本明細書に同様に定義される任意の他の可変基)が、同一原子に結合し、その原子と一体となって形成する環、例えば、N(R(ここで、両方のRは、窒素原子と一体となってピペリジン−1−イル、ピペラジン−1−イル、またはモルホリン−4−イル基を形成する。);および、b)2個の独立して存在するR(または、R、もしくは本明細書に同様に定義される任意の他の可変基)が、異なる原子に結合し、それらの原子と一体となって形成する環(例えば、フェニル基が、2個の−ORで置換される
【化2】


で示されるとき、これらの2個のRは、それらが結合する酸素原子と一体となって、縮合6員の酸素含有環
【化3】


を形成する。)が含まれるが、これらに限定されない。2個の独立して存在するR(または、R、もしくは本明細書に同様に定義される任意の他の可変基)が、各可変基が結合する原子(複数可)と一体となるとき、種々の他の環が形成され得て、上記に詳述した例に限定されるべきではないことは、明らかであり得る。
【0028】
いくつかの態様において、アルキルまたは脂肪族鎖のメチレン単位は、所望により別の原子または基で置換されていてよい。かかる原子または基の例には、−NR−、−O−、−S−、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)CO−、−C(O)−、−C(O)NR−、−C(=N−CN)−、−NRCO−、−NRC(O)O−、−SONR−、−NRSO−、−NRC(O)NR−、−OC(O)NR−、−NRS(O)NR−、−SO−、または−S(O)−(ここで、Rは本明細書で定義されている。)が含まれるが、これらに限定されない。他に特記されない限り、任意の置換は、化学的に安定な化合物を形成する。任意の原子または基の置換は、鎖内および鎖のいずれかの末端の双方、すなわち、結合点および/または末端の双方で起こり得る。2つの任意の置換は、それが化学的に安定な化合物をもたらす限り、鎖内で互いに隣接していてもよい。他に特記されない限り、置換が末端で起こるとき、該置換原子は、末端上のHに結合する。例えば、CHCHCHの1個のメチレン単位が、所望によりOで置換されていてよいとき、得られる化合物は、−OCHCH、−CHOCH、または−CHCHOHであり得る。
【0029】
本明細書に記載の通り、多環系(以下に示す)内の1個の環の中央への置換基からの結合線は、多環系内の環の何れかにおける何れかの置換可能な位置での該置換基の置換を示す。例えば、構造aは、構造bに示す位置の何れかで可能性な置換を示す。
【化4】

【0030】
これはまた、任意の環系に縮合した多環系にも適用される(点線で示され得る)。例えば、構造c中、Xは、環Aおよび環Bの両方の任意の置換基である。
【化5】

【0031】
しかしながら、多環系中の2個の環がそれぞれ、各環の中央から記載される異なる置換基を有するとき、他に特記されない限り、各置換基は、それが結合する環上の置換のみを示す。例えば、構造d中、Yは、環Aのみの任意の置換基であり、そしてXは、環Bのみの任意の置換基である。
【化6】

【0032】
本明細書で用いる用語“保護基”は、例えば、アルコール、アミン、カルボキシル、カルボニル等のような官能基を合成反応中の望ましくない反応から保護するための基を意味する。通常用いられる保護基は、Greene and Wuts, Protective Groups In Organic Synthesis, 3rd Edition (John Wiley & Sons, New York, 1999)に開示され、それは引用により本明細書中に包含される。窒素保護基の例には、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ピバロイル、t−ブチルアセチル、2−クロロアセチル、2−ブロモアセチル、トリフルオロアセチル、トリクロロアセチル、phthalyl、o−ニトロフェノキシアセチル、α−クロロブチリル、ベンゾイル、4−クロロベンゾイル、4−ブロモベンゾイル、4−ニトロベンゾイルのようなアシル、アロイルまたはカルバミル基、ならびに保護または非保護の、アラニン、ロイシン、フェニルアラニン等のD,LもしくはD,L−アミノ酸;ベンゼンスルホニル、p−トルエンスルホニル等のようなスルホニル基;ベンジルオキシカルボニル、p−クロロベンジルオキシカルボニル、p−メトキシベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、2−ニトロベンジルオキシカルボニル、p−ブロモベンジルオキシカルボニル、3,4−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、3,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、2,4−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、2−ニトロ−4,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、3,4,5−トリメトキシベンジルオキシカルボニル、1−(p−ビフェニルyl)−1−メチルエトキシカルボニル、α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、ベンズヒドリルオキシカルボニル、t−ブチルオキシカルボニル、ジイソプロピルメトキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、エトキシカルボニル、メトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、2,2,2,−トリクロロエトキシカルボニル、フェノキシカルボニル、4−ニトロフェノキシカルボニル、フルオレニル−9−メトキシカルボニル、シクロペンチルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、フェニルチオカルボニル等のようなカルバメート基;ベンジル、トリフェニルメチル、ベンジルオキシメチル等のようなアリールアルキル基、およびトリメチルシリル等のようなシリル基のようなキラル助剤が含まれる。好ましいN−保護基は、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、ピバロイル、t−ブチルアセチル、アラニル、フェニルスルホニル、ベンジル、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)およびベンジルオキシカルボニル(Cbz)である。
【0033】
本明細書で用いる“プロドラッグ”は、インビボで式Iの化合物または表1に列記の化合物に変換される化合物を意味する。かかる変換は、例えば、血中での加水分解によるか、または血中もしくは組織中でプロドラッグ形態から親形態への酵素的変換により行われ得る。本発明の化合物のプロドラッグは、例えばエステルであり得る。本発明にてプロドラッグとして利用され得るエステルは、フェニルエステル、脂肪族(C−C24)エステル、アシルオキシメチルエステル、カーボネート、カルバメートおよびアミノ酸エステルである。例えば、OH基を含む本発明の化合物は、そのプロドラッグ形態において、この位置でアシル化され得る。他のプロドラッグ形態には、親化合物上のOH基のリン酸化転移(phosphonation)により得られるそれらのリン酸化形態のようなホスフェートが含まれる。プロドラッグについての詳細な解説は、T. Higuchi and V. Stella, Pro−drugs as Novel Delivery Systems, Vol. 14 of the A.C.S. Symposium Series、Edward B. Roche, ed., Bioreversible Carriers in Drug Design, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987、およびJudkins et al., Synthetic Communications 26(23):4351−4367, 1996に提供され、それらは引用により本明細書中に包含される。
【0034】
他に特記しない限り、本明細書に記載する構造はまた、その構造の全ての異性体(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー、および幾何(または、配座)異性体)形態;例えば、各不斉中心についてRおよびS配置、(Z)および(E)二重結合異性体、および(Z)および(E)配座異性体を含むことを意味する。故に、本発明の化合物の単一の立体化学異性体ならびにエナンチオマー、ジアステレオマー、および幾何(または、配座)異性体混合物は、本発明の範囲内である。
【0035】
他に特記しない限り、本発明の化合物の全ての互変異性形も本発明の範囲内である。さらに、他に特記しない限り、本明細書に記載の構造はまた、1個以上の同位元素に富む原子の存在のみが異なる化合物を含むことを意味する。例えば、水素の重水素もしくはトリチウムによる置換または炭素の13C−もしくは14C富化炭素による置換以外の本構造を有する化合物は本発明の範囲内である。このような化合物は、例えば分析ツール、生物アッセイにおけるプローブ、または改善された治療プロファイルを有するPI3K阻害剤として有用である。
【0036】
本発明の化合物の詳細
一局面において、本発明は、式:
【化7】


[式中、
およびXは、それぞれ独立して、NまたはCHであり;
は、−C(O)H、−C(O)R1a、−C(O)N(R1a)(R1b)、またはN、OもしくはSから選択される1−3個のヘテロ原子を有し、所望により1、2もしくは3個のJR2基で置換されていてよい5もしくは6員のヘテロアリール環であり;
1aは、C1−6脂肪族、C3−6シクロ脂肪族、アゼチジニル、ピロリジニル、またはピペリジニルであり、ここで、R1aは、所望により1、2、3または4個のJ基で置換されていてよく;
1bは、水素、C1−4脂肪族であるか、またはR1aおよびR1bは、それらが結合する窒素と一体となって、4−6員のヘテロ環式環を形成し(ここで、該R1aおよびR1bのヘテロ環式環は、所望により、窒素および酸素から選択される1個のさらなるヘテロ原子を含んでいてよく、そして、所望により、1または2個のJR2基で置換されていてよい。);
は、それぞれ独立して、フルオロ、オキソ、−C(O)JR1、−C(O)N(JR1、−C(O)O(JR1)、−N(JR1)C(O)JR1、−OJR1、−SJR1、フェニルまたは窒素、酸素もしくは硫黄から選択される2個までの原子を有する5−6員のヘテロアリールもしくはヘテロシクリルであり(ここで、該フェニル、ヘテロアリールもしくはヘテロシクリルまたはJは、所望により1または2個のJR2基で置換されていてよい。);
R1は、それぞれ独立して、水素、C1−4脂肪族、C3−6シクロ脂肪族、フェニル、ベンジル、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールから選択され(ここで、該JR1のヘテロシクリルは、NまたはOから選択される1または2個の原子を有する5もしくは6員環であり、該Rのヘテロアリールは、N、OまたはSから選択される1、2または3個の原子を有する、5もしくは6員の単環または9もしくは10員の縮合二環式環系であり、そして該JR1の脂肪族、シクロ脂肪族、フェニル、ベンジル、ヘテロシクリル、またはヘテロアリールはそれぞれ、所望により3個までのJR2基で置換されていてよい。);
各JR2は、クロロ、フルオロ、オキソ、C1−2アルキル、1−3個のフッ素原子で置換されたC1−2アルキル、C3−6シクロアルキル、−OH、−OC1−2アルキル、1−3個のフッ素原子で置換された−OC1−2アルキル、−C(O)C1−2アルキル、または−SC1−2アルキルから選択され;
は、水素、フルオロ、クロロ、C1−6脂肪族、−OC1−6脂肪族、C3−6シクロ脂肪族、−OC3−6シクロ脂肪族、シアノ、−NH、−NHC1−6脂肪族、−NHC3−6シクロ脂肪族、−NHS(O)1−6脂肪族、−NHS(O)3−6シクロ脂肪族、−NHS(O)フェニル、−NHS(O)ベンジル、−NHS(O)ヘテロアリール、−S(O)1−6脂肪族、−S(O)3−6シクロ脂肪族、−S(O)フェニル、−S(O)ベンジル、−S(O)ヘテロアリール、−S(O)NHC1−6脂肪族、−S(O)NHC3−6シクロ脂肪族、−S(O)NHフェニル、−S(O)NHベンジル、または−S(O)NHヘテロアリールから選択され(ここで、該Rのヘテロアリールは、N、OまたはSから選択される1、2または3個の原子を有する5もしくは6員環であり、そして該Rの脂肪族、シクロ脂肪族、フェニル、ベンジル、またはヘテロアリールは、所望により1、2または3個のJR2基で置換されていてよい。);そして
は、水素、フルオロ、クロロ、C1−3脂肪族、−OC1−3脂肪族、NH、またはNHC1−3脂肪族である(ここで、該Rの脂肪族は、所望により3個までのフルオロで置換されていてよい。)。]
で示される化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0037】
式Iの化合物の一態様において、XおよびXはそれぞれ、Nであるか、またはXは、CHであり、そしてXはNであり;Rは、−C(O)H、−C(O)R1a、−C(O)N(R1a)(R1b)、または2個までの窒素原子を有し、所望により1、2または3個のJR2基で置換されていてよい6員のヘテロアリール環であり;
1aが、C1−4脂肪族、アゼチジニル、ピロリジニル、またはピペリジニルであり、ここでR1aは、所望により1、2または3個のJで置換されていてよく;
1bが水素であるか、またはR1aおよびR1bが、それらが結合する窒素と一体となって、4−6員のヘテロ環式環を形成し(該R1aおよびR1bのヘテロ環式環は、所望により窒素および酸素から選択される1個のさらなるヘテロ原子を含んでいてよく、該R1aおよびR1bのヘテロ環式環は、所望により1または2個のJR2基で置換されていてよい。);
が、それぞれ独立して、フルオロ、オキソ、−C(O)JR1、−C(O)N(JR1、−C(O)O(JR1)、−N(JR1)C(O)JR1、−OJR1、フェニルまたは窒素、酸素もしくは硫黄から選択される2個までの原子を有する5−6員のヘテロアリールもしくはヘテロシクリルであり(ここで、該フェニル、ヘテロアリールもしくはヘテロシクリルまたはJは、所望により1または2個のJR2基で置換されていてよい。);
R1が、それぞれ独立して、水素、C1−4脂肪族、C3−6シクロ脂肪族、フェニル、ベンジル、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールから選択され(ここで、該JR1のヘテロシクリルは、NまたはOから選択される1または2個の原子を有する5もしくは6員環であり、該Rのヘテロアリールは、N、OまたはSから選択される1、2または3個の原子を有する、5もしくは6員の単環であり、そして該JR1の脂肪族、シクロ脂肪族、フェニル、ベンジル、ヘテロシクリル、またはヘテロアリールはそれぞれ、所望により3個までのJR2基で置換されていてよい。);
各JR2が、クロロ、フルオロ、オキソ、C1−2アルキル、1−3個のフッ素原子で置換されたC1−2アルキル、C3−6シクロアルキル、−OH、−OC1−2アルキル、1−3個のフッ素原子で置換された−OC1−2アルキル、−C(O)C1−2アルキル、または−SC1−2アルキルから選択され;そして
およびRが、それぞれ独立して、水素、クロロ、トリフルオロメチルまたは−OCHである(ここで、RおよびRの少なくとも一方は、水素ではない。)。
【0038】
一態様において、Rは、−C(O)R1a、−C(O)N(R1a)(R1b)、または2個までの窒素原子を有し、所望により1、2または3個のJR2基で置換されていてよい6員のヘテロアリール環である。
【0039】
別の態様において、Rは、−C(O)R1aである。さらなる態様において、−C(O)R1aは、
【化8】


