説明

ポジ型感光性ポリイミド前駆体組成物

【課題】 熱膨張係数が小さく、このために、基材との密着性の低下や基材の反り等が軽減され、電気特性、解像性などが劣化することがない樹脂膜を与えることができるポジ型感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 本発明のポジ型ポリイミド前駆体組成物は、主鎖にベンゾアゾール骨格を有し、且つ主鎖および側鎖の少なくともいずれかにフェノール性水酸基を含有するポリイミド前駆体と、コール酸又はデオキシコール酸又はリトコール酸のカルボキシル基の水素原子を、フェナシル構造を有する基およびベンゾイニル構造を有する基から選択される光脱離性基により置換して構成される酸誘導体から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の信頼性向上のための半導体表面保護膜や層間絶縁膜の形成に使用されるポジ型感光性ポリイミド前駆体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体素子の表面保護膜や層間絶縁膜の形成には、耐熱性、電気特性、機械特性に優れたポリイミド樹脂が使用されてきた(例えば、非特許文献1参照)。また、近時、メモリやマイクロプロセッサーなどの主要デバイスの生産性向上に対応するように半導体素子の高集積化と大型化とが進められ、また、情報機器用デバイスの薄型パッケージングに対応するように封止樹脂パッケージの薄型化と小型化とが進められ、さらに、半田リフローによる表面実装への移行が進められるようになってきている。これら事情に伴って、これらに使用される表面保護膜や層間絶縁膜に対しても耐熱サイクル性、耐熱ショック性などの大幅な性能向上が要求されてきており、より高性能なポリイミド樹脂が望まれている。
【非特許文献1】「最新ポリイミド〜基礎と応用」、エヌ・ティー・エス発行、p.327〜338(2002)
【0003】
また、回路パターン製造工程を簡略化するために、感光性ポリイミドが使用することが注目されてきている。
【0004】
これら用途において感光性ポリイミドを使用する場合、これまで、露光部が硬化するネガ型が知られているが、これらネガ型では、現像工程での安全性に問題があり、また、現像工程にて環境上好ましくないN−メチルピロリドンなどの溶剤を使用するので、近年、従来のネガ型に代わって、アルカリ水溶液で現像できるポジ型感光性ポリイミド樹脂が開発されている(例えば、非特許文献2参照)。このポジ型感光性ポリイミド樹脂は、高い耐熱性、優れた電気特性、高い解像性を持っているため、特に注目されている。また、感光性ポリイミド樹脂に代わって、耐湿性に優れた感光性ポリベンゾオキサゾール樹脂も開発されてきた(例えば、非特許文献2参照)。
【非特許文献2】「電子部品用高分子材料の最新動向III」、住ベテクノリサーチ発行、p.88〜119(2001)
【0005】
しかし、従来のポリイミド樹脂やポリベンゾオキサゾール樹脂は、金属や無機材料と比べると、熱膨張係数が大きいという問題があった。
【0006】
樹脂の熱膨張係数が大きい場合、金属や無機材料の基材に塗布すると、熱膨張係数の差に起因する熱応力によって、膜にクラックが発生したり、膜が基材から剥離したり、基板に反りが発生したり、基材が破壊されたり等が起こる。さらに、基材に大きな反りを生じた状態で、パターニングのためのリソグラフィーを行うと、パターニングの解像度が悪くなり問題となる。この問題は、特に、大型の基材を使用した場合や、基材上に厚く塗布する場合に大きくなる。そのため、熱膨張係数の小さいポジ型感光性樹脂の開発が強く望まれている。特にシリコンウェハは基材として重要であるが、熱膨張係数が3ppm/℃と非常に小さく、樹脂との熱膨張差から生じるウェハの反りは、製造工程での不良品の発生、搬送不良、割れの要因、あるいはデバイス特性への影響を考えると好ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来のポジ型感光性樹脂の熱膨張係数が大きいことに起因する、基材との密着性の低下や基材の反りなどの問題を軽減するためになされたものであり、熱膨張係数が小さく、このために、基材との密着性の低下や基材の反り等が軽減され、電気特性、解像性などが劣化することがない樹脂膜を与えることができるポジ型感光性樹脂組成物を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、主鎖にベンゾオキサゾールなどのベンゾアゾール骨格を有し、且つ主鎖および側鎖の少なくともいずれかにカルボキシル基およびフェノール性水酸基の少なくとも一方を含有するポリイミド前駆体と、コール酸又はデオキシコール酸又はリトコール酸のカルボキシル基の水素原子を、フェナシル構造を有する基およびベンゾイニル構造を有する基から選択される光脱離性基により置換して構成される酸誘導体から選ばれる少なくとも一種とを含有することを特徴とし、そのことにより上記目的が達成される。
【0009】
すねわち本発明は、一般式(1)で示されるポリイミド前駆体と、
【0010】
【化3】

