説明

ポリシラン−ポリシラザン共重合体、並びに、それらの調製及び使用方法

ポリシラン−ポリシラザン共重合体は、式(I)のポリシラン単位、及び式(II)のポリシラザン単位を含有し、式中、R及びRはそれぞれ独立してH、Si、及びN原子から選択され、RはH、Si、又はC原子から選択され、a≧1であり、b≧1であり、(a+b)≧2である。ポリシラン−ポリシラザン共重合体は、溶媒を含む組成物に製剤することができる。ポリシラン−ポリシラザン共重合体は、PMD及びSTI用途において100nm以下の幅及び少なくとも6のアスペクト比を有する溝を充填するために用いることができる。ポリシラン−ポリシラザン共重合体は、1分子当たり2個以上のケイ素原子を有するペルクロロポリシランの第1級アミンでのアミノ化により調製することができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規のポリシラン−ポリシラザン共重合体(共重合体)、並びに、その調製及び使用方法に関する。共重合体は組成物に製剤することができる。共重合体は、間隙充填薄被膜を調製する、又は繊維を成形するのに有用である。薄被膜は、幅≦100ナノメートル(nm)及びアスペクト比(A/R)≧6を有する間隙を充填することができる。
【背景技術】
【0002】
シャロートレンチアイソレーション(STI)を用い、集積回路(IC)中のトランジスタのようなデバイス間の適切な分離を達成することができる。STIは半導体基板に溝を形成した後、溝を絶縁材料で充填する工程を含む。これらの充填された溝は活性領域のサイズ及び配置を定義する。IC上のプリメタル誘電体(PMD)層は金属相互接続層から構造を電気的に絶縁し、電気的性能を低下させる汚染イオンからそれらを電気的に絶縁する。PMD層は高いA/Rを有する狭い溝を充填することが必要であり得る。絶縁材料を溝中に堆積させ、バリア層を形成し、地形を平坦化する。化学気相堆積(CVD)及びスピンオンガラス堆積(SOD)は半導体基板上の溝を充填し、二酸化ケイ素(SiO)及び二酸化ケイ素系層のような誘電体層を形成するのに一般的に用いられる技術である。
【0003】
一般的なCVD法は、プロセスガスを導入し、加熱する反応器チャンバーに基板を配置する工程を含む。これは所望の層の基板上への堆積をもたらす一連の化学反応を誘発する。CVD法を用い、例えば式SiHを有するシラン又は式Si(OCを有するテトラエトキシシランから生成される二酸化ケイ素被膜を調製することができる。CVDにより堆積させたホウ素及びリンをドープしたケイ素ガラス(BPSG)はCVD法に用いられるPMD材料でもある。BPSG被膜はまずCVDチャンバーにおいて堆積させ、その後BPSGリフロー温度より高い850℃で炉アニーリングし、ボイドを除去して平坦化を向上させる。しかしながら、IC機構の寸法がナノスケールにますます近づくため、これらの狭く、高アスペクト比(A/R≧6)の溝のボイドフリーBPSGでの充填は高温アニーリング後でも難しい。PMDのストリンジェントな間隙の充填は、当産業ではPMD被膜を低アニーリング温度、例えば700℃で処理しようとするので、さらにより困難となる。大気圧CVD、低温CVD、又はプラズマ助長CVDのような、各種タイプのCVDプロセスが知られる。しかしながら、CVD法には、とくにダイナミックRAM(DRAM)デバイスでは、プロセス中に形成されるボイドのため、溝寸法がナノスケールに近づくと十分な溝充填が難しくなるという欠点がある。CVD技術は、従って、狭い幅及び高いA/Rを有する溝を充填するには不適切である。
【0004】
一般的なSOD法では、メチルシルセスキオキサン(MSQ)樹脂又は水素シルセスキオキサン(HSQ)樹脂のような、被膜形成材料を含有する溶液を回転基板上に堆積させ、均一な薄被膜を形成する。溶液の紡糸性は薄被膜の性質及び性能に直接影響を及ぼす。被膜形成材料を基板上に堆積させた後、被膜形成材料を硬化させる。良好な溝充填特性は、溝中の硬化被膜形成材料がHF湿式エッチングに耐えることができる場合、得ることができる。HF湿式エッチング耐性を達成するには、溝中の硬化材料は、熱二酸化ケイ素に相当するHFエッチング速度を得るため、高密度及び/又は疎水性でなければならない。SODプロセスでは、MSQ樹脂は、疎水性炭素の導入のため、良好なエッチング耐性で小さな間隙を充填することができることが知られる。しかしながら、STI及びPMD用途の両方が半導体チップのもっとも感受性の高い領域にあるため、炭素により漏れのような深刻な電気的問題が引き起こされ得る。よって、IC製造業者、とくにダイナミックRAM(DRAM)デバイス製造業者は、溝充填用途のための炭素を含まないSOD材料溶液を見出すことに関心がある。
【0005】
HSQ樹脂は溝充填用途のための候補として検討されてきた。しかしながら、HSQ樹脂には、MSQ樹脂の炭素なしでは、高アスペクト比を有するナノスケールの溝において硬化後に形成された薄被膜の密度が不十分であり、HF湿式エッチング耐性が不十分となるという欠点があり得る。所定のナノスケールの溝の狭い幅及び高いA/Rは、HSQ樹脂が高温硬化中に溝の底半分で高密度の被膜を形成するのを抑制し得、例えば、PMD用途のための目標硬化条件は700℃での蒸気中30分間の加熱であってもよい。スピンオンHSQ樹脂から誘導されたSiO被膜には、溝中でHFエッチング液にさらされると高度の損傷を受けるか、又は完全にエッチングされるという欠点があり得る。この不十分な湿式エッチング耐性はおそらく溝中の不均質な高密度化の結果又はSiOへの変換中の低密度領域の形成のためである。狭く、高A/Rの溝のような高度に制限された形状において、硬化被膜の密度は、収縮度、溝壁への接着性、被膜を通した水分拡散、及び温度を含むいくつかの要因により影響を受ける。同時に硬化及びアニーリングされるHSQ樹脂被膜は、溝の表面上に高密度の被膜を形成する傾向があり、これはバルク被膜、とくに溝の底面の角への質量移動を制限する。これによりこれらの領域は低密度化し、結果としてよりいっそうHFエッチング損傷の影響を受けやすくなる。コロイダルシリカ粒子及びバインダー技術で製剤されたHSQ溶液が開発され、間隙充填密度を向上し、これは向上したエッチング耐性を示した。しかしながら、溶液安定性及び多孔性外観のため、この製剤は非実用的であった。オゾン硬化の化学反応を低分子HSQ製剤に適用した。溝の高密度化が達成され、ナノスケールの間隙中の硬化HSQ樹脂は良好なエッチング耐性を示した。しかしながら、オゾン硬化はIC製造業者に十分に受け入れられていない。同様に、溝中でHSQ樹脂を低温酸化するのに、過酸化水素と水酸化アンモニウムを組み合わせる方法が用いられた。しかしながら、過酸化物溶液の安定性及び安全性はIC製造業者にとって大きな懸念事項である。あるいは、亜酸化窒素(NO)を用いてHSQ樹脂被膜を硬化することができ、200:1HF溶液において非常に低いエッチング速度もたらす。しかしながら、ナノスケールの溝について、この方法には溝の上部にのみエッチング耐性をもたらすという欠点がある。
【0006】
従来型ポリシラザン(PSZ)も多数のIC会社より評価されてきた。従来型PSZはメチルクロロシラン及びメチルクロロジシランを含有する混合物のアンモニア、第1級アミン、又は第2級アミンでのアミノ化により調製されている。あるいは、従来型PSZはSi−N−Si結合を含有するジクロロシランのウルツ型共縮合により調製されている。PSZのこの合成は、アルキル置換ジクロロシラン及び1,3−ジクロロジシラザンをナトリウム懸濁液に同時供給することにより達成することができる。分離線状PSZは透明及び可動性であり、2,500の重量平均分子量Mwを有した。このPSZ中の各ケイ素原子は少なくとも1個のメチル基に結合していた。従来型PSZには高価で安定性に乏しいという欠点があり得る。特定のPSZにも、望ましくない炭素の供給源を提供するSiC結合を含有するという欠点がある。従来型PSZは、低架橋度のため被膜に加工するのが難しいという欠点があり得る、又は金属汚染の若しくはほとんどの被膜処理方法により除去するのが難しいSi−C結合の組み込みの問題があり得るので、誘電体又はバリア材料として半導体デバイスに広く用いられてきたSiN、SiON又はSiOセラミック被膜に適した前駆体ではない。
【0007】
従って、IC産業には、狭い幅及び高いアスペクト比を有する溝をボイドなしに充填することができ、材料を硬化させると高密度の被膜を形成する、被膜形成材料を提供する継続的な必要性がある。
【発明の概要】
【0008】
ポリシラン−ポリシラザン共重合体は、
【化1】