から選択される。
【0040】
一態様において、Rは、−C(O)N(R1a)(R1b)である。さらなる態様において、Rは、−C(O)N(R1a)(R1b)(式中、R1bは水素であり、R1aは、OJR1で所望により置換されていてよいC1−4脂肪族、または窒素から選択される2個までの原子を有し、2個までのJR2基で所望により置換されていてよい5員のヘテロアリールである。)である。
【0041】
あるいは、R1aおよびR1bは、それらが結合する窒素と一体となって、4−6員のヘテロ環式環を形成する(該ヘテロ環式環は、所望により、窒素および酸素から選択される1個のさらなるヘテロ原子を含んでいてよく、そして所望により1または2個のJR2基で置換されていてよい。)。
【0042】
さらに別の態様において、−C(O)N(R1a)(R1b)は、
【化9】


から選択される。
【0043】
別の態様において、Rは、N、OまたはSから選択される1−3個のヘテロ原子を有し、1、2または3個のJR2基で所望により置換されていてよい、5もしくは6員のヘテロアリールである。さらなる態様において、Rは、所望により置換されていてよいピリジン、ピリミジン、ピラジン、またはピリダジン環である。
【0044】
さらなる態様において、Rは、
【化10】


から選択される。
【0045】
式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩の一態様において、XおよびXはそれぞれNである。別の態様において、XはCHであり、XはNである。さらに別の態様において、XおよびXはそれぞれCHである。
【0046】
別の態様において、
【化11】


