説明

ライト検出装置、ライト検出プログラム、およびライト制御装置

【課題】撮像画像中から他車両のライトを検出するライト検出装置において、車両のライトに類似する特徴を有する光源を識別し、車両のライトを良好に検出する。
【解決手段】ライト制御システム1においては、自車両の周囲を撮像した撮像画像を取得し(S110)、撮像画像中の光源を抽出する(S120)。そして撮像画像中を複数に区分した領域毎に他車両が存在する確度が設定された領域確度マップに基づいて、該光源毎に光源が他車両のライトである確度を表す領域確度を演算する(S150)。また各光源における形状を含む特徴量が車両のライトが有する特徴量と一致する確度に応じて、各光源が他車両のライトである確度を表す特徴確度を演算し(S150)、各光源に対して領域確度および特徴確度に基づく最終確度を演算し、予め設定された閾値以上となる最終確度を有する光源が他車両のライトである旨を出力する(S150,S190)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像画像中から他車両のライトを検出するライト検出装置、ライト検出プログラム、およびライト制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記ライト検出装置として、撮像画像中に存在する光源の特徴(例えば2つの光源間の距離)と車両のライトが有する特徴とが一致する確度に応じて撮像画像中のライト検出する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3503230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記ライト検出装置では、車両のライトではないが車両のライトに類似する特徴を有する光源を車両のライトと誤検出してしまうという問題点があった。
そこで、このような問題点を鑑み、撮像画像中から他車両のライトを検出するライト検出装置、ライト検出プログラム、およびライト制御装置において、車両のライトではないが車両のライトに類似する特徴を有する光源を識別し、車両のライトを良好に検出できるようにすることを本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために成された第1の構成のライト検出装置において、撮像画像取得手段は自車両の周囲を撮像した撮像画像を取得し、光源抽出手段は撮像画像中の光源を抽出する。そして、領域確度設定手段は撮像画像中を複数に区分した領域毎に他車両が存在する確度が設定された領域確度マップに基づいて、該光源毎に光源が他車両のライトである確度を表す領域確度を演算する。また、特徴確度演算手段は各光源における形状を含む特徴量が車両のライトが有する特徴量と一致する確度に応じて、各光源が他車両のライトである確度を表す特徴確度を演算し、ライト出力手段は各光源に対して領域確度および特徴確度に基づく最終確度を演算し、予め設定された閾値以上となる最終確度を有する光源が他車両のライトである旨を出力する。
【0006】
このようなライト検出装置によれば、光源が有する特徴量によって車両のライトである確度(特徴確度)を求めるとともに、光源の位置によって車両のライトである確度(領域確度)を求め、これらの両方の確度を考慮して光源が車両のライトである確度(最終確度)を演算して車両のライトを検出するので、特徴確度のみを利用する従来の構成と比較して検出精度を向上させることができる。よって、車両のライトではないが車両のライトに類似する特徴を有する光源を排除し、車両のライトを良好に検出することができる。
【0007】
ところで、上記ライト検出装置においては、第2の構成のように、自車両の走行状態または走行環境を表す走行情報を取得する走行情報取得手段と、走行情報に基づいて領域確度マップを生成する領域確度マップ生成手段と、を備えていてもよい。
【0008】
このようなライト検出装置によれば、走行情報に基づいて領域確度マップを生成することができるので、より適切な領域確度を演算することができる。よって、より精度よく車両のライトを検出することができる。
【0009】
さらに、上記ライト検出装置においては、第3の構成のように、走行情報取得手段は、自車両の進行方向を含む走行情報を取得し、領域確度マップ生成手段は、自車両の進行方向に基づいて、撮像画像中の対向車両が走行する領域を推定し、対向車両が走行する領域に対して他車両が存在する確度を高く設定するようにしてもよい。
