説明

レジスト材料及びそれを用いたパターン形成方法

【課題】レジストパターンに生じるラフネスを低減して良好な形状を有するパターン形成方法を実現できるようにする。
【解決手段】基板101の上にレジスト膜102を形成し、形成したレジスト膜102に露光光を選択的に照射することによりパターン露光を行う。続いて、パターン露光が行われたレジスト膜102を加熱し、加熱されたレジスト膜102に対して現像を行って、レジスト膜102からレジストパターン102aを形成する。レジスト膜102を構成するレジスト材料には、イオン性の光酸発生剤と、酸脱離基と親水性基とを含む第1のポリマーと、第1のポリマーと比べて光酸発生剤に対する親和性が小さい分子又は第2のポリマーとを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造プロセス等において用いられるレジスト材料及びそれを用いたパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の大集積化及び半導体素子のダウンサイジングに伴って、リソグラフィ技術の開発の加速が望まれている。現在のところ、露光光としては、水銀ランプ、KrFエキシマレーザ又はArFエキシマレーザ等を用いる光リソグラフィによりパターン形成が行われている。近年、露光光の波長をさらに短波長化した極紫外線の使用が検討されている。極紫外線は、波長が13.5nmと従来の光リソグラフィと比べて10分の1以下と短波長化しているため、解像性の大幅な向上が期待できる。また、液浸露光による解像性の向上も行われている。
【0003】
このような極紫外線露光及び液浸露光を始めとする微細パターンの形成には、化学増幅型レジストが用いられる。化学増幅型レジストは解像性の向上に必須のレジスト材料である。レジスト中の光酸発生剤から露光光により酸が発生し、発生した酸がレジスト中で化学反応を引き起こしてパターン形成につながる。
【0004】
以下、従来のパターン形成方法について図6(a)〜図6(d)を参照しながら説明する。
【0005】
まず、以下の組成を有するポジ型の化学増幅型レジスト材料を準備する。
【0006】
ポリ(2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート(50mol%)−γ-ブチロラクトンメタクリレート(40mol%)−2-ヒドロキシアダマンタンメタクリレート(10mol%))(ベースポリマー)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2g
トリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルフォン酸(光酸発生剤)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.05g
トリエタノールアミン(クエンチャー)・・・・・・・・・・・・・・・0.002g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶媒)・・・・・・・・20g
次に、図6(a)に示すように、基板1の上に前記の化学増幅型レジスト材料を塗布し、続いて、90℃の温度で60秒間加熱して、厚さが120nmのレジスト膜2を形成する。
【0007】
次に、図6(b)に示すように、開口数(NA)が0.93のArFエキシマレーザ光よりなる露光光をマスク3を介してレジスト膜2に照射してパターン露光を行う。
【0008】
次に、図6(c)に示すように、パターン露光が行われたレジスト膜2に対して、ホットプレートにより105℃の温度で60秒間加熱する。
【0009】
次に、加熱されたレジスト膜2に対して、濃度が2.38wt%のテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド現像液により現像を行って、図6(d)に示すように、レジスト膜2の未露光部よりなり、60nmのライン幅を有するレジストパターン2aを得る。
【特許文献1】特開2008−127300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記従来の化学増幅型レジスト材料を用いたパターン形成方法によると、図6(d)及び図7に示すように、形成されたレジストパターン2aはラフネスの程度が大きいという問題がある。なお、例えば特許文献1には、新規な光酸発生剤によりラフネスを改善するアプローチも提案されているが、その効果は定かではない。
【0011】
このように、形状が不良なレジストパターン2aを用いて被処理膜に対してエッチングを行うと、被処理膜から得られるパターンの形状も不良となってしまうため、半導体装置の製造プロセスにおける生産性及び歩留まりが低下してしまう。
【0012】
前記従来の問題に鑑み、本発明は、レジストパターンに生じるラフネスを低減して良好な形状を有するパターン形成方法を実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明者らは、より微細化されたパターン形成においてラフネスを低減すべく、種々の検討を重ねた結果、以下の知見を得ている。すなわち、ラフネスは、微細化されたパターンサイズと比べて、露光後の光酸発生剤からの酸の拡散が相対的に大きいことに生じている。従って、光酸発生剤をできるだけ酸脱離基を含むメインポリマー(ベースポリマー)に近づけることによって、微細化されたパターンのラフネスを低減できるというものである。
