説明

マイクロ構造及びナノ機構の複製のための物品及び方法

パターンを備える金型と、パターンと接触する金属含有層と、金属含有層に結合される官能化ペルフルオロポリエーテルを含んだ離型剤を有する物品が提供される。また、この金型を有する複製の方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、そのすべての開示内容が参照によって本願に組み込まれる、2007年6月21日に出願された米国実用出願(U.S. Utility Application)第11/766,477号の優先権を主張するものである。
【0002】
(発明の分野)
本願は、マイクロ構造及びナノ機構の複製のための物品及び方法に関する。この物品は、パターン表面を有する金型と、金属含有層と、表面に結合される離型コーティングとを有する。
【背景技術】
【0003】
物品及び装置の大きさを減じるための商業的及び産業的な応用に関心が寄せられている。このことは、デバイスがより一層小型に作製されてきた電子工学の分野において、特に当てはまる。例えば、ナノ構造デバイスは、フラットパネルディスプレイ、化学センサー、及び生体吸収基材などの物品で使用されることがある。マイクロ構造物品は、例えば、エレクトロルミネセンスデバイス、ディスプレイデバイス用の電界放出陰極、マイクロ流体フィルム、並びに、パターニングされた電子部品及び回路において、商業的な実用性が見出されてきた。
【0004】
ナノエンボス加工リソグラフィ、ナノインプリントリソグラフィ、紫外線ナノインプリントリソグラフィ、及びステップアンドフラッシュインプリントリソグラフィなど、型に基づいた様々なナノ複製技術が報告されてきた。ナノ複製プロセスにおいて、複製の品質は、型と複製される高分子パターンとの間の湿潤性及び付着性などの界面現象によって悪影響を受けることがある。そのような影響は、ナノスケール機構の表面積対体積比が高いことにより、ナノスケール機構に特に重大となる。ナノ複製から形成された複製の機構の品質は、離型層又は付着防止層を用いた型の処理に依存する。離型層は典型的には、複製ポリマーを鋳造しマイクロ構造及びナノ機構を正確に複写するために使用され得る薄い耐熱性の表面を形成することによって、金型表面の表面エネルギーを減じるものである。ナノ複製の用途においては、金型のパターンの大きさが非常に小さく、数マイクロメートルから数ナノメートル程度であり、金型上の厚い離型層によってパターンの機構寸法が変化し得るため、従来のコーティング技術を用いることができない。より小さな構造(例えばナノ機構)がより大きな構造(例えばマイクロ構造)の上に存在する階層的な物品を作製することが望ましい応用例は多数ある。これらの用途には、センサー、光学デバイス、流体デバイス、医療デバイス、分子診断、プラスチックエレクトロニクス、マイクロ電気機械システム(MEMS)、及びナノ電気機械システム(NEMS)が挙げられる。マイクロ構造、ナノ機構、又はナノ機構とマイクロ構造とを含む階層的構造を、迅速で費用効果的で高品質な方式で量産可能であることが有利である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
ナノメートル及び/又はマイクロメートルスケールの機構を、それらの機構を著しくゆがめることなく、迅速かつ費用効果的な方式で複写することができる金型を使用して物品を複製する方法が求められている。この必要性を満たす1つの手法は、非常に薄く、熱的に安定であり、かつ金型の表面への化学結合を形成することができる離型剤を使用することである。化学結合は、共有結合、イオン結合、供与結合(配位共有結合)、極性共有結合、又はバナナ共有などの強い結合となることができる。自己組織化単分子層(SAM)は、マイクロ構造及びナノ機構の複製において付着防止層又は離型層として使用されることができる材料のタイプのうちの1つである。SAMは物理化学的に安定であり、金型上のナノ機構パターンの形状に影響を与えることなく金型の表面特性を改良することができるが、これは、単分子のSAMフィルムが、厚さが1nm〜2nm程度に過ぎない(金型の機構よりもはるかに薄い)からである。SAMは、金型表面に化学結合されることができる場合、特に有用である。
【0006】
一態様において、パターン表面を備える金型と、外表面を有する金属含有層であってパターン表面上に支持される金属含有層と、金属含有層の外表面に結合される官能化ペルフルオロポリエーテルを含んだ離型剤とを備える物品が開示される。
【0007】
別の態様において、パターン表面を備える金型と、外表面を有する金属含有層であってパターン表面上に支持される金属含有層とを用意する工程と、官能化ペルフルオロポリエーテルを含んだ離型剤を金属含有層の外表面に塗布する工程とを含む複製の方法が開示される。例えばペルフルオロポリエーテルホスホネート又はペルフルオロポリエーテルベンゾトリアゾールなど、いくつかの官能化ペルフルオロポリエーテルは、熱的に安定となり、金型上にコーティングされるとSAMを形成することができ、金型表面と化学的に結合することができる。
【0008】
更に別の態様において、パターン表面を備える金型と、外表面を有する金属含有層であってパターン表面上に支持される金属含有層とを用意する工程と、官能化ペルフルオロポリエーテルを含有する離型剤を金属含有層の外表面に塗布する工程と、第1の複製ポリマーを、その第1の複製ポリマーが離型剤と接触するように金型に加える工程と、第1の複製ポリマーを金型から分離する工程とを含む複製の方法が開示される。
【0009】
本明細書で使用されるとき、冠詞「a」、「an」、及び「the」は、説明されている1つ以上の要素を意味するために、「少なくとも1つの(at least one)」と同じ意味で使用されている。
【0010】
本明細書で使用されるとき、「エッチマスク」という用語は、基材の領域を光学ビーム又はエッチングビームに暴露するのを可能にするように又は防止するように基材に近接又は接触して保持される構造体を指す。
【0011】
本明細書で使用されるとき、「エッチレジスト」という用語は、基材上に配置され、使用されるエッチング条件下で基材よりも遅れてエッチングするレジストパターンを形成するようにパターニングされることができる材料の層を指す。
【0012】
本明細書で使用されるとき、「階層的」という用語は、少なくとも1つの要素がナノ機構を有し、少なくとももう1つの要素がマイクロ構造を有する、2つ以上の要素の構造を有する構成を指す。構造の要素は、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上のレベルの深さから成ることができる。
【0013】
本明細書で使用されるとき、「マイクロ構造」という用語は、最長の寸法が約0.1マイクロメートル〜約1000マイクロメートルに及ぶ構造を指す。この応用例において、ナノ機構及びマイクロ構造の各範囲は重複する。
【0014】
本明細書で使用されるとき、「ナノ機構」という用語は、最長の寸法が約1nm〜約1000nmに及ぶ機構を指す。
【0015】
この応用例の任意の物品のナノ機構は、物品上に生成されたマイクロ構造よりも小さい。
【0016】
本明細書で使用されるとき、「アルカリ金属」という用語は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又はリチウムイオンを指す。
【0017】
本明細書で使用されるとき、「アルカン」という用語は、直鎖状、分枝状、環状、又はそれらの組み合わせの飽和炭化水素を指す。アルカンは典型的には、1個〜30個の炭素原子を有している。いくつかの実施形態において、アルカンは、1個〜20個、1個〜10個、1個〜8個、1個〜6個、1個〜4個、又は1個〜3個の炭素原子を有する。
【0018】
本明細書で使用されるとき、「アルコキシ」という用語は、式−ORの基を指し、Rはアルキル基である。
【0019】
本明細書で使用されるとき、「アルキル」という用語は、アルカンから水素原子を引き抜いて形成された一価部分を指す。アルキルは、直鎖状構造、分枝状構造、環状構造、又はそれらの組み合わせを有することができる。シクロアルキルは、環状のアルキルであり、アルキル基の部分集合である。
【0020】
本明細書で使用されるとき、「アルキレン」という用語は、アルカンから水素原子2個を引き抜いて形成された二価部分を指す。アルキレンは、直鎖状構造、分枝状構造、環状構造、又はそれらの組み合わせを有することができる。
【0021】