【0010】
このようなライト検出装置によれば、対応車両が存在する可能性が高い領域に存在する光源がより車両のライトとして検出されやすくすることができる。
また、上記ライト検出装置においては、第4の構成のように、走行情報取得手段は、車両のライトでない光源を表す外乱物の位置を示す情報を含む走行情報を取得し、領域確度マップ生成手段は、外乱物の位置が属する領域において設定される、他車両が存在する確度を他の領域の確度よりも低く設定するようにしてもよい。
【0011】
このようなライト検出装置によれば、外乱物の位置が分かっている場合に、外乱物の位置の情報を利用し、この位置に対する確度を低く設定するので、この外乱物が車両のライトとして検出されにくくすることができる。なお、外乱物の位置を示す情報とは、外乱物の緯度・経度、高さ等の厳密な位置であってもよいし、地域に応じた概ねの配置高さの傾向等、概略的なものであってもよい。
【0012】
さらに、上記ライト検出装置においては、第5の構成のように、特徴確度演算手段は、各光源における色が車両のライトが有する色と一致する確度に応じて、各特徴確度を演算するようにしてもよい。
【0013】
このようなライト検出装置によれば、光源の色に応じて車両のライトを検出することができる。
また、上記ライト検出装置においては、第6の構成のように、特徴確度演算手段は各光源における形状を含む特徴量が車両のライトでない光源を表す外乱物が有する特徴量と一致する確度が高くなるに従って、特徴確度が低くなるように演算するようにしてもよい。
【0014】
このようなライト検出装置によれば、外乱物としての特徴を有する光源を積極的に車両のライトでないものとすることができる。
さらに、上記ライト検出装置においては、第7の構成のように、特徴確度演算手段は、撮像画像中において各光源の挙動を追跡し、この挙動が車両のライト特有の挙動と一致する確度に応じて特徴確度を演算するようにしてもよい。
【0015】
このようなライト検出装置によれば、光源の挙動も考慮して車両のライトを検出することができる。
なお、上記第5の構成から第7の構成として示す特徴確度演算手段の構成は、任意に組み合わせて適用することができる。このように複数の特徴確度演算手段を組み合わせる場合には、それぞれ特徴確度を演算し、領域確度および各特徴確度に基づいて最終確度を演算するようにすればよい。
【0016】
また、上記ライト検出装置においては、第8の構成のように、特徴確度演算手段は、各光源における複数の特徴量に対してそれぞれ特徴確度を演算し、ライト出力手段は、特徴確度毎にライトである確度が基準となる確度よりも低い光源を除外し、除外後の各光源における特徴確度および領域確度に基づいて最終確度を演算するようにしてもよい。
【0017】
このようなライト検出装置によれば、最終確度を演算する前に特徴確度を利用して車両のライトである確度が低い光源をある程度除外するので、最終確度に基づいて車両のライトを検出する際の処理負荷を軽減することができる。
【0018】
次に、上記目的を達成するために成された第9の構成としてのライト検出プログラムは、コンピュータを、上記何れか1項に記載のライト検出装置を構成する各手段として機能させるためのプログラムであることを特徴としている。
【0019】
このようなライト検出プログラムによれば、上記ライト検出装置と同様の効果を享受することができる。
また、上記目的を達成するために成された第10の構成としてのライト制御装置は、自車両の周囲に存在する他車両を検出する他車両検出手段と、自車両の周囲の他車両が検出されるとヘッドライトの光軸の向きを下向きに変更する光軸方向変更手段と、を備え、他車両検出手段は、上記ライト検出装置として構成されていることを特徴としている。
【0020】
このようなライト制御装置によれば、他車両検出手段が上記ライト検出装置として構成されていることで車両のライトを良好に検出することができるので、他車両を眩惑することがないように正確にヘッドライトの光軸の向きを制御することができる。
【0021】
なお、上記各発明において、車両のライトが有する特徴量、車両のライトが有する色、車両のライトでない光源を表す外乱物が有する特徴量、車両のライト特有の挙動等については、予めデータベースとしてライト検出装置の内部または外部におけるメモリ等の記録部に保持されていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ライト制御システム1の概略構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態のライト制御処理を示すフローチャートである。
