説明

ポリヒドロキシウレタン化合物及びその製造方法、並びに、硬化性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法

【課題】柔軟性及び撥水性に優れた新規なポリヒドロキシウレタン化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される構造単位を有する、ポリヒドロキシウレタン化合物。


[式中、R、R及びRは各々独立に2価の有機基を示し、X及びXは、五員環カーボナートの開環により形成される(メタ)アクリロイル基を有する1価の有機基又は水素原子を含有する2価の基を示し、mは1以上の整数を示すは各々独立に示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリヒドロキシウレタン化合物及びその製造方法、並びに、硬化性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ソルダーレジストはプリント配線板の製造において使用されているが、近年はBGA(ボール グリッド アレイ)、PGA(ピン グリッド アレイ)、CSP(チップ サイズ パッケージ)、wL−CSP(ウエハーレベルCSP)等の新しいLSIパッケージなどにも使用されるようになってきた。ソルダーレジストはソルダリング工程で半田が不必要な部分に付着することを防ぐ保護膜又は永久マスクとして必要不可欠な材料である。
【0003】
ソルダーレジストの形成方法としては、例えば、熱硬化型の樹脂組成物をスクリーン印刷法で印刷する方法がある。また、近年、配線の高密度化に伴い、スクリーン印刷法では解像度の点で限界があることから、写真法でパターン形成するフォトソルダーレジストも盛んに用いられるようになっている。特に、炭酸ソーダ溶液等の弱アルカリ溶液で現像可能なアルカリ現像型の感光性樹脂組成物が、作業環境保全、地球環境保全等の点から主流になっている(例えば、下記特許文献1及び2参照)。
【0004】
しかし、アルカリ現像型の感光性樹脂組成物を用いて形成されたソルダーレジストは、耐久性の点で未だ不十分であるという問題がある。すなわち、従来の熱硬化型の樹脂組成物や溶剤現像型の感光性樹脂組成物を用いて形成されたソルダーレジストに比べて耐薬品性、耐水性、耐熱性等が劣る傾向がある。アルカリ現像型の感光性樹脂組成物は、アルカリ現像可能にするために親水性基を有する樹脂が主成分となっており、そのため、形成されるソルダーレジストは、薬液、水、水蒸気等が浸透しやすい。その結果、レジスト皮膜と銅との間の密着性が低下すると考えられる。特に、BGAやCSP等の半導体パッケージにおいては、ソルダーレジストには耐湿熱性ともいうべき耐PCT性(耐プレッシャークッカーテスト性)や耐電食性が特に必要であるが、未だ十分な性能が得られていないのが現状である。
【0005】
更に、実装方法が挿入実装から表面実装に変わることにより、実装時にパッケージにかかる温度が高くなる傾向にある。具体的には表面実装の場合、予めクリームはんだを必要部分に印刷し、全体を赤外線で加熱し、はんだをリフローして固定するので、パッケージ内外部の到達温度は220〜280℃と著しく高くなる。そのため、従来の液状感光性樹脂組成物を用いて形成されたソルダーレジストでは、熱衝撃でクラックが発生したり、基板や封止材から剥離してしまうという、いわゆる耐リフロー性低下や熱衝撃性の問題があり、その改良が求められている。
【0006】
また、近年、プリント配線板の一種として、フレキシブルプリント配線板(Flexible Printed Circuit;以下、「FPC」という)と呼ばれるフィルム状のプリント配線板が、特にカメラ、磁気ヘッド、携帯電話などの小型機器に用いられている。これは、FPCがそれ自体を折り曲げてもその機能を維持することができることから、上述のような小型機器に収容するプリント配線板として最適であることによる。特に近年においては、各種電子機器の更なる小型化及び軽量化の要請が増えてきており、このような機器の配線用にFPCを採用することで、該小型機器の寸法及び重量減少、製品コストの低減並びに設計の単純化等が実現されてきている。
【0007】
このFPCに用いられるソルダーレジストは、通常のリジッドなプリント配線板に用いられるソルダーレジストと同様の特性が要求されるが、それに加えて、FPCを折り曲げた際に破壊されないような可とう性も要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭61−243869号公報
【特許文献2】特開平1−141904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のソルダーレジストは、可とう性が必ずしも十分ではなく、FPCや薄型BGA基板(コア厚み0.4mm以下)やコアレス基板に適用することは困難であった。また、従来のソルダーレジストでは、熱応力等によって反りが発生しやすいという問題があった。
【0010】
したがって、ソルダーレジストを形成するための硬化性樹脂組成物には、フレキシブルプリント配線板(FPC)等に要求される可とう性に加え、密着性、耐PCT性、耐電食性及び耐熱衝撃性に優れ、更に、反りが抑制された硬化膜を形成することができることが求められている。
【0011】
本発明は、上述した要求を満足し得る硬化性樹脂組成物を提供するために有用であり、柔軟性及び撥水性に特に優れた新規なポリヒドロキシウレタン化合物及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、上記ポリヒドロキシウレタン化合物を用い、可とう性に加え、密着性、耐PCT性、耐電食性及び耐熱衝撃性に優れ、更に、反りが抑制された硬化膜を形成することが可能な硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。更に、本発明は、上記硬化性樹脂組成物を用いた感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、下記一般式(1)で表される構造単位を有する、ポリヒドロキシウレタン化合物を提供する。
【化1】



[式中、R、R及びRは各々独立に2価の有機基を示し、Xは下記一般式(1a)又は(1b)で表される2価の基を示し、Xは下記一般式(1c)又は(1d)で表される2価の基を示し、mは1以上の整数を示す。]
【化2】



【化3】



[式(1a)、(1b)、(1c)及び(1d)中、Rは各々独立に(メタ)アクリロイル基を有する1価の有機基又は水素原子を示す。]
【0013】
上記ポリヒドロキシウレタン化合物は、ポリヒドロキシウレタンにシリコーン構造が導入された新規な構造を有している。このため、上記ポリヒドロキシウレタン化合物は、シリコーン構造を有しないポリヒドロキシウレタンと比較して、優れた柔軟性と撥水性とを備え、更に電気絶縁性及び耐熱性にも優れている。また、上記ポリヒドロキシウレタン化合物は、シリコーン構造を有することにより、低極性溶媒への優れた溶解性を得ることができる。なお、上記ポリヒドロキシウレタン化合物の溶媒への溶解性は、導入されたシリコーン構造が長いほど低極性溶媒側にシフトする。
【0014】
上記ポリヒドロキシウレタン化合物は、その優れた特性が有効に発揮される種々の用途に使用可能である。例えば、上記ポリヒドロキシウレタン化合物を、ソルダーレジストを形成するための硬化性樹脂組成物に使用した場合、その優れた柔軟性により、折り曲げた際に破壊されない優れた可とう性を有し、且つ、熱応力等による反りの発生が十分に抑制されたソルダーレジストを形成することができる。また、その優れた撥水性により、形成したソルダーレジストに薬液、水、水蒸気等が浸透しにくく、レジスト皮膜と基板表面との良好な密着性を得ることができる。更に、その優れた電気絶縁性及び耐熱性により、耐熱衝撃性、耐電食性、はんだ耐熱性、耐PCTに優れたソルダーレジストを形成することができる。
【0015】
また、本発明のポリヒドロキシウレタン化合物は、片末端又は両末端に(メタ)アクリロイル基を有するものであることが好ましい。
【0016】
本発明はまた、二官能性五員環カーボナート化合物と、シリコーン構造を有するジアミン化合物とを重付加反応させる工程を有する、上記本発明のポリヒドロキシウレタン化合物の製造方法を提供する。かかる製造方法によれば、上述した本発明のポリヒドロキシウレタン化合物を効率よく製造することができる。また、この重付加反応によれば、一般に上記一般式(1)におけるRがすべて水素原子のポリヒドロキシウレタン化合物が生成し、これはこのままでも各種用途に用いることもでき、また、Rをさらに別の置換基として使用するための中間体として用いることもできる。
【0017】
また、本発明のポリヒドロキシウレタン化合物の製造方法は、上記重付加反応後の化合物に、更に(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させて、側鎖及び末端のうちの少なくとも一部に(メタ)アクリロイル基を導入する工程を有することが好ましい。これにより、側鎖及び末端のうちの少なくとも一部に(メタ)アクリロイル基を有する上述した本発明のポリヒドロキシウレタン化合物を効率よく製造することができる。ここで、側鎖の少なくとも一部に(メタ)アクリロイル基が導入された場合は、上記一般式(1)において、Rの少なくとも一部が(メタ)アクリロイル基を有する1価の有機基であるポリヒドロキシウレタン化合物が得られる。また、末端の少なくとも一部に(メタ)アクリロイル基が導入された場合は、主鎖の片末端又は両末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリヒドロキシウレタン化合物が得られる。なお、ポリヒドロキシウレタン化合物は、側鎖及び末端の両方に(メタ)アクリロイル基が導入されていてもよい。
【0018】
本発明はまた、(A)上記本発明のポリヒドロキシウレタン化合物と、(B)硬化性樹脂と、(C)硬化剤成分と、を含有する硬化性樹脂組成物を提供する。
【0019】
かかる硬化性樹脂組成物によれば、上記構成を有することにより、可とう性、現像性、密着性、耐PCT性、耐電食性及び耐熱衝撃性の全てを高水準で満足し、且つ、反りが抑制された硬化膜を形成することができる。そのため、上記硬化性樹脂組成物は、プリント配線板等の製造に好適に用いることができる。
【0020】
また、本発明の硬化性樹脂組成物において、上記(B)硬化性樹脂は、(b1)分子内に少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物と(b2)不飽和基含有モノカルボン酸とのエステル化物に、更に(b3)飽和又は不飽和基含有多塩基酸無水物を付加した付加反応生成物である酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂を含むことが好ましい。これにより、可とう性、現像性、密着性、耐PCT性、耐電食性及び耐熱衝撃性がより向上した硬化膜を形成することが可能となる。
【0021】
また、本発明の硬化性樹脂組成物において、上記(b1)エポキシ化合物は、得られる硬化膜の電気特性をより向上できることから、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【化4】



[式中、R11は水素原子又はグリシジル基を示し、R12は水素原子又はメチル基を示し、pは0〜7の整数を示す。なお、複数存在するR11及びR12のそれぞれは同一でも異なっていてもよい。]
【0022】
本発明の硬化性樹脂組成物は、感光性を有する硬化性樹脂組成物(感光性樹脂組成物)であることが好ましい。
【0023】
本発明はまた、支持体と、該支持体上に形成された上記本発明の感光性を有する硬化性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層と、を備える感光性エレメントを提供する。
【0024】
かかる感光性エレメントによれば、本発明の硬化性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を備えることにより、可とう性、現像性、密着性、耐PCT性、耐電食性及び耐熱衝撃性に優れ、且つ、反りが抑制された硬化膜を形成することができる。そのため、上記感光性エレメントは、プリント配線板等の製造に好適に用いることができる。
【0025】
本発明はまた、上記本発明の感光性を有する硬化性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を基板上に積層する積層工程と、上記感光性樹脂組成物層に活性光線を画像状に照射して露光部を光硬化せしめる露光工程と、上記感光性樹脂組成物層の上記露光部以外の部分を現像により除去する現像工程と、を有するレジストパターンの形成方法を提供する。
【0026】
本発明は更に、上記本発明のレジストパターンの形成方法により、基板上に永久マスクを形成する工程を有する、プリント配線板の製造方法を提供する。
【0027】
上記レジストパターンの形成方法及び上記プリント配線板の製造方法によれば、上記本発明の硬化性樹脂組成物を用いているため、可とう性、現像性、密着性、耐PCT性、耐電食性及び耐熱衝撃性に優れ、且つ、反りが抑制された永久マスク(ソルダーレジスト)等の硬化膜を効率的に形成することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、柔軟性及び撥水性に特に優れた新規なポリヒドロキシウレタン化合物及びその製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、上記ポリヒドロキシウレタン化合物を用い、可とう性、現像性、密着性、耐PCT性、耐電食性及び耐熱衝撃性に優れ、且つ、反りが抑制された硬化膜を形成することができ、プリント配線板や半導体パッケージ等の製造に好適に用いられる硬化性樹脂組成物及び感光性エレメントを提供することができる。更に、本発明によれば、上記本発明の硬化性樹脂組成物を用いたレジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の感光性エレメントの好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】反り量の測定方法を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、場合により図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。また、本発明における(メタ)アクリルとはアクリル及びそれに対応するメタクリルを意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイルとはアクリロイル及びそれに対応するメタクリロイルを意味する。
【0031】
(ポリヒドロキシウレタン化合物及びその製造方法)
本発明のポリヒドロキシウレタン化合物は、下記一般式(1)で表される構造単位を有するものである。
【化5】