本明細書で使用されるとき、「アリール」という用語は、1個〜5個の結合環、複数の縮合環、又はそれらの組み合わせを有する炭素環芳香族化合物の一価部分を指す。いくつかの実施形態において、アリール基は、4個の環、3個の環、2個の環、又は1個の環を有する。例えば、アリール基はフェニルであり得る。
【0022】
本明細書で使用されるとき、「アリーレン」という用語は、1個〜5個の結合環、複数個の縮合環、又はそれらの組み合わせを有する炭素環芳香族化合物の二価部分を指す。いくつかの実施形態において、アリーレン基は、4個の環、3個の環、2個の環、又は1個の環を有する。例えば、アリーレン基はフェニルであり得る。
【0023】
本明細書で使用されるとき、「カルボニル」という用語は、炭素が二重結合で酸素に付けられた式−(CO)−の二価の基を指す。
【0024】
本明細書で使用されるとき、「カルボニルオキシ」という用語は、式−(CO)O−の二価の基を指す。
【0025】
本明細書で使用されるとき、「カルボニルイミノ」という用語は、式−(CO)NRの二価の基を指し、Rは水素又はアルキルである。
【0026】
本明細書で使用されるとき、「フルオロポリエーテル」という用語は、酸素原子と結合した3個以上の飽和又は不飽和炭化水素を有する(すなわち、少なくとも2個の鎖状に連結した酸素原子がある)化合物又は基を指す。炭化水素基のうちの少なくとも1個、典型的には2個以上が、少なくとも1個の水素原子をフッ素原子で置換される。炭化水素基は、直鎖状構造、分枝状構造、環状構造、又はそれらの組み合わせを有することができる。
【0027】
本明細書で使用されるとき、「ハロ」という用語は、塩素、臭素、ヨウ素、又はフッ素を指す。
【0028】
本明細書で使用されるとき、「ヘテロアルキル」という用語は、ヘテロアルカンから水素原子1個を引き抜いて形成された一価部分を指す。
【0029】
本明細書で使用されるとき、「ヘテロアルキレン」という用語は、ヘテロアルカンから水素原子2個を引き抜いて形成された二価部分を指す。
【0030】
本明細書で使用されるとき、「ペルフルオロアルカン」という用語は、水素原子のすべてがフッ素原子で置換されたアルカンを指す。
【0031】
本明細書で使用されるとき、「ペルフルオロアルカンジイル」という用語は、遊離基の中心が異なる炭素原子上にあるペルフルオロアルカンからフッ素原子2個を引き抜いて形成された二価部分を指す。
【0032】
本明細書で使用されるとき、「ペルフルオロアルカントリイル」という用語は、ペルフルオロアルカンからフッ素原子3個を引き抜いて形成された三価部分を指す。
【0033】
本明細書で使用されるとき、「ペルフルオロアルキル」という用語は、水素原子のすべてがフッ素原子で置換されたアルキル基を指す。
【0034】
本明細書で使用されるとき、「ペルフルオロアルコキシ」という用語は、水素原子のすべてがフッ素原子で置換されたアルコキシ基を指す。
【0035】
本明細書で使用されるとき、「ペルフルオロエーテル」という用語は、炭化水素基上の水素原子のすべてがフッ素原子で置換されたフルオロエーテルを指す。
【0036】
本明細書で使用されるとき、「ペルフルオロポリエーテル」という用語は、すべての炭化水素基上のすべての水素原子がフッ素原子で置換されたフルオロポリエーテルを指す。
【0037】
本明細書で使用されるとき、「ホスホン酸」という用語は、炭素原子に直結した式−(P=O)(OH)の基、又はこの基を含んだ化合物を指す。
【0038】
本明細書で使用されるとき、「ホスホネート」という用語は、炭素原子に直結した式−(P=O)(OX)の基、又はこの基を含んだ化合物を指し、Xは、アルカリ、アルキル基、又は正に帯電した窒素原子を有する5員〜7員の複素環基から選択される。ホスホネートは、対応するホスホン酸のエステル又は塩であり得る。
【0039】
本明細書で使用されるとき、「ホスフェート」という用語は、炭素原子に直結する式−O(P=O)(OX)の塩又はエステルを指し、Xは、水素、アルカリ金属、アルキル、シクロアルキル、アンモニウム、アルキル若しくはシクロアルキルで置換されたアンモニウム、又は正に帯電した窒素原子を有する5員〜7員の複素環基から選択される。
【0040】
本明細書で使用されるとき、「スルホンアミド」という用語は、式−SONR−の基を指し、Rはアルキル又はアリールである。
【0041】
上記の本発明の概要は、本発明の開示した各実施形態又はすべての実現形態を説明することを意図したものではない。以下の詳細な説明により、例示的な実施形態をより具体的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本開示は、パターン表面を備える金型と、外表面を有する金属含有層であってパターン表面上に支持される金属含有層と、金属含有層の外表面に結合される官能化ペルフルオロポリエーテルを含有する離型剤とを備える物品を提供する。金型は、パターンの複製を製作するために使用されることができる。離型剤は、金型内のパターンと接触する金属含有層に接合されることができ、また、非常に薄くなり、単分子層と同程度にも薄くなることができる。離型剤をパターンに付着することで、パターンの複数の複製を、離型層の1回の塗布で、同じ金型から作製することが可能となる。加えて、離型層が単分子層のように非常に薄い場合、複製は、ナノ機構又はマイクロ構造の複製を容易にする非常に微細な構造を有することができる。
【0043】
本開示の物品は、パターン表面を備える金型を備える。パターン表面は、機構若しくは構造の規則的な配列若しくは無規則な配列又は両者の組み合わせを有することができる構成であることができる。パターン表面は、最長の寸法が約1nm〜約1000nmに及ぶナノ機構、及び最長の寸法が約0.1μm〜約1000μmに及び得るマイクロ構造を有することができる。表面上のパターンは、より大きな構造、例えばマイクロ構造の上に、例えばナノ機構などのより小さな機構を備える階層的パターンを含むことができる。
【0044】
階層的パターンは、ナノ機構を既存のマイクロ構造に付加することによって作製されることができる。これは、例えば、ナノ結晶をマイクロ構造物品の上に成長させること、マイクロ構造物品をナノインプリントすることによって、そして、光学的応用例のために干渉的なリソグラフィ技術を用いて1マイクロメートル未満又はナノスケールの枠組み及び格子(gratings and grids)をマイクロ構造上に作製することによって、達成されてきた。加えて、同時出願され同時係属中の本出願人の特許出願であり、2007年6月21に出願された「階層的物品を作製する方法(Method of Making Hierarchical Articles)」という名称の米国特許出願第11/766412号により、物品を作製する方法が開示されており、その方法は、マイクロ構造を有する物品を用意する工程と、ナノ粒子をマイクロ構造に加える工程と、マイクロ構造の少なくとも一部分をエッチングして階層的物品を製作する工程とを含み、ナノ粒子は、二酸化ケイ素よりも相当に遅い速度でエッチングし、エッチングは、ナノ粒子をエッチレジストとして使用することを含む。この特許出願は、そのすべてが参照によって本願に組み込まれる。本出願人らは、階層的物品を作製する方法を更に開示しており、その方法は、ナノ機構パターンを有する基材を用意する工程と、基材に層を加える工程と、その層内にマイクロ構造パターンを生成する工程とを含み、マイクロ構造パターンを生成する工程は、基材の少なくとも一部分が現れるように、層の少なくとも一部分を除去することを含む。この開示内容は、同時出願され同時係属中の本出願者らの特許出願であり2007年6月21に出願された「階層的物品を作製する方法(Method of Making Hierarchical Articles)」という名称の米国特許出願第11/766,561号(チャン(Zhang)ら)に見出されることができ、この特許出願は、そのすべてが参照によって本願に組み込まれる。
【0045】