【図3】ライト候補特徴量算出処理の概要を示す流れ図である。
【図4】ライト候補絞込処理を示すフローチャートである。
【図5】領域確度マップを示す説明図である。
【図6】車両ライト決定処理を示すフローチャートである。
【図7】変形例のライト制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明にかかる実施の形態を図面と共に説明する。
[本実施形態の構成]
図1は本発明が適用されたライト制御システム1の概略構成を示すブロック図である。ライト制御システム1は、例えば乗用車等の車両に搭載され、自車両の周囲に他車両が存在する場合(詳細には、自車両のヘッドライトが眩惑を発生させる可能性がある範囲内に他車両が存在する場合)に、自車両のヘッドライトの光軸の向きを下向きに変更し、眩惑を防止する機能を有する。
【0024】
詳細には、図1に示すように、ライト制御システム1は、処理部10と、カメラ20と、速度センサ21と、舵角センサ22と、ライト制御部30と、を備えている。カメラ20は、車両の進行方向(特に前方)における少なくともヘッドライトによる照射範囲内が撮像範囲に含まれるように配置されており、撮像画像を処理部10に送る。
【0025】
速度センサ21および舵角センサ22は周知の構成とされており、車両の進行方向を推定するために用いられる。速度センサ21および舵角センサ22は、自身による検出結果を処理部10に送る。
【0026】
ライト制御部30は、処理部10により車両のライトの検出結果を受けてヘッドライトの光軸の向きを制御する。具体的には、撮像画像中に車両のライトがある旨の検出結果を受けると、ヘッドライトをロービームに切り換え、撮像画像中に車両のライトがない旨の検出結果を受けると、ハイビームを切り換える。なお、ライト制御部30は、処理部10からの指令に応じて光軸の向きを他車両が存在しない方向(例えば下方向や左方向)へ移動させる構成であってもよい。
【0027】
処理部10は、CPU、ROM、RAM等を備えた周知のマイコンとして構成されており、ROMに格納されたプログラムやRAMにロードされたプログラムに基づいて、後述するライト制御処理(ライト検出プログラム)等の各種処理を実施する。また、処理部10は、車両のライトの特徴を示すパラメータ(大きさ、色、高さ等の位置、ペアとなるライト間の距離、挙動等、ライト候補特徴量算出処理で算出される各パラメータに対応する値を含む)や、車両以外の光源の特徴を示すパラメータ(ライト候補特徴量算出処理で算出される各パラメータ、配置される位置の情報等)が格納されたデータベース(DB)11を備えている。なお、このデータベース11に格納されたパラメータは、撮像画像中から車両のライトを示す光源を、車両のライト以外の光源と識別して検出する際に利用される。
【0028】
[本実施形態の処理]
次に、撮像画像中から車両のライトを示す光源を識別して検出し、ヘッドライトの光軸の向きを制御する処理について図2を用いて説明する。図2は処理部10が実行するライト制御処理を示すフローチャートである。
【0029】
ライト制御処理は、車両の電源が投入されると開始され、その後、所定の周期毎(例えば100ms毎)に実行される処理である。詳細には、図2に示すように、まず、カメラ20による撮像画像を取得する(S110)。
【0030】
そして、撮像画像中からライト候補を抽出する(S120)。この処理では、撮像画像中の光源としての領域の全てが含まれ、かつ最小となる領域を矩形(長方形)で切り出し、切り出した領域毎にラベル付け(番号付け)を行う。この処理では、撮像画像中の光源が大きいものほど大きな領域が切り出されることになる。
【0031】
続いて、走行情報を取得する(S130)。ここで、走行情報とは、自車両の走行状態または走行環境を表すパラメータを示し、例えば、自車両の進行方向(自車両の速度と舵角等によって推定可能)、自車両が走行する道路における外乱光が存在する位置の情報(データベース11から取得可能)、対向車両が走行する位置の情報(国等の地域の情報)等が挙げられる。
【0032】
