説明

ボルテージレギュレータ

【課題】出力電圧ごとにトリミングなどによる再調整を必要としないリップル除去率改善回路を有するボルテージレギュレータを提供する。
【解決手段】誤差増幅回路のカレント・ミラー部のMOSトランジスタ、もしくは入力段のMOSトランジスタのバックゲートに、リップル除去率改善回路の出力を接続する。こうすることで、電源端子もしくはグランド端子のリップルと出力端子のリップルが相殺されて、リップル除去率を改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルテージレギュレータに関し、より詳しくはボルテージレギュレータのリップル除去率の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のボルテージレギュレータについて説明する。図6は、従来のボルテージレギュレータを示す回路図である。
【0003】
従来のボルテージレギュレータは、基準電圧回路601と、誤差増幅回路602と、出力回路603と、出力分圧回路604と、リップル除去率改善回路610で構成されている。リップル除去率改善回路610は、抵抗611、612と容量613で構成されている。出力分圧回路604は、抵抗614と615で構成されている。
【0004】
次に動作について説明する。リップル除去率改善回路の出力であるキャンセル信号Vcは以下の式で表される。
【0005】
【数1】

【0006】
【数2】

【0007】
ここで、Cg616はトランジスタ616のゲート容量、Rは抵抗614と615の並列抵抗値、R611は抵抗611の抵抗値、R612は抵抗612の抵抗値、C613は容量613の容量値である。式(2)はCg616に依存して数10KHz以下の周波数ではRで決まるインピーダンスに近似できる。さらに高い周波数では、式(2)はゼロに近づくので、キャンセル信号は小さくなって作用がなくなる。
【0008】
位相進みは、容量613の値に依存して変化するが、10KHz付近ではまだ90度進み状態である。容量613の値を、第3の極点による位相遅れを打ち消すように設定すれば、位相遅れをキャンセルできる。キャンセル信号Vcの振幅は、抵抗613と614の比およびCとRのインピーダンス比であわせることが出来る。このキャンセル信号Vcを誤差増幅器の入力に入れれば、キャンセル動作が実現できる。
【0009】
式(1)において、R611を無限大にすると(R611/(R611+R612))は1に限りなく近づいて容量613を直接接続した状態になる。このとき、容量613はごく微小な容量fFのオーダーになるが、半導体基板上であればそのような微小容量でも問題なく製造可能である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2003/091817号(図10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の技術では、キャンセル信号Vcはフィードバック回路のインピーダンスにも依存するため、出力電圧が変わるたびにトリミングなどによる再調整が必要となり、量産に適さないという課題があった。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、出力電圧ごとにトリミングなどによる再調整を必要としないリップル除去率改善回路を有するボルテージレギュレータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、基準電圧回路と、出力トランジスタと、出力トランジスタの出力する電圧を分圧した分圧電圧と基準電圧回路の基準電圧の差を増幅して出力し、出力トランジスタのゲートを制御する誤差増幅回路と、を備えたボルテージレギュレータであって、誤差増幅回路は、カレント・ミラー部のトランジスタのバックゲートに接続されるリップル除去率改善回路を備えた事を特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のリップル除去率改善回路を備えたボルテージレギュレータは、出力電圧に依存することなく高いリップル除去率を得ることができる。また、低消費電力化も実現でき簡単な構成で動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ボルテージレギュレータを示す回路図である。
【図2】第一の実施形態のリップル除去率改善回路を含む1段の誤差増幅回路を示す回路図である。
【図3】第一の実施形態のリップル除去率改善回路を含む2段の誤差増幅回路を示す回路図である。
【図4】第二の実施形態のリップル除去率改善回路を含む1段の誤差増幅回路を示す回路図である。
【図5】第二の実施形態のリップル除去率改善回路を含む2段の誤差増幅回路を示す回路図である。
【図6】第三の実施形態のリップル除去率改善回路を含む2段の誤差増幅回路を示す回路図である。
【図7】第三の実施形態のリップル除去率改善回路を含む1段の誤差増幅回路を示す回路図である。
