説明

マスク検査装置

【課題】マスク検査装置において、2つの検出画像を比較してマスクの欠陥有無を検出可能とする。
【解決手段】光源1から出射された深紫外線領域のレーザ光を照明光として、所定のパターンが形成されたマスク200に照射する照明光学系2と、2つのTDIセンサ11,12と、照明光が照射されたマスク200の照明領域のうち、互いに異なる検出対象領域からの光を同時に、かつ各別に2つのTDIセンサ11,12に結像させる2つの結像光学系と、2つのTDIセンサ11,12によりそれぞれ検出して得られた2つの像のサイズを一致させる像倍率補正手段と、像倍率補正手段によりサイズが一致された2つの像に基づいて、マスク200の欠陥を検出する信号処理系20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の製造に使用されるフォトマスクや、ガラス基板上に所定のパターンが形成されたマスクを検査するマスク検査装置に関し、詳細には、深紫外線(DUV)等の短波長化された照明光を用いたマスク検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体の製造に使用されるフォトマスク等、パターンが形成されたマスクに対して、そのパターンの形成状態を検査するマスク検査装置が知られている。
【0003】
このマスク検査装置としては、所定のステージ上に配置されたマスクに照明光を照射する透過照明光学系もしくは反射照明光学系と、CCDセンサやTDI(Time Delay and Integration)センサ等の光検出手段と、マスクを透過し若しくはマスクで反射して得られた像を光検出手段に導く結像光学系と、光検出手段によって検出された検出画像を予め得られた設計データに基づく基準画像と比較して、マスクの欠陥有無を検出する欠陥検出手段とを備えたものが知られている。なお、結像光学系は、顕微鏡等に用いられる対物レンズと集光光学系とを含んだ構成となっている。
【0004】
近時、半導体デバイスは高集積化が進展しているが、この高集積化は、マスク上の形成パターンの微細化により実現されるものであり、マスク検査装置においても検出分解能の向上が求められている。
【0005】
そこで、結像光学系の対物レンズを高NA化するとともに、照明光として、より短波長である深紫外線(DUV)を利用することによって、検出分解能を向上させることが行われている。
【0006】
ここで、マスクパターンの欠陥は、主として、基板表面への異物の付着と、基板表面に形成されたCr(クロム)等膜形成物質の表面への膜形成物質の残存とがあるが、これらの欠陥は、マスクの厚さ方向における形成位置が異なる。一方、結像光学系の対物レンズは、そのNAが大きくなるにしたがって焦点深度が浅くなるという特性を有しているため、これら両方の種類の欠陥を同時に検出することが困難になっている。
【0007】
このため、ステージと結像光学系との間の距離を変化させたり、結像光学系と光検出手段との間の距離を変える等して、マスクの厚さ方向における検出対象面を変化させて、繰り返し検査を行う必要がある。
【0008】
一方、上述した照明光学系として、透過照明光学系と反射照明光学系との両方を備え、これら透過照明光学系と反射照明光学系とを択一的に切り替えて、マスクを照明するマスク検査装置が提案されている(特許文献1)。
【0009】
この態様のマスク検査装置は、欠陥の種類に応じて、検出に適した照明光学系に適宜切り替えることによって、マスクの欠陥を高精度に検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−97053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上述した透過照明光学系と反射照明光学系とを有するマスク検査装置によっても、各照明光学系ごとに検出対象領域を変えて順次検査を行わなければならないことに変わりはなく、検査時間が長くかかるという問題がある。
【0012】
そして、半導体デバイスの高集積化がさらに進むと、それに応じてマスクも厚くなり、検査対象面等検出対象領域も増加し、検査時間がさらに長くなることが懸念される。
【0013】
また、多数の検出対象領域を設定する場合に、対応する複数の結像光学系の配置空間を確保しつつ、各検出対象領域からの光を、強度をほとんど減衰させることなく各集光光学系に導入することが望まれる。
【0014】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、検査時間が長くなるのを防止することができるとともに、多数の検出対象領域を設定する場合に、対応する複数の結像光学系の配置空間を確保しつつ、各検出対象領域からの光を、強度をほとんど減衰させることなく各集光光学系に導入することができるマスク検査装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るマスク検査装置は、結像光学系および光検出手段をそれぞれ複数設けて、複数の検出対象領域を同時に検査することにより検査時間が長くなるのを防止するとともに、像倍率補正手段により、各光検出手段によって検出された像の大きさを合致させることにより、検出された像間での比較を容易にものである。
【0016】
すなわち、本発明に係るマスク検査装置は、所定のパターンが形成されたマスクに照明光を照射する照明光学系と、複数の光検出手段と、前記照明光が照射された照明領域のうち、互いに異なる検出対象領域からの光を同時に、かつ各別に前記複数の光検出手段に結像させる、前記複数の光検出手段にそれぞれ対応して設けられた複数の結像光学系と、前記複数の光検出手段によりそれぞれ検出して得られた複数の像のサイズを一致させる像倍率補正手段と、前記サイズが一致された複数の像に基づいて、前記マスクの欠陥を検出する欠陥検出手段とを備え、前記複数の結像光学系は、該複数の結像光学系について共用された単一の対物レンズと、それぞれの前記結像光学系に対応した複数の集光光学系と、前記対物レンズを通った前記互いに異なる検出対象領域からの光を、前記複数の集光光学系のうち対応するものに分離する全反射ミラーとを有し、前記対物レンズは、前記集光光学系との間で前記検出対象領域の像面を形成するように設定され、前記全反射ミラーは、前記像面の近傍に配置され、前記像倍率補正手段は、前記複数の像の各像倍率を取得する像倍率取得手段と、前記結像光学系の一部として設けられ、前記像倍率取得手段によって取得された前記各像の像倍率に基づいて、前記光検出手段に投影される像のサイズを調整する補正光学系である補正手段とを有することを特徴とする。
【0017】
ここで、光検出手段としては、CCDセンサ、CMOSセンサ、TDIセンサ等を用いることができる。
【0018】
また、照明領域とは、マスクの厚さ方向に直交する特定の一面内での領域のみを意味するものではなく、マスクの厚さ方向に照明光が通過する全ての領域を含む。