そして、ライト候補特徴量算出処理を実施する(S140)。ライト候補特徴量算出処理は、各光源が有する特徴量を抽出する処理である。詳細には、図3を用いて説明する。図3はライト候補特徴量算出処理の概要を示す流れ図である。
【0033】
ライト候補特徴量算出処理では、各光源が有する、静止画レベル特徴量、ペア特徴量、および時系列特徴量のそれぞれの特徴量を求める演算を行う。静止画レベル特徴量としては、以下に述べる種々の情報を求める。
【0034】
まず、矩形で切り出した各光源の情報を利用して、それぞれ中心の位置を算出する(S205)。これらの各光源の中心位置は、位置情報としてRAM等のメモリに記録される。
【0035】
また、各光源における中心位置を利用して、各光源における中心位置同士をそれぞれ結ぶ直線を算出し(S210)、この直線の傾きによる光源の並び方の規則性を算出する(S215)。直線の傾きが一致するものが多ければ、例えば車両のライトでないリフレクタが直線的に並んでいる場合等が考えられ、直線の傾きが水平であるものが多ければ、自車両が走行する道路と交差する道路に配置された街灯が直線的に並んでいる場合等が考えられる。このような直線の傾きの規則性は、RAM等のメモリに記録される。
【0036】
さらに、矩形で切り出した各光源の情報を利用して、この矩形の面積を光源毎に算出する(S220)。そして、光源が車両のライトであるとした場合における自車両との距離を推定する(S225)。
【0037】
この処理では、撮像画像中の光源の面積と距離とが対応付けられたマップや、光源の面積を入力すると自車両との距離が出力される所定の関数等を利用して距離を推定する。このようにして得られた光源の大きさや自車両と光源との距離については、RAM等のメモリに記録される。
【0038】
また、矩形で切り出した各光源の情報を利用して、全体の面積(画素数)に対する、この中の光源の領域(所定以上の輝度を有する領域)の面積の比を算出する(S240)。算出された面積比については、RAM等のメモリに記録される。
【0039】
さらに、矩形で切り出した各光源の情報を利用して、矩形内の各画素におけるRGB情報を取得する(S245)。そして、矩形内の各画素におけるRGB情報を利用して、RGBの比率を算出する(S250)。この算出結果はRAM等のメモリに記録される。
【0040】
また、矩形内の各画素におけるRGB情報を利用して、RGB−HSVを算出する(S255)。この算出結果はRAM等のメモリに記録される。
さらに、矩形内の各画素におけるRGB情報を利用して、RGB−輝度を算出する(S255)。この算出結果はRAM等のメモリに記録される。
【0041】
また、RGB情報、RGB−HSV、およびRGB−輝度の情報を利用して、ライト候補内の明暗の繰り返し数に応じた値を模様度として算出する(S270)。この処理は、文字や記号が記載された看板や標識に明暗の繰り返す領域が存在するため、これらを検出するために実施される。この算出結果はRAM等のメモリに記録される。
【0042】
次に、ペア特徴量については、静止画レベル特徴量を利用して、複数の光源の類似度が一致するもの同士をペアリングし(S305)、ペアとした光源の間隔によって自車両と光源との距離を推定する(S310)。この処理では、実際のライトの間隔を固定値として撮像画像中の光源の間隔に基づいて距離を推定する、周知の処理を採用することができる。
【0043】
これらの処理によって算出された、ペア度(特徴量の一致度)、自車両から光源までの距離については、RAM等のメモリに記録される。
次に、時系列特徴量については、静止画レベル特徴量と、ペア特徴量を利用して、各光源を追跡し、今回の処理で得られた各光源の特徴量と前回の処理で得られた特徴量とを比較し、その類似度によって同一の光源をマッチングする(関連付ける)トラッキング処理を行う(S320)。そして、この処理により同一の光源と関連付けられたものの移動量を算出する(S325)。
【0044】
このような処理を行うことで、追跡する各光源の類似度、マッチングの連続回数、光源が最初に検出された位置を示す初期出現位置、移動量(移動ベクトル、移動軌跡)が求められる。これらの算出結果はRAM等のメモリに記録される。
【0045】
このようなライト候補特徴量算出処理が終了すると、各光源から車両のライトを絞り込んで抽出するライト候補絞込処理を実施する(S150)。ここで、図4は、ライト候補絞込処理を示すフローチャートである。なお、ライト候補絞込処理には、光源として切り出した領域毎に、光源の特徴量が車両のライトの特徴量(データベース11に格納された特徴量)と一致する確度を演算する処理を含む。
