説明

レチノイドプロドラッグ化合物

【課題】生体内に吸収された後にレチノイドに変換される性質を有するレチノイドプロドラッグ化合物を提供する。
【解決手段】 下記の一般式(I):


〔R1〜R5は水素原子、アルキル基、又はトリアルキルシリル基を示し、X は-NH-CO-、-CO-NH-、-N(COR6)-CO-、-CO-N(COR7)-(R6及びR7は低級アルコキシ基又はカルボキシ置換フェニル基を示す)などを示し;Zは-Y-CH(R12)-COOH又は-COOR13(Yは単結合、-CH2-、-CH(OH)-、-CO-、-CO-NH-、又は-CO-NH-CH2-CO-NH-を示し、R12は水素原子又は低級アルキル基を示し、R13は水素原子、-CH(R14)-COOH(R14は水素原子、低級アルキル基、又は水酸基を示す)、-[CH2CH2-O]n-CH2-CH2-OH、-CH2-O-[CH2CH2-O]m-CH2-OH、又は-[CH(CH3)-CO-O]p-CH(CH3)-COOH(n、m、又はpは1から100の整数を示す)を示す〕で表される化合物又はその塩、あるいはそのエステル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内においてレチノイン酸などのレチノイドと同様な生理活性を発揮するレチノイドプロドラッグ化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レチノイン酸(ビタミンA酸)はビタミンAの活性代謝産物であり、発生途上にある未熟な細胞を特有な機能を有する成熟細胞へと分化させる作用や、細胞の増殖促進作用や生命維持作用などの極めて重要な生理作用を有している。これまでに合成された種々のビタミンA誘導体、例えば、特開昭61-22047号公報や特開昭61-76440号公報記載の安息香酸誘導体、及びジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(Journal of Medicinal Chemistry, 1988, Vol. 31, No. 11, p.2182)に記載の化合物なども、同様な生理作用を有することが明らかにされている。レチノイン酸及びレチノイン酸様の生物活性を有する上記化合物は「レチノイド」と総称されている。
【0003】
例えば、オール・トランス(all-trans)・レチノイン酸は、細胞核内に存在する核内レセプター・スーパーファミリー (Evans, R.M., Science, 240, p.889, 1988) に属するレチノイン酸レセプター(RAR)にリガンドとして結合して、動物細胞の増殖・分化あるいは細胞死などを制御することが明らかにされている(Petkovich, M., et al., Nature, 330, pp.444-450, 1987)。また、レチノイン酸の生理活性の発現については、レチノイドX レセプター(RXR, 9-cis-レチノイン酸をリガンドとする)の存在が証明されている。レチノイドX レセプターは、レチノイン酸レセプター(RAR) と二量体を形成し、遺伝子の転写を惹起ないし抑制して、レチノイン酸の生理活性の発現を調節していることが明らかにされた(Mangelsdorf, D.J. et al., Nature, 345, pp.224-229) 。
【0004】
レチノイン酸様の生物活性を有する上記化合物(例えば、4-[(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸: Am80など)も、レチノイン酸と同様にRAR に結合して生理活性を発揮することが示唆されている(Hashimoto, Y., Cell struct. Funct., 16, pp.113-123, 1991; Hashimoto, Y., et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 166, pp.1300-1307, 1990を参照)。これらの化合物は、臨床的には、ビタミンA欠乏症、上皮組織の角化症、リウマチ、遅延型アレルギー、骨疾患、及び白血病やある種の癌の治療や予防に有用であることが見出されている。例えば、Am80は再発白血病の治療剤として臨床的に用いられており、4-[3,5-ビス(トリメチルシリル)ベンズアミド]安息香酸(Am555S、特開平2-247185号公報等)は経口投与可能な抗腫瘍剤として米国で臨床開発中である。
【0005】
このようにレチノイドは癌治療薬や皮膚科用薬などに用いられ、そのほかの種々の難治性疾患の治療薬として大きな可能性を有している。しかしながら、現在用いられているレチノイドは副作用などの観点から決して満足すべきものではなく、ターゲット臓器への選択性の増強や酸性基による臓器障害の減少のほか、特に経口投与における消化管への直接作用の軽減などの点で改良が求められている。後者の問題は生体内に吸収された後にレチノイドに変換される性質を有するレチノイドプロドラッグ化合物を提供することにより解決できる可能性があるが、従来、そのような観点で提案された化合物はほとんどない。
【特許文献1】特開昭61-22047号公報
【特許文献2】特開昭61-76440号公報
【特許文献3】特開平2-247185号公報
【非特許文献1】Journal of Medicinal Chemistry, 31, No. 11, p.2182, 1988
【非特許文献2】Cell struct. Funct., 16, pp.113-123, 1991
【非特許文献3】Biochem. Biophys. Res. Commun., 166, pp.1300-1307, 1990
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、生体内に吸収された後にレチノイドに変換される性質を有するレチノイドプロドラッグ化合物を提供することにある。より具体的には、それ自体はレチノイドとしての生理作用を有していないか、あるいは弱いレチノイド作用を有する化合物であって、生体内に吸収された後に酵素的な化学変化を受けて強力なレチノイドに変換されるレチノイドプロドラッグ化合物を提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記の課題を解決すべく鋭意努力した結果、下記の一般式で示される化合物がレチノイドプロドラッグ化合物として極めて有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわり、本発明により、下記の一般式(I):
【化1】