[式中、R、R及びRは各々独立に2価の有機基を示し、Xは下記一般式(1a)又は(1b)で表される2価の基を示し、Xは下記一般式(1c)又は(1d)で表される2価の基を示し、mは1以上の整数を示す。]
【化6】



【化7】



[式(1a)、(1b)、(1c)及び(1d)中、Rは各々独立に(メタ)アクリロイル基を有する1価の有機基又は水素原子を示す。]
【0032】
上記一般式(1)中、Rは、可とう性と収縮緩和の観点から、炭素数2〜40のアルキル基、エーテル基及びアラルキル基からなる群より選択される少なくとも一種の基を含む2価の有機基であることが好ましく、下記一般式(1e)で表される2価の基であることがより好ましい。
【0033】
【化8】



【0034】
上記一般式(1e)中、Rは、単結合、−CH−、又は、−C(CH−を示す。
【0035】
上記一般式(1)中、R及びRは、可とう性と収縮緩和の観点から、各々独立に、炭素数2〜10の2価の炭化水素基であることが好ましく、炭素数2〜4の2価の炭化水素基であることがより好ましい。また、RとRとは同一の基であることが好ましい。
【0036】
上記一般式(1)中、mは、収縮緩和と低温での緩和弾性率の観点から、1〜99の整数であることが好ましく、1〜36の整数であることがより好ましい。なお、mの値は、原料となるシリコーン構造を有するジアミン化合物の数平均分子量に基づいて、平均値として求めることができる。その場合、平均値としてのmの値が1〜99であることが好ましく、1〜36であることがより好ましい。
【0037】
上記一般式(1a)、(1b)、(1c)及び(1d)中、Rの少なくとも一部は、アクリルモノマーとの共重合性をもたせる観点から、(メタ)アクリロイル基を有する1価の有機基であることが好ましく、メタクリロイル基を有する1価の有機基であることがより好ましい。(メタ)アクリロイル基を有する1価の有機基は、ポリヒドロキシウレタン化合物の側鎖の水酸基に(メタ)アクリロイル化剤を反応させることにより導入することができる。上記(メタ)アクリロイル化剤としては、2−メタクリロイロキシエチルイソシアナート、2−アクリロイロキシエチルイソシアナート、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、1,3−ジオキソラン−2−オン−4−イルメチルメタクリレート、無水メタクリル酸、無水アクリル酸、メタクリル酸クロリド、アクリル酸クロリド、メタクリル酸ブロミド、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリロイル基を導入し易いことから、2−メタクリロイロキシエチルイソシアナート、2−アクリロイロキシエチルイソシアナート、グリシジルメタクリレート、グリジジルアクリレートを用いることが好ましい。これらのうち、例えば、2−メタクリロイロキシエチルイソシアナート又は2−アクリロイロキシエチルイソシアナートを用いた場合、(メタ)アクリロイル基を有する1価の有機基は、具体的には下記一般式(1f)で表される基となる。
【0038】
【化9】



[式(1f)中、Rは水素原子又はメチル基を示す。]
【0039】
また、上記一般式(1)で表される構造単位を有するポリヒドロキシウレタン化合物は、アクリルモノマーとの共重合性をもたせる観点から、片末端又は両末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましく、片末端又は両末端にメタクリロイル基を有する化合物であることがより好ましい。反応性の面からは両末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物がさらに好ましい。このように末端に(メタ)アクリロイル基を導入するには、例えば、最初の二官能性五員環カーボナート化合物とシリコーン構造を有するジアミン化合物との反応において、ジアミン化合物を小過剰量(好ましくはモル比でカーボナート化合物の1.03〜1.10倍)使用することで、末端にアミノ基を残存させ、これに上記アミノ基と反応する官能基(例えば、カルボキシル基等)と(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させることが好ましい。
【0040】
上記ポリヒドロキシウレタン化合物の数平均分子量(M)は、1000〜1000000であることが好ましく、2000〜100000であることがより好ましく、5000〜30000であることが特に好ましい。数平均分子量が上記範囲より小さいと、耐熱性が劣る傾向があり、上記範囲より大きいと、他の成分との親和性が不十分となる傾向がある。
【0041】
また、上記ポリヒドロキシウレタン化合物の分散度(M/M)は、1.1〜10.0であることが好ましく、1.2〜5.0であることがより好ましく、1.4〜3.0であることが特に好ましい。分散度が上記範囲より小さいと、合成が困難となる傾向があり、上記範囲より大きいと、低分子量成分が耐熱性を低下させる傾向がある。
【0042】
なお、本発明において、数平均分子量(M)及び重量平均分子量(M)は、移動相としてテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定し、標準ポリスチレンを用いた検量線により換算した値である。
【0043】
上述した一般式(1)で表される構造単位を有するポリヒドロキシウレタン化合物は、二官能性五員環カーボナート化合物と、シリコーン構造を有するジアミン化合物とを重付加反応させることにより製造することができる。また、上記重付加反応後のポリヒドロキシウレタン化合物に、更に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリロイル化剤を反応させることにより、側鎖及び末端のうちの少なくとも一部に(メタ)アクリロイル基が導入されたポリヒドロキシウレタン化合物を製造することもできる。
【0044】
ここで、二官能性五員環カーボナート化合物としては、ビスフェノールAジ(1,3−ジオキソラン−2−オン−4−イルメチル)エーテル、ビスフェノールFジ(1,3−ジオキソラン−2−オン−4−イルメチル)エーテル、エチレングリコールジ(1,3−ジオキソラン−2−オン−4−イルメチル)エーテル、ブタンジオールジ(1,3−ジオキソラン−2−オン−4−イルメチル)エーテルなどの、炭素数2〜40のアルキル基、エーテル基、アラルキル基等を介して二つの五員環カーボナートを有する化合物が挙げられる。これらの中でも、耐熱性及び耐PCT性の観点から、ビスフェノールAジ(1,3−ジオキソラン−2−オン−4−イルメチル)エーテル、ビスフェノールFジ(1,3−ジオキソラン−2−オン−4−イルメチル)エーテルが好ましい。
【0045】
シリコーン構造を有するジアミン化合物としては、ケイ素数が2〜100のポリジメチルシロキサンの両末端にアミノ基をもつシリコーンジアミンが挙げられる。ここで、シリコーンジアミンのケイ素数は、2〜37であることがより好ましい。シリコーンジアミンのケイ素数は、その数平均分子量に基づいて、平均値として求めることができる。その場合、平均値としてのケイ素数が2〜100であることが好ましく、2〜37であることがより好ましい。
【0046】
(メタ)アクリロイル化剤としては、2−メタクリロイロキシエチルイソシアナート、2−アクリロイロキシエチルイソシアナート、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、1,3−ジオキソラン−2−オン−4−イルメチルメタクリレート、無水メタクリル酸、無水アクリル酸、メタクリル酸クロリド、アクリル酸クロリド、メタクリル酸ブロミド、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル等が挙げられる。
【0047】
本発明のポリヒドロキシウレタン化合物の製造方法は、上記二官能性五員環カーボナート化合物を合成する工程を更に含んでいてもよい。上記二官能性五員環カーボナート化合物は、二官能性エポキシ化合物と二酸化炭素とを触媒存在下で反応させることにより合成することができる。
【0048】
二官能性エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテルなどの、炭素数2〜40のアルキル基、エーテル基、アラルキル基等を介して二つのエポキシ基を有する化合物が挙げられる。
【0049】
触媒としては、例えば、臭化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、臭化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、ヨウ化リチウム、臭化リチウム等が挙げられる。
【0050】
二官能性エポキシ化合物と二酸化炭素との反応は、二官能性エポキシ化合物と触媒とを溶媒に溶解させた溶液中に二酸化炭素を吹き込みながら加熱撹拌することにより行うことができる。溶媒としては特に限定されないが、1,4−ジオキサン、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、アセトニトリル等が挙げられる。
【0051】
触媒の配合量は、反応を効果的に促進させる観点から、二官能性エポキシ化合物1モルに対して0.01〜0.1モルとすることが好ましく、0.03〜0.07モルとすることがより好ましい。
【0052】
二官能性エポキシ化合物と二酸化炭素とを反応させる工程において、反応温度は、40〜100℃とすることが好ましく、50〜80℃とすることがより好ましい。また、反応時間は、4〜48時間とすることが好ましく、6〜12時間とすることがより好ましい。
【0053】
また、二官能性五員環カーボナート化合物と、シリコーン構造を有するジアミン化合物との重付加反応は、これらの化合物を溶媒中で加熱撹拌することにより行うことができる。溶媒としては、上記二官能性エポキシ化合物と二酸化炭素との反応の際に使用する溶媒と同様のものを用いることができる。
【0054】
シリコーン構造を有するジアミン化合物の配合量は、反応を効果的に促進させる観点から、二官能性五員環カーボナート化合物1モルに対して0.7〜1.2モルとすることが好ましく、0.9〜1.1モルとすることがより好ましい。
【0055】
二官能性五員環カーボナート化合物とシリコーン構造を有するジアミン化合物とを重付加反応させる工程において、反応温度は、40〜120℃とすることが好ましく、60〜100℃とすることがより好ましい。また、反応時間は、2〜24時間とすることが好ましく、4〜12時間とすることがより好ましい。
【0056】
上記重付加反応後のポリヒドロキシウレタン化合物に、(メタ)アクリロイル化剤を反応させる工程は、これらの化合物を溶媒中で加熱撹拌することにより行うことができる。溶媒としては、上記二官能性エポキシ化合物と二酸化炭素との反応の際に使用する溶媒と同様のものを用いることができる。また、このとき、(メタ)アクリロイル化反応を促進させるために、ラウリン酸ジブチルスズ、酢酸ジブチルスズ、酸化ジブチルスズ、二塩化ジブチルスズ、テトラブチルスズ、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロオクタン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン等の触媒を添加することが好ましい。
【0057】
(メタ)アクリロイル化剤の配合量は、反応を効果的に促進させる観点から、重付加反応後のポリヒドロキシウレタン化合物1モルに対して0.001〜0.6モルとすることが好ましく、0.1〜0.4モルとすることがより好ましい。
【0058】
重付加反応後のポリヒドロキシウレタン化合物に(メタ)アクリロイル化剤を反応させる工程において、反応温度は、0〜60℃とすることが好ましく、20〜40℃とすることがより好ましい。また、反応時間は、10分〜48時間とすることが好ましく、3〜24時間とすることがより好ましい。
【0059】
上述した二官能性エポキシ化合物と二酸化炭素との反応、及び、二官能性五員環カーボナート化合物とシリコーン構造を有するジアミン化合物との重付加反応により、一般式(1)で表される構造単位を有するポリヒドロキシウレタン化合物を合成する場合の合成経路を、下記反応式(I)に示す。なお、側鎖及び末端のうちの少なくとも一部に(メタ)アクリロイル基を導入する場合には、一般式(1)で表される構造単位を有するポリヒドロキシウレタン化合物(但し、Rは全て水素原子である)を合成した後、更に(メタ)アクリロイル化剤を反応させる。
【0060】
【化10】



