説明

マイクロ波電力伝送システム用のレーンマーカ装置

【課題】マイクロ波電力伝送システムのエネルギ効率を向上させるレーンマーカ装置を提供する。
【解決手段】受電アンテナを介して受電したマイクロ波により電力の供給を受ける車両側装置Bと、路面側からマイクロ波を照射する送電アンテナを備えたマイクロ波電力伝送装置200とレーンマーカ装置100とを備えたインフラ側装置Aとを有し、レーンマーカ装置200は路面上であって、送電アンテナ60に対して所定の位置に設けられた発光体10と、車両及び/又は道路に関する情報を取得する情報取得手段30と、情報取得手段30により取得された情報に基づいて発光体10の動作を制御する制御手段20とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波受電装置を搭載した車両側へ電力を供給するマイクロ波電力伝送システム用の発光式レーンマーカ装置に関し、特に、電力を供給する車両の状況に基づいて発光を制御するレーンマーカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
路側設備から車両にエネルギを供給する走行支援システムとしては、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1には、路側のマイクロ波送信アンテナT30から送信されたマイクロ波について、車両側の第1のレクテナT12及び第2のレクテナT14のうち、いずれの受信マイクロ波強度が大きいかを検出し、その検出結果に基づいて車両T10の横方向の偏位を検出し、運転者に警報を発して車両の偏位を是正させる走行支援システムが記載されている(特許文献1参照)。また、電波レーンマーカシステムとしては、特許文献2に記載された、位置情報送出マーカに周波数変換(逓倍)共振方式を採用したものが記載されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1の走行支援システムは、車両の横方向の偏位が検出されてから初めて警報を発する受動的なシステムであるので、応答性が確保されない場合は、路側送信アンテナと車両側レクテナとの初期ズレ時における電力損失に対応できないという問題があった。また、特許文献2の電波レーンマーカシステムは、位置情報と道路情報を送出するために別々のマーカが必要であるとともに、それらを別々の周波数電波にて駆動させるので、構成が複雑となり、インフラ構築にかかるコストが高いという問題があった。
【特許文献1】特開2004−227336号公報
【特許文献2】特開2002−260158号公報
【発明の開示】
【0004】
本発明は、以上の課題を鑑みてなされたものであり、マイクロ波送電による送電効率を向上させることを目的とする。
本発明によれば、送電アンテナと所定の位置関係に設けられた発光体を、車両に関する情報及び/または道路に関する情報に基づいて制御するマイクロ波電力伝送システム用のレーンマーカ装置を提供することができる。
【0005】
これにより、インフラ側の送電アンテナと車両側レクテナとのずれ量を低減させて送電効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
<第1実施形態>
以下、図面に基づいて、本発明の第1実施形態に係るレーンマーカ装置100を説明する。図1はレーンマーカ装置100を含む本実施形態のマイクロ波電力伝送システム1000のブロック構成を示す。図2(A)はマイクロ波電力伝送システム1000を上面から見た図、図2(B)はこれを側面から見た図である。
【0007】
マイクロ波電力伝送システム1000は、図1及び図2に示すように、道路に敷設され、車両に電力を供給する「インフラ側装置A」と、車両300に搭載され、電力が供給される「車両側装置B」とを有する。
【0008】
「車両側装置B」は、受電アンテナ71を介して受電したマイクロ波により電力の供給を受けるマイクロ波電力受電装置300である。マイクロ波電力受電装置300は、受電アンテナ71と、入出力フィルタ72と、整流ダイオード等の整流素子73とを備えたレクテナ70を有し、受電アンテナにて受電されたマイクロ波より直接直流電力を取り出す。受電アンテナ71を含むレクテナ70は、車両の底面に路面(インフラ側の送電アンテナ)と対向するように配置されている。さらに、マイクロ波電力受電装置300は、路面側のインフラ側装置(A)から受電した電気エネルギを蓄電する蓄電器80と、この蓄電器80に蓄えた電力又はレクテナ70から直接供給された電気エネルギを駆動力に変換して車両の駆動系へ伝達する発動機90とを備える。
