説明

ポリエステルと海泡石型クレーの組成物

最小寸法が100nm未満であるしばしば繊維状粒子として海泡石型クレーがポリエステルに分散している熱可塑性ポリエステルと海泡石型クレーとの組成物は、前記クレーの存在下でポリエステル前駆体を重合させることにより製造される。本組成物は良好な物理的特性を有し、種々の物品に溶融成形することが可能である。これらの物品の多くは被覆(塗装)してもよく、可視外装自動車ボディ部品などの外観部品に特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海泡石型クレーをポリエステルの重合に添加することにより製造される、熱可塑性ポリエステルと海泡石型クレーとを含む組成物および当該組成物の有用な部品への成形に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ複合材は、自動車用プラスチックおよび複合材のニーズによって現在提起された課題の多くに対処することができる組成物である。これらの材料は、低い熱膨張係数、高い熱変形温度、軽量、改善された耐引掻性および良好な表面外観を含む様々な望ましい特性を提供する。ナノ複合材組成物は、ナノメートルのサイズの粒子、すなわち、ほぼ1〜数百ナノメートルの寸法を有する粒子で強化されたポリマーである。これらの材料は、特に、構造部品、半構造部品、高熱アンダーフード部品およびクラスA自動車部品の中で用いることが可能である。換言すると、これらのナノ複合材は、プラスチックマトリックスに小粒子を分散させている組成物である。
【0003】
強化プラスチック材料は、自動車部品において新たな用途を連続的に見出している。これらの材料は、変形の前のより高い衝撃荷重、より軽量、高い設計融通性および耐食性を含む、金属を上回る特定の利点を有する。自動車構造用途は、連続ガラスマットコンポジットおよび高分子成分が15重量%ほどに少ないことが可能であるシートモールディングコンパウンド(「SMC」)などの高度に充填されたプラスチック材料から伝統的に製造されてきた。SMCとガラスマットコンポジット材料(「GMT」)の両方は密度がまだ比較的高い。
【0004】
他方、自動車トリムおよび半構造部品は、射出成形可能な熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂から一般に製作されている。短繊維および鉱物充填熱可塑性樹脂などのこれらのより軽量の複合材は、それらの機械的特性がより厳しい要件を満たすならば、同じ用途において金属またはSMCおよびGMT複合材の代わりに用い得る。実質的にすべてのバンパーファイシアおよびエアインテークマニホールドは金属材料からプラスチックに移行した。新たなプラスチック系材料が開発されるにつれて、移行は、クラスAボディパネルおよび高熱アンダーフード用途のみでなく、両方のより構造的な部品も含む。
【0005】
射出成形可能な熱可塑性樹脂は、剛性、寸法安定性および耐熱性などの機械的特性を改善するために粒状充填剤および繊維充填剤の添加によって昔から機械的に強化されてきた。典型的な充填剤には、チョップドガラス繊維およびタルクが挙げられる。それらは、大幅な機械的強化を得るために20〜40%の充填剤装填率で添加される。しかし、これらの装填率レベルでは、低温衝撃性能および材料の靱性は通常犠牲にされる。ポリマー−シリケートナノ複合材材料、換言すると、非常に小さい粒子としてシリケートを分散させている組成物は、これらの問題に対処することが可能である。
【0006】
ポリマー−層状シリケートナノ複合材は、ポリマーマトリックス中に層状クレー鉱物充填剤を通常は導入している。層状シリケートは、タクトイドとして知られている順序だった小包へと積み重ねられた数百の薄い小板から成り立っている。これらの小板は大きいアスペクト比によって特徴付けられる(ほぼ100〜1000の直径/厚さ)。従って、クレーがポリマーマトリックス全体を通して均質に分散され、個々の小板として剥離される時、ポリマーと充填剤との間の大きな表面積接触のゆえに、強度、曲げ弾性率およびヤング率ならびに熱変形温度の劇的な増加が非常に低い充填剤装填率(10重量%未満)で観察される。
【0007】
ナノ複合材、すなわち熱可塑性ポリエステルマトリックスに分散されたナノサイズ粒子を含む組成物を作ろうとする試みは、僅かにのみ成功してきた。自動車用途のためにポリエステルにクレーを分散させ、剥離させるとともに例えば包装用途においてバリア特性を強化することは望ましい。
【0008】
ナノ複合材組成物を調製するための1つの経路は重合を通した剥離である。このアプローチは、モノマーの1つまたは複数にナノ充填剤、通常はモンモリロナイトのようなスメクタイトを分散させ、後で分散液を取り囲んでポリマーを形成させることを含む。このプロセスでクレーをうまく剥離させるための鍵の1つは適切な挿入剤の選択を含む。挿入剤とモノマーとの間の相互作用は、クレーの通路にモノマーを誘導できるように十分に強くなければならない。従って、このプロセスは挿入剤の使用を必要とし、そういうものだから、上述したのと同じ熱安定性の問題を導入する。
【0009】
現在の文献は、典型的には、クレーナノ複合材組成物の調製のための現場(in−situ)重合アプローチの使用に逆らって教示している。例えば、マタヤバス(Matayabas)らは、有機的に修飾されたクレーと合わせて調製されたポリマーが重合後にクレーの底面間隔の増加を全く示さず、新たな底面間隔が重合中に生じなかったことを見出した。エステル交換後、個々の小板は特定されなかった。個々の小板の形成は重合プロセスの重縮合工程中に生じた((非特許文献1))。
【0010】
ポリエステル系ナノ複合材組成物の調製において用いられるもう1つの経路は、ポリマーマトリックスへのクレーの剥離を促進するためにポリ(ビニルピロリドン)などのもう1種のポリマーの使用である。ナノコア(登録商標)インコーポレーテッド(Nanocor(登録商標)Inc.)(ナノコア(登録商標)インコーポレーテッド(Nanocor(登録商標)Inc.)は、イリノイ州アーリントンハイツのアムコル(AMCOL(Arlington Heights,IL))の完全所有子会社である)米国特許公報(特許文献1)とイーストマン・ケミカル・カンパニー(Eastman Chemical Company(テネシー州キングスポート(Kingsport,TN))は、優れたバリア特性および機械的特性を有する材料を必要とする用途において用いるためのポリエステル系ナノ複合材の調製においてこのアプローチを両社とも用いた(例えば、ナノコア(Nanocor)(登録商標)による米国特許公報(特許文献1)およびイーストマン・ケミカル(Eastman Chemical)による(特許文献2)を参照すること)。しかし、このアプローチは、クレーとポリマーが相互作用し、クレー上の底面間隔を増加させる溶液系プロセスを用いる。溶媒は真空下で後で除去され、剥離されたスメクチッククレー系を与える。その後、材料は、所望のポリマーマトリックス(典型的にはPET)と合わせて溶融配合され、押し出され、ペレット化される。このアプローチには、大量の溶媒を用いる要件の問題がある。例えば、ポリマーおよびクレーは剥離溶液の小重量%のみに相当する(トレクスラー・ジュニア,J.W.(Trexler Jr.,J.W.)、ピナー,R.L.(Piner,R.L.)、ターナー,S.R.(Turner,S.R.)およびバービー,R.B.(Barbee,R.B.)による(特許文献2))。更に、ポリエステルとクレー充填剤との間の界面でのポリマー(例えばポリ(ビニルピロリドン))の導入はポリエステルマトリックスとナノクレー充填剤粒子との間の相互作用を変える。
【0011】
しかし、上述した参考文献のどれもがこうした組成物を形成させるために海泡石型クレーの使用を記載せず、特に弾性率およびヒートサグなどの他の特性も改善する時に並外れた靱性を有する組成物を誰も記載していない。
【0012】
一般に、熱可塑性ポリエステル組成物は、繊維、成形品および押出品、発泡体および他の用途のために用いられるので商業の重要な品目である。これらのポリエステルの多くは、ポリエステルの部品が末端用途部品において結晶形態を取るように半結晶質である。半結晶質ポリマーにおいて一般に、通常はポリマー全体を通して分布した状態で、ポリマーの一部は非晶質(ガラス状)形態を取って存在し、ポリマーの一部は微結晶として存在する。殆どの場合、結晶化することができるポリエステルを半結晶質形態で用いることが好ましく、しばしば、最終部品を形成させる目的のためにポリエステルが比較的迅速に結晶化することが有用または必要である。
【0013】
例えば、熱可塑性樹脂の射出成形において、溶融ポリマーを型に注入し、固体になるまで迅速に冷却する。その後、型を開け、固体部品を型から突き出す。部品が固体でないか、および/または型から突き出すと容易に変形する場合、部品は変形される場合があり、よって無用にされる。半結晶質ポリエステルから比較的強い部品を得る際に重要な一面は、半結晶質ポリエステルが型から取り出される時に半結晶質ポリエステルが(少なくとも部分的に)結晶化することである。しかし、幾つかの半結晶質ポリエステルは非常にゆっくり結晶化し、従って、半結晶質ポリエステルを大幅な変形なしで取り出すことを可能にするために半結晶質ポリエステルは長時間にわたり型内に存在しなければならないであろう。これは長い成形サイクルにつながり、それは経済的に非常に望ましくない。
【0014】
この問題を解決するために、いわゆる「結晶化パッケージ」または「結晶化開始剤系」が遅い結晶化性のポリエステルのために開発されてきた。これらのパッケージは、遙かにより速い結晶化開始剤および/またはより高い結晶化速度および/またはより低い結晶化温度を提供する。例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)は、遅い結晶化性のポリエステルであり、必要とされる非常に長い成形サイクルおよび/または高い型温度のゆえに単独では射出成形のために通常は適さない。しかし、結晶化パッケージがこのポリエステルのために開発され、射出成形および他の成形プロセスのためにポリエステルを適するようにしてきた。PETのための典型的な結晶化パッケージは、カルボキシレート含有ポリマーのナトリウムまたはナトリウム塩などのナトリウムイオン源とPETのための少量の可塑剤である。例えば、米国特許公報(特許文献3)を参照すること。すべてのポリエステルが遅い結晶化性であるとは限らない一方で、より速い結晶化は、より望ましいより短い溶融加工サイクルタイムにつながる場合がある。
【0015】
上述した理由で、ポリエステルマトリックスに充填剤材料を分散させ、剥離させるための改善されたプロセスが必要とされている。
【0016】
【特許文献1】米国特許第5,698,624号明細書
【特許文献2】国際公開第99/03914号パンフレット
【特許文献3】米国再発行特許第32,334号明細書
【特許文献4】欧州特許出願第221,225号明細書
【特許文献5】米国特許第3,749,697号明細書
【特許文献6】JP83−62626
【特許文献7】RO第88−135207号明細書
【特許文献8】特開2001−105902号公報
【特許文献9】米国特許第5,039,783号明細書
【特許文献10】米国特許第5,231,161号明細書
【特許文献11】米国特許第5,407,984号明細書
【特許文献12】米国特許第5,668,186号明細書
【特許文献13】米国仮特許出願第60/626187号明細書
【特許文献14】国際公開第2003093491号パンフレット
【特許文献15】国際公開第2002068496号パンフレット
【特許文献16】米国特許第5,633,018号明細書
【特許文献17】米国特許第5,432,334号明細書
【特許文献18】米国特許第4,548,978号明細書
【特許文献19】米国特許第4,753,980号明細書
【非特許文献1】J.C.マタヤバス・ジュニア(J.C.Matabayas,Jr.)ら著「ポリマークレーナノ複合材」における「ガスバリアを強化するためのナノ複合材技術」(“Nanocomposite Technology for Enhancing The Gas Barrier”,in Polymer Clay Nanocomposites)」,T.J.ピナビア(T.J.Pinnavia),G.W.ビール(G.W.Beall)編,ウィリー(Wiley),New York(2000年)218〜222頁
【非特許文献2】「カークオスマー化学技術エンサイクロペディア(Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology)」,ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons),J.I.クロシュウィッツ(J.I.Kroschwitz)編,第4版,(1996年),第19巻,609〜653頁