〔式中、R1、R2、R3、R4、及びR5はそれぞれ独立に水素原子、低級アルキル基、又はトリ低級アルキルシリル基を示し、それらのうちの隣接する2つの低級アルキル基は一緒になってそれらが結合するベンゼン環上の炭素原子とともに1又は2以上のアルキル基を有することもある5員環又は6員環を形成してもよく;X は-NH-CO-、-CO-NH-、-N(COR6)-CO-、-CO-N(COR7)-、-CO-N[CON(R8)(R9)]-、又は-N[CON(R10)(R11)](R6及びR7は低級アルコキシ基(該アルコキシ基は置換基を有していてもよい)又はフェニル基(該フェニル基は少なくとも1個のアルコキシカルボニル基又はカルボキシ基を置換基として有し、その他の置換基を有していてもよい)を示し、R8、R9、R10、及びR11はそれぞれ独立に水素原子又は低級アルキル基を示す)を示し;Zは-Y-CH(R12)-COOH又は-COOR13(Yは単結合、-CH2-、-CH(OH)-、-CO-、-CO-NH-、又は-CO-NH-CH2-CO-NH-を示し、R12は水素原子又は低級アルキル基を示し、R13は水素原子、-CH(R14)-COOH(R14は水素原子、低級アルキル基、又は水酸基を示す)、-[CH2CH2-O]n-CH2-CH2-OH(nは1から100の整数を示す)、-CH2-O-[CH2CH2-O]m-CH2-OH(mは1から100の整数を示す)、又は-[CH(CH3)-CO-O]p-CH(CH3)-COOH(pは1から100の整数を示す)を示すが、X が-NH-CO-又は-CO-NH-の場合にはR13は水素原子以外の基を示す〕で表される化合物又はその塩が提供される。
【0009】
上記発明の好ましい態様によれば、XとZがパラ位である上記化合物又はその塩;R1、R4、及びR5が水素原子であり、R2及びR3が低級アルキル基である上記化合物又はその塩;R1、R4、及びR5が水素原子であり、R2及びR3が互いに結合して6員環を形成する上記化合物又はその塩;R1、R4、及びR5が水素原子であり、R2及びR3が互いに結合して5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8- テトラヒドロナフタレン環を形成する上記化合物又はその塩;R1、R3、及びR5が水素原子であり、R2及びR4がトリメチルシリル基である上記化合物又はその塩が提供される。
【0010】
また、さらに好ましい態様によれば、X が-N(COR6)-CO-又は-CO-N(COR7)-(R6又はR7はメトキシ基又はエトキシ基、あるいはカルボキシル基で置換されたフェニル基である)であり、Zが-COOR13(R13は水素原子である)である上記化合物又はその塩;Xが-NH-CO-(該アミド基の炭素原子はZが置換するベンゼン環に結合する)であり、Zが-Y-CH(R12)-COOH(Yは-CH2-、-CH(OH)-、又は-CO-である)又は-COOR13である上記化合物又はその塩が提供される。
【0011】
別の観点からは、上記一般式で表される化合物及び生理学的に許容されるそれらの塩を有効成分として含む医薬が提供される。この医薬は、レチノイド様作用剤として有用である。さらに、上記の医薬の製造のための上記化合物又はその塩の使用が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
上記一般式(I) において、R1、R2、R3、R4、及びR5はそれぞれ独立に水素原子、低級アルキル基、又はトリ低級アルキルシリル基を示す。低級アルキル基としては、炭素数1ないし6個程度、好ましくは炭素数1ないし4個の直鎖又は分枝鎖のアルキル基を用いることができる。例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、又はtert- ブチル基などを用いることができる。本明細書において言及する他の低級アルキル基についても同様であり、アルキル部分を有する置換基(例えばアルコキシ基)のアルキル部分についても同様である。トリ低級アルキルシリル基としては例えばトリメチルシリル基が好ましい。例えば、R1、R4、及びR5が水素原子であり、R2及びR3が低級アルキル基であることが好ましい。また、R1、R3、及びR5が水素原子であり、R2及びR4がトリ低級アルキルシリル基であることが好ましく、R1、R3、及びR5が水素原子であり、R2及びR4がトリメチルシリル基であることがさらに好ましい。
【0013】
R1、R2、R3、R4、及びR5からなる群から選ばれる隣接する2つの低級アルキル基が一緒になって、それらが結合するベンゼン環上の炭素原子とともに1又は2以上のアルキル基を有することもある5員環又は6員環を1個又は2個、好ましくは1個形成してもよい。環上に置換可能なアルキル基としては、炭素数1ないし6個程度、好ましくは炭素数1ないし4個の直鎖又は分枝鎖のアルキル基を用いることができる。例えば、メチル基、エチル基などを用いることができ、好ましくは2〜4個のメチル基、さらに好ましくは4個のメチル基が置換していてもよい。例えば、R2及びR3が置換するベンゼン環とR2及びR3とにより、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン環や5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8- テトラヒドロナフタレン環などが形成されることが好ましい。
【0014】
X は-NH-CO-、-CO-NH-、-N(COR6)-CO-、-CO-N(COR7)-、-CO-N[CON(R8)(R9)]-、又は-N[CON(R10)(R11)]を示し、R6及びR7は置換基を有していてもよい低級アルコキシ基を示すか、フェニル基(該フェニル基は少なくとも1個のアルコキシカルボニル基又はカルボキシ基を置換基として有し、その他の置換基を有していてもよい)を示し、R8、R9、R10、及びR11はそれぞれ独立に水素原子又は低級アルキル基を示す。XとZとはこれらが結合するベンゼン環上においてパラ位であることが好ましい。X としては-NH-CO-(該アミド基の炭素原子はZが置換するベンゼン環に結合する)が好ましい。X が-N(COR6)-CO-、-CO-N(COR7)-、-CO-N[CON(R8)(R9)]-、又は-N[CON(R10)(R11)]を示す場合にはZが-COOHであることが好ましい。Xが-NH-CO-(該アミド基の炭素原子はZが置換するベンゼン環に結合する)である場合には、Zは-Y-CH(R12)-COOH(Yは-CH2-、-CH(OH)-、又は-CO-であることが好ましく、Yが-CH2-であることがより好ましい)又は-COOR13(R13は水素原子以外の基である)であることが好ましい。m、n、及びpはそれぞれ1〜100の整数を示すが、それぞれ5〜50程度、より好ましくは5〜30程度の範囲であってもよい。
【0015】
上記化合物は塩基付加塩を形成する場合があり、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、若しくはカルシウム塩などの金属塩、アンモニウム塩、又はトリエチルアミン塩若しくはエタノールアミン塩などの有機アミン塩などとして存在することがあるが、このような塩のうち、生理学的に許容される塩を本発明の医薬の有効成分として用いることができる。また、上記化合物では、Z部位に存在するカルボキシル基がエステルを形成していてもよい。本明細書において、「化合物又はその塩、あるいはそのエステル」と呼ぶ場合のエステルはZ部位に存在するカルボキシル基がエステルを形成する場合を意味する。
【0016】
上記エステルとしては生理学的に許容されるエステルが好ましい。好適なエステル残基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ベンジル基、アセトキシメチル基、1-(アセトキシ)エチル基、プロピオニルオキシメチル基、1-(プロピオニルオキシ)エチル基、ブチリルオキシメチル基、1-(ブチリルオキシ)エチル基、イソブチリルオキシメチル基、1-(イソブチリルオキシ)エチル基、バレリルオキシメチル基、1-(バレリルオキシ)エチル基、イソバレリルオキシメチル基、1-(イソバレリルオキシ)エチル基、ピバロイルオキシメチル基、1-(ピバロイルオキシ)エチル基、メトキシカルボニルオキシメチル基、1-(メトキシカルボニルオキシ)エチル基、エトキシカルボニルオキシメチル基、1-(エトキシカルボニルオキシ)エチル基、プロポキシカルボニルオキシメチル基、1-(プロポキシカルボニルオキシ)エチル基、イソプロポキシカルボニルオキシメチル基、1-(イソプロポキシカルボニルオキシ)エチル基、ブトキシカルボニルオキシメチル基、1-(ブトキシカルボニルオキシ)エチル基、イソブトキシカルボニルオキシメチル基、1-(イソブトキシカルボニルオキシ)エチル基、t-ブトキシカルボニルオキシメチル基、1-(t-ブトキシカルボニルオキシ)エチル基、シクロペンタンカルボニルオキシメチル基、1-(シクロペンタンカルボニルオキシ)エチル基、シクロヘキサンカルボニルオキシメチル基、1-(シクロヘキサンカルボニルオキシ)エチル基、シクロペンチルオキシカルボニルオキシメチル基、1-(シクロペンチルオキシカルボニルオキシ)エチル基、シクロヘキシルオキシカルボニルオキシメチル基、1-(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)エチル基、ベンゾイルオキシメチル基、1-(ベンゾイルオキシ)エチル基、フェノキシカルボニルオキシメチル基、1-(フェノキシカルボニルオキシ)エチル基、(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メチル基、又は2-トリメチルシリルエチル基などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。
【0017】
また、本発明の化合物は、置換基の種類に応じて1個または2個以上の不斉炭素を有する場合があるが、これらの不斉炭素に基づく任意の光学異性体、光学異性体の任意の混合物、ラセミ体、2個以上の不斉炭素に基づくジアステレオ異性体、ジアステレオ異性体の任意の混合物などは、いずれも本発明の範囲に包含される。さらに、遊離化合物又は塩の形態の化合物の任意の水和物又は溶媒和物も本発明の範囲に包含される。
【0018】
本発明の化合物のうち、好ましい化合物として以下の化合物を挙げることができるが、本発明の化合物、又は本発明の医薬の有効成分として利用可能な化合物は下記の化合物に限定されることはない。例示化合物中、Meはメチル基、Etはエチル基、nは例えば12程度の整数を示す(分子量600のPEGを用いた場合にはnは約12.2となる)。
【0019】
【化2】

