説明

モータ駆動制御装置

【課題】小型で、効率の高いモータ駆動制御装置を提供する。
【解決手段】交流電源2を入力とする整流回路3の出力に接続され少なくとも第1のリアクタ10と第1のスイッチング手段11と第1のダイオード12とを有する第1の昇圧コンバータ回路4と、第1の昇圧コンバータ回路4と並列に接続され、少なくとも第2のリアクタ13と第2のスイッチング手段14と第2のダイオード15とを有する第2の昇圧コンバータ回路5と、第1の昇圧コンバータ回路4と第2の昇圧コンバータ回路5の出力に接続された平滑コンデンサ6と、平滑コンデンサ6に接続されモータ8を駆動するインバータ回路7とを備え、第1の昇圧コンバータ回路4と第2の昇圧コンバータ回路5の動作周期を交流電源2の周期より短くしたもので、インバータ回路7の動作電圧を昇圧し、モータ8の運転効率を高め、第1、第2のリアクタ10、11の小型・軽量化が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のモータ駆動制御装置の入力電圧を昇圧する回路には、全波倍電圧回路が使用されていた。
【0003】
図5は、従来のモータ駆動制御装置の全波倍電圧回路の一例を示す回路図である。
【0004】
図5において、従来のモータ駆動制御装置の全波倍電圧回路40は、交流電源2の出力電圧を整流するブリッジダイオード回路41と、交流電源2とブリッジダイオード回路41との間に直列に接続された力率改善用リアクタ42と、ブリッジダイオード回路41に並列に接続された直列接続の2つの電解コンデンサ43及び44と、電解コンデンサ43及び44に並列に接続された電解コンデンサ45とを有している。
【0005】
全波倍電圧回路40の入力端子1a及び1bは、交流電源2の出力端子に接続されている。ブリッジダイオード回路41は、全波倍電圧回路40の出力端子1c及び1d間に直列に接続された2つのダイオード41a及び41bからなり、前記両ダイオード41a及び41bの接続点41cは、力率改善用リアクタ42を介して、全波倍電圧回路40の一方の入力端子1aに接続されている。また、全波倍電圧回路40の他方の入力端子1bには電解コンデンサ43及び44の接続点が接続されており、前記各電解コンデンサ43及び44にはそれぞれ並列にダイオード46及び47が接続されている。
【0006】
このような全波倍電圧回路40では、交流電源2の出力電圧がブリッジダイオード回路41を構成するダイオード41a及び41bにより全波整流され、ブリッジダイオード回路41の全波整流出力により電解コンデンサ43及び44が、交流電源2の出力電圧の周期で交互に充電される。この充電により直列接続のコンデンサ43及び44の両端に発生した交流電源2の倍電圧は、電解コンデンサ45により平滑され、全波倍電圧回路40の出力端子1c及び1d間に、平滑された倍電圧が発生する。
【0007】
また、入力電源の力率を向上させ、かつ入力電圧を任意の電圧まで昇圧する方法として、整流回路に昇圧回路を具備した回路方式も提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【0008】
図6は、上記特許文献1に示された従来のモータ駆動制御装置の電圧変換回路の回路図である。
【0009】
この電圧変換回路50は、入力端子2a及び2bに入力された交流電源2の出力電圧を整流する整流回路51と、前記整流回路51の出力電圧を昇圧する昇圧コンバータ回路52と、前記昇圧コンバータ回路52の出力電圧により充電される電解コンデンサ53とを備えている。
【0010】
前記整流回路51は、直列接続のダイオード54及び55と、直列接続のダイオード56及び57とから構成されている。ダイオード54及び55の接続点50aは電圧変換回路50の一方の入力端子2aに、ダイオード56及び57の接続点50bは電圧変換回路50の他方の入力端子2bに接続されている。また、ダイオード54及び56の共通接続のカソードは、前記整流回路51の一方の出力端子となっており、ダイオード55及び5
7の共通接続のアノードは、該整流回路51の他方の出力端子となっている。
【0011】
前記昇圧コンバータ回路52は、一端が前記整流回路51の一方の出力端子に接続されたリアクタ58と、アノードがリアクタ58の他端に、カソードが電圧変換回路50の一方の出力端子2cに接続されたダイオード59aと、前記リアクタ58及びダイオード59aの接続点と前記整流回路51の他方の出力端子との間に接続されたスイッチング手段60とを有している。ここで、前記スイッチング手段60は、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)であり、前記スイッチング手段60には逆並列にダイオード59bが接続されている。
【0012】
