ロボット制御システムおよびロボットハンド
【課題】ティーチング作業を簡略化でき、ティーチング時間を短縮できるとともに、チョコ停の発生を防止できるロボット制御システムを提供する。
【解決手段】ロボット制御システム1において、ロボットアーム30、40と、ロボットアーム30、40の先端に設けられ、ワーク把持用のチャック部およびワーク撮影用の小型カメラを有するロボットハンド31、41とを備えたロボット3、4と、小型カメラで撮影された画像が表示されるタッチパネルを有し、ロボット3、4に対してティーチング入力を行うためのティーチングペンダントと、ティーチングペンダントでティーチング入力された所定の座標位置を、小型カメラで撮影されてタッチパネルに表示された画像に基づいて補正して、補正された座標位置に移動するようにロボット3、4を駆動制御するコントローラA、Bとを設ける。
【解決手段】ロボット制御システム1において、ロボットアーム30、40と、ロボットアーム30、40の先端に設けられ、ワーク把持用のチャック部およびワーク撮影用の小型カメラを有するロボットハンド31、41とを備えたロボット3、4と、小型カメラで撮影された画像が表示されるタッチパネルを有し、ロボット3、4に対してティーチング入力を行うためのティーチングペンダントと、ティーチングペンダントでティーチング入力された所定の座標位置を、小型カメラで撮影されてタッチパネルに表示された画像に基づいて補正して、補正された座標位置に移動するようにロボット3、4を駆動制御するコントローラA、Bとを設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット制御システムに関し、詳細には、カメラによる撮像を用いて視覚制御を行えるようにしたロボット制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場の組立ヤードにおいて多数の部品からなる電子機器などの機器を自動的に組み立てる産業用ロボットを含む自動組立装置が提案されている(特開2000−354919号公報および特開平2006−43844号公報参照)。
【0003】
産業用ロボットは、一般に、旋回可能かつ上下動可能なロボットアームと、ロボットアームの先端に設けられ、ワーク(部品)を把持するためのチャック部を有するロボットハンドと、ロボットアームおよびロボットハンドを所定の制御プログラムにしたがって駆動制御する制御部とを備えている。また、自動組立装置は、ワークテーブル面上のそれぞれ所定位置に配置された、多数の部品を収容する複数の部品供給トレイと、部品の組立てを行うための組立用治具とを有している。
【0004】
自動組立装置の運転時には、ロボットアームを駆動して、ロボットハンドを所定の部品供給トレイの位置まで移動させ、先端のチャック部で部品を把持する。この状態から、ロボットアームを駆動して、ロボットハンドを組立用治具の位置まで移動させ、チャック部に把持されていた部品を組立用治具に組み付ける。以下、同様の動作を繰り返すことにより、所望の機器が自動的に組み立てられることになる。
【0005】
このような産業用ロボットを含む自動組立装置においては、自動運転を開始する前に、ロボットに対して動作基準座標や動作手順等を教示するティーチングという作業が必要になる。従来のティーチング作業では、パソコン上のコンピュータシミュレーションなどにより、概略の座標位置を求めた後、操作者が、ティーチングペンダントやティーチングボックスを用いて実際にロボットハンドをマニュアル操作することにより、正確な座標位置の設定を行うようにしている。
【特許文献1】特開2000−354919号公報(段落[0022]および図1参照)
【特許文献2】特開2006−43844号公報(段落[0039]および図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来の装置においては、上述したティーチング作業において細かな座標位置の設定が非常に煩雑であった。また、ロボットの個体差による誤差、ロボットハンドや部品供給トレイ、組立用治具などの各種モジュールの設置時に生じる誤差、チャック部や組立用治具自体の個体差による誤差があるため、ロボット等を設置し直すごとにティーチングを行わなければならず、ティーチング作業に長時間を要していた。また、とくに、小さな機器の組立装置の場合には、操作者が装置の中に頭を突っ込んで無理な態勢でティーチング作業を行わなければならない場合もあり、操作者にとって、とても安全かつフレンドリーな作業環境とはいえないものであった。さらに、ロボットの自動組立を継続して行うと、ロボットアーム自身の位置ずれやロボットハンドの位置ずれが発生して累積し、あるいはワークの位置ずれにより、自動運転中に組立てを継続して行えないというトラブルが発生して、ロボットが停止するといういわゆる「チョコ停」(すなわち、機械の故障ではなく、一時的なトラブルに起因した機械の停止状態)が発生していた。
【0007】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、ティーチング作業を簡略化でき、ティーチング時間を短縮できるとともに、自動運転中のいわゆる「チョコ停」の発生を防止できるロボット制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明に係るロボット制御システムは、ロボットアームとその先端に設けられたワーク把持用のチャック部を有するロボットハンドとを含むロボットと、ロボットに対してティーチング入力を行うための操作部と、少なくともワークを撮影できるカメラ部と、操作部でティーチング入力された所定の座標位置をカメラ部で撮影された画像に基づいて補正して、補正された座標位置に移動するようにロボットを駆動制御する制御部とを備えている。
【0009】
請求項1の発明においては、ティーチング入力された所定の座標位置(例えばワークの把持動作または把持解除動作の直前の座標位置)までロボットアームおよびロボットハンドを移動させ、移動後、ワークをカメラ部で撮影する。制御部は、カメラ部で撮影された画像に基づいて前記所定の座標位置を補正する。
【0010】
ここで、補正がティーチング入力の際に行われる場合には、ロボットハンド、部品供給トレイ、組立用治具などの各種モジュールの設置にともなう誤差や、チャック、組立用治具自体の個体差による誤差などが生じた場合でも、カメラ部で撮影された画像に基づいて、各種誤差に対する補正が一度に自動的に行われることになる。これにより、セルフキャリブレーションによる自動補正が可能になって、ティーチング作業を簡略化でき、ティーチング時間を短縮できる。
【0011】
また、カメラ部で撮影された画像に基づいて補正が行われるので、ティーチング作業時に操作者が装置の中に頭を突っ込んで作業を行ったりする必要がなく、操作者にとって安全かつフレンドリーな作業環境を実現できる。
【0012】
一方、補正がティーチング後の自動運転時に行われる場合には、制御部がロボットを駆動制御することにより、補正された座標位置にロボットアームおよびロボットハンドが移動することになって、チョコ停の発生を防止できる。
【0013】
請求項2の発明では、請求項1において、カメラ部が、チャック部を支持する支持台の側面に設けられている。
【0014】
この場合には、チャック部先端の画像を入手することが可能であり、このようなカメラ部としては、例えば小型のビジョンカメラやCCDカメラなどが適している。また、この場合には、カメラ部がチャック部の支持台の側面に設けられていることにより、カメラ部がチャック部の開閉動作の影響を受けない、という利点がある。
【0015】
請求項3の発明では、請求項2において、チャック部の支持台が移動可能に設けられている。
【0016】
この場合には、カメラ部で撮影した画像に基づいて、カメラ部の支持台自体を移動させることができるので、チャック部の位置の微調整が簡単に行えるようになる。
【0017】
請求項4の発明では、請求項1において、カメラ部が、チャック部を支持する支持台の支持面の中心位置に設けられている。
【0018】
この場合には、カメラ部の光軸をチャック部の作業軸と一致させることができるので、座標位置の設定が容易になる。
【0019】
請求項5の発明では、請求項1において、操作部がカメラ部で撮影された画像を表示するタッチパネル式のディスプレイを有し、操作者がディスプレイに触れることで補正が行われるようになっている。
【0020】
この場合には、カメラ部で撮影された画像は、操作部のディスプレイに表示される。操作者は、ディスプレイの画像を見ながら、ロボットハンドの現在の位置を始点としかつ目標の座標位置(例えば組立用治具の位置)を終点とするように、ディスプレイに触れて操作部を操作することで補正を行う。
【0021】
この場合には、ロボットハンド、部品供給トレイ、組立用治具などの各種モジュールの設置にともなう誤差や、チャック、組立用治具自体の個体差による誤差などが生じた場合でも、操作者が操作部のディスプレイ上の画像を見て始点および終点の座標位置を入力するだけで、各種誤差に対する補正が一度に自動的に行われることになる。これにより、セルフキャリブレーションによる自動補正が可能になって、ティーチング作業を簡略化でき、ティーチング時間を短縮できる。
【0022】
また、この場合には、ティーチング作業時に操作者が装置の中に頭を突っ込んで作業を行ったりする必要がなく、操作者は操作部のディスプレイを見ながら操作するだけでよいので、操作者にとって安全かつフレンドリーな作業環境を実現できる。
【0023】
さらに、この場合には、操作者が操作部のディスプレイを用いて、ワンタッチで簡単に補正を行えるようになる。
【0024】
請求項6の発明では、請求項1において、自動運転時にロボットハンドが適切なハンドリング位置に移動するように、制御部が、カメラ部で撮影された画像に基づいてロボットハンドを駆動制御している。
【0025】
請求項6の発明によれば、自動運転時には、ロボットハンドが予め設定されたハンドリング位置の近傍まで移動したとき、カメラ部が画像を撮影し、制御部はこの画像に基づいてハンドリング位置を補正する。これにより、自動運転中には、ロボットハンドが常時適切なハンドリング位置に移動するようになる。