【0020】
【化3】

【0021】
上記の一般式(I)で表される化合物の製造方法については、上記の化合物のうちの代表的化合物についての合成例が本明細書の実施例に具体的かつ詳細に示されている。また、R1、R2、R3、R4、及びR5が置換するベンゼン環の修飾については、例えばAm80やAm555Sの製造方法を記載した公知文献を参考にすることができる。従って、これらの実施例や公知文献を参照することにより、さらに必要に応じてこれらの方法に適宜の改変や修飾を加えることにより、上記一般式(I)に包含される任意の化合物を当業者は容易に製造することが可能である。
【0022】
上記の一般式(I)で表される化合物は、それ自体はレチノイドとしての生理作用を有していないか、あるいは弱いレチノイド作用を有する化合物であり、生体内に吸収された後に酵素的な化学変化を受けて強力なレチノイドに変換され、レチノイドレセプターに結合してレチノイド様の作用を発揮する。本明細書において用いられる「レチノイドレセプター」という用語は、レチノイン酸レセプターRAR 及びRXR を包含しており、レチノイン酸などのレチノイドが相互作用可能なレセプターの1種又は2種以上を意味している。上記化合物はレチノイドのプロドラッグとして有用であり、上記化合物を有効成分として含む医薬は、レチノイド作用剤として有用である。いかなる特定の理論に拘泥するわけではないが、本発明の一般式(I)で表される化合物がレチノイド様の作用を発揮するためには、上記一般式(I)においてZがカルボキシル基の化合物に代謝される必要があり、このカルボキシル基を有する化合物が活性代謝物となってレチノイド様の作用を発揮する。レチノイド様作用を有する上記活性代謝物は、例えば、細胞分化作用、細胞増殖促進作用、及び生命維持作用などを有しており、ビタミンA欠乏症、上皮組織の角化症、乾癬、アレルギー疾患、リウマチなどの免疫性疾患、骨疾患、白血病、又は癌に対して予防及び/又は治療作用を発揮する。
【0023】
上記の一般式(I)で表される化合物をレチノイドプロドッラッグ化合物として含む医薬は、上記の一般式式(I)で表される化合物及びその塩、並びにそれらの水和物及び溶媒和物からなる群から選ばれる物質の1種または2種以上を有効成分として含んでいる。本発明の医薬としては上記物質それ自体を投与してもよいが、好ましくは、当業者に周知の方法によって製造可能な経口用あるいは非経口用の医薬組成物として投与することができる。経口投与に適する医薬用組成物としては、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、液剤、及びシロップ剤等を挙げることができ、非経口投与に適する医薬組成物としては、例えば、注射剤、坐剤、吸入剤、点眼剤、点鼻剤等を挙げることができる。
【0024】
上記の医薬組成物は、薬理学的、製剤学的に許容しうる添加物を加えて製造することができる。薬理学的、製剤学的に許容しうる添加物の例としては、例えば、賦形剤、崩壊剤ないし崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤ないし溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴射剤、及び粘着剤等を挙げることができる。
【0025】
本発明の医薬の投与量は特に限定されず、その作用の種類や作用の強弱などに応じて適宜選択することができ、さらに患者の体重や年齢、疾患の種類や症状、投与経路など通常考慮すべき種々の要因に応じて、適宜増減することができる。一般的には、レチノイン酸などを医薬として用いる場合の投与量に準じて、プロドラッグの吸収効率や代謝効率を勘案して適宜選択することが可能である。例えば、経口投与の場合には成人一日あたり 0.01 〜1,000 mg程度の範囲で用いることができる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例の範囲に限定されることはない。
例1:2-[2-(2-ヒドロキシ)エトキシ]エチル 4-[(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフチル)カルバモイル]ベンゾアート
【化4】