【0061】
なお、一般式(1)で表される構造単位を有するポリヒドロキシウレタン化合物において、一般式(1)中のX及びXの構造は、五員環カーボナートの開環の位置によって決定される。
【0062】
また、ポリヒドロキシウレタン化合物の側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入する場合、(メタ)アクリロイル化剤は、側鎖の一級水酸基と反応しやすい。このため、一般式(1b)及び(1d)で表される基のRは(メタ)アクリロイル基を有する1価の有機基となりやすく、一般式(1a)及び(1c)で表される基のRは水素原子となりやすい。但し、(メタ)アクリロイル化剤の配合量や反応時間を増やすことで、(メタ)アクリロイル化剤は側鎖の二級水酸基とも反応する。二級水酸基にも(メタ)アクリロイル基を導入する場合には、室温にて反応を行う場合、反応時間を10時間以上とすることが望ましい。
【0063】
本発明のポリヒドロキシウレタン化合物は、上記のように二酸化炭素を原料にして合成することができる。したがって、近年問題となっている温室効果ガスである二酸化炭素の削減にも寄与する。また、二酸化炭素は低毒性且つ不燃性であり、石油に依存しない炭素資源であるといった利点も有する。更に、二酸化炭素と二官能性エポキシ化合物との反応は容易に進行するため、低エネルギーで二酸化炭素の変換が可能である。
【0064】
以上説明した本発明のポリヒドロキシウレタン化合物は、プリント配線板や半導体等の電気、電子材料分野に用いられる硬化性樹脂組成物、更に詳しくは、フレキシブルプリント配線板、高密度多層基板、テープキャリア等において、可とう性、現像性、密着性、耐PCT性、耐電食性及び耐熱衝撃性に優れ、且つ、反りが抑制されたソルダーレジスト、層間絶縁膜(ビルドアップ材)またはめっきレジスト等を形成するための硬化性樹脂組成物に好適に使用することができる。
【0065】
また、本発明のポリヒドロキシウレタン化合物は、上記以外の用途にも使用可能である。例えば、本発明のポリヒドロキシウレタン化合物は、耐熱性、耐湿熱性、可とう性に優れていることから、FPC基板、薄型BGA基板(特にコア厚み0.4mm以下が好ましい)、コアレス基板、ウエハー基板等の一般プリント配線板や半導体用基板用途に好適に使用することができる。
【0066】
(硬化性樹脂組成物)
本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)上記本発明のポリヒドロキシウレタン化合物(以下、場合により「(A)成分」という)と、(B)硬化性樹脂(以下、場合により「(B)成分」という)と、(C)硬化剤成分(以下、場合により「(C)成分」という)と、を含有するものである。
【0067】
(A)ポリヒドロキシウレタン化合物については先に説明した通りである。硬化性樹脂組成物において、(A)ポリヒドロキシウレタン化合物の含有量は、硬化性樹脂組成物の固形分全量を基準として、0.5〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましく、2〜8質量%であることが特に好ましい。この含有量が0.5質量%未満では得られる硬化膜の反りを抑制する効果が低下するとともに、密着性が低下する傾向があり、20質量%を超えると現像性が低下する傾向がある。
【0068】
(B)硬化性樹脂は、(b1)分子内に少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物(以下、場合により「(b1)成分」という)と(b2)不飽和基含有モノカルボン酸とのエステル化物(以下、場合により「(b2)成分」という)に、更に(b3)飽和又は不飽和基含有多塩基酸無水物(以下、場合により「(b3)成分」という)を付加した付加反応生成物である酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0069】
(b1)分子内に少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型フェノールノボラック型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型フェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0070】
これらの中でも特に、下記一般式(2)で表されるビスフェノールA型フェノールノボラック型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型フェノールノボラック型エポキシ樹脂が、電気特性の観点から好ましい。
【0071】
【化11】



