説明

マスクブランクの製造方法および転写用マスクの製造方法

【課題】薄膜自体に膜応力がある場合においても、マスクブランクの平坦度が所望の平坦度となり、マスクのパターン位置精度や、パターン転写の際、パターン位置ずれやパターン欠陥が発生することがないマスクブランクの製造方法および転写用マスクの製造方法を提供する。
【解決手段】電子デバイス用基板の主表面上に薄膜を形成してマスクブランクを製造するマスクブランクの製造方法であって、
前記薄膜を形成する側の主表面の表面形状が凸形状である基板に対し、クロムを主成分とする材料からなり、引張応力を有する前記薄膜をスパッタリング法で形成することにより、前記薄膜の成膜前よりも主表面の平坦度が高いマスクブランクを得ることを特徴とするマスクブランクの製造方法および転写用マスクの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクブランクの製造方法および転写用マスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体集積回路装置を製造する際に、配線その他の領域の形成プロセスにおい て、フォトリソグラフィー技術が適用されている。このフォトリソグラフィー工程において、露光用原版として使用されるフォトマスクは、基板上にパターニングされた遮光性薄膜が形成されており、遮光性薄膜パターンが露光装置を介して半導体ウエハー上に転写され、半導体集積回路装置が製造される。半導体ウエハー上に転写されるパターン特性は、フォトマスクの平坦性に起因するため、フォトマスクで使用する基板の高い平坦性が要求されている。現在、フォトマスクで使用する基板の平坦度(基板表面の最大値と最小値の差、具体的に は、測定面から最小自乗法で算出される仮想絶対平面に対する測定面の最大値と最小値の差をいう。)は、研磨パッドの改良、研磨砥粒の改良や研磨条件の制御によって、1μm程度といった高い平坦度が得られるようになってきている。
【0003】
しかし、従来のように、いくら基板で高い平坦度が得られたとしても、透明基板上に形成する薄膜自体に膜応力があるため、その薄膜によってフォトマスクブランク全体の平坦度が悪化してしまう。フォトマスクブランクの平坦度が悪化すると、薄膜をパターニングしてフォトマスクを作製した場合のパターン位置精度が悪化する。従って、半導体ウエハーにパターン転写した場合、パターン位置ずれやパターン欠陥が発生するという問題があった。
【0004】
そこで、成膜条件や膜材料などの変更によって、基板上に形成する薄膜の膜応力を低減する試みはされているが、近年の半導体集積回路の高密度、高精度化においては、薄膜の膜応力も無視できない現状にある。特に所望の光学的特性を得るために基板上に形成する薄膜は多層化する傾向にあり、薄膜の膜応力を制御は困難な状況にある。
【0005】
また、電子デバイス用基板は、基板ごとに平坦度が異なっており、基板表面が凸状のものや凹状のものが存在する。
【0006】
このように、形状が異なる電子デバイス用基板を用いて作製したフォトマスクブランクやフォトマスクは平坦度が悪化し、薄膜をパターニングしてフォトマスクを作製した場合のパターン位置精度が悪化する。従って、半導体ウエハーにパターン転写した場合、パターン位置ずれやパターン欠陥が発生するという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述のように薄膜自体に膜応力がある場合においても、マスクブランクの平坦度が所望の平坦度となり、また、マスクの平坦度が所望の平坦度となり、マスクのパターン位置精度や、パターン転写の際、パターン位置ずれやパターン欠陥が発生することがないマスクブランクの製造方法および転写マスクの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本発明では次のような手段を用いる。ここにおいて、手段(数字)はそれぞれの請求項に対応している。
(1)電子デバイス用基板の主表面上に薄膜を形成してマスクブランクを製造するマスクブランクの製造方法であって、
前記薄膜を形成する側の主表面の表面形状が凸形状である基板に対し、クロムを主成分とする材料からなり、引張応力を有する前記薄膜をスパッタリング法で形成することにより、前記薄膜の成膜前よりも主表面の平坦度が高いマスクブランクを得ることを特徴とするマスクブランクの製造方法。
(2)電子デバイス用基板の主表面上に薄膜を形成してマスクブランクを製造するマスクブランクの製造方法であって、
前記薄膜を形成する側の主表面の表面形状が凹形状である基板に対し、主成分としてケイ素を含有し、さらに酸素および窒素のうち少なくとも一以上の成分を含有する材料からなり、圧縮応力を有する前記薄膜をスパッタリング法で形成することにより、前記薄膜の成膜前よりも主表面の平坦度が高いマスクブランクを得ることを特徴とするマスクブランクの製造方法。
(3)前記電子デバイス用基板は、マスクブランクの平坦度が所望の平坦度となるように前記薄膜の膜応力に起因した前記基板の平坦度変化量を見込んだ主表面の平坦度とすることを特徴とする(1)または(2)に記載のマスクブランクの製造方法。
(4)電子デバイス用基板の平坦度を測定した後、前記基板の平坦度が前記の所望の平坦度となるように、前記基板の主表面の形状が該基板表面において任意に設定した基準面に対して相対的に凸状になっている領域に局所的にエッチングおよび/または圧力を加えて研磨することにより前記基板の平坦度を調整することを特徴とする(3)に記載のマスクブランクの製造方法。
(5)前記基板の平坦度の調整は、回転自在な研磨定盤と、該研磨定盤上に設けられた研磨パッドと、該研磨パッドの表面に研磨剤を供給する研磨剤供給手段と、前記研磨パッド上に基板を保持する基板保持手段と、前記研磨パッドに前記基板保持手段によって保持された基板を加圧することにより基板主表面を研磨する基板加圧手段とを備え、
前記加圧手段には、基板主表面の分割された複数領域に対して、任意に独立して加圧できるように複数の加圧体が設けられ、
該加圧体には個々に圧力制御可能な圧力制御手段が設けられた研磨装置を用いて行われるものであり、
