説明

モータ制御装置、画像形成装置

【課題】リアルタイムに転写ベルトの表面速度の変動を抑制する制御を行うことが可能なモータ制御装置、画像形成装置を提供することを目的としている。
【解決手段】転写ベルトが駆動を開始した際に、転写ベルトが所定回数周回するまでの間は、転写ベルトの駆動開始前にサンプリングした転写ベルトの表面速度の変動成分と、転写ベルトが駆動開始してからサンプリングした転写ベルトの表面速度の変動成分とを用いて算出した目標関数に基づき転写ベルトを駆動させる駆動ローラの回転を制御することで、リアルタイムに駆動開始後も転写ベルトの表面速度の変動を抑制する制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動ローラと従動ローラとに掛け渡されて記録材を搬送する無端ベルトと前記駆動ローラを駆動させる駆動モータとを有し、前記駆動モータを制御して前記駆動ローラを回転させて前記無端ベルトを周回させるモータ制御装置と、このモータ制御装置を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のタンデム方式の画像形成装置において、画像を印刷用紙等の記録媒体に転写する方式として、直接転写方式と中間転写方式とがある。直接転写方式では記録媒体を支持しながら走行する無端ベルトが転写ベルトとして採用され、中間転写方式では感光体から画像を受け取り担持する無端ベルトが転写ベルトとして採用されるのが一般的である。
【0003】
タンデム方式の画像形成装置においてカラー印刷を行う場合、各色のトナー画像を精度よく重ねることが色ズレの発生を防止するうえで重要である。トナー画像を重ねる際の精度は、転写ベルトの速度変動に依存する。例えば転写ベルトの表面速度に変動がある場合、各色のトナー画像が所定の位置で重ならず、色ズレが発生する。
【0004】
このため、上記何れの転写方式においても転写ベルトの表面速度の変動による色ずれを回避するために、転写ベルトを駆動する駆動ローラの回転速度をフィードバック制御することが有効な手段となっている。フィードバック制御は、駆動ローラを駆動させるための従動ローラのうちのひとつにエンコーダを取り付け、エンコーダの回転角速度変動に応じて行う。
【0005】
しかし、この方法は微小な転写ベルトの厚さによって生じる転写ベルトの表面速度の僅かな変動については考慮されていない。そこでこの問題を解決する技術として、特許文献1には、転写ベルトの厚みによって発生する表面速度の変動をエンコーダの回転角速度の交流成分として計測し、転写ベルトの厚みによって発生する表面速度を安定化する制御が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の発明では、ベルトホームポジション信号を基準に転写ベルトを複数回周回させてサンプリングされた回転角速度の交流成分を加算平均することで、転写ベルトの表面速度の変動成分を減少させている。
【0007】
しかしながらこの方法では、転写ベルトを複数回周回させないと、回転角速度の交流成分の振幅と位相とを検出することができない。よって転写ベルトが複数回周回するまではリアルタイムに転写ベルトの表面速度の変動を抑える制御を行うことができず、色ズレが発生する等の画質の低下に繋がる可能性がある。
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みてこれを解決すべくなされたものであり、リアルタイムに転写ベルトの表面速度の変動を抑制する制御を行うことが可能なモータ制御装置、画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の如き構成を採用した。
【0010】
本発明は、駆動ローラと従動ローラとに掛け渡された無端ベルトと前記駆動ローラを駆動させる駆動モータとを有し、前記駆動モータを制御して前記駆動ローラを回転させて前記無端ベルトを周回させるモータ制御装置であって、前記駆動ローラの回転角速度を検出する第一検出手段と、前記従動ローラの回転角速度を検出する第二検出手段と、前記駆動ローラの回転角速度と前記従動ローラの回転角速度との差分から前記無端ベルトの周回毎の表面速度の変動成分の振幅値及び位相値を検出する変動検出手段と、前記無端ベルトの予め設定された所定周回分の前記変動成分の振幅値及び位相値を平均化して前記駆動モータを制御するための目標関数を算出する目標関数演算手段と、前記駆動モータが停止要求を受けたとき前記目標関数演算手段により算出された目標関数の振幅値及び位相値が格納される記憶手段と、を有し、前記目標関数演算手段は、前記駆動モータが駆動開始したとき、前記駆動モータの駆動が開始してから前記無端ベルトが予め設定された所定回周回するまでの間、前記記憶手段に格納された前記振幅値及び位相値と、前記駆動モータが駆動開始してから前記変動検出手段により検出された前記変動成分の振幅値及び位相値と、を用いて前記目標関数を算出する構成とした。
【0011】
また本発明のモータ制御装置において、前記目標関数演算手段は、前記駆動モータが駆動開始してから前記無端ベルトが予め設定された所定回周回するまでの間において、これから検出される周回毎の変動成分の振幅値及び位相値の代わりに前記記憶手段に格納された前記振幅値及び位相値を用いて前記目標関数を算出する構成とした。
【0012】
また本発明のモータ制御装置において、前記目標関数算出手段は、前記無端ベルトが周回する毎に、直前の周回で検出された変動成分の振幅値及び位相値を含む所定周回分の変動成分の振幅値及び位相値を平均化して前記目標関数を算出する構成した。
【0013】
また本発明のモータ制御装置において、前記記憶手段に前記振幅値及び位相値が格納されていないとき、前記目標関数算出手段は、前記無端ベルトが予め設定された所定回周回するまでの間目標関数の算出を行わない構成とした。
【0014】
また本発明のモータ制御装置において、前記駆動モータの駆動が停止している時間が予め設定された所定の時間以上であるとき、前記目標関数演算手段は、前記無端ベルトが予め設定された所定回周回するまでの間目標関数の算出を行わない構成とした。
【0015】
また本発明のモータ制御装置において、前記無端ベルト上に記録材が配置されたとき、前記目標関数演算手段は、前記無端ベルトが予め設定された所定回周回するまでの間目標関数の算出を行わず、前記無端ベルトは、前記目標関数演算手段が前記目標関数の算出を行ってから前記記録材の搬送を開始する構成とした。
【0016】
