説明

ポリエステルエラストマー組成物及びそれからなる成形品

【課題】 優れた耐熱老化性と耐水性を有し、高い溶融粘度でありながら、溶融滞留時のゲルかが少なく、また溶融粘度の低下の少なく、押出成形やブロー成形等の成形加工性に優れた熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物を提供する。
【解決手段】 芳香族ジカルボン酸と脂肪族又は脂環族ジオールとから構成されたポリエステルからなるハードセグメントと、脂肪族ポリカーボネートからなるソフトセグメントが結合されてなる熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)100重量部と、エポキシ基含有エチレン系共重合化合物(B)3〜20重量部、2官能以上のエポキシ化合物(C)0.3〜1.0重量部、及びカルボジイミド化合物(D)1〜5重量部とが反応してなるポリエステルエラストマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、耐光性、耐熱老化性、耐水性、低温特性等に優れたポリエステルエラストマー組成物及び該組成物製のブロー成形品に関するものである。詳しくは、空調用ダクト、吸気ダクト、排気ダクト等のブロー成形品であり、例えば自動車、家電部品などの耐熱老化性、耐水性、低温特性および耐熱性等が要求される分野に有用なポリエステルエラストマー組成物及び該組成物製のブロー成形品である。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリエステルエラストマーは、以前よりポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)をはじめとする結晶性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)などのポリオキシアルキレングリコール類及び/又はポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンアジペート(PBA)などのポリエステルをソフトセグメントとするものなどが知られ、実用化されている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
しかしながら、ソフトセグメントにポリオキシアルキレングリコール類を用いたポリエステルポリエーテル型エラストマーは、耐水性及び低温特性には優れるものの耐熱老化性に劣ることが、またソフトセグメントにポリエステルを用いたポリエステルポリエステル型エラストマーは、耐熱老化性に優れるものの、耐水性及び低温特性に劣ることが知られている。
【0004】
上記欠点を解決することを目的として、ソフトセグメントにポリカーボネートを用いたポリエステルポリカーボネート型エラストマーが提案されている(例えば、特許文献3〜9参照)。
【0005】
上記の課題は解決されるが、これらの特許文献において開示されているポリエステルポリカーボネート型エラストマーは、溶融状態で保持したときの溶融粘度の保持性が劣るという課題を有している。
【0006】
成形機内での滞留時間の短い、押出ブロー成形では問題ないが、アキュムレーターのある成形機や、高融点材料と共に押し出す2層式ブロー成形機などでは、溶融時の粘度低下が大きく、良好なブロー成形性が得られない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−17657号公報
【特許文献2】特開2003−192778号公報
【特許文献3】特公平7−39480号公報
【特許文献4】特開平5−295049号公報
【特許文献5】特開平6−306202号公報
【特許文献6】特開平10−182782号公報
【特許文献7】特開2001−206939号公報
【特許文献8】特開2001−240663号公報
【特許文献9】特開2008−150540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の熱可塑性ポリエステルエラストマーの有する問題点に鑑み、優れた耐熱性、耐熱老化性、耐水性、耐光性及び低温特性等を兼備し、かつ溶融時の滞留安定性に優れたポリエステルエラストマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、芳香族ジカルボン酸と脂肪族又は脂環族ジオールとから構成されたポリエステルからなるハードセグメントと、脂肪族ポリカーボネートからなるソフトセグメントが結合されてなる熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)100重量部と、エポキシ基含有エチレン系共重合化合物(B)3〜20重量部、2官能以上のエポキシ化合物(C)0.3〜1.0重量部、及びカルボジイミド化合物(D)1〜5重量部とが反応してなるポリエステルエラストマー組成物により、上記課題が解決されることを見いだし、本発明を完成するに到った。
【0010】
この場合において、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)が、示差走査熱量計を用いて昇温速度20℃/分で室温から300℃に昇温し、300℃で3分間保持した後に、降温速度100℃/分で室温まで降温するサイクルを3回繰り返した時の一回目の測定で得られる融点(Tm1)と3回目の測定で得られる融点(Tm3)との融点差(Tm1−Tm3)が0〜50℃であり、かつ切断時の引張強度が15〜100MPaである熱可塑性ポリエステルエラストマーであることが好ましい。
【0011】
この場合において、前記組成物は、通常空気1気圧、180℃雰囲気下に1000時間晒された後の引張伸度が、初期の引張伸度に対して、保持率30%以上であることが好ましい。
【0012】
この場合において、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)が、核磁気共鳴法(NMR法)を用いて算出したハードセグメントの平均連鎖長(x)及びソフトセグメントの平均連鎖長(y)とした時に、ハードセグメントの平均連鎖長(x)が5〜20であり、かつ下記(1)式で算出されるブロック性(B)が0.11〜0.45である熱可塑性ポリエステルエラストマーであることが好ましい。