【非特許文献3】A.ラバレッテ(A.Lavalette)ら,「生体高分子(Biomacromolecules)」,第3巻,225〜228頁(2002年)
【非特許文献4】C.E.キャラハージュニア(C.E.Carraher,Jr.)著、「セイマー/キャラハーのポリマー化学(Seymour/Carraher’s Polymer Chemistry)」,第5版、マーセル・デッカー・インコーポレーテッド(Marcel Dekker Inc.),New York,2000年,60頁および463−465頁
【非特許文献5】ポリマーブレンズ−第2巻:性能(Polymer Blends−Volume2:Performance),D.R.ポール(D.R.Paul)およびC.B.ブクナル(C.B.Bucknall)編,ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)(2000年)
【非特許文献6】ゴム強化プラスチック(Rubber−toughened Plastics(化学の進歩シリーズNo.222)(Advances in Chemistry Series No.222),C.K.リュー(C.K.Riew)(編),アメリカン・ケミカル・ソサイエティー(American Chemical Society)(1989年)
【非特許文献7】J.H.チャン(J.H.Chang)ら,ポリマー(Polymer),45(3),919−926頁(2004年)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、熱可塑性ポリエステル含有組成物を製造する方法であって、
a.少なくとも1種の二酸またはジエステルおよび少なくとも1種のジオール、
b.少なくとも1種の重合可能なポリエステルモノマー、
c.少なくとも1種の線状ポリエステルオリゴマー、
d.少なくとも1種の大環状ポリエステルオリゴマー、
からなる群から選択された少なくとも1種の熱可塑性ポリエステル前駆体と海泡石型クレーを混合する工程と、続いて溶媒の存在下または溶媒の存在しない状態で前記少なくとも1種のポリエステル前駆体を重合させる工程とを含む方法に関する。
【0018】
この方法の生成物、成形品などの製造品を成形するための方法およびこうした物品を被覆(塗装)する方法ならびにこれらの幾つかのための用途も本明細書で記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
この開示の文脈において、多くの用語を用いるものとする。
【0020】
本明細書で用いられる「ポリエステル前駆体」は、二酸(またはジエステル)/ジオール混合物、重合可能なポリエステルモノマーおよびポリエステルオリゴマーなどのポリエステルに重合され得る材料を意味する。
【0021】
本明細書で用いられる「重合可能なポリエステルモノマー」は、単独でまたは(これも存在する)他のモノマーと合わせてポリエステルに重合する単量体化合物を意味する。こうした化合物の幾つかの例は、ヒドロキシ安息香酸およびヒドロキシナフトエ酸などのヒドロキシ酸、およびビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートならびにジカルボン酸のビス(ヒドロキシアルキル)エステルである化合物である。
【0022】
本明細書で用いられる「オリゴマー」は、同じかまたは異なる式の識別可能な2つ以上の反復単位を含む分子を意味する。
【0023】
本明細書で用いられる「線状ポリエステルオリゴマー」は、大環状ポリエステルオリゴマー(以下参照)を除くオリゴマー材料であって、単独でまたはモノマーの存在下でより高い分子量のポリエステルに重合することができるオリゴマー材料を意味する。線状ポリエステルオリゴマーには、例えば、線状ポリエステルのオリゴマーおよび重合可能なポリエステルモノマーのオリゴマーが挙げられる。例えば、ジメチルテレフタレートまたはテレフタル酸とエチレングリコールの反応は、メチルエステルまたはカルボキシル基を除去するために行われた時、通常、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートと様々なオリゴマー、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートのオリゴマー、モノ(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(カルボキシル基を含む)のオリゴマー、更に延長されることができるポリエステルオリゴマーとの混合物をもたらす。好ましくは、本発明の実施において、こうしたオリゴマーは、約20以下、より好ましくは約10以下の平均重合度(モノマー単位の平均数)を有する。
【0024】
本明細書で用いられる「大環状」分子は、環を形成させるために共有接続された8以上の原子を含む分子構造内に少なくとも1個の環を有する分子を意味する。
【0025】
本明細書で用いられる「大環状ポリエステルオリゴマー」は、同じかまたは異なる式の識別可能な2つ以上のエステル官能性反復単位を含む大環状オリゴマーを意味する。大環状ポリエステルオリゴマーは、異なる環サイズを有する1つの特定の式の複数分子を典型的に意味する。しかし、大環状ポリエステルオリゴマーは、同じかまたは異なる構造反復単位の異なる数を有する異なる式の複数分子を含んでもよい。大環状ポリエステルオリゴマーは、共オリゴエステルまたは多オリゴエステル、すなわち、1つの環式分子内にエステル官能基を有する2つ以上の異なる構造反復単位を有するポリエステルオリゴマーであってもよい。
【0026】
本明細書で用いられる「ポリエステル」は、50%を上回る連結基がエステル基である熱可塑性ポリマーを意味する。アミドおよび/またはイミドなどの他の連結基も存在してよい。
【0027】
本明細書で用いられる「ナノ複合材」または「ポリマーナノ複合材」あるいは「ナノ複合材組成物」は、0.1〜100nmの範囲内で少なくとも1つの寸法を有する、高分子材料全体を通して分散された粒子(「ナノ粒子」)を含む高分子材料を意味する。ナノ粒子を分散させている高分子材料を「ポリマーマトリックス」と呼ぶことが多い。「ポリエステル複合材」という用語は、高分子材料が少なくとも1種のポリエステルを含むナノ複合材を意味する。
【0028】
本明細書で用いられる「海泡石型クレー」という用語は、海泡石クレーとアタパルジャイト(パリゴルスカイト)クレーの両方を意味する。
【0029】
元来繊維質である海泡石型クレーのために本明細書において用いられる「剥離」または「剥離された」は、ポリマーマトリックス全体を通して後で分散される直径ナノメートルの繊維(換言すると、最小寸法)への繊維束または繊維凝集体の分離を意味する。
【0030】
本明細書で用いられる「アルキレン基」は、−Cn2n−(式中、nは1以上である)を意味する。
【0031】
本明細書で用いられる「シクロアルキレン基」は、環式アルキレン基、−Cn2n-x−(式中、xは環化によって置換されたHの数を表す)を意味する。
【0032】
本明細書で用いられる「モノオキシアルキレン基またはポリオキシアルキレン基」は、[−−(CH2y−−O−−]n−−(CH2y−−(式中、yは1より大きい整数であり、nは整数である)を意味する。
【0033】
本明細書で用いられる「脂環式基」は、環式構造を中に含む二価非芳香族炭化水素基を意味する。
【0034】
本明細書で用いられる「二価芳香族基」は、大環状分子の他部分への連結を有する芳香族基を意味する。例えば、二価芳香族基は、メタ連結一環式芳香族基またはパラ連結一環式芳香族基を含んでもよい。好ましくは、自由原子価は芳香族環炭素原子に対する。
【0035】
本明細書における重合プロセスの文脈における「ジカルボン酸」は、ジカルボン酸自体またはこうした重合プロセスにおいて用いてもよいジエステルなどの単純なあらゆる誘導体を意味する。同様に「ジオール」は、ジオール、またはポリエステルを形成させるための重合プロセスにおいて用いられ得るその単純なあらゆる誘導体を意味する。
【0036】
本明細書で用いられる「海泡石型クレーを除く固体粒状充填剤」は、溶融混合条件(以下参照)下で組成物に分散されるのに十分に微細である一切の固体(組成物が通常さらされる温度で不融性)を意味する。
【0037】
本明細書で用いられる「(メタ)アクリレート」は、化合物がアクリレート、メタクリレート、または2つの混合物のいずれであってもよいことを意味する。
【0038】
数値の範囲を本明細書で列挙している場合、特に指定がない限り、その範囲は、その終点、その範囲内のすべての整数および端数を含むように意図されている。範囲を定める時に列挙された特定の値に本発明の範囲が限定されないことが意図されている。
【0039】
(海泡石型クレー)
海泡石(Mg4Si615(OH)2・6(H2O))は、その繊維質構造のゆえに高いアスペクト比を示す水和マグネシウムシリケート充填剤である。シリケートの中で独特であって、海泡石は、シリカ鎖が繊維の軸に平行に走る長い木舞様微結晶から構成されている。この材料は、2つの形態、α形態とβ形態からなることが示されている。α形態は長い繊維束であることが知られており、β形態は非晶質凝集体として存在する。
【0040】
アタパルジャイト(パリゴルスカイトとしても知られている)は、アタパルジャイトが僅かにより小さい単位セルを有することを除き、海泡石と殆ど構造的および化学的に同じである。本明細書で用いられる「海泡石型」は、海泡石のみでなくアタパルジャイトも含む。
【0041】
本発明において用いられる海泡石型クレーの量は、好ましくは最終複合材組成物を基準にして、より好ましくは組成物中の海泡石型クレーとポリエステルの全量を基準にして約0.1〜約20重量%の範囲である。選択される特定の量は、技術上よく理解されている通りナノ複合材組成物の所期の用途に応じて異なる。例えば、フィルムにおいては、所望の光学的特性を保持するために可能な限り少ない海泡石型クレーを用いることが有利である場合がある。比較的高い濃度の剥離クレーを含むナノ複合材組成物の「マスターバッチ」も製造してよく、用いてもよい。例えば、30重量%の剥離クレーを含むナノ複合材組成物マスターバッチを用いてもよい。3重量%の剥離クレーを有する組成物が必要とされる場合、30%マスターバッチ1重量部と「純」ポリエステル9重量部を溶融混合することにより、3重量%を含む組成物を製造してもよい。この溶融混合中に、所望の最終組成物を形成させるために他の所望の成分も添加することが可能である。
【0042】
海泡石型クレーは、高純度で(「神学的グレード」)入手できるか、非被覆形態(例えば、スペイン国マドリードのトルサグループ(Tolsa Group(Madrid,Spain)製のパンゲル(Pangel)(登録商標)S9海泡石クレー)で入手できるか、またはより一般的に、より「親有機性」にするために、すなわち、低−中の極性の系とより適合性にするために有機材料で処理される(例えば、トルサグループ(Tolsa Group)製のパンゲル(Pangel)(登録商標)B20)。海泡石型クレーのためのこうした塗料の例は、(特許文献4)で開示されたようにジメチルベンキシルアルキルアンモニウムクロリドなどの第四アンモニウム塩である。
【0043】
海泡石型クレーは種々の方法で処理してもよい。例えば、海泡石型クレーはシランカップリング剤のような表面を変える表面処理剤で処理してもよい。しかし、クレーをそのように処理しないことが好ましい。好ましくは、クレーは微細な粒状の形態を取っている。従って、クレーはポリエステル重合プロセスの液体に容易に分散させ得る。
【0044】
(ポリエステル)
本発明の実施において用いるために最も適するポリエステルは、熱可塑性ポリエステルホモポリマーおよびコポリマー(ブロックとランダムの両方)を含み、ランダムコポリマーは好ましい。
【0045】
ジオールとヒドロカルビル二酸またはこうした二酸のエステルからのポリエステルの製造およびヒドロキシ酸単独またはジオールおよび二酸と組み合わせたヒドロキシ酸からのポリエステルの製造は、(非特許文献2)においてA.J.イースト(A.J.East)らによって記載されたように技術上周知されている。第1の段において、エステル化あるいは二酸またはそのジアルキル(典型的にはジメチル)エステルとジオールとの間のエステル交換が行われて、水またはアルコール(典型的にはメタノール)の発生と除去に加えて、ビス(ヒドロキシアルキル)エステルと幾つかのオリゴマーをもたらす。
【0046】
