説明

モータ制御装置

【課題】基準位置を設定する壁当て制御の回数を抑制する。
【解決手段】壁当て制御手段23は、マニュアルレバー4をP壁5に押し付けることによってモータ7を制御するための基準位置を設定する。壁当て制御は、初期化条件の成立に応答して実行される。初期化条件は、電源スイッチ31のオン操作、および外部電源33の接続である。禁止手段は、初期化条件が非成立となってから、利用者が車両10から所定の閾値Dthを越えて離れるまで、初期化条件が再び成立しても、壁当て制御を禁止する。この結果、再度の壁当て制御を回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御対象物を限界位置まで移動させることによって制御の基準位置、すなわち原点を設定するモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2は、車両の自動変速装置のシフト位置をモータによって切換える装置を開示している。特に、特許文献1は、制御対象物を壁に衝突するように移動させることにより、モータ制御のための基準位置、すなわち原点を設定するモータ制御装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4187619号
【特許文献2】特許第4535174号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の構成では、車両の電源スイッチがオン(ON)操作されることに応答して、壁に押し付ける処理を実行している。ところが、壁に押し付ける処理は、構成部品の望ましくない変形、望ましくない摩耗を生じることがある。このため、壁に押し付ける処理の回数は、少ないことが望ましい。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、壁に押し付ける処理の回数を抑制することができるモータ制御装置を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、複数の要因に応答して壁に押し付ける処理が開始される構成においても、壁に押し付ける処理の回数を抑制することができるモータ制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0008】
請求項1に記載の発明は、車両(10)に搭載された制御対象物を少なくとも2位置の間で移動させるモータ(7)と、複数の初期化条件のいずれかの成立に応答して、制御対象物を壁に押し当てるようにモータを制御する壁当て制御を実行する壁当て制御手段(23、151−155)と、車両の利用者が車両から所定の距離を越えて離れているか否かを判定する距離判定手段(35、36、164)と、壁当て制御が実行された後に、距離判定手段により車両の利用者が車両から所定の距離閾値(Dth)を越えて離れたと判定されるまでの期間、初期化条件が成立しても壁当て制御手段による壁当て制御を禁止する禁止手段(24、158−165、167−169)とを備えることを特徴とする。
【0009】
この構成によると、壁当て制御は複数の初期化条件の成立に応答して実行される。初期化条件は、頻繁に成立することがある。しかし、車両の利用者が車両から所定の距離閾値を越えて離れていない場合には、再び初期化条件が成立しても壁当て制御が禁止される。この結果、壁当て制御の回数が抑制される。
【0010】
請求項2に記載の発明は、禁止手段は、初期化条件が非成立になったことを判定する判定手段(158、161)を備え、壁当て制御が実行された後から初期化条件が非成立になるまでの期間、壁当て制御を禁止する第1禁止手段(158−161)と、初期化条件が非成立になった後に、距離判定手段により車両の利用者が車両から所定の距離閾値(Dth)を越えて離れたと判定されるまでの期間、初期化条件が成立しても壁当て制御手段による壁当て制御を禁止する第2禁止手段(162−165、167−169)とを備えることを特徴とする。この構成によると、ひとつの初期化条件によって壁当て制御が実行された後は、その初期化条件の成立中における再度の壁当て制御が禁止される。さらに、その初期化条件が非成立になった後にも、壁当て制御が禁止される。
【0011】
請求項3に記載の発明は、禁止手段は、初期化条件が非成立になった後に、距離判定手段により車両の利用者が車両から所定の距離閾値(Dth)を越えて離れたと判定されると、壁当て制御手段による壁当て制御を許可することを特徴とする。この構成によると、初期化条件が非成立となった後に、利用者が車両から距離閾値を越えて離れると、壁当て制御が可能とされる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、さらに、車両を運転するときにオン位置に操作される電源スイッチ(31)を備え、初期化条件は、電源スイッチがオン位置にあることを含むことを特徴とする。この構成によると、電源スイッチがオン位置にあることが、壁当て制御を実行するための初期化条件とされる。この構成によると、電源スイッチのオン操作に応答して壁当て制御が実行される構成においても、壁当て制御の回数を抑制することができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、さらに、距離判定手段により車両の利用者が車両から所定の距離閾値(Dth)を越えて離れていないと判定される時間を計測するタイマ手段(25)を備え、禁止手段は、タイマ手段による計測時間(TMR)が所定の時間閾値(Tth)を上回ると壁当て制御手段による壁当て制御を許可することを特徴とする。この構成によると、利用者が車両の近傍に留まり続ける場合には、計測時間が時間閾値を上回るから、壁当て制御が可能とされる。
【0014】