【0026】
これにより、例えば、ロボットアーム自身の位置ずれやロボットハンドの位置ずれが発生した場合や、部品供給トレイ内に収容されたワークが位置ずれを起こしていたり、傾いて配置されていたり、あるいは組立用治具でワークを組み立てる際に組立ミスを起こしたりした場合でも、カメラ部で撮影された画像を画像処理してワークの座標位置を補正することにより、適切なハンドリング位置(つまりロボットハンドのチャック部がワークを確実に把持できる位置)にロボットハンドを移動させるので、ロボットハンドのハンドリングミス(つまりワークの掴み損ね)を防止できる。これにより、自動運転中の「チョコ停」の発生を防止でき、システム全体のロバスト性を大幅に向上できる。
【0027】
請求項7の発明では、請求項1において、ロボットハンドが、運転中におけるチョコ停の発生時に、仕掛品を撤去するための撤去装置をさらに備えている。
【0028】
請求項7の発明によれば、自動運転中に万一「チョコ停」が発生した場合には、カメラ部が撮影する画像に基づいてロボットハンドが仕掛品の位置まで移動するとともに、ロボットハンドに設けられた撤去装置が当該仕掛品を自動的に撤去するようになるので、「チョコ停」発生後の自動復帰が可能になる。
【0029】
請求項8の発明では、請求項1において、制御部には、操作者の体の一部の画像パターンが格納されており、カメラ部で撮影された画像が前記画像パターンを含んでいたときに、制御部がロボットアームの運転を緊急停止させるようになっている。これにより、システム全体の安全性を向上できる。
【0030】
請求項9の発明では、請求項1において、ロボットハンドが、ロボットアームの先端に着脱自在に取り付けられる基台と、基台に対してチャック部を動かすチャック駆動部とを備えており、制御部が、カメラ部で撮影された画像に基づき、チャック駆動部を駆動制御する第1の制御部と、当該ロボットにおいてチャック駆動部以外の駆動制御を行う第2の制御部とを備えている。
【0031】
この場合には、カメラ部で撮影された画像に基づいて、第1の制御部がチャック駆動部を駆動制御することにより、チャック部が基台に対して動く。これにより、第2の制御部によるロボット駆動制御とは独立して、チャック部の位置補正を行うことができるようになる。この場合、例えばロボットの動作プログラムの設計が容易になる。
【0032】
請求項10の発明では、請求項1において、制御部が、カメラ部で撮影された画像に基づいてワークを把持できないと判断した場合には、ワークを把持するための別の動作を駆動制御している。
【0033】
この場合、制御部は、撤去装置を駆動して仕掛品を撤去させたり、把持できないワークをスキップして次のワークを把持するように指示したり、またはアラームを表示して操作者に通報したりする。これにより、システム全体の稼働率を向上させることができる。
【0034】
請求項1におけるカメラ部は、請求項11の発明に記載されているように、可搬型カメラを含んでいる。
【0035】
この場合には、ティーチングの際に、カメラ部を各ロボットに対応した適切な位置に適宜移動させることで、カメラ部を複数のロボットで共用できるようになる。
【0036】
請求項12の発明に係るロボットハンドは、ロボットアームの先端に設けられるロボットハンドであって、ロボットアームの先端に着脱自在に取り付けられる基台と、基台に設けられるワーク把持用のチャック部と、当該ロボットハンドに設けられ、少なくともワークを撮影できるカメラ部と、カメラ部で撮影された画像に基づき、基台に対してチャック部を動かす駆動部とを備えている。
【0037】
この場合には、カメラ部で撮影された画像に基づき、駆動部の駆動により、チャック部が基台に対して動く。これにより、ロボットアームの動きとは独立して、チャック部の位置補正を行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0038】
以上のように、本発明に係るロボット制御システムによれば、操作部にティーチング入力された所定の座標位置を、カメラ部で撮影された画像に基づいて補正するようにしたので、各種誤差に対する補正が一度に自動的に行われることになって、セルフキャリブレーションによる自動補正が可能になり、これにより、ティーチング作業を簡略化でき、ティーチング時間を短縮できる。また本発明によれば、ティーチング後の自動運転時には、制御部がロボットを駆動制御することにより、補正された座標位置にロボットアームおよびロボットハンドが移動させることができるので、チョコ停の発生を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
図1ないし図8は、本発明の一実施例によるロボット制御システムを説明するための図である。図1はロボット制御システムの平面概略図、図2はロボットの側面斜視図、図3はロボットハンドの拡大斜視図、図4はティーチングペンダントの正面拡大図、図5はロボット制御システムの制御部のブロック構成図、図6はティーチング時におけるティーチングペンダントの操作の一例を示す図、図7は自動運転時におけるロボットハンドのハンドリング制御の一例を示す図、図8は本実施例システムの運転動作の一例を従来装置と比較して示す図である。
【0040】
図1に示すように、ロボット制御システム1は、ワークテーブル面2上に離隔配置された2つの組立用ロボット3、4を備えている。ロボット3、4はいずれも多関節ロボットであって、複数のロボットアーム30、40をそれぞれ有している。先端側のロボットアーム30、40の先端には、ロボットハンド31、41がそれぞれ設けられている。
【0041】
ワークテーブル面2上の一側部には、それぞれ多数の部品(ワーク)(図示せず)を収容する複数の部品供給トレイ5、6が整列して配置されている。これらの部品供給トレイ5、6は、図示しない搬入装置によって、ワークテーブル面2上に搬入されるようになっている。ワークテーブル面2上において、略中央位置には、各ロボット3、4により部品の組立作業が行われる組立用治具7が取り付けられている。ワークテーブル2の下方には、それぞれロボット3、4を駆動制御するためのコントローラA、Bが設けられている。また、ワークテーブル2の一側方には、ロボットアーム30、40の可動範囲全体を撮影するための可搬型カメラ8が配置されている。可搬型カメラ8は、広角レンズを有し、ズーム機能およびパン機能を有しているものが好ましい。
【0042】
ロボット3は、図2に示すように、先端側のロボットアーム30の先端に着脱自在なロボットハンド31を有している。ロボットハンド31には、複数のワーク把持用チャック部32が設けられている。
【0043】
チャック部32は、図3に示すように、支持台33に支持されている。支持台33には、チャック部32を駆動する駆動機構が内蔵されている。ロボットハンド31は、ベース板31Aを有している。図示された4つの支持台33のうちの一つが、ベース板31A上において図示矢印方向に移動可能に設けられており、この移動可能な支持台33の側面には、チャック部32の先端を撮影するための小型カメラ、例えばビジョンカメラまたはCCDカメラ34が取り付けられている。
【0044】
なお、ロボット4のロボットハンド41についても同様の構成を有しているため、ここでは、説明を省略する。
【0045】
また、このロボット制御システム1は、図4に示すようなティーチングペンダント(操作部)10を有している。ティーチングペンダント10は、ロボットハンド31のカメラ34で撮影された画像を表示するためのLCD(液晶)ディスプレイ11と、操作者が握るための左右のグリップ12、13と、非常停止ボタン14とを備えている。
【0046】
ディスプレイ11は、タッチパネル式のディスプレイである。また、ディスプレイ11の左右両側には、起動、停止、ティーチングなどのロボット操作用の押しボタンスイッチ11aが複数個設けられている。グリップ12の裏面には、ティーチング時や試運転時などの非定常作業時に操作者が危険を回避するための3ポジション方式のイネーブルスイッチ(図示せず)が設けられている。
【0047】
次に、ロボット制御システム1の制御部について図5を用いて説明する。
制御部100は、ロボット3のコントローラAと、ロボット4のコントローラBとを備えている。コントローラA、Bは互いに通信可能に構成されている。
【0048】
コントローラAの入力側には、ティーチングペンダント10がワイヤレスで接続されている。ティーチングペンダント10には、上述したように、タッチパネル11、非常停止スイッチ14およびイネーブルスイッチ15が接続されている。また、コントローラAの入力側には、小型カメラ34および可搬型カメラ8が接続されている。
【0049】
コントローラAの出力側には、ロボットアーム30およびロボットハンド31を駆動するためのモータm1〜mnが接続されている。また、コントローラAの出力側には、自動運転中の「チョコ停」の発生時に仕掛品をワークテーブル面2上から撤去するための撤去装置105が接続されている。この撤去装置105は、ロボットハンド31に設けられており、好ましくは、ロボットハンド31におけるいずれかのチャック部32が撤去装置105として機能している。なお、ワークテーブル面2上に向けて圧搾空気を噴出させるためのエアノズルを撤去装置105に設けるようにしてもよい。
【0050】
コントローラAの出力側には、さらにパソコン110が接続されている。パソコン110は、ティーチング時のシミュレーションを行うだけでなく、可搬型カメラ8で撮影した自動運転中の映像をモニターするのに用いられている。コンピュータ110は、コントローラAに無線LANで接続されている。なお、自動運転中の映像は、ティーチングペンダント10に表示するようにしてもよい。
【0051】
一方、コントローラBの入力側には、同様にロボット4において、ロボットハンド41のチャック部の支持台に設けられた小型カメラ44が接続されている。また、コントローラBの出力側には、ロボットアーム40およびロボットハンド41を駆動するためのモータm1’〜mn’と、撤去装置105と同様の撤去装置106とが接続されている。