【0046】
ライト候補絞込処理では、まず、ライト候補特徴量算出処理で算出した各種特徴量毎に、車両確率/外乱確率(特徴確度)を算出する(S410)。ここで、データベース11には、各特徴量について、車両のライトとしての値と外乱物としての値とがそれぞれ格納されており、各特徴量が車両のライトとしての値に近くなるに連れて光源が車両のライトである確度が高くなり、各特徴量が外乱物としての値に近くなるに連れて光源が車両のライトである確度が低くなる。
【0047】
続いて、道路形状に応じて、車両確率/外乱確率(領域確度)を算出する(S420)。このように道路形状に応じて確率を算出する際には、まず、図5に示すような領域確度マップを生成する。
【0048】
図5に示す領域確度マップでは、撮像画像中(特に、車両のライトの検出を行う検出対象領域)を複数に区分した領域毎に他車両が存在する確度を設定する。この際、自車両の速度や舵角等に基づいて道路形状を検出し、他車両が走行する(他車両のライトが通過する)と予想される経路上の領域(図5では太線内の領域)については、より高い確度を設定しておく。そして、各光源の位置に対応する確度(領域確度)を領域確度マップに基づく確度に基づいて設定する。
【0049】
続いて、走行状態に応じて、車両確率/外乱確率(特徴確度)を算出する(S430)。この処理では、例えば、カーブの途中で遠方の光源を検出した場合等、現在の走行状態から鑑みて車両のライトとして検出されるはずがない種別・距離の光源か否かをデータベース11に記録された比較用のデータ(カーブや勾配途中で検出される車両のライトとしての特徴量)に基づいて判定する。
【0050】
続いて、自車両が走行する地域に応じて光源が車両である確度を算出する(S440)。この処理では、対向車両が自車両の右側を通過する地域か左側を通過する地域かといった情報や、地域によって異なるリフレクタの配置位置(設置高さ)の情報等を利用して、光源が車両である確度を判定する。
【0051】
例えば、左側通行の地域において自車両の正面よりも左側に存在する光源が左側に移動する場合には、対向車両のライトでない可能性が高いと判断し、右側通行の地域において自車両の正面よりも右側に存在する光源が右側に移動する場合には、対向車両のライトでない可能性が高いと判断する。また、無限遠点近傍の領域にて連続して検出される光源は車両のライトである可能性が高いと判断する。
【0052】
続いて、車両統合確率/外乱統合確率を算出する(S450)。この処理では、S410〜S440の処理において算出された各確度を考慮して最終的な確度(最終確度)を算出する。最終的な確度を算出する際には、例えば、各確度に対して所定の加重(係数)を乗じた上で加算し平均値をとることで求めるようにすればよい。
【0053】
続いて、予め設定された閾値と最終的な確度とを比較し、閾値未満の確度を有する光源を外乱として除去し、ライト候補絞込処理を終了する。
このようなライト候補絞込処理が終了すると、光源が車両のライトであると決定する車両ライト決定処理を実行する。ここで、図6は、車両ライト決定処理を示すフローチャートである。
【0054】
この車両ライト決定処理では、まず、ライト候補絞込処理において除去されなかった光源について、距離と位置とに基づいて光源が車両であると確定するまでの時間である車両確定時間を決定する(S510)。この処理では、光源までの距離が遠くなるに従って、また、光源の位置が車両の進行方向から離れるに従って、車両確定時間をより小さな値に設定し、確定するまでの時間を長くする。
【0055】
そして、光源(候補)の特徴量の時間変化量を算出し(S520)、特徴量が時間とともに増加し、かつ車両確定時間内に特徴量が一定以上(例えば20%以上)増加した光源を車両のライトとして確定し(S530)、車両ライト決定処理を終了する。
【0056】
このようなライト決定処理が終了すると、図2戻り、車両のライトの検出結果をライト制御部30に送り(S190)、ライト制御処理を終了する。
[本実施形態による効果]