請求項6に記載の発明は、時間閾値を車両の位置に応じて設定する設定手段(163)を備えることを特徴とする。この構成によると、時間閾値は可変である。しかも、車両の位置に応じて設定される。このため、車両の位置に応じて、壁当て制御が許可されるまでの時間を可変設定することができる。
【0015】
請求項7に記載の発明は、さらに、車両に設けられた二次電池(2)へ充電するために外部電源が接続される接続装置(34)を備え、初期化条件は、外部電源が接続されていることを含むことを特徴とする。この構成によると、外部電源が接続されていることが、壁当て制御を実行するための初期化条件とされる。この構成によると、外部電源の接続に応答して壁当て制御が実行される構成においても、壁当て制御の回数を抑制することができる。特に、外部電源の接続に応答した壁当て制御に起因する、外部電源を接続可能な車両に特有の耐久性の低下を抑制できる。
【0016】
請求項8に記載の発明は、さらに、車両に設けられた二次電池(2)へ充電するために外部電源が接続される接続装置(34)と、外部電源が接続されたときの車両の位置を記録する記録手段(182)とを備え、初期化条件は、外部電源が接続されていることを含み、設定手段は、車両が記録手段に記録された位置にあるか否かに応じて時間閾値を異なる値に設定することを特徴とする。この構成によると、外部電源が接続されたときの車両の位置、すなわち車両への充電が実行された位置が記録される。設定手段は、記録された位置か否かに応じて時間閾値を異なる値に設定する。このため、車両への充電が期待できるか否かに応じて、壁当て制御が許可されるまでの時間を可変設定することができる。
【0017】
なお、特許請求の範囲および上記手段の項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用した第1実施形態に係るシフトバイワイヤ装置を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態の制御を示すフローチャートである。
【図3】第1実施形態の制御を示すフローチャートである。
【図4】第1実施形態の制御を示すフローチャートである。
【図5】第1実施形態の作動の一例を示すタイムチャートであって、図5Aは電源スイッチPWSWの状態を示し、図5Bは外部電源EXPSの接続状態を示し、図5Cはレンジ切換制御装置ECUの状態を示し、図5Dは車両と利用者との距離VDを示し、図5Eはタイマの計測時間TMRを示し、図5Fはモータの制御モードMTMDを示し、図5GはシフトレンジSFRを示す。
【図6】第1実施形態の作動の一例を示すタイムチャートであって、図6Aは電源スイッチPWSWの状態を示し、図6Bは外部電源EXPSの接続状態を示し、図6Cはレンジ切換制御装置ECUの状態を示し、図6Dは車両と利用者との距離VDを示し、図6Eはタイマの計測時間TMRを示し、図6Fはモータの制御モードMTMDを示し、図6GはシフトレンジSFRを示す。
【図7】第1実施形態の作動の一例を示すタイムチャートであって、図7Aは電源スイッチPWSWの状態を示し、図7Bは外部電源EXPSの接続状態を示し、図7Cはレンジ切換制御装置ECUの状態を示し、図7Dは車両と利用者との距離VDを示し、図7Eはタイマの計測時間TMRを示し、図7Fはモータの制御モードMTMDを示し、図7GはシフトレンジSFRを示す。
【図8】第1実施形態の作動の一例を示すタイムチャートであって、図8Aは電源スイッチPWSWの状態を示し、図8Bは外部電源EXPSの接続状態を示し、図8Cはレンジ切換制御装置ECUの状態を示し、図8Dは車両と利用者との距離VDを示し、図8Eはタイマの計測時間TMRを示し、図8Fはモータの制御モードMTMDを示し、図8GはシフトレンジSFRを示す。
【図9】第1実施形態の作動の一例を示すタイムチャートであって、図9Aは電源スイッチPWSWの状態を示し、図9Bは外部電源EXPSの接続状態を示し、図9Cはレンジ切換制御装置ECUの状態を示し、図9Dは車両と利用者との距離VDを示し、図9Eはタイマの計測時間TMRを示し、図9Fはモータの制御モードMTMDを示し、図9GはシフトレンジSFRを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。また、後続の実施形態においては、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分に百以上の位だけが異なる参照符号を付することにより対応関係を示し、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、本発明を適用した第1実施形態に係るシフトバイワイヤ装置1を示すブロック図である。シフトバイワイヤ装置(以下、SBW装置という)1は、車両(VH)10に搭載されている。車両10は、車両の動力源(PWS)2と、伝達機構(DRT)3とを備える。動力源2は、内燃機関と電動機との両方を含む。この車両は、内燃機関と電動機との両方、またはいずれか一方の動力によって走行することができるいわゆるハイブリッド車両である。動力源2は、充電可能な二次電池を含み、二次電池から供給される電力によって走行用の電動機を駆動する。
【0021】
伝達機構3は、動力源2が供給する動力を車両の駆動輪に伝達する。伝達機構3は、その動力伝達状態を複数の状態に切り替え可能である。例えば、伝達機構3は、車両用の自動変速装置によって提供される。伝達機構3が提供する動力伝達状態は、シフト位置、シフトレンジ、変速位置などとも呼ばれる。伝達機構3が提供する動力伝達状態には、第1位置としての非パーキング位置と、第2位置としてのパーキング位置とを含むことができる。非パーキング位置は、この明細書、および図面において、Non−Pと表記される。非パーキング位置では、伝達機構3は動力を伝達し、動力源2による車両の移動を許容する。パーキング位置は、この明細書、および図面において、Pと表記される。パーキング位置では、伝達機構3は動力の伝達を遮断し、駆動輪を拘束して車両の移動を禁止する。伝達機構3は、動力の伝達状態を上記のように切換えるためのマニュアルレバー4を有する。マニュアルレバー4は、少なくともP位置とNon−P位置との2位置の間で移動可能である。マニュアルレバー4は、モータ制御装置における制御対象物である。伝達機構3は、マニュアルレバー4の作動可能範囲の両端に、マニュアルレバー4の移動を機械的に拘束する壁5、6を有している。壁5、6は、マニュアルレバー4を駆動するための減速機構に設けることができる。マニュアルレバー4の作動可能範囲の中央からP位置を越えてさらにマニュアルレバー4を移動させた位置にP壁5が設けられている。マニュアルレバー4の作動可能範囲の中央からNon−P位置を越えてさらにマニュアルレバー4を移動させた位置にNon−P壁6が設けられている。
