説明

ポリイミド系高分子組成物、ポリイミド無端ベルト、ポリイミド無端ベルトの製造方法、ベルトユニットおよび画像形成装置

【課題】溶剤に可溶性であり且つ熱処理後に予め定められた強度を有するポリイミド系高分子組成物を提供する。
【解決手段】ポリイミド系高分子組成物は、以下に示す一般式(1)の構造を有するポリイミド系高分子と溶媒とを含む溶液中に、pH7未満のカーボンブラックが分散され、以下に示す一般式(1)を得る重合反応におけるジアミン化合物に対するテトラカルボン酸二無水物のモル比(α=(テトラカルボン酸二無水物の当量数)/(ジアミン化合物の当量数))は、0.90以上1.00未満である。


・・・一般式(1)
(一般式(1)中、R1、R3は4価の有機基を表す。R2、R4、R5は2価の有機基を表す。m、nは1以上の整数を表し、m/(m+n)≧0.5。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド系高分子組成物、ポリイミド無端ベルト、ポリイミド無端ベルトの製造方法、ベルトユニットおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置は、無機又は有機材料を含む感光体である像保持体上に電荷を形成して帯電させ、画像信号を変調したレーザ光等で静電潜像を形成した後、帯電したトナーで前記静電濳像を現像して可視化したトナー像とする。そして、上記トナー像を中間転写体を介して、あるいは直接記録紙等の記録媒体に静電的に転写することにより所要の再生画像を得る。
【0003】
中間転写体方式を採用した画像形成装置に用いられる材料としては、ポリカーボネート樹脂(例えば、特許文献1参照)、ポリフッ化ビニリデン(例えば、特許文献2及び3参照)、ポリアルキレンフタレート(例えば、特許文献4参照)、PC(ポリカーボネート)/PAT(ポリアルキレンテレフタレート)のブレンド材料(例えば、特許文献5参照)、ETFE(エチレンテトラフロロエチレン共重合体)/PC,ETFE/PAT,PC/PATのブレンド材料(例えば、特許文献6参照)等を主な成分とした無端ベルトを用いる提案がなされている。
【0004】
その他のベルト材料としては、特ポリエステル等の織布と弾性部材を積層してなる補強材入り弾性ベルトが提案されている(例えば、特許文献7及び8参照)。
【0005】
また、直接記録紙等の記録媒体に静電的に転写する画像形成装置においては、各色毎の現像器を備えた複数の感光体を配置したタンデム式カラー画像形成装置などを中心として、転写材を無端ベルトに吸着させ搬送させる転写搬送ベルト方式が提案され、既に実用化されている。
【0006】
一方、強度不足や変形、耐久性を改善した中間転写ベルトや転写搬送ベルト等に用い得るベルトとして、ポリイミド樹脂にフィラーを分散してなる転写ベルトが提案されている(例えば、特許文献9〜11参照)。ポリイミド樹脂製の無端ベルトは、その機械強度の強さや高弾性率、耐クリープ性などから、転写ベルトとしては、他の材料に比べて極めて優れた特性を有しているといえる。
【0007】
一方、酸高分子末端をナイロン塩型に変性することせることが提案されている(例えば、特許文献12及び13参照)。また、ポリアミック酸の低分子量体を用いることでカーボンブラックの分散性を向上させることが提案されている(例えば、特許文献14参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−095521号公報
【特許文献2】特開平5−200904号公報
【特許文献3】特開平6−228335号公報
【特許文献4】特開平6−149081号公報
【特許文献5】特開平6−149083号公報
【特許文献6】特開平6−149079号公報
【特許文献7】特開平9−305038号公報
【特許文献8】特開平10−240020号公報
【特許文献9】特開平5−77252号公報
【特許文献10】特開平10−63115号公報
【特許文献11】特開2001−34076号公報
【特許文献12】特開2005−247987号公報
【特許文献13】特開2005−247988号公報
【特許文献14】特開2002−308995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、例えば、ポリイミド成形体を製造する場合、一般にポリイミド樹脂は、溶融せず各種溶剤に対して不溶であることから、その前駆体であるポリアミック酸の溶液を基材に塗布し、乾燥後に加熱してアミック酸基の脱水イミド化反応を行い、ポリイミド成型体を得ている。イミド化反応では、一般に300℃から400℃の高い温度で行われる。例えば、ポリイミド成形体がベルトであって、ポリアミック酸の脱水イミド化反応が急激に進行した場合、ベルトの膜中にボイドが発生する場合があり、また脱水反応に伴う体積収縮により発生する応力によってベルトの膜厚方向ならびに面内での品質のばらつきが生じる場合がある。
【0010】
本発明の目的は、本願の構造を有しないポリイミド樹脂に比べ、溶剤に可溶であり、また、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸を用いた成形に比べ、溶剤に溶解させたポリイミド系高分子組成物を基材に塗工後、溶剤を乾燥させるだけでポリイミド成型体が得られ、得られたポリイミド成形体が予め定められた機械的強度を有し且つ品質のばらつきが抑制されるポリイミド系高分子組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下に示す本発明を完成するに至った。本願発明は、以下の特徴を有する。
【0012】
請求項1に係る発明は、
以下に示す一般式(1)の構造を有するポリイミド系高分子と溶媒とを含む溶液中に、pH7未満のカーボンブラックが分散され、以下に示す一般式(1)を得る重合反応におけるジアミン化合物に対するテトラカルボン酸二無水物のモル比(α=(テトラカルボン酸二無水物の当量数)/(ジアミン化合物の当量数))は、0.90以上1.00未満であるポリイミド系高分子組成物である。
【化1】


・・・一般式(1)
(一般式(1)中、R1、R3は4価の有機基を表す。R2、R4、R5は2価の有機基を表す。m、nは1以上の整数を表し、m/(m+n)≧0.5。)
【0013】
請求項2に係る発明は、
一般式(1)におけるR1、R3は、以下のものから選択され、
【化2】


一般式(1)におけるR2、R4、R5は、以下のものから選択され、
【化3】


且つ選択されたR1、R2、R2、R4、R5の構造を有するポリイミド系高分子を50モル%以上含む上記請求項1に記載のポリイミド系高分子組成物である。
【0014】
請求項3に係る発明は、
前記一般式(1)に示す構造中に、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオンと、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートからなる群から選択される第3成分がさらに含有される上記請求項1または請求項2に記載のポリイミド系高分子組成物である。
【0015】
請求項4に係る発明は、
上記請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のポリイミド系高分子組成物を円筒状基材の表面に塗布する工程と、前記円筒状金型上に塗布されたポリイミド系高分子組成物を加熱処理する工程と、を有するポリイミド無端ベルトの製造方法である。
【0016】
請求項5に係る発明は、
上記請求項1から請求項3のいずれか1つ項に記載のポリイミド系高分子組成物を加熱処理してなる転写または定着用ポリイミド無端ベルトである。
【0017】
請求項6に係る発明は、
上記請求項4に記載の製造工程により製造される転写または定着用ポリイミド無端ベルトである。
【0018】
請求項7に係る発明は、
請求項5または請求項6に記載のポリイミド無端ベルトを含むことを特徴とするベルトユニットである。
【0019】
請求項8に係る発明は、
潜像担持体上に潜像を形成する潜像形成手段と、前記潜像を静電荷像現像用現像剤を用いて現像する現像手段と、現像されたトナー画像を中間転写体を介してまたは介さずに被転写体上に転写する転写手段と、前記被転写体上のトナー画像を定着する定着手段と、を含む画像形成装置であり、前記転写手段に用いる転写ベルトおよび前記定着手段に用いる定着ベルトの少なくとも一方が、上記請求項5または請求項6に記載のポリイミド無端ベルトである画像形成装置である。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、pH7未満のカーボンブラックの分散性が高いポリイミド系高分子組成物が提供される。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、pH7未満のカーボンブラックの分散性が高く、且つ一般的なポリイミド系高分子に比べ機械的強度の高いポリイミド系高分子組成物が提供される。
【0022】
請求項3に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、剛性の度合いが調整されたポリイミド系高分子組成物が提供される。
【0023】
請求項4に記載の発明によれば、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸を用いた成形に比べ、溶剤に溶解させたポリイミド系高分子組成物を基材に塗工後、溶剤を乾燥させるだけでポリイミド無端ベルトが得られる。
【0024】
請求項5に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、耐摩耗性が高く、且つ品質のばらつきが抑制されたポリイミド無端ベルトが提供される。
【0025】
請求項6に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、耐摩耗性が高く、且つ品質のばらつきが抑制されたポリイミド無端ベルトが提供される。
【0026】
請求項7に記載の発明によれば、画像成形装置に用いた場合、本構成を有しない場合に比べ、長期間に亘って高画質が得られるベルトユニットが提供される。
【0027】
請求項8に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、長期間に亘って高画質が得られる画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】表面抵抗率及び体積抵抗率の測定方法を説明するための図である。
【図2】本実施形態の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】本実施形態の画像形成装置の他の例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施の形態におけるポリイミド系高分子組成物、ポリイミド無端ベルト、ポリイミド無端ベルトの製造方法、ベルトユニットおよび画像形成装置について、以下に説明する。
【0030】
<ポリイミド系高分子組成物>
本実施の形態のポリイミド系高分子組成物は、pH7未満のカーボンブラック(以下、「酸性カーボンブラック」という場合がある。)が、以下に示す一般式(1)の構造を有し分子末端にアミノ基をもつポリイミド系高分子(以下、「特定ポリイミド」という場合がある。)及び溶媒を含む溶液中に分散されてなる。以下に示す一般式(1)に示す分子末端にアミノ基をもつポリイミド系高分子は分子末端がアミノ基であることから、アミノ基と酸性カーボンブラックとの相互作用により、特に、ポリイミド系高分子組成物における酸性カーボンブラックの分散性が高い。
【0031】
【化4】