は、
【化12】


から選択される。
【0047】
さらに別の態様において、本発明は、表1に列記の化合物群から選択される化合物を提供する。
【化13】


【化14】


【化15】


【化16】


【化17】


【化18】

【0048】
本発明はまた、本発明の化合物および薬学的に許容される担体、アジュバントまたはビークルを含む医薬組成物を提供する。
【0049】
本発明の化合物の組成物、製剤および投与
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の何れかの式またはクラスの化合物を含む医薬組成物を提供する。さらなる態様において、本発明は、表1の化合物を含む医薬組成物を提供する。さらなる態様において、該組成物は、付加的治療剤をさらに含む。
【0050】
別の態様に従い、本発明は、本発明の化合物またはその薬学的に許容される誘導体、および薬学的に許容される担体、アジュバントまたはビークルを含む組成物を提供する。一態様において、本発明の組成物の化合物の量は、生物学的サンプルまたは患者において、PI3K、特にPI3Kγを測定可能な程度で阻害する効果を有するような量である。
【0051】
一態様において、本発明の組成物は、かかる組成物を必要とする患者に投与するために製剤される。さらなる態様において、本発明の組成物は、患者に経口投与するために製剤される。本明細書で用いる用語“患者”は、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。
【0052】
本発明の任意の化合物は、処置のために遊離形で存在し得るか、または適当なとき、その薬学的に許容される誘導体として存在し得ることも理解され得る。本発明に従い、薬学的に許容される誘導体は、必要とする患者への投与により、直接的または間接的に、他に本明細書に記載がないとき、化合物、またはその代謝物もしくは残基を提供できる、薬学的に許容されるプロドラッグ、塩、エステル、かかるエステルの塩、または何らかの他の付加物もしくは誘導体を含むが、これらに限定されない。本明細書で用いる用語“阻害活性代謝物またはその残基”は、代謝物またはその残基がPI3Kの阻害剤でもあることを意味する。
【0053】
本明細書で用いる用語“薬学的に許容される塩”は、医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答等を伴わずに、ヒトおよび下等動物の組織との接触に用いるのに適する塩を意味する。
【0054】
薬学的に許容される塩は、当技術分野でよく知られている。例えば、薬学的に許容される塩は、S. M. Bergeらの、引用により本明細書中に包含するJ. Pharmaceutical Sciences, 66:1−19, 1977に詳細に記載される。本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、適当な無機および有機の酸および塩基由来のものを含む。薬学的に許容される、非毒性の酸付加塩の例は、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸と、または有機酸、例えば酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸もしくはマロン酸と形成されるアミノ基の塩、または当技術分野で用いられる他の方法、例えばイオン交換法を用いて形成される塩である。他の薬学的に許容される塩には、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、二グルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸、パモ酸塩(palmoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピコリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエン硫酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などを含む。適当な塩基由来の塩は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムおよびN(C1−4アルキル)塩を含む。本発明はまた、本発明の化合物の何れかの塩基性窒素含有基の四級化を想定している。水もしくは油可溶性または分散性生成物を、そのような四級化により得ることができる。典型的アルカリまたはアルカリ土類金属塩は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等を含む。さらなる薬学的に許容される塩は、適当なとき、非毒性アンモニウム、四級アンモニウム、およびハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩およびアリールスルホン酸塩のような、対イオンを用いて形成されるアミンカチオンを含む。
【0055】
上記の通り、本発明の薬学的に許容される組成物は、薬学的に許容される担体、アジュバント、またはビークルをさらに含み、本明細書で用いる通り、それらは、何れかおよび全ての溶媒、希釈剤、または他の液体ビークル、分散体または懸濁液助剤、所望の特定の投与量形態に適する、界面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、防腐剤、固体結合剤、滑剤等を含む。Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st edition, 2005, ed. D.B. Troy, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technology, eds. J. Swarbrick and J. C. Boylan, 1988−1999, Marcel Dekker, New York(それらの内容は引用により本明細書に包含させる)は、薬学的に許容される組成物の製剤に用いる種々の担体およびそれらの製造のための公知技術を開示する。何れかの常套の担体媒体の場合以外は、本発明の化合物と不適合であり、例えば何らかの望ましくない生物学的効果を生じるか、または他に、薬学的に許容される組成物の何らかの他の成分(複数可)と有害な方法で相互作用し、その使用は、本発明の範囲内であると意図される。
【0056】
薬学的に許容される担体として機能し得る物質のいくつかの例は、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばホスフェート、グリシン、ソルビン酸、またはソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、蝋、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、羊毛脂、糖類、例えばラクトース、グルコースおよびスクロース;デンプン類、例えばトウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン;セルロースおよびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;粉末化トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えばカカオバターおよび坐薬ワックス;油類、例えばピーナッツ油、綿実油;サフラワー油;ゴマ油;オリーブ油;トウモロコシ油およびダイズ油;グリコール、例えばプロピレングリコールまたはポリエチレングリコール;エステル、例えばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;発熱物質不含有水;等張食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝溶液、ならびに他の非毒性適合性滑剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム、ならびに製剤業者の判断に従い組成物中に存在してもよい着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および香料、防腐剤および抗酸化剤を含むが、これらに限定されない。
【0057】
本発明の組成物は、経口投与、非経腸投与、吸入スプレーによる投与、局所投与、直腸投与、鼻腔投与、口腔内投与、膣内投与または埋め込み型リザーバーによる投与が可能である。本明細書で用いる用語“非経腸”とは、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、胸骨内、くも膜下腔内、肝臓内、病巣内、硬膜外、髄腔内および頭蓋内注射または注入技術を含むが、これらに限定されない。好ましくは、当該組成物は、経口投与、腹腔内投与または静脈内投与される。本発明の組成物の滅菌注射形態は、水性または油性懸濁液であり得る。これらの懸濁液は、適当な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて、当技術分野で公知の技術に従って製剤され得る。この滅菌注射製剤はまた、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液のような、無毒の非経腸的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射溶液または懸濁液であり得る。使用可能な許容されるビークルおよび溶媒としては水、リンゲル溶液および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌固定油も溶媒または懸濁媒体として常用される。
【0058】
この目的で、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む、いずれの銘柄の固定油も使用可能である。オレイン酸のような脂肪酸およびそのグリセリド誘導体も、オリーブ油またはヒマシ油のような天然の薬学的に許容される油状物、とりわけそれらのポリオキシエチル化型と同様、注射剤の製造に有用である。これらの油状溶液または懸濁液はまた、エマルジョンおよび懸濁液を含む薬学的に許容される投与量形態の製剤化に常用されるカルボキシメチルセルロースまたは同様の分散剤のような長鎖アルコール希釈剤または分散剤も含み得る。Tween系、Span系およびその他の乳化剤のような他の常用される界面活性剤、または薬学的に許容される固体、液体もしくは他の投与量形態の製造に常用される生物学的利用能増強剤もまた、剤形化に使用可能である。
【0059】
本発明の薬学的に許容される組成物は、カプセル剤、錠剤、水性懸濁液または溶液を含むが、これらに限定されない、いずれかの経口的に許容される投与量形態で経口投与され得る。経口使用のための錠剤の場合、常用される担体としては、ラクトースおよびコーンスターチが含まれる。ステアリン酸マグネシウムのような滑剤も一般的に添加される。カプセル形態での経口投与では、有用な希釈剤としては、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが挙げられる。経口使用のために水性懸濁液が必要とされるとき、活性成分を乳化剤および懸濁化剤と混合する。所望により、特定の甘味剤、香味剤または着色剤を加えてもよい。
【0060】
あるいは、本発明の薬学的に許容される組成物は、直腸投与用の坐剤の形態で投与され得る。これらは、室温では固体であるが、直腸温度では液体であり、故に直腸で融解して薬剤を放出する、適当な非刺激性賦形剤と該薬剤を混合することにより製造され得る。かかる物質としては、カカオバター、蜜蝋およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0061】
本発明の薬学的に許容される組成物はまた、特に治療標的が、眼、皮膚または下部腸管の疾患を含む、局所適用により容易に接近可能な領域または臓器を含むとき、局所投与され得る。これらの領域または臓器の各々について適当な局所製剤が容易に製造される。
【0062】
下部腸管に対する局所適用は、直腸坐剤製剤(上記参照)または適当な浣腸製剤で達成することができる。局所的経皮パッチも使用可能である。
【0063】
局所適用に関して、当該薬学的に許容される組成物は1個以上の担体に懸濁または溶解させた活性成分を含む適当な軟膏として製剤され得る。本発明の化合物の局所投与用の担体としては、鉱油、液体ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水が含まれるが、これらに限定されない。あるいは、当該薬学的に許容される組成物は、1個以上の薬学的に許容される担体に懸濁または溶解させた活性成分を含む適当なローションまたはクリームとして製剤することができる。適当な担体としては、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が含まれるが、これらに限定されない。
【0064】
眼科使用に関して、当該薬学的に許容される組成物は等張pH調整滅菌生理食塩水の微粉化懸濁液としてか、または好ましくは、塩化ベンジルアルコニウムなどの防腐剤を含む、もしくは含まない、等張pH調整滅菌生理食塩水の溶液として製剤され得る。あるいは、眼科使用に関して、当該薬学的に許容される組成物はワセリンのような軟膏中に製剤され得る。本発明の薬学的に許容される組成物はまた、鼻腔エアロゾルまたは吸入によっても投与され得る。このような組成物は、医薬製剤の分野で公知の技術に従って製造され、ベンジルアルコールまたは他の適当な防腐剤、生物学的利用能を高めるための吸収促進剤、フルオロ炭素および/または他の常套の可溶化剤または分散剤を用いて、生理食塩水の溶液として製造され得る。
【0065】
最も好ましくは、本発明の薬学的に許容される組成物は、経口投与用に製剤される。
【0066】
経口投与用の液体投与量形は、薬学的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ剤およびエリキシル剤を含むが、これらに限定されない。該液体投与量形は、有効化合物に加えて、例えば、水または他の溶媒などの当技術分野で常用される不活性希釈剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルならびにそれらの混合物などの可溶化剤および乳化剤を含み得る。不活性希釈剤の他、該経口組成物はまた、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、甘味剤、香味剤および香料などのアジュバントも含み得る。
【0067】
注射製剤、例えば、滅菌注射水溶液または油性懸濁液は、適当な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用い、公知の技術に従って製剤され得る。滅菌注射製剤はまた、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液など、無毒な非経腸的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射溶液、懸濁液またはエマルジョンであってもよい。使用可能な許容されるビークルおよび溶媒としては水、リンゲル溶液、U.S.P.および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌固定油も溶媒または懸濁媒体として通常使用される。この目的で、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む、いずれの銘柄の固定油も使用可能である。さらに、オレイン酸などの脂肪酸も注射剤の製造に用いられる。
【0068】
注射製剤は、例えば、細菌保持フィルターによる濾過、または使用前に滅菌水もしくは他の滅菌注射媒体に溶解または分散され得る滅菌固形組成物の形態の滅菌剤を配合することにより滅菌され得る。
【0069】
本発明の化合物の作用を延長するために、皮下注射または筋肉注射からの化合物の吸収を緩慢にすることが望ましい場合が多い。これは、水難溶性の結晶性またはアモルファス物質の液体懸濁液の使用によって達成され得る。この化合物の吸収速度はその溶解速度によって変わり、ひいては、それは結晶サイズおよび結晶形態によって変わり得る。あるいは、非経腸投与される化合物形態の遅延吸収は、化合物を油状ビークル中に溶解または懸濁させることにより達成される。注射デポー形態は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中で化合物のマイクロカプセルマトリックスを形成することにより製造される。ポリマーに対する化合物の割合および使用する特定のポリマーの性質によって、化合物の放出速度が制御できる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が含まれる。デポー注射製剤はまた、身体組織に適合するリポソームまたはマイクロエマルジョン中に化合物を捕捉することによっても製造される。
【0070】
直腸または膣投与用組成物は、好ましくは、環境温度では固体であるが、体温では液体であり、故に直腸または膣腔内で融解して有効化合物を放出する、カカオバター、ポリエチレングリコールまたは坐剤ワックスなどの適当な非刺激性賦形剤または担体と本発明の化合物を混合することにより製造され得る坐剤である。
【0071】
経口投与用の固体投与量形としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤および顆粒剤が含まれる。このような固体投与量形では、有効化合物を、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの少なくとも1種類の不活性な、薬学的に許容される賦形剤または担体、および/またはa)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸などの充填剤または増量剤、b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロースおよびアカシアなどの結合剤、c)グリセロールなどの保湿剤(humectant)、d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、e)パラフィンなどの溶解遅延剤、f)第四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、g)例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、h)カオリンおよびベントナイトクレーなどの吸収剤、およびi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムなどの滑剤、ならびにそれらの混合物と混合する。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、投与量形はまた緩衝剤を含んでもよい。
【0072】
類似タイプの固体組成物はまた、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールのような賦形剤を用い、ゼラチン軟カプセルおよび硬カプセル中の充填剤として用いられ得る。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤および顆粒剤の固体投与量形は、腸溶コーティングおよび製薬分野で周知の他のコーティング剤などのコーティングおよびシェルを用いて製造することができる。それらは任意に乳白剤を含んでもよく、また、それらが有効成分のみを放出するか、または任意に遅延型の様式で、好ましくは腸管の特定の部分に放出する組成物であってもよい。使用可能な包理組成物の例としては、重合物質およびワックスが含まれる。類似タイプの固体組成物はまた、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用い、ゼラチン軟カプセルおよび硬カプセル中の充填剤としても使用され得る。
【0073】
有効化合物はまた、上記のような1種以上の賦形剤を用いてマイクロカプセル化形態であってもよい。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤および顆粒剤の固体投与量形は、腸溶コーティング、徐放性コーティング、および製薬分野で公知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて製造され得る。かかる固体投与量形では、有効化合物を、スクロース、ラクトースまたはデンプンなどの少なくとも1種類の不活性希釈剤と混合し得る。かかる投与量形はまた、慣行上、不活性希釈剤以外の付加物質、例えば、錠剤化滑剤ならびにステアリン酸マグネシウムおよび微晶質セルロースなどの他の錠剤補助剤を含み得る。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、これらの投与量形はまた緩衝剤も含み得る。それらは任意に乳白剤を含んでもよく、また、それらが有効成分のみを、または任意に遅延型の様式で、好ましくは腸管の特定の部分に放出する組成物であってもよい。使用可能な包理組成物の例には、重合物質およびワックスが含まれる。
【0074】
本発明の化合物の局所投与または経皮投与用の投与量形には、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、スプレー、吸入薬またはパッチ剤が含まれる。有効成分を滅菌条件下で、必要に応じて、薬学的に許容される担体および必要とされる任意の防腐剤または緩衝剤と混合する。眼用製剤、点耳薬および点眼薬も本発明の範囲内であると考えられる。さらに、本発明は、身体への化合物の制御送達を提供する付加的利点を有する経皮パッチの使用を意図する。このような投与量形は、化合物を適当な媒体に溶解または分散させることにより製造され得る。また、皮膚への化合物の流入を高めるために、吸収促進剤を使用することもできる。この速度は、速度制御膜を設けるか、または化合物をポリマーマトリックスまたはゲル中に分散させることによって制御することができる。
【0075】
本発明の化合物は、好ましくは投与の簡便性および投与量の均一性のために単位投与量形で製剤される。本明細書で用いる語句“単位投与量形”とは、処置すべき患者に適当な薬剤の物理的に別個の単位を意味する。しかしながら、本発明の化合物および組成物の一日使用総量は、妥当な医学的判断の範囲内で担当医により決定され得る。特定の患者または生物に対する特定の有効用量レベルは、処置される障害およびその障害の重篤度;用いる特定の化合物の活性;用いる特定の組成物;患者の年齢、体重、健康状態、性別および食習慣;用いる特定の化合物の投与時間、投与経路および排泄速度;処置期間;用いる特定の化合物と併用される、または並行使用される薬剤、ならびに医学分野で周知の因子を含む種々の因子によって異なり得る。
【0076】
単回投与量形態の組成物を製造するために担体物質と組み合わされ得る本発明の化合物の量は、処置される宿主、特定の投与方法によって異なり得る。好ましくは、当該組成物は、阻害剤0.01−100mg/kg体重/日の投与量がこれらの組成物を受容する患者に投与され得るように製剤されるべきである。
【0077】
処置または予防すべき特定の状態または疾患によって、その状態を処置または予防するために通常投与される付加的治療剤もまた、本発明の組成物中に存在し得る。本明細書で用いる、特定の疾患または状態の処置または予防のために通常投与される付加的治療剤は、“処置する疾患または状態のために適当である”ことが知られている。付加的治療剤の例を以下に記載する。
【0078】
本発明の組成物中に存在する付加的治療薬の量は、唯一の活性剤としてその治療剤を含む組成物において通常投与され得る量を超えることはない。好ましくは、本発明で開示している組成物における付加的治療剤の量は、唯一の治療的活性剤としてその薬剤を含む組成物中に通常存在する量の約50%〜100%の範囲であり得る。
【0079】
本発明の化合物および組成物の使用
一態様において、本発明は、患者におけるPI3Kにより仲介される状態または疾患の処置法または重篤度の軽減法を含む。本明細書で用いる用語“PI3Kにより仲介される疾患”は、PI3Kのアイソフォームが役割を果たすことが公知の何れかの疾患または他の有害な状態を意味する。一態様において、PI3KのアイソフォームはPI3Kγである。さらなる態様において、本発明は、PI3Kにより仲介される疾患の処置方法を含む。かかる状態には、自己免疫性疾患、炎症性疾患、血栓溶解疾患、癌、心血管疾患、糖尿病、アレルギー性疾患、喘息および呼吸器疾患が含まれるが、これらに限定されない。本発明の化合物または組成物により処置されるべき疾患の特定の例には、アテローム性動脈硬化症、炎症性腸疾患(IBD)、黄斑変性症、膵炎、高血圧が含まれる。
【0080】
別の態様において、本発明は、患者の脳または脊髄における、PI3Kにより仲介される状態または疾患の処置法またはその重篤度の軽減法であって、該患者に本発明の化合物または組成物を投与することを含む方法を提供する。脳または脊髄の疾患には、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、卒中、外傷性脳傷害、脊髄傷害、HIV脳症、虚血性脳傷害、および癲癇が含まれる。
【0081】
別の態様において、本発明は、患者に本発明の化合物または組成物を投与することによる、自己免疫性疾患または障害の処置法またはその重篤度の軽減法を提供する。自己免疫性疾患または障害には、リウマチ性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症、糸球体腎炎、強皮症、慢性甲状腺炎、グレーブス疾患、自己免疫性胃炎、I型糖尿病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性好中球減少症、血小板減少症、アトピー性皮膚炎、重症筋無力症、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、乾癬、シェーグレン症候群および移植片対宿主疾患が含まれるが、これらに限定されない。1つの特定の態様において、該自己免疫性疾患または障害は、リウマチ性関節炎、SLEまたは多発性硬化症である。別の特定の態様において、該疾患は多発性硬化症である。
【0082】
別の態様において、本発明は、該患者に本発明の化合物または組成物を投与することによる、炎症性疾患の処置法またはその重篤度の軽減法を提供する。炎症性疾患には、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気腫、農夫肺および関連疾患、好酸球増加症、肺線維症、骨関節症、強直性脊椎炎、敗血症、敗血症性ショック、炎症性ミオパシー、髄膜炎、脳炎、涙腺・耳下腺症候群、急性呼吸困難症候群および膵炎が含まれるが、これらに限定されない。一態様において、該炎症性疾患は、急性呼吸困難症候群または涙腺耳下腺症候群である。
【0083】
別の態様において、本発明は、アレルギー性疾患または喘息の処置法またはその重篤度の軽減法を提供する。アレルギー性疾患の例には、通年性および季節性アレルギー性鼻炎、I型過敏症反応、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎または湿疹が含まれるが、これらに限定されない。
【0084】
本発明の化合物または組成物は、1種以上の付加的治療剤と共に投与され得て、該付加的治療剤は、処置されるべき疾患に適当であり、そして単一投与量形態として本発明の化合物または組成物と共に、または複数投与量形態の一部として該化合物または組成物とは別に、投与される。該付加的治療剤は、本発明の化合物と同時にまたは異なる時間に投与され得る。後者の場合において、投与は、例えば、6時間、12時間、1日、2日間、3日間、1週間、2週間、3週間、1ヶ月または2ヶ月毎に投与され得る。
【0085】
本発明は、生物学的サンプルを本発明の化合物または組成物と接触することを含む、該生物学的サンプルにおけるPI3Kキナーゼ活性の阻害方法を提供する。本明細書で用いる用語“生物学的サンプル”には、細胞培養物またはその抽出液;哺乳動物から得られた生検材料またはその抽出液;および血液、唾液、尿、糞便、精液、涙もしくは他の体液またはそれらの抽出液が含まれるが、これらに限定されない、生体外サンプルを意味する。生物学的サンプルにおける、キナーゼ活性、特にPI3Kキナーゼ活性の阻害は、当業者に公知の種々の目的に有用である。かかる目的の例には、生物学的試料の貯蔵および生物学的アッセイが含まれるが、これに限定されない。一態様において、生物学的サンプルにおけるPI3Kキナーゼ活性の阻害方法は、非治療的方法に限定される。
【0086】
本発明の化合物の製造
本明細書で用いる全ての略語、記号、および表現は、現代の科学文献で用いされるものと一致している。例えば、Janet S. Dodd, ed., The ACS Style Guide: A Manual for Authors and Editors, 2nd Ed., Washington, D.C.: American Chemical Society, 1997を参照のこと。本明細書で用いる用語および略語は、以下に記載の定義である。
【表1】

