説明

マニュアル式変速機構装置

【課題】運転者に対して、車両のエンジンおよびトランスミッションの回転数を振動によって伝達し、運転者がアクセル操作により各回転数を合わせることによりシフトチェンジ操作をスムーズに行うことのできるマニュアル式変速機構装置を提供する。
【解決手段】エンジン回転数計測部18がエンジン回転数を取得し、トランスミッション回転数計測部19がトランスミッション回転数を取得する。シフトチェンジ操作を行う各操作部に設けた偏心モータを設け、各回転数に基づいて振動周波数を算出して、この振動周波数で偏心モータを振動させることにより、運転者に対して車両のエンジンおよびトランスミッションの回転数を操作部を介して伝達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマニュアル式変速機構装置に関し、特に、マニュアルクラッチ操作を行う各操作部を振動させて、運転者に対してシフトチェンジ操作をスムーズに行うことのできるマニュアル式変速機構装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マニュアル式変速機構の自動車のみならず、オートマチック式変速機構の自動車であっても運転者が最適な走行状態を選択することができるようにマニュアル操作でシフトチェンジを行うことができるものがある。これらの自動車で運転者がマニュアル操作でシフトチェンジを行う際には、運転者がアクセルペダルを離してアクセルを緩め、クラッチペダルを踏み込んでクラッチを切って、シフトレバーを操作してシフトチェンジを行う。そして、クラッチペダル徐々に離していきながらエンジンからの動力を駆動部に伝えるようにして、アクセルペダルを再び踏み込むような一連の操作を行う。
【0003】
このように、マニュアル操作でシフトチェンジ操作をスムーズに行うためには、クラッチペダル、アクセルペダルおよびシフトレバーをタイミング良く操作する必要がある。頻繁にマニュアル式変速機構の自動車を運転する運転者のみならず、運転初心者やマニュアル式変速機構の自動車の運転経験が少ない運転者であっても、シフトチェンジ操作をスムーズに行うことができるようにシフトチェンジ操作の最適なタイミングを運転者に知らせる装置がある。
【0004】
例えば、特許文献1〜3に開示されるような装置においては、シフトチェンジ操作を行うために必要な情報を表示する装置を用いることにより、運転者に対してシフトチェンジ操作を行う最適なタイミングを知らせていた。
【0005】
例えば、特許文献1に開示される装置においては、エンジンの回転数を指針で示す表示メータに、シフトタイミングである回転数の目盛付近に特定のマークを表示することで、運転者に対してシフトチェンジ操作の最適なタイミングを知らせていた。また特許文献2に開示される装置においては、エンジンの回転数が上昇するのに合わせてランプを順番に点灯させることでエンジンの回転数が所定の回数に達したことを知らせていた。また特許文献3に開示される装置には、運転者に対して適切なシフトチェンジ操作のタイミングを知らせるエコノインジケータが備えられていることが開示されている。
【0006】
また特許文献4に開示される車両状態伝達装置では、ステアリングホイール等に触覚手段が内蔵されており、車両の横加速度やヨーレート等の大きさを振動周波数に変換して、触覚手段をその振動周波数で振動させている。これにより、ステアリングホイール等を介して運転者に対して振動を伝達することで、シフトチェンジ操作のタイミングを感覚的に知らせていた。
【0007】
【特許文献1】特開2007−145240号公報
【特許文献2】実用新案登録第3035012号公報
【特許文献3】特開昭62−160925号公報
【特許文献4】特開2006−298166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1〜3に開示される装置では、シフトチェンジ操作を行うために必要な情報を表示する装置は、いわゆるランプやメータといった表示器であり、運転者はこれらの表示器を見ながらシフトチェンジ操作のタイミングを把握しなければならなかった。このため、運転者は進行方向前方と表示器の両方に注視しなければならず、シフトチェンジ操作に不便さがあった。
【0009】