【0014】
従来の化学増幅型のレジスト材料は、図1(a)に示すように、酸脱離基と親水性基とを含むメインポリマー10に対して、イオン性の光酸発生剤11がほぼ均一に拡散している。これに対し、本発明に係るレジスト材料は、図1(b)に示すように、メインポリマーと比べてイオン性の光酸発生剤11に対する親和性が小さい分子又はポリマー12を添加している。これにより、イオン性の光酸発生剤11は、添加された分子又はポリマー12から遠ざかり、より親和性が大きいメインポリマー10に近づくようになる。これにより、光酸発生剤11からの酸が必要以上に拡散してパターンラフネスの要因となるよりも前に、酸の拡散を抑制することができる。すなわち、レジスト膜の露光部に発生した酸が近傍に位置するメインポリマーの酸脱離基とただちに反応することから、必要以上の酸の拡散を防止することができる。酸の拡散を制御しない場合には、例えば酸の拡散距離は10nm程度にまで大きくなるが、本発明によれば、酸の拡散距離は2nm〜3nm程度以下にまで小さくすることができる。
【0015】
本発明は、前記の知見に基づいてなされ、具体的には以下の構成により実現される。
【0016】
本発明に係るレジスト材料は、イオン性の光酸発生剤と、酸脱離基と親水性基とを含む第1のポリマーと、第1のポリマーと比べて光酸発生剤に対する親和性が小さい分子又は第2のポリマーとを含むことを特徴とする。
【0017】
本発明のレジスト材料によると、酸脱離基と親水性基とを含む第1のポリマーと比べて光酸発生剤に対する親和性が小さい分子又は第2のポリマーを含むため、レジスト膜の露光部に発生した酸が近傍に位置する第1のポリマーの酸脱離基とただちに反応するので、酸の拡散が大きくなることを防止できる。これにより、レジスト膜の未露光部に生じるラフネスを低減できるので、良好な形状を有するパターンを得ることができる。
【0018】
本発明のレジスト材料において、光酸発生剤には、トリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルフォン酸、トリフェニルスルフォニウムノナフルオロブタンスルフォン酸、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルフォン酸又はジフェニルヨードニウムノナフルオロブタンスルフォン酸を用いることができる。なお、光酸発生剤の添加量は、第1のポリマーに対して2wt%以上且つ30wt%以下程度が好ましい。但し、本発明はこの範囲に限定されない。
【0019】
本発明のレジスト材料において、第1のポリマーの酸脱離基には、t−ブチル基、t−ブチルオキシカルボニル基、1−エトキシエチル基、メトキシメチル基、2−メチルシクロペンチル基、2−エチルシクロペンチル基、2−メチルアダマンチル基又は2−エチルアダマンチル基を用いることができる。
【0020】
本発明のレジスト材料において、第1のポリマーの親水性基には、1−アダマンタノール、2−アダマンタノール、1,3−ジアダマンタノール、γ−ブチロラクトン、β−プロピロラクトン又はδ−ペンチロラクトンを含む基を用いることができる。
【0021】
本発明のレジスト材料において、光酸発生剤に対する親和性が小さい分子又は第2のポリマーは、OH基、COOH基及び環状エステル基を含まないことが好ましい。このように親水性基であるOH基、COOH基及び環状エステル基を含まないようにすると、イオン性の光酸発生剤は、より第1のポリマーの親水性基に引き寄せられることになる。但し、本発明はこれに限られない。
【0022】
本発明のレジスト材料において、光酸発生剤に対する親和性が小さい分子には、アダマンタン、1−ブロモアダマンタン、1,3−ジブロモアダマンタン、1−アダマンチルメタクリレート、1−アダマンチルアクリレート、1−アダマンチル−α−フルオロアクリレート、メチルメタクリレート、メチルアクリレート又はメチル−α−フルオロアクリレートを用いることができる。
【0023】
本発明のレジスト材料において、光酸発生剤に対する親和性が小さいポリマーには、ポリ(1−アダマンチルメタクリレート)、ポリ(1−アダマンチルアクリレート)、ポリ(1−アダマンチル−α−フルオロアクリレート)、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート又はポリメチル−α−フルオロアクリレートを用いることができる。
【0024】
ここで、光酸発生剤に対する親和性が小さい分子又は第2のポリマーの添加量は、第1のポリマーに対して0.5wt%以上且つ20wt%以下程度が好ましい。但し、本発明はこの範囲に限定されない。第2のポリマーの添加量が過少であると効果は小さく、逆に添加量が過度であると、レジスト膜における露光部の溶解性を阻害して、レジストの性能を劣化させるおそれがある。このため、より好ましくは、第1のポリマーに対して1wt%以上且つ10wt%以下程度である。
【0025】