【0009】
「インフラ側装置A」は、車両300に向けてマイクロ波電力を送電するマイクロ波電力送電装置200と、自発光するレーンマーカ装置100とを有する。
【0010】
「マイクロ波電力送電装置200」は、図1に示すように、電源40と、電力発生器50と、送電アンテナ60とを有する。電源40はインフラ電源ライン41(図2(B)参照)を介してインフラ側装置Aに電力を供給する。電力発生器50はインフラ電源ライン41を介して供給された電気エネルギをマイクロ波に変換する。
【0011】
「レーンマーカ装置100」は、図1に示すように、発光体10と、制御手段20と情報取得手段30とを有している。以下、各構成について図1及び図2に基づいて説明する。
【0012】
「発光体10」は、LED等の発光素子であり、電源40からインフラ電源ライン41を介して供給される電気エネルギにより発光する。本実施形態の発光体10は、路面に敷設された送電アンテナ60群、つまり送電アンテナ60の敷設領域に対して所定の位置に設けられている。このように、発光体10と送電アンテナ群60とが所定の位置関係に設けられているため、発光体10と自車両との位置関係を一定に保つことができれば、路面側の送電アンテナ60と車両側のレクテナ70(受電アンテナを含む)との位置関係も一定に保つことができる。つまり、車両の乗員は、発光体10を目印として自車両の位置を調整することにより、(発光体10と所定の位置関係にある)送電アンテナと自車両に搭載されたレクテナ70とが対向するようにすることができる。このように、送電アンテナ60とレクテナ70との位置ずれを小さくさせることにより、マイクロ波電力伝送システム1000におけるマイクロ波の送受信効率を向上させることができ、エネルギ効率を向上させることができる。
【0013】
特に限定されないが、発光体10は車両が走行する車線の略中央に設けることが好ましい。具体的には、発光体10を、車両が走行する車線の中央部、即ち上方から見て車両走行時に進行方向と平行で車両幅方向に対する中央を示す仮想線が路面に対してトレースする部分に沿って設けることが好ましい。これにより、発光体10の位置と車両300の位置とを合わせやすくなり、受電アンテナとインフラ側の送電アンテナ60との相対ズレ量を、さらに低減させることができる。特に、送電アンテナ60が車線の略中央に対して(線)対称位置に配置されている場合には、受電アンテナとインフラ側の送電アンテナ60との相対ズレ量を、さらに低減させることができる。また、車線中心に設けられた発光体10を道標とすることにより、車両300の横ぶれが防止され、路面側の送電アンテナ60の敷設範囲から車両が逸脱する確率を低減させることができる。これにより、車両幅方向のロバスト性を考慮して広い範囲に送電アンテナ60を敷設する必要が無くなり、インフラ構築コストが低減される。また、車両走行範囲に限って送電アンテナが敷設されるため、乗員及び歩行者等の保護に必要なインフラ構築のコストも低減させることができる。
【0014】
また、発光体10は、車線の走行方向に沿って、所定間隔ごとに設けることが好ましい。等間隔に並んだ発光体10を道標にすることにより、発光体10と自車両との位置関係を正確に保つことができる。発光体10同士の距離は、道路のロケーションやインフラ敷設の予算等に応じて適宜設定される値であるが、概して数[m]オーダ(10[m]以下)で設定することが好ましい。
【0015】
「情報取得手段30」は、車両及び/又は道路に関する情報を取得する。本実施形態の情報取得手段30は、車両の現在位置を含む車両情報を取得する車両情報取得部31を有する。車両情報取得部31は、車両側とマイクロ波を送受信する際に車両側の情報を取得する。本例の車両情報取得部31は、車両側がGPS機能(Global Positioning System)、および自律航法を利用して検出した自車両の現在位置情報を取得する。路面に敷設された個々のレーンマーカ装置100は、相互に情報の授受が可能なように接続されており、1の情報取得手段30が取得した情報は他の情報取得手段30と共有される。
【0016】