・・・一般式(1)
【0032】
一般式(1)中、R1、R3は4価の有機基を表す。R2、R4、R5は2価の有機基を表す。m、nは1以上の整数(好ましくは、1以上1000以下の整数)であり、m/(m+n)は0.5以上、0.9以下である。
【0033】
さらに、m/(m+n)は、より好ましくは0.6以上、0.8以下である。一般式(1)においてm/(m+n)が0.5未満の場合、強度を発現するためには高温長時間の加熱処理が必要となるという不具合があり、一方、m/(m+n)が0.9を超える場合溶媒に不溶化してしまうという不具合がある。
【0034】
[m/(m+n)の測定方法]
ポリアミック酸ワニスをN−メチルピロリドンにて固形分1質量%に希釈した。希釈液をシリコーンウエハー基板上に以下の条件で塗布した。
塗布方法:スピンコート法、
塗布条件:100rpm×10秒+3000rpm×30秒塗膜形成後、試料片をテトラヒドロフラン中に30分間浸漬した。
【0035】
試料片を10mmHg下で12時間乾燥し、赤外吸光スペクトルを測定した。芳香環由来の1500cm−1の吸光度(A(フェニル))を内部標準として、1780cm−1付近のイミド基カルボニル由来の吸光度(A(イミド))との比P(検体)=A(イミド)/A(フェニル)を算出した。
【0036】
別途、同様な方法で製膜した試料を400℃にて1時間処理した完全イミド化試料を用意し、同様に赤外吸光スペクトルを測定した。
P(完全イミド化試料)=A(イミド)/A(フェニル)を求めた。
【0037】
さらに、以下の式にて、m/(m+n)を算出した。
イミド化率=P(検体)/P(完全イミド化試料)
m/(m+n)=1−イミド化率
【0038】
なお、本実施の形態における「ポリイミド系高分子」(「特定ポリイミド」ともいう)は、N−メチルピロリドンを溶媒として用いた場合、固形分濃度20質量%で溶解する可溶性ポリイミドを指す。
【0039】
(ポリイミド系高分子)
先ず、特定ポリイミドについて説明する。
【0040】
本実施の形態における特定イミドは、さらに、一般式(1)におけるR1、R3が、以下のものから選択され、
【化5】


一般式(1)におけるR2、R4、R5は、以下のものから選択され、
【化6】


且つ選択されたR1、R2、R2、R4、R5の構造を有するポリイミド系高分子が50モル%以上含む。
【0041】
一般式(1)において、R1、R3は4価の有機基を表す。該4価の有機基としては、テトラカルボン酸化合物より4つのカルボキシル基を除した残基構造を有する基が挙げられ、上記構造を有する基が好ましく挙げられる。
【0042】
ここで、一般式(1)におけるR1、R3の構造を有する基は、以下に示すテトラカルボン酸化合物から4つのカルボキシル基を除した残基構造である。
【化7】

【0043】
一般式(1)におけるR2、R4、R5は、2価の有機基を表す。該2価の有機基としては、ジアミン酸化合物より2つのアミノ基を除した残基構造を有する基が挙げられ、上記構造を有する基が好ましく挙げられる。
【0044】
【化8】

