説明

モータ制御装置

【課題】DCモータを使用して高精度の位置制御を行おうとするモータ制御装置では、トルクむらの存在のため、位置決め精度を阻害したり、位置決めのための時間がかかりすぎる場合がある。また、モータ単体では基本的にトルクしか制御できないため精度の良い速度制御ができない。
【解決手段】DCモータ5のインダクタンス成分による逆起電圧を、電圧発生回路13のスイッチング素子36〜39と信号処理回路15に備えるスイッチとを切り換え測定し電機子の角度位置情報を得、これによりトルクむらをトルク補正テーブル18に基づき補正することにより、位置決め精度を向上し位置決めのための時間を短縮する。また、これにより速度を求め、これを基準に速度制御を行うことにより精度の良い速度制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータ制御装置に関し、特に小型のDCモータを使用し、精密な位置制御を行なう装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブラシと整流子とを内臓するDCモータは構成が簡易で安価であり、小型、高効率、大出力、特別な駆動装置が不要といった特徴を有するため、数多くの機器に利用されている。一方、DCモータは高精度な位置決めや極めて低い回転数での安定した回転が求められる場合、次のような障害があり十分な性能を発揮することができなかった。
【0003】
その第1は、モータ単体では基本的にトルクしか制御できない点である。ステッピングモータの場合、複数の相への駆動電流の比率によりモータ単体でも角度位置を直接制御することができる。角度位置を直接制御できるので、速度の制御も容易である。これに対しDCモータは、モータ単体では駆動電流によりトルクを制御することができるのみである。逆起電圧により速度を制御することもある程度可能であるが、これは回転数が低い場合には使用できないし、モータ単体では角度位置を直接制御することは全く不可能である。このためDCモータを用いて変位や速度を制御しようとする場合、速度や変位を検出してフィードバックする装置がモータとは別に必要である。
【0004】
その第2は、トルクむらの存在である。トルクむらの要因には大きくわけて2つある。その1つはコギングトルクの存在である。コギングトルクとはモータの磁気回路のアンバランス等により発生し、モータの回転子をある角度位置に位置させようとするよう発生するトルクで、モータに駆動電圧を印加しない状態でも発生する。今1つはモータの発生するトルク自体のむらである。小型DCモータでは極数が少なく通常は3極である。このため1回転中の発生トルクむらが大きく、また極数が少ないためコギングトルクも大きい。
【0005】
その第3は、ロータの慣性モーメントが大きいことである。小型DCモータは界磁に永久磁石が使用されるため界磁のスペースが少なくて済み、その分直径の大きい回転子を使用することができる。これが高効率、大出力といった特性が実現される一因となる一方、回転子の大直径化は慣性モーメントの増大を招く。装置にもよるが、この慣性モーメントの等価質量は、本来の制御対象の質量の数倍にも達する場合が多い。これは位置決め速度の低下を招く。このような慣性モーメントの大きな制御対象を位置制御する場合、速度フィードバックを使用する必要がある。しかしながらトルクむらや慣性モーメントの値は予めわかっているため、もしも摩擦等による外乱がなければ、このような特性を有するDCモータであってもトルクを制御することにより、ある程度位置や速度を制御することができる。
【0006】
前述した課題に対して、摩擦等による外乱の影響を少なくする技術として特許文献1が知られている。以下、特許文献1に開示された構成を図を用いて説明する。図11は、特許文献1に開示されているモータ制御装置を用いた光ディスク装置の主要回路構成を示すブロック図で、図12は同装置の機構関係を示す上平面図である。これらの図において、101は光ディスク装置、102は光ディスク、103は光ディスク102を記録再生する光学ヘッド、107は光学ヘッド103を光ディスク102の半径方向(図12の矢印A方向)に駆動するスレッドモータ、108はスレッドモータ107の回転軸、181は回転軸108に固定され回転軸108の回転によりウォームギヤとなるリードスクリュー、109はドライバ171を介してスレッドモータ107の回転を制御する制御手段、121は光ディスク102のトラックを光学ヘッド103で追従する際のトラッキングエラー信号生成回路、122はトラッキングエラー信号生成回路121からのトラッキングエラー(TE)信号に基づきトラッキング(TS)信号を生成するトラッキングサーボ回路、123はトラッキングサーボ回路122の出力信号のTS信号に基づきスレッドモータ107にスレッドサーボ(SS)信号を生成するスレッドサーボ回路、124はスレッドサーボ回路123からのSS信号の電圧を比較する比較器、191は比較器124からの信号のタイミングでパルスを発生するパルス発生回路、132は光学ヘッド103に備え光ビームを収束する対物レンズ、141は光ディスク102の半径方向(以下、ラジアル方向と称す)と対物レンズ132の光軸方向とにそれぞれ対物レンズ132を駆動するアクチュエータ、142はトラッキングサーボ回路122からのTS信号によりアクチュエータ141をトラッキング方向に駆動する駆動電圧を出力するトラッキングドライバ、116は光ディスク102の半径方向に光学ヘッド103をガイドするガイドシャフト、115はリードスクリュー181、ウォームホイール241及びピニオンギヤ242を介してスレッドモータ107の回転数を減速して駆動力を伝達するラックギヤである。なお、制御手段109は、光学ヘッド103、スレッドモータ107、トラッキングサーボ回路122、スレッドサーボ回路123等の光ディスク装置101全体の制御を行うマイクロコンピュータ(CPU)であり、比較器124からの信号電圧に応じて光ディスク102の所望のトラックと対物レンズ132の光軸とのずれ量を検出するずれ量検出手段を構成する。
【0007】
以上の構成要素の動作について説明する。光学ヘッド103から照射した光ビームは光ディスク102で反射され光学ヘッド103に帰還し、光学ヘッド103に備える不図示のフォトディテクタで光電変換された信号電圧は、トラッキングエラー信号生成回路121に入力されTE信号を生成する。TE信号がトラッキングサーボ回路122に入力され、TS信号が生成される。このTS信号のレベル(すなわち電圧値)は、基準位置からのラジアル方向における対物レンズ132のずれの大きさおよびその方向に対応している。TS信号は、ドライバ142を介してトラッキングアクチュエータ141に入力されるとともに、スレッドサーボ回路123にも入力される。
【0008】
アクチュエータ141は、TS信号に基づいてラジアル方向に対物レンズ132を駆動し、このアクチュエータ141のラジアル方向の駆動により、対物レンズ132はトラックの中心に向って移動、すなわちトラッキングサーボがかかる(以下、アクチュエータ141はラジアル方向のみに駆動するトラッキングアクチュエータとして説明する)。このトラッキングアクチュエータ141の駆動のみでは、対物レンズ132をトラックに追従させることに限界があり、これをカバーすべく、スレッドモータ107を駆動して光学ヘッド本体131を前記対物レンズ132が移動した方向と同方向に移動し、対物レンズ132を基準位置に戻すように制御する(スレッド制御を行う)。
【0009】
スレッドサーボ回路123ではSS信号が生成される。このSS信号レベル、すなわち電圧値は、基準位置からのラジアル方向における対物レンズ132のずれの大きさおよびその方向に対応している。なお、SS信号は比較器(コンパレータ)124に入力され、比較器124で2値化される。この2値化信号電圧は比較器124から出力され、制御手段109に入力される。
【0010】
図13は、光ディスク装置101のSS信号電圧値、比較器124からの信号電圧およびパルス発生同路191からの信号電圧のタイミングチャート、図14は、スレッド制御における制御手段109の制御動作手順を示すフローチャートである。
【0011】
図13に示すように、比較器124からの信号電圧レベルは、SS信号の電圧レベルがスレショルドレベル(基準電圧値)以上の場合にはハイレベル(H)、スレッドサーボ信号のレベル(電圧値)がスレショルドレベル(基準電圧値)末満の場合にはローレベル(L)になる。この光ディスク装置101では、比較器124からの信号のレベルがローレベル(L)からハイレベル(H)になったと判断したとき、対物レンズ132の基準位置に対するずれ量がある限界値に達したものとされ、制御手段109はパルス発生回路191により所定パターンのパルス信号(パルス信号電圧)を生成し、出力する。このパルス発生回路191で生成されるパルス信号電圧のパターンは、そのパルス信号電圧に基づいてスレッドモータ107が駆動された際、対物レンズ132が基準位置に戻るように予め設定されている。パルス発生回路191からのパルス信号電圧は、ドライバ171を介してスレッドモータ107に印加される。スレッドモータ107は、パルス信号電圧に基づいて駆動し、このスレッドモータ107の駆動により、光学へッド本体131が対物レンズ132の移動方向と同方向に移動して、対物レンズ132が基準位置に戻る。
【0012】
なお、パルス発生回路191から出力されるパルス信号電圧は、図13に示すように、極性の異なる第1のパルス電圧(正のパルス電圧)151と第2のパルス電圧(負のパルス電圧)152とで構成されている。第1のパルス電圧151の絶対値は、スレッドモータ107が光ディスク装置102に組み込まれた状態において、そのスレッドモータ107が作動する電圧(起動電圧)の絶対値より十分に大きい。この場合、第1のパルス電圧151の絶対値は、前記スレッドモータ107が作動する電圧の絶対値の120〜170%程度に設定する。また、第2のパルス電圧152の絶対値は、第1のパルス電圧151の絶対値未満である。この場合、第2のパルス電圧152の絶対値は、第1のパルス電圧151の絶対値の50〜90%程度に設定する。前述したパルス信号電圧がドライバ171を介してスレッドモータ107に印加されると、第1のパルス電圧151によりスレッドモータ107が作動し回転が加速され、第2のパルス電圧152によりスレッドモータ7が制動され(ブレーキがかかり)、対物レンズ132が基準位置に位置するようにスレッドモータ107が停止する。
【0013】
次に、スレッド制御の際の制御手段109の制御動作手順を説明する。図14に示すように、比較器124からの信号電圧のレベルがローレベル(L)からハイレベル(H)に変化したか否かをステップ201で判断する。ステップ201における判断が「NO」の場合、パルス発生回路191はパルス信号電圧を出力せず(ステップ202)、ステップ201の判断にに戻り、再度ステップ201以降を実行する。ステッブ201における判断が「YES」の場合、前述したように、ステップ203でパルス発生回路191によりパルス信号電圧を生成し、パルス信号電圧を出力する。ステップ203の後、ステップ201に戻り、再度ステップ201以降を実行する。こうした構成により、機構の負荷の変動等が生じても、スレッドモータ107を安定して正確に回転駆動させることを図っている。
【0014】
なお、光ディスク装置101では、制御対象である光学ヘッド103を光ディスク102の目的トラック位置に高速で移動し、また当該光ディスク102に対し高精度に対物レンズ132の光軸の目標ラックに対する位置決めする性能が求められている。このような技術として、特許文献2及び特許文献3が 知られている。
