説明

ルーフ開閉機構付電動車両

【課題】ルーフ開閉機構付電動車両において、バッテリを効率よく冷却できるようにすることである。
【解決手段】車両を駆動する駆動源であり、バッテリ20から電力を供給される走行用電動モータ18と、ルーフ開閉機構と、バッテリ冷却装置10とを備える。バッテリ冷却装置10は、コントローラ16を備え、冷却ブロア22の駆動によりバッテリ20に冷却風を送風する。コントローラ16は、ブロア制御手段36を有し、ブロア制御手段36は、ルーフが閉状態から開状態に変化した場合に、冷却ブロア22の回転数をルーフの閉時に比べて上昇させる機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を駆動する駆動源であり、バッテリから電力を供給される走行用電動モータと、ルーフを開閉可能とするルーフ開閉機構と、を備えるルーフ開閉機構付電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両を駆動する駆動源であり、バッテリから電力を供給される走行用電動モータを備える電気自動車またはハイブリッド車等の電動車両が知られている。例えば、エンジンと走行用電動モータとの両方または一方により駆動するハイブリッド車両は、一般的に、低速走行時にはエンジンと走行用電動モータとのうち主に走行用電動モータで車両を駆動し、高速走行時にはエンジンと走行用電動モータとのうち主にエンジンで車両を駆動することにより、燃費性能を向上させている。
【0003】
このようなハイブリッド車両においては、走行用電動モータに電力を供給するためのバッテリの充放電の際に熱が発生するため、バッテリの性能劣化を防止する面から熱を除去する、すなわちバッテリを適度に温度低下させることが好ましい。このために、従来から、バッテリを冷却するためのバッテリ冷却装置を備えることが考えられている。
【0004】
また、特許文献1には、車速、内燃機関の回転数、電気モータであるモータジェネレータの回転速度等から予測される暗騒音予測レベルと、車載バッテリの温度レベルとから、車載バッテリを冷却するバッテリ冷却ブロアに対応する、ファンを作動させる指令値を算出するファン作動指令算出部を備える車載用バッテリ冷却装置が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、自動車用電池の冷却構造において、ラゲージスペースに配置した電池パックと、電池パック内のモジュール集合体を冷却するための冷却風を取り込む吸気ダクトと、吸気ダクトに接続したバッテリ冷却ブロアに対応する、送風ファンとを備え、ラゲージスペースの床面を覆うトノカバーよりも上側に、吸気ダクトの吸気口を形成することが記載されている。例えば、吸気口を、リアシートの上部よりも高い位置に形成している。
【0006】
一方、近年は、上記のような電動車両において、ルーフを開閉可能とするルーフ開閉機構を備えるコンバーチブル車、サンルーフ付車等のようなルーフ開閉機構付電動車両とすることも考えられている。例えば、コンバーチブル車は、車室上部を開閉可能とするための折り畳み可能な幌式のルーフを備える。
【0007】
【特許文献1】特開2004−48981号公報
【特許文献2】特開2004−1683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のようなルーフ開閉機構付電動車両の場合、バッテリ冷却装置によりバッテリを効率よく冷却できるようにする面から改良の余地がある。例えば、特許文献1および特許文献2に記載された技術を含め、従来は、ルーフの開閉状態に応じて、バッテリを冷却するためのバッテリ冷却ブロアの作動状態を変化させ、バッテリ冷却ブロアの作動音による体感騒音を低減しつつ、バッテリを効率よく冷却できるようにすることは考慮されていなかった。また、特許文献1および特許文献2に記載された技術を含め、従来は、ルーフの開閉状態に応じて、バッテリと通じさせる複数の吸気流路のうち、いずれかの吸気流路の吸気口を選択して冷却風を取り込み、バッテリを効率よく冷却できるようにすることも考慮されていなかった。しかも、特許文献1および特許文献2に記載された技術の場合、ルーフ開閉機構を備えるようにする技術すら開示されていない。このように、従来は、バッテリを効率よく冷却できるようにする面から改良の余地がある。