該基板主表面の形状が基板主表面において任意に設定した基準面に対して相対的に凸状になっている領域において、該凸状になっている領域に対向する基板の裏面側より押圧し、他の領域よりも前記圧力制御手段によって前記加圧体の基板に対する圧力を大にして、基板主表面を研磨することによって行われることを特徴とする(4)に記載のマスクブランクの製造方法。
(6)前記基板の平坦度の調整は、該基板主表面の形状が基板表面において任意に設定した基準面に対して相対的に凸状になっている領域に、基板を侵食するエッチング溶液を供給する局所的なエッチングをすることによって行われることを特徴とする(4)に記載のマスクブランクの製造方法。
(7)前記マスクブランクの所望の平坦度は、1μm以下であることを特徴とする(3)から(6)のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法。
(8)前記電子デバイス用基板は、ガラス基板であることを特徴とする(1)から(7)のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法。
(9)前記薄膜は、露光光を遮光する遮光膜、露光光に対し位相差変化をもたらす位相シフト膜、露光光を吸収する光吸収膜、および露光光を反射する機能を有する反射膜のうちの少なくともいずれかを含むことを特徴とする(1)から(8)のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法。
(10)(1)から(9)のいずれかに記載の製造方法により製造したマスクブランクの薄膜をパターニングして薄膜パターンを形成することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、薄膜自体に膜応力がある場合においても、マスクブランクの平坦度が所望の平坦度となり、マスクのパターン位置精度や、パターン転写の際、パターン位置ずれやパターン欠陥が発生することがないマスクブランクの製造方法および転写マスクの製造方法を提供することができるなど、産業上有用な著しい効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態を示す図である。
【図2】本発明に用いる研磨機の構造を示す平面図である。
【図3】本発明に用いる研磨機の構造を示す断面図である。
【図4】本発明に用いる凸状基板の平坦度調整方法の実施形態を示す図である。
【図5】本発明に用いる凹状基板の平坦度調整方法の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態について以下に説明する。
(a)電子デバイス用基板の平坦度決定方法であって、前記基板の主表面上に形成する露光光に対して光学的変化をもたらす薄膜の膜応力に起因した前記基板の平坦度変化量を見込んで、マスクブランクの平坦度が所望の平坦度となるように、前記基板の平坦度を決定することを特徴とする電子デバイス用基板の平坦度決定方法。
(b)電子デバイス用基板の平坦度決定方法であって、前記基板の主表面上に形成する露光光に対して光学的変化をもたらす薄膜の膜応力に起因した前記基板の平坦度変化量、および、前記薄膜をパターニングして得られた薄膜パターン占有率、薄膜パターンの位置、薄膜パターンの形状のうち少なくとも何れか一つによる平坦度変化量を見込んで、転写用マスクの平坦度が所望の平坦度となるように、前記基板の平坦度を決定することを特徴とする電子デバイス用基板の平坦度決定方法。
【0012】
本発明における平坦度は、基板主表面の表面側に任意に設けた基準面から主表面面内における表面形状の最大高さと最小高さの差(測定面から最小自乗法で算出される仮想絶対平面(焦平面)に対する測定面の最大値と最小値の差)をいう。また、平坦度の測定領域は、適宜選定することができるが、主表面全体を平坦度測定領域とすることが望ましい。
【0013】
「薄膜の膜応力に起因した平坦度変化量」とは、基板の平坦度を基準平坦度とした場合に、基板上に薄膜を形成することによって得られるマスクブランクの平坦度との差(マスクブランクの平坦度−基板の平坦度)をいう。
ここで、「薄膜の膜応力に起因した平坦度変化量」の算出方法について具体的に説明する。
【0014】
図1(1)は、基板自体の平坦度を測定し平坦度が0μmの基板上に、薄膜を形成してマスクブランクを作製し、マスクブランクの平坦度を測定したときに、マスクブランクの平坦度が1.1μm(凸形状)の場合、薄膜の膜応力に起因した平坦度変化量は1.1μmとなる。
【0015】
図1(2)は、基板自体の平坦度を測定し平坦度が0μmの基板上に、薄膜を形成してマスクブランクを作製し、マスクブランクの平坦度を測定したときに、マスクブランクの平坦度が1.1μm(凹形状)の場合、薄膜の膜応力に起因した平坦度変化量は1.1μmとなる。
但し、基板自体の平坦度が0μmということは現実的に不可能であり、実際は
図1(3)のようになる。基板自体の平坦度を測定し平坦度が0.5μm(凸形状)の(基板上に、薄膜を形成してマスクブランクを作製し、マスクブランクの平坦度を測定したときに、マスクブランクの平坦度が1.6μm(凸形状)の場合、1.6−0.5=1.1μmが薄膜の膜応力に起因した平坦度変化量となる。
【0016】
一般に基板上に形成した薄膜が圧縮応力を有する場合、平坦度の変化は正(+)になり、引張応力を有する場合、平坦度の変化は負(−)となる。従って、薄膜の材料、膜厚、成膜条件等によって圧縮応力、引張応力の大きさが異なってくるので、予め既知の平坦度を有する基板上に、マスクブランクを製造するのと同じ成膜条件にて薄膜を成膜し、薄膜の膜応力に起因した平坦度変化量を求め、理想的にはマスクブランクを作製したときに平坦度が0μmとなるように基板の平坦度を決定しておくことによって、高い平坦度を有するマスクブランクを得ることができる。
【0017】
ここで、マスクブランクの所望の平坦度は、必ずしも0μmとなるようにしなくても構わない。例えば、マスクブランクにおける薄膜をパターニングして転写用マスクにしたときの、マスク(薄膜)パターンの開口(または占有率)、薄膜パターンの位置、薄膜パターンの形状のうち少なくとも何れか一つによる応力変化によって起こる平坦度変化量を見込んで、基板の平坦度を決定しても良い。