【0052】
次に、上述のように構成されたロボット制御システムのティーチング作業について説明する。
なお、ここでは、ロボット3のティーチング作業について説明するが、ロボット4についても同様であり、ここではロボット4のティーチング作業についての説明は省略する。
【0053】
ティーチングを行う際には、まず、操作者は、ティーチングペンダント10を操作することによってロボットアーム30を動かし、このとき、ロボットアーム30およびロボットハンド31を見ながら目標位置に近づけることで、概略の座標位置を入力する。ロボットアーム30およびロボットハンド31の移動後、ロボットハンド31の小型カメラ34で画像を撮影する。撮影された画像は、ティーチングペンダント10のタッチパネル11に表示される。
【0054】
移動後のタッチパネル11に表示された画像が、図6(a)に示すようなものであったとする。この画像は、ワークWを把持するロボットハンド31のチャック部32が、ワークテーブル面2上の組立用治具7の直前で停止している状態を示している。
【0055】
次に、操作者は、タッチパネル11上で現在の座標位置Xおよび目標の座標位置Yをそれぞれペンなどで触れて入力するか、あるいは、チャック部32に把持されたワークWの輪郭をタッチペンでなぞって入力するとともに、組立用治具7においてワークWが組み込まれる凹部の対応する輪郭を同様にタッチペンでなぞることで一致させたい部位を指し示す。これら2個所のペン入力後、タッチパネル側部のティーチングボタンを押すことにより、現在の座標位置Xに、指し示した2個所の座標の差分が加えられた座標位置がコントローラAのメモリ内に格納される。
【0056】
このようにして、ティーチングペンダント10によりロボットアーム30を動かすことで所定の座標位置を入力した後に、タッチパネル11に表示された画像に基づいてタッチペンにより位置座標の補正を行うことで、簡単にティーチング作業が完了する。制御部は、補正された座標位置に基づいてロボットを駆動制御する。なお、ペン入力による補正にかえて、図7を用いて後述する補正方法を用いるようにしてもよい。
【0057】
ティーチング後の自動運転時には、コントローラAがロボットアーム30およびロボットハンド31を駆動制御することにより、ティーチングペンダント10でティーチングされた所定の座標位置にロボットハンド31およびチャック部32が移動して、ワークWが組立用治具7に組み付けられることになる(図6(b)参照)。
【0058】
この場合には、ロボットハンド31、組立用治具7などの各種モジュールの設置にともなう誤差や、チャック部32、組立用治具7自体の個体差による誤差などがあった場合でも、操作者がティーチングペンダント10の画像を見て始点および終点の座標位置を入力するだけで、各種誤差に対する補正が一度に自動的に行われることになる。これにより、セルフキャリブレーションによる自動補正が可能になって、ティーチング作業を簡略化でき、ティーチング時間を短縮できる。
【0059】
また、この場合には、ティーチング作業時に操作者が装置の中に頭を突っ込んで作業を行ったりする必要がなく、操作者はティーチングペンダント10のタッチパネル11を見ながら操作するだけでよいので、操作者にとって安全かつフレンドリーな作業環境を実現できる。
【0060】
次に、自動運転中において、小型カメラ34を用いたチャック部32のハンドリング制御について、図7を用いて説明する。
同図は、部品供給トレイ5からワークWを取り出す際の小型カメラ34による映像をティーチングペンダント10のタッチパネル10の画像として表示したものである。
【0061】
いま、図7(a)に示すように、部品供給トレイ5に収容されたワークW’が正規の位置から外れて傾いて配置されていたとする。小型カメラ34で撮影された同図(a)の映像は、コントローラAに読み込まれ、コントローラAで画像処理されて、ワークW’を把持するための適切なハンドリング位置にチャック部32が移動するように、チャック部32の移動座標を計算する。
【0062】
ロボットハンド31は、コントローラAでの画像処理結果に基づいて駆動制御されて、適切なハンドリング位置に移動し(図7(b)参照)、これにより、チャック部32がワークW’を確実に把持することができる。
【0063】
このように自動運転中には、小型カメラ34で撮影された画像が順次コントローラAに読み込まれていき、必要に応じてハンドリング位置の補正をリアルタイムで行うので、部品供給トレイ5内に収容されたワークWが位置ずれを起こしていたり、傾いて配置されていたり、あるいは組立用治具7でワークWを組み立てる際に組立ミスを起こしたりした場合でも、ティーチング入力された座標位置を制御部が補正することにより、適切なハンドリング位置にロボットハンド31を移動させるので、ロボットハンド31のハンドリングミス(ワークの掴み損ね)を防止できる。これにより、自動運転中の「チョコ停」の発生を防止でき、システム全体のロバスト性を大幅に向上できる。
【0064】
なお、この場合には、小型カメラ24が、チャック部32を支持する支持台33の側面に設けられているので(図3参照)、チャック部32先端の画像を入手することが可能であり、また小型カメラ34がチャック部の開閉動作の影響を受けないという利点もある。また、チャック部32の支持台33が移動可能に設けられているので、チャック部32の位置の微調整が簡単に行えるようになる。
【0065】
次に、このロボット制御システムの運転動作について図8を用いて説明する。
図8(a)は従来装置の運転動作を、同図(b)は本実施例システムの運転動作をそれぞれ示している。各図中、横軸は時間を、縦軸は単位時間の組立個数をそれぞれ示している。したがって、斜線で囲まれた領域は総生産量を表しており、機械が実際に稼動中であったことを示している。逆に、白抜きの部分は、機械が停止していたことを示している。
【0066】
図8において、設備を立ち上げてから実際に運転が開始されるまでの時間Δt1およびΔT1は、ティーチング時間を示している。同図に示すように、本実施例によるロボット制御システムにおけるティーチング時間ΔT1は、従来装置におけるティーチング時間Δt1の数分の一の長さになっている。
【0067】
これは、上述したように、小型カメラ34、44で撮影した画像をティーチングペンダント10のタッチパネル11に表示するとともに、タッチパネル11上の当該画像を操作することでロボットハンド31、41に対するティーチング作業を簡単に行えるようにしたためである。
【0068】
また、自動運転中における「チョコ停」の発生が大幅に減少している。これは、上述したように、自動運転中においてチャック部32のハンドリングミスが従来装置に比較して大幅に減少しており、「チョコ停」の発生が事前に回避されているためである。
【0069】
さらに、「チョコ停」の発生後、機械が復帰するまでに要する復帰時間ΔT2は、従来装置における復帰時間Δt2およびΔt3よりも減少している。これは、従来装置においては、「チョコ停」の発生後、操作者が仕掛品を手で撤去した後、手動で起動ボタンを押していたためであり、本実施例システムにおいては、「チョコ停」の発生後、撤去装置105が自動的に仕掛品を撤去することにより、機械が自動的に復帰するようになったためである。
【0070】
また、段取替えに要する段取時間ΔT3も従来装置における段取時間Δt4に比較して減少している。これは、段取替え作業が、ロボットハンドの交換や組立用治具の交換などを必要とし、これにともなう座標位置の補正を従来はロボットハンドのマニュアル操作で行っていたが、本実施例システムでは、小型カメラ34による映像を利用して、ティーチングペンダント10での操作により簡単に行えるようにしたためである。
【0071】
図8から分かるように、設備を立ち上げてから最初の段取替えに到るまでに要する時間は、本実施例システムの方が従来装置よりも短くなっており、生産性が向上している。これは、既述したように、本実施例システムにおいては、第1に、ティーチング時間が減少したこと、第2に、「チョコ停」の発生頻度が減少したこと、第3に、「チョコ停」の発生後、復帰までに要する時間が減少したことが挙げられる。
【0072】
図8に示すように、運転を開始してから最初の段取替えに到るまでにおける斜線領域の面積は、本実施例システムと従来装置とで互いに等しくなっている。すなわち、最初の段取替えに到るまで、本実施例システムも従来装置も同一個数の製品を組み立てている。
【0073】
また、ロボット制御システム1のコントローラA、Bの各メモリには、操作者の体の一部の画像パターンが格納されている。そして、自動運転中に可搬型カメラ8が撮影した画像の中に操作者の体の画像パターンが含まれていたときには、コントローラA、Bがロボットアーム30、40の運転を緊急停止させるようになっている。これにより、安全性の高いシステムを実現できる。なお、可搬型カメラ8に代えて、ロボットハンド31に取り付けられた小型カメラが撮影した画像に基づいて、同様に運転の緊急停止を行うようにしてもよい。
【0074】
このような本実施例によれば、ロボットハンド31のワーク把持用チャック部32に小型カメラ34を設け、小型カメラ34で撮影された画像をティーチングペンダント10のタッチパネル11に表示させるとともに、この画像に基づいてティーチングペンダント10を操作することで座標位置の補正を行うようにしたので、各種誤差に対する補正が一度に自動的に行われることになって、セルフキャリブレーションによる自動補正が可能になり、これにより、ティーチング作業を簡略化でき、ティーチング時間を短縮できる。
【0075】
なお、前記実施例では、ワークを撮影するカメラ部として、ロボットハンド31に設けられた小型カメラ34を用いた例を示したが、この小型カメラ34の代わりに、可搬型カメラ8を用いるようにしてもよい。この場合には、可搬型カメラ8で撮影された画像に基づいて座標位置の補正が行われることになる。
【0076】