この電圧変換回路50では、交流電源2から供給される交流電圧が整流回路51により整流され、前記整流回路51の出力が昇圧コンバータ回路52に入力されると、昇圧コンバータ回路52では、前記整流回路51の出力がスイッチング手段60のオンオフにより昇圧される。つまり、昇圧コンバータ回路52では、スイッチング手段60のオンにより、リアクタ58の出力側の電路が短絡してリアクタ58に整流回路51から直流電流が流入し、エネルギーがリアクタ58に蓄えられる。その後、スイッチング手段60がオフすると、リアクタ58に誘起電圧が発生し、コンデンサ53が前記誘起電圧と整流回路51の出力との和電圧により充電され、コンデンサ53の端子間には、整流回路51の出力より高い電圧が発生する。
【0013】
このタイプの昇圧コンデンサ回路52を有する電圧変換回路50では、スイッチング手段60のオン期間とオフ期間の時間比を調整することにより、交流電源からの入力電流の波形が正弦波状になるよう制御され、力率を改善することができ、さらに、上記時間比の調整により該入力電流の大きさ(絶対値)を制御して、出力される直流電圧のレベル制御を行うことができる。
【特許文献1】特許第3308993号(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、図5に示す従来のモータ駆動制御装置の全波倍電圧回路40では、大容量の倍電圧用コンデンサ43及び44と大容量の力率改善用のリアクタ42が必要であり、また、倍電圧用コンデンサの容量が小さいと、倍電圧回路としての動作が行われない。
【0015】
全波倍電圧回路の動作は、直列接続の2つのコンデンサが、入力である交流電圧の半周期毎に交互に充電され、2つのコンデンサの端子電圧の和電圧が出力されるというものである。このため、コンデンサの容量が小さいと、充電されたコンデンサの端子電圧が、充電が行われない入力電圧の半周期の間に降下してしまい、2つのコンデンサの端子電圧の和電圧として出力される、全波倍電圧回路40の出力電圧は、入力電圧の2倍にならない。
【0016】
また、図6に示すような従来の電圧変換回路50の構成では、例えば、モータ駆動制御装置を構成するものであり、昇圧コンバータ回路52を構成するリアクタ58の容量と、昇圧コンバータ回路52の出力により充電されるコンデンサ53の容量とが、スイッチング手段60のスイッチング周波数によって決定される。つまり、リアクタ58の容量を小さくするためには、入力側に現れる高調波電流が抑えられるようスイッチング周波数を上げる必要がある。また、コンデンサ53の容量を減少させるとコンデンサ53に充電される電圧のリップルが大きくなることから、そのリップルを小さくするためにはスイッチング周波数を高くする必要がある。
【0017】
電圧変換回路50での効率や高周波スイッチング素子のコストなどから、昇圧コンバー
タ回路52での現実のスイッチング周波数を高くするにも限界があり、そのためリアクタ58とコンデンサ53の容量は一定以上小さくすることができない。
【0018】
このように、上記従来の全波倍電圧回路40や電圧変換回路50のような回路構成では、これらの回路を構成するコンデンサやリアクタの容量を一定以上減少させることができないため、全波倍電圧回路40や電圧変換回路50などの回路自体を小さくすることができず、また、このような回路を用いるモータ駆動制御装置の小型化は困難であるという課題があった。
【0019】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、大容量のコンデンサや大容量のリアクタを用いることなく、入力電圧の昇圧率を2倍以上に大きくでき、リアクタを小型・軽量化でき、コンデンサの電気的ストレスを低減でき、効率の高いコンパクトなモータ駆動制御装置、圧縮機、冷蔵庫及び空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記従来の課題を解決するために、本発明のモータ駆動制御装置は、交流電源を入力とする整流回路と、前記整流回路の出力に接続され少なくとも第1のリアクタと第1のスイッチング手段と第1のダイオードとを有する第1の昇圧コンバータ回路と、前記第1の昇圧コンバータ回路と並列に接続され、少なくとも第2のリアクタと第2のスイッチング手段と第2のダイオードとを有する第2の昇圧コンバータ回路と、前記第1の昇圧コンバータ回路と前記第2の昇圧コンバータ回路の出力に接続された平滑コンデンサと、前記平滑コンデンサに接続されモータを駆動するインバータ回路とを備え、前記第1の昇圧コンバータ回路と前記第2の昇圧コンバータ回路の動作周期を前記交流電源の周期より短くしたもので、インバータ回路の動作電圧を昇圧することができ、モータの最高回転数を上げることが可能となる。また、あらかじめモータの最高回転数が決まっている場合には、使用するモータより効率の高いモータを使用することが可能となり、モータ駆動制御装置の省エネを図ることができる。さらに、第1、第2のリアクタを小型・軽量化でき、モータ駆動制御装置の低価格化と小型化を図ることができる。