【0011】
(式中、R1はフェノール性水酸基を有していてもよい4価の有機基を示し、R2は水酸基、フェノール性水酸基を含有する有機基又はその他の1価の有機基を示し、R3は一般式(2)〜(5)を示し、)
【0012】
【化4】

【0013】
(一般式(2)〜(5)中、Xは酸素原子、硫黄原子又はNR8(式中R8は水素原アルキル基又はフェニル基を示す)を示し、R4、R6は、それぞれ独立して、フェノール性水酸基を有していてもよい単環又は複数の環から構成される芳香族環基又は複素環基を示し、R5、R7はそれぞれ独立して、フェノール性水酸基を有していてもよい単環又は複数の環から構成される芳香族環基、複素環基又は脂肪族環基を示す。)
コール酸、デオキシコール酸、および/又はリトコール酸のカルボキシル基の水素原子をフェナシル構造を有する基およびベンゾイニル構造を有する基から選択される光脱離性基により置換して構成される酸誘導体とを含有することを特徴とするポジ型感光性ポリイミド前駆体組成物である。
【0014】
上記構成のポジ型感光性ポリイミド前駆体組成物において、前記ポリイミド前駆体全体に含まれるカルボキシル基とフェノール性水酸基との合計量が一般式(1)で示される繰り返し単位1モルあたり0.3〜3モルであることが好ましい。
【0015】
前記ポリイミド前駆体の少なくとも一方の末端は、芳香族ジアミン又は二酸無水物と結合する結合性基を有する連鎖延長剤によって該結合性基を介して封鎖されており、該連鎖延長剤は、芳香族ジアミンと二酸無水物とからポリイミド前駆体を形成するための条件とは異なる条件下で該ポリイミド前駆体同士を該連鎖延長剤を介して連結する連結性基をさらに有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のポジ型感光性ポリイミド前駆体組成物は、シリコンウェハなどの低熱膨張係数の基材上に塗布、熱環化した後に得られるポリイミドと基材との熱膨張係数の差が小さく、また、ポリイミドと基材との密着性が良く、かつ反りなどを軽減でき、また、現像性、感光性などを良好に維持でき、これらの結果として、良好なパターンが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明のポジ型感光性ポリイミド前駆体組成物は、主鎖にベンゾオキサゾールなどのベンゾアゾール骨格を有し、且つ主鎖および側鎖の少なくともいずれかにカルボキシル基およびフェノール性水酸基の少なくとも一方を含有するポリイミド前駆体と、コール酸又はデオキシコール酸又はリトコール酸のカルボキシル基の水素原子を、フェナシル構造を有する基およびベンゾイニル構造を有する基から選択される光脱離性基により置換して構成される酸誘導体から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする。
【0019】
本発明に関するポリイミド前駆体は、好ましくは、一般式(1)で表される構造単位を主成分としており、加熱するか、又は適当な触媒を添加することにより、イミド環を有する樹脂となり得るものであり、イミド環形成により耐熱性に優れたポリイミドが形成される。
【0020】
【化5】

【0021】
ここで、上記(1)式中、R1はフェノール性水酸基を含有してもよい4価の有機基、R2は水酸基、フェノール性水酸基を含有する有機基又はその他の1価の有機基を表している。
【0022】
上記一般式(1)中、R1は、4価の有機基であれば特に限定されないが、ポリイミドに耐熱性を持たせるために、炭素数6〜30の芳香族環基又は芳香族複素環基を有する基であることが好ましい。R1の好ましい具体例としては、ピロメリット酸、ナフタレンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルヘキサフルオロプロパンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸などといったテトラカルボン酸由来の構造などが挙げられる。また、R1はフェノール性水酸基を含有する芳香族環基又は芳香族複素環であってもよく、このような芳香族環基又は芳香族複素環としては、例えば、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニルなどのジアミンと、2倍モルの無水ピロメリット酸とを反応させた反応生成物のR1該当部分などが挙げられる。
【0023】
上記一般式(1)中、R2は水酸基、フェノール性水酸基を含有する有機基又はその他の1価の有機基であり、ポリイミド前駆体構造中に共有結合により導入されている。フェノール性水酸基を有する有機基又はその他の1価の有機基は、共有結合によりポリイミド前駆体中に導入可能なものであれば、特に限定があるわけではないが、ポリイミド前駆体への導入のし易さ、導入可能な基を考慮する場合の選択の幅広さ、イミド環形成時の脱離のし易さを考慮すると、アルコール化合物由来のもの、又はアミン化合物由来のものが好適である。これらであれば、公知の方法でアルコール化合物を用いてエステル体を合成するか、又は、アミン化合物を用いてアミド体を合成するかのいずれかにより、ポリイミド前駆体に導入される。
【0024】
2が表すフェノール性水酸基を含有する有機基としては、ヒドロキシベンジロキシ基、ヒドロキシフェネチロキシ基などが挙げられる。このようなフェノール性水酸基を含有する有機基をエステル結合により導入するために用いられるフェノール性水酸基を有するアルコール化合物としては、例えば、4−ヒドロキシベンジルアルコール、3−ヒドロキシベンジルアルコール、2−ヒドロキシベンジルアルコール、4−ヒドロキシフェネチルアルコールなどが挙げられる。また、フェノール性水酸基を含有するアミン化合物としては、例えば、4−ヒドロキシベンジルアミン、3−ヒドロキシベンジルアミン、2−ヒドロキシベンジルアミン、4−ヒドロキシフェネチルアミンなどが挙げられる。
【0025】
また、R2が表すその他の1価の有機基としては、フェノール性水酸基を有さない基であれば特に限定されないが、例えば、炭素数が1〜10であるアルキル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基など、炭素数が6〜10であるフェニル基、フェノキシ基、フェニルアミノ基、ベンジル基などが挙げられる。
【0026】
一般にポリイミドの熱膨張係数を小さくするためには、化学構造上、ポリイミド主鎖が剛直で直線状の棒状構造を有していることが必要であると考えられる。そして、このような剛直で直線状の棒状構造を形成するためには、環構造のパラ結合が特に重要である。このようなパラ結合を有する環構造のポリイミドでは、ポリイミド骨格の面内配向度が大きくなり、そのために、剛直で直線状の棒状構造を有するようになると考えられるからである。
【0027】
本発明に関するポリイミド前駆体は、このようなポリイミドの熱膨張係数を小さくするために適した化学構造として、主鎖にベンゾオキサゾールなどのベンゾアゾール骨格を有しており、上記一般式(1)において、R3が、以下の一般式(2)〜(5)のいずれかで表されるベンゾアゾール骨格を有している。
【0028】
【化6】