の式のポリシラン単位、及び
【化2】

の式のポリシラザン単位を含み、式中、R及びRはそれぞれ独立してH、Si、及びN原子から選択され、RはH、Si、又はC原子から選択され、a≧1であり、b≧1であり、(a+b)≧2である。共重合体は溶媒を含む組成物に製剤することができる。共重合体は溝充填用途又は繊維成形用途に用いることができる。共重合体はSiC結合を含まない。SiC結合を含まないとは、共重合体がSiC結合を含有しない、又は共重合体を含有する組成物が基板上の幅≦100nm及びA/R≧6である溝を充填するのを妨げるには不十分な量のSiC結合を含有することを意味する。共重合体は、1分子当たり2個以上のケイ素原子を有するペルクロロポリシランのアミン、アンモニア又はシラザンでのアミノ分解により調製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
すべての量、比、及び割合は、とくに指示のない限り、重量による。以下は本明細書において用いる定義のリストである。
【0010】
冠詞「a」、「an」及び「the」はそれぞれ1つ以上を指す。
【0011】
「アスペクト比」又は「A/R」とは、溝の幅で割った溝の高さを意味する。
【0012】
「組み合わせ」とは、いずれかの方法によりまとめた2つ以上の要素を意味する。
【0013】
「ナノスケール」とは、幅≦100nm、あるいは<100nm、あるいは≦80nm、あるいは≦70nm、あるいは≦45nm、あるいは≦40nm、あるいは≦20nm、あるいは≦5nmである溝を意味する。
【0014】
「紡糸可能な」及び「紡糸性」とは、組成物をSOD法に効果的に用いることができることを意味する。
【0015】
「実質的に不活性」とは、<50ppmの酸素(O)を含有する環境を意味する。好適には、実質的に不活性な環境は<10ppmのOを含有する。
【0016】
共重合体
共重合体は、本質的に、
【化3】

の式のポリシラン単位、及び
【化4】

の式のポリシラザン単位から構成され、式中、R及びRはそれぞれ独立してH、Si、及びN原子から選択され、RはH、Si、又はC原子から選択され、a≧1であり、b≧1であり、(a+b)≧2である。
中の炭素原子は一価炭化水素基中の炭素原子であってもよい。適切な一価炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル及びブチルのようなアルキル基;シクロペンチル及びシクロへキシルのようなシクロアルキル基;並びにフェニル、トリル、ベンジル及びキシリルのようなアリール基が挙げられる。あるいは、一価炭化水素基はそれぞれ炭素原子1〜4個のアルキル基であってもよい。あるいは、(a+b)≧3であり、あるいは(a+b)≧4であり、(a+b)は2〜10の範囲内であり、あるいは(a+b)は3〜6の範囲内である。あるいは、R及びRは異なっていてもよい。
【0017】
共重合体は上で示したポリシラン及びポリシラザン単位を含有する。しかしながら、共重合体は任意でSiC結合を含まない1個以上の追加単位を含有することができる。共重合体は、
【化5】

