説明

リニアガイド装置

【課題】リニアガイド装置の潤滑剤含有部材やサイドシールの交換作業における作業性を向上させると共に、サイドシールのリップ部の損傷を防止する手段を提供する。
【解決手段】リニアガイド装置1の潤滑剤含有部材14を、レール2の幅方向に分割した2つの潤滑剤含有部材分割片を組合せて形成し、この潤滑剤含有部材分割を、給油突起部をレール軌道溝5に押圧する方向に付勢するコの字状の弾性材からなる第1の固定具17で組立てると共に、サイドシール21を、レール2の幅方向に分割した2つのサイドシール分割片を組合せて形成し、このサイドシール分割片を、リップ部をレール2の外周面に押圧する方向に付勢するコの字状の弾性材からなる第2の固定具24で組立て、これらの潤滑剤含有部材14の組立体とサイドシール21の組立体とをエンドキャップ11の端面に取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械や産業機械等の機械装置の案内部に設けられ、テーブル等の移動台の直線的な移動を案内するリニアガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のリニアガイド装置は、スライダに設けた戻り路と、エンドキャップに設けた方向転換路と、レールに設けたレール軌道溝とスライダに設けたスライダ軌道溝とを対向させて形成した負荷路とで形成した循環路に複数のボールを装填し、負荷路を転動するボールによりレールを直線的に往復移動するスライダを支持して構成し、レール軌道溝に摺接する給油突起部を有する一体に形成した潤滑剤含有部材と、その外周形状に合せたコの字状の開口側が狭くなった弾性材からなる押付け部材と、レールに摺接するリップ部を有するサイドシールとを設け、エンドキャップのスライダと反対側の端面側に、押付け部材を装着した潤滑剤含有部材を挟んでサイドシールを取付ボルトでスライダに取付け、押付け部材により潤滑剤含有部材の給油突起部をレール軌道溝に押圧して、負荷路を転動するボールに潤滑剤を供給している(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような一体化された潤滑剤含有部材は、潤滑剤含有部材とサイドシールとをレール端から挿入して取付けることが必要であり、特に複数のスライダを1つのレールに装着している場合に、スライダ間に配置された潤滑剤含有部材やサイドシールの交換を行うことが容易ではなく、潤滑剤含有部材やサイドシールの交換に多くの時間を要するという問題が生ずる。
【0004】
上記の潤滑剤含有部材の交換を容易にするために、同様の構成のリニアガイド装置において、レール軌道溝に摺接する給油突起部を有する潤滑剤含有部材を2分割にした一対の潤滑剤含有部材分割片を、レールに遊嵌するホルダのフランジ部の両側で挟持した潤滑油供給部材を設け、エンドキャップのスライダと反対側の端面側に、レールに遊嵌させてホルダを挿入し、その両側から潤滑剤含有部材分割片を差込んでホルダに位置決めして挟持し、潤滑油供給部材のスライダと反対側の端面にサイドシールを配置して取付ボルトでスライダに取付け、サイドシールをレールに装着したままで潤滑剤含有部材の交換を可能にしているものがある(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2000−161136号公報(主に第3頁段落0017−第4頁段落0028、第2図)
【特許文献2】特開2004−003544号公報(主に第4頁段落0010−第5頁段落0014、第6頁段落0022−0025、第1図、第7図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献2の技術においては、レールに遊嵌させて挿入したホルダに、両側から潤滑剤含有部材分割片を差込んでこれらを挟持しているため、潤滑剤含有部材分割片の差込み時にホルダを片手で支えながら作業する必要があり、給油突起部をレール軌道溝に嵌合させて密接させるためには、2人作業で潤滑剤含有部材分割片の位置を調整しながら作業するか、1人作業で潤滑剤含有部材分割片を差込んだ後にその位置を調整する必要があり、潤滑剤含有部材の交換作業における作業性が低下するという問題がある。
【0006】