また特許文献4に開示される車両状態伝達装置では、運転者に対して、車両の横加速度やヨーレート等の情報を感覚的に伝えることはできるものの、エンジンの回転数等の情報を直接伝えるものではなかった。このため、車両の横加速度やヨーレート等の情報のみではシフトチェンジ操作のタイミングを正確に把握しづらく、結局エンジンの回転数を示す表示器等によりシフトチェンジ操作のタイミングを把握しなければならないという問題があった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記の課題に鑑み、運転者に対して、車両のエンジン側および変速機構部側の回転数を振動によって感覚的に伝達し、それぞれの回転数が異なるときに運転者がアクセル操作によりエンジン側とトランスミッション側との回転数を合わせることによりシフトチェンジ操作をスムーズに行うことができるマニュアル式変速機構装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るマニュアル式変速機構装置は、上記の目的を達成するために、次のように構成される。
【0012】
第1のマニュアル式変速機構装置(請求項1に対応)は、原動機(エンジン)と変速機構部(トランスミッション)とを連結するクラッチ機構部を備えるマニュアル式変速機構装置において、クラッチ機構部より原動機側の回転数を検出する原動機回転数検出手段と、クラッチ機構部より変速機構部側の回転数を検出する変速機構部回転数検出手段と、原動機回転数検出手段により検出された原動機側の回転数に基づいて、第1の振動周波数を算出する第1の振動周波数算出手段と、変速機構部回転数検出手段により検出された変速機構部側の回転数に基づいて、第2の振動周波数を算出する第2の振動周波数算出手段と、第1の振動周波数算出手段により算出された第1の振動周波数で振動し、第1の操作部に振動を伝達する第1の振動手段と、第2の振動周波数算出手段により算出された第2の振動周波数で振動し、第2の操作部に振動を伝達する第2の振動手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
上記の構成によれば、運転者に対して車両のエンジン側および変速機構部側の回転数を振動によって感覚的に伝達することが可能となる。
【0014】
第2のマニュアル式変速機構装置(請求項2に対応)は、クラッチ機構部のクラッチペダルの操作状態を検知するクラッチペダル操作状態検知手段と、クラッチペダル操作状態検知手段によりクラッチペダルが操作されている状態であることが検知されている間、第1の振動手段および第2の振動手段に対して振動周波数で振動するように駆動指示を出力する駆動指示出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0015】
上記の構成によれば、クラッチペダル操作状態検知手段によりクラッチペダルが操作されている状態であることが検知されている間、つまりシフトチェンジ操作に合わせて、運転者に対して車両のエンジン側および変速機構部側の回転数を振動によって感覚的に伝達することが可能となる。
【0016】
第3のマニュアル式変速機構装置(請求項3に対応)は、上記の構成において、第1の操作部はクラッチペダルおよびアクセルペダルであり、第2の操作部はシフトレバーであることを特徴とする。
【0017】
上記の構成によれば、運転者に対して、シフトチェンジ操作に行うクラッチペダル、アクセルペダルおよびシフトレバーを介して、エンジンおよびトランスミッションの各回転数を振動によって伝達することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、エンジンの回転数および変速機構部側の回転数を取得し、エンジン側の回転数に基づいてクラッチペダルおよびアクセルペダルを振動させる振動周波数および変速機構部側の回転数に基づいてシフトレバーを振動させる振動周波数を算出し、シフトチェンジ操作に関わる操作各部に備えられた偏心モータを各周波数に基づいて振動させることができる。これにより、運転者に対して車両のエンジン側および変速機構部側の回転数を振動によって感覚的に伝達し、各回転数を感覚的に把握させることができる。運転者はそれぞれの回転数が異なるときに、エンジンの回転数を示すメータ等を見なくても、アクセル操作によってエンジン側とトランスミッション側との回転数を合わせるように調整することでシフトチェンジ操作をスムーズに行うことができる。