B=1/x+1/y (1)
【0013】
この場合において、ハードセグメントがポリブチレンテレフタレート単位よりなり、かつ得られる熱可塑性ポリエステルエラストマーの融点が200〜225℃であることが好ましい。
または、ハードセグメントがポリブチレンナフタレート単位よりなり、かつ得られる熱可塑性ポリエステルエラストマーの融点が215〜240℃であることが好ましい。
【0014】
この場合において、カルボジイミド化合物(D)が、カルボジイミド基数が2から50で、イソシアネート基含有量率が0.5〜4質量%である脂肪族または脂環族のカルボジイミド化合物であることが好ましい。
【0015】
この場合において、前記組成物が、メルトフローレート(JIS K7210に準拠:230℃)が3g/10分以下であることが好ましい。
【0016】
本発明は、また、前記のポリエステルエラストマー組成物から成形されたブロー成形品、または、押出成形品である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のポリエステルエラストマー組成物は、耐熱性が良好であり、かつ耐熱老化性、及び低温特性等に優れているというポリエステルポリカーボネート型エラストマーの特徴を維持した上で、押出成形性、ブロー成形性等の成形加工性が飛躍的に改善されている。また、成形やリサイクルによっても熱可塑性ポリエステルエラストマーのポリマー特性の低下を極力防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーについて詳細に説明する。
本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーにおいて、ハードセグメントのポリエステルを構成する芳香族ジカルボン酸は通常の芳香族ジカルボン酸が広く用いられ、特に限定されないが、主たる芳香族ジカルボン酸としてはテレフタル酸又はナフタレンジカルボン酸であることが望ましい。その他の酸成分としては、ジフェニルジカルボン酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸などの脂環族ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。これらは樹脂の融点を大きく低下させない範囲で用いられ、その量は全酸成分の30モル%未満、好ましくは20モル%未満である。
【0019】
また、本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーにおいて、ハードセグメントのポリエステルを構成する脂肪族又は脂環族ジオールは、一般の脂肪族又は脂環族ジオールが広く用いられ、特に限定されないが、主として炭素数2〜8のアルキレングリコール類であることが望ましい。具体的にはエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。1,4−ブタンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールが最も好ましい。
【0020】
上記のハードセグメントのポリエステルを構成する成分としては、ブチレンテレフタレート単位あるいはブチレンナフタレート単位よりなるものが物性、成形性、コストパフォーマンスの点より好ましい。
【0021】
また、本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーにおけるハードセグメントを構成するポリエステルとして好適な芳香族ポリエステルは、通常のポリエステルの製造法に従って容易に得ることができる。また、かかるポリエステルは、数平均分子量10000〜40000を有しているものが望ましい。
【0022】
また、本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーにおけるソフトセグメントを構成する脂肪族ポリカーボネートは、主として炭素数2〜12の脂肪族ジオール残基からなるものであることが好ましい。これらの脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオールなどが挙げられる。特に、得られる熱可塑性ポリエステルエラストマーの柔軟性や低温特性の点より炭素数5〜12の脂肪族ジオールが好ましい。これらの成分は、以下に説明する事例に基づき、単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0023】
本発明における熱可塑性ポリエステルエラストマーのソフトセグメントを構成する、低温特性が良好な脂肪族ポリカーボネートジオールとしては、融点が低く(例えば、70℃以下)かつ、ガラス転移温度が低いものが好ましい。一般に、熱可塑性ポリエステルエラストマーのソフトセグメントを形成するのに用いられる1,6−ヘキサンジオールからなる脂肪族ポリカーボネートジオールは、ガラス転移温度が−60℃前後と低く、融点も50℃前後となるため、低温特性が良好なものとなる。その他にも、上記脂肪族ポリカーボネートジオールに、例えば、3−メチル−1,5−ペンタンジオールを適当量共重合して得られる脂肪族ポリカーボネートジオールは、元の脂肪族ポリカーボネートジオールに対してガラス転移点が若干高くなるものの、融点が低下もしくは非晶性となるため、低温特性が良好な脂肪族ポリカーボネートジオールに相当する。また、また、例えば、1,9−ノナンジオールと2−メチル−1,8−オクタンジオールからなる脂肪族ポリカーボネートジオールは融点が30℃程度、ガラス転移温度が−70℃前後と十分に低いため、低温特性が良好な脂肪族ポリカーボネートジオールに相当する。
【0024】
上記の脂肪族ポリカーボネートジオールは必ずしもポリカーボネート成分のみから構成されるわけではなく、他のグリコール、ジカルボン酸、エステル化合物やエーテル化合物などを少量共重合したものでもよい。共重合成分の例として、例えばダイマージオール、水添ダイマージオール及びこれらの変性体などのグリコール、ダイマー酸、水添ダイマー酸などのジカルボン酸、脂肪族、芳香族、又は脂環族のジカルボン酸とグリコールとからなるポリエステル又はオリゴエステル、ε−カプロラクトンなどからなるポリエステル又はオリゴエステル、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール又はオリゴアルキレングリコールなどが挙げられる。