【0015】
すなわち、特許文献2は、DCモータ駆動電流を所定の抵抗で電圧値として検出し、検出した電圧を複数のローパスフィルタ及びコンパレータで処理することにより、DCモータ1回転当たりに決まった数のパルス出力を得る技術を開示している。このパルス出力から位置及び速度に関する情報が得られ、当該情報に基づきDCモータを制御する、すなわちDCモータ駆動電流の変化を検出し、DCモータの回転速度を制御することで、高精度の位置決め及び安定した回転を得ることができる。
【0016】
また、特許文献3には、DCモータに対するトルク指令値と、実際にDCモータに流れた駆動電流値とにより、トルクむらを補正するための情報を得、実際の駆動電流指令値を補正する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2000−020974号公報
【特許文献2】特開平4−172984号公報
【特許文献3】特開平7−337069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記の特許文献1に開示の技術は、ロータの慣性モーメントが大きいことに起因する回転し過ぎを抑え、精度を向上させるのには一定の効果があった。しかしながら当該DCモータ制御装置には以下に述べるような課題があった。
【0018】
第1にモータ自体には速度や変位の基準がなく、基本的にオープン制御となるため、移動距離や移動速度は外乱に依存してしまう。光ディスク装置に用いる光学ヘッドの移動手段へのDCモータの応用では、光ディスクに対し光学ヘッドがフォーカス動作を行っている場合には、光ディスクから位置の情報を得ることができるので一見問題はないが、光学ヘッドの高精度な位置決め及び低速での安定した回転が必要なのは、光ディスクから位置の情報を得られる場合ばかりではない。例えば、ドライブの電源が投入され光学ヘッドがフォーカス動作を開始する際には、情報信号の記録または再生速度や記録密度等の光ディスクの固有の情報は当該光ディスクの最内周にあり、当該固有の情報を先ず読み取る必要があるため、フォーカスの引き込み動作は光ディスクの最内周で行わなければならない。これは光学ヘッドは光ディスクの最内周に位置し、最内周では最もディスクの面ぶれが小さいためフォーカスの引き込み動作が確実であり、かつ、光学ヘッドの対物レンズが通常の記録または再生動作よりも光ディスクに接近する可能性のあるフォーカスの引き込み動作時であっても、対物レンズが光ディスクと接触することで光ディスクに傷をつける可能性は軽減できるという利点にも起因し光学ヘッドは光ディスクの最内周に記述された情報を先ず再生する。従って、光ディスク装置の電源投入時、光学ヘッドがフォーカス動作を開始する前に、当該光学ヘッドを光ディスクの最内周位置に移動させなければならない。
【0019】
ところで、光学ヘッドは輸送中に振動等を受けて移動する場合があるので、起動前すなわち電源の投入前の光学ヘッドの位置は不明である。また、コストの都合上光学ヘッドが最内周に位置していることを検出するスイッチ等も設けることができない場合が多い。このような不安定な要素を有する状態から確実に光学ヘッドを光ディスクの最内周に移動させるためには、フルストローク以上確実に移動させるのに十分な時間モータを駆動し、光学ヘッドを最内周のメカ的なストッパーに押し付ける動作を行うことが事実上必要である。
【0020】
さらに、光学ヘッドを移動させる際の摩擦等の負荷は、光ディスク装置の状態や環境によって大きく変化する。また、最内周に光学ヘッドを押し付けた際、ラックとリードスクリューの係合がはずれ、リードスクリューが空転するような状態となるとラックを損傷するので空転は避けなければならない。例えばオープン制御の場合、発生するトルクは変化する摩擦等の負荷に対し十分余裕がある値としなければならない一方、リードスクリューの係合がはずれない値である必要があり、使用可能なトルクの範囲は事実上非常に狭い範囲になってしまうと共に、摩擦等の負荷やリードスクリューの係合がはずれない値の範囲を厳密に見積ると値が設定できない場合も多い。
【0021】
また、この移動に要する時間は、光ディスク装置の起動時間に直接影響するので、できる限り短い必要がある一方、高速で光学ヘッドがストッパーに衝突すると衝突音が発生し、光ディスク装置の商品としての品位が落ちる。その上、前述したように、DCモータのロータの慣性モーメントは大きいので、衝突により光学ヘッドが静止してもロータは回転を続け、リードスクリューが空転するような状態となってしまう。
【0022】
以上のように、光学ヘッドの移動に要する時間の要求を満足し、かつ、衝突によりリードスクリューが空転しない速度の範囲は非常に狭い。このため、DCモータの回転によって1回転あたり決まった数のパルスを発生する回転エンコーダを設ける場合もあるが、コストが高くなる。また、特許文献1のように、速度や変位の基準がない場合は、実際の速度がこの狭い速度範囲内に入るようにすることは非常に困難である。
【0023】
第2の問題点はトルクむらの影響がある点である。上述したように特許文献1では摩擦力に対し比較的大きな駆動パルス電圧を使用することにより、摩擦負荷の影響を比較的小さくすることを可能とする構成であるが、トルクむらに対する対策は何ら施されていない。このためトルクむらにより1パルスあたりの移動量が大きく変動し、光学ヘッドの高精度な位置決めの妨げとなる。
【0024】
また、特許文献2には、前述のように、モータ駆動電流の変化を検出しこれにより、モータの回転速度を検出する構成が開示されている。しかしながらこのように非常に低い回転数で、しかもパルス駆動を行う場合は、特許文献2に開示の方法は使用できない。それは駆動電流が変化するのは、逆起電圧のむらに起因するが、回転数が低いと逆起電圧も小さく、実用的に検出できるレベルにはならないためである。駆動電流が変化する今1つの要因として、ブラシの切り替えタイミングでの抵抗の変動がある。この抵抗変動は、回転数が低い場合でも発生するが、全回転角中の非常に狭い角度でしか発生しない。このためパルス駆動を行う場合にはこの変化を取りこぼしてしまう可能性が高く、安定な検出ができない。また、仮に検出できたとしても、この抵抗の変動はブラシの切り替えタイミングの位置だけでパルス状に発生し、例えば3極の小型DCモータの場合には、1回転に6パルス発生するだけなので分解能は荒く、トルクむらの補正にも使用できない。
【0025】
さらに、特許文献3には前述したように、モータに対するトルク指令値と実際に流れた駆動電流値とよりトルクむらを補正するための情報を得、実際の駆動電流指令値を補正する構成が開示されているが、これも特許文献2の上述と同様の理由で回転数が非常に低い場合は逆起電圧も小さく、駆動電流変動が実用的に検出できるレベルにはならず、この方法によるトルクむら補正も不可能である。
【0026】
すなわち、DCモータは小型かつ低電圧で動作し効率も比較的よい。しかしながら、その出力トルクは駆動電流にほぼ比例するが励磁の切換は機械的な接点であり、極数も最小限であるため1回転中の出力トルクむらは大きく、出力トルクが駆動電流に比例しているといえるのは1回転360°の平均トルクで、3.6°というような小さな回転角を取り出した場合、角度位置によるトルクの変動が大きい。また、DCモータ5の界磁が永久磁石で構成するため、界磁のスペースは小さくて済むが、回転子の直径は比較的大きい。このため比較的高い効率を得ているが、反面、鉄と銅の固まりである回転子は密度が大きく、直径も大きいので慣性モーメントが大きい課題があり、従来構成では解決できていない。
【0027】
そこで本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、DCモータを使用し、精密な位置制御を行うことができ、制御動作が安定なモータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明のモータ制御装置は、上記謀題を解決するために、DCモータと、前記DCモータの駆動を伝達してある質量を持つ物体を負荷に抗して駆動する駆動機構と、前記DCモータに電圧を与える電圧発生手段と、前記DCモータの端子電圧測定手段と前記電圧発生手段と前記端子電圧測定手段を制御する制御手段を備えたモータ制御装置であって、前記制御手段は前記電圧発生手段に前記DCモータに測定パルス電圧を印加せしめ、前記モータの電気的自己インダクタンス成分による前記測定パルス電圧に対する逆起電圧を前記端子電圧測定手段により測定した測定値により前記モータの駆動を変化させるようにしたものである。
【0029】
また、本発明のモータ制御装置は前記測定パルスの印加時は前記モータの駆動のための電圧が印加されていないようにしたものである。
【0030】
また、本発明のモータ制御装置は前記モータの駆動はパルス電圧であるようにしたものである。
【0031】
また、本発明のモータ制御装置は前記測定パルス電圧は前記モータを駆動する前記パルス電圧とは異なるタイミングで出力されるようにしたものである。
【0032】
また、本発明のモータ制御装置は前記電圧発生手段はスイッチング素子で構成され前記測定パルス電圧と前記モータを駆動する前記パルス電圧を発生するようにしたものである。
【0033】
また、本発明のモータ制御装置は前記電圧発生手段は前記逆起電圧の測定時に前記モータの端子の一方または両方を電源から開放状態にするようにしたものである。
【0034】
また、本発明のモータ制御装置は前記測定パルスのパルス幅、パルス電圧はこれによる前記逆起電圧が前記端子電圧測定手段の測定範囲になるよう設定されているようにしたものである。
【0035】
また、本発明のモータ制御装置は前記測定パルスは複数回印加され各印加パルス毎に前記電圧測定手段により測定した複数の測定値により前記モータの駆動を変化させるようにしたものである。
【0036】
また、本発明のモータ制御装置は前記複数の測定値の平均値により前記モータの駆動を変化させるようにしたものである。
【0037】
また、本発明のモータ制御装置は前記複数回印加され各印加パルスは互いに極性が異なるものを含むようにしたものである。
【0038】
また、本発明のモータ制御装置は互いに極性が異なる前記測定パルスによる前記測定値の絶対値の差により前記モータの駆動を変化させるようにしたものである。
【0039】
また、本発明のモータ制御装置は前記測定値により前記モータのトルクむらが少なくなるように前記モータの前記駆動を変化させるようにしたものである。
【0040】
また、本発明のモータ制御装置は前記測定値に対し前記駆動が数学的にリニアな関係を持つことにより前記モータのトルクむらが少なくなるようにしたものである。
【0041】
また、本発明のモータ制御装置は前記測定値に対する前記駆動の値を記憶したテーブルを持ち、このテーブルの従い前記駆動を行うことにより前記モータのトルクむらが少なくなるようにしたものである。
【0042】
また、本発明のモータ制御装置は前記測定値により前記物体の位置、速度を検出し、これを用い前記物体の位置、速度が所定の値になるよう前記モータの駆動を変化させるようにしたものである。
【0043】
また、本発明のモータ制御装置は前記測定値を所定の閾値で2値化することにより前記モータ1回転あたり一定数のパルスを得、これにより前記物体の位置、速度が所定の値になるよう前記モータの駆動を変化させるようにしたものである。
【発明の効果】
【0044】