【0019】
またクラッチペダルが操作されている間、運転者に対して車両のエンジン側および変速機構部側の回転数を振動によって感覚的に伝達するため、シフトチェンジ操作時に各回転数を確実に伝達することができる。運転者は各回転数を把握するのが容易になり、運転者はシフトチェンジ操作を一層スムーズに行うことができる。
【0020】
また運転者に対して、シフトチェンジ操作に行うクラッチペダル、シフトペダルおよびアクセルペダルを介して振動を伝達するため、シフトチェンジ操作時に各回転数を確実に伝達することができる。運転者は各回転数を把握するのが容易になり、運転者はシフトチェンジ操作を一層スムーズに行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0022】
まず、図1を参照して、本発明の本実施形態に係るマニュアル式変速機構装置の構成を説明する。図1は、本発明の本実施形態に係るマニュアル式変速機構装置の構成を示すブロック図である。
【0023】
図1に示すマニュアル式変速機構装置10は、制御部11、トランスミッション12、シフトレバー13、クラッチ14、クラッチペダル15、クラッチペダル操作状態検知部16、アクセルペダル17、エンジン回転数計測部18、トランスミッション回転数計測部19、クラッチペダル偏心モータ20、アクセルペダル偏心モータ21およびシフトレバー偏心モータ22を備えて構成される。
【0024】
制御部11は、各部と制御信号を送受信して、装置全体を統括して制御するものである。トランスミッション12は、歯車機構の動作によりギア(変速比)を変更して、エンジン23の回転数を変えて駆動部24に伝えるものである。シフトレバー13は、運転者がシフトレバー13を操作することにより、トランスミッション12の内部のギアの変更を行うものである。
【0025】
クラッチ14は、エンジン23からトランスミッション12を介して駆動部24に動力を伝達したり、切り離したりするものである。クラッチペダル15は、運転者がクラッチペダル15を操作することにより、クラッチ14を動作させるものである。
【0026】
クラッチペダル操作状態検知部16は、クラッチペダル15の操作状態を検知して、制御部11に検知結果を出力するものである。クラッチペダル操作状態検知部16によりクラッチペダル15の操作が開始されたこと、つまりペダルが踏み込まれ始めた状態と、クラッチペダル15の操作が終了されたこと、つまりペダルが離された状態とを検知する。なお、クラッチ14の状態をクラッチペダルの操作状態により検知するのに限らず、クラッチ14自体に検知部を設けて、クラッチ14の状態を直接検知するようにしても良い。
【0027】
アクセルペダル17は、運転者がアクセルペダル17を操作することにより、エンジン23の燃料噴射量を変化させ、エンジンの回転数を変化させるものである。
【0028】
エンジン回転数計測部18は、エンジン23とクラッチ14との間に設けられ、クラッチ14よりエンジン23側の回転数を計測して、これをエンジン回転数として出力するものである。トランスミッション回転数計測部19は、トランスミッション12と駆動部24との間に設けられ、クラッチ14よりトランスミッション12側の回転数を計測して、これをトランスミッション回転数として出力するものである。
【0029】
クラッチペダル偏心モータ20は、例えばクラッチペダル15の内部に設けられ、制御部11から駆動指示される振動周波数で振動するものである。アクセルペダル偏心モータ21は、例えばアクセルペダル17の内部に設けられ、制御部11からの駆動指示される振動周波数で振動するものである。クラッチペダル15またはアクセルペダル17を介して、各ペダルと接触する運転者の脚部に振動を伝達し、運転者にエンジン回転数を感覚的に把握させるために設けられる。
【0030】
シフトレバー偏心モータ22は、例えばシフトレバー13の内部に設けられ、制御部11からの駆動指示される振動周波数で振動するものである。シフトレバー13を介して、シフトレバー13と接触する運転者の手に振動を伝達し、運転者にトランスミッション回転数を感覚的に把握させる。
【0031】
続いて、図2を参照して、制御部11の構成を説明する。図2は、制御部の構成を示すブロック図である。
【0032】