【0025】
上記共重合成分は、実質的に脂肪族ポリカーボネートセグメントの効果を消失させない程度用いることができる。具体的には脂肪族ポリカーボネートセグメント100質量部に対して40質量部以下、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。共重合量が多すぎる場合、得られた熱可塑性ポリエステルエラストマーの耐熱老化性、耐水性が劣ったものになる。
【0026】
本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーは、発明の効果を消失しない程度に限り、ソフトセグメントとして、例えばポリエチレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、ポリカプロラクトン、ポリブチレンアジペートなどのポリエステルなどの共重合成分が導入されていてもよい。共重合成分の含有量はソフトセグメント100質量部に対して通常40質量部以下であり、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。
【0027】
本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーにおいて、ハードセグメントを構成するポリエステルとソフトセグメントを構成する脂肪族ポリカーボネート及び共重合体成分との質量部比は、一般に、ハードセグメント:ソフトセグメント=30:70〜95:5であり、好ましくは40:60〜90:10、より好ましくは45:55〜87:13、最も好ましくは50:50〜85:15の範囲である。
【0028】
本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーは、上記のような芳香族ジカルボン酸と脂肪族又は脂環族ジオールとから構成されたポリエステルからなるハードセグメント及び主として脂肪族ポリカーボネートからなるソフトセグメントが結合されてなるポリエステルエラストマーである。ここで、結合されてなるとは、ハードセグメントとソフトセグメントがイソシアネート化合物などの鎖延長剤で結合されるのではなく、ハードセグメントやソフトセグメントを構成する単位が直接エステル結合やカーボネート結合で結合されている状態が好ましい。
たとえば、ハードセグメントを構成するポリエステル、ソフトセグメントを構成するポリカーボネート及び必要であれば各種共重合成分を溶融下、一定時間のエステル交換反応及び解重合反応を繰返しながら得ることが好ましい(以下ブロック化反応と称することもある)。
【0029】
上記、ブロック化反応は、好ましくはハードセグメントを構成するポリエステルの融点ないし融点+30℃の範囲内の温度において行われる。この反応において、系中の活性触媒濃度は、反応の行われる温度に応じて任意に設定される。すなわち、より高い反応温度においてはエステル交換反応及び解重合は速やかに進行するため、系中の活性触媒濃度は低いことが望ましく、また、より低い反応温度においてはある程度の濃度の活性触媒が存在していることが望ましい。
【0030】
触媒は通常の触媒、例えばチタニウムテトラブトキシド、シュウ酸チタン酸カリウムなどのチタン化合物、ジブチルスズオキシド、モノヒドロキシブチルスズオキシドなどのスズ化合物を1種又は2種以上用いてもよい。触媒はポリエステルもしくはポリカーボネート中にあらかじめ存在してもよく、その場合は新たに添加する必要はない。さらに、ポリエステルもしくはポリカーボネート中の触媒はあらかじめ任意の方法によって部分的又は実質的に完全に失活させておいてもよい。例えば触媒としてチタニウムテトラブトキシドを用いている場合、例えば亜燐酸、燐酸、燐酸トリフェニル、燐酸トリストリエチレングリコール、オルト燐酸、ホスホン酸カルベトキジメチルジエチル、亜燐酸トリフェニル、燐酸トリメチル、亜燐酸トリメチルなどの燐化合物などを添加することによって失活が行われるが、これに限られるわけではない。
【0031】
上記反応は、反応温度、触媒濃度、反応時間の組み合わせを任意に決定して行なうことができる。すなわち、反応条件は、用いるハードセグメント及びソフトセグメントの種類及び量比、用いる装置の形状、攪拌状況などの種々の要因によってその適正値が変化する。
【0032】
上記反応条件の最適値は、例えば得られる鎖延長ポリマーの融点及びハードセグメントとして用いたポリエステルの融点を比較し、その差が2℃〜60℃となる場合である。融点差が2℃未満の場合、両セグメントが混合又は/及び反応しておらず、得られたポリマーは劣った弾性性能を示す。一方、融点差が60℃を超える場合、エステル交換反応の進行が著しいため得られたポリマーのブロック性が低下しており、結晶性、弾性性能などが低下する。
【0033】
上記反応によって得られた溶融混合物中の残存触媒は、任意の方法によってできる限り完全に失活しておくことが望ましい。触媒が必要以上に残存している場合、コンパウンド時、成形時などにエステル交換反応がさらに進行し、得られたポリマーの物性が変動することが考えられる。
【0034】
本失活反応は、例えば前述の様式、すなわち亜燐酸、燐酸、燐酸トリフェニル、燐酸トリストリエチレングリコール、オルト燐酸、ホスホン酸カルベトキジメチルジエチル、亜燐酸トリフェニル、燐酸トリメチル、亜燐酸トリメチルなどの燐化合物などを添加することによって行われるが、これに限られるわけではない。
【0035】
本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーは、少量に限り三官能以上のポリカルボン酸、ポリオールを含んでもよい。例えば無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメチロールプロパン、グリセリンなどを使用できる。
【0036】