また、サイドシールをレールに装着したままで潤滑剤含有部材の交換を行っているため、複数のスライダのスライダ間に配置された潤滑剤含有部材の交換作業においては、作業空間が狭く、サイドシールに予期せぬ力が加わって、リップ部を損傷してしまう虞があるという問題がある。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、潤滑剤含有部材やサイドシールの交換作業における作業性を向上させると共に、サイドシールのリップ部の損傷を防止する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、レール転動体ガイド面を有するレールと、前記レール転動体ガイド面と対向するスライダ転動体ガイド面と戻り路とを有し、前記レールを直線的に往復移動するスライダと、該スライダの移動方向の前後端部に配置され、方向転換路を有するエンドキャップと、前記レール転動体ガイド面とスライダ転動体ガイド面とにより形成される負荷路と、該負荷路を前記方向転換路と戻り路とにより連通した循環路を循環する転動体と、前記エンドキャップの前記スライダと反対側の端面に取付けられ、前記レール転動体ガイド面に摺接する給油突起部を有する潤滑剤含有部材と、該潤滑剤含有部材の前記スライダと反対側の端面に取付けられ、前記レールに摺接するリップ部を有するサイドシールとを備えたリニアガイド装置において、前記潤滑剤含有部材を、前記レールの幅方向に分割して2つの潤滑剤含有部材分割片とし、該潤滑剤含有部材分割片を組合せた潤滑剤含有部材の両側の側面および上面に当接し、前記給油突起部を前記レール転動体ガイド面に押圧する方向に付勢するコの字状の弾性材からなる第1の固定具を設けると共に、前記サイドシールを、前記レールの幅方向に分割して2つのサイドシール分割片とし、該サイドシール分割片を組合せたサイドシールの両側の側面および上面に当接し、前記リップ部を前記レールの外周面に押圧する方向に付勢するコの字状の弾性材からなる第2の固定具を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
これにより、本発明は、潤滑剤含有部材やサイドシールの取外や装着を、それぞれ第1および第2の固定具の弾性を利用して1人作業で容易に行うことができ、潤滑剤含有部材やサイドシールの交換作業における作業性を向上させることができると共に、サイドシールに予期せぬ力が加わることを防止して、サイドシールのリップ部の損傷を防止することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、図面を参照して本発明によるリニアガイド装置の実施例について説明する。
【実施例】
【0010】
図1は実施例のリニアガイド装置を示す斜視図、図2は実施例の潤滑剤含有部材の正面を示す説明図、図3は実施例の第1の固定具の正面を示す説明図、図4は実施例の潤滑剤含有部材の組立体の正面を示す説明図、図5は実施例のサイドシールの正面を示す説明図、図6は実施例の第2の固定具の正面を示す説明図、図7は実施例のサイドシールの組立体の正面を示す説明図である。
【0011】
図1において、1はリニアガイド装置である。
2はリニアガイド装置1のレールであり、合金鋼等の鋼材で製作された長尺の棒状部材であって、その長手方向に沿ってレール2を高さ方向に貫通する段付ボルト穴であるレール取付穴3が所定のピッチで複数設けられており、このレール取付穴3を用いてレール2がボルト等により機械装置の基台等に締結されて設置される。
【0012】
4は埋栓であり、レール取付穴3の大径部に嵌合する樹脂製の円盤状部材であって、ボルトによりレール2を基台等に固定した後に、レール取付穴3の大径部に、レール上面2aと面一になるように圧入される。
5はレール転動体ガイド面としてのレール軌道溝であり、両側のレール2の側面(レール側面2bという。)の長手方向に沿って形成された円弧状断面の溝である。
【0013】
6はスライダであり、合金鋼等の鋼材で製作された略コの字状の断面形状を有する鞍状部材であって、その上面には取付ねじ穴7が設けられており、この取付ねじ穴7を用いて図示しない機械装置の移動台等がボルト等により取付けられる。
8はスライダ転動体ガイド面としてのスライダ軌道溝であり、スライダ6の両方の袖壁6aの内側にレール軌道溝5に対向して設けられた円弧状断面の溝である。
【0014】
9は転動体としてのボールであり、合金鋼等の鋼材で製作された球体である。
10は戻り路であり、スライダ6の袖壁6aの厚肉部に形成されたボール9を循環させるためのボール9の直径より大きい直径を有し、スライダ6の移動方向(スライダ移動方向という。)に袖壁6aを貫通する貫通穴であって、それぞれのスライダ軌道溝8に対応して設けられている。
【0015】