【0045】
特定ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを用い、ポリイミド系高分子の高分子末端がアミノ基となるように、テトラカルボン酸二無水物に比べジアミン化合物を過剰にし、有機極性溶媒中で重合反応させてポリアミック酸を製造し、さらにこのポリアミック酸を用いることにより製造される。したがって、本実施の形態におけるポリイミド系高分子の重合時には、重合反応に関与するジアミン化合物の当量数は、テトラカルボン酸二無水物の当量数に対して高めに設定される。
【0046】
かかる重合反応においてジアミン化合物に対するテトラカルボン酸二無水物のモル比(α=(テトラカルボン酸二無水物の当量数)/(ジアミン化合物の当量数))は、0.85以上0.999以下の範囲が好ましく、より好ましくは0.95以上0.985以下の範囲である。
【0047】
前記モル比が0.90未満である場合、樹脂の分子量が小さくなり、例えば本実施の形態におけるポリアミック酸をポリイミド無端ベルトとしたときの力学性能が低くなる場合があり、前記モル比が0.99を越えると、酸性カーボンブラックその相互作用が小さくなる場合がある。
【0048】
また、本実施の形態におけるポリアミック酸の作製時に、前記一般式(1)に示す構造中に、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオンと、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートからなる群から選択される第3成分をさらに含有してもよい。前記第3成分を含有することで、後述する脱水イミド化反応後に得られるポリイミド系高分子の剛性の度合いが調整される。
【0049】
上述のようにして得られたポリアミック酸を溶液中で脱水イミド化することで、ポリイミド系高分子を製造する。
【0050】
(イミド化反応)
本実施の形態に使用されるポリイミド系高分子は、上記ポリアミック酸を、(i)加熱、または(ii)脱水剤および触媒を作用させ、ポリアミック酸中のアミック酸基の一部を脱水閉環反応によってイミド基に転換することによって得られる。
【0051】
加熱によるイミド化反応における加熱温度は、通常60℃から250℃とされ、好ましくは100℃から200℃とされる。加熱温度が60℃未満では脱水閉環が十分に進行せず、加熱温度が200℃を超えると得られる重合体が分子量の小さいものになる。
【0052】
一方、ポリアミック酸溶液中に脱水剤および触媒を添加することによるイミド化反応において、脱水剤は、1価カルボン酸無水物であれば特に限定はされないが、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物が用いられる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して0.01当量から3当量とするのが好ましい。
【0053】
触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができるが、これらに限定されるものではない。触媒の使用量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して、0.01当量から5当量とするのが好ましい。
【0054】
脱水閉環は、ポリアミック酸溶液中に脱水剤および環化触媒を添加し、必要に応じて加熱することにより行われる。脱水閉環の反応温度は、通常0℃から180℃、好ましくは60℃から150℃とされる。
【0055】
本実施の形態におけるポリイミド製無端ベルトに使用されるポリイミド系高分子は、分子構造中アミック酸基とイミド基中に占めるイミド基のモル分率で定義されるイミド化率が50%から100%であることが好ましい。イミド化率が50%未満であると、ベルト製造時の焼成工程でイミド化反応が十分に進行せず、ベルトが脆弱となってしまうためである。
【0056】
触媒及び脱水剤によりイミド化されたポリイミド溶液またはポリイミド−ポリアミック酸共重合溶液から、作用させた脱水剤、触媒を除去する方法として、減圧加熱による留去または再沈殿法が用いられる。減圧加熱には真空下80℃から120℃の温度で行われ、触媒として使用される3級アミン、未反応の脱水剤及び加水分解されたカルボン酸が留去される。
【0057】
また、再沈殿法には、触媒として使用される3級アミン、未反応の脱水剤及び加水分解されたカルボン酸を溶解させ、部分イミド化されたポリアミック酸を溶解させない大過剰に貧溶媒中に反応液を加えることによって行われる。貧溶剤としては、特に制限はなく、水や、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶剤、アセトンやメチルエチルケトンのようなケトン系溶剤、ヘキサンなどのような炭化水素系溶剤、などが使用される。析出するポリイミド重合体またはポリイミド−ポリアミック酸共重合体をろ別・乾燥後、再度NMP等の溶剤に溶解させて、使用される。
【0058】
[テトラカルボン酸二無水物]
特定ポリイミドの製造に用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、特に制限はなく、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物も使用してもよい。但し、50モル%以上含有される特定構造のポリイミド系高分子に用いられるテトラカルボン酸二無水物は、前記一般式(1)のR1、R3が上記いずれかから選択される構造を有するテトラカルボン酸二無水物である。
【0059】
芳香族系のテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等を挙げられる。
【0060】
脂肪族のテトラカルボン酸二無水物としては、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等を挙げられる。
【0061】
前記テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系のテトラカルボン酸二無水物が好ましく、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物がより好ましい。
【0062】
これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で使用しても、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0063】
[ジアミン化合物]
特定ポリイミドの製造に用いられるジアミン化合物は、分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物であれば特に限定されない。但し、50モル%以上含有される特定構造のポリイミド系高分子に用いられるジアミン化合物は、前記一般式(1)のR2、R4、R5が上記いずれかから選択される構造を有するジアミン化合物である。
【0064】
前記ジアミン化合物としては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミン等が挙げられる。
【0065】
ジアミン化合物としては、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、が好ましい。これらのジアミン化合物は単独で使用しても、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0066】
[テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との組み合わせ]
特定ポリイミドとしては、好ましくは、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族系ジアミンと含むものが好ましい。
【0067】
[溶媒]
特定ポリイミド前駆体たるポリアミック酸を重合する際に使用される溶媒としては、有機極性溶媒が挙げられ、具体的には、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒;フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;ブチルセロソルブ等のセロソルブ系;及びヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。特定ポリアミック酸の重合には、前記有機極性溶媒を単独又は混合して使用するのが好ましいが、更にキシレン、トルエンの如き芳香族炭化水素を使用してもよい。特定ポリアミック酸を重合する際に使用される溶媒は、ポリアミック酸を溶解するものであれば特に限定されない。
【0068】
特定ポリイミド前駆体たるポリアミック酸を重合する際の固形分濃度は、特に規定されるものではないが、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上30質量%以下がより好ましい。
【0069】
特定ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を重合する際の重合温度としては、0℃以上80℃以下の範囲が好ましい。
【0070】
(酸性カーボンブラック)
酸性カーボンブラックは、カーボンブラックを酸化処理することで、表面にカルボキシル基、キノン基、ラクトン基、水酸基等を付与して製造される。この酸化処理は、高温(例えば、300℃以上800℃以下)雰囲気下で、空気と接触され、反応させる空気酸化法、常温(例えば25℃、以下同様)下で窒素酸化物やオゾンと反応させる方法、及び高温(例えば300以上800℃以下)下での空気酸化後、低い温度(例えば20℃以上、200℃以下)のもとでオゾン酸化する方法などにより行われる。
【0071】
具体的には、酸性カーボンブラックは、例えばコンタクト法により製造される。このコンタクト法としては、チャネル法、ガスブラック法等が挙げられる。また、酸性カーボンブラックは、ガス又はオイルを原料とするファーネスブラック法により製造され得る。更に必要に応じて、これらの処理を施した後、硝酸などで液相酸化処理を行ってもよい。
【0072】
なお、酸性カーボンブラックは、コンタクト法で製造され得るが、密閉式のファーネス法によって製造するのが一般的である。ファーネス法では通常高pH・低揮発分のカーボンブラックしか製造されないが、これに上述の液相酸処理を施してpHを調整してもよい。このためファーネス法による製造により得られるカーボンブラックで、後工程処理によりpHが7未満となるように調節されたカーボンブラックも、適用し得る。
【0073】
酸性カーボンブラックのpH値は7未満であるが、pH4.4以下が好ましく、pH4.0以下がより好ましい。
ここで、酸性カーボンブラックのpHは、カーボンブラックの水性懸濁液(純水100mlにカーボンブラック1gを分散、懸濁する)を調整し、ガラス電極で測定することで求められる。また、酸性カーボンブラックのpHは、酸化処理工程での処理温度、処理時間等の条件によって、調整される。
【0074】
酸性カーボンブラックは、例えば、その揮発成分の含有量が1質量%以上25質量%以下が好ましく、より好ましくは2質量%以上20質量%以下、更に好ましくは3.5%以上15%以下である。
【0075】
