説明

ホップβ酸抗糖尿病組成物

【課題】被験者の血糖値を低下させるか又は糖尿病の症状を改善する組成物及び方法を提供すること。
【解決手段】一以上の安全かつ安定なホップ酸又はホップ酸誘導体を含有する組成物。より詳細には、前記方法はβホップ酸類を含有する成分を利用するか、又はβホップ酸類を含有する組成物を食品又は非食用製品に適用して、2型糖尿病又はそれに関連した疾病における血糖値を低下させることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘテロ環状化合物及び前記化合物を含む組成物、並びに前記化合物及び前記化合物の組成物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真性糖尿病は世界中で最も一般的な代謝疾患である。米国において毎日1700件の新たな糖尿病の症例が診断されており、1千6百万人の糖尿病のアメリカ人の少なくとも3分の1がその病気に気づいていない。糖尿病は、成人における失明、腎不全、及び下肢切断の主な原因であり、心臓血管疾患及び発作の主な危険因子である。
【0003】
正常なグルコース・ホメオスタシスは、グルカゴンのような対抗制御的ホルモンの分泌により微妙に平衡を保っている、血中グルコース濃度の微細な変化に反応する膵臓β細胞により細かく調節されたインスリン分泌の調和を必要とする。1型糖尿病は、インスリン欠乏を引き起こす膵臓β細胞の自己免疫性破壊によりもたらされる。2型非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)は、症例の>90%を占め、(1)末梢組織、特に骨格筋及び脂肪細胞におけるグルコース取り込みのインスリン作用に対する耐性、(2)肝臓のグルコース産生を阻害するインスリン作用障害、及び(3)インスリン分泌調節不全の三つの徴候である(非特許文献1)。ほとんどの場合において、2型糖尿病は、複雑な遺伝様式を持つ多遺伝子性疾患である(非特許文献2で論評されている)。
【0004】
環境的要因、特に食事、身体活動、及び年齢が遺伝的素因と相互作用して、疾患の罹患率に影響を与える。インスリン耐性とインスリン分泌欠陥の両方への感受性が遺伝的に決定されるように思われる(非特許文献2)。インスリン活性の欠陥が、明白な疾患に先行し、糖尿病被験者の非糖尿病性関連事象として見られる。真剣な研究にも関わらず、2型糖尿病の普通型の原因遺伝子は、依然として知られていない。
【0005】
インスリンの基本的な作用の1つは、血液から組織、特に筋肉及び脂肪へのグルコースの取り込みを刺激することである。このことは細胞の形質膜の中に挿入する特定のグルコース・トランスポーター・タンパク質により仲介される、促進拡散によって生じる。GLUT4は、これらの組織における最も重要なインスリン感受性グルコース・トランスポーターである。インスリンは、形質膜におけるそのレセプターと結合し、一連のシグナルを発生させ、GLUT4輸送小胞の形質膜への転位又は移動をもたらし、そこでは、最初のドッキングのプロセス、次に形質膜との融合が起こり、活性化又は暴露のプロセスが起こった後で、グルコースが細胞の中に入る。動物及びヒトの両方での研究は、GLUT4発現、輸送、及び/又は活性における変化が、糖尿病及び他のインスリン耐性の状態で脂肪細胞及び筋肉で起こることを示す(非特許文献3)。糖尿病の新規で革新的な治療方法の提供が、この分野の研究者にとっての明らかな優先事項である。幾つかのホップ成分が、インスリン耐性の高脂肪食餌マウス及び2型糖尿病の被験者においてインスリン耐性を低減し、インスリン感受性を改善することが知られている。(非特許文献4)。しかし、報告されているホップ由来の活性成分は、2つの主要なイソフムロン類似体、イソフムロン及びイソコフムロンに限定されている。この2つの活性成分は、ホップα酸に分類され、2つのイソプレン単位(二重結合を有するか、又は有さない)を有し、それぞれ、これらの化合物のコアの6員環構造の一部である2個の異なる炭素原子のうちの1個に結合すると同定されている。加えて、インスリン感受性の改善は、PPARγ活性化を通して観察されることが実証されている。
【非特許文献1】DeFronzo,(1997) Diabetes Rev. 5:177−269
【非特許文献2】Kahn等, (1996) Annu. Rev. Med. 47:509−531
【非特許文献3】Abel等, Diabetes Mellitus: A Fundamental and Clinical Text (1996) pp.530−543
【非特許文献4】J Biol Chem. 2004, 279: 33456−33462
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ヘテロ環状化合物及び前記化合物を含む組成物、並びに前記化合物及び前記化合物の組成物の使用方法に関する。前記化合物及びそれらを含む組成物は、グルコース及びグルコース濃度の調節に影響若しくは関連した疾病又は疾病徴候の治療に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様は、ホップβ酸、ホップβ酸誘導体からなる群から選ばれる、少なくとも1つの化合物を有する組成物、並びに前記の組成物を被験者に投与することによる、糖尿病及び肥満のような糖尿病に関連した疾病の治療法を提供する使用ことである。ここで記載される前記化合物はグルコース取り込み増強剤である。
【0008】
本発明の1つの態様は、ホップβ酸又はホップβ酸誘導体である、少なくとも1つの化合物成分を有する抗糖尿病組成物である。特に好ましい態様は、1以上のルプロン、アドルプロン又はコルプロン(例えば、いずれか2種又は3種全部の組み合わせ)を含む(例えば含んでなる、本質的に前記から構成される、又は前記のみから構成される)組成物である。別の態様では、ルプロン、アドルプロン又はコルプロンの組み合わせは、組成物全体におけるβ酸が約85%、約90%、約95%、又は約98%である。別の態様では、ルプロン、アドルプロン又はコルプロンの各々は、組成物全体におけるβ酸が約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、又は約95%である。ある態様では、コルプロン、ルプロン及びアドルプロンの比が、順に65:25:10である。
【化1】

【0009】