【0021】
また、本発明の圧縮機は、交流電源を入力とすると共に、請求項1〜7のいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置によって駆動されるモータを備えたもので、インバータ回路の動作電圧を昇圧することができ、モータの最高回転数を上げることが可能となる。また、あらかじめモータの最高回転数が決まっている場合には、使用するモータより効率の高いモータを使用することが可能となり、圧縮機の省エネを図ることができる。さらに、第1、第2のリアクタを小型・軽量化でき、圧縮機の低価格化と小型化を図ることができる。
【0022】
また、本発明の冷蔵庫は、モータで駆動される圧縮機と、請求項1〜7のいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置とを備え、前記モータを前記モータ駆動制御装置で駆動するもので、インバータ回路の動作電圧を昇圧することができ、モータの最高回転数を上げることが可能となる。また、あらかじめモータの最高回転数が決まっている場合には、使用するモータより効率の高いモータを使用することが可能となり、冷蔵庫の省エネを図ることができる。さらに、第1、第2のリアクタを小型・軽量化でき、冷蔵庫の低価格化と小型化を図ることができる。
【0023】
又、本発明の空気調和機は、モータで駆動される圧縮機と、請求項1〜7のいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置とを備え、前記モータを前記モータ駆動制御装置で駆動するもので、インバータ回路の動作電圧を昇圧することができ、モータの最高回転数を上げることが可能となる。また、あらかじめモータの最高回転数が決まっている場合には、使用するモータより効率の高いモータを使用することが可能となり、空気調和機の省エネを
図ることができる。さらに、第1、第2のリアクタを小型・軽量化でき、空気調和機の低価格化と小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のモータ駆動制御装置、圧縮機、冷蔵庫及び空気調和機は、大容量のコンデンサや大容量のリアクタを用いることなく、入力電圧の昇圧率を2倍以上に連続的に可変にでき、リアクタを小型・軽量化でき、コンデンサの電気的ストレスを低減できるので、低価格化と小型化を図ることができる。
【0025】
さらに、インバータ回路の動作電圧を昇圧することができるので、モータの最高回転数を上げることが可能となり、モータトルクアップが出来る。また、あらかじめモータの最高回転数が決まっている場合には、モータ巻線を細く、巻数を増やした高効率モータを使用することが可能となり、省エネを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
第1の発明は、交流電源を入力とする整流回路と、前記整流回路の出力に接続され少なくとも第1のリアクタと第1のスイッチング手段と第1のダイオードとを有する第1の昇圧コンバータ回路と、前記第1の昇圧コンバータ回路と並列に接続され、少なくとも第2のリアクタと第2のスイッチング手段と第2のダイオードとを有する第2の昇圧コンバータ回路と、前記第1の昇圧コンバータ回路と前記第2の昇圧コンバータ回路の出力に接続された平滑コンデンサと、前記平滑コンデンサに接続されモータを駆動するインバータ回路とを備え、前記第1の昇圧コンバータ回路と前記第2の昇圧コンバータ回路の動作周期を前記交流電源の周期より短くしたもので、インバータ回路の動作電圧を昇圧することができ、モータの最高回転数を上げることが可能となる。また、あらかじめモータの最高回転数が決まっている場合には、使用するモータより効率の高いモータを使用することが可能となり、モータ駆動制御装置の省エネを図ることができる。さらに、第1、第2のリアクタを小型・軽量化でき、モータ駆動制御装置の低価格化と小型化を図ることができる。
【0027】
第2の発明は、特に、第1の発明の第1のスイッチング手段と第2のスイッチング手段のそれぞれを、トランジスタ、FET、IGBTまたはフォトカプラで構成するもので、インバータ回路の動作電圧を昇圧することができ、モータの最高回転数を上げることが可能となる。また、あらかじめモータの最高回転数が決まっている場合には、使用するモータより効率の高いモータを使用することが可能となり、モータ駆動制御装置の省エネを図ることができる。さらに、第1、第2のリアクタを小型・軽量化でき、モータ駆動制御装置の低価格化と小型化を図ることができる。