11はエンドキャップであり、金属材料や樹脂材料等で製作され、スライダ6のスライダ移動方向の前後端部に配置され、そのスライダ6側には、対向配置されたスライダ軌道溝8とレール軌道溝5とにより形成される負荷路とスライダ6の戻り路10とを連通するU字状に湾曲した通路である方向転換路12がそれぞれの負荷路に対応して設けられている。
【0016】
14は潤滑剤含有部材であり、図2に示すように、潤滑剤含有材を射出成形等の成形手段により成形して製作された、両側の袖部14aを接続部14bで接続したコの字状部材であって、その接続部14bをレール2の幅方向(レール2のスライダ移動方向に直交するレール上面2aに平行な方向をいう。)の中央部で分割した2つのL字状の潤滑剤含有部材分割片15a、15bを組合せて形成されており、コの字状の内側形状は、レール2の断面形状に沿って形成され(図4参照)、そのレール2側の内面にはレール軌道溝5に摺接する円弧状の給油突起部16がレール軌道溝5に対応して設けられている。
【0017】
本実施例の潤滑剤含有部材14に用いる潤滑剤含有材は、例えば潤滑剤含有ポリマであり、ポリプロピレン等のポリオレフィン系の合成樹脂に、ポリα−オレフィン油等のパラフィン系炭化水素油やエーテル油等の潤滑剤を単独または複数混合して混ぜ合わせた原料を樹脂の融点以上に加熱して溶融し成形した後に冷却して固化させたものであり、給油突起部16の内周面の摺接による摩擦熱等で潤滑油が滲み出すように形成されている。
【0018】
17は第1の固定具であり、バネ鋼等の弾性材からなる板材を、潤滑剤含有部材14の外周形状に沿って曲折させて形成された、両側の袖部17aを接続部17bで接続したコの字状部材であって、そのスライダ移動方向の長さは潤滑剤含有部材14の厚さと同等に形成され、単体では図3に示すように、コの字状の開放側は接続部17bより狭く形成されており、図4に示す組立状態では、その袖部17aの先端をレール2側に曲折させた折曲部18を、潤滑剤含有部材分割片15a、15bを組合せて形成された潤滑剤含有部材14のそれぞれの袖部14aの外側の側面に設けられた係合溝19に係合させ、潤滑剤含有部材14の袖部14aの両側の側面および接続部14b上面からなる外周面に当接させて装着したときに、給油突起部16をそれぞれのレール軌道溝5に押圧する方向に付勢する機能を有している。
【0019】
21はサイドシールであり、合金鋼等の板材で製作された芯金と、この芯金に焼付けや接着等の接合手段で接合された天然ゴムや合成ゴム等の弾性を有するゴム材料で製作されたシールゴムとを積層して形成された、両側の袖部21aを接続部21bで接続したコの字状部材であって、その接続部21bをレール2の幅方向の中央部で分割した2つのL字状のサイドシール分割片22a、22bを組合せて形成されており、コの字状の内側には、レール2の断面形状のレール上面2a、レール側面2bからなる外周面(図7参照)に所定の締め代を設けて形成された内側形状を有するリップ部23が設けられている。
【0020】
24は第2の固定具であり、第1の固定具17と同様の材料を、サイドシール21の外周形状に沿って曲折させて形成された、両側の袖部24aを接続部24bで接続したコの字状部材であって、そのスライダ移動方向の長さはサイドシール21の厚さと同等に形成され、単体では図6に示すように、コの字状の開放側は接続部24bより狭く形成されており、図7に示す組立状態では、その袖部24aの先端をレール2側に曲折させた折曲部25を、サイドシール分割片22a、22bを組合せて形成されたサイドシール21のそれぞれの袖部21aの外側の側面に設けられた係合溝26に係合させ、袖部21aの両側の側面および接続部21b上面からなる外周面に当接させて装着したときに、リップ部23をレール2の外周面に押圧する方向に付勢する機能を有している。
【0021】
これにより、リップ部23が第2の固定具24の押圧力に応じた締め代でレール2の外周面に摺接して接触式シールとして機能する。
上記の潤滑剤含有部材14は、潤滑剤含有部材分割片15a、15aを組合せ、それぞれの係合溝19に、第1の固定具17の袖部を潤滑剤含有部材14の側面に合せて押し広げながらその折曲部18を挿入して係合させ、図4に示す組立体として組立てられ、サイドシール21も、同様にしてそれぞれの係合溝26に、第2の固定具24の折曲部25を挿入して係合させ、図7に示す組立体として組立てられる。
【0022】