エステル化またはエステル交換が本質的に遅い反応であるので、触媒が一般に用いられる。有用なエステル化触媒またはエステル交換触媒の例は、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛および酢酸マンガン、錫化合物およびチタニウムアルコキシドである。第2の段、重縮合において、ビス(ヒドロキシアルキル)エステルおよびオリゴマーはエステル交換反応を受け続け、高真空下で除去されるジオールを排除し、分子量を確立する。有用な重縮合触媒の例には、錫、チタニウム、アンチモンおよびゲルマニウム化合物、特にポリ(エチレンテレフタレート)(PET)の場合に一般に用いられる酸化アンチモン(Sb23)が挙げられる。しかし、海泡石型クレーもポリエステルを形成させるための重合のこのタイプのための触媒であることが見出された。従って、ナノ複合材組成物を製造する時、上で記載されたものなどの「添加」触媒を量的に減らしてもよいか、または全面的になくしてさえもよい(もちろんクレーを除き何も添加しない)。
【0047】
(重合中のエチレングリコールからの副生物としての)DEGの産出が反応中に制御される必要がある場合、一定範囲の触媒を用いることが可能である。これらには、米国特許公報(特許文献5)に記載された酢酸リチウム緩衝剤および(特許文献6)、(特許文献7)および(特許文献8)に記載された一定範囲の酢酸ナトリウム緩衝剤および酢酸カリウム緩衝剤の使用が挙げられる。典型的には100〜600ppmの酢酸ナトリウムまたは酢酸カリウムを重合中に用いて、DEGの形成およびポリマーへの導入の度合を最少化した。
【0048】
適する二酸(および二酸の対応するエステル)の中には、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸および例えばジメチルエステル、ジエチルエステルまたはジプロピルエステルなどのその誘導体からなる群から選択されたものがある。
【0049】
ジオール成分として用いることができるグリコールの幾つかの代表的な例には、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、イソソルビド、ナフタレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、レソルシノール、ヒドロキノン、およびジオールまたはポリオールとアルキレンオキシドの反応生成物であるより長い鎖のジオールおよびポリオールが挙げられる。
【0050】
ポリエステルの1つの好ましいタイプにおいて、ジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸の1つまたは複数を含み、ジオール成分は、HO(CH2nOH(I)、1,4−シクロヘキサンジメタノール、HO(CH2CH2O)mCH2CH2OH(II)およびHO(CH2CH2CH2CH2O)zCH2CH2CH2CH2OH(III)(式中、nは2〜10の整数であり、mは平均1〜4であり、zは平均約7〜約40である)の1つまたは複数を含む。(II)および(III)が、mおよびzがそれぞれ異なってもよい化合物の混合物であってもよいことに注意すること。従って、mおよびzが平均であるので、mおよびzは整数である必要がない。好ましいポリエステルにおいては、nは2、3または4であり、および/またはmは1である。
【0051】
ポリエステルは重合可能なポリエステルモノマーから直接製造することも可能である。本発明において用いるために適する重合可能なポリエステルモノマーの幾つかの代表的な例には、ヒドロキシ安息香酸およびヒドロキシナフトエ酸などのヒドロキシ酸、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート、ビス(4−ヒドロキシブチル)テレフタレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)ナフタレンジオエート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソフタレート、ビス[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]テレフタレート、ビス[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]イソフタレート、ビス[(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル]テレフタレートおよびビス[(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル]イソフタレート、モノ(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートおよびビス(2−ヒドロキシエチル)スルホイソフタレートが挙げられる。
【0052】
ポリエステルは大環状ポリエステルオリゴマーから直接製造することも可能である。本発明において用いてもよい大環状ポリエステルオリゴマーには、式
【0053】
【化1】

【0054】
の構造反復単位を有する大環状ポリ(アルキレンジカルボキシレート)オリゴマーが挙げられるが、それらに限定されない。
式中、Aは少なくとも2個の炭素原子を含むアルキレン基、シクロアルキレンあるいはモノオキシアルキレン基またはポリオキシアルキレン基であり、Bは二価芳香族基または二価脂環式基である。大環状ポリエステルオリゴマーは、米国特許公報(特許文献9)、米国特許公報(特許文献10)、米国特許公報(特許文献11)、米国特許公報(特許文献12)、米国特許公報(特許文献13)、(特許文献14)および(特許文献15)、ならびに(非特許文献3)に記載された方法などの様々な方法によって調製してもよい。大環状ポリエステルオリゴマーは、低分子量の線状ポリエステルからの抽出を通して得ることも可能である。
【0055】
好ましい大環状ポリエステルオリゴマーは、1,4−ブチレンテレフタレート(CBT)、1,3−プロピレンテレフタレート(CPT)、1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(CCT)、エチレンテレフタレート(CET)、1,2−エチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレート(CEN)の大環状ポリエステルオリゴマー、テレフタル酸とジエチレングリコールの環式エステルダイマー(CPEOT)ならびに上の構造反復単位の2つ以上を含む大環状コオリゴエステルである。
【0056】
特定の好ましいポリエステルには、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート)(PPT)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)とポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールブロックを有する熱可塑性エラストマーポリエステル(米国19898デラウエア州ウィルミントンの本願特許出願人(Wilmington,DE19898USA)からハイトレル(Hytrel)(登録商標)として入手できる)ならびにポリ(1,4−シクロヘキシルジメチレンテレフタレート(PCT)が挙げられ、PETは特に好ましい。(適切な融点を有する)2種以上のポリエステルが存在する場合、組成物中のこうしたポリマーの合計を成分(a)として採用する。
【0057】
本発明のナノ複合材組成物中のポリエステルは分岐または非分岐であってもよく、ホモポリマーまたはコポリマーであってもよい。
【0058】
コモノマーの10重量%以下により修飾されているとして定義される「修飾ポリエステル」(または、より厳密にはコポリマー)は特に注目に値する。特に指示がない限り、ポリエステルポリマー(またはオリゴマー)という用語は、修飾ポリエステルポリマー(またはオリゴマー)と非修飾ポリエステルポリマー(またはオリゴマー)を意味する。同様に、特定のポリエステル、例えばポリ(エチレンテレフタレート)(PET)の言及は非修飾PETまたは修飾PETを意味する。コモノマーには、ジエチレングリコール(DEG)、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、イソソルビド、イソフタル酸(IPA)、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸およびそれらの混合物を挙げることが可能である。PETのために典型的には好ましいコモノマーには、0〜5重量%のIPAおよび0〜3重量%のDEGが挙げられる。
【0059】
用いられるポリエステルは、(要求される時)必要な融点を有するいかなるポリエステルであってもよい。ポリエステルの融点は、好ましくは約100℃以上、より好ましくは約150℃以上、特に好ましくは約200℃以上である。(たとえあるとしても)約25℃より低い融点を有するポリエステルである非晶質ポリエステルもポリエステルナノ複合材組成物を形成させるためにこのプロセスにおいて用いてよく、得られるポリエステルナノ複合材組成物および品目は、これらの組成物から製造してもよい。これらの非晶質ポリエステルは、室温より高いガラス転移温度を有してもよく、これらの非晶質ポリエステルを溶融成形するべくガラス転移温度より上に加熱する必要がある。
【0060】
(殆どまたは全部のエステル連結基を有する)ポリエステルは、1つまたは複数のジカルボン酸と1つまたは複数のジオールから通常誘導される。それらは、重合可能なポリエステルモノマーから、または大環状ポリエステルオリゴマーからも製造することが可能である。連結基の好ましくは少なくとも約90%がエステル基、より好ましくは連結基の本質的に全部がエステル基であるポリエステルも好ましい。
【0061】
(ポリエステル組成物の合成条件)
ポリエステル組成物(ナノ複合材)材料を製造するためのプロセス条件は溶融プロセスまたは溶液プロセスにおいてポリエステルを製造するために技術上知られているプロセス条件と同じである。ポリエステルの平均重合度が約20になる前の好都合ないずれかの製造段階で技術上知られているいずれかの手段によって、海泡石型クレーを添加することが可能である。例えば、モノマーと合わせて始めに、モノマーのエステル化またはエステル交換中に、モノマーのエステル化またはエステル交換の終わりに、または重縮合工程の早期に海泡石型クレーを添加することが可能である。
【0062】
重合プロセスは技術上知られているいずれかの方法で行ってもよい。例えば、重合プロセスは、バッチプロセス、半バッチプロセスまたは連続プロセスであってもよい。これらのプロセスタイプの両方は技術上周知されている。上で引用したA.J.イースト(A.J.East)らを参照すること。商用用途のためには連続プロセスが好ましい。もう1つの工程の変動は、その分子量がいわゆる固相重合のために適するポリエステルへのポリエステル前駆体の溶融重合であり、その後、このポリエステルを固相重合に供して所望の分子量を達成することである。
【0063】
プロセスの好ましい他の実施形態において、特に連続プロセスにおいて、「仕上機」(最終分子量を達成する容器)に至るまで(但し、「仕上機」を含まない)のモノマー反応器(ここで、二酸とジオールは反応してポリエステルモノマーを形成させる)で始まるいずれかの点でポリエステル製造プロセスに海泡石を添加することが可能である。一実施形態において、溶融モノマー、オリゴマーまたはプレポリマー中にプロセスの中に直接乾燥粉末として海泡石を添加することが可能である。これは、単独材料として、またはテレフタル酸またはイソフタル酸などのもう1種の乾燥粉末と組み合わせてプロセスに直接導入することを含む。もう1つの実施形態において、溶融プロセスモノマー、オリゴマーまたはプレポリマーの側流に海泡石を添加することが可能である。ここで、海泡石はこの側流に混合され、組み合わせ流れはプロセスに再注入される。もう1つの実施形態において、ポリエステル製造プロセスの周囲温度液体原料の1つを用いて海泡石をスラリー化するか、またはペーストにすることが可能であり、得られたスラリーまたはペーストをプロセスに注入することが可能である。周囲温度液体原料には、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールおよび1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。もう1つの実施形態において、海泡石をジメチルテレフタレートなどの溶融原料に混合することが可能であり、そしてプロセスに添加することが可能である。周囲温度液体原料の1つによりスラリーとして海泡石を添加することが望ましい場合、スラリーは、0.1重量%〜20重量%の海泡石と80重量%〜99.9重量%の液体原料を混合することにより調製することが可能である。高いスラリー粘度は、スラリーをポンプで送るか、スラリーをメーターで計量するか、または別段にスラリーを輸送するのを難しくする。スラリーの温度を上げ、そしてより激しく混合することはスラリーの粘度を上げることが知られている。