以下、本発明に用いるエポキシ基含有エチレン系共重合化合物(B)、2官能以上のエポキシ化合物(C)、及びカルボジイミド化合物(D)について説明する。
【0037】
エポキシ基含有エチレン系共重合化合物(B)は、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)100重量部に対して、3〜20重量部である。5〜15重量部が好ましい。
エポキシ基含有エチレン系共重合化合物(B)としては、エチレンー酢酸ビニル共重合体あるいはエチレンーアクリル酸メチルにアクリル酸グリシジルまたはメタクリ酸グリシジルを共重合させたもので、具体的には住友化学の商品名ボンドファーストの各種グレードがある。または、エチレンにアクリル酸を共重合させたもので具体的には三菱化学の商品名ユカロンの各種グレードがある。
【0038】
2官能以上のエポキシ化合物(C)は、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)100重量部に対して、0.3〜1.0重量部である。0.35〜0.7重量部が好ましく、0.4〜0.6重量部がより好ましい。
2官能以上のエポキシ化合物(C)としては、分子中に2個以上のエポキシ基またはグリシジル基を有するものであればよく、例えば、ビスフェノールA・エピクロル型のエポキシ樹脂、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジチレングリコールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールグリシジルエーテル、プロピレングリコールグリシジルエーテル、ポリピレングリコールジグリシジルエーテル、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレートなどがある。
【0039】
カルボジイミド化合物(D)は、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)100重量部に対して、1〜5重量部である。1.5〜3重量部が好ましい。
カボジイミド化合物(D)としては、分子中にカルボジイミド基を少なくとも2個以上含有するものであればよく、芳香族ポリカルボジイミド(例えば、ラインヘミー社製スタバックゾールP、スタバックゾールP−100など)、脂肪族(脂環族)ポリカルボジイミド(例えば、日清紡績株式会社製LA−1など)が挙げられる。これらカルボジイミド化合物は単独で使用してもよいが2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
さらに、本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーには、目的に応じて種々の添加剤を配合して組成物を得ることができる。添加剤としては、公知のヒンダードフェノール系、硫黄系、燐系、アミン系の酸化防止剤、ヒンダードアミン系、トリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、ニッケル系、サリチル系などの光安定剤、帯電防止剤、滑剤、過酸化物などの分子調整剤、金属不活性剤、有機及び無機系の核剤、中和剤、制酸剤、防菌剤、蛍光増白剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、有機及び無機系の顔料などを添加することができる。
【0041】
これらの添加物の配合方法としては、加熱ロール、押出機、バンバリミキサーなどの混練機を用いて配合することができる。また、熱可塑性ポリエステルエラストマーを製造する際のエステル交換反応の前又は重縮合反応前のオリゴマー中に、添加及び混合することができる。
【0042】
本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーは、該熱可塑性ポリエステルエラストマーの示差走査熱量計を用いて昇温速度20℃/分で室温から300℃に昇温し、300℃で3分間保持した後に、降温速度100℃/分で室温まで降温するサイクルを3回繰り返した時の一回目の測定で得られる融点(Tm1)と3回目の測定で得られる融点(Tm3)との融点差(Tm1−Tm3)が0〜50℃であることが重要である。該融点差は0〜40℃がより好ましく、0〜30℃がさらに好ましい。該融点差は熱可塑性ポリエステルエラストマーのブロック性保持性の尺度であり、温度差が小さい程ブロック性保持性に優れている。該融点差が50℃を超えた場合は、ブロック性保持性が悪化し、成型加工時における品質変動が大きくなり成型製品の品質の均一性の悪化やリサイクル性の悪化に繋がる。
【0043】
上記特性を満たすことにより、後述の本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーの有する優れたブロック性の効果を有効に活かすことができる。
【0044】
本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーにおいては、ハードセグメントがポリブチレンテレフタレート単位よりなり、かつ融点が200〜225℃であることが好ましい。205〜225℃がより好ましい。
【0045】
また、本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーにおいては、ハードセグメントがポリブチレンナフタレート単位よりなり、かつ得られる熱可塑性ポリエステルエラストマーの融点が215〜240℃であることが好ましい。220〜240℃がより好ましい。
【0046】
ハードセグメントがポリブチレンテレフタレート単位やポリブチレンナフタレート単位である場合は、市販されているポリエステルであるポリブチレンテレフタレートやポリブチレンナフタレートを用いることができるので経済性の点で有利である。
【0047】
また、本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーの融点が上記下限未満では、ブロック性が低くなり、熱可塑性ポリエステルエラストマーの耐熱性や機械特性が悪化するので好ましくない。逆に、上記上限を超えた場合は、ハードセグメントとソフトセグメントとの相溶性が低下し熱可塑性ポリエステルエラストマーの機械特性が悪化するので好ましくない。