この金型は、基材を備えることができる。基材は、種々の材料から選択されることができる。これらの材料には、例えばポリイミド若しくはポリメチレンメタクリレートなどの高分子フィルム、又は、ガラス、シリコンウエハ、及びコーティング付きのシリコンウエハなどの無機材料が挙げられる。シリコンウエハ上のコーティングには、例えばポリイミド又はウレタンアクリレートなどの高分子フィルムを挙げることができ、また、例えばSiOコーティングなどの無機コーティングを挙げることができる。加えて、基材は、「多孔質バイコールガラスの構造(Structure of Porous Vycor Glass)」と題されたウィルトジウス(Wiltzius)らのフィジカルレビューA(Phys. Rev.A)、36(6)、2991、(1987)に開示されている多孔質ガラス、「パターン表面の自己集合への手段としての異方性スピノダルディウェッティング(Anisotropic Spinodal Dewetting As a Route to Self-assembly of Patterned Surfaces)」と題されたヒゲンス(Higgens)らのネイチャー(Nature)、404、476(2000)に記載されているような、薄い高分子フィルムでディウェッティングされた高分子表面、「スピノダル組成によるイオン結晶のナノスケール表面構造(Nanoscaled Surface Structures of Ionic Crystals by Spinodal Composition)」と題されたリンジ(Ringe)らによる固体イオニックス(Solid State Ionics)、177、2473(2006)に記載されているようなイオン混晶、又は光電性の基材が挙げられる。光電性の基材には、感光性ポリマー、セラミックス、又はガラスを挙げることができる。
【0046】
基材は、ナノ機構を含んだナノ機構パターンを有することができる。このパターンは、ナノ機構の規則的な配列、ナノ機構の無規則な配置、ナノ機能の種々の規則的な配置若しくは無規則な配置、又はナノ機構の任意の構成の形態をとることができる。ナノ機構パターンは、基材内に又は追加された層内に直接形成されることができる。加えて、ナノ機構パターンは、基材の一部として形成されることができる。
【0047】
ナノ機構パターンは、基材内に直接形成されることができる。パターンは、陽極酸化、光複製、レーザーアブレーション、電子ビームリソグラフィ、ナノインプリントリソグラフィ、光学接触リソグラフィ、投影リソグラフィ、光学干渉リソグラフィ、及び傾斜リソグラフィなどのパターニング技術を利用して創成されることができる。次いで、パターンは、必要に応じて、ウェットエッチング又はドライエッチングなどのサブトラクティブ技術を利用して既存の基材材料を除去することによって、基材の中に転写されることができる。ナノ機構パターンは、レジストパターンを通じたウェットエッチング又はドライエッチングによって、基材の中に転写されることができる。レジストパターンは、当業者に知られている方法を利用して、正フォトレジスト及び負フォトレジストを含めた様々なレジスト材料から作製されることができる。ウェットエッチングには、例えば、浸酸機を使用して酸感受性層をエッチングすること、又は現像液を使用して露出した若しくは露出していないフォトレジストを除去することが挙げられる。ドライエッチングには、例えば、反応性イオンエッチング、又は、例えば高エネルギーレーザー若しくはイオンビームなどの高エネルギービームを使用したアブレーションを挙げることができる。
【0048】
あるいは、基材の上部にコーティングされたナノ粒子の層が、ナノ粒子が存在するところでは基材が放射又はエッチングに暴露されるのを防止するが、ナノ粒子に直面していない領域内ではレジストが暴露されるようにすることによって、レジストパターンとして働くことができる。ナノ粒子は、分散されることができ、また所望により、結合剤と組み合わされて、物品の追加された層上で不動となることができる。エッチマスクとして有用となり得るナノ粒子には、インジウム−スズ酸化物、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、及び他の金属又は半金属酸化物などの酸化物が挙げられる。他の有用なナノ粒子には、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化チタン、窒化炭素、窒化ホウ素、及びナノ粒子となることが当業者に知られている他の窒化物などの窒化物が挙げられる。また、金属ナノ粒子をエッチマスクとして使用することも可能である。金属ナノ粒子には、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、金、銀、クロム、及び他の金属のナノ粒子が挙げられる。インジウム−スズ酸化物(ITO)ナノ粒子は、イソプロパノール中に分散しポリイミドフィルムに付着することが判明しており、他の添加剤の改質又は添加を伴うことなくエッチマスクとして使用されることができる。他のナノ粒子は、当業者に知られている物品改質用の基を添加することで分散可能となる。
【0049】
また、企図されることとして、ナノ機構パターンは、例えば金、銀、アルミニウム、クロム、ニッケル、チタン、及び銅などの金属で基材をコーティングし、金属を焼きなまして金属の島を形成し、次いで金属の島を基材自体のエッチマスクとして使用することによって、基材上に形成されることができる。基材のエッチングは、本願で先に述べられたエッチング技術のいずれかを用いて達成されることができる。また、例えば、参照によって本願に組み込まれる米国特許出願第11/626,456号(マホーニー(Mahoney)ら)に開示されているようなクロモニクス(chromonics)を使用してナノ機構パターンを形成することも本開示の範囲に含まれる。
【0050】
また、ナノ機構パターンは、いかなる追加材料をも加えることなく、基材を直接修飾することによって形成されることもできる。例えば、レーザーアブレーションにより、基材の選択された領域を除去してナノ機構を形成することができる。基材が光電性である場合、感光性基材を光学投影又は光学接触リソグラフィによって暴露し、次いで現像することによって、ナノ機構パターンを形成することが可能である。あるいは、干渉フォトリソグラフィを利用して、感光性材料内にナノパターンを創成することができる。また、導電性基材の陽極酸化を利用して、ナノ機構パターンを形成することもできる。
【0051】
パターンは、高エネルギービームを使用して基材をアブレーションすることによって、直接基材内に形成されることができる。パターンは、ビームをラスタ処理することによって、又はエッチマスク若しくはレジストを使用して基材の各部を保護することによって、画定されることができる。この手法は、例えばポリイミドなどの一部の高分子基材内に減法的にナノ機構パターンを形成するのに特に有用となり得る。
【0052】
ナノ機構パターンはまた、材料を基材に加えることによって形成されることもできる。その材料は、基材に加えられたときにナノ機構パターンを有することができ、あるいは、その材料は、基材に加えられ、次いで、その材料の中に創成されたナノ機構パターンを後に有することができる。ナノ機構パターンは、材料が基材に加えられる前に材料内に形成されることができる。ナノ機構パターンは、本明細書の方法を利用して減法的に材料内に形成されることができる。ナノ機構パターンはまた、追加された材料の中に鋳造されることができる。例えば、ナノ機構パターンのネガ型レリーフ像を持つ複製を使用して、材料内にナノ機構パターンを形成することができる。この場合、材料は、高温で流動し次いで室温で又は使用温度で固形状となる熱可塑性材料であることができる。あるいは、材料は熱硬化性であることができ、その化学的性質に応じて触媒、熱、又は露光を利用して硬化されることができる。材料が基材に加えられるとき、材料は固体として加えられることができる。材料は、積層によって又は薄い接着材料を加えることによって、基材に加えられることができる。この目的に使用され得る材料には、高温では流動するが室温などの低温では流動しない熱可塑性ポリマーが挙げられる。使用され得る熱硬化性ポリマーの例には、アクリル類、ポリオレフィン類、ポリ(エチレン/アクリル酸)などのエチレンコポリマー類、ポリテトラフルオロエチレンとポリフッ化ビニリデンなどのフルオロポリマー類、ポリ塩化ビニル、アイオノマー類、ポリエーテルエーテルケトンなどのケトン類、ポリアミド類、ポリカーボネート類、ポリエステル類、スチレン−イソプレン−スチレンなどのスチレンブロックコポリマー類、スチレンブタジエン−スチレン、スチレンアクリロニトリル、及び当業者に既知の他のものが挙げられる。ナノ機構を持つ基材を形成するための他の有用な材料には、例えば、ポリジメチルシロキサン類、ウレタンアクリレート類、及びエポキシ類などの熱硬化性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂の一例が、硬化時にナノ機構を持つ高分子基材を形成する、光硬化性のウレタンアクリレートなどの光架橋可能な系であり得る。
【0053】