本発明は、駆動ローラと従動ローラとに掛け渡されて記録材を搬送する無端ベルトと前記駆動ローラを駆動させる駆動モータとを有し、前記駆動モータを制御して前記駆動ローラを回転させて前記無端ベルトを周回させるモータ制御装置を有する画像形成装置であって、前記モータ制御装置は、前記駆動ローラの回転角速度を検出する第一検出手段と、前記従動ローラの回転角速度を検出する第二検出手段と、前記駆動ローラの回転角速度と前記従動ローラの回転角速度との差分から前記無端ベルトの周回毎の表面速度の変動成分の振幅値及び位相値を検出する変動検出手段と、前記無端ベルトの予め設定された所定周回分の前記変動成分の振幅値及び位相値を平均化して前記駆動モータを制御するための目標関数を算出する目標関数演算手段と、前記駆動モータが停止要求を受けたとき前記目標関数演算手段により算出された目標関数の振幅値及び位相値が格納される記憶手段と、を有し、前記目標関数演算手段は、前記駆動モータが駆動開始したとき、前記駆動モータの駆動が開始してから前記無端ベルトが予め設定された所定回周回するまでの間、前記記憶手段に格納された前記振幅値及び位相値と、前記駆動モータが駆動開始してから前記変動検出手段により検出された前記変動成分の振幅値及び位相値と、を用いて前記目標関数を算出する構成とした。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、リアルタイムに転写ベルトの表面速度の変動を抑制する制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第一の実施形態の画像形成装置100の構成を説明する図である。
【図2】第一の画像形成装置100における転写ベルト10を説明するための斜視模式図である。
【図3】変動成分と目標関数を説明するための図である。
【図4】第一の実施形態の画像形成装置100の駆動モータ17を制御するモータ制御装置110を説明するブロック図である。
【図5】第一の実施形態の画像形成装置100の動作の概略を説明するための図である。
【図6】第一の実施形態において駆動モータ17の起動後の動作を説明するフローチャートである。
【図7】目標関数が展開されたテーブル70の一例を示す。
【図8】第二の実施形態において駆動モータ17を停止させる処理を説明するフローチャートである。
【図9】第二の実施形態において駆動モータ17の起動後の動作を説明するフローチャートである。
【図10】第二の実施形態において駆動モータ17の起動後の動作の別の例を説明するフローチャートである。
【図11】第三の実施形態において駆動モータ17の起動後の動作を説明するフローチャートである。
【図12】第三の実施形態において駆動モータ17の起動後の動作の別の例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、転写ベルトが駆動を開始した際に、転写ベルトが所定回数周回するまでの間は、転写ベルトの駆動開始前にサンプリングした転写ベルトの表面速度の変動成分と、転写ベルトが駆動開始してからサンプリングした転写ベルトの表面速度の変動成分とを用いて算出した目標関数に基づき転写ベルトを駆動させる駆動ローラの回転を制御することで、リアルタイムに駆動開始後も転写ベルトの表面速度の変動を抑制する制御を行う。
(第一の実施形態)
以下に図面を参照して本発明の第一の実施形態について説明する。図1は、第一の実施形態の画像形成装置100の構成を説明する図である。
【0020】
本実施形態の画像形成装置100は、タンデム型で中間転写(間接転写)方式を採用する電子写真複写機である。画像形成装置100は、給紙テーブル200に載せられている。また画像形成装置100はスキャナ300を有し、スキャナ300上には原稿自動搬送装置(ADF)400が取り付けられている。
【0021】
本実施形態の画像形成装置100は、その中央に像担持体としての中間転写体である無端ベルトからなる転写ベルト10が設けられている。転写ベルト10は、3つの支持回転体としての従動ローラ14、16、駆動ローラ15に掛け渡されており、図中時計回り方向に回転移動する。本実施形態の画像形成装置100は、駆動ローラ15を転写ベルト10の駆動ローラとしている。
【0022】
画像形成装置100において、転写ベルト10は従動ローラ14と駆動ローラ15との間に張り渡たされており、転写ベルト10と対向するようにタンデム画像形成部20が配置されている。タンデム画像形成部20は、転写ベルト10の搬送方向に沿って並べられたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の4つの画像形成部18により構成されている。タンデム画像形成部20の上方には、潜像形成手段としての露光装置21が設けられている。
【0023】
転写ベルト10を挟んでタンデム画像形成部20の反対側には、第2の転写手段としての2次転写装置22が設けられている。2次転写装置22は、2つのローラ23間に記録材搬送部材としてのベルトである2次転写ベルト24が掛け渡されて構成される。2次転写ベルト24は、転写ベルト10を介して支持ローラ16に押し当てられるように設けられている。転写ベルト10上の画像は、2次転写装置22により記録材であるシートに転写される。
【0024】
2次転写装置22の図中左方には、シート上に転写された画像を定着させる定着装置25が設けられている。定着装置25は、定着ベルト26に加圧ローラ27が押し当てられた構成となっている。
【0025】
本実施形態の画像形成装置100では、原稿自動搬送装置400の原稿台30上に原稿をセットする。または原稿自動搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じてそれで押さえる。その後、図示しないスタートスイッチを押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットした場合は原稿か搬送されたコンタクトガラス32上へと移動する。コンタクトガラス32上に原稿をセットした場合は、直ちにスキャナ300が駆動して原稿を読み取る。
【0026】
原稿の読取りに並行して、後述する駆動モータ17で駆動ローラ15を回転駆動させる。これにより転写ベルト10が図中時計回り方向に周回する。また転写ベルト10の周回に伴って残り2つの従動ローラ14、16が連れ回り回転する。
【0027】
同時に、個々の画像形成部18において潜像担持体としての感光体ドラム40Y、40M、40C、40Kが回転され、各感光体ドラム上にイエロー、マゼンタ、シアン、黒の単色のトナー画像(顕像)が露光現像により形成される。各感光体ドラム40Y、40M、40C、40K上のトナー画像が転写ベルト10上で互いに重なり合うように順次転写して、中間転写ベルト10上に合成カラー画像を形成する。
【0028】