【0048】
本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーは、ハードセグメントとしてポリエステル単位及びフトセグメントとして脂肪族ポリカーボネート単位を有するが、その1つの単独重合体構造単位を構成する繰返し単位の繰返し数の平均値を平均連鎖長といい、本明細書においては、特に指示がない限り、核磁気共鳴法(NMR法)を用いて算出した値を示す。
【0049】
該核磁気共鳴法(NMR法)を用いて算出したハードセグメントの平均連鎖長(x)およびソフトセグメントの平均連鎖長(y)とした時に、ハードセグメントの平均連鎖長(x)が5〜20であり、かつ下記(1)式で算出されるブロック性(B)が0.11〜0.45であることが好ましい。
B=1/x+1/y (1)
【0050】
本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーは、ハードセグメント構成成分であるポリエステル単位の平均連鎖長が5〜20が好ましい。より好ましくは7〜18、さらに好ましくは9〜16の範囲である。
【0051】
本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーにおいては、ハードセグメントのポリエステル単位の平均連鎖長(x)は、該熱可塑性ポリエステルエラストマーのブロック性を決定する重要な因子であり、熱可塑性ポリエステルエラストマーの融点に大きく影響を及ぼす。一般にポリエステル単位の平均連鎖長(x)が増加するにつれ熱可塑性ポリエステルエラストマーの融点も上昇する。さらに、このハードセグメントのポリエステル単位の平均連鎖長(x)は、熱可塑性ポリエステルエラストマーの機械的性質にも影響を与える因子である。ハードセグメントのポリエステル単位の平均連鎖長(x)が5より小さい場合、ランダム化が進行していることを意味し、融点の低下による耐熱性の低下、硬度、引張強度、弾性率などの機械的性質の低下が大きい。ハードセグメントのポリエステル単位の平均連鎖長(x)が大きい場合は、ソフトセグメントを構成する脂肪族カーボネートジオールとの相溶性が低下し、相分離を起こし、機械的性質に大きく影響を及ぼし、その強度、伸度を低下させる。
【0052】
また、ブロック性(B)は、0.11〜0.45であることが好ましい。0.13〜0.40がより好ましく、0.15〜0.35がさらに好ましい。該数値が大きくなる程ブロック性が低下する。該ブロック性が0.4を超えた場合は、ブロック性の低下により熱可塑性ポリエステルエラストマーの融点が低下する等のポリマー特性が低下するので好ましくない。逆に、0.10未満では、ハードセグメントとソフトセグメントの相溶性が低下し、熱可塑性ポリエステルエラストマーの強伸度や耐屈曲性等の機械的特性の悪化や該特性の変動の増大が引き起こされるので好ましくない。
なお、ここで、上記ブロック性は下記(1)式で算出される。
B=1/x+1/y (1)
【0053】
上記関係より、ソフトセグメントの平均連鎖長(y)は4〜15が好ましい。
上記のブロック性を満たすことにより初めて高度な耐熱性と機械的特性の両立を図ることが可能となった。
【0054】
本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーにおいては、上記のブロック性保持性やブロック性を上記範囲にする方法は限定されないが、原料であるポリカーボネートジオールの分子量を最適化するのが好ましい。すなわち、前述の本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーにおけるハードセグメントを構成するポリエステルと分子量5000〜80000の脂肪族ポリカーボネートジオールとを溶融状態で反応させて製造してなることが好ましい。脂肪族ポリカーボネートジオールの分子量が大きい程、ブロック性保持性やブロック性が高くなる。該ポリカーボネートジオールの分子量は数平均分子量で5000以上が好ましく、7000以上がより好ましく、10000以上がさらに好ましい。該ポリカーボネートジオールの分子量の上限は、ハードセグメントとソフトセグメントの相溶性の観点より80000以下が好ましく、70000以下がより好ましく、60000以下がさらに好ましい。該ポリカーボネートジオールの分子量が大きすぎると相溶性が低下し、相分離を起こし、機械的性質に大きく影響を及ぼし、その強度、伸度を低下させる。
本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーの切断時の引張強度は、15〜100MPaであり、好ましくは20〜60MPaである。
【0055】
また、本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーは、曲げ弾性率が1000MPa以下であることが好ましい。曲げ弾性率は800MPa以下がより好ましく、600MPa以下がさらに好ましい。曲げ弾性率は1000MPaを超えた場合は、熱可塑性ポリエステルエラストマーの柔軟性が不足するので好ましくない。下限は、50MPa以上が好ましく、80MPa以上がより好ましく、100MPa以上であることがさらに好ましい。50MPaを下回る場合には、熱可塑性ポリエステルエラストマーが柔らかすぎて、製品の強度を確保することが出来ない。
【0056】
なお、本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーにおけるハードセグメントを構成するポリエステルとして好適な芳香族ポリエステルは、数平均分子量10000〜40000を有しているものが望ましい。
【0057】
上記のポリカーボネートジオールの分子量を最適化する方法は限定されない。最適な分子量のものを購入あるいは調製してもよいし、予め、低分子量のポリカーボネートジオールとジフェニルカーボネートやジイソシアネート等の鎖延長剤で高分子量化することにより分子量の調整をしたものを用いてもよい。
【0058】
