説明

レジスト塗布装置及び基板の裏面洗浄方法

【課題】 基板の裏面を洗浄するための溶剤をリサイクルできるようにしたレジスト塗布装置及び基板の裏面洗浄方法を提供する。
【解決手段】 ウエーハWの表面上にレジストを滴下すると共に、このウエーハWを回転させレジストを遠心力で拡散させることによって、ウエーハWの表面上にレジストを塗布する際に、ウエーハWの表面から裏面に回り込んだレジストを除去する方法であって、酢酸と炭酸エチレンとを混合した溶剤をウエーハWの裏面に供給する工程と、供給された溶剤をウエーハWの裏面から回収する工程と、回収された溶剤にオゾンを溶解させる工程とを含む。このような構成であれば、溶剤中のレジストはオゾンによって分解されるので、溶剤のリサイクルが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト塗布装置及び基板の裏面洗浄方法に関し、特に、基板の裏面を洗浄するための溶剤をリサイクルできるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術としては、例えば特許文献1に開示されたものがある。即ち、この特許文献1には、スピンコータ内でウエーハの表面上にレジストを成膜させる際に、ウエーハの裏面に溶剤を吐出して、裏面に付着したレジストを除去することが開示されている。
ウエーハの裏面に供給する溶剤には、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)とPGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)とを混合した溶剤を使用することが一般的である。
【0003】
また、上記PGMEAとPGMEの混合液以外では、溶剤として、プロピレングリコールアルキルエーテルプロピオネートを使用すること(例えば、特許文献2参照。)や、ジアセトンアルコールを使用すること(例えば、特許文献3参照。)、1−メトシキ−2−プロパノールと3−メトシキ−1−プロパノ−ルとを使用すること(例えば、特許文献4参照。)が知られている。
【0004】
なお、特許文献5、6には、ドライエッチングやイオン注入によって基板表面で硬化したレジスト(パターン)を剥離、除去するために、基板を溶液中で処理する装置が開示されている。
【特許文献1】特開2005−79302号公報
【特許文献2】特開平8−195337号公報
【特許文献3】特開平8−104895号公報
【特許文献4】特開2002−141265号公報
【特許文献5】特開2003−282518号公報
【特許文献6】特開2003−224064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、スピンコータ内でウエーハの裏面に供給された溶剤は、その供給された面で跳ね返ったり遠心力が働いたりして、レジストと混じり合いながらその周囲に飛散する。そして、周囲に飛散した溶剤は、カップの内壁に付着し、やがてその底部に流れ落ちる。カップの底部には廃液口が設けられているので、レジストと混じり合った溶剤は、この廃液口からスピンコータの外へ排出される。
【0006】
ここで、特許文献1〜4に開示された従来の技術では、ウエーハの裏面洗浄に使用した溶剤をリサイクル(再生利用)するという考えがなかったために、レジスト塗布処理にかかるコストが高い、という問題があった。
本発明は、このような解決すべき課題に着目してなされたものであって、基板の裏面を洗浄するための溶剤をリサイクルできるようにしたレジスト塗布装置及び基板の裏面洗浄方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔発明1〕 上記目的を達成するために、発明1のレジスト塗布装置は、基板の表面上にレジストを滴下すると共に、当該基板を回転させ該レジストを遠心力で拡散させることによって、当該基板の表面上に該レジストを塗布する装置であって、前記基板の前記表面上に前記レジストを塗布する際に、低分子量カルボン酸、又は炭酸アルキレンの少なくとも一方を含む溶剤を前記基板の裏面に供給する溶剤供給手段と、前記溶剤供給手段によって前記基板の裏面に供給された前記溶剤を当該裏面から回収する溶剤回収手段と、前記溶剤回収手段によって前記裏面から回収された前記溶剤にオゾン(O)を溶解させるオゾン溶解手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0008】