の式のSiH含有単位(c≧1である)、
【化6】

の式のSiH含有単位(d≧1である)、又は、これらのSiH含有単位の両方をさらに含むことができる。
【0018】
共重合体は周囲条件下で固体又は流体であってもよい。共重合体は1個の単一共重合体、又は以下の特性:単位の構造、粘度、平均分子量、及び配列の少なくとも1つが異なる2個以上の共重合体の組み合わせであってもよい。共重合体は各繰り返し単位中に異なる数のSi原子を含有することができる。これらのSi原子の結合は線状、分岐、環状又は三次元架橋とすることができる。Si原子の数及び結合は、後述のように、共重合体を調製するのに用いられるペルクロロポリシラン原料から引き継がれる。
【0019】
共重合体について、「基本的に〜で構成される」の句は、共重合体がSiC結合を含まないことを意味する。この文脈における「SiC結合を含まない」とは、共重合体がSiC結合を含有しない、又は共重合体、若しくは共重合体を含有する組成物がA/R≧6であるナノスケールの溝を有する基板を溝充填するのを妨げるには不十分な量のSiC結合を含有すること意味する。
【0020】
共重合体の使用方法
上述の共重合体を基板に塗布し、硬化被膜を形成することができる。硬化被膜の形成方法は、
1)上述の共重合体を基板に塗布し、未硬化被膜を形成する工程、及び、2)該未硬化被膜を加熱し、硬化被膜を形成する工程を含む。共重合体が周囲条件で液体である場合、共重合体は基板にニートで塗布することができる。あるいは、本方法は、工程1)前に共重合体を組成物に製剤する工程をさらに含むことができる。
【0021】
組成物は、
(a)5%〜20%の上述の共重合体、及び、(b)80%〜95%の溶媒を含むことができる。
溶媒は、5〜100センチストーク(cSt)の粘度を有するポリジメチルシロキサンのようなポリオルガノシロキサンであってもよい。適切なポリジメチルシロキサンは当技術分野において知られ、米国ミシガン州ミッドランドのダウコーニングコーポレーションからDOW CORNING(登録商標)OS Fluids(登録商標)として市販されている。あるいは、溶媒は有機溶媒であってもよい。こうした有機溶媒の例としては、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)のようなアセテート;ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、THF(テトラヒドロフラン)、ジメチルエーテル、又はフェニルメチルエーテルのようなエーテル系溶媒;ケトン、アセトン、及びポリ(ビニルピロリドン);トルエン、ベンゼン、キシレン、又はメシチレンのような芳香族炭化水素溶媒;ヘキサンのような脂肪族炭化水素溶媒(及び他のシクロアルキル化合物);並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0022】
上述の方法では、工程1)はいずれかの都合のよい技術により行うことができる。適切な技術の例としては、スピンコーティング、押出コーティング、ディップコーティング、及びスプレーコーティングが挙げられる。溶媒が存在する場合、本方法は、工程1)後、任意で溶媒除去工程をさらに含むことができる。溶媒除去は周囲条件への一定時間の露出、真空、加熱、又はこれらの組み合わせにより行うことができる。
【0023】
基板は、Si、Ge、及び他のIII〜V族半導体基板のような、IC産業において有用ないずれかの基板であってもよい。例えば、基板は半導体ウェーハであってもよい。半導体ウェーハはベアウェーハ又はパターンウェーハであってもよい。パターンウェーハは、その表面上に、ナノスケールの溝を有する。組成物をこの表面に塗布し、溝を充填することができる。ナノスケールの溝は幅≦100nm、あるいは5nm〜100nm、あるいは20nm〜70nm、あるいは40nm〜100nm、あるいは40nm〜70nm、あるいは45nm〜80nm、あるいは20nm〜45nm、あるいは40nm〜45nm、あるいは5nm〜20nmとすることができる。ナノスケールの溝はA/R≧6、あるいはA/R≧7とすることができ、あるいはA/Rは6〜60の範囲内とすることができ、あるいはA/Rは10〜60の範囲内とすることができ、あるいはA/Rは6〜40の範囲内とすることができ、あるいはA/Rは7〜20の範囲内とすることができる。
【0024】
工程2)は:i)低温水分浸漬工程及びii)高温アニーリング工程を含むことができる。低温水分浸漬工程は、未硬化被膜を大気水分又は蒸気に22℃〜200℃の範囲内の温度で30分〜60分の範囲内の時間露出する工程を含むことができる。低温水分浸漬工程は、任意でその後少なくとも400℃で30分〜60分間加熱する工程をさらに含むことができる。高温アニーリング工程は、工程i)の生成物を、NO、N、又は蒸気を含む環境中、600℃〜900℃の範囲内の温度で加熱する工程を含むことができる。あるいは、工程ii)の温度は800℃〜900℃の範囲内とすることができる。
【0025】
工程2)の生成物は硬化被膜である。硬化被膜は完全縮合であってもよい。あるいは、硬化被膜は部分縮合であってもよい。硬化被膜が完全縮合であるか部分縮合であるかは、高温アニーリング工程について選択される正確な時間及び温度によって決まる。違いは赤外線分光法(IR)により測定される。完全縮合とは、共重合体に高温アニーリングを行い、共重合体を完全に架橋し、不溶性にし、1.44に近い屈折率(RI)としたことを意味する。部分縮合とは、共重合体には、工程2)i)前ほどではないが、いくらかN−Rが残っていることを意味する。
【0026】
硬化被膜はSiC結合を含んでいなくてもよい。理論に縛られることは望まないが、硬化被膜の化学組成はアニーリングについて選択される環境を含む各種要因によって決まるだろうと考えられる。例えば、蒸気環境が選択される場合、硬化被膜はSiO被膜となるだろう。あるいは、NO環境が選択される場合、硬化被膜はSiN及びSiOの両方を含むだろう。硬化被膜について、「基本的に〜で構成される」の句は、硬化被膜がSiC結合を含まないことを意味する。この文脈における「SiC結合を含まない」とは、硬化被膜がSiC結合を含有しない、又は硬化被膜がA/R≧6であるナノスケールの溝を有する基板を溝充填するのを妨げるには不十分な量のSiC結合を含有すること意味する。
【0027】
上述の方法は半導体ウェーハ上のPMD又はSTIのための硬化被膜を形成するのに適している。本方法はDRAMデバイスのようなICにおけるPMD及びSTI用途に有用である。
【0028】
あるいは、ポリシラン−ポリシラザン共重合体は繊維成形用途に用いることができる。繊維成形能力は、室温で固体である共重合体を加熱し、溶融することにより測定することができる。ガラスロッドのような基板を共重合体と接触させてから離し、共重合体が液体である間に溶融共重合体とガラスとの間で繊維が途切れるまでどれだけ伸びるかを測定することができる。被膜形成能力は繊維形成能力に比例する、すなわち、共重合体が良好な溝充填特性を有する均一な被膜を形成するのに有用である場合、共重合体は繊維形成用途にも有用であると期待することができる。
【0029】
共重合体の生成方法
上述の共重合体は、I)1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子を有するペルクロロポリシランをアミンと反応させる工程を含む方法により調製することができる。本方法は、任意でII)工程I)の生成物を実質的に不活性な環境中高温で加熱し、これにより共重合体の分子量及び粘度を増加させる工程をさらに含むことができる。低粘度/低Mw共重合体を縮合し、低沸点副生成物を除去すると、炭素含有量は減少し、重量は減少するだろう。これはより高い分子量及びより高い粘度を有する共重合体をもたらす。プロトンNMR(H NMR)の線幅拡大を用い、分子量の増加を示すことができる。スピンコーティングプロセスにおける被膜厚は共重合体の粘度又は組成物成形により制御されるので、粘度増加は被膜厚増加をもたらす。よって、被膜厚は工程I)の生成物の熱縮合後に増加する。どれくらい被膜厚が増加するかは、共重合体のタイプ(例えば、線状対分岐)及びどれくらい加熱するかによって決まる。
【0030】
上記方法において用いられるペルクロロポリシランは、線状、分岐、環状又は三次元架橋から選択される構造を有することができる。本方法により生成される共重合体はペルクロロポリシランの構造を有するだろう。ペルクロロポリシランは1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子を有する。あるいは、ペルクロロポリシランは1分子当たり少なくとも3個のケイ素原子を有することができる。あるいは、ペルクロロポリシランは1分子当たり最大10個のケイ素原子を有することができる。あるいは、ペルクロロポリシランは1分子当たり2〜6個のケイ素原子を有することができる。ペルクロロポリシランの例としては、これらに限定されないが、以下に示す。
【化7】

