説明

マイクロピンセット、その製造方法及びその操作方法

【課題】マイクロピンセット、その製造方法及びその操作方法に関し、操作性及び簡易性を向上する。
【解決手段】アーム支持部2と前記アーム支持部に設けられ先端部を把持部9とする一対のアーム部3とからなるフレーム1と、前記一対のアームに設けられたAs−S、As−Se或いはAs−S−Seのいずれかのカルコゲナイドガラス薄膜10,11からなる駆動素子と、前記カルコゲナイドガラス薄膜に偏光保持型光ファイバ12,13を経由してレーザ光を照射するレーザ光照射手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロピンセット、その製造方法及びその操作方法に関するものであり、例えば、ミクロンまたはそれ以下の大きさの物質を観察しながら把持することができるマイクロピンセットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
試料を観察する際に、ちょうど表面の観察部分にパーティクルが付着している場合や、微細な物質を操作して実験を行う場合がある。このような場合、これらの微細な物質を把持または移動など、ハンドリングができると便利な場合が多い。
【0003】
ミクロンまたはそれ以下の微細な物質を把持し、移動させるための道具がマイクロピンセットであり、従来よりいくつかのマイクロピンセットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このようなマイクロピンセットはアームの先端を極めて鋭利に作製し、駆動素子として圧電素子や熱膨張素子を用いてこのアームの先端同士を接近−離間させることによって微細な物質の把持を可能としている。
【0005】
このように、従来のマイクロピンセットはアームの先端を駆動する素子として圧電素子や熱膨張素子を用い、1 対の駆動素子に鋭利な先端を取り付け、ピンセットとして用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開公報WO2003/045838
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】応用物理,第78巻,第7号,pp.625−630,2009
【非特許文献2】M.Stucklik and S.R.Elliot,”All−optical actuation of amorphous chalcogenide−coated cantilevers”,Journal of Non−Crystalline Solids,Vol.353,pp.250−262,2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、駆動素子はマイクロピンセットの先端と比較して大きいため、マイクロピンセットを使う際には微細な把持対象物の周辺に、駆動素子部分も挿入することができるようなある程度の空間が必要であった。また、複数のマイクロピンセットを同時に使用する場合、駆動素子の大きさよりも互いに近接させて使用することはできないという問題がある。
【0009】
さらに、従来のマイクロピンセットは駆動箇所が1箇所(1対)であるため、微細な対象物をアームの先端部で挟み込むようにしてつかんでいた。そのため、微細な対象物の周辺に対象物以外の物質が存在する場合にはこれらも同時に挟み込んでしまう場合があり、特定の対象物のみをつかむことが困難であるという問題もある。
【0010】
さらに、微細な駆動素子に電圧を供給するため、駆動素子1つについて1対のワイヤが必要になるため作製工程に工夫が必要であった。以上の観点から従来のマイクロピンセットは操作性や簡易性に問題があった。
【0011】
したがって、本発明は、マイクロピンセットの操作性や簡易性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一観点からは、アーム保持部と前記アーム保持部に設けられ先端部を把持部とする一対のアーム部とからなるフレームと、前記一対のアームに設けられたAs−S、As−Se或いはAs−S−Seのいずれかのカルコゲナイドガラス薄膜からなる駆動素子と、前記カルコゲナイドガラス薄膜にレーザ光を照射するレーザ光照射手段とを備えたマイクロピンセットが提供される。
【0013】
また、本発明の別の観点からは、平板状の基板材料をエッチング加工してアーム保持部と前記アーム保持部に設けられ先端部を把持部とする一対のアーム部とからなるフレームを成形する工程と、前記フレームの露出表面に、As−S、As−Se或いはAs−S−Seのいずれかのカルコゲナイドガラス薄膜を付着する工程と、前記フレームの表裏の主面に付着した前記カルコゲナイドガラス薄膜を研磨により選択的に除去する工程と、前記フレームの側面に付着した前記カルコゲナイドガラス薄膜の不要部をFIBを照射して除去することにより駆動素子を形成する工程と、前記フレームに光ファイバーを固定する工程とを少なくとも有するマイクロピンセットの製造方法が提供される。