例えば、上記の高分子量脂肪族ポリカーボネートジオールを製造する方法としては、前記した脂肪族ジオールと下記のカーボネート、すなわち、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネートなどとを反応させることで得ることができる。
【0059】
また、高分子量脂肪族ポリカーボネートジオールを製造する他の方法としては、低分子量の脂肪族ポリカーボネートジオールとジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネートなどとを反応させることによっても可能である。
【実施例】
【0060】
本発明を以下の実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーは、溶融物から通常の成形技術、例えば、射出成形、フラットフィルム押出、押出ブロー成形、共押出により成形される。
【0061】
以下に実施例及び比較例を用いて、本発明を具体的に説明するがそれらに限定されるものではない。なお、本明細書において各測定は、以下の方法に従って行った。
(1)本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーの還元粘度
熱可塑性ポリエステルエラストマー0.05gを25mLの混合溶媒(フェノール/テトラクロロエタン=60/40)に溶かし、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
【0062】
(2)本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーの融点(Tm)
50℃で15時間減圧乾燥した熱可塑性ポリエステルエラストマーを示差走査熱量計DSC−50(島津製作所製)を用いて室温から20℃/分で昇温し測定し、融解による吸熱のピーク温度を融点とした。
なお、測定試料は、アルミニウム製パン(TA Instruments社製、品番900793.901)に10mg計量し、アルミニウム製蓋(TA Instruments社製、品番900794.901)で密封状態にして、アルゴン雰囲気で測定した。
【0063】
(3)本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物の切断時の引張強度および伸び
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物の切断時の引張強度および伸びをJIS K 6251に準拠して測定した。テストピースは、射出成形機(山城精機社製、model−SAV)を用いて、シリンダー温度(Tm+20℃)、金型温度30℃で、100mm×100mm×2mmの平板に射出成形した後、ダンベル状3号形の試験片を平板から打ち抜いた。
【0064】
(4)溶融粘度(MFR)
JIS K7210記載の試験法(A法)に準拠し、測定温度230℃、荷重2160gでのメルトフローレイト(MFR:g/10分)を測定した。また、樹脂投入35分後のMFR値(MFR35)と5分後のMFR値(MFR)の差(ΔMFR:MFR35−MFR)を測定した。測定には水分率0.1重量部以下の組成物を用いた。
【0065】
[ダイレクトブロー成型による評価]
ダイレクトブロー成型機(単軸押出し機:L/D=25、フルフライトスクリュー、スクリュー径65mm)のシリンダ温度を180〜230℃に設定し、ダイレクトブロー成型ボトルを製造した。シリンダ先端には、パリソン形成用ダイリップを取り付け、金型内でブローエアーを封入し、ボトルを連続生産した。このときの、パリソン保持状態、製品寸法精度を以下の基準により評価した。
【0066】
(5)パリソン保持状態:
○:ドローダウン非常に小さく、形状保持している
△:ドローダウン大きく、形状崩れ気味だがなんとかブローできる
×:ドローダウン大きく、形状が崩れブローできない
【0067】
(6)ゲル化物発生試験
上記ダイレクトブロー成形において、アキュムレーター内に溶融樹脂を滞留させた状態で20分間停止した後、再びパリソンを押出し、そのパリソンのゲル化物の有無を下記基準で判定した。
○:ゲル化物が全く認められない
△:ゲル化物が僅かに認められる
×:ゲル化物が顕著に認められる
【0068】
(7)ハードセグメント、ソフトセグメントの平均連鎖長およびブロック性(ポリエステルのグリコール成分がブタンジオールで脂肪族ポリカーボネートジオール中のグリコールが炭素数5〜12の脂肪族ジオールの場合)
〔NMR測定〕
装置 : フーリエ変換核磁気共鳴装置(BRUKER製AVANCE500)
測定溶媒 : 重水素化クロロホルム
試料溶液濃度 : 3〜5vol%
1H共鳴周波数 : 500.13MHz
検出パルスのフリップ角: 45°
データ取り込み時間: 4秒
遅延時間: 1秒
積算回数 : 50〜200回
測定温度 : 室温
【0069】
〔計算方法〕
芳香族ジカルボン酸−ブタンジオール−芳香族ジカルボン酸連鎖のブタンジオールの、酸素に隣接するメチレンのピークのH−NMR積分値(単位は任意)をAとする。
芳香族ジカルボン酸−ブタンジオール−炭酸連鎖のブタンジオールの、炭酸に近い方の酸素に隣接するメチレンのピークのH−NMR積分値(単位は任意)をCとする。
芳香族ジカルボン酸−炭素数5〜12の脂肪族ジオール−炭酸連鎖のヘキサンジオールの、芳香族ジカルボン酸に近い方の酸素に隣接するメチレンのピークのH−NMR積分値(単位は任意)をBとする。
炭酸−炭素数5〜12の脂肪族ジオール−炭酸連鎖の炭素数5〜12の脂肪族ジオールの、酸素に隣接するメチレンのピークのH−NMR積分値(単位は任意)をDとする。
ハードセグメント平均連鎖長(x)は、
x = (((A/4)+(C/2))/((B/2)+(C/2)))×2。
ソフトセグメント平均連鎖長(y)は、
y = (((D/4)+(B/2))/((B/2)+(C/2)))×2。
ブロック性(B)は上記方法で求めたxおよびyの値より下記(1)式で算出した。Bの値が小さい方がブロック性が高い。
B=1/x+1/y (1)
【0070】
(8)ブロック性保持性