図2は、第一の画像形成装置100における転写ベルト10を説明するための斜視模式図である。
【0029】
駆動ローラ15は、伝達機構18を介して駆動源としての駆動モータ17からの回転駆動力が伝達される。具体的には、駆動モータ17からの回転駆動力は、駆動モータの出力軸17aに伝達される。出力軸17aに伝達された回転駆動力は、出力軸17aと接触している第1の回転体に18a伝達される。第1の回転体18aに伝達された回転駆動力は、第1の回転体と接触している第の回転体18bに伝達され、第2の回転体18bと接触している駆動軸15aに伝達されて駆動ローラ15を回転させる。
【0030】
本実施形態の従動ローラ14には、駆動支持回転体検出手段としてのロータリエンコーダ14aが設けられており、従動ローラ14の回転角速度を検知する。また本実施形態の駆動モータ17は、駆動モータ17の回転角速度を検出するためのFG信号を発生する図示しないFG信号発生手段が設けられている。尚駆動モータ17の回転角速度は、駆動ローラ15の回転角速度に対応する。または本実施形態では、FG信号発生手段の代わりに、駆動ローラ15の回転角速度を検出する図示しないロータリエンコーダが設けられていても良い。
【0031】
本実施形態の画像形成装置100では、従動ローラ14に設置されたロータリエンコーダ14aを用いて転写ベルト10の回転周期で発生する変動成分を認識し、適切な指令値を生成してフィードバック制御を行う。
【0032】
変動成分の認識方法としては、駆動ローラ15の回転角速度と従動ローラ14の回転角速度のサンプルリングを行う。本実施形態では、サンプルリングされた駆動ローラ15の回転角速度と従動ローラ14の回転角速度との差から求められる変動成分の振幅値及び位相値を転写ベルト10の回転周期で発生する変動成分とする。本実施形態の画像形成装置100は、この変動成分により転写ベルト10の表面速度に変動が生じないように、変動成分をキャンセルするような振幅値及び位相値を有する目標関数を算出し、目標関数に基づき駆動モータ17のフィードバック制御を行う。
【0033】
以下に図3を参照して本実施形態における変動成分と目標関数について説明する。図3は、変動成分と目標関数を説明するための図である。
【0034】
本実施形態の転写ベルト10の表面速度は、後述するモータ駆動部から出力されたパルス信号により駆動モータ17の駆動が開始されると、モータ駆動部から出力されたパルス信号の数に応じて早くなる。図3に示す直線33は、駆動モータ17の駆動開始時からの転写ベルト10の理想的な表面速度を示す。
【0035】
転写ベルト10の表面速度が直線33で示されるような一定速度で周回させる必要がある。しかしながら、実際には転写ベルト10の厚みにより、転写ベルト10の表面速度に変動が生じる。転写ベルト10の厚みによる表面速度の変動は、転写ベルト10の特性上サインカーブになり、図3の曲線34のように示される。
【0036】
転写ベルト10の表面速度が変動すると、実際のベルト移動位置が目標とするベルト移動位置からずれてしまい、感光体ドラム40Y、40M、40C上の各トナー画像の先端位置が転写ベルト10上でずれて色ずれが発生する。
【0037】
また、転写ベルト10の表面速度が相対的に速い時に転写ベルト10上に転写されたトナー画像部分は、本来の形状よりもベルト周方向に引き延ばされた形状となる。また転写ベルト10の表面速度が相対的に遅い時に転写ベルト10上に転写されたトナー画像部分は、本来の形状よりもベルト周方向に縮小された形状となる。この場合、最終的にシート上に形成された画像には、転写ベルト10の周方向に対応する方向に周期的な画像濃度の変化(バンディング)が表れる。
【0038】
そこで、本実施形態の画像形成装置100では、転写ベルト10の表面速度の変動を抑制するために、転写ベルト10の厚みにより生じたサインカーブを打ち消すような目標関数を算出する。目標関数の算出についての詳細は後述する。画像形成装置100は、算出された目標関数に基づき生成された信号により、駆動ローラ15を駆動させる駆動モータ17を制御する。
【0039】
本実施形態において、サインカーブを打ち消す目標関数に基づき生成された信号により駆動モータ17を制御すると、転写ベルト10の表面速度は、図3の曲線35で示されるようになる。本実施形態では、転写ベルト10の表面速度が曲線35で示される速度となるように駆動モータ17を制御することで、転写ベルト10の厚みにより生じる表面速度の変動を打ち消して、転写ベルト10の表面速度を直線33に示す理想的な表面速度に近づける。
【0040】
また本実施形態の画像形成装置100では、転写ベルト10の状態が変化すると転写ベルト10の表面速度は変動する。転写ベルト10の状態の変化とは、例えば記録材であるシートが搬送されて、転写ベルト10上にシートが置かれたとき等である。
【0041】
このような状態の変化は、転写ベルト10の厚さや転写ベルト10の周回動作とは無関係にランダムに発生する。よって本実施形態の画像形成装置100では、目標関数を算出する際に転写ベルト10を所定回数周回させて、各周回毎に転写ベルト10の表面速度の変動成分を取得しておき、所定周回分の変動成分を平均化して目標関数を算出する。よって本実施形態では、ランダムに発生する転写ベルト10の表面速度の変動も抑えることができる。
【0042】
また本実施形態の画像形成装置100では、転写ベルト10が駆動を開始してから所定回周回するまでの間は、転写ベルト10の駆動開始前に取得した変動成分と、転写ベルト10の駆動開始後に取得した変動成分とを用いて目標関数を算出する。よって本実施形態の画像形成装置100では、転写ベルト10の駆動が開始してから目標関数を算出する際に、転写ベルト10が所定回周回するまで待つ必要がなく、現在の転写ベルト10の表面速度の変動成分を目標関数に反映させることができる。
【0043】
以下に本実施形態の画像形成装置100による制御について説明する。図4は、第一の実施形態の画像形成装置100の駆動モータ17を制御するモータ制御装置110を説明するブロック図である。
【0044】
本実施形態の画像形成装置100は、モータ制御装置110を有しており、モータ制御装置110により駆動モータ17の駆動を制御する。本実施形態のモータ制御装置110は、モータ駆動部120と、コントローラ部130と、エンコーダ回転検出部140とを有する。
【0045】
以下にモータ駆動部120について説明する。本実施形態のモータ駆動部120は、駆動モータ17、出力制御部121、サーボアンプ122を有する。出力制御部121は、例えばループフィルタとチャージポンプとを有する。
【0046】