「制御手段20」は、情報取得手段30により取得された情報に基づいて発光体10の動作を制御する。本実施形態の制御手段20は、情報取得手段30の車両情報取得部31により取得された車両の現在位置と所定の相対的位置関係にある発光体10を所定の発光態様で発光させる。基準となる所定の相対的位置関係、発光体10の発光態様のパターンは制御手段20が予め記憶しておくことが好ましい。本実施形態の制御手段20は、車両の現在位置から所定距離範囲(D<x<D+a:aは発光体10同士の間隔よりも小さい値)に位置する(相対的位置関係にある)発光体を発光させる。距離Dは、車両の状況及び道路の状況に応じて適宜設定することが好ましいが、概して数[m]〜50[m]の範囲で設定されることが好ましい。
【0017】
本実施形態のマイクロ波電力伝送システム1000を図2(A)及び(B)に示した。
インフラ側の送電アンテナ60は、図2(A)に示すように、路面に規則的に敷設された複数の送電アンテナ61からなる送電アンテナ群である。複数の送電アンテナ61は車線の略中央αに対して対称となるように敷設されている。また、図2(B)に示すように、路面に敷設された送電アンテナ60は、この路面を走行する車両300の底面側に設けられたレクテナ70と対向し、レクテナ70の受電アンテナ71へ向けてマイクロ波を送電する。
【0018】
図2(A)及び(B)に示すように、本実施形態の発光体10a,10b,10cは、面状に敷設された送電アンテナ群60の略中央(車線の走行方向に沿うα上)に所定間隔dごとに設けられている。発光体10a,10b,10cには、これらをそれぞれ制御する制御手段20a,20b,20c及び情報取得手段30a,30b,30dが併設されている。制御手段20a,20b,20c及び情報取得手段30a,30b,30dは相互に情報を共有できるように接続されている。本実施形態の制御手段20は車両の現在位置Pから距離Dだけ離れた位置から走行方向側に向かって一番近くにある発光体10を発光させるので、図2(B)に示すように、制御手段20は発光体10aを発光させる。
【0019】
本実施形態の動作手順を図3のフローチャートに基づいて説明する。まず、情報取得手段30の車両情報取得部32が車両の現在位置を取得する(S100)。制御手段20は、予め記憶した、車両の現在位置を基準とした所定の相対的位置関係を読み出す(S101)。制御手段20は、車両の現在位置に対して所定の相対的位置関係にある発光体10を特定する(S102)。本実施形態では、現在位置から車両の進行方向に所定距離範囲内(D<x<D+a)に所在する発光体10を制御対象として特定する。制御手段20は特定した発光体10の発光態様を設定する(S103)。設定した発光態様で、特定された発光体10を発光させる(S104)。電源オフの入力がされるまでS100からS104を繰り返す(S105)。
【0020】
本実施形態によれば、路上に設けられた送電アンテナに対して所定の位置に発光体が設けられているため、乗員は車両の位置等の車両に関する情報に基づいて発光させられた発光体を道標として車両を運転することにより、車両側のレクテナ70の受電アンテナとインフラ側の送電アンテナ60との位置を対向させることができ、これらの相対ズレ量を低減させることができる。これにより、インフラ側の送電アンテナ60からマイクロ波を媒体として送電される電力を、最大効率にて車両側レクテナ70の受電アンテナ71に受電させることができる。特に、本実施形態では、自車両の現在位置と所定の位置関係にある(例えば所定距離だけ離隔している)発光体10を発光させ、乗員がこれを道標として運転することにより、車両側のレクテナ70の受電アンテナ71とインフラ側の送電アンテナ60との相対ズレ量をさらに低減させることができる。
【0021】
<第2実施形態>
第2実施形態は、制御手段20が基準設定部21を有する点を特徴とする。基準設定部21は、車両及び/又は道路に関する情報に基づいて、車両の現在位置と発光させる発光体10との所定の相対的位置関係と、発光体10の発光態様を設定する。つまり、基準設定部21は、取得した車両及び/又は道路の状況に応じて、どの発光体10を、どのように発光させるかの基準を設定する。本実施形態のレーンマーカ装置200の基本的構成及び動作は第1実施形態のレーンマーカ装置100と共通するので、ここでは異なる点を中心に説明する。
【0022】
本実施形態の情報取得手段30は、車両の現在位置、車両の車速、車両の右左折情報を含む車両情報を取得する車両情報取得部31と、路線の渋滞情報、交通規制情報を含む交通情報を取得する交通情報取得部32と、車両の車格を含む車格情報を取得する車格情報取得部33と、道路の形状情報、制限速度情報を含む道路情報を取得する道路情報取得部34のいずれか1以上を有する。マイクロ波電力伝送システム1000のいずれかの情報取得手段30が取得した情報は、他の情報取得手段30と共有することができる。