【0031】
アミンは、式NRを有することができ、式中、Rは第1級アミン又は一価炭化水素基である。適切な一価炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル及びブチルのようなアルキル基;シクロペンチル及びシクロへキシルのようなシクロアルキル基;ビニル、アリル、及びブテニルのようなアルケニル;並びにフェニル、トリル、ベンジル、及びキシリルのようなアリール基が挙げられる。あるいは、各Rは炭素原子1〜4個のアルキル基であってもよい。適切な第1級アミンの例としては、これらに限定されないが、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、及びブチルアミンが挙げられる。エチレンジアミンのようなジアミンを代わりに用いてもよい。
【0032】
本方法の工程I)は、ある量のペルクロロポリシランをモル過剰のアミンと組み合わせることにより行うことができる。工程I)は−78℃〜50℃の範囲内の温度で、2〜10時間の範囲内の時間、実質的に不活性な環境下で行うことができる。溶媒を用いることができるが、必要ではない。過剰アミンは溶媒として機能することができる。工程I)後、工程II)前に得られる反応混合物から成分を除去する任意の工程を加えることができる。例えば、塩酸アミン副生成物はろ過により除去することができ、溶媒及び/又は未反応第1級アミンは、例えば10−2トル〜1気圧での、揮散及び0℃〜150℃の範囲内の温度での30分〜24時間の範囲内の時間の加熱により除去することができる。
【0033】
本方法の工程II)は、工程I)において調製された共重合体を実質的に不活性な雰囲気中で加熱することにより行われる。温度は50℃〜250℃の範囲内とすることができ、共重合体は30分〜24時間の範囲内の時間加熱することができる。
【0034】
環状共重合体はニートプロセスを用いて(すなわち、溶媒なしで)生成することができる。環状共重合体は、モル過剰の第1級アミン(例えばエチルアミン)をペルクロロポリシラン(例えばヘキサクロロジシラン)と反応させ、これにより以下に例示する環状共重合体を形成することにより調製することができる。
【化8】

式中、R及びRはそれぞれ独立してH、Si、及びN原子から選択され、RはH、Si、又はC原子から選択される。
【0035】
Si共重合体(すなわち、1分子当たり平均5個のケイ素原子を有するペルクロロポリシランを用いて生成された共重合体)は、例えば、式1に示すようなペルクロロネオペンタシラン(NPC)のメチルアミンでのアミノ分解により調製することができる。理論に縛られることは望まないが、原材料の添加順は生成される共重合体の分子量に影響を及ぼし得ると考えられる。メチルアミンをNPCに注いだ場合、粘性液体共重合体生成物をはじめに分離し、すぐに固化した。NPCをメチルアミンに注いだ場合、分離した共重合体生成物は良好な相安定性を有する粘性液体だった。H NMRで分析すると、N−Me基のシグナルはメチルアミンをNPCに添加することにより生成された固体樹脂共重合体についてより、NPCをメチルアミンに添加することにより生成された液体樹脂共重合体についてかなり幅広く、固体は液体より高い分子量を有することを示した。本出願の目的のため、略語「Me」はメチル基を表す。29Si NMR分析は、SiSi繰り返し単位がこれらの共重合体の両方において損なわれないままであったことを結論づけた。高及び低MSi共重合体はメシチレン及びジブチルエーテルのような溶媒に可溶性だったが、高MSi共重合体の溶液は低MSi共重合体の溶液より不安定だった。
Si(SiCl+MeNH→Siポリシラン−ポリシラザン共重合体+MeNH・HCl (式1)
【0036】
あるいは、ポリシラン−ポリシラザン共重合体の生成方法は:I)1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子を有するペルクロロポリシランをアンモニア(NH)と反応させる工程を含む。ペルクロロポリシランは上述のとおりである。例えば、NPCのアンモニア分解は式2において以下で示すように不溶性共重合体をもたらした。アンモニアを用いる方法により調製された不溶性共重合体はセラミック材料を調製するのに有用である。工程I)後重合が完了するので、工程II)はこの方法から除外することができる。一方、工程I)の生成物を高温まで加熱し、セラミックを形成することができる。
Si(SiCl+NH→Siポリシラン−ポリシラザン共重合体+NH・HCl (式2)
【0037】
あるいは、ポリシラン−ポリシラザン共重合体の生成方法は:I)ペルクロロポリシランをオルガノシラザンと室温〜100℃の範囲内の温度、30分〜24時間の範囲内の時間の条件下で反応させ、液体中間体を形成する工程、及びII)該中間体を加熱し、50℃〜250℃の範囲内の温度で30分〜24時間の範囲内の時間重合させ、共重合体を形成する工程を含む。加熱工程は大気圧で又は真空下、例えば10−2トル〜1気圧の範囲内の圧力で行うことができる。例は式3及び4において以下に示すが、式中、NPCを化学量論的に不十分なヘキサメチルジシラザン(HMDZ)と反応させ、液体中間体を形成し、これを次に最高250℃で熱重合し、粘性液体生成物を得た。生成物は油性共重合体であり、これは本明細書に記載の溶媒において安定かつ可溶性だった。
Si(SiCl+HN(SiMe→Si(NHSiMeCl+ClSiMe (式3)
Si(NHSiMeCl→Siポリシラン−ポリシラザン共重合体+ClSiMe (式4)
【0038】
本方法は、SiH含有単位を共重合体中に組み込む工程をさらに含むことができる。本方法は、工程I)において、ジクロロシラン(DCS、HSiCl)又はトリクロロシラン(TCS、HSiCl)のようなSiH官能性クロロシランを添加する工程をさらに含むことができる。SiH官能性クロロシランはペルクロロポリシランと混合することができる。SiH官能性クロロシランの量は、SiH官能性クロロシラン0モル/ペルクロロポリシラン1モル〜SiH官能性クロロシラン99モル/ペルクロロポリシラン1モルの範囲内とすることができる。理論に縛られることは望まないが、被膜及び繊維形成能力は、(上述のように)
【化9】

