説明

レンズ鏡筒およびカメラシステム

【課題】絞り機構の駆動制御を改善したレンズ鏡筒およびカメラシステムを提供する。
【解決手段】
カメラボディに着脱可能なレンズ鏡筒であって、光が通過する開口の面積を調整可能な絞り機構と、前記絞り機構を駆動制御する制御手段と、前記絞り機構を制御するための制御情報を設定する設定手段と、前記設定手段によって設定された前記制御情報を前記カメラボディに送信する通信手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡筒およびカメラシステムに関し、より詳細には、絞り機構を有するレンズ鏡筒および当該レンズ鏡筒を有するカメラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
カメラボディに取り付けられるレンズ鏡筒には、撮影光学系の開口面積を調整する絞り機構が備えられているものが多く存在する。また、これらのレンズ鏡筒の中には、絞り機構によって調整される開口値を設定するための絞り環を有するものと、当該絞り環を有しないものとが存在する。
【0003】
ここで、絞り環を有しないレンズ鏡筒だけでなく、絞り環を有するレンズ鏡筒についても、カメラボディ側からレンズ鏡筒内の絞り機構を駆動制御する場合がある。
【0004】
従来技術に係るレンズ鏡筒では、例えば絞り環と連動する突起をカメラボディ側に設けられた絞り連動環に係合させるなどして、絞り環によって設定された開口値を、機械的な連動によってカメラボディ側に伝えていた(特許文献1参照)。
【0005】
しかし、従来技術に係るレンズ鏡筒は、絞り環の配置が制約されたり、カメラボディへの取付部付近の構造が複雑になるという問題を有している。
【特許文献1】特開平10−170978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされ、その目的は、絞り機構の駆動制御を改善したレンズ鏡筒およびカメラシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るレンズ鏡筒は、
カメラボディ(10)に着脱可能なレンズ鏡筒(12)であって、
光が通過する開口の面積を調整可能な絞り機構(16)と、
前記絞り機構を駆動制御する制御手段(24)と、
前記絞り機構を駆動制御するための制御情報を設定する設定手段(20,28)と、
前記設定手段によって設定された前記制御情報を前記カメラボディに送信する送信手段(24,26)とを有する。
【0008】
また、例えば、前記設定手段は、当該設定手段による設定が無効であることを示す第1の情報を設定可能であり、前記送信手段は、前記第1の情報を前記カメラボディに送信してもよい。
【0009】
また、例えば、前記設定手段は、前記制御情報を、当該設定手段による設定が無効であることを示す第1の情報に設定可能であってもよい。
【0010】
また、例えば、前記制御手段は、前記第1の情報が設定されている場合は、
前記カメラボディから出力される信号に従って前記絞り機構を制御してもよい。
【0011】
また、例えば、前記設定手段は、前記第1の情報と、当該設定手段による設定が有効であることを示す第2の情報とを切り換えて設定可能であってもよい。
【0012】
また、本発明の第2の観点に係るレンズ鏡筒は、
カメラボディ(10)に着脱可能なレンズ鏡筒(12)であって、
光が通過する開口の面積を調整可能な絞り機構(16)と、
前記絞り機構を駆動制御する制御手段(24)と、
前記カメラボディ側から出力される、前記絞り機構を駆動制御するための制御情報を有効にすることを示す第1の情報を、前記カメラボディに送信する送信手段(24,26)とを有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の第3の観点に係るレンズ鏡筒は、
カメラボディ(10)に着脱可能なレンズ鏡筒(12)であって、
光が透過する開口の面積を調整可能な絞り機構(16)と、
前記カメラボディからの制御情報に基づき前記絞り機構を駆動制御する制御手段(24)と、
前記制御手段で用いる制御情報を設定しないことを示す情報を前記カメラボディに送信する送信手段(24,26)とを有することを特徴とする。
【0014】
また、例えば、前記制御手段は、前記カメラボディから出力される信号に従って前記絞り機構を制御してもよい。
【0015】
また、例えば、前記制御情報は、前記絞り機構で調整する前記開口の面積の設定に関する情報であってもよい。
【0016】
また、本発明に係るカメラシステムは、
光が通過する開口の面積を調整可能な絞り機構(16)と、
制御情報に基づいて前記絞り機構を駆動制御する制御手段(24)と、
前記制御情報を設定するレンズ側設定手段(20,28)と、