【0018】
マスクパターンの占有率が高い(マスクパターンの開口が少ない)場合、マスクブランクの平坦度を基準にした場合、応力変化はあまり起こらず、平坦度変化量は小さい。マスクパターンの占有率が小さい場合、応力変化が大きく、平坦度変化量は大きい。
【0019】
また、薄膜パターンの形成位置や、薄膜パターンの形状によっても、マスクブランクの平坦度を基準にした場合、応力変化が起こると考えられる。
よって、これら、転写用マスクのマスクパターンの占有率、マスクパターンの位置、マスクパターンの形状のうち少なくとも何れか一つによる平坦度変化量を見込んで、転写用マスクの平坦度が所望の平坦度となるように基板の平坦度を決定することができる。さらには、転写用マスクにして露光機のステッパーに装着したときに変化する平坦度変化量を見込んで、マスクブランクの所望の平坦度を決定し、基板の平坦度を決定しても良い。
なお、マスクブランクの平坦度は1μm以下とすることが好ましい。
前記平坦度はマスクブランク主表面全面を測定領域としたときの平坦度とすることが好ましい。
【0020】
マスクブランクの平坦度を1μm以下に抑えることによって、薄膜をパターニングして転写用マスクにしたときの基準パターン位置からのパターン位置ずれが小さくなり、パターン位置精度が良好になるので好ましい。上記マスクブランクの平坦度は0.5μm以下、さらに好ましくは0.25μm以下が望ましい。尚、平坦度が1μm以下とは、0<平坦度≦1μmを言う。以下、同じ。
また、基板の平坦度は、1μm以下であることが好ましい。
前記平坦度は基板主表面全面を測定領域としたときの平坦度とすることが好ましい。
【0021】
基板の平坦度を1μm以下に抑えることによって、基板上に薄膜を形成したときに得られるマスクブランクの平坦度のばらつきを抑え、さらに薄膜をパターニングしてマスクにしたときのパターン位置精度がさらに良好になるので好ましい。これは、基板の平坦度と、薄膜に起因する平坦度変化量が小さい方が、絶対精度を作り込む上でのコントロールは容易であり、また、転写用マスクにしたときの膜応力変化によるパターン位置ずれが小さくなるからである。
本発明でいうマスクブランクには、透過型マスクブランク、反射型マスクブランクの何れも含まれる。
【0022】
本発明でいう、前記薄膜は、露光光に対して光学的変化をもたらす薄膜をいい、露光光を遮光する機能を有する薄膜や、露光光に対し位相差変化をもたらす薄膜、露光光を吸収する機能を有する薄膜などを言う。従って、本発明におけるマスクブランクとは、広義の意味であって、薄膜として露光光を遮光する機能を有する遮光性薄膜のみが形成されたフォトマスクブランクや、薄膜として露光光に対し位相差変化をもたらす位相シフト機能を有する位相シフト薄膜が形成された位相シフトマスクブランク、薄膜として露光光を反射する機能を有する反射膜、露光光を吸収する光吸収膜を有する反射型マスクブランクを含むものである。また、本発明のマスクブランクは、上記薄膜をパターニングするときにマスクとして機能を果たすレジスト膜を形成しても構わない。
【0023】
また、基板の平坦度を調整する方法は特に限定されない。基板の研磨方法、研磨条件を適宜選定することによって平坦度を調整(制御)することもできるし、研磨して得られた基板の主表面をエッチング等によって局所的に平坦度を修正して基板の平坦度を調整することもできる。
基板の研磨方法は、1枚1枚基板の主表面を研磨する枚葉式研磨方法や、一度に複数枚の基板の主表面を研磨するバッチ式研磨方法などが挙げられる。
枚葉式研磨方法は、基板1枚に対しての面圧力等の研磨条件を制御しながら研磨加工できるので平坦度を調整するのに適している。
【0024】
また、バッチ式研磨方法は、研磨装置における太陽歯車と内歯歯車の間にセットされたキャリアと呼ばれるワーク保持板に複数の基板をセットし、太陽歯車の回りをキャリアが自転しながら公転して研磨するものであって、平坦度の調整は、キャリアの自転回転数、公転回転数、研磨機の定盤精度や定盤に貼りつけられている研磨布、研磨砥粒などを変化させることによって平坦度を調整することができる。
【0025】
また、エッチング等によって局所的に平坦度を修正する方法としては、例えば、基板材料がマスクブランク用基板として一般的に使用されている石英ガラスの場合、酸素ガスとフッ化炭素系ガスの混合ガスによるドライエッチングによって平坦度が悪い領域を除去して平坦度を調整することもできる。
好ましい平坦度の調整方法(電子デバイス用基板の製造方法)としては、平坦度を厳密に制御できるという点から以下の構成が良い。
(c)電子デバイス用基板の平坦度を測定した後、前記基板の平坦度が、(a)または(b)に記載の平坦度決定方法により決定した所望の平坦度となるように、前記基板の主表面の形状が該基板表面において任意に設定した基準面に対して相対的に凸状になっている領域に局所的にエッチングおよび/または圧力を加えて研磨することにより前記基板の平坦度を調整することを特徴とする電子デバイス用基板の製造方法。
【0026】
エッチングとしては、上述のように、フッ化炭素系のガスとするドライエッチングガスを平坦度が悪い領域に供給して除去することにより平坦度を調整する方法や、基板を侵食するエッチング溶液(ガラス基板の場合、フッ酸などの酸性水溶液、水酸化ナトリウムなどのアルカリ性水溶液)を平坦度が悪い領域に供給して除去することにより平坦度を調整する方法がある。
上述の局所的に平坦度を調整する方法の中でも特に、局所的に圧力を加えて研磨することにより基板の平坦度を調整する方法が、基板の表面粗さを維持または向上しながら、所望の平坦度とすることができるので好ましい。また、局所的に圧力を加えながら研磨し、且つエッチングするメカノケミカルポリッシングで平坦度を調整することもできる。この場合、局所的に圧力を加えて研磨する平坦度の調整方法よりも研磨速度が向上するので、生産性が向上するなどの利点がある。
【0027】