氷冷したAm-80 (1, 40 mg, 0.114 mmol)とトリエチルアミン(48 μl, 0.345 mmol)のジクロロメタン(2.5 ml)溶液にクロロギ酸イソブチル(16 μl, 0.123 mmol)を添加し、1時間攪拌した。この反応液にトリエチレングリコール(152 μl, 1.14 mmol)を加え、さらに室温にて16時間攪拌した。飽和重曹水を加え、酢酸エチルにて抽出した。有機層を水洗、無水硫酸ナトリウム上で乾燥後、溶媒を留去し残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(7-10% メタノール−クロロホルムにて溶出)で精製することにより表記化合物2を44 mg (80%)得た。
無色微細針状晶、融点123.5-124.5℃ (ジクロロメタン−ヘキサン)
MS (m/z): 483 (M+, 15), 468 (21), 378 (4), 318 (13), 291 (7), 149 (15), 104 (16), 89 (9), 75 (8), 58 (8), 45 (100), 31 (14)
IR (KBr) cm-1: 1711, 1646
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.28 (6H, s), 1.30 (6H, s), 1.69 (4H, s), 2.48 (1H, br s, OH), 3.58-3.64 (2H, m), 3.66-3.75 (6H, m), 3.84-3.89 (2H, m), 4.50-4.55 (2H, m), 7.31 (1H, d, J=8.5 Hz), 7.45 (1H, dd, J=8.5, 2.5 Hz), 7.55 (1H, d, J=2.5 Hz), 7.92 (2H, A2B2, J=8 Hz), 7.94 (1H, br s, CONH), 8.15 (2H, A2B2, J=8 Hz).
【0027】
例2:Am-80のヘキサエチレングリコールエステル
【化5】

上記と全く同様にしてAm-80 (1, 40 mg, 0.114 mmol)とヘキサエチレングリコール(322 mg, 1.14 mmol)から表記化合物3 (49 mg, 70%)を得た。
無色ガラス状物質
MS (m/z): 615 (M+, 5), 600 (2), 378 (3), 362 (3), 334 (3), 318 (3), 291 (4), 193 (3), 149 (4), 133 (4), 104 (7), 89 (21), 45 (100)
IR (CHCl3) cm-1: 1713, 1669
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.28 (6H, s), 1.30 (6H, s), 1.69 (4H, s), 2.28 (1H, br s, OH), 3.55-3.74 (20H, m), 3.82-3.88 (2H, m), 4.47-4.53 (2H, m), 7.30 (1H, d, J=8.5 Hz), 7.46 (1H, dd, J=8.5, 2.5 Hz), 7.57 (1H, d, J=2.5 Hz), 7.94 (2H, A2B2, J=8 Hz), 8.14 (2H, A2B2, J=8 Hz), 8.20 (1H, br s, CONH).
【0028】
例3:Am-80のポリエチレングリコール(平均分子量600)エステル
【化6】

上記と全く同様にしてAm-80 (1, 60 mg, 0.171 mmol)とポリエチレングリコール(1.026 g, 約1.71 mmol)から表記化合物4 (132 mg, 約83%)を得た。
無色飴状物質
MS (m/z): 703 (corresponding to octaethylene derivative, 0.3), 672 (0.3), 615 (0.3), 351 (24), 336 (100), 149 (68), 121 (23), 104 (21), 65 (28), 45 (33)
IR (CHCl3) cm-1: 1713, 1668
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.27 (6H, s), 1.28 (6H, s), 1.68 (4H, s), 3.00 (1H, br s, OH), 3.55-3.73 (ca. 45H, m), 3.81-3.87 (2H, m), 4.46-4.52 (2H, m), 7.28 (1H, d, J=8.5 Hz), 7.51 (1H, dd, J=8.5, 2 Hz), 7.62 (1H, d, J=2 Hz), 8.01 (2H, A2B2, J=8 Hz), 8.10 (2H, A2B2, J=8 Hz), 8.74 (1H, br s, CONH).
【0029】
例4:(S)-1-(ベンジルオキシカルボニル)エチル 4-[[3,5-ジ(トリメチルシリル)フェニル]カルバモイル]ベンゾアート
【化7】

Am-55S (3, 60 mg, 0.156 mmol)とL-乳酸ベンジル (31 mg, 0.172 mmol)のジクロロメタン(3 ml)溶液にジシクロヘキシルカルボジイミド(39 mg, 0.189 mmol)と4-ジメチルアミノピリジン(2 mg, 16.4 μmol)を添加し、室温下5時間攪拌した。飽和重曹水を加え、酢酸エチルにて抽出した。有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウム上乾燥した後、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルムにて溶出)で精製することにより表記化合物4を56 mg (66%)得た。
無色飴状物
MS (m/z): 547 (M+, 18), 368 (4), 311 (5), 104 (6), 91 (100), 73 (11). IR (CHCl3) cm-1: 1721, 1671
1H-NMR (CDCl3) δ: 0.29 (18H, s), 1.65 (3H, d, J=7 Hz), 5.17 (1H, d, J=12.5 Hz), 5.23 (1H, d, J=12.5 Hz), 7.30-7.37 (5H, m), 7.46 (1H, t, J=0.5 Hz), 7.80 (2H, br s), 7.93 (2H, A2B2, J=8.5 Hz), 8.13 (2H, A2B2, J=8.5 Hz), 8.13 (1H, br s, CONH).
【0030】
例5:(S)-1-(カルボキシル)エチル 4-[[3,5-ジ(トリメチルシリル)フェニル]カルバモイル]ベンゾアート
【化8】

上記で得た化合物6 (54 mg, 98.7 μmol)とパラジウム-炭素 (10%, 6 mg)のメタノール(4 ml) 懸濁液を大気圧の水素雰囲気下30分間接触還元した。反応液をセライトろ過し、セライトを10% メタノール-クロロホルムにて洗浄した。溶媒を留去後得られる結晶を再結晶することにより、表記化合物7 (38 mg, 84%)を得た。
無色鱗片状晶、融点198-200℃ (ジクロロメタン−ヘキサン)
MS (m/z): 457 (M+, 89), 370 (93), 221 (33), 176 (39), 149 (60), 129 (29), 104 (35), 75 (29), 73 (100)
IR (CHCl3) cm-1: 1720, 1709, 1644, 1626
1H-NMR (CDCl3) δ: 0.30 (18H, s), 1.72 (3H, d, J=7 Hz), 5.42 (1H, q, J=7 Hz), 7.46 (1H, br s), 7.77 (2H, br s), 7.80 (1H, br s, CONH), 7.97 (2H, A2B2, J=8.5 Hz), 8.21 (2H, A2B2, J=8.5 Hz).
【0031】
例6:(S)-O-tert-ブチル乳酸ベンジルエステル
【化9】