【0029】
(一般式(2)〜(5)中、Xは酸素原子、硫黄原子又はNR8(式中R8は水素原子、アルキル基又はフェニル基を示す)を示し、R4、R6は、それぞれ独立して、フェノール性水酸基を有していてもよい単環又は複数の環から構成される芳香族環基又は複素環基を示し、R5、R7はそれぞれ独立して、フェノール性水酸基を有していてもよい単環又は複数の環から構成される芳香族環基、複素環基又は脂肪族環基を表している。
【0030】
式(2)〜(3)のR4が示すフェノール性水酸基を有してもよい芳香族基又は複素環基は、フェノール性水酸基を有してもよい芳香族化合物又は複素環化合物から4つの水素を除いたものに相当する4価の基である。式(2)〜(3)のR4が示すフェノール性水酸基を有してもよい芳香族基又は複素環基の具体例としては、
【0031】
【化7】

【0032】
(式中、X4は、酸素原子、硫黄原子、SO2、S=O、CH2、C=O、ヘキサフルオロイソプロピリデン、イソプロピリデンである。)などが挙げられ、さらに、上記芳香族環の任意の水素原子が水酸基で置換されていてもよい。
【0033】
式(2)〜(4)のR5が示すフェノール性水酸基を有してもよい芳香族基又は複素環基は、フェノール性水酸基を有してもよい芳香族化合物又は複素環化合物から2つの水素を除いたものに相当する2価の基である。式(2)〜(4)のR5が示す芳香族基又は複素環基の具体例としては、
【0034】
【化8】

【0035】
(式中、X5は、酸素原子、硫黄原子、SO2、S=O、CH2、C=O、ヘキサフルオロイソプロピリデン、イソプロピリデンである。)などが挙げられ、さらに、上記芳香族環の任意の水素原子が水酸基で置換されていてもよい。また、脂肪族環を有する基の例としてはシクロヘキシレン基が挙げられる。
【0036】
式(4)〜(5)のR6が示すフェノール性水酸基を有してもよい芳香族基又は複素環基は、フェノール性水酸基を有してもよい芳香族化合物又は複素環化合物から3つの水素を除いたものに相当する3価の基である。式(4)〜(5)のR6が示す芳香族基又は複素環基の具体例としては、
【0037】
【化9】

【0038】
(式中、X6は、酸素原子、硫黄原子、SO2、S=O、CH2、C=O、ヘキサフルオロイソプロピリデン、イソプロピリデンである。)などが挙げられ、さらに、上記芳香族環の任意の水素原子が水酸基で置換されていてもよい。
【0039】
式(5)のR7が示すフェノール性水酸基を有してもよい芳香族基又は複素環基は、フェノール性水酸基を有してもよい芳香族化合物又は複素環化合物から2つの水素を除いたものに相当する2価の基である。式(5)のR7が示す芳香族基又は複素環基の具体例としては、
【0040】
【化10】