【0009】
本発明の目的は、ルーフ開閉機構付電動車両において、バッテリを効率よく冷却できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るルーフ開閉機構付電動車両のうち、第1の発明に係るルーフ開閉機構付電動車両は、車両を駆動する駆動源であり、バッテリから電力を供給される走行用電動モータと、ルーフを開閉可能とするルーフ開閉機構と、を備えるルーフ開閉機構付電動車両であって、バッテリ冷却ブロアの駆動によりバッテリに冷却風を送風するバッテリ冷却装置と、ルーフが閉状態から開状態に変化した場合に、バッテリ冷却ブロアの回転数をルーフの閉時に比べて上昇させるブロア制御手段と、を備えることを特徴とするルーフ開閉機構付電動車両である。
【0011】
また、本発明に係るルーフ開閉機構付電動車両のうち、第2の発明に係るルーフ開閉機構付電動車両は、車両を駆動する駆動源であり、バッテリから電力を供給される走行用電動モータと、ルーフを開閉可能とするルーフ開閉機構と、を備えるルーフ開閉機構付電動車両であって、バッテリ冷却ブロアの駆動によりバッテリに冷却風を送風するバッテリ冷却装置と、バッテリ冷却装置に設けられ、互いに別の位置に吸気口を有する2本の吸気流路と、2本の吸気流路とバッテリとの間に設けられ、2本の吸気流路のうち、バッテリと通じさせる吸気流路を切り替え可能な流路切替弁と、ルーフの閉状態と開状態とで流路切替弁を切り替える流路切替弁制御手段と、を備えることを特徴とするルーフ開閉機構付電動車両である。
【0012】
また、好ましくは、2本の吸気流路のうち、一方の吸気流路に設けられた第1吸気口は、座席の後側に位置し、他方の吸気流路に設けられた第2吸気口は、第1吸気口よりも下側に位置し、流路切替弁制御手段は、ルーフの閉状態で一方の吸気流路の第1吸気口とバッテリとを通じさせ、ルーフの開状態で他方の吸気流路の第2吸気口とバッテリとを通じさせるように流路切替弁を切り替える。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るルーフ開閉機構付電動車両によれば、バッテリを効率よく冷却できる。すなわち、第1の発明に係るルーフ開閉機構付電動車両によれば、バッテリ冷却ブロアの駆動によりバッテリに冷却風を送風するバッテリ冷却装置と、ルーフが閉状態から開状態に変化した場合に、バッテリ冷却ブロアの回転数をルーフの閉時に比べて上昇させるブロア制御手段とを備えるので、ルーフの開状態でバッテリ冷却ブロアの作動音以外の暗騒音が大きくなることを利用して、バッテリ冷却ブロアの作動音による体感騒音を低減しつつ、バッテリを効率よく冷却できる。
【0014】
また、第2の発明に係るルーフ開閉機構付電動車両によれば、バッテリ冷却ブロアの駆動によりバッテリに冷却風を送風するバッテリ冷却装置と、バッテリ冷却装置に設けられ、互いに別の位置に吸気口を有する2本の吸気流路と、2本の吸気流路とバッテリとの間に設けられ、2本の吸気流路のうち、バッテリと通じさせる吸気流路を切り替え可能な流路切替弁と、ルーフの閉状態と開状態とで流路切替弁を切り替える流路切替弁制御手段とを備えるので、ルーフの開閉状態に応じて、効率よく冷却風を導入できる位置にある吸気口を選択して、選択した吸気口からバッテリに冷却風を供給できる。このため、バッテリを効率よく冷却できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[第1の発明の実施の形態]