別の態様では、ホップβ酸又はホップβ酸誘導体は単離された1以上の生成物である。より詳細には、単離されたβホップ酸又は単離されたルプロン、アドルプロン若しくはコルプロンである。ホップβ酸はホップから抽出された天然分子であり、核となる5又は6員環の環状構造(例、シクロペンチル又はシクロヘキシル環)の一部分である同一の炭素原子上に、2つのイソプレン単位(イソプレニル基又はイソペンチル基のように二重結合があってもなくてもよい)が結合(例えばジェミナル置換)したものである。代表的な例としては、
【化2】

が挙げられる。式中、Rは独立にアルキル、アルケニル、シクロアルキルアルキル又はアラルキル基である。ホップ酸又はホップ酸誘導体は、式(I)
【化3】

又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物、又はそれらのプロドラッグであってよく、式中、Rはそれぞれ独立に−C(O)Rで、
はそれぞれ独立にアルキル又はアルケニルで、
はそれぞれ独立にアルキル又はアルケニルで、
はそれぞれ独立にアルキル又はアルケニルで、
はそれぞれ独立にアルキル、アルケニル、シクロアルキルアルキル又はアルケニルで、
Xはそれぞれ独立に水素、水酸基又はYと一緒になって酸素で、
Yはそれぞれ独立に水素、水酸基又はXと一緒になって酸素で、
及びnはそれぞれ独立に0又は1である。
【0010】
一態様では、前記化合物は、本明細書に記載する化学式のいずれでもよく、ここで、X及びYは同一でない、
ここでX及びYは同一である、
X及びYが一緒になって酸素(例えば、X、Y両者が炭素原子に結合し、それらX、Y及び前記炭素がカルボニル基を形成する)、並びに
X及びYの一方が水素で、他方が水酸基である。
【0011】
ホップ酸誘導体は、天然の生合成(例、生物体(例、哺乳類、植物、バクテリア)の代謝)により、又は人為的な(例、化学合成)合成法により、ホップ酸から化学的に誘導された化合物である。βホップ酸誘導体は、βホップ酸から誘導される化合物である。
【0012】
別の態様は、ホップ酸又はホップ酸誘導体及び薬学的に許容される担体を有する組成物である。前記組成物は、さらに追加的治療用薬剤を有してもよい。ここで、前記組成物は、一以上の前記化合物を含む栄養組成物及び栄養組成物の製造上許容できる担体も含有する。前記組成物は、一以上の追加的な栄養剤を含有してもよい。
【0013】
追加的抗糖尿病薬剤は、例えば、メトフォルミン、ビグアニド、フルホニル尿素、グルコシダーゼ阻害剤、PPARガンマアゴニスト、PPARアルファ/ガンマ、二重アゴニスト、P2阻害剤、DPP−IV(ジペプチジルペプチダーゼIV)、DPP−IV阻害剤、LAF−237、BMS−477188、MK−0431、GSK−23A、DP4阻害剤、インスリン感作剤、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、GLP−1アゴニスト、エクセンジン−4、リラグルチド、インスリン、メグリチニド、PTPlB阻害剤、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤又はグルコース−6−ホスファターゼ阻害剤から一以上選ばれる。
【0014】
別の態様は、本明細書で記載のいずれかの化合物の有効量を被験者に投与することを含む、治療が必要とされる(かかる治療が必要と診断されることを含む)被験者における、疾病又は疾病徴候の治療法である。前記方法は、疾病又は疾病徴候がグルコース又はグルコース濃度の制御によって(例、阻害、作用、拮抗)、調節されるものでよい。疾病又は疾病徴候は、糖尿病、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、創傷治癒の遅延、インスリン耐性、高血糖症、高インスリン血症、脂肪酸又はグリセロールの高血中濃度、高脂血症、肥満、高トリグリセリド血症、X症候群、糖尿病合併症、アテローム性動脈硬化症又は高血圧でよい。
【0015】
別の態様では、本発明は、本願明細書中の化学式によるいかなる化合物、追加の治療薬及び薬学的に許容できる担体を含む組成物に関する。追加の治療薬は、抗糖尿病又は抗肥満薬(例、メリディナ(登録商標)、フェンテルミン、テヌエート(登録商標)、キセニカル(登録商標))でよい。
【0016】
本発明のさらに別の態様は、疾病又は疾病徴候(糖尿病、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、創傷治癒の遅延、インスリン耐性、高血糖症、高インスリン血症、脂肪酸又はグリセロールの高血中濃度、高脂血症、肥満、高トリグリセリド血症、X症候群、糖尿病合併症、アテローム性動脈硬化症又は高血圧を含むが、これらに限定されない)を有するか又は罹患する被験者(例、哺乳類、ヒト、ウマ、イヌ、ネコ)を治療する方法に関する。前記方法は、本明細書に記載の化合物又はかかる効果を生み出す組成物を、被験者(かかる治療が必要と診断される被験者を含む)に対し有効量投与することを含む。かかる治療が必要な被験者の診断は、被験者又は健康管理専門家の診断により行ってよく、主観的(例、見解)でも客観的(例、検査又は診断法により測定可能)であってもよい。
【0017】
本発明のさらに別の態様は、グルコースを介した疾病又は疾病徴候(真性糖尿病、糖尿病、2型糖尿病、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、創傷治癒の遅延、インスリン耐性、高血糖症、高インスリン血、脂肪酸又はグリセロールの高血中濃度、高脂血症、肥満、高トリグリセリド血症、X症候群、糖尿病合併症、アテローム性動脈硬化症又は高血圧を含むが、これらに限定されない)を有する被験者(例、哺乳類、ヒト、ウマ、イヌ、ネコ)の治療法である。前記方法は、本明細書に記載の化合物又はかかる効果を生み出す組成物を、被験者(かかる治療が必要と診断される被験者を含む)に対し有効量投与することを含む。かかる治療が必要な被験者の診断は、被験者又は健康管理専門家の診断により行ってよく、主観的(例、見解)でも客観的(例、検査又は診断法により測定可能)であってもよい。本明細書において、前記方法は、実際に臨床試験の結果や被験者又は健康管理提供者の意見によって被験者が治療されてもよい。
【0018】