本発明のモータ制御装置によれば、DCモータと、前記DCモータの駆動を伝達してある質量を持つ物体を負荷に抗して駆動する駆動機構と、前記DCモータに電圧を与える電圧発生手段と、前記DCモータの端子電圧測定手段と前記電圧発生手段と前記端子電圧測定手段を制御する制御手段を備えたモータ制御装置であって、前記制御手段は前記電圧発生手段に前記DCモータに測定パルス電圧を印加せしめ、前記モータの電気的自己インダクタンス成分による前記測定パルス電圧に対する逆起電圧を前記端子電圧測定手段により測定した測定値により前記モータの駆動を変化させるようにしたことにより DCモータの角度位置を検出してこれによりDCモータを制御できるので、動作が安定で高精度なモータ制御装置を得ることができるものである。
【0045】
また、本発明のモータ制御装置によれば、前記測定パルスの印加時は前記モータの駆動のための電圧が印加されていなため、逆起電圧が安定に精度よく検出できるので、動作が安定で高精度なモータ制御装置を得ることができる。
【0046】
また、本発明のモータ制御装置によれば、前記モータの駆動はパルス電圧としているため、逆起電圧測定のためのパルスを駆動パルスの発生していない期間に発生させることができるため、逆起電圧がより安定に精度よく検出でき、動作が安定で高精度なモータ制御装置を得ることができる。
【0047】
また、本発明のモータ制御装置によれば、前記測定パルス電圧は前記モータを駆動する前記パルス電圧とは異なるタイミングで出力されるようにしているため、逆起電圧がより安定に精度よく検出でき、動作が安定で高精度なモータ制御装置を得ることができる。
【0048】
また、本発明のモータ制御装置によれば、前記電圧発生手段はスイッチング素子で構成され、前記測定パルス電圧と前記モータとを駆動する前記パルス電圧を発生するようにしているため、測定のための電圧発生手段と駆動のための電圧発生手段とが共用でき、安価なモータ制御装置を得ることができる。
【0049】
また、本発明のモータ制御装置によれば、前記電圧発生手段は前記逆起電圧の測定時に前記モータの端子の一方または両方を電源から開放状態にするようにしているため、逆起電圧がより安定に精度よく検出でき、動作が安定で高精度なモータ制御装置を得ることができる。
【0050】
また、本発明のモータ制御装置によれば、前記測定パルスのパルス幅及び/またはパルス電圧は、これによる前記逆起電圧が前記端子電圧測定手段の測定範囲になるよう設定されているため、逆起電圧を確実に検出でき、動作が安定で高精度なモータ制御装置を得ることができる。
【0051】
また、本発明のモータ制御装置によれば、前記測定パルスは複数回印加され、各印加パルス毎に前記電圧測定手段により測定した複数の測定値により前記モータの駆動を変化させるようにしているため、逆起電圧がより安定に精度よく検出でき、動作が安定で高精度なモータ制御装置を得ることができる。
【0052】
また、本発明のモータ制御装置によれば、前記複数の測定値の平均値により前記モータの駆動を変化させるようにしているため、逆起電圧の誤差の影響が少なくなり、動作が安定で高精度なモータ制御装置を得ることができる。
【0053】
また、本発明のモータ制御装置によれば、前記複数回印加され各印加パルスは互いに極性が異なるものを含むようにしているため、逆起電圧の外部磁界による影響のみを取り出すことができ、動作が安定で高精度なモータ制御装置を得ることができる。
【0054】
また、本発明のモータ制御装置によれば、互いに極性が異なる前記測定パルスによる前記測定値の絶対値の差により前記モータの駆動を変化させるようにしているため、逆起電圧の外部磁界による影響のみを取り出し、これによりモータを駆動すことができ、動作が安定で高精度なモータ制御装置を得ることができる。
【0055】
また、本発明のモータ制御装置によれば、前記測定値により前記モータのトルクむらが少なくなるように前記モータの前記駆動を変化させいるので、DCモータのトルクむらを補正することができ、高精度で、かつ、動作の遅れがないモータ制御装置を得ることができる。
【0056】
また、本発明のモータ制御装置によれば、前記測定値に対し前記駆動が数学的にリニアな関係を持つことにより前記モータのトルクむらが少なくなるようにしているため、前記測定値とトルクむらの補正値を記憶したテーブルを省略することができ、構造の簡単なモータ制御装置を得ることができる。
【0057】
また、本発明のモータ制御装置によれば、前記測定値に対する前記駆動の値を記憶したテーブルを持ち、このテーブルの従い前記駆動を行うことにより前記モータのトルクむらが少なくなるようにしているため、高精度なモータ制御装置を得ることができる。
【0058】
また、本発明のモータ制御装置によれば、前記測定値により前記物体の位置、速度を検出し、これを用い前記物体の位置、速度が所定の値になるよう前記モータの駆動を変化させるため、前記物体の移動速度を度良く制御することができ、前記物体の移動時間が短く、かつ、ストッパへの衝突による弊害をなくすことができるモータ制御装置を得ることができる。
【0059】
また、本発明のモータ制御装置によれば、前記測定値を所定の閾値で2値化することにより前記モータ1回転あたり一定数のパルスを得、これにより前記物体の位置、速度が所定の値になるよう前記モータの駆動を変化させるようにしているため、簡略な構成で速度を検出することができ、構造の簡単なモータ制御装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
以下、本発明のモータ制御装置の一実施形態を図面を参照しながら説明する。図1及び2は、本発明のモータ制御装置を光ディスクドライブに適用した一例を示す概略構成図である。同図において、1は光ディスクドライブ、2は光ディスクドライブ1に備える光学ヘッド23で記録及び/または再生する光ディスク、4は光学ヘッド23をナットピース3及びスライダー31を介して光ディスク2の半径方向(以下ラジアル方向と称す)に移動するリードスクリュー、6はスライダー31が摺動するガイドシャフト、5はピニオン10及び平歯車11を介してリードスクリュー4を軸受7の周りに回転させるDCモータ、9はターンテーブル25上に載置した光ディスク2を回転軸24周りに回転するスピンドルモータ、8はスピンドルモータ9、DCモータ5及び軸受7等を載置するトラバースベースである。なお、上述のナットピース3、リードスクリュー4、DCモータ5、ピニオン10及び平歯車11を総じて光学ヘッド移動機構12と言う。28は半導体レーザ等の光源26から出射した光ビームを収束し光ディスク2の情報層(指示符号は省略)上に焦点を結ばせる対物レンズ、29は対物レンズ28を光ディスク2の主面に直交する方向(以下鉛直方向と称す)及び光ディスク2のラジアル方向にそれぞれ移動させるアクチュエータ、30はアクチュエータ29をラジアル方向に駆動するトラッキング駆動手段、27は光源26から出射した光ビームが情報層で反射された戻り光を受け電気信号に変換するフォトダイオード、73は光学ヘッド23の光ディスク2の内周側を規制する内周ストッパである。
【0061】
次に、上述の光ディスクドライブ1の各構成要素を動作させる回路構成は、17は対物レンズ28をラジアル方向に駆動する駆動信号をトラッキングアクチュエータ30にトラッキングドライバ回路21を介して付与するトラッキングサーボ回路、22はスレッドサーボ回路、13は電源の入力を受け第1のスイッチング手段〜第4のスイッチング手段36〜39を備えた電圧発生回路、14は電圧発生回路13の第1のスイッチング手段36・第2のスイッチング手段37間と第3のスイッチング手段38・第4のスイッチング手段39間との電圧を測定する端子電圧測定回路、15は端子電圧測定回路14の出力電圧を信号処理し後述の制御回路19に信号を付与する信号処理回路である。上記制御回路19は、スイッチング制御回路16、切換回路34、定速送り制御回路33、A/D変換器35、トルク補正テーブル18及びスレッド制御回路20とを含み構成される。
【0062】
以上の構成のメカニカル的な動作及び電気信号的動作について、光ディスク2としてDVD−RAMディスクを例に挙げ説明する。光ディスク2をターンテーブル25に載置すると、スピンドルモータ9は回転軸24周りに所定の回転速度で光ディスク2を回転する。スピンドルモータ9が回転し出すと、光学ヘッド23は光ディスク2の最内周に向けて光学ヘッド移動機構12で移動する。光学ヘッド23が光ディスク2の最内周に移動すると、不図示の光源駆動回路が光源26を所定の強度で発光させ、対物レンズ28を介して光ディスク2の情報層に光ビームを照射し、当該情報層からの反射光をフォトディテクタ27で受けて、光ディスク2に備える不図示のトラックを追従するようにトラッキングアクチュエータ30にトラッキング駆動信号を与えトラッキング制御、及び対物レンズ28をアクチュエータ29により鉛直方向に制御するフォーカス制御を行う。こうしてトラッキング制御及びフォーカス制御を行った後、例えば記録再生速度、記録密度、情報層の種類、未記録領域等の光ディスク2の媒体に関する情報をリードイン領域から読み取り、リードイン領域の外周側の主情報領域(データ領域とも言う)に対して情報信号を記録または記録されて情報信号を再生する。
【0063】
対物レンズ28は光学ヘッド23中で、ラジアル方向の基準位置と鉛直方向の中立位置とが一致するように、不図示のサスペンションバネが設定されている。例えば対物レンズ28のラジアル方向の移動の場合では、トラッキング駆動手段30に電圧が印加されていないときには、対物レンズ28はサスペンションバネの弾性力によって基準位置に位置している。そして、トラッキング駆動手段30にトラッキングドライバ回路21を介して所定の電圧が印加されると、その電圧値の符号および絶対値に応じ、トラッキング駆動手段30が駆動して対物レンズ28が径方向に移動する。すなわち、トラッキングドライバ回路21が出力する電圧値の符号および絶対値に応じて、対物レンズ28は基準位置からラジアル方向(光ディスク2の内周側または外周側)に所定量ずれる。
【0064】
また、光学ヘッド23に取り付けられたナットピース3は、一端がバネによって付勢された状態でリードスクリュー4のネジ溝と噛合して、光学ヘッド移動機構12の一部を構成している。リードスクリュー4は平歯車11と一体に連結され、トラバースベース8に固定されている軸受7に回転自在に軸支されている。リードスクリュー4のねじピッチは例えば4mmである。平歯車11は、DCモータ5の出力軸(符号は省略)に直結されたピニオン10と噛合し、これによりモータの回転数は減速され、リードスクリュー4に伝達される。これにより光学ヘッド23は、DCモータ5の回転に応じてガイドシャフト6に沿い、光ディスク2のラジアル方向を直線的に往復駆動する。光ディスク2の最内周内位置に光学ヘッド23が位置すると、それ以上光学ヘッド23の移動を規制する内周ストッパ73が設けられている。すなわち、光ヘッド23が光ディスク2の最内周の位置で光ヘッド23が内周ストッパ73に当接することにより、光ディスクドライブ1の起動時に光ヘッド23がフォーカス引き込み動作を行うべき位置を決定する。なお、ピニオン10と平歯車11とによる減速比は例えば2である。上述のリードスクリュー4のねじピッチが4mm、ピニオン10と平歯車11とによる減速比が2の場合には、DCモータ5の1回転当たり光ヘッド23は2mmラジアル方向に移動することになる。DCモータ5の最高回転数は一般的に9000r.p.mであるので、光ヘッド23を最高300mm/sの速度で移動させることができ高速なシーク動作が可能であるが、例えばDVD−RAMディスクに必要な±20μmの位置決め精度を得ようとすると、DCモータ5の回転子は±3.6°以内の精度に停止する必要がある。
【0065】
DCモータ5は、例えば界磁に永久磁石を使用した小型の3極モータで、DCモータ5が内蔵するブラシと整流子とにより、他に特別な駆動装置を使用しなくともDC電源のみで周知の通り回転させることができる。