以上のように詳述したライト制御システム1において処理部10は、自車両の周囲に存在する他車両を検出し、自車両の周囲の他車両が検出されるとヘッドライトの光軸の向きを下向きに変更する。特に、処理部10は、自車両の周囲を撮像した撮像画像を取得し、撮像画像中の光源を抽出する。そして、撮像画像中を複数に区分した領域毎に他車両が存在する確度が設定された領域確度マップに基づいて、該光源毎に光源が他車両のライトである確度を表す領域確度を演算する。また、各光源における形状を含む特徴量が車両のライトが有する特徴量と一致する確度に応じて、各光源が他車両のライトである確度を表す特徴確度を演算し、各光源に対して領域確度および特徴確度に基づく最終確度を演算し、予め設定された閾値以上となる最終確度を有する光源が他車両のライトである旨を出力する。
【0057】
このようなライト制御システム1によれば、光源が有する特徴量によって車両のライトである確度(特徴確度)を求めるとともに、光源の位置によって車両のライトである確度(領域確度)を求め、これらの両方の確度を考慮して光源が車両のライトである確度(最終確度)を演算して車両のライトを検出するので、特徴確度のみを利用する従来の構成と比較して検出精度を向上させることができる。よって、車両のライトではないが車両のライトに類似する特徴を有する光源を排除し、車両のライトを良好に検出することができる。
【0058】
また、このようなライト制御システム1によれば、車両のライトを良好に検出することができるので、他車両を眩惑することがないように正確にヘッドライトの光軸の向きを制御することができる。
【0059】
また、ライト制御システム1において処理部10は、自車両の走行状態または走行環境を表す走行情報を取得し、走行情報に基づいて領域確度マップを生成する。
このようなライト制御システム1によれば、走行情報に基づいて領域確度マップを生成することができるので、より適切な領域確度を演算することができる。よって、より精度よく車両のライトを検出することができる。
【0060】
さらに、ライト制御システム1において処理部10は、自車両の進行方向を含む走行情報を取得し、自車両の進行方向に基づいて、撮像画像中の対向車両が走行する領域を推定し、対向車両が走行する領域に対して他車両が存在する確度を高く設定する。
【0061】
このようなライト制御システム1によれば、対応車両が存在する可能性が高い領域に存在する光源がより車両のライトとして検出されやすくすることができる。
また、ライト制御システム1において処理部10は、車両のライトでない光源を表す外乱物の位置を示す情報を含む走行情報を取得し、外乱物の位置が属する領域において設定される、他車両が存在する確度を他の領域の確度よりも低く設定する。
【0062】
このようなライト制御システム1によれば、外乱物の位置が分かっている場合に、外乱物の位置の情報を利用し、この位置に対する確度を低く設定するので、この外乱物が車両のライトとして検出されにくくすることができる。
【0063】
さらに、ライト制御システム1において処理部10は、各光源における色が車両のライトが有する色と一致する確度に応じて、各特徴確度を演算する。
このようなライト制御システム1によれば、光源の色に応じて車両のライトを検出することができる。
【0064】
また、ライト制御システム1において処理部10は各光源における形状を含む特徴量が車両のライトでない光源を表す外乱物が有する特徴量と一致する確度が高くなるに従って、特徴確度が低くなるように演算する。
【0065】
このようなライト制御システム1によれば、外乱物としての特徴を有する光源を積極的に車両のライトでないものとすることができる。
さらに、ライト制御システム1において処理部10は、撮像画像中において各光源の挙動を追跡し、この挙動が車両のライト特有の挙動と一致する確度に応じて特徴確度を演算する。
【0066】
このようなライト制御システム1によれば、光源の挙動も考慮して車両のライトを検出することができる。
[その他の実施形態]
本発明の実施の形態は、上記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0067】
例えば、上記実施形態では、多数の特徴量を算出し、これらの特徴量を考慮して撮像画像中の光源が車両であるか否かを判断したが、一部の特徴量を算出し、この特徴量に基づいて明確に車両のライトでないと判断可能な外乱物を除外した上で、他の特徴量を算出するようにしてもよい。このような処理の具体例を図7に示す。
【0068】
図7は、変形例のライト制御処理を示すフローチャートである。変形例のライト制御処理では、S140の処理にて、多数のライト候補特徴量のうちの一部を算出するライト候補特徴量算出処理Aを実施し、S150の処理にて、この一部のライト候補特徴量を利用して算出可能な確度を演算し、この確度を利用してライトである可能性が高い光源を絞り込むライト候補絞込処理Aを実施する。