【図8】第四の実施形態のリップル除去率改善回路を含む2段の誤差増幅回路を示す回路図である。
【図9】第四の実施形態のリップル除去率改善回路を含む1段の誤差増幅回路を示す回路図である。
【図10】従来のリップル除去率改善回路を含むボルテージレギュレータを示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、ボルテージレギュレータの回路図である。ボルテージレギュレータは、基準電圧回路101と、差動増幅回路102と、PMOSトランジスタ106と、抵抗108、109と、グラウンド端子100と、出力端子121と、電源端子150で構成されている。
【0018】
誤差増幅回路102は、反転入力端子は基準電圧回路101に接続され、非反転入力端子は抵抗108と109の接続点に接続され、出力端子はPMOSトランジスタ106のゲートに接続される。基準電圧回路101の他方の端子はグラウンド端子100に接続される。PMOSトランジスタ106は、ソースは電源端子150に接続され、ドレインは出力端子121及び抵抗108のもう一方に接続される。抵抗109の他方の端子はグラウンド端子100に接続される。
【0019】
図2は、第一の実施形態のリップル除去率改善回路を含む誤差増幅回路102の回路図である。誤差増幅回路102は、NMOSトランジスタ211、212と、PMOSトランジスタ213、214と、バイアス回路216と、リップル除去率改善回路203で構成されている。リップル除去率改善回路203は、抵抗201と容量202で構成されている。
【0020】
NMOSトランジスタ211は、ゲートは反転入力端子221に接続され、ドレインはPMOSトランジスタ213のドレイン及びゲートとPMOSトランジスタ214のゲートに接続され、ソースはバイアス回路216に接続される。PMOSトランジスタ213は、ソースは電源端子150に接続され、バックゲートは抵抗201と容量202の接続点に接続される。抵抗201の他方の端子は電源端子150に接続され、容量202の他方の端子はグラウンド端子100に接続される。PMOSトランジスタ214は、ドレインはNMOSトランジスタ212のドレイン及び出力端子223に接続され、ソースは電源端子150に接続される。NMOSトランジスタ212は、ゲートは非反転入力端子222に接続され、ソースはバイアス回路216に接続される。バイアス回路216の他方の端子はグラウンド端子100に接続される。
【0021】
次に、第一の実施形態のボルテージレギュレータの動作について説明する。
抵抗108と109は、出力端子121の電圧である出力電圧Voutを分圧し、分圧電圧Vfbを出力する。差動増幅回路102は基準電圧回路101の出力電圧Vrefと分圧電圧Vfbとを比較し、出力電圧Voutが一定になるよう出力トランジスタ106のゲート電圧を制御する。出力電圧Voutが所定電圧よりも高いと、分圧電圧Vfbが基準電圧Vrefよりも高くなる。そして差動増幅回路102の出力信号(出力トランジスタ106のゲート電圧)が高くなり、出力トランジスタ106はオフしていき、出力電圧Voutは低くなる。こうして、出力電圧Voutを一定になるように制御する。また、出力電圧Voutが所定電圧よりも低いと、上記と逆の動作をして、出力電圧Voutは高くなる。こうして、出力電圧Voutが一定になるように制御する。
【0022】
PMOSトランジスタ213、214は誤差増幅回路102のカレント・ミラー部のトランジスタとして動作する。電源端子150にリップルが生じるとき、リップル除去率改善回路203は電源端子150に現れるリップルを検出してカレント・ミラー部のトランジスタであるPMOSトランジスタ213のバックゲートに入力する。動作概念としては、誤差増幅回路のカレント・ミラー部のトランジスタの基板バイアスを電源端子150の電圧に応じて制御し、低周波数領域から中周波数領域の約10KHz近辺まで、出力端子121の電圧と電源端子150の電圧の変動を打ち消し合うように働く。図2では、カレント・ミラー部のトランジスタはPMOSであり、電源端子150の電圧に対して基板電圧が下がれば、見かけ上、しきい値電圧が低くなる。電源端子150の電圧が交流的に増加する時に、抵抗201と容量202によって、PMOSトランジスタ213の基板バイアスは低下する。基板効果でPMOSトランジスタ213のしきい値電圧が低下し、PMOSトランジスタ213を流れる電流が増加する。これによって、PMOSトランジスタ213のドレイン電圧が上昇する事になる。PMOSトランジスタ213と214はカレント・ミラー構成になっているため、両トランジスタのドレイン電流が同じになるように、誤差増幅回路の出力電圧も上昇する。この結果、誤差増幅回路の出力電圧は、電源端子150の電圧に追従して上昇又は降下する。抵抗201と容量202を調整する事で、電源端子150の電圧に対する基板バイアスの変動の傾きが変化し、電源端子150の電圧の増加に伴うレギュレータの出力端子121の電圧の増加をちょうど打ち消し合うように、抵抗201と容量202の値を合わせればいい。こうして、出力端子121に現れるリップルを電源端子150に現れるリップルで相殺し、10KHz近辺までリップル除去率を改善することができる。リップル除去率改善回路203の出力はフィードバック回路のインピーダンスの影響を受けないため、出力電圧ごとにトリミングをすることなくリップル除去率を改善できる。また、リップル除去率改善回路203には電流が流れるパスがないため低消費電力化を実現することができる。