前記設定手段によって設定された前記制御情報を送信するレンズ側送信手段(24,26)とを有するレンズ鏡筒(12)と、
前記レンズ側送信手段からの前記制御情報を受信する受信手段(30,32)と、
前記制御情報を設定するカメラボディ側設定手段(19)と、
前記制御情報を前記レンズ側制御手段に送信するカメラボディ側送信手段(30,32)と、
前記レンズ側設定手段と前記カメラボディ側設定手段の少なくとも一方によって設定された前記制御情報を前記制御手段に送るボディ側制御手段(30)とを有し、前記レンズ鏡筒を着脱可能なカメラボディ(10)と、を有する。
【0017】
また、本発明の第2の観点に係るカメラシステムは、
光が通過する開口の面積を調整可能な絞り機構(16)と、
制御情報に基づいて前記絞り機構を駆動制御する制御手段(24)と
を有するレンズ鏡筒(12)と、
前記制御情報を設定する設定手段(19)を有し、前記レンズ鏡筒と着脱可能なカメラボディ(10)とを有し、
前記レンズ鏡筒は、前記設定手段で設定される前記制御情報を有効にすることを示す情報を前記カメラボディに送信するレンズ側送信手段(24,26)を有し、
前記カメラボディは、前記レンズ側送信手段からの前記情報を受信した場合に、前記制御情報を前記制御手段に送信するボディ側送信手段(30,32)を有することを特徴とする。
【0018】
なお上述の説明では、本発明をわかりやすく説明するために実施形態を示す図面の符号に対応づけて説明したが、本発明は、これに限定されるものでない。後述の実施形態の構成を適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替させてもよい。さらに、その配置について特に限定のない構成要件は、実施形態で開示した配置に限らず、その機能を達成できる位置に配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るレンズ鏡筒を取り付けたカメラボディの外観図、
図2は、図1に示すカメラにおける絞り機構の制御を表すブロック図、
図3は、図1のレンズ鏡筒に備えられた絞り環エンコーダの詳細図、
図4は、絞り環エンコーダのパターンと制御情報の関係を示す図、
図5は、図2に示す絞り機構の絞り値の設定に関連して、レンズ鏡筒内に備えられたMCUで行われる一連の処理を表したフローチャート、
図6は、図2に示す絞り機構の絞り値の設定に関連して、カメラボディ内に備えられたボディCPUで行われる一連の処理を表したフローチャートである。
第1実施形態
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係るレンズ鏡筒12を取り付けたカメラボディ10の外観図である。レンズ鏡筒12は、不図示のマウント部によってカメラボディ10に取り付けられており、レンズ鏡筒12に備えられた撮影光学系(不図示)によって、被写体光をカメラボディ10内部に導くことができる。
【0021】
カメラボディ10の内部には、撮影光学系によって導かれた被写体光による像を記録するための記録媒体(不図示)等が備えられている。記録媒体としては、銀塩フィルムや、CCDやCMOS等の撮像素子が用いられる。また、本実施形態に係るカメラボディ10の筐体表面には、撮影のタイミング等を決定するためのレリーズボタン18や、カメラボディ10側で絞り値を設定するためのサブコマンドダイアル19が備えられている。
【0022】
レンズ鏡筒12には、被写体光が通過する開口の面積を調整するための絞り機構16が備えられている。本実施形態における絞り機構16は、複数の絞り羽根と、これを駆動するための駆動部(不図示)を有する電磁絞り機構である。絞り羽根を駆動するための駆動部としては、例えばステッピングモータ等を用いることができるが、電力を機械的な力に変換して絞り羽根を駆動するものであれば特に限定されない。
【0023】
さらに、本実施形態に係るレンズ鏡筒12には、絞り機構16による開口の調整値である絞り値を設定するための絞り環20が備えられている。絞り環20は、レンズ鏡筒12の鏡筒外周部に回転可能に取り付けられており、撮影者は絞り環20を回転させることによって、絞り値を変更することができる。
【0024】
図2は、図1に示すカメラにおける絞り機構16の駆動制御を表すブロック図である。カメラボディ10の内部には、カメラボディ10の制御機能と、レンズ鏡筒12との通信機能を有するボディCPU30が備えられている。
【0025】
例えばボディCPU30は、レリーズボタン18からの信号を受けて、サブコマンドダイアル19等で設定された絞り値等を、ボディ側通信接点32を介して送信する。その一方で、ボディCPU30は、カメラボディ10内に備えられる不図示のシャッタ装置を作動させて被写体光を記録媒体に導き、撮影動作を行うことができる。
【0026】