前記方法には、本明細書に記載の化合物又はかかる効果を生み出す組成物を、被験者(かかる治療が必要と診断される被験者を含む)に対し有効量投与して被験者の血糖濃度を低下させる方法が含まれる。前記方法にはまた、本明細書に記載の化合物又はかかる効果を生み出す組成物を、被験者(かかる治療が必要と診断される被験者を含む)に対し有効量投与して被験者のGLUT4発現レベルを調節する方法が含まれる。前記方法には、グルコース濃度を、本明細書に記載の化合物又は組成物の投与の前、後又は前後においてモニター(分析、臨床試験)する段階を含めてもよい。
【0019】
別の態様では、前記組成物は、ホップβ酸、ホップβ酸誘導体、及びウコン中に含まれる化合物(例、クルクミン)の少なくとも1つの化合物を有する成分を含む。特に、組成物は、1以上のルプロン、アドルプロン又はコルプロン(例えば、いずれか2種又は3種全部の組み合わせ)及びウコン中に含まれる化合物(例、クルクミン)を含む(例えば、含んでなる、本質的に前記から構成される、前記のみから構成される)。驚くべきことに、これらの組み合わせは、グルコースの取り込みに優れた相乗効果を示した。図4を参照すると、すなわち、前記組み合わせ組成物は、β酸混合物又はクルクミン単独と比較して、優れたグルコースの取り込みを示す。
【0020】
本発明はまた、本明細書に記載した化合物の製造方法に関し、該方法は反応式又は実施例に記載するいかなる反応又は試薬類又は工程(抽出、単離、精製を含む)を含む。もしくは、前記方法は、本明細書に記載されるいかなる中間体化合物を取り出し、一以上の化学薬品と一以上の工程で反応させ、本明細書に記載される化合物を生成することを含む。
【0021】
また、本発明の範囲にはパッケージ製品が含まれる。パッケージ製品には、容器、該容器に充填された1つ(又は二つ以上の)前記化合物、及び前記容器に付随する、グルコース濃度調節に関連する疾患の治療用化合物の投与方法を示す説明文(例、ラベル又は折込)が含まれる。
【0022】
別の態様では、本明細書に記載した化合物、組成物及び方法は、本明細書に記載したいかなる化合物又はそれを含む方法であってよい。
【0023】
本発明の一以上の態様を、添付の図面と以下の記載により説明する。本発明の他の特徴、課題及び利点は、詳細な説明及び特許請求の範囲の記載から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、新規な抗糖尿病組成物、及び被験者における血中グルコース濃度の低減方法におけるその使用を提供する。新規な抗糖尿病組成物は、1つ以上のホップ酸又はホップ酸誘導体を含む。
【0025】
新規組成物の成分は、1つ以上のホップ酸又は酸誘導体である。ビール製造で使用されるホップの苦味酸成分であり、ホップの成分として含まれる苦味酸の最も一般的な群は、α酸及びβ酸であり、それぞれフムロン及びルプロンとも呼ばれる。両方ともビールの苦味に寄与するが、α酸は、この点に関してβ酸よりもさらに強い。しかし、試験結果は、α酸も、またホップにおける強力な抗菌性成分として知られているキサントフモールも、これらの条件下で何も増強効果を示さないことを示唆している。
【0026】
ホップは、2つの主要な有機酸の部類、フムロン(α酸としても知られている)及びルプロン(β酸としても知られている)を含有する。α酸及びβ酸の多くの類似体があることが考えられるが、α酸には3つの主要な類似体があり、β酸には3つの主要な類似体がある。これらの3つの主要な類似体の各群は、α酸及びβ酸それぞれのおよそ99%以上を構成している。これらの3つの主要な類似体は、文献で一般的に考察されているものでもある。α酸及びβ酸の3つの主要な類似体とそれらの一般的な比率は、
α酸(フムロン):コ(co)−フムロン(25−45%)、ノルマル(n)−フムロン(25−65%)、アド(ad)−フムロン(10−15%)、
【化4】

β酸(ルプロン):コ(co)−ルプロン(50−65%)、ルプロン(25−35%)、アド(ad)−ルプロン(10−15%)である。
【0027】
ホップの品種の違いにより、コ(co)−フムロンの比率は、例えば25%まで低いか又は45%まで高いことができるが、特定のホップの品種群を見ると、例えばその特定のホップ品種群におけるコ(co)−フムロンの比率は一般に一定している。代表的な品種には以下が含まれる:
【0028】
芳香系品種
(名称 主な成熟度 生域の順に記載する)
カスケード 中 ワシントン州、オレゴン州、アイダホ州
ファグル 早熟 ワシントン州、オレゴン州
ゴールディング 中 ワシントン州、オレゴン州
マウント・フッド 中 ワシントン州、オレゴン州
テットナンガー 早熟 ワシントン州、オレゴン州、アイダホ州
ウィラメット 中 ワシントン州、オレゴン州、アイダホ州
【0029】
苦味系品種
(名称 主な成熟度 生域の順に記載する)
キーラン 中 ワシントン州
チヌーク 中 ワシントン州、アイダホ州
クラスター 早熟/後期 ワシントン州、アイダホ州
ガレーナ 中 ワシントン州、アイダホ州
ミレニウム 後期 ワシントン州、オレゴン州
ナゲット 後期 ワシントン州、オレゴン州
スーパー・ハイ・アルファ 後期 ワシントン州
ティルカム 早熟 ワシントン州
【0030】
本明細書で使用されるとき、用語「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素のいずれかのラジカルを意味する。
【0031】
用語「アルキル」は、直鎖又は分岐鎖でもよい、1〜20個又は示されている数の炭素原子を含有する炭化水素鎖を意味する。例えば、C〜Cは、基が1〜5個(を含む)の炭素原子をその中に有してもよいことを示す。用語「低級アルキル」は、C〜Cアルキル鎖を意味する。用語「アルケニル」は、直鎖又は分岐鎖でもよい、1〜20個又は示されている数の炭素原子を含有し、1つ以上の二重結合を鎖中に含有する炭化水素鎖(例えば、プロピレニル、イソペンチレニル)である。例えば、C〜C10は、基が1〜10個(を含む)の炭素原子をその中に有してもよいことを示す。用語「アラルキル」は、アルキル水素原子がアリール基で置換されている部分を意味する。用語「シクロアルキルアルキル」は、アルキル水素原子がシクロアルキル基で置換されている部分を意味する。
【0032】
用語「アリール」は、炭素原子環を有する芳香族で、単環式、二環式、又は三環式の環系を意味し、それぞれの環における0、1、2、3又は4個の原子が置換基で置換されていてもよい。
【0033】
本明細書において、用語「シクロアルキル」には、3〜12個の炭素、好ましくは3〜8個の炭素、より好ましくは3〜6個の炭素を有する、飽和及び部分的に不飽和の環状炭化水素基が含まれる。