【0087】
他に特記しない限り、逆相HPLCによる精製を、流速28mL/分で水/アセトニトリル(0.1%TFA、0.2%ギ酸、または5mmol ギ酸アンモニウム)の線形勾配を用いてWaters 20x100mm YMC−Pack Pro C18 カラムにより行った。
【0088】
一般的合成法
一般的に、本発明の化合物は、本明細書に記載の方法または当業者に公知の他の方法により製造され得る。
【実施例】
【0089】
実施例1. 式Iの化合物の一般的製造法
式Iの化合物(式中、Rは、−C(O)R1a、−C(O)N(R1a、またはヘテロアリール環である。)の製造をスキーム1に示す。従って、式A1の化合物(式中、R、R、X、およびXは、式Iの化合物で定義の通りである。)を、塩基性条件下、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル(XPhos)のようなBuchwald 触媒を用いて保護したピペリジン−4−オンと反応させて、式A2の化合物を製造する[(a) Mauger, C. C.; Mignani, G. A. Aldrichimica Acta 2006,39, 17; (b) Schlummer, B.; Scholz, U. Adv. Synth. Catal. 2004, 346, 1599; または、Billingsley, K.; Buchwald, S. L. J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 3358を参照のこと]。ケト保護基の除去後、得られるケトンを、塩基性条件下、高温で、硫黄およびシアナミドと反応させて、式A3の化合物を製造する。式A3の化合物の第一級アミンを、式A4およびA5の化合物のようなウレア(式中、R1aおよびR1bは、式Iの化合物で定義の通りである。)を形成するために用いることができる。式A3の化合物の第一級アミンはまた、当業者に公知の方法によりエステルまたはカルボン酸(それらの活性型エステルを介して)と反応させて、式A6の化合物を形成し得る。式A3の化合物の第一級アミンはまた、炭酸セシウムの存在下、ハロヘテロ芳香環と反応させて、式A7の化合物を形成し得る。
【0090】
一般的に、本発明の化合物は、本明細書に記載の方法または同様の化合物の製造について当業者に公知の方法により製造され得る。本明細書に記載の本発明をより十分に理解し得るように、以下の実施例を記載する。これらの実施例は説明のみを目的とし、いかなる場合も本発明の限定するものと解釈されてはならないことが理解されるべきである。
【化19】

【0091】
実施例2. 3−エトキシ−2−メトキシ−5−ブロモピリジン(化合物1004)の製造
スキーム2の工程2−iに示す通り、DMF懸濁液(100mL)中、4.0g(0.1mol、鉱油中、60%)のNaHに、RTで、10mLの無水エチルアルコール(4.6g、0.1mol)/DMF溶液を添加した。水素ガスの発生後、反応混合物をRTで30分間撹拌し、得られるエトキシド溶液を、60℃で、DMF(100mL)中、3,5−ジブロモピリジン(11.84g、0.05mol、Aldrich Chemical Co.から購入)の溶液に加えた。反応物を60℃で4時間撹拌し、混合物を静置してRTとした。塩水および酢酸エチルを添加し、有機相を分け、MgSOで乾燥させて、濾過し、そして揮発性物質を減圧下で除去した。所望の生成物を含んで得られた粗物質を、シリカクロマトグラフィーにより20%酢酸エチル/ヘキサンで溶出して精製した。3−ブロモ−5−エトキシピリジン(化合物1001、4.25g)を純粋な生成物として得た(42%収率):1H NMR (CDCl3) δ 8.3(dd, 2H), 7.4(d, 1H), 4.12(q, 2H), 1.45(t, 3H)。3−ベンジルオキシ−5−ブロモピリジンを、同様の精製法で製造した: 1H NMR (CDCl3) δ 8.33(d, 2H), 7.5−7.35(m, 6H), 5.15(s, 2H)。
【0092】
あるいは、スキーム2の工程2−iiに示す通り、3−ブロモ−5−ヒドロキシピリジン(100mg、0.57mmol、Aldrich Chemical Co.から購入)を、DMF(3mL)で希釈した。炭酸カリウム(158.8mg、1.15mmol)を添加し、次いで、ブロモエタン(62.6mg、42.6μL、0.57mmol)を添加した。混合物を60℃まで温め、一晩撹拌した。冷却後、混合物を酢酸エチル中に溶解し、2M NaOHで洗浄し、次いで水で洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、揮発性物質を減圧下で除去した。得られた粗3−ブロモ−5−エトキシピリジン(化合物1001)を、さらに精製することなく用いた。以下の化合物を、同様の方法で製造した:3−ブロモ−5−プロポキシピリジン、ESMS (M+H) 218.19/216.19;3−ブロモ−5−ブチルピリジン、ESMS (M+H) 230.22/232.22;3−ブロモ−5−(シクロヘキシルメトキシ)ピリジン、ESMS (M+H) 270.2/272.22;3−(2−フルオロエトキシ)−5−ブロモピリジン、ESMS (M+H) 220.14/222.14;3−(2,2−ジフルオロエトキシ)−5−ブロモピリジン;および、3−(2−エチルブトキシ)−5−ブロモピリジン、ESMS (M+H) 258.33/256.33。
【0093】
スキーム2の工程2−iiiに示す通り、3−クロロ過安息香酸(9.426g、42.06mmol)を、DCM(200mL)中の3−ブロモ−5−メトキシピリジン(4.25g、21mmol)にRTで添加した。反応物を一晩撹拌し、混合物を2N NaOH(200mL)および塩水(2x200mL)で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥させ、濾過し、揮発性物質を減圧下で除去して、3−ブロモ−5−エトキシピリジン、1−オキシド(化合物1002、4.4g)を得た:1H NMR (CDCl3): δ 8.05(s, 1H), 7.9(s, 1H), 7.0(s, 1H), 4.12(q, 2H), 1.45(t, 3H)。
【0094】
スキーム2の工程2−ivに示す通り、オキシ塩化リン(48.02g、403.6mmol)を、RTで、DCM(700mL)中の3−ブロモ−5−エトキシピリジン、1−オキシド(4.4g、20.18mmol)に添加した。反応混合物をRTで一晩撹拌した。塩水の添加後、有機相を分け、MgSOで乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。生成物を、該濃縮物をシリカゲルパッドを通して酢酸エチルで溶出して濾過により精製した。揮発性物質を減圧下で除去して、5−ブロモ−2−クロロ−3−エトキシピリジン(化合物1003、4.3g、85.6%)を得た:1H NMR (CDCl3) δ 8.1(s, 1H), 7.32(s, 1H), 4.15(q, 2H), 1.6(t, 3H)。
【0095】
スキーム2の工程2−vに示す通り、25% MeONa/MeOH溶液(40.51mL)を、5−ブロモ−2−クロロ−3−エトキシピリジン(4.3g、17.27mmol)に添加した。反応混合物を2時間還流した。冷却後、酢酸エチルおよび塩水を該混合物に添加した。有機相をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させた。シリカゲルクロマトグラフィーによる精製後、5−ブロモ−3−エトキシ−2−メトキシピリジン(化合物1004、2.1g、50%収率)を得た: 1H NMR (CDCl3) δ 7.8(s, 1H), 7.15(s, 1H), 4.1(q, 2H), 4.0(s, 3H), 1.5(t, 3H)。以下の化合物を同様の方法で合成した:5−ブロモ−3−イソプロポキシ−2−メトキシピリジン:1H NMR (CDCl3) δ 7.7(s, 1H), 7.1(s, 1H), 4.55−4.5(m, 1H), 3.9(s, 3H), 1.3(d, 6H);5−ブロモ−2−エトキシ−3−メトキシピリジン:ESMS (M+H) 232, 234;5−ブロモ−3−メトキシ−2−プロポキシピリジン:ESMS (M+H) 246, 248;5−ブロモ−2−イソプロポキシ−3−メトキシピリジン:ESMS (M+H) 246, 248;5−ブロモ−2−(2,2−ジフルオロエトキシ)−3−メトキシピリジン:ESMS (M+H) 268, 270;5−ブロモ−2,3−ジエトキシピリジン:ESMS (M+H) 246, 248;5−ブロモ−2−(2,2−ジフルオロエトキシ)−3−エトキシピリジン:ESMS (M+H) 282, 284;5−ブロモ−3−エトキシ−2−プロポキシピリジン:ESMS (M+H) 260, 262;5−ブロモ−3−エトキシ−2−イソプロポキシピリジン:ESMS (M+H) 260, 262;5−ブロモ−3−(2−フルオロエトキシ)−2−メトキシピリジン:ESMS (M+H) 250, 252;5−ブロモ−2−メトキシ−3−プロポキシピリジン:ESMS (M+H) 246, 248;5−ブロモ−2−メトキシ−3−(2−メトキシエトキシ)ピリジン:ESMS (M+H) 262, 264;5−ブロモ−3−(2,2−ジフルオロエトキシ)−2−メトキシピリジン:1H NMR (CDCl3) δ 7.9 (d, 1H), 7.2 (d, 1H), 6.1 (tt, 1H), 4.4 (q, 2H), 4.2 (td, 2H), 1.4 (t, 3H);5−ブロモ−2−エトキシ−3−イソプロポキシピリジン:1H NMR (CDCl3) δ 7.7 (d, 1H), 7.1 (d, 1H), 4.4 (m, 1H), 4.3 (q, 2H), 1.3 (m, 9H);5−ブロモ−3−ブトキシ−2−メトキシピリジン: ESMS (M+H) 260, 262;5−ブロモ−2−メトキシ−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリジン:ESMS (M+H) 286, 288;および、5−ブロモ−2−エトキシ−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリジン:ESMS (M+H) 300, 302。
【0096】
5−メトキシ−3−ブロモピリジン、2,3−ジメトキシ−5−ブロモピリジン、2,3−ジエトキシ−5−ブロモピリジン、2−メトキシ−3−プロポキシ−5−ブロモピリジン、および2−メトキシ−3−(2−メトキシエトキシ)−5−ブロモ)ピリジンも、工程2−vの方法と同様に製造した。
【化20】