ここで、基板とは、例えば「ウエーハ」のことである。また、「低分子量カルボン酸」としては、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸等の何れか一、若しくはそれらを混合した液体が挙げられる。「炭酸アルキレン」としては、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等の何れか一、若しくはそれらを混合した液体が挙げられる。酢酸や炭酸エチレン等を含む溶剤はオゾンを溶解し、かつオゾンとの反応性が少ない性質がある。また、このような溶剤はノボラック樹脂や環化ポリイソプレン等のレジストを溶解する性質がある。
【0009】
発明1のレジスト塗布装置によれば、基板の表面上にレジストを塗布する際に、基板の表面から裏面に回り込んだレジストを溶剤で除去することができる。また、溶剤中のレジストはオゾンによって分解されるので、使用後の溶剤を再生することが可能である。従って、例えば、使用後の溶剤を基板の裏面に再び供給してレジストを除去する(即ち、溶剤をリサイクルする)ことが可能である。
〔発明2〕 発明2のレジスト塗布装置は、発明1のレジスト塗布装置において、前記オゾンを溶解した後の前記溶剤を前記溶剤供給手段によって前記基板の裏面に再び供給することを特徴とするものである。
このような構成であれば、溶剤がリサイクルされるので、レジスト塗布処理にかかるコストを低減することが可能である。
【0010】
〔発明3〕 発明3のレジスト塗布装置は、発明1又は発明2のレジスト塗布装置において、前記オゾンを溶解した後の前記溶剤の成分濃度を分析する分析手段、を備えたことを特徴とするものである。
このような構成であれば、溶剤の成分濃度の分析結果に基づいて、そのリサイクルの可否を正確に判断することができる。
【0011】
〔発明4〕 発明4のレジスト塗布装置は、発明1から発明3の何れか一のレジスト塗布装置において、前記分析手段による前記成分濃度の分析結果に基づいて、前記オゾンを溶解した後の前記溶剤のリサイクルの可否を判断する判断手段を備え、前記判断手段が前記溶剤のリサイクルが可能と判断した場合には、前記オゾンを溶解した後の前記溶剤を前記溶剤供給手段によって前記基板の裏面に再び供給し、一方、前記判断手段が前記溶剤のリサイクルが不可能と判断した場合には、前記オゾンを溶解した後の前記溶剤を廃棄することを特徴とするものである。
このような構成であれば、基板裏面に対する洗浄能力を常に高く維持することが可能である。
【0012】
〔発明5〕 発明5のレジスト塗布装置は、発明1から発明4の何れか一のレジスト塗布装置において、前記オゾンを溶解した後の前記溶剤を所定方向に向けて輸送する配管を備え、前記配管の少なくとも前記溶剤と接する部分はフッ素樹脂で構成されていることを特徴とするものである。ここで、フッ素樹脂とは、テトラフルオロエチレン(CF=CF)の重合により作られる樹脂(例えば、テフロン(登録商標))のことである。
このような構成であれば、配管の腐食を防ぐことができる。
【0013】
〔発明6〕 発明6のレジスト塗布装置は、発明1から発明5の何れか一のレジスト塗布装置において、前記溶剤に溶け込まずに余った前記オゾン、又は前記溶剤から溶け出た前記オゾンを分解して外界に放出するオゾン分解処理手段、を備えたことを特徴とするものである。
このような構成であれば、高濃度オゾンの外界への放出が防がれるので、周囲の環境に悪影響を与えないようにすることができる。
【0014】
〔発明7〕 発明7のレジスト塗布装置は、発明1から発明6の何れか一のレジスト塗布装置において、前記低分子量カルボン酸は酢酸であり、前記炭酸アルキレンは炭酸エチレンであり、前記酢酸と前記炭酸エチレンの両方が前記溶剤に含まれ、当該溶剤中での前記酢酸と前記炭酸エチレンとの混合の割合は重量比で6:4である、ことを特徴とするものである。
このような構成であれば、特に優れた裏面洗浄効果を得ることができる。
【0015】
〔発明8〕 発明8の基板の裏面洗浄方法は、基板の表面上にレジストを滴下すると共に、当該基板を回転させ該レジストを遠心力で拡散させることによって、当該基板の表面上に該レジストを塗布する際に、前記基板の表面から裏面に回り込んだ前記レジストを除去する方法であって、低分子量カルボン酸、又は炭酸アルキレンの少なくとも一方を含む溶剤を前記基板の裏面に供給する工程と、前記基板の裏面に供給された前記溶剤を当該裏面から回収する工程と、前記裏面から回収された前記溶剤にオゾンを溶解させる工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0016】