、又は、これらの組み合わせの単位を、工程I)においてSiH官能性クロロシランを用いて組み込むことにより向上させることができると考えられる。例えば、こうした共重合体の例を生成するため、例えば以下の式5ように、メチルアミンをDCS及びNPCの混合物中に注いだ。
Si(SiCl+HSiCl+MeNH→Si共重合体+MeNH・HCl (式5)
【0039】
上記方法において用いられる材料はSiC結合を共重合体中に導入する種を含まなくてもよい。「SiC結合を共重合体中に導入する種を含まない」とは、本方法において用いられる材料がSiC結合を共重合体中に導入する種を含有しない、又は本方法において用いられる材料がSiC結合を共重合体に導入する種を、本方法を行った後、共重合体を含有する組成物が基板上の幅≦100nm及びA/R≧6である溝を充填するのを妨げるには不十分な量のみ含有することを意味する。
【実施例】
【0040】
これらの実施例は本発明を当業者に示すために含める。一方、当業者であれば、本開示を踏まえ、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、開示する具体的な実施形態において多くの変更を行うことができ、さらに同じ又は同様の結果が得られることを理解すべきである。これらの実施例は特許請求の範囲に記載する本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0041】
参照例1―ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)
GPCデータを、Watersの515ポンプ、Watersの717オートサンプラー、及び、Watersの2410示差屈折計を用いて収集した。分離は、Polymer LaboratoriesのPlgel5マイクロメーター(μm)ガードカラムが先行した、2つの(300mm×7.5mm)Plgel 5マイクロメータ(μm) Mixed−Cカラムを用いて行った。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)グレードのトルエン溶離液を1分当たり1.0ミリリットル(mL/分)の流速で用い、カラム及び検出器を45℃まで加熱した。50マイクロリットル(μL)の注入量を用い、0.45μmポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シリンジフィルターを通して予め試料をろ過した。1,300〜850,000の分子量範囲にわたるポリジメチルシロキサン(PDMS)標準を用いて作成した較正曲線(第4次)に従って分子量平均を割り出した。
【0042】
参照例2―29SiNMR
29Si NMRデータをVarianのMercury300で、ベンゼン−d溶媒を用いて収集した。5ミリメートル(mm)の切替可能なPFGプローブをゲート分離パルスシーケンス、60秒の緩和遅延で用いて実験を行った。あるいは、試料を、任意で緩和試薬である0.03Mのクロムアセチルアセトネート、Cr(acac)とともに、Naloracの16mmのケイ素を含まないPulsetune(登録商標)プローブを用いるMercury400にかけ、ゲーテッドデカップリングを行い、定量条件を確保した。いずれも90度のパルス幅を用い、400は12秒の緩和遅延を用いた。
参照例3―プロトンNMR(HNMR)
溶液H NMRデータをHについて299.949MHzで作動するVarianのVXR300分光計上で収集した。試料をCに溶解した。線幅をシグナルの半分の高さで測定した。線幅の拡大は同じタイプのポリマーについての分子量の増加と質的に関連していた。
参照例4―FT−IR
赤外線スペクトルをNicolet 5SXB FT−IR分光計上で4cm−1の解像度で記録した。液体試料を研磨したKBrディス間ではさんだ。
参照例5―ラマン分光法
ラマン分光法に用いられる器具は、Kaiser Optical, Inc.(米国ミシガン州アナーバー)のHoloLabシリーズ5000ラマン顕微鏡とした。これは、スペクトログラフと顕微鏡との間で光を伝達する光ファイバー、レイリー線を除去するためのホログラフィックNotch(登録商標)フィルター、格子状のホログラフィック光分散、及びCCD検出器を用いる分散ラマンシステムである。レーザーは、532nm(グリーン)及び50mWの電力での出力を有する2倍波Nd:YAGとした。すべてのスペクトルを顕微鏡上、50倍集束の対物レンズで測定し、スペクトル解像度は5cm−1とした。すべてのスペクトルを暗背景感応用及び宇宙線干渉用に補正した。総スペクトル取得時間は40秒〜16分と変化し、各試料について測定されるラマンバンドの強度に応じて調整された。
【0043】
実施例1−第1級アミンを用いたSi共重合体の調製
アミノ分解法によりSi樹脂共重合体を調製するため、実質的に不活性な条件下、−20℃〜25℃の範囲内の温度及び1気圧の圧力の、10.79kgのヘキサン溶媒中、1.79kg(6.66mol)のヘキサクロロジシランを、4.80kg(106.5mol)のエチルアミンと反応させ、低分子量共重合体及びヘキサキス(エチルアミノ)ジシランモノマーを形成した。塩副生成物をろ過した後、未反応エチルアミン及びヘキサン溶媒を揮散し、低分子量共重合体及びモノマーを透明な低粘度液体として分離した。ほとんどのモノマーを真空揮散により除去した後、残渣をN中、150℃で24時間加熱し、さらにより粘性となったより高分子量の共重合体を得た。この高分子量共重合体をニート状態でガラス基板上にディップコーティングし、空気中に短時間露出した後、硬質、透明かつ滑らかな被膜を形成した。この共重合体の溶液は、半導体ウェーハ上に薄被膜を形成するSODに適していた。
【0044】
実施例2−第1級アミンを用いたSi共重合体の調製
アミノ分解法によりSi樹脂共重合体を調製するため、実質的に不活性な条件下、−20℃〜25℃の範囲内の温度及び1気圧の圧力で、5.90g(21.9mmol)のヘキサクロロジシランを29.95g(664.4mmol)のエチルアミンに添加した。上の液体生成物相を下の液体塩相から分離した。上の相に、次に未反応エチルアミン及び低沸点溶剤の副生成物の真空揮散、その後のろ過を行った。分離した残渣(4.50g)は、H NMR及び質量分析法(MS)で特徴づけられるSiモノマーを主に含有した透明な液体だった(構造については以下参照、式中、Etはエチル基を表す)。
【化10】