50℃で15時間減圧乾燥した本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーを、アルミニウム製パン(TA Instruments社製、品番900793.901)に10mg計量し、アルミニウム製蓋(TA Instruments社製、品番900794.901)で密封状態にして、測定試料を調整した後、示差走査熱量計DSC−50(島津製作所製)を用いて、窒素雰囲気のもと昇温速度20℃/分で室温から300℃に昇温し、300℃で3分間保持した後に測定試料パンを取出し、液体窒素中に漬け込み急冷させた。その後、液体窒素からサンプルを取出し、室温で30分間放置した。測定試料パンを示差走査熱量計にセットして室温で30分間放置した後、再び昇温速度20℃/分で室温から300℃に昇温する。このサイクルを3回繰り返した時の一回目の測定で得られる融点(Tm1)と3回目の測定で得られる融点(Tm3)との融点差(Tm1−Tm3)を求め、該融点差をブロック性保持性とした。該温度差が小さい程ブロック性保持性に優れている。
上記方法で評価した融点差により、ブロック性保持性を下記基準で判定し表示した。
◎:融点差0〜30℃未満
○:融点差30〜40℃未満
△:融点差40〜50℃未満
×:融点差50℃以上
【0071】
(9)脂肪族ポリカーボネートジオールの分子量
重水素化クロロホルム(CDCl3)に脂肪族ポリカーボネートジオールサンプルを溶解させ、上記(7)に記載したと同様の方法でH−NMRを測定することにより末端基を算出し、下記式にて求めた。
分子量=1000000/((末端基量(当量/トン))/2)
(10)芳香族ポリエステルの数平均分子量(Mn)
上記の熱可塑性ポリエステルエラストマーの還元粘度測定方法と同様の方法で測定して求めた還元粘度(ηsp/c)の値を用いて下記式に従って算出した。
ηsp/c=1.019×10-4 × Mn0.8929−0.0167
【0072】
〔脂肪族ポリカーボネートジオールの製造方法〕
脂肪族ポリカーボネートジオール(分子量10000)の製造方法:
脂肪族ポリカーボネートジオール(宇部興産社製カーボネートジオールUH−CARB200、分子量2000、1,6−ヘキサンジオールタイプ)100質量部とジフェニルカーボネート8.6質量部とをそれぞれ仕込み、温度205℃、130Paで反応させた。2時間後、内容物を冷却し、ポリマーを取り出した。分子量10000であった。
【0073】
脂肪族ポリカーボネートジオール(分子量20000)の製造方法:
脂肪族ポリカーボネートジオール(宇部興産社製カーボネートジオールUH−CARB200、分子量2000、1,6−ヘキサンジオールタイプ)100質量部とジフェニルカーボネート9.6質量部とをそれぞれ仕込み、温度205℃、130Paで反応させた。2時間後、内容物を冷却し、ポリマーを取り出した。分子量は20000であった。
【0074】
脂肪族共重合ポリカーボネートジオール(分子量10000)の製造方法:
脂肪族共重合ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製カーボネートジオールT5652、分子量2000、1,6−ヘキサンジオールと1,5−ペンタンジオールとの共重合体、非晶性)100質量部とジフェニルカーボネート8.6質量部とをそれぞれ仕込み、温度205℃、130Paで反応させた。2時間後、内容物を冷却し、ポリマーを取り出した。分子量は10000であった。
【0075】
脂肪族ポリカーボネートジオール(分子量85000)の製造方法
脂肪族ポリカーボネートジオール(宇部興産社製カーボネートジオールUH−CARB200、分子量2000、1,6−ヘキサンジオールタイプ)とジフェニルカーボネートとをそれぞれ100質量部および10.7質量部を仕込み、温度205℃、130Paで重合を進めた。2時間45分後、内容物を冷却し、ポリマーを取り出した。分子量は85000であった。
【0076】
〔熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造方法〕
熱可塑性ポリエステルエラストマーAの製造方法:
数平均分子量30000を有するポリブチレンテレフタレート(PBT)100質量部と上記方法で調製した数平均分子量10000を有するポリカーボネートジオール43質量部とを230℃〜245℃、130Pa下で1時間攪拌し、樹脂が透明になったことを確認し、内容物を取り出し、冷却し、ポリマー(熱可塑性ポリエステルエラストマーA)を得た。
【0077】
熱可塑性ポリエステルエラスマーBの製造方法:
数平均分子量30000を有するポリブチレンテレフタレート(PBT)100質量部と上記方法で調製した数平均分子量20000を有するポリカーボネートジオール43質量部とを230℃〜245℃、130Pa下で1.5時間攪拌し、樹脂が透明になったことを確認し、内容物を取り出し、冷却し、ポリマー(熱可塑性ポリエステルエラストマーB)を得た。熱可塑性ポリエステルエラストマーAと同等の品質を有しており高品質であった。
【0078】
熱可塑性ポリエステルエラストマーCの製造方法:
数平均分子量30000を有するポリブチレンテレフタレート(PBT)100質量部と上記方法で調製した数平均分子量10000を有する脂肪族共重合ポリカーボネートジオール43質量部とを230℃〜245℃、130Pa下で1時間攪拌し、樹脂が透明になったことを確認し、内容物を取り出し、冷却し、ポリマー(熱可塑性ポリエステルエラストマーC)を得た。熱可塑性ポリエステルエラストマーAと同等の品質を有しており高品質であった。また、ソフトセグメントとして、1,6−ヘキサンジオールからなるポリカーボネートジオールを使用した場合と比較すると低温特性に優れている。
【0079】
熱可塑性ポリエステルエラストマーDの製造方法
数平均分子量30000を有するポリブチレンナフタレート(PBN)100質量部と上記方法で調製した数平均分子量10000を有するポリカーボネートジオール43質量部とを245℃〜260℃、130Pa下で1時間攪拌し、樹脂が透明になったことを確認し、内容物を取り出し、冷却し、ポリマー(熱可塑性ポリエステルエラストマーD)を得た。熱可塑性ポリエステルエラストマーAと同等のブロック性およびブロック性保持性を有しており、かつ熱可塑性ポリエステルエラストマーAよりも融点が高く、さらに高品質であった。
【0080】