(S)-乳酸ベンジルエステル (18.0 g, 0.100 mol)と二炭酸ジ-t-ブチル (54.5 g, 0.250 mol)のジクロロメタン(100 ml)溶液に過塩素酸マグネシウム (2.23 g, 10 mmol)を加え、24時間加熱還流した。放冷後、反応液を飽和重曹水に注ぎ、酢酸エチルにて抽出した。有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥した後、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー [ヘキサン-酢酸エチル(19:1) にて溶出]で精製することにより、回収原料 (3.11 g, 17%) とともに表記化合物8 (18.4 g, 78%)を無色油状物として得た。
IR (neat) cm-1: 1747
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.18 (9H, s), 1.35 (3H, d, J=7 Hz), 4.16 (1H, q, J=7 Hz), 5.13 (1H, d, J=12.5 Hz), 5.19 (1H, d, J=12.5 Hz), 7.29-7.42 (5H, m).
【0032】
例7:O-t-ブチル乳酸二量体ベンジルエステルの調製
【化10】

上記で得た化合物8 (660 mg, 2.80 mmol) とパラジウム-炭素 (10%, 42 mg)のメタノール (12 ml) 懸濁液を大気圧の水素雰囲気下1時間接触還元した。反応液をセライトろ過し、セライトを10% メタノール-クロロホルムにて洗浄。溶媒を留去後382 mgの残渣を得た。この残渣と乳酸ベンジル (471 mg, 2.62 mmol) のジクロロメタン(8 ml) 溶液にジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC, 664 mg, 3.22 mmol)と4-ジメチルアミノピリジン(15 mg, 0.123 mmol)を添加し、室温下27時間攪拌した。反応液を氷浴にて冷却後、エチルアルコール(0.45 ml, 7.72 mmol)と酢酸 (0.12 ml, 2.10 mmol)を添加し、攪拌して過剰のDCCを分解した。飽和重曹水を加え、セライトろ過し、酢酸エチルにて抽出した。有機層を水洗、無水硫酸ナトリウム上乾燥後、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン-酢酸エチル(6:1) にて溶出]で精製することにより表記化合物9 (688 mg, 80%)を無色粘稠性油状物として得た。
IR (neat) cm-1: 1747
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.19 (9H, s), 1.35 (3H, d, J=7 Hz), 1.52 (3H, d, J=7 Hz), 4.18 (1H, q, J=7 Hz), 5.16 (2H, s), 5.19 (1H, q, J=7 Hz), 7.30-7.40 (5H, m).
【0033】
例8:O-t-ブチル乳酸四量体ベンジルエステルの調製
【化11】

上記で得た化合物9 (80 mg, 0.260 mmol) のジクロロメタン(0.8 ml) 溶液を氷冷し、トリフロロ酢酸 (0.20 ml) を添加して30分間攪拌し、さらに室温下30分間攪拌した。飽和重曹水を加え、酢酸エチルにて抽出した。無水硫酸ナトリウム上で乾燥した後、溶媒を留去し、67 mgの残渣-1を得た。一方、9 (80 mg, 0.260 mmol) とパラジウム-炭素 (10%, 5 mg)のメタノール (3 ml) 懸濁液を大気圧の水素雰囲気下1時間接触還元した。常法処理して60 mgの残渣-2を得た。残渣-1と残渣-2とを併せてジクロロメタン(2.5 ml) に溶解し、ジシクロヘキシルカルボジイミド(60 mg, 0.291 mmol)と4-ジメチルアミノピリジン(3 mg, 24.6 μmol)を添加し、室温下18時間攪拌した。常法で処理した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン-酢酸エチル(5:1) にて溶出]で精製することにより表記化合物10 (99 mg, 84%)を無色粘稠性油状物として得た。
IR (neat) cm-1: 1748, 1670
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.21 (9H, s), 1.39 (3H, d, J=7 Hz), 1.517 (3H, d, J=7 Hz), 1.520 (3H, d, J=7 Hz), 1.57 (3H, d, J=7 Hz), 4.20 (1H, q, J=7 Hz), 5.10-5.23 (5H, m), 7.28-7.40 (5H, m).
【0034】
例9:Am-55s (5)の乳酸四量体エステル(ベンジルエステル)
【化12】

上記で得た化合物10 (84 mg, 0.186 mmol) のジクロロメタン(0.8 ml) 溶液を氷冷し、トリフルオロ酢酸 (0.20 ml) を添加して15分間攪拌、さらに室温下45分間攪拌した。飽和重曹水を加え、酢酸エチルにて抽出した。無水硫酸ナトリウム上乾燥後、溶媒を留去し、74 mgの残渣-1を得た。この残渣と5 (72 mg, 0.187 mmol) ジクロロメタン(4 ml) 溶液にジシクロヘキシルカルボジイミド(46 mg, 0.223 mmol)と4-ジメチルアミノピリジン(2 mg, 16.4 μmol)を添加し、室温下4時間攪拌した。常法で処理した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[ベンゼン-酢酸エチル(14:1) にて溶出]で精製することにより表記化合物11 (105 mg, 74%)を無色粘稠性油状物として得た。
MS (m/z): 763 (M+, 12), 512 (2), 440 (2), 368 (17), 176 (9), 104 (9), 91 (100), 73 (15), 56 (11)
IR (CHCl3) cm-1: 1748, 1672
1H-NMR (CDCl3) δ: 0.29 (18H, s), 1.50 (3H, d, J=7.5 Hz), 1.51 (3H, d, J=7 Hz), 1.59 (3H, d, J=7.5 Hz), 1.72 (3H, d, J=7 Hz), 5.08-5.24 (5H, m), 5.37 (1H, q, J=7 Hz), 7.28-7.39 (5H, m), 7.45 (1H, dif t, J=1 Hz), 7.80 (2H, br s), 7.92 (2H, A2B2, J=8.5 Hz), 8.12 (2H, A2B2, J=8.5 Hz), 8.22 (1H, br s, CONH).
【0035】
例10:Am-55s (5)の乳酸四量体エステル(カルボン酸)
【化13】

上記で得た化合物11 (102 mg, 0.134 mmol) パラジウム-炭素 (10%, 10 mg)のメタノール (5 ml) 懸濁液を大気圧の水素雰囲気下30分間接触還元した。常法で処理した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム〜メタノール-クロロホルム(19:1) にて溶出]で精製することにより表記化合物12 (89 mg, 99%)を無色泡状物として得た。
MS (m/z): 673 (M+, 69), 601 (42), 370 (79), 368 (71), 296 (45), 176 (88), 149 (62), 104 (65), 73 (100), 55 (58), 45 (49)
IR (KBr) cm-1: 1753, 1726, 1652
1H-NMR (CDCl3) δ: 0.31 (18H, s), 1.56 (3H, d, J=7 Hz), 1.57 (3H, d, J=7.5 Hz), 1.62 (3H, d, J=7 Hz), 1.73 (3H, d, J=7.5 Hz), 5.12-5.28 (3H, m), 5.40 (1H, q, J=7 Hz), 7.46 (1H, br s), 7.76 (2H, br s), 7.87 (1H, br s, CONH), 7.95 (2H, A2B2, J=8 Hz), 8.19 (2H, A2B2, J=8 Hz).
【0036】
例11:Am-81 (13)のN-エトキシカルボニル体 (14)
【化14】