[式中、R11は水素原子又はグリシジル基を示し、R12は水素原子又はメチル基を示し、pは0〜7の整数を示す。なお、複数存在するR11及びR12のそれぞれは同一でも異なっていてもよい。]
【0072】
上記ビスフェノールA型フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製のEPONSU8シリーズ等が挙げられる。その製造方法は特に制限されないが、公知の方法で、ビスフェノールA型樹脂にエピクロルヒドリンを反応させることで得ることができる。また、上記ビスフェノールF型フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、大日本インキ工業化学(株)製のEXA−7376シリーズ等が挙げられる。その製造方法は特に制限されないが、公知の方法で、ビスフェノールF型樹脂にエピクロルヒドリンを反応させることで得ることができる。
【0073】
(b2)不飽和基含有モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸の二量体、メタクリル酸、β−フルフリルアクリル酸、β−スチリルアクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、α−シアノ桂皮酸、水酸基含有アクリレートと飽和又は不飽和二塩基酸無水物との反応生成物である半エステル化合物、不飽和基含有モノグリシジルエーテルと飽和又は不飽和二塩基酸無水物との反応生成物である半エステル化合物等が挙げられる。これら半エステル化合物は、水酸基含有アクリレート又は不飽和基含有モノグリシジルエーテルと、飽和又は不飽和二塩基酸無水物とを等モル比で反応させることで得られる。これら(b2)不飽和基含有モノカルボン酸は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
(b2)不飽和基含有モノカルボン酸の一例である上記半エステル化合物の合成に用いられる水酸基含有アクリレート、不飽和基含有モノグリシジルエーテルとしては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールペンタメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
【0075】
また、上記半エステル化合物の合成に用いられる飽和又は不飽和二塩基酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
【0076】
本発明における(b1)分子内に少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物と(b2)不飽和基含有モノカルボン酸との反応において、(b1)エポキシ化合物のエポキシ基1当量に対して、(b2)不飽和基含有モノカルボン酸が0.8〜1.10当量となる比率で反応させることが好ましく、0.9〜1.0当量となる比率で反応させることがより好ましい。
【0077】
(b1)エポキシ化合物と(b2)不飽和基含有モノカルボン酸とは、有機溶剤に溶かして反応させることができる。有機溶剤としては、例えば、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等のエステル類、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。
【0078】
更に、(b1)成分と(b2)成分との反応を促進させるために触媒を用いることが好ましい。用いられる触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルメチルアミン、メチルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。触媒の使用量は、(b1)成分と(b2)成分との合計100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましい。
【0079】
また、反応中の重合を防止する目的で、重合防止剤を使用することが好ましい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール等が挙げられる。重合防止剤の使用量は、(b1)成分と(b2)成分との合計100質量部に対して、0.01〜1質量部であることが好ましい。
【0080】
また、(b1)成分と(b2)成分とを反応させる際の反応温度は、60〜150℃であることが好ましく、80〜120℃であることがより好ましい。
【0081】
更に、(b2)不飽和基含有モノカルボン酸は、必要に応じて、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の多塩基酸無水物と併用することができる。
【0082】
(b3)飽和又は不飽和基含有多塩基酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
【0083】
(b1)成分と(b2)成分との反応生成物(B’)と、(b3)成分との反応において、反応生成物(B’)中の水酸基1当量に対して、(b3)成分を0.1〜1.0当量反応させることで、得られる酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂の酸価を調整することができる。
【0084】
なお、酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂の酸価は、30〜150mgKOH/gであることが好ましく、50〜120mgKOH/gであることがより好ましい。酸価が30mgKOH/g未満では硬化性樹脂組成物の希アルカリ溶液への溶解性が低下する傾向があり、150mgKOH/gを越えると硬化膜の電気特性が低下する傾向がある。反応生成物(B’)と(b3)成分との反応温度は、60〜120℃であることが好ましい。
【0085】
また、必要に応じて、(b1)エポキシ化合物として、例えば、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂を一部併用することもできる。更に、酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂として、スチレン−無水マレイン酸共重合体のヒドロキシエチルアクリレート変性物、又は、スチレン−無水マレイン酸共重合体のヒドロキシエチルメタクリレート変性物等のスチレン−マレイン酸系樹脂を一部併用することもできる。
【0086】
(B)硬化性樹脂としては、上述した酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂以外の硬化性樹脂を用いることもできる。(B)硬化性樹脂としては、紫外線硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂の一方又は両方を用いることができる。用いる硬化性樹脂の種類により、得られる組成物は紫外線硬化性組成物、熱硬化性組成物、又は紫外線硬化性・熱硬化性組成物となる。紫外線硬化性樹脂としては、従来知られている各種紫外線硬化性樹脂を用いることができ、特定のものに限定されないが、アルカリ水溶液による現像が可能であり、しかも耐薬品性、基板に対する密着性、電気絶縁性、硬度等の皮膜特性に優れたレジスト皮膜が得られる点から、1分子中にカルボキシル基と少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を併せ持つ感光性プレポリマー(オリゴマー又はポリマー)が好ましい。
【0087】
上記感光性プレポリマーとしては、上述した(1)(b1)分子内に少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物と(b2)不飽和基含有モノカルボン酸とのエステル化物に、更に(b3)飽和又は不飽和基含有多塩基酸無水物を付加した付加反応生成物である酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂のほか、(2)アルキル(メタ)アクリレートとグリシジル(メタ)アクリレートからなる共重合体に(メタ)アクリル酸を反応させた後、さらに(b3)飽和又は不飽和基含有多塩基酸無水物を反応させたもの、(3)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとアルキル(メタ)アクリレートとグリシジル(メタ)アクリレートとの共重合体に(メタ)アクリル酸を反応させた後、さらに(b3)飽和又は不飽和基含有多塩基酸無水物を反応させたもの、(4)アルキル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体にグリシジル(メタ)アクリレートを部分的に反応させたもの、(5)(b1)分子内に少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物と、(b2)不飽和基含有モノカルボン酸と、(b4)1分子中に少なくとも2個の水酸基と、エポキシ基と反応する水酸基以外の1個の他の反応性基とを有する化合物(以下、場合により「(b4)成分」という)との反応物(i)に、(b3)飽和又は不飽和基含有多塩基酸無水物を反応させたもの、(6)無水マレイン酸等の不飽和多塩基酸無水物とスチレン等のビニル基を有する芳香族炭化水素との共重合体に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを反応させたもの等の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂、(7)上記反応物(i)と(b3)飽和又は不飽和基含有多塩基酸無水物と(b5)不飽和基含有モノイソシアネート(以下、場合により「(b5)成分」という)との反応物等の不飽和基含有ポリカルボン酸ウレタン樹脂などを挙げることができる。
【0088】
上記のような感光性プレポリマーは、バックボーン・ポリマーの側鎖に多数の遊離のカルボキシル基を付与したものであるため、この感光性プレポリマーを含有する組成物は、希アルカリ水溶液による現像が可能となると同時に、露光、現像によって所定のパターンの光硬化皮膜が得られる。また、熱硬化性樹脂、例えばエポキシ化合物が共に配合されている場合、塗膜を後加熱することにより、熱硬化性成分のエポキシ化合物のエポキシ基と上記側鎖の遊離のカルボキシル基との間で付加反応が起こり、塗膜の耐熱性、耐溶剤性、耐酸性、密着性、無電解金めっき耐性、電気特性、硬度などの諸特性に優れたソルダーレジスト膜が得られる。
【0089】
上記感光性プレポリマーの酸価は、その種類によって好適な範囲は異なるが、30〜160mgKOH/gの範囲にあることが好ましく、40〜120mgKOH/gの範囲にあることがより好ましい。酸価が30mgKOH/gより小さい場合にはアルカリ水溶液への溶解性が低下する傾向があり、逆に160mgKOH/gより大きいと、硬化膜の耐アルカリ性、電気特性等のレジストとしての特性を下げる要因となるので、いずれも好ましくない。
【0090】
上記(1)の樹脂は、先に説明した酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂である。
【0091】
上記(2)及び(3)の樹脂のベースポリマーである共重合体は、モノマーとしてアルキル(メタ)アクリレート及びグリシジル(メタ)アクリレート、あるいはさらにヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを用い、これらを公知の方法、例えば溶液重合法等により共重合することにより得られる。上記アルキル(メタ)アクリレートは、アクリル酸もしくはメタクリル酸のアルキルエステルであり、ここでアルキル基は炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基である。該アルキル(メタ)アクリレートとしては、アクリル酸またはメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ヘキシル等のエステルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0092】
上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、アクリル酸もしくはメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステルであり、ここでヒドロキシアルキル基は一級水酸基を有する炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。これは、上記共重合体に(メタ)アクリル酸を反応させた後、さらに多塩基酸無水物を反応させる際の反応のし易さの点で、一級の水酸基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを上記共重合体のモノマーの1つとして選定使用することが望ましいからである。このような一級水酸基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの代表例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0093】
上記(2)の樹脂のベースとなる共重合体において、アルキル(メタ)アクリレートとグリシジル(メタ)アクリレートの割合は、モル比で40:60〜80:20が好ましい。一方、上記(3)の樹脂のベースとなる共重合体においては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとアルキル(メタ)アクリレートとグリシジル(メタ)アクリレートの割合は、モル比で10〜50:10〜70:20〜60、好ましくは15〜30:30〜50:30〜50である。共重合体に占めるグリシジル(メタ)アクリレートの割合が上記範囲より低すぎると、光硬化性が低下するので好ましくなく、一方、上記範囲を越えた場合には、感光性樹脂の合成反応がスムーズにいかないので好ましくない。
【0094】
上記(2)〜(4)の樹脂において、各モノマーを共重合することによって得られる共重合体の重合度は、重量平均分子量として、10,000〜70,000、好ましくは20,000〜60,000の範囲が望ましい。重量平均分子量が10,000未満では塗膜の指触乾燥性が低下し、一方、70,000を超えた場合には現像性が低下し易いので好ましくない。なお、上記各モノマー以外にも、さらにスチレン、メチルスチレン等のビニル化合物も特性に影響のない範囲で使用することができる。
【0095】
上記(5)の樹脂の合成反応は、(b1)成分に(b2)成分(又は(b4)成分)を反応させ、次いで(b4)成分(又は(b2)成分)を反応させる第一の方法と、(b1)成分と(b2)成分と(b4)成分とを同時に反応させる第二の方法とがある。どちらの方法でもよいが、第二の方法が好ましい。上記反応は、(b1)成分のエポキシ基1当量に対して、(b2)成分と(b4)成分の総量が約0.8〜1.3モルとなる比率で反応させるのが好ましく、特に好ましくは約0.9〜1.1モルとなる比率で反応させる。(b2)成分と(b4)成分との使用割合は、(b2)成分と(b4)成分の総量1モルに対して、(b4)成分の使用量が0.05〜0.5モルであることが好ましく、0.1〜0.3モルであることがより好ましい。
【0096】
上記(5)の樹脂の合成反応において、反応時に希釈剤として後述するような有機溶剤やカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の反応性単量体類を使用するのが好ましい。さらに、反応を促進させるために触媒(例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルフォスフィン、トリフェニルスチビン、オクタン酸クロム、オクタン酸ジルコニウム等)を使用することが好ましく、該触媒の使用量は、反応原料混合物に対して好ましくは0.1〜10質量%である。反応中の重合を防止するために、重合禁止剤(例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール等)を使用するのが好ましく、その使用量は反応原料混合物に対して好ましくは0.01〜1質量%である。反応温度は好ましくは60〜150℃であり、また反応時間は好ましくは5〜60時間である。このようにして反応物(i)を得ることができる。
【0097】
次に、上記反応物(i)と(b3)成分との反応は、上記反応物(i)中の水酸基に対して、水酸基1当量当り(b3)成分を0.1〜0.9当量反応させるのが好ましい。反応温度は60〜150℃が好ましく、また反応時間は1〜10時間が好ましい。
【0098】
一方、上記(7)の不飽和基含有ポリカルボン酸ウレタン樹脂の合成反応は、上記反応物(i)と(b3)成分を反応させ、次いで(b5)成分を反応させるのが好ましい。反応物(i)と(b3)成分との反応は上述したように行うことにより反応させることができる。次いで、反応物(i)と(b3)成分との反応物である不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂中の水酸基に対して、水酸基1当量当り(b5)成分を0.05〜0.5当量反応させるのが好ましい。反応温度は、60〜100℃が好ましい。反応時、触媒(例えば、ジブチルスズラウレート等)を少量添加することが好ましく、反応時間は5〜15時間が好ましい。
【0099】
上記(1)、(5)及び(7)の樹脂の合成に用いられる(b1)分子内に少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物、及び、(b2)不飽和基含有モノカルボン酸、並びに、上記(1)〜(3)及び(5)〜(7)の樹脂の合成に用いられる(b3)飽和又は不飽和基含有多塩基酸無水物については、それぞれ先に説明した通りである。
【0100】
上記(5)及び(7)の樹脂の合成に用いられる(b4)1分子中に少なくとも2個以上の水酸基と、エポキシ基と反応する水酸基以外の1個の他の反応性基(例えば、カルボキシル基、2級アミノ基等)とを有する化合物の具体例としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酢酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸、ジメチロールカプロン酸等のポリヒドロキシ含有モノカルボン酸;ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のジアルカノールアミン類等を挙げることができる。特に好ましいものとしては、例えばジメチロールプロピオン酸等を挙げることができる。
【0101】
また、(b5)不飽和モノイソシアネートの具体例としては、例えばメタクリロイルイソシアネート、メタクリロイルオキシエチルイソシアネートや、有機ジイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等)と上記の1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート類を約等モル比で反応させることにより得られる反応物等を挙げることができる。
【0102】
その他の紫外線硬化性樹脂としては、特開昭51−131706号公報、特公昭63−46791号公報、特公平1−32868号公報等に記載の1分子中に少なくとも2個のアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する感光性プレポリマーなど、従来公知の各種感光性プレポリマーを用いることができる。
【0103】
一方、熱硬化性樹脂としては、従来公知の各種熱硬化性樹脂を用いることができ、特定のものに限定されないが、熱硬化特性や硬化皮膜の特性等の点から、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物が好ましい。このような熱硬化性樹脂を含有する組成物は、各種樹脂絶縁層の形成、エッチングレジストやマーキングインキなどとしての用途の他、プリント配線板のソルダーレジスト形成に好適に用いることができる。
【0104】
このようなエポキシ化合物の具体例としては、例えば日本化薬(株)製EBPS−200、旭電化工業(株)製EPX−30、大日本インキ化学工業(株)製エピクロンEXA−1514等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;日本油脂(株)製ブレンマーDGT等のジグリシジルフタレート樹脂;日産化学(株)製TEPIC、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製アラルダイトPT810等の複素環式エポキシ樹脂;油化シェルエポキシ(株)製YX−4000等のビキシレノール型エポキシ樹脂;油化シェルエポキシ(株)製YL−6056等のビフェノール型エポキシ樹脂;東都化成(株)製ZX−1063等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂などの希釈剤に難溶性のエポキシ樹脂や、油化シェルエポキシ(株)製エピコート1009、1031、大日本インキ化学工業(株)製エピクロンN−3050、N−7050、N−9050、旭化成工業(株)製AER−664、AER−667、AER−669、東都化成(株)製YD−012、YD−014、YD−017、YD−020、YD−002、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製XAC−5005、GT−7004、6484T、6099、ダウ・ケミカル社製DER−642U、DER−673MF、旭電化工業(株)製EP−5400、EP−5900等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;東都化成(株)製ST−2004、ST−2007等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;東都化成(株)製、YDF−2004、YDF−2007等のビスフェノールF型エポキシ樹脂;日本化薬(株)製EPPN−201、EOCN−103、EOCN−1020、EOCN−1025、BREN、旭化成工業(株)製ECN−278、ECN−292、ECN−299、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製ECN−1273、ECN−1299、東都化成(株)製YDCN−220L、YDCN−220HH、YDCN−702、YDCN−704、YDPN−601、YDPN−602、大日本インキ化学工業(株)製エピクロン−673、N−680、N−695、N−770、N−775等のノボラック型エポキシ樹脂;旭電化工業(株)製EPX−8001、EPX−8002、EPPX−8060、EPPX−8061、大日本インキ化学工業(株)製エピクロンN−880等のビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂;旭電化工業(株)製EPX−49−60、EPX−49−30等のキレート型エポキシ樹脂;東都化成(株)製YDG−414等のグリオキザール型エポキシ樹脂;東都化成(株)製YH−1402、ST−110、油化シェルエポキシ(株)製YL−931、YL−933等のアミノ基含有エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業(株)製エピクロンTSR−601、旭電化工業(株)製EPX−84−2、EPX−4061等のゴム変性エポキシ樹脂:山陽国策パルプ(株)製DCE−400等のジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂;旭電化工業(株)製X−1359等のシリコーン変性エポキシ樹脂;ダイセル化学工業(株)製プラクセルG−402、G−710等のε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂などの希釈剤に可溶性のエポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、特に希釈剤に難溶性の微粒状のエポキシ樹脂、あるいは難溶性のエポキシ樹脂と可溶性のエポキシ樹脂を組み合わせて用いることが好ましい。
【0105】
上記熱硬化性成分としてのエポキシ化合物を紫外線硬化性樹脂と共に配合する場合、その配合量は、上記感光性プレポリマー100質量部に対して5〜100質量部が適当であり、好ましくは15〜60質量部である。
【0106】
硬化性樹脂組成物において、(B)成分の含有量は、硬化性樹脂組成物の固形分全量を基準として、10〜60質量%であることが好ましく、20〜40質量%であることがより好ましい。(B)成分の含有量が上記範囲内であると、耐熱性、電気特性及び耐薬品性により優れた塗膜を得ることができる傾向がある。
【0107】
(C)硬化剤成分は、硬化性樹脂組成物中の(B)硬化性樹脂の種類(紫外線硬化性及び/又は熱硬化性)に応じて、(c1)光重合開始剤及び/又は(c2)熱重合触媒(例えばエポキシ樹脂用硬化剤)が用いられる。
【0108】
(c1)光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン類、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−アミノアントラキノン等のアントラキノン類、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン類、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0109】
更に、(c1)光重合開始助剤としては、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、ジメチルエタノールアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の3級アミン類が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0110】
硬化性樹脂組成物において、(c1)光重合開始剤の含有量は、硬化性樹脂組成物の固形分全量を基準として、0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜15質量%であることがより好ましく、2〜10質量%であることが特に好ましい。この含有量が0.1質量%未満では光感度が低下する傾向があり、20質量%を超えると硬化膜の耐熱性が低下する傾向がある。
【0111】
一方、(c2)エポキシ樹脂用硬化剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン類;ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジシアンジアミド、尿素、尿素誘導体、メラミン、多塩基ヒドラジド等のポリアミン類;これらの有機酸塩及び/又はエポキシアダクト;三フッ化ホウ素のアミン錯体;エチルジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−キシリル−S−トリアジン等のトリアジン誘導体類;トリメチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、N−ベンジルジメチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、ヘキサ(N−メチル)メラミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノフェノール)、テトラメチルグアニジン、m−アミノフェノール等の三級アミン類;ポリビニルフェノール、ポリビニルフェノール臭素化物、フェノールノボラック、アルキルフェノールノボラック等のポリフェノール類;トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス−2−シアノエチルホスフィン等の有機ホスフィン類;トリ−n−ブチル(2,5−ジヒドロキシフェニル)ホスホニウムブロマイド、ヘキサデシルトリブチルホスニウムクロライド等のホスホニウム塩類;ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリブチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類;上記の多塩基酸無水物;ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、2,4,6−トリフェニルチオピリリウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
【0112】
これらの(c2)エポキシ樹脂用硬化剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。(c2)エポキシ樹脂用硬化剤を用いる場合、その含有量は、硬化性樹脂組成物の固形分全量を基準として、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましい。
【0113】
なお、上述した感光性プレポリマーとエポキシ樹脂とを共に含有する紫外線硬化性・熱硬化性レジストインキ組成物の場合、上記感光性プレポリマー中に水酸基及び/又はカルボキシル基が含有され、感光性プレポリマー中の水酸基及び/又はカルボキシル基がエポキシ樹脂の硬化剤として働くため、さらに(c2)エポキシ樹脂用硬化剤を併用することなく、ソルダーレジストとして十分に機能する。また、上記(c1)光重合開始剤として、感光性向上のために使用されるアミノ基含有の上記光重合開始剤及び/又は光増感剤が含まれる場合、光重合開始剤及び/又は光増感剤中のアミノ基の効果により、上記エポキシ樹脂の硬化がさらに促進される。しかながら、密着性、耐薬品性、耐熱性などの特性をより一層上げる目的で、さらに上述したような(c2)エポキシ樹脂用硬化剤を併用することが好ましい。
【0114】
また、本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて熱硬化促進剤を用いることができる。熱硬化促進剤としては、三フッ化ホウ素−アミンコンプレックス、ジシアンジアミド、有機酸ヒドラジッド、ジアミノマレオニトリル、ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、メタキシレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、「ハードナーHT972」(チバスペシャリティ・ケミカルズ社製)等の芳香族アミン類;無水フタル酸、無水トリメリット酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物等の芳香族酸無水物;無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等の脂肪族酸無水物;アセチルアセトネート亜鉛等のアセチルアセトンの金属塩;エナミン、オクチル酸スズ、第4級フォスホニウム塩、トリフェニルフォスフィン等の第3級フォスフィン類;トリ−n−ブチル(2,5−ジヒドロキシフェニル)ホスホニウムブロマイド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムクロライド等のホスホニウム塩類;ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリブチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類;ジフェニルヨードニウムテトラフルオロポロエート等のポロエート;トリフェニルスルホニウムへキサフルオロアンチモネート等のアンチモネート類;ジメチルベンジルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン、m−アミノフェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノフェノール)、テトラメチルグアニジン等の第3級アミン類;2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。また、これらの熱硬化促進剤を硬化性樹脂組成物に含有させる場合、その含有量は、硬化性樹脂組成物の固形分全量を基準として、0.01〜10質量%であることが好ましい。
【0115】
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に(D)希釈剤を含有することが好ましい。本発明に用いられる(D)希釈剤としては、例えば、有機溶剤及び/又は光重合性モノマーが使用できる。有機溶剤としては、例えば、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等のエステル類、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。
【0116】
光重合性モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールAのポリエチレングリコール又はプロピレングリコール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のモノ又は多官能(メタ)アクリレート類、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート類、ジアリルフタレート等の光重合性モノマーが使用できる。これらは1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0117】
(D)希釈剤として光重合性モノマーを用いる場合、その含有量は、硬化性樹脂組成物の固形分全量を基準として、0.5〜30質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。この含有量が0.5質量%未満では、光感度が低くなり露光部が現像中に溶出しやすくなる傾向があり、30質量%を超えると硬化膜の耐熱性が低下する傾向がある。
【0118】
本発明の硬化性樹脂組成物には、更に(E)エラストマーを含有させることが好ましい。(E)エラストマーを含有させることにより、硬化性樹脂組成物をソルダーレジストに用いた際のプリント配線板の導体層との密着性をより向上させることができるとともに、硬化膜の耐熱性、耐熱衝撃性、柔軟性及び強靭性をより向上させることができる。
【0119】
(E)エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー及びシリコーン系エラストマー等が挙げられる。これらの(E)エラストマーは、ガラス転移温度(Tg)が20℃以下で、熱可塑性のものが好ましい。
【0120】
スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー等が挙げられる。スチレン系エラストマーを構成する成分としては、スチレンのほかに、α−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン等のスチレン誘導体を用いることができる。具体的には、タフプレン、ソルプレンT、アサプレンT、タフテック(以上、旭化成工業(株)製)、エラストマーAR(アロン化成製)、クレイトンG、過リフレックス(以上、シェルジャパン社製)、JSR−TR、TSR−SIS、ダイナロン(以上、日本合成ゴム(株)製)、デンカSTR(電気化学社製)、クインタック(日本ゼオン社製)、TPE−SBシリーズ(住友化学(株)製)、ラバロン(三菱化学(株)製)、セプトン、ハイブラー(以上、クラレ社製)、スミフレックス(住友ベークライト(株)製)、レオストマー、アクティマー(以上、理研ビニル工業社製)等が挙げられる。
【0121】
オレフィン系エラストマーは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−ペンテン等の炭素数2〜20のα−オレフィンの共重合体であり、例えば、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)等が挙げられる。また、オレフィン系エラストマーとしては、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタンジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ブタジエン、イソプレン等の炭素数2〜20の非共役ジエンとα−オレフィンとの共重合体、及び、エポキシ化ポリブタジエンなどが挙げられる。また、オレフィン系エラストマーとしては、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体にメタクリル酸を共重合したカルボキシ変性NBR等が挙げられる。更に、オレフィン系エラストマーとしては、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム、エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴム、プロピレン−α−オレフィン共重合体ゴム、ブテン−α−オレフィン共重合体ゴム等が挙げられる。
【0122】
オレフィン系エラストマーとしては、具体的には、ミラストマ(三井石油化学社製)、EXACT(エクソン化学社製)、ENGAGE(ダウケミカル社製)、水添スチレン−ブタジエンラバー“DYNABON HSBR”(日本合成ゴム社製)、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体“NBRシリーズ”(日本合成ゴム社製)、及び、架橋点を有する両末端カルボキシル基変性ブタジエン−アクリロニトリル共重合体の“XERシリーズ”(日本合成ゴム社製)等が挙げられる。
【0123】
ウレタン系エラストマーは、低分子(短鎖)ジオール及びジイソシアネートからなるハードセグメントと、高分子(長鎖)ジオール及びジイソシアネートからなるソフトセグメントと、の構造単位からなるものである。高分子(長鎖)ジオールとしては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリ(1,4−ブチレンアジペート)、ポリ(エチレン−1,4−ブチレンアジペート)、ポリカプロラクトン、ポリ(1,6−ヘキシレンカーボナート)、ポリ(1,6−へキシレン−ネオペンチレンアジペート)等が挙げられる。高分子(長鎖)ジオールの数平均分子量は、500〜10000であることが好ましい。低分子(短鎖)ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ビスフェノールA等が挙げられる。短鎖ジオールの数平均分子量は、48〜500であることが好ましい。ウレタン系エラストマーの具体例としては、PANDEX T−2185、T−2983N(以上、大日本インキ化学工業社製)、シラクトランE790等が挙げられる。
【0124】
ポリエステル系エラストマーは、ジカルボン酸又はその誘導体とジオール化合物又はその誘導体とを重縮合して得られるものである。ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びこれらの芳香環の水素原子がメチル基、エチル基、フェニル基等で置換された芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸、並びに、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸などが挙げられる。これらの化合物は1種又は2種以上を用いることができる。ジオール化合物の具体例として、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール等の脂肪族ジオール及び脂環式ジオール、ビスフェノールA、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−プロパン、レゾルシン等が挙げられる。これらの化合物は1種又は2種以上を用いることができる。また、芳香族ポリエステル(例えば、ポリブチレンテレフタレート)部分をハードセグメント成分に、脂肪族ポリエステル(例えば、ポリテトラメチレングリコール)部分をソフトセグメント成分にしたマルチブロック共重合体を用いることができる。ポリエステル系エラストマーは、ハードセグメント及びソフトセグメントの種類、比率、並びに分子量の違い等により様々なグレードのものがある。ポリエステル系エラストマーの具体例としては、ハイトレル(デュポン−東レ社製)、ペルプレン(東洋紡績社製)、エスペル(日立化成工業社製)等が挙げられる。
【0125】
ポリアミド系エラストマーは、ポリアミドからなるハードセグメントと、ポリエーテル又はポリエステルからなるソフトセグメントと、から構成されるものであり、ポリエーテルブロックアミド型とポリエーテルエステルブロックアミド型との2種類に大別される。ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12等が挙げられる。ポリエーテルとしては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。ポリアミド系エラストマーとして具体的には、UBEポリアミドエラストマー(宇部興産社製)、ダイアミド(ダイセルヒュルス社製)、PEBAX(東レ社製)、グリロンELY(エムスジャパン社製)、ノバミッド(三菱化学社製)、グリラックス(大日本インキ化学工業社製)等が挙げられる。
【0126】
アクリル系エラストマーは、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステルと、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する単量体及び/又はアクリロニトリルやエチレン等のビニル系単量体とを共重合して得られるものである。アクリル系エラストマーとしては、アクリロニトリル−ブチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−ブチルアクリレート−エチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−ブチルアクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体等が挙げられる。
【0127】
シリコーン系エラストマーは、オルガノポリシロキサンを主成分としたものであり、ポリジメチルシロキサン系、ポリメチルフェニルシロキサン系、ポリジフェニルシロキサン系に分けられる。また、オルガノポリシロキサンの一部をビニル基、アルコキシ基等で変性したものを用いてもよい。シリコーン系エラストマーの具体例としては、KEシリーズ(信越化学社製)、SEシリーズ、CYシリーズ、SHシリーズ(以上、東レダウコーニングシリコーン社製)等が挙げられる。
【0128】
また、上記のエラストマー以外に、ゴム変性したエポキシ樹脂を用いることができる。ゴム変性したエポキシ樹脂は、例えば、上述のビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等の一部又は全部のエポキシ基を、両末端カルボン酸変性型ブタジエン−アクリルニトリルゴム、末端アミノ変性シリコーンゴム等で変性することによって得られるものである。
【0129】
本発明の硬化性樹脂組成物に用いる(E)エラストマーとしては、せん断密着性及び耐熱衝撃性の観点から、両末端カルボキシル基変性ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリエステル系エラストマーである水酸基を有するエスペル(エスペル1612、1620、日立化成工業社製)が好ましい。
【0130】
硬化性樹脂組成物に(E)エラストマーを含有させる場合、その含有量は、硬化性樹脂組成物の固形分全量を基準として、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましく、1〜5質量%であることが特に好ましい。
【0131】
本発明の硬化性樹脂組成物には、更に(F)フェノキシ樹脂を含有させることが好ましい。(F)フェノキシ樹脂を含有させることにより、硬化性樹脂組成物をソルダーレジストに用いた際のプリント配線板の導体層との密着性を向上させることができるのみならず、硬化膜の可とう性及び耐熱性を向上させることができる。
【0132】
(F)フェノキシ樹脂としては、例えば、下記一般式(3)で表される構造単位を有するフェノキシ樹脂を用いることができる。
【0133】
【化12】