【0022】
SBW装置1は、マニュアルレバー4の位置を移動させる電動機(以下、モータ(MT)という)7を備える。モータ7は、三相のスイッチトリラクタンス型(SR型)(Switched Reluctance)のモータである。
【0023】
SBW装置1は、エンコーダ(ENC)8を備える。エンコーダ8は、インクリメンタル型の二相のエンコーダである。エンコーダ8は、モータ7の回転軸に連結されている。エンコーダ8は、モータ7の所定の回転角度ごとに信号を出力する。エンコーダ8は、モータ7が回転すると、位相がずれた多相信号を出力する。多相信号は、所定の回転角度間隔で反転する。エンコーダ8は、少なくともA相信号PAとB相信号PBとを出力する。A相信号PAは、所定の回転角度ごとにレベルが反転する。B相信号PBは、A相信号PAから位相がずれており、かつ所定の回転角度ごとにレベルが反転する。エンコーダ8は、モータ7の励磁相を順に切換えるためのすべての切換時期をA相信号PAとB相信号PBとの反転によって検出する。
【0024】
SBW装置1は、レンジ切換制御装置(ECU)9を備える。レンジ切換制御装置9は、車両の運転者によって操作されるレバーの位置に応じて、マニュアルレバー4を移動させる。レバーは、P位置、またはNon−P位置に選択的に操作可能である。レンジ切換制御装置9は、モータ制御装置を構成している。レンジ切換制御装置9は、マイクロコンピュータ(COM)11、入力回路(ITF)12、三相ドライバ回路(TPD)13、およびメモリ(MMR)14を備える。入力回路12は、エンコーダ8から供給されるエンコーダ信号を波形整形し、マイクロコンピュータ11に入力する。マイクロコンピュータ11は、入力回路12から供給されるエンコーダ信号を割込み信号として入力する。三相ドライバ回路13は、マイクロコンピュータ11の指令に応じてモータ7の三相の巻線への通電を制御する。メモリ14は半導体メモリであって、マイクロコンピュータ11が実行するモータ制御のためのプログラムを記憶している。マイクロコンピュータ11は、エンコーダ8から出力される信号に基づいてモータ7を制御する制御手段を提供する。マイクロコンピュータ11は、A相信号とB相信号とからモータ7の回転位置を認識する。さらに、マイクロコンピュータ11は、三相ドライバ13を制御することによってモータ7の位置、すなわちマニュアルレバー4の位置をフィードバック制御する制御手段を提供する。
【0025】
レンジ切換制御装置9は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータによって提供される。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能なプログラムを非一時的に格納している。記憶媒体は、半導体メモリ14または磁気ディスクによって提供されうる。プログラムは、レンジ切換制御装置9によって実行されることによって、レンジ切換制御装置9をこの明細書に記載される装置として機能させ、この明細書に記載される制御方法を実行するようにレンジ切換制御装置9を機能させる。レンジ切換制御装置9が提供する手段は、所定の機能を達成する機能的ブロック、またはモジュールとも呼ぶことができる。
【0026】
マイクロコンピュータ11は、モータ制御手段(MTCM)21を備える。モータ制御手段21は、フィードバック制御手段(FBCM)22、壁当て制御手段(WSPM)23、禁止手段(INHM)24、およびタイマ手段(TMRM)25を備える。フィードバック制御手段22は、エンコーダ信号PA、PBに基づいてモータ7をフィードバック制御する。フィードバック制御手段22は、マニュアルレバー4の現在位置が目標位置に一致するようにモータ7をフィードバック制御する。フィードバック制御手段22は、壁当て制御手段23によって設定された基準位置からエンコーダ信号PA、PBを計数することによりマニュアルレバー4の位置を認識する。マニュアルレバー4の位置は、シフトレンジに対応する。
【0027】
壁当て制御手段23は、所定の初期化条件が成立すると、壁当て制御を実行する。壁当て制御は、マニュアルレバー4がP壁5に衝突して停止するまでモータ7を回転させる。これにより、壁当て制御手段23は、モータ7を制御するための基準位置、すなわち原点を設定する。壁当て制御手段23は、複数の初期化条件に応答して壁当て制御を実行する。
【0028】
禁止手段24は、予め設定された禁止条件が満たされるときに、壁当て制御手段23による壁当て制御を禁止する。禁止手段24は、レンジ切換制御装置9およびマイクロコンピュータ11を作動状態(ON)に維持することによって壁当て制御の繰り返しを阻止する。禁止手段24は、車両10の利用者の挙動に基づいて壁当て制御の許可と禁止とを切換える。具体的には、利用者が車両10に関する何らかの作業を行っている可能性がある場合には、壁当て制御を禁止する。より具体的には、利用者が車両10の周囲にいる場合には、その間中の壁当て制御を禁止する。その一方で、利用者が車両10の周囲から離れた場合には、その後の壁当て制御を許可する。禁止手段24は、初期化条件が非成立になった後に、距離判定手段により車両10の利用者が車両10から所定の閾値Dthを越えて離れたと判定されると、壁当て制御手段23による壁当て制御を許可する。また、禁止手段24は、禁止条件が満たされるか否かを判定するための閾値を調節する。具体的には、車両10への充電の可能性に基づいて閾値を調節する。例えば、充電の可能性が高い場合には、壁当て制御を禁止する期間を長く設定する。