また、本発明に係るパターン形成方法は、基板の上に、イオン性の光酸発生剤と、酸脱離基と親水性基とを含む第1のポリマーと、第1のポリマーと比べて光酸発生剤に対する親和性が小さい分子又は第2のポリマーとを含むレジスト材料からレジスト膜を形成する工程と、レジスト膜に露光光を選択的に照射することによりパターン露光を行う工程と、パターン露光が行われたレジスト膜を加熱する工程と、加熱されたレジスト膜に対して現像を行って、レジスト膜からレジストパターンを形成する工程とを備えていることを特徴とする。
【0026】
本発明のパターン形成方法によると、レジスト材料に、酸脱離基と親水性基とを含む第1のポリマーと比べて光酸発生剤に対する親和性が小さい分子又は第2のポリマーを含む。このため、レジスト膜の露光部に発生した酸が近傍に位置する第1のポリマーの酸脱離基とただちに反応するので、酸の拡散が大きくなることを防止できる。これにより、レジスト膜の未露光部に生じるラフネスを低減でき、その結果、良好な形状を有するパターンを得ることができる。
【0027】
本発明のパターン形成方法において、露光光には、KrFエキシマレーザ光、ArFエキシマレーザ光、極紫外線又は電子線を用いることができる。
【0028】
また、本発明のパターン形成方法において、パターン露光を行う工程は、レジスト膜の上に液体を配した状態で行ってもよい。このようにすると、より微細化されたパターンを得ることができる。
【0029】
この場合に、液体には水を用いることができる。
【0030】
また、パターン露光に液体を用いる液浸露光の場合に、露光光には、KrFエキシマレーザ光又はArFエキシマレーザ光を用いることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係るレジスト材料及びそれを用いたパターン形成方法によると、レジストパターンに生じるラフネスを低減して良好な形状を有する微細パターンを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るパターン形成方法について図2(a)〜図2(d)及び図3を参照しながら説明する。
【0033】
まず、以下の組成を有するポジ型の化学増幅型レジスト材料を準備する。
【0034】
ポリ(2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート(50mol%)−γ-ブチロラクトンメタクリレート(40mol%)−2-ヒドロキシアダマンタンメタクリレート(10mol%))(酸脱離基と親水性基とを含むメインポリマー)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2g
トリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルフォン酸(イオン性の光酸発生剤)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.05g
1−アダマンチルメタクリレート(メインポリマーと比べて光酸発生剤に対する親和性が小さい分子)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.1g
トリエタノールアミン(クエンチャー)・・・・・・・・・・・・・・・0.002g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶媒)・・・・・・・・20g
次に、図2(a)に示すように、基板101の上に前記の化学増幅型レジスト材料を塗布し、続いて、90℃の温度で60秒間加熱して、厚さが120nmのレジスト膜102を形成する。
【0035】
次に、図2(b)に示すように、開口数(NA)が0.93のArFエキシマレーザ光よりなる露光光をマスク103を介してレジスト膜102に照射してパターン露光を行う。
【0036】
次に、図2(c)に示すように、パターン露光が行われたレジスト膜102に対して、ホットプレートにより105℃の温度で60秒間加熱する。レジスト膜102を加熱することによって、露光により発生した酸はレジスト膜102内で拡散し、近傍に位置するメインポリマーの酸脱離基と反応して、酸脱離基をメインポリマーから脱離することとなる。酸脱離基が脱離したメインポリマーは現像液に可溶となる。
【0037】
次に、加熱されたレジスト膜102に対して、濃度が2.38wt%のテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド現像液により現像を行って、図2(d)及び図3に示すように、レジスト膜102の未露光部よりなり、ライン幅が60nmで、ラフネスが小さい良好な形状を有するレジストパターン102aを得る。
【0038】
このように、第1の実施形態によると、ポジ型の化学増幅型レジスト材料における酸脱離基と親水性基とを含むメインポリマーに、該メインポリマーと比べて光酸発生剤に対する親和性が小さい分子である1−アダマンチルメタクリレートを添加している。1−アダマンチルメタクリレートは、OH基、COOH基及び環状エステル基等の親水性基を含まないため、メインポリマーと比較して、光酸発生剤への親和性が小さくなる。このため、光酸発生剤が1−アダマンチルメタクリレートから遠ざかり、より親和性が大きいメインポリマーに近づく。これにより、光酸発生剤とメインポリマーの酸脱離基との距離が縮まり、光酸発生剤から発生する酸が必要以上に大きく拡散しなくなるので、レジストパターン102aはそのラフネスが低減されて、良好なパターン形状となる。