【0014】
また、本発明のさらに別の観点からは、アーム保持部と前記アーム保持部に設けられ先端部を把持部とする一対のアーム部とからなるフレームと、前記一対のアームに設けられたAs−S、As−Se或いはAs−S−Seのいずれかのカルコゲナイドガラス薄膜からなる駆動素子と、前記カルコゲナイドガラス薄膜にレーザ光を照射するレーザ光照射手段とを備えたマイクロピンセットの前記駆動素子にレーザ光を照射して前記アーム部の先端部を近接させて把持対象物を把持するマイクロピンセットの操作方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
開示の、マイクロピンセット、その製造方法及びその操作方法によれば、マイクロピンセットの操作性や簡易性を向上することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態のマイクロピンセットの構成説明図である。
【図2】カルコゲナイドガラス薄膜を設けたカンチレバーの変位の説明図である。
【図3】本発明のマイクロピンセットの操作方法の一例の説明図である。
【図4】本発明の実施例1のマイクロピンセットの要部平面図である。
【図5】光照射によるマイクロピンセットの変位の説明図である。
【図6】本発明の実施例1のマイクロピンセットの途中までの製造工程の説明図である。
【図7】本発明の実施例1のマイクロピンセットの図6以降の製造工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここで、図1乃至図3を参照して、本発明の実施の形態のマイクロピンセットを説明する。図1は本発明の実施の形態のマイクロピンセットの構成説明図であり、図1(a)は概略的斜視図であり、図1(b)は概略的平面図である。マイクロピンセットのフレーム1は、アーム支持部2と、アーム支持部2から突出する1つのアーム部3からなる。アーム支持部2は橋部4と両側の一対のファイバー保持脚5と中央のファイバー保持脚6とからなり、3本のファイバー保持脚5,6は途中で一体になっている。アーム部3は固定部7と変位部8と先端の把持部9からなる。なお、フレーム1の素材はガラスでもプラスチックでも良いが、微細加工容易性及び熱的安定性の観点から単結晶Siが好適である。
【0018】
変位部8の外側にはAs−S、As−Se或いはAs−S−Seのいずれかのカルコゲナイドガラス薄膜10からなる駆動素子が設けられ、また、橋部4の裏面にもAs−S、As−Se或いはAs−S−Seのいずれかのカルコゲナイドガラス薄膜11からなる駆動素子が設けられている。
【0019】
一対のファイバー保持脚5と中央のファイバー保持脚6にはそれぞれ偏光保持型光ファイバー12,13が挿通されており、各偏光保持型光ファイバー12,13の出射端面はそれぞれカルコゲナイドガラス薄膜10,11の表面に対して垂直に設定する。このように、レーザ光をカルコゲナイドガラス薄膜10,11の表面に対して常に垂直に照射することによって、マイクロピンセットの開閉を安定して行うことができる。
【0020】
この偏光保持型光ファイバー12,13とレーザ光源(図示は省略)とによりレーザ光照射手段が構成される。このように、光ファイバーを用いることにより、レーザ光源とカルコゲナイドガラス薄膜までの間隔を小さくすることができ、それによって、入射光の減衰を防ぎ、カルコゲナイドガラス薄膜への安定した照射を実現することができる。なお、図示は省略するが、レーザ光源と光ファイバーとの間には偏光面を回転させる偏光面調整手段が設けられている。
【0021】
次に、図2を参照して、本発明の実施の形態のマイクロピンセットの動作原理を説明する。図2は、カルコゲナイドガラス薄膜を設けたカンチレバーの変位の説明図であり、図2(a)は、カンチレバーの概略的側面図であり、単結晶Siからなるカンチレバー21は支持チップ22に固定され、その上面には厚さが1μmのAs40Se3525の組成のカルコゲナイドガラス薄膜23が蒸着されている。なお、カンチレバー21は厚さが2.85μmであり、幅が35.2μmであり、また、支持チップ22から突き出した部分の長さは200μmである。
【0022】
図2(b)は、偏光方向がカルコゲナイドガラス薄膜23の長軸に垂直な偏光レーザ光24を照射した場合の変位の説明図であり、角度として3°変位する。図2(c)は、偏光方向がカルコゲナイドガラス薄膜23の長軸に平行な偏光レーザ光25を照射した場合の変位の説明図であり、角度として2°変位する。なおこの場合のレーザ光の波長は608nmで、出力は500mWである。