【0045】
残渣を、N中、150℃で24時間加熱し、さらにより粘性となった高分子量共重合体を得た。この共重合体の溶液は、半導体ウェーハ上に薄被膜を形成するSODに適していた。
【0046】
2つの特異な現象が、N−エチル−ヘキサキス(エチルアミノ)シクロシラジシラザンの合成及びスケールアップを容易にする。第1に、EtNH・HCl塩はエチルアミン中に30重量%の塩含有量で完全に溶解する。第2に、液体生成物及び塩の相の分離ははっきりとした2液相分離となる。対応するアミン中の対応する塩酸アミン塩のこうした高溶解性は、ビス(t−ブチルアミノ)シラン(BTBAS)、テトラキス(エチルメチルアミノ)シラン(4EMAS)、テトラキス(ジエチルアミノ)シラン(4DEAS)又はテトラキス(ジメチルアミノ)シラン(4DMAS)の合成におけるt−BuNH中のt−BuNH・HCl、EtMeNH中のEtMeNH・HCl、EtNH中のEtNH・HCl、又はMeNH中のMeNH・HClについては観察されていない。
【0047】
溶解されたEtNH・HCl塩は、N−エチル−ヘキサキス(エチルアミノ)シクロシラジシラザンを押出し、2つの液相を形成する。相分離は生成物の分離をデカンテーションほど容易にする。従って、BTBAS、4EMAS、4DEAS及び4DMASを分離するのに用いられる塩のろ過は、Si(NEtH)(μ−NEt)の合成では回避される。
【0048】
実施例3及び比較例1−共重合体溶液及びHSQ溶液を用いるSOD
溶液は、20%の実施例1の固体共重合体を含有し、残余を米国ミシガン州ミッドランドのダウコーニングコーポレーションから市販のDOW CORNING(登録商標)OS−20 Fluidを用いた。溶液を、ベア及びパターンシリコンウェーハ表面上にスピンコーティングし、各ウェーハ表面上に被膜を形成した。低温水分浸漬工程において、被膜をまず200℃の蒸気環境中に30分間保持した。次に、温度を400℃まで30分間上昇させ、最終的に、アニーリング工程において縮合反応を行うため、温度を800℃まで30分間上昇させた。400℃及び800℃での加熱工程も蒸気環境中で行った。被膜をFT−IRにより示すようにSiOに変換した。得られた硬化被膜のエッチング耐性は、100:1HF溶液中、パターンシリコンウェーハについて、100nm未満の溝において得られた。溝はもっとも幅広い点で56.2nm幅であり、溝をボイドフリーSiO被膜で充填した。
【0049】
比較目的で、固体共重合体の代わりにHSQ樹脂を用いた以外、上記のように試料を生成した。エッチング試験後、パターンシリコンウェーハの溝中の硬化HSQ樹脂を完全にエッチングした。
【0050】
実施例4―HMDZを用いた共重合体の調製
シラザン経路によってSi共重合体を調製するため、16.6ml(79.6mmol)のHMDZを、1:2のHN(SiMe:SiClモル比で30.2gのトルエン中に予め溶解した7.55g(13.3mmol)のNPCに添加した。次に低沸点溶剤を周囲圧力下、最高196℃で蒸留した。残渣を10トルの圧力下、250℃で重合し、揮発性縮合副生成物を随時除去した。結果として、5gの粘性液体を生成物として分離し、H及び29Si NMR、FT−IR、ラマン分光法並びにGPCで特徴づけた。生成物の分子量は、GPCで数平均分子量(M)706及び重量平均分子量(M)903であると測定された。FT−IR、ラマン及び29SiのNMR分析は、Si−Si結合の一部が開裂していることを示した。
【0051】
実施例5―第1級アミンを用いたSi共重合体の調製
アミノ分解法によりSi共重合体樹脂を調製するため、191.7gのトルエン中の54.1g(1.74mol)のMeNHの溶液を148.3gのトルエン中の37.4g(0.0661mol)のNPCの溶液に0℃で添加した。周囲温度で1時間増粘した後、反応混合物をろ過し、塩副生成物を除去した。透明なろ液を真空揮散させ、すべての揮発物を除去した。約19.0gの固体樹脂共重合体を、分離し、H及び29SiのNMR分析によって特性化した。共重合体を被膜堆積のためメシチレン中に溶解した。
【0052】
実施例6―Si共重合体をSiH官能性クロロシランで調製する
Si共重合体を、2:1のモル比のDCS及びNPCで調製した。94.8gのトルエン中の33.7g(1.08mol)のメチルアミンの溶液を、69.2gのトルエン中に予め溶解させた17.4g(0.0308mol)のNPC及び18.7gのキシレン中に予め溶解させた6.2gのDCS(0.0616mol)の混合物に0℃で添加した。周囲温度で2時間増粘した後、反応混合物をろ過し、塩副生成物を除去した。透明なろ液を真空揮散させ、揮発物を除去した。約6.4gの油性樹脂中間体を分離した。中間体をさらなる縮合のため100℃で1時間真空蒸留した。熱処理は、5.3gの周囲温度ですぐに固化する溶融樹脂共重合体をもたらした。共重合体をH及び29SiのNMR分析で特性化した。被膜のスピン堆積のためメシチレン中に溶解、又は繊維の引取のため溶融した。この共重合体の被膜及び繊維形成能力は実施例5において調製された共重合体の被膜及び繊維形成能力より良好だった。
【0053】
繊維成形能力を、実施例5及び6において調製された共重合体を加熱して溶融することにより測定した。ガラスロッドを手作業で各共重合体と接触させた後離し、共重合体が液体である間に溶融共重合体とガラスとの間で繊維が途切れるまでどれだけ伸びるかを見た。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本明細書に記載した共重合体には、現在知られているPSZと同じ欠点がない。新規共重合体は、ペルクロロポリシランの第1級アミン、アンモニア、又はシラザンでのアミノ分解により生成することができる。結果として、これらの共重合体は高度に架橋し、Si−C結合を含まない。これらの共重合体は、SODを含む、多くのコーティング技術により被膜に成形することができる。適切な硬化条件下、新規共重合体は、アミノ基転移により炭素を含まないSiNに、又は酸化若しくは加水分解によりSiON又はSiOに変換することができる。これらの共重合体は、加水分解に対する高い反応性及び高い流動性のようなポリシラザンの一般的な特性を有し、これらの共重合体は、酸化後のより長いSiOSi結合の形成のようなポリシランの一般的な特性を有する。共重合体は、ポリシラザン又はポリシランより低い温度で熱分解を行う利点を提供することができる。
【0055】
理論に縛られることは望まないが、本明細書に記載した共重合体から堆積させた薄被膜は、高温でHSQ樹脂から堆積させた被膜より高いリフロー性を有することができると考えられる。蒸気硬化中のシラザン(Si−N−Si)からシロキサン(Si−O−Si)への構造的変化は共重合体被膜を高温でリフローさせることができる。熱リフローは、被膜応力を減少させ、HF湿式エッチング液のような化学エッチング液に対する被膜の耐性を向上させるのを助けると考えられる。さらに、共重合体は、不活性アニーリング条件下でSiNへの高セラミック収率前駆体であるという利点を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】