以下において、図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。図1から図4は、本発明の第1の実施の形態を示している。図1は、ルーフ開閉機構付電動車両であるハイブリッド車両において、バッテリ冷却装置10を示す構成図である。図2は、バッテリ冷却の制御方法を示すフローチャートである。図3は、ルーフの開時と閉時とに対応する、車速とバッテリ冷却ブロアに対する指令値(冷却ブロア指令値)との関係の2例を表す線図である。図4は、ルーフの開時と閉時との暗騒音と、冷却ブロアの騒音とに対応する、周波数と音圧との関係を表す線図である。なお、以下の説明では、電動車両が、エンジンおよび走行用電動モータのうち、一方または両方を駆動源として車両を駆動するハイブリッド車両である場合について説明するが、本発明はこのようなハイブリッド車両に限定するものではなく、走行用電動モータのみを駆動源として車両を駆動する電気自動車に本発明を適用することもできる。
【0016】
本実施の形態のルーフ開閉機構付電動車両である、コンバーチブル型のハイブリッド車両は、幌式またはハードトップ式のルーフを自動または手動で開閉可能とするルーフ開閉機構を有する。例えば幌式のルーフを手動で開閉可能とする場合に、ルーフ開閉機構は、フロントウィンドウ上部にルーフの前端部を着脱可能とする装着部を備え、装着部においてルーフの前端部を手動で取り外し、後方に移動させることで、ルーフをシートの後側に折り畳んだ状態で収納可能とする。また、ハードトップ式のルーフを自動で開閉可能とする場合に、ルーフ開閉機構は、例えば、運転席周辺部の操作部の操作により、ルーフの前端部を前方または後方に移動可能な駆動部を備え、駆動部の駆動によりルーフを中間部の1個所以上の部分で折り畳みつつ、ルーフを後方に移動させることで、ルーフをシートの後側の格納部に収納可能とする。また、ルーフを後方に収納した状態でルーフは開状態となり、ルーフを装着した状態でルーフは閉状態となる。また、ハイブリッド車両は、図1に示すように、ルーフの開閉状態を検知するルーフ開閉センサ12と、車速を検出する車速センサ14とを備える。ルーフ開閉センサ12と車速センサ14とからの検出信号は、制御部であるコントローラ16に入力している。コントローラ16は、CPU、メモリ等を有するマイクロコンピュータである。
【0017】
また、ハイブリッド車両は、それぞれ車両を駆動する駆動源である、図示しないエンジンおよび走行用電動モータ18を備え、エンジンおよび走行用電動モータ18のうち、一方または両方を駆動源として車両の車輪(図示せず)を駆動する。また、走行用電動モータ18には、バッテリ20から電力を供給可能とする。ハイブリッド車両は、バッテリ冷却装置10を備え、バッテリ冷却装置10によりバッテリ20を冷却可能としている。
【0018】
バッテリ冷却装置10は、図1に示すように、上記のルーフ開閉センサ12および車速センサ14からの検出信号が入力されるコントローラ16と、バッテリ冷却ブロアである冷却ブロア22と、吸気ダクト24とを備える。吸気ダクト24は吸気口26から冷却風を取り込み可能としており、冷却風の流れ方向下流側に冷却ブロア22の吸気側を接続している。冷却ブロア22の排気側は、送風ダクト28を介して、バッテリ20を内装したバッテリケース(図示せず)の吸気側に接続している。また、バッテリケースの排気側には、バッテリケース内を流れた冷却風を、ハイブリッド車両の車外に排出するための排気ダクト30を接続している。吸気口26から取り込まれた冷却風は、吸気ダクト24を介して冷却ブロア22に送られ、冷却ブロア22から送風ダクト28を介してバッテリ20に供給される。すなわち、バッテリ冷却装置10は、冷却ブロア22の駆動によりバッテリ20に冷却風を送風する。
【0019】
冷却ブロア22は、電動モータ32により駆動され、その回転数を調節可能としている。また、バッテリ冷却装置10に、バッテリ20の温度を検出するための温度センサ34を設けており、温度センサ34の検出信号もコントローラ16に入力している。冷却ブロア22駆動用の電動モータ32も、バッテリ20から電力を供給される。