【0028】
第3の発明は、特に、第1又は第2の発明の平滑コンデンサを、電解コンデンサまたはフィルムコンデンサで構成するもので、インバータ回路の動作電圧を昇圧することができ、モータの最高回転数を上げることが可能となる。また、あらかじめモータの最高回転数が決まっている場合には、使用するモータより効率の高いモータを使用することが可能となり、モータ駆動制御装置の省エネを図ることができる。さらに、第1、第2のリアクタを小型・軽量化でき、モータ駆動制御装置の低価格化と小型化を図ることができる。
【0029】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか一つの発明の第1の昇圧コンバータ回路と第2の昇圧コンバータ回路は、互いに逆位相で動作するもので、インバータ回路の動作電圧を昇圧することができ、モータの最高回転数を上げることが可能となる。また、あらかじめモータの最高回転数が決まっている場合には、使用するモータより効率の高いモータを使用することが可能となり、モータ駆動制御装置の省エネを図ることができる。さらに、第1、第2のリアクタを小型・軽量化でき、モータ駆動制御装置の低価格化と小型化を図ることができる。
【0030】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか一つの発明の第1の昇圧コンバータ回路にスイッチ回路を並列に接続したもので、モータを低速運転する時に、第1の昇圧コンバータ回路と第2の昇圧コンバータ回路の昇圧動作を停止させ、スイッチ回路をオンすると、第1、第2の昇圧コンバータの動作損失が発生せず、効率良くモータを駆動することができる。
【0031】
第6の発明は、特に、第5の発明のスイッチ回路を、リレー、トランジスタ、FET、IGBT、双方向スイッチまたはフォトカプラで構成するもので、インバータ回路の動作電圧を昇圧することができ、モータの最高回転数を上げることが可能となる。また、あらかじめモータの最高回転数が決まっている場合には、使用するモータより効率の高いモータを使用することが可能となり、モータ駆動制御装置の省エネを図ることができる。さらに、第1、第2のリアクタを小型・軽量化でき、モータ駆動制御装置の低価格化と小型化を図ることができる。
【0032】
第7の発明は、特に、第1〜4のいずれか一つの発明の第1の昇圧コンバータ回路に第3のダイオードを並列に接続したもので、モータを低速運転する時に、第1の昇圧コンバータ回路と第2の昇圧コンバータ回路の昇圧動作を停止させると、第1、第2の昇圧コンバータの動作損失が発生せず、効率良くモータを駆動することができる。
【0033】
第8の発明は、交流電源を入力とすると共に、請求項1〜7のいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置によって駆動されるモータを備えたもので、インバータ回路の動作電圧を昇圧することができ、モータの最高回転数を上げることが可能となる。また、あらかじめモータの最高回転数が決まっている場合には、使用するモータより効率の高いモータを使用することが可能となり、圧縮機の省エネを図ることができる。さらに、第1、第2のリアクタを小型・軽量化でき、圧縮機の低価格化と小型化を図ることができる。
【0034】
第9の発明は、モータで駆動される圧縮機と、請求項1〜7のいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置とを備え、前記モータを前記モータ駆動制御装置で駆動するもので、インバータ回路の動作電圧を昇圧することができ、モータの最高回転数を上げることが可能となる。また、あらかじめモータの最高回転数が決まっている場合には、使用するモータより効率の高いモータを使用することが可能となり、冷蔵庫の省エネを図ることができる。さらに、第1、第2のリアクタを小型・軽量化でき、冷蔵庫の低価格化と小型化を図ることができる。
【0035】
第10の発明は、モータで駆動される圧縮機と、請求項1〜7のいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置とを備え、前記モータを前記モータ駆動制御装置で駆動するもので、インバータ回路の動作電圧を昇圧することができ、モータの最高回転数を上げることが可能となる。また、あらかじめモータの最高回転数が決まっている場合には、使用するモータより効率の高いモータを使用することが可能となり、空気調和機の省エネを図ることができる。さらに、第1、第2のリアクタを小型・軽量化でき、空気調和機の低価格化と小型化を図ることができる。