【0023】
上述したように、リップル除去率改善回路203の出力をカレント・ミラー部のトランジスタのバックゲートに入力することで、フィードバック回路のインピーダンスの影響を受けることなくリップル除去率を改善することができる。そして、リップル除去率改善回路203には電流が流れるパスがないため低消費電力化を実現できる。
【0024】
なお、図3に示したように、誤差増幅回路102が2段増幅の場合には、カレント・ミラー部のもう一方のPMOSトランジスタ214のバックゲートにリップル除去率改善回路203の出力を入力する。即ち、誤差増幅回路102の増幅回路の段数によって、リップル除去率改善回路203はPMOSトランジスタ213または214のバックゲートに適宜設けられる。
【実施例2】
【0025】
図4は、第二の実施形態のリップル除去率改善回路を含む誤差増幅回路102の回路図である。第一の実施形態との違いは、リップル除去率改善回路303の出力を入力トランジスタとして動作するNMOSトランジスタ212のバックゲートに入力した点である。
【0026】
接続に関しては、抵抗301と容量302の接続点がNMOSトランジスタ211のバックゲートに接続される。抵抗301の他方の端子はグラウンド端子100に接続され、容量302の他方の端子は電源端子150に接続される。その他の接続に関しては図2の第一の実施形態と同様である。
【0027】
次に、第二の実施形態の誤差増幅回路102の動作について説明する。
NMOSトランジスタ211、212は誤差増幅回路102の入力段トランジスタとして動作する。電源端子150にリップルが生じるとき、リップル除去率改善回路303は電源端子150に現れるリップルを検出して入力段トランジスタであるNMOSトランジスタ211のバックゲートに入力する。動作概念としては、誤差増幅回路の入力段トランジスタの基板バイアスを電源端子150の電圧に応じて制御し、低周波数領域から中周波数領域の約10KHz近辺まで、出力端子121の電圧と電源端子150の電圧の変動を打ち消し合うように働く。図4では、入力段トランジスタはNMOSであり、グラウンド端子100の電圧に対して基板電圧が上がれば、見かけ上、しきい値電圧が低くなる。電源端子150の電圧が交流的に増加する時に、抵抗301と容量302によって、NMOSトランジスタ211の基板バイアスは上昇する。基板効果でNMOSトランジスタ211のしきい値電圧が低下し、NMOSトランジスタ211を流れる電流が増加する。これによって、NMOSトランジスタ211のドレイン電圧が上昇する事になる。これは、PMOSトランジスタ213のトレイン電圧でもある。PMOSトランジスタ213と214はカレント・ミラー構成になっているため、両トランジスタのドレイン電流が同じになるように、誤差増幅回路の出力電圧も上昇する。この結果、誤差増幅回路の出力電圧は、電源端子150の電圧に追従して上昇又は降下する。抵抗301と容量302を調整する事で、電源端子150の電圧に対する基板バイアスの変動の傾きが変化し、電源端子150の電圧の増加に伴うレギュレータの出力端子121の電圧の増加をちょうど打ち消し合うように、抵抗301と容量302の値を合わせればいい。こうして、出力端子121に現れるリップルを電源端子150に現れるリップルで相殺し、リップル除去率を改善することができる。リップル除去率改善回路303の出力はフィードバック回路のインピーダンスの影響を受けないため、出力電圧ごとにトリミングをすることなくリップル除去率を改善できる。また、リップル除去率改善回路303には電流が流れるパスがないため低消費電力化を実現することができる。
【0028】
上述したように、リップル除去率改善回路303の出力を入力段トランジスタのバックゲートに入力することで、フィードバック回路のインピーダンスの影響を受けることなくリップル除去率を改善することができる。そして、リップル除去率改善回路303には電流が流れるパスがないため低消費電力化を実現できる。
【0029】
なお、図5に示したように、誤差増幅回路102が2段増幅の場合には、入力段トランジスタのもう一方のNMOSトランジスタ212のバックゲートにリップル除去率改善回路303の出力を入力する。即ち、誤差増幅回路102の増幅回路の段数によって、リップル除去率改善回路303はNMOSトランジスタ211または212のバックゲートに適宜設けられる。
【実施例3】
【0030】