具体的には、(d)回転自在な研磨定盤と、該研磨定盤上に設けられた研磨パッドと、該研磨パッドの表面に研磨剤を供給する研磨剤供給手段と、前記研磨パッド上に基板を保持する基板保持手段と、前記研磨パッドに前記基板保持手段によって保持された基板を加圧することにより基板表面を研磨する基板加圧手段と、前記加圧手段は、基板表面の分割された複数領域に対して、任意に独立して加圧できるように複数の加圧体を有しており、該加圧体には個々に圧力制御可能な圧力制御手段が設けられた研磨装置を用い、該基板主表面の形状が基板表面において任意に設定した基準面に対して相対的に凸状になっている領域は、他の領域よりも前記圧力制御手段によって前記加圧体の基板に対する圧力を大にし、凸状になっている領域に対向する基板の裏面側より押圧し基板主表面を研磨することによって、基板の平坦度の調整を行うのが最も良い。
(e) 前記基板に加えるべき圧力を、予め記憶手段に記憶してある複数種類の圧力分布を有する荷重タイプから所望の平坦度にする最適な荷重タイプを選択し、該荷重タイプに応じた圧力分布で研磨を行い、前記基板の平坦度を調整することを特徴とする(c)または(d)に記載の電子デバイス用基板の製造方法。
マスクブランクに使用する電子デバイス用基板の平坦度は、基板毎に異なっており、基板主表面の表面形状としては凸状のものや凹状のものがある。
このように、形状が異なる電子デバイス用基板を用いて製造したマスクブランクや転写用マスクは平坦度が悪化し、薄膜をパターニングして転写用マスクを作製した場合のパターン位置精度が悪化する。
【0028】
従って、主表面の表面形状が凸状の基板や主表面の表面形状が凹状の基板において、任意に設定した基準面に対して相対的に凸状になっている領域に局所的に圧力を加えて研磨することにより、凸状箇所が選択的に除去されるので、基板の平坦度が良好になる。
【0029】
本発明は、電子デバイス用基板の平坦度を所望の値(平坦度)にするために、予め記憶手段にて記憶してある複数種類の圧力分布を有する荷重タイプから所望の平坦度にする最適な荷重タイプを選択し、その荷重タイプに応じた圧力分布で研磨を行うことにより、基板の平坦度を所望の値にすることができる。
なお、この荷重タイプを複数選択して、組み合わせることにより、効果的に所望の平坦度に近づけることができる。
【0030】
なお、平坦度の定義および測定方法は(a)と同様である。
(f)電子デバイス用基板の主表面上に露光光に対して光学的変化をもたらす薄膜を形成してマスクブランクを製造するマスクブランクの製造方法であって、前記基板上に形成される前記薄膜に応じて(a)に記載の平坦度決定方法により決定した所望の平坦度を有する前記基板を用いることを特徴とするマスクブランクの製造方法。
(g)電子デバイス用基板の主表面上に薄膜パターンを形成して転写用マスクを製造する転写用マスクの製造方法であって、前記基板上に形成される前記薄膜、および、前記基板主表面に形成されるパターン占有率、薄膜パターンの位置、薄膜パターンの形状のうち少なくとも何れか一つに応じて(b)に記載の平坦度決定方法により決定した所望の平坦度を有する前記基板を用いることを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【0031】
マスクブランクまたは転写用マスクを製造する際に、(a)または(b)に記載の平坦度決定方法により決定した基板は、(c)乃至(e)の何れかに記載の電子デバイス用基板の製造方法によって基板の平坦度を調整して得られたものでもよいし、または、(c)乃至(e)の何れかに記載の電子デバイス用基板の平坦度を測定し、複数の基板を平坦度毎に分類しておき、マスクブランクを作製する際に、最適な平坦度を有する基板を選択しても構わない。
(h)電子デバイス用基板の主表面上にクロムを主成分とする薄膜をスパッタリング法により形成してマスクブランクを製造するマスクブランクの製造方法であって、前記基板は前記薄膜を形成する側の基板主表面の表面形状が凸形状の基板とすることを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【0032】
スパッタリング法によって形成されるクロムを主成分とする薄膜は、一般に引張応力を有するので基板上に形成した場合、表面形状が凹形状となる。従って、高平坦度のマスクブランクを作製する場合には、使用する基板は前記基板は前記薄膜を形成する側の基板主表面の表面形状が凸形状の基板を用いることが望ましい。クロムを主成分とする薄膜は、クロム単体でもよく、またクロム以外に酸素、窒素、炭素の中から選ばれた少なくとも一つの元素を添加しても構わない。例えば、クロム酸化物、クロム窒化物、クロム炭化物、クロム酸化窒化物、クロム窒化炭化物、クロム酸化炭化物、クロム酸化窒化炭化物などが挙げられる。また、クロムを主成分とする薄膜は、単層でも複数層としても良い。
(i)電子デバイス用基板の主表面上に主成分として珪素を含有し、さらに酸素および/または窒素を含有する薄膜をスパッタリング法により形成してマスクブランクを製造するマスクブランクの製造方法であって、前記基板は前記薄膜を形成する側の基板主表面の表面形状が凹形状の基板とすることを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【0033】
スパッタリング法によって形成される珪素を主成分とし、さらに酸素および/または窒素を含有する薄膜は、一般に圧縮応力を有するので基板上に形成した場合、表面形状が凸形状となる。従って、高平坦度のマスクブランクを作製する場合には、使用する前記基板は前記薄膜を形成する側の基板主表面の表面形状が凹形状の基板を用いることが好ましい。主成分として珪素を含み、さらに酸素および/または窒素を含有する皮膜として、代表的な材料は、金属シリサイド酸化物、金属シリサイド窒化物、金属シリサイド酸化窒化物、金属シリサイド酸化炭化物、金属シリサイド窒化炭化物、金属シリサイド酸化窒化炭化物(金属:遷移元素(Mo,Ta,Wなど))や、酸化珪素、酸化窒化珪素などが挙げられる。また、珪素を主成分とし、さらに酸素および/または珪素を含有する薄膜は単層でも複数層としても良い。
(j)(a)に記載の平坦度決定方法により決定した所望の平坦度を有する前記基板を用いることを特徴とする(h)または(i)に記載のマスクブランクの製造方法。