【0041】
(式中、X7は、酸素原子、硫黄原子、SO2、S=O、CH2、C=O、ヘキサフルオロイソプロピリデン、イソプロピリデンである。)などが挙げられ、さらに、上記芳香族環の任意の水素原子が水酸基で置換されていてもよい。また、脂肪族環を有する基の例としてはシクロヘキシレン基が挙げられる。
【0042】
4〜R7の主鎖形成のための結合位置は任意でよいが、生成するポリイミドに直線形状を持たせるためには、前述のように、パラ位置で結合するか、又は、環構造内でできるだけ離間した位置関係になるように結合することが好ましい。
【0043】
上記のようなR4〜R7のいずれかで示されるR3の基の好ましい具体例としては、2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:5,4−d’]ビスオキサゾール、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)−ベンゾオキサゾール、5−アミノ−2−(m−アミノフェニル)−ベンゾオキサゾール、4,4’−ジフェニルエーテル−2,2’−ビス(5−アミノベンゾオキサゾール)、2,2’−p−フェニレンビス(5−アミノベンゾオキサゾール)、2,2’−ビス(4−フェニル)ヘキサフルオロプロパン−2,2’−(5−アミノベンゾオキサゾール)などのジアミノベンゾオキサゾール残基、2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:5,4−d’]ビスチアゾール、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)−ベンゾチアゾール、5−アミノ−2−(m−アミノフェニル)−ベンゾチアゾール、2,2’−p−フェニレンビス(5−アミノベンゾチアゾール)などのジアミノベンゾチアゾール残基、2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)ベンズ[1,2−d:5,4−d’]ビスイミダゾール、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)−ベンズイミダゾール、5−アミノ−2−(m−アミノフェニル)−ベンズイミダゾール、2,2’−p−フェニレンビス(5−アミノベンズイミダゾール)などのジアミノベンズイミダゾールの残基が挙げられる。また、フェノール性水酸基を有するものとしては、5−アミノ−2−(m−ヒドロキシ−p−アミノフェニル)−ベンゾオキサゾール、5−アミノ−2−(m−アミノ−p−ヒドロキシフェニル)−ベンゾオキサゾール、4,4’−ジ(m−ヒドロキシフェニル)エーテル−2,2’−ビス(5−アミノベンゾオキサゾール)などのジアミノベンゾオキサゾール残基、2,6−(3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:5,4−d’]ビスチアゾール、5−アミノ−2−(m−ヒドロキシ−p−アミノフェニル)−ベンゾチアゾール、5−アミノ−2−(m−アミノ−p−ヒドロキシフェニル)−ベンゾチアゾールなどのジアミノベンゾチアゾール残基、2,6−(3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノジフェニル)ベンズ[1,2−d:5,4−d’]ビスイミダゾール、5−アミノ−2−(m−ヒドロキシ−p−アミノフェニル)−ベンズイミダゾール、5−アミノ−2−(m−アミノ−p−ヒドロキシフェニル)−ベンズイミダゾールなどのジアミノベンズイミダゾール残
基などが挙げられる。
【0044】
上記構成のポリイミド前駆体は、ポリイミド前駆体全体に含まれるカルボキシル基とフェノール性水酸基との合計量が一般式(1)で示される繰り返し単位1モルあたり、0.3〜3モルであることが好ましい。カルボキシル基とフェノール性水酸基の合計量が少なすぎる場合は、アルカリ現像液に対して十分な溶解性を示さないおそれがあり、良好なポジ型感光性の機能を発揮することができないおそれがある。多すぎると、現像時に膜減りが大きく、良好なパターンを形成できない。
【0045】
また、基板との接着性を向上させるために、耐熱性を低下させない範囲内でR1、R3にシロキサン構造を有する脂肪族の基を共重合しても良い。具体的には、ジアミン成分として、ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンなどを1〜10モル%共重合したものなどが挙げられる。
【0046】
また、本発明においては、芳香族ジアミン又は二酸無水物と結合する結合性基と、芳香族ジアミンと二酸無水物とからポリイミド前駆体を形成するための条件とは異なる条件で該ポリイミド前駆体同士を連結する連結性基との二種類の官能基を有する連鎖延長剤によって、ポリイミド前駆体の少なくとも一方の末端が結合性基を介して封鎖されていることが好ましい。ポリイミド前駆体がこのような連鎖延長剤によって封鎖されていると、芳香族ジアミンと二酸無水物とからポリイミド前駆体を形成した後に、連結性基を用いて、前駆体形成とは異なる条件で、ポリイミド前駆体の分子量を増大させることができる。この分子量の増大は、添加する連鎖延長剤の量を調整することによって任意に制御することができる。
【0047】