【0039】
なお、第1の実施形態においては、メインポリマーと比べて光酸発生剤に対する親和性が小さい分子に1−アダマンチルメタクリレートを用いたが、これに限られず、アダマンタン、1−ブロモアダマンタン、1,3−ジブロモアダマンタン、1−アダマンチルアクリレート、1−アダマンチル−α−フルオロアクリレート、メチルメタクリレート、メチルアクリレート又はメチル−α−フルオロアクリレート等を用いることができる。
【0040】
また、化学増幅型レジスト材料に含まれるイオン性の光酸発生剤には、トリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルフォン酸を用いたが、これに代えて、トリフェニルスルフォニウムノナフルオロブタンスルフォン酸、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルフォン酸又はジフェニルヨードニウムノナフルオロブタンスルフォン酸等を用いることができる。
【0041】
また、メインポリマーに含まれる酸脱離基には、2−メチルアダマンチル基を用いたが、これに代えて、t−ブチル基、t−ブチルオキシカルボニル基、1−エトキシエチル基、メトキシメチル基、2−メチルシクロペンチル基、2−エチルシクロペンチル基又は2−エチルアダマンチル基等を用いることができる。
【0042】
また、メインポリマーに含まれる親水性基には、γ−ブチロラクトンを含む基を用いたが、これに代えて、1−アダマンタノール、2−アダマンタノール、1,3−ジアダマンタノール、β−プロピロラクトン又はδ−ペンチロラクトン等を含む基を用いることができる。
【0043】
また、露光光には、ArFエキシマレーザ光を用いたが、これに代えて、KrFエキシマレーザ光、極紫外線又は電子線等を用いることができる。
【0044】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係るパターン形成方法について図4(a)〜図4(d)及び図5を参照しながら説明する。
【0045】
まず、以下の組成を有するポジ型の化学増幅型レジスト材料を準備する。
【0046】
ポリ(2−エチルシクロペンチルメタクリレート(45mol%)−δ−ペンチロラクトンメタクリレート(40mol%)−2-ヒドロキシアダマンタンメタクリレート(15mol%))(酸脱離基と親水性基とを含むメインポリマー)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2g
トリフェニルスルフォニウムノナフルオロブタンスルフォン酸(イオン性の光酸発生剤)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.05g
ポリメチルアクリレート(メインポリマーと比べて光酸発生剤に対する親和性が小さいポリマー)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.08g
トリエタノールアミン(クエンチャー)・・・・・・・・・・・・・・・0.002g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶媒)・・・・・・・・20g
次に、図4(a)に示すように、基板201の上に前記の化学増幅型レジスト材料を塗布し、続いて、90℃の温度で60秒間加熱して、厚さが120nmのレジスト膜202を形成する。
【0047】
次に、図4(b)に示すように、レジスト膜202と投影レンズ204との間に、例えばパドル(液盛り)法により、液浸用の水203を配し、NAが1.2であるArFエキシマレーザ光であって、マスク(図示せず)を透過した露光光を水203を介してレジスト膜202に照射してパターン露光を行う。
【0048】
次に、図4(c)に示すように、パターン露光が行われたレジスト膜202に対して、ホットプレートにより110℃の温度で60秒間加熱する。レジスト膜202を加熱することによって、露光により発生した酸はレジスト膜202内で拡散し、近傍に位置するメインポリマーの酸脱離基と反応して、酸脱離基をメインポリマーから脱離することとなる。酸脱離基が脱離したメインポリマーは現像液に可溶となる。
【0049】
次に、加熱されたレジスト膜202に対して、濃度が2.38wt%のテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド現像液により現像を行って、図4(d)及び図5に示すように、レジスト膜202の未露光部よりなり、ライン幅が50nmで、ラフネスが小さい良好な形状を有するレジストパターン202aを得る。
【0050】