【0023】
このような、光によるカルコゲナイドガラスの変位は、光による熱的な影響等による等方的なスカラー光膨張と、光の偏光状態に影響される異方的なベクトル光膨張として知られている(例えば、上述の非特許文献1或いは非特許文献2参照)。実際の変位においては、この等方的なスカラー光膨張と、光の偏光状態に影響される異方的なベクトル光膨張が同時に作用している。
【0024】
したがって、図2(b)と図2(c)との対比からは、照射するレーザ光の偏光状態によって1°の差が現れることになり、偏光方向をカルコゲナイドガラス薄膜23の長軸に対して垂直から平行の間にすると、両者の中間状態の変位を示すことになる。本発明はこのカルコゲナイドガラス薄膜の光変位を利用してマイクロピンセットを実現するものである。
【0025】
図3は、本発明のマイクロピンセットの操作方法の一例の説明図である。まず、図3(a)に示すように、橋部4の裏面に設けられたカルコゲナイドガラス薄膜11に対して偏光保持型光ファイバー13を介してレーザ光14を照射する。レーザ光14の偏光方向は任意であるが、ここでは、変位を最大にするためにカルコゲナイドガラス薄膜11の長軸に対して垂直とする。レーザ光14の照射よりカルコゲナイドガラス薄膜11が膨張して橋部4が上側に湾曲し、その結果、一対のアーム部3が変位して把持部9が互いに接近する。
【0026】
次いで、顕微鏡で観察しながら、把持対象物のなかから特定の把持対象物15を選択して、把持対象物15が一つの把持部9の中間になるようにした状態で、一つの変位部8の外側に設けたカルコゲナイドガラス薄膜10に対して、偏光保持型光ファイバー12を介してレーザ光16を照射する。レーザ光16の照射よりカルコゲナイドガラス薄膜10が膨張して変位部8が内側に湾曲し、その結果、把持部9が互いにさらに接近して把持対象物15を把持する。レーザ光16の偏光方向は、把持する把持対象物15のサイズや柔らかさに応じて調整する。
【0027】
以上説明したように、本発明のマイクロピンセットは駆動素子としてカルコゲナイドガラス薄膜を用いているので、従来の圧電素子や熱膨張素子を用いたマイクロピンセットに比べて駆動素子の占有する空間を大幅に減らすことができる。その結果、把持対象物の周辺の空間が小さい場合の使用や、同時に近接した場所での複数のマイクロピンセットの使用が可能となる。
【0028】
また、従来のマイクロピンセットの場合は、駆動素子に電圧を供給する必要があり、その結果、周辺の電磁界の影響を受ける。しかし、本発明のマイクロピンセットはレーザ光の照射によって操作しているので周辺の電磁界の影響を受けることはなく、マイクロピンセットの操作性、簡易性が向上する。
【0029】
なお、図1に示した形状は単なる一例であり、各種の変形が可能である。例えば、一対の把持部をより近接させて形成した場合には、駆動素子となるカルコゲナイドガラス薄膜は、一対のアーム部にのみ設けるだけでも良い。さらに、一対の把持部を近接させて形成した場合には、駆動素子となるカルコゲナイドガラス薄膜は、橋部のみ設けるだけでも良い。
【実施例1】
【0030】
以上を前提として、次に、図4乃至図7を参照して、本発明の実施例1のマイクロピンセットを説明する。図4は本発明の実施例1のマイクロピンセットの要部平面図であり、マイクロピンセットのフレーム31は、単結晶Siをエッチングして形成したアーム支持部32と、アーム支持部32から突出する1つのアーム部33からなる。
【0031】
アーム支持部32は厚さが2.85μmの橋部34と両側の一対のファイバー保持脚35と中央のファイバー保持脚36とからなる。アーム部33は橋部34から直立する厚さが2.85μmで高さが8.5μmの固定部37と、固定部37に対して外側に45°折り曲げた厚さが2.85μmの変位部38と変位部38の先端から直角に折れ曲がる把持部39からなる。
【0032】
把持部39は、変位部38の付け根の厚さが2.0μmであり、10.5μmの長さのテーパ状とし、高さ及び厚さともに減少してテーパ状にする。また、一対の固定部37の間隔は3.0μmとする。
【0033】
変位部38の長さが8.0μmの外側全体には厚さが1μmでAs40Se3525の組成のカルコゲナイドガラス薄膜41を設けて駆動素子とする。一方、橋部34の裏面には、一対の固定部37の間隔に相当する3.0μmの長さに、厚さが1μmでAs40Se3525の組成のカルコゲナイドガラス薄膜42を設けて駆動素子とする。なお、ここでは偏光保持型光ファイバーの図示は省略するが、偏光保持型光ファイバーの光軸がカルコゲナイドガラス薄膜41,42の表面に対して垂直になるように照射する。また、レーザ光のスポットサイズとカルコゲナイドガラス薄膜の面積はほぼ同じとする。