スラリー粘度は、1)実用的な限り低い温度で海泡石と液体原料を混合し、2)実用的な限り低いスラリーの温度を維持し、3)海泡石粉末を濡らすのにどうにか十分なエネルギーおよび/または剪断で海泡石粉末を液体に混合し、4)一旦安定なスラリーが形成されると長期の混合を避けることにより最小化することが可能である。一実施形態において、4重量%〜7重量%の海泡石と93重量%〜95重量%の液体原料が混合される。もう1つの実施形態において、7重量%〜9重量%の海泡石と91重量%〜93重量%の液体原料が混合される。もう1つの実施形態において、9重量%〜12重量%の海泡石と88重量%〜91重量%の液体原料が混合される。もう1つの実施形態において、12重量%〜16重量%の海泡石と84重量%〜88重量%の液体原料が混合される。プロセスのいかなるタイプにおいても、プロセスを実施する1つの好ましい方法において、海泡石型クレーは、ポリエステル前駆体の1つまたは複数に、特に、ジオールが重合において用いられる場合、液体ジオール(グリコール)に添加される。クレー粒子がジオールによって濡らされるように液体ジオールとクレーを混合することが好ましい。その後、形成されたスラリーは重合プロセスに添加してもよい。特に好ましいプロセスにおいて、ジオールを含有するスラリーは、(グリコールによるジカルボン酸またはジエステルの縮合からの)副生物の水とアルコールの75%が重合プロセスから除去された後に他のプロセス原料に添加される。クレーが添加および/または混合される時、任意に、ジカルボン酸またはジカルボン酸エステルおよびヒドロキシカルボン酸などの他のモノマーもジオール中に存在してもよい。ジオールを用いない場合、クレーを他のいずれかの液体モノマーまたはポリエステル前駆体と混合してもよい。再び、クレーがポリエステル前駆体によって濡らされていることが好ましい。クレーを濡らすのは、液体ポリエステル前駆体とクレーおよび任意に他の固体ポリエステル前駆体のスラリーを単に混合することにより行ってもよい。「ホモジナイザー」またはペイント練り機を用いるような他のより強力な混合方法も用いてよい。他の追加のいかなる充填剤もこの時に存在(添加)してもよい。
【0064】
安定剤、酸化防止剤およびこうしたプロセスに時には添加される他の材料などの他の材料も重合中に任意に存在してよい。他の充填剤および/または強化剤も、重合自体を妨害しないかぎり、プロセスの初めから重合において存在してもよいか、またはプロセス中に添加してもよい。組成物を外観部品の中で最終使用する積もりである場合、これらの固体は、本明細書で略述した粒子サイズ仕様を好ましくは満たすべきである。しかし、組成物を外観部品のために使用する積もりがない場合、これらの固体はこれらの仕様を満たす必要はない。
【0065】
本発明によって製造されたナノ複合材組成物を含む物品は、射出成形、押出、ブロー成形、熱成形、溶液キャスティングまたはフィルムブローイングの方法に限定されないが、それらの方法などの技術上知られているいずれかの手段によって調製してもよい。
【0066】
ナノ複合材組成物は、ポリエステルの融点(または非晶質の場合、ガラス転移温度)より高い温度に加熱され、任意に、以下で記載するように追加の原料と任意に溶融混合され、所望の形状(典型的には、小滴またはストランド)になり、前記ポリエステルの融点より高い温度から前記融点より低い温度に冷却される。粒子の形成は、技術上知られているように、小球化、錠剤化およびストランド切断などの多くのプロセスを通して行うことが可能である。粒子の形成および結晶化プロセスは、別個の工程としてまたは単一工程として行うことが可能である。この単一工程は、例えば、加熱ターンテーブルを用いることにより、または米国特許公報(特許文献16)で開示されたような加熱ベルト付きロトフォーマー(Rotoformer)(登録商標)錠剤化装置を用いて行うことが可能である。この技術において、溶融物は粒子になり(上の工程(c)に対応する)、粒子は結晶化(上の工程(d)に対応する)のための適切なクーラー温度で保持され、よって結晶化と粒子の形成が単一工程に組み合わされる。結晶化は、最高結晶化速度の温度に一般に近い、混合物の溶融温度より低い且つTgより高い温度で起きる。
【0067】
(ナノ複合材組成物に溶融混合されるべき原料)
(海泡石型クレーを除く固体粒状充填剤)
こうした充填剤は溶融混合条件下(以下参照)で組成物に分散されるべく十分に微細でなければならない。典型的には、固体粒状充填剤は、顔料、強化剤および充填剤のような熱可塑性組成物の中で既に用いられた場合がある材料である。固体粒状充填剤は、組成物のポリマーへの固体粒状充填剤の粘着力を改善するために、上にコーティング、例えば、サイジングおよび/またはコーティングを有してもよく、またはもたなくてもよい。固体粒状充填剤は有機または無機であってもよい。有用な固体粒状充填剤には、(海泡石およびアタパルジャイト以外の)クレー、タルク、ウォラストナイト、マイカおよび炭酸カルシウムなどの鉱物、繊維、ミルドガラス、中実球または中空球などの種々の形態を取ったガラス、ブラックまたは繊維としての炭素、二酸化チタン、短繊維、フィブリル、フィムリドの形態を取ったアラミド、および二酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウムおよび適切な不融性有機化合物などの難燃剤が挙げられる。好ましい固体粒状充填剤は、ウォラストナイト、マイカ、タルク、ガラス、特にガラス繊維および炭酸カルシウムである。
【0068】
固体粒状材料は、例えば、二軸スクリュー押出機またはブスコニーダの中でナノ複合材に従来通り溶融混合してもよい。しかし、粒状材料はポリエステルナノ複合材を形成させるプロセス、すなわち、重合プロセスの始めにもまたは始め近くにも添加してもよい。固体粒状充材料は、海泡石型クレーと同時に添加してもよい。但し、多くの粒状材料を添加する場合、粒状材料は重合プロセスを受ける材料の粘度を高める場合があり、粘度をあまりに高く上げないように注意を払うべきである。
【0069】
海泡石型クレーを除く固体粒状材料は全組成物の0〜約60重量%で存在してもよい。好ましくは、固体粒状材料は全組成物の約5〜約50重量%である。
【0070】
ポリエステルナノ複合材組成物は、好ましくは全組成物少なくとも約40重量%、より好ましくは全組成物の少なくとも約50重量%である。
【0071】
(可塑剤)
可塑剤は、ポリマーに添加された時、典型的にはポリマーのガラス転移温度を下げることによりポリマーをより柔軟にする化合物である。可塑剤は、典型的には2000以下の(平均)分子量と合わせて約50℃以下の融点を有する化合物または化合物の混合物である。可塑剤は低重合体であってもよく、その場合、その数平均分子量(適切な標準を用いるサイズ排除クロマトグラフィによって測定されたもの)は2000以下である。これらは可塑剤の典型的な特性である。可塑剤の更なる説明に関しては、(非特許文献4)を参照すること。この文献は本明細書に引用して援用する。
【0072】
好ましくは、可塑剤は組成物中のポリエステルの重量の0〜約5重量%である。好ましいタイプの1種の可塑剤は、式R101CO21022CR101(式中、各R101は独立して1〜20個の炭素原子を含むヒドロカルビル、より好ましくはアルキルであり、各R102(これは、各分子中のR102が多少異なり得ることを意味する)は、2〜30個の炭素原子を含む、エーテル基で任意に置換されたアルキレンである)のジオールのジエステルである。アルキレンは、自由原子価が2つの異なるアルキル(飽和)炭素原子上にある(炭素と水素のみを含む)二価ヒドロカルビル基を意味する。特定の有用な可塑剤には、約946の数平均分子量を有するポリ(エチレングリコール400)ジ−2−エチルヘキサノエートおよびポリ(エチレングリコール)ジラウレートが挙げられる。他の有用な可塑剤は米国特許公報(特許文献17)および米国特許公報(特許文献18)において見られる。これらの特許は本明細書に引用して援用する。特定の1種のポリエステルのために有用なすべての可塑剤がもう1種のポリエステルのために必ずしも有用とは限らないが、しばしば、これは本当であろう。
【0073】
(添加剤)
他の原料、特に熱可塑性樹脂の中で一般に用いられる原料も熱可塑性樹脂の中で一般に用いられる量で本組成物に添加してもよい。こうした材料には、酸化防止剤、潤滑剤、離型剤、難燃剤、(ペイント)定着剤、(ポリマーブレンドを形成させる)他のタイプのポリマーなどが挙げられる。好ましくは、これらのすべての原料の合計は、組成物の約60重量%未満、より好ましくは約40重量%未満、特に好ましくは組成物の約25重量%未満である。
【0074】
(強化剤)
ポリマーを強化するために用いられる材料は周知されている。この分野の多くの参考文献の2つの例は、(非特許文献5)および(非特許文献6)である。
【0075】
本発明の組成物の中の好ましい任意の原料は高分子強化剤である。これは、典型的にはエラストマーであるか、または比較的低い融点、一般には200℃未満、好ましくは150℃未満を有するポリマーであって、ポリエステル(および存在する任意の他のポリマー)と反応することが可能である官能基を結合させているポリマーである。ポリエステルが通常は存在するカルボキシル基およびヒドロキシル基を有するので、これらの官能基は、カルボキシル基および/またはヒドロキシル基と通常は反応することが可能である。こうした官能基の例には、エポキシ、無水カルボン酸、ヒドロキシル(アルコール)、カルボキシルおよびイソシアナトが挙げられる。好ましい官能基はエポキシおよび無水カルボン酸であり、エポキシは特に好ましい。こうした官能基は、既に存在するポリマー上に小分子をグラフトすることにより、または高分子強化剤分子を共重合によって製造する時、所望の官能基を含むモノマーを共重合することにより高分子強化剤に通常は「結合」される。グラフトの例として、無水マレイン酸は、ラジカルグラフト技術を用いて炭化水素ゴム上にグラフトさせてもよい。得られたグラフトポリマーは、無水カルボン酸および/またはカルボキシル基をポリマーに結合させている。官能基をポリマーに共重合して入れる高分子強化剤の例は、適切な官能基を含むエチレンと(メタ)アクリレートモノマーのコポリマーである。有用な(メタ)アクリレート官能性化合物には、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートおよび2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。エチレンと官能性(メタ)アクリレートモノマーに加えて、酢酸ビニル;、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレートおよびシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの非官能化(メタ)アクリレートエステルなどの他のモノマーをこうしたポリマーに共重合して入れてもよい。好ましくは、存在する官能基を含む高分子強化剤の量はポリエステルの約1〜約20重量%である。好ましい強化剤には、米国特許公報(特許文献19)でリストされたものが挙げられる。この特許は本明細書に引用して援用する。特に好ましい強化剤は、エチレン、エチルアクリレートまたはn−ブチルアクリレートおよびグリシジルメタクリレートのコポリマーである。
【0076】
高分子強化剤が官能基を含むモノマーの約0.5〜約20重量%、好ましくは約1.0〜約15重量%、官能基を含むモノマーのより好ましくは約7〜約13重量%を含むことが好ましい。
【0077】
高分子強化剤中に存在する官能性モノマーの2種以上のタイプが存在してもよい。組成物の靱性が高分子強化剤の量および/または官能基の量を増やすことにより増加することが見出された。しかし、これらの量は、好ましくは、特に最終部品形状を達成する前に組成物が架橋し得る点まで増加させるべきではない。好ましくは、組成物中に約2〜約30重量%の高分子強化剤が存在し、より好ましくは、全組成物の5〜約25重量%、特に好ましくは約10〜約20重量%の高分子強化剤が存在する。
【0078】
(エポキシ化合物若しくはエポキシ樹脂)
他の原料のもう1つの好ましいタイプはエポキシ化合物若しくはエポキシ樹脂である。好ましくは、こうした化合物または樹脂は、約1000未満の平均分子量を有する(上述した高分子強化剤は、エポキシ基を含んでいる場合でさえ、このエポキシ化合物若しくはエポキシ樹脂の一部と本明細書でみなされない)。エポキシ材料は、組成物全体の好ましくは0.1〜約1.0重量%のレベルで存在する。
【0079】