また、前記実施例では、小型カメラ34がチャック部32の支持台33の側面に設けられた例を示したが、図9ないし図11は、小型カメラ34のかわりに、または前記実施例の小型カメラ34に加えて、前記実施例とは異なる位置にカメラが取り付けられた例を示している。これらの図において、前記実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0077】
図9に示す例では、小型カメラ34Aが、チャック部32を支持する支持台33の支持面の中心位置に設けられている。
【0078】
この場合には、小型カメラ34Aの視野がチャック部32の閉動作時に狭められるという欠点はあるものの、小型カメ34Aの光軸をチャック部32の作業軸と一致させることができるので、座標位置の設定が容易になる。
【0079】
図10に示す例では、カメラ34Bが、各チャック部32、32’の内側の位置つまりベース板31Aの略中央位置に配置されている。また、同図中、チャック部32’は撤去装置として機能するチャック部であり、その支持台33の側面には、小型カメラ34Cが設けられている。
【0080】
この場合、カメラ34Bは、チャック部32の側方に配置されているので、「チョコ停」発生時の全体画像を撮影するのに用いられる。小型カメラ34Cは、チャック部32’の先端の画像を撮影することができるので、チャック部32’で仕掛品を撤去する際の撤去作業を円滑に行えるようになる。
【0081】
図11に示す例では、小型カメラ34Dが、チャック部32の側方に設けられたカメラ支持台33Aの上に設けられている。この場合には、小型カメラ34Dがチャック部32の側方に配置されているので、チャック部先端の画像を撮影することはできないが、「チョコ停」の発生時にその状態を撮影できる。
【0082】
また、図12に示す例では、図9と同様の小型カメラ34Aが、各チャック部32をそれぞれ支持する各支持台33の支持面の中心位置に設けられている。ロボットハンド31は、当該ロボットハンド31のみの駆動制御を行うコントローラ100’を有している。コントローラ100’は、上述したコントローラA、Bとは別個独立した制御を行うコントローラである。各チャック部32の各支持台33は、水平面内におけるX方向およびY方向(ならびに鉛直方向であるZ方向)に移動可能な移動ベース35にそれぞれ取り付けられている。なお、図12中、参照符号31Bは、ロボットアーム30(図2)の先端に着脱自在に取り付けられる基台を示している。
【0083】
この場合には、小型カメラ34Aで撮影した画像に基づき、チャック部32の移動座標位置を補正する必要があった場合には、コントローラ100’が移動ベース35を駆動制御することにより、チャック部32がX方向、Y方向、Z方向、XY方向、YZ方向、X方向またはXYZ方向のいずれかの方向に移動して、チャック部32の座標位置の補正が行われる。
【0084】
この場合、ロボットの駆動部以外の制御とは独立して、ワーク把持のための制御を行えるようになる。
【0085】
図13には、自動復帰用ロボットハンド31が示されている。ロボットハンド31には、図10と同様のカメラ34Bおよび撤去専用のチャック部32’が設けられている。また、ロボットハンド31には、圧搾エアを噴出させるノズル36と、エアを吸引する吸引部37とが設けられている。この自動復帰用ロボットハンド31は、通常の運転時には、例えば図1中の参照符号51、52で示す位置に配置されている。
【0086】
自動運転中に、チャック部によりワークを把持できないとコントローラが判断した場合には、コントローラは、ロボットアームを駆動して、ロボットハンドを、図1中の参照符号51、52で示す位置に配置された自動復帰用ロボットハンドに付け替える。
【0087】
そして、コントローラは、カメラ34Bによる撮像に基づいて仕掛品が存在することを認識し、まず、撤去専用のチャック部32’を駆動して仕掛品を撤去させようとする。その撤去作業後、カメラ34Bの撮像から仕掛品が存在していないと判断されれば、コントローラは、仕掛品が撤去されたと判断して、組立動作を再開する。
【0088】
その一方、カメラ34Bの撮像から仕掛品が撤去されていないと判断されれば、コントローラは、ノズル36からの圧搾エアの噴出および吸引部37によるエアの吸引を交互に複数回繰り返した後、カメラ34Bの撮像から仕掛品が存在していないと判断されれば、コントローラは、仕掛品が撤去されたと判断して、組立動作を再開する。
【0089】
また、カメラ34Bの撮像から仕掛品が撤去されていないと判断されれば、コントローラは、アラームを鳴らすなどのアラーム表示を行って、操作者に通報する。操作者は、仕掛品を撤去し、その後、自動運転を再開する。
【0090】
上述した操作部としては、ティーチングペンダントの他に、ロボットが置かれた現場から離れたオフィスに設けられた端末であってもよい。この場合には、カメラで撮影された画像を端末のディスプレイに表示することによって、稼動時のロボットの監視やティーチングを行うことが可能である。
【0091】
また、上述したワイヤレス接続のティーチングペンダント10および可搬型カメラ8は、操作者が持ち運ぶことが可能なので、図1に示すロボットシステムが現場に複数設けられている場合に、1組のティーチングペンダント10および可搬型カメラ8を共用できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の一実施例によるロボット制御システムの平面概略図である。
【図2】ロボットの側面斜視図である。
【図3】ロボットハンドの拡大斜視図である。
【図4】ティーチングペンダントの正面拡大図である。
【図5】ロボット制御システムの制御部のブロック構成図である。
【図6】ティーチング時におけるティーチングペンダントの操作の一例を示す図である。
【図7】自動運転時におけるロボットハンドのハンドリング制御の一例を示す図である。
【図8】本実施例システムの運転動作の一例を従来装置と比較して示す図である。
【図9】本発明の他の実施例によるロボットハンドの拡大斜視図である。
【図10】本発明の他の実施例によるロボットハンドの拡大斜視図である。
【図11】本発明の他の実施例によるロボットハンドの拡大斜視図である。
【図12】本発明の他の実施例によるロボットハンドの拡大斜視図である。
【図13】本発明の他の実施例によるロボットハンドの拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0093】
1: ロボット制御システム
3: ロボット
30: ロボットアーム
31: ロボットハンド
32: チャック部
33: 支持台
34: 小型カメラ(カメラ部)
4: ロボット
40: ロボットアーム
41: ロボットハンド
44: 小型カメラ
8: 可搬型カメラ(カメラ部)
10: ティーチングペンダント(操作部)
11: タッチパネル(ディスプレイ)
100: 制御部
A、B: コントローラ
105: 撤去装置
106: 撤去装置
W: ワーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット制御システムに関し、詳細には、カメラによる撮像を用いて視覚制御を行えるようにしたロボット制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場の組立ヤードにおいて多数の部品からなる電子機器などの機器を自動的に組み立てる産業用ロボットを含む自動組立装置が提案されている(特開2000−354919号公報および特開平2006−43844号公報参照)。
【0003】
産業用ロボットは、一般に、旋回可能かつ上下動可能なロボットアームと、ロボットアームの先端に設けられ、ワーク(部品)を把持するためのチャック部を有するロボットハンドと、ロボットアームおよびロボットハンドを所定の制御プログラムにしたがって駆動制御する制御部とを備えている。また、自動組立装置は、ワークテーブル面上のそれぞれ所定位置に配置された、多数の部品を収容する複数の部品供給トレイと、部品の組立てを行うための組立用治具とを有している。
【0004】
自動組立装置の運転時には、ロボットアームを駆動して、ロボットハンドを所定の部品供給トレイの位置まで移動させ、先端のチャック部で部品を把持する。この状態から、ロボットアームを駆動して、ロボットハンドを組立用治具の位置まで移動させ、チャック部に把持されていた部品を組立用治具に組み付ける。以下、同様の動作を繰り返すことにより、所望の機器が自動的に組み立てられることになる。
【0005】
このような産業用ロボットを含む自動組立装置においては、自動運転を開始する前に、ロボットに対して動作基準座標や動作手順等を教示するティーチングという作業が必要になる。従来のティーチング作業では、パソコン上のコンピュータシミュレーションなどにより、概略の座標位置を求めた後、操作者が、ティーチングペンダントやティーチングボックスを用いて実際にロボットハンドをマニュアル操作することにより、正確な座標位置の設定を行うようにしている。
【特許文献1】特開2000−354919号公報(段落[0022]および図1参照)
【特許文献2】特開2006−43844号公報(段落[0039]および図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来の装置においては、上述したティーチング作業において細かな座標位置の設定が非常に煩雑であった。また、ロボットの個体差による誤差、ロボットハンドや部品供給トレイ、組立用治具などの各種モジュールの設置時に生じる誤差、チャック部や組立用治具自体の個体差による誤差があるため、ロボット等を設置し直すごとにティーチングを行わなければならず、ティーチング作業に長時間を要していた。また、とくに、小さな機器の組立装置の場合には、操作者が装置の中に頭を突っ込んで無理な態勢でティーチング作業を行わなければならない場合もあり、操作者にとって、とても安全かつフレンドリーな作業環境とはいえないものであった。さらに、ロボットの自動組立を継続して行うと、ロボットアーム自身の位置ずれやロボットハンドの位置ずれが発生して累積し、あるいはワークの位置ずれにより、自動運転中に組立てを継続して行えないというトラブルが発生して、ロボットが停止するといういわゆる「チョコ停」(すなわち、機械の故障ではなく、一時的なトラブルに起因した機械の停止状態)が発生していた。