基材に材料を追加することを利用してナノ機構パターンが製作される場合、多数の材料が使用されることができる。例えば、フォトレジスト(ネガ型又はポジ型)が基材に加えられることができる。フォトレジストは、フォトマスクを通過した又はレンズ系を通じて投射された光に暴露されて、ナノ機構を生じることができる。加えて、干渉リソグラフィを利用して、ナノ機構パターンを生じることができる。干渉リソグラフィについては、例えば、S.R.J・ブルック(S. R. J. Brueck)「光学及び干渉リソグラフィによるナノテクノロジーの実現(Optical and Interferometric Lithography-Nanotechnology Enablers)」(電気工学学会会報(Proceedings of the IEEE)、93巻(Vol. 93)(10)、2005年10月)において議論されている。また、企図されることとして、フォトレジストは、ラスタ処理された又はデジタルでパルス化されたレーザービームで直接書き込むことによって、暴露されることができる。次いで、暴露された(ポジ型フォトレジスト)又は暴露されない(ネガ型フォトレジスト)領域は、現像液を使用して不要なフォトレジストを溶解することによって、除去されることができる。次いで、レジストは、後の工程で使用するために物理的又は化学的な手段によって硬化されることができる。次いで、現像されたフォトレジストは、本明細書で説明されているように、硬化され使用されることができる。有用なフォトレジストには、UVN 30(マサチューセッツ州マールボロ(Marlborough)のロームアンドハース電子材料社(Rohm and Haas Electronic Materials)から入手可能)及びFUTURREXネガ型フォトレジスト(ニュージャージー州フランクリン(Franklin)のフューチャーレックス社(Futurrex)から入手可能)などのネガ型フォトレジスト、並びに、UV5(ロームアンドハース電子材料社から入手可能)及びShipley 1813フォトレジスト(ロームアンドハース電子材料社から入手可能)などのポジ型フォトレジストが挙げられる。他のフォトポリマーを使用してナノ機構を創成することができる。当業者に既知の任意のフォトポリマー系を使用して、放射線(UV、IR、又は可視線)への暴露時にナノ機構を形成することができる。
【0054】
また、フォトレジスト材料の暴露及び現像によって製作されたレジストパターンは、フォトレジストをレジストパターンとして使用してドライエッチングすることにより、不要な材料を直接除去することによって基材に転写することができる。例えば、反応性イオンエッチングを使用して、基材又は基材に加えられた材料の各部を、ナノ機構を創成するような方式で除去することができる。反応性イオンエッチングでは、CF又はSFなどの反応性の気体種が反応室に加えられる。プラズマが、印加された高周波(RF)のポテンシャルによって生成される。これによってガスの一部がイオン化される。これらのイオン化された粒子は、様々な電極物品に向かって加速されることができ、エッチングするか、又は、それらのイオン化された粒子が衝突する物品から分子を除去することができる。典型的には、反応性イオンエッチングは、エッチマスクによって、又は、ラスタ処理された若しくはデジタル制御されたビームを直接使用して達成される。
【0055】
あるいは、薄い金属層が基材の上に堆積されることができ、フォトレジストが金属上に堆積されることができ、フォトレジストがパターニングされることができ、次いで、レジストパターンがウェットエッチングによって金属の中に転写されることができる。このようにして、基材のドライエッチング用のレジストパターンとして働くことができる金属パターンが創成されることができる。結果的に、(金属)レジストパターンと基材との間の高いエッチング速度が達成されることができる。
【0056】
別の例として、電子ビーム(e−ビーム)が使用されて、e−ビームレジスト内にレジストパターンが創成されることができる。例えば、マサチューセッツ州ニュートン(Newton)のマイクロケム社(MicroChem Corp.)からの入手可能なポリ(メチルメタクリレート)が基材に加えられることができ、ナノ機構を有するエッチマスクが、レジストの現像によって製作されることができる。その後に、基材が、レジストパターンを通じて反応性イオンエッチングされることができる。
【0057】
本発明の物品は、外表面を有する金属含有層を有することができ、その金属含有層は、物品のパターン表面上で支持される。金属含有層は、金属若しくは金属酸化物のいずれか又は両方を有することができる。金属含有層は金型自体であることができ、あるいは、金型は、例えば、蒸着されるか若しくは無電解メッキで付着されるか又はそれらの双方がなされた金属の薄層で金属化されることができる。金属化に有用な金属には、ニッケル、銅、クロム、アルミニウム、銀、及びチタンが挙げられる。物品のパターン表面と外表面を有する金属含有層との間の他の金属層を含めて、他の層が存在することができる。例えば、パターン表面が非導電性材料でできている場合、例えば銀層などの薄い導電性層がパターン表面上に堆積されて、パターン表面を導電性にすることができる。これは、例えば当業者に既知の無電解メッキによって行われることができる。その後、ニッケルなどのより薄い金属層が、次いで、薄い導電性層上に電解によって堆積されることができる。他の層が、パターン表面と外表面を有する金属含有層との間に存在することができる。
【0058】
外表面を有する金属含有層は、物品のパターン表面上で支持される。外表面を有する金属含有層は、パターン表面に化学結合されるか、パターン表面に付着されるか、又はパターン表面の上に置かれることができる。外表面を有する金属含有層は、パターン表面と直接接触することができ、あるいは、パターン表面と接触する別の層と接触することができる。金属含有層は、外表面を有する。外表面は、離型剤との結合に利用可能である。外表面はまた、パターン表面を有する。金属含有層は、十分に薄いものであることができ、そのため、層の外表面は、金型から得たパターン表面を有し、つまり、金型のパターン表面は、金属含有層を貫いて突出し、金属含有層の外表面上に存在する。
【0059】
本開示の物品は、金属含有層の外表面に結合される官能化ペルフルオロポリエーテルを含有する離型剤を含む。パターン表面上で支持される金属含有層が複数存在する場合、離型剤は、物品の最も外側の金属含有層に付着されることができる。官能化ペルフルオロポリエーテルは、少なくとも1個の官能基を有する。その官能基は、ペルフルオロポリエーテルの末端に付加されることができる。フルオロカーボン部分は、全フッ素化されることができ、つまりペルフルオロポリエーテルとなることができ、水素原子のすべてがフッ素原子と置換される。本開示のペルフルオロポリエーテルは、アミド基を含むことができる。官能基は、本発明の金型上の金属含有層と化学的に結合し得る任意の基であることができる。有用な官能基の例には、ベンゾトリアゾール及びホスホン酸類又はホスホン酸エステル類(ホスホネート類)が挙げられる。官能基はフルオロカーボンに直接付加されることができ、あるいは、結合基(linkage group)を介して結合されることができる。一般的な結合基は、エーテル結合、エステル結合、及びアミド結合を含む。本発明に特に有用な官能化フルオロカーボンには、米国特許第7,148,360(B2)号(フリン(Flynn)ら)に開示されているものなどのペルフルオロポリエーテルベンゾトリアゾールの混合物、並びに、2004年6月7日に出願された米国特許公開第2005/0048288号(フリン(Flynn)ら)に開示されているような、ペルフルオロポリエーテルアミド連結ホスホネート、ホスフェート、及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0060】
一実施形態において、離型剤は、式I、式II、又はそれらの組み合わせに従うペルフルオロポリエーテル組成物を含む。
【0061】
【化1】

【0062】
式中、
は、一価又は二価のペルフルオロポリエーテル基であり、
各Xは独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、アルカリ金属、アンモニウム、アルキル若しくはシクロアルキルで置換されたアンモニウム、又は、正に帯電した窒素原子を有する5員〜7員の複素環基であり、
yは1又は2に等しく、
は水素又はアルキルであり、
は、アルキレン、アリーレン、ヘテロアルキレン、又はそれらの組み合わせから選択された二価の基と、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、スルホンアミド、又はそれらの組み合わせから選択された所望による二価の基とを含み、Rは非置換であるか、あるいは、アルキル、アリール、ハロ、又はそれらの組み合わせで置換される。