【0020】
コントローラ16は、ブロア制御手段36を有し、ブロア制御手段36は、車速とルーフ開閉状態とバッテリ20の温度とから、バッテリ20の温度を適温とするための冷却ブロア22の目標回転数を算出する機能と、目標回転数により冷却ブロア22を駆動させる機能とを有する。具体的には、図2に示すようにして、バッテリ冷却装置10を制御する。なお、本実施の形態の以下の説明においては、図1の構成と同等部分には図1の符号を用いて説明する。まず、図2のステップS1で、コントローラ16は、ルーフ開閉センサ12からの検出信号により、ルーフが開状態にあるか、すなわち、ルーフが車両後方に収納されているか否かを判定する。ルーフが開状態でないと判定された場合、すなわちルーフが閉状態であると判定された場合には、ステップS2に移行し、冷却ブロア22の通常制御を行う。
【0021】
ここで、通常制御とは、図3の、車速と、冷却ブロア22に対する指令値、すなわち冷却ブロア22指令値との関係で示すように、車速が上昇するのにしたがって一定の変化率で冷却ブロア22指令値が上昇するように制御することである。冷却ブロア22指令値は、冷却ブロア22の回転数に対応する、コントローラ16からの指令値であり、冷却ブロア22指令値が上昇するほど、冷却ブロア22の回転数も上昇する。また、冷却ブロア22の温度が予め算出した目標温度以下に達した状態で、冷却ブロア22指令値を0とする、すなわち冷却ブロア22の回転を停止させるようにしている。
【0022】
また、図2に戻り、ステップS1でルーフが開状態であると判定された場合、すなわちルーフが車両後方に収納されていると判定された場合には、冷却ブロア22の回転数を通常制御時よりも上昇させるルーフ開時制御を行う。ルーフ開時制御は、図3に示すように、車速が上昇するのにしたがって、通常制御時の車速に対する変化率よりも高い、一定の変化率で冷却ブロア22指令値が上昇するように制御する。すなわち、ルーフ開時制御は、同じ車速に対して、冷却ブロア22指令値が通常制御時よりも上昇するように制御する。言い換えれば、ブロア制御手段36は、ルーフが閉状態から開状態に変化した場合に、ルーフの閉時、すなわち装着時に比べて冷却ブロア22の回転数を上昇させる機能を有する。また、ルーフ開時制御を行う場合も、冷却ブロア22の温度が予め算出した目標温度以下に達した状態で、冷却ブロア22指令値を0とする。
【0023】
このようなルーフ開閉機構付電動車両によれば、バッテリ20を効率よく冷却できる。すなわち、冷却ブロア22の駆動によりバッテリ20に冷却風を送風するバッテリ冷却装置10と、ルーフが閉状態から開状態に変化した場合に、冷却ブロア22の回転数を上昇させるブロア制御手段36とを備える。このため、ルーフの開状態で冷却ブロア22の作動音以外の暗騒音が大きくなることを利用して、冷却ブロア22の作動音による体感騒音を低減しつつ、すなわち冷却ブロア22の作動音が問題とならないようにしつつ、バッテリ20の冷却を促進して、バッテリ20を効率よく冷却できる。
【0024】
図4は、本実施の形態において、ルーフの開時と閉時との暗騒音と、冷却ブロア22の騒音とに対応する、周波数と音圧との関係を表す線図である。図4は、実線イで、通常制御時の冷却ブロア22の騒音を、一点鎖線ロで、ルーフ開時に対応する、回転数上昇時の冷却ブロア22の騒音を、実線ハで、ルーフ閉時の冷却ブロア22以外の暗騒音を、一点鎖線ニでルーフ開時、すなわち、ルーフの後方への収納時での冷却ブロア22以外の暗騒音を、それぞれ表している。図4から分かるように、ルーフの開時(一点鎖線ニ)ではルーフ閉時(実線ハ)の場合に比べて、ロードノイズ、風切り音等を含む暗騒音が大きくなる。また、回転数上昇時の冷却ブロア22の騒音(一点鎖線ロ)は、通常制御時の冷却ブロア22の騒音(実線イ)に比べて大きくなる。そして、図4の斜線部で示すように、回転数上昇時の冷却ブロア22の騒音(一点鎖線ロ)は、ルーフ閉時の暗騒音(実線ハ)に対して一部の周波数範囲で大きくなる。例えば、図4の矢印αで示すように、回転数上昇時の冷却ブロア22の騒音がルーフ閉時の暗騒音よりも大きくなる。この場合、冷却ブロア22の騒音が乗員にとって耳障りとなる、すなわち、問題となる可能性がないとはいえない。