このように、第2の実施形態によると、液浸リソグラフィ法によるパターン形成方法においても、ポジ型の化学増幅型レジスト材料における酸脱離基と親水性基とを含むメインポリマーに、該メインポリマーと比べて光酸発生剤に対する親和性が小さいポリマーであるポリメチルアクリレートを添加している。ポリメチルアクリレートは、OH基、COOH基及び環状エステル基等の親水性基を含まないため、メインポリマーと比較して、光酸発生剤への親和性が小さくなる。このため、光酸発生剤がポリメチルアクリレートから遠ざかり、より親和性が大きいメインポリマーに近づく。これにより、光酸発生剤とメインポリマーの酸脱離基との距離が縮まり、光酸発生剤から発生する酸が必要以上に大きく拡散しなくなるので、レジストパターン202aはそのラフネスが低減されて、良好なパターン形状となる。
【0051】
なお、第2の実施形態においては、メインポリマーと比べて光酸発生剤に対する親和性が小さいポリマーにポリメチルアクリレートを用いたが、これに限られず、ポリ(1−アダマンチルメタクリレート)、ポリ(1−アダマンチルアクリレート)、ポリ(1−アダマンチル−α−フルオロアクリレート)、ポリメチルメタクリレート又はポリメチル−α−フルオロアクリレート等を用いることができる。
【0052】
また、化学増幅型レジスト材料に含まれるイオン性の光酸発生剤には、トリフェニルスルフォニウムノナフルオロブタンスルフォン酸を用いたが、これに代えて、トリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルフォン酸、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルフォン酸又はジフェニルヨードニウムノナフルオロブタンスルフォン酸等を用いることができる。
【0053】
また、メインポリマーに含まれる酸脱離基には、2−エチルシクロペンチル基を用いたが、これに代えて、t−ブチル基、t−ブチルオキシカルボニル基、1−エトキシエチル基、メトキシメチル基、2−メチルシクロペンチル基、2−メチルアダマンチル基又は2−エチルアダマンチル基等を用いることができる。
【0054】
また、メインポリマーに含まれる親水性基には、δ−ペンチロラクトン含む基を用いたが、これに代えて、1−アダマンタノール、2−アダマンタノール、1,3−ジアダマンタノール、γ−ブチロラクトン又はβ−プロピロラクトン等を含む基を用いることができる。
【0055】
また、露光光には、ArFエキシマレーザ光を用いたが、これに代えて、KrFエキシマレーザ光等を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係るレジスト材料及びそれを用いたパターン形成方法は、レジストパターンに生じるラフネスが低減して良好な形状を有するパターンを実現でき、半導体装置の製造プロセス等の微細パターンの形成等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】(a)は従来の化学増幅型レジスト材料における光酸発生剤の拡散の様子を示す模式図である。(b)は本発明に係る化学増幅型レジスト材料における光酸発生剤の拡散の様子を示す模式図である。
【図2】(a)〜(d)は本発明の第1の実施形態に係るパターン形成方法の各工程を示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るパターン形成方法により得られたレジストパターンの平面図である。
【図4】(a)〜(d)は本発明の第2の実施形態に係るパターン形成方法の各工程を示す断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るパターン形成方法により得られたレジストパターンの平面図である。
【図6】(a)〜(d)は従来のパターン形成方法の各工程を示す断面図である。
【図7】従来のパターン形成方法により得られたレジストパターンの平面図である。
【符号の説明】
【0058】
10 メインポリマー
11 光酸発生剤
12 光酸発生剤に対する親和性が小さい分子又はポリマー
101 基板
102 レジスト膜
102a レジストパターン
103 マスク
201 基板
202 レジスト膜
202a レジストパターン
203 水
204 投影レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン性の光酸発生剤と、
酸脱離基と親水性基とを含む第1のポリマーと、
前記第1のポリマーと比べて前記光酸発生剤に対する親和性が小さい分子又は第2のポリマーとを含むことを特徴とするレジスト材料。
【請求項2】
前記光酸発生剤は、トリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルフォン酸、トリフェニルスルフォニウムノナフルオロブタンスルフォン酸、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルフォン酸又はジフェニルヨードニウムノナフルオロブタンスルフォン酸であることを特徴とする請求項1に記載のレジスト材料。
【請求項3】
前記酸脱離基は、t−ブチル基、t−ブチルオキシカルボニル基、1−エトキシエチル基、メトキシメチル基、2−メチルシクロペンチル基、2−エチルシクロペンチル基、2−メチルアダマンチル基又は2−エチルアダマンチル基であることを特徴とする請求項1に記載のレジスト材料。
【請求項4】
前記親水性基は、1−アダマンタノール、2−アダマンタノール、1,3−ジアダマンタノール、γ−ブチロラクトン、β−プロピロラクトン又はδ−ペンチロラクトンを含む基であることを特徴とする請求項1に記載のレジスト材料。