本発明において使用される連鎖延長剤は、特に限定はないが、例えば、アルケニル基、アルキニル基、シクロブテン環を含有する二酸無水物又は1級又は2級のアミンが挙げられる。具体的には、無水マレイン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビニルフタル酸無水物、1,2−ジメチル無水マレイン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2,3,6−テトラドロ無水フタル酸、フェニルエチニルアニリン、エチニルアニリン、3−(3−フェニルエチニルフェノキシ)アニリン、プロパルギルアミン、アミノベンゾシクロブテンなどが挙げられる。一般的に、添加される連鎖延長剤の量が多くなると、ポリイミド前駆体の分子量が減少し、それゆえそれを含む溶液の粘度が減少する。また、塗布方法により最適な溶液粘度が存在する。したがって、望ましい分子量および溶液粘度が得られるように考慮して、連鎖延長剤の濃度および塗布方法が選択される。
【0048】
本発明で用いるポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸二無水物とジアミノベンゾアゾールとを反応させることにより合成されるが、フェノール性水酸基を導入する場合には、主鎖にフェノール性水酸基を有するようにテトラカルボン酸二無水物およびジアミノベンゾオキサゾールの少なくともいずれかにフェノール性水酸基を含有するものを選択するか、又は、側鎖にフェノール性水酸基を有するように、フェノール性水酸基を有する基をR2として導入する。フェノール性水酸基を有する基をR2として導入する場合、アルコール化合物又はアミン化合物を反応させる方法が公知であるので、例示として、この方法について説明する。まず、テトラカルボン酸二無水物とアルコール化合物又はアミン化合物とを反応させて、テトラカルボン酸ジエステル又はテトラカルボン酸ジアミドを合成し、ついで、該ジエステル又はジアミドを塩化チオニルなどの塩素化剤と反応させて、テトラカルボン酸ジエステル塩化物又はテトラカルボン酸ジアミド塩化物を合成する。その後、得られた該塩化物を有機溶媒に溶解させて、ピリジンなどの脱ハロゲン化水素剤を含有した有機溶剤に溶解したジアミノベンゾオキサゾールと反応させるか、シクロヘキシルカルボジイミド、ジフェニル(2,3−ジヒドロ−チオキソ−3−ベンゾオキサゾール)ホスホナートなどの適当な脱水剤を用いてジアミノベンゾオキサゾールと反応させる。この際の溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホロトリアミドなどを主成分とする極性溶剤やγ−ブチロラクトンを主成分とする溶媒等が挙げられる。
【0049】
本発明のポジ型感光性ポリイミド前駆体組成物は、上記ポリイミド前駆体に加えて、コール酸又はデオキシコール酸又はリトコール酸のカルボキシル基の水素原子を、フェナシル構造を有する基およびベンゾイニル構造を有する基から選択される光脱離性基により置換して構成される酸誘導体から選ばれる少なくとも一種を含有している。
【0050】
酸誘導体の光脱離性基を構成するフェナシル構造を有する基としては、具体的には、α−メチルフェナシル基、α−メチル−4−ニトロフェナシル基、α−フェニルフェナシル基、4−メトキシフェナシル基、α−(2,4−ジクロロフェニル)フェナシル基、α−n−ブチルフェナシル基、α−(3−メトキシフェニル)−4−クロロフェナシル基等が挙げられる。また、酸誘導体の光脱離性基を構成するベンゾイニル基としては、3’−メトキシベンゾイニル基、3’,5’−ジメトキシベンゾイニル基、3,3’,4,4’−ジメチレンジオキシベンゾイニル基、2,2’,3,3’−テトラメトキシベンゾイニル基などが挙げられる。
【0051】
上記のような酸誘導体は、公知の方法で合成できる。例えば、コール酸又はデオキシコール酸又はリトコール酸を塩化チオニルと反応させて、酸クロリド誘導体に変化させた後、これに、フェナシルアルコール、ベンゾイニルアルコール等の光脱離基となるアルコール類を反応させることにより得られる。別の方法としては、フェナシルブロミド誘導体等の光脱離性基となる化合物のハロゲン化体とコール酸又はデオキシコール酸又はリトコール酸とを反応させる方法が挙げられる。
【0052】
酸誘導体を構成するコール酸、デオキシコール酸、又はリトコール酸のそれぞれが有する水酸基は、その一部又は全部が置換基で保護されていてもよい。水酸基を保護するための好ましい置換基としては、メチルカルボニル基などの低級アルキルカルボニル基やトリハロメチルカルボニル基(例えば、トリフルオロメチルカルボニル基)などの低級ハロアルキルカルボニル基などが挙げられる。具体的には、アセチル基、トリフルオロアセチル基などが好ましい。
【0053】
酸誘導体は、樹脂前駆体100質量部に対して、好ましくは2〜100質量部、より好ましくは5〜50質量部が添加される。
【0054】
また、本発明のポジ型感光性ポリイミド前駆体組成物においては、本発明の組成物の塗膜又は加熱処理後のポリイミド膜と基板との接着性を向上させるために、接着促進剤を用いることができる。
【0055】
接着促進剤としては、有機シラン化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、珪素含有ポリアミド酸などが好ましい。さらに、基板との接着性、感度、解像度、耐熱性などを損なわない範囲で他の添加物を含有させても良い。
【0056】
本発明のポジ型感光性ポリイミド前駆体組成物は、溶媒に溶解して溶液状態で得ることができる。溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホロトリアミド、γ−ブチロラクトンなどを用いることができる。
【0057】
本発明の感光性ポリイミド前駆体組成物は浸漬法、スプレー法、スクリーン印刷法、スピンコート法などによって、シリコンウェハ、金属基板、セラミック基板などの基材表面に塗布し、加熱して溶剤の大部分を除くことにより、基材表面に粘着性のない塗膜を与えることができる。塗膜の厚みには特に制限はないが、4〜50μmであることが好ましい