(k)電子デバイス用基板の主表面上に薄膜パターンを形成して転写用マスクを製造する転写用マスクの製造方法であって、前記基板上に形成される前記薄膜、および、前記基板主表面に形成されるパターン占有率、薄膜パターンの位置、薄膜パターンの形状のうち少なくとも何れか一つに応じて請求項2に記載の平坦度決定方法により決定した所望の平坦度を有する前記基板を用いて、(h)または(i)に記載の製造方法により製造したフォトマスクブランクを用いることを特徴とするフォトマスクの製造方法。
(l)電子デバイス用基板の主表面上に露光光に対して光学的変化をもたらす薄膜を形成したマスクブランクの製造方法であって、
予め既知の平坦度および表面形状を有する電子デバイス用基板の主表面上に、マスクブランクを製造するのと同じ成膜条件にて前記薄膜を成膜し、該薄膜の膜応力に起因した基板の平坦度変化量を求め、マスクブランクが所望の平坦度となるように、前記基板の平坦度および表面形状を決定して、前記基板の主表面が決定した平坦度および表面形状を有する基板を準備する工程と、
前記基板の主表面上に露光光に対して光学的変化をもたらす薄膜を形成する工程と、
を有することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
(m)前記基板を準備する工程は、前記電子デバイス用基板の平坦度および表面形状を測定する工程と、前記基板の平坦度および表面形状が、前記決定した平坦度および表面形状となるように、前記基板の主表面の形状が該基板表面において任意に設定した基準面に対して相対的に凸状になっている領域に局所的にエッチングおよび/または圧力を加えて研磨することにより前記基板の平坦度および表面形状を調整する工程と、を有することを特徴とする(l)に記載のマスクブランクの製造方法。
(n)前記基板の平坦度の調整は、回転自在な研磨定盤と、該研磨定盤上に設けられた研磨パッドと、該研磨パッドの表面に研磨剤を供給する研磨剤供給手段と、前記研磨パッド上に基板を保持する基板保持手段と、前記研磨パッドに前記基板保持手段によって保持された基板を加圧することにより基板表面を研磨する基板加圧手段と、前記加圧手段は、基板表面の分割された複数領域に対して、任意に独立して加圧できるように複数の加圧体を有しており、
該加圧体には個々に圧力制御可能な圧力制御手段が設けられた研磨装置を用い、該基板主表面の形状が基板表面において任意に設定した基準面に対して相対的に凸状になっている領域は、他の領域よりも前記圧力制御手段によって前記加圧体の基板に対する圧力を大にし、
凸状になっている領域に対向する基板の裏面側より押圧し基板主表面を研磨することによって行われることを特徴とする(m)に記載のマスクブランクの製造方法。
(0)前記薄膜はクロムを主成分とする材料であって、前記基板の表面形状は凸形状とすることを特徴とする(l)から(n)のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法。
(p)前記薄膜は主成分として硅素を含有し、さらに酸素および窒素のうち少なくとも一以上の成分を含有する材料であって、前記基板の表面形状は凹形状とすることを特徴とする(l)から(n)のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法。
(q)電子デバイス用基板の主表面上に所望のパターンを形成した転写用マスクの製造方法であって、予め既知の平坦度および表面形状を有する電子デバイス用基板の主表面上に、転写用マスクを製造するのと同じ薄膜パターン占有率、薄膜パターン位置、薄膜パターン形状のうち少なくとも何れか一つを満足するように薄膜パターンを形成し、該薄膜パターンによる膜応力に起因した基板の平坦度変化量を求め、転写用マスクが所望の平坦度となるように、前記基板の平坦度および表面形状を決定して、前記基板の主表面が決定した平坦度および表面形状を有する基板を準備する工程と、前記基板の主表面上に所望のパターンを形成する工程と、を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
(r)前記基板を準備する工程は、前記電子デバイス用基枚の平坦度および表面形状を測定する工程と、前記基板の平坦度および表面形状が、前記決定した平坦度及び表面形状となるように、前記基板の主表面の形状が該基板表面において任意に設定した基準面に対して相対的に凸状になっている領域に局所的にエッチングおよび/または圧力を加えて研磨することにより前記基板の平坦度および表面形状を調整する工程と、を有することを特徴とする(q)に記載の転写用マスクの製造方法。
(s)前記基板の平坦度の調整は、回転自在な研磨定盤と、該研磨定盤上に設けられた研磨パッドと、該研磨パッドの表面に研磨剤を供給する研磨剤供給手段と、前記研磨パッド上に基板を保持する基板保持手段と、前記研磨パッドに前記基板保持手段によって保持された基板を加圧することにより基板表面を研磨する基板加圧手段と、前記加圧手段は、基板表面の分割された複数領域に対して、任意に独立して加圧できるように複数の加圧体を有しており、
該加圧体には個々に圧力制御可能な圧力制御手段が設けられた研磨装置を用い、該基板主表面の形状が基板表面において任意に設定した基準面に対して相対的に凸状になっている領域は、他の領域よりも前記圧力制御手段によって前記加圧体の基板に対する圧力を大にし、凸状になっている領域に対向する基板の裏面側より押圧し基板主表面を研磨することによって行われることを特徴とする(r)に記載の転写用マスクの製造方法。
(t)前記薄膜はクロムを主成分とする材料であって、前記基板の表面形状は凸形状とすることを特徴とする(q)から(s)のいずれかに記載の転写用マスクの製造方法。
(u)前記薄膜は主成分として硅素を含有し、さらに酸素および/または窒素を含有する材料であって、前記基板の表面形状は凹形状とすることを特徴とする(q)から(s)のいずれかに記載の転写用マスクの製造方法。
(v)前記電子デバイス用基板は、ガラス基板であることを特徴とする(l)から(u)のいずれかに記載のマスクブランクまたは転写用マスクの製造方法。
【0034】
本発明に用いる基板の平坦度決定方法について、以下詳細に説明する。