【0019】
したがって、照明領域のうち互いに異なる検出対象領域とは、マスクの厚さ方向についての互いに異なる位置(マスクの厚さ方向に直交する互いに異なる面)や、マスクの厚さ方向について同一の面(マスクの厚さ方向に直交する特定の面)内における互いに異なる領域を意味する。
【0020】
本発明に係るマスク検査装置においては、複数の結像光学系が、この複数の結像光学系について共用された単一の対物レンズと、各結像光学系に各別に対応する複数の集光光学系と、対物レンズを通った、互いに異なる検出対象領域からの光を、複数の集光光学系のうち対応するものに分離して導く全反射ミラーとを有するものであるため、多数の検出対象領域を設定する場合にも、対応する複数の結像光学系の配置空間を確保し易く、かつ複数の光検出手段への光路を分割し易いとともに、全反射ミラーでの反射によれば、光を、その強度をほとんど減衰させることなく各集光光学系に導入することができる。
【0021】
さらに、対物レンズは、集光光学系との間で前記検出対象領域の像面を形成するように設定され、全反射ミラーは、その像面の近傍に配置されているため、全反射ミラーとして大きなサイズのものを用いる必要がなく、したがって、結像光学系のサイズが大きくなるのを防止することができる。
【0022】
また、本発明に係るマスク検査装置においては、照明光学系を、互いに異なる検出対象領域を各別に照明する2つの照明光学系であって、マスクに対して結像光学系が設けられた側とは反対の側に配設された透過照明光学系と、マスクに対して結像光学系が設けられた側に配設された反射照明光学系と、透過照明光学系および反射照明光学系のうち一方の照明光学系を、マスクに対して他方の照明光学系の側に配設位置を切り替える照明方向切替手段とを備えた構成とするのが好ましい。
【0023】
欠陥の種類や欠陥の存在位置によっては、透過照明光学系による透過照明での検出に適する場合と、反射照明光学系による反射照明での検出に適する場合とがあり、これら透過照明光による透過照明光像と反射照明による反射照明光像との双方を検出することにより、欠陥検出の精度を向上させることができるからである。
【0024】
また、照明方向切替光学系によって照明方向を切り替えることにより、複数の透過照明光像あるいは複数の反射照明光像を得ることができ、得られた像の倍率差を求めるうえで、像の比較を行い易いという効果もある。
【0025】
また、本発明に係るマスク検査装置においては、像倍率取得手段を、複数の光検出手段によって検出された像に基づいて、これら複数の像の各像倍率を算出することにより取得するものとするのが好ましい。
【0026】
実際に検出された像に基づいて像倍率を検査することにより、光学系の光学特性に個体差がある場合にも、その個体差をも含めた像倍率を得ることができるため、像倍率を高精度に求めることができるからである。
【0027】
また、本発明に係るマスク検査装置においては、像倍率取得手段は、少なくとも各結像光学系と光検出手段との間の距離ごとに予め求められた像倍率を読み出すことにより取得するものとするのが好ましい。
【0028】
すなわち、光検出手段に結像される光像のサイズは、光学的には、各結像光学系の光学特性、各結像光学系と検出対象領域との間の距離、および各結像光学系と各光検出手段との間の距離の組合せによって規定される。
【0029】
ここで、各結像光学系と検出対象領域との間の距離と、各結像光学系と各光検出手段との間の距離とは、結像光学系の共役関係によって、一方が特定されると他方が特定されるため、実質的には、各結像光学系の光学特性、および各結像光学系と各光検出手段との間の距離の組合せによって規定される。
【0030】
そして、マスク検査装置における各結像光学系の光学特性は、各結像光学系を交換しない限り変化せず一定であるため、光検出手段に結像される光像のサイズは、実質的には各結像光学系と各光検出手段との間の距離によって特定することができるといえる。
【0031】
したがって、予め実験的に、各結像光学系と各光検出手段との間の距離を変化させて、各距離ごとの像の倍率を求め、この求められた倍率と、各結像光学系と各光検出手段との間の距離とを、参照テーブルや関数形式で対応付け、この対応付けを像倍率補正手段に予め記憶させておき、あるいは外部のデータベースに予め記憶させておき、実際のマスク検査の際に得られた結像光学系と光検出手段との間の距離に対応する像倍率を、参照テーブル等を参照して読み出すことにより、簡便に像倍率を得ることができる。
【0032】
一方、本発明に係るマスク検査装置においては、像倍率取得手段は、複数の光検出手段によって実際にリアルタイムに検出された像に基づいて各像倍率を算出するものでなくてもよく、実際の検出に先立って、例えば同じ検出対象物(マスク)の同じ検査領域において予め求められた複数の像の各像倍率が記憶されたホストコンピュータから、それら各像倍率を受信することにより取得するものであってもよい。
【0033】
このように予め求められた像倍率を受信することにより取得するものであれば、個々のマスクを検査する都度、像倍率を算出する必要がないため、特に大量のマスクを検査する場合に、検査時間を大幅に短縮することができる。
【0034】
また、本発明に係るマスク検査装置においては、光検出手段としてTDIセンサを適用するとともに、補正手段として、このTDIセンサの動作周期を調整する周期補正回路を適用するのが好ましい。
【0035】
TDIセンサは光検出手段として既存の構成であり、周期補正回路は電子回路であるため欠陥検出手段に対してサイズを大きくすることなく組み込むことができる。しかも、物理的な占有空間を要する補正光学系を備える必要がないため、マスク検査装置の小型化、製造コストの低減に資することができるとともに、補正処理範囲(ダイナミックレンジ)や補正分解能の設定自由度を高めることができる。
【0036】
また、本発明に係るマスク検査装置においては、互いに異なる検出対象領域を、マスクの厚さ方向について同一の面内における互いに異なる領域とするのが好ましい。
【0037】
マスクの厚さ方向について同一の面内における互いに異なる領域からそれぞれ得られる像は、マスクの全面を走査したとき、本来は全く同一の画像を形成するところ、透過光像と反射光像とで比較することにより、透過光または反射光のうちいずれかの照明光によって検出されやすい特性の欠陥を、簡便に検出することができる。
【0038】
また、本発明に係るマスク検査装置においては、互いに異なる検出対象領域を、マスクの厚さ方向についての互いに異なる位置とするのが好ましい。
【0039】
マスクの厚さ方向の互いに異なる複数の面からそれぞれ像を得ることができるため、マスクの厚さ方向の互いに異なる複数の面のいずれかに存在する欠陥を、1回の走査で検出することができるからである。
【発明の効果】
【0040】