【0025】
これに対して、本実施の形態では、ルーフ開時の暗騒音(一点鎖線ニ)がルーフ閉時(実線ハ)に比べて大きくなることを利用して、ルーフ開時に、冷却ブロア22の回転数を上昇させて、一点鎖線ロで示すように冷却ブロア22の騒音をルーフ開時の暗騒音よりも全ての周波数範囲で小さくしつつ、冷却ブロア22の回転数を上昇させている。このため、冷却ブロア22の回転数上昇にかかわらず、冷却ブロア22の作動音による騒音を暗騒音に紛れ込ませることができる。例えば、図4の矢印βで示すように、回転数上昇時の冷却ブロア22の騒音は、ルーフ開時の暗騒音よりも小さくなるようにする。この結果、冷却ブロア22による騒音が問題とならないようにしつつ、バッテリ20の冷却を促進して、バッテリ20を効率よく冷却することができる。
【0026】
[第2の発明の実施の形態]
図5から図7は、本発明の第2の実施の形態を示している。図5は、ルーフ開閉機構付電動車両であるハイブリッド車両において、バッテリ冷却装置10を示す構成図である。図6は、バッテリ冷却装置10の一部の構成を含むハイブリッド車両38の透視模式図である。図7は、バッテリ冷却装置10の構成を詳しく説明するための、図6のA部拡大相当図である。
【0027】
図5に示すように、バッテリ冷却装置10は、冷却ブロア22の冷却風の流れ方向上流側に設けた、2本の吸気流路である2本の上流側吸気ダクト40,42と、2本の上流側吸気ダクト40,42の下流部である合流部に設けた流路切替弁44と、流路切替弁44および冷却ブロア22の間に設けた下流側吸気ダクト46とを備える。2本の上流側吸気ダクト40,42は、互いに別の位置に第1吸気口48および第2吸気口50をそれぞれ有する。流路切替弁44は、2本の上流側吸気ダクト40,42のうち、バッテリ20と通じさせる上流側吸気ダクト40(または42)を切り替える機能を有する。
【0028】
流路切替弁44は、コントローラ16aにより制御される。コントローラ16aは、ブロア制御手段36と、流路切替弁制御手段52とを有する。流路切替弁制御手段52は、ルーフ開閉センサ12の検出信号が表すルーフ開閉状態に応じて、流路切替弁44を切り替える。具体的には、図6に示すように、ハイブリッド車両38の後側に、バッテリ冷却装置10を構成する2本の吸気ダクト40,42を備える。図7により詳しく示すように、2本の吸気ダクト40,42のうち、一方の吸気ダクト40に設けた第1吸気口48は、座席であるリアシート54の後側の、リアシート54の上部とほぼ同位置にほぼ上方に向くように開口させている。また、リアシート54の後側のラゲージスペースの上側に水平方向に引き出し可能なトノカバー56を設けており、第1吸気口48は、トノカバー56の設置位置よりも上側またはトノカバー56設置位置とほぼ同位置に設けている。
【0029】
例えば、一方の吸気ダクト40は、車室内またはラゲージスペース内の幅方向側面に沿うように設置し、トノカバー56の引き出しまたは収納にかかわらず、トノカバー56と一方の吸気ダクト40とが干渉しないように、それぞれの位置を規制している。トノカバー56は、一端(図7の左端)に設け、車両に固定した収納部58にばね等により巻き戻すことで収納可能としており、取り出し側端部を他側(図7の右側)に引き出し可能としている。このような構成によれば、ルーフの装着状態からルーフを後方に収納する場合に、トノカバー56を収納部58に巻き戻すことで収納して、ルーフをトノカバー56よりも下側に収納した後、トノカバー56の取り出し側端部を図7の右方に引き出すことで、トノカバー56によりルーフを覆うことができる。図7の右方に引き出したトノカバー56の取り出し側端部を、車体に固定した図示しない係止部に係止する等により、トノカバー56を引き出したまま維持することができる。