【0063】
式I又は式IIの基Rは、水素又はアルキルであり得る。いくつかの実施形態において、Rは、C〜Cのアルキルである。
【0064】
式I又は式IIの各X基は独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、アルカリ金属、アンモニウム、アルキル若しくはシクロアルキルで置換されたアンモニウム、又は、正に帯電した窒素原子を有する5員〜7員の複素環基である。各Xが水素である場合、式I又は式IIに従う化合物は、ホスホン酸又はモノホスフェートエステルである。式I又は式IIに従う化合物は、少なくとも1個のXがアルキル基である場合、エステルである。例示的なアルキル基には、1個〜4個の炭素原子を有するものが挙げられる。アルキル基は、直鎖状、分枝状、又は環状であることができる。
【0065】
少なくとも1個のXが、アルカリ金属、アンモニウム、アルキル若しくはシクロアルキルで置換されたアンモニウム、又は、正に帯電した窒素原子を有する5員〜7員の複素環基である場合、式I又は式IIに従う化合物は塩である。例示的なアルカリ金属には、ナトリウム、カリウム、及びリチウムが挙げられる。例示的な置換アンモニウムイオンには、テトラアルキルアンモニウムイオンが挙げられるが、これに限定するものではない。アンモニウム上のアルキル置換基は、直鎖状、分枝状、又は環状であることができる。正に帯電した窒素原子を有する例示的な5員又は6員の複素環基には、ピロリニウムイオン、ピラゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、トリアゾリウムイオン、イソオキサゾリウムイオン、オキサゾリウムイオン、チアゾリウムイオン、イトチアゾリウムイオン、オキサジアゾリウムイオン、オキサトリアゾリウムイオン、ジオキサゾリウムイオン、オキサチアゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピリダジニウムイオン、ピリミジニウムイオン、ピラジニウムイオン、ピペラジニウムイオン、トリアジニウムイオン、オキサジニウムイオン、ピペリジニウムイオン、オキサチアジニウムイオン、オキサジアジニウムイオン、及びモルホリニウムイオンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
基は、アルキレン、アリーレン、ヘテロアルキレン、又はそれらの組み合わせから選択された二価の基と、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、スルホンアミド、又はそれらの組み合わせから選択された所望による二価の基とを含む。Rは非置換であるか、あるいは、アルキル、アリール、ハロ、又はそれらの組み合わせで置換されることができる。R基は、通常、30個以下の炭素原子を有する。いくつかの化合物では、R基は、20個以下の炭素原子、10個以下の炭素原子、6個以下の炭素原子、又は4個以下の炭素原子を有する。例えば、Rは、アルキレン、アリール基で置換されたアルキレン、又はアリーレンと組み合わせたアルキレンであることができる。いくつかの例示的な化合物では、Rは、アルキレン基に結合されたフェニレン基であり、そのアルキレン基は1個〜6個の炭素原子を有する。他の例示的な化合物では、R基は、非置換であるかあるいはフェニル基又はアルキル基で置換された、1個〜6個の炭素原子を有するアルキレン基である。
【0067】
ペルフルオロポリエーテル基Rは、直鎖状、分枝状、環状、又はそれらの組み合わせであることができ、飽和されていることも飽和されていないこともある。ペルフルオロポリエーテルは、少なくとも2個の鎖状に連結した酸素ヘテロ原子を有する。例示的なペルフルオロポリエーテルには、−(C2p)−、−(C2pO)−、−(CF(Z))−、−(CF(Z)O)−、−(CF(Z)C2pO)−、−(C2pCF(Z)O)−、−(CFCF(Z)O)−、又はそれらの組み合わせからなる群から選択された全フッ素化された反復単位を有するものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの反復単位において、pは典型的には1〜10の整数である。いくつかの実施形態において、pは1〜8、1〜6、1〜4、又は1〜3の整数である。Z基は、直鎖状の構造、分枝状の構造、環状の構造、若しくはそれらの組み合わせを有するペルフルオロアルキル基、ペルフルオロエーテル基、ペルフルオロポリエーテル、又はペルフルオロアルコキシ基であることができる。Z基は、典型的には12個以下の炭素原子、10個以下の炭素原子、8個以下の炭素原子、6個以下の炭素原子、4個以下の炭素原子、3個以下の炭素原子、2個以下の炭素原子、又は1個以下の炭素原子を有する。いくつかの実施形態において、Z基は、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下、又は0個の酸素原子を有することができる。これらのペルフルオロポリエーテル構造において、種々の反復単位がブロック構成又は無規則な構成で結合されて、R基を形成することができる。
【0068】
は、一価(すなわち、式I若しくはIIにおいてyが1である)又は二価(すなわち、式I又はIIにおいてyが2である)であることができる。ペルフルオロポリエーテル基Rが一価である場合、ペルフルオロポリエーテル基Rの末端基は、例えば、(C2p+1)、(C2p+1O)であり、pは、1〜10、1〜8、1〜6、1〜4、又は1〜3の整数である。いくつかの例示的な一価のペルフルオロポリエーテル基Rには、限定するものではないが、CO(CF(CF)CFO)CF(CF)−、CO(CFCFCFO)CFCF−、及びCFO(CO)CF−が挙げられ、nは、0〜50、1〜50、3〜30、3〜15、又は3〜10の平均値を有する。
【0069】
他の例示的な一価のペルフルオロポリエーテル基Rには、限定するものではないが、CFO(CFO)O)CF−及びF(CFO(CO)(CF−が挙げられ、qは、0〜50、1〜50、3〜30、3〜15、又は3〜10の平均値を有することができ、nは、0〜50、3〜30、3〜15、又は3〜10の平均値を有することができる。
【0070】
いくつかの例示的な二価のペルフルオロポリエーテル基Rには、限定するものではないが、CFO(CFO)O)CF−、−CFO(CO)CF−、−(CFO(CO)(CF−、及び−CF(CF)(OCFCF(CF))OC2tO(CF(CF)CFO)CF(CF)−が挙げられ、
qは、0〜50、1〜50、3〜30、3〜15、又は3〜10の平均値を有することができ、nは、0〜50、3〜30、3〜15、又は3〜10の平均値を有することができ、sは、0〜50、1〜50、3〜30、3〜15、又は3〜10の平均値を有することができ、nとsの合計(すなわちn+s)は、0〜50又は4〜40の平均値を有することができ、qとnの合計(すなわちq+n)は、0を超えることができ、tは2〜6の整数であることができる。
【0071】
合成されると、式I又は式IIに従うペルフルオロポリエーテルは、典型的には、異なるペルフルオロポリエーテル基Rを有する混合物となる(すなわち、化合物は、単一化合物としてではなく、異なるR基を持つ化合物の混合物として合成される)。例えば、q、n、及びsの値は、混合物が少なくとも400g/モルの数平均分子量を有する限り、異なることができる。ペルフルオロポリエーテルホスホネート及びその誘導体の好適な混合物は、典型的には、少なくとも400g/モル、少なくとも800g/モル、又は少なくとも1000g/モルの数平均分子量を有する。種々のペルフルオロポリエーテルホスホネート及びその誘導体の混合物は、多くの場合、400g/モル〜10000g/モル、800g/モル〜4000g/モル、又は1000g/モル〜3000g/モルの分子量(数平均)を有する。式IIの官能化ペルフルオロポリエーテルが、その調製のための方法と共に、トネリ(Tonelli)らのフッ素化学学会誌(J. Fluorine Chem.)、95、51(1999)に開示されている。この開示内容は、参照によって本願に組み込まれる。
【0072】
いくつかの応用例において、溶剤はヒドロフルオロエーテルであることができる。好適なヒドロフルオロエーテルは、以下の一般式IIIで表されることができる。
【0073】
【化2】

【0074】
式中、aは1〜3の整数であり、Rは、直鎖状、分枝状、環状、又はそれらの組み合わせであるペルフルオロアルカン、ペルフルオロエーテル、又はペルフルオロポリエーテルの一価基、二価基、又は三価基であることができ、Rは、直鎖状、分枝状、環状、又はそれらの組み合わせであるアルキル基又はヘテロアルキル基であることができる。例えば、ヒドロフルオロエーテルは、メチルペルフルオロブチルエーテル又はエチルペルフルオロブチルエーテルであることができる。