有用なエポキシ化合物若しくはエポキシ樹脂には、エポン(Epon)(登録商標)1002F、1009Fまたは1031(テキサス州ヒューストンのレゾリューション・パフォーマンス・プロダクツ(Resolution Performance Products(Houston,TX)))、あるいはアラルダイト(Araldite)(登録商標)GT7099またはGT6099(カリフォルニア州ロサンゼルスのハンツマン・アドバンスド・マテリアルズ・アメリカズ・インコーポレーテッド(Huntsman Advanced Materials Americas Inc.(Los Angeles,CA)))が挙げられる。場合によってエポキシ化合物若しくはエポキシ樹脂が溶融粘度を安定化する、および/または組成物の色安定性を改善することが考えられる。後者は、外観部品をペイントまたは他の塗料で被覆しない時には特に重要である。
【0080】
好ましいいずれかの原料および/または原料の量を本明細書における他の好ましいいずれかの原料および/または原料の量と組み合わせてもよいことは理解されるべきである。
【0081】
(溶融混合)
本明細書に記載された組成物は、典型的な溶融混合技術によって製造することが可能である。例えば、一軸スクリュー押出機または二軸スクリュー押出機あるいは混練機に原料を添加してもよく、通常の方式で原料を混合してもよい。材料を混合した後、材料を溶融成形機にフィードするために適するペレットまたは他の粒子に成形(切断)してもよい。射出成形、熱成形または押出あるいはこれらの方法のいずれかの組み合わせなどの溶融成形は熱可塑性樹脂のために有用な方法によって行うことが可能である。充填剤、可塑剤および潤滑剤(離型剤)などの原料の幾つかは、押出機の1つまたは複数の下流点で添加して、充填剤などの固体の磨耗を減らし、および/または分散を改善し、および/または比較的熱的に不安定な原料の熱履歴を減らし、および/または揮発性原料の蒸発による損失を減らしてもよい。
【0082】
ポリエステルナノ複合材(組成物)の溶融物に対する「溶融混合」または剪断応力のより精密な付加は、既に形成されたナノ複合材(組成物)へのナノ粒子のより良好な分散を時にはもたらすことも注目される。従って、溶融物の剪断によって初期に形成されたナノ複合材(組成物)のポスト処理は好ましいプロセスである。これは、分散の改善に向けて単純に決定されたプロセスであることが可能であるか、または、他の材料中の混合および/またはナノ複合材組成物の溶融成形のようなもう1つの理由でポリエステル複合材を液化し剪断にかける時により好ましくは行われる。この目的のための装置の有用なタイプには、一軸スクリュー押出機および二軸スクリュー押出機ならびに混練機が挙げられる。
【0083】
上で述べたように、ポリエステルの融点(またはポリエステルが非晶質である場合、ガラス転移温度)より高く組成物を加熱し(および従ってポリエステルを液化させる)、その後、組成物を固化するとともに成形品を成形するために融点より低く組成物を冷却することにより、本組成物の部品を製造してもよい。部品は、好ましくは融点より少なくとも50℃低く、より好ましくは融点より少なくとも100℃低く冷却される。最も一般的には、最後に組成物は周囲温度、最も典型的には15〜45℃に冷却される。
【0084】
(外観部品)
(存在する追加の任意の原料を有する時にしばしば)本明細書に記載された組成物は、表面外観が重要である部品である「外観部品」として特に有用である。これは、組成物の表面を直接見るか否かまたはペイントまたは金属などのもう1つの材料で表面が被覆されるか否かを問わず当てはまる。こうした部品には、フェンダー、ファイシア、フック、タンクフラップおよび他の外装部品などの自動車ボディパネル、自動車内装パネル;、ハンドル、コントロールパネル、シャーシー(ケース)、洗濯槽および外装部品、内部または外部の冷凍機パネルおよび皿洗い機のフロントパネルまたは内装パネルなどの電気器具部品、ドリルおよび鋸などの電動工具ハウジング、パソコンハウジング、プリンタハウジング、周辺装置ハウジング、サーバーハウジングなどの電子キャビネットおよびハウジング、列車、トラクター、芝刈り機デッキ、トラック、スノーモービル、航空機、および船舶などの車両のための外装パネルおよび内装パネル、建物のための装飾内装パネル、オフィスおよび/または家庭の椅子およびテーブルなどの家具、電話機および他の電話装置が挙げられる。上述したように、これらの部品は塗装(被覆)してもよく、または組成物の色で塗装しないままであってもよい。ポリエステル部品を被覆するために設計される、いかなる被覆プロセスも用いてよい。塗料は、浸漬、吹付、静電吹付などによって適用させてもよい。
【0085】
組成物は顔料および/または染料で着色してもよく、非常に多くの色の変化が可能である。組成物から製造された部品の着色のこのタイプは特に経済的に魅力的である。こうした部品を1つまたは複数の追加工程で後で被覆(塗装)する必要がないからである。画像の極度に高い光沢および/または明瞭性を必要としない場合、これは、しばしば被覆に対するより良好な総合的選択肢である。あるいは、もちろん、この組成物から製造された部品を被覆(塗装)してもよい。
【0086】
これらの組成物(またはその変種)から製造された部品の表面を着色するもう1つの方法は染料昇華(印刷)プロセスである。
【0087】
(自動車ボディを被覆する方法)
上述したように、本組成物またはその変種は、自動車部品、特に自動車(乗用車)ボディのために用いてもよい。自動車ボディは、単純に塗料を「上に塗装」するより多少複雑な被覆プロセスを一般に必要とする。現在、混合構造において金属部品およびプラスチック部品から組み立てられた被覆乗用車ボディの製造に対する3つの異なるアプローチがある。
【0088】
1.オフラインプロセスとして知られている方法。この方法では、金属乗用車ボディとプラスチック部品は別個に被覆され、その後、組み立てられる。
【0089】
オフラインプロセスの欠点は、被覆されたプラスチック部品と被覆された金属部品が、例えば、一平面において被覆された部品および/または被覆された部品の配置の目視的に継目のない近接のゆえに、構造の理由で直接目視比較を受ける場合に少なくとも、被覆された金属表面とプラスチック表面の目視調和の欠如の受けやすさである。
【0090】
更なる欠点は2つの被覆ラインを運転する必要性である。
【0091】
2.インラインプロセスとして知られている方法。この方法では、プライマとして電着コーティングを既に与えられた金属ボディおよび非被覆プラスチック部品またはプラスチックプライマを任意に与えられたのみのプラスチック部品は組み立てられ、後続の一般被覆プロセスで1つまたは複数の更なるコーティング層を与えられる。
【0092】
インラインプロセスの欠点は、更なる被覆プロセスに汚れを導入する危険も含む妨害的中間工程として被覆プロセスに挿入された組み立て工程である。
【0093】
3.オンラインプロセスとして知られている方法。この方法では、金属部品および非被覆プラスチック部品またはプラスチックプライマを任意に与えられたのみのプラスチック部品から製造された非被覆ボディ部品は混合構造で作られたボディに組み立てられ、その後、電着コーティングを含む一般被覆プロセスを通過する。ここで、自然に導電性金属部品のみに電着コーティングが与えられる一方で、後で適用されるべきすべてのコーティング層は、電着コーティング金属部品とプラスチック部品の両方に適用される。
【0094】
オンラインプロセスは、ボディベースシェル構造と被覆プロセスを明確に分離し、乱されていない被覆シーケンスを可能にするので特に好ましい。
【0095】
電着コーティングを乾燥させる際に高温を用いるので、基本的には、適切に耐熱性で同時に耐熱変形性のプラスチック材料のみが特に好ましいオンラインプロセスのために適する。
【0096】
可視の金属表面およびプラスチック表面を有する、金属部品および(組成が本明細書に記載されている)少なくとも1つのプラスチック部品から組み立てられた基材乗用車ボディの被覆は以下の逐次工程を含む。
(1)基材を電着コーティングし、基材から非沈着電着コーティング薬剤を除去し、沈着電着コーティングを熱で架橋し、それによって金属表面上に電着コーティングプライマを形成させる。
(2)すべての可視の金属表面およびプラスチック表面の少なくとも上に少なくとも1つの追加のコーティングを適用し、硬化させる。ここで、基材の可視プラスチック表面を構成するプラスチック部品の少なくとも1つは本明細書に記載した組成物を有する。
【0097】
それらが被覆された時、(本明細書に記載された組成物の)プラスチック部品は、例えば、UV線、火炎処理またはプラズマ処理によって従来の方式で前処理してもよいか、または当業者に知られている従来のプラスチックプライマ、特に静電的に補助された被覆適性のために適切な導電性をプラスチック部品に与える導電性プライマで被覆してもよく、その後、それらは金属部品と合わせて組み立てられる。
【0098】
プラスチックプライマを任意に与えられた金属部品および少なくとも1つのプラスチック部品は、例えば、ねじ込み、クリッピングおよび/または接着によって当業者に知られている従来の方式で組み立てられて、本発明による方法によって被覆されるべき基材を形成させる。
【0099】
可能な最小ジョイント幅を有し、特に隣接金属部品と同じ平面にもある基材の少なくとも当該プラスチック部品は金属部品と合わせて組み立てられる。
【0100】
任意に、少なくとも1つのプラスチック部品とは組成が一般に異なり、耐熱変形性が一般により低いボディからなお欠落している更なるプラスチック部品(たとえあるとしても)を本発明による方法の工程(1)の完了後に取り付けることが可能であり、工程(2)(上述したインラインプロセスと比較すること)の更なる被覆プロセスにかけることも可能であり、および/または仕上げ被覆形態を取って本発明による方法(上述したオフラインプロセスと比較すること)の完了後に取り付けることが可能である。
【0101】
好ましくは静電的に補助された吹付被覆によって本発明による方法の工程(2)において行われる少なくとも1層の更なるコーティング層の適用を考慮して、金属部品とプラスチック部品が互いに絶縁されていないように金属部品とプラスチック部品を組み立てるならば、それは適切である。例えば、導電性プライマと金属との間の直接電気接触は、直接接触によって、または導電性接続エレメント、例えば金属スクリューを経由して確保することが可能である。
【0102】
金属部品上に腐食防止プライマ層を製造するために、本発明による方法の工程(1)において金属部品と少なくとも1つのプラスチック部品から組み立てられた基材は当業者に知られている従来の方式で電着コーティング浴内で被覆される。
【0103】
適する電着コーティング薬剤には、例えば10〜30重量%の固体含有率を有する従来の水性塗料組成物が挙げられる。
【0104】
電着コーティング組成物は、当業者に知られている従来の陽極電着コーティング薬剤であってもよい。陽極電着コーティング組成物の結合剤基礎原料は随意に選択してもよい。陽極電着結合剤の例は、ポリエステル、エポキシ樹脂エステル、(メタ)アクリルコポリマー樹脂、重量平均分子量(Mw)が例えば300〜10,000であり、カルボキシル基含有率が例えば35〜300mgOH/gの酸価に対応するメラニエ油またはポリブタジエン油である。カルボキシル基の少なくとも一部は、塩基による中和によってカルボキシレート基に変換される。これらの結合剤は自己架橋性であってもよく、または別個の架橋剤により架橋されてもよい。
【0105】
好ましくは、当業者に知られている従来の陰極電着コーティング薬剤は、電着コーティング層の適用のために本発明による方法において用いられる。陰極電着コーティング組成物は、カチオン基またはカチオン基に変換され得る基、例えば塩基性基を有する結合剤を含む。例には、アミノ基、アンモニウム基、例えば、第四アンモニウム基、ホスホニウム基および/またはスルホニウム基が挙げられる。窒素含有塩基性基は好ましい。前記基は第四化形態で存在してもよいか、または従来の中和剤、例えば、蟻酸、乳酸、メタンスルホン酸または酢酸などの例えば有機モノカルボン酸によりカチオン基に変換される。塩基性樹脂の例は、例えば20〜200mgKOH/gのアミン価に対応する第一、第二および/または第三アミノ基を有する樹脂である。結合剤の重量平均分子量(Mw)は好ましくは300〜10,000である。こうした結合剤の例は、アミノ(メタ)アクリル樹脂、アミノエポキシ樹脂、末端二重結合を有するアミノエポキシ樹脂、第一OH基を有するアミノエポキシ樹脂、アミノポリウレタン樹脂、アミノ基含有ポリブタジエン樹脂または修飾エポキシ樹脂−二酸化炭素−アミン反応生成物である。これらの結合剤は自己架橋性であってもよいか、または混合物の中で既知の架橋剤と合わせて用いてもよい。こうした架橋剤の例には、アミノプラスチック樹脂、遮断ポリイソシアネート、末端二重結合を有する架橋剤、ポリエポキシ化合物またはエステル交換できる基を含む架橋剤が挙げられる。
【0106】