本発明に係るマスク検査装置によれば、複数の結像光学系によって、照明光が照射された照明領域のうち、互いに異なる検出対象領域からの光を同時に、かつ各別に、別異の光検出手段に結像させることができ、互いに異なる検出対象領域についての複数の画像を得ることができる。
【0041】
したがって、互いに異なる検出対象領域についての検出画像の取得に要する時間を、従来よりも短縮することができる。
【0042】
また、このようにして得られた複数の検出画像は、像倍率補正手段によって、像のサイズが一致するように補正されているため、相互に直接対比して、マスクの欠陥有無を検出することができる。
【0043】
この場合、各検出像を、それぞれ基準となる設計データ等に基づく基準像と比較する必要がなくなり、欠陥検出手段の構成を簡略化することができる。
【0044】
また、各検出像をそれぞれ基準像と比較する機能を有する欠陥検出手段を備えたマスク検査装置においても、両検出像を直接比較することにより、簡便に欠陥を検出することができる。
【0045】
さらに、像倍率補正手段を、複数の像の各像倍率を取得する像倍率取得手段と、結像光学系の一部として設けられ、像倍率取得手段によって取得された各像の像倍率に基づいて、光検出手段に投影される像のサイズを調整する補正光学系である補正手段とによって構成することにより、像倍率取得手段と補正手段とについてそれぞれ種々の態様を採ることができ、多様な構成を採用することができる。
【0046】
また、補正手段が、結像光学系(集光光学系)の一部として、光検出手段に投影される像のサイズを調整する補正光学系であるため、補正光学系を通して光検出手段に像を結像させることとなり、実際の検査の際に、光検出手段には、倍率差が補正された像を結像させることができる。したがって、光検出手段によって得られた像のデータに対し、後処理によって像のサイズを調整するのではなく、補正された像をリアルタイムに得ることができる点で、迅速に検査結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1実施形態に係るマスク検査装置を示すブロック図である。
【図2】石英ガラスの表面に、膜形成物質によって所定のパターンが形成されマスクを模式的に表した平面図である。
【図3】図2に示したマスクの厚さ方向に沿った断面を示す断面図である。
【図4】マスクの欠陥の態様を示す図2相当の平面図である。
【図5】マスクの厚さ方向について、欠陥が形成される位置の相違を示す図3相当の断面図である。
【図6】各TDIセンサによって検出される検出対象領域を模式的に示す図である。
【図7】対物レンズの視野内において空間的に分離された2つの検出対象領域を示す図である。
【図8】集光光学系とTDIセンサとの間の距離を変化させることによって、検出対象領域が光軸方向に変動することを示す模式図である。
【図9】反射照明光学系の照明方向を変化させた状態を示す模式図であり、(a)は反射側に配した状態、(b)は透過側に配した状態、をそれぞれ示す。
【図10】本発明の第2実施形態に係るマスク検査装置を示すブロック図である。
【図11】図10に示したマスク検査装置において、集光光学系とTDIセンサとの間の距離を変化させることによって、検出対象領域が光軸方向に変動することを示す模式図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係るマスク検査装置を示すブロック図である。
【図13】互い異なる2つの検出対象領域を一括的に照明しつつ、これら2つの検出対象領域を分離して検出する様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明に係るマスク検査装置の最良の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0049】
(実施形態1)
図1は、本発明の第1実施形態に係るマスク検査装置100を示すブロック図である。図示のマスク検査装置100は、深紫外線領域のレーザ光(例えば、波長257nm)を出射する光源1と、この光源1から出射されたレーザ光を照明光として、所定のパターンが形成されたマスク200に照射する照明光学系2と、2つのTDIセンサ11,12(光検出手段)と、照明光が照射されたマスク200の照明領域のうち、互いに異なる検出対象領域からの光を同時に、かつ各別に2つのTDIセンサ11,12に結像させる2つの結像光学系と、2つのTDIセンサ11,12によりそれぞれ検出して得られた2つの像のサイズを一致させる像倍率補正手段と、像倍率補正手段によりサイズが一致された2つの像に基づいて、マスク200の欠陥を検出する信号処理系20(欠陥検出手段)とを備えている。
【0050】
ここで、マスク200は、例えば、図2に模式的に示すように、石英ガラス210の表面211に、膜形成物質としてのCr等によって、所定のパターン220が形成されている。このマスク200に形成されたパターン220は、例えば図3に示すような膜厚方向に沿った断面構造を有しており、同図(a)は、石英ガラス210の表面211にCr膜を設けてパターン220を形成したもの、(b)は石英ガラス220の表面211にCr膜を等間隔で設けるとともに、隣接する2つのCr膜の間に位相シフタ物質230を設けてパターン220を形成したもの、(c)は石英ガラス210の表面211にCr膜を等間隔で設けるとともに、Cr膜が設けられていない部分に、位相シフタとしての溝240を設けてパターン220を形成したものである。
【0051】
この種のマスク200は、石英ガラス210の表面211にCrを蒸着し、フォトレジスタを塗布した後、その一部を露光し、エッチングによりフォトレジスタを除去することによって生成される。
【0052】
しかし、マスク200は、この生成過程で以下のような欠陥が生じる場合がある。すなわち、マスク200の平面視である図4(a)に示すように、パターン220を形成するCr膜の一部が欠落してパターン220が設計よりも細くなるパターン細り欠陥250、同図(b)に示すように、本来除去されるべきCrがCr膜間に残存した膜形成物質残存欠陥260、同図(c)に示すように、Cr膜の表面221に異物が付着した異物付着欠陥270等である。
【0053】
そして、マスク200の膜厚方向に沿った断面図である図5に示すように、異物付着欠陥270は、Cr膜の表面221に存在する場合(同図(a))、位相シフタ物質230の表面231または石英ガラス210の表面211に存在する場合(同図(b))、溝240に存在する場合(同図(c))等があり、また、膜形成物質残存欠陥260は、同図(c)に示すようにCr膜の表面221側に存在する場合だけでなく、Cr膜の底部すなわち石英ガラス210の表面211に存在する場合もある。
【0054】