【0066】
電圧発生手段13は、第1のスイッチング手段36〜第4のスイッチング手段39の4つのスイッチング手段で構成され、不図示の5V電源に接続され、光ディスクドライブ1全体はこの5V電源で動作する。電圧発生手段13には、スイッチング信号が制御手段19から上記4つのスイッチング手段それぞれに入力されている。なお、第1のスイッチング手段36〜第4のスイッチング手段39は半導体素子等で構成され、制御手段19からのスイッチング信号によりON−OFFする。また、第1のスイッチング手段36〜第4のスイッチング手段39がON状態になり、この電圧発生手段13とDCモータ5とが低いインピーダンスで直結されることにより、DCモータ5には電源電圧の5Vに近い電圧が印加される。但し、前述したように第1のスイッチング手段36〜第4のスイッチング手段39は半導体素子等で構成され、ON状態でも若干のON抵抗があるため、厳密には出力される電圧は完全に電源電圧の5Vにはならないが以後、5Vであるとして説明する。
【0067】
端子電圧測定手段14はオペアンプ等により構成され、DCモータ端子間に発生する電位差(すなわち電圧)を測定し、基準電位0Vからの電圧として出力する。例えば、DCモータ端子間に発生する電圧が0の場合2.5V、モータの+側端子が−側端子に対して+5Vの場合5V、+側端子が−側端子に対して−5Vの場合0Vが出力される。なお、本実施形態では前述したようにDCモータ5の駆動電圧は5Vであり、端子電圧測定手段14も5Vの電源で動作するので、測定可能なモータ端子間に発生する電圧は最大で5Vまでである。
【0068】
信号処理手段15は、後述するようにサンプルホールド回路、加算器等で構成され、端子電圧測定手段14の出力を特定のタイミングでサンプルホールドし、これに加減算等の処理をした後出力する。
【0069】
制御回路19は、通常、マイクロコンピュータ(CPU)等で構成され、光学へッド23が収納するアクチュエータ29、レーザダイオード26等、DCモータ5、スビンドルモータ9、トラッキングサーボ回路17、スレッドサーボ回路22等、光ディスクドライブ1全体の制御を行う。この制御回路19は、スイッチング制御回路16、トルク補正テーブル18、スレッド制御回路20、定速送り制御回路33、切替回路34、A/D変換器35を内蔵しており、制御回路33が内蔵する上記要素は以下の通りである。
【0070】
スイッチング制御回路16はタイマ等により構成され、電圧発生回路13の第1のスイッチング手段36〜第4のスイッチング手段39の4つのスイッチング手段それぞれにタイミング信号を出力することにより、第1のスイッチング手段36〜第4のスイッチング手段39を短時間ONまたはOFF状態とし、DCモータ5に5Vの電源電圧を短時間パルス状に印加したり、DCモータ5の端子を電源電圧から開放状態にしたりする。なお、スイッチング制御手段16には、後述する切替手段34の出力が入力されている。
【0071】
トルク補正テーブル18は、信号処理手段15の出力とトルクむらとの関係を記録したテーブルを内臓し、信号処理手段15からの出力信号をA/D変換器35でA/D変換した出力信号に対応するトルクむらの補正値を、スレッド制御手段20に出力する。
【0072】
スレッド制御回路20は、いわゆる「スレッド制御状態」の制御を行い、スレッドサーボ(SS)信号とトルク補正テーブルの出力とが入力され、SS信号の値が予め設定した閾値を超えると、特定のパターンのパルスがDCモータ5に印加されるように、スイッチング制御回路16を切換回路34を介して制御する。なお、SS信号の値が当該閾値以下になると、DCモータ5へのパルスの印加を停止する。
【0073】
定速送り制御回路33は、いわゆる「定速送り制御状態」の制御を行い、A/D変換器35の出力と速度指令値とが入力され、A/D変換器35の出力より光学ヘッド23の実際の移動速度を求め、これと速度指令値との差によりスイッチング制御手段16を制御することで、SS信号の値にかかわらず光学ヘッド23の速度が入力された速度指令値の速度になるように制御する。
【0074】
切替手段34は定速送り制御手段33、スレッド制御手段20の出力及びモード切替信号が入力され、定速送り制御手段33とスレッド制御手段20の出力をモード切替信号に従って切り替え、スイッチング制御手段16に入力する。
【0075】
A/D変換器35は、信号処理回路15の出力が入力され、これを例えば6bitの分解能でA/D変換する。
【0076】
次に、以上のような構成を備えた光ディスクドライブ1の動作を説明する。光ディスクドライブ1は再生動作及び定速送り動作等いくつかの動作状態を持つ。例えば再生動作では、光学ヘッド23を目的トラックまたは目的アドレス(以下両者を総じて目的トラックと称す)に移動し、その目的トラックにおいてフォーカス制御、トラッキング制御、スレッド制御および回転数制御(回転速度制御)等を行いつつ、光ディスク1の情報層に記録された情報信号(データ)の読み出しを行う。また、定速送り動作では、SS信号の値にかかわらず、光学ヘッド23の速度が入力された速度指令値の速度になるよう制御される。
【0077】
先ず、再生動作における制御について、トラッキング制御およびスレッド制御に関して詳述する。
【0078】
光学ヘッド23のフォトダイオード27による光電変換後の信号は、トラッキングサーボ回路17に入力される。このトラッキングサーボ回路17は、フォトダイオード27からの信号に基づき電流ー電圧変換した信号は、TE信号を電圧として生成する。トラッキングエラー信号は、光ディスク2のラジアル方向における対物レンズ28のトラック中心からのずれの大きさおよびその方向(以下、両者を総じてトラックの中心からのずれ量と称す)を示す信号である。
【0079】
TE信号は位相の反転や増幅等の所定の信号処理が行われ、TS信号が電圧として生成される。このTS信号は、対物レンズ28がトラックの中心に移動する(TE信号のレベルが0レベルとなる)ように、トラッキングアクチュエータ29を駆動させる駆動電圧の信号である。また、このTS信号のレベル、すなわち電圧値は、基準位置からのラジアル方向における対物レンズ28のずれの大きさおよびその方向(以下、両者を総じて基準位置に対するずれ量と称す)に対応している。
【0080】
TS信号はトラッキングドライバ回路21を介してトラッキングアクチュエータ28に入力されるとともに、スレッドサーボ回路22にも入力される。トラッキングアクチュエータ29はTS信号に基づいて駆動し、このトラッキングアクチュエータ29の駆動により、対物レンズ28はトラックの中心に向って移動、すなわちトラッキングサーボ(TS)がかかる。このトラッキングアクチュエータ29の駆動のみでは、対物レンズ28をトラックに追従させることに限界があり、これをカバーすべくDCモータ5を駆動し、光学ヘッド23本体を前記対物レンズ28が移動した方向と同方向に移動させ、対物レンズ28を基準位置に戻すように制御する(いわゆるスレッド制御を行う)。
【0081】
例えばCD−ROM装置等の再生専用の装置の場合、このトラッキングアクチュエータ29が対物レンズ28をトラックに追従させることのできる範囲は、一般的に概略±200μm程度の範囲である。目標トラックがこの範囲より外にある場合にはスレッド制御を行い光学ヘッド23を移動させ、目標トラックがこの範囲に入るよう制御する。この際の光学ヘッド23の位置決め精度は当然±200μm以下でなければならない。
【0082】
一方、CD−ROMよりも高密度で、しかも記録も行う本実施形態のDVD−RAMディスクの場合、トラックを追従する範囲は更に狭く、例えば±20μm以下であり、光学ヘッド23の位置決め精度も当然±20μm以下でなければならない。
【0083】
なお、スレッドサーボ回路22では、トラッキングサーボ回路17から入力されたトラッキングサーボ信号に対し、高周波成分の除去や増幅等の所定の信号処埋が行われ、これによりスレッドサーボ(SS)信号(すなわち、トラツキングアクチュエータの駆動電圧に対応する電圧)が生成される。このSS信号のレベル、すなわち電圧値は、ラジアル方向における基準位置に対するずれ量に対応している。ところで、SS信号はスレッド制御手段20に入力され、この電圧の絶対値がある基準を超えると、スレッド制御手段20はスイッチング制御手段16により電圧発生手段13にスイッチング信号を出力することによりDCモータ5を駆動し、光学ヘッドをSS信号の絶対値が小さくなる方向に移動する。この様子を図3を用いて説明する。
【0084】
図3は、スレッド制御の際のスレッド制御手段20の制御動作を示すフローチャートである。スレッド制御を行う際切替手段34は、スレッド制御手段の出力を選択し、スイッチング制御手段16に出力する。まずジョブがスタート(ステップ40)すると、ステップ41でSS信号の絶対値が基準値を越えたかどうか判定する。前述のようにこの電圧値は、ラジアル方向における基準位置に対するずれ量に対応している。また、この基準値は対物レンズ28のずれ量は、トラッキングアクチュエータ29が対物レンズ28をトラックに追従させることのできる範囲に対して若干の余裕を持たせて設定されている。
【0085】
ステップ41で、SS信号の絶対値が基準値を越えなかったと判定した場合、ステップ41の判断を繰り返す。ステップ41でSS信号の絶対値が基準値を越えたと判定した場合、ステップ50で基準パルス幅を300μsにセットする。基準パルス幅は、DCモータ5を駆動するパルス電圧のパルス幅の基準となるものである。
【0086】
次にステップ45で、スイッチング信号を電圧発生手段13に出力し、DCモータ5に極めて短いパルス電圧を印加し、そのときの逆起電圧を端子電圧測定回路14で測定し、これを信号処理回路15で処理することにより、DCモータ5のロータ位置を測定する。
【0087】
次にステップ46で、この信号処理回路15の出力をトルク補正テーブル18に参照することによりトルク補正値を決定し、ステップ43以降で出力するパルス電圧のパルス幅を補正することにより、トルクむらを補正する操作をする。なお、これらの動作の詳細については後述する。
【0088】
次にステップ42で、SS信号の極性を判定する。SS信号の極性が正であると判定された場合、ステップ43で正のパルスをDCモータ5に印加する。このときのパルス幅は、基準パルス幅の値にトルク補正テーブル18より得られたパルス幅補正値の値を乗じた値であり、実際の印加は以下の手順で行われる。パルスが印加されない状態では、図1のスイッチング手段は第1のスイッチング手段36と第3のスイッチング手段38とがoffの状態で、第2のスイッチング手段37と第4のスイッチング手段39とがonの状態になっており、DCモータ5の両端子共GNDに直結していることとなり、電圧がかかっていないと同時に両端子がショートされた状態になっている。パルス電圧を印加する場合、この状態からパルス電圧を印加する時間だけ第2のスイッチング手段37をoff、第1のスイッチング手段36をonとすることにより、DCモータ5の+端子を5Vの電源の+側と直結し、−端子を5Vの電源の−側(GND)と直結することとなり、DCモータ5に短時間のパルス電圧を印加し、パルス印加後はまた元の状態(第1のスイッチング手段36と第3のスイッチング手段38とがoffの状態で、第2のスイッチング手段37と第4のスイッチング手段39とがonの状態)に戻す。以上の手順により正のパルスをDCモータ5に印加する。次にステップ47で一定時間待った後、ステップ48でSS信号の絶対値がなお基準値を越えているかどうか判定する。
【0089】