図6は、第三の実施形態のリップル除去率改善回路を含む誤差増幅回路102の回路図である。第一の実施形態との違いは、誤差増幅回路をPchトランジスタ入力にし、リップル除去率改善回路403の接続を変更した点である。
【0031】
PMOSトランジスタ411は、ゲートは反転入力端子421に接続され、ソースはNMOSトランジスタ413のドレイン及びゲートとNMOSトランジスタ414のゲートに接続され、ドレインはバイアス回路416に接続され、バックゲートは容量402と抵抗401の接続点に接続される。抵抗401の他方の端子はPMOSトランジスタ411のソースに接続され、容量402の他方の端子は電源端子150に接続される。NMOSトランジスタ413のソースは、グラウンド100に接続される。NMOSトランジスタ414は、ドレインはPMOSトランジスタ412のドレイン及びNMOSトランジスタ415のゲートに接続され、ソースはグラウンド端子100に接続される。PMOSトランジスタ412は、ゲートは非反転入力端子422に接続され、ソースはバイアス回路416に接続される。NMOSトランジスタ415は、ドレインは誤差増幅回路の出力423及びバイアス回路417に接続され、ソースはグラウンド端子100に接続される。バイアス回路416の他方の端子は電源端子150に接続され、バイアス回路417の他方の端子は電源端子150に接続される。
【0032】
次に、第三の実施形態の誤差増幅回路の動作について説明する。
PMOSトランジスタ411、412は誤差増幅回路102の入力段トランジスタとして動作する。PMOSトランジスタ411のソースにリップルが生じるとき、リップル除去率改善回路403はPMOSトランジスタ411のソースに現れるリップルを検出して入力段トランジスタであるPMOSトランジスタ411のバックゲートに入力する。動作概念としては、誤差増幅回路の入力段トランジスタの基板バイアスを電源端子150の電圧に応じて制御し、低周波数領域から中周波数領域の約10KHz近辺まで、出力端子121の電圧と電源端子150の電圧の変動を打ち消し合うように働く。図6では、入力段トランジスタはPMOSであり、電源端子150の電圧に対して基板電圧が上がれば、見かけ上、しきい値電圧が高くなる。電源端子150の電圧が交流的に増加する時に、容量402によって、抵抗401で電源端子150の電圧よりも低い電位(NMOSトランジスタ411のトレイン電圧)に固定されていた基板バイアスが電源端子150に向かって上昇する。PMOSトランジスタ411の基板バイアスは上昇することになる。基板効果でPMOSトランジスタ411のしきい値電圧が上昇し、PMOSトランジスタ411を流れる電流が減少する。これによって、NMOSトランジスタ413のドレイン電圧が低下する事になる。NMOSトランジスタ413と414はカレント・ミラー構成になっているため、両トランジスタのドレイン電流が同じになるように、誤差増幅回路の出力電圧も低下する。この結果、誤差増幅回路の出力電圧は、電源端子150の電圧に逆方向で追従して上昇又は降下する。容量402と抵抗401を調整する事で、電源端子150の電圧に対する基板バイアスの変動の傾きが変化し、電源端子150の電圧の増加に伴うレギュレータの出力端子121の電圧の増加をちょうど打ち消し合うように、容量202と抵抗203の値を合わせればいい。こうして、出力端子121に現れるリップルをPMOSトランジスタ411のソースに現れるリップルで相殺し、リップル除去率を改善することができる。リップル除去率改善回路403の出力はフィードバック回路のインピーダンスの影響を受けないため、出力電圧ごとにトリミングをすることなくリップル除去率を改善できる。また、リップル除去率改善回路403には電流が流れるパスがないため低消費電力化を実現することができる。
【0033】
以上により、リップル除去率改善回路403の出力を入力段トランジスタのバックゲートに入力することで、フィードバック回路のインピーダンスの影響を受けることなくリップル除去率を改善することができる。そして、リップル除去率改善回路403には電流が流れるパスがないため低消費電力化を実現できる。
【0034】
なお、図7に示したように、誤差増幅回路102が1段増幅の場合には、入力段トランジスタのもう一方のPMOSトランジスタ412のバックゲートにリップル除去率改善回路403の出力を入力する。即ち、誤差増幅回路102の増幅回路の段数によって、リップル除去率改善回路403はPMOSトランジスタ411または412のバックゲートに適宜設けられる。
【実施例4】
【0035】
図8は、第四の実施形態のリップル除去率改善回路を含む誤差増幅回路102の回路図である。第三の実施形態との違いは、リップル除去率改善回路503の出力をカレント・ミラー部のトランジスタとして動作するNMOSトランジスタ414のバックゲートに入力した点である。
【0036】
抵抗501と容量502の接続点がNMOSトランジスタ414のバックゲートに接続される。抵抗501の他方の端子はグラウンド端子100に接続され、容量502の他方の端子は電源端子150に接続される。その他の接続に関しては図6の第三の実施形態と同様である。