【0134】
式中、R21は水素原子又はメチル基を示し、rは30以上の整数を示す。フェノキシ樹脂は、R21が水素原子であるもの、R21がメチル基であるもの又はR21が水素原子である構造単位とR21がメチル基である構造単位との両方が存在するもののいずれであってもよい。
【0135】
上記一般式(3)において、R21がメチル基であるフェノキシ樹脂としては、例えば、YP−50、YP−50S、YP−55(以上、東都化成社製)、エピコート1256(ジャパンエポキシレジン社製)、PKHC、PKHH、PKHB(以上、InChem Corp.社製)等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0136】
21が水素原子である構造単位とR21がメチル基である構造単位との両方が存在するフェノキシ樹脂としては、例えば、YP−70、FX239(以上、東都化成社製)、エピコート4250、エピコート4275(以上、ジャパンエポキシレジン社製)等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0137】
これらの(F)フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、20,000〜100,000であることが好ましく、30,000〜80,000であることがより好ましい。この重量平均分子量が20,000未満では得られた硬化膜の可とう性が低下する傾向があり、100,000を超えると現像性が低下する傾向がある。なお、本発明において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定し、標準ポリスチレンを用いた検量線により換算した値である。
【0138】
硬化性樹脂組成物に(F)フェノキシ樹脂を含有させる場合、その含有量は、硬化性樹脂組成物の固形分全量を基準として、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましく、1〜5質量%であることが特に好ましい。
【0139】
本発明の硬化性樹脂組成物には、更に(G)ブロックイソシアネートを含有させることが好ましい。(G)ブロックイソシアネートを含有させることにより、硬化性樹脂組成物の硬化性及び得られる硬化膜の耐熱性をより向上させることができる。
【0140】
(G)ブロックイソシアネートとしては、ポリイソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤との付加反応生成物が用いられる。このポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のポリイソシアネート化合物、並びにこれらのアダクト体、ビューレット体及びイソシアヌレート体が挙げられる。
【0141】
イソシアネートブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、クロロフェノール及びエチルフェノール等のフェノール系ブロック剤;ε−カプロラクタム、δ−パレロラクタム、γ−ブチロラクタム及びβ−プロピオラクタム等のラクタム系ブロック剤;アセト酢酸エチル及びアセチルアセトンなどの活性メチレン系ブロック剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルエーテル、グリコール酸メチル、グリコール酸ブチル、ジアセトンアルコール、乳酸メチル及び乳酸エチル等のアルコール系ブロック剤;ホルムアルデヒドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系ブロック剤;ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系ブロック剤;酢酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系ブロック剤;コハク酸イミド及びマレイン酸イミド等のイミド系ブロック剤;キシリジン、アニリン、ブチルアミン、ジブチルアミン等のアミン系ブロック剤;イミダゾール、2−エチルイミダゾール等のイミダゾール系ブロック剤;メチレンイミン及びプロピレンイミン等のイミン系ブロック剤等が挙げられる。
【0142】
上記のポリイソシアネート及びブロック剤からなるブロックイソシアネートは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0143】
硬化性樹脂組成物に(G)ブロックイソシアネートを含有させる場合、その含有量は、硬化性樹脂組成物の固形分全量を基準として、0.5〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましく、2〜8質量%であることが特に好ましい。
【0144】
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオジングリーン、ジスアゾイエロー、クスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック等の公知の着色剤、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール等の重合禁止剤、ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、ビニル樹脂系の消泡剤、シランカップリング剤、三酸化アンチモン等の難燃性助剤などの公知の各種添加剤を用いることができる。
【0145】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上述した各配合成分をロールミル、ビーズミル等で均一に混練、混合することにより得ることができる。かかる硬化性樹脂組成物によれば、上記構成を有することにより、可とう性、現像性、密着性、耐PCT性、耐電食性及び耐熱衝撃性の全てを高水準で満足し、且つ、反りが抑制された硬化膜を形成することができる。また、得られる硬化膜は、難燃性、機械特性及び電気絶縁性にも優れている。そのため、上記硬化性樹脂組成物は、プリント配線板等の製造に好適に用いることができる。
【0146】
(感光性エレメント)
図1は、本発明の感光性エレメントの好適な一実施形態を示す模式断面図である。図1に示した感光性エレメント1は、支持体10上に感光性樹脂組成物層14が積層された構造を有する。感光性樹脂組成物層14は、上述した本発明の硬化性樹脂組成物の中でも、感光性(紫外線硬化性)を有する硬化性樹脂組成物からなる層である。以下、感光性を有する硬化性樹脂組成物を感光性樹脂組成物と言う。
【0147】
支持体10としては、例えば、銅、銅系合金、鉄、鉄系合金等の金属プレートや、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の重合体フィルム等を用いることができる。支持体の厚みは、1μm〜100μmであることが好ましい。
【0148】
感光性樹脂組成物層14は、上記本発明の感光性樹脂組成物を液状レジストとして支持体10上に塗布することで形成することができる。
【0149】
塗布の方法としては、例えば、ロールコータ、コンマコータ、グラビアコータ、エアーナイフコータ、ダイコータ、バーコータ等の方法が挙げられる。また、溶剤の除去は例えば加熱により行うことができ、その場合の加熱温度は約70℃〜150℃であると好ましく、加熱時間は約5分間〜約30分間であると好ましい。
【0150】
このようにして形成された感光性樹脂組成物層14中の残存有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止する観点から、2質量%以下であることが好ましい。
【0151】
また、感光性樹脂組成物層14の厚みは、用途により異なるが、溶剤を除去した後の厚みが1μm〜100μm程度であることが好ましい。
【0152】
感光性エレメント1においては、必要に応じて、感光性樹脂組成物層14の支持体側と反対側の面F1を保護フィルム(図示せず)で被覆していてもよい。
【0153】
保護フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の重合体フィルムなどが挙げられる。また、保護フィルムは低フィッシュアイのフィルムであることが好ましく、保護フィルムと感光性樹脂組成物層14との間の接着力は、保護フィルムを感光性樹脂組成物層14から剥離しやすくするために、感光性樹脂組成物層14と支持体10との間の接着力よりも小さいことが好ましい。
【0154】
感光性エレメント1は、支持体10と感光性樹脂組成物層14との間、及び/又は、感光性樹脂組成物層14と保護フィルムとの間に、クッション層、接着層、光吸収層、ガスバリア層等の中間層又は保護層を更に備えていてもよい。
【0155】
感光性エレメント1は、例えば、そのままの平板状の形態で、又は感光性樹脂組成物層の一方の面に(保護されず露出している面に)保護フィルムを積層して、円筒状などの巻芯に巻きとり、ロール状の形態で貯蔵することができる。巻芯としては、従来用いられているものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)等のプラスチックなどが挙げられる。貯蔵時には、支持体が最も外側になるように巻き取られることが好ましい。また、ロール状に巻き取られた感光性エレメント(感光性エレメントロール)の端面には、端面保護の観点から端面セパレータを設置することが好ましく、加えて耐エッジフュージョンの観点から防湿端面セパレータを設置することが好ましい。また、感光性エレメント1を梱包する際には、透湿性の小さいブラックシートに包んで包装することが好ましい。
【0156】
(レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法)
本発明のレジストパターンの形成方法は、上記本発明の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を基板上に積層する積層工程と、感光性樹脂組成物層に活性光線を画像状に照射して露光部を光硬化せしめる露光工程と、感光性樹脂組成物層の露光部以外の部分(未露光部)を現像により除去する現像工程と、を有する方法である。ここで、基板としては、フレキシブルプリント配線板等が挙げられる。
【0157】
基板上への感光性樹脂組成物層の積層は、例えば、感光性樹脂組成物を、スクリーン印刷法、スプレー法、ロールコート法、カーテンコート法、静電塗装法等の方法で10〜200μmの膜厚で基板上に塗布し、塗膜を60〜110℃で乾燥させることで行うことができる。
【0158】
また、上記感光性エレメント1を用いて基板上への感光性樹脂組成物層の積層を行ってもよい。その場合の積層方法としては、感光性エレメント1が保護フィルムを備える場合には保護フィルムを除去した後、感光性樹脂組成物層14を70℃〜130℃程度に加熱しながら基板に0.1MPa〜1MPa程度(1kgf/cm〜10kgf/cm程度)の圧力で圧着する方法等が挙げられる。かかる積層工程は減圧下で行ってもよい。感光性樹脂組成物層14が積層される基板の表面は、通常金属面であるが、特に制限されない。
【0159】
このようにして基板上に積層された感光性樹脂組成物層に対して、ネガ又はポジマスクパターンを通して活性光線を画像状に照射して露光部を光硬化させる。この際、感光性エレメント1を用いて感光性樹脂組成物層14を積層した場合には、感光性樹脂組成物層14上に支持体10が存在することになるが、この支持体10が活性光線に対して透明である場合には、支持体10を通して活性光線を照射することができ、支持体10が活性光線に対して遮光性を示す場合には、支持体10を除去した後に感光性樹脂組成物層14に活性光線を照射する。
【0160】
活性光線の光源としては、従来公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線、可視光などを有効に放射するものが用いられる。また、レーザー直接描画露光法等も用いることができる。
【0161】
露光部の形成後、露光部以外の感光性樹脂組成物層(未露光部)を現像により除去することで、レジストパターンが形成される。かかる未露光部の除去方法としては、感光性樹脂組成物層14上に支持体10が存在する場合にはオートピーラー等で支持体10を除去し、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤等の現像液によるウェット現像、あるいはドライ現像等で未露光部を除去して現像する方法等が挙げられる。ウェット現像に用いるアルカリ性水溶液としては、例えば、0.1〜5質量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%水酸化ナトリウムの希薄溶液等が挙げられる。アルカリ性水溶液のpHは9〜11の範囲とすると好ましく、その温度は、感光性樹脂組成物層の現像性に合わせて調整される。また、アルカリ性水溶液中には、界面活性剤、消泡剤、有機溶剤等を混入させてもよい。上記現像の方式としては、例えば、ディップ方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等が挙げられる。
【0162】
次に、現像後の処理として露光部を後露光(紫外線露光)及び/又は後加熱によって十分に硬化させて硬化膜を得る。後露光は、1〜5J/cmの露光量で行うことが好ましい。後加熱は、100〜200℃で30分〜12時間行うことが好ましい。
【0163】
本発明のプリント配線板の製造方法は、上記本発明のレジストパターンの形成方法により、基板上に永久マスクを形成する工程を含む方法である。こうして形成される永久マスクは、フレキシブルプリント配線板に要求される十分な可とう性を有しているとともに、現像性、密着性、耐PCT性、耐電食性及び耐熱衝撃性にも優れ、且つ、反りが十分に抑制されている。そのため、この永久マスクは、プリント配線板におけるソルダーレジストや層間絶縁膜等として有効に機能する。
【実施例】
【0164】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0165】
[実施例1−1]
ビスフェノールAジグリシジルエーテル0.34g(1.00mmol)、臭化テトラブチルアンモニウム0.032g(0.10mmol)、1,4−ジオキサン5mLを仕込み、二酸化炭素を吹き込みながら60℃で24時間加熱撹拌した。系を解放して60℃で加熱撹拌しながら二酸化炭素を十分に除去した後、シリコーンジアミン(商品名:PAM−E、信越シリコーン社製、下記一般式(4)において、R及びRがプロピレン基、mが1.1(平均値)であるジアミン)0.21g(1.00mmol)を加え、60℃で24時間加熱撹拌した(下記反応式(II)参照)。その後、生成物を水中で沈殿させて単離し、下記反応式(II)中の一般式(5)で表される構造単位からなるシリコーン変性ポリヒドロキシウレタンを得た。なお、一般式(5)中、X及びXは、一般式(1)中のX及びXと同義であり、X及びX中のRは水素原子である。
【0166】
【化13】