また、マスク検査装置100の各結像光学系は、2つの結像光学系について共用された単一の対物レンズ4と、各結像光学系に対応した集光光学系5または6と、対物レンズを通った互いに異なる検出対象領域からの光を集光光学系5,6のうち対応するものに分離して導く全反射ミラー7との組合せによって構成されている。すなわち、第1結像光学系は、対物レンズ4と第1集光光学系5とからなり、第2結像光学系は、対物レンズ4と第2集光光学系6と全反射ミラー7とからなる。
【0055】
ここで、第1結像光学系と第2結像光学系とは、対物レンズ4を共用している構成であるが、第1集光光学系5およびこの第1集光光学系5側のTDIセンサ11の配置関係、第2集光光学系6およびこの第2集光光学系6側のTDIセンサ12の配置関係、並びに対物レンズ4と第1集光光学系5との間に配設された全反射ミラー7によって、図6の光学系配置図および図7の平面図に示すように、第1集光光学系5側のTDIセンサ11には、対物レンズ4の視野201のうち一部の領域202のみが検出対象領域として検出され、第2集光光学系6側のTDIセンサ12には、対物レンズ4の視野201のうち、TDIセンサ11とは異なる他の一部の領域203のみが検出対象領域として検出されるように設定されている。
【0056】
すなわち、全反射ミラー7は、対物レンズ4を通った互いに異なる2つの検出対象領域202,203からの光を、2つの集光光学系5,6のうち対応するもの(検出対象領域202の光が対応する第1集光光学系5、検出対象領域203の光が対応する第2集光光学系6)に分離して導くように配置されている。
【0057】
また、対物レンズ4は、集光光学系5,6との間で検出対象領域202,203の像面Pを形成するように設定され、全反射ミラー7は、この像面Pの近傍に配置されている。
【0058】
なお、第1集光光学系5と第2集光光学系6とは同一の光学特性を有し、TDIセンサ11とTDIセンサ12とは同一の構成である。
【0059】
また、このマスク検査装置100は、信号処理系20によってそれぞれ制御されるマスク位置制御機構21、第1合焦制御機構22および第2合焦制御機構23を備えている。ここで、マスク位置制御機構21は、マスク200を、対物レンズ4の光軸C1に直交する面内で移動させることにより、照明光を相対的に走査させるともに、対物レンズ4の光軸C1方向(X−X′方向)に移動させることにより、対物レンズ4とマスク200との間の距離L1を調整可能とした機構である。
【0060】
第1合焦制御機構22は、第1集光光学系5をこの第1集光光学系5の光軸方向(Y−Y′方向)に移動させることにより、第1集光光学系5とTDIセンサ11との間の距離L2を調整可能とした機構であり、第2合焦制御機構23は、第2集光光学系6をこの第6集光光学系6の光軸方向(Y−Y′方向)に移動させることにより、第2集光光学系6とTDIセンサ12との間の距離L3を調整可能とした機構である。
【0061】
ここで、図8に示すように、第1集光光学系5とTDIセンサ11との間の距離L2を変化させると、TDIセンサ11に結像されるマスク200の厚さ方向の位置(対物レンズ4からの距離L1)が変化するため、第1集光光学系5を第1合焦制御機構22によって移動させることにより、TDIセンサ11による検出対象領域202を、マスク200の厚さ方向に沿って変化させることができる。
【0062】
同様に、第2集光光学系6とTDIセンサ12との間の距離L3を変化させると、TDIセンサ12に結像されるマスク200の厚さ方向の位置(対物レンズ4からの距離L1)が変化するため、第2集光光学系6を第2合焦制御機構23によって移動させることにより、TDIセンサ12による検出対象領域203を、マスク200の厚さ方向に沿って変化させることができる。
【0063】
また、像倍率補正手段は、各TDIセンサ11,12によって検出された像に基づいて、各像の像倍率を算出する倍率情報演算回路73(像倍率取得手段)と、この倍率情報演算回路73によって算出された各像の像倍率に基づいて、両像のサイズが略同一となるように、第1集光光学系5側の像のサイズを補正する、第1集光光学系5の一部として設けられた第1倍率補正光学系71(補正手段)と、第2集光光学系6側の像のサイズを補正する、第2集光光学系6の一部として設けられた第2倍率補正光学系72(補正手段)とを備えている。
【0064】
これら倍率補正光学系71,72としては、ズーム光学系や、デフォーマブルミラーと称される素子に採用される位相変調素子などを用いることができる。
【0065】
ここで、ズーム光学系によれば比較的大きな倍率差を補正することができ、デフォーマブルミラーに用いられる位相変調素子によれば、ズーム光学系では解消し切れない微小な倍率差を補正することができるため、両者を組み合わせるのが好ましい。
【0066】
なお、デフォーマブルミラーに用いられる位相変調素子は、集光光学系5,6の瞳の位置に挿入される。
【0067】
照明光学系2は、光源1から出射されたレーザ光のコヒーレント性を低減させて均一な照度を確保するための図示しないレーザ可干渉低減機構およびインテグレータと、前述した互いに異なる検出対象領域202,203と同等またはこれら検出対象領域202,203より僅かに広い領域を照明領域として各別に照明する2つの照明光学系であって、マスク200に対して両結像光学系が設けられた側とは反対の側に配設された透過照明光学系2Aと、マスク200に対して両結像光学系が設けられた側に配設された反射照明光学系2Bと、透過照明光学系2Aおよび反射照明光学系2Bのうち一方の照明光学系である反射照明光学系2Bを、マスク200に対して他方の照明光学系である透過照明光学系2Aの側に配設位置を切り替える照明視野切替光学系2C(照明方向切替手段)とを備えた構成である。
【0068】
すなわち、透過照明光学系2Aは、図9(a),(b)に示すように、マスク200に対して両結像光学系が設けられた側とは反対の側に固定的に配設されている一方、反射照明光学系2Bは、図9(a)に示すように、マスク200に対して両結像光学系が設けられた側と、図9(b)に示すように、マスク200に対して両結像光学系が設けられた側とは反対の側とに移動可能に配設されており、照射視野切替光学系2Cによって、この配設位置が切り替えられる。
【0069】
なお、反射照明光学系2Bは、マスク200に対して透過照明光学系2Aと同じ側に配設されているときは、透過照明光学系として作用するが、いずれの側に配置されたときにも、マスクに対する照明領域は変化しないように設定されている。
【0070】
各照明光学系2A,2Bの詳細構造は、例えば、特開2002−39960号公報、特願2003−209043号の明細書等に示されており、コンデンサレンズ3を介して、あるいはミラー(図9(a))を介して、マスク200の検出対象領域202,203をケーラ照明法によって均一に照明する。
【0071】
次に、本実施形態に係るマスク検査装置100の作用について説明する。
【0072】