【0036】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0037】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるモータ駆動制御装置の回路図、図2は、同モータ駆動制御装置の各部の信号、電流を示す図である。
【0038】
本実施の形態におけるモータ駆動制御装置1は、交流電源2と、前記交流電源2を入力とする整流回路3と、前記整流回路3の出力に接続され、第1のリアクタ10と第1のスイッチング手段11と第1のダイオード12とを有する第1の昇圧コンバータ回路4と、前記第1の昇圧コンバータ回路4と並列に接続され第2のリアクタ13と第2のスイッチング手段14と第2のダイオード15とを有する第2の昇圧コンバータ回路5と、前記第1の昇圧コンバータ回路4と前記第2の昇圧コンバータ回路5の出力に接続された平滑コンデンサ6と、前記平滑コンデンサ6に接続されモータ8を駆動するインバータ回路7と、前記インバータ回路7を介して前記モータ8のモータ電流を制御することにより前記モータ8の回転速度を制御する制御部9を有している。
【0039】
なお、前記第1のスイッチング手段11と前記第2のスイッチング手段14は、トランジスタ、FET、IGBTまたはフォトカプラで構成することができる。
【0040】
また、前記平滑コンデンサ6は、電解コンデンサまたはフィルムコンデンサで構成することができる。
【0041】
第1の昇圧コンバータ回路4では、交流電源2から供給される交流電圧が整流回路3により整流され、前記整流回路3の出力が第1の昇圧コンバータ回路4に入力される。第1の昇圧コンバータ回路4では、前記整流回路3の出力を、第1のスイッチング手段11の動作周期を前記交流電源2の周期より短い周期でのオンオフにより昇圧さす。つまり、第1の昇圧コンバータ回路4では、第1のスイッチング手段11のオンにより、第1のリアクタ10の出力側の電路が短絡して第1のリアクタ10に整流回路3から直流電流が流入し、エネルギーが第1のリアクタ10に蓄えられる。その後、第1のスイッチング手段11がオフすると、第1のリアクタ10に誘起電圧が発生し、平滑コンデンサ6が前記誘起電圧と前記整流回路3の出力との和電圧により充電され、平滑コンデンサ6の端子間には、前記整流回路3の出力より高い電圧が発生する。
【0042】
第2の昇圧コンバータ回路5では、交流電源2から供給される交流電圧が整流回路3により整流され、前記整流回路3の出力が第2の昇圧コンバータ回路5に入力される。第2の昇圧コンバータ回路5では、前記整流回路3の出力を、第2のスイッチング手段14の動作周期を前記交流電源2の周期より短い周期でのオンオフにより昇圧さす。なお、第2のスイッチング手段14のオンオフは、第1の昇圧コンバータ回路の第1のスイッチング手段11のオンオフと逆位相で動作する。つまり、第2の昇圧コンバータ回路5では、第2のスイッチング手段14のオンにより、第2のリアクタ13の出力側の電路が短絡して第2のリアクタ13に整流回路3から直流電流が流入し、エネルギーが第2のリアクタ13に蓄えられる。その後、第2のスイッチング手段14がオフすると、第2のリアクタ13に誘起電圧が発生し、平滑コンデンサ6が前記誘起電圧と前記整流回路3の出力との和電圧により充電され、平滑コンデンサ6の端子間には、前記整流回路3の出力より高い電圧が発生する。
【0043】
これにより、第1の昇圧コンバータ回路4と前記第2の昇圧コンバータ回路5は、交互に昇圧動作を行うので、昇圧率を2倍以上に大きくでき、昇圧率を連続的に変えることができる。また、第1、第2のリアクタ10、13に流れる電流を従来回路と比較して、半減することが出来、整流回路3に流れる電流リップルも半減し、さらに、平滑コンデンサ6にかかる電気的ストレスを低減できる。
【0044】
よって、第1、第2のリアクタ10、13と平滑コンデンサ6を小型・軽量化でき、第1、第2のスイッチング手段12、14に低容量のスイッチング素子が使用できるようになって、モータ駆動制御装置の低価格化と小型化を図ることができる。
【0045】
(実施の形態2)
図3は、本発明の第2の実施の形態におけるモータ駆動制御装置の回路図である。なお、上記第1の実施の形態におけるモータ駆動制御装置と同一部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0046】
本実施の形態におけるモータ駆動制御装置20は、交流電源2と、前記交流電源2を入力とする整流回路3と、前記整流回路3の出力に接続され、第1のリアクタ10と第1のスイッチング手段11と第1のダイオード12とを有する第1の昇圧コンバータ回路4と、前記第1の昇圧コンバータ回路4と並列に接続され第2のリアクタ13と第2のスイッチング手段14と第2のダイオード15とを有する第2の昇圧コンバータ回路5と、前記第1の昇圧コンバータ回路4と並列に接続されたスイッチ回路21と、前記第1の昇圧コンバータ回路4と前記第2の昇圧コンバータ回路5の出力に接続された平滑コンデンサ6と、前記平滑コンデンサ6に接続されモータ8を駆動するインバータ回路7と、前記インバータ回路7を介して前記モータ8のモータ電流を制御することにより前記モータ8の回転速度を制御する制御部9を有している。