【0023】
車両情報取得部31は、マイクロ波の送受信を行う際に、車両側において取得された現在位置情報、車速情報、右左折情報(ウィンカー操作情報)を取得する。交通情報取得部33は、マイクロ波の送受信を行う際に、車両側においてVICS等を介して取得された渋滞情報、交通規制情報を取得する。車格情報取得部33は、マイクロ波の送受信を行う際に、車両側のレクテナの面積を検出し、検出された面積に基づいて車両の大きさ(車格)を判断する。レクテナの面積は車両の大きさに通常比例するからである。なお、マイクロ波の送受信を行う際に、車両側から車格を示す情報を取得してもよい。道路情報取得部34は、道路レーンマーカ装置200が配置された場所に関する道路形状に関する情報又は制限速度情報を取得する。この情報は、道路の位置情報と予め対応付けられ、読み込み可能な記憶媒体に記憶されたものを読み込んで取得する。
【0024】
本実施形態の動作手順を図5に示した。まず、情報取得手段30は、上述した情報のうち予め決定した情報を取得する(S201)。制御手段20の基準設定部21は、取得した情報に基づいて「車両現在位置との所定の相対的位置関係」を設定する(S202)。制御手段20は、この相対的位置関係にある発光体10を特定する(S203)。さらに、制御手段20の基準設定部21は、発光体10の発光態様を設定する(S204)。制御手段20は、S203で特定された発光体10を、S204で設定された発光態様で発光させる(S205)。電源オフの入力があるまでS201からS205を繰り返す(S206)。
【0025】
具体的な制御例を図6及び図7に基づいて説明する。
第1の制御例は、制御手段20が道路のカーブ等の道路情報、及び車速等の車両情報に基づいて「現在位置との所定の相対的位置関係」と「発光態様」を設定する例である。
【0026】
図6に示した道路500は、ブラインドカーブで片側が1車線程度の道幅を有している道路である。図6に示すように、道路500の内側車線を走行する車両310がカーブのコーナに接近し、外側車線を走行する車両320も対向方向からコーナに接近している。内側車線を走行する車両310は比較的低めの車両速度でブラインドコーナ500に進入し、外側車線を走行する車両320は比較的高めの車両速度でブラインドコーナ500に進入している。
【0027】
この状況における制御手法の一例を説明する。制御手段20は、車両情報取得部31を介して車両310の現在位置を取得するとともに、予め記憶されている道路情報を読み込んで「現在位置との所定の相対的位置関係」に対応する距離310Dを読み出し、車両310から距離310Dだけ離隔した位置にある発光体10a1を特定する。なお、車両310の車速は予め設定された閾値よりも低いため、車速に基づく制御処理は行われない。制御手段20は発光体10a1の発光態様をデフォルトの発光態様(周期t0でT0秒発光)に設定する。
【0028】
さらに、基準設定部21は、道路情報取得部34を介して道路500の形状がブラインドコーナの内側であるとの情報を取得するとともに、「道路形状情報」と「車両からの距離D」とを予め対応づけた対応データを参照し、道路形状がブラインドコーナの内側である場合の距離310D+d,310D+2dを求め、この2つの値を「現在位置との所定の相対的位置関係」として設定する。制御手段20は、基準設定部21による設定された距離310D+dにある発光体10a2と、距離310D+2dにある発光体10a3を、制御対象の発光体10として特定する。
【0029】
次に、基準設定部21は、「道路500がブラインドカーブである」旨の道路形状情報に基づいて、「道路形状情報」と「発光態様」とが対応付けられた対応データを参照し、道路形状がブラインドコーナの内側である場合の発光態様を設定する。基準設定部21は、「周期t1の点滅をT秒間発光」を発光態様として設定する。制御手段20は、基準設定部21が設定した発光体10a1,10a2,10a3を周期t1でT秒間点滅(発光)させる。このように、道路形状に応じて発光体10の発光を制御することにより、車両310は道路の曲率を確認しながらブラインドコーナ500にアプローチすることが可能となる。また、対向車線を走行する車両320は、発光体10a1〜10a3の発光により、車両310の接近を認識することができる。