まず、照明光学系2の反射照明光学系2Bは、照明視野切替光学系2Cにより、図9(a)に示すように、マスク200を挟んで透過照明光学系2Aとは反対側に配置された状態とされ、光源1から出射されたレーザ光は、各照明光学系2A,2Bにより、透過照明光S1または反射照明光S2として、マスク200の領域202または203に各別に照射される。
【0073】
このとき、第1集光光学系5側のTDIセンサ11および第2集光光学系6側のTDIセンサ12には、マスク200の厚さ方向について同一の面M1内の検出対象領域202,203におけるパターン220の像が結像されるように、図8に示した距離L1,L2,L3が設定されている。
【0074】
そして、信号処理系20の制御によってマスク位置制御機構21が、マスク200をこのマスク200の面内で2次元状に移動(走査)させることにより、各TDIセンサ11,12には、マスク200の走査速度に応じて順次変化する各検出対象領域202,203におけるパターン220の像が検出され、これら検出された像を表す信号が、信号処理系20に順次転送され、マスク200の全体の走査が終了したときには、信号処理系20に、マスク200の面M1全体についての透過光S1によるパターン220の透過光像を表すデータと、マスク200の面M1全体についての反射光S2によるパターン220の反射光像を表すデータとが蓄積される。
【0075】
この結果、マスク200を1回走査するだけで、透過光S1と反射光S2とによる2つの像のデータを取得することができ、これら2つの像を、信号処理系20が比較演算処理することにより、マスク200の面M1における欠陥の有無を検出することができる。
【0076】
ここで、本実施形態に係るマスク検査装置100は、マスク200の全面走査に先立って、マスクの一部のみを走査し、この一部についての透過光S1と反射光S2とによる2つの像のデータを得、この両データに基づいて、第1集光光学系5側の像と第2集光光学系6側の像との像サイズの倍率差を、倍率情報演算手段73が算出する。
【0077】
なお、第1集光光学系5と第2集光光学系6との光学特性が同一であれば、本来は両像のサイズは同一となるはずであるが、実際には、2つの光学系5,6が完全に同一の光学特性を有するとは限らない。また、距離L2と距離L3とが等しくない場合や、対物レンズ4と第1集光光学系5との間の距離と、対物レンズ4と第2集光光学系6との間の距離とが等しくない場合にも、両像のサイズが同一とならないことがある。
【0078】
そして、両像のサイズが相違すると、両像を対比する際に適切な比較を行うことができない。
【0079】
そこで、マスク200の本検査に先立って、このように両像の一部について両像のデータを取得し、この取得されたデータに基づいて、両像のサイズ差を倍率情報演算回路73により倍率差として算出し、算出して得られた倍率差を解消するように、すなわち、両像のサイズが同一となるように、倍率情報演算回路73が、算出された倍率差に基づいて、第1倍率補正光学系71および第2倍率補正光学系72を調整する。
【0080】
このように、マスク200の本検査に先立って倍率補正を行うことにより、本検査によって得られる各像のサイズは同一に調整され、この同一サイズの2つの透過光像と反射光像とを信号処理系20が比較し、マスク200の欠陥を精度よく検出することができる。
【0081】
なお、このように、透過光像と反射光像とを直接対比するのは、欠陥の種類やサイズによっては、透過光による検出に適したものと反射光による検出に適したものとがあり、一方の光像では検出できるが他方の光像では検出されない種類の欠陥を、簡単に検出することができるからである。
【0082】
また、両光像を直接比較するのではなく、信号処理系20に、マスク200のパターンの設計データを予め記憶させ、あるいは外部の設計データベースから読み込んで、各光像のデータを設計データと各別に比較して、欠陥の検出を行うものであってもよい。
【0083】
このような、設計データとの各別の比較による欠陥検出によれば、透過光像および反射光像のいずれにも現れる欠陥の像が存在する場合に有効である。
【0084】
すなわち、当該欠陥は、両光像同士を比較しても、両像の差異として検出されない可能性があるからである。
【0085】
以上のように、本実施形態に係るマスク検査装置100によれば、透過光像と反射光像とを、1回のマスク走査によって得ることができるため、透過光像と反射光像とを取得する必要があるマスク検査に関して、各光像を順次取得する従来のマスク検査装置よりも、検査の迅速化を図ることができる。
【0086】
さらに、本実施形態のマスク検査装置100は、その結像光学系が、対物レンズ4を通った、互いに異なる2つの検出対象領域202,203からの光を、2つの集光光学系5,6のうち対応するものに分離して導く全反射ミラー7を有するため、2つの検出対象領域202,203を設定する場合にも、対応する複数の結像光学系の配置空間を確保し易く、かつ2つのTDIセンサ11,12への光路を分割し易いとともに、全反射ミラー7での反射によれば、光を、その強度をほとんど減衰させることなく光を各集光光学系5,6に導入することができる。
【0087】
さらにまた、対物レンズ4は、集光光学系5,6との間で検出対象領域202,203の像面Pを形成するように設定され、全反射ミラー7は、その像面Pの近傍に配置されているため、全反射ミラー7として大きなサイズのものを用いる必要がなく、したがって、結像光学系のサイズが大きくなるのを防止することができる。
【0088】
なお、マスク200の本検査に先立って行うマスク200の一部についてのプレ走査では、検出される両像のサイズを一致させるための倍率情報を取得するために行うに過ぎず、マスク200の欠陥自体を検出するための走査ではないため、本検査における走査よりも分解能が低いものであってもよく、したがって、プレ走査における走査速度を本検査における走査速度よりも高く設定したり、TDIセンサ11,12の検出分解能を低く設定することができ、本検査に要する時間に比べて、極めて短い時間で行うことができる。
【0089】
上述した作用は、マスク200の特定面M1を、透過光像と反射光像とで検査するものであるが、次に、透過光像によって検査する面と反射光像によって検査する面とを互いに異なる面とする作用について説明する。
【0090】
すなわち、例えば、マスク200の石英ガラス210の表面211については、透過光像によって検査し、マスク200のCrの表面221については、反射光像によって検査する場合、透過光像を検出する第1集光光学系5側のTDIセンサ11に、石英ガラス210の表面211が結像する距離L2となるように、第1集光光学系5をY−Y′方向に移動調整し、反射光像を検出する第2集光光学系6側のTDIセンサ12に、Crの表面221が結像する距離L3となるように、第2集光光学系6をY−Y′方向に移動調整する。
【0091】