【0075】
官能化ペルフルオロポリエーテルを含んだ離型層を有する組成物は、スピンコーティング、吹付け、浸漬、又は蒸着など、いくつかの通常の方式のうちのいずれかで塗布されることができる。式I、II、又はそれらの組み合わせの組成物は、多くの場合、本質的には同一の特性を持つ2つの不可分な異性体の混合物である3M NOVEC Engineered Fluid HFE−7100(COCH)などのヒドロフルオロエーテル、又はイソプロパノールなどの他の有機溶媒に溶解(分散)する。この溶解性により、余剰材料の均一なフィルムを浸漬、吹付け、又はスピンコーティングによって溶液から張り付けることが可能となる。次いで、基材は加熱されて単分子膜の形成を促進されることができ、余剰材料は、単分子層フィルムを残して洗い落とされるか又は拭き取られることができる。
【0076】
コーティング組成物を塗布するために使用される溶媒には、典型的には、実質的に不活性であり(すなわち、式I、II、又はそれらの組み合わせの組成物と実質的に反応しない)かつこれらの材料を分散させるか又は溶解させることが可能な溶媒が挙げられる。いくつかの実施形態において、溶媒は、式II、III、又はそれらの組み合わせに従う化合物を実質的に完全に溶解させる。適切な溶媒の例には、フッ素化炭化水素、特にフッ素置換されたアルカン、エーテル、特にアルキルペルフルオロアルキルエーテル、及びヒドロクロロフルオロアルカン及びエーテルが挙げられるが、これらに限定するものではない。そのような溶媒の混合物が使用されることができる。
【0077】
いくつかの実施形態において、離型層は、金型の表面上の自己組織化単分子層(SAM)、又は金型上の階層的パターンと接触する金属含有層を備える。SAMは物理化学的に安定であり、階層的パターンのナノ機構又はマイクロ構造の形状に影響を与えることなく、金型の表面特性を改良することができる。SAMフィルムは、一般に厚さが1nm〜2nm程度であり(階層的パターンの機構よりもかなり薄い)、金型の表面、又は金型のパターン表面上に支持された金属含有層の外表面に化学結合されることができる。
【0078】
別の態様において、本開示は複製の方法を提供し、その方法は、パターン表面を備える金型と、外表面を有する金属含有層であってパターン表面上に支持される金属層とを用意する工程と、官能化フルオロカーボンを含んだ離型剤を金属含有層の外表面に塗布する更なる工程とを含む。パターン表面を備える金型は、本願において先に開示された通りに用意されることができる。離型剤は、例えば、スピンコーティング、吹付け、ディップコーティング、又は蒸着などのいくつかの通常の方式のうちのいずれかで塗布されることができる。離型剤は、本願において先に開示されたものなどの官能化ペルフルオロポリエーテルを含有することができる。官能化ペルフルオロポリエーテルは、ヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)から誘導されることができる。
【0079】
金型は金属含有層を備え、その金属含有層は、外表面を有し、パターン表面上で支持される。金属含有層は、金属又は金属酸化物を含有することができる。その金属は、ニッケル、銅、クロム、アルミニウム、銀、及びチタンから選択されることができる。金属含有層がニッケルを含有する場合、離型剤は、式I及びIIで開示されたものなどの官能化ペルフルオロポリエーテルを有することができる。
【0080】
本開示の別の態様は、複製の方法を提供し、その方法は、パターン表面を備える金型と、外表面を有する金属含有層であってパターン表面上に支持される金属含有層とを用意する工程と、官能化ペルフルオロポリエーテルを含有する離型剤を金属含有層の外表面に塗布する工程と、第1の複製ポリマーを離型剤と接触させて金型に加える工程と、第1の複製ポリマーを金型から分離する工程とを含む。金型は、本願において先に開示されたように階層的パターンを備えることができる。離型剤は、本願において先に開示されたように官能化ペルフルオロポリエーテルであることができる。離型剤は、ペルフルオロポリエーテルベンゾトリアゾールの混合物、又はペルフルオロポリエーテルホスホネート、ホスフェート、若しくはそれらの誘導体を含有することができる。離型剤は、官能基がパターンと化学結合を形成し得るように選択される。化学結合は、共有結合、イオン結合、供与結合(配位共有結合)、極性共有結合、又はバナナ共有などの強い結合となることができる。
【0081】
本発明のこの態様の方法は、第1の複製ポリマーを、離型剤と接触させて金型に加える工程と、第1の複製ポリマーを金型から分離する工程とを含む。第1の複製ポリマーは、金型の複製を形成するのに有用な任意のポリマーであることができる。複製を形成するのに有用なポリマーには、当業者に既知の熱可塑性ポリマー及び熱硬化性ポリマーが挙げられる。熱硬化性ポリマーは、室温を超える温度では軟化するか又は溶融するが、室温以下の温度では硬質であり構造を保持することができる材料を含むことができる。複製を製作するのに有用となり得るいくつかの熱可塑性ポリマーには、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド(PA)、ポリスルホン(PSU、非常にもろいポリマー)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及びポリオキシメチレン(POM、非常に柔軟で弾力性のあるポリマー)が挙げられる。
【0082】
熱硬化性ポリマーはまた、複製の形成に有用となることもできる。有用な熱硬化性ポリマーには、ポリシロキサン類(ポリジメチルジシロキサン(PDMS)など)、ポリイミド類(ポリアミン酸の硬化により作製)、及びウレタンアクリレート類が挙げられる。ナノ機構及びマイクロ構造の複製に関し、複製を形成するために使用されるポリマーは、低い粘度を有することができる。これにより、ポリマーは物品の小さな機構の中にまたその周りを流動することが可能となる。物品とポリマーとの間の空気の閉じ込めが最小となるように、ポリマーを減圧下で物品に加えることが、有用となり得る。熱硬化性の複製ポリマーを硬化させた後、又は熱可塑性の複製ポリマーを冷却し凝固させた後、第1の複製ポリマーは、金型から分離されることができる。
【0083】
本開示の複製の方法は、ポリマーを金型から分離する前に、ポリマーを凝固させる工程を更に含む。マイクロメートル及び1マイクロメートル未満の寸法範囲にある構造及び機構を複製する場合、複製ポリマーを金型に加えるとき、非常に流動性の高い系を有することが重要である。複製ポリマーが熱可塑性樹脂である場合、エネルギーが、通常は熱の形で利用されて、ポリマーを流動的にすることができる。次いで、樹脂は、その融点又は軟化点未満の温度に冷却することによって、凝固されることができる。この温度は、室温であるか、あるいは、選択されたポリマー系に応じて室温の上下の任意の温度であることができる。複製ポリマー(又はプレポリマー)が熱硬化性材料である場合、凝固は、熱硬化性材料を硬化させることを含むことができる。硬化は、少し例を挙げれば、熱、化学線、触媒、水分、又は電子ビーム照射の利用を含めた多数の方式で達成されることができる。凝固した複製ポリマーは、金型から分離されることができる。
【0084】
本開示のこの態様の方法は、第2の複製ポリマーを離型剤と接触させて金型に追加する工程と、次いで、第2の複製ポリマーを金型から分離する工程とを更に含む。離型剤は、第2の複製ポリマーを加える前に、金型に再度塗布されることはない。第2の複製ポリマーは、第1の複製ポリマーと同じ材料でできていてもよく、また異なる材料であってもよい。第2の複製ポリマーは、本願において先に記載されたようなナノ機構及びマイクロ構造を複製することが可能な熱硬化性又は熱可塑性ポリマーであることができる。第2の複製ポリマーは、金型から取り出される前に、凝固されることができる。
【0085】
離型層を1回加え、第1の複製ポリマーを1回複製した後に、金型の多数の複製を作製することが可能である。少なくとも2、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50、又は少なくとも100以上の複製ポリマーが、離型剤の再塗布なしに連続して金型と接触し、金型から分離されることができる。本開示の複製の方法は、少なくとも8の付加的な複製ポリマーを、各付加的な複製ポリマーが離型剤と接触するように金型に加える工程であって、各付加的な複製ポリマーが、次の付加的な複製ポリマーが金型に加えられる前に金型から分離され、離型層が、第1の複製ポリマーが金型に加えられる前にのみ金型に加えられる工程を含むことができる。