【0097】
実施例3. 5−ブロモ−3−(ジフルオロメトキシ)−2−メトキシピリジン(化合物1010)の製造
スキーム3の工程3−iに示す通り、2−クロロ−3−ヒドロキシピリジン(化合物1005、2.0g、15.4mmol、Aldrich Chemical Co.から購入)を、クロロジフルオロ酢酸ナトリウム(4.71g、30.9mmol、Lancaster Synthesis, Inc.から購入)および無水炭酸カリウム(2.56g、18.5mmol)を含む、DMF(40mL)および水(5.0mL)中に溶解した。反応混合物を、油浴中、100℃で2時間加熱した。さらに等量のクロロジフルオロ酢酸ナトリウムおよび1.2当量の炭酸カリウムを添加し、加熱をさらに2時間継続した。この後、反応物を冷却し、揮発性物質を減圧下で除去した。残渣を塩水および酢酸エチルで分離し、有機相をもう一度塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、揮発性物質を減圧下で除去した。生成物を、シリカゲルクロマトグラフィーによりヘキサン/DCM〜DCM勾配で溶出して精製して、2−クロロ−3−(ジフルオロメトキシ)ピリジンを白色固体として得た(化合物1006、2.0g、72%収率): ESMS (M+H) 180; 1H NMR (CDCl3) δ 8.05 (m, 1H), 7.45(m, 1H), 6.90(m,1H), 6.60(t, 1H; J=75Hz), 4.01(s, 3H)。
【0098】
スキーム3の工程3−iiに示す通り、過剰量の金属ナトリウムを無水メタノール(20mL)に溶解し、無水メタノール中の2−クロロ−3−(ジフルオロメトキシ)ピリジン(2.0g、11.1mmol)を添加した。反応混合物を、密封容器中、100℃で6時間撹拌した。揮発性物質を減圧下で除去し、残渣をEtOAcおよび塩水の間に分離した。塩水をEtOAcで抽出し、合わせた有機相をNaSOで乾燥させ、濾過し、揮発性物質を減圧下で除去した。生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(DCM)により精製して、3−(ジフルオロメトキシ)−2−メトキシピリジンを無色油状物として得た(化合物1007、1.1g、56%収率:ESMS (M+H) 176。
【0099】
スキーム3の工程3−iiiに示す通り、3−(ジフルオロメトキシ)−2−メトキシピリジン(270mg、1.54mmol)を、DCM(5mL)に溶解し、ヘプタン中のBBr(540μL;1275mg;4.10mmol)を添加した。反応混合物を、窒素雰囲気下、RTで10分間撹拌し、還流し、その後、さらに4時間撹拌した。混合物を冷却し、反応物に水を添加してクエンチした。重炭酸ナトリウムを用いてpHを7−8に調節し、有機相を分離し、水相をNaClで飽和し、そしてさらなるDCMで2回抽出した。合わせた有機相をNaSOで乾燥させ、濾過し、揮発性物質を減圧下で除去した。生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(DCM〜5%MeOH/DCM勾配)により精製し、3−(ジフルオロメトキシ)ピリジン−2−オールを白色固体として得た(化合物1008、986mg、97%収率):ESMS (M+H) 162。
【0100】
スキーム3の工程3−ivに示す通り、3−(ジフルオロメトキシ)ピリジン−2−オール(986mg;6.12mmol)を、氷酢酸(25mL)に溶解し、酢酸ナトリウム(79mg;9.6mmol)を添加した。混合物を氷浴中で冷却し、氷酢酸(10mL)中の臭素(780μL;1.63g;10.22mmol)を10分かけて添加した。反応物を10−15℃で30分間撹拌した。揮発性物質を減圧下で除去し、残渣を塩水/飽和炭酸ナトリウム溶液と酢酸エチルの間に分配した。ガス発生の停止後、有機相および水相を分離し、水溶液をEtOAcでさらに3回抽出した。合わせた有機相をNaSOで乾燥させ、濾過し、揮発性物質を減圧下で除去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(第一にDCM〜10%MeOH/DCM勾配、その後、1:1 EtOAc/ヘキサン)により2回精製して、5−ブロモ−3−(ジフルオロメトキシ)ピリジン−2−オールを淡黄色粉末として得た(化合物1009、810mg、55%収率):ESMS (M+H) 241.9/243.9; 1H NMR (CDCl3) δ 13.2(br m, 1H), 7,44(d, 1H, J= 2.1 Hz), 7.18(d, 1H, J=2.1 Hz), 6.92(t, 1H, J=75 Hz)。
【0101】
スキーム3の工程3−vに示す通り、5−ブロモ−3−(ジフルオロメトキシ)ピリジン−2−オール(300mg;1.25mmol)を、クロロホルム(5mL)中に溶解した。炭酸銀(690mg;2.5mmol)およびヨウ化メチル(780μL;1.77g;12.5mmol)を添加し、混合物をRTで一晩撹拌した。反応混合物を珪藻土を用いて濾過し、それをさらなるCHClで洗浄した。濾液を減圧下で濃縮して、油状物を得て、それをシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、5−ブロモ−3−(ジフルオロメトキシ)−2−メトキシピリジンを白色固体として得た(化合物1010、250mg、78%収率):ESMS (M+H) 254/256; 1H NMR (CDCl3) δ 8.08(d,1H, J= 2.1 Hz), 7.56(d,1H, J=2.1 Hz), 6.60(t, 1H, J=75 Hz), 3.98(s,3H)。
【化21】

【0102】
実施例4. 2.5−ジブロモ−3−エトキシピリジン(化合物1015)の製造
スキーム4の工程4−iに記載の通り、1,1’−カルボニルジイミダゾール(57.4g、354.2mmol)を、THF(400mL)中の2−アミノ−3−ヒドロキシピリジン(26.0g、236.1mmol、Aldrich Chemical Co.から購入)の溶液に添加した。得られた反応混合物を、70℃で14時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、減圧下で濃縮した。残渣をDCM(500mL)中に溶解し、2N NaOHで洗浄した(3x100mL)。合わせた水相を0℃まで冷却し、6N HClでpH6まで酸性化した。形成した沈殿をフリット漏斗に集め、冷水(100mL)で洗浄し、真空下で乾燥させて、オキサゾロ[4,5−b]ピリジン−2(3H)−オンを得た(化合物1011、26.0g、81%収率):ESMS (M+H) 137; 1H NMR (DMSO−d6) δ 12.4 (br, 1H), 8.0 (d, 1H), 7.6 (d, 1H), 7.1 (dd, 1H)。
【0103】
スキーム4の工程4−iiに示す通り、臭素(10.8mL、210.1mmol)を、DMF(200mL)中の化合物1011(26.0g、191mmol)の撹拌溶液に20分かけて滴下した。反応混合物をRTで14時間撹拌した。混合物をクラッシュアイス上に注ぎ、形成した沈殿をフリット漏斗に集めた。固体を水(200mL)で洗浄し、真空下で乾燥させて、6−ブロモオキサゾロ[4,5−b]ピリジン−2(3H)−オン(化合物1012、37.0g、91%収率)を淡黄色固体として得た: ESMS (M+H) 215, 217; 1H NMR (DMSO−d6) δ 12.6 (br, 1H), 8.2 (s, 1H), 8.0 (s, 1H)。
【0104】
スキーム4の工程4−iiiに記載の通り、化合物1012(34g、158.1mmol)を10%NaOH(aq)(500mL)で希釈し、得られた混合物を100℃で6時間撹拌した。反応物を5℃まで冷却し、6N HClを沈殿が形成するまで添加した(約pH10)。固体をフリット漏斗に集め、水(200mL)で洗浄し、真空下で乾燥させて、2−アミノ−5−ブロモ−3−ヒドロキシピリジン(化合物1013、24.0g、80%収率)を黄褐色固体として得た:ESMS (M+H) 189, 191; 1H NMR (DMSO−d6) δ 7.5 (s, 1H), 6.9 (s, 1H), 5.7 (br, 2H)。
【0105】
スキーム4の工程4−ivに記載の通り、化合物1013(19.0g、100.5mmol)をDCM(90mL)中に溶解し、ヨードエタン(9.0mL、110.6mmol)、Adogen(登録商標)464(メチルトリアルキル(C−C10)塩化アンモニウム、0.6g)および40%NaOH水溶液(90mL)を添加した。反応物をRTで21時間撹拌した。DCM相を分離し、水相を水(100mL)で希釈し、DCMで抽出した(2x100mL)。合わせた有機抽出物をNaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗生成物を、シリカプラグを用いて40%酢酸エチル/ヘキサンで溶出して精製して、2−アミノ−5−ブロモ−3−エトキシピリジン(化合物1014、10.0g、46%収率)を白色固体として得た:ESMS (M+H) 217, 219. 1H NMR (DMSO−d6) δ 7.6 (s, 1H), 7.1 (s, 1H), 5.8 (br, 2H), 4.0 (q, 2H), 1.3 (t, 3H)。
【0106】
スキーム4の工程4−vに記載の通り、化合物1014(10g、46.1mmol)を、48%臭化水素酸(90mL、530mmol)で希釈し、0℃まで冷却した。臭素(8.0mL、148mmol)を滴下し、次いで40wt%硝酸ナトリウム(40.0mL、231mmol)を添加した。濃い黒色の不均一溶液を0℃で1時間撹拌した。反応混合物を、50%NaOH水溶液を用いてpH13に調節し、形成した固体をフリット漏斗に集め、水で洗浄した(300mL)。粗固体生成物をDCM(500mL)中に溶解し、1M Na(50mL)および塩水(50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して、2.5−ジブロモ−3−エトキシピリジン(化合物1015、10.0g、73%収率)を淡黄色固体として得た: ESMS (M+H) 280, 282, 284; 1H NMR (DMSO−d6) δ 8.1 (s, 1H), 7.8 (s, 1H), 4.2 (q, 2H), 1.4 (t, 3H)。
【化22】

【0107】
実施例5. 5−ブロモ−2−エトキシ−3−メトキシピリジン(化合物1016)および5−ブロモ−2,3−ジメトキシピリジン(化合物1017)の製造
スキーム5の工程5−iに示す通り、5−ブロモ−2−クロロ−3−メトキシピリジン(1.0g、4.5mmol、実施例2の化合物1003と同様の方法で、3−ブロモ−5−メトキシピリジンから製造した)を、ナトリウムエトキシド/エタノール溶液(5.05mL、21% w/v、13.5mmol)で処理し、反応混合物を、100℃で20分間、マイクロ波照射した。水を添加し、エタノールを減圧下で蒸発させた。得られた水溶液をDCMおよびエーテルで抽出し、次いで合わせた抽出物をMgSOで乾燥させた。濾過後、揮発性物質を減圧下で除去して、5−ブロモ−2−エトキシ−3−メトキシピリジン(化合物1016)、0.72g、69%収率)を得た: ESMS (M+H) 232.32/234.23。スキーム5の工程5−iiに示す通り、化合物1017(ESMS (M+H) 218.32/220.23)を、化合物1016と同様の方法で、エタノール中、ナトリウムエトキシドの変わりに、メタノール中、ナトリウムメトキシドを用いて製造した。
【化23】