つまり図8に示したように、距離L2,L3を延長すると、対応するTDIセンサ11,12による検出対象領域202,203は、対物レンズ4に近づく方向に変動し、距離L2,L3を短縮すると、対応するTDIセンサ11,12による検出対象領域202,203は、対物レンズ4から離れる方向に変動するため、この距離L2,L3を各別に調整することにより、TDIセンサ11による検出対象領域202の面と、TDIセンサ12による検出対象領域203の面とがマスク200の厚さ方向について互いに異なる面に設定される。
【0092】
このように、検出対象領域202,203の面を互いに異なるものとすると、TDIセンサ11,12にそれぞれ結像された像のサイズには差が生じる。
【0093】
そこで、マスク200の本検査に先立って、前述した倍率補正を行うことにより、本検査によって得られる各像のサイズは、検査対象面が異なるにも拘わらず同一に調整され、この同一サイズの2つの透過光像と反射光像とを信号処理系20が比較し、マスク200の欠陥を精度よく検出することができる。
【0094】
このように本実施形態に係るマスク検査装置100によれば、マスク200の厚さ方向の異なる面を、透過光S1および反射光S2によって、1回のマスク走査で同時に走査することができ、透過光像と反射光像とを、1回のマスク走査によって得ることができるため、透過光像と反射光像とを取得する必要があるマスク検査に関して、各光像を順次取得する従来のマスク検査装置よりも、検査の迅速化を図ることができる。
【0095】
また、反射照明光学系2Bは、照明視野切替光学系2Cによって、マスク200に対して透過照明光学系2Aと同じ側に配置切替されると(図9(b)参照)、透過照明光学系2Aと反射照明光学系2Bとによって、マスク200の異なる検出対象領域202,203をともに透過照明することができ、マスク200の厚さ方向の同一面内に両検出対象領域202,203が設定されるように距離L2,L3を調整して、前述した本検査前のプレ走査を行うことにより、マスク200の厚さ方向の同一面の一部について、倍率補正前の2つの透過光像を得ることができる。
【0096】
そして、これら2つの透過光像同士を比較して、両光像の倍率差を求めることができるが、このように透過光像同士の比較に基づいて倍率差を求める方が、前述した反射光像と透過光像との比較に基づいて倍率差を求めるよりも、処理を簡単化することができる。
【0097】
すなわち、反射光像と透過光像とは、単純には明暗が反転するため、両光像の比較に際しては一方の光像の明暗を反転する処理などを行う必要があるが、透過光像同士での比較では、そのような処理が不要となる。また、散乱光の回込み具合や石英ガラス210内での繰返し反射等の迷光の影響も、透過光像同士の比較では相殺することができるが、透過光像と反射光像とでは、これらの影響の度合いが相異なるため、透過光像と反射光像とを比較する際には、これらの影響の相違も考慮して行う必要があり、透過光像同士での比較の方が、より精度の高い比較を行うことができ、この結果、より精度の高い倍率補正を行うことができる。
【0098】
もちろん、反射照明光学系2Bを透過照明光学系2Aと同じ側に配置するのは、プレ走査の際のみに限定されるものではなく、プレ走査後の本検査においても、両照明光学系2A,2Bをそのまま透過照明光学系として、2つの透過光像を得るものとしてもよい。
【0099】
すなわち、前述した距離L2,L3を調整することにより、マスク200の厚さ方向の互いに異なる面についての2つの透過光像を得ることができるため、マスク200の2つの面を1回の走査で検査することができ、検査の迅速化を図ることができる。
【0100】
また、本実施形態に係るマスク検査装置100は、透過照明光学系2Aが、マスク200に対して結像光学系とは反対の側に固定的に配設され、反射照明光学系2Bが、照明視野切替光学系2Cによって、照明方向を切替可能とされた構成であるが、これとは反対に、反射照明光学系2Bが、マスク200に対して結像光学系と同じ側に固定的に配設され、透過照明光学系2Aが、照明視野切替光学系2Cによって、照明方向を切替可能とされた構成を採用することもできる。
【0101】
このように、透過照明光学系2Aの照明方向を切替可能とした構成のマスク検査装置100によれば、2つの反射光像を得ることができ、これら2つの反射光像を用いて、プレ走査や本検査を行うことができる。
【0102】
そして、透過照明光学系2Aが結像光学系とは反対の側に固定的に配設され、反射照明光学系2Bが照明方向を切替可能とされた構成の実施形態と、同様の作用、効果を奏する。
【0103】
もちろん、透過照明光学系2Aと反射照明光学系2Bの双方とも、照明視野切替光学系2Cによって、照明方向を切替可能とされた構成を採用することもでき、欠陥の種類等に応じて、透過照明光学系2Aと反射照明光学系2Bとの照明方向の組合せを任意に切り替えることができ、使用方法の自由度を高めることができる。
【0104】
また、本実施形態に係るマスク検査装置100は、倍率情報演算回路73が、TDIセンサ11,12によって検出された両像に基づいて倍率差を算出するものであるが、このように実際に検出された像に基づくことなく、計算によって倍率差を簡易的に求めるようにしてもよい。
【0105】
すなわち、例えば、TDIセンサ11,12に結像される光像のサイズは、光学的には、各結像光学系の光学特性、各結像光学系と検出対象領域202,203との間の距離L1、および各結像光学系と各TDIセンサ11,12との間の距離L2,L3の組合せによって規定される。
【0106】
ここで、各結像光学系と検出対象領域202,203との間の距離L1と、各結像光学系と各TDIセンサ11,12との間の距離L2,L3とは、共役関係によって、一方が特定されると他方が特定されるため、実質的には、各結像光学系の光学特性、および各結像光学系と各TDIセンサ11,12との間の距離L2,L3の組合せによって規定される。
【0107】
そして、マスク検査装置における各結像光学系の光学特性は、各結像光学系を交換しない限り変化せず一定であるため、TDIセンサ11,12に結像される光像のサイズは、各結像光学系と各TDIセンサ11,12との間の距離L2,L3によって特定することができるといえる。
【0108】
したがって、各結像光学系と各TDIセンサ11,12との間の距離L2,L3を変化させて、各距離ごとの像の倍率を、予め実験的に求め、この求められた倍率と、各結像光学系と各TDIセンサ11,12との間の距離L2,L3とを、参照テーブル等として対応付け、この対応付けを倍率情報演算回路73に予め記憶させておき、実際のマスク検査の際には、信号制御系20が、第1合焦制御機構22の制御によって得られる第1結像光学系とTDIセンサ11との間の距離L2を、倍率情報演算回路73に出力し、倍率情報演算回路73が、入力された距離L2に対応する像倍率を、参照テーブルを参照して求めることができる。
【0109】