このような構成であれば、基板の表面上にレジストを塗布する際に、基板の表面から裏面に回り込んだレジストを溶剤で除去することができる。また、溶剤中のレジストはオゾンによって分解されるので、使用後の溶剤を再生することが可能である。従って、例えば、使用後の溶剤を基板の裏面に再び供給してレジストを除去する(即ち、溶剤をリサイクルする)ことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るレジスト塗布装置100の構成例を示す概念図である。図1に示すように、このレジスト塗布装置100は、例えば塗布装置本体(以下、単にスピンコータという。)10と、溶剤再生システム50と、制御部90とを含んだ構成となっている。
【0018】
図2は、本発明の実施の形態に係るスピンコータ10の内部構成例を示す概念図である。このスピンコータ10は、ウエーハWの表面上にレジストを滴下すると共に、このウエーハWを回転させ、ウエーハWの表面上に付着したレジストを遠心力で拡散させることによって、ウエーハWの表面上にレジストを均一な厚さに塗布する装置である。
図2に示すように、このスピンコータ10は、ウエーハチャック1と、カップ3と、滴下ノズル5と、溶剤吐出ノズル7と、廃液回収部9等、を含んだ構成となっている。
【0019】
ウエーハチャック1は、ウエーハWの裏面を回転可能に支持するものである。このウエーハチャック1のウエーハWの裏面と接触する面(以下で、接触面という)には多数の孔が設けられおり、これらの孔は真空ポンプ(図示せず)に接続されている。ウエーハWをウエーハチャック1上に載置した状態で、これらの孔から空気を吸引すると、ウエーハWの裏面はウエーハチャック1の接触面に吸着されて固定される。また、このウエーハチャック1は、その接触面の中心を通る鉛直線回りに回転可能になっている。
【0020】
カップ3は、上面に開口部を、下面に底部を有した容器状のものである。このカップ3は、ウエーハチャック1に支持されたウエーハWの側方及び下方をやや離れた位置から取り囲むようにして配置されている。このカップ3によって、ウエーハWの回転によるレジストの周囲への飛散が防止される。
滴下ノズル5は、その先端に開口を有し、その後端はレジストを開口側に供給するレジスト供給部(図示せず)に接続している。この滴下ノズル5は、その開口がウエーハチャック1の接触面の中心部上方にくるように位置調整されており、ウエーハチャック1上に固定されたウエーハWの表面上にレジストを滴下するようになっている。
【0021】
図2に示すように、溶剤吐出ノズル7は、ウエーハチャック1に保持されるウエーハWの裏面側にくるように位置調整されており、ウエーハチャック1に保持されたウエーハWの裏面に向けて溶剤を吐出するようになっている。溶剤吐出ノズル7から吐出される溶剤(即ち、バックリンス液)は、例えば酢酸と炭酸エチレンとからなる混合液であり、その混合の割合は重量比で例えば6:4である。また、カップ3の底部に設けられた廃液回収部9は、図1に示すポンプP1や配管T1,2を介して分解槽20に接続している。
【0022】
図1に示すように、溶剤再生システム50は、分解槽20と、バブリング装置21と、オゾン発生器23と、酸素ガス供給部25と、溶剤供給部27と、オゾン処理塔30と、濃度センサ40と、溶剤再生システム50とスピンコータ10との間で溶剤を循環させる配管T1〜T5、オゾンを供給又は廃棄するための配管T6〜T8、その他の配管T9,T10及びポンプP1,P2等を含んだ構成となっている。
【0023】
分解槽20は、フッ素樹脂(例えば、テフロン(登録商標))で構成されており、密閉可能な構造となっている。図1に示すように、この分解槽20の底部にはバブリング装置21が配置されている。
バブリング装置21は、分解槽20に貯められた溶剤にオゾンを溶かすために、溶剤中でオゾンをバブリングさせる装置である。このバブリング装置21は、例えば多孔質の石英で構成されている。図1に示すように、このバブリング装置21は、分解槽20を貫通する配管T6を介して、分解槽20の外側に配置されたオゾン発生器23と接続している。
【0024】
オゾン発生器23は、酸素ガス供給部25から配管T9を介して供給される酸素(O)を原料として、オゾンを発生させる装置である。このオゾン発生器23は、例えば、その装置内で酸素ガスに高電圧を印加することによって、高濃度のオゾンを発生させるようになっている。発生した高濃度のオゾンは配管T6を通ってバブリング装置21に供給される。