の式のポリシラン単位、及び
【化2】

の式のポリシラザン単位を含み、
式中、R及びRはそれぞれ独立してH、Si、及びN原子から選択され、RはH、Si、又はC原子から選択され、a≧1であり、b≧1であり、(a+b)≧2であり、
SiC結合を含まない、ポリシラン−ポリシラザン共重合体。
【請求項2】
【化3】

の式を有し、
式中、R及びRはそれぞれ独立してH、Si、及びN原子から選択され、RはH、Si、又はC原子から選択される、請求項1に記載の共重合体。
【請求項3】
【化4】

の式の単位(c≧1である)、
【化5】

の式の単位(d≧1である)、又は、両方をさらに含むが、ただし、
【化6】

の式の単位は前記ポリシラン単位とは異なる、請求項1に記載の共重合体。
【請求項4】
(a)請求項1〜3のいずれか1項に記載の共重合体5%〜20%、及び、
(b)80%〜95%の溶媒、
を含む、組成物。
【請求項5】
1)請求項1〜3のいずれか1項に記載の共重合体又は請求項4に記載の組成物を基板に塗布して被膜を形成する工程と、
2)該被膜を加熱する工程と、
を具える、方法。
【請求項6】
工程1)が、スピンコーティング、押出コーティング、ディップコーティング又はスプレーコーティングにより行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記基板が、その上にナノスケールの溝を有する半導体ウェーハであり、該ナノスケールの溝が6〜60のアスペクト比を有する、請求項5又は請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程2)が、i)低温水分浸漬工程及びii)高温アニーリング工程を有する、請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程i)が、22℃〜200℃の範囲内の温度で30分〜60分の時間、前記被膜を大気水分又は蒸気にさらす工程、及び、その後、少なくとも400℃の温度で30分〜60分間、前記被膜を加熱する工程を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程ii)が、前記被膜を、NO、N又は蒸気を含む環境中、600℃〜900℃の範囲内の温度で加熱する工程を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
請求項5〜10のいずれか1項に記載の方法により調製される、生成物。
【請求項12】
前記生成物が完全縮合したものである、請求項11に記載の生成物。
【請求項13】
前記生成物が部分縮合したものである、請求項11に記載の生成物。
【請求項14】
I)1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子を有するペルクロロポリシランを、アミンと反応させる工程を具える、請求項1又は請求項2に記載の共重合体の調製方法。
【請求項15】
I)1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子を有するペルクロロポリシランを、アンモニアと反応させる工程を具える、請求項1に記載の共重合体の調製方法。
【請求項16】
I)1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子を有するペルクロロポリシランをシラザンと反応させる工程を具える、請求項1に記載の共重合体の調製方法。
【請求項17】
前記ペルクロロポリシランが、線状、分岐状、環状又は三次元架橋である、請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記ペルクロロポリシランが、ペルクロロネオペンタシランを含む、請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
SiCl、HSiCl、又はこれらの組み合わせが、工程I)に含まれる、請求項14〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
工程I)がニートで行われる、請求項14〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
溶媒が、工程I)に用いられる、請求項14〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
II)工程I)の生成物を不活性な環境中、高温で加熱する工程をさらに含む、請求項14〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
シャロートレンチアイソレーション及びプリメタル誘電体から選択される用途における、請求項1〜3のいずれか1項に記載の共重合体又は請求項4に記載の組成物の使用。
【請求項24】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の共重合体の繊維成形用途における使用。
【請求項25】
本質的に、
【化7】

の式のポリシラン単位、及び
【化8】

の式のポリシラザン単位から構成され、
式中、R及びRはそれぞれ独立してH、Si、及びN原子から選択され、RはH、Si、又はC原子から選択され、a≧1であり、b≧1であり、(a+b)≧2である、
ポリシラン−ポリシラザン共重合体。
【請求項26】
【化9】

の式を有し、
式中、R及びRはそれぞれ独立してH、Si、及びN原子から選択され、RはH、Si、又はC原子から選択される、請求項25に記載の共重合体。
【請求項27】
さらに、本質的に、
【化10】