本実施形態のモータ駆動部120は、駆動モータ17によって、転写ベルト10が安定した速度で搬送されるように駆動ローラ15を回転させる制御を行う。モータ駆動部120は、駆動モータ17を含めたサーボアンプ122やループフィルタ+チャージポンプを有する出力制御部121を位相比較器として、公知のPLL制御系で構成している。また駆動モータ17は、サーボモータに限らず、ステッピングモータや振動波モータとしても良い。
【0047】
本実施形態のモータ駆動部120は、駆動入力信号として駆動ローラ15の回転角速度情報をコントローラ部130へ送信する。駆動モータ17がステッピングモータの場合は、駆動入力信号として、モータ駆動信号がコントローラ部130へ送信される。ステッピングモータの場合は、モータ駆動パルス列に応じてステップ駆動するので、モータ駆動信号から容易に駆動ローラ15の回転角速度を推測することができる。また駆動モータ17がDCサーボモータの場合は、サーボモータに内蔵されているモータ軸の回転数を検出するMRセンサの信号を駆動入力信号としてコントローラ部130へ送信する。
【0048】
尚本実施形態の駆動入力信号は、例えば駆動ローラ15に設けられたロータリエンコーダの出力信号を駆動入力信号としても良い。
【0049】
本実施形態のモータ制御装置110において、従動ローラ14の同軸上に設けられたロータリエンコーダ14aは、従動ローラ14の回転角に応じた波形を出力する。出力された波形は、エンコーダ回転検出部140を介してコントローラ部130へ送られる。
【0050】
コントローラ部130がアナログ処理の場合、エンコーダ回転検出部140は、エンコーダ出力をパルス波形としてコントローラ部130に送れば良い。コントローラ部130がデジタル処理の場合は、エンコーダ回転検出部140は、エンコーダの検知内容(回転速度検出または回転角変位検出)に応じた処理が行われる。
【0051】
エンコーダの検知内容が回転角速度検出の場合、エンコーダ出力波形の周期を計測し、回転角速度をエンコーダ回転検出部140で算出してからコントローラ部130へ信号を送信する。
【0052】
また本実施形態のエンコーダ回転検出部140は、エンコーダ出力波形(パルス波)をカウントし、任意の時間内に計測されたパルスカウント値から回転角速度を算出してコントローラ部130へ信号を送信しても良い。エンコーダの検知内容が回転角変位検出の場合、エンコーダ出力波形(パルス波)をカウントして回転角変位をエンコーダ回転検出部140で算出してからコントローラ部130へ駆動出力信号を送信する。またエンコーダ回転検出部140は、回転角速度結果を積分して、コントローラ部130へ駆動出力信号を送信するようにしても良い。エンコーダの検知内容を角速度と角変位のどちらにするかについては、制御対象としている転写ベルト10の周期に応じて決めるとよい。
【0053】
次にコントローラ部130について説明する。
【0054】
本実施形態のコントローラ部130は、CPU(Central Processing Unit)又はDSP(Digital Signal Processor)等により実現される。コントローラ部130は、変動検出部131、目標関数演算部132、不揮発メモリ133、目標基準信号生成部134、比較器135を有する。
【0055】
コントローラ部130において、エンコーダ回転検出部140から送られた信号は、変動検出部131又は比較器135に送られる。エンコーダ回転検出部140から送られた信号が駆動出力信号である場合は、この信号は変動検出部131に送られる。エンコーダ回転検出部140から送られた信号が後述するフィードバック制御を行うために検出された信号である場合は、比較器135へ送られる。
【0056】
変動検出部131は、駆動入力信号と駆動出力信号とから転写ベルト10のベルトホームポジション信号を基準とした周回毎の転写ベルト10の表面速度の変動成分(ベルト周期変動)を検出する。変動検出部131の出力値は、ベルト周期変動の基本波及び高調波成分の振幅と位相数値である。
【0057】
本実施形態のベルトホームポジション信号は、転写ベルト10の1回の周回で発生するように設定された信号である。ベルトホームポジション信号は、例えば駆動ローラ15の径や駆動伝達系の減速比などを考慮して、転写ベルト10の1周回分に相当する駆動モータ17の累積回転角を設定する。そして、駆動モータ17の累積回転角が、この設定された値となったらベルトホームポジション信号が発生するようにする。また本実施形態では、従動ローラ14の径を考慮して、転写ベルト10の1周回分に相当する従動ローラ14の累積回転角を設定する。そして従動ローラ14に設置されたロータリエンコーダ14aで回転角検出して、設定した累積回転角になったときにベルトホームポジション信号が発生するようにしてもよい。
【0058】
さらに転写ベルト10が設定された平均速度で搬送されている場合は、ベルト回転周期に相当する時間間隔のクロック信号を設定してもよい。本実施形態では、ベルトホームポジション信号を基準に累積回転角や経過時間を管理することで、現在の転写ベルト10の位相を認識することができる。
【0059】
目標関数演算部132は、変動検出部131で得られた変動成分の振幅値及び位相値を用いて、転写ベルト10の表面速度を一定にするための目標関数を算出する。本実施形態では、目標関数と同じように駆動ローラ15の回転角速度を変動させることで、ベルト搬送速度を一定にすることができる。本実施形態において、目標関数はベルトホームポジション信号を検知する度に設定される。
【0060】
以下に目標関数の算出について説明する。
【0061】
目標関数演算部132は、ベルト周期を一周期(基本波の場合)とするSin波を基準とし、変動検出部131で得られた振幅値に振幅補正係数を乗算して、目標関数の振幅値を決定する。また、目標関数演算部132は、計測された時間を一周期(基本波の場合)とするSin波を基準とし、変動検出部131で得られた位相値に位相補正値を加算して目標関数の位相値を決定する。これにより、基本波の目標関数が算出される。
【0062】
不揮発メモリ133は、目標関数演算部132により算出された目標関数の振幅値と位相値とが格納される。尚図4に示す本実施形態では、目標関数演算部132が振幅値と位相値とを不揮発メモリ133に格納する構成となっているが、これに限定されない。例えば不揮発メモリ133と目標関数算出部132との間に、目標関数算出部132により算出された振幅値と位相値とを不揮発メモリ133に格納する格納手段が別途設けられていても良い。
【0063】
目標基準信号生成部134は、比較器135でフィードバックされるエンコーダ出力信号と比較するための目標基準信号を目標関数に基づき生成する。目標基準信号生成部134で生成される目標基準信号は、エンコーダ回転検出部140からフィードバックされる出力信号によって異なる。