【0037】
次に、動作について説明する。
NMOSトランジスタ413、414は誤差増幅回路102のカレント・ミラー部のトランジスタとして動作する。グラウンド端子100にリップルが生じるとき、リップル除去率改善回路503はグラウンド端子100に現れるリップルを検出してカレント・ミラー部のトランジスタであるNMOSトランジスタ414のバックゲートに入力する。動作概念としては、誤差増幅回路のカレント・ミラー部のトランジスタの基板バイアスを電源端子150の電圧に応じて制御し、低周波数領域から中周波数領域の約10KHz近辺まで、出力端子121の電圧と電源端子150の電圧の変動を打ち消し合うように働く。図5では、カレント・ミラー部のトランジスタはNMOSであり、グラウンド端子100の電圧に対して基板電圧が上がれば、見かけ上、しきい値電圧が低くなる。電源端子150の電圧が交流的に増加する時に、容量502によって、抵抗501でグラウンド端子100に固定されていた基板バイアスが電源端子150に向かって上昇する。NMOSトランジスタ414の基板バイアスは上昇することになる。基板効果でNMOSトランジスタ414のしきい値電圧が低下する。PMOSトランジスタ414のゲート端子は一定電圧源(基準電圧)と接続し、一定の電流がしか流れていない。NMOSトランジスタ414のしきい値が低下する、ON抵抗が小さくなり、誤差増幅回路の出力電圧も低下する。この結果、誤差増幅回路の出力電圧は、電源端子150の電圧に逆方向で追従して上昇又は降下する。容量502と抵抗501を調整する事で、グラウンド端子100の電圧に対する基板バイアスの変動の傾きが変化し、電源端子150の電圧の増加に伴うレギュレータの出力端子121の電圧の増加をちょうど打ち消し合うように、容量502と抵抗501の値を合わせればいい。こうして、出力端子121に現れるリップルをグラウンド端子100に現れるリップルで相殺し、リップル除去率を改善することができる。リップル除去率改善回路503の出力はフィードバック回路のインピーダンスの影響を受けないため、出力電圧ごとにトリミングをすることなくリップル除去率を改善できる。また、リップル除去率改善回路503には電流が流れるパスがないため低消費電力化を実現することができる。
【0038】
以上により、リップル除去率改善回路503の出力をカレント・ミラー部のトランジスタのバックゲートに入力することで、フィードバック回路のインピーダンスの影響を受けることなくリップル除去率を改善することができる。そして、リップル除去率改善回路503には電流が流れるパスがないため低消費電力化を実現できる。
【0039】
なお、図9に示したように、誤差増幅回路102が1段増幅の場合には、カレント・ミラー部のもう一方のNMOSトランジスタ413のバックゲートにリップル除去率改善回路503の出力を入力する。即ち、誤差増幅回路102の増幅回路の段数によって、リップル除去率改善回路503はNMOSトランジスタ413または414のバックゲートに適宜設けられる。
【符号の説明】
【0040】
100 グラウンド端子
101、601 基準電圧回路
102、602 差動増幅回路
216、217、416、417 バイアス回路
121 出力端子
150 電源端子
203、303、403、503、610 リップル除去率改善回路
221、421 差動増幅回路の反転入力端子
222、422 差動増幅回路の非反転入力端子
223、423 差動増幅回路の出力端子
603 出力回路
604 出力分圧回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力トランジスタが出力する電圧を分圧した分圧電圧と基準電圧の差を増幅して出力し、前記出力トランジスタのゲートを制御する誤差増幅回路を備えたボルテージレギュレータであって、
前記誤差増幅回路は、
前記誤差増幅回路を構成するMOSトランジスタのバックゲートにリップル除去率改善回路を備えた事を特徴とするボルテージレギュレータ。
【請求項2】
前記リップル除去率改善回路は、
抵抗と容量で構成され、
前記抵抗と前記容量の接続点が前記MOSトランジスタのバックゲートに接続される事を特徴とする請求項1記載のボルテージレギュレータ。
【請求項3】
前記MOSトランジスタは、
カレント・ミラー部を構成するMOSトランジスタである事を特徴とする請求項2記載のボルテージレギュレータ。
【請求項4】
前記MOSトランジスタは、
入力段トランジスタを構成するMOSトランジスタである事を特徴とする請求項2記載のボルテージレギュレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−164078(P2012−164078A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23120(P2011−23120)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】