【0030】
また、2本の吸気ダクト40,42のうち、他方の吸気ダクト42に設けた第2吸気口50は、第1吸気口48よりも下側の、リアシート54下側においてほぼ前方に向くように開口させている。2本の吸気ダクト40,42の合流部には、流路切替弁44を設けている。また、合流部の下流側に、バッテリ20を内装するバッテリケース60と、バッテリケース60に接続した排気ダクト30とをそれぞれ設け、排気ダクト30の途中に冷却ブロア22を設けている。排気ダクトの下流側は、ハイブリッド車両38(図6)の車外に通じさせている。なお、図7では、図5に示す構成の場合と異なり、バッテリ20よりも冷却風の流れ方向下流側に冷却ブロア22を設けているが、図5に示すように、バッテリ20よりも冷却風の流れ方向上流側に冷却ブロア22を設けることもできる。
【0031】
また、図5に示す流路切替弁制御手段52は、ルーフの閉状態で2本の上流側吸気ダクト40,42のうち、一方の上流側吸気ダクト40とバッテリ20とを通じさせ、ルーフの開状態で2本の吸気ダクト40,42のうち、一方の上流側吸気ダクト40の第1吸気口48よりも下側に開口する、第2吸気口50を有する他方の上流側吸気ダクト42と、バッテリ20とを通じさせるように、流路切替弁44を切り替える機能を有する。
【0032】
このような本実施の形態のルーフ開閉機構付電動車両によれば、冷却ブロア22の駆動によりバッテリ20に冷却風を送風するバッテリ冷却装置10と、バッテリ冷却装置10に設けられ、互いに別の位置に第1吸気口48および第2吸気口50をそれぞれ有する2本の上流側吸気ダクト40,42と、2本の吸気ダクト40,42とバッテリ20との間に設けられ、2本の上流側吸気ダクト40,42のうち、バッテリ20と通じさせる上流側吸気ダクト40(または42)を切り替え可能な流路切替弁44と、ルーフの閉状態と開状態とで流路切替弁44を切り替える流路切替弁制御手段52とを備える。このため、ルーフの開閉状態に応じて、効率よく冷却風を導入できる位置にある第1吸気口48または第2吸気口50を適切に選択でき、選択した吸気口48(または50)からバッテリ20に冷却風を供給できる。このため、バッテリ20を効率よく冷却できる。
【0033】
すなわち、ルーフの開閉を可能とするハイブリッド車両の場合、ルーフの開閉状態により車室内またはラゲージスペース内の空気流れが変化する。すなわち、ルーフの開時であるルーフの後方への収納時においては、一方の上流側吸気ダクト40に設ける第1吸気口48開口周辺部の、リアシート54後側上部の空気流れが激しく乱れる。このような空気流れの乱れにより、第1吸気口48への冷却風の取り入れが安定せず、バッテリ20の冷却も安定しない可能性があるため、バッテリ20を効率よく冷却できない可能性がある。これに対して、本実施の形態の場合には、流路切替弁制御手段52が、ルーフの開時に、バッテリ20と通じさせる上流側吸気ダクト40,42を、他方の上流側吸気ダクト42と選択するように制御することにより、開口周辺部の空気流れがより安定している第2吸気口50とバッテリ20とを通じさせ、第2吸気口50からバッテリ20に冷却風を効率よく供給できる。この結果、バッテリ20を効率よく冷却できる。その他の構成および作用については、上記の第1の実施の形態と同様であるため、同等部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0034】
なお、図6では、ハイブリッド車両38がフロントシートおよびリアシート54を有する場合を示しているが、本発明はこのような車両に適用する場合に限定するものではなく、例えば、ルーフ開閉機構付電動車両を2個のシートのみを設けた2人乗り車両とすることもできる。また、上記の各実施の形態において、ルーフ開閉機構付電動車両は、キャンバストップ、ガラスサンルーフ式等のサンルーフ付車としてもよく、吸気流路に設ける吸気口は、サイドピラーである、車両のボディ側面の支柱部等に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施の形態のルーフ開閉機構付電動車両である、ハイブリッド車両において、バッテリ冷却装置を示す構成図である。