【0007】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、ティーチング作業を簡略化でき、ティーチング時間を短縮できるとともに、自動運転中のいわゆる「チョコ停」の発生を防止できるロボット制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明に係るロボット制御システムは、ロボットアームとその先端に設けられたワーク把持用のチャック部を有するロボットハンドとを含むロボットと、ロボットに対してティーチング入力を行うための操作部と、少なくともワークを撮影できるカメラ部と、操作部でティーチング入力された所定の座標位置をカメラ部で撮影された画像に基づいて補正して、補正された座標位置に移動するようにロボットを駆動制御する制御部とを備えている。
【0009】
請求項1の発明においては、ティーチング入力された所定の座標位置(例えばワークの把持動作または把持解除動作の直前の座標位置)までロボットアームおよびロボットハンドを移動させ、移動後、ワークをカメラ部で撮影する。制御部は、カメラ部で撮影された画像に基づいて前記所定の座標位置を補正する。
【0010】
ここで、補正がティーチング入力の際に行われる場合には、ロボットハンド、部品供給トレイ、組立用治具などの各種モジュールの設置にともなう誤差や、チャック、組立用治具自体の個体差による誤差などが生じた場合でも、カメラ部で撮影された画像に基づいて、各種誤差に対する補正が一度に自動的に行われることになる。これにより、セルフキャリブレーションによる自動補正が可能になって、ティーチング作業を簡略化でき、ティーチング時間を短縮できる。
【0011】
また、カメラ部で撮影された画像に基づいて補正が行われるので、ティーチング作業時に操作者が装置の中に頭を突っ込んで作業を行ったりする必要がなく、操作者にとって安全かつフレンドリーな作業環境を実現できる。
【0012】
一方、補正がティーチング後の自動運転時に行われる場合には、制御部がロボットを駆動制御することにより、補正された座標位置にロボットアームおよびロボットハンドが移動することになって、チョコ停の発生を防止できる。
【0013】
請求項2の発明では、請求項1において、カメラ部が、チャック部を支持する支持台の側面に設けられている。
【0014】
この場合には、チャック部先端の画像を入手することが可能であり、このようなカメラ部としては、例えば小型のビジョンカメラやCCDカメラなどが適している。また、この場合には、カメラ部がチャック部の支持台の側面に設けられていることにより、カメラ部がチャック部の開閉動作の影響を受けない、という利点がある。
【0015】
請求項3の発明では、請求項2において、チャック部の支持台が移動可能に設けられている。
【0016】
この場合には、カメラ部で撮影した画像に基づいて、カメラ部の支持台自体を移動させることができるので、チャック部の位置の微調整が簡単に行えるようになる。
【0017】
請求項4の発明では、請求項1において、カメラ部が、チャック部を支持する支持台の支持面の中心位置に設けられている。
【0018】
この場合には、カメラ部の光軸をチャック部の作業軸と一致させることができるので、座標位置の設定が容易になる。
【0019】
請求項5の発明では、請求項1において、操作部がカメラ部で撮影された画像を表示するタッチパネル式のディスプレイを有し、操作者がディスプレイに触れることで補正が行われるようになっている。
【0020】
この場合には、カメラ部で撮影された画像は、操作部のディスプレイに表示される。操作者は、ディスプレイの画像を見ながら、ロボットハンドの現在の位置を始点としかつ目標の座標位置(例えば組立用治具の位置)を終点とするように、ディスプレイに触れて操作部を操作することで補正を行う。
【0021】
この場合には、ロボットハンド、部品供給トレイ、組立用治具などの各種モジュールの設置にともなう誤差や、チャック、組立用治具自体の個体差による誤差などが生じた場合でも、操作者が操作部のディスプレイ上の画像を見て始点および終点の座標位置を入力するだけで、各種誤差に対する補正が一度に自動的に行われることになる。これにより、セルフキャリブレーションによる自動補正が可能になって、ティーチング作業を簡略化でき、ティーチング時間を短縮できる。
【0022】
また、この場合には、ティーチング作業時に操作者が装置の中に頭を突っ込んで作業を行ったりする必要がなく、操作者は操作部のディスプレイを見ながら操作するだけでよいので、操作者にとって安全かつフレンドリーな作業環境を実現できる。
【0023】
さらに、この場合には、操作者が操作部のディスプレイを用いて、ワンタッチで簡単に補正を行えるようになる。
【0024】
請求項6の発明では、請求項1において、自動運転時にロボットハンドが適切なハンドリング位置に移動するように、制御部が、カメラ部で撮影された画像に基づいてロボットハンドを駆動制御している。
【0025】
請求項6の発明によれば、自動運転時には、ロボットハンドが予め設定されたハンドリング位置の近傍まで移動したとき、カメラ部が画像を撮影し、制御部はこの画像に基づいてハンドリング位置を補正する。これにより、自動運転中には、ロボットハンドが常時適切なハンドリング位置に移動するようになる。
【0026】
これにより、例えば、ロボットアーム自身の位置ずれやロボットハンドの位置ずれが発生した場合や、部品供給トレイ内に収容されたワークが位置ずれを起こしていたり、傾いて配置されていたり、あるいは組立用治具でワークを組み立てる際に組立ミスを起こしたりした場合でも、カメラ部で撮影された画像を画像処理してワークの座標位置を補正することにより、適切なハンドリング位置(つまりロボットハンドのチャック部がワークを確実に把持できる位置)にロボットハンドを移動させるので、ロボットハンドのハンドリングミス(つまりワークの掴み損ね)を防止できる。これにより、自動運転中の「チョコ停」の発生を防止でき、システム全体のロバスト性を大幅に向上できる。
【0027】
請求項7の発明では、請求項1において、ロボットハンドが、運転中におけるチョコ停の発生時に、仕掛品を撤去するための撤去装置をさらに備えている。
【0028】
請求項7の発明によれば、自動運転中に万一「チョコ停」が発生した場合には、カメラ部が撮影する画像に基づいてロボットハンドが仕掛品の位置まで移動するとともに、ロボットハンドに設けられた撤去装置が当該仕掛品を自動的に撤去するようになるので、「チョコ停」発生後の自動復帰が可能になる。
【0029】
請求項8の発明では、請求項1において、制御部には、操作者の体の一部の画像パターンが格納されており、カメラ部で撮影された画像が前記画像パターンを含んでいたときに、制御部がロボットアームの運転を緊急停止させるようになっている。これにより、システム全体の安全性を向上できる。
【0030】
請求項9の発明では、請求項1において、ロボットハンドが、ロボットアームの先端に着脱自在に取り付けられる基台と、基台に対してチャック部を動かすチャック駆動部とを備えており、制御部が、カメラ部で撮影された画像に基づき、チャック駆動部を駆動制御する第1の制御部と、当該ロボットにおいてチャック駆動部以外の駆動制御を行う第2の制御部とを備えている。
【0031】
この場合には、カメラ部で撮影された画像に基づいて、第1の制御部がチャック駆動部を駆動制御することにより、チャック部が基台に対して動く。これにより、第2の制御部によるロボット駆動制御とは独立して、チャック部の位置補正を行うことができるようになる。この場合、例えばロボットの動作プログラムの設計が容易になる。
【0032】
請求項10の発明では、請求項1において、制御部が、カメラ部で撮影された画像に基づいてワークを把持できないと判断した場合には、ワークを把持するための別の動作を駆動制御している。
【0033】
この場合、制御部は、撤去装置を駆動して仕掛品を撤去させたり、把持できないワークをスキップして次のワークを把持するように指示したり、またはアラームを表示して操作者に通報したりする。これにより、システム全体の稼働率を向上させることができる。
【0034】
請求項1におけるカメラ部は、請求項11の発明に記載されているように、可搬型カメラを含んでいる。
【0035】
この場合には、ティーチングの際に、カメラ部を各ロボットに対応した適切な位置に適宜移動させることで、カメラ部を複数のロボットで共用できるようになる。
【0036】
請求項12の発明に係るロボットハンドは、ロボットアームの先端に設けられるロボットハンドであって、ロボットアームの先端に着脱自在に取り付けられる基台と、基台に設けられるワーク把持用のチャック部と、当該ロボットハンドに設けられ、少なくともワークを撮影できるカメラ部と、カメラ部で撮影された画像に基づき、基台に対してチャック部を動かす駆動部とを備えている。
【0037】
この場合には、カメラ部で撮影された画像に基づき、駆動部の駆動により、チャック部が基台に対して動く。これにより、ロボットアームの動きとは独立して、チャック部の位置補正を行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0038】
以上のように、本発明に係るロボット制御システムによれば、操作部にティーチング入力された所定の座標位置を、カメラ部で撮影された画像に基づいて補正するようにしたので、各種誤差に対する補正が一度に自動的に行われることになって、セルフキャリブレーションによる自動補正が可能になり、これにより、ティーチング作業を簡略化でき、ティーチング時間を短縮できる。また本発明によれば、ティーチング後の自動運転時には、制御部がロボットを駆動制御することにより、補正された座標位置にロボットアームおよびロボットハンドが移動させることができるので、チョコ停の発生を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