【0034】
用語「処置する」又は「処置した」は、疾患、疾患徴候若しくは疾患傾向を治療、治癒、緩和、軽減、変化、改善、回復、好転、又は影響を与える目的で、本明細書で記載された化合物を、被験者に投与することを意味する。
【0035】
「有効量」は、処置を受ける被験者に治療効果を与える化合物の量を意味する。治療効果は、客観的(すなわち、ある試験又は標識により測定可能)であっても、主観的(すなわち、被験者が効果の徴候又は自覚を示すこと)であってもよい。上記化合物の有効量は、約0.1mg/kg〜約500mg/kgの範囲であってもよい。有効量はまた、投与経路、並びに他の薬剤との併用可能性に応じても異なる。
【0036】
「抗糖尿病」又は「血糖降下」化合物又は組成物は、血中グルコース濃度を低下させる薬剤を意味する。血糖降下又は抗糖尿病効果の測定は、限定されないが、血糖濃度、インスリンのそのレセプターへの結合率、膵臓β細胞からのインスリン分泌レベル、及びグルコヒドロラーゼ活性の阻害の測定など、多様な方法により測定できる。かかる方法は周知である。
【0037】
本発明に含まれる置換基及び変数の組み合わせは、安定した化合物の形成をもたらすものだけである。本明細書において用語「安定した」は、製造を可能にするほど十分な安定性を有し、化合物の同一性を、本明細書で詳述される目的(例えば、被験者への治療的又は予防的な投与)を満足させるほどに十分な時間維持する化合物を意味する。
【0038】
天然のホップから、また伝統的な方法に従って化学合成したものから精製することによって、β酸を調製できる。本明細書で詳細に記載される化合物は、当該技術で既知の従来法を使用して合成できる。
【0039】
用語「抽出物」は、植物(例えば、薬用植物、ホップ)の必須構成成分の濃縮調製物を意味する。典型的には植物を乾燥し、粉末状にして抽出物を調製する。場合により、植物、乾燥植物又は粉末植物を溶液中で沸騰してもよい。抽出物は、液体形態で使用してもよいか、又は他の液体若しくは固体薬草抽出物と混合してもよい。あるいは、液体形態から固体抽出物を更に沈殿させることによって薬草抽出物を得てもよい。食用植物抽出物には、ヒトの食用に適するあらゆる植物(例えば、果実抽出物、野菜抽出物、根抽出物、葉抽出物、樹木又は樹皮抽出物、マメ抽出物など)の抽出物が含まれ、例えば、緑茶抽出物、赤タマネギ抽出物、ブドウ種抽出物、ココア抽出物、ムラサキツユクサ抽出物、及びダイズ抽出物)が含まれる。
【0040】
乾燥し、続いて乾燥した材料を切断又は粉砕することにより、抽出物を調製できる。次に、溶媒、典型的には、エタノール/水混合物、メタノール、ブタノール、イソブタノール、アセトン、ヘキサン、石油エーテル又は他の有機溶媒の適切な選択の助けを借りて、液浸軟化、パーコレーション、連続パーコレーション、向流抽出、ターボ抽出、又は二酸化炭素超臨界(温度/圧力)抽出を用いて抽出工程を実施できる。次に抽出物を更に蒸発させ、次いで濃縮し、乾燥、噴霧乾燥、真空炉乾燥、流動層乾燥又は凍結乾燥して、抽出生成物を得ることができる。
【0041】
合成化合物を反応混合物から分離し、カラム・クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー、又は再結晶法のような方法により更に精製できる。熟練した当業者に自明なように、本明細書の化合物の更なる合成方法は、当業者にとって周知である。更に、多様な構成工程を、配列又は順番を換えて実施し、所望の化合物を得ることができる。本明細書で記載される化合物を合成するのに有用な合成化学変換及び保護基方法論(保護及び脱保護)は、当該技術分野で周知であり、例えば、R. Larock, Comprehensive Organic Transformations, 2nd. Ed., Wiley− VCH Publishers (1999)、T. W. Greene and P.G.M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd. Ed., John Wiley and Sons (1999)、L. Fieser and M. Fieser, Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1999)、及びL. Paquette, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1995)並びにこれらの改定版に記載されているものが挙げられる。
【0042】
本発明の化合物は、1つ以上の不斉中心を有してもよく、したがって、ラセミ化合物及びラセミ混合物、単一の鏡像異性体、個別のジアステレオマー及びジアステレオマー混合物が生じる。これらの化合物の前記異性体形態は全て本発明に明確に含まれる。本発明の化合物はまた、多数の互変異性形態で存在することもでき、そのような場合、本発明は、本明細書で記載される化合物の全ての互変異性形態を明確に含む(例えば、環系のアルキル化は、多数の部位でアルキル化を起こすことができ、本発明は、そのような反応生成物を全て明確に含む)。そのような化合物のそのような異性体形態の全てが、本発明に明確に含まれる。本明細書に記載される化合物の結晶形態は、全て本発明に明確に含まれる。
【0043】
本明細書において、本発明の化合物(本明細書で記載される式の化合物を含む)は、薬学的に許容されるその誘導体又はプロドラッグを含むと定義される。「薬学的に許容される導体又はプロドラッグ」は、本発明の化合物の薬学的に許容されるあらゆる塩、エステル、エステルの塩、又は他の誘導体を意味し、被験者に投与すると、本発明の化合物が(直接又は間接的に)与えられる。特に好ましい誘導体及びプロドラッグは、本発明の化合物の生物学的利用能を、そのような化合物が哺乳動物に投与された場合に増加させる(例えば、経口投与化合物が血液中により容易に吸収されるようにする)もの、又は親種よりも親化合物が関連する生体内組織(例えば、脳又はリンパ系)へのその親化合物の送達を増強するものである。好ましいプロドラッグには、水溶性を増強するか、又は能動輸送を増強して臓器膜を通過させる基を、本明細書で記載される式の構造に付加した誘導体が含まれる。例えば、Alexander, J.