レンズ鏡筒12には、ドライバ22を介して絞り機構16を駆動制御することができるMCU(マイクロコントロールユニット)24が備えられている。また、MCU24はレンズ側通信接点26を介してカメラボディ10と通信を行うことができる。レンズ鏡筒12がカメラボディ10に取り付けられた状態では、ボディ側通信接点32とレンズ側通信接点26とは接触している。
【0027】
レンズ鏡筒12に備えられる絞り環エンコーダ28は、図1に示す絞り環20の位置を検出する機能を有し、絞り環20とともに、絞り値を設定する絞り環ユニットを構成している。図3に示すように、絞り環エンコーダ28は、MCU24に電気的に接続されており、所定の電圧を加えられる3つの配線パターン41を有している。
【0028】
撮影者が図1に示す絞り環20を回転させると、これと連動して、各配線パターン41に対応した3つの端子を有する不図示のブラシが、配線パターン41上を、図3の矢印Xで示す方向に沿って摺動する。ブラシの各端子はカメラ内のGNDに電気的に接続されているため、各端子が配線パターン41の接触部41aと接触、離間することによって、配線パターン41の電位が変化する。MCU24は、絞り環エンコーダ28との配線を介して、各配線パターン41の電位を検出し、絞り環20および絞り環エンコーダ28により構成される絞り環ユニットによる絞り値の設定を読み込むことができる。
【0029】
MCU24は、絞り環20と連動するブラシが、図3に示す配線パターン41上を位置1〜位置8まで移動するのに応じて、各配線パターン41の電位の組合せに対応するコードを読み込むことができる。図4は、ブラシの位置に応じてMCU24が読み込むコードと、絞り環ユニットによって設定される絞り値との対応関係を表したものである。
【0030】
図4の左から1列目の欄に示す「位置」と、左から2列目の欄に示す「コード」の対応から明らかなように、図3に示す絞り環エンコーダ28の配線パターン41は、グレイコードを構成しており、段階的に値を変化させる絞り値の設定に適している。また、図4の左から2列目の欄に示す「コード」は、左から3列目の欄に示す「絞り値」に対応している。
【0031】
図2に示すレンズ鏡筒12に備えられる絞り環エンコーダ28は、図4に示すように、絞り値を「F1.4」〜「F11」までの7段階に設定することができる。絞り値が「F1.4」〜「F11」に設定されているということは、絞り環ユニットによる絞り値の設定は有効であることを示している。また、絞り環エンコーダ28は、絞り値を、絞り環ユニットによる絞り値の設定が無効であることを示す「L」に設定することができる。
【0032】
図5は、図2に示す絞り機構16の絞り値の設定に関連して、MCU24で行われる一連の処理を表したフローチャートである。ステップS001において、図2に示すMCU24は、レンズ鏡筒12側で設定された絞り値を、カメラボディ10側へ送信する一連の処理を開始する。
【0033】
この処理は、カメラの電源がONになった時や、レンズ鏡筒12がカメラボディ10に取り付けられた時から開始することができる。また、図5に示す処理は、カメラボディ10に備えられた不図示の露出モード切替スイッチにより開始されてもよい。すなわち、カメラの露出モードが、絞り値の設定を撮影者が選択して撮影を行う露出マニュアルモードまたは絞り値優先モードに切り換えられたタイミングで、一連の処理を開始してもよい。
【0034】
ステップS002では、MCU24は、絞り環ユニットによる絞り値の設定を読み込む。絞り環20と連動するブラシは、図3に示す位置1〜8までのいずれかに配置されている。MCU24は、絞り環エンコーダ28との配線を介して、図4に示すコードを読み込むことによって、コードに対応する絞り値の設定を認識できる。
【0035】
ステップ003では、読み込まれた絞り値の設定が、絞り環ユニットによる絞り値の設定が有効であることを示すものであるか、無効であることを示すものであるかを判断する。
【0036】
読み込まれた絞り値の設定が、図4において「F1.4」〜「F11」と表記される具体的な絞り値である場合には、MCU24は、絞り環ユニットによる絞り値の設定が有効であると判断する。それに対して、読み込まれた絞り値の設定が、図4に示す「L」であった場合には、MCU24は、絞り環ユニットによる絞り値の設定が無効であると判断する。
【0037】
ステップS003において、絞り値の設定が、絞り環ユニットによる絞り値の設定が無効であることを示すもの(図4では「L」)であった場合には、MCU24は、絞り環ユニットによる絞り値の設定が無効であることをカメラボディ10側に送信する(ステップS004)。具体的には、MCU24は、絞り環ユニットによる絞り値の設定が「L」であることを示す信号を含む情報を、レンズ側通信接点26およびボディ側通信接点32を介して、ボディCPU30に送信する。
【0038】