【0069】
また、S160の処理では、多数のライト候補特徴量を求める処理のうちのライト候補特徴量算出処理Aを実施しなかった処理を実施するライト候補特徴量算出処理Bを実施し、S170の処理では、ライト候補特徴量算出処理Bにて算出されたライト候補特徴量を利用して算出可能な確度を演算し、この確度を利用してライトである可能性が高い光源を絞り込むライト候補絞込処理Bを実施する。
【0070】
例えば、ライト候補特徴量算出処理A、ライト候補絞込処理Aでは、各特徴量を算出する処理のうちの静止画レベル特徴量を算出する処理を実施し、ライト候補特徴量算出処理B、ライト候補絞込処理Bでは、各特徴量を算出する処理のうちのペア特徴量、時系列特徴量を算出する処理を実施することが考えられる。また、ライト候補特徴量算出処理A、ライト候補絞込処理Aでは、RGB、RGB−HSV、および明るさを求める処理のうちの、比較的処理負荷が小さなRBGを求める処理を含む処理を実施し、ライト候補特徴量算出処理B、ライト候補絞込処理Bでは、処理負荷が大きなRGB−HSV、および明るさを求める処理を含む処理を行うようにしてもよい。
【0071】
このようなライト制御システム1によれば、最終確度を演算する前に一部の特徴量に基づいて車両のライトである確度が低い光源をある程度除外した上で、他の特徴量を利用して最終的な確度を演算するので、最終的な確度を演算する光源の数を事前に絞り込むことができるので、車両のライトを検出する際の処理負荷を軽減することができる。
【0072】
また、上記実施形態では、処理部10が他車両のライトの有無を出力するようにしたが、他車両のライトの位置の情報を出力するようにしてもよい。そして、ライト制御部30は他車両の位置と自車両の各種ライト(ヘッドライト以外のライトを含む)の照射範囲とを比較し、ライトの照射範囲内に他車両が入らないようにライトの照射範囲を制御するようにしてもよい。
【0073】
また、上記実施形態においては、自車両の進行方向(道路形状)を自車両の車速および舵角によって検出したが、周知の白線認識処理を利用して検出するようにしてもよい。
さらに、上記実施形態で説明したライトの検出手法に加えて、例外規定を設けてもよい。例えば、カーブ走行直後に検出される赤色の光源はテールライトであるものとして検出したり、距離が近いにも拘わらず輝度が低い光源は何らかの反射物であると検出したりすればよい。
【0074】
また、上記実施形態において、S420の処理で領域確度マップを生成する際には、外乱光の位置(高さ)に対応する位置に対して、車両のライトである確度を低く設定するようにしてもよい。
【0075】
上記のようにしても、上記実施形態と概ね同様の効果を享受することができる。
[実施形態の構成と本発明との関係]
上記実施形態での処理部10は、本発明でいうライト検出装置に相当し、上記実施形態でのS110の処理は、本発明でいう撮像画像取得手段に相当する。また、上記実施形態でのS120の処理は、本発明でいう光源抽出手段に相当し、上記実施形態でのS420の処理は、本発明でいう領域確度設定手段に相当する。
【0076】
さらに、上記実施形態でのS410の処理は、本発明でいう特徴確度演算手段に相当し、上記実施形態でのS450,S460,S190の処理は、本発明でいうライト出力手段に相当する。また、上記実施形態でのS130の処理は、本発明でいう走行情報取得手段に相当し、上記実施形態でのS420の処理は、本発明でいう領域確度マップ生成手段に相当する。
【0077】
さらに、上記実施形態でのS110〜S190の処理は、本発明でいう他車両検出手段に相当し、上記実施形態でのS190の処理は、本発明でいう光軸方向変更手段に相当する。
【符号の説明】
【0078】
1…ライト制御システム、10…処理部、11…データベース、20…カメラ、21…速度センサ、22…舵角センサ、30…ライト制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、撮像画像中から他車両のライトを検出するライト検出装置であって、
自車両の周囲を撮像した撮像画像を取得する撮像画像取得手段と、
撮像画像中の光源を抽出する光源抽出手段と、