等 Journal of Medicinal Chemistry 1988, 31, 318−322、Bundgaard, H. Design of Prodrugs;Elsevier: Amsterdam, 1985; pp 1−92; Bundgaard, H.;Nielsen, N. M. Journal of Medicinal Chemistry 1987, 30, 451−454;Bundgaard, H. A Textbook of Drug Design and Development;Harwood Academic Publ.: Switzerland, 1991; pp 113−191 ;Digenis, G. A.等 Handbook of Experimental Pharmacology 1975, 28, 86− 112; Friis, G. J.; Bundgaard, H. A Textbook of Drug Design and Development; 2 ed.; Overseas Publ.: Amsterdam, 1996; pp 351−385を参照のこと。
【0044】
本発明の化合物を、適切な官能基を付加して修飾し、選択的な生物学的特性を増強できる。そのような修飾は当該技術で周知であり、所定の生体内組織(例えば、血液、リンパ系、神経系)への生物学的浸透性を増加させ、経口利用能を増加させ、注射による投与を可能にするために溶解性を増加させ、代謝を変化させ、及び分泌速度を変化させるものが含まれる。
【0045】
本発明の化合物の薬学的に許容される塩には、薬学的に許容される無機及び有機の酸及び塩基から誘導されるものが含まれる。好ましい酸の塩の例は、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、蟻酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、パルモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバール酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、及びウンデカン酸塩である。それ自体は薬学的に許容されないが、シュウ酸のような他の酸を、本発明の化合物及びその薬学的に許容される酸付加塩を得るのに有用な中間体としての塩の調製に用いることができる。適切な塩基から誘導される塩には、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)、アンモニウム及びN−(アルキル)の塩が含まれる。本発明にはまた、本明細書で開示される化合物のあらゆる塩基性窒素含有基の第四級化も含まれる。水又は油溶性若しくは分散性生成物をそのような四級化により得ることができる。
【0046】
本明細書で記載される式の化合物は、例えば、注入、静脈内、動脈内、真皮下、腹腔内、筋肉内、若しくは皮下、又は経口、バッカル、経鼻、経粘膜、局所的、眼科調合剤として、又は吸入により、約0.5〜約100mg/kg体重の範囲の投与量で、あるいは1mg〜1000mg/用量の投与量で、4〜120時間毎、又は特定の薬剤の要件に従って、又は範囲の下限が0.1mg/日から400mg/日のいずれかの量であり、上限の範囲が1mg/日〜500mg/日のいずれかの量である任意の投与範囲(例えば5mg/日〜95mg/日、100mg/日〜500mg/日)で、又は範囲の下限が0.1mg/kg/日〜90mg/kg/日のいずれかの量であり、上限の範囲が1mg/kg/日〜100mg/kg/日のいずれかの量である任意の投与範囲(例えば、0.5mg/kg/日〜5mg/kg/日、25mg/kg/日〜75mg/kg/日)で投与できる。本発明の方法は、化合物又は化合物の組成物の有効量を所望の又は記載された効果を達成するために投与することを考慮する。典型的には、本発明の医薬組成物は、1日あたり約1〜約6回投与されるか、あるいは持続注入として投与される。そのような投与は、慢性又は急性の治療法として使用できる。担体物質と組み合わせて単回投与形態を製造できる活性成分の量は、処置する宿主及び特定の投与様式に応じて変化する。典型的な調合剤は、約5%〜約95%の活性化合物(w/w)を含有する。あるいは、そのような調合剤は、約20%〜約80%の活性化合物を含有する。1つの態様において、臨床又は栄養補助的使用における投与量は通常、β酸を大人1人あたり1日0.05g〜3gの範囲である。
【0047】
上記で引用されたものよりも低い又は高い用量が必要とされる場合もある。任意の特定の被験者における特定の投与量及び投与計画は、用いられる特定の化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与時間、分泌速度、薬剤の組み合わせ、疾患、状態又は症状の重篤度及び経過、疾患、状態又は症状に対する被験者の傾向、及び処置する医師の判断を含む多様な要因によって左右される。
【0048】
被験者の状態が改善されると、必要であれば、本発明の化合物、組成物又は組み合わせの維持量を投与してもよい。続いて、投与量又は投与の頻度、又はその両方を、症状の関数として、改善された状態が保持されるレベルに低減してもよく、症状が所望のレベルに緩和された場合、治療を停止するべきである。しかし被験者には、疾患症状の再発に際して、長期間の断続的な処置が必要となる場合がある。
【0049】
本明細書で記述される組成物は、本明細書で記述される式の化合物、並びに、存在する場合、追加の治療薬を、グルコース濃度に影響される障害又は症状などの疾患又は疾患徴候の調節を可能するのに有効な量で含む。追加の治療薬の例を含む参考文献は、Burger’s Medicinal Chemistry & Drug Discovery 6th edition, by Alfred Burger, Donald J. Abraham, ed., Volumes 1 to 6, Wiley Interscience Publication, NY, 2003.である。追加的治療薬には、糖尿病の処置、グルコース調節などのための薬剤が含まれるが、これらに限定はされない。
【0050】
用語「薬学的に許容される担体又はアジュバント」は、本発明の化合物と一緒に被験者に投与することができ、その薬理学的活性を破壊せず、化合物の治療量を送達するのに十分な用量で投与される場合に非毒性である、担体又はアジュバントを意味する。
【0051】