薄膜として遮光機能を有する遮光性薄膜を形成するフォトマスクブランクと、薄膜として位相シフト機能と遮光機能を有するハーフトーン膜を形成する位相シフトマスクブランクを作製するために、以下のように基板の平坦度を決定する。フォトマスクブランクと同じ大きさ(6インチ×6インチ×0.25インチ)(1インチ=25.4mm)、材料であって既知の平坦度(平坦度0.5μm(凸形状):平坦度測定機(トロッペル社製FM200)にて測定)を有する透明基板(石英ガラス基板)を準備し、その透明基板の主表面上に窒化クロム膜/炭化クロム膜/酸化窒化クロム膜をスパッタリング法により積層(合計膜厚900オングストローム)したフォトマスクブランク、透明基板の主表面上に窒化されたモリブデンシリサイド膜をスパッタリング法により積層(膜厚800オングストローム)した位相シフトマスクブランクを作製した。(尚、遮光性薄膜、ハーフトーン膜の成膜条件は、フォトマスクブランク、位相シフトマスクブランクの製造する際の成膜条件と同じとした。)
フォトマスクブランク、位相シフトマスクブランクそれぞれの平坦度を測定したところ、フォトマスクブランクの平坦度は0.2μm(凸形状)、位相シフトマスクブランクの平坦度は1.6μm(凸形状)であった。
上記透明基板の平坦度、フォトマスクブランク、位相シフトマスクブランクの平坦度から遮光性薄膜の平坦度変化量、ハーフトーン膜の平坦度変化量を算出したところ、遮光性薄膜は−0.3μm、ハーフトーン膜は+1.1μmであった。
【0035】
従って、フォトマスクブランク、位相シフトマスクブランクの平坦度を理想的な平坦度(0μm)とすることをねらいとし、フォトマスクブランクを作製する透明基板の平坦度を0.3μm(凸形状)、位相シフトマスクブランクを作製する透明基板の平坦度を1.1μm(凹形状)と決定した。
第2の発明における電子デバイス用透明基板の平坦度決定方法について、以下詳細に説明する。
【0036】
薄膜として位相シフト機能と遮光機能を有するハーフトーン膜を形成する位相シフトマスクを作製するために、以下のように透明基板の平坦度を決定する。
位相シフトマスクブランクと同じ大きさ(6インチ×6インチ×0.25インチ)、材料であって既知の平坦度(平坦度1.0μm(凸形状):平坦度測定器(トロッペル社製FM200)にて測定)を有する透明基板(石英ガラス基板)を準備し、その透明基板の主表面上に窒化されたモリブデンシリサイド膜をスパッタリング法により積層(膜厚800オングストローム)し、さらにレジスト膜(400オングストローム)をスピンコート法により形成し、所望のパターンを有するマスクを介して露光・現像することによって、所望のパターンを有する位相シフト膜を作製した(パターン占有率(開口率):約20%)。
この位相シフトマスクの平坦度を測定したところ、フォトマスクの平坦度は2.0μm(凸形状)であった。
【0037】
従って、位相シフトマスクの平坦度を理想的な平坦度(0μm)とすることをねらいとし、位相シフトマスクを作製する透明基板の平坦度を2.0μm(凹形状)と決定した。
【0038】
上述では、パターン占有率(開口率)のみを考慮して、透明基板の平坦度を決定したが、より高精度の平坦度制御が求められる場合においては、同じパターン占有率(開口率)であっても薄膜パターンの形成位置や、薄膜パターンの形状によっても、マスクブランクの平坦度を基準にした場合、応力変化の違いがあると考えられるので、これら、薄膜パターンの形成位置、薄膜パターンの形状も考慮して透明基板の平坦度を決定する方が好ましい。
<実施例1>
以下、フォトマスクブランクおよびフォトマスクの製造方法について説明する。
【0039】
後述する透明基板の平坦度調整方法によって、透明基板(石英ガラス基板)の平坦度を0.3μm(凸形状)に調整した透明基板の主表面上に、上述の成膜条件の元、窒化クロム膜/炭化クロム膜/酸化窒化クロム膜をスパッタリング法により積層(膜厚900オングストローム)したフォトマスクブランクを作製した。
【0040】
得られたフォトマスクブランクの平坦度を上記と同様の方法によって測定したところ、0.1μm(凸形状)と高い平坦度を有していた。(理想値0μmとならなかった理由は、製造ばらつきおよび測定器バラツキによるものと考えられる。)さらに、遮光性薄膜上にレジスト膜をスピンコート法により形成し、所定のパターンを有するマスクを介して露光・現像することによって所望のパターンを有するフォトマスクを作製した。得られたフォトマスクのパターン位置精度を基準パターンデータと対比したところパターン位置精度は良好であった。
<実施例2>
両面精密研磨の研磨条件を制御することによって、透明基板(石英ガラス基板)の平坦度を1.1μm(凹形状)に調整した透明基板の主表面上に、上述の成膜条件の元、窒化されたモリブデンシリサイド膜をスパッタリング法により形成(膜厚800オングストローム)した位相シフトマスクブランクを作製した。
【0041】
得られた位相シフトマスクブランクの平坦度を上記と同様の方法によって測定したところ、0.2μm(凹形状)と高い平坦度を有していた。(理想値0μmとならなかったのは測定器ばらつきによるものと考えられる。)さらに、ハーフトーン膜上にレジスト膜をスピンコート法により形成し、所望のパターンを有するマスクを介して露光・現像することによって所望のパターンを有するフォトマスクを作製した。得られた位相シフトマスクのパターン位置精度を基準パターンデータと対比したところパターン精度精度は良好であった。
<実施例3>
両面精密研磨の研磨条件を制御することによって、透明基板(石英ガラス基板)の平坦度を2.0μm(凹形状)に調整した透明基板の主表面上に、上述の条件にて、窒化されたモリブデンシリサイド膜をスパッタリング法により形成(膜厚800オングストローム)し、さらにレジスト膜(4000オングストローム)をスピンコート法により形成し、所望のパターンを有するマスクを介して露光・現像することによって、所望のパターンを有する位相シフト膜を作製した。
【0042】
得られた位相シフトマスクの平坦度を上記と同様の方法で測定したところ、0.1μm(凸形状)と高い平坦度を有していた。(理想値0μmにならなかったのは測定器のばらつきによるものと考えられる。)