図2に示す制御部11は、エンジン振動周波数算出部11a、トランスミッション振動周波数算出部11bおよび駆動指示出力部11cを備えて構成される。
【0033】
エンジン振動周波数算出部11aは、エンジン回転数計測部18により出力されたエンジン回転数に基づいて、クラッチペダル偏心モータ20およびアクセルペダル偏心モータ21を振動するエンジン振動周波数を算出するものである。トランスミッション振動周波数算出部11bは、トランスミッション回転数計測部19により出力されたトランスミッション回転数に基づいて、シフトレバー偏心モータ22を振動させるトランスミッション振動周波数を算出するものである。
【0034】
なおエンジン振動周波数算出部11aは、例えばエンジン回転数に対する所定の比率でエンジン振動周波数を算出する。エンジン回転数とエンジン振動周波数との比率を10対1とした場合には、例えばエンジン回転数が3000[rpm]であれば、算出されるエンジン振動周波数は300[Hz]となる。
【0035】
またトランスミッション振動周波数算出部11bも同様に、トランスミッション回転数に対する所定の比率でトランスミッション振動周波数を算出する。トランスミッション回転数とトランスミッション振動周波数との比率を10対1とした場合には、例えばトランスミッション回転数が1000[rpm]であれば、算出されるトランスミッション振動周波数は100[Hz]となる。
【0036】
つまりクラッチペダル偏心モータ20およびアクセルペダル偏心モータ21は、エンジン振動周波数算出部11aにより算出されたエンジン振動周波数で振動することにより、クラッチペダル15またはアクセルペダル17を介して、各ペダルと接触する運転者の脚部に振動を伝達し、運転者にエンジン回転数を感覚的に把握させる。
【0037】
またシフトレバー偏心モータ22は、トランスミッション振動周波数算出部11bにより算出されたトランスミッション振動周波数で振動することにより、シフトレバー13を介して、シフトレバー13と接触する運転者の手に振動を伝達し、運転者にトランスミッション回転数を感覚的に把握させる。
【0038】
なお、エンジン振動周波数算出部11aおよびトランスミッション振動周波数算出部11bにおける各振動周波数の算出方法は上述した方法に限らない。例えば、上述した所定の比率は任意の比率で算出するものであったり、回転数と振動周波数とは非線形式によって算出したりするものであっても良い。
【0039】
続いて、図3〜図5を参照して、各偏心モータの配置箇所を説明する。図3はマニュアル式変速機構装置が搭載された自動車室内を示す斜視図であり、図4はクラッチペダルの要部構成を示す斜視図であり、図5はシフトレバーの要部構成を示す斜視図である。
【0040】
図3に示す自動車室内の運転席51の足元付近に左側からクラッチペダル15、ブレーキペダル52およびアクセルペダル17が順番に設けられる。また運転席51の左側付近にシフトレバー13が設けられる。
【0041】
図4に示すように、クラッチペダル15の内部にクラッチペダル偏心モータ20が配置される。クラッチペダル偏心モータ20は、ケーブル20aを通じて駆動指示出力部11cから出力される駆動制御信号を受けて、エンジン振動周波数で振動する。また図示しないが、アクセルペタル17の内部にも、クラッチペダル偏心モータ20と同様にアクセルペダル偏心モータ21が配置される。アクセルペダル偏心モータ21は、駆動指示出力部11cから出力される駆動制御信号を受けて、エンジン振動周波数で振動する。
【0042】
また図5に示すように、シフトレバー13にはシフトレバー偏心モータ22が配置される。シフトレバー偏心モータ22は、ケーブル22aを通じて駆動指示出力部11cから出力される駆動制御信号を受けて、トランスミッション振動周波数で振動する。
【0043】
シフトチェンジ操作に行うクラッチペダル、シフトペダルおよびアクセルペダルの各操作部を介して、運転者に対してエンジン回転数およびトランスミッション回転数を振動によって伝達する。なお振動を伝達する操作部は、運転者がシフトチェンジ操作を行う際に運転者と接する部分であれば良く、上記の操作部に限るものではない。例えば運転者の手と接触するハンドル部、運転者が着座する運転座席部、また運転者が着用しているシートベルトであっても良い。
【0044】
ここで、図6を参照して、制御部11における偏心モータの制御処理の流れを説明する。図6は、制御部における偏心モータの制御処理の流れを示すフローチャートである。