これらの潤滑剤含有部材14の組立体、およびサイドシール21の組立体は、潤滑剤含有部材14の両側の袖部14aに設けられた挿通穴27、サイドシール21の両側の袖部21aに設けられた段付ボルト穴28に挿通させた取付ボルト29によりスライダ6のスライダ移動方向の端面6bに設けられたねじ穴30に締結されて固定される(図1参照)。
【0023】
上記の負荷路12の両端部は、エンドキャップ11の方向転換路12とスライダ6の戻り路10とによりそれぞれ連通されて循環路が形成され、この循環路には複数のボール9が封入され、レール軌道溝5とスライダ軌道溝8とがボール9を介して嵌合し、スライダ6の移動に伴ってボール9が循環路を循環し、潤滑剤含有部材14から供給される潤滑剤により潤滑されながら負荷路を転動するボール9がスライダ6に加えられた荷重を往復動自在に支持し、スライダ6がレール2の長手方向に沿った直線往復移動可能に支持されると共に、スライダ移動方向の両側のサイドシール21のリップ部23がレール2の外周面に摺接して、スライダ6の外部からの塵埃等の異物の侵入および内部からの潤滑剤の漏洩を防止する。
【0024】
上記の構成の作用について説明する。
上記の潤滑剤含有部材14およびサイドシール21をエンドキャップ11の端面に取付けた複数のスライダ6を1つのレール2に装着している場合において、スライダ6間の比較的狭い作業空間に配置された潤滑剤含有部材14およびサイドシール21の交換作業を1人作業で行うときは、取付ボルト29を取外し、外側に配置されているサイドシール21の組立体の2つのサイドシール分割片22a、22bを、図8に示すように、第2の固定具24の接続部24bの弾性を利用して外側に押し広げてレール2から取外し、潤滑剤含有部材14の組立体の2つの潤滑剤含有部材分割片15a、15bを、図9に示すように、第1の固定具17の接続部17bの弾性を利用して外側に押し広げてレール2から取外す。
【0025】
そして、新たな潤滑剤含有部材14の組立体の潤滑剤含有部材分割片15a、15bを、第1の固定具17の接続部17bの弾性を利用して外側に押し広げながらレール2に装着し、新たなサイドシール21の組立体の2つのサイドシール分割片22a、22bを、第2の固定具24の接続部24bの弾性を利用して外側に押し広げながらレール2に装着する。
【0026】
このとき、潤滑剤含有部材14の給油突起部16が第1の固定具17の弾性によりレール軌道溝5に自動的に嵌合して密接した状態で押圧され、サイドシール21のリップ部23が第2の固定具24の弾性によりレール2の外周面に自動的に嵌合して密接された状態で押圧される。
その後に、取付ボルト29で潤滑剤含有部材14およびサイドシール21をスライダ6に締結してエンドキャップ11の端面に取付ける。
【0027】
この場合に、サイドシール21のみを交換するときは、上記の潤滑剤含有部材14の組立体をそのままにして、サードシール21の組立体のみを取外し、新たなサイドシール21の組立体を装着すればよい。
また、1つのレール2に装着された1つのスライダ6や、複数のスライダ6が装着されているときのレール2の端部側のスライダ6の外側の潤滑剤含有部材14やサイドシール21の交換作業を行う1人作業でときは、比較的広い作業空間を確保することが可能であるので、交換が必要な組立体のみを取外し、新たな組立体を装着すればよい。
【0028】
この場合に、潤滑剤含有部材14のみを交換するときは、上記のサイドシール21の組立体を作業エリアの外側に一旦押しやり、潤滑剤含有部材14の組立体を取外し、新たな潤滑剤含有部材14の組立体を装着し、その後にサイドシール21の組立体を引き戻して取付ボルト29で取付けるようにするとよい。
このように、本実施例では、潤滑剤含有部材14を、2つの潤滑剤含有部材分割片15a、15bを組合せ、第1の固定具17の折曲部18をそれぞれの係合溝19に係合させて、潤滑剤含有部材14の組立体を形成し、サイドシール21を、2つのサイドシール分割片22a、22bを組合せ、第2の固定具24の折曲部25をそれぞれの係合溝26に係合させて、サイドシール21の組立体を形成するので、潤滑剤含有部材14やサイドシール21の取外や装着を、それぞれ第1および第2の固定具17、24の弾性を利用して1人作業で容易に行うことができ、潤滑剤含有部材14やサイドシール21の交換作業における作業性を向上させることができると共に、サイドシール21の組立体を容易に取外すことができるので、サイドシールに予期せぬ力が加わることはなく、サイドシール21のリップ部23の損傷を防止することができる。
【0029】