SS信号の極性が負であると判定された場合、ステップ44で負のパルスをDCモータ5に印加する。このときのパルス幅はスレッドサーボ信号の極性が正である場合と同様、基準パルス幅の値にトルク補正テーブル18より得られたパルス幅補正値の値を乗じた値であり、実際の印加の手順もスレッドサーボ信号の極性が正である場合と同様である。但し、パルス電圧を印加する場合当該パルス電圧を印加する時間だけ、第2のスイッチング手段37ではなく第4のスイッチング手段39をoff、第1のスイッチング手段36ではなく第3のスイッチング手段38をonとする点が異なる。次にステップ47で一定時間待った後、ステップ48でスレッドサーボ信号の絶対値がなお基準値を越えているかどうか判定する。
【0090】
ステップ48で、スレッドサーボ信号の絶対値がなお基準値を越えていると判断した場合、ステップ49で基準パルス幅を30μs増加し、ステップ42以降を繰り返す。基準パルス幅はステップ50で300μsに設定されているので、基準パルス幅はここで330μsに増加し、ステップ50以後、このステップ48でスレッドサーボ信号の絶対値がなお基準値を越えていると判断される毎に30μsずつ増加する。なお、ステップ48で、スレッドサーボ信号の絶対値が基準値以下であると判定された場合、ステップ41の判断を繰り返す。
【0091】
ところで、DCモータ5は、電圧発生手段13の出力電圧5Vがパルス状に印加されることにより回転し、光学ヘッド23が移動する。SS信号が正の場合は対物レンズ28が光ディスク2の外周側にシフトし、負の場合は内周側にシフトしている。一方、DCモータ5は、正の電圧を印加されると光学ヘッド23を光ディスク2の外周側に向かって移動させ、負の電圧を印加されると光学ヘッド23を光ディスク2の内周側に向かって移動させる。これにより対物レンズ28の光ディスク2のトラックに対するシフト量は小さくなる。
【0092】
このように微小な距離を移動させようとする場合、各種の摩擦による負荷変動の影響を受けやすいが、パルス電圧が5Vと実質可能な最高電圧であるため、負荷変動の影響は相対的に軽減されている。また、パルス幅を徐々に広げる構成のため、パルスを印加しても全く動かないとか、大きく動き過ぎてしまうという現象も少ない。しかしながら前述のようにこの種の小型DCモータでは、極数が少ない(本実施形態でも3極である)ため、1回転中の発生するトルク自体のむらが大きい。また、極数が少ないためコギングトルクも大きく、トータルでのトルクむらが大きい。移動距離が大きい場合はトルクむらは平均化されるため目立たないが、このような微小距離を移動させる場合は大きく影響する。本実施形態のようにパルス幅を徐々に広げる構成の場合でも、1回転中でのトルクむらでトルクが最大になる場合に合せて初期パルス幅を設定すると、トルクが最小の場合に動き出すのに時間がかかりすぎてしまう場合がある。このため本実施形態では、図3のスレッド制御動作を示すフローチャートにおいて、45でDCモータ5のロータ位置を測定し、46でトルクむらを補正するという動作を行う。これらの動作について説明する。
【0093】
小型DCモーターは、鉄芯にコイルが巻かれた電機子に電流を流すことにより発生する磁界と、永久磁石による界磁の磁界との作用で電機子が回転する構造になっている。単純に電機子に電流を流しただけでは、死点まで回転して停止してしまうので、ブラシと整流子とにより電機子に流れる電流の向きを次々と切り替えて回転を継続できるようになっている。このDCモータの回転動作の原理を図4を参照して説明する。図4において51、52、53は磁極、54,55は界磁、56は磁極51、52及び53の数と同数の分割導体を備えた整流子、57はブラシ、58はDC電源、59a、59bは電流による磁束の向き、60は界磁54及び55による磁束の向き、61は電機子で磁極51、52、53、整流子56及び鉄芯(符号は省略)により構成される。
【0094】
磁極51、52及び53には図示の方向にコイルが巻線され、整流子56にそれぞれ図示のように接続され、電機子61を構成する。整流子56は磁極51、52及び53と一体で回転し、固定された一対のブラシ57が整流子56を介して接触し磁極51、52及び53の巻線に通電すると同時に、磁極51、52及び53の巻線への電流の向きを電機子61の回転と同期して切り替える。これにより、他に特別な駆動回路を用いることなく、DC電源58のみで回転させることができる。以下、DCモータが回転する様子を同図を参照して更に詳しく説明する。
【0095】
図4において電機子61の回転方向は、矢印で示したように時計回り方向である。また、整流子56は120°間隔で3分割された導体で形成され、180°で対向する一対のブラシ57と当該整流子56とが接触しながら回転するので、磁極51、52及び53の巻線への電流の向きは60°毎に切り替えられる。図4(a)、(b)は、このような電流の向きの切り替えが行われた直後の状態を示す。
【0096】
図4(a)において磁極53には電源58が直接接続された状態となり、図示のように電流が流れた結果N極に励磁される。磁極51と52とは直列に接続された状態となり、図示のように電流が流れS極に励磁される。結果として、磁極51、52及び53による磁束の向きは全体として59aの向きになり、界磁54及び55による磁束の向き60とは120°異なる。このため、これを一致させるような力が発生することで回転トルクが生じ、この回転トルクにより電機子61が回転する。
【0097】
磁極51、52及び53に流れる電流がこの状態のまま60°回転すると図4(b)の状態となり、一対のブラシ57と接触している整流子56の導体が入れ替わり、磁極51、52及び53に流れる電流の状態が変化する。逆に表現すると、電流の状態がブラシ57と接触する整流子56の分割導体が変化するまで60°の間は同じ電流の状態で回転する。図4(a)の状態では界磁54及び55による磁束の向き60と磁極51、52及び53による磁束の向き59aとのなす角は120°であったので、このなす角が120°から60°までは間同じ電流の状態で回転することになる。
【0098】
このようにして図4(a)から(b)の状態となることによって磁極51、52及び53への電流の状態が変化すると、磁極51は電源58が直接接続された状態となり、図示のように電流が流れた結果S極に励磁される。磁極52と53とは直列に接続された状態となり、図示のように電流が流れN極に励磁される。結果として、磁極51、52及び53による磁束の向きは全体として59bのようになり、界磁54及び55による磁束の向き60は、図4(a)と同様にやはり120°異なり、これを一致させるような力が発生することで回転トルクが生じ、この回転トルクにより電機子61が更に回転し、磁極51、52及び53に流れる電流がこの状態のまま更に60°回転すると、図4(a)と同じ状態となる。但し、図4(a)に対し120°回転しているので、図4(a)の磁極51の位置には磁極53が位置し、他の磁極52及び53も同様である。この結果ブラシ57と接触している整流子56の分割導体が入れ替わり、磁極51、52及び53に流れる電流の状態が変化する。逆に表現すると、電流の状態がブラシ57と整流子56とにより変化するまでの60°の間は、同じ電流の状態で回転する。図4(b)の状態では、界磁54及び55による磁束の向き60と、磁極51、52及び53による磁束の向き59bとのなす角は120°であったので、このなす角がやはり120°から60°までは間は同じ電流の状態で回転したことになる。
【0099】
以上のように、回転の結果磁極の符号(51〜53)のみが入れ替わった状態になるだけで、界磁54及び55が形成する磁界と磁極51〜53との関係は図4(a)と(b)であることには変わりがない。なお、説明の都合で各磁極に異なる符号51〜53を付けたが、本来磁極51〜53は電気的、磁気的、機械的に全く同じに作られているので本来的にはこれら磁極に区別はない。従って、これ以降も上述した手順を同様に繰り返して電機子61は回転する。
【0100】
このように界磁による磁束の向き60と、磁極51、52及び53による磁束の向き59a、59bとのなす角は常に120°から60°の範囲内であり、電機子61の回転は継続するが回転トルクはこの範囲で変化する。すなわち回転トルクは、この両磁束のなす角が概ね90°の場合に最大で、0°と180°とでは0であるため、両磁束がなす角に依存するトルクの変化により、回転トルクが変動し、その結果トルクむらが発生する。
【0101】
次に、このトルクむらが発生する原因について図5を参照して詳述する。図5は、電機子61の回転角を整流子56とブラシ57とによる電流切換位置の一つを0°として横軸にとり、縦軸に出力トルク(同図a)、コギング(同図b)、トルクむら(同図c)、交叉角(同図d)、逆起電圧(同図e)、逆極性のパルスに対する逆起電圧差(同図f)及び信号処理回路の出力電圧に及ぼす逆起電圧差(同図g)それぞれを縦軸にとったグラフである。なお、横軸の回転角は、図4における時計回りの方向を正としている。
【0102】
上述のように、両磁界がなす角(以下、なす角と称す)に依存して図5aに67で示したように出力トルクは変動する。このなす角の変化の範囲は極数が多い程小さく、このため極数の多い大型のモータではトルク変動も小さい。しかしながら、小型のDCモータではほとんどが最小限の極数である3極であるのでこの出力トルクむらが多くなる。
【0103】
同時に、DCモータではこれとは別に、コギングトルクと呼ばれるトルクむらの発生要因がある。DCモータは界磁が永久磁石で回転子が磁性体であるので、回転子が界磁の永久磁石に吸引されることにより。モータに通電しない状態でトルクが発生する。このトルクは、磁性体の回転子を永久磁石である界磁が発生する磁束の中で、安定な状態にその回転角度を位置させるように発生する。即ち、この安定な状態となる角度位置ではトルクは0となり、安定な状態から離れた角度位置では安定な状態となる角度位置に位置させる方向にトルクが発生し、安定な状態となる角度位置から離れる程そのトルクが大きくなる。
【0104】
安定な状態となる角度位置はDCモータの構成により異なるが、一般的な小型のDCモータの場合では、概略図4(a)、(b)のように電機子61の磁極51,52,53のいずれかが、2極の界磁54、55の何れか一方の中心に最も近づいた状態である。例えば図4(a)では、磁極51が界磁54(S極)の中心に最も近づいた状態であり、これが安定な状態の1つである。これを時計廻り方向に電機子61を回転させてゆくと、60°回転したところで図4(b)のように磁極52が界磁55(N極)の中心に最も近づいた状態となり、これも安定な状態である。電機子61の磁極は3極、界磁は2極なので、このように60°毎に1箇所、1回転中に計6箇所安定な状態となる角度が存在する。
【0105】
DCモータ5に通電していない状態で、図4(a)の状態から電機子61を時計方向に(外力等により)回転させて行くと、この安定な状態から引き離されることにより界磁54と55とが形成する磁界に逆らうことになるため、等価的に回転に逆らう方向のトルクが発生し、これは回転角の増大に従い大きくなってゆく。しかし、このトルクは回転角がおおむね15°でピークとなり、それ以降は図4(b)の安定状態の影響を受けるため小さくなってゆく。そして約30°で0となり、以降は図4(b)の安定状態に引き込まれるトルクが勝るようになるため、時計廻りに回転させようとする方向にトルクが発生する。このトルクは回転角が約45°までは増大し、以降、図4(b)の安定状態が近づくに従い減少し、60°の図4(b)の状態で0となる。このようなトルク変動は60°毎に繰り返すため、結果的に電機子61の回転角度とDCモータ5に通電していない状態での磁気的な発生トルクとの関係は、図5bの70のようになる。