同様に、第2合焦制御機構23の制御によって得られる第2結像光学系とTDIセンサ12との間の距離L3を、倍率情報演算回路73に出力し、倍率情報演算回路73が、入力された距離L3に対応する像倍率を、参照テーブルを参照して求めることができる。
【0110】
そして、倍率情報演算回路73は、これら求められた2つの像倍率に基づいて、各TDIセンサ11,12にそれぞれ結像される像間の倍率差を算出することができる。
【0111】
(実施形態2)
実施形態1のマスク検査装置100は、透過照明光学系2A側に対して単一の集光光学系5およびTDIセンサ11を組み合わせ、反射照明光学系2B側に対して単一の集光光学系6およびTDIセンサ12を組み合わせて、互いに異なる2つの検出対象領域202,203について検査するものであるが、この実施形態1のマスク検査装置100において、各照明光学系2A,2B側に対してそれぞれ2以上の集光光学系およびTDIセンサを組み合わせて、1回の走査で検査可能の検出対象領域を増加させるようにすることもできる。
【0112】
すなわち、図10に示したマスク検査装置100は、実施形態1のマスク検査装置100において、透光照明光学系2A側に単一のTDIセンサ11に代えて2つのTDIセンサ11a,11bを設けるとともに、第1集光光学系5として、両TDIセンサ11a,11bに共用される単一の中間導光光学系5cと、各TDIセンサ11a,11bごとに対応する2つの集光光学系5a,5bとを設け、反射照明光学系2B側に単一のTDIセンサ12に代えて2つのTDIセンサ12a,12bを設けるとともに、第2集光光学系6として、両TDIセンサ12a,12bに共用される単一の中間導光光学系6cと、各TDIセンサ12a,12bごとに対応する2つの集光光学系6a,6bとを設けた構成である。
【0113】
なお、中間導光光学系5cから出射した光をそれぞれ両集光光学系5a,5bに入射させるために、中間導光光学系5cと両集光光学系5a,5bとの間に、光路分割手段としてのハーフミラー5dが配設され、中間導光光学系6cから出射した光をそれぞれ両集光光学系6a,6bに入射させるために、中間導光光学系6cと両集光光学系6a,6bとの間に、光路分割手段としてのハーフミラー6dが配設されている。
【0114】
すなわち、このマスク検査装置100は、透過照明光学系2A側に2つの結像光学系が設けられ、反射照明光学系2B側にも2つの結像光学系が設けられた構成であり、透過照明光学系2A側の2つのTDIセンサ11a,11bには、検出対象領域202の像がそれぞれ結像され、反射照明光学系2B側の2つのTDIセンサ12a,12bには、検出対象領域203の像がそれぞれ結像される。
【0115】
ここで、集光光学系5aとTDIセンサ11aとの間の距離L21と、集光光学系5bとTDIセンサ11bとの間の距離L22とに差を設けることにより、図11に示すように、これら像面側と物面側との共役関係によって、TDIセンサ11aに結像される検出対象領域202aと、TDIセンサ11bに結像される検出対象領域202bとは、マスク200の厚さ方向についての互いに異なる位置とすることができる。
【0116】
同様に、集光光学系6aとTDIセンサ12aとの間の距離L31と、集光光学系6bとTDIセンサ12bとの間の距離L32とに差を設けることにより、これら像面側と物面側との共役関係によって、TDIセンサ12aに結像される検出対象領域203aと、TDIセンサ12bに結像される検出対象領域203bとは、マスク200の厚さ方向についての互いに異なる位置とすることができる。
【0117】
したがって、1回のマスク走査で、4つの互いに異なる光像を同時に得ることができ、これら4つの光像を順次に得る必要がある従来のマスク検査装置に比べて、検査時間の大幅な短縮を図ることができる。
【0118】
なお、実施形態2のマスク検査装置100における像倍率補正手段は、4つのTDIセンサ11a,11b,12a,12bによりそれぞれ検出して得られた4つの像のサイズを一致させるものとし、信号処理系20(欠陥検出手段)は、像倍率補正手段によりサイズが一致された4つの像に基づいて、マスク200の欠陥を検出するものとすればよい。
【0119】
本実施形態のマスク検査装置100は、その結像光学系が、対物レンズ4を通った、互いに異なる2つの検出対象領域202(202a,202b),203(203a,203b)からの光を、2つの集光光学系5,6のうち対応するものに分離して導く全反射ミラー7を有するため、2つの検出対象領域202(202a,202b),203(203a,203b)を設定する場合にも、対応する複数の結像光学系の配置空間を確保し易く、かつ2つのTDIセンサ11(11a,11b),12(12a,12b)への光路を分割し易いとともに、全反射ミラー7での反射によれば、光を、その強度をほとんど減衰させることなく光を各集光光学系5,6に導入することができる。
【0120】
さらに、対物レンズ4は、集光光学系5,6との間で検出対象領域202(202a,202b),203(203a,203b)の像面Pを形成するように設定され、全反射ミラー7は、その像面Pの近傍に配置されているため、全反射ミラー7として大きなサイズのものを用いる必要がなく、したがって、結像光学系のサイズが大きくなるのを防止することができる。
【0121】
また、本実施形態2に係るマスク検査装置100についても、上述した実施形態1に係るマスク検査装置100に適用可能の各変形例を適用することができ、各変形例による既述の効果を同様に得ることができる。
【0122】
(実施形態3)
図12は本発明の第3の実施形態(実施形態3)に係るマスク検査装置100を示すブロック図であり、実施形態1のマスク検査装置100において、反射照明光学系2Bと照明視野光学系2Cとを省略するとともに、透過照明光学系2Aが、図13に示すように、検出対象領域202,203を含む広い領域を照明視野として照射するように設定されたものである。
【0123】
実施形態1,2のマスク検査装置100は、透過照明光学系2Aと反射照明光学系2Bとによりマスク200の両面側からそれぞれレーザ光を照射し、マスク200の検出対象領域202(実施形態2においては202a,202b)からの透過光像と検出対象領域203(実施形態2においては203a,203b)からの反射光像とを得るために、透過照明光学系2Aによる照射領域と反射照明光学系2Bによる光照射領域とをそれぞれ空間的に分離する構成であるが、本実施形態3のマスク検査装置100は、透過光像のみが得られるに過ぎないものの、1回の走査で、マスク200の異なる2つの検出対象領域202,203から像をそれぞれ得ることができ、マスク検査の迅速化を図ることができる。
【0124】
なお、透過照明光学系2Aに代えて反射照明光学系2Bを備え、2つの反射光像を得るものとしてもよく、このような構成のマスク検査装置によっても、マスク検査の迅速化を図ることができる。
【0125】