【0025】
また、図1に示すように、分解槽20の天井部分には、オゾン処理塔30へ至る配管T7が設けられている。オゾン処理塔30には、例えば高濃度のオゾンを効率良く酸素に分解するための触媒が設けられており、オゾンを酸素に分解してその後外界に放出するようになっている。このような構成により、高濃度のオゾンがそのまま外界に放出されることはないので、周囲の環境に悪影響を与ることはなく、環境にやさしい。
【0026】
溶剤供給部27は、配管T10を介して分解槽20に新しい(フレッシュな)溶剤を供給するものである。この溶剤供給部27は、例えば酢酸と炭酸エチレンとを個別に保存するタンク(図示せず)を有し、制御部90の制御信号を受けて酢酸と炭酸エチレンとを同時に、又は別々のタイミングで分解槽20内に供給する。
また、この溶剤再生システム50では、配管T3の一端は分解槽20の中にあり、その他端はポンプP2に繋がっている。さらに、このポンプP2と濃度センサ40との間には配管T4が設けられている。この溶剤再生システム50では、ポンプP2が動作することによって、分解槽20内の溶剤が配管T3,T4を通って濃度センサ40側に送られるようになっている。
【0027】
濃度センサ40は、溶剤の成分濃度を測定する装置である。濃度センサ40が、例えば溶剤中の酢酸の分解成分(蟻酸等)の濃度を測定する。また、図1に示すように、この濃度センサ40の後段には、廃液ラインに繋がる配管T8と、スピンコータ10に戻る配管T5とが設けられており、これらは図示しない三方弁によって切り替えられるようになっている。
【0028】
制御部90は、例えば、CPUと、溶剤再生システム50全体を制御するためのプログラム等を格納したハードディスクと、RAM等で構成されている。この制御部90は、上述したオゾン発生器23と、酸素ガス供給部25と、溶剤供給部27と、オゾン処理塔30と、濃度センサ40と、ポンプP1,P2及び三方弁とにそれぞれ有線又は無線を介して接続しており、これらとの間で制御信号やデータの送受信が可能となっている。
【0029】
なお、このレジスト塗布装置100では、図1に示す配管T1〜T5,T8,T10や、分解槽20、その他溶剤と接する部分(例えば、スピンコータ10のカップ3、ウエーハチャック1等)に図示しない保温部材が取り付けられており、それらの温度が40℃以上で維持されている。このような保温部材の存在により、溶剤の温度は例えば40±2℃に保持され、溶剤を構成する炭酸エチレンの固化が防がれている。
【0030】
また、このレジスト塗布装置100では、図1に示す配管T1〜T8の少なくとも溶剤と接する部分(即ち、内壁)や、分解槽20、その他溶剤と接する部分(例えば、スピンコータ10のカップ3、ウエーハチャック1等)が、フッ素樹脂(例えば、テフロン(登録商標))で構成されており、溶剤中に溶け込んだオゾン、又は気体として存在するオゾン等による腐食が防止されている。
【0031】
次に、上述したレジスト塗布装置100の動作例について説明する。このレジスト塗布装置100で使用するレジストは、例えば、ノボラック樹脂系ポジ型レジスト、化学増幅型ポリビニルフェノール誘導体系ポジ型レジスト、環化ポリイソプレン系ネガ型レジスト等である。また、上述したように、裏面洗浄にしようする溶剤は、例えば酢酸と炭酸エチレンとからなる混合液であり、その混合の割合は重量比で例えば6:4であり、その温度は例えば40±2℃に保持されたものである。
【0032】
図2において、ウエーハチャック1に保持されたウエーハWが回転し、滴下ノズル5からレジストが滴下されると、ウエーハWの表面上に付着したレジストは遠心力によって外側に広がり、レジストの一部はウエーハWの表面側からその裏面側に回り込もうとする。このとき、溶剤吐出ノズル7から溶剤が吐出される。溶液吐出ノズルから吐出された溶剤は、その供給された面で跳ね返ったり遠心力が働いたりして、レジストと混じり合いながらその周囲に飛散する。飛散した溶剤はカップ3の内壁に付着して、やがてその底部に流れ落ちる。そして、カップ3底部の廃液回収部9からカップ3の外へ排出される。
【0033】
カップ3の外に排出された使用後の溶剤は、図1に示す配管T1に入り、ポンプP1によって配管T2から分解槽20内に送り込まれる。分解槽20内ではバブリング装置21がオゾンをバブリングする。この実施例では、酢酸と炭酸エチレンとからなる溶剤にオゾンが100〜500ppm溶存するように、溶剤1リットル当たり、オゾン1リットル/分をバブリングする。これにより、使用後の溶剤にオゾンが溶け込み、オゾンによって溶剤中のレジスト成分が例えばCOとHOとに分解される(即ち、再生処理される)。