【0029】
タイマ手段25は、時間を計測する。タイマ手段25の計測時間TMRは、禁止手段24において参照される。タイマ手段25は、初期化条件の成立を判定する期間を制限するために利用される。タイマ手段25は、車両10の利用者が車両10から所定の閾値Dthを越えて離れていないと判定される時間を計測する。例えば、禁止手段は、タイマ手段25による計測時間TMRが所定の閾値Tthを上回ると壁当て制御手段23による壁当て制御を許可する。
【0030】
車両10には、電源スイッチ(PWSW)31が設けられている。電源スイッチ31は、車両10を運行させるときにオン(ON)状態に操作され、車両10の運行を停止し駐車するときにオフ(OFF)状態に操作される。電源スイッチ31の操作状態は、壁当て制御手段23に入力されている。電源スイッチ31がオフ状態からオン状態に操作される場合、車両10の運行が開始されると判断できる。そこで、伝達機構3のシフト位置を正確に制御するために、電源スイッチ31がオン位置に操作されることは、初期化条件のひとつとされている。
【0031】
車両10は、充電制御装置32を備える。充電制御装置32は、動力源2に含まれる二次電池が外部電源(EXPS)33によって充電されるときに、充電を制御する。外部電源33は、広域電力網、または小規模発電施設から供給される電力を二次電池に供給する。外部電源33は、商業的な充電スタンド、または住戸に設置される。外部電源33は、接続装置34を接続することにより車両10に接続可能に構成されている。接続装置34は、脱着可能である。車両10を運行させるときには、接続装置34は分離される。接続装置34は、電力線を電気的に接続するコネクタにより提供することができる。また、接続装置34は、電磁結合を利用した非接触給電装置によって提供することができる。充電制御装置32は、接続装置34が接続状態にあることを検出する検出手段を提供する。充電制御装置32は、接続装置34が接続状態にあることを壁当て制御手段23に送信する。接続装置34が接続状態にあるとき、伝達機構3がP位置に制御されることによって、車両10が拘束されることが望ましい。この拘束を確実に実現するために、接続装置34が接続状態にあることは、初期化条件のひとつとされている。
【0032】
車両10は、無線装置(RDCM)35と、端末機(MBTM)36とを備える。端末機36は、車両10の利用者が所持している。無線装置35と端末機36とは、互いに無線にてデータ通信可能である。無線装置35と端末機36とは、車両の無線式ドアロック装置を構成している。このような装置は、スマートエントリーシステムとも呼ばれる。無線装置35は、端末機36が車両10の近傍にあるか否かを検出することができる。無線装置35は、端末機36が車両10の近傍にある場合、車両10の錠装置を解除する。また、無線装置35は、端末機36が車両10から所定距離を上回って離れると、車両10の錠装置を施錠する。無線装置35は、端末機36が車両10の近傍にあるか否かを禁止手段24に送信する。言い換えると、無線装置35は、利用者が車両10から所定距離を越えて離れているか否かを判定し、その判定結果を禁止手段24に提供する。
【0033】
車両10は、ナビゲーション装置(NAVM)37を備える。ナビゲーション装置37は、車両10の位置を地図上に表示し、車両10の運行を支援する。ナビゲーション装置37は、車両10の現在の位置を検出することができる。さらに、ナビゲーション装置37は、車両10に関連する地図上の場所を記憶している。ナビゲーション装置37は、車両10に関連する位置情報を禁止手段24に送信する。位置情報には、車両10の現在位置に関する情報が含まれる。例えば、ナビゲーション装置37は、車両10の現在の位置が、所有者の住宅であるか否か、充電スタンドであるか否かといった位置情報を禁止手段24に提供する。
【0034】
図2および図3は、第1実施形態の壁当て制御150を示すフローチャートである。これらの図に図示されたフローチャートは結合子によって接続することができる。図2において、ステップ151では、電源スイッチ31がオン状態か否かを判定する。電源スイッチ31がオン状態である場合、ステップ153へ進む。ステップ152では、外部電源33が接続されているか否かを判定する。外部電源33が接続装置34によって車両10に接続されている場合、ステップ153へ進む。ステップ153では、モータ7の初期駆動を実行する。ここでは、エンコーダ信号PA、PBに依存することなくモータ7をP壁5に向けて駆動する。ステップ154では、壁当てを実施する。ここでは、マニュアルレバー4がP壁5に衝突するまでモータ7を回転させ、さらに、マニュアルレバー4をP壁5に押し付けるようにモータ7を回転させる。さらに、ステップ154では、モータ7をフィードバック制御するための基準位置が設定される。ステップ155では、マニュアルレバー4を初期位置へ移動させるようにモータ7を制御する。ここでは、マニュアルレバー4がP壁5から、P位置へ戻される。ステップ151−155は、モータ制御のための基準位置を設定する壁当て制御手段23を提供する。ステップ151−155は、複数の初期化条件のいずれかの成立に応答して、マニュアルレバー4を壁に押し当てるようにモータ7を制御する壁当て制御を実行する壁当て制御手段23を提供する。ステップ151およびステップ152は、初期化条件の成立を判定する手段を提供する。
【0035】