【0167】
【化14】



【0168】
[実施例1−2]
反応溶媒として、1,4−ジオキサン5mLに代えてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)5mLを用いたこと以外は実施例1−1と同様にして、上記反応式(II)中の一般式(5)で表される構造単位からなるシリコーン変性ポリヒドロキシウレタンを得た。
【0169】
[実施例1−3]
反応溶媒として、1,4−ジオキサン5mLに代えてプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMAC)5mLを用い、生成物はn−ヘキサン中で沈殿させて単離したこと以外は実施例1−1と同様にして、上記反応式(II)中の一般式(5)で表される構造単位からなるシリコーン変性ポリヒドロキシウレタンを得た。
【0170】
実施例1−1〜1−3で得られたシリコーン変性ポリヒドロキシウレタンの収率、数平均分子量(M)及び分散度(M/M)を表1に示す。また、下記反応式(II)の反応過程におけるエポキシドの転化率及び環状カーボナートの転化率を表1に示す。これらの転化率は、H−NMR測定(400MHz、CDCl)により求めたものである。なお、実施例1−1で得られたシリコーン変性ポリヒドロキシウレタンについては、収率が低い上に一部不溶性の生成物を含んでいたため、環状カーボナートの転化率、M及びM/Mの測定を行わなかった。
【0171】
【表1】



【0172】
表1に示したように、いずれの反応溶媒でも合成が可能であるが、ジオキサンを用いた場合と比較してNMPやPGMACを用いた場合の方が、カーボナート化が進みやすいことが確認された。
【0173】
[実施例1−4]
ビスフェノールAジグリシジルエーテル0.34g(1.00mmol)、臭化テトラブチルアンモニウム0.032g(0.10mmol)、NMP2.5mLを仕込み、二酸化炭素を吹き込みながら80℃で24時間加熱撹拌した。系を解放して80℃で加熱撹拌しながら二酸化炭素を十分に除去した後、シリコーンジアミン(商品名:PAM−E、信越シリコーン社製、上記一般式(4)において、R及びRがプロピレン基、mが1.1(平均値)であるジアミン)0.21g(1.00mmol)を加え、80℃で48時間加熱撹拌した(上記反応式(II)参照)。このとき、下記表2に示す所定の反応時間毎に環状カーボナートの転化率を測定し、反応の進行度合いを確認した。48時間の加熱撹拌後、生成物を水中で沈殿させて単離し、上記反応式(II)中の一般式(5)で表される構造単位からなるシリコーン変性ポリヒドロキシウレタンを得た。
【0174】
[実施例1−5]
反応溶媒として、NMP2.5mLに代えてPGMAC2.5mLを用い、生成物はn−ヘキサン中で沈殿させて単離したこと以外は実施例1−4と同様にして、上記反応式(II)中の一般式(5)で表される構造単位からなるシリコーン変性ポリヒドロキシウレタンを得た。
【0175】
実施例1−4〜1−5で得られたシリコーン変性ポリヒドロキシウレタンの収率、数平均分子量(M)及び分散度(M/M)を表2に示す。また、上記所定の反応時間毎の環状カーボナートの転化率を表2に示す。これらの転化率は、H−NMR測定(400MHz、CDCl)により求めたものである。
【0176】
【表2】