また、潤滑剤含有部材14の給油突起部16やサイドシール21のリップ部23が、第1および第2の固定具17、24の弾性により自動的に密接した状態でレール2に装着されるので、調整作業を不要にして、潤滑剤含有部材14やサイドシール21の装着作業における作業効率を向上させることができる。
以上説明したように、本実施例では、リニアガイド装置の潤滑剤含有部材を、レールの幅方向に分割した2つの潤滑剤含有部材分割片を組合せ、この潤滑剤含有部材の両側の側面および上面に当接するコの字状の弾性材からなる第1の固定具の折曲部をそれぞれの係合溝に係合させて給油突起部をレール軌道溝に押圧する方向に付勢し、サイドシールを、レールの幅方向に分割した2つのサイドシール分割片を組合せ、このサイドシールの両側の側面および上面に当接するコの字状の弾性材からなる第2の固定具の折曲部をそれぞれの係合溝に係合させてリップ部をレールの外周面に押圧する方向に付勢するようにしたことによって、潤滑剤含有部材やサイドシールの取外や装着を、それぞれ第1および第2の固定具の弾性を利用して1人作業で容易に行うことができ、潤滑剤含有部材やサイドシールの交換作業における作業性を向上させることができると共に、サイドシールに予期せぬ力が加わることを防止して、サイドシールのリップ部の損傷を防止することができる。
【0030】
なお、上記実施例においては、第1および第2の固定具17、24は、それぞれの折曲部18、25を係合溝19、26に挿入して、潤滑剤含有部材14およびサイドシール21を組立てるとして説明したが、例えば図10に示す第1の固定具32のように、袖部32aの先端を潤滑剤含有部材分割片15a、15bの袖部14aの下面でレール2側に曲折させて係合部33を形成し、その係合部33を潤滑剤含有部材14の下面に係合させて組立てるようにしてもよい。このようにすれば、それぞれの係合溝19に折曲部18を挿入せずに、第1の固定具32の両側の袖部32aを接続部32bの弾性を利用して押し広げ、組合せた潤滑剤含有部材分割片15a、15bの外周面に嵌め込み、係合部33を潤滑剤含有部材14の下面に係合させて組立てることが可能になり、潤滑剤含有部材14の組立を容易に行うことができる。サイドシール21を組立てるための第2の固定具の場合も同様である。
【0031】
また、上記実施例においては、潤滑剤含有部材14のみを用いてリニアガイド装置1に潤滑剤を供給するとして説明したが、エンドキャップ11に方向転換路12に潤滑剤としてのグリースを導く潤滑剤供給通路を設けると共に、これに潤滑剤を供給する図示しない給脂ニップルを設け、図11、図12に示すように、潤滑剤含有部材14の接続部14bの中央部に給脂ニップルを挿通させるU字状の挿通穴35、およびサイドシール21の接続部21bの中央部に給脂ニップルを取付けるU字状の取付座36を形成して、潤滑剤含有部材14と給脂ニップルとを併用してリニアガイド装置1に潤滑剤を供給するようにしてもよい。
【0032】
この場合に、サイドシール21に設けるU字状の取付座36に代えて、図13に示すように、サイドシール21の接続部21bの中央部に円形の取付座38を形成するようにしてもよい。
更に、上記実施例においては、潤滑剤含有部材およびサイドシールをそれぞれ第1および第2の固定具を用いて組立てるとして説明したが、第1および第2の固定具を接続して1つの固定具を形成し、この固定具を用いて潤滑剤含有部材およびサイドシールをともに組立てた組立体を形成するようにしてもよい。このようにすれば、潤滑剤含有部材とサイドシールとの間に隙間が形成されていたとしても、上面側および側面側からのスライダ内部への異物を防止することができる。
【0033】
更に、上記実施例においては、潤滑剤含有部材およびサイドシールはそれぞれ1つずつ用いるとして説明したが、潤滑剤含有部材およびサイドシールをそれぞれスライダ移動方向に複数重ね合わせて用いるようにしてもよい。
更に、上記実施例においては、転動体としてボールを用いたリニアガイド装置を例に説明したが、転動体としてころを用いたリニアガイド装置においても同様である。この場合に負荷路を形成するレール転動体ガイド面とスライダ転動体ガイド面はころが転動するレール軌道面とスライダ軌道面とで構成し、潤滑剤含有部材の給油突起部およびサイドシールのリップ部をそれぞれレールの断面形状に沿わせて形成する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例のリニアガイド装置を示す斜視図
【図2】実施例の潤滑剤含有部材の正面を示す説明図