【0108】
実施例6. 5−ブロモ−3−メトキシ−2−メチルピリジン(化合物1021)、5−ブロモ−2−シクロプロピル−3−メトキシピリジン(化合物1022)、および5−ブロモ−2−イソプロポキシ−3−メトキシピリジン(化合物1023)の製造
スキーム6の工程6−iに記載の通り、塩化カルシウム(4.0g、35.7mmol)を、メタノール(100mL)および水(25mL)中の3−メトキシ−2−ニトロピリジン(5.0g、32.5mmol、AK Scientific, Inc.から購入)の撹拌溶液に添加した。反応混合物を75℃まで温め、鉄粉(4.6g、81.1mmol)を10分かけて注意深く添加した。得られた反応混合物を75℃でさらに2時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、珪藻土層を通して濾過した。該栓をエタノール(400mL)で濯ぎ、濾液を減圧下で蒸発させた。残渣を酢酸エチル/水(1/1、200mL)に懸濁し、有機層を分離し、水層を酢酸エチルで抽出した(3x100mL)。合わせた有機抽出物を塩水(60mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して、2−アミノ−3−メトキシピリジン(化合物1018、3.6g、89%収率)を得た: ESMS (M+H) 125; 1H NMR (DMSO−d6) δ 7.5 (d, 1H), 7.0 (d, 1H), 6.5 (dd, 1H), 5.6 (br, 2H), 3.75 (s, 3H)。
【0109】
スキーム6の工程6−iiに示す通り、臭素(6.3mL、120.8mmol)を、酢酸(150mL)中の化合物1018(15g、120.8mmol)の撹拌溶液にRTで滴下した。得られた反応混合物をRTで16時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、酢酸を、減圧下、トルエン(2x100mL)と共沸蒸留して除去した。残渣を0℃まで冷却し、飽和重炭酸ナトリウム溶液でpH7に達するまで中和した。水性混合物を酢酸エチルで抽出した(4x500mL)。合わせた有機抽出物を塩水(60mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣を、シリカ層を用いて50%酢酸エチル/ヘキサンで溶出して精製し、2−アミノ−5−ブロモ−3−メトキシピリジン(化合物1019、20.0g、81%収率)を得た: ESMS (M+H) 203, 205; 1H NMR (DMSO−d6) δ 7.6 (s, 1H), 7.2 (s, 1H), 6.0 (br, 2H), 3.8 (s, 3H)。
【0110】
スキーム6の工程6−iiiに示す通り、化合物1019(109.0g、536.8mmol)を48%臭化水素酸(1.0L、6.2mol)で希釈し、反応混合物を0℃まで冷却した。臭素(89.0mL、1.72mol)を滴下し、次いで、40wt%溶液の硝酸ナトリウム(463.1mL、2.68mol)を40分かけて添加した。濃い黒色の不均一混合物を、0℃で1時間撹拌した。反応混合物を、50%NaOH水溶液を用いてpH13に調節し、1時間かけて室温まで温めた。形成した固体をフリット漏斗に集め、水で洗浄した(3x1.0L)。粗固体生成物をDCM(2.0L)中に溶解し、1M Na(2x500mL)および塩水(500mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して、2,5−ジブロモ−3−メトキシピリジン(化合物1020、126.0g、88%収率)を淡黄色固体として得た:ESMS (M+H) 266, 268, 270; 1H NMR (DMSO−d6) δ 8.1 (s, 1H), 7.8 (s, 1H), 3.9 (s, 3H)。
【0111】
スキーム6の工程6−ivに示す通り、化合物1020(5g、18.73mmol)を乾燥THF(94mL)中に溶解し、Pd(PPh(2.16g、1.873mmol)を添加した。反応混合物を氷浴中で冷却し、3/1 THF/トルエン中の臭化メチルマグネシウム(17.4mL、1.4M、24.35mmol)をゆっくり添加した。氷浴を取り除き、反応物を加熱還流した。反応物を還流温度で1時間撹拌し、3mLの臭化メチルマグネシウム溶液を添加した。反応物を還流温度でさらに20分間撹拌し、2mLの臭化メチルマグネシウム溶液を添加した。反応物を還流温度で1時間撹拌し、室温まで冷却した。エチルエーテルおよび1N HClを添加し、有機層を分離し、1N HClで洗浄した。水性抽出物をエチルエーテルで3回洗浄した。水層を、2N NaOHを用いて塩基性にし、酢酸エチルで3回抽出した。酢酸エチル抽出物を合わせ、NaSOで乾燥させ、次いで減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0−25%酢酸エチル/ヘキサン)により精製して、5−ブロモ−3−メトキシ−2−メチルピリジン(化合物1021、2.7g、71%収率)を得た:ESMS (M+H) 202, 204。5−ブロモ−2−エチル−3−メトキシピリジンを、同様の方法で製造した: ESMS (M+H) 216, 218; 1H NMR (CDCl3) δ 8.2 (d, 1H), 7.2 (d, 1H), 3.8 (s, 3H), 2.8 (q, 2H), 1.2 (t, 3H)。
【0112】
スキーム6の工程6−vに示す通り、化合物1020(3.6g、13.5mmol)、シクロプロピル−トリフルオロ−ホウ酸カリウム(2.5g、16.9mmol)、リン酸カリウム(8.6g、40.5mmol)を、約80mLのトルエン/水混合物に溶解した。反応混合物を、窒素ガスで10分間フラッシュし、Pd(PPh(1.4g、1.21mmol)を添加した。反応混合物を、18時間還流し、得られた生成物の混合物をHPLCにより分析した。反応物を冷却し、EtOAcおよび飽和NaClで希釈した。有機層を分離し、乾燥させ(MgSO)、減圧下で濃縮して、固体を得て、それを、中圧シリカゲルクロマトグラフィー(0−8%EtOAc/ヘキサン勾配)により精製して、5−ブロモ−2−シクロプロピル−3−メトキシピリジン(化合物1022、0.54g、70%純度)を得た:ESMS (M+H) 227.9/229.9。この化合物を、次工程に用いた。
【0113】
スキーム6の工程6−viに示す通り、DMF(1mL)中の2−プロパノール(287μL、3.75mmol)を、RTで、DMF(4mL)中の水素化ナトリウム(187mg/鉱油中60%、4.682mmol)の懸濁液に添加した。混合物を30分間撹拌し、次いで、60℃で、DMF(4mL)中の2,5−ジブロモ−3−メトキシピリジン(500mg、1.873mmol、化合物1020)の撹拌溶液に添加した。反応物を60℃で2時間加熱した。RTに冷却後、水および酢酸エチルを添加し、層を分離した。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を合わせ、MgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルに吸着し、それを酢酸エチル/ヘキサン(0−40%)で溶出して、5−ブロモ−2−イソプロポキシ−3−メトキシピリジン(化合物1023、0.16g、35%収率)を得た:1H NMR (CDCl3) δ 7.77(d, J=2.1 Hz, 1H), 7.13(d, J=2.0 Hz, 1H), 5.35(septet, J=6.2 Hz, 1H), 3.87(s, 3H), 1.40(d, J=6.2 Hz, 6H)。5−ブロモ−3−メトキシ−2−プロポキシピリジンおよび5−ブロモ−2−(2,2−ジフルオロエトキシ)−3−メトキシピリジンを、同様の方法で製造した。
【化24】

【0114】
実施例7. 1−エチル−3−(5−(5−メトキシピリジン−3−イル)−4,5,6,7−テトラヒドロチアゾロ[5,4−c]ピリジン−2−イル)ウレア(化合物3)および1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−5−(5−メトキシピリジン−3−イル)チアゾロ[5,4−c]ピリジン−2−イル)−3−(2−プロポキシエチル)ウレア(化合物5)の製造
スキーム7の工程7−iに示す通り、火炎乾燥した250mLの丸底フラスコに、トルエン:tBuOH(5:1)(120mL)中の1,4−ジオキサ−8−アザスピロ[4.5]デカン(3.525g、3.119mL、24.62mmol)、3−ブロモ−5−メトキシピリジン(4.63g、24.62mmol)を入れた。次いで、酢酸パラジウム(II)(276.4mg、1.231mmol)およびXPhos(586.8mg、1.231mmol)を添加し、反応混合物を、90分間、窒素でパージした。t−ブトキシドナトリウム(2.602g、27.08mmol)を添加し、反応混合物を8時間還流し、次いで室温まで冷却した。濃い黒色の粗反応混合物を濾去し、濾液を減圧下で濃縮して、中圧フラッシュクロマトグラフィー(50ないし80%EtOAc/ヘキサン)により直接精製して、8−(5−メトキシピリジン−3−イル)−1,4−ジオキサ−8−アザスピロ[4.5]デカン(化合物1024、4.3g、70%収率)を得た: ESMS (M+H) 251.12; 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.97 (d, J=2.4 Hz, 1H), 7.79 (d, J=2.4 Hz, 1H), 7.26 (s, 1H), 6.71 (m, 1H), 3.99 (s, 4H), 3.84 (s, 3H), 3.36 (m, 4H) and 1.83 (t, J=5.8 Hz, 4H) ppm。
【0115】
スキーム7の工程7−iiに示す通り、化合物1024(4.3g、17.18mmol)のジオキサン溶液(10mL)に、6N HCl水溶液(10mL)を添加し、反応溶液を、室温で4時間撹拌した。溶液を、固体NaCOの添加によりゆっくりpH9にした。水(50mL)を反応混合物に添加し、次いで、EtOAcで抽出した(2x50mL)。合わせた有機画分を塩水(20mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して、1−(5−メトキシピリジン−3−イル)ピペリジン−4−オン(化合物1025、3.09g、87%収率)を粘稠な淡黄色油状物として得て、それをさらに精製することなく用いた:ESMS (M+H) 207.08; 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.00 (d, J=2.4 Hz, 1H), 7.84 (d, J=2.3 Hz, 1H), 6.73 (t, J=2.4 Hz, 1H), 3.85 (s, 3H), 3.64−3.60 (m, 3H) and 2.56 (t, J=6.1 Hz, 3H) ppm。
【0116】
スキーム7の工程7−iiiに示す通り、50mLの丸底フラスコに、ピリジン(3mL)中の化合物1025(206mg、1mmol)、硫黄(64.1mg、2.0mmol)、新鮮なシアナミド(84.0mg、2.9mmol)を入れた。反応溶液を還流温度(130℃)で100分間撹拌した。溶液は、淡黄色から赤色ないし濃い赤色へ変化した。反応混合物を室温まで冷却し、溶媒を減圧下で除去した。残渣をMeOHでトリチュレートし、得られた混合物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣を、中圧シリカゲルクロマトグラフィー(DCM中、0ないし5% MeOH)により精製して、5−(5−メトキシピリジン−3−イル)−4,5,6,7−テトラヒドロチアゾロ[5,4−c]ピリジン−2−アミンを琥珀色固体として得た(化合物1026、62mg、24%収率):1H NMR (2滴のDMSO−d6でのCD3OD) δ 7.90 (d, J=2.4Hz, 1H), 7.68 (d, J=2.1Hz, 1H), 6.97 (t, J=2.4Hz, 1H), 4.29 (m, 2H), 3.85 (s, 3H), 3.69 (t, J=5.7 Hz, H), 2.65 (m, 2H) ppm。
【0117】
スキーム7の工程7−ivに示す通り、化合物1026(50mg、0.19mmol)のDMF溶液(2mL)に、イソシアン化エチル(135.5mg、149.7μL、1.91mmol)を添加した。溶液を、マイクロ波中、120℃で5分間加熱した。粗溶液を濃縮し、中圧シリカゲルクロマトグラフィー(DCM、DCM中の0−3% MeOH、次いで3%MeOH/DCMで定組成溶出)により精製して、1−エチル−3−(5−(5−メトキシピリジン−3−イル)−4,5,6,7−テトラヒドロチアゾロ[5,4−c]ピリジン−2−イル)ウレア(化合物3、43.4mg)を黄色固体として得て、その後、それを塩化してそのモノメシル酸塩として得た: ESMS (M+H) 334.05; 332.08; 1H NMR (CD3OD, 300MHz) δ 8.13 (d, J=2.1Hz, 1H), 7.88 (d, J=2.1Hz, 1H), 7.61 (d, J=2.1Hz, 1H), 4.59 (t, J=1.5Hz, 2H), 4.012 (s, 3H), 3.89 (t, J=5.7Hz, 2H), 3.28 (q, J=7.2Hz, 2H), 2.84 (m, 2H), 2.71 (s, 3H, MsOH), 1.17 (t, J=7.2Hz, 3H) ppm。
【0118】
スキーム7の工程7−vに示す通り、5−(5−メトキシピリジン−3−イル)−4,5,6,7−テトラヒドロチアゾロ[5,4−c]ピリジン−2−アミン(化合物1026、100mg、0.46mmol)を、クロロホルム(部分的に懸濁液となる約10mL)中の1,1’−カルボニルジイミダゾール(74.2mg、0.4574mmol)およびトリエチルアミン(48.2mg、66.4μL、0.48mmol)と共に撹拌し、50℃で7時間加熱した。黄色沈殿(化合物1027)が時間と共にゆっくりと形成し、反応混合物を室温まで冷却し、それを処理することなく用いた。
【0119】
スキーム7の工程7−viに示す通り、クロロホルム(〜10mL)中、上記の反応混合物に、DMF(2mL)、2−n−プロポキシエチルアミン(118mg、1.14mmol)およびDIEA(0.132mL、0.76mmol)を添加し、50℃で2時間加熱し、次いで、RTで一晩撹拌した。反応混合物を水でクエンチし、減圧下で濃縮した。残渣を中圧シリカゲルクロマトグラフィー(DCM中、0ないし10% MeOH)により精製して、1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−5−(5−メトキシピリジン−3−イル)チアゾロ[5,4−c]ピリジン−2−イル)−3−(2−プロポキシエチル)ウレア(化合物5)を淡黄色固体として得て、これを、ジオキサン中、4N HClを用いてビス−HClに変換した: 1H NMR (CDCl3) δ 8.04 (d, J=2.4 Hz, 1H), 7.84 (d, J=2.4 Hz, 1H), 6.75 (t, J= 2.4 Hz, 1H), 4.37 (s, 2 H), 3.86 (s, 3 H), 3.69 (t, J=6 Hz, 2 H), 3.54 (m, 4 H), 3.43 (t, J=6.6 Hz, 2 H), 2.85 (t, J= 5.7 Hz, 2 H)1.60 (m, 2H), 0.93 (t, J= 7.5 Hz, 3 H) ppm。
【0120】
3−ブロモ−5−メトキシ−ピリジンに相当する適当なブロモピリジン、および工程7−ivに相当する工程における適当なイソシアン酸塩または工程7−viに相当する工程におけるアミンを用いて、以下の化合物を同様に製造した:化合物3、6、10から13、16、20、34から39、41、50−52および55−59。
【化25】