ステップ156では、シフト位置がP位置にあるか否かを判定する。ステップ156で否定判定されるとステップ157へ進む。ステップ157では、シフト位置をP位置へ切換えるように利用者に対して警告が与えられる。さらに、ステップ157では、自動的にシフト位置がP位置に切換えられるようにモータ7が制御される。ステップ151またはステップ152で肯定判定された直後は、シフト位置がP位置にあることが望ましい。よって、ステップ156、157は、P位置を確定させるための手段を提供する。
【0036】
図3において、ステップ158では、電源スイッチ31がオン状態か否かを判定する。電源スイッチ31がオン状態である場合、ステップ159へ進む。ステップ159では、レンジ切換が必要か否かを判定する。具体的には、目標レンジRtと現在レンジRrとが一致しているか否かを判定する。Rt=Rrである場合、ステップ158へ戻る。レンジ切換が必要である場合、すなわちRt≠Rrである場合、ステップ160へ進む。ステップ160では、レンジを切換える。具体的には、現在レンジRrを目標レンジRtに一致させるようにモータ7を制御する。ステップ160は、フィードバック制御手段22を提供する。ステップ158−160の処理は、電源スイッチ31がオン状態にある間中、すなわち車両10が運行状態にある間中、繰り返して実行される。ステップ158−160の処理により、通常のレンジ切換処理が提供される。
【0037】
ステップ158で否定判定されると、ステップ161へ進む。ステップ161では、外部電源33が接続されているか否かを判定する。外部電源33が接続装置34によって車両10に接続されていない場合、ステップ158へ戻る。したがって、外部電源33が接続されている間中、ステップ158−161の処理が繰り返される。この結果、外部電源33が接続されている間中、レンジ切換制御装置9はスリープ状態には移行しない。これによって前回の壁当て制御、すなわちステップ151−155によって得られた基準位置の情報が保持される。外部電源33が接続されていない場合、ステップ162へ進む。ステップ158とステップ161とは、電源スイッチ31がオフ操作されたまま、外部電源33が接続されていない状態、すなわち車両10が放置されている状態を検出する。
【0038】
ステップ162では、タイマ手段25による時間の計測を開始する。タイマ手段25により計測時間TMRが提供される。このタイマ手段25は、電源スイッチ31がオフ状態であり、かつ外部電源33が接続されていない状態の継続時間を計測する。言い換えると、タイマ手段25は、充電作業がされないまま車両10が放置されている時間を計測する。ステップ163では、閾値Dth、Tthを設定する。閾値Dthは、端末機36が車両10から所定距離を上回って離れているか否かを判定するための距離閾値である。閾値Tthは、所定時間を上回る長時間にわたって、利用者が車両10の周囲にいるか否かを判定するための時間閾値である。ステップ163は、閾値Dthおよび/または閾値Tthを車両10の位置に応じて設定する設定手段を提供する。この構成によると、閾値Dthおよび/または閾値Tthは可変である。しかも、車両10の位置に応じて設定される。このため、車両10の位置に応じて、壁当て制御が許可されるまでの時間を可変設定することができる。
【0039】
閾値Dthは、車両10が停車、または駐車している場所に応じて設定される。例えば、閾値Dthは、車両10が充電される可能性の高い場所、例えば充電スタンド、または保管場所において長く設定される。これにより、例えば充電スタンドにおいては、利用者が車両10から比較的遠く離れても壁当てが禁止される。一方で、市街地の路上などにおいては、閾値Dthは短く設定される。これにより、利用者が車両10から少しでも離れるとレンジ切換制御装置9をスリープ状態に切換えることができる。
【0040】
また、閾値Tthは、住宅の駐車場において短く設定される。住宅の駐車場においては、利用者は車両10から遠く離れることがない場合がある。しかし、閾値Tthを短く設定することで、早期にレンジ切換制御装置9をスリープ状態に切換えることができる。また、閾値Tthは、車両10の位置が充電スタンド、すなわち充電を期待できる場所である場合に、長く設定される。
【0041】
車両10の位置は、ナビゲーション装置37から得ることができる。ナビゲーション装置37は、車両の現在の位置を示す情報と、その位置の特徴情報を提供する。例えば、ナビゲーション装置37は、車両10の位置が車両10への充電が期待できる位置であるか否かを示す情報を提供する。さらに、この実施形態では、後述のステップ182により、外部電源が接続された位置、すなわち充電を期待できる位置を記録する記録手段が提供される。ステップ163では、車両10が記録手段によって記録された位置にあるか否かに応じて時間閾値Tthを異なる値に設定する。
【0042】
ステップ164では、車両10と端末機36との間の距離VDと閾値Dthとが比較される。ここでは、距離VDが閾値Dthを上回るか否かを判定する。ステップ164は、車両10の利用者が車両10から所定の距離Dthを越えて離れているか否かを判定する距離判定手段を提供する。ステップ164で否定判定されると、ステップ165へ進む。ステップ165では、タイマ手段25の計測時間TMRと閾値Tthとが比較される。ここでは、計測時間TMRが閾値Tthを上回るか否かを判定する。ステップ164で肯定判定されると、すなわち距離VDが閾値Dthを上回っていると、ステップ166へ進む。ステップ165で肯定判定されると、すなわち計測時間TMRが閾値Tthを上回っていると、ステップ166へ進む。ステップ166では、レンジ切換制御装置9のスリープ処理を実行する。この結果、前回の壁当て制御によって得られた基準位置情報は失われる。よって、電源スイッチ31がオフ位置に操作された後に、利用者が車両10から所定の閾値Dthを上回って離れた場合には、レンジ切換制御装置9はスリープ状態に移行する。また、利用者が車両10から所定の閾値Dthを上回って離れないままで、電源スイッチ31がオフ位置に操作された後の計測時間TMRが所定の閾値Tthを上回った場合には、レンジ切換制御装置9はスリープ状態に移行する。これらの場合には、再度の壁当て制御は禁止されない。