【0047】
なお、前記第1のスイッチング手段11と前記第2のスイッチング手段14は、トランジスタ、FET、IGBTまたはフォトカプラで構成することができる。
【0048】
また、前記スイッチ回路21は、リレー、トランジスタ、FET、IGBT、双方向スイッチまたはフォトカプラなどで構成することができる。
【0049】
また、前記平滑コンデンサ6は、電解コンデンサまたはフィルムコンデンサで構成することができる。
【0050】
第1の昇圧コンバータ回路4では、交流電源2から供給される交流電圧が整流回路3により整流され、前記整流回路3の出力が第1の昇圧コンバータ回路4に入力される。第1の昇圧コンバータ回路4では、前記整流回路3の出力を第1のスイッチング手段11の動作周期を前記交流電源2の周期より短い周期でのオンオフにより昇圧さす。つまり、第1の昇圧コンバータ回路4では、第1のスイッチング手段11のオンにより、第1のリアクタ10の出力側の電路が短絡して第1のリアクタ10に整流回路3から直流電流が流入し、エネルギーが第1のリアクタ10に蓄えられる。その後、第1のスイッチング手段11がオフすると、第1のリアクタ10に誘起電圧が発生し、平滑コンデンサ6が前記誘起電圧と前記整流回路3の出力との和電圧により充電され、平滑コンデンサ6の端子間には、前記整流回路3の出力より高い電圧が発生する。
【0051】
第2の昇圧コンバータ回路5では、交流電源2から供給される交流電圧が整流回路3により整流され、前記整流回路3の出力が第2の昇圧コンバータ回路5に入力される。第2の昇圧コンバータ回路5では、前記整流回路3の出力を第2のスイッチング手段14の動作周期を前記交流電源2の周期より短い周期でのオンオフにより昇圧さす。なお、第2のスイッチング手段14のオンオフは、第1の昇圧コンバータ回路の第1のスイッチング手段11のオンオフと逆位相で動作する。つまり、第2の昇圧コンバータ回路5では、第2のスイッチング手段14のオンにより、第2のリアクタ13の出力側の電路が短絡して第2のリアクタ13に整流回路3から直流電流が流入し、エネルギーが第2のリアクタ13に蓄えられる。その後、第2のスイッチング手段14がオフすると、第2のリアクタ13に誘起電圧が発生し、平滑コンデンサ6が前記誘起電圧と前記整流回路3の出力との和電圧により充電され、平滑コンデンサ6の端子間には、前記整流回路3の出力より高い電圧が発生する。
【0052】
これにより、第1の昇圧コンバータ回路と前記第2の昇圧コンバータ回路は、交互に昇
圧動作を行うので、昇圧率を2倍以上に大きくでき、昇圧率を連続的に変えることができる。また、第1、第2のリアクタ10、13に流れる電流を従来回路と比較して、半減することが出来、整流回路3に流れる電流リップルも半減し、さらに、平滑コンデンサ6にかかる電気的ストレスを低減できる。
【0053】
よって、第1、第2のリアクタ10、13と平滑コンデンサ6を小型・軽量化でき、第1、第2のスイッチング手段11、14に低容量のスイッチング素子が使用できるので、モータ駆動制御装置の低価格化と小型化を図ることができる。
【0054】
さらに、本実施の形態では、第1の昇圧コンバータ回路4と並列にスイッチ回路21を接続しているので、モータ8を低速運転する時に、第1の昇圧コンバータ回路4と第2の昇圧コンバータ回路5の昇圧動作を停止させ、スイッチ回路21をオンすると、第1、第2の昇圧コンバータ4、5の動作損失が発生せず、効率良くモータ8を駆動することができる。
【0055】
(実施の形態3)
図4は、本発明の第3の実施の形態におけるモータ駆動制御装置の回路図である。なお、上記第1の実施の形態におけるモータ駆動制御装置と同一部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0056】
本実施の形態におけるモータ駆動制御装置30は、交流電源2と、前記交流電源2を入力とする整流回路3と、前記整流回路3の出力に接続され、第1のリアクタ10と第1のスイッチング手段11と第1のダイオード12とを有する第1の昇圧コンバータ回路4と、前記第1の昇圧コンバータ回路4と並列に接続され第2のリアクタ13と第2のスイッチング手段14と第2のダイオード15とを有する第2の昇圧コンバータ回路5と、前記第1の昇圧コンバータ回路4と並列に接続された第3のダイオード31と、前記第1の昇圧コンバータ回路4と前記第2の昇圧コンバータ回路5の出力に接続された平滑コンデンサ6と、前記平滑コンデンサ6に接続されモータ8を駆動するインバータ回路7と、前記インバータ回路7を介して前記モータ8のモータ電流を制御することにより前記モータ8の回転速度を制御する制御部9を有している。