【0045】
まず、自動車のイグニッションスイッチがオンになりエンジンが動作するのと同時に、クラッチペダル操作状態検知部16はクラッチペダル15の操作状態を検知し始め、クラッチペダル15が踏み込み始める、つまりシフトチェンジ操作が開始されるまで待機する(ステップS101のNO)。
【0046】
そして、クラッチペダル操作状態検知部16はクラッチペダル15が踏み込み始められたことを検知すると(ステップS101のYES)、エンジン振動周波数算出部11aは、エンジン回転数計測部18からエンジン回転数を取得し(ステップS102)、エンジン振動周波数を算出する(ステップS103)。
【0047】
またトランスミッション振動周波数算出部11bは、トランスミッション回転数計測部19からトランスミッション回転数を取得し(ステップS104)、トランスミッション振動周波数を算出する(ステップS105)。
【0048】
また駆動指示出力部11cは、クラッチペダル偏心モータ20に対して、エンジン振動周波数算出部11aで算出されたエンジン振動周波数で振動するように駆動制御信号を出力する(ステップS106)。またアクセルペダル偏心モータ21に対しても、エンジン振動周波数で振動するように駆動制御信号を出力する(ステップS107)。さらに駆動指示出力部11cは、シフトレバー偏心モータ22に対しては、トランスミッション振動周波数算出部11cで算出されたトランスミッション振動周波数で振動するように駆動制御信号を出力する(ステップS108)。
【0049】
クラッチペダル操作状態検知部16はクラッチペダル15が操作状態を検知し続けており、クラッチペダル15が離されるまで(ステップS109のNO)、ステップS102に戻り、制御部11は、各回転数に基づいて振動周波数を算出し、偏心モータにその周波数で振動するように駆動制御信号を出力し続ける。
【0050】
クラッチペダル操作状態検知部16はクラッチペダル15が離されたことを検知すると(ステップS109のYES)、クラッチ14が接続され、シフトチェンジ操作が終了したので、駆動指示出力部11cはクラッチペダル偏心モータ20、アクセルペダル偏心モータ21およびシフトレバー偏心モータ21に対して、各振動周波数で振動するように駆動制御信号の出力を停止する(ステップS110)。
【0051】
エンジンが停止するまでステップS101に戻り処理を繰り返し(ステップS111のNO)、次のシフトチェンジ操作時に上述した一連の処理を繰り返す。そして、エンジンが停止した時(ステップS111のYES)、本処理を終了する。
【0052】
以上の実施形態で説明した各機構や回路の構成によって、マニュアル式変速機構の自動車のマニュアル式変速機構装置を運転者が操作する際、いわゆるシフトチェンジ操作時に、変速ショックが極めて少ない変速操作を行うことが可能となる。
【0053】
例えば、車両が下り坂を走行中であるときに運転者がクラッチペダル15を踏み込むと、クラッチ14はトランスミッション12とエンジン23との機械的な連結が外れ、アクセルペダル17を踏み込まない限りエンジン23側の回転数(エンジン回転数)は低くなる。一方、トランスミッション12側の回転数(トランスミッション回転数)は下り坂であるため上昇する。運転者は、シフトレバー13、クラッチペダル15およびアクセルペダル17のそれぞれに備わった各偏心モータ20〜22によって生じる振動によって、シフトレバー13から把握することのできるトランスミッション12側の回転数と、クラッチペダル15もしくはアクセルペダル17から把握することのできるエンジン23側の回転数との差を感覚的に把握することができる。
【0054】
これにより、運転者はトランスミッション回転数に基づいて算出されたトランスミッション振動周波数と、エンジン回転数に基づいて算出されたエンジン振動周波数とを合わせるようにアクセルペダル17を調整しながら踏み込むことで、シフトチェンジ操作でクラッチを繋ぐ時のショックを最小限に抑えることが可能となる。また運転者がエンジンブレーキを作動させようとしてシフトダウンした時にも、同様に変速時のショックを最小限に抑えられる。
【0055】