酸性カーボンブラックとして、具体的には、例えば、デグサ社製の「プリンテックス150T」(pH4.5、揮発分10.0%)、同「スペシャルブラック350」(pH3.5、揮発分2.2%)、同「スペシャルブラック100」(pH3.3、揮発分2.2%)、同「スペシャルブラック250」(pH3.1、揮発分2.0%)、同「スペシャルブラック5」(pH3.0、揮発分15.0%)、同「スペシャルブラック4」(pH3.0、揮発分14.0%)、同「スペシャルブラック4A」(pH3.0、揮発分14.0%)、同「スペシャルブラック550」(pH2.8、揮発分2.5%)、同「スペシャルブラック6」(pH2.5、揮発分18.0%)、同「カラーブラックFW200」(pH2.5、揮発分20.0%)、同「カラーブラックFW2」(pH2.5、揮発分16.5%)、同「カラーブラックFW2V」(pH2.5、揮発分16.5%)、キャボット社製「MONARCH1000」(pH2.5、揮発分9.5%)、キャボット社製「MONARCH1300」(pH2.5、揮発分9.5%)、キャボット社製「MONARCH1400」(pH2.5、揮発分9.0%)、同「MOGUL−L」(pH2.5、揮発分5.0%)、同「REGAL400R」(pH4.0、揮発分3.5%)等が挙げられる。
【0076】
酸性カーボンブラックの含有量は、本実施の形態における可溶性ポリイミド組成物中、前記ポリイミド系高分子(特定ポリイミド)100質量部に対して、20質量部以上40質量部以下であることが好ましく、25質量部以上35質量部以下であることがより好ましい。
【0077】
可溶性ポリイミド組成物を調製する際に、酸性カーボンブラックを分散するために使用する分散剤としては、低分子量でも高分子量でもよく、カチオン系、アニオン系、非イオン系から選ばれるいずれの種類の分散剤を使用してもよい。分散剤として非イオン系高分子を使用することが好ましい。
【0078】
−非イオン系高分子−
非イオン系高分子としては、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、ポリ(N,N’−ジエチルアクリルアジド)、ポリ(N−ビニルホルムアミド)、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリ(N−ビニルフタルアミド)、ポリ(N−ビニルコハク酸アミド)、ポリ(N−ビニル尿素)、ポリ(N−ビニルピペリドン)、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)、ポリ(N−ビニルオキサゾリン)等が挙げられ、単独又は複数の非イオン系高分子を添加してもよい。本実施形態においては、カーボンブラックの分散性がより高まることから、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)を含むことが好ましい。
【0079】
非イオン系高分子の配合量は、本実施の形態のポリイミド系高分子100質量部に対して、0.2質量部以上3質量部以下であることが好ましい。
【0080】
本実施の形態における可溶性ポリイミド組成物の製造方法の一例を、以下に説明する。
【0081】
まず、前記テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分を有機溶媒中で重合反応させて得られたポリアミック酸溶液を、メタノールなどの貧溶媒中に添加して一旦ポリアミック酸を析出させ再沈殿精製させる。析出したポリアミック酸ろ別した後、γ−ブチロラクトンなどの溶媒に再溶解させ、ポリアミック酸溶液を得てもよい。次にポリアミック酸溶液を、(i)加熱または(ii)脱水剤及び触媒を作用させ、ポリアミック酸中のアミック酸基の一部を脱水閉環反応によってイミド基に転換させ、イミド化反応により、ポリイミド系高分子の溶液を得る。次に、ポリイミド系高分子の溶液に、酸性カーボンブラックを予め定められた量添加した後混合し、酸性カーボンブラックを分散させる。
【0082】
特定カーボンブラックを分散させ、その凝集体を壊砕する方法としては、ミキサーや攪拌子による攪拌、平行ロール、超音波分散などの物理的手法、さらには分散剤の導入などの化学的手法が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
(可溶性ポリイミド組成物の粘度)
可溶性ポリイミド組成物の粘度は特に規定されるものではないが、ポリイミド無端ベルト製造時の塗工プロセスのしやすさより、適当な粘度を発現する範囲が選択される。塗工上最適な粘度範囲としては、一般に1Pa・s以上100Pa・s以下が望ましく、その粘度となる固形分濃度としては、塗工溶媒(例えば有機極性溶媒)100質量部に対して10質量%以上40質量%以下が望ましい。尚、前記粘度はE型粘度計で測定したものであり、測定方法は以下の通りである。
【0084】
東機産業社製E型回転粘度計TV−20Hを使用して、標準ローター(1°34“×R24)にて測定した。
【0085】
<測定条件>
測定温度:22℃、
回転数:10rpm(50〜100Pa・s以上)、0.5〜10rpm(50Pa・s未満)。
【0086】
(ポリイミド系高分子の固形分率)
また、本実施の形態のポリイミド系高分子は、その可溶性ポリイミド組成物中の固形分濃度が、ベルト材料として予め定められた厚みを得る観点から10質量%以上であることが好ましい。この固形分濃度として望ましくは、15質量%以上であり、その上限は50質量%である。
【0087】
(ポリイミド系高分子のイミド化率)
可溶性ポリイミド組成物中のポリイミド系高分子のイミド化率は、50%以上であることが好ましい。50%未満の場合、ベルトの力学強度を向上させるため、成型加工中に熱処理によりイミド化反応を起こす必要がある。イミド化率の測定は、以下の方式で行われる。
【0088】
(イミド化率の測定)
(i)ポリイミド系高分子溶液を、固形分1質量%に希釈する。
(ii)シリコーンウェハー上に、スピンコート(1000rpm×20秒)して、塗膜を作製する。
(iii)塗膜試料を380℃に調温されたオーブン中にいれ、30分間熱処理を行い、イミド化を完終させる(100%イミド標準試料を作製する)。
(iv)上記(i)、(ii)と同様に、測定するポリイミド系高分子の溶液(固形分1質量%)をシリコーンウェハー上にスピンコート(1000rpm×20秒)して、塗膜を作製する。測定に塗膜形成された塗膜試料をシリコーウェハーごと、テトラヒドフラン(THF)溶剤中に12時間、浸漬して、塗膜中に残存するNMPを溶出・THFに置換する。
(v)試料をTHF溶剤中より取り出し、25℃にて減圧(10mmHg、1.3kPa)にて12時間乾燥を行う(測定用ポリイミド系高分子試料を作製する)。
(vi)フーリエ変換赤外分光光度計(堀場製作所製FT−730)を用いて、100%イミド標準試料、測定用ポリイミド系高分子試料の赤外吸光スペクトルを測定した。100%イミド標準試料の1500cm−1付近の芳香環由来吸光ピーク(Ab’(1500cm−1))に対する、1780cm−1付近のイミド結合由来の吸光ピーク(Ab’(1780cm−1))の比をI’(100)を求める。同様にして、ポリイミド系高分子試料について測定を行い、1500cm−1付近の芳香環由来吸光ピーク(Ab(1500cm−1))に対する、1780cm−1付近のイミド結合由来の吸光ピーク(Ab(1780cm−1))の比をI(100)を求めた。
【0089】
式{I(100)/I’(100)}より、ポリイミド系高分子のイミド化率を求めた。すなわち、次の通りである。
【0090】
[数1]
I’(100)=(Ab’(1780cm−1))/(Ab’(1500cm−1))
I(100)=(Ab(1780cm−1))/(Ab(1500cm−1))
(イミド化率)=I(100)/I’(100)
【0091】
<ポリイミド無端ベルト及びその製造方法>
既述の本実施の形態の可溶性ポリイミド組成物を円筒状基材表面に塗布する工程と、該円筒状金型上に塗布された可溶性ポリイミド組成物を加熱処理して、可溶性ポリイミド組成物に含まれる溶媒を留去するとともに、未反応として残存しているアミック酸構造部をイミド転化する工程と、を経ることにより得られる。
【0092】
次に、本実施形態のポリイミド無端ベルトの製造方法の一例を具体的に示す。
【0093】
先ず、本実施形態の可溶性ポリイミド組成物を円筒状基材の表面に塗布する。円筒状基材としては、円筒形金型が好ましく、金型の代わりに、樹脂製、ガラス製、セラミック製など、従来既知の様々な素材の成形型が、本実施形態に係る基材として良好に動作し得る。
【0094】
また、基材の表面にガラスコートやセラミックコートなどを設けること、また、シリコーン系やフッ素系の剥離剤を使用することも適宜選択されうる。
【0095】
更に、円筒状基材に対するクリアランス調整がなされた膜厚制御用基材を、円筒状基材に通し平行移動させることで、余分な溶液を排除し円筒状基材の溶液の厚みを均一にする。円筒状基材上への溶液塗布の段階で、溶液の均一な厚み制御がなされていれば、特に膜厚制御用基材を用いなくてもよい。
【0096】
円筒状基材の表面とは、円筒型の基材の内面/外面のいずれも使用しえる。基材内面に塗工を行うと、成形されるポリイミド無端ベルトの機能面であるベルト外面が、基材面に接触するため、基材からの汚染が生じ、ポリイミド無端ベルトの特性が劣化することがある。一方、基材外面に塗布を行うと、成形されるポリイミド無端ベルトの機能面であるベルト外面に対する金型からの汚染は防止できるものの乾燥・焼成工程において雰囲気相に接触した状態で成形される。そのため、導電性高分子の酸化劣化、ドーパントの揮発などが生じることがある。そのため、円筒状基材の塗布面に対応した適当な工程条件を個別に講じる必要がある。
【0097】
(塗布溶剤)
可溶性ポリイミド組成物を円筒状基材の表面に塗布するときに用いる塗布溶媒としては可溶性ポリイミド組成物に含まれる溶媒であり、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどが挙げられ、これらを単独又は混合物として用いるのが好ましい。
【0098】
塗布溶媒は、既述の前駆体であるポリアミック酸合成時から使用しても、ポリイミド系高分子合成後に予め定められた溶媒に置換してもよい。溶媒の置換には、ポリアミック酸溶液またはポリイミド系高分子溶液に予め定められた量の溶剤を添加して希釈する方法、ポリマーを再沈殿した後に予め定められた溶媒中に再溶解させる方法、溶剤を徐々に留去しながら予め定められた溶媒を添加して組成を調整する方法のいずれかでもよい。
【0099】
次に、可溶性ポリイミド組成物を塗布した円筒状基材を、円周方向に回転させながら塗布膜圧をレベリングさせながら、加熱処理を行う。円筒状基材の回転速度は1rpmから100rpmの範囲で、塗工液の粘度によって調整し、塗工液がゆっくりと流動させながら、成型体面内が等しい膜厚になるように調整する。加熱処理により、塗工膜の含有溶媒は20質量%以上好ましくは60質量%以上を揮発するまで乾燥を行う。この際、溶媒は膜中に残留していても構わず、塗膜表面が乾燥し、傾けても流動しない状態であれば問題ない。乾燥温度は、50℃から200℃の温度範囲で乾燥を行うことが好ましい。
【0100】
乾燥終了後、残留溶媒を確実に留去し、またポリイミド中に残存するアミック酸構造を脱水閉環させてイミド転化させるため、高温にて処理をする。前述の乾燥処理によって、塗膜が傾けても流動しない状態となっているため、かかる加熱処理では円筒状金型を回転させなくともよい。残留溶剤を留去するだけ目的の場合、加熱温度は、150℃から250℃の範囲で処理することが望ましい。また、イミド転化を伴う場合は、イミド転化反応を十分に進行させることが好ましい。この際の加熱温度は、例えば、150℃以上350℃以下とされ、望ましくは200℃以上300℃以下とされるが、原料のテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類、によって、それぞれ異なり、イミド化が完結する温度に設定しなければならない。イミド化が不充分であると、機械的特性及び電気的特性に劣るものとなる場合がある。