【0064】
比較器135は、目標基準信号とフィードバックされたエンコーダ回転検出信号との差分を算出する。比較器135で算出された差分のデータがモータ駆動部120の出力制御部121に送られる。出力制御部121は、比較部131で算出された差分のデータに応じて出力を調整して駆動モータ17の駆動トルクを調節する。
【0065】
本実施形態のモータ制御装置110では、以上の構成により転写ベルト10の直線部分を所望の速度で搬送することが可能となる。
【0066】
尚本実施形態のコントローラ部130は、CPU又はDSPの処理能力やコスト等をふまえて、ソフトで処理する部分とハードで処理する部分を適宜選択することができる。
【0067】
例えば、コントローラ部130をすべてCPU又はDSPでデジタル処理し、モータ駆動部120への出力の時にD/A変換するように構成しても良い。また、目標関数演算部132までをCPU又はDSPでデジタル処理し、目標基準信号生成部134では目標関数演算部132からの信号に応じてパルス出力周波数を変調する回路で構成してもよい。また変動検出回路134は、ロータリエンコーダ14aの出力パルスと位相比較を行うようというPLL制御系とするように構成しても良い。
【0068】
また本実施形態のコントローラ部130は、すべてを回路で構成するようにしてもよい。CPU又はDSP等でデジタル処理領域を多くすることで、環境、経時変化やノイズの影響を受けにくくなるが、高コスト、量子化離散化ノイズなどが発生してしまう。このようなことを考慮して、ソフトで処理を行う部分、ハードで処理を行う部分を適宜選択することが好ましい。
【0069】
次に、第一の実施形態の画像形成装置100の動作について説明する。図5は、第一の実施形態の画像形成装置100の動作の概略を説明するための図である。
【0070】
本実施形態の画像形成装置100では、駆動モータ17の停止要求を受けてモータ制御装置110が駆動モータ17を停止させたとき、停止要求を受ける直前に用いていた目標関数の振幅値と位相値とを不揮発メモリ133へ記憶する。
【0071】
そして本実施形態の画像形成装置100は、モータ制御装置110が駆動モータ17の起動要求を受けると、不揮発メモリ133に格納された振幅値と位相値と、駆動モータ17が起動されてから1周回した時に検出された変動成分の振幅値及び位相値とを平均化する同期加算を行い目標関数を算出する。目標関数が算出されると、目標関数から振幅値及び位相値を抽出することができる。
【0072】
また本実施形態の画像形成装置100は、モータ制御装置110により駆動モータ17が停止されると、オフセットカウント値を不揮発メモリ133へ記憶させる。本実施形態のオフセットカウント値は、前回駆動モータ17の駆動時に、最後にホームポジション信号を検出してから、駆動モータ17が停止するまでの間に転写ベルト10が移動した量である。本実施形態では、オフセットカウント値を従動ローラ14に設けられたロータリエンコーダ14aの回転角変移量として検出をする。
【0073】
例えばロータリエンコーダ14aの1回転あたりの分解能を800plus/round、従動ローラ14の径を20mmとした場合、転写ベルト10が100mm移動した時のロータリエンコーダ14aの総plus数は、100mm/(20mm×π)×800pulsと検出される。よって検出されたロータリエンコーダ14aの総puls数から転写ベルト10の移動量を算出することが出来る。画像形成装置100は、駆動モータ17が起動した後、不揮発メモリ133からオフセットカウント値を読み出し、オフセットカウント値に基づき転写ベルト10を駆動させる。
【0074】
次に図6を参照して本実施形態の画像形成装置100の動作を説明する。図6は、第一の実施形態において駆動モータ17の起動後の動作を説明するフローチャートである。
【0075】
画像形成装置100において、モータ制御装置110が駆動モータ17の起動要求を受けると(ステップS601)、コントローラ部130の目標基準信号生成部134により不揮発メモリ133に記憶された振幅値、位相値、オフセットカウント値を読み出す(ステップS602)。
【0076】
次に目標基準信号生成部134は、読み出した振幅値及び位相値を展開して転写ベルト10の1周目の目標関数をテーブル化し、読み出したオフセットカウント値から駆動モータ17の制御開始時のテーブル読み出し位置を決定する(ステップS603)。
【0077】
図7は、目標関数が展開されたテーブル70の一例を示す。本実施形態では、不揮発メモリ133に記憶された振幅値及び位相値により示される目標関数がテーブル70に展開されている。本実施形態の目標基準信号生成部134は、テーブル70を参照して比較器135へ供給される目標基準信号を生成する。尚本実施形態では、転写ベルト10の駆動が開始された直後から転写ベルト10が1周回するまでは、テーブル70に展開された目標関数に基づき駆動モータ17が制御される。
【0078】
また本実施形態では、オフセットカウント値から、駆動モータ17の制御開始時のテーブル読み出し開始位置を決定する。
【0079】
駆動モータ17の停止前に最後にホームポジション信号を検出してから駆動モータ17が止まるまでの間の転写ベルト10の移動量は、例えばベルト移動量=総puls数×(15.81mm×π)/700plusと検出される。転写ベルト10の1周長が900mm、転写ベルト10の1周分のテーブルデータ数が200個とした場合、読み出し位置の算出方法は、読取み出し開始位置(アドレス)=(ベルト移動量/ベルト1周長)×テーブルデータ数−1となる。尚、本実施例では読み出し開始位置を算出する計算では、小数点以下は四捨五入とする。
【0080】
図6に戻って、目標基準信号生成部134は、不揮発メモリ133の完了フラグを「0」とする(ステップS604)。完了フラグとは、不揮発メモリ133の特定のビットであり、不揮発メモリ133にデータが格納されているか否かを示す。本実施形態では、完了フラグが「0」である場合、不揮発メモリ133に格納されたデータである振幅値及び位相値、オフセットカウント値が一度読み出されたことを示す。次にモータ駆動部120は、駆動モータ17を起動させてオンさせる(ステップS605)。
【0081】
駆動モータ17がオンとなり転写ベルト10が移動し始めると、コントローラ部130は変動検出部131によりベルトホームポジション信号を検出したか否かを判断する(ステップS606)。ステップS606でベルトホームポジション信号を検出すると、コントローラ部130の変動検出部131は、エンコーダ回転検出部140により従動ローラ14aの回転角速度のサンプリングを開始する(ステップS607)。