【0034】
なお、分解槽20の内部はバブリングによってその圧力が高まっているので、バブリング後の余った(即ち、溶剤に溶け込まなかった)オゾンや、溶剤から溶け出たオゾン、レジストの分解によって発生したCOやHOは、分解槽20内の圧力に押されて配管T7内に入り、オゾン処理塔30へ運ばれる。
次に、分解槽20内で再生処理された溶剤はポンプP2によって配管T3,T4内に引き込まれ、濃度センサ40まで運ばれる。濃度センサ40は、制御部90の制御下で、例えば溶剤中の酢酸の分解成分(蟻酸等)を常時モニタし、その値をリアルタイムで制御部90に送信する。また、制御部90は、濃度センサ40から送られてくる分析データを直ぐにチェックし、蟻酸等の成分濃度が規定値を超えていないかどうかを確認する。
【0035】
蟻酸等の成分濃度が規定値以下の場合には、制御部90が溶剤のリサイクルは可能であると判断する。そして、制御部90の制御下で、三方弁(図示せず)をT8側に対して閉じ、T5側に対して開いて、再生処理後の溶剤をスピンコータ10に供給する。つまり、スピンコータ10とバブリング装置21との間で溶剤を循環させる。
一方、蟻酸等の成分濃度が規定値を超えた場合には、制御部90が溶剤のリサイクルは不可能であると判断する。そして、制御部90の制御下で、三方弁(図示せず)をT5側に対して閉じ、T8側に対して開いて、再生処理後の溶剤を廃液ライン側に流して廃棄する。そして、分解槽20内の溶剤を所定量だけ、または全て廃棄した後で、制御部90は溶剤供給部27に溶剤の供給開始を指示する制御信号を送信する。この制御信号を受けて、溶剤供給部27は酢酸や炭酸エチレン等を分解槽20内に供給して、溶剤を補給する。
【0036】
このように、本発明の実施の形態に係るレジスト塗布装置100によれば、基板の表面上にレジストを塗布する際に、ウエーハWの表面から裏面に回り込んだレジストを溶剤で除去することができる。また、溶剤中のレジストはオゾンによって分解されるので、使用後の溶剤を再生することが可能である。従って、使用後の溶剤をウエーハWの裏面に再び供給してレジストを除去する(即ち、溶剤をリサイクルする)ことが可能である。これにより、裏面洗浄用の溶剤の消費量を少なくすることができるので、裏面洗浄にかかるコストを低減することが可能である。
【0037】
また、オゾンを用いて溶剤を再生処理するだけでは、再生回数の上昇に伴って蟻酸等の濃度が上昇し(即ち、酢酸の濃度が下降し)、溶剤の洗浄能力は低下してしまう。しかしながら、本発明の実施の形態に係るレジスト塗布装置100によれば、濃度センサ40によって蟻酸等の濃度を測定し、この測定値が基準値を超えた場合には溶剤を新しいものと入れ換えるので、溶剤中の酢酸濃度を所定の値以上に維持することができる。従って、ウエーハW裏面に対する洗浄能力を常に高く維持することが可能である。
【0038】
この実施の形態では、ウエーハWが本発明の「基板」に対応し、酢酸が本発明の「低分子量カルボン酸」に対応し、炭酸エチレンが本発明の「炭酸アルキレン」に対応している。また、溶剤吐出ノズル7が本発明の「溶剤供給手段」に対応し、カップ3、廃液回収部9、配管T1,T2、ポンプP1が本発明の「溶剤回収手段」に対応している。さらに、分解槽20、バブリング装置21、オゾン発生器23、酸素ガス供給部25、配管T6,T9が本発明の「オゾン溶解手段」に対応し、濃度センサ40が本発明の「分析手段」に対応している。また、制御部90が本発明の「判断手段」に対応し、オゾン処理塔30が本発明の「オゾン分解処理手段」に対応している。
【0039】
なお、この実施の形態では、本発明の「溶剤」の一例として、酢酸と炭酸エチレンとからなる混合液を使用する場合について説明したが、本発明の溶剤はこれに限られることはない。本発明の溶剤は、酢酸単体、又は炭酸エチレン単体でも良い。或いは、酢酸の代替としてプロピオン酸、酪酸を使用したり、炭酸エチレンの代替として炭酸プロピレンを使用したりしても良い。このような構成であっても、溶剤中のレジストはオゾンによって分解されるので、溶剤のリサイクルが可能である。
【0040】
また、この実施の形態では、図1に示したように、1台のスピンコータ10に1つの溶剤再生システム50を接続する場合について説明した。しかしながら、図3に示すように、複数のスピンコータ10を例えば並列に配置し、これらのスピンコータ10に1つの溶剤再生システム50を接続するようにしても良い。このような構成であっても、溶剤のリサイクルが可能であり、裏面洗浄にかかるコストを低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態に係るレジスト塗布装置100の構成例を示す図。