結合剤および別個のいずれかの架橋剤の他に、電着コーティング組成物は、顔料、充填剤および/または従来の塗料添加剤を含んでもよい。適する顔料の例には、従来の無機および/または有機の着色顔料および/またはカーボンブラック、二酸化チタン、酸化鉄顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、カオリン、タルクまたは二酸化珪素などの充填剤が挙げられる。添加剤の例には、特に、湿潤剤、中和剤、均染剤、触媒、腐食抑制剤、凹み防止剤、消泡剤、溶媒が挙げられる。
【0107】
電着コーティングは、例えば200〜500Vの電着電圧で当業者に知られている従来の方式で行われる。電着コーティングの沈着後に、基材は、例えば水でのリンスによって当業者に知られている従来の方式で、過剰且つ接着しているが沈着しなかった電着コーティングから清浄化される。その後、基材は、例えば200℃以下の物体温度に応じて例えば220℃以下の炉温度で焼成して電着コーティングを架橋させる。
【0108】
工程2に関する電着プロセスまたは静電吹付被覆を用いる時、プラスチック部品が帯電してもよいように、被覆されるべきプラスチック部品が多少導電性であることが好ましい。プラスチック部品が帯電される時、プラスチック部品は、吹付される塗料またはプラスチック部品が浸漬されている塗料の逆に帯電した小粒子または小滴を引き付け、よって部品の被覆を促進する。プラスチックは、カーボンブラック、炭素繊維または金属繊維などの導電性繊維をプラスチックに導入することにより導電性にしてもしてよい。
【0109】
本発明による方法の後続工程(2)において、少なくとも1層の更なるコーティング層は、好ましくは吹付塗布、特に静電的に補助された吹付塗布によって、こうして得られた基材上のすべての可視の金属表面およびプラスチック表面に少なくとも適用され、金属表面上に焼成電着コーティング層を与えられるのみである。
【0110】
唯一の更なるコーティング層が適用される場合、これは、一般に顔料入りトップコートである。しかし、2層以上の更なるコーティング層を適用させることが好ましい。複数の被覆層から形成された従来の多コート構造の例は、
−プライマ表面/トップコート、
−プライマ表面/ベースコート/クリアコート、
−ベースコート/クリアコート、
−プライマ表面代用層/ベースコート/クリアコート
である。
【0111】
プライマ表面またはプライマ表面代用コーティングは、石破片保護および表面平準化のために主として用いられ、環境作用に対する保護を提供するとともに顔料入りトップコートまたは色産出ベースコートおよび/または効果産出ベースコートおよび保護クリアコートから製造される後続装飾トップコートのための表面を調製する。
【0112】
例として挙げた多コート構造も、透明シールコートを有する表面全体または表面の一部の上に提供してよく、特に、高い耐引掻性を提供する。
【0113】
電着コーティング層の後に続くすべてのこれらのコーティング層は、関連したコーティング層を適用させるために当業者に周知されている従来の塗布薬剤から適用させてもよい。これは、例えば、希釈剤として水および/または有機溶媒あるいは粉末塗布薬剤を含むそれぞれの液体塗布薬剤であることが可能である。塗布薬剤は単一成分薬剤または多成分塗布薬剤であってもよい。塗布薬剤は物理的に乾燥していてもよいか、または酸化によってあるいは化学的に架橋性であってもよい。特に、プライマ表面、トップコート、クリアコートおよびシールコートにおいて、これらは、熱的に硬化され得る(対流によって、および/または赤外線照射によって)、および/またはエネルギーに富む放射線、特に紫外線の作用によって硬化され得る一般に化学架橋系である。
【0114】
本発明による方法の工程(2)で2層以上のコーティング層を適用させる場合、コーティング層は、基本的にそれぞれの後続のコーティング層の適用の前に別個に硬化される必要はない。そうでなく、コーティング層は、少なくとも2層のコーティング層が一緒に硬化される当業者に知られているウェットオンウェット原理により適用され得る。任意に短いフラッシュオフ段階が後に続く、特に、例えば、ベースコートおよびベースコートの適用後のクリアコートの場合、クリアコートは適用され、ベースコートと合わせて硬化される。
【0115】
本発明によるオンラインプロセスは、金属部品および熱可塑性樹脂に基づくとともに適切に耐熱変形性であるプラスチック部品からの混合構造で組み立てられた基材を被覆プラスチック表面と被覆金属表面の視覚的印象の優れた調和によって被覆することを可能にする。
【0116】
(非外観部品)
非外観部品もこれらの組成物で製造してもよい。これらは、表面外観が重要ではない部品である。こうした部品には、いわゆるエンジニアリング熱可塑性樹脂で今製造されている部品、特に、剛性、靱性および引張強度などの組成物の物理的特性を強化するために設計されている材料で充填されている部品が挙げられる。ナノ複合材組成物は、特にナノ複合材組成物中のクレーの濃度が比較的低い時、溶融粘度などの他の特性に悪影響を及ぼさずに多くの場合にこれらの特性を強化することが考えられる。
【実施例】
【0117】
略語の意味は次の通りである。「min」は分を意味する。「mL」はミリリットルを意味する。「g」はグラムを意味する。「mg」はミリグラムを意味する。「mmol」はミリモルを意味する。「mtorr」はミリトルを意味する。「wt%」は重量%を意味する。「ppm」はパーツパーミリオンを意味する。「tg」はガラス転移温度を意味する。「tm」は融点を意味する。「IV」は固有粘度を意味する。「Mn」は数平均分子量を意味する。「PDI」は多分散性指数を意味し、重量平均分子量を「Mn」で除したものである。「NMR」は核磁気共鳴を意味する。「DSC」は示差走査熱分析を意味する。「TEM」は透過電子顕微鏡を意味する。
【0118】
(材料)
ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)、酸化アンチモン(99%)および酢酸マンガン(99%)は、アルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company)(米国ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,WI,USA)から購入した。第四アンモニウム塩で修飾されたナトリウムモンモリロナイトであるナトリウムクロイサイト(Sodium Cloisite)(登録商標)25Aは、サザーン・クレー・プロダクツ・インコーポレーテッド(Southern Clay Products,Inc.)(米国テキサス州ゴンザレス(Gonzales,TX,USA))から購入した。スーパーフレックス(Super−Pflex)(登録商標)200PCC(沈降炭酸カルシウム、平均径0.7マイクロメートル、2%ステアリン酸表面被覆)およびウルトラフレックス(Ultra−Pflex)(登録商標)PCC(平均径0.07マイクロメートル)はスペシャルティ・ミネラルズ・インコーポレーテッド(Specialty Minerals Inc.(米国ペンシルバニア州ベツレヘム(Bethlehem,PA,USA))から購入した。
【0119】
パンゲル(Pangel)(登録商標)B20海泡石およびパンゲル(Pangel)(登録商標)S9海泡石は、製造業者トルサS.A.(Tolsa S.A.)(スペイン国マドリード28001(Madrid28001,Spain))のためのディストリビュータであるEM・サリバン・アソーシエーツ・インコーポレーテッド(EM Sullivan Associates,Inc.)(米国ペンシルバニア州パオリ(Paoli,PA,USA))から購入した。パンゲル(Pangel)(登録商標)の「B」グレードが「有機的に修飾された」表面を有することが報告されており、おそらくは、それらの上に有機コーティングを有する。パンゲル(Pangel)(登録商標)S9が非修飾表面を有することが考えられる。
【0120】
(ポリマーのキャラクタリゼーション)
ウォーターズ(Waters)(登録商標)410屈折率検出器(DRI)および静的直角光分散および微分毛細管粘度計検出器を組み込んだビスコテック・コーポレーション(Viscotek Corp.)(米国テキサス州ヒューストン(Houston,TX,USA))製のモデルT−60A(商標)二重検出器モジュールを備えたウォーターズ・コーポレーション(Waters Corporation)(米国マサチューセッツ州ミルフォード(Milford,MA,USA))製のモデル・アライアンス(Model Alliance)(登録商標)2690よりなるサイズ排除クロマトグラフィシステムを分子量のキャラクタリゼーションのために用いた。移動相は0.01Mトリフルオロ酢酸ナトリウム入りの1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)であった。dn/dcをポリマーに関して測定し、サンプルのすべてが測定中に完全に溶出されたと仮定した。
【0121】
1H NMRを用いてジエチレングリコール(DEG)含有率(重量%)を決定した。
【0122】
(融点およびガラス転移温度)
ガラス転移温度および融点は10℃/分の加熱速度を用いてASTM方法D3418−12を用いる示差走査熱分析によって決定し、融点は第一熱に関して測定した。融点は融解吸熱量のピークとして採用し、ガラス転移温度は転移の中点として採用した。
【0123】
(結晶化ハーフタイム(t1/2))
1つのサンプル調製方法において、サンプルを単純にそのまま用いた。もう1つの方法において、サンプルを290℃に加熱し、液体窒素中で急冷した。いずれの調製方法でも、その後、サンプルを200℃/分の速度で所望の温度に加熱し、DSCで結晶化発熱量を当該温度で追跡した。その後、経時的に作成した発熱量曲線から当該温度における結晶化半減期を計算した。
【0124】
(計器衝撃試験)
この試験は、重量7.3kg(16ポンド)の秤量された直径1.27cm(1/2インチ)の半球計刃付タップが、厚さ0.32(1/8インチ)成形プラクを通して1.09mから落下するにつれて時間に対する力を測定する。これは、プラクを叩く時に4.5m/秒の公称タップ速度を与える。プラクは、トップと底の表面上でクランプされ、クランプの両側は共直線3.81cm(1.5インチ)径の孔を有し、タップはこれらの孔の中心でプラクを叩く。加速度計がタップに取り付けられ、衝撃中の力をディジタルで記録する。破壊に至る最大力およびトータルエネルギーをデータから計算する。報告されるデータは3回の測定の平均である。
【0125】
(引張弾性率、引張強度および引張伸び)
5.08cm(2インチ)/分の伸び速度でASTM方法D256を用いて測定した。
【0126】
(曲げ弾性率(3点))
ASTM方法D790を用いて測定した。
【0127】
実施例において、すべての部は重量部である。
【0128】
(粘度)
米国ペンシルバニア州モルガンタウンのカイネス・コーポレーション(Kayness Corp.Morgantown,PA,USA))製のカイネス(Kayness)モデル8052粘度計を用いて280℃および1000/秒の剪断速度で決定した。オリフィスは、長さ1.52cm(0.600インチ)および直径0.0762cm(0.030インチ)であった。保圧時間は、単純に、サンプルを粘度計に添加した後に且つ測定が始まる前に経過した時間の量であり、6分であった。
【0129】
(実施例1)
BHET(300g、1.17モル)、海泡石(パンゲル(Pangel)(登録商標)S9、9g)、酸化アンチモン(96.5mg、321ppm)および酢酸マンガン(102mg、340ppm)を500mLの三口丸底フラスコに投入した。上部スターラーを取り付け、蒸留コンデンサを取り付けた。軽微な窒素フラッシュ下で反応を180℃に加熱した。反応を180℃で90分にわたり保持した。反応温度を225℃に上げた。反応温度を225℃で30分にわたり保持した。反応温度を1℃/分の速度で295℃に上げた。温度が295℃に達した時、反応温度を30分にわたり一定に保持した。窒素フラッシュを止め、真空をゆっくり導入した。15分後、真空を完全真空に上げ、最終的に5Paの真空に達した。反応を約120分にわたり真空下で維持した。Mn=26000、PDI=1.81、%DEG=13重量%、IV=0.9、Tg=65℃、Tm=228℃。TEMを用いて、こうして製造された材料を特性決定した。TEMによると、海泡石クレーが剥離され、ポリマーに分散していることが示された(図1)。
【0130】
(実施例2)
BHET(300g、1.17モル)、海泡石(パンゲル(Pangel)(登録商標)B20、9g)、酸化アンチモン(96.5mg、321ppm)および酢酸マンガン(102mg、340ppm)を500mLの三口丸底フラスコに投入した。上部スターラーを取り付け、蒸留コンデンサを取り付けた。軽微な窒素フラッシュ下で反応を180℃に加熱した。反応を180℃で90分にわたり保持した。反応温度を225℃に上げた。反応温度を225℃で30分にわたり保持した。反応温度を1℃/分の速度で295℃に上げた。温度が295℃に達した時、反応温度を30分にわたり一定に保持した。窒素フラッシュを止め、真空をゆっくり導入した。15分後、真空を完全真空に上げ、最終的に5Paの真空に達した。反応を約120分にわたり真空下で維持した。Mn=26400、PDI=1.88、%DEG=6重量%、IV=0.8、Tg=78℃、Tm=248℃。TEMを用いて、こうして製造された材料を特性決定した。TEMによると、海泡石クレーが剥離され、ポリマーに分散していることが示された(図2)。