【0043】
ステップ165で否定判定された場合、ステップ167へ進む。ステップ167では電源スイッチ31がオン状態か否かを判定する。電源スイッチ31がフ状態である場合、ステップ168へ進む。ステップ168では、外部電源33が接続されているか否かを判定する。外部電源33が接続装置34によって車両10に接続されていない場合、ステップ164へ戻る。したがって、外部電源33が接続されていない間中、ステップ164−168の処理が繰り返される。この結果、外部電源33が接続されていない間中、タイマ手段25は時間を計測する。また、この間中、レンジ切換制御装置9はスリープ状態には移行しない。ステップ167において肯定判定されるか、またはステップ168において肯定判定されるとステップ169へ進む。ステップ169では、タイマ手段25による時間計測を停止する。ステップ169の後、ステップ158へ戻る。したがって、車両10の放置状態が閾値Tthを上回る前に、電源スイッチ31がオン状態に操作されるか、または外部電源33が接続されると、スリープ状態への移行が回避される。この結果、前回の壁当て制御、すなわちステップ151−155によって得られた基準位置の情報が保持される。すなわち、再度の壁当て制御が禁止される。
【0044】
ステップ158−165、および167−169は、禁止手段24を提供する。禁止手段24は、壁当て制御が実行された後に、所定の期間、初期化条件が成立しても壁当て制御手段23、251−155による壁当て制御を禁止する。上記期間は、距離判定手段164により車両10の利用者が車両10から所定の距離閾値Dthを越えて離れたと判定されるまでの期間である。禁止手段24は、初期化条件が非成立になったことを判定する判定手段(158、161)を備える。また、禁止手段24は、壁当て制御が実行された後から初期化条件が非成立になるまでの期間、壁当て制御を禁止する第1禁止手段(158−161)を備える。また、禁止手段24は、初期化条件が非成立になった後に、距離判定手段により車両の利用者が車両から所定の距離閾値(Dth)を越えて離れたと判定されるまでの期間、初期化条件が成立しても壁当て制御手段による壁当て制御を禁止する第2禁止手段(162−165、167−169)を備える。この構成によると、ひとつの初期化条件によって壁当て制御が実行された後は、その初期化条件の成立中における再度の壁当て制御が禁止される。さらに、その初期化条件が非成立になった後にも、壁当て制御が禁止される。
【0045】
ここで、ステップ151またはステップ152は、2つの初期化条件のうちのいずれか一方が成立したことを判定する手段を提供する。初期化条件は、電源スイッチ31がオン位置にあることを含む。初期化条件は、外部電源33が接続されていることを含む。ステップ153−155は、壁当て制御によって基準位置を設定する手段を提供する。また、ステップ158およびステップ161は、一度は成立した初期化条件が再び非成立となったことを判定する判定手段を提供する。ステップ162、163、165は、初期化条件が非成立となってからの経過時間が所定の閾値Tthに到達することを待つ手段を提供する。ステップ167およびステップ168は、待ち時間の間に、2つの初期化条件のうちのいずれか一方が再び成立したことを判定する手段を提供する。上記ステップ158−168は、再度の壁当て制御を禁止する手段を提供する。そして、ステップ166は、待ち時間の経過後に、再度の壁当て制御を許可する手段を提供する。
【0046】
図4は、第1実施形態の充電場所を記録するための制御180を示すフローチャートである。レンジ切換制御装置9は、接続装置34を介して車両10と外部電源33とが接続された場所を記録する。これにより、ナビゲーション装置37に登録されていない充電設備を記録する。ステップ181では、外部電源33が接続されたか否かを判定する。外部電源33が接続されると、ステップ182へ進む。ステップ182では、ナビゲーション装置37から得られる現在位置を、充電場所として記録する。ステップ182は、外部電源33が接続されたときの車両10の位置を記録する記録手段を提供する。
【0047】
図5A−図5Gは、第1実施形態の作動の一例を示すタイムチャートである。図中には、車両10が運転された後に、充電された場合が図示されている。利用者が車両10に接近してくると、距離VDが徐々に減少する。時刻t11において、利用者は車両10に乗り、電源スイッチ31をオン位置に操作する。これに応答して、壁当て制御が開始される。時刻t11の後、モータ7の制御モードMTMDは、OFF状態から、初期駆動制御(INTD)、壁当て制御(STPD)、初期位置戻し制御(RTZD)、および通常位置制御(PSTC)に順に切換えられる。この結果、モータ7の基準位置が設定され、シフトレンジSFRは、不定位置(UNK)から、P位置へ制御される。やがて、利用者が車両10を運転するために、シフト位置を切換えると、シフトレンジSFRは、Non−P位置に切換えられる。利用者は、車両10を運転した後、時刻t12において電源スイッチ31をオフ位置に操作する。時刻t12の直前に、利用者は車両10を駐車するために、シフトレンジSFRをP位置に操作する。時刻t12においては、電源スイッチ31がオフ状態であり、かつ外部電源33が接続されていない状態である。よって、タイマ手段25の計測時間TMRが時刻t12から徐々に増加する。利用者は、時刻t12の後に車両10から降り、車両10の周辺を移動して接続装置34を操作する。やがて、時刻t13において外部電源33が接続される。利用者が接続装置34を操作する間、距離VDは閾値Dthを越えることはない。閾値Dthは、通常の充電作業では越えることがないように設定されている。時刻t13の後、利用者は車両10から離れてゆく。図示の例では、レンジ切換制御装置9は、電源スイッチ31のオン操作に応答して壁当て制御を実行した後、スリープ状態(SLEEP)に移行することはない。このため、時刻t13において外部電源33が接続されたときでも、時刻t11において実行された壁当て制御により得られた基準位置に関する情報を保持している。よって、図中に破線で示されるような再壁当て制御が回避される。