【0101】
一方、イミド転化として、以下の化学的イミド化してもよい。化学的イミド化の方法は、ポリアミック酸組成物中に脱水剤及び/又は触媒を添加し化学的にイミド化反応を進行させる。脱水剤は、1価カルボン酸無水物であれば特に限定はされない。例えば、無水酢酸、プロピオン酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、ブタン酸無水物及びシュウ酸無水物などの酸無水物から選ばれる1種類又は2種類以上を用いてもよい脱水剤の使用量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して0.01モル以上2モル以下とするのが好ましい。
【0102】
触媒としては、例えばピリジン、ピコリン、コリジン、ルチジン、キノリン、イソキノリン、トリエチルアミンなどの3級アミンから選ばれる1種類又は2種類以上を用いてもよいが、これらに限定されるものではない。触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01モル以上2モル以下とするのが好ましい。
【0103】
この化学的イミド化反応は、ポリアミック酸溶液中に脱水剤及び/又は触媒を添加し必要に応じて加熱することにより行われる。脱水閉環の反応温度は、通常0℃以上180℃以下、望ましくは60℃以上150℃以下とされる。
【0104】
部分的にイミド化されていれば、特に制限はないが、イミド化された構造と未反応のアミック酸構造との組成比は、0/100(モル/モル)乃至80/20(モル/モル)であることが好ましい。イミド基とアミック酸基との組成比が、80/20(モル/モル)を超えると、ポリアミック酸−ポリイミド共重合体が不溶化する可能性がある。
【0105】
ポリアミック酸に、作用させた脱水剤及び/又は触媒は除去しなくとも良いが、以下の方法で除去しても良い。作用させた脱水剤及び/又は触媒を除去する方法としては、減圧加熱、又は再沈殿法を用い得る。減圧加熱は、真空下80℃以上120℃以下の温度で行われ、触媒として使用される3級アミン、未反応の脱水剤及び加水分解されたカルボン酸を留去する。また、再沈殿法は、触媒、未反応の脱水剤及び加水分解されたカルボン酸を溶解させ、ポリアミック酸−ポリイミド共重合体は溶解させない貧溶媒を用い、この貧溶媒の大過剰中に、反応液を加えることによって行われる。貧溶剤としては、特に制限はなく、水や、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶剤、アセトンやメチルエチルケトンの如きケトン系溶剤、ヘキサンなどの如き炭化水素系溶剤、などが使用され得る。析出するポリアミック酸−ポリイミド共重合体は、ろ別・乾燥後、再度γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン等の溶剤に溶解させる。
【0106】
イミド転化では、ポリアミック酸の脱水閉環反応のため、ポリアミック酸からポリイミドへの転化が起こる。その結果、反応により脱離した水分量相当の重量減少が発生し、ポリイミド無端ベルト中の、ポリイミド樹脂成分に対する酸性カーボンブラック含有率が、ポリアミック酸樹脂成分に対する導電性高分子含有率に比べて増加する。その後、金型(基材)から樹脂を取り外し、目的のポリイミド無端ベルトを得ることができる。
【0107】
以上、本実施形態のポリイミド無端ベルトの製造方法について説明したが、本実施形態はこれらの実施の態様のみに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施しうるものである。尚、金型から取り外さずにロールとして用いてもよい。
【0108】
(耐折れ特性)
本実施の形態のポリイミド無端ベルトは、ポリイミド無端ベルトから切り出した10片の試料を、MIT試験機により引張り荷重1.0kg、屈折角度135°の条件で測定したときの試験片が破断するまでの往復折り曲げ回数(耐折回数)Nを測定した。各10片の試料について上記測定を行い、得られた往復折り曲げ回数(耐折回数)Nを求め、その平均値を代表値とした。
【0109】
(表面抵抗率測定)
尚、ポリイミド無端ベルトの外周面の表面抵抗率ρsは以下のようにして測定した。測定するポリイミド無端ベルトを円形電極(三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ:円柱状電極部の外径Φ16mm、リング状電極部の内径Φ30mm、外径Φ40mm)を用い、JIS K6911(1995)に従って測定した。具体的には、22℃/55%RH環境下、電圧100Vを印加し、10秒後における電流を測定し、表面抵抗率(ρs)の常用対数値を算出した。
【0110】
表面抵抗率の測定方法の詳細は、以下の通りである。図1に示すように、表面抵抗率の測定に用いる円形電極は、第一電圧印加電極Aと板状絶縁体Bとを備える。第一電圧印加電極Aは、円柱状電極部Cと、該円柱状電極部Cの外径よりも大きい内径を有し、且つ円柱状電極部Cを囲む円筒状のリング状電極部Dとを備える。第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部C及びリング状電極部Dと板状絶縁体Bとの間に測定試料であるポリイミド無端ベルトTを挟持し、第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部Cとリング状電極部Dとの間に電圧V(V)を印可したときに流れる電流I(A)を測定し、下記式により表面抵抗率ρs(LogΩ/□)を求める。
[数2]
式:ρs=π×(D+d)/(D−d)×(V/I)
ここで、上記式中、d(cm)は円柱状電極部Cの外径を示す。D(cm)はリング状電極部Dの内径を示す。
【0111】
<画像形成装置>
本実施形態の画像形成装置は、無端ベルトを1本以上搭載し、前記1本以上の無端ベルトのうちの少なくとも1本が、既述の本実施形態のポリイミド無端ベルトである。なお、本実施形態無端ベルトは、電子写真複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ、これらの複合装置といった電子写真方式の画像形成装置における中間転写ベルト、転写搬送ベルト、搬送ベルト、定着ベルトなど種々の用途に供することが可能である。
【0112】
無端ベルトとしては、画像形成時に無端ベルトの外周面が記録媒体に対して接触と剥離とを繰り返すものであれば特に限定されないが、例えば、中間転写ベルト、転写搬送ベルト、定着ベルトなどが挙げられる。そして、これらの無端ベルトとして本実施形態の無端ベルトを利用することができる。
【0113】
このため、画像形成装置の無端ベルトとして本実施形態の無端ベルトを用いた部分では、低温低湿環境下においても、紙詰まりの発生が抑制される。
【0114】
本実施の形態の画像形成装置の構成としては、無端ベルトを少なくとも1本以上搭載したものであれば、公知の構成が採用される。
【0115】
本実施形態の画像形成装置の典型的な構成としては、例えば、像保持体と、像保持体表面を帯電する帯電手段と、像保持体表面を露光し静電潜像を形成する露光手段と、像保持体表面に形成された静電潜像を現像剤にて現像し、トナー像を形成する現像手段と、像保持体表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体表面に転写されたトナー像を定着する定着手段と、トナー像を記録媒体に転写した後の像保持体表面に付着したトナーやゴミ等の付着物を除去するクリーニング手段とを、備えたものが挙げられ、必要に応じてその他公知の手段を更に備えていてもよい。
【0116】
上述した構成を有する画像形成装置において、中間転写ベルトを用いる場合は、中間転写方式によりトナー像の転写が行われる。この場合、像保持体表面に形成されたトナー像が、1次転写部にて中間転写体外周面に転写された後、記録媒体が中間転写体外周面に保持された状態で2次転写部へと搬送され、2次転写部にて、中間転写体外周面から記録媒体に転写される。
【0117】
また、上述した構成を有する画像形成装置において、転写搬送ベルトを用いる場合は、像保持体表面に形成されたトナー像が転写搬送ベルトの外周面に転写された後、記録媒体が転写搬送ベルトにより定着手段へと搬送される。
【0118】
さらに、上述した構成を有する画像形成装置において、定着手段として、定着ベルトを用いたものも利用できる。この定着手段は、互いに押圧するように対向配置された一対の定着部材を少なくとも備えたものであるが、少なくともいずれか一方の定着部材が定着ベルトであってもよい。
【0119】
なお、定着ベルトを備えた定着手段(定着装置)の具体的な構成としては、例えば、1つ以上の駆動部材と、前記1つ以上の駆動部材により従動回転可能な無端ベルト(定着ベルト)と、押圧部材とを少なくとも備え、前記1つ以上の駆動部材のいずれか1つの駆動部材表面と、前記無端ベルト外周面とが、前記無端ベルト内周面に接して配置され、前記無端ベルト外周面を前記駆動部材表面へと押圧する前記押圧部材により圧接部を形成しているものが挙げられる。
【0120】
なお、定着手段は、上記に説明した構成・機能の他にも必要に応じて他の構成・機能を有していてもよく、例えば、無端ベルトの内周面に潤滑剤を塗布して用いてもよい。潤滑剤としては公知の液体状の潤滑剤(例えば、シリコーンオイル等)を用いることができる。また潤滑剤は、無端ベルト内周面と接して設けられたフェルト等を介して連続的に供給することができる。
【0121】
また、定着手段は、押圧部材により、圧接部の無端ベルト軸方向の圧力分布が調整できることが好ましい。例えば、潤滑剤を用いる場合には、圧力分布を調整することにより、潤滑剤を無端ベルトの一端に寄せたり、中央部に集めたり等、内周面に塗布された潤滑剤の存在状態を任意に制御することができる。このため、例えば、無端ベルトの一端に余分な潤滑剤を集めて回収したり、無端ベルトの中央部に潤滑剤を移動させるようにしたりすることができ、無端ベルト端部からの潤滑剤の漏れによる装置内の汚染を防ぐことができる。
【0122】
なお、この圧力分布の調整は、潤滑剤を用いると共に、更に使用する無端ベルトの内周面に既述した筋状凹凸粗さが付与されている場合に特に有用である。この場合、筋状凹凸粗さの筋の方向も考慮して圧接部の圧力分布を調整することにより、内周面に塗布された潤滑剤の存在状態の制御がより容易となる。
【0123】
次に、本実施形態の画像形成装置の具体例について図面を用いてより詳細に説明する。なお、以下に示す具体例において、定着手段としては、1対の定着ロールを備えたものが用いられているが、少なくとも一方の定着ロールを定着ベルトに置き換えたものでもよい。
【0124】
図2は、本実施形態の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。この画像形成装置は、中間転写ベルトとして本実施形態の無端ベルトを用いている。
【0125】
図2に示す画像形成装置100は、感光体ドラム101Y、101M、101C、101BKを備えており、矢線A方向への回転に伴いその表面には周知の電子写真プロセス(図示せず)によって画像情報に応じた静電潜像が形成される(なお、図2中、帯電手段およびクリーニング手段は不図示)。
【0126】
そして、この感光体ドラム101Y、101M、101C、101BKの周囲には、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(BK)の各色に対応した現像器105〜108が配設されており、感光体ドラム101Y、101M、101C、101BKに形成された静電潜像をそれぞれの現像器105〜108で現像してトナー像が形成される。