【0034】
図5(a)は、光照射による橋部の変位の説明図である。把持部39の先端を把持対象物付近にあわせた状態で橋部34に設けたカルコゲナイドガラス薄膜42に、波長が608nmで出力が500mWのレーザ光をその偏光方向がカルコゲナイドガラス薄膜42の長軸に対して垂直になるように照射する。その結果、橋部34は上面が内側になるように1.5°湾曲して、初期において2.2μmであった把持部39の先端部の間隔が0.8μmになる。
【0035】
図5(b)は、光照射による変位部の変位の説明図である。観察している顕微鏡を高倍率にして変位部34に設けたカルコゲナイドガラス薄膜41に、波長が608nmで出力が500mWのレーザ光をその偏光方向がカルコゲナイドガラス薄膜41の長軸に対して垂直になるように照射する。その結果、変位部38は内側に3°まで湾曲して、把持部39の先端部が接触する。
【0036】
なお、この時のレーザ光は、把持対象物のサイズや柔らかさに応じてカルコゲナイドガラス薄膜に対する偏光方向や出力を調整する。また、橋部34の湾曲に伴って一対のファイバー保持脚35に埋設した偏光保持型光ファイバーも傾斜するので、偏光保持型光ファイバーの光軸はカルコゲナイドガラス薄膜41の表面に対してほぼ垂直になる。
【0037】
次に、図6及び図7を参照して、本発明の実施例1のマイクロピンセットの製造工程を説明するが、各部のサイズ及び形状は図4で説明した通りである。まず、図6(a)に示すように、(100)面を主面とする厚さが35.2μmの単結晶Si基板30を準備し、厚さの中央部に達するファイバー埋設溝(図示は省略)を形成する。
【0038】
次いで、図6(b)に示すようにエッチングにより加工してアーム支持部32と一つのアーム部33とからなるフレーム31を作成する。次いで、図6(c)に示すように、集束イオンビーム(FIB)を用いて厚さがテーパ状の把持部39を高さもテーパ状になるように加工する。
【0039】
次いで、図7(d)に示すように、As4035Se25の組成のカルコゲナイドガラス薄膜40を全表面に蒸着する。次いで、図7(e)に示すように、フレーム31の上面及び底面をポリッシングして上面と底面に付着した不要なカルコゲナイドガラス薄膜40を除去する。
【0040】
次いで、図7(f)に示すように、フレーム31の側面の部分の不要な箇所に付着したカルコゲナイドガラス薄膜40をFIBにより除去する。最後に埋設溝に偏光保持型光ファイバーを埋設したのち樹脂で固定することによってマイクロピンセットの基本構造が完成する。
【0041】
このように、本発明の実施例1においては、2段階のピンセットの開閉を行っているので、微小な物質でも確実に把持することができ、操作性が向上する。特に、レーザ光の偏光の角度を変えることにより、破損しやすい試料に損傷を与えずに試料を把持することができる。
【0042】
また、マイクロピンセットを変位させる駆動素子は、厚さが、1.0μm程度のカルコゲナイドガラス薄膜であるので、構造が簡素化されるとともに駆動素子の占有する空間を大幅に減らすことができる。その結果、複数のマイクロピンセットをお互いに近接させて同時に使用することもできる。
【0043】
ここで、実施例1を含む本発明の実施の形態に関して、以下の付記を開示する。
(付記1)アーム保持部と前記アーム保持部に設けられ先端部を把持部とする一対のアーム部とからなるフレームと、前記一対のアームに設けられたAs−S、As−Se或いはAs−S−Seのいずれかのカルコゲナイドガラス薄膜からなる駆動素子と、前記カルコゲナイドガラス薄膜にレーザ光を照射するレーザ光照射手段とを備えたマイクロピンセット。
(付記2)前記アーム保持部にも前記カルコゲナイドガラス薄膜を設けた付記1に記載のマイクロピンセット。
(付記3)前記レーザ光照射手段が、レーザ光源と、前記レーザ光源からのレーザ光を前記アームの上部の近傍まで伝送して前記カルコゲナイドガラス薄膜の直上から照射する光ファイバーを有する付記1または付記2に記載のマイクロピンセット。
(付記4)前記レーザ光が偏光レーザ光であり、前記レーザ光源が前記レーザ光の偏光角度を微調整する偏光角調整手段を備えている付記2または付記3に記載のマイクロピンセット。
(付記5)前記光ファイバーが、前記光ファイバーの光軸が前記カルコゲナイドガラス薄膜の面に対して常に垂直になるように取り付けられた付記3または付記4に記載のマイクロピンセット。
(付記6)平板状の基板材料をエッチング加工してアーム保持部と前記アーム保持部に設けられ先端部を把持部とする一対のアーム部とからなるフレームを成形する工程と、前記フレームの露出表面に、As−S、As−Se或いはAs−S−Seのいずれかのカルコゲナイドガラス薄膜を付着する工程と、前記フレームの表裏の主面に付着した前記カルコゲナイドガラス薄膜を研磨により選択的に除去する工程と、前記フレームの側面に付着した前記カルコゲナイドガラス薄膜の不要部をFIBを照射して除去することにより駆動素子を形成する工程と、前記フレームに光ファイバーを固定する工程とを少なくとも有するマイクロピンセットの製造方法。