【0121】
実施例8. 4,5,6,7−テトラヒドロ−5−(5−メトキシピリジン−3−イル)−N−(ピラジン−2−イル)チアゾロ[5,4−c]ピリジン−2−アミン(化合物18)の製造
スキーム8の工程8−iに示す通り、5−(5−メトキシピリジン−3−イル)−4,5,6,7−テトラヒドロチアゾロ[5,4−c]ピリジン−2−アミン(化合物1026、20mg、0.076mmol)のNMP溶液(1mL)に、2−フルオロピラジン(22.4mg、0.229mmol)およびCsCO(149mg、0.46mmol)を添加した。反応混合物を110℃で18時間加熱した。粗混合物を、中圧シリカゲルクロマトグラフィー(DCM中、0ないし10%MeOH)により、次いで逆相クロマトグラフィー(5ないし90%CHCN/水)を用いる第二の精製により精製した。純粋な生成物を含む画分を、中性pHとし、そして生成物をビス−HCl塩として単離して、4,5,6,7−テトラヒドロ−5−(5−メトキシピリジン−3−イル)−N−(ピラジン−2−イル)チアゾロ[5,4−c]ピリジン−2−アミン(化合物18、4mg)を得た:ESMS (M+H) 341.13; 1H NMR (CD3OD, 300MHz) δ 8.65 (d, J=1.5 Hz, 1H), 8.51 (t, J= 1.5Hz, 1H), 8.41 (d, J=2.7Hz, 1H), 8.22 (d, J=2.4 Hz, 1H),7.96 (d, J=2.4 Hz, 1H),7.69 (t, J=2.4 Hz, 1H), 4.67 (s, 2H), 4.04 (s, 3H), 3.98 (t, J=5.7 Hz, 2H), 3.01 (t, J=5.7 Hz, 2H) ppm。
【化26】

【0122】
実施例9. N−(4,5,6,7−テトラヒドロ−5−(5,6−ジメトキシピラジン−2−イル)チアゾロ[5,4−c]ピリジン−2−イル)アセトアミド(化合物14)の製造
スキーム9の工程9−iに示す通り、25%wt ナトリウムメトキシド(25mL、448.9mmol)溶液を、〜5℃で、2,3−ジクロロピラジン(7.2g、48.33mmol)に添加した。乳白色の混合物を室温まで温め、36時間撹拌した。その後、反応混合物をDCM(50mL)で希釈し、濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣を、DCMと1:1 水/塩水の間に分配し、層を分離し、水層をDCMで抽出し、合わせた有機層を乾燥させ(MgSO)、濾過し、濾液を濃縮し、それを静置して結晶化し、2,3−ジメトキシピラジンを白色結晶物質として得た(化合物1028、5.56g、82%)。ESMS (M+H) 141.00; 1H NMR (CDCl3, 300MHz) δ 7.61 (s, 2H), 4.00 (s, 6H) ppm。
【0123】
スキーム9の工程9−iiに示す通り、N−ブロモスクシンイミド(7.335g、41.21mmol)を、0℃で、化合物1028(5.5g、39.25mmol)のDMF(25mL)溶液に添加し、得られた懸濁液を、一晩、ゆっくり室温まで温めた。さらに8.4gのNBSを添加し、溶液をさらに7時間撹拌した。その後、赤色の反応溶液を〜4℃まで冷却し(氷浴)、1N Naを用いて中和し、0℃で30分間撹拌した。得られた混合物を濾過し、温水で洗浄して(3x)、灰白色固体を得て、それを中圧シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中、0ないし20%EtOAc)により精製して、5−ブロモ−2,3−ジメトキシピラジン(化合物1029、6.06g(70%))を白色固体として得た:ESMS (M+H) 218.94; 1H NMR (CDCl3, 300MHz) δ 7.72 (s, 1H), 4.04 (s, 3H), 4.00 (s, 3H) ppm。
【0124】
スキーム9の工程9−iiiに示す通り、火炎乾燥した250mLの丸底フラスコに、1,4−ジオキサ−8−アザスピロ[4.5]デカン(2.418g、2.140mL、16.89mmol)、化合物1029(3.7g、16.89mmol)、および5:1 トルエン:tBuOH(72mL)を入れた。酢酸パラジウム(II)(189.6mg、0.8445mmol)およびXPhos(402.6mg、0.8445mmol)を添加し、反応混合物を、窒素ガスで90分間フラッシュした。ナトリウム t−ブトキシド(1.786g、18.58mmol)を添加し、反応混合物を8時間還流し、次いで室温まで冷却した。得られた濃色の粗反応混合物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮して、残渣を中圧シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中、0ないし25%EtOAc)により精製して、8−(5,6−ジメトキシピラジン−2−イル)−1,4−ジオキサ−8−アザスピロ[4.5]デカン(化合物1030、2.51g、53%収率)を淡黄色油状物として得て、それを高真空下で静置して結晶化した:ESMS (M+H) 282.13; 1H NMR (CDCl3, 300MHz) δ 7.12 (br s, 1H), 4.00 (s, 4H), 3.98 (s, 3H), 3.95 (s, 3H), 3,52 (m, 4H), 1.82 (m, 4H) ppm。
【0125】
スキーム9の工程9−ivに示す通り、6N HCl水溶液(43mL)中、化合物1030(2.46g、8.745mmol)の懸濁液を、室温で2時間撹拌した。粗反応混合物に、〜4℃で、6N NaOHをゆっくり添加し、次いで1N KCO水溶液を添加して中和した。反応物をEtOAcで抽出し(3x)、合わせた有機層を乾燥させ(MgSO)、次いで減圧下で濃縮して、1−(5,6−ジメトキシピラジン−2−イル)ピペリジン−4−オンを灰白色の半固体として得て(化合物1031、1.51g、73%)、それをさらに精製することなく次工程に用いた: 1H NMR (CDCl3, 300MHz) δ 7.33 (s, 1H), 4.07 (s, 3H), 4.04 (s, 3H), 3,86 (m, 4H), 2.62 (m, 4H) ppm。
【0126】
スキーム9の工程9−vに示す通り、200mLの丸底フラスコに、化合物1031、ピロリジン(1.45g、6.11mmol)、p−TsOH−HO(116.3mg、0.6112mmol)、およびトルエン:ジクロロエタン(15:12mL)を入れた。混合物を、密封したパー・シェイカー・フラスコ(Parr flask)中、モレキュラー・シーブ上で80℃で3時間加熱した。冷却後、混合物を濾過し、そして濾液を減圧下で濃縮した。残渣を、乾燥MeOH(25mL)中に溶解し、硫黄(215.6mg、6.723mmol)を一度に添加した。反応混合物に、0℃で、乾燥MeOH(〜10mL)中のシアナミド(282.6mg、6.723mmol)溶液を添加した。反応混合物を、室温までゆっくり温め、そして一晩撹拌した。得られた濃い赤色の反応混合物を、減圧下で濃縮して、中圧シリカゲルクロマトグラフィー(1:1 EtOAc:ヘキサン、その後100%EtOAc)により直接精製して、5−(5,6−ジメトキシピラジン−2−イル)−4,5,6,7−テトラヒドロチアゾロ[5,4−c]ピリジン−2−アミン(化合物1032、230mg、55%収率)を淡褐色固体として得た:ESMS (M+H) 293.99。
【0127】
スキーム9の工程9−viに示す通り、DCM(2mL)中の化合物1032(65.4mg、0.223mmol)の溶液に、DIEA(200μL、1.148mmol)および酢酸無水物(200μL、2.12mmol)を添加した。反応溶液を、室温で150分間撹拌し、粗生成物を、中圧シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中、10ないし80%EtOAc)により精製して、N−(4,5,6,7−テトラヒドロ−5−(5,6−ジメトキシピラジン−2−イル)チアゾロ[5,4−c]ピリジン−2−イル)アセトアミド(化合物14、36.8mg)を灰白色固体として得て、それを塩化し、そのモノメシル酸塩をベージュ色固体として得た:ESMS (M+H) 336.12; 1H NMR (300.0 MHz, DMSO−d6) δ 7.31 (s, 1H), 4.55 (s, 2H), 3.91 (m, 3H), 3.83 (m, 5H), 2.73 (t, J=5.4 Hz, 2H), 2.39 (d, J=0.6 Hz, 3H) and 2.12 (s, 3H) ppm。
【化27】

【0128】
工程9−iiiに対応する工程に関して適当なブロモフェニル、ブロモピリジンまたはブロモピラジンを、工程9−viに対応する工程に関して適当なアシル化剤を用いて、以下の化合物を、同様に製造した:化合物2、4、7−9、15、17、19、21−33、40および42−49。
【0129】
実施例10. N−(5−(ピラジン−2−イル)−4,5,6,7−テトラヒドロチアゾロ[5,4−c]ピリジン−2−イル)アセトアミド(化合物1)の製造
スキーム10の工程10−iに示す通り、ピリジン(100mL)中のtert−ブチル 4−オキソピペリジン−1−カルボキシラート(19.9g)、シアナミド(8.4g)および硫黄(6.4g)の混合物を、130℃で90分間加熱した。室温まで冷却後、得られた固体を濾取し、エチルエーテル(2x)で洗浄して、tert−ブチル 2−アミノ−6,7−ジヒドロチアゾロ[5,4−c]ピリジン−5(4H)−カルボキシラート(化合物1033、21.12g)を得た。
【0130】
スキーム10の工程10−iiに示す通り、ピリジン(80mL)中、化合物1033(10.0g)に、塩化アセチル(4.2mL)を添加した。50℃で30分間撹拌後、水(200mL)を添加した。得られた固体を濾取し、水(2x)で洗浄して、tert−ブチル 2−アセトアミド−6,7−ジヒドロチアゾロ[5,4−c]ピリジン−5(4H)−カルボキシラート(化合物1034、10.873g)を得た。
【0131】
スキーム10の工程10−iiiに示す通り、メタノール(50mL)および4N HCl−ジオキサン(40mL)中の化合物1034(3.31g)溶液を、50℃で30分間加熱した。揮発性物質を減圧下で除去後、N−(4,5,6,7−テトラヒドロチアゾロ[5,4−c]ピリジン−2−イル)アセトアミド(化合物1035)をHCl塩として得た。
【0132】
スキーム10の工程10−ivに示す通り、NMP(3mL)中の化合物1035(50mg)溶液に、2−クロロピラジン(100mg)を添加した。反応混合物を、マイクロ波照射下で10分間、250℃まで温めた。反応物を水(10mL)に注ぎ、粗生成物を濾取した。粗固体をシリカゲルクロマトグラフィー(CHClないしEtOH)により精製して、N−(5−(ピラジン−2−イル)−4,5,6,7−テトラヒドロチアゾロ[5,4−c]ピリジン−2−イル)アセトアミド(化合物1、6.8mg)を得た:ESMS (M+H) 276.16。
【化28】

【0133】
表2は、任意の式Iの化合物についての解析評価データを提供する(空白は、試験が行われなかったことを示す。)。表2の化合物番号は、表1に示した番号に対応する。
【表2】