【0058】
この塗膜に、所定のパターンを有するマスクを通して、紫外線、可視光線、X線、電子線などの化学線を照射して、パターン状に露光後、膜の露光部分を、適切な現像液で現像して除去することにより、所望のパターン化された膜を得ることができる。
【0059】
化学線照射装置としては、g線ステッパ、i線ステッパ、超高圧水銀灯を用いるコンタクト/プロキシミティ露光機、ミラープロジェクション露光機、又はその他の紫外線、可視光線、X線、電子線などを照射可能な投影機や線源を使用することができる。
【0060】
現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水などの無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミンなどの第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミンなどの第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミンなどの第三アミン類、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどの第四級アンモニウム塩アルカリ類の水溶液およびこれにメタノール、エタノールのようなアルコール類などの水溶性有機溶剤や界面活性剤を適量添加した水溶液を好適に使用することができる。
【0061】
上記現像の後に、必要に応じて、水又は貧溶媒で洗浄し、ついで約100℃前後で乾燥し、パターンを安定化することが望ましい。パターンを形成させた膜を加熱して、優れた耐熱性、機械特性、電気特性を有する膜を得ることができる。
【0062】
加熱温度は、150〜500℃が好ましく、300〜450℃がさらに好ましい。加熱時間は0.05〜10時間が好ましい。加熱処理は通常、段階的又は連続的に昇温しながら行う。
【0063】
(作用)
本発明は、硬化後に熱膨張係数が小さいポリイミドを得ることができるポジ型感光性ポリイミド前駆体組成物を与えるものである。主鎖にベンゾオキサゾールなどのベンゾアゾール骨格を有し、且つ主鎖又は側鎖にカルボキシル基およびフェノール性水酸基の少なくとも一方を含有するポリイミド前駆体と、コール酸又はデオキシコール酸又はリトコール酸のカルボキシル基の水素原子を、フェナシル構造を有する基およびベンゾイニル構造を有する基から選択される光脱離性基により置換して構成される酸誘導体から選ばれる少なくとも一種を含有することにより、ポジ型の感光性ポリイミド前駆体として使用でき、また、ベンゾアゾール骨格を有していることにより、硬化して得られるポリイミドの熱膨張係数が小さくなることに基づいている。コール酸又はデオキシコール酸又はリトコール酸のカルボキシル基の水素原子を光脱離性基により置換して構成される酸誘導体は、露光により酸誘導体の光脱離性基が分解し、コール酸又はデオキシコール酸又はリトコール酸に変化して露光部のアルカリ性水溶液への溶解度が向上し、樹脂前駆体自体も、アルカリ可溶性を示すことによって、露光部のみがアルカリ条件で除かれることによりポジ型として機能することに基づいており、露光感度が高く、パターン形成性が良好で、耐熱性に優れた樹脂膜が得られる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】
(合成例1)
攪拌装置および冷却管を備えた300mlの三口セパラブルフラスコに100mlのN−メチルピロリドン(NMPともいう)と20.54g(60mmol)の2,6−(4,4’ジアミノジフェニル)−ベンゾ[1,2−d:5,4−d’]ビスオキサゾール(ジアミン1)を入れて懸濁液とし、このフラスコ内を窒素で静かに30分間パージする。反応系を氷冷(5℃以下)し、12.04g(55.205mmol)のピロメリット酸二無水物(PMDAともいう)および0.95g(9.6mmol)の無水マレイン酸を添加し、室温にて約68時間攪拌し、ポリイミド前駆体1を得た。
【0066】
(合成例2)
合成例1の技術を応用して、100mlのNMP、13.52g(60mmol)の5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)−ベンゾオキサゾール(ジアミン2)、0.95g(9.6mmol)の無水マレイン酸および12.04g(55.205mmol)のピロメリット酸二無水物(PMDA)を45時間室温で反応させて、ポリイミド前駆体2を得た。
【0067】
(合成例3)
合成例1の技術を応用して、100mlのNMP、13.52g(60mmol)の5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)−ベンゾオキサゾール(ジアミン2)、0.95g(9.6mmol)の無水マレイン酸および16.25g(55.205mmol)の3,3’4,4’−ビフェニルテトラカルボン二無水物(s−BPDA)を45時間室温で反応させて、ポリイミド前駆体3を得た。
【0068】
(合成例4)
合成例1の技術を応用して、100mlのNMP、14.46g(60mmol)の5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)−ベンゾチアゾール(ジアミン3)、0.95g(9.6mmol)の無水マレイン酸および12.04g(55.205mmol)のピロメリット酸二無水物(PMDA)を室温にて45時間で反応させて、ポリイミド前駆体4を得た。
【0069】
(合成例5)
合成例1の技術を応用して、100mlのNMP、13.56g(60mmol)の5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)−ベンズイミダゾール(ジアミン4)、0.95g(9.6mmol)の無水マレイン酸および12.04g(55.205mmol)のピロメリット酸二無水物(PMDA)を室温にて45時間で反応させて、ポリイミド前駆体5を得た。
【0070】
(合成例6)
合成例1の技術を応用して、100mlのNMP、13.86g(60mmol)の5−アミノ−2−(4−アミノシクロヘキシル)−ベンゾオキサゾール(ジアミン5)、95g(9.6mmol)の無水マレイン酸および12.04g(55.205mmol)のピロメリット酸二無水物(PMDA)を45時間室温で反応させて、ポリイミド前駆体6を得た。
【0071】