Am-81 (13, 110 mg, 0.301 mmol) のDMF (3 ml)溶液を氷冷し、水素化ナトリウム(60%, 30 mg, 0.750 mmol) を添加して10分間攪拌した。クロロ蟻酸エチル (72 μl, 0.753 mmol)を添加して、さらに氷冷下2時間攪拌。飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルにて抽出した。有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥した後、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ベンゼン-酢酸エチル(119:1)にて溶出]で精製、再結晶することにより表記化合物14 (96 mg, 73%)を回収13 (23 mg, 21%)と共に得た。
14: 無色微細針状晶、融点131-132℃ (ジクロロメタン−ヘキサン)。
MS (m/z): 437 (M+, 17), 422 (10), 350 (7), 229 (10), 214 (72), 163 (100), 135 (19), 103 (13), 43 (11), 29 (16)
IR (KBr) cm-1: 1736, 1722, 1687
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.04 (3H, t, J=7 Hz), 1.23 (6H, s), 1.28 (6H, s), 1.68 (4H, s), 3.94 (3H, s), 4.12 (2H, q, J=7 Hz), 6.98 (1H, dd, J=8, 2.5 Hz), 7.09 (1H, d, J=2.5 Hz), 7.33 (1H, d, J=8 Hz), 7.72 (2H, A2B2, J=8 Hz), 8.08 (2H, A2B2, J=8 Hz).
【0037】
例12:Am-580エチルエステル (15)のN-エトキシカルボニル体 (16)
【化15】

上記14調製時と同様にして15 (120 mg, 0.317 mmol)より169 mgの反応混合物を得た。これをエチルアルコール(3 ml)に溶解し、50℃にて1.5時間過熱攪拌後、溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ベンゼン-酢酸エチル(79:1)にて溶出]で精製して再結晶することにより表記化合物16 (120 mg, 84%)を回収15 (12 mg, 10%)と共に得た。
16: 無色プリズム晶、融点125-126℃ (ジクロロメタン−ヘキサン)
MS (m/z): 451 (M+, 1), 406 (1), 215 (100), 172 (4), 157 (5), 43 (4)
IR (KBr) cm-1: 1737, 1708, 1688
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.02 (3H, t, J=7 Hz), 1.25 (6H, s), 1.28 (6H, s), 1.38 (3H, t, J=7 Hz), 1.68 (4H, s), 4.13 (2H, q, J=7 Hz), 4.37 (2H, q, J=7 Hz), 7.31 (2H, A2B2, J=8 Hz), 7.35 (1H, d, J=8 Hz), 7.49 (1H, dd, J=8, 2 Hz), 7.67 (1H, d, J=2 Hz), 8.08 (2H, A2B2, J=8 Hz).
【0038】
実施例13:Am-580のプロピオン酸エステル類縁体 (18)
【化16】

化合物17 (39 mg, 0.168 mmol) のベンゼン(2.5 ml)溶液に塩化チオニル(122 μl, 1.67 mmol)とDMF (1滴) を加え、1時間加熱還流した。揮発性物を留去後、ベンゼン(3 ml)を添加、再度留去して残渣を減圧下乾燥した。この残渣のジクロロメタン(1 ml) 溶液を氷冷し、この中に3-(4-アミノフェニル)プロピオン酸メチル (36 mg, 0.201 mmol)とトリエチルアミン(117 μl, 0.841 mmol) のジクロロメタン(2 ml) 溶液を添加し、0℃にて30分、さらに室温下16時間攪拌した。飽和重曹水を加え酢酸エチルにて抽出した。有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥した後、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルムにて溶出)で精製、再結晶することにより表記化合物18 (55 mg, 83%)を回収17 (6 mg, 15%)と共に得た。
18: 無色針状晶、融点118.5-119.5℃ (ジクロロメタン−ヘキサン)
MS (m/z): 393 (M+, 15), 249 (4), 215 (100), 172 (5), 157 (10), 91 (6), 43 (9)
IR (KBr) cm-1: 1731, 1638
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.29 (6H, s), 1.30 (6H, s), 1.70 (4H, s), 2.61 (2H, t, J=8 Hz), 2.92 (2H, t, J=8 Hz), 3.66 (3H, s), 7.17 (2H, A2B2, J=8.5 Hz), 7.36 (1H, d, J=8 Hz), 7.55 (1H, dd, J=8, 2 Hz), 7.56 (2H, A2B2, J=8.5 Hz), 7.86 (1H, d, J=2 Hz), 7.99 (1H, br s, CONH).
【0039】
例14:Am-580のプロピオン酸類縁体 (19)
【化17】

上記で得た化合物18 (30 mg, 76.3 μmol)をメタノール−1,2−ジメトキシエタン−水 (3:2:1, 3ml)に溶解し、水酸化リチウム一水和物 (6.5 mg, 0.155 mmol) を加えて1時間加熱還流した。反応溶液を氷冷後、塩酸水 (1 N, 155 μl, 0.155 mmol) を加えて酢酸エチルにて抽出した。有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥した後、溶媒を留去した。残渣を再結晶することにより表記化合物19 (28 mg, 97%)を得た。
無色プリズム晶、融点172.5-174℃ (ジクロロメタン−ヘキサン)
MS (m/z): 379 (M+, 15), 215 (100), 157 (12), 131 (5), 128 (6), 91 (5), 43 (12)
IR (KBr) cm-1: 1704, 1638
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.30 (6H, s), 1.32 (6H, s), 1.71 (4H, s), 2.68 (2H, t, J=8 Hz), 2.96 (2H, t, J=8 Hz), 7.22 (2H, A2B2, J=8.5 Hz), 7.39 (1H, d, J=8 Hz), 7.54 (1H, dd, J=8, 2 Hz), 7.57 (2H, A2B2, J=8.5 Hz), 7.75 (1H, br s, CONH), 7.85 (1H, d, J=2 Hz).
【0040】
例15:Am-80のプロピオン酸エステル類縁体 (21)
【化18】