【0030】
車両320が走行する外側車線における発光体10の制御手法を説明する。車両情報取得手段31は、車両320の車速を取得する。制御手段20の基準設定部21は、取得した車速が所定値よりも高いか否かを判断する。取得した車速が所定値よりも高い場合、基準設定部21は、車速に応じた「車両からの距離D」を設定する。本例において基準設定部21は、「車速」と「車両からの距離D」とを予め対応づけた対応データを参照し、取得した車速に対応する距離320Dを求め、この値を「現在位置との所定の相対的位置関係」として設定する。制御手段20は、車両320から距離320Dだけ離隔した位置にある発光体10b1を制御対象となる発光体10として特定する。ここで車両320は車両310よりも高い車両速度でブラインドコーナ20に接近しているので、基準設定部21は内側車線を走行する車両310の設定距離310Dよりも長い距離を、320Dとして設定する(即ち、320D>310D)。また、基準設定部21は発光体10b1の発光態様をデフォルトの発光態様(周期t0でT0秒発光)に設定する。
【0031】
さらに、基準設定部21は、道路情報取得部34を介して道路500の形状がブラインドコーナの外側であるとの情報を取得するとともに、「道路形状情報」と「車両からの距離D」とを予め対応づけた対応データを参照し、道路形状がブラインドコーナの外側である場合の相対的位置関係に対応する距離320D+d,320D+2d,320+3dを求め、この3つの値を「現在位置との所定の相対的位置関係」として設定する。制御手段20は、基準設定部21が設定した距離320D+dにある発光体10b2と、距離320D+2dにある発光体10b3と、距離320D+3dにある発光体10b4を制御対象の発光体として特定する。基準設定部21は、「道路500がブラインドカーブである」旨の道路形状情報に基づいて、「道路形状情報」と「発光態様」とが対応付けられた対応データを参照し、道路形状がブラインドコーナの外側である場合の発光態様を設定する。基準設定部21は、「周期t2の点滅をT秒間発光」を発光態様として設定する。制御手段20は、発光体10b1を周期t0でT0秒間発光させるとともに、発光体10b2,10b3,10b4を周期t2でT秒間発光させる。
【0032】
このように、道路形状に応じて発光体10の発光を制御することにより、車両320は道路の曲率を確認しながらブラインドコーナ500にアプローチすることが可能となる。また、対向車線を走行する車両310は、発光体10a1〜10a3の発光により、車両320の接近を認識することができる。また、車両の乗員は発光している発光体10の発光態様から対向車両の有無、速度等を推測することができる。
【0033】
次に第2の制御例を図7に基づいて説明する。図7に示す道路600は交差点である(交通信号は省略した)。大型車両330は片側2車線の優先道路610側から交差点に接近し、交差点を左折するため優先道路610の左車線を走行している。車両340は非優先道路620側から交差点に接近し、信号待ちをしている。
【0034】
この状態において、制御手段20は、車両情報取得部31を介して車両330の現在位置を取得するとともに、予め記憶されている道路情報を読み込んで「現在位置との所定の相対的位置関係」に対応する距離330Dを読み出し、車両330から距離330Dだけ離隔した位置にある発光体10c1を制御対称の発光体10として特定する。制御手段20は発光体10c1の発光態様をデフォルトの発光態様(周期t0でT0秒発光)に設定する。
【0035】
基準設定部21は、道路情報取得部34を介して道路600の形状が交差点であるとの情報を取得するとともに、車両情報取得部31を介して車両330が左折しようとしている情報を取得する。本例では車両のウインカ操作情報を車両の右左折情報として利用する。「交差点における左折情報」と「車両との相対的位置関係」とを予め対応づけた対応データを参照し、交差点を左折する場合の相対的位置として、走行方向と交差点との交点、及び走行方向から左f°(本例では10°)方向と交差点との交点を求め、この2つの位置を「現在位置との所定の相対的位置関係」として設定する。制御手段20は、基準設定部21が設定した相対的位置関係にある発光体10c2と、発光体10c3を制御対象の発光体10として特定する。
【0036】