(合成例7)
合成例1の技術を応用して、100mlのNMP、13.86g(60mmol)の5−アミノ−2−(4−アミノシクロヘキシル)−ベンゾオキサゾール(ジアミン5)、95g(9.6mmol)の無水マレイン酸および12.37g(55.205mmol)の1,2,3,4−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDAともいう)を45時間室温で反応させて、ポリイミド前駆体7を得た。
【0072】
(合成例8)
窒素導入管を備えたフラスコ1に、1モルのピロメリット酸無水物(PMDA)、1モルの4−ヒドロキシベンジルアルコールおよび2LのNMPを加えて攪拌し、続けて1モルのトリエチルアミンを30分間にわたって滴下した。滴下後、この状態で3時間放置し、反応終了後に1モルの5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)−ベンゾオキサゾール(ジアミン2))を加えた。次に2.1モルのジフェニル(2,3−ジヒドロ−チオキソ−3−ベンゾオキサゾール)ホスホナートを5回に分けて添加し、添加後、その状態で5時間縮合した。また、別の窒素導入管を備えたフラスコ2に、2モルの無水マレイン酸と2.1モルの4−ヒドロキシベンジルアルコールおよび1LのNMPとを加えて攪拌し、続けて2.1モルのトリエチルアミンを30分間にわたって滴下した。滴下後、この状態で3時間放置した後、フラスコ1にフラスコ2の溶液を混合し、30分間攪拌した。次に2.1モルのジフェニル(2,3−ジヒドロ−チオキソ−3−ベンゾオキサゾール)ホスホナートを5回に分けて添加し、添加後、その状態で5時間縮合した。得られたスラリー状の混合物を大量のメタノール中に投入して洗浄し、得られた固形樹脂を真空乾燥機によって12時間乾燥し、ポリイミド前駆体8を得た。
【0073】
(合成例9)
合成例1の技術を応用して、100mlのNMP、12.01g(60mmol)の4,4’ジアミノジフェニルエーテル(ジアミン6)、0.95g(9.6mmol)の無水マレイン酸およ12.04g(55.205mmol)のピロメリット酸二無水物(PMDA)を45時間室温で反応させて、ポリイミド前駆体9を得た。
【0074】
(合成例10)
合成例1の技術を応用して、100mlのNMP、19.90g(60mmol)の4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン(ジアミン7)、0.95g(9.6mmol)の無水マレイン酸および12.04g(55.205mmol)のピロメリット酸二無水物(PMDA)を45時間室温で反応させて、ポリイミド前駆体10を得た。
【0075】
(酸誘導体の合成)
300mlのナスフラスコに、N,N−ジメチルホルムアミドを20ml入れ、攪拌しながらコール酸15ミリモルを徐々に加え溶解した。さらに、トリエチルアミン15ミリモルを加え、氷冷して攪拌した。次に、α−メチルフェナシルブロミドを、13.5ミリモル加えて、溶解させ、5℃で2日間静置した後、150mlの水を加え、沈殿した固形物を水で洗浄、乾燥した。さらにエチルアルコールで再結晶することにより、α−メチルフェナシルコール酸(以下では酸誘導体1と称する)を得た。
【0076】
同様にして、3’,5’−ジメトキシベンゾイニルコール酸(酸誘導体2)、α−メチルフェナシルデオキシコール酸(酸誘導体3)、α−メチルフェナシルリトコール酸(酸誘導体4)を得た。
【0077】
(実施例1)
合成例1で得られたポリイミド前駆体100質量部、酸誘導体合成例の酸誘導体1の25質量部をNMPに溶解させ、感光性ワニスを得た。得られたワニスをスピンコーターでシリコンウェハ上に回転塗布し、ホットプレートを用いて100℃で5分間乾燥を行い、10μmの塗膜を得た。この塗膜をマスク(1〜50μmの残しパターンおよび抜きパターン)を通して、超高圧水銀灯を用いて紫外線を照射した。そして2.38%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で現像した。次に水でリンスし、乾燥した。その結果、露光量450mJ/cm2の照射で良好なパターンが形成され、残膜率は93%であった。また、現像後の外観も良好であった。さらに、窒素雰囲気下で200℃で30分、400℃で60分の熱処理を行った。熱膨張係数は、試料を適当な温度範囲で昇温した時の線膨張率を測定し、得られた線膨張率の温度に対するプロットから求められる。線膨張率の測定方法としては、TMA(熱機械分析)法、直読法、光干渉法、押棒法、電気容量法、SQUID法などがあるが、本実施例1では、熱処理後の膜をシリコンウェハから剥がし、TMA(熱機械分析)法により25〜200℃の範囲で昇温速度10℃/分で測定したところ、6ppm/℃であり、熱膨張係数が低い樹脂であることが確認された。
【0078】
(実施例2〜8)
実施例1において用いた合成例1のポリイミド前駆体の代わりに、合成例2〜8のポリイミド前駆体2〜8を用いた以外は、実施例1と同様に操作して感光性ワニスを調製し、実施例1と同様にして評価した。
【0079】
(実施例9〜11)
実施例1において用いた酸誘導体1の代わりに、酸誘導体2〜3を用いた以外は、実施例1と同様に操作して感光性ワニスを調製し、実施例1と同様にして評価した。
【0080】
(比較例1〜2)
実施例6において用いた合成例1のポリイミド前駆体1の代わりに、合成例9〜10のポリイミド前駆体9〜10を用いた以外は、実施例1と同様に操作して感光性ワニスを調製し、実施例1と同様にして評価した。
【0081】
(比較例3)
実施例1において用いたエステル体1の代わりに、ナフトキノンジアジド化合物であるMG−300(東洋合成工業(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様に操作して感光性ワニスを調製し、実施例1と同様にして評価した。
【0082】
実施例1〜11、比較例1〜3の評価結果については以下の表1に示した。表1中、「感度」とは、解像度10μmのパターン形成のために要する露光量であり、現像後の膜の外観評価は、露光部の現像残りがなく、パターンのエッジが平滑であれば、「良好」と評価した。残膜率の算定・算出は、以下の方法にて行った。
残膜率(%)={(現像後の未露光部の膜厚)/(現像前の未露光部の膜厚)}×100
【0083】
【表1】