の式の単位(c≧1である)、
【化11】

の式の単位(d≧1である)、又は、両方をさらに含むが、ただし、
【化12】

の式の単位は前記ポリシラン単位とは異なる、請求項25に記載の共重合体。
【請求項28】
(a)本質的に、
【化13】

の式のポリシラン単位、及び、
【化14】

の式のポリシラザン単位から構成され、
式中、R及びRはそれぞれ独立してH、Si、及びN原子から選択され、RはH、Si、又はC原子から選択され、a≧1であり、b≧1であり、(a+b)≧2である、5%〜20%のポリシラン−ポリシラザン共重合体と、
(b)80%〜95%の溶媒と、
を含む、組成物。
【請求項29】
1)組成物を基板に塗布して被膜を形成し、
該組成物が、
(a)本質的に、
【化15】

の式のポリシラン単位、及び、
【化16】

の式のポリシラザン単位から構成され、
式中、R及びRはそれぞれ独立してH、Si、及びN原子から選択され、RはH、Si、又はC原子から選択され、a≧1であり、b≧1であり、(a+b)≧2である、5%〜20%のポリシラン−ポリシラザン共重合体、並びに、
(b)80%〜95%の溶媒、
を含む工程と、
2)該被膜を加熱する工程と、
を具える、方法。
【請求項30】
工程1)が、スピンコーティング、押出コーティング、ディップコーティング又はスプレーコーティングから選択される方法により行われる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
工程2)が、i)低温水分浸漬工程及びii)高温アニーリング工程を有する、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
工程i)が、22℃〜200℃の範囲内の温度で30分〜60分の時間、前記被膜を大気水分又は蒸気にさらす工程、及び、その後、少なくとも400℃の温度で30分〜60分間、前記被膜を加熱する工程を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
工程ii)が、前記被膜を、NO、N又は蒸気を含む環境中、600℃〜900℃の範囲内の温度で加熱する工程を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
請求項29に記載の方法により調製される、生成物。
【請求項35】
前記基板が、その上にナノスケールの溝を有する半導体ウェーハであり、該ナノスケールの溝が少なくとも6のアスペクト比を有する、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
1)液体ポリシラン−ポリシラザン共重合体を基板に塗布して被膜を形成し、該組成物が、本質的に、
【化17】

の式のポリシラン単位、及び、
【化18】

の式のポリシラザン単位から構成され、
式中、R及びRはそれぞれ独立してH、Si、及びN原子から選択され、RはH、Si、又はC原子から選択され、a≧1であり、b≧1であり、(a+b)≧2である、ポリシラン−ポリシラザン共重合体を含む工程と、
2)該被膜を加熱する工程と、
を具える、方法。
【請求項37】
工程1)が、スピンコーティング、押出コーティング、ディップコーティング又はスプレーコーティングから選択される方法により行われる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
工程2)が、i)低温水分浸漬工程及びii)高温アニーリング工程を有する、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
工程i)が、22℃〜200℃の範囲内の温度で30分〜60分の時間、前記被膜を大気水分又は蒸気にさらす工程、及び、その後、少なくとも400℃の温度で30分〜60分間、前記被膜を加熱する工程を有する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
工程ii)が、前記被膜を、NO、N又は蒸気を含む環境中、600℃〜900℃の範囲内の温度で加熱する工程を有する、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
請求項36に記載の方法により調製される、生成物。
【請求項42】
前記基板が、ベア半導体ウェーハである、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
I)1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子を有するペルクロロポリシランをアミンと反応させることで、
本質的に、
【化19】

の式のポリシラン単位、及び、
【化20】

の式のポリシラザン単位から構成され、
式中、R及びRはそれぞれ独立してH、Si、及びN原子から選択され、RはH、Si、又はC原子から選択され、a≧1であり、b≧1であり、(a+b)≧2である、
共重合体を調製する工程、を具える方法。
【請求項44】
前記ペルクロロポリシランが線状、分岐、環状又は三次元架橋である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記ペルクロロポリシランが、ペルクロロネオペンタシランである、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
SiCl、HSiCl、又はこれらの組み合わせが、工程I)において添加される、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
溶媒が、工程I)において添加される、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
工程I)が、ニートで行われる、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
II)工程I)の生成物を不活性な環境中高温で加熱することで、前記共重合体の分子量を増加させる工程をさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項50】
I)1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子を有するペルクロロポリシランをアンモニアと反応させることで、
本質的に、
【化21】

の式のポリシラン単位、及び、
【化22】

の式のポリシラザン単位から構成され、
式中、R及びRはそれぞれ独立してH、Si、及びN原子から選択され、RはH、Si、又はC原子から選択され、a≧1であり、b≧1であり、(a+b)≧2である、
共重合体を調製する工程、を具える方法。
【請求項51】
前記ペルクロロポリシランが、線状、分岐、環状又は三次元架橋である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記ペルクロロポリシランが、ペルクロロネオペンタシランである、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
SiCl、HSiCl、又はこれらの組み合わせが、工程I)において添加される、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
溶媒が、工程I)において用いられる、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
工程I)が、ニートで行われる、請求項50に記載の方法。
【請求項56】
II)工程I)の生成物を不活性な環境中高温で加熱することで、前記共重合体の分子量を増加させる工程をさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項57】
I)1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子を有するペルクロロポリシランをシラザンと反応させることで、
本質的に、
【化23】

の式のポリシラン単位、及び、
【化24】

の式のポリシラザン単位から構成され、
式中、R及びRはそれぞれ独立してH、Si、及びN原子から選択され、RはH、Si、又はC原子から選択され、a≧1であり、b≧1であり、(a+b)≧2である、
共重合体を調製する工程、を具える方法。
【請求項58】
前記ペルクロロポリシランが、線状、分岐、環状又は三次元架橋である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記ペルクロロポリシランが、ペルクロロネオペンタシランである、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
SiCl、HSiCl、又はこれらの組み合わせが、工程I)において添加される、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
溶媒が、工程I)において添加される、請求項57に記載の方法。
【請求項62】
工程I)が、ニートで行われる、請求項57に記載の方法。
【請求項63】
II)工程I)の生成物を不活性な環境中、高温で加熱し、これにより前記共重合体の分子量を増加させる工程をさらに含む、請求項57に記載の方法。

【公表番号】特表2013−509414(P2013−509414A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536922(P2012−536922)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/053946
【国際公開番号】WO2011/053551
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(590001418)ダウ コーニング コーポレーション (166)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【Fターム(参考)】