【0057】
なお、前記第1のスイッチング手段11と前記第2のスイッチング手段14は、トランジスタ、FET、IGBTまたはフォトカプラで構成することができる。
【0058】
また、前記平滑コンデンサ6は、電解コンデンサまたはフィルムコンデンサで構成することができる。
【0059】
第1の昇圧コンバータ回路4では、交流電源2から供給される交流電圧が整流回路3により整流され、前記整流回路3の出力が第1の昇圧コンバータ回路4に入力される。第1の昇圧コンバータ回路4では、前記整流回路3の出力を、第1のスイッチング手段11の動作周期を前記交流電源2の周期より短い周期でのオンオフにより昇圧さす。つまり、第1の昇圧コンバータ回路4では、第1のスイッチング手段11のオンにより、第1のリアクタ10の出力側の電路が短絡して第1のリアクタ10に整流回路3から直流電流が流入し、エネルギーが第1のリアクタ10に蓄えられる。その後、第1のスイッチング手段11がオフすると、第1のリアクタ10に誘起電圧が発生し、平滑コンデンサ6が前記誘起電圧と前記整流回路3の出力との和電圧により充電され、平滑コンデンサ6の端子間には、前記整流回路3の出力より高い電圧が発生する。
【0060】
第2の昇圧コンバータ回路5では、交流電源2から供給される交流電圧が整流回路3により整流され、前記整流回路3の出力が第2の昇圧コンバータ回路5に入力される。第2
の昇圧コンバータ回路5では、前記整流回路3の出力を第2のスイッチング手段14の動作周期を前記交流電源2の周期より短い周期でのオンオフにより昇圧さす。なお、第2のスイッチング手段14のオンオフは、第1の昇圧コンバータ回路の第1のスイッチング手段11のオンオフと逆位相で動作する。つまり、第2の昇圧コンバータ回路5では、第2のスイッチング手段14のオンにより、第2のリアクタ13の出力側の電路が短絡して第2のリアクタ13に整流回路3から直流電流が流入し、エネルギーが第2のリアクタ13に蓄えられる。その後、第2のスイッチング手段14がオフすると、第2のリアクタ13に誘起電圧が発生し、平滑コンデンサ6が前記誘起電圧と前記整流回路3の出力との和電圧により充電され、平滑コンデンサ6の端子間には、前記整流回路3の出力より高い電圧が発生する。
【0061】
これにより、第1の昇圧コンバータ回路と前記第2の昇圧コンバータ回路は、交互に昇圧動作を行うので、昇圧率を2倍以上に大きくでき、昇圧率を連続的に変えることができる。また、第1、第2のリアクタ10、13に流れる電流を従来回路と比較して、半減することが出来、整流回路3に流れる電流リップルも半減し、さらに、平滑コンデンサ6にかかる電気的ストレスを低減できる。
【0062】
よって、第1、第2のリアクタ10、13と平滑コンデンサ6を小型・軽量化でき、第1、第2のスイッチング手段11、14に低容量のスイッチング素子が使用でき、モータ駆動制御装置の低価格化と小型化を図ることができる。
【0063】
また、本実施の形態では、第1の昇圧コンバータ回路4に第3のダイオード31を並列に接続しているので、モータ8を低速運転する時に、第1の昇圧コンバータ回路4と第2の昇圧コンバータ回路5の昇圧動作を停止させると、第1、第2の昇圧コンバータの動作損失が発生せず、効率良くモータ8を駆動することができる。
【0064】
なお、上記第1〜3の実施の形態において、第1、第2の昇圧コンバータ回路4、5を2回路並列接続した形で説明してきたが、昇圧コンバータ回路を3回路以上並列接続した形でも本発明が適用できることは言うまでもあるまい。
【0065】
又、特に図示しないが、モータで駆動される圧縮機や、その圧縮機を備えた冷蔵庫や空気調和機などの各種機器において、そのモータを上記第1〜3の実施の形態で述べたモータ駆動制御装置で駆動するようにすれば、インバータ回路の動作電圧を昇圧することができ、モータの最高回転数を上げることが可能となる。また、あらかじめモータの最高回転数が決まっている場合には、使用するモータより効率の高いモータを使用することが可能となり、機器の省エネを図ることができる。さらに、第1、第2のリアクタを小型・軽量化でき、機器の低価格化と小型化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上のように、本発明にかかるモータ駆動制御装置は大容量のコンデンサや大容量のリアクタを用いることなく、入力電圧の昇圧率を2倍以上に連続的に変えることができ、リアクタを小型・軽量化でき、コンデンサの電気的ストレスを低減でき、モータ駆動制御装置の低価格化と小型化を図ることができる。さらに、インバータ回路の動作電圧を昇圧することができるので、モータの最高回転数を上げることが可能となり、モータトルクアップが出来る。また、あらかじめモータの最高回転数が決まっている場合には、モータ巻線を細く、巻数を増やした高効率モータを使用することが可能となり、モータ駆動制御装置の省エネを図ることができるもので、圧縮機、冷蔵庫、空気調和機などに限らずモータを使用する各種機器に広く適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施の形態1におけるモータ駆動制御装置の回路図