【請求項5】
前記光酸発生剤に対する親和性が小さい分子又は第2のポリマーは、OH基、COOH基及び環状エステル基を含まないことを特徴とする請求項1に記載のレジスト材料。
【請求項6】
前記光酸発生剤に対する親和性が小さい分子は、アダマンタン、1−ブロモアダマンタン、1,3−ジブロモアダマンタン、1−アダマンチルメタクリレート、1−アダマンチルアクリレート、1−アダマンチル−α−フルオロアクリレート、メチルメタクリレート、メチルアクリレート又はメチル−α−フルオロアクリレートであることを特徴とする請求項5に記載のレジスト材料。
【請求項7】
前記光酸発生剤に対する親和性が小さいポリマーは、ポリ(1−アダマンチルメタクリレート)、ポリ(1−アダマンチルアクリレート)、ポリ(1−アダマンチル−α−フルオロアクリレート)、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート又はポリメチル−α−フルオロアクリレートであることを特徴とする請求項5に記載のレジスト材料。
【請求項8】
基板の上に、イオン性の光酸発生剤と、酸脱離基と親水性基とを含む第1のポリマーと、前記第1のポリマーと比べて前記光酸発生剤に対する親和性が小さい分子又は第2のポリマーとを含むレジスト材料からレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜に露光光を選択的に照射することによりパターン露光を行う工程と、
パターン露光が行われた前記レジスト膜を加熱する工程と、
加熱された前記レジスト膜に対して現像を行って、前記レジスト膜からレジストパターンを形成する工程とを備えていることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項9】
前記露光光は、KrFエキシマレーザ光、ArFエキシマレーザ光、極紫外線又は電子線であることを特徴とする請求項8に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
前記パターン露光を行う工程は、前記レジスト膜の上に液体を配した状態で行うことを特徴とする請求項8に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
前記液体は水であることを特徴とする請求項10に記載のパターン形成方法。
【請求項12】
前記露光光は、KrFエキシマレーザ光又はArFエキシマレーザ光であることを特徴とする請求項10に記載のパターン形成方法。
【請求項13】
前記光酸発生剤は、トリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルフォン酸、トリフェニルスルフォニウムノナフルオロブタンスルフォン酸、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルフォン酸又はジフェニルヨードニウムノナフルオロブタンスルフォン酸であることを特徴とする請求項8又は10に記載のパターン形成方法。
【請求項14】
前記酸脱離基は、t−ブチル基、t−ブチルオキシカルボニル基、1−エトキシエチル基、メトキシメチル基、2−メチルシクロペンチル基、2−エチルシクロペンチル基、2−メチルアダマンチル基又は2−エチルアダマンチル基であることを特徴とする請求項8又は10に記載のパターン形成方法。
【請求項15】
前記親水性基は、1−アダマンタノール、2−アダマンタノール、1,3−ジアダマンタノール、γ−ブチロラクトン、β−プロピロラクトン又はδ−ペンチロラクトンを含む基であることを特徴とする請求項8又は10に記載のパターン形成方法。
【請求項16】
前記光酸発生剤に対する親和性が小さい分子又は第2のポリマーは、OH基、COOH基及び環状エステル基を含まないことを特徴とする請求項8又は10に記載のパターン形成方法。
【請求項17】
前記光酸発生剤に対する親和性が小さい分子は、アダマンタン、1−ブロモアダマンタン、1,3−ジブロモアダマンタン、1−アダマンチルメタクリレート、1−アダマンチルアクリレート、1−アダマンチル−α−フルオロアクリレート、メチルメタクリレート、メチルアクリレート又はメチル−α−フルオロアクリレートであることを特徴とする請求項8又は10に記載のパターン形成方法。
【請求項18】
前記光酸発生剤に対する親和性が小さいポリマーは、ポリ(1−アダマンチルメタクリレート)、ポリ(1−アダマンチルアクリレート)、ポリ(1−アダマンチル−α−フルオロアクリレート)、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート又はポリメチル−α−フルオロアクリレートであることを特徴とする請求項8又は10に記載のパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−197940(P2010−197940A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45645(P2009−45645)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】