【0177】
表2に示したように、NMPを用いた場合と比較してPGMACを用いた場合の方が、反応が進行しやすいことが確認された。これは、高極性のNMP中では低極性のシリコーンジアミンの重合が進行しにくいためであると推察される。
【0178】
[実施例1−6]
ビスフェノールAジグリシジルエーテル0.17g(0.50mmol)、臭化テトラブチルアンモニウム0.016g(0.05mmol)、PGMAC1mLを仕込み、二酸化炭素を吹き込みながら80℃で24時間加熱撹拌した。系を解放して80℃で加熱撹拌しながら二酸化炭素を十分に除去した後、シリコーンジアミン(商品名:PAM−E、信越シリコーン社製、上記一般式(4)において、R及びRがプロピレン基、mが1.1(平均値)であるジアミン)0.11g(0.50mmol)を加え、80℃で24時間加熱撹拌した(上記反応式(II)参照)。その後、生成物をn−ヘキサン中で沈殿させて単離し、上記反応式(II)中の一般式(5)で表される構造単位からなるシリコーン変性ポリヒドロキシウレタンを得た。
【0179】
[実施例1−7]
シリコーンジアミンとして、上記一般式(4)においてR及びRがプロピレン基、mが11(平均値)であるシリコーンジアミン(商品名:KF−8020、信越シリコーン社製)0.47g(0.50mmol)を用いたこと以外は実施例1−6と同様にして、上記反応式(II)中の一般式(5)で表される構造単位からなるシリコーン変性ポリヒドロキシウレタンを得た。
【0180】
[実施例1−8]
反応温度を全て100℃としたこと以外は実施例1−7と同様にして、上記反応式(II)中の一般式(5)で表される構造単位からなるシリコーン変性ポリヒドロキシウレタンを得た。
【0181】
実施例1−6〜1−8で得られたシリコーン変性ポリヒドロキシウレタンの収率、数平均分子量(M)及び分散度(M/M)を表3に示す。また、上記反応式(II)の反応過程における環状カーボナートの転化率を表3に示す。これらの転化率は、H−NMR測定(400MHz、CDCl)により求めたものである。更に、使用したシリコーンジアミンの数平均分子量Mを表3に示す。
【0182】
【表3】



【0183】
表3に示したように、反応条件の選択により、高収率でシリコーン変性ポリヒドロキシウレタンが得られることが確認された。
【0184】
[比較例1−1]
ビスフェノールAジグリシジルエーテル0.17g(0.50mmol)、臭化テトラブチルアンモニウム0.016g(0.05mmol)、PGMAC1mLを仕込み、二酸化炭素を吹き込みながら80℃で24時間加熱撹拌した。系を解放して80℃で加熱撹拌しながら二酸化炭素を十分に除去した後、1,12−ドデカンジアミン0.10g(0.50mmol)を加え、80℃で24時間加熱撹拌した。その後、生成物をn−ヘキサン中で沈殿させて単離し、下記一般式(6)で表される構造単位からなるポリヒドロキシウレタンを得た。得られたポリヒドロキシウレタンの数平均分子量(M)は40400、分散度(M/M)は2.63であった。
【0185】
【化15】



[式中、X及びXは、一般式(1)中のX及びXと同義であり、X及びX中のRは水素原子である。]
【0186】
(溶解性の評価)
実施例1−6及び1−8で得られたシリコーン変性ポリヒドロキシウレタン、並びに、比較例1−1で得られたポリヒドロキシウレタンを評価用サンプルとし、溶媒に対する溶解性の評価を行った。すなわち、評価用サンプル4mgを下記表4に示す各溶媒5mLに常温で浸し、目視観察により、評価用サンプルが完全に溶解した場合をA、一部が溶解した場合をB、溶解しなかった場合をCと評価した。結果を表4に示す。使用した溶媒は、水(HO)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル(EtOAc)、ジクロロメタン(CHCl)、及び、ジエチルエーテル(EtO)である。
【0187】
【表4】



【0188】
表4に示したように、実施例1−6及び1−8のシリコーン変性ポリヒドロキシウレタンは、比較例1−1のポリヒドロキシウレタンと比較して、低極性溶媒への溶解性が向上していることが確認された。また、シリコーン構造が長いほど、高極性溶媒への溶解性は低下するものの、低極性溶媒への溶解性が向上することが確認された。
【0189】
(柔軟性の評価)
実施例1−6及び1−8で得られたシリコーン変性ポリヒドロキシウレタン、並びに、比較例1−1で得られたポリヒドロキシウレタンを評価用サンプルとし、ガラス転移点(Tg)の測定を行った。ガラス転移点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した。このガラス転移点が低いほど、柔軟性に優れていることを意味する。結果を表5に示す。
【0190】
【表5】



【0191】
表5に示したように、実施例1−6及び1−8のシリコーン変性ポリヒドロキシウレタンは、比較例1−1のポリヒドロキシウレタンと比較して、ガラス転移点が低下しており、柔軟性が向上していることが確認された。また、シリコーン構造が長いほど、ガラス転移点が大きく低下しており、柔軟性が向上していることが確認された。
【0192】
(吸水性及び撥水性の評価)
実施例1−6及び1−8で得られたシリコーン変性ポリヒドロキシウレタン、並びに、比較例1−1で得られたポリヒドロキシウレタンを評価用サンプルとし、以下の方法で吸水性の評価を行った。すなわち、評価用サンプル0.5gを20mLの水に常温で浸して24時間放置した。その後、吸収されなかった水を除去し、評価用サンプルの質量増加から吸水率を算出した。
【0193】
また、撥水性の評価は以下の方法で行った。まず、上記評価用サンプルからなるフィルムを、テトラヒドロフランを用いた溶媒キャスト法により作製した。このフィルム上に約10μLの水滴を落とし、常温での接触角を測定した。この接触角が大きいほど、撥水性に優れていることを意味する。これらの結果を表6に示す。
【0194】
【表6】



【0195】
表6に示したように、実施例1−6及び1−8のシリコーン変性ポリヒドロキシウレタンは、比較例1−1のポリヒドロキシウレタンと比較して、撥水性が向上していることが確認された。また、シリコーン構造が長いほど、撥水性が大幅に向上するとともに、吸水性も大幅に低下することが確認された。なお、比較例1−1のポリヒドロキシウレタンと比べて実施例1−6のシリコーン変性ポリヒドロキシウレタンは、極性基と非極性基が分離気味に存在しており、極性の高い部分がはっきりとしているために吸水率が高くなったものと推察される。一方、接触角は全体のマクロな極性を示しているので、極性基の量と比例して、比較例1−1よりも実施例1−6の方が大きくなっているものと推察される。
【0196】
<合成例1>
ビスフェノールAジ(1,3−ジオキソラン−2−オン−4−イルメチル)エーテル8.72g(20mmol)、シリコーンジアミン(商品名:PAM−E、信越シリコーン社製、上記一般式(4)において、R及びRがプロピレン基、mが1.1(平均値)であるジアミン)3.04g(22mmol)、及び、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート30mLを仕込み、80℃でカーボナート基が完全に消費されるまで加熱撹拌した。ここで生じたウレタン化合物の数平均分子量(M)は42000であり、分散度(M/M)は2.44であった。次に、得られた溶液を30℃に冷却し、0.015gの2−メタクリロイロキシエチルイソシアナートと少量(スポイトで3滴程度)のラウリン酸ジブチルスズを加え、室温で24時間攪拌することにより、側鎖及び末端のうちの少なくとも一部にメタクリロイル基が導入されたメタクリロイル化シリコーン変性ポリヒドロキシウレタン(ウレタン化合物A1)を得た。なお、合成例1ではジアミン化合物を二官能性五員環カーボナート化合物に対して小過剰量使用しているため、ウレタン化合物A1の多くは、側鎖の一部と両末端とにメタクリロイル基が導入されたものとなった。
【0197】
<合成例2>
ビスフェノールAジグリシジルエーテル0.17g(0.5mmol)、臭化テトラブチルアンモニウム0.016g(0.05mmol)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート2.5mLを仕込み、二酸化炭素を吹き込みながら80℃で24時間加熱撹拌した。系を解放して80℃で加熱撹拌しながら二酸化炭素を十分に除去した後、シリコーンジアミン(上記一般式(4)において、R及びRがプロピレン基、mが6(平均値)であるジアミン)0.13g(0.5mmol)を加え、80℃でカーボナート基が完全に消費されるまで加熱撹拌した。次に、得られた溶液を30℃に冷却し、0.015gの2−メタクリロイロキシエチルイソシアナートと少量(スポイトで3滴程度)のラウリン酸ジブチルスズを加え、生成物を水中で沈殿させて単離することにより、側鎖及び末端のうちの少なくとも一部にメタクリロイル基が導入されたメタクリロイル化シリコーン変性ポリヒドロキシウレタン(ウレタン化合物A2)を得た。得られたウレタン化合物A2の数平均分子量(M)は44800であり、分散度(M/M)は2.51であった。
【0198】
<合成例3>
ビスフェノールAジグリシジルエーテル0.17g(0.5mmol)、臭化テトラブチルアンモニウム0.016g(0.05mmol)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート2.5mLを仕込み、二酸化炭素を吹き込みながら80℃で24時間加熱撹拌した。系を解放して80℃で加熱撹拌しながら二酸化炭素を十分に除去した後、シリコーンジアミン(商品名:KF−8020、信越シリコーン社製、上記一般式(4)において、R及びRがプロピレン基、mが11(平均値)であるジアミン)0.13g(0.5mmol)を加え、80℃でカーボナート基が完全に消費されるまで加熱撹拌した。次に、得られた溶液を30℃に冷却し、0.014gの2−アクリロイロキシエチルイソシアナートと少量(スポイトで3滴程度)のラウリン酸ジブチルスズを加え、生成物を水中で沈殿させて単離することにより、側鎖及び末端のうちの少なくとも一部にメタクリロイル基が導入されたアクリロイル化シリコーン変性ポリヒドロキシウレタン(ウレタン化合物A3)を得た。得られたウレタン化合物A3の数平均分子量(M)は36700であり、分散度(M/M)は2.38であった。
【0199】
<合成例4>
ビスフェノールFジグリシジルエーテル0.15g(0.5mmol)、臭化テトラブチルアンモニウム0.016g(0.05mmol)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート2.5mLを仕込み、二酸化炭素を吹き込みながら80℃で24時間加熱撹拌した。系を解放して80℃で加熱撹拌しながら二酸化炭素を十分に除去した後、シリコーンジアミン(上記一般式(4)において、R及びRがプロピレン基、mが6(平均値)であるジアミン)0.13g(0.5mmol)を加え、80℃でカーボナート基が完全に消費されるまで加熱撹拌した。次に、得られた溶液を30℃に冷却し、0.015gの2−メタクリロイロキシエチルイソシアナートと少量(スポイトで3滴程度)のラウリン酸ジブチルスズを加え、生成物を水中で沈殿させて単離することにより、側鎖及び末端のうちの少なくとも一部にメタクリロイル基が導入されたメタクリロイル化シリコーン変性ポリヒドロキシウレタン(ウレタン化合物A4)を得た。得られたウレタン化合物A2の数平均分子量(M)は37200であり、分散度(M/M)は2.88であった。
【0200】
<合成例5>
ビスフェノールAジグリシジルエーテル0.17g(0.5mmol)、臭化テトラブチルアンモニウム0.016g(0.05mmol)、N−メチルピロリドン2.5mLを仕込み、二酸化炭素を吹き込みながら80℃で24時間加熱撹拌した。系を解放して80℃で加熱撹拌しながら二酸化炭素を十分に除去した後、ヘキサンジアミン0.05g(0.5mmol)を加え、80℃でカーボナート基が完全に消費されるまで加熱撹拌した。ここで生じたウレタン化合物の数平均分子量(M)は22000であり、分散度(M/M)は1.71であった。次に、得られた溶液を30℃に冷却し、0.015gの2−メタクリロイロキシエチルイソシアナートと少量(スポイトで3滴程度)のラウリン酸ジブチルスズを加え、室温で24時間攪拌することにより、側鎖及び末端のうちの少なくとも一部にメタクリロイル基が導入されたメタクリロイル化ポリヒドロキシウレタン(ウレタン化合物A5)を得た。
【0201】
<樹脂Aの合成>
撹拌機、還流冷却器及び温度計を備えたフラスコに、(b1)成分としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:RE−310S、日本化薬社製、エポキシ当量:185)1052質量部、(b2)成分としてアクリル酸144質量部、メチルハイドロキノン1質量部、カルビトールアセテート850質量部、及び、ソルベントナフサ100質量部を仕込み、70℃で加熱撹拌して混合物を溶解させた。次に、得られた溶液を50℃まで冷却し、そこにトリフェニルホスフィン2質量部、及び、ソルベントナフサ75質量部を加えて100℃に加熱し、固形分酸価が1mgKOH/g以下になるまで反応させた。次に、得られた溶液を50℃まで冷却し、そこに(b3)成分としてテトラヒドロ無水フタル酸745質量部、カルビトールアセテート75質量部、及び、ソルベントナフサ75質量部を加え、80℃で3時間反応させた。これにより、(B)成分としての、固形分酸価80mgKOH/g、固形分62質量%の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(樹脂A)を得た。
【0202】
<樹脂Bの合成>
撹拌機、還流冷却器及び温度計を備えたフラスコに、(b1)成分としてビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名:806、ジャパンエポキシレジン社製、エポキシ当量:180)1052質量部、(b2)成分としてアクリル酸144質量部、メチルハイドロキノン1質量部、カルビトールアセテート850質量部、及び、ソルベントナフサ100質量部を仕込み、70℃で加熱撹拌して混合物を溶解させた。次に、得られた溶液を50℃まで冷却し、そこにトリフェニルホスフィン2質量部、及び、ソルベントナフサ75質量部を加えて100℃に加熱し、固形分酸価が1mgKOH/g以下になるまで反応させた。次に、得られた溶液を50℃まで冷却し、そこに(b3)成分としてテトラヒドロ無水フタル酸745質量部、カルビトールアセテート75質量部、及び、ソルベントナフサ75質量部を加え、80℃で3時間反応させた。これにより、(B)成分としての、固形分酸価80mgKOH/g、固形分62質量%の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(樹脂B)を得た。
【0203】
[実施例2−1〜2−5及び比較例2−1〜2−2]
表7に示す配合組成に従って、組成物A及びBを別々に配合し、それぞれ3本ロールミルで混練して調製した。次に、組成物Aを70質量部と、組成物Bを30質量部とを混合し、感光性樹脂組成物(レジストインキ組成物)を得た。
【0204】
なお、表7中の各材料の詳細は以下の通りである。
*1:XER−91(商品名、日本合成ゴム社製、両末端カルボキシル基変性ブタジエン−アクリロニトリル共重合体)、
*2:YP−50(商品名、東都化成(株)製、フェノキシ樹脂)、
*3:BL−3257(商品名、住友バイエルンウレタン社製、ブロックイソシアナート)、
*4:酸変性ビニル基含有クレゾールノボラック(商品名、TPC−1257、日本化薬製)、
*5:イルガキュア907(商品名、チバスペシャリティ・ケミカルズ社製、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、
*6:カヤキュアDETX−S(商品名、日本化薬(株)製、2,4−ジエチルチオキサントン)、
*7:C11−A(商品名、四国化成工業(株)製、アミン系硬化剤)、
*8:ESLV−120TE(商品名、新日鐵化学(株)製、1,3,5−トリグリシジルイソシアネート)、
*9:カヤラッドDPHA(商品名、日本化薬(株)製、ジペンタエリスリトールヘキ
サアクリレート)。
【0205】
【表7】