【図3】実施例の第1の固定具の正面を示す説明図
【図4】実施例の潤滑剤含有部材の組立体の正面を示す説明図
【図5】実施例のサイドシールの正面を示す説明図
【図6】実施例の第2の固定具の正面を示す説明図
【図7】実施例のサイドシールの組立体の正面を示す説明図
【図8】実施例のサイドシールの組立体の取外し時の状態を示す説明図
【図9】実施例の潤滑剤含有部材の組立体の取外し時の状態を示す説明図
【図10】実施例の第1の固定具の他の形態を示す説明図
【図11】実施例の潤滑剤含有部材の組立体の他の形態を示す説明図
【図12】実施例のサイドシールの組立体の他の形態を示す説明図
【図13】実施例のサイドシールの取付座の他の形態を示す説明図
【符号の説明】
【0035】
1 リニアガイド装置
2 レール
2a レール上面
2b レール側面
3 レール取付穴
4 埋栓
5 レール軌道溝
6 スライダ
6a 袖壁
6b 端面
7 取付ねじ穴
8 スライダ軌道溝
9 ボール
10 戻り路
11 エンドキャップ
12 方向転換路
14 潤滑剤含有部材
14a、17a、21a、24a、32a 袖部
14b、17b、21b、24b、32b 接続部
15a、15b 潤滑剤含有部材分割片
16 給油突起部
17、32 第1の固定具
18、25 折曲部
19、26 係合溝
21 サイドシール
22a、22b サイドシール分割片
23 リップ部
24 第2の固定具
27、35 挿通穴
28 段付ボルト穴
29 取付ボルト
30 ねじ穴
33 係合部
36、38 取付座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール転動体ガイド面を有するレールと、前記レール転動体ガイド面と対向するスライダ転動体ガイド面と戻り路とを有し、前記レールを直線的に往復移動するスライダと、該スライダの移動方向の前後端部に配置され、方向転換路を有するエンドキャップと、前記レール転動体ガイド面とスライダ転動体ガイド面とにより形成される負荷路と、該負荷路を前記方向転換路と戻り路とにより連通した循環路を循環する転動体と、前記エンドキャップの前記スライダと反対側の端面に取付けられ、前記レール転動体ガイド面に摺接する給油突起部を有する潤滑剤含有部材と、該潤滑剤含有部材の前記スライダと反対側の端面に取付けられ、前記レールに摺接するリップ部を有するサイドシールとを備えたリニアガイド装置において、
前記潤滑剤含有部材を、前記レールの幅方向に分割して2つの潤滑剤含有部材分割片とし、該潤滑剤含有部材分割片を組合せた潤滑剤含有部材の両側の側面および上面に当接し、前記給油突起部を前記レール転動体ガイド面に押圧する方向に付勢するコの字状の弾性材からなる第1の固定具を設けると共に、
前記サイドシールを、前記レールの幅方向に分割して2つのサイドシール分割片とし、該サイドシール分割片を組合せたサイドシールの両側の側面および上面に当接し、前記リップ部を前記レールの外周面に押圧する方向に付勢するコの字状の弾性材からなる第2の固定具を設けたことを特徴とするリニアガイド装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記潤滑剤含有部材分割片および前記サイドシール分割片のそれぞれの側面に係合溝を設け、
前記第1および第2の固定具に、それぞれ前記係合溝に係合する折曲部を設けたことを特徴とするリニアガイド装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記第1および第2の固定具に、それぞれ前記レール側に曲折させた係合部を設け、
該それぞれの係合部を、潤滑剤含有部材分割片を組合せた潤滑剤含有部材、および前記サイドシール分割片を組合せたサイドシールのそれぞれの下面に係合させたことを特徴とするリニアガイド装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
前記第1および第2の固定具に代えて、前記第1および第2の固定具を接続した弾性材からなる一つの固定具を設けたことを特徴とするリニアガイド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−281149(P2008−281149A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127328(P2007−127328)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】