【0131】
(比較例A)
BHET(300g、1.17モル)、ナトリウムクロイサイト(Sodium Cloisite)(9g)、酸化アンチモン(96.5mg、321ppm)および酢酸マンガン(102mg、340ppm)を500mLの三口丸底フラスコに投入した。上部スターラーを取り付け、蒸留コンデンサを取り付けた。軽微な窒素フラッシュ下で反応を180℃に加熱した。反応を180℃で90分にわたり保持した。反応温度を225℃に上げた。反応温度を225℃で30分にわたり保持した。反応温度を1℃/分の速度で295℃に上げた。温度が295℃に達した時、反応温度を30分にわたり一定に保持した。窒素フラッシュを止め、真空をゆっくり導入した。15分後、真空を完全真空に上げ、最終的に5Paの真空に達した。反応を約120分にわたり真空下で維持した。Mn=55300、%DEG=13重量%、IV=0.8、Tg=69℃、Tm=223℃。TEMを用いて、こうして製造された材料を特性決定した。TEMによると、ナトリウムクロイサイト(Sodium Cloisite)(登録商標)25A充填剤が凝集体として存在していることが示された(図3)。
【0132】
(比較例B)
BHET(250g、0.975モル)、ウルトラフレックス(Ultra−Pflex)(登録商標)(6.25g)、酸化アンチモン(85mg、340ppm)および酢酸マンガン(85mg、340ppm)を500mLの三口丸底フラスコに投入した。上部スターラーを取り付け、蒸留コンデンサを取り付けた。軽微な窒素フラッシュ下で反応を180℃に加熱した。反応を180℃で90分にわたり保持した。反応温度を225℃に上げた。反応温度を225℃で30分にわたり保持した。反応温度を1℃/分の速度で295℃に上げた。温度が295℃に達した時、反応温度を30分にわたり一定に保持した。窒素フラッシュを止め、真空をゆっくり導入した。15分後、真空を完全真空に上げ、最終的に5Paの真空に達した。反応を約120分にわたり真空下で維持した。Mn=33200、%DEG=5重量%、IV=0.9、Tg=83℃、Tm=243℃。
【0133】
TEMを用いて、こうして製造された材料を特性決定した。TEMによると、充填剤が小さい比率のプレート様構造を有する凝集体として存在していることが示された(図4)。
【0134】
(比較例C)
BHET(250g、0.975モル)、スーパーフレックス(Super−Pflex)(登録商標)200(6.75g)、酸化アンチモン(80.4mg、321ppm)および酢酸マンガン(85mg、340ppm)を500mLの三口丸底フラスコに投入した。上部スターラーを取り付け、蒸留コンデンサを取り付けた。軽微な窒素フラッシュ下で反応を180℃に加熱した。反応を180℃で90分にわたり保持した。反応温度を225℃に上げた。反応温度を225℃で30分にわたり保持した。反応温度を1℃/分の速度で295℃に上げた。温度が295℃に達した時、反応温度を30分にわたり一定に保持した。窒素フラッシュを止め、真空をゆっくり導入した。15分後、真空を完全真空に上げ、最終的に5Paの真空に達した。反応を約120分にわたり真空下で維持した。Mn=33200、%DEG=5重量%、IV=0.9、Tg=83℃、Tm=243℃。TEMを用いて、こうして製造された材料を特性決定した。TEMによると、充填剤が典型的に直径1マイクロメートルの凝集体として存在していることが示された(図5)。
【0135】
(実施例3)
BHET(300g、1.17モル)、海泡石クレーパンゲル(Pangel)(登録商標)S9、6g)、酸化アンチモン(80mg、343ppm)および酢酸ナトリウム(80mg、343ppm)を500mLの三口丸底フラスコに投入した。上部スターラーを取り付け、蒸留コンデンサを取り付けた。軽微な窒素フラッシュ下で反応を180℃に加熱した。反応を180℃で90分にわたり保持した。反応温度を225℃に上げた。反応温度を225℃で30分にわたり保持した。反応温度を1℃/分の速度で295℃に上げた。温度が295℃に達した時、反応温度を30分にわたり一定に保持した。窒素フラッシュを止め、真空をゆっくり導入した。15分後、真空を完全真空に上げ、最終的に5Paの真空に達した。反応を約120分にわたり真空下で維持した。反応を窒素パージ下で冷却した。
【0136】
mおよびTgを上述した通り決定し、t1/2を110、120および130℃で決定した。結果を表1に提示している。
【0137】
(実施例4)
BHET(150g)、パンゲル(Pangel)(登録商標)B5海泡石クレー(4.5g)、酸化アンチモン(0.046mg、300ppm)および酢酸マンガン(16mg、100ppm)を500mLの三口丸底フラスコに投入した。上部スターラーを取り付け、蒸留コンデンサを取り付けた。軽微な窒素フラッシュ下で反応を180℃に加熱した。反応を180℃で90分にわたり保持した。反応温度を225℃に上げた。反応温度を225℃で30分にわたり保持した。反応温度を1℃/分の速度で295℃に上げた。温度が295℃に達した時、反応温度を30分にわたり一定に保持した。窒素フラッシュを止め、真空をゆっくり導入した。15分後、真空を完全真空に上げ、最終的に5Paの真空に達した。反応を約120分にわたり真空下で維持した。反応を窒素パージ下で冷却した。
【0138】
mおよびTgを上述した通り決定し、t1/2を110、120、125および135℃で決定した。結果を表1に提示している。
【0139】
(実施例5〜7)
ポリエステル/海泡石組成物を実施例2に記載されたように調製したが、パンゲル(Pangel)(登録商標)B5の代わりに以下のパンゲル(Pangel)(登録商標)海泡石クレーを用いた。
【0140】
【表1】

【0141】
1/2を110、120および130℃または110、120、125および135℃で決定した。結果を表1に提示している。
【0142】
(比較例D)
有機的に修飾されたモンモリロナイト(OMMT)を(非特許文献7)に記載されたように調製した。調製したばかりのOMMTを以下の重合で用いた。BHET(300g、1.17モル)、OMMT(0MMT、6.9g)、酸化アンチモン(79mg、300ppm)および酢酸マンガン(22mg、100ppm)を500mLの三口丸底フラスコに投入した。上部スターラーを取り付け、蒸留コンデンサを取り付けた。軽微な窒素フラッシュ下で反応を180℃に加熱した。反応を180℃で90分にわたり保持した。反応温度を225℃に上げた。反応温度を225℃で30分にわたり保持した。反応温度を1℃/分の速度で295℃に上げた。温度が295℃に達した時、反応温度を30分にわたり一定に保持した。窒素フラッシュを止め、真空をゆっくり導入した。15分後、真空を完全真空に上げ、最終的に5Paの真空に達した。反応を約120分にわたり真空下で維持した。反応を窒素パージ下で冷却した。
【0143】
mおよびTgを上述した通り決定し、t1/2を110、120および130℃で決定した。結果を表1に提示している。
【0144】
(比較例E)
BHET(300g、1.17モル)、酸化アンチモン(79mg、300ppm)および酢酸マンガン(22mg、100ppm)を500mLの三口丸底フラスコに投入した。上部スターラーを取り付け、蒸留コンデンサを取り付けた。軽微な窒素フラッシュ下で反応を180℃に加熱した。反応を180℃で90分にわたり保持した。反応温度を225℃に上げた。反応温度を225℃で30分にわたり保持した。反応温度を1℃/分の速度で295℃に上げた。温度が295℃に達した時、反応温度を30分にわたり一定に保持した。窒素フラッシュを止め、真空をゆっくり導入した。15分後、真空を完全真空に上げ、最終的に5Paの真空に達した。反応を約120分にわたり真空下で維持した。反応を窒素パージ下で冷却した。
【0145】
mおよびTgを上述した通り決定し、t1/2を110、120および130℃で決定した。結果を表1に提示している。
【0146】
【表2】

【0147】
(実施例11)
モノマー反応器および3つの直列重合反応器からなる4容器連続重合プロセスシステムの中でポリエチレンテレフタレートを製造した。モノマー反応器(エステル交換器)は220℃〜230℃おとび大気圧で運転される円柱状垂直容器であった。この容器は溶融ジメチルテレフタレート(DMT)およびポリマーグレードのエチレングリコール(EG)を化学的に反応させて、ポリエステルモノマーをもたらす。エステル交換器は、反応器のトレー区画からモノマーを集める円柱状底区画上に置かれている高さ7.0mおよび直径2.1mの円柱状トレー蒸留カラムからなる。DMTおよびEGを反応器のトレー区画にフィードした。反応がトレー上で進行するにつれて、形成されたモノマーは反応器を下り、副生物メタノールはカラムを上昇した。EG中の溶液に酢酸マンガン[II]四水和物を添加することにより反応に触媒作用を及ぼした。最後の3つの容器の目的は、反応塊からEGを除去して、重縮合反応を推進するとともにポリマーの分子量を上げることであった。この重合反応は、完成されたモノマーストリームに添加されたEG中の溶液に酸化アンチモン(Sb23)を添加することにより、この重合反応に触媒作用を及ぼした。この重合シリーズの最初の容器(フラッシャー)は255℃および8.5kPa絶対圧力で運転された1.73m3の攪拌されていない容器であった。第2の容器は288℃および1.2kPa絶対圧力で運転され攪拌された4.56m3の容器(プレ重合機)であった。第3の容器(仕上機)は292℃および350Pa絶対圧力で運転された8.38m3の水平円柱反応器であった。最終状態にあるポリマーを「仕上機」からポンプで送り、ストランドに押し出し、ポリマーが固化するまで冷却し、その後、95〜100個のペレットが2.5gの重量であるサイズのペレットに切断した。
【0148】
重合反応器の圧力を調節することによりポリマーの分子量を主として制御した。ポリマーの溶融粘度を仕上機の出口で測定した。この測定は、ポリマーの分子量と相関関係にあり、仕上機の真空を調節するためにリアルタイム制御点として用いた。より高い圧力は、分子量確立の速度を上げる。より低い圧力はその速度を下げる。
【0149】
この実施例において、907kg/hのDMTおよび454kg/hのEGをエステル交換器のトレー区画にフィードした。更に、EGストリームは、酢酸マンガン四水和物の0.018重量%溶液を含んでいた。モノマーであるビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を分離し、カラムの底に移送した。どの時点においても、約2180kgのポリエステル中間体またはポリエステルをエステル交換器の底区画に含み、1630kgをフラッシャーに含み、1620kgをプレ重合機に含み、1610kgを仕上機に含んでいた。
【0150】
別個の工程において、227kgのパンゲル(Pangel)(登録商標)S9海泡石を3790Lのタンク中の2270kgのEGに添加し、直径20.3cmのプロペラ式攪拌機を用いて粘性スラリーにブレンドした。渦巻ポンプを用いて固体9重量%の得られたスラリーを集合タンクにポンプで送った。ギヤポンプを用いて303kg/hで集合タンクのスラリーを連続重合プロセスに制御された速度でフィードし、エステル交換器の底開放区画に入れた。これは、ポリエステル中に3.0重量%の海泡石がある最終製品をもたらした。
【0151】
別個の工程において、エチレングリコール中の酢酸カリウムの2.5重量%溶液をエステル交換器とフラッシャーとの間の移送ラインの中でモノマーに添加した。重合触媒、酸化アンチモンなどの他の添加剤もこの同じ位置でモノマーに注入した。
【0152】
(実施例12〜13および比較例F−I)
実施例11で製造された組成物から、および重合において海泡石を含まなかった類似のポリ(エチレンテレフタレート)から、サンプルを調製した。13のバレル区画を有するウェルナー&プフライデラー(Werner & Pfleiderer)製の30mm二軸スクリュー押出機で溶融混合することにより組成物を製造した。バレル1にフィードしたロキシオール(Loxiol)(登録商標)HOB7119および押出機のフロント付近に注入されたプラストホール(Plasthall)(登録商標)809を除き、原料のすべてを後方でフィードした。用いたスクリュー構成が相当に厳密であったので、良好な混合(高剪断)を得た。押出条件は、360rpm、27kg/hの押出速度であった。バレル2を180℃に設定し、バレル3を250℃に設定し、バレル4−13を290℃に設定し、その後、押出機から出て冷却した後、材料をペレット化した。組成および特性を表2に示している。試験片を射出成形し、種々の試験を行った。これらの結果も表2に示している。