【図2】本発明の実施の形態に係るスピンコータ10の内部構成例を示す図。
【図3】複数台のスピンコータ10に対する溶剤再生システム50の接続例を示す図。
【符号の説明】
【0042】
1 ウエーハチャック、3 カップ、5 滴下ノズル、7 溶剤吐出ノズル、9 廃液回収部、10 スピンコータ、20 分解槽、21 バブリング装置、23 オゾン発生器、25 酸素ガス供給部、27 溶剤供給部、30 オゾン処理塔、40 濃度センサ、50 溶剤再生システム、90 制御部、100 レジスト塗布装置、P1,P2 ポンプ、T1〜T10 配管、W ウエーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面上にレジストを滴下すると共に、当該基板を回転させ該レジストを遠心力で拡散させることによって、当該基板の表面上に該レジストを塗布する装置であって、
前記基板の前記表面上に前記レジストを塗布する際に、低分子量カルボン酸、又は炭酸アルキレンの少なくとも一方を含む溶剤を前記基板の裏面に供給する溶剤供給手段と、
前記溶剤供給手段によって前記基板の裏面に供給された前記溶剤を当該裏面から回収する溶剤回収手段と、
前記溶剤回収手段によって前記裏面から回収された前記溶剤にオゾンを溶解させるオゾン溶解手段と、を備えたことを特徴とするレジスト塗布装置。
【請求項2】
前記オゾンを溶解した後の前記溶剤を前記溶剤供給手段によって前記基板の裏面に再び供給することを特徴とする請求項1に記載のレジスト塗布装置。
【請求項3】
前記オゾンを溶解した後の前記溶剤の成分濃度を分析する分析手段、を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレジスト塗布装置。
【請求項4】
前記分析手段による前記成分濃度の分析結果に基づいて、前記オゾンを溶解した後の前記溶剤のリサイクルの可否を判断する判断手段を備え、
前記判断手段が前記溶剤のリサイクルが可能と判断した場合には、
前記オゾンを溶解した後の前記溶剤を前記溶剤供給手段によって前記基板の裏面に再び供給し、一方、
前記判断手段が前記溶剤のリサイクルが不可能と判断した場合には、
前記オゾンを溶解した後の前記溶剤を廃棄することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載のレジスト塗布装置。
【請求項5】
前記オゾンを溶解した後の前記溶剤を所定方向に向けて輸送する配管を備え、
前記配管の少なくとも前記溶剤と接する部分はフッ素樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載のレジスト塗布装置。
【請求項6】
前記溶剤に溶け込まずに余った前記オゾン、又は前記溶剤から溶け出た前記オゾンを分解して外界に放出するオゾン分解処理手段、を備えたことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載のレジスト塗布装置。
【請求項7】
前記低分子量カルボン酸は酢酸であり、前記炭酸アルキレンは炭酸エチレンであり、
前記酢酸と前記炭酸エチレンの両方が前記溶剤に含まれ、当該溶剤中での前記酢酸と前記炭酸エチレンとの混合の割合は重量比で6:4である、ことを特徴とする請求項1から請求項6の何れか一項に記載のレジスト塗布装置。
【請求項8】
基板の表面上にレジストを滴下すると共に、当該基板を回転させ該レジストを遠心力で拡散させることによって、当該基板の表面上に該レジストを塗布する際に、前記基板の表面から裏面に回り込んだ前記レジストを除去する方法であって、
低分子量カルボン酸、又は炭酸アルキレンの少なくとも一方を含む溶剤を前記基板の裏面に供給する工程と、
前記基板の裏面に供給された前記溶剤を当該裏面から回収する工程と、
前記裏面から回収された前記溶剤にオゾンを溶解させる工程と、を含むことを特徴とする基板の裏面洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−27543(P2007−27543A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−209810(P2005−209810)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】