【0127】
従って、例えば、感光体ドラム101Yに書き込まれた静電潜像はイエローの画像情報に対応したものであり、この静電潜像はイエロー(Y)のトナーを内包する現像器105で現像され、感光体ドラム101Y上にはイエローのトナー像が形成される。
【0128】
中間転写ベルト102は感光体ドラム101Y、101M、101C、101BKの表面に接触されるように配置されたベルト状の中間転写ベルトであり、複数のロール117〜119に張架されて矢線B方向へ回転する。中間転写ベルト102には、既述の本実施形態の無端ベルトが適用されている。
【0129】
上記感光体ドラム101Y、101M、101C、101BKに形成された未定着トナー像は、感光体ドラム101Y、101M、101C、101BKと上記中間転写ベルト102とが接するそれぞれの1次転写位置で、順次感光体ドラム101Y、101M、101C、101BKから中間転写ベルト102の表面に各色のトナー像が重ね合わされて転写される。
【0130】
この1次転写位置において、中間転写ベルト102の裏面側には中間転写ベルト102の不必要な領域へ転写電界が作用するのを防止するための遮蔽部材121〜124により転写前接触領域への帯電を防止したコロナ放電器109〜112が配設されており、このコロナ放電器109〜112にトナーの帯電極性と逆極性の電圧を印加することで、感光体ドラム101Y、101M、101C、101BK上の未定着トナー像は中間転写ベルト102外周面に静電的に転写される。この1次転写手段は、静電力を利用したものであれば、コロナ放電器に限らず電圧が印加されたロールやブラシなどでも良い。
【0131】
このようにして中間転写ベルト102に1次転写された未定着トナー像は、中間転写ベルト102の回転に伴って記録媒体103の搬送経路に面した2次転写位置へと搬送される。2次転写位置では2次転写ロール120と中間転写ベルト102の裏面側に接している背面ロール117とが中間転写ベルト102を挟んで配設されている。
【0132】
送りローラ126によって所定のタイミングで給紙部113から搬出された記録媒体103は、この2次転写ロール120と中間転写ベルト102との接触部に挿通される。この時、上記2次転写ロール120とロール117との接触部に電圧を印加しており、中間転写ベルト102に保持された未定着トナー像は上記2次転写位置において記録媒体103に転写される。
【0133】
そして、未定着トナー像が転写された記録媒体103は中間転写ベルト102から剥がされ、搬送ベルト115によって加熱ロール127と加圧ロール128とが対向して設けられた定着器の加熱ロール127と加圧ロール128との接触部に送り込まれて未定着トナー像の定着処理がなされる。このとき、2次転写工程と定着工程とを同時に行う転写同時定着工程の装置構成としてもよい。
【0134】
中間転写ベルト102は、クリーニング装置116が備えられている。このクリーニング装置116は中間転写ベルト102と接離自在に配設されており、2次転写される迄、中間転写ベルト102から離間している。
【0135】
図3は、本実施形態の画像形成装置の他の例を示す概略構成図である。この画像形成装置は、転写搬送ベルトとして本実施形態の無端ベルトを適用した形態である。
【0136】
図3に示す画像形成装置200は、感光体ドラム、帯電手段、現像器および感光体ドラムクリーナを備えた画像形成ユニット200Y、200M、200C、200BKと、転写搬送ベルト206と、転写ロール207Y、207M、207C、207BKと、記録媒体搬送ロール208と、定着手段209とを備えている。この転写搬送ベルト206として、本実施形態の無端ベルトを備える。
【0137】
画像形成ユニット200Y、200M、200C、200BKは、矢印A方向(時計回り方向)に所定の周速度をもって回転可能な像保持体である感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKが備えられている。感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKの周囲には、帯電手段202Y、202M、202C、202BKと、露光手段203Y、203M、203C、203BKと、各色現像器(イエロー現像器204Y、マゼンタ現像器204M、シアン現像器204C、ブラック現像器204BK)と、感光体クリーナー205Y、205M、205C、205BKとがそれぞれ配置されている。
【0138】
画像形成ユニット200Y、200M、200C、200BKは、転写搬送ベルト206に対して4つ並列に、画像形成ユニット200Y、200M、200C、200BKの順に配置されているが、画像形成ユニット200BK、200Y、200C、200Mの順等、画像形成方法に合わせて適当な順序が設定される。
【0139】
転写搬送ベルト206は、支持ロール210、211、212、213によって、矢印B方向(反時計回り方向)に感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKと同じ周速度をもって回転可能になっており、支持ロール212、213の中間に位置するその一部が感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKとそれぞれ接するように配置されている。転写搬送ベルト206は、クリーニング装置214が備えられている。
【0140】
転写ロール207Y、207M、207C、207BKは、転写搬送ベルト206の内側であって、転写搬送ベルト206と感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKとが接している部分に対向する位置にそれぞれ配置され、感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKと、転写搬送ベルト206を介してトナー画像を記録媒体Pに転写する転写領域を形成している。
【0141】
定着手段209は、転写搬送ベルト206と感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKとのそれぞれの転写領域を通過した後に搬送できるように配置されている。
【0142】
記録媒体搬送ロール208により、記録媒体Pは転写搬送ベルト206に搬送される。
【0143】
画像形成ユニット200Yにおいては、感光体ドラム201Yを回転駆動させる。これと連動して帯電手段202Yが駆動し、感光体ドラム201Yの表面を所定の極性・電位に帯電させる。表面が帯電された感光体ドラム201Yは、次に、露光手段203Yによって像様に露光され、その表面に静電潜像が形成される。
【0144】
続いて該静電潜像は、イエロー現像器204Yによって現像される。すると、感光体ドラム201Yの表面にトナー画像が形成される。なお、このときのトナーは一成分系のものでもよいし二成分系のものでもよいが、ここでは二成分系トナーである。
【0145】
このトナー画像は、感光体ドラム201Yと転写搬送ベルト206との転写領域を通過すると同じに、記録媒体Pが静電的に転写搬送ベルト206に吸着して転写領域まで搬送され、転写ロール207Yから印加される転写バイアスにより形成される電界により、記録媒体Pの外周面に順次、転写される。
【0146】
この後、感光体ドラム201Y上に残存するトナーは、感光体ドラムクリーナ205Yによって清掃・除去される。そして、感光体ドラム201Yは、次の転写サイクルに供される。
【0147】
以上の転写サイクルは、画像形成ユニット200M、200C、200BKでも同様に行われる。
【0148】
転写ロール207Y、207M、207C、207BKによってトナー画像を転写された記録媒体Pは、さらに定着手段209に搬送され、定着が行われる。以上により記録媒体上に所望の画像が形成される。
【0149】
なお、記録媒体としては、通常は、紙製の記録媒体(いわゆる用紙)や、プラスチックフィルムからなる記録媒体(いわゆるOHPシート)などの比較的柔軟性の高い材料からなるシート状の部材が用いられるが、図3に一例を示した転写搬送ベルトを用いた画像形成装置では、比較的剛性の高い材料からなる板状の部材(例えば、厚みのあるプラスチック製のカードなど)も記録媒体として利用される。
【0150】
以上に、本実施形態の無端ベルトを用いた電子写真方式の画像形成装置について説明したが、本実施形態の無端ベルトは、電子写真方式の画像形成装置に限らず、無端ベルトを1本以上搭載した電子写真方式以外の公知の画像形成装置(例えば、例えば用紙搬送用の無端ベルトを備えたインクジェット記録装置など)にも適用される。
【0151】
以上、説明した画像形成装置は、これらの実施の態様に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施しうるものである。
【実施例】
【0152】
以下、実施例を用いて本実施形態を説明するが、本実施形態はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」はすべて「質量部」を意味する。
【0153】
[ポリイミド系高分子溶液の作製]
合成例1:
N−メチル−2−ピロリドン(以下「NMP」と略す)800g中に、ジアミン化合物として、m−フェニレンジアミン19.26g(以下、m−PDA:178mmol)、2,2’−ビス{4−(アミノフェノキシ)フェニル}プロパン73.1g(以下、BAPP:178mmol)を加え、常温(25℃)で攪拌させながら溶解した。次いで、テトラカルボン酸二無水物として、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物57.38g(以下、BTDA:178mmol)、第3成分として1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン50.26g(以下、TDA:167mmol)を徐々に添加した。テトラカルボン酸二無水物の添加・溶解後、反応液の温度を60℃まで加熱して、その後反応液温度を保持したまま20時間重合反応を行った。反応液に、触媒としてピリジン56.34g(以下、Py:712mmol)と、脱水剤として無水酢酸72.20g(以下、AcO:712mmol)を加え、100℃にて4時間反応を行った。温度を維持しながら10mmHg(1.3kPa)にて減圧して、触媒、脱水剤、脱水剤分解物を留去した。#800のステンレスメッシュを用いてろ過して室温(25℃)まで冷却をして25℃における溶液粘度5.0Pa・s(東機産業社製、E型回転粘度計TV−20Hを用い、測定温度:22℃、回転数10rpmの条件にて測定)のポリイミド系高分子溶液(PI−1)を得た。
【0154】
得られたポリアミック酸樹脂の組成は、BTDA/TDA/m−PDA/BAPP=50/47/50/50(モル比)となり、アミノ基が分子末端となる構造であった。
【0155】
合成例2〜合成例13:
テトラカルボン酸二無水物、ジアミン化合物、触媒、脱水剤を表1のようして、ポリイミド系高分子PI−2〜PI−13を得た。いずれのポリイミド系高分子樹脂についても、ジアミン化合物過剰のため、アミノ基が分子末端となる構造であった。
【0156】
合成例14:
合成例1に従い、ポリアミック酸を重合した。イミド化反応を行わず、ポリアミック酸溶液PI−14を得た。
【0157】
合成例15〜16:
表1に従い、α=0.89のアミノ基を末端とするポリイミド系高分子溶液PI−15と、α=1.03の酸無水物構造を末端とするポリイミド系高分子溶液PI−16を得た。
【0158】
【表1】