【0048】
図6A−図6Gは、第1実施形態の作動の一例を示すタイムチャートである。図中には、車両10へ充電された後に、車両10が運転された場合が図示されている。利用者が車両10に接近してくると、距離VDが徐々に減少する。利用者は、車両10の周辺において接続装置34を操作する。やがて、時刻t21において外部電源33が接続される。外部電源33が接続されると、レンジ切換制御装置9がスリープ状態(SLEEP)から作動状態(ON)に移行する。同時に、壁当て制御が開始される。この結果、モータ7の基準位置が設定され、シフトレンジSFRは、不定位置(UNK)から、P位置へ制御される。外部電源33を接続した利用者は、車両10から閾値Dthを越えて離れることがある。しかし、外部電源33が継続的に接続状態にあるため、レンジ切換制御装置9は継続して作動状態に置かれる。やがて、利用者が車両10を運転するために車両10に接近してくると、距離VDが徐々に減少する。利用者は、時刻t22において外部電源33を切り離す。これに応答して、タイマ手段25の計測時間TMRが時刻t22から徐々に増加する。利用者は車両10に乗り、時刻t23において、電源スイッチ31をオン位置に操作する。図示の例では、レンジ切換制御装置9は、外部電源33の接続に応答して壁当て制御を実行した後、スリープ状態(SLEEP)に移行することはない。このため、時刻t23において電源スイッチ31がオン操作されたときでも、時刻t21において実行された壁当て制御により得られた基準位置に関する情報を保持している。よって、図中に破線で示されるような再壁当て制御が回避される。
【0049】
図7A−図7Gは、第1実施形態の作動の一例を示すタイムチャートである。図中には、車両10が運転された後に、充電され、再び運転された場合が図示されている。時刻t31において電源スイッチ31がオン状態に操作されると、壁当て制御が実行される。この後、車両10は時刻t32まで運転される。時刻t32において電源スイッチ31がオフ位置に操作されると、タイマ手段25の計測時間TMRが徐々に増加する。また、時刻t32の後、利用者は車両10から降りて車両10の周囲を移動して接続装置34を接続する作業を行う。時刻t33において外部電源33が接続される。図示の例では、距離VDが閾値Dthを上回らず、しかも計測時間TMRが閾値Tthを上回らない間に、外部電源33が接続される。よって、レンジ切換制御装置9は作動状態に維持され、スリープ状態に移行することはない。この結果、破線で示されるような再壁当て制御が回避される。時刻t33の後、外部電源33は接続状態におかれる。よって、レンジ切換制御装置9は作動状態に維持され、スリープ状態に移行することはない。利用者は、時刻t34において外部電源33を切り離す。これに応答して、タイマ手段25の計測時間TMRが時刻t34から徐々に増加する。利用者は車両10に乗り、時刻t35において、電源スイッチ31をオン位置に操作する。図示の例では、距離VDが閾値Dthを上回らず、しかも計測時間TMRが閾値Tthを上回らない間に、外部電源33が接続される。よって、レンジ切換制御装置9は作動状態に維持され、スリープ状態に移行することはない。この結果、破線で示されるような再壁当て制御が回避される。
【0050】
図8A−図8Gは、第1実施形態の作動の一例を示すタイムチャートである。図中には、車両10が運転された後に、車両10に充電することなく、利用者が車両10から離れた場合が図示されている。時刻t41において、利用者は車両10に乗り、電源スイッチ31をオン位置に操作する。これに応答して、壁当て制御が開始される。利用者は、車両10を運転した後、時刻t42において電源スイッチ31をオフ位置に操作する。図示の例では、利用者が車両10から急速に離れる。このため、距離VDは、時刻t43において閾値Dthを上回る。これに応答して、レンジ切換制御装置9はスリープ状態に移行する。この結果、モータ7の制御モードはオフ状態に戻される。また、シフトレンジは不定状態に戻る。
【0051】
図9A−図9Gは、第1実施形態の作動の一例を示すタイムチャートである。図中には、車両10が運転された後に、車両10に充電することなく、利用者が車両10の近傍に留まり、長時間を経過した場合が図示されている。時刻t51において、利用者は車両10に乗り、電源スイッチ31をオン位置に操作する。これに応答して、壁当て制御が開始される。利用者は、車両10を運転した後、時刻t52において電源スイッチ31をオフ位置に操作する。図示の例では、利用者は車両10の近傍に留まり続ける。このため、距離VDは、閾値Dthを上回ることがない。一方、時刻t52からタイマ手段25の計測時間TMRが徐々に増加する。やがて、計測時間TMRは、時刻t53において閾値Tthに到達する。これに応答して、レンジ切換制御装置9はスリープ状態に移行する。この結果、モータ7の制御モードはオフ状態に戻される。また、シフトレンジは不定状態に戻る。
【0052】
この実施形態によると、壁当て制御は複数の初期化条件の成立に応答して実行される。初期化条件は、頻繁に成立することがある。しかし、車両10の利用者が車両10から所定の距離閾値を越えて離れていない場合には、再び初期化条件が成立しても壁当て制御が禁止される。この結果、壁当て制御の回数が抑制される。
【0053】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0054】