それに対して、ステップS003において、絞り値の設定が、絞り環ユニットによる絞り値の設定が有効であることを示すもの(図4では「F1.4」〜「F11」)であった場合には、MCU24は、絞り環ユニットによる絞り値の設定をカメラボディ10側に送信する(ステップS005)。具体的には、MCU24は、絞り環ユニットによる絞り値の設定が「F1.4」〜「F11」のいずれかであることを示す信号を含む所定の情報を、レンズ側通信接点26およびボディ側通信接点32を介して、ボディCPU30に送信する。
【0039】
ステップS004またはステップS005において、カメラボディ10との通信が終了すると、ステップS002に戻り、ステップS002〜S004までの処理を繰り返す。ステップS002〜S004までの一連の処理は、例えばボディCPU30からの信号に応じて繰り返されても良く、また、所定の時間間隔で繰り返されても良い。
【0040】
図6は、図2に示す絞り機構16の絞り値の設定に関連して、カメラボディ10内に備えられるボディCPU30で行われる一連の処理を表したフローチャートである。ステップS101において、ボディCPU30は、撮影動作における絞り値を決定するための一連の処理を行う。
【0041】
この処理は、図5に示すレンズ鏡筒12での処理と同様に、カメラの電源がONになった時点や、レンズ鏡筒12がカメラボディ10取り付けられた時点から開始することができる。また、図6に示す処理は、カメラボディ10に備えられた不図示の露出モード切替スイッチにより開始されてもよい。
【0042】
ステップS102では、図2に示すボディCPU30は、レンズ鏡筒12と通信し、レンズ鏡筒12側の絞り値の設定に関する情報を取得する。例えば、ボディCPU30は、図2に示すボディ側通信接点32およびレンズ側通信接点26を介して、MCU24に信号を送り、レンズ鏡筒12が有する絞り値の設定に関する情報を要求する。
【0043】
MCU24は、ボディCPU30からの信号を受けて、図5に示すフローチャートのステップS002〜S005に示す一連処理を行い、ボディCPU30に対して、絞り環ユニットによる絞り値の設定に関する情報を送信する。ボディCPU30は、MCU24からの情報を受信することによって、絞り環ユニットによる絞り値の設定を認識することができる。
【0044】
なお、MCU24によって行われる図5に示す一連の処理は、ボディCPU30からの信号にかかわらず、例えば所定の時間間隔で周期的に行われてもよい。この場合ボディCPU30は、ステップS102において、MCU24によって送信される情報を受信すればよい。
【0045】
ステップS103では、取得したレンズ鏡筒12側の絞り値の設定に関する情報が、絞り環ユニットによる絞り値の設定が有効であることを示すものであるか、無効であることを示すものであるかを判断する。ボディCPU30は、レンズ鏡筒12の絞り環ユニットによる絞り値の設定が、「F1.4」〜「F11」のいずれかであると認識した場合は、絞り環ユニットによる絞り値の設定が有効であると判断する。これに対して、ボディCPU30は、レンズ鏡筒12の絞り環ユニットによる絞り値の設定が「L」であと認識した場合は、絞り環ユニットによる絞り値の設定が無効であると判断する。
【0046】
ステップS103において、絞り環ユニットによる絞り値の設定が無効であると判断された場合は、ボディCPU30は、カメラボディ10に備えられたサブコマンドダイアル19によって設定された設定値を、撮影動作時の絞り値として採用する(S104)。したがって、撮影動作の際、ボディCPU30は、サブコマンドダイアル19によって設定された絞り値に、レンズ鏡筒12に備えられた絞り機構16が駆動制御されるように、MCU24に対して指示を行う。
【0047】
これに対して、ステップS103において、絞り環ユニットによる絞り値の設定が有効であると判断された場合は、ボディCPU30は、ステップS102で取得した絞り環ユニットによる絞り値の設定を、撮影動作時の絞り値として採用する(S105)。したがって、撮影動作の際、ボディCPU30は、絞り環20によって設定された絞り値に、レンズ鏡筒12に備えられた絞り機構16が駆動制御されるように、MCU24に対して指示を行う。
【0048】
ステップS104またはステップS105において、撮影時の絞り値を決定した後、ステップS102に戻り、ステップS102〜S104までの処理を繰り返す。ステップS102〜S104までの一連の処理は、例えばサブコマンドダイアル19や、MCU24を経由した絞り環エンコーダ28からの信号に応じて繰り返されても良く、また、所定の時間間隔で繰り返されても良い。
【0049】