【0106】
一方、図5bの62のような摩擦トルクが存在するため、実際に逆転または正転させようとするトルクは図5bの63のようになり、これが負の範囲ではDCモータ5に通電していない状態で逆転方向のトルクが実際に発生するため、この位置でDCモータ5を非通電状態にすると安定な位置まで逆回転する。このようなトルクを一般にコギングトルクと呼称する。
【0107】
DCモータにおける通電時のトルクむらは、このコギングトルク図5bの63と前述の出力トルクむら図5aの67との合成により発生し、結果的に図5cの64のように変動する。この通電時のトルクむらは、コギングトルクの影響を受けるため60°周期で電機子61の回転角に依存して発生するので、電機子61の角度位置を検出することができれば補正できる。
【0108】
ところで、DCモータ5は巻線された鉄芯が界磁54及び55が形成する磁界60中で回転するので、回転中は発電機としても動作し、概略回転数に比例した逆起電圧を発生する。この逆起電圧も、回転速度が一定であっても出力トルクむら同様変動するので、この変動によりDCモータ5の電機子61の角度位置を検出しトルクむらを補正することもできるが、前述のように回転数が低い場合は逆起電圧も小さいため、この方法は使用できない。一方、DCモータ5は鉄芯に巻き線された構造を持つので、電気抵抗には自己インダクタンス成分を含む。従って電流を変化させようとするとそれに逆らう方向の電圧が今1つの逆起電圧として発生する。
【0109】
例えばDCモータ5の端子(すなわちブラシ57)に、パルス状の電圧を印加すると、DCモータ端子電圧は図6のように変化する。図6は、自己インダクタンス成分による逆起電圧と時間の関係を表すグラフであり、71は入力パルスによる電流によりDCモータの端子に生じた電位差、72は自己インダクタンス成分によって生じた起電圧である。72の起電圧は71の入力パルスと同じ方向の電流を流すように発生するが、DCモータ端子で測定すると、入力パルス71と逆極性の電圧として観測される。これは同じ方向の電流による電位差と、これを生じさせる起電圧との違いによる。72の逆起電圧は磁束の変化速度に比例し、この場合は磁束の減少する速度に比例して高くなる。前述のようにDCモータ5の巻線は、界磁54及び55が形成する磁界中に存在するため、磁束の減少する速度はこの界磁54及び55が形成する外部磁界60の影響を受ける。巻線に対するこの磁束の状態は、前述のように電機子61の角度位置により変化し、図4(a)の状態ではDC電源58により発生する磁束の向き59aと界磁による磁束の交叉角は120°で、この角度はモータの電機子の角度位置により60°から120°までの範囲で変化する。
またこの変化はブラシ57と整流子56による電流切替え直後が120°で電機子の回転角に比例して減少し60°回転すると行われる次の電流切替え直前に60°となり電流切替え直後には再び120°となり以後同様に繰り返す。図5dの68は、この発生する磁束と界磁による磁束の交叉角と電機子の回転角との関係を示すグラフである。このようにこの交叉角は、回転角に従いブラシ57と整流子56とによる電流切替点を頂点とする鋸歯状に変化し、ブラシ57と整流子56とによる電流切替点同士の間は直線状に減少する一意な関数となる。
【0110】
図4(a)のDC電源58をOFFにした際の磁束の減少速度は、DC電源58により発生した磁界に対し外部磁界が逆方向、即ち交叉角が180°の場合最も速く、同方向、即ち交叉角が0°の場合最も遅くなる。よって、交叉角0°の場合逆起電圧は最低で、交叉角180°の場合逆起電圧は最高となる。逆起電圧は概略この交叉角の余弦に比例する。前述のように交叉角と電機子の回転角との関係は、ブラシ57と整流子56とによる電流切替点同士の間は120°から60°まで直線状に減少する一意な関数であるので、逆起電圧と回転角との関係もブラシ57と整流子56とによる電流切替点同士の間はほぼ直線状に減少する一意な関数となり、60°周期で繰り返す。この様子を図5eの65に示す。図5eの65は、電機子の角度位置とその角度とで発生する逆起電圧の関係で、その角度位置でパルス電圧を印加し、OFFにした際発生する逆起電圧のピーク値である。
【0111】
図5cの64に示すように、トルクむらもブラシ57と整流子56とによる電流切替点間の60°周期で繰り返すので、この逆起電圧に対するトルクむらは一意に定めることができ、逆起電圧を測定することによりトルクむらの補正が可能である。しかしながら、逆起電圧の値は様々な要因で変動する。この問題を解決するため、互いに極性が逆なパルスに対する逆起電圧を測定しこの差をとる。この測定のためのパルス幅は100μs程度の極めて短いもので、発生する逆起電圧もこのレベルの短い時間で発生するため、測定に要する時間は極めて短時間でよい。このため、DCモータ5の駆動パルス1回に対し複数回の測定が可能であり、各測定間のモータの回転もほとんど無視できるので、このような測定が可能である。
【0112】
互いに極性が逆なパルスでは、界磁による磁界の影響が互いに逆になるが、他の要因による影響は全く同一であるため、差をとることにより磁界以外の影響を排除できる。特に交叉角が90°では出力が0となるので、各種の基準をここに定めることができる。結果的に図5fの66のような関係を得る。図5fの66は、電機子の角度位置と、その角度で発生する互いに極性が逆なパルスに対する逆起電圧差との関係で、その角度位置で互いに極性が逆なパルスを入力し、発生した逆起電圧の差をプロットしている。出力が0となる交叉角が90°は、整流子56とブラシ57とによる電流切替え位置から30°回転した位置で、図5fの66は整流子56とブラシ57とによる電流切替え位置を0°としているので、30°で値が0となる。また、整流子56とブラシ57とによる電流切替え位置は60°毎にあるので、30°、90°、150°・・・で0となる。また0°、60°、120°・・・で最小値から最大値に変化する。
【0113】
以下、図3のステップ45において実際に逆起電圧を測定し、トルクむらを補正する動作について説明する。逆起電圧の測定はDCモータ5に短時間のパルス電圧を印加し、印加の後モータ端子を電源から開放することにより行う。この電圧印加と端子との開放は、図1の電圧発生手段13のスイッチング素子36〜39をON−OFFすることにより行われ、特別なハードを必要としない。また、端子電圧の検出は、前述のように端子電圧測定手段14により行われる。端子電圧測定手段の出力は、モータ端子電圧の波形そのものなので、印加パルス電圧等不要な部分も含んでいる。この信号から必要な逆起電圧の部分だけを取り出し、また、前述の、逆極性のパルス同士による逆起電圧の差をとる動作を信号処理手段15で行う。
【0114】
図7は信号処理手段15の概略構成図である。図7において、76はバッファ、77と78はサンプルホールド回路、79と80はサンプルホールドスイッチ、81と82はコンデンサで83は加算器である。端子電圧測定手段14の出力は、2個のバッファ76を介して2個のサンプルホールド回路77と78とに入力され、サンプルホールドされる。合計4個あるバッファ76、及び2個のサンプルホールド回路77と78とはそれぞれ同じものである。サンプルホールド回路77及び78が2個あるので、時間的に変化する電圧より2箇所の電圧をサンプルして保持することができる。この出力は、2個のバッファ76を通じ加算器83に入力され加算される。
【0115】
図8は、逆起電圧測定時のスイッチング手段及びサンプルホールドスイッチの動作手順と、端子電圧測定手段14の出力電圧波形との関係を示すグラフである。図8における開始から終了までの期間91〜95でのスイッチング素子36〜39の状態、2つのサンプルホールド回路77及び78にそれぞれ備えるサンプルホールドスイッチ79及び80の状態、及び動作時間の一例を(表1)に示す。
【0116】
【表1】

【0117】
図3のステップ45で、逆起電圧を測定することでロータ位置を測定する際、測定開始前では図1の電圧発生手段13はDCモータ5の両端子をGNDにショートしている状態になっている。このときのスイッチング手段36〜39の動作は(表1)に示すように、スイッチング手段37とスイッチング手段39とonで、スイッチング手段36とスイッチング手段38とがoffである。このとき当然DCモータ5の端子間の電圧は0であるため、端子電圧測定手段14からはその基準電圧である+2.5Vが出力される。このときサンプルホールドスイッチ79と80とは、(表1)に示すようにいずれもoffである。
【0118】
測定が始まると(表1)の91に示すように、スイッチング手段36とスイッチング手段39とがonで、スイッチング手段37とスイッチング手段38とがoffとなり、図8の91に示すように、図1の電圧発生手段13はこれによりDCモータ5の+端子側に+5Vをパルス状に印加する。この状態となっている時間、即ちパルス印加時間は100μsである。この印加時間は、これにより発生する逆起電圧が端子電圧測定手段の14の測定範囲である±5Vに入るように定められている。DCモータ5の+端子側に+5Vが印加されているので、図8の91に示すように、端子電圧測定手段14の出力電圧は+5Vとなる。このときもサンプルホールドスイッチ79と80とは、(表1)に示すようにいずれもoffである。
【0119】
次に(表1)の92に示すように、スイッチング手段36〜39は全てoffとなり、図8の92に示すように、図1の電圧発生手段13はこれによりDCモータ5の両方の端子を電源から開放する。これによりDCモータ5の両端子には逆起電圧が発生し、図8の92に示すような波形が端子電圧測定手段の14から出力される。このとき(表1)に示すように、サンプルホールドスイッチ79がonとなり80はoffとなる。これによりサンプルホールドコンデンサ81が充電される。サンプルホールドコンデンサ81には抵抗84が接続され、これにより積分回路としても動作し、図8の92の波形の平均値の電圧で、サンプルホールドコンデンサ81が充電されるよう構成されている。この状態となっている時間、即ち測定に要する時間は50μsである。
【0120】
次に(表1)の93に示すように、スイッチング手段37とスイッチング手段39とがonで、スイッチング手段36とスイッチング手段38とがoffとなり、図8の93に示すように、図1の電圧発生手段13はこれによりDCモータ5の両端子をGNDにショートする。DCモータ5の端子には逆起電圧が発生し続けているが、時間の経過とともに電圧が下がり、有効な測定に寄与しないので、この操作によりDCモータ5の両端子に発生していた逆起電圧を終了させる。このとき当然DCモータ5の端子間の電圧は0なので、端子電圧測定手段14からはその基準電圧である+2.5Vが出力される。このときサンプルホールドスイッチ79と85とは、(表1)の93に示すようにいずれもoffである。このためサンプルホールド回路77には、92で測定した逆起電圧の値が保持されている。この状態となっている時間は100μsである。
【0121】
次に(表1)の94に示すように、スイッチング手段37とスイッチング手段38とがonで、スイッチング手段36とスイッチング手段39とがoffとなり、図8の94に示すように、図1の電圧発生手段13はこれによりDCモータ5の−端子側に+5Vをパルス状に印加する。この状態となっている時間、即ちパルス印加時間は100μsである。DCモータ5の−端子側に+5Vが印加されているので、図8の94に示すように端子電圧測定手段の14の出力電圧は0Vとなる。このときもサンプルホールドスイッチ79と80とは(表1)に示すようにいずれもoffである。このためサンプルホールド回路2には92で測定した逆起電圧の値が保持され続けている。