【0086】
本発明の目的及び利点について以下の実施例によって更に説明するが、これらの実施例において記載した特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に限定するように解釈されるべきではない。特に明記しない限り、以下の実施例で使用されるすべての材料は、市販されているものである。
【実施例】
【0087】
階層的パターンを備える金型を、同時出願され同時係属中の本出願人らの出願であり、共に2007年6月21に出願され、共に「階層的物品を作製する方法(Method of Making Hierarchical Articles)」と題された米国特許出願第11/766,561号及び同第11/766,412号(共にチャン(Zhang)ら)に従って作製した。
【0088】
Lambent PHOS−A100をイリノイ州ガーニー(Gurnee)のランベントテクノロジーズ社(Lambent Technologies)から入手した。C1633POをマサチューセッツ州チェムルスフォード(Chemlsford)のオリザラボラトリーズ社(Oryza Laboratories)から入手した。EGC−1720をミネソタ州セントポール(St. Paul)のスリーエム社(3M Company)から入手した。C17POをマサチューセッツ州ウォードヒル(Ward Hill)のアルファエイサー社(Alfa Aesar)から入手した。C(CH11POHを、米国特許第6,824,882号(ボードマン(Boardman)ら)の実施例2に記載されている通りに調製した。
【0089】
離型剤Aを、米国特許公開第2005/0048288号(フリン(Flynn)ら)の実施例2に従って作製した。
【0090】
離型剤Bを、以下の予備例4に従って合成した。
【0091】
予備例1−SiO金型の製作
以下の表Iに示す次のパラメータを使用して、プラズマ化学気相堆積法(PECVD。英国ヤットン(Yatton)のオックスフォード・インスツルメンツ社(Oxford Instruments)から入手可能なPLASMALAB System100)によって、ホウリン酸ガラス(BPSG)の4μmの層を、0.5mmのSi(100)(Siウエハは19475ペンシルバニア州スプリングシティ(Spring City)サウスメインストリート(South Main Street)500のモントコシリコンテクノロジーズ社(Montco Silicon Technologies, INC.)から入手した)上に堆積させた。
【0092】
【表1】

【0093】
次いで、150nmのアルミニウムフィルムをBPSG表面上に蒸着させた。60nmの反射防止コーティング(ブルーアーサイエンス社(Brewer Science)のARC UV−112)をAl上に堆積させ、次いで、ネガ型フォトレジスト(PR、シプリー社(Shipley)のUVN 30)をARCの上にコーティングし、干渉リソグラフィを利用してフォトレジストを暴露した。フォトレジストの現像後、ホールを持つ正方格子パターンを形成した。ホールの大きさは0.8μmであり、ピッチは1.6μmであった。
【0094】
次に、ARC層を4秒間にわたる反応性イオンエッチング(RIE)によって除去し、次いでAlをウェットエッチングによってパターニングした。最後に、SiOをRIEによってAlパターンを通じてエッチングした。反応性イオンエッチングは、英国ヤットン(Yatton)のオックスフォード・インスツルメンツ社(Oxford Instruments)から入手可能なモデルPLASMALAB System100を用いて行われ、表IIに記載された以下の条件に従って実施された。
【0095】
【表2】

【0096】
予備例2−SiO金型のネガ型複写(複製)
予備例1から製作されたSiO金型を、複製の前に離型層で前処理した。ポリイミド前駆体(ニュージャージー州パーリン(Parlin)チーズクェークロード(Cheesequake Rd)のHDマイクロシステムズ社(HD MicroSystems)のPI 5878G)を、処理した金型上にスピンコーティングでコーティングし、次いでまず12℃で30分間、次いで180℃で30分間ベーキングすることによって硬化させた。
【0097】
予備例3−複製のニッケル金型
予備例2によるPI複製を直径500cmのステンレス鋼ディスクに、ミネソタ州セントポール(St. Paul)のスリーエム社(3M)から入手可能な両面接着のSCOTCHテープを使用して付着させた。電子ビーム蒸着を利用して銀の75nmの層を堆積させることによって、金型を導電性にした。次いで、ニッケル電鋳を実施して構造を複製した。スルファミン酸ニッケル浴を、54.5℃の温度及び200A/m(18A/ft)の電流密度で用いた。ニッケル皮膜の厚さは、約500μm厚であった。電鋳が完了した後、ニッケル皮膜を金型から分離し、以下に示す実施例での更なる複製に使用した。
【0098】
予備例4−HFPOホスホン酸の調製(離型剤B)
特に明記しない限り、実施例で用いられるとき、「HFPO−」は、メチルエステルF(CF(CF)CFO)CF(CF)C(O)OCHの末端基F(CF(CF)CFO)CF(CF)−を指し、ここでaは平均して4〜20であり、このメチルエステルは、米国特許第3,250,808号(ムーア(Moore)ら)で報告されている方法に従って調製されることができる。N−(2−ブロモエチル)フタルイミド、トリエチルホスフェート、ヒドラジン、及びSi(Me)Brを、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)のシグマアルドリッチ社(Sigma-Aldrich)から入手した。
【0099】
[2−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)エチル]ホスホン酸ジエチルエステル(a)の合成
N−(2−ブロモエチル)フタルイミド(20.0g、79.05mmol)を亜リン酸トリエチル(65.6g、395.25mmol)に室温で徐々に加えた。反応混合物を12時間にわたって還流させた。揮発性の化合物を60℃の減圧下(3mm Hg)で蒸留して取り除いた。粗生成物を50%の水性エタノール中に溶解させ、沈殿した未反応のN−(2−ブロモエチル)フタルイミドを濾過した。濾過液から溶媒を除去することで、純粋なホスホネート(15.5g、63%)を得た。スペクトルデータは、文献データと一致した。
【0100】
2−アミノエチル)ホスホン酸ジエチルエステル(b)の合成
室温で無水ヒドラジン(10.24g、320mmol)をエタノール(500mL)中のフタルイミド(a)(9.98g、32mmol)の溶液に滴下状に加えた。反応混合物を室温で12時間にわたって撹拌した。沈殿したフタリルヒドラジドの固形分を濾過し、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物を、CHCl/MeOH(9:1)の勾配を用いて窒素下のシリカゲルカラム上でクロマトグラフによって分離した。溶媒を蒸発させると、2−アミノエチル)ホスホン酸ジエチルエステル(b)(4.3g、75%)が生成された。スペクトルデータは、文献データと一致した。
【0101】
HFPO−C(O)−NH−CHCH−P(O)(OCHCH(c)の合成
HFPO−C(O)−OCH(2.676g、2.2mmol)と2−アミノエチル)ホスホン酸ジエチルエステル(b)(0.3g、2.2mmol)を50mLの丸底フラスコ内で混合し、N雰囲気下で3時間にわたり60℃に加熱した。この反応をIR分光分析法で監視した。反応が完了した後、50mLのMTBEを反応混合物に加え、2規定HCl(pH=7まで)で、続いて塩水(50mL)で洗浄した。混合有機抽出物をMgSO下で乾燥させた。溶媒を減圧下で蒸発させて、HFPO−C(O)−NH−CHCH−P(O)(OCHCH(c)を澄んだ液体として一定量得た。
【0102】
HFPO−C(O)−NH−CHCH−P(O)(OH)(d)の合成(離型剤B)
ホスホン酸エステル(c)(0.65g、4.77mmol)を10mLのジエチルエーテル中に溶解させた。この溶液にN雰囲気下で、トリメチルシリルブロミド(0.2192g、14.31mmol)を一度に加えた。反応混合物を室温で24時間にわたって撹拌した。トリメチルシリルブロミド0.15gを再び追加し、更に12時間にわたって撹拌した。メタノール25mLを反応混合物に加え、減圧下で蒸発させた。この手順を3回繰り返した。残渣を水中に沈殿させ、減圧下で乾燥させた。NMRにより、エステルの80%がこの方法で脱保護された。