次に、基準設定部21は、車格情報取得部34を介して取得した車両の車格に基づいて、発光体10の発光態様のみを設定する。車格情報に基づいて相対的位置関係の設定は行わない。基準設定部21は、「車格情報」と「発光態様」とが対応付けられた対応データを参照する。本例では車両330は大型車両であるので、基準設定部21は車両が大型車両である場合の「赤色で、周期t2でT3秒間発光」を発光態様として設定する。制御手段20は、基準設定部21が設定した発光体10c1,10c2,10c3を赤色、周期t2、T3秒間発光させる。
【0037】
なお、基準制御部21は、取得した情報に優先順位を付し、優先順位の高い情報に基づいて導かれた「車両との相対的位置関係」、「発光態様」を選択する機能を備えてもよい。たとえば、大型車両に対応する車格情報を取得した場合は、右左折情報等に基づいて設定された発光態様に代えて、車格情報に基づいて設定した発光態様で発光体10を発光させることができる。
次に、車両340の走行車線における発光体10の制御手法を説明する。基準設定部21は、道路情報取得部34を介して道路600の形状が交差点であるとの情報を取得するとともに、車両情報取得部31を介して車両340が直進しようとしている情報を取得する。交差点における車両のウインカ操作情報(入力の有無情報を含む)を車両の右左折情報として利用する。「交差点である旨の道路情報」と「車両との相対的位置関係」とを予め対応づけた対応データを参照し、交差点を直進する場合の所定の相対的位置として、走行方向と交差点との2交点を求め、この2つの位置を「現在位置との所定の相対的位置関係」として設定する。制御手段20は、基準設定部21が設定した相対的位置関係にある発光体10d1と、発光体10d2を特定する。
【0038】
この処理に先立ち、制御手段20は、車両情報取得部31を介して車両340の現在位置を取得するとともに、予め記憶されている道路情報を読み込んで「現在位置との所定の相対的位置関係」に対応する距離340Dを読み出し、車両340から距離340Dだけ離隔した位置にある発光体を特定する処理を行ってもよい。ただし、道路情報(交差点である旨の情報)に基づいて特定した発光体の位置が車両の現在位置に基づいて特定した発光体よりも、車両に近接している場合は、道路情報に基づいて特定した発光体を優先的に発光させる。
【0039】
続いて、基準設定部21は、車格情報取得部34を介して車両340の車格を取得する。車両340は普通車両であるので、基準設定部21は車両が普通車両である場合の「緑色で、周期t3でT2秒間発光」を発光態様として設定する。制御手段20は、基準設定部21が設定した発光体10d1,10d2を緑色、周期t3で、T2秒間発光させる。本例では、発光態様として発光色を変化させる例を示したが、発光態様としては点灯及び消灯、発光体の点灯数、発光体の発光色、発光体の発光輝度、発光体の点滅態様を変化させてもよい。車両の情報及び/又は道路の情報に応じて発光態様を変化させることにより、車両の乗員は発光体10の発光態様の相違によって、他車両の状況または道路の状況を認識することができる。
【0040】
このように、車格に応じて発光体10の発光を制御することにより、車両330は交差点の形状を確認しながら交差600にアプローチすることが可能となる。また、交差点で信号待ちをしている車両340は、発光体10c1〜10c3の発光により車両330の接近を認識することができる。車両340側は、車両330の接近及び左折を事前に知ることができるため、大型車両330の左折時の妨げにならないように右折待機時であっても車両を車線左寄りに停車させ、又は車両を車両停止線から離隔させて停車させるなどのフィードフォワード的な車両操作をすることができる。この結果、渋滞防止、交通秩序維持を図ることができる。
【0041】
また、大型車両330は交差点30を左折するにしても左折先に車両が信号待ちしていることを確認することが出来るので、例えばあまり外側に膨らまない様に内輪側を注意しながら左折する等、フィードフォワード的な対応行動をとることが可能となり、結果として渋滞防止、交通秩序維持を図ることができる。
【0042】
ここでは、車速情報、道路形状情報(カーブ、交差点)、車格に基づいて所定の相対的位置関係と発光態様を設定する例を用いて制御手段20の制御動作を説明したが、道路の制限速度情報、渋滞情報、交通規制情報等を用いて、所定の相対的位置関係及び発光態様を設定してもよい。基準設定部21は、各情報に基づいて、各情報と相対的位置関係を対応付けた対応情報、各情報と発光態様とを対応づけた対応情報を参照して、相対的位置関係及び/又は発光態様を設定する。なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】第1実施形態のレーンマーカシステムのブロック構成図である。