撮像画像中を複数に区分した領域毎に他車両が存在する確度が設定された領域確度マップに基づいて、該光源毎に光源が他車両のライトである確度を表す領域確度を演算する領域確度設定手段と、
各光源における形状を含む特徴量が車両のライトが有する特徴量と一致する確度に応じて、前記各光源が他車両のライトである確度を表す特徴確度を演算する特徴確度演算手段と、
前記各光源に対して前記領域確度および前記特徴確度に基づく最終確度を演算し、予め設定された閾値以上となる最終確度を有する光源が他車両のライトである旨を出力するライト出力手段と、
を備えたことを特徴とするライト検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のライト検出装置において、
自車両の走行状態または走行環境を表す走行情報を取得する走行情報取得手段と、
前記走行情報に基づいて前記領域確度マップを生成する領域確度マップ生成手段と、
を備えたことを特徴とするライト検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載のライト検出装置において、
前記走行情報取得手段は、自車両の進行方向を含む走行情報を取得し、
前記領域確度マップ生成手段は、自車両の進行方向に基づいて、対向車両が走行する領域を推定し、該対向車両が走行する領域に対して他車両が存在する確度を高く設定すること
を特徴とするライト検出装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のライト検出装置において、
前記走行情報取得手段は、車両のライトでない光源を表す外乱物の位置を示す情報を含む走行情報を取得し、
前記領域確度マップ生成手段は、前記外乱物の位置が属する領域において設定される、他車両が存在する確度を他の領域の確度よりも低く設定すること
を特徴とするライト検出装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のライト検出装置において、
前記特徴確度演算手段は、各光源における色が車両のライトが有する色と一致する確度に応じて、前記各特徴確度を演算すること
を特徴とするライト検出装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のライト検出装置において、
前記特徴確度演算手段は各光源における形状を含む特徴量が車両のライトでない光源を表す外乱物が有する特徴量と一致する確度が高くなるに従って、前記特徴確度が低くなるように演算すること
を特徴とするライト検出装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れか1項に記載のライト検出装置において、
前記特徴確度演算手段は、前記撮像画像中において各光源の挙動を追跡し、該挙動が車両のライト特有の挙動と一致する確度に応じて前記特徴確度を演算すること
を特徴とするライト検出装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れか1項に記載のライト検出装置において、
前記特徴確度演算手段は、前記各光源における複数の特徴量に対してそれぞれ前記特徴確度を演算し、
前記ライト出力手段は、前記特徴確度毎にライトである確度が基準となる確度よりも低い光源を除外し、該除外後の各光源における特徴確度および領域確度に基づいて最終確度を演算すること、
を特徴とするライト検出装置。
【請求項9】
コンピュータを、請求項1〜請求項8の何れか1項に記載のライト検出装置を構成する各手段として機能させるためのライト検出プログラム。
【請求項10】
車両に搭載され、自車両のヘッドライトにおける光軸の向きを制御するライト制御装置であって、
自車両の周囲に存在する他車両を検出する他車両検出手段と、
自車両の周囲の他車両が検出されるとヘッドライトの光軸の向きを下向きに変更する光軸方向変更手段と、を備え、
前記他車両検出手段は、請求項1〜請求項8の何れか1項に記載のライト検出装置として構成されていること
を特徴とするライト制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−28239(P2013−28239A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164704(P2011−164704)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】