図1ないし図8は、本発明の一実施例によるロボット制御システムを説明するための図である。図1はロボット制御システムの平面概略図、図2はロボットの側面斜視図、図3はロボットハンドの拡大斜視図、図4はティーチングペンダントの正面拡大図、図5はロボット制御システムの制御部のブロック構成図、図6はティーチング時におけるティーチングペンダントの操作の一例を示す図、図7は自動運転時におけるロボットハンドのハンドリング制御の一例を示す図、図8は本実施例システムの運転動作の一例を従来装置と比較して示す図である。
【0040】
図1に示すように、ロボット制御システム1は、ワークテーブル面2上に離隔配置された2つの組立用ロボット3、4を備えている。ロボット3、4はいずれも多関節ロボットであって、複数のロボットアーム30、40をそれぞれ有している。先端側のロボットアーム30、40の先端には、ロボットハンド31、41がそれぞれ設けられている。
【0041】
ワークテーブル面2上の一側部には、それぞれ多数の部品(ワーク)(図示せず)を収容する複数の部品供給トレイ5、6が整列して配置されている。これらの部品供給トレイ5、6は、図示しない搬入装置によって、ワークテーブル面2上に搬入されるようになっている。ワークテーブル面2上において、略中央位置には、各ロボット3、4により部品の組立作業が行われる組立用治具7が取り付けられている。ワークテーブル2の下方には、それぞれロボット3、4を駆動制御するためのコントローラA、Bが設けられている。また、ワークテーブル2の一側方には、ロボットアーム30、40の可動範囲全体を撮影するための可搬型カメラ8が配置されている。可搬型カメラ8は、広角レンズを有し、ズーム機能およびパン機能を有しているものが好ましい。
【0042】
ロボット3は、図2に示すように、先端側のロボットアーム30の先端に着脱自在なロボットハンド31を有している。ロボットハンド31には、複数のワーク把持用チャック部32が設けられている。
【0043】
チャック部32は、図3に示すように、支持台33に支持されている。支持台33には、チャック部32を駆動する駆動機構が内蔵されている。ロボットハンド31は、ベース板31Aを有している。図示された4つの支持台33のうちの一つが、ベース板31A上において図示矢印方向に移動可能に設けられており、この移動可能な支持台33の側面には、チャック部32の先端を撮影するための小型カメラ、例えばビジョンカメラまたはCCDカメラ34が取り付けられている。
【0044】
なお、ロボット4のロボットハンド41についても同様の構成を有しているため、ここでは、説明を省略する。
【0045】
また、このロボット制御システム1は、図4に示すようなティーチングペンダント(操作部)10を有している。ティーチングペンダント10は、ロボットハンド31のカメラ34で撮影された画像を表示するためのLCD(液晶)ディスプレイ11と、操作者が握るための左右のグリップ12、13と、非常停止ボタン14とを備えている。
【0046】
ディスプレイ11は、タッチパネル式のディスプレイである。また、ディスプレイ11の左右両側には、起動、停止、ティーチングなどのロボット操作用の押しボタンスイッチ11aが複数個設けられている。グリップ12の裏面には、ティーチング時や試運転時などの非定常作業時に操作者が危険を回避するための3ポジション方式のイネーブルスイッチ(図示せず)が設けられている。
【0047】
次に、ロボット制御システム1の制御部について図5を用いて説明する。
制御部100は、ロボット3のコントローラAと、ロボット4のコントローラBとを備えている。コントローラA、Bは互いに通信可能に構成されている。
【0048】
コントローラAの入力側には、ティーチングペンダント10がワイヤレスで接続されている。ティーチングペンダント10には、上述したように、タッチパネル11、非常停止スイッチ14およびイネーブルスイッチ15が接続されている。また、コントローラAの入力側には、小型カメラ34および可搬型カメラ8が接続されている。
【0049】
コントローラAの出力側には、ロボットアーム30およびロボットハンド31を駆動するためのモータm1〜mnが接続されている。また、コントローラAの出力側には、自動運転中の「チョコ停」の発生時に仕掛品をワークテーブル面2上から撤去するための撤去装置105が接続されている。この撤去装置105は、ロボットハンド31に設けられており、好ましくは、ロボットハンド31におけるいずれかのチャック部32が撤去装置105として機能している。なお、ワークテーブル面2上に向けて圧搾空気を噴出させるためのエアノズルを撤去装置105に設けるようにしてもよい。
【0050】
コントローラAの出力側には、さらにパソコン110が接続されている。パソコン110は、ティーチング時のシミュレーションを行うだけでなく、可搬型カメラ8で撮影した自動運転中の映像をモニターするのに用いられている。コンピュータ110は、コントローラAに無線LANで接続されている。なお、自動運転中の映像は、ティーチングペンダント10に表示するようにしてもよい。
【0051】
一方、コントローラBの入力側には、同様にロボット4において、ロボットハンド41のチャック部の支持台に設けられた小型カメラ44が接続されている。また、コントローラBの出力側には、ロボットアーム40およびロボットハンド41を駆動するためのモータm1’〜mn’と、撤去装置105と同様の撤去装置106とが接続されている。
【0052】
次に、上述のように構成されたロボット制御システムのティーチング作業について説明する。
なお、ここでは、ロボット3のティーチング作業について説明するが、ロボット4についても同様であり、ここではロボット4のティーチング作業についての説明は省略する。
【0053】
ティーチングを行う際には、まず、操作者は、ティーチングペンダント10を操作することによってロボットアーム30を動かし、このとき、ロボットアーム30およびロボットハンド31を見ながら目標位置に近づけることで、概略の座標位置を入力する。ロボットアーム30およびロボットハンド31の移動後、ロボットハンド31の小型カメラ34で画像を撮影する。撮影された画像は、ティーチングペンダント10のタッチパネル11に表示される。
【0054】
移動後のタッチパネル11に表示された画像が、図6(a)に示すようなものであったとする。この画像は、ワークWを把持するロボットハンド31のチャック部32が、ワークテーブル面2上の組立用治具7の直前で停止している状態を示している。
【0055】
次に、操作者は、タッチパネル11上で現在の座標位置Xおよび目標の座標位置Yをそれぞれペンなどで触れて入力するか、あるいは、チャック部32に把持されたワークWの輪郭をタッチペンでなぞって入力するとともに、組立用治具7においてワークWが組み込まれる凹部の対応する輪郭を同様にタッチペンでなぞることで一致させたい部位を指し示す。これら2個所のペン入力後、タッチパネル側部のティーチングボタンを押すことにより、現在の座標位置Xに、指し示した2個所の座標の差分が加えられた座標位置がコントローラAのメモリ内に格納される。
【0056】
このようにして、ティーチングペンダント10によりロボットアーム30を動かすことで所定の座標位置を入力した後に、タッチパネル11に表示された画像に基づいてタッチペンにより位置座標の補正を行うことで、簡単にティーチング作業が完了する。制御部は、補正された座標位置に基づいてロボットを駆動制御する。なお、ペン入力による補正にかえて、図7を用いて後述する補正方法を用いるようにしてもよい。
【0057】
ティーチング後の自動運転時には、コントローラAがロボットアーム30およびロボットハンド31を駆動制御することにより、ティーチングペンダント10でティーチングされた所定の座標位置にロボットハンド31およびチャック部32が移動して、ワークWが組立用治具7に組み付けられることになる(図6(b)参照)。
【0058】
この場合には、ロボットハンド31、組立用治具7などの各種モジュールの設置にともなう誤差や、チャック部32、組立用治具7自体の個体差による誤差などがあった場合でも、操作者がティーチングペンダント10の画像を見て始点および終点の座標位置を入力するだけで、各種誤差に対する補正が一度に自動的に行われることになる。これにより、セルフキャリブレーションによる自動補正が可能になって、ティーチング作業を簡略化でき、ティーチング時間を短縮できる。
【0059】
また、この場合には、ティーチング作業時に操作者が装置の中に頭を突っ込んで作業を行ったりする必要がなく、操作者はティーチングペンダント10のタッチパネル11を見ながら操作するだけでよいので、操作者にとって安全かつフレンドリーな作業環境を実現できる。
【0060】
次に、自動運転中において、小型カメラ34を用いたチャック部32のハンドリング制御について、図7を用いて説明する。
同図は、部品供給トレイ5からワークWを取り出す際の小型カメラ34による映像をティーチングペンダント10のタッチパネル10の画像として表示したものである。
【0061】
いま、図7(a)に示すように、部品供給トレイ5に収容されたワークW’が正規の位置から外れて傾いて配置されていたとする。小型カメラ34で撮影された同図(a)の映像は、コントローラAに読み込まれ、コントローラAで画像処理されて、ワークW’を把持するための適切なハンドリング位置にチャック部32が移動するように、チャック部32の移動座標を計算する。
【0062】
ロボットハンド31は、コントローラAでの画像処理結果に基づいて駆動制御されて、適切なハンドリング位置に移動し(図7(b)参照)、これにより、チャック部32がワークW’を確実に把持することができる。
【0063】