【0122】
次に(表1)の95に示すように、スイッチング手段36〜39は全てoffとなり、図8の95に示すように、図1の電圧発生手段13はこれによりDCモータ5の両方の端子を電源から開放する。これによりDCモータ5の両端子には逆起電圧が発生し、図8の95に示すような波形が端子電圧測定手段14から出力される。このとき(表1)に示すようにサンプルホールドスイッチ80がonとなり、サンプルホールドスイッチ79はoffとなる。これにより、サンプルホールドコンデンサ82が充電される。サンプルホールドコンデンサ82には抵抗85が接続され、これにより積分回路としても動作し、図8の95の波形の平均値の電圧でサンプルホールドコンデンサ82が充電されるよう構成されている。一方サンプルホールドスイッチ79はoffのままなので、サンプルホールド回路77には、図8の92で測定した逆起電圧の値が保持され続けている。この状態となっている時間、即ち測定に要する時間は50μsである。
【0123】
最後に、測定が終了すると、各スイッチは測定開始前の状態に戻る。即ち、図1のスイッチング手段36〜39は、モータの両端子をGNDにショートしている状態になっている。このときのスイッチング手段36〜39の動作は、(表1)に示すようにのスイッチング手段37とスイッチング手段39とがonで、スイッチング手段36とスイッチング手段38とがoffである。このとき当然DCモータ5の端子間の電圧は0なので、端子電圧測定手段14からはその基準電圧である+2.5Vが出力される。このときサンプルホールドスイッチ79と80とは、(表1)に示すようにいずれもoffである。このため、サンプルホールド回路77には図8の92で測定した逆起電圧の値が、サンプルホールド回路78には図8の95で測定した逆起電圧の値が保持された状態となっている。
【0124】
サンプルホールド回路77及び78の出力は、2個のバッファ76を通じて加算器83に入力され、加算された値が出力される。サンプルホールド回路77及び78には、それぞれ互いに極性の異なるパルスに対する逆起電圧の電圧値が保持されている。これらの逆起電圧は互いに極性が異なるので、加算することによりその絶対値の差を求めることになる。結果的に加算器83からは、互いに極性の異なるパルスに対する逆起電圧の絶対値の差が出力される。前述したように互いに極性が逆なパルスでは、界磁による磁界の影響が互いに逆になるが、他の要因による影響は全く同一であるため、差をとることにより磁界以外の影響を排除できる。特に前述の交叉角が90°では出力が0となるので、各種の基準をここに定めることができる。加算器の基準電圧は2.5Vに定められているので、実際には2.5Vが0のレベルである。
【0125】
また、加算器の定数は交叉角120°での逆起電圧の差分でその出力が4.5V、交叉角60°での逆起電圧の差分で出力が0.5Vとなるようにその定数が設定されている。結果的に電機子61の回転角との関係では、図5gに69で示したように、2.5Vを中心に0.5Vと4.5Vの間で変化する鋸歯状の波形の出力を得る。前述のように交叉角が90°となるのは、整流子56とブラシ57とによる電流切替え位置から30°回転した位置で、図5gのグラフは整流子56とブラシ57とによる電流切替え位置を0°としているので、30°で値が2.5Vとなる。また、整流子56とブラシ57とによる電流切替え位置は60°毎にあるので、30°、90°、150°・・・で2.5Vとなる。また、0°、60°、120°・・・で0.5Vから4.5Vに変化する。
【0126】
以上の手順により加算器83、即ち信号処理手段15からDCモータ5の電機子61の角度位置の情報を含む出力を得ることができる。
【0127】
次に、図3のステップ46で、このデータから実際にトルクむらを補正する動作について説明する。前述の信号処理手段15の出力は、制御手段19に入力される。制御手段19では、この出力をA/D変換器35でA/D変換し6bit、即ち0から63まで64段階のデータに変換する。前述のように信号処理手段15の出力は、4.5Vと0.5Vとの間で変化する。これを4.5Vで63、0.5Vで0になるようA/D変換する。
【0128】
図5gの69に示したように信号処理手段15の出力は、電機子61の回転角との関係において、回転角60°周期で発生する整流子56とブラシ57とによる電流切替え位置同士の間で、4.5Vから0.5Vに単調に変化する。また、図5cの64に示したようにトルクむらも、回転角60°周期で同じ変化を繰り返す。このため、トルクむらの値やこのトルクむらの補正値は、信号処理手段15の出力に対して一意的に定めることができる。よって、これのA/D変換後の値に対しても一意的に定めることができる。このようにA/D変換後のデータより、トルクむらの補正に必要なDCモータ5の電機子61の角度位置情報を知ることができ、この角度位置からトルクむらを知ることができ、これを補正することができる。具体的にはA/D変換器35の出力を、トルク補正テーブル18に参照することによりトルク補正値を決定し、これにより図3のステップ43、44以降で出力するパルスのパルス幅を補正する。
【0129】
(表2)はトルク補正テーブルの一例である。表中、電機子の角度位置として0〜63の値が記され、これに対応するパルス幅の補正値が記されている。この補正値は、図5cの64に示すコギングトルクと出力トルクむらとの合計より発生するトルクむらを補正することのできる値として定められている。A/D変換器のデータは、この表に参照されこれに対応するパルス幅の補正値が求められる。この値を前述の基準パルスに乗ずることによりパルス幅を補正することでトルクむらを補正する。例えばA/D変換後のデータが21だった場合、(表2)よりパルス幅補正値は0.88である。補正値が1以下となるのは、トルクむらによりトルクが平均値より大きい場合である。これを基準パルス幅に乗ずる。出力されようとしているパルスが最初のパルスで、基準パルス幅が300μsである場合、0.88が乗ぜられ300μs×0.88=264μsとなり、補正前よりも短いパルス幅となり、トルクむらによりトルクが平均値より大きい分が補正される。以上の手順によりトルクむらが補正される。
【0130】
【表2】

【0131】
この駆動方法では、駆動パルスが徐々に増大しながら複数印加される。まさつ等の負荷が小さい場合はパルス幅が狭いうちに動き、負荷が大きい場合はパルス幅が広くなってから動き出すが、動き出してからの1パルスあたりの移動量は比較的一定で、数μm程度である。このため、動き出してからは、1パルス毎に数μmずつ対物レンズ28のシフト量を減少させ、結果的に対物レンズ28のシフト量範囲±20μm以内にする。即ち、トラッキングアクチュエータ29が対物レンズ28をトラックに追従させることのできる範囲±20μm以内に、目標トラックの相対位置を位置させることができる。トルクむらがあると1パルス目から大きく動き過ぎたり、動き出すまでに時間がかかり過ぎたりする場合があるが、前述した方法によりトルクむらが補正されているので、そのような現象が起こらず、安定した移動が可能である。
【0132】
次に「定速送り状態」の動作について説明する。前述のように、ドライブの電源が投入され光学ヘッド23がフォーカス動作を開始する際、フォーカスの引き込み動作はディスクの最内周で行わなければならない。このため十分な時間モータを駆動することで光学ヘッド23を内周ストッパー73に押し付ける動作を行う移動に要する時間の要求を満足すると共に、衝突によりリードスクリューが空転しない速度の範囲は非常に狭く、この範囲内に移動速度を制御する必要がある。このようにスレッドサーボ信号(SS)の値にかかわらず、光学ヘッド23の速度が入力された速度指令値の速度になるように制御するのが「定速送り状態」状態である。この状態ではA/D変換器35の出力を処理することにより、光学ヘッド23の実際の速度を検出し、速度指令値と比較して、この差により駆動パルスの周期を変化させることで、光学ヘッド23の実際の速度と速度指令値との誤差を小さくしている。なお、定速送り制御を行う際、切替手段34は定速送り制御手段の出力を選択し、スイッチング制御手段16に出力する。
【0133】
図9は、定速送り制御手段33の一例の構成を説明するブロック図である。図9において86はゼロクロス検出手段、87は周期測定手段、88は比較器、89はオフセット発生手段、90はパルス発生手段である。ゼロクロス検出手段86にはA/D変換器35のデータが入力され、逆起電圧の差のゼロクロスを検出する。この結果は周期測定手段87に入力され、ゼロクロスの周期を測定することにより光学ヘッド23の実際の速度を検出する。図10はD/A変換器の出力と周期との関係の一例を示すグラフである。図中のグラフにおいて、横軸は時間で縦軸はD/A変換器35の出力である。DCモータ5が概略一定速度で回転している場合、D/A変換器35の出力と時間の関係は、図のように鋸歯状の波形となる。前述したようにデータが0から63に急変する場合、DCモータ5の電機子61は、整流子56とブラシ57とによる電流切替え角度位置である。また、前述したように交叉角が90°となる場合、互いに逆極性のパルスに対する逆起電圧の差は0となり、この状態ではD/A変換器35の出力は31となっている。
【0134】
この、DCモータ5の整流子56とブラシ57とによる電流切替え角度位置同士の間隔は、前述のように60°である。また、このとき交叉角は60°または120°であるので、D/A変換器35の出力が31となる交叉角90°における電機子61の角度位置との角度差は30°である。このため図10のように、出力が31をクロスするタイミングを求め、これ同士の時間間隔を測定すると、これはそれぞれDCモータ5の電機子61が30°回転するのに要した時間である。よって、この時間間隔から光学ヘッド23の実際に移動速度を求めることができる。例えばこの時間間隔が20msだった場合、20msで30°回転することになるので、1回転に要する時間は20×360/30=240msで、1回転で光学ヘッド23は2mm移動するので、移動速度は2/240×1000=8.33mm/sとなる。このようにして周期測定手段87より光学ヘッド23の実際の速度が出力される。この値は比較器88に入力される。比較器88には速度司令値も入力され、実際の速度はこれと比較される。速度指令値はドライブの起動時間が十分短く、かつ、光学ヘッド23が最内周ストッパ73に衝突した際、衝突音がしたり、ナットピース3の歯がリードスクリュ−4の溝から外れリードスクリュー4が空転しないような速度に選ばれている。本実施形態の場合15mm/sに設定した。比較器88はこの2者の差に比例した電圧値を、適切な比例係数の下に出力する。この電圧は速度指令値よりも実際の速度が大きい場合は負の値、実際の速度が小さい場合は正の値となる。
【0135】
この出力にオフセット発生手段89により正のオフセットが加えられる。このオフセットの値は、通常の状態でDCモータ5が摩擦負荷等に打ち勝って回転できる限度の電圧が選ばれている。これにより速度指令値と実際の速度とが等しくなり、比較器88の出力が0になった際にモータのトルクと摩擦力とがほぼ均衡し、加速も減速もしない状態が実現できることで速度の精度が向上する。本実施形態の場合、このオフセットの値は1.5Vに設定した。この動作状態でも、DCモータ5はパルス駆動される。これはパルスで駆動することにより、DC的に駆動するよりも高い電圧で駆動できるため、相対的に摩擦の影響を小さくできるからである。このためオフセット発生手段89により正のオフセットが加えられた値はパルス発生手段90に入力され、この電圧値のパルスを発生するためのデータに変換される。モータの駆動に使用されるパルスは、パルス幅2msで周期が12msである。2ms幅のパルスの電圧値が、オフセット発生手段89により正のオフセットが加えられた値になる。電圧発生手段13は、on−off動作のみが可能なスイッチング手段36〜39で構成されているので、0か5V以外の電圧を発生させる場合はPWM駆動を行う。