<比較例>
上記の透明基板の平坦度決定方法によらず、精密研磨の研磨条件を制御することによって、従来と同様に高い平坦度を有する基板に仕上げた透明基板(石英ガラス基板:平坦度0.5μm(凸形状))を用意して、実施例1、2、3と同じ方法によってフォトマスクブランクおよびフォトマスク、位相シフトマスクブランクおよび位相シフトマスクを作製した。
【0043】
その結果、フォトマスクブランクの平坦度は1.5μm(凹形状)、位相シフトマスクブランクの平坦度は1.6μm(凸形状)となりフォトマスクブランク、位相シフトマスクブランクとしての平坦度は悪化した。また、上述と同様の方法によってフォトマスク、位相シフトマスクを作製したときのパターン位置精度を評価したところ、基準パターンデータよりパターン位置精度が悪化した。
【0044】
次に、電子デバイス用透明基板の平坦度調整方法(電子デバイス用透明基板の製造方法)の実施形態について図2乃至図5を用いて説明する。
図2は、本発明における電子デバイス用透明基板の平坦度調整方法に用いる研磨機の構造を示す平面図であり、図3は、そのA−A´断面図である。
図3に示すように、研磨機の構造は、研磨パッド2が貼りつけられ、図示しない回転装置により定盤用回転軸を介して回転駆動する研磨定盤1と、基板主表面の複数に分割された領域に対し、任意に独立して加圧できるように複数の加圧体3と、複数の加圧体を保持する加圧体保持手段4と、加圧体3の圧力を制御する圧力制御手段、基板を保持する基板保持手段(リテーナーリング)5とを有し、研磨定盤1の回転と、個々の加圧体3の基板6に対する圧力を制御し、加圧体保持手段4および基板保持手段5が一体となって回転することにより研磨パッド2側の基板主表面を片面研磨するものである。
【0045】
そして、この研磨機を用いて電子デバイス用透明基板の平坦度を調整するには、以下のようにして行う。
【0046】
基板6は、リテーナーリング5により研磨定盤1の上に保持され、加圧体3により研磨定盤1に押付けられながら回転する。
このリテーナーリングは、研磨パッド2を押さえることにより、基板6の周縁部にかかる圧力を均一化する役割を果たす。
【0047】
一方、研磨定盤1の上面には研磨パッド2が貼付されており、加圧体3が基板6を研磨パッド2に押付けながら研磨定盤1と逆方向に回転することによって基板6の主表面が研磨される。
加圧体3は、加圧体保持手段4により保持され、基板6の上面を覆うように多数設けられており、基板6にかける圧力を局所的に任意にコントロールすることができる。
【0048】
この加圧体3の駆動はエアーシリンダーを用いることが好ましい。加圧体3の稼動範囲(ストローク)を大きく取ることができ、DA変換機および空電変換器を用いることにより制御が容易だからである。
【0049】
例えば、図3のように、基板6が中央部の厚みが大きい凸状の場合には、基板6の中央部に位置する加圧体3の圧力を高く、逆に、基板6の周縁部に位置する加圧体3の圧力を低くすることによって、凸状の基板形状を平坦にすることができる。
<実施例4>
図4は、本発明における電子デバイス用凸状透明基板の平坦度調整を行った実施例を示す図である。
【0050】
電子デバイス用透明基板の平坦度を測定した結果、基板表面の形状はドーム状で、平坦度:0.6〜0.9μmの範囲に入る凸形状なので、まず、基板の中央部の圧力が高い荷重タイプ(1)(基板外周部に配置されている加圧体3には荷重を加えず、基板中央部から基板外周部にかけて次第に基板6に対する荷重が小さくなるような荷重タイプ(尚、図4の荷重タイプ(1)、(2)に記載されている数値は、基板上に働く圧力(kg/cm2)を示す。))にを選択して、回転数10〜20rpm、研磨時間150〜300秒で研磨を行ったところ(使用した研磨剤は、コロイダルシリカ(平均粒径100nm)+水の研磨液を使用して研磨を行った。)、平坦度:0.3〜0.5μmの凸形状となった。
さらに、基板の中央部の圧力がわずかに高い荷重タイプ(2)(基板外周部に配置されている加圧体3には、極小さな荷重(0.1kg/cm2)とし、それ以外の基板中央部に配置されている加圧体3には、基板外周部の加圧体3より若干大きい荷重(0.2kg/cm2)とする荷重タイプ)を選択して、回転数5〜20rpm、研磨時間90〜180秒研磨を行ったところ(使用した研磨剤は、コロイダルシリカ(平均粒径100nm)+水の研磨液を使用して研磨を行った。)、平坦度:0.1〜0.2μmの凸形状とすることができた。
【0051】
本実施例では二つの荷重タイプを組み合わせて用いたが、あらかじめ多数の荷重タイプを準備しておき、この中から、最適な組合せを選択することにより、さらに容易に所望の平坦度を実現することができる。また、上述のように、平坦度の調整は、研磨の進行と合わせて複数段階の荷重タイプを組み合わせて行った方が、効率よく所望の平坦度を有する基板を得ることができる。
【0052】
なお、荷重タイプの選定に当たっては、研磨定盤温度・回転数・電流値・トルク値など、研磨機側の条件を設定し、これに応じて、所望の平坦度を得るために最適な荷重タイプの組合せを自動的に選択するソフトウェアを用いることが好ましい。
<実施例5>
図5は、本発明における電子デバイス用凹状透明基板の平坦度調整を行った実施例を示す図である。
電子デバイス用透明基板の平坦度を測定した結果、基板表面の形状は、おわん状で、平坦度:0.6〜0.7μmの範囲に入る凹形状なので、まず、基板のコーナー部の圧力が高い荷重タイプ(3)(基板中央部近傍に配置されている加圧体3には荷重を加えず、基板のコーナー部に配置されている加圧体3に最も高い荷重がかかるようにした荷重タイプ(尚、図5の荷重タイプ(3)、(4)に記載されている数値は、基板上に働く圧力(kg/cm2)を示す。)を選択して、回転数10〜20rpm、研磨時間45〜100秒で研磨を行ったところ(使用した研磨剤は、コロイダルシリカ(平均粒径100nm)+水の研磨液を使用して研磨を行った。)、平坦度:0.4〜0.5μmの凹形状となった。
【0053】