本発明の医薬組成物に使用してもよい薬学的に又は栄養補助的に許容される担体、アジュバント及び賦形剤としては、限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000スクシネートのような自己乳化薬剤送達系(SEDDS)、ツイン(Tween)又は同様の他のポリマー送達マトリックスのような医薬投与形態で使用される界面活性剤、ヒト血清アルブミンのような血清タンパク質、リン酸塩のような緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分的なグリセリド混合物、水、塩又は電解質、例えば、硫化プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボシキメチルセルロース、ポリアクリレート、ろう、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、及び羊毛脂が含まれる。α−、β−及びγ−シクロデキストリンのようなシクロデキストリン、又は2−及び3−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含むヒドロキシアルキルシクロデキストリンのような化学的に修飾された誘導体、又は他の可溶化された誘導体を有効に利用し、本明細書で記載される式の化合物の送達を増強することもできる。
【0052】
本発明の医薬組成物は、経口、非経口、吸入スプレー、局所、直腸的、経鼻、バッカル、膣内又はインプラントされたリザーバを介して投与でき、好ましくは経口投与又は注入による投与である。本発明の医薬組成物は、従来のあらゆる非毒性の薬学的に許容される担体、アジュバント又は賦形剤を含有できる。一部の例では、製剤のpHを薬学的に許容される酸、塩基、又は緩衝剤で調整して、製剤化合物又はその送達形態の安定性を増強できる。本明細書で使用されるとき、非経口という用語には、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液内、胸骨内、鞘内、病巣内及び頭蓋内への注入又は点滴技術が含まれる。
【0053】
医薬組成物は、滅菌済の注入用調合剤の形態、例えば滅菌済の注入用水溶液又は油性懸濁剤であってもよい。この懸濁剤は、適切な分散又は湿潤剤(例えば、ツイン(Tween)80)及び懸濁剤を使用して、当該技術で既知の技術に従って配合できる。滅菌済の注入用調合剤はまた、非毒性で非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の、滅菌済の注入用液剤又は懸濁剤であってもよく、例えば1,3−ブタンジオール中の液剤であってもよい。用いてもよい許容される賦形剤及び溶媒としては、マンニトール、水、リンガー液及び等張塩化ナトリウム溶液が挙げられる。あるいは、滅菌済の固定油が溶媒又は懸濁媒質として従来から用いられている。この目的において、合成モノ−又はジグリセリドを含む、任意の無味の固定油を使用できる。オレイン酸及びそのグリセリド誘導体のような脂肪酸は、注入用剤の調製に有用であり、特にポリオキシエチル化型のオリーブ油又はヒマシ油のような薬学的に許容される天然油も同様に有用である。これらの油液剤又は懸濁剤はまた、長鎖アルコール希釈剤若しくは分散剤、又はカルボキシメチルセルロース、又は乳剤又は懸濁剤のような薬学的に許容される投与形態の製剤に慣用的に使用される同様の分散剤を含有してもよい。ツイン(Tween)及びスパン(Span)のような他の慣用される界面活性剤、及び/又は薬学的に許容される固体、液体、若しくは他の投与形態の製造に慣用される他の同様の乳化剤若しくは生物学的利用能の向上剤を配合してもよい。
【0054】
本発明の医薬組成物を任意の経口的に許容される投与形態で経口投与でき、カプセル剤、錠剤、乳剤及び水性懸濁剤、分散剤、並びに液剤が含まれるが、これらに限定はされない。経口使用の錠剤の場合、慣用される担体には、ラクトース及びトウモロコシデンプンが含まれる。ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤も典型的に添加される。カプセル剤形態の経口投与では、有用な希釈剤には、ラクトース及び乾燥トウモロコシデンプンが含まれる。水性懸濁剤及び/又は乳剤として経口投与する場合、油相に懸濁又は溶解できる活性成分を、乳化剤及び/又は懸濁剤と組み合わせる。必要に応じ、特定の甘味料及び/又は風味剤及び/又は着色剤を添加してもよい。
【0055】
本発明の医薬組成物の局所投与は、所望の処置が、局所適用で容易に利用できる領域又は臓器に関わる場合に有用である。皮膚への局所適用では、医薬組成物は、担体に懸濁又は溶解している活性成分を含有する適切な軟膏により配合されるべきである。本発明の化合物の局所適用のための担体には、鉱油、流動石油、白色石油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ろう及び水が含まれるが、これらに限定されない。あるいは、医薬組成物は、適切な乳化剤により担体に懸濁又は溶解している活性化合物を含有する適切なローション剤又はクリーム剤と配合できる。適切な担体には、鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルろう、セテアリールアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水が含まれるが、これらに限定されない。本発明の医薬組成物は、肛門坐剤製剤により、又は適切な浣腸製剤で下部腸管に局所的に適用することもできる。局所経皮パッチも本発明に含まれる。
【0056】
本発明の医薬組成物を、鼻用エアロゾル又は吸入により投与できる。そのような組成物は医薬配合の当該技術で周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコール若しくは他の適切な防腐剤、生物学的利用能を増強する吸収促進剤、フルオロカーボン、及び/又は当該技術で既知の他の可溶化若しくは分散剤を用いて、生理食塩水中の液剤として調製できる。
【0057】
本明細書の式の化合物及び追加の薬剤(例えば、治療薬)を有する組成物を、インプラント可能な装置を使用して投与できる。インプラント可能な装置及び関連する技術は、当該技術で既知であり、本明細書で記載されている化合物又は組成物の連続的又は時限放出送達が望ましい送達システムとして有用である。加えて、インプラント可能な装置送達システムは、化合物又は組成物を送達する特定の部位(例えば、局所部位、臓器)を標的にするのに有用である(Negrin等、Biomaterials, 22(6):563 (2001))。代替的な送達方法に関わる時限放出技術も、本発明で使用できる。例えば、ポリマー技術、持続放出技術、及び封入技術(例えばポリマー、リポソーム)に基づく時限放出製剤も、本明細書で記載されている化合物及び組成物の送達に使用できる。