【図2】同じくバッテリ冷却の制御方法を示すフローチャートである。
【図3】同じくルーフの開時と閉時とに対応する、車速とバッテリ冷却ブロアに対する指令値との関係の2例を表す線図である。
【図4】同じくルーフの開時と閉時との暗騒音と、冷却ブロアの騒音とに対応する、周波数と音圧との関係を表す線図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態のルーフ開閉機構付電動車両である、ハイブリッド車両において、バッテリ冷却装置を示す構成図である。
【図6】同じくバッテリ冷却装置の一部の構成を含むハイブリッド車両の透視模式図である。
【図7】同じくバッテリ冷却装置の構成を詳しく説明するための、図6のA部拡大相当図である。
【符号の説明】
【0036】
10 バッテリ冷却装置、12 ルーフ開閉センサ、14 車速センサ、16,16a コントローラ、18 走行用電動モータ、20 バッテリ、22 冷却ブロア、24 吸気ダクト、26 吸気口、28 送風ダクト、30 排気ダクト、32 電動モータ、34 温度センサ、36 ブロア制御手段、38 ハイブリッド車両、40,42 上流側吸気ダクト、44 流路切替弁、46 下流側吸気ダクト、48 第1吸気口、50 第2吸気口、52 流路切替弁制御手段、54 リアシート、56 トノカバー、58 収納部、60 バッテリケース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を駆動する駆動源であり、バッテリから電力を供給される走行用電動モータと、
ルーフを開閉可能とするルーフ開閉機構と、を備えるルーフ開閉機構付電動車両であって、
バッテリ冷却ブロアの駆動によりバッテリに冷却風を送風するバッテリ冷却装置と、
ルーフが閉状態から開状態に変化した場合に、バッテリ冷却ブロアの回転数をルーフの閉時に比べて上昇させるブロア制御手段と、を備えることを特徴とするルーフ開閉機構付電動車両。
【請求項2】
車両を駆動する駆動源であり、バッテリから電力を供給される走行用電動モータと、
ルーフを開閉可能とするルーフ開閉機構と、を備えるルーフ開閉機構付電動車両であって、
バッテリ冷却ブロアの駆動によりバッテリに冷却風を送風するバッテリ冷却装置と、
バッテリ冷却装置に設けられ、互いに別の位置に吸気口を有する2本の吸気流路と、
2本の吸気流路とバッテリとの間に設けられ、2本の吸気流路のうち、バッテリと通じさせる吸気流路を切り替え可能な流路切替弁と、
ルーフの閉状態と開状態とで流路切替弁を切り替える流路切替弁制御手段と、を備えることを特徴とするルーフ開閉機構付電動車両。
【請求項3】
請求項2に記載のルーフ開閉機構付電動車両において、
2本の吸気流路のうち、一方の吸気流路に設けられた第1吸気口は、座席の後側に位置し、他方の吸気流路に設けられた第2吸気口は、第1吸気口よりも下側に位置し、
流路切替弁制御手段は、ルーフの閉状態で一方の吸気流路の第1吸気口とバッテリとを通じさせ、ルーフの開状態で他方の吸気流路の第2吸気口とバッテリとを通じさせるように流路切替弁を切り替えることを特徴とするルーフ開閉機構付電動車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−279833(P2008−279833A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124154(P2007−124154)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】