このように自動運転中には、小型カメラ34で撮影された画像が順次コントローラAに読み込まれていき、必要に応じてハンドリング位置の補正をリアルタイムで行うので、部品供給トレイ5内に収容されたワークWが位置ずれを起こしていたり、傾いて配置されていたり、あるいは組立用治具7でワークWを組み立てる際に組立ミスを起こしたりした場合でも、ティーチング入力された座標位置を制御部が補正することにより、適切なハンドリング位置にロボットハンド31を移動させるので、ロボットハンド31のハンドリングミス(ワークの掴み損ね)を防止できる。これにより、自動運転中の「チョコ停」の発生を防止でき、システム全体のロバスト性を大幅に向上できる。
【0064】
なお、この場合には、小型カメラ24が、チャック部32を支持する支持台33の側面に設けられているので(図3参照)、チャック部32先端の画像を入手することが可能であり、また小型カメラ34がチャック部の開閉動作の影響を受けないという利点もある。また、チャック部32の支持台33が移動可能に設けられているので、チャック部32の位置の微調整が簡単に行えるようになる。
【0065】
次に、このロボット制御システムの運転動作について図8を用いて説明する。
図8(a)は従来装置の運転動作を、同図(b)は本実施例システムの運転動作をそれぞれ示している。各図中、横軸は時間を、縦軸は単位時間の組立個数をそれぞれ示している。したがって、斜線で囲まれた領域は総生産量を表しており、機械が実際に稼動中であったことを示している。逆に、白抜きの部分は、機械が停止していたことを示している。
【0066】
図8において、設備を立ち上げてから実際に運転が開始されるまでの時間Δt1およびΔT1は、ティーチング時間を示している。同図に示すように、本実施例によるロボット制御システムにおけるティーチング時間ΔT1は、従来装置におけるティーチング時間Δt1の数分の一の長さになっている。
【0067】
これは、上述したように、小型カメラ34、44で撮影した画像をティーチングペンダント10のタッチパネル11に表示するとともに、タッチパネル11上の当該画像を操作することでロボットハンド31、41に対するティーチング作業を簡単に行えるようにしたためである。
【0068】
また、自動運転中における「チョコ停」の発生が大幅に減少している。これは、上述したように、自動運転中においてチャック部32のハンドリングミスが従来装置に比較して大幅に減少しており、「チョコ停」の発生が事前に回避されているためである。
【0069】
さらに、「チョコ停」の発生後、機械が復帰するまでに要する復帰時間ΔT2は、従来装置における復帰時間Δt2およびΔt3よりも減少している。これは、従来装置においては、「チョコ停」の発生後、操作者が仕掛品を手で撤去した後、手動で起動ボタンを押していたためであり、本実施例システムにおいては、「チョコ停」の発生後、撤去装置105が自動的に仕掛品を撤去することにより、機械が自動的に復帰するようになったためである。
【0070】
また、段取替えに要する段取時間ΔT3も従来装置における段取時間Δt4に比較して減少している。これは、段取替え作業が、ロボットハンドの交換や組立用治具の交換などを必要とし、これにともなう座標位置の補正を従来はロボットハンドのマニュアル操作で行っていたが、本実施例システムでは、小型カメラ34による映像を利用して、ティーチングペンダント10での操作により簡単に行えるようにしたためである。
【0071】
図8から分かるように、設備を立ち上げてから最初の段取替えに到るまでに要する時間は、本実施例システムの方が従来装置よりも短くなっており、生産性が向上している。これは、既述したように、本実施例システムにおいては、第1に、ティーチング時間が減少したこと、第2に、「チョコ停」の発生頻度が減少したこと、第3に、「チョコ停」の発生後、復帰までに要する時間が減少したことが挙げられる。
【0072】
図8に示すように、運転を開始してから最初の段取替えに到るまでにおける斜線領域の面積は、本実施例システムと従来装置とで互いに等しくなっている。すなわち、最初の段取替えに到るまで、本実施例システムも従来装置も同一個数の製品を組み立てている。
【0073】
また、ロボット制御システム1のコントローラA、Bの各メモリには、操作者の体の一部の画像パターンが格納されている。そして、自動運転中に可搬型カメラ8が撮影した画像の中に操作者の体の画像パターンが含まれていたときには、コントローラA、Bがロボットアーム30、40の運転を緊急停止させるようになっている。これにより、安全性の高いシステムを実現できる。なお、可搬型カメラ8に代えて、ロボットハンド31に取り付けられた小型カメラが撮影した画像に基づいて、同様に運転の緊急停止を行うようにしてもよい。
【0074】
このような本実施例によれば、ロボットハンド31のワーク把持用チャック部32に小型カメラ34を設け、小型カメラ34で撮影された画像をティーチングペンダント10のタッチパネル11に表示させるとともに、この画像に基づいてティーチングペンダント10を操作することで座標位置の補正を行うようにしたので、各種誤差に対する補正が一度に自動的に行われることになって、セルフキャリブレーションによる自動補正が可能になり、これにより、ティーチング作業を簡略化でき、ティーチング時間を短縮できる。
【0075】
なお、前記実施例では、ワークを撮影するカメラ部として、ロボットハンド31に設けられた小型カメラ34を用いた例を示したが、この小型カメラ34の代わりに、可搬型カメラ8を用いるようにしてもよい。この場合には、可搬型カメラ8で撮影された画像に基づいて座標位置の補正が行われることになる。
【0076】
また、前記実施例では、小型カメラ34がチャック部32の支持台33の側面に設けられた例を示したが、図9ないし図11は、小型カメラ34のかわりに、または前記実施例の小型カメラ34に加えて、前記実施例とは異なる位置にカメラが取り付けられた例を示している。これらの図において、前記実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0077】
図9に示す例では、小型カメラ34Aが、チャック部32を支持する支持台33の支持面の中心位置に設けられている。
【0078】
この場合には、小型カメラ34Aの視野がチャック部32の閉動作時に狭められるという欠点はあるものの、小型カメ34Aの光軸をチャック部32の作業軸と一致させることができるので、座標位置の設定が容易になる。
【0079】
図10に示す例では、カメラ34Bが、各チャック部32、32’の内側の位置つまりベース板31Aの略中央位置に配置されている。また、同図中、チャック部32’は撤去装置として機能するチャック部であり、その支持台33の側面には、小型カメラ34Cが設けられている。
【0080】
この場合、カメラ34Bは、チャック部32の側方に配置されているので、「チョコ停」発生時の全体画像を撮影するのに用いられる。小型カメラ34Cは、チャック部32’の先端の画像を撮影することができるので、チャック部32’で仕掛品を撤去する際の撤去作業を円滑に行えるようになる。
【0081】
図11に示す例では、小型カメラ34Dが、チャック部32の側方に設けられたカメラ支持台33Aの上に設けられている。この場合には、小型カメラ34Dがチャック部32の側方に配置されているので、チャック部先端の画像を撮影することはできないが、「チョコ停」の発生時にその状態を撮影できる。
【0082】
また、図12に示す例では、図9と同様の小型カメラ34Aが、各チャック部32をそれぞれ支持する各支持台33の支持面の中心位置に設けられている。ロボットハンド31は、当該ロボットハンド31のみの駆動制御を行うコントローラ100’を有している。コントローラ100’は、上述したコントローラA、Bとは別個独立した制御を行うコントローラである。各チャック部32の各支持台33は、水平面内におけるX方向およびY方向(ならびに鉛直方向であるZ方向)に移動可能な移動ベース35にそれぞれ取り付けられている。なお、図12中、参照符号31Bは、ロボットアーム30(図2)の先端に着脱自在に取り付けられる基台を示している。
【0083】
この場合には、小型カメラ34Aで撮影した画像に基づき、チャック部32の移動座標位置を補正する必要があった場合には、コントローラ100’が移動ベース35を駆動制御することにより、チャック部32がX方向、Y方向、Z方向、XY方向、YZ方向、X方向またはXYZ方向のいずれかの方向に移動して、チャック部32の座標位置の補正が行われる。
【0084】
この場合、ロボットの駆動部以外の制御とは独立して、ワーク把持のための制御を行えるようになる。
【0085】
図13には、自動復帰用ロボットハンド31が示されている。ロボットハンド31には、図10と同様のカメラ34Bおよび撤去専用のチャック部32’が設けられている。また、ロボットハンド31には、圧搾エアを噴出させるノズル36と、エアを吸引する吸引部37とが設けられている。この自動復帰用ロボットハンド31は、通常の運転時には、例えば図1中の参照符号51、52で示す位置に配置されている。
【0086】
自動運転中に、チャック部によりワークを把持できないとコントローラが判断した場合には、コントローラは、ロボットアームを駆動して、ロボットハンドを、図1中の参照符号51、52で示す位置に配置された自動復帰用ロボットハンドに付け替える。
【0087】
そして、コントローラは、カメラ34Bによる撮像に基づいて仕掛品が存在することを認識し、まず、撤去専用のチャック部32’を駆動して仕掛品を撤去させようとする。その撤去作業後、カメラ34Bの撮像から仕掛品が存在していないと判断されれば、コントローラは、仕掛品が撤去されたと判断して、組立動作を再開する。
【0088】
その一方、カメラ34Bの撮像から仕掛品が撤去されていないと判断されれば、コントローラは、ノズル36からの圧搾エアの噴出および吸引部37によるエアの吸引を交互に複数回繰り返した後、カメラ34Bの撮像から仕掛品が存在していないと判断されれば、コントローラは、仕掛品が撤去されたと判断して、組立動作を再開する。
【0089】
また、カメラ34Bの撮像から仕掛品が撤去されていないと判断されれば、コントローラは、アラームを鳴らすなどのアラーム表示を行って、操作者に通報する。操作者は、仕掛品を撤去し、その後、自動運転を再開する。