【0153】
【表3】

【0154】
溶融粘度は、比較例FおよびHが溶融ブレンディングにおいて多少加水分解を被った場合があるけれども、組成物が似た分子量のポリエステルを含んでいることを示している。実施例12および13の組成物の特性が、優れた靱性をなお有しつつ良好な剛性(曲げ弾性率)および引張強度を示している。高い剛性と靱性の組み合わせは、その組み合わせが強化(ポリマーA)されているか否かを問わずしばしば達成するのが困難である。
【0155】
(実施例14)
窒素フラッシュ付きアダプター、攪拌付きミキサーコントローラー、真空トラップに接続されたドライアイストラップ付きコンデンサに250mLの三口丸底フラスコを接続した。次に、1,4−ブタンジオール(100g)およびパンゲル(Pangel)(登録商標)B20(2g)を添加し、窒素下で30分にわたり攪拌した。ジメチルテレフタレート(106g)およびTi(ブトキシド)4(0.06g)をフラスコに添加した。軽微な窒素フラッシュをゆっくり行いつつ反応混合物を2時間にわたり190℃に加熱した。その後、反応を高真空下で3時間にわたり260℃に加熱した。サイズ排除クロマトグラフィの結果はMn=28100、Mw=58600であり、DSCによる結果はTg=44.0℃、Tm=223.1℃であった。この組成物の透過電子顕微鏡写真は、その最小径が100nm未満である、しばしば繊維様の多くの粒子を示した。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】3重量%の海泡石(パンゲル(Pangel)(登録商標)S9)を含むPETの透過電子顕微鏡写真である。
【図2】3重量%の海泡石(パンゲル(Pangel)(登録商標)B20)を含むPETの透過電子顕微鏡写真である。
【図3】2.5重量%のナトリウムクロイサイト(Sodium Cloisite)(登録商標)25Aを含むPETの透過電子顕微鏡写真である。
【図4】2.5重量%のウルトラフレックス(Ultra−Pflex)(登録商標)PCCを含むPETの透過電子顕微鏡写真である。
【図5】3重量%のスーパーフレックス(Super−Pflex)(登録商標)200PCCを含むPETの透過電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリエステル含有組成物を製造する方法であって、
a.少なくとも1種の二酸またはジエステルおよび少なくとも1種のジオール、
b.少なくとも1種の重合可能なポリエステルモノマー、
c.少なくとも1種の線状ポリエステルオリゴマー、
d.少なくとも1種の大環状ポリエステルオリゴマー、
からなる群から選択された少なくとも1種の熱可塑性ポリエステル前駆体と海泡石型クレーを混合する工程と、
続いて、溶媒の存在下または溶媒の存在しない状態で前記少なくとも1種のポリエステル前駆体を重合させる工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
製造された組成物中の海泡石型クレー含有率が、存在する前記クレーおよび前記ポリエステルの全重量を基準にして0.1〜20重量%であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリエステルがテレフタル酸、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸の1つまたは複数から誘導された反復単位と、HO(CH2nOH、1,4−シクロヘキサンジメタノール、HO(CH2CH2O)mCH2CH2OHおよびHO(CH2CH2CH2CH2O)zCH2CH2CH2CH2OH(式中、nは2〜10の整数であり、mは平均1〜4であり、zは平均約7〜約40である)の1つまたは複数から誘導された反復単位から本質的になることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリエステルが、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)またはポリ(1,4−シクロヘキシルジメチレンテレフタレート)あるいはそれらの修飾された変種であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
連続ポリエステル重合法を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
バッチまたは半バッチのポリエステル重合法を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
追加のポリエステル重合触媒が存在しないことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
1種または複数の追加の化学的に不活性な固体粒状材料が存在することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
液体状態にある前記組成物を剪断応力にかける追加の工程を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記海泡石型クレーが海泡石またはアタパルジャイトであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリエステルが約100℃以上の融点を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法の生成物。
【請求項13】
前記海泡石型クレーを除く固体粒状充填剤を更に含むことを特徴とする請求項1〜7および8〜9のいずれか1項に記載の生成物。
【請求項14】
前記海泡石型クレーを除く固体粒状充填剤、可塑剤、エポキシ化合物若しくはエポキシ樹脂および強化剤の1つまたは複数を更に含むことを特徴とする請求項12に記載の生成物。
【請求項15】
海泡石型クレーを除く固体粒状充填剤が全組成物の約0.1〜約50重量%で存在することを特徴とする請求項13に記載の生成物。
【請求項16】
請求項12〜15のいずれか1項に記載の生成物を含むことを特徴とする製造物品。
【請求項17】
前記物品が外観部品であることを特徴とする請求項16に記載の物品。
【請求項18】
着色されていることを特徴とする請求項17に記載の物品。
【請求項19】
被覆されていることを特徴とする請求項17に記載の物品。
【請求項20】
自動車ボディパネル、電気器具部品、電動工具ハウジング、電子キャビネットまたはハウジング、車両の外装パネルまたは内装パネル、建物の装飾内装パネル、家具あるいは電話機または電話装置であることを特徴とする請求項16〜19のいずれか1項に記載の物品の部品。
【請求項21】
ポリエステルから成形部品を形成する方法であって、
a.(i)少なくとも1種の二酸またはジエステルおよび少なくとも1種のジオール、
(ii)少なくとも1種の重合可能なポリエステルモノマー、
(iii)少なくとも1種の線状ポリエステルオリゴマー、
(iv)少なくとも1種の大環状ポリエステルオリゴマー、
からなる群から選択された少なくとも1種の熱可塑性ポリエステル前駆体と海泡石型クレーを混合し、続いて溶媒の存在下または溶媒の存在しない状態で前記少なくとも1種のポリエステル前駆体を重合させてポリエステルを生成することによってポリエステル含有組成物を製造する工程と、
b.前記ポリエステル組成物を含む第2の組成物を前記ポリエステルの融点より高い温度に、あるいは前記ポリエステルが非晶質である場合、前記ポリエステルのガラス転移点より高い温度に加熱する工程と、
c.ポリエステルナノ複合材を所望の形状に成形する工程と、
d.前記ポリエステルの融点より高い温度から前記融点より低い温度に前記組成物を冷却して前記所望の形状を保持する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
前記ポリエステル組成物中の海泡石型クレー含有率が、海泡石型クレーを加えたポリエステルの重量を基準にして0.1〜20重量%であることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ポリエステルが約100℃以上の融点を有することを特徴とする請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記ポリエステルがテレフタル酸、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸の1つまたは複数から誘導された反復単位と、HO(CH2nOH、1,4−シクロヘキサンジメタノール、HO(CH2CH2O)mCH2CH2OHおよびHO(CH2CH2CH2CH2O)zCH2CH2CH2CH2OH(式中、nは2〜10の整数であり、mは平均1〜4であり、zは平均約7〜約40である)の1つまたは複数から誘導された反復単位から本質的になることを特徴とする請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記ポリエステルが、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)またはポリ(1,4−シクロヘキシルジメチレンテレフタレート)あるいはそれらの修飾された変種であることを特徴とする請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記第2の組成物が前記海泡石型クレーを除く固体粒状充填剤を更に含むことを特徴とする請求項21〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記海泡石型クレーを除く固体粒状充填剤、可塑剤、エポキシ化合物若しくはエポキシ樹脂または強化剤の1つまたは複数を更に含むことを特徴とする請求項21〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
海泡石型クレーを除く前記固体粒状充填剤が全組成物の約0.1〜約50重量%で存在することを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
金属部品と少なくとも1つのプラスチック部品から組み立てられた、可視プラスチック表面を有する基材を被覆する方法であって、
a.基材を電着コーティングし、前記基材から非沈着電着コーティング薬剤を除去し、沈着した電着コーティングを熱架橋し、それにより金属表面上に電着コーティングプライマを形成する工程と、
b.前記プラスチック部品の少なくとも一部が前記基材の前記可視プラスチック表面を構成し、前記プラスチック部品の少なくとも一部が請求項22に記載の生成物を含む組成物を有することを条件として、少なくとも可視金属表面および可視プラスチック表面すべての上に少なくとも1種の追加のコーティングを適用し、硬化させる工程、
の逐次工程を含み、ポリエステルの融点が約200℃以上であることを特徴とする方法。
【請求項30】
基材が車両ボディであることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項31】
プラスチック部品がフェンダー、フード、ドア、リフトアップテールゲート、トランクの蓋、タンクキャップ、バンパー、保護用成形品、サイドパネル、ボディシル、ミラーハウジング、ハンドル、スポイラーおよびハブキャップからなる群から選択されることを特徴とする請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
請求項29〜31のいずれか1項に記載の方法により被覆されていることを特徴とする被覆基材。
【請求項33】
請求項29〜31のいずれか1項に記載の方法を含む方法により製造されることを特徴とする自動車車両。
【請求項34】
前記車両が自動車、トラック、スノーモービル、建設車両または農場装備車両であることを特徴とする請求項33に記載の自動車車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−525593(P2008−525593A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548419(P2007−548419)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/046301
【国際公開番号】WO2006/069128
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】