さらに、基板のコーナー部の圧力がわずかに高い荷重タイプ(4)(基板中央部近傍に配置されている加圧体3には荷重を加えず、基板の外周部に配置されている加圧体3に荷重をかけ、基板のコーナー部にから基板の内側にかけて次第に小さくなるような荷重タイプ)を選択して、回転数5〜20rpm、研磨時間5〜20秒で研磨を行ったところ(使用した研磨剤は、コロイダルシリカ(平均粒径100nm)+水の研磨液を使用して研磨を行った。)、平坦度:0.2〜0.3μmの凹形状とすることができた。
<比較例>
実施例3および実施例4に用いた電子デバイス用透明基板の表面に均一な荷重をかけながら研磨を行ったところ、平坦度は良好にならなかった。
<実施例6>
上述の実施例3において、使用する研磨液を、研磨剤としてコロイダルシリカ(平均粒径100nm)を使用し、水酸化ナトリウムを添加してpHが11.2の研磨液とし、メカノケミカルポリッシングにした以外は実施例3と同じ平坦度の調整方法を行った。
その結果、最終的に得られる基板の平坦度はほぼ同じであるが、平坦度調整における研磨時間がおよそ15〜20%短縮することができた。
【符号の説明】
【0054】
1:研磨定盤、
2:研磨パッド、
3:加圧体、
4:加圧体保持手段、
5:リテーナーリング、
6:基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子デバイス用基板の主表面上に薄膜を形成してマスクブランクを製造するマスクブランクの製造方法であって、
前記薄膜を形成する側の主表面の表面形状が凸形状である基板に対し、クロムを主成分とする材料からなり、引張応力を有する前記薄膜をスパッタリング法で形成することにより、前記薄膜の成膜前よりも主表面の平坦度が高いマスクブランクを得ることを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【請求項2】
電子デバイス用基板の主表面上に薄膜を形成してマスクブランクを製造するマスクブランクの製造方法であって、
前記薄膜を形成する側の主表面の表面形状が凹形状である基板に対し、主成分としてケイ素を含有し、さらに酸素および窒素のうち少なくとも一以上の成分を含有する材料からなり、圧縮応力を有する前記薄膜をスパッタリング法で形成することにより、前記薄膜の成膜前よりも主表面の平坦度が高いマスクブランクを得ることを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【請求項3】
前記電子デバイス用基板は、マスクブランクの平坦度が所望の平坦度となるように前記薄膜の膜応力に起因した前記基板の平坦度変化量を見込んだ主表面の平坦度とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項4】
電子デバイス用基板の平坦度を測定した後、前記基板の平坦度が前記の所望の平坦度となるように、前記基板の主表面の形状が該基板表面において任意に設定した基準面に対して相対的に凸状になっている領域に局所的にエッチングおよび/または圧力を加えて研磨することにより前記基板の平坦度を調整することを特徴とする請求項3に記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項5】
前記基板の平坦度の調整は、
回転自在な研磨定盤と、該研磨定盤上に設けられた研磨パッドと、該研磨パッドの表面に研磨剤を供給する研磨剤供給手段と、前記研磨パッド上に基板を保持する基板保持手段と、前記研磨パッドに前記基板保持手段によって保持された基板を加圧することにより基板主表面を研磨する基板加圧手段とを備え、
前記加圧手段には、基板主表面の分割された複数領域に対して、任意に独立して加圧できるように複数の加圧体が設けられ、
該加圧体には個々に圧力制御可能な圧力制御手段が設けられた研磨装置を用いて行われるものであり、
該基板主表面の形状が基板主表面において任意に設定した基準面に対して相対的に凸状になっている領域において、該凸状になっている領域に対向する基板の裏面側より押圧し、他の領域よりも前記圧力制御手段によって前記加圧体の基板に対する圧力を大にして、基板主表面を研磨することによって行われることを特徴とする請求項4に記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項6】
前記基板の平坦度の調整は、該基板主表面の形状が基板表面において任意に設定した基準面に対して相対的に凸状になっている領域に、基板を侵食するエッチング溶液を供給する局所的なエッチングをすることによって行われることを特徴とする請求項4に記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項7】
前記マスクブランクの所望の平坦度は、1μm以下であることを特徴とする請求項3から請求項6のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項8】
前記電子デバイス用基板は、ガラス基板であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項9】
前記薄膜は、露光光を遮光する遮光膜、露光光に対し位相差変化をもたらす位相シフト膜、露光光を吸収する光吸収膜、および露光光を反射する機能を有する反射膜のうちの少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の製造方法により製造したマスクブランクの薄膜をパターニングして薄膜パターンを形成することを特徴とする転写用マスクの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−215634(P2011−215634A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152426(P2011−152426)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【分割の表示】特願2010−24275(P2010−24275)の分割
【原出願日】平成15年3月28日(2003.3.28)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】