【0082】
コントローラ部130が再度ベルトホームポジション信号を検出すると(ステップS608)、目標関数演算部132は、不揮発メモリ133に格納された振幅値及び位相値(以下、メモリ格納データ)と、ステップS607でサンプリングされた回転角速度から検出された1周回目の変動成分の振幅値及び位相値(以下、1周回データ)とを平均化して目標関数を算出する(ステップS609)。
【0083】
本実施形態では、例えば通常動作時に転写ベルト10のN周回分の変動成分を平均化して目標関数を算出する場合、駆動モータ17の起動後転写ベルト10がN周回するまでの間は、まだ検出されていない変動成分の振幅値及び位相値(未検出周回データ)の代わりにメモリ格納データを用いる。すなわち本実施形態の目標関数演算部132は、これから検出される未検出周回データをそれぞれメモリ格納データに置き換えて目標関数の算出を行う。
【0084】
例えば本実施形態において、通常動作時に3周回分の変動成分を平均化して目標関数を算出する場合に、駆動モータ17の起動開始後転写ベルト10が1周回しかしていないときは、まだ検出されていない残り2周回分の未検出周回データの代わりにメモリ格納データを用いて目標関数を算出する。よって目標関数演算部132は、1周回目で検出された変動成分の振幅値及び位相値である1周回データと、2周回目でこれから検出される未検出周回データの代わりであるメモリ格納データと、3周回目でこれから検出される未検出周回データの代わりであるメモリ格納データとの平均化を行い、目標関数を算出する。
【0085】
尚2周回目の未検出周回データの代わりとなるメモリ格納データと、3周回目の未検出周回データの代わりとなるメモリ格納データは、不揮発メモリ133に格納された同一のメモリ格納データである。
【0086】
以下の実施形態の説明では、駆動モータ17が駆動開始後(起動後)最初にベルトホームポジション信号を検出してから1回周回したときの変動成分の振幅値及び位相値とメモリ格納データとにより算出された目標関数を一次目標関数と呼ぶ。一次目標関数が算出されると、目標基準信号生成部134は、一次目標関数に基づき駆動モータ17を制御するための目標基準信号を生成し、比較器135へ出力する。よって転写ベルト10が2周回目に入るときは、一次目標関数に基づき生成された目標基準信号で転写ベルト10の表面速度が制御される。
【0087】
次にコントローラ部130が次にベルトホームポジション信号を検出すると(ステップS610)、転写ベルト10は2周回したことになる。転写ベルト10が2周回すると、目標関数演算部132は、3周回目の未検出データの代わりとなるメモリ格納データと、1周回データと、2周回目で検出された変動成分の振幅値及び位相値である2周回データとを平均化して目標関数を算出する(ステップS611)。ここで算出された目標関数を二次目標関数と呼ぶ。
【0088】
二次目標関数が算出されると、目標基準信号生成部134は、二次目標関数に基づき駆動モータ17を制御するための目標基準信号を生成し、比較器135へ出力する。よって転写ベルト10が2周回目に入るときは、二次目標関数により生成された目標基準信号に基づき転写ベルト10の表面速度が制御される。
【0089】
次に転写ベルト10が次にベルトホームポジション信号を検出すると(ステップS612)、転写ベルト10は3周回したことになる。転写ベルト10が3周回すると、目標関数演算部132は、1周回データと、2周回データと、3周回目で検出された変動成分の振幅値及び位相値である3周回データとを平均化して目標関数を算出する(ステップS613)。ここで算出された目標関数を三次目標関数と呼ぶ。三次目標関数が算出されると、転写ベルト10の表面速度は三次目標関数に基づき制御されることになる。
【0090】
次に転写ベルト10が次にベルトホームポジション信号を検出すると(ステップS614)、転写ベルト10は4周回したことになる。転写ベルト10が4周回すると、目標関数演算部132は、2周回データと、3周回データと、4周回目で検出された変動成分の振幅値及び位相値である3周回データとを平均化して目標関数を算出する(ステップS615)。ここで算出された目標関数を四次目標関数と呼ぶ。四次目標関数が算出されると、転写ベルト10の表面速度は四次目標関数に基づき制御されることになる。本実施形態では、以下同様の処理を繰り返し、駆動モータ17を制御して転写ベルト10の表面速度の変動を抑制する。
【0091】
以上に説明したように、本実施形態では、駆動モータ17が停止されてから再起動する際に、予め決められた所定回転写ベルト10が周回する前から、現在の転写ベルト10の表面速度の変動成分を反映させて駆動モータ17を制御することができる。よって本実施形態によれば、リアルタイムに転写ベルトの表面速度の変動を抑制する制御を行うことができる。
【0092】
(第二の実施形態)
以下に図面を参照して本発明の第二の実施形態について説明する。本発明の第二の実施形態では、不揮発メモリ133にメモリ格納データが格納されているか否かを判断する点が第一の実施形態と相違する。よって以下の第二の実施形態の説明では、第一の実施形態との相違点についてのみ説明し、第一の実施形態と同様の機能構成を有するものには第一の実施形態の説明で用いた符号と同様の符号を付与し、その説明を省略する。
【0093】
始めに、次に図8を参照して本実施形態において、駆動モータ17を停止させるときの動作を説明する。図8は、第二の実施形態において駆動モータ17を停止させる処理を説明するフローチャートである。
【0094】
画像形成装置100において、モータ制御装置110が駆動モータ17の停止要求を受けると(ステップS801)、モータ駆動部120により駆動モータ17をオフさせる(ステップS802)。次にモータ制御装置110においてコントローラ部130は、目標関数演算部132により駆動モータ17の停止要求を受けたときの目標関数の振幅値及び位相値を不揮発メモリ133へ格納する。またこのとき不揮発メモリ133には、オフセットカウント値も格納される(ステップS803)。
【0095】
不揮発メモリ133への振幅値及び位相値、オフセットカウント値の格納が完了したら、コントローラ部130は不揮発メモリ133へ格納完了を示す完了フラグを「1」とし(ステップS803)、処理を終了する。
【0096】
本実施形態では、不揮発メモリ133への各値の格納が完了したときに完了フラグを「1」とすることにより、駆動モータ17を再起動させる際に不揮発メモリ133にメモリ格納データが格納されているか否かを判断することができる。尚不揮発メモリ133にメモリ格納データの格納が完了しない場合とは、例えば駆動モータ17が停止する前に画像形成装置100の電源が遮断された場合等である。