上述のように、本実施形態のレンズ鏡筒12は、絞り環20および絞り環エンコーダ28によって構成される絞り環ユニットによる絞り値の設定情報を、MCU24およびレンズ側通信接点26を介してカメラボディ10に送信する。したがって、レンズ鏡筒12は、絞り環ユニットによって設定された絞り値を、機械的な連動によってカメラボディ10側に伝える必要がなく、カメラボディ10への取付部付近の構造がシンプルである。また、絞り環20の配置についての制約が低減されるため、レンズ鏡筒12の設計自由度が向上する。
【0050】
また、本実施形態のレンズ鏡筒12に備えられたMCU24は、絞り環ユニットによる絞り値の設定が無効であることをカメラボディ10側に送信することができる。また、MCU24は、カメラボディ側から出力される絞り値に設定されるように、絞り機構16を駆動制御することができる。したがって、本実施形態のレンズ鏡筒12は、カメラボディ10側から絞り値を設定することが可能である。
【0051】
また、本実施形態に係る絞り環ユニットは、絞り環ユニットによる絞り値の設定を無効にする状態と、絞り環ユニットによる絞り値の設定を無効にする状態とを切り換えることができる。したがって撮影者は、カメラボディ10側のサブコマンドダイアル19と、レンズ鏡筒12側の絞り環ユニットのいずれか一方を選択して、絞り値の設定を行うことができる。
【0052】
また、本実施形態に係るレンズ鏡筒12に備えられる絞り機構16は、絞り羽根を駆動するための駆動部を有するいわゆる電磁絞り機構である。したがって、カメラボディ10とレンズ鏡筒12の両方に絞り値の設定手段が備えられているカメラシステムでは、設定値を通信することによって、両方の設定手段から自由に絞り値を設定することが可能である。この場合において、一方の絞り値の設定値によって、他方の絞り値の設定値が制限されることもない。
【0053】
その他の実施形態
【0054】
上述の第1実施形態に係るレンズ鏡筒12では、絞り環20および絞り環エンコーダ28を用いて絞り値を設定する構成としたが、これに限定されず、例えば切替スイッチ、光学式センサまたはタッチセンサ等を用いて設定する構成としてもよい。また、絞り値を設定する設定手段は、設定すべき絞り値が記憶されたメモリ等を有していても良い。
【0055】
また、本実施形態のレンズ鏡筒12は、絞り値を設定するための絞り環を有する構成としたが、このような絞り値を設定するための部材(絞り環、切換スイッチ、タッチセンサ等)はなくてもよい。絞り値を設定するための部材を有しないレンズ鏡筒においては、図5のレンズ鏡筒側でのフローチャートにおいて、ステップS002の動作はなく、ステップS003の絞り環ユニットによる絞り値の設定は、常に無効であると判断する。あるいは、判断するまでもなくステップS004の処理に進む。その結果、カメラボディ側には、常に絞り環ユニットによる絞り値の設定が無効であることを示す情報が送信される。
【0056】
そして、図6のカメラボディ側でのフローチャートにおいて、ステップS103では、絞り環ユニットによる絞り値の設定は常に無効であると判断される。その結果、カメラボディ側で設定された絞り値が、常に撮影動作時の絞り値として採用される。
【0057】
以上のように、絞り値を設定するための部材がないレンズ鏡筒においては、カメラボディ側に、絞り環ユニットによる絞り値の設定が無効であることを示す情報を常に送信することによって、カメラボディ側で設定された絞り値を常に有効なものとすることができる。
【0058】
絞り環エンコーダ28等の設定手段によって設定可能な絞り値の段数についても、レンズ鏡筒12に応じて任意の数とすることができ、たとえば1段のみであってもよい。この場合でも、MCU24は、カメラボディ10側から出力される絞り値に応じて、絞り機構16を駆動制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るレンズ鏡筒を取り付けたカメラボディの外観図である。
【図2】図2は、図1に示すカメラにおける絞り機構の制御を表すブロック図である。
【図3】図3は、図1に示すレンズ鏡筒に備えられた絞り環エンコーダの詳細図である。
【図4】図4は、絞り環エンコーダのパターンと制御情報の関係を示す図である。
【図5】図5は、図2に示す絞り機構の絞り値の設定に関連して、レンズ鏡筒内に備えられたMCUで行われる一連の処理を表したフローチャートである。
【図6】図6は、図2に示す絞り機構の絞り値の設定に関連して、カメラボディ内に備えられたボディCPUで行われる一連の処理を表したフローチャートである。
【符号の説明】
【0060】
10… カメラボディ
12… レンズ鏡筒
16… 絞り機構
19… サブコマンドダイアル
20… 絞り環
24… MCU
26… レンズ側通信接点
28… 絞り環エンコーダ
30… ボディCPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラボディに着脱可能なレンズ鏡筒であって、
光が通過する開口の面積を調整可能な絞り機構と、