4-[2-(メトキシカルボニル)エチル]安息香酸 (77 mg, 0.370 mmol) と塩化チオニル(135 μl, 1.85 mmol)のベンゼン溶液(3 ml)を1時間加熱還流した。実施冷13と同処理を行ない酸塩化物を得た。これをジクロロメタン(1 ml)に溶解し、この溶液中に20 (50 mg, 0.246 mmol)とトリエチルアミン(171 μl, 1.23 mmol)のジクロロメタン(1 ml)溶液を氷冷下滴下し10分間攪拌後、さらに室温にて4時間攪拌した。飽和重曹水を加え酢酸エチルにて抽出した。有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥した後、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ベンゼン-酢酸エチル(8:1)にて溶出]で精製、再結晶することにより表記化合物21 (94 mg, 97%)を得た。
21: 無色プリズム晶、融点135-136℃ (ジクロロメタン−ヘキサン)
MS (m/z): 393 (M+, 35), 378 (100), 362 (5), 191 (76), 131 (35), 103 (18), 91 (10), 59 (7), 43 (10)
IR (KBr) cm-1: 1707, 1659
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.28 (6H, s), 1.30 (6H, s), 1.69 (4H, s), 2.67 (2H, t, J=7.5 Hz), 3.02 (2H, t, J=7.5 Hz), 3.68 (3H, s), 7.30 (1H, d, J=8.5 Hz), 7.32 (2H, A2B2, J=8 Hz), 7.41 (1H, dd, J=8.5, 2.5 Hz), 7.53 (1H, d, J=2.5 Hz), 7.69 (1H, br s, CONH), 7.80 (2H, A2B2, J=8 Hz).
【0041】
例16:Am-80のプロピオン酸類縁体 (22)
【化19】

例14と同様にして21 (50 mg, 0.127 mmol)を水酸化リチウムにて加水分解して後処理後、残渣を再結晶することにより表記化合物22 (45 mg, 93%)を得た。
無色針状晶、融点229-230℃ (メタノール−ジクロロメタン)
MS (m/z): 379 (M+, 33), 364 (100), 177 (92), 131 (14), 107 (22), 103 (20), 77 (16)
IR (KBr) cm-1: 1711, 1616
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.28 (6H, s), 1.30 (6H, s), 1.69 (4H, s), 2.72 (2H, t, J=7.5 Hz), 3.04 (2H, t, J=7.5 Hz), 7.30 (1H, d, J=8.5 Hz), 7.33 (2H, A2B2, J=8.5 Hz), 7.41 (1H, dd, J=8.5, 2 Hz), 7.53 (1H, d, J=2 Hz), 7.73 (1H, br s, CONH), 7.80 (2H, A2B2, J=8.5 Hz).
【0042】
例17:Am-80とアラニンメチルエステルの縮合
【化20】

氷冷したAm-80 (1, 60 mg, 0.171 mmol)とトリエチルアミン(95 μl, 0.683 mmol)のジクロロメタン(3 ml)溶液にクロロギ酸イソブチル(24 μl, 0.185 mmol)を添加し、1時間攪拌した。この反応液にL-アラニンメチルエステル塩酸塩(29 mg, 0.208 mmol)を加え、さらに室温にて16時間攪拌した。飽和重曹水を加え、酢酸エチルにて抽出した。有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥した後、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマト(5-10% メタノール−クロロホルムにて溶出)で精製することにより表記化合物23 (64 mg, 86%)を回収1 (6.5 mg, 11%)と共に得た。
23: 無色飴状物質
MS (m/z): 436 (M+, 58), 421 (84), 334 (17), 318 (100), 234 (26), 174 (23), 104 (62), 76 (25), 43 (34)
IR (CHCl3) cm-1: 1733, 1657
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.27 (12H, s), 1.50 (3H, d, J=7 Hz), 1.68 (4H, s), 3.75 (3H, s), 4.74 (1H, dq, J=7.5, 7 Hz), 7.22 (1H, br d, J=7.5 Hz, NH), 7.27 (1H, d, J=8.5 Hz), 7.51 (1H, dd, J=8.5, 2 Hz), 7.65 (2H, A2B2, J=8.5 Hz), ca. 7.64-7.67 (1H, m), 7.73 (2H, A2B2, J=8.5 Hz), 8.69 (1H, br s, CONH).
【0043】
例18:Am-80とアラニンメチルエステル縮合体の加水分解
【化21】

例14と同様にして、上記で得た化合物23 (61 mg, 0.140 mmol)をメタノール−1,2−ジメトキシエタン−水 (3:2:1, 3ml)に溶解し、水酸化リチウム一水和物 (7 mg, 0.167 mmol) を加えて1時間加熱還流した。反応溶液を氷冷後、塩酸水 (1 N, 167 μl, 0.167 mmol) を加えて酢酸エチルにて抽出した。有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥した後、溶媒を留去した。残渣を再結晶することにより表記化合物24 (51 mg, 86%)を得た。
無色プリズム晶、融点197-198℃ (ジクロロメタン−酢酸エチル)
MS (m/z): 422 (M+, 57), 407 (89), 318 (100), 220 (34), 174 (30), 104 (73), 76 (36), 43 (45)
IR (KBr) cm-1: 1720, 1660, 1624
1H-NMR (DMSO-d6) δ: 1.23 (6H, s), 1.24 (6H, s), 1.41 (3H, d, J=7 Hz), 1.64 (4H, s), 4.43 (1H, dq, J=7, 7 Hz), 7.28 (1H, d, J=8.5 Hz), 7.57 (1H, dd, J=8.5, 2 Hz), 7.67 (1H, d, J=2 Hz), 7.99 (2H, A2B2, J=8.5 Hz), 8.04 (2H, A2B2, J=8.5 Hz), 8.81 (1H, d, J=7 Hz, NH), 10.19 (1H, br s, CONH).
【0044】
例19:Am-80とグリシジルグリシンメチルエステルの縮合
【化22】