【0090】
上述した操作部としては、ティーチングペンダントの他に、ロボットが置かれた現場から離れたオフィスに設けられた端末であってもよい。この場合には、カメラで撮影された画像を端末のディスプレイに表示することによって、稼動時のロボットの監視やティーチングを行うことが可能である。
【0091】
また、上述したワイヤレス接続のティーチングペンダント10および可搬型カメラ8は、操作者が持ち運ぶことが可能なので、図1に示すロボットシステムが現場に複数設けられている場合に、1組のティーチングペンダント10および可搬型カメラ8を共用できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の一実施例によるロボット制御システムの平面概略図である。
【図2】ロボットの側面斜視図である。
【図3】ロボットハンドの拡大斜視図である。
【図4】ティーチングペンダントの正面拡大図である。
【図5】ロボット制御システムの制御部のブロック構成図である。
【図6】ティーチング時におけるティーチングペンダントの操作の一例を示す図である。
【図7】自動運転時におけるロボットハンドのハンドリング制御の一例を示す図である。
【図8】本実施例システムの運転動作の一例を従来装置と比較して示す図である。
【図9】本発明の他の実施例によるロボットハンドの拡大斜視図である。
【図10】本発明の他の実施例によるロボットハンドの拡大斜視図である。
【図11】本発明の他の実施例によるロボットハンドの拡大斜視図である。
【図12】本発明の他の実施例によるロボットハンドの拡大斜視図である。
【図13】本発明の他の実施例によるロボットハンドの拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0093】
1: ロボット制御システム
3: ロボット
30: ロボットアーム
31: ロボットハンド
32: チャック部
33: 支持台
34: 小型カメラ(カメラ部)
4: ロボット
40: ロボットアーム
41: ロボットハンド
44: 小型カメラ
8: 可搬型カメラ(カメラ部)
10: ティーチングペンダント(操作部)
11: タッチパネル(ディスプレイ)
100: 制御部
A、B: コントローラ
105: 撤去装置
106: 撤去装置
W: ワーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット制御システムであって、
ロボットアームと、ロボットアームの先端に設けられ、ワーク把持用チャック部を有するロボットハンドとを含むロボットと、
前記ロボットに対してティーチング入力を行うための操作部と、
少なくともワークを撮影できるカメラ部と、
前記操作部にティーチング入力された所定の座標位置を前記カメラ部で撮影された画像に基づいて補正して、補正された座標位置に移動するように前記ロボットを駆動制御する制御部と、
を備えたロボット制御システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記カメラ部が、前記チャック部を支持する支持台の側面に設けられている、
ことを特徴とするロボット制御システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記支持台が移動可能に設けられている、
ことを特徴とするロボット制御システム。
【請求項4】
請求項1において、
前記カメラ部が、前記チャック部を支持する支持台の支持面の中心位置に設けられている、
ことを特徴とするロボット制御システム。
【請求項5】
請求項1において、
前記操作部が前記カメラ部で撮影された画像を表示するディスプレイを有し、前記ディスプレイがタッチパネル式のディスプレイであって、操作者が前記ディスプレイに触れることで前記補正が行われるようになっている、
ことを特徴とするロボット制御システム。
【請求項6】
請求項1において、
自動運転時に前記ロボットハンドが適切なハンドリング位置に移動するように、前記制御部が、前記カメラ部で撮影された前記画像に基づいて前記補正を行い、前記ロボットハンドを駆動制御している、
ことを特徴とするロボット制御システム。
【請求項7】
請求項1において、
前記ロボットハンドが、運転中におけるチョコ停の発生時に、仕掛品を撤去するための撤去装置をさらに備えている、
ことを特徴とするロボット制御システム。
【請求項8】
請求項1において、
前記制御部には、操作者の体の一部の画像パターンが格納されており、前記カメラ部で撮影された画像が前記画像パターンを含んでいたときに、前記制御部が前記ロボットアームの運転を緊急停止させるようになっている、
ことを特徴とするロボット制御システム。
【請求項9】
請求項1において、
前記ロボットハンドが、
前記ロボットアームの先端に着脱自在に取り付けられる基台と、
前記基台に対して前記チャック部を動かすチャック駆動部とを備え、
前記制御部が、
前記カメラ部で撮影された画像に基づき、前記チャック駆動部を駆動制御する第1の制御部と、
当該ロボットにおいて前記チャック駆動部以外の駆動制御を行う第2の制御部とを備えた、
ことを特徴とするロボット制御システム。
【請求項10】
請求項1において、
前記制御部が、前記カメラ部で撮影された画像に基づいてワークを把持できないと判断した場合には、ワークを把持するための別の動作を駆動制御している、
ことを特徴とするロボット制御システム。
【請求項11】
請求項1において、
前記カメラ部が可搬型カメラを含んでいる、
ことを特徴とするロボット制御システム。
【請求項12】
ロボットアームの先端に設けられるロボットハンドであって、
前記ロボットアームの前記先端に着脱自在に取り付けられる基台と、
前記基台に設けられるワーク把持用のチャック部と、
当該ロボットハンドに設けられ、少なくともワークを撮影できるカメラ部と、
前記カメラ部で撮影された画像に基づき、前記基台に対して前記チャック部を動かす駆動部と、
を備えたロボットハンド。
【請求項1】
ロボット制御システムであって、
ロボットアームと、ロボットアームの先端に設けられ、ワーク把持用チャック部を有するロボットハンドとを含むロボットと、
前記ロボットに対してティーチング入力を行うための操作部と、
少なくともワークを撮影できるカメラ部と、
前記操作部にティーチング入力された所定の座標位置を前記カメラ部で撮影された画像に基づいて補正して、補正された座標位置に移動するように前記ロボットを駆動制御する制御部と、
を備えたロボット制御システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記カメラ部が、前記チャック部を支持する支持台の側面に設けられている、
ことを特徴とするロボット制御システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記支持台が移動可能に設けられている、
ことを特徴とするロボット制御システム。
【請求項4】
請求項1において、
前記カメラ部が、前記チャック部を支持する支持台の支持面の中心位置に設けられている、
ことを特徴とするロボット制御システム。
【請求項5】
請求項1において、
前記操作部が前記カメラ部で撮影された画像を表示するディスプレイを有し、前記ディスプレイがタッチパネル式のディスプレイであって、操作者が前記ディスプレイに触れることで前記補正が行われるようになっている、
ことを特徴とするロボット制御システム。
【請求項6】
請求項1において、
自動運転時に前記ロボットハンドが適切なハンドリング位置に移動するように、前記制御部が、前記カメラ部で撮影された前記画像に基づいて前記補正を行い、前記ロボットハンドを駆動制御している、
ことを特徴とするロボット制御システム。
【請求項7】
請求項1において、
前記ロボットハンドが、運転中におけるチョコ停の発生時に、仕掛品を撤去するための撤去装置をさらに備えている、
ことを特徴とするロボット制御システム。
【請求項8】
請求項1において、
前記制御部には、操作者の体の一部の画像パターンが格納されており、前記カメラ部で撮影された画像が前記画像パターンを含んでいたときに、前記制御部が前記ロボットアームの運転を緊急停止させるようになっている、
ことを特徴とするロボット制御システム。
【請求項9】
請求項1において、
前記ロボットハンドが、
前記ロボットアームの先端に着脱自在に取り付けられる基台と、
前記基台に対して前記チャック部を動かすチャック駆動部とを備え、
前記制御部が、
前記カメラ部で撮影された画像に基づき、前記チャック駆動部を駆動制御する第1の制御部と、
当該ロボットにおいて前記チャック駆動部以外の駆動制御を行う第2の制御部とを備えた、
ことを特徴とするロボット制御システム。
【請求項10】
請求項1において、
前記制御部が、前記カメラ部で撮影された画像に基づいてワークを把持できないと判断した場合には、ワークを把持するための別の動作を駆動制御している、
ことを特徴とするロボット制御システム。
【請求項11】
請求項1において、
前記カメラ部が可搬型カメラを含んでいる、
ことを特徴とするロボット制御システム。
【請求項12】
ロボットアームの先端に設けられるロボットハンドであって、
前記ロボットアームの前記先端に着脱自在に取り付けられる基台と、
前記基台に設けられるワーク把持用のチャック部と、
当該ロボットハンドに設けられ、少なくともワークを撮影できるカメラ部と、
前記カメラ部で撮影された画像に基づき、前記基台に対して前記チャック部を動かす駆動部と、
を備えたロボットハンド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−782(P2009−782A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−164426(P2007−164426)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]