前記絞り機構を駆動制御する制御手段と、
前記絞り機構を駆動制御するための制御情報を設定する設定手段と、
前記設定手段によって設定された前記制御情報を前記カメラボディに送信する送信手段とを有することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
請求項1に記載されたレンズ鏡筒であって、
前記設定手段は、当該設定手段による設定が無効であることを示す第1の情報を設定可能であり、前記送信手段は、前記第1の情報を前記カメラボディに送信すること
を特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項3】
請求項1に記載されたレンズ鏡筒であって、
前記設定手段は、前記制御情報を、当該設定手段による設定が無効であることを示す第1の情報に設定可能であることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載されたレンズ鏡筒であって、
前記制御手段は、前記第1の情報が設定されている場合は、
前記カメラボディから出力される信号に従って前記絞り機構を制御することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載されたレンズ鏡筒であって、
前記設定手段は、前記第1の情報と、当該設定手段による設定が有効であることを示す第2の情報とを切り換えて設定可能であることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項6】
カメラボディに着脱可能なレンズ鏡筒であって、
光が通過する開口の面積を調整可能な絞り機構と、
前記絞り機構を駆動制御する制御手段と、
前記カメラボディ側から出力される、前記絞り機構を駆動制御するための制御情報を有効にすることを示す第1の情報を、前記カメラボディに送信する送信手段とを有することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項7】
カメラボディに着脱可能なレンズ鏡筒であって、
光が透過する開口の面積を調整可能な絞り機構と、
前記カメラボディからの制御情報に基づき前記絞り機構を駆動制御する制御手段と、
前記制御手段で用いる制御情報を設定しないことを示す情報を前記カメラボディに送信する送信手段とを有すること
を特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項8】
請求項6または7に記載されたレンズ鏡筒であって、
前記制御手段は、前記カメラボディから出力される信号に従って前記絞り機構を制御することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載のレンズ鏡筒であって、
前記制御情報は、前記絞り機構で調整する前記開口の面積の設定に関する情報であることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項10】
光が通過する開口の面積を調整可能な絞り機構と、
制御情報に基づいて前記絞り機構を駆動制御する制御手段と、
前記制御情報を設定するレンズ側設定手段と、
前記設定手段によって設定された前記制御情報を送信するレンズ側送信手段とを有するレンズ鏡筒と、
前記レンズ側送信手段からの前記制御情報を受信する受信手段と、
前記制御情報を設定するカメラボディ側設定手段と、
前記制御情報を前記レンズ側制御手段に送信するカメラボディ側送信手段と、
前記レンズ側設定手段と前記カメラボディ側設定手段の少なくとも一方によって設定された前記制御情報を前記制御手段に送るボディ側制御手段とを有し、前記レンズ鏡筒を着脱可能なカメラボディと、を有することを特徴とするカメラシステム。
【請求項11】
光が通過する開口の面積を調整可能な絞り機構と、
制御情報に基づいて前記絞り機構を駆動制御する制御手段と
を有するレンズ鏡筒と、
前記制御情報を設定する設定手段を有し、前記レンズ鏡筒と着脱可能なカメラボディとを有し、
前記レンズ鏡筒は、前記設定手段で設定される前記制御情報を有効にすることを示す情報を前記カメラボディに送信するレンズ側送信手段を有し、
前記カメラボディは、前記レンズ側送信手段からの前記情報を受信した場合に、前記制御情報を前記制御手段に送信するボディ側送信手段を有すること
を特徴とするカメラシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−175620(P2009−175620A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16541(P2008−16541)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】