【0136】
以上のような構成と動作により、光学ヘッド23の実際の速度を検出することができ、速度指令値と実際の速度とを比較し、実際の速度が速度指令値よりも高い場合は駆動電圧を上げ、低い場合には駆動電圧をさげることにより、摩擦負荷の大小にかかわらず速度指令値に近い速度で光学ヘッド23を移動させることができる。
【0137】
以上説明したように、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
すなわち、
第1に、逆起電圧よりDCモータの電機子の位置を検出し、そのトルクむらを補正することができるので、スレッド制御状態において光学ヘッドが大きく行過ぎてしまったり、また逆に、動き出すまでに時間がかかり過ぎてしまうことがなく、安定した移動が可能である。この、DCモータの電機子の位置の検出は回転数が0でも可能で、また、互いに逆極性のパルスに対する逆起電圧の差を取ることにより、界磁による影響のみが検出できるので安定に検出することができる。このため、DC的なオフセット、ばらつきによるレベル変動等も少なく、これらを補正するための装置や学習等の手順も不要で、構造が簡単にできる。
【0138】
第2に、逆起電圧よりDCモータの電機子の位置を検出し、これにより光学ヘッドの移動速度を検出することができるので、定速送り制御時には光学ヘッドの移動速度を精度よく制御することができる。これにより光学ヘッドの実際の移動速度を、移動に要する時間の要求を満足し、かつ、衝突によりリードスクリューが空転しない非常に狭い速度範囲内に入れることができ、ドライブの起動に要する時間を短くしつつ、衝突による異音の発生を防止し、空転によるナットピースの異常磨耗も防ぐことができる。
【0139】
なお、本実施形態では、逆起電圧測定時はDCモータの駆動のための電圧が印加されていないようにしたが、測定に影響のない範囲の電圧が印加されていてもよい。
【0140】
また、トルクむらの補正はパルス幅を変化させることにより行ったが、パルス電圧、または電圧と幅の両方を変化させて行うようにしてもよい。
【0141】
また、DCモータの駆動はパルス駆動としたが通常のアナログ駆動とし、測定時のみ短時間駆動電圧を測定に影響のない電圧にして測定し、駆動電圧を変化させることによりトルクむらを補正するようにしてもよい。
【0142】
また、測定のためのパルスは駆動のためのためのパルスとは別にしたが、測定のため入力される互いに極性が異なるパルスのうち、少なくとも一方を駆動パルスと共用してもよい。
【0143】
また、測定のためのパルスを発生させるため、スイッチング素子を使用したが、アナログ駆動回路を使用し、パルス的に駆動してもよいし、測定のための駆動は矩形波のパルスである必要は無く、正弦波や三角波等でもよい。
【0144】
また、測定時はモータ端子を両方共電源から開放状態とするようにしたが、片方のみを開放するようにし、開放していない方の端子にかかる電圧を例えば0Vか5Vに切り替えることにより、逆起電圧を端子電圧測定手段の測定範囲内に収めるようにしてもよい。
【0145】
また、パルス印加時間は、これにより発生する逆起電圧が端子電圧測定回路の測定範囲である±5Vに入るように定めらたが、パルス印加時間は任意に設定し、端子電圧測定手段を構成する抵抗の値により、測定範囲を出力されるパルスが測定できる範囲となるようにしてもよい。
【0146】
また、測定パルスは互いに極性の異なる1組のパルスを入力し、電機子の角度位置のデータとしたが、複数組のパルスに対する逆起電圧を測定し、測定値の平均値を求めるようにしてもよい。
【0147】
また、信号処理回路には2個のサンプルホールド回路を設けたが、端子電圧測定手段の出力を直接A/D変換して、差を取る等の処理をデジタル的に行うようにしてもよい。
【0148】
また、電機子角度位置とトルク補正値の関係を記したトルク補正テーブルを設けたが、テーブルを設けずに電機子角度位置から一定の手順により補正値を求めるようにしてもよい。
【0149】
また、速度の検出はゼロクロスの周期を測定することにより行ったが、適当な閾値によりパルス化しこのパルス周期を測定するようにしてもよい。
【0150】
また、速度の検出は検出されたロータの角度位置を、事実上の微分操作により処理して検出するようにしてもよい。
【0151】
また、速度の補正はパルス電圧を変化させて行ったが、パルス幅及び/またはパルス周期で行うようにしてもよい。
【0152】
また、一定の速度を得るため、速度を検出し、速度指令値と比較するという操作を行ったが、例えば単純にゼロクロスの周期とパルス電圧を比例させることにより速度変動が概略補正されるようにしてもよい。
【0153】
また、定速制御状態では速度情報のみ使用しているが、求められたロータの角度位置から変位を求めてこの情報も併用するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明のモータ制御装置は高精度の駆動制御ができるため、精密回転制御が要求される例えばマジックハンドの駆動等にも応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】本発明の一実施形態の構成例を示す概略構成図
【図2】同実施形態の要部拡大図
【図3】スレッド制御制御動作を示すフローチャート
【図4】(a)は同DCモータの動作説明図、(b)は同DCモータの動作説明図
【図5】電機子の回転角とトルクむらと逆起電圧との関係図
【図6】自己インダクタンス成分による逆起電圧と時間との関係図
【図7】信号処理手段の概略構成図
【図8】スイッチング回路の出力電圧波形図
【図9】定速送り制御手段のブロック図
【図10】D/A変換器の一出力波形図
【図11】従来技術の一例の光ディスク装置のブロック図
【図12】同光ディスク装置の機構を説明する平面図
【図13】同例における光ディスク装置の波形図
【図14】同例におけるスレッド制御動作を示すフローチャート
【符号の説明】
【0156】
1 光ディスクドライブ
2 光ディスク
3 ナットピース
4 リードスクリュー
5 DCモータ
6 ガイドシャフト
7 軸受
8 トラバースベース
9 スピンドルモータ
10 ピニオン
11 平歯車
12 光学ヘッド移動機構
13 電圧発生回路
14 端子電圧測定回路
15 信号処理回路
16 スイッチング制御回路
17 トラッキングサーボ回路
18 トルク補正テーブル
19 制御回路
20 スレッド制御回路
21 トラッキングドライバ回路
22 スレッドサーボ回路
23 光学ヘッド
24 回転軸
25 ターンテーブル
26 光源
27 フォトダイオード
28 対物レンズ
29 アクチュエータ
30 トラッキング駆動手段
31 スライダー
33 定速送り制御回路
34 切替回路
35 A/D変換器
36 第1のスイッチング手段
37 第2のスイッチング手段
38 第3のスイッチング手段
39 第4のスイッチング手段
73 内周ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DCモータと、
前記DCモータの駆動を伝達してある質量を持つ物体を負荷に抗して駆動する駆動機構と、
前記DCモータに電圧を与える電圧発生手段と、
前記DCモータの端子電圧測定手段と、
前記電圧発生手段及び前記端子電圧測定手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記電圧発生手段により前記DCモータに測定パルス電圧を印加せしめ、前記DCモータの電気的自己インダクタンス成分による前記測定パルス電圧に対する逆起電圧を、前記端子電圧測定手段により測定した測定値により前記モータの駆動を変化させることを特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
前記測定パルスの印加時は前記モータの駆動のための電圧が印加されていないことを特徴とする請求項1記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記モータの駆動はパルス電圧であることを特徴とする請求項1記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記測定パルス電圧は前記モータを駆動する前記パルス電圧とは異なるタイミングで出力されることを特徴とする請求項2記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記電圧発生手段はスイッチング素子で構成され前記測定パルス電圧と前記モータを駆動する前記パルス電圧を発生することを特徴とする請求項3のモータ制御装置。
【請求項6】
前記電圧発生手段は前記逆起電圧の測定時に前記モータの端子の一方または両方を電源から開放状態にすることを特徴とする請求項5記載モータ制御装置。
【請求項7】
前記測定パルスのパルス幅、パルス電圧はこれによる前記逆起電圧が前記端子電圧測定手段の測定範囲になるよう設定されていることを特徴とする請求項1記載のモータ制御装置。
【請求項8】
前記測定パルスは複数回印加され各印加パルス毎に前記電圧測定手段により測定した複数の測定値により前記モータの駆動を変化させることを特徴とする請求項1記載のモータ制御装置。
【請求項9】
前記複数の測定値の平均値により前記モータの駆動を変化させることを特徴とする請求項8記載のモータ制御装置。
【請求項10】
前記複数回印加され各印加パルスは互いに極性が異なるものを含むことを特徴とする請求項8記載のモータ制御装置。
【請求項11】
互いに極性が異なる前記測定パルスによる前記測定値の絶対値の差により前記モータの駆動を変化させることを特徴とする請求項8記載のモータ制御装置。
【請求項12】
前記測定値により前記モータのトルクむらが少なくなるように前記モータの前記駆動を変化させることを特徴とする請求項1記載のモータ制御装置。
【請求項13】
前記測定値に対し前記駆動が数学的にリニアな関係を持つことにより前記モータのトルクむらが少なくなるようにしたことを特徴とする請求項12記載のモータ制御装置。
【請求項14】
前記測定値に対する前記駆動の値を記憶したテーブルを持ち、このテーブルの従い前記駆動を行うことにより前記モータのトルクむらが少なくなるようにしたことを特徴とする請求項12記載のモータ制御装置。
【請求項15】
前記測定値により前記物体の位置、速度を検出し、これを用い前記物体の位置、速度が所定の値になるよう前記モータの駆動を変化させることを特徴とする請求項1記載のモータ制御装置。
【請求項16】
前記測定値を所定の閾値で2値化することにより前記モータ1回転あたり一定数のパルスを得、これにより前記物体の位置、速度が所定の値になるよう前記モータの駆動を変化させることを特徴とする請求項15記載のモータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−67715(P2006−67715A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−248043(P2004−248043)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】