【0103】
比較例1〜5及び実施例1〜2
予備例3によるニッケル金型を、高出力で動作するHarrick PDC−3xGプラズマ清浄器/減菌器で5分間にわたって洗浄した。次いで、金型を、表IIIに示す種々の離型剤の0.1%の溶液中に浸漬した。次いで、金型を、表IIIに示す条件を用いてオーブン中で加熱し、室温に冷却し、表IIIに示す純粋な溶剤中でゆすぎ、次いで窒素を吹付けて乾燥させた。
【0104】
ポリイミド(ニュージャージー州パーリン(Parlin)のHDマイクロシステムズ社(HD MicroSystems)から入手可能なPI 5878G)を、処理されたニッケル金型上に毎分回転数2000でスピンコーティングによってコーティングし、次いで120℃で30分間にわたってベーキングし、続いて180℃で更に15分間にわたってベーキングした。ポリイミドを冷却した後、複製をニッケル金型から引き剥がした。
【0105】
表IIIは、ニッケル金型の処理用の種々の離型剤を要約したものである。ニッケル金型からのポリイミド複製の分離は、離型剤によって大いに影響を受けたことが判明した。例えば、エタノール中のLambent PHOS−A100は、離型剤として有効ではなかった。しかしながら、ニッケル金型が、表IIIに記載された他の離型剤で処理された場合、ポリイミド複製は容易に金型から分離された。離型層を再度加えることなくニッケル金型から作製されたポリイミド複製の個数が、表IIIに記録されている。ペルフルオロポリエーテル系の離型剤で処理された金型は、他と比べて相当に多く繰り返し剥離する余裕があった。
【0106】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン表面を備える金型と、
外表面を有する金属含有層であって、前記パターン表面上で支えられる金属含有層と、
前記金属含有層の前記外表面に結合される官能化ペルフルオロポリエーテルを含有する離型剤を備える物品。
【請求項2】
前記パターン表面が階層的パターンを備える、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記金属含有層が、ニッケル、銅、クロム、アルミニウム、銀、及びチタンから選択された金属を含有する、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記金属がニッケルを含む、請求項3に記載の物品。
【請求項5】
前記離型剤が自己組織化単分子層(SAM)を更に備える、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記離型剤がヘキサフルオロプロペンオキシド(HFPO)から誘導される、請求項5に記載の物品。
【請求項7】
前記離型剤が、ホスフェート、ホスホネート、ベンゾトリアゾール、又はそれらの誘導体を含有する、請求項6に記載の物品。
【請求項8】
前記離型剤が、式I又は式IIに従う材料を更に含有する、請求項1に記載の物品。
【化1】

(式中、
Rfは、一価又は二価のペルフルオロポリエーテル基であり、
各Xは独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アルカリ金属、アンモニウム、アルキル若しくはシクロアルキルで置換されたアンモニウム、又は、正に帯電した窒素原子を有する5員〜7員の複素環基であり、
yは1又は2に等しく、
R1は水素又はアルキルであり、
R2は、アルキレン、アリーレン、ヘテロアルキレン、又はそれらの組み合わせから選択された二価の基と、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、スルホンアミド、又はそれらの組み合わせから選択された所望による二価の基とを含み、R2は非置換であるか、あるいは、アルキル、アリール、ハロ、又はそれらの組み合わせで置換される。)
【請求項9】
複製の方法であり、
パターン表面を備える金型と、外表面を有する金属含有層であり、前記パターン表面上で支えられる金属含有層を提供する工程と、
官能化ペルフルオロポリエーテルを含有する離型剤を前記金属含有層の前記外表面に塗布する工程を含む方法。
【請求項10】
前記パターン表面が階層的パターンを備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記金属含有層が、ニッケル、銅、クロム、アルミニウム、銀、及びチタンから選択された金属を含有する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記金属がニッケルを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記離型剤が、ホスフェート、ホスホネート、ベンゾトリアゾール、又はそれらの誘導体を更に含有する、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記離型剤が、式I、式II、又はそれらの組み合わせに準じる化合物を更に含有する、請求項9に記載の物品。
【化2】

(式中、
Rfは、一価又は二価のペルフルオロポリエーテル基であり、
各Xは独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アルカリ金属、アンモニウム、アルキル若しくはシクロアルキルで置換されたアンモニウム、又は、正に帯電した窒素原子を有する5員〜7員の複素環基であり、
yは1又は2に等しく、
R1は水素又はアルキルであり、
R2は、アルキレン、アリーレン、ヘテロアルキレン、又はそれらの組み合わせから選択された二価の基と、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、スルホンアミド、又はそれらの組み合わせから選択された所望による二価の基とを含み、R2は非置換の場合と、あるいは、アルキル、アリール、ハロ、又はそれらの組み合わせで置換される。)
【請求項15】
複製の方法であり、
パターン表面を備える金型と、外表面を有する金属含有層であり前記パターン表面上で支持される金属含有層とを用意する工程と、
官能化ペルフルオロポリエーテルを含有する離型剤を前記金属含有層の前記外表面に塗布する工程と、
第1の複製ポリマーを、該第1の複製ポリマーが前記離型剤と接触するように前記金型に加える工程と、
第1の複製ポリマーを金型から分離する工程とを含む方法。
【請求項16】
前記パターン表面が階層的パターンを備える、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記離型剤が、ホスフェート、ホスホネート、ベンゾトリアゾール、又はそれらの誘導体を更に含有する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリマーを前記金型から分離すさせる前に、前記ポリマーを凝固させる工程を更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリマーを凝固させる工程が、前記ポリマーを硬化させることを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第2の複製ポリマーを、前記第1の複製ポリマーが前記離型剤と接触するように前記金型に加える工程と、
第2の複製ポリマーを前記金型から分離させる工程とを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも8の付加的な複製ポリマーを、各付加的な複製ポリマーが前記離型剤と接触するように前記金型に加える工程を更に含み、
各付加的な複製ポリマーが、次の付加的な複製ポリマーが前記金型に加えられる前に前記金型から分離して、
前記離型層が、前記第1の複製ポリマーが前記金型に加えられる前にのみ前記金型に適用される、請求項20に記載の方法。

【公表番号】特表2010−531749(P2010−531749A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513296(P2010−513296)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/064222
【国際公開番号】WO2009/002637
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】