【0097】
次に図9を参照して本実施形態における駆動モータ17が起動したときの動作を説明する。図9は、第二の実施形態において駆動モータ17の起動後の動作を説明するフローチャートである。
【0098】
画像形成装置100において、モータ制御装置110が駆動モータ17の起動要求を受けると(ステップS901)、コントローラ部130は、不揮発メモリ133にメモリ格納データの格納が完了したことを示す完了フラグが「0」であるか否かを判断する(ステップS902)。
【0099】
ステップS902において完了フラグが「1」の場合、不揮発メモリ133にメモリ格納データが格納されているものとして、コントローラ部130は図6のステップS602以降の処理を実行する。
【0100】
ステップS902において完了フラグ「0」の場合、不揮発メモリ133にはメモリ格納データが格納されていない。よってメモリ格納データを用いた目標関数を算出することはできない。よって本実施形態のコントローラ部130は、転写ベルト10の厚みによる表面速度の変動を抑制するための制御(厚み補正制御)の実行を停止する(ステップS903)。
【0101】
ステップS903において厚み補正制御の実行を停止した後、モータ駆動部120は駆動モータ17をオンさせて起動させる(ステップS904)。コントローラ部130は、駆動モータ17が起動してから最初にベルトホームポジション信号を検出すると(ステップS905)、変動検出部131により変動成分の振幅値及び位相値のサンプリングを開始する(ステップS906)。
【0102】
コントローラ部130は、その後転写ベルト10が所定回周回するまで待つ(ステップS907〜ステップS909)。ステップS907〜ステップS909において、転写ベルト10が周回する度に変動検出部131により検出した変動成分の振幅値及び位相値を不揮発メモリ133へ格納する。
【0103】
ステップS909でベルトホームポジション信号を検出すると、転写ベルト10は3周回したことになる。そこでコントローラ部130は、目標関数演算部132により、不揮発メモリ133に格納された1周回データ、2周回データ、3周回データの平均化を行い、目標関数を算出する(ステップS910)。
【0104】
目標関数を算出すると、コントローラ部130は、厚み補正制御の実行を開始する(ステップS911)。ステップS912からステップS914までの処理は、図6のステップS614からステップS616までの処理と同様であるから説明を省略する。
【0105】
このように本実施形態では、不揮発メモリ133にメモリ格納データが格納されていない場合には、転写ベルト10を予め決められた所定回数周回させてから正しい目標関数を算出する。よって本実施形態では、駆動モータ17は常に正しい目標関数に基づいて制御されることになる。よって本実施形態では、転写ベルト10の表面速度の変動を常に正しい目標関数に基づき制御することができる。
【0106】
次に図10を参照して本実施形態における駆動モータ17が起動したときの動作の別の例を説明する。図10は、第二の実施形態において駆動モータ17の起動後の動作の別の例を説明するフローチャートである。
【0107】
図10のステップS1001からステップS1011までの処理は、図9のステップS901からステップS911までの処理と同様であるから説明を省略する。
【0108】
ステップS911において厚み補正制御が開始されると、画像形成装置100は、通紙制御を開始する(ステップS1012)。通紙制御とは、転写ベルト10上に記録材であるシートを搬送する制御である。
【0109】
ステップS1013からステップS1015までの処理は、図9のステップS912からステップS914までの処理と同様であるから説明を省略する。
【0110】
本実施形態では、メモリ格納データが不揮発メモリ133に格納されていない場合には、正しい目標関数による厚み補正制御が開始されるまで記録材のシートを転写ベルト10上へ搬送しない。よって本実施形態では、転写ベルト10の表面速度の変動が抑制されている状態で記録材のシートが転写ベルト10上へ搬送されるため、画像の色ずれの発生等の画質の低下を防止することができる。
【0111】
(第三の実施形態)
以下に図面を参照して本発明の第三の実施形態について説明する。本発明の第三の実施形態では、駆動モータ17が停止していた時間を考慮する点が第一の実施形態と相違する。よって以下の第三の実施形態の説明では、第一の実施形態との相違点についてのみ説明し、第一の実施形態と同様の機能構成を有するものには第一の実施形態の説明で用いた符号と同様の符号を付与し、その説明を省略する。
【0112】
画像形成装置100において、転写ベルト10の駆動が停止した状態が長くなると、転写ベルト10の特性上転写ベルト10の状態が変化する。この状態の変化により、転写ベルト10の厚みによる表面速度の変動も変化する。本実施形態では、転写ベルト10の駆動が停止していた時間を考慮して、厚み補正制御を行う。
【0113】
図11は、第三の実施形態において駆動モータ17の起動後の動作を説明するフローチャートである。
【0114】
画像形成装置100において、モータ制御装置110が駆動モータ17の起動要求を受けると(ステップS1101)、モータ制御装置110は、停止していた時間(待機時間)が予め設定された閾値以上であるか否かを判断する(ステップS1102)。
【0115】
ステップS1102において、待機時間が閾値未満であった場合、モータ制御装置110は、図6のステップS602以降の処理を実行する。ステップS1102において、待機時間が閾値以上であった場合、モータ制御装置110は、ステップS1103以降の処理を実行する。
【0116】
ステップS1103からステップS1114までの処理は、図9のステップS903からステップS914までの処理と同様であるから説明を省略する。
【0117】
このように本実施形態では、転写ベルト10の待機時間に基づき、転写ベルト10の起動前の目標関数の振幅値及び位相値であるメモリ格納データを使用するか否かを判断する。本実施形態では、転写ベルト10の待機時間が閾値以上である場合には、転写ベルト10の状態が転写ベルト10の起動前の状態と変化したとみなし、メモリ格納データは使用せずに新たに所定周回分の変動成分を検出して目標関数を算出する。このため本実施形態では、転写ベルト10の状態に基づき目標関数を算出することができ、常に適切な目標関数に基づき転写ベルト10の表面速度の変動を抑制する制御を行うことができる。
【0118】