【図2】(A)は第1実形態のレーンマーカシステムの平面概要図、(B)は本実施形態のレーンマーカシステムの側面概要図である。
【図3】第1実施形態に係るレーンマーカシステムの制御手順を示す図である。
【図4】第2実施形態のレーンマーカシステムのブロック構成図である。
【図5】第2実施形態に係るレーンマーカシステムの制御手順を示す図である。
【図6】第2実施形態のレーンマーカシステムの制御手順と説明するための第1の図である。
【図7】第2実施形態のレーンマーカシステムの制御手順と説明するための第2の図である。
【符号の説明】
【0044】
1000…レーンマーカシステム
A…インフラ側装置
100…レーンマーカ装置
10…発光体
20…制御手段
30…情報取得手段
31…車両情報取得
32…交通情報取得部
33…車格情報取得部
34…道路情報取得部
200…マイクロ波電力送電装置
40…電源
50…電力発生器
60…送電アンテナ
B…車両側装置
300…マイクロ波電力受電装置
70…レクテナ
80…蓄電器
90…発電機



【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電アンテナを介して受電したマイクロ波により電力の供給を受ける車両に向けて、路面側からマイクロ波を照射する送電アンテナを備えたマイクロ波電力伝送システム用のレーンマーカ装置であって、
前記路面上であって、前記送電アンテナに対して所定の位置に設けられた発光体と、
前記車両及び/又は道路に関する情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段により取得された情報に基づいて前記発光体の動作を制御する制御手段と、を有するレーンマーカ装置。
【請求項2】
前記発光体を、前記車両が走行する車線の略中央に設けた請求項1に記載のレーンマーカ装置。
【請求項3】
前記発光体を、前記車線の走行方向に沿って、所定間隔ごとに設けた請求項2に記載のレーンマーカ装置。
【請求項4】
前記送電アンテナは、前記車線の略中央に対して対称となるように配置された請求項2又は3に記載のレーンマーカ装置。
【請求項5】
前記情報取得手段は、車両の現在位置を取得し、
前記制御手段は、前記取得された車両の現在位置と所定の相対的位置関係にある前記発光体を所定の発光態様で発光させる請求項1〜4のいずれかに記載のレーンマーカ装置。
【請求項6】
前記情報取得手段は、前記発光体が設けられた位置の道路情報を取得し、
前記制御手段は、前記取得された道路情報に基づいて、前記所定の相対的位置関係及び/又は前記所定の発光態様を設定する基準設定部を有する請求項5に記載のレーンマーカ装置。
【請求項7】
前記情報取得手段は、前記車両の車両情報を取得し、
前記制御手段は、前記取得された車両の車両情報に基づいて、前記所定の相対的位置関係及び/又は前記所定の発光態様を設定する基準設定部を有する請求項5に記載のレーンマーカ装置。
【請求項8】
前記情報取得手段は、前記車両が走行する走行路の交通情報を取得し、
前記制御手段は、前記取得された走行路の交通情報に基づいて、前記所定の相対的位置関係及び/又は前記所定の発光態様を設定する基準設定部を有する請求項5に記載のレーンマーカ装置。
【請求項9】
前記情報取得手段は、前記車両の車格情報を取得し、
前記制御手段は、前記取得された車両の車格に基づいて、前記所定の相対的位置関係及び/又は前記所定の発光態様を設定する基準設定部を有する請求項5に記載のレーンマーカ装置。
【請求項10】
前記発光体の発光態様は、発光体の点灯及び消灯、発光体の点灯数、発光体の発光色、発光体の発光輝度、発光体の点滅態様のいずれかである請求項6〜9のいずれかに記載のレーンマーカ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−171967(P2006−171967A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−361335(P2004−361335)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】