例えば、制御装置が提供する手段と機能は、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、制御装置をアナログ回路によって構成してもよい。また、上記実施形態では、タイマ手段25をソフトウェアによって構成した。これに代えて、タイマ手段25の一部、または全部をハードウェアによって構成してもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、レンジ切換制御装置9は、P位置とNon−P位置との2位置間での切換を提供した。これに代えて、レンジ切換制御装置9は、3つ以上の複数の位置間での切換えを提供するように構成することができる。例えば、P位置、R(後退)位置、N(ニュートラル)位置、D(ドライブ)位置といった4位置間の切換を提供することができる。
【0056】
また、上記実施形態では、ハイブリッド車両に本発明を適用したが、本発明は内燃機関のみを動力源とする車両、または電動機のみを動力源とする車両にも適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 シフトバイワイヤ装置、 2 動力源、 3 伝達機構、 7 モータ、 8 エンコーダ、 9 制御装置、 11 マイクロコンピュータ、 21 モータ制御手段、 22 フィードバック制御手段、 23 壁当て制御手段、 24 禁止手段、 25 タイマ手段、 31 電源スイッチ、 32 充電制御装置、 33 外部電源、 34 接続装置、 35 無線装置、 36 端末機、 37 ナビゲーション装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(10)に搭載された制御対象物を少なくとも2位置の間で移動させるモータ(7)と、
複数の初期化条件のいずれかの成立に応答して、前記制御対象物を壁に押し当てるように前記モータを制御する壁当て制御を実行する壁当て制御手段(23、151−155)と、
前記車両の利用者が前記車両から所定の距離を越えて離れているか否かを判定する距離判定手段(35、36、164)と、
前記壁当て制御が実行された後に、前記距離判定手段により前記車両の利用者が前記車両から所定の距離閾値(Dth)を越えて離れたと判定されるまでの期間、前記初期化条件が成立しても前記壁当て制御手段による前記壁当て制御を禁止する禁止手段(24、158−165、167−169)とを備えることを特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
前記禁止手段は、前記初期化条件が非成立になったことを判定する判定手段(158、161)を備え、
前記壁当て制御が実行された後から前記初期化条件が非成立になるまでの期間、前記壁当て制御を禁止する第1禁止手段(158−161)と、
前記初期化条件が非成立になった後に、前記距離判定手段により前記車両の利用者が前記車両から所定の距離閾値(Dth)を越えて離れたと判定されるまでの期間、前記初期化条件が成立しても前記壁当て制御手段による前記壁当て制御を禁止する第2禁止手段(162−165、167−169)とを備えることを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記禁止手段は、前記初期化条件が非成立になった後に、前記距離判定手段により前記車両の利用者が前記車両から所定の距離閾値(Dth)を越えて離れたと判定されると、前記壁当て制御手段による前記壁当て制御を許可することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
さらに、前記車両を運転するときにオン位置に操作される電源スイッチ(31)を備え、
前記初期化条件は、前記電源スイッチがオン位置にあることを含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のモータ制御装置。
【請求項5】
さらに、前記距離判定手段により前記車両の利用者が前記車両から所定の距離閾値(Dth)を越えて離れていないと判定される時間を計測するタイマ手段(25)を備え、
前記禁止手段は、前記タイマ手段による計測時間(TMR)が所定の時間閾値(Tth)を上回ると前記壁当て制御手段による前記壁当て制御を許可することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のモータ制御装置。
【請求項6】
前記時間閾値を前記車両の位置に応じて設定する設定手段(163)を備えることを特徴とする請求項5に記載のモータ制御装置。
【請求項7】
さらに、前記車両に設けられた二次電池(2)へ充電するために外部電源が接続される接続装置(34)を備え、
前記初期化条件は、前記外部電源が接続されていることを含むことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のモータ制御装置。
【請求項8】
さらに、前記車両に設けられた二次電池(2)へ充電するために外部電源が接続される接続装置(34)と、
前記外部電源が接続されたときの前記車両の位置を記録する記録手段(182)とを備え、
前記初期化条件は、前記外部電源が接続されていることを含み、
前記設定手段は、前記車両が前記記録手段に記録された位置にあるか否かに応じて前記時間閾値を異なる値に設定することを特徴とする請求項6に記載のモータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−53731(P2013−53731A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194035(P2011−194035)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】