そして、これらの構成のマスク検査装置100も、実施形態1,2のマスク検査装置100と同様に、その結像光学系が、対物レンズ4を通った、互いに異なる2つの検出対象領域202,203からの光を、2つの集光光学系5,6のうち対応するものに分離して導く全反射ミラー7を有するため、2つの検出対象領域202,203を設定する場合にも、対応する複数の結像光学系の配置空間を確保し易く、かつ2つのTDIセンサ11,12への光路を分割し易いとともに、全反射ミラー7での反射によれば、光を、その強度をほとんど減衰させることなく光を各集光光学系5,6に導入することができる。
【0126】
さらに、対物レンズ4は、集光光学系5,6との間で検出対象領域202,203の像面Pを形成するように設定され、全反射ミラー7は、その像面Pの近傍に配置されているため、全反射ミラー7として大きなサイズのものを用いる必要がなく、したがって、結像光学系のサイズが大きくなるのを防止することができる。
【0127】
また、図12に示したマスク検査装置100は、2つの集光光学系5,6の配置と全反射ミラー7によって、TDIセンサ11,12にそれぞれ結像される検出対象領域202,203を、光軸C1に直交する面内で空間的に分離したものであるが、光軸C1に沿った方向(マスク200の厚さ方向)について空間的に分離する構成を採用することもできる。
【0128】
すなわち、図10に示したマスク検査装置100における透過照明光学系2Aの側の構成は、2つのTDIセンサ11a,11bには、マスク200の面内では同一の検出対象領域となるが、距離L21,L22に差異を設定することにより、TDIセンサ11aに結像される検出対象領域202aと、TDIセンサ11bに結像される検出対象領域202bとを、マスク200の厚さ方向について分離させることができる。
【0129】
なお、上述した各実施形態1〜3のマスク検査装置は、像倍率取得手段が、実際に検出された像の倍率に基づいて各像の像倍率を算出するものとして説明したが、本発明のマスク検査装置は、これらの形態に限定されるものではなく、例えばホストコンピュータから、そのホストコンピュータに記憶された各像倍率(検査に先立って、同じ検査対象物(マスク)の同じ検査領域において予め求められた各像倍率)を受信することにより、各像倍率を取得するものであってもよい。
【0130】
ここで、ホストコンピュータは、倍率情報演算回路73が兼ねるものであってもよい。
【符号の説明】
【0131】
1 光源
2 照明光学系
4 対物レンズ(結像光学系)
5 第1集光光学系(結像光学系)
6 第2集光光学系(結像光学系)
7 全反射ミラー
11,12 TDIセンサ(光検出手段)
20 信号処理系(欠陥検出手段)
71 第1倍率補正光学系(倍率補正手段)
72 第2倍率補正光学系(倍率補正手段)
73 倍率情報演算手段(倍率補正手段)
100 マスク検査装置
200 マスク
P 像面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のパターンが形成されたマスクに照明光を照射する照明光学系と、複数の光検出手段と、前記照明光が照射された照明領域のうち、互いに異なる検出対象領域からの光を同時に、かつ各別に前記複数の光検出手段に結像させる、前記複数の光検出手段にそれぞれ対応して設けられた複数の結像光学系と、前記複数の光検出手段によりそれぞれ検出して得られた複数の像のサイズを一致させる像倍率補正手段と、前記サイズが一致された複数の像に基づいて、前記マスクの欠陥を検出する欠陥検出手段とを備え、
前記複数の結像光学系は、該複数の結像光学系について共用された単一の対物レンズと、それぞれの前記結像光学系に対応した複数の集光光学系と、前記対物レンズを通った前記互いに異なる検出対象領域からの光を、前記複数の集光光学系のうち対応するものに分離して導く全反射ミラーとを有し、前記対物レンズは、前記集光光学系との間で前記検出対象領域の像面を形成するように設定され、前記全反射ミラーは、前記像面の近傍に配置され、
前記像倍率補正手段は、前記複数の像の各像倍率を取得する像倍率取得手段と、前記結像光学系の一部として設けられ、前記像倍率取得手段によって取得された前記各像の像倍率に基づいて、前記光検出手段に投影される像のサイズを調整する補正光学系である補正手段とを有することを特徴とするマスク検査装置。
【請求項2】
前記照明光学系は、前記互いに異なる検出対象領域を各別に照明する2つの照明光学系であって、前記マスクに対して前記結像光学系が設けられた側とは反対の側に配設された透過照明光学系と、前記マスクに対して前記結像光学系が設けられた側に配設された反射照明光学系と、前記透過照明光学系および前記反射照明光学系のうち一方の照明光学系を、前記マスクに対して他方の照明光学系の側に配設位置を切り替える照明方向切替手段とを備えたことを特徴とする請求項1また2に記載のマスク検査装置。
【請求項3】
前記像倍率取得手段は、前記複数の光検出手段によって検出された像に基づいて、前記複数の像の各像倍率を算出することにより取得することを特徴とする請求項1または2に記載のマスク検査装置。
【請求項4】
前記像倍率取得手段は、少なくとも前記各結像光学系と前記光検出手段との間の距離ごとに予め求められた像倍率を読み出すことにより取得することを特徴とする請求項1または2に記載のマスク検査装置。
【請求項5】
前記像倍率取得手段は、予め求められた前記複数の像の各像倍率が記憶されたホストコンピュータから前記検出対象領域に対応する前記各像倍率を受信することにより取得することを特徴とする請求項1または2に記載のマスク検査装置。
【請求項6】
前記光検出手段はTDIセンサであり、前記補正手段は、前記TDIセンサの動作周期を調整する周期補正回路であることを特徴とする請求項1から5のうちいずれか1項に記載のマスク検査装置。
【請求項7】
前記互いに異なる検出対象領域は、前記マスクの厚さ方向について同一の面内における互いに異なる領域であることを特徴とする請求項1から6のうちいずれか1項に記載のマスク検査装置。
【請求項8】
前記互いに異なる検出対象領域は、前記マスクの厚さ方向についての互いに異なる位置であることを特徴とする請求項1から6のうちいずれか1項に記載のマスク検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−48393(P2011−48393A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251066(P2010−251066)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【分割の表示】特願2004−337835(P2004−337835)の分割
【原出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】