(付記7)前記フレームに光ファイバーを固定する工程が、前記フレームのアーム保持部に保持溝を形成する工程と、前記保持溝に前記光ファイバーを埋設する工程と有する付記6に記載のマイクロピンセットの製造方法。
(付記8)アーム保持部と前記アーム保持部に設けられ先端部を把持部とする一対のアーム部とからなるフレームと、前記一対のアームに設けられたAs−S、As−Se或いはAs−S−Seのいずれかのカルコゲナイドガラス薄膜からなる駆動素子と、前記カルコゲナイドガラス薄膜にレーザ光を照射するレーザ光照射手段とを備えたマイクロピンセットの前記駆動素子にレーザ光を照射して前記アーム部の先端部を近接させて把持対象物を把持するマイクロピンセットの操作方法。
(付記9)前記アーム保持部にも前記カルコゲナイドガラス薄膜からなる駆動素子を設け、前記アーム保持部に設けた駆動素子にレーザ光を照射したのち、前記アーム部に設けた駆動素子にレーザ光を照射して前記アーム部の先端部を近接させて把持対象物を把持する付記8に記載のマイクロピンセットの操作方法。
【符号の説明】
【0044】
1,31 フレーム
2,32 アーム支持部
3,33 アーム部
4,34 橋部
5,6,35,36 ファイバー保持脚
7,37 固定部
8,38 変位部
9,39 把持部
10,11,40,41,42 カルコゲナイドガラス薄膜
12,13 偏光保持型光ファイバー
14,16 レーザ光
15 把持対象物
21 カンチレバー
22 支持チップ
23 カルコゲナイドガラス薄膜
24,25 偏光レーザ光
30 単結晶Si基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーム保持部と前記アーム保持部に設けられ先端部を把持部とする一対のアーム部とからなるフレームと、
前記一対のアームに設けられたAs−S、As−Se或いはAs−S−Seのいずれかのカルコゲナイドガラス薄膜からなる駆動素子と、
前記カルコゲナイドガラス薄膜にレーザ光を照射するレーザ光照射手段と
を備えたマイクロピンセット。
【請求項2】
前記アーム保持部にも前記カルコゲナイドガラス薄膜を設けた請求項1に記載のマイクロピンセット。
【請求項3】
前記レーザ光照射手段が、レーザ光源と、前記レーザ光源からのレーザ光を前記アームの上部の近傍まで伝送して前記カルコゲナイドガラス薄膜の直上から照射する光ファイバーを有する請求項1または請求項2に記載のマイクロピンセット。
【請求項4】
前記レーザ光が偏光レーザ光であり、前記レーザ光源が前記レーザ光の偏光角度を微調整する偏光角調整手段を備えている請求項3に記載のマイクロピンセット。
【請求項5】
前記光ファイバーが、前記光ファイバーの光軸が前記カルコゲナイドガラス薄膜の面に対して常に垂直になるように取り付けられた請求項3または請求項4に記載のマイクロピンセット。
【請求項6】
平板状の基板材料をエッチング加工してアーム保持部と前記アーム保持部に設けられ先端部を把持部とする一対のアーム部とからなるフレームを成形する工程と、
前記フレームの露出表面に、As−S、As−Se或いはAs−S−Seのいずれかのカルコゲナイドガラス薄膜を付着する工程と、
前記フレームの表裏の主面に付着した前記カルコゲナイドガラス薄膜を研磨により選択的に除去する工程と、
前記フレームの側面に付着した前記カルコゲナイドガラス薄膜の不要部をFIBを照射して除去することにより駆動素子を形成する工程と、
前記フレームに光ファイバーを固定する工程と
を少なくとも有するマイクロピンセットの製造方法。
【請求項7】
アーム保持部と前記アーム保持部に設けられ先端部を把持部とする一対のアーム部とからなるフレームと、前記一対のアームに設けられたAs−S、As−Se或いはAs−S−Seのいずれかのカルコゲナイドガラス薄膜からなる駆動素子と、前記カルコゲナイドガラス薄膜にレーザ光を照射するレーザ光照射手段とを備えたマイクロピンセットの前記駆動素子にレーザ光を照射して前記アーム部の先端部を近接させて把持対象物を把持するマイクロピンセットの操作方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−140078(P2011−140078A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1097(P2010−1097)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】