【図2】同モータ駆動制御装置の各部の信号、電流を示す図
【図3】本発明の実施の形態2におけるモータ駆動制御装置の回路図
【図4】本発明の実施の形態3におけるモータ駆動制御装置の回路図
【図5】従来のモータ駆動制御装置の全波倍電圧回路の回路図
【図6】従来の他のモータ駆動制御装置の電圧変換回路の回路図
【符号の説明】
【0068】
1、20、30 モータ駆動制御装置
2 交流電源
3 整流回路
4 第1の昇圧コンバータ回路
5 第2の昇圧コンバータ回路
6 平滑コンデンサ
7 インバータ回路
8 モータ
9 制御部
10 第1のリアクタ
11 第1のスイッチング手段
12 第1のダイオード
13 第2のリアクタ
14 第2のスイッチング手段
15 第2のダイオード
21 スイッチ回路
31 第3のダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源を入力とする整流回路と、前記整流回路の出力に接続され少なくとも第1のリアクタと第1のスイッチング手段と第1のダイオードとを有する第1の昇圧コンバータ回路と、前記第1の昇圧コンバータ回路と並列に接続され、少なくとも第2のリアクタと第2のスイッチング手段と第2のダイオードとを有する第2の昇圧コンバータ回路と、前記第1の昇圧コンバータ回路と前記第2の昇圧コンバータ回路の出力に接続された平滑コンデンサと、前記平滑コンデンサに接続されモータを駆動するインバータ回路とを備え、前記第1の昇圧コンバータ回路と前記第2の昇圧コンバータ回路の動作周期を前記交流電源の周期より短くしたことを特徴とするモータ駆動制御装置。
【請求項2】
第1のスイッチング手段と第2のスイッチング手段のそれぞれを、トランジスタ、FET、IGBTまたはフォトカプラで構成することを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項3】
平滑コンデンサを、電解コンデンサまたはフィルムコンデンサで構成することを特徴とする請求項1又は2に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項4】
第1の昇圧コンバータ回路と第2の昇圧コンバータ回路は、互いに逆位相で動作することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項5】
第1の昇圧コンバータ回路にスイッチ回路を並列に接続した請求項1〜4のいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項6】
スイッチ回路を、リレー、トランジスタ、FET、IGBT、双方向スイッチまたはフォトカプラで構成することを特徴とする請求項5に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項7】
第1の昇圧コンバータ回路に第3のダイオードを並列に接続した請求項1〜4のいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項8】
交流電源を入力とすると共に、請求項1〜7のいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置によって駆動されるモータを備えた圧縮機。
【請求項9】
モータで駆動される圧縮機と、請求項1〜7のいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置とを備え、前記モータを前記モータ駆動制御装置で駆動する冷蔵庫。
【請求項10】
モータで駆動される圧縮機と、請求項1〜7のいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置とを備え、前記モータを前記モータ駆動制御装置で駆動する空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−86107(P2008−86107A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−262159(P2006−262159)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】