【0206】
<評価基板の作製>
上記実施例及び比較例の感光性樹脂組成物を、スクリーン印刷法により、120メッシュのテトロン(登録商標)スクリーンを用いて、乾燥後の厚さが約30μmとなるように、銅配線を施した厚さ22μmのポリイミドフィルムに塗布し、熱風循環式乾燥機により80℃で30分間乾燥させた。これにより、ポリイミドフィルム、銅配線、及び、感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層をこの順に有する評価基板を得た。
【0207】
得られた評価基板を用い、以下に示した方法により各特性の評価を行った。得られた結果をまとめて表8に示す。
【0208】
(現像性)
評価基板の感光性樹脂組成物層にビアマスク開口寸法が100μmのマスクを置き、紫外線露光装置を用いて積算露光量500mJ/cmの紫外線を照射した後、1%の炭酸ナトリウム水溶液で60秒間、1.8kgf/cmの圧力でスプレー現像を行った。その後、評価基板を目視観察することにより現像残りの有無を確認し、以下の基準に従って評価を行った。
A:現像残りなし
B:現像残りあり
【0209】
(密着性)
評価基板の感光性樹脂組成物層に紫外線露光装置を用いて積算露光量500mJ/cmの紫外線を照射した後、1%の炭酸ナトリウム水溶液で60秒間、1.8kgf/cmの圧力でスプレー現像を行った。この評価基板を用い、JIS K5400に準じた方法により、剥離試験を行った。すなわち、評価基板の感光性樹脂組成物層に1mmの碁盤目を100個作成して、碁盤目にセロハンテープを貼り付けた後に引き剥がした。引き剥がし後の碁盤目の剥離状態を観察し、以下の基準に従って密着性の評価を行った。
A:碁盤目の90/100以上が剥離無し
B:碁盤目の50/100以上90/100未満が剥離無し
C:碁盤目の50/100未満が剥離無し
【0210】
<試験板の作製>
評価基板の感光性樹脂組成物層に所定のパターンを有するネガマスクを密着させ、紫外線露光装置を用いて500mJ/cmの紫外線を照射した。その後、1%の炭酸ナトリウム水溶液で60秒間、1.8kgf/cmの圧力でスプレー現像し、未露光部を溶解現像した。次に、150℃で1時間の加熱を行い、試験板を得た。以下の各特性の評価は、この試験板を用いて行った。
【0211】
(はんだ耐熱性)
試験板の感光性樹脂組成物層にロジン系フラックスを塗布した後、260℃のはんだ槽に10秒間浸漬した。これを1サイクルとして、6サイクル繰り返した後、感光性樹脂組成物層の外観を目視観察し、以下の基準に従ってはんだ耐熱性の評価を行った。
A:感光性樹脂組成物層の外観に異常(剥離、フクレ)がなく、はんだのもぐりがない
B:感光性樹脂組成物層の外観に異常(剥離、フクレ)があるか、又は、はんだのもぐりがある
【0212】
(耐電食性)
試験板を85℃、85%RH、100Vの条件で1000時間又は2000時間放置した後、感光性樹脂組成物層の絶縁抵抗値を測定し、以下の基準に従って耐電食性の評価を行った。
A:絶縁抵抗値が1×1012Ω以上
B:絶縁抵抗値が1×1010Ω以上1×1012Ω未満
C:絶縁抵抗値が1×1010Ω未満
【0213】
(可とう性)
試験板をハゼ折りで180°折り曲げた際の状態を目視観察し、以下の基準に従って可とう性の評価を行った。
A:感光性樹脂組成物層に割れがない
B:感光性樹脂組成物層に割れがある
【0214】
(耐熱衝撃性)
試験板を、−55℃で30分間放置した後に、125℃で30分間放置する過程を1サイクルとして、これを1000サイクル行った後の感光性樹脂組成物層を目視及び顕微鏡で観察し、以下の基準に従って耐熱衝撃性の評価を行った。
A:クラック発生なし
B:クラック発生あり
【0215】
(耐PCT性)
試験板を、121℃、2気圧の飽和水蒸気下で所定時間放置した(PCT処理)後、感光性樹脂組成物層の外観を目視観察した。次に、PCT処理後の試験板を用いて密着性試験と同様の剥離試験を行った。感光性樹脂組成物層の外観は以下の基準に従い、密着性は密着性試験と同様の基準に従って、PCT処理後の感光性樹脂組成物層外観及び密着性の評価を行った。
A:感光性樹脂組成物層の外観に異常(剥離、フクレ)がない
B:感光性樹脂組成物層の外観に異常(剥離、フクレ)がある
【0216】
<反り性評価用積層板の作製>
上記実施例及び比較例の感光性樹脂組成物を、厚さ12μmの銅箔上にスクリーン印刷法により塗布し、熱風循環式乾燥機により80℃で30分間乾燥させて、厚さ20μmの感光性樹脂組成物層を形成した。これにより、銅箔上に感光性樹脂組成物層を積層した反り性評価用積層板を得た。この積層板を用いて、以下の反り性の評価を行った。
【0217】
(反り性)
上記積層板の感光性樹脂組成物層に紫外線露光装置を用いて積算露光量500mJ/cmの紫外線を照射した後、1%の炭酸ナトリウム水溶液で60秒間、1.8kgf/cmの圧力でスプレー現像を行った。次いで、光照射を1J/cmの露光量で行い、150℃で1時間加熱して積層板を作製した。得られた積層板について、反り量を真横からマイクロメータを用いて以下の方法で測定した。ここで、図2は、反り量の測定方法を示す模式断面図である。図2に示すように、積層板20は、銅箔21と硬化後の感光性樹脂組成物層22とからなる。反り量Lは、積層板20の中心における銅箔21の下面の高さを0としたときの、積層板20の中心から20.5(横方向)mm離れた場所までの銅箔21の下面の高さのうち最も大きい値を表す。反り性は、以下の基準に従って評価した。
A:反り量が2mm未満
B:反り量が2mm以上
【0218】
【表8】



【符号の説明】
【0219】
1…感光性エレメント、10…支持体、14…感光性樹脂組成物層。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構造単位を有する、ポリヒドロキシウレタン化合物。
【化1】



[式中、R、R及びRは各々独立に2価の有機基を示し、Xは下記一般式(1a)又は(1b)で表される2価の基を示し、Xは下記一般式(1c)又は(1d)で表される2価の基を示し、mは1以上の整数を示す。]
【化2】



【化3】



[式(1a)、(1b)、(1c)及び(1d)中、Rは各々独立に(メタ)アクリロイル基を有する1価の有機基又は水素原子を示す。]
【請求項2】
片末端又は両末端に(メタ)アクリロイル基を有する、請求項1記載のポリヒドロキシウレタン化合物。
【請求項3】
二官能性五員環カーボナート化合物と、シリコーン構造を有するジアミン化合物とを重付加反応させる工程を有する、請求項1又は2記載のポリヒドロキシウレタン化合物の製造方法。
【請求項4】
前記重付加反応後の化合物に、更に(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させて、側鎖及び末端のうちの少なくとも一部に(メタ)アクリロイル基を導入する工程を有する、請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
(A)請求項1又は2記載のポリヒドロキシウレタン化合物と、
(B)硬化性樹脂と、
(C)硬化剤成分と、
を含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(B)硬化性樹脂が、(b1)分子内に少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物と(b2)不飽和基含有モノカルボン酸とのエステル化物に、更に(b3)飽和又は不飽和基含有多塩基酸無水物を付加した付加反応生成物である酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂を含む、請求項5記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(b1)エポキシ化合物が、下記一般式(2)で表される化合物である、請求項6記載の硬化性樹脂組成物。
【化4】



[式中、R11は水素原子又はグリシジル基を示し、R12は水素原子又はメチル基を示し、pは0〜7の整数を示す。なお、複数存在するR11及びR12のそれぞれは同一でも異なっていてもよい。]
【請求項8】
感光性を有する、請求項5〜7のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
支持体と、該支持体上に形成された請求項8記載の硬化性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層と、を備える感光性エレメント。
【請求項10】
請求項8記載の硬化性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を基板上に積層する積層工程と、前記感光性樹脂組成物層に活性光線を画像状に照射して露光部を光硬化せしめる露光工程と、前記感光性樹脂組成物層の前記露光部以外の部分を現像により除去する現像工程と、を有するレジストパターンの形成方法。
【請求項11】
請求項10に記載のレジストパターンの形成方法により、基板上に永久マスクを形成する工程を有する、プリント配線板の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−41452(P2012−41452A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184266(P2010−184266)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名 社団法人 高分子学会 刊行物名 第59回高分子学会年次大会 高分子学会予稿集59巻 発行日 平成22年5月11日 研究集会名 第59回高分子学会年次大会 主催者名 社団法人 高分子学会 開催日 平成22年5月27日
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】