さらに、運転者が片足でブレーキペダル52とアクセルペダル17とを同時に踏み込むヒールアンドトゥ操作を行う場合にも、運転者がブレーキペダル52を踏み込むことによって、駆動部24にブレーキが作用し、トランスミッション回転数とエンジン回転数とに差が生じる。この時、運転者は上述したようにシフトレバー偏心モータ22の振動周波数とクラッチペダル偏心モータ20もしくはアクセルペダル偏心モータ21の振動周波数とを合わせるようにアクセルペダル17を調整しながら踏み込むことにより、ヒールアンドトゥ操作によるシフトチェンジ操作でもクラッチを繋ぐ時のショックを最小限に抑えることが可能となる。
【0056】
なお以上の実施形態で説明された各機構や回路の構成、例えば偏心モータの形状、大きさおよび配置箇所については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、また偏心モータの振動周波数の算出方法等についても例示にすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、マニュアル式変速機構の自動車のマニュアル式変速機構装置として用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の本実施形態に係るマニュアル式変速機構装置の構成を示すブロック図である。
【図2】制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】マニュアル式変速機構装置が搭載された自動車室内を示す斜視図である。
【図4】クラッチペダルの要部構成を示す斜視図である。
【図5】シフトレバーの要部構成を示す斜視図である。
【図6】制御部における偏心モータの制御処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0059】
10 マニュアル式変速機構装置
11 制御部
11a エンジン振動周波数算出部
11b トランスミッション振動周波数算出部
11c 駆動指示出力部
12 トランスミッション
13 シフトレバー
14 クラッチ
15 クラッチペダル
16 クラッチペダル操作状態検知部
17 アクセルペダル
18 エンジン回転数計測部
19 トランスミッション回転数計測部
20 クラッチペダル偏心モータ
21 アクセルペダル偏心モータ
22 シフトレバー偏心モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機と変速機構部とを連結するクラッチ機構部を備えるマニュアル式変速機構装置において、
前記クラッチ機構部より前記原動機側の回転数を検出する原動機回転数検出手段と、
前記クラッチ機構部より前記変速機構部側の回転数を検出する変速機構部回転数検出手段と、
前記原動機回転数検出手段により検出された前記原動機側の回転数に基づいて、第1の振動周波数を算出する第1の振動周波数算出手段と、
前記変速機構部回転数検出手段により検出された前記変速機構部側の回転数に基づいて、第2の振動周波数を算出する第2の振動周波数算出手段と、
前記第1の振動周波数算出手段により算出された前記第1の振動周波数で振動し、第1の操作部に振動を伝達する第1の振動手段と、
前記第2の振動周波数算出手段により算出された前記第2の振動周波数で振動し、第2の操作部に振動を伝達する第2の振動手段と、
を備えることを特徴とするマニュアル式変速機構装置。
【請求項2】
前記クラッチ機構部のクラッチペダルの操作状態を検知するクラッチペダル操作状態検知手段と、
前記クラッチペダル操作状態検知手段により前記クラッチペダルが操作されている状態であることが検知されている間、前記第1の振動手段および前記第2の振動手段に対して前記振動周波数で振動するように駆動指示を出力する駆動指示出力手段と、
を備えることを特徴とする請求項1記載のマニュアル式変速機構装置。
【請求項3】
前記第1の操作部は前記クラッチペダルおよびアクセルペダルであり、前記第2の操作部はシフトレバーであることを特徴とする請求項1または2記載のマニュアル式変速機構装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−121587(P2009−121587A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296041(P2007−296041)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】