【表3】


【表4】

【0134】
【表5】


【表6】


【表7】


【表8】

【0135】
本発明の化合物の生物学的アッセイ
実施例11. PI3K阻害アッセイ
Beckman CoulterのBiomek FXを用いて、100%DMSO中、本発明の化合物の10種の2.5倍連続希釈液(各1.5μL)を、96ウェルポリスチレンプレート[Corning, Costar 商品番号3697]中、個々のウェルに添加した(以降、“試験ウェル”)。化合物を含まない1.5μLのDMSOを含む試験ウェルも1個含まれた。別のウェルは、DMSO中、酵素を完全に阻害することが知られている濃度で阻害剤を含んだ(以降、“バックグラウンドウェル”)。Titertek Multidropを用いて、50μLの反応Mix[100mM HEPES pH7.5、50mM NaCl、10mM DTT、0.2mg/mL BSA、60μM ホスファチジルイノシトール(4,5)−ビスホスフェート diC16(PI(4,5)P;Avanti Polar Lipids、カタログ番号840046P)、および興味のあるPI3K異性体(異性体濃度については表3を参照のこと)]を、各ウェルに添加した。反応を開始するために、50μLのATP Mix[20mM MgCl、6μM ATP(100μCi/μmole 33P−ATP)]を各ウェルに添加し、次いでウェルを25℃で30分間インキュベートした。各ウェル中の最終濃度は、50mM HEPES 7.5、10mM MgCl、25mM NaCl、5mM DTT、0.1mg/mL BSA、30μM PI(4,5)P、3μM ATP、および興味のあるPI3K異性体(表3参照)であった。各ウェル中、最終化合物濃度は、10μMないし1nMの範囲である。
【0136】
【表9】

【0137】
インキュベーション後、各ウェルにおける反応を、50μLの停止溶液[30% TCA/水、10mM ATP]の添加によりクエンチした。その後、各クエンチした反応混合物を、96ウェルガラス繊維フィルタープレート[Corning, Costar 商品番号3511]に移した。プレートを真空濾過し、改良型Bio-Tek Instruments ELX-405 Auto Plate Washer中、150μLの5%TCA/水で3回洗浄した。50μLのシンチレーション液を各ウェルに添加し、プレートをPerkin-Elmer TopCount(商標)NXT 液体シンチレーションカウンターで読み込み、阻害値を表す33Pカウント値を得た。
【0138】
バックグラウンドウェルの値を、各試験ウェルで得られた値から差し引き、データを、Morrison and Stone, Comments Mol. Cell Biophys. 2: 347−368, 1985に記載の競合的タイトバインディングKiの式に当てはめた。
【0139】
化合物1ないし59はそれぞれ、PI3Kγに関して1.0μm未満のKを有する。化合物3、3−12、14−19、23、25、32−39、44、50−52および57は、PI3Kγに関して0.10μm未満のKを有する。化合物5、9、12、14、25、36および52は、PI3Kγに関して0.020μm未満のKを有する。例えば、化合物52は、0.003μmのKを有する。
【0140】
本明細書中に引用される全ての文献および特許は、個々の文献または特許を具体的かつ個別に引用により包含させるように、引用により本明細書中に包含される。上記の本発明は、例示および理解を明確にするための例としていくつかが詳述されて記載されているが、当業者には、任意の改変および修飾が、本発明の精神または添付の特許請求の範囲を逸脱することなく行われ得ることが、容易に理解され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】


[式中、
およびXは、それぞれ独立して、NまたはCHであり;
は、−C(O)H、−C(O)R1a、−C(O)N(R1a)(R1b)、またはN、OもしくはSから選択される1−3個のヘテロ原子を有し、所望により1、2もしくは3個のJR2基で置換されていてよい5もしくは6員のヘテロアリール環であり;
1aは、C1−6脂肪族、C3−6シクロ脂肪族、アゼチジニル、ピロリジニル、またはピペリジニルであり、ここで、R1aは、所望により1、2、3または4個のJ基で置換されていてよく;
1bは、水素、C1−4脂肪族であるか、またはR1aおよびR1bは、それらが結合する窒素と一体となって、4−6員のヘテロ環式環を形成し(ここで、該R1aおよびR1bのヘテロ環式環は、所望により、窒素および酸素から選択される1個のさらなるヘテロ原子を含んでいてよく、そして、所望により、1または2個のJR2基で置換されていてよい。);
は、それぞれ独立して、フルオロ、オキソ、−C(O)JR1、−C(O)N(JR1、−C(O)O(JR1)、−N(JR1)C(O)JR1、−OJR1、−SJR1、フェニルまたは窒素、酸素もしくは硫黄から選択される2個までの原子を有する5−6員のヘテロアリールもしくはヘテロシクリルであり(ここで、該フェニル、ヘテロアリールもしくはヘテロシクリルまたはJは、所望により1または2個のJR2基で置換されていてよい。);
R1は、それぞれ独立して、水素、C1−4脂肪族、C3−6シクロ脂肪族、フェニル、ベンジル、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールから選択され(ここで、該JR1のヘテロシクリルは、NまたはOから選択される1または2個の原子を有する5もしくは6員環であり、該Rのヘテロアリールは、N、OまたはSから選択される1、2または3個の原子を有する、5もしくは6員の単環または9もしくは10員の縮合二環式環系であり、そして該JR1の脂肪族、シクロ脂肪族、フェニル、ベンジル、ヘテロシクリル、またはヘテロアリールはそれぞれ、所望により3個までのJR2基で置換されていてよい。);
各JR2は、クロロ、フルオロ、オキソ、C1−2アルキル、1−3個のフッ素原子で置換されたC1−2アルキル、C3−6シクロアルキル、−OH、−OC1−2アルキル、1−3個のフッ素原子で置換された−OC1−2アルキル、−C(O)C1−2アルキル、または−SC1−2アルキルから選択され;
は、水素、フルオロ、クロロ、C1−6脂肪族、−OC1−6脂肪族、C3−6シクロ脂肪族、−OC3−6シクロ脂肪族、シアノ、−NH、−NHC1−6脂肪族、−NHC3−6シクロ脂肪族、−NHS(O)1−6脂肪族、−NHS(O)3−6シクロ脂肪族、−NHS(O)フェニル、−NHS(O)ベンジル、−NHS(O)ヘテロアリール、−S(O)1−6脂肪族、−S(O)3−6シクロ脂肪族、−S(O)フェニル、−S(O)ベンジル、−S(O)ヘテロアリール、−S(O)NHC1−6脂肪族、−S(O)NHC3−6シクロ脂肪族、−S(O)NHフェニル、−S(O)NHベンジル、または−S(O)NHヘテロアリールから選択され(ここで、該Rのヘテロアリールは、N、OまたはSから選択される1、2または3個の原子を有する5もしくは6員環であり、そして該Rの脂肪族、シクロ脂肪族、フェニル、ベンジル、またはヘテロアリールは、所望により1、2または3個のJR2基で置換されていてよい。);そして
は、水素、フルオロ、クロロ、C1−3脂肪族、−OC1−3脂肪族、NH、またはNHC1−3脂肪族である(ここで、該Rの脂肪族は、所望により3個までのフルオロで置換されていてよい。)。]
で示される化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
およびXがそれぞれ、Nであるか、またはXがCHであり、XがNであり;
が、−C(O)H、−C(O)R1a、−C(O)N(R1a)(R1b)、または2個までの窒素原子を有し、所望により1、2または3個のJR2基で置換されていてよい6員のヘテロアリール環であり;
1aが、C1−4脂肪族、アゼチジニル、ピロリジニル、またはピペリジニルであり、ここでR1aは、所望により1、2または3個のJで置換されていてよく;
1bが水素であるか、またはR1aおよびR1bが、それらが結合する窒素と一体となって、4−6員のヘテロ環式環を形成し(該R1aおよびR1bのヘテロ環式環は、所望により窒素および酸素から選択される1個のさらなるヘテロ原子を含んでいてよく、該R1aおよびR1bのヘテロ環式環は、所望により1または2個のJR2基で置換されていてよい。);
が、それぞれ独立して、フルオロ、オキソ、−C(O)JR1、−C(O)N(JR1、−C(O)O(JR1)、−N(JR1)C(O)JR1、−OJR1、フェニルまたは窒素、酸素もしくは硫黄から選択される2個までの原子を有する5−6員のヘテロアリールもしくはヘテロシクリルであり(ここで、該フェニル、ヘテロアリールもしくはヘテロシクリルまたはJは、所望により1または2個のJR2基で置換されていてよい。);
R1が、それぞれ独立して、水素、C1−4脂肪族、C3−6シクロ脂肪族、フェニル、ベンジル、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールから選択され(ここで、該JR1のヘテロシクリルは、NまたはOから選択される1または2個の原子を有する5もしくは6員環であり、該Rのヘテロアリールは、N、OまたはSから選択される1、2または3個の原子を有する、5もしくは6員の単環であり、そして該JR1の脂肪族、シクロ脂肪族、フェニル、ベンジル、ヘテロシクリル、またはヘテロアリールはそれぞれ、所望により3個までのJR2基で置換されていてよい。);
各JR2が、クロロ、フルオロ、オキソ、C1−2アルキル、1−3個のフッ素原子で置換されたC1−2アルキル、C3−6シクロアルキル、−OH、−OC1−2アルキル、1−3個のフッ素原子で置換された−OC1−2アルキル、−C(O)C1−2アルキル、または−SC1−2アルキルから選択され;そして
およびRが、それぞれ独立して、水素、クロロ、トリフルオロメチルまたは−OCHである(ここで、RおよびRの少なくとも一方は、水素ではない。)、
請求項1記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
−C(O)R1aが、
【化2】


から選択される、請求項1記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
が−C(O)N(R1a)(R1b)である、請求項1記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
1bが水素であり、R1aが、所望により、−OJR1、−SJR1、または窒素もしくは酸素から選択される2個までの原子を有し、所望により2個までのJR2基で置換されていてよい5−6員のヘテロアリールで置換されていてよいC1−4脂肪族である、請求項1記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
1aおよびR1bが、それらが結合する窒素と一体となって、4−6員のヘテロ環式環を形成する(該ヘテロ環式環は、所望により、窒素および酸素から選択される1個のさらなるヘテロ原子を含んでいてよく、そして所望により1または2個のJR2基で置換されていてよい。)、請求項1記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
−C(O)N(R1a)(R1b)が、
【化3】


から選択される、請求項4記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
およびXがそれぞれNである、請求項1記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
がCHであり、そしてXがNである、請求項1記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
が、−OC1−3アルキルまたは−CFである、請求項1記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
【化4】


が、
【化5】


から選択される、請求項1記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
該化合物が、
【化6】


【化7】


【化8】


【化9】


から選択される、請求項1記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
請求項1記載の化合物、および薬学的に許容される担体、アジュバントまたはビークルを含む、医薬組成物。
【請求項14】
多発性硬化症の治療剤、抗炎症剤、免疫調節剤または免疫抑制剤から選択される治療剤をさらに含む、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
自己免疫性疾患または脳もしくは脊髄の炎症性疾患から選択される疾患または状態の処置法または重症度の軽減法であって、該患者に請求項1記載の化合物もしくはその塩、または医薬組成物を投与する工程を含む方法。
【請求項16】
該疾患または障害が多発性硬化症である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
該患者に付加治療剤を投与するさらなる工程を含み、該付加治療剤が、処置されるべき疾患に適しており、そして該化合物または組成物と単一投与量形態として共に投与されるか、または該化合物または組成物とは別個に多数の投与量形態の一部として投与される、請求項15記載の方法。
【請求項18】
該付加治療剤が、多発性硬化症の処置に有用であり、そしてβインターフェロン、グラチラマー、ナタリズマブまたはミトキサントロンから選択される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
生物学的サンプルにおけるPI3K−γキナーゼ活性の阻害方法であって、該生物学的サンプルを、請求項1記載の化合物または請求項13記載の組成物と接触させることを含む方法。

【公表番号】特表2012−518011(P2012−518011A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550315(P2011−550315)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/024323
【国際公開番号】WO2010/096389
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】