例17と同様にして、Am-80 (1, 60 mg, 0.171 mmol) をグリシジルグリシンメチルエステル塩酸塩(38 mg, 0.208 mmol)と縮合した。後処理後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(5-10% メタノール−クロロホルムにて溶出)で精製することにより表記化合物25 (58 mg, 71%)を回収1 (9 mg, 15%)と共に得た。
25: 無色針状晶、融点240-242℃ (メタノール−ジクロロメタン)
MS (m/z): 479 (M+, 92), 464 (48), 375 (56), 334 (30), 318 (100), 291 (26), 160 (67), 104 (89), 88 (42)
IR (KBr) cm-1: 1745, 1655, 1637
1H-NMR (DMSO-d6) δ: 1.23 (6H, s), 1.24 (6H, s), 1.64 (4H, s), 3.62 (3H, s), 3.87 (2H, d, J=6 Hz), 3.94 (2H, d, J=6 Hz), 7.28 (1H, d, J=8.5 Hz), 7.57 (1H, dd, J=8.5, 2 Hz), 7.67 (1H, d, J=2 Hz), 8.00 (2H, A2B2, J=9 Hz), 8.04 (2H, A2B2, J=9 Hz), 8.38 (1H, t, J=6 Hz, NH), 8.95 (1H, t, J=6 Hz, NH), 10.19 (1H, br s, CONH).
【0045】
例20:Am-80とグリシジルグリシンメチルエステル縮合体の加水分解
【化23】

例18と同様にして、上記で得た化合物25 (50 mg, 0.104 mmol)を水酸化リチウム一水和物 (6 mg, 0.143 mmol) で加熱還流下に加水分解した。常法処理後、残渣を再結晶して表記化合物26 (44 mg, 91%)を得た。
無色プリズム晶、融点228-229℃ (メタノール−酢酸エチル)
MS (m/z): 465 (M+, 15), 432 (18), 408 (47), 393 (83), 375 (83), 347 (34), 336 (63), 318 (90), 206 (44), 160 (100), 149 (49), 104 (100), 76 (51), 43 (47)
IR (KBr) cm-1: 1715, 1664, 1634
1H-NMR (DMSO-d6) δ: 1.23 (6H, s), 1.24 (6H, s), 1.64 (4H, s), 3.76 (2H, d, J=6 Hz), 3.94 (2H, d, J=6 Hz), 7.28 (1H, d, J=8.5 Hz), 7.57 (1H, dd, J=8.5, 2 Hz), 7.67 (1H, d, J=2 Hz), 8.00 (2H, A2B2, J=8.5 Hz), 8.04 (2H, A2B2, J=8.5 Hz), 8.23 (1H, t, J=6 Hz, NH), 8.93 (1H, t, J=6 Hz, NH), 10.19 (1H, br s, CONH).
【0046】
例21:Am-81 (13)のN-(4-メトキシカルボニル)-ベンゾイル(27)
【化24】

例11と同様にして、Am-81 (13, 100 mg, 0.274 mmol) をDMF (3 ml)中氷冷下、水素化ナトリウム(60%, 22 mg, 0.550 mmol) とテレフタル酸モノメチルクロリド(71 mg, 0.358 mmol)と処理した。反応生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン−酢酸エチル(6:1)にて溶出]で精製することにより表記化合物27 (71 mg, 49%)を回収13 (22 mg, 22%)と共に得た。
MS (m/z): 527 (M+, 13), 512 (4), 163 (100), 135 (14), 103 (10), 77 (5)
IR (KBr) cm-1: 1720, 1696, 1668
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.05 (6H, s), 1.23 (6H, s), 1.61 (4H, s), 3.92 (6H, s), 6.91 (1H, d, J=2 Hz), 6.96 (1H, dd, J=8.5, 2 Hz), 7.29 (1H, d, J=8.5 Hz), 7.75 (4H, A2B2, J=8 Hz), 8.01 (4H, A2B2, J=8 Hz).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I):
【化1】

〔式中、R1、R2、R3、R4、及びR5はそれぞれ独立に水素原子、低級アルキル基、又はトリ低級アルキルシリル基を示し、それらのうちの隣接する2つの低級アルキル基は一緒になってそれらが結合するベンゼン環上の炭素原子とともに1又は2以上のアルキル基を有することもある5員環又は6員環を形成してもよく;X は-NH-CO-、-CO-NH-、-N(COR6)-CO-、-CO-N(COR7)-、-CO-N[CON(R8)(R9)]-、又は-N[CON(R10)(R11)](R6及びR7は低級アルコキシ基(該アルコキシ基は置換基を有していてもよい)又はフェニル基(該フェニル基は少なくとも1個のアルコキシカルボニル基又はカルボキシ基を置換基として有し、その他の置換基を有していてもよい)を示し、R8、R9、R10、及びR11はそれぞれ独立に水素原子又は低級アルキル基を示す)を示し;Zは-Y-CH(R12)-COOH又は-COOR13(Yは単結合、-CH2-、-CH(OH)-、-CO-、-CO-NH-、又は-CO-NH-CH2-CO-NH-を示し、R12は水素原子又は低級アルキル基を示し、R13は水素原子、-CH(R14)-COOH(R14は水素原子、低級アルキル基、又は水酸基を示す)、-[CH2CH2-O]n-CH2-CH2-OH(nは1から100の整数を示す)、-CH2-O-[CH2CH2-O]m-CH2-OH(mは1から100の整数を示す)、又は-[CH(CH3)-CO-O]p-CH(CH3)-COOH(pは1から100の整数を示す)を示すが、X が-NH-CO-又は-CO-NH-の場合にはR13は水素原子以外の基を示す〕で表される化合物又はその塩、あるいはそのエステル。
【請求項2】
XとZがこれらが結合するベンゼン環上においてパラ位である請求項1に記載の化合物又はその塩、あるいはそのエステル。
【請求項3】
R1、R4、及びR5が水素原子であり、R2及びR3が互いに結合してそれらが結合するベンゼン環とともに5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8- テトラヒドロナフタレン環を形成する請求項1に記載の化合物又はその塩、あるいはそのエステル。
【請求項4】
R1、R3、及びR5が水素原子であり、R2及びR4がトリメチルシリル基である請求項1に記載の化合物又はその塩、あるいはそのエステル。
【請求項5】
X が-N(COR6)-CO-又は-CO-N(COR7)-(R6又はR7はメトキシ基又はエトキシ基である)であり、Zが-COOR13(R13は水素原子である)である請求項1に記載の化合物又はその塩、あるいはそのエステル。
【請求項6】
Xが-NH-CO-(該アミド基の炭素原子はZが置換するベンゼン環に結合する)であり、Zが-Y-CH(R12)-COOH(Yは-CH2-、-CH(OH)-、又は-CO-である)又は-COOR13である請求項1に記載の化合物又はその塩、あるいはそのエステル。

【公開番号】特開2008−94727(P2008−94727A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275097(P2006−275097)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(591063648)財団法人乙卯研究所 (4)
【Fターム(参考)】