【0058】
また、本発明の範囲内には、本明細書の活性化学療法剤の組み合わせを送達するパッチも含まれる。パッチは、物質層(例えば、ポリマー、布、ガーゼ、包帯)及び本明細書で記載されているような、本明細書の式の化合物を含む。物質層の一面は、化合物又は組成物の通過を阻止するために付着している保護層を有してもよい。パッチは更に、被験者の所定の位置にパッチを保持する接着剤を含んでもよい。接着剤とは、天然又は合成のいずれかに由来するものを含む組成物であり、被験者の皮膚と接触すると皮膚に一時的に接着するものである。耐水性であってもよい。接着剤は、パッチ上に配置され、被験者の皮膚と接触してパッチを長時間保持できる。接着剤は、偶発的な接触により被験者の所定の位置に装置を保持するような粘着性又は接着強度を有するが、積極的な行為(例えば、引き裂き、はぎ取り、又は他の意識的な取り外し)による装置又は接着剤自体に加えられた外圧に負けて、接着による接触の中断を可能にする態様で調製できる。接着剤は、感圧性であってもよく、すなわち、接着剤又は装置に圧力を与える(例えば、押しつけ、擦りつけ)ことにより接着剤(及び皮膚に接着される装置)を皮膚の所定の位置に固定できる。
【0059】
本発明の組成物が、本明細書で記載された式の化合物と1つ以上の追加的な治療薬及び予防薬との組み合わせを含む場合、化合物と追加的な薬剤の両方とも、単独療法計画で通常投与される投与量の約1〜100%、より好ましくは約5〜95%のレベルの投与量で含まれるべきである。追加的な薬剤を、多剤投与計画の一部として、本発明の化合物と別々に投与してもよい。あるいは、これらの薬剤を、本発明の化合物と一緒に混合して単一組成物にした、単回投与形態の一部とすることもできる。
【0060】
β酸を含有する調合剤は、通常のレシピ及び食品添加物を使用した通常の方法により製造される。経口調合剤として、通常の錠剤、カプセル剤、細粒剤又は粉末剤の剤形で配合できる。純粋な形態又は抽出ホップとして食品に添加することもできる。食品としては、牛乳、茶、清涼飲料水、ジュース、コーヒー、調味料、穀物食品、水、クッキー、ヨーグルト、チューインガム、チョコレート又はスープのような固体、ペースト又は液体食品であってもよい。食品は、「ノンアルコール」食品であってもよく、すなわち低(例<3%、<2%、<1%、<0.5%、<0.25%、<0.1%、<0.05%)アルコール含有量、又はアルコールを含有しない(実質的にゼロの)食品であってもよい。本発明において、本明細書の組成物の栄養補助的な担体としては、果実の主成分、野菜、果実又は野菜のジュース又はピューレ、野菜スープ又はブイヨンの主成分、豆乳飲料、茶又はコーヒー飲料、或いは栄養サプリメントが挙げられる。
【0061】
更に、電解質、香料、他の植物抽出物、防腐剤、及び他の添加剤(例えば、ビタミン補助食品及びマルトデキストリン)により成分を強化できる。防腐剤の例としては、アスコルビン酸及び没食子酸プロピルが挙げられる、これらに限定されない。電解質の例としては、硫酸マグネシウム及び塩化カリウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
本発明は、以下の実施例によって更に説明される。これらの実施例は、説明のみを目的とし、本発明をいささかも限定するものとして考慮されないことを理解すべきである。
【実施例1】
【0063】
実施例1
(1)ホップからのα酸の単離
新鮮なCOホップ抽出物を水3部と混合し、20%KOHで処理してpHを約7.6にした。混合を停止し、上部のβ酸ホップの油層を、水溶性α酸カリウム塩を含有する下部水層から分離し、水層を単離した。α酸のアルカリ水溶液である水層を硫酸で酸性化した。α酸から油を除去し、水層から分離した。α酸層を単離できた。
【0064】
(2)β酸の単離
上記のβ酸ホップの油層を用い、この画分を水3部と混合し、20%KOHを添加し、pHを約11.0にし、β酸の水溶性カリウム塩を形成させることによってβ酸を単離できる。混合を停止し、ホップ油層から下部の水層を分離した。このアルカリ水溶液を硫酸で処理し、α酸で実施したようにβ酸から「油」を除去し、β酸を水層から単離できた。
【0065】
(3)キサントフモールの単離
キサントフモールは、1974年に登録された米国特許(第3,794,744号)に記載された方法に従って単離できた。
【0066】
(4)グルコース取り込み増強活性実験
【実施例2】
【0067】
実施例2 骨格筋細胞
AU骨格筋細胞株として、HIV−I、B及びC型肝炎、マイコプラズマ、細菌、酵母菌、及び真菌が陰性の骨格筋筋芽細胞(Clonetics社から購入)を使用した。この骨格筋筋芽細胞系には、正常なヒト筋肉筋芽細胞(HSMM)が含まれる。この細胞及び培地の系の使用により、細胞産生及び分化、インスリン取り込み、若しくは耐性、又は組織修復の研究に使用するHSMM培養を早期に増殖させることができる。骨格筋細胞をサイトスター(Cytostar)96ウエル培養プレートで培養した。細胞を、8mMのグルコースの存在下でH−デオキシグルコース(50μCi/ml、4μM)により標識した。マイクロベータ(Microbeta)シンチレーションカウンターで放射能をカウントした。β酸で処理した細胞(co−ルプロン:ルプロン:ad−ルプロンの65:25:10混合物、Beta Tec社、ワシントンDC)において、洗浄を行わずに標識デオキシグルコース取り込みの動態を直接測定した。クェルセチン処理細胞の色消失を避けるために、細胞をハンクス緩衝剤で洗浄し、次に放射能を終点(18時間後)で測定した。エラーバーはSDを示す(n=3)。
【0068】
図2は、AH(主にα酸を含有するアルファホップ(Alphahop))、ホップにおける成分の1つであるキサントフモール及びBS(10%のβ酸を含有するベータスタブ(Betastab) 10A)のような、多様なホップ抽出物の存在下での24時間のインキュベーション後の、筋肉骨格細胞へのグルコース取り込みを示す。ホップにおける代表的な成分であるα酸及びキサントフモールは、増強効果を有さないことが明らかとなった。