【0084】
以上の表1に示される結果によると、実施例1〜11の熱膨張係数と比較例1〜2の熱膨張係数とを比較して明らかなように、実施例1〜11に示される本発明に係るポジ型感光性ポリイミド前駆体組成物から得られるポリイミドは、従来のポリイミド(比較例1〜2)に比較して、明らかに熱膨張係数が低減されている。また、実施例1〜11と比較例3とにおける感度および残膜率および現像後外観を比較すると、いずれも優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明のポジ型感光性ポリイミド前駆体組成物は、半導体デバイスなどの製造での電気、電子絶縁材料として、詳しくは、ICやLSIなどの半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜などに用いられ、微細パターンの加工が必要とされるものなどに利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示されるポリイミド前駆体と、
【化1】

(式中、R1はフェノール性水酸基を有していてもよい4価の有機基を示し、R2は水酸基、フェノール性水酸基を含有する有機基又はその他の1価の有機基を示し、R3は一般式(2)〜(5)を示し、)
【化2】

(一般式(2)〜(5)中、Xは酸素原子、硫黄原子又はNR8(式中R8は水素原アルキル基又はフェニル基を示す)を示し、R4、R6は、それぞれ独立して、フェノール性水酸基を有していてもよい単環又は複数の環から構成される芳香族環基又は複素環基を示し、R5、R7はそれぞれ独立して、フェノール性水酸基を有していてもよい単環又は複数の環から構成される芳香族環基、複素環基又は脂肪族環基を示す。)
コール酸、デオキシコール酸、および/又はリトコール酸のカルボキシル基の水素原子をフェナシル構造を有する基およびベンゾイニル構造を有する基から選択される光脱離性基により置換して構成される酸誘導体から選ばれる少なくとも一種とを含有することを特徴とするポジ型感光性ポリイミド前駆体組成物。
【請求項2】
前記一般式(1)で示される構造を繰り返し単位中に有するポリイミド前駆体が有するカルボキシル基とフェノール性水酸基との合計量が一般式(1)で示される繰り返し単位1モルあたり0.3〜3モルである、請求項1に記載のポジ型感光性ポリイミド前駆体組成物。
【請求項3】
前記ポリイミド前駆体の少なくとも一方の末端は、芳香族ジアミン又は二酸無水物と結合する結合性基を有する連鎖延長剤によって該結合性基を介して封鎖されており、該連鎖延長剤は、芳香族ジアミンと二酸無水物とからポリイミド前駆体を形成するための条件とは異なる条件下で該ポリイミド前駆体同士を該連鎖延長剤を介して連結する連結性基をさらに有している、請求項1又は2いずれか1つに記載のポジ型感光性ポリイミド前駆体組成物。

【公開番号】特開2006−251476(P2006−251476A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−68997(P2005−68997)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】