【0159】
【表2】

【0160】
調製例1:ポリイミド系高分子組成物(B−1)の調製:
合成例1で得られたポリイミド系高分子溶液PI−1 1000gに、導電剤としての乾燥した酸性カーボンブラックとして、酸化処理カーボンブラック(SPECIAL BLACK4:Degussa社製、pH4.0、揮発分:14.0%:以下「SB−4」と略する)56.2gを徐々に添加した。ポールミルにて30℃にて12時間分散処理することによりカーボンブラックをポリアミック酸溶液に分散した後、#400ステンレスメッシュでろ過してカーボンブラックを分散したポリイミド系高分子組成物(SS−1)を得た。
【0161】
調製例2〜13:
調製例1のポリイミド系高分子溶液PI−1の代わりに、合成例2〜12で得られた系高分子溶液PI−2〜PI−12をそれぞれ用い、表2に示す添加量で酸化処理カーボンブラック(SPECIAL BLACK4:Degussa社製、pH4.0、揮発分:14.0%:以下「SB−4」と略する)を添加した以外は、調製例1にしたがい、ポリイミド系高分子組成物(SS−2)〜(SS−12)をそれぞれ調製した。
【0162】
調製例14:
調製例1のポリイミド系高分子溶液PI−1の代わりに、合成例14で得られたポリアミック酸溶液PI−14を用い、表2に示す添加量で酸化処理カーボンブラック(SPECIAL BLACK4:Degussa社製、pH4.0、揮発分:14.0%:以下「SB−4」と略する)を添加した以外は、調製例1にしたがい、ポリアミック酸組成物(SS−14)を調製した。
【0163】
調製例15〜16:
調製例1のポリイミド系高分子溶液PI−1の代わりに、合成例15〜16で得られた系高分子溶液PI−15〜PI−16をそれぞれ用い、表2に示す添加量で酸化処理カーボンブラック(SPECIAL BLACK4:Degussa社製、pH4.0、揮発分:14.0%:以下「SB−4」と略する)を添加した以外は、調製例1にしたがい、ポリイミド系高分子組成物(SS−15)〜(SS−16)をそれぞれ調製した。
【0164】
【表3】