次に図12を参照して本実施形態におれる駆動モータ17が起動したときの動作の別の例を説明する。図12は、第三の実施形態において駆動モータ17の起動後の動作の別の例を説明するフローチャートである。
【0119】
図12のステップS1201とステップS1202の処理は、図11のステップS1101とステップS1102の処理と同様であるから説明を省略する。
【0120】
図12のステップS1203からステップS1215までの処理は、図10のステップS1003からステップS1015までの処理と同様であるから説明を省略する。
【0121】
このように本実施形態では、転写ベルト10の状態が転写ベルト10の起動前の状態と比べて変化したとみなした場合には、新たに検出された変動成分により算出された目標関数に基づく制御が開始されるまで転写ベルト10上に記録材のシートを搬送しない。よって本実施形態では、適切な目標関数に基づき転写ベルト10の表面速度の変動が抑制されている状態で記録材のシートが転写ベルト10上へ搬送される。このため本実施形態では、画像の色ずれの発生等の画質の低下を防止することができる。
【0122】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0123】
10 転写ローラ
15 駆動ローラ
17 駆動モータ
100 画像形成装置
110 モータ制御装置
120 モータ駆動部
130 コントローラ部
131 変動検出部
132 目標関数演算部
133 不揮発メモリ
134 目標基準信号生成部
135 比較部
140 エンコーダ回転検出部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0124】
【特許文献1】特開2006−106642号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ローラと従動ローラとに掛け渡された無端ベルトと前記駆動ローラを駆動させる駆動モータとを有し、前記駆動モータを制御して前記駆動ローラを回転させて前記無端ベルトを周回させるモータ制御装置であって、
前記駆動ローラの回転角速度を検出する第一検出手段と、
前記従動ローラの回転角速度を検出する第二検出手段と、
前記駆動ローラの回転角速度と前記従動ローラの回転角速度との差分から前記無端ベルトの周回毎の表面速度の変動成分の振幅値及び位相値を検出する変動検出手段と、
前記無端ベルトの予め設定された所定周回分の前記変動成分の振幅値及び位相値を平均化して前記駆動モータを制御するための目標関数を算出する目標関数演算手段と、
前記駆動モータが停止要求を受けたとき前記目標関数演算手段により算出された目標関数の振幅値及び位相値が格納される記憶手段と、を有し、
前記目標関数演算手段は、
前記駆動モータが駆動開始したとき、前記駆動モータの駆動が開始してから前記無端ベルトが予め設定された所定回周回するまでの間、前記記憶手段に格納された前記振幅値及び位相値と、前記駆動モータが駆動開始してから前記変動検出手段により検出された前記変動成分の振幅値及び位相値と、を用いて前記目標関数を算出するモータ制御装置。
【請求項2】
前記目標関数演算手段は、
前記駆動モータが駆動開始してから前記無端ベルトが予め設定された所定回周回するまでの間において、
これから検出される周回毎の変動成分の振幅値及び位相値の代わりに前記記憶手段に格納された前記振幅値及び位相値を用いて前記目標関数を算出する請求項1記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記目標関数算出手段は、
前記無端ベルトが周回する毎に、直前の周回で検出された変動成分の振幅値及び位相値を含む所定周回分の変動成分の振幅値及び位相値を平均化して前記目標関数を算出する請求項1又は2記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記記憶手段に前記振幅値及び位相値が格納されていないとき、
前記目標関数算出手段は、
前記無端ベルトが予め設定された所定回周回するまでの間目標関数の算出を行わない請求項1ないし3の何れか一項に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記駆動モータの駆動が停止している時間が予め設定された所定の時間以上であるとき、
前記目標関数演算手段は、
前記無端ベルトが予め設定された所定回周回するまでの間目標関数の算出を行わない請求項1ないし3の何れか一項に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
前記無端ベルト上に記録材が配置されたとき、
前記目標関数演算手段は、
前記無端ベルトが予め設定された所定回周回するまでの間目標関数の算出を行わず、
前記無端ベルトは、前記目標関数演算手段が前記目標関数の算出を行ってから前記記録材の搬送を開始する請求項4又は5記載のモータ制御装置。
【請求項7】
駆動ローラと従動ローラとに掛け渡されて記録材を搬送する無端ベルトと前記駆動ローラを駆動させる駆動モータとを有し、前記駆動モータを制御して前記駆動ローラを回転させて前記無端ベルトを周回させるモータ制御装置を有する画像形成装置であって、
前記モータ制御装置は、
前記駆動ローラの回転角速度を検出する第一検出手段と、
前記従動ローラの回転角速度を検出する第二検出手段と、
前記駆動ローラの回転角速度と前記従動ローラの回転角速度との差分から前記無端ベルトの周回毎の表面速度の変動成分の振幅値及び位相値を検出する変動検出手段と、
前記無端ベルトの予め設定された所定周回分の前記変動成分の振幅値及び位相値を平均化して前記駆動モータを制御するための目標関数を算出する目標関数演算手段と、
前記駆動モータが停止要求を受けたとき前記目標関数演算手段により算出された目標関数の振幅値及び位相値が格納される記憶手段と、を有し、
前記目標関数演算手段は、
前記駆動モータが駆動開始したとき、前記駆動モータの駆動が開始してから前記無端ベルトが予め設定された所定回周回するまでの間、前記記憶手段に格納された前記振幅値及び位相値と、前記駆動モータが駆動開始してから前記変動検出手段により検出された前記変動成分の振幅値及び位相値と、を用いて前記目標関数を算出する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−220405(P2010−220405A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64576(P2009−64576)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】