〔実施例1〜8、比較例1〜6〕
得られた熱可塑性ポリエステルエラストマーを100℃で8時間減圧乾燥した後、熱可塑性ポリエステルエラストマーのペレット100質量部に対してペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を0.5重量部、ペンタエリスリトールテトラキスー(3−ラウリルチオプロピオネート)を0.3重量部、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールを0.50重量部、2―フェニルイミダゾリンを0.2重量部、及び表1、表2記載の化合物を配合し、2軸押出機を用いて造粒してポリエステルエラストマー組成物を得た。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【0083】
表1、2から分かるように、実施例のポリエステルエラストマー組成物はブロー成形において問題となる溶融粘度の低下、パリソンのドローダウンが改良されており、またゲル化物の発生も少なく高品質のブロー成形品を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明のポリエステルエラストマー組成物は、耐熱性が良好であり、かつ耐熱老化性、及び低温特性等に優れているというポリエステルポリカーボネート型エラストマーの特徴を維持した上で、押出成形性、ブロー成形性等の成形加工性が飛躍的に改善されている。従って、本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物は、上記の優れた特性および利点を有するので、耐熱性、耐熱老化性、低温特性が要求される自動車や家電部品等のブロー成形品用途に有用である。特に、高温環境下での耐久性に優れた自動車の等速ジョイントブーツ、サスペンションブーツ、ラックアンドピニオンブーツ、エアダクト等のフレキシブル性が要求されるブロー成形品用途に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジカルボン酸と脂肪族又は脂環族ジオールとから構成されたポリエステルからなるハードセグメントと、脂肪族ポリカーボネートからなるソフトセグメントが結合されてなる熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)100重量部と、エポキシ基含有エチレン系共重合化合物(B)3〜20重量部、2官能以上のエポキシ化合物(C)0.3〜1.0重量部、及びカルボジイミド化合物(D)1〜5重量部とが反応してなることを特徴とするポリエステルエラストマー組成物。
【請求項2】
熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)が、示差走査熱量計を用いて昇温速度20℃/分で室温から300℃に昇温し、300℃で3分間保持した後に、降温速度100℃/分で室温まで降温するサイクルを3回繰り返した時の一回目の測定で得られる融点(Tm1)と3回目の測定で得られる融点(Tm3)との融点差(Tm1−Tm3)が0〜50℃であり、かつ切断時の引張強度が15〜100MPaである熱可塑性ポリエステルエラストマーであること特徴とする請求項1記載のポリエステルエラストマー組成物。
【請求項3】
通常空気1気圧、180℃雰囲気下に1000時間晒された後の引張伸度が、初期の引張伸度に対して、保持率30%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステルエラストマー組成物。
【請求項4】
熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)が、核磁気共鳴法(NMR法)を用いて算出したハードセグメントの平均連鎖長(x)及びソフトセグメントの平均連鎖長(y)とした時に、ハードセグメントの平均連鎖長(x)が5〜20であり、かつ下記(1)式で算出されるブロック性(B)が0.11〜0.45である熱可塑性ポリエステルエラストマーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステルエラストマー組成物。
B=1/x+1/y (1)
【請求項5】
ハードセグメントがポリブチレンテレフタレート単位よりなり、かつ得られる熱可塑性ポリエステルエラストマーの融点が200〜225℃である請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステルエラストマー組成物。
【請求項6】
ハードセグメントがポリブチレンナフタレート単位よりなり、かつ得られる熱可塑性ポリエステルエラストマーの融点が215〜240℃である請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステルエラストマー組成物。
【請求項7】
カルボジイミド化合物(D)が、カルボジイミド基数が2から50で、イソシアネート基含有量率が0.5〜4質量%である脂肪族または脂環族のカルボジイミド化合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステルエラストマー組成物。
【請求項8】
メルトフローレート(JIS K7210に準拠:230℃)が3g/10分以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のポリエステルエラストマー組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のポリエステルエラストマー組成物から成形されたブロー成形品。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載のポリエステルエラストマー組成物から成形された押出成形品。

【公開番号】特開2012−107155(P2012−107155A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258721(P2010−258721)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】