【0165】
実施例1:ポリイミド無端ベルト(TT−1)製造;
外径90mm、長さ450mmのSUS材料製筒型金型を用意し、その外表面にシリコーン系離型剤を塗布・乾燥処理を行った(離型剤処理)。離型剤処置を施した円筒型金型を周方向に10rpmの速度で回転させながら、円筒型金型端部より塗工液 ポリイミド系高分子組成物(SS−1)を口径1.0mmディスペンサーより吐出しながら、金型上に設置した金属ブレードにて一様の圧力で押し付けながら塗布を行った。ディスペンサーユニットを円筒型金型の軸方向に100mm/分の速度で移動させることによって円筒型金型上に螺旋状に塗工液を塗布した。塗布後、ブレードを解除して円筒状金型を2分間回転し続けレベリングを行った。
【0166】
その後、金型及び塗布物を乾燥炉中で150℃空気雰囲気下、10rpmで回転させながら、30分乾燥処理を行った。乾燥後、塗布物より溶媒が揮発することで塗布物は自己支持性を有するポリアミック酸樹脂成形品(無端ベルト本体)と変化した。
【0167】
乾燥処理後次いで、クリーンオーブン中で、250℃、30分間焼成処理を行い、溶媒を留去すると共にイミド化反応を完了させた。その後、金型を25℃にして、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド無端ベルト(TT−1)を得た。
【0168】
実施例2〜13:ポリイミド無端ベルト(TT−2)〜(TT−13)の製造;
実施例1のポリイミド系高分子組成物(SS−1)の代わりに、ポリイミド系高分子組成物(SS−2)〜(SS−13)をそれぞれ用いた以外は、実施例1にしたがって、ポリイミド無端ベルト(TT−2)〜(TT−13)をそれぞれ製造した。
【0169】
比較例1〜3:ポリイミド無端ベルト(TT−14)〜(TT−16)の製造;
実施例1のポリイミド系高分子組成物(SS−1)の代わりに、ポリアミック酸組成物(SS−14)、ポリイミド系高分子組成物(SS−15)〜(SS−16)をそれぞれ用いた以外は、実施例1にしたがって、ポリイミド無端ベルト(TT−14)〜(TT−16)をそれぞれ製造した。
【0170】
(ポリイミド無端ベルトの評価)
実施例1〜13,比較例1〜3で得られたポリイミド無端ベルトにつき、以下の評価を行った。その結果を表4に示す。
【0171】
(膜厚の測定)
既述の方法でベルトの膜厚を測定した。
【0172】
(表面抵抗率の測定)
既述の方法で表面抵抗率ρsを求めた。
【0173】
(体積抵抗率の測定)
得られたそれぞれのポリイミド無端ベルトを円形電極(三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ:円柱状電極部の外径Φ16mm、リング状電極部の内径Φ30mm、外径Φ40mm)を用い、JIS K6911(1995)に従って測定した。具体的には、22℃/55%RH環境下、電圧100Vを印加し、30秒後における電流を測定
し、体積抵抗率(ρv)の常用対数値を算出した。その結果を表4に示す。
【0174】
体積抵抗率の測定方法の詳細は、以下の通りである。体積抵抗率の測定は、表面抵抗率の測定と同様に図1に示す装置を用いることができる。図1に示すように、表面抵抗率の測定に用いる円形電極は、第一電圧印加電極Aと第二電圧印加電極Bとを備える。第一電圧印加電極Aは、円柱状電極部Cと、該円柱状電極部Cの外径よりも大きい内径を有し、且つ円柱状電極部Cを囲む円筒状のリング状電極部Dとを備える。第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部C及びリング状電極部Dと第二電圧印加電極Bとの間に、測定試料であるポリイミド無端ベルトTを挟持する。そして、第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部Cと第二電圧印加電極Bとの間に電圧V(V)を印可したときに流れる電流I(A)を測定し、下記式により体積抵抗率ρv(LogΩ・cm)を求める。
【0175】
式:ρv=πd/4t×(V/I)
ここで、上記式中、d(cm)は円柱状電極部Cの外径を示す。t(cm)はポリイミド無端ベルトTの膜厚を示す。
【0176】
(耐折回数の測定)
既述の方法でベルトの耐折回数を測定した。
【0177】
(印字画質の評価)
作製したポリイミド無端ベルトにおいて、それぞれ以下の評価を初期特性として実施した。富士ゼロックス社製DocuCentreColor2220改造機(プロセス速度:250mm/sec、一次転写電流:35μAに改造)を使用し、得られたポリイミド無端ベルトを中間転写ベルトとして搭載して、高温高湿(28℃85%RH)及び低温低湿(10℃15%RH)で、富士ゼロックス社製DocuCentreColor2220等のカラートナー(シアントナー、マゼンタトナー)を用い、Cyan、Magentaの50%ハーフトーンを富士ゼロックス社製C2紙に出力し、以下の規準で濃度ムラ及び斑点ディフェクトを目視で以下の基準で評価した。その結果を表4に示す。
【0178】
−濃度ムラ−
10枚目の印字試料の印字部を3×3=9等分に分割してそれぞれの色度を色彩色度計CR−210(ミノルタ社製)を用いて測定して色度の最大と最小との差である色差ΔEを求めた。「○」以上を合格とした。
◎:色差ΔEが0.3未満である(濃度ムラが確認されない)。
○:色差ΔEが0.3以上0.5未満である。
△:色差ΔEが0.5以上1.0未満である。
×:色差ΔEが1.0以上である。
【0179】
−斑点ディフェクト−
10枚目の印字試料の印字部内の斑点を目視観察し、以下の基準で評価した。「○」以上を合格とした。
◎:0.5mm未満の大きさの斑点が10個未満である。
○:0.5mm未満の大きさの斑点が10個以上50個未満発生した。
△:0.5mm未満の大きさの斑点が50個以上100個未満発生した。又は、0.5mm以上1.0mm未満の大きさの斑点が50個未満発生し、1.0mm以上の大きさの斑点が発生しなかった。
×:0.5mm未満の大きさの斑点が100個以上発生した。又は、0.5mm以上1.0mm未満の大きさの斑点が50個以上発生した。又は、1.0mm以上の大きさの斑点が1個以上発生した。
【0180】
(通紙テスト後特性の評価)
膜厚、表面抵抗率、体積抵抗率、及び通紙テスト後のベルト破損の有無、耐折性について、1000枚の通紙テスト後(30%ハーフトーン画像形成後)においても測定を行い、通紙前との比較を行った。
【0181】
【表4】

【0182】
表4に示すよう、実施例1〜11のポリイミド無端ベルトは、耐折れ性、耐摩耗性などの耐久性と、電子写真装置に搭載したときに安定な抵抗特性を維持し、良好な複写画質を安定に発現できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0183】
本発明の活用例として、電子写真方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置への適用がある。
【符号の説明】
【0184】
A 第一電圧印加電極、B 第二電圧印加電極、C 円柱状電極部、D リング状電極部、T ポリイミド無端ベルト、100 画像形成装置、101Y,101M,101C,101BK 感光体ドラム、102 中間転写ベルト、105,106,107,108 現像器、200 画像形成装置、200Y,200M,200C,200BK 画像形成ユニット、206 転写搬送ベルト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下に示す一般式(1)の構造を有するポリイミド系高分子と溶媒とを含む溶液中に、pH7未満のカーボンブラックが分散され、以下に示す一般式(1)を得る重合反応におけるジアミン化合物に対するテトラカルボン酸二無水物のモル比(α=(テトラカルボン酸二無水物の当量数)/(ジアミン化合物の当量数))は、0.90以上1.00未満であることを特徴とするポリイミド系高分子組成物。
【化1】


・・・一般式(1)
(一般式(1)中、R1、R3は4価の有機基を表す。R2、R4、R5は2価の有機基を表す。m、nは1以上の整数を表し、m/(m+n)≧0.5。)
【請求項2】
一般式(1)におけるR1、R3は、以下のものから選択され、
【化2】


一般式(1)におけるR2、R4、R5は、以下のものから選択され、
【化3】


且つ選択されたR1、R2、R2、R4、R5の構造を有するポリイミド系高分子を50モル%以上含むことを特徴とする請求項1に記載のポリイミド系高分子組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)に示す構造中に、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオンと、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートからなる群から選択される第3成分がさらに含有されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のポリイミド系高分子組成物。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のポリイミド系高分子組成物を円筒状基材の表面に塗布する工程と、
前記円筒状金型上に塗布されたポリイミド系高分子組成物を加熱処理する工程と、
を有することを特徴とするポリイミド無端ベルトの製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のポリイミド系高分子組成物を加熱処理してなることを特徴とする転写または定着用ポリイミド無端ベルト。
【請求項6】
請求項4に記載の製造工程により製造されることを特徴とする転写または定着用ポリイミド無端ベルト。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のポリイミド無端ベルトを含むことを特徴とするベルトユニット。
【請求項8】
潜像担持体上に潜像を形成する潜像形成手段と、前記潜像を静電荷像現像用現像剤を用いて現像する現像手段と、現像されたトナー画像を中間転写体を介してまたは介さずに被転写体上に転写する転写手段と、前記被転写体上のトナー画像を定着する定着手段と、を含む画像形成装置であり、
前記転写手段に用いる転写ベルトおよび前記定着手段に用いる定着ベルトの少なくとも一方が、請求項5または請求項6に記載のポリイミド無端ベルトであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−65020(P2011−65020A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216904(P2009−216904)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】