【0069】
図3は、純粋なα酸と比較した、β酸のH−デオキシグルコース取り込み増強効果を示す。極めて純粋なβ酸は、強力なグルコース取り込み増強効果を低濃度で示した。α酸は、ホップにおける別の主要な成分であり、天然由来の酸化防止剤であることが知られている。これらは、グルコース取り込み増強効果を高濃度でも示さなかった。β酸は、薬草酸化防止剤としても分類されるので、本発明の増強効果は、予想される酸化防止効果に直接関連するとは考えられなかった。
【0070】
図4は、β酸の存在下でのグルコース取り込みの時間経過及び用量依存性を示す。この増強は、少なくとも0.1μM〜1μMで用量依存的に行われることを示し、また、効果は、暴露時間が長くなると高くなることが観察された。
【0071】
化合物は、実質的に上記のような方法及び一般的スキームで調製される。
【0072】
要約、記事、雑誌、出版物、文書、私的文書、インターネットウエブサイト、データベース、特許、及び特許公報など、これらに限定されない本明細書で引用された全ての参考文献は、印刷、電子的、コンピューター読み取り式記憶媒体又は他の形態であるかに関わらず、その全体が参照として明確に援用される。
【0073】
本発明をその詳細な説明と共に記載したが、以上の記載は説明を意図するものであり、添付の特許請求の範囲で定義されている本発明の範囲を限定することを意図しないことを理解るべきである。他の態様、効果及び変更は特許請求の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】種々のホップ抽出物を用いたH−デオキシグルコースの24時間後の骨格筋細胞への取り込みの増大効果を示すグラフである。
【図2】種々のホップ酸存在下でのH−デオキシグルコースの骨格筋細胞への取り込みを示すグラフである。
【図3】βホップ酸を用いたH−デオキシグルコースの骨格筋細胞への取り込みの時間経過を示すグラフである。
【図4】クルクミン(98%、Sigma社製)とβホップ酸(例、ルプロン、アドルプロン又はコルプロンがそれぞれ約65:25:10)との組み合わせによる、それぞれ単独の場合と比較した、H−デオキシグルコースの骨格筋細胞への取り込みの相乗効果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
βホップ酸又はβホップ酸誘導体である少なくとも1種類の化合物を含む抗糖尿病組成物。
【請求項2】
βホップ酸又はβホップ酸誘導体である少なくとも1種類の化合物及び製薬上受容可能な担体を含む請求項1記載の組成物。
【請求項3】
βホップ酸又はβホップ酸誘導体である少なくとも1種類の化合物及び栄養補助組成物上受容可能な担体を含む栄養補助組成物。
【請求項4】
βホップ酸又はβホップ酸誘導体である少なくとも1種類の化合物を含む非アルコール性食品。
【請求項5】
食品が牛乳、茶、清涼飲料水、ジュース、コーヒー、調味料、穀物食品、水、ヨーグルト、クッキー、チューインガム、チョコレート又はスープである、請求項4記載の食品。
【請求項6】
さらに少なくとも一つの食用植物性抽出物を含む、請求項3記載の栄養補助組成物。
【請求項7】
さらに少なくとも一つの追加的治療用薬剤を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記追加的治療用薬剤が抗糖尿病剤又は抗肥満剤である、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
前記βホップ酸又はβホップ酸誘導体である少なくとも1種類の化合物が、ルプロン、アドルプロン又はコルプロンである、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
糖尿病又は糖尿病に付随した徴候の治療を必要とする被験者における、それらの治療方法であって、請求項1〜9のいずれか1項記載の組成物を有効量被験者に投与することを含む方法。
【請求項11】
前記疾病又は徴候が真性糖尿病、2型糖尿病、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害又は糖尿病性腎障害である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項記載の組成物を有効量被験者に投与することを含む、被験者における血糖取り込み活性の調整方法。
【請求項13】
糖尿病に付随した血糖の取り込みを高めることによる糖尿病の治療方法であって、βホップ酸である活性成分を有効量含む医薬組成物をそのような治療を必要とする被験者に投与することを含む方法。
【請求項14】
肥満に付随した血糖の取り込みを高めることによる肥満の治療方法であって、βホップ酸である活性成分を有効量含む医薬組成物をそのような治療を必要とする被験者に投与することを含む方法。
【請求項15】
被験者におけるブドウ糖摂取を刺激する方法であって、βホップ酸である活性成分を有効量含む医薬組成物をそのような治療を必要とする被験者に投与することを含む方法。
【請求項16】
前記医薬組成物がウコン中に含まれる化合物をさらに含む、請求項10〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記医薬組成物がクルクミンをさらに含む、請求項10〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
ウコンから単離された化合物をさらに含む、請求項2又は3記載の組成物。
【請求項19】
クルクミンをさらに含む、請求項2又は3記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−520750(P2008−520750A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543547(P2007−543547)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/042803
【国際公開番号】WO2006/055985
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(507167413)ジョン アイ. ハース インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】