説明

ワークピッキングシステム

【課題】把持対象となるワークの姿勢に関わらず、ワークの把持姿勢を一定に保つこと。
【解決手段】把持対象であるワークの3次元形状を計測する3次元計測部10と、多軸ロボット30の終端可動部に設けられ、把持爪の間隔を変更する機構および把持爪の先端向きを変更する機構を含むハンド20とを備えるようにワークピッキングシステム1を構成する。また、3次元計測部によって計測された3次元形状に基づいてワークの姿勢を算出する算出部41bと、算出部によって算出されたワークの姿勢および終端可動部の回転軸の方向に基づいて把持爪の先端向きを決定する決定部41cと、終端可動部の回転軸の向きおよび決定部によって決定された把持爪の先端向きを保持しつつワークを把持する動作を指示する指示部41dとを備えるようにワークピッキングシステムを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークピッキングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乱雑に重なり合って置かれたワークを、多軸ロボットの終端可動部に設けられたハンドによって把持して移動させる動作、すなわち、ピック動作を行うワークピッキングシステムが知られている。
【0003】
かかるワークピッキングシステムでは、ワークのそれぞれの位置を2次元計測器や、3次元計測器を用いて計測することによって次に把持するワークを決定し、決定したワークを把持するように多軸ロボットへ指示する。そして、多軸ロボットは、把持したワークを所定の位置へ移載する(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−120141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来のワークピッキングシステムでは、ハンドによって把持されるワークの把持姿勢がばらつくという問題があった。このため、従来のワークピッキングシステムでは、ピック動作につづく動作を行いにくかった。
【0006】
たとえば、ハンドによって把持されたワークの把持姿勢がバラバラである場合、ワークを所定の姿勢へ変更するためには、ハンド自体の姿勢を変更する必要があるので多軸ロボットの動作が複雑化してしまう。
【0007】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、把持対象となるワークの姿勢に関わらず、ワークの把持姿勢を一定に保つことができるワークピッキングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の開示するワークピッキングシステムは、把持対象であるワークの3次元形状を計測する3次元計測部と、多軸ロボットの終端可動部に設けられ、把持爪の間隔を変更する機構および前記把持爪の先端向きを変更する機構を含むハンドと、前記3次元計測部によって計測された前記3次元形状に基づいて前記ワークの姿勢を算出する算出部と、前記算出部によって算出された前記ワークの姿勢および前記終端可動部の回転軸の方向に基づいて前記把持爪の先端向きを決定する決定部と、前記終端可動部の回転軸の向きおよび前記決定部によって決定された前記把持爪の先端向きを保持しつつ前記ワークを把持する動作を指示する指示部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本願の開示するワークピッキングシステムの一つの態様によれば、把持対象となるワークの姿勢に関わらず、ワークの把持姿勢を一定に保ったピック動作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施例1に係るワークピッキング方法の説明図である。
【図2】図2は、実施例1に係るワークピッキングシステムのブロック図である。
【図3】図3は、実施例1に係るワークピッキングシステムの配置図である。
【図4】図4は、7軸ロボットにおける各軸の説明図である。
【図5】図5は、ハンドの模式構成を示す図である。
【図6】図6は、ハンドの構成例を示す図である。
【図7】図7は、ハンドによるピック動作の例を示す図である。
【図8】図8は、計測位置およびピック位置を示す図である。
【図9】図9は、実施例1に係るワークピッキングシステムが実行する処理手順を示すフローチャートである。
【図10】図10は、実施例2に係る3次元計測部の配置を示す図である。
【図11】図11は、実施例2に係るワークピッキングシステムが実行する処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するワークピッキングシステムの実施例を詳細に説明する。なお、以下に示す各実施例における例示で本発明が限定されるものではない。
【0012】
また、以下では、3次元計測器を多軸ロボットとは別に固定して設けた場合の実施例を実施例1として、3次元計測器を多軸ロボットに設けた場合の実施例を実施例2として、それぞれ説明する。
【実施例1】
【0013】
まず、実施例1に係るワークピッキング方法について、図1を用いて説明する。図1は、実施例1に係るワークピッキング方法の説明図である。なお、以下では、把持対象となるワーク100が「ボルト」である場合について説明するが、ワーク100の種別はこれに限定されない。たとえば、ワーク100は、ナットや電子部品であってもよい。
【0014】
また、図1では、3次元計測器による計測方向が、鉛直下向き(以下、「鉛直方向」と記載する)である場合について示している。そして、図1では、説明をわかりやすくする観点から、直交座標系であるxy座標系を水平面上に設け、ワーク100の基準軸(ここでは、ボルトの軸心を結んだ軸)を水平面へ投影した線をy軸としている。
【0015】
図1に示すように、実施例1に係るワークピッキング方法では、多軸ロボットの終端可動部(図1に示す「アーム」参照)に設けられた「ハンド」によってワーク100を把持して移動させる動作(ピック動作)を行う。
【0016】
ここで、「ハンド」は、先端向きを変更可能な1対の把持爪を備えており、ピッキングするワーク100の姿勢に応じて把持爪の先端向きを適宜変更することによって、把持爪とワーク100の相対姿勢を一定に保つ。
【0017】
なお、1対の把持爪は、図1に示す軸AXp(以下、「ピック軸AXp」と記載する)まわりに回転することによって、把持爪の先端向きを任意の向きへ変更する。また、ハンドが取り付けられたアームは、図1に示す軸AXtまわりに回転するが、軸AXtは、鉛直方向と略平行な姿勢を保つように制御される。
【0018】
すなわち、実施例1に係るワークピッキング方法では、多軸ロボットの終端可動部の回転軸を鉛直方向と略平行に保ちつつ、ハンドの把持爪の先端向きがワーク100の基準軸となす角を一定(たとえば、90度)にしたピック動作を行う。
【0019】
したがって、実施例1に係るワークピッキング方法によれば、把持爪に対するワーク100の姿勢を各ピック動作にわたって一定に保つことができるので、把持したワーク100に関する次の作業(たとえば、ボルトの軸を穴に挿入する作業)が行いやすい。
【0020】
また、実施例1に係るワークピッキング方法によれば、ハンドが設けられたアームの回転軸の向きを鉛直方向と略平行に保つことができるので、アームと障害物(たとえば、ワーク100をバラ積みした容器)との接触が発生しにくい。
【0021】
以下、実施例1に係るワークピッキング方法の手順について説明する。図1に示すように、実施例1に係るワークピッキング方法では、バラ積みされたワーク100を3次元計測し、ピック対象となるワーク100を決定するとともに、ワーク100の位置および姿勢を取得する(図1の(a)参照)。ここで、ワーク100の基準軸と水平面とのなす角度が、図1に示すように「θ」であるとする。
【0022】
この場合、実施例1に係るワークピッキング方法では、ピック軸AXpが、図1に示すx軸と略平行になるように、アームを軸AXtまわりに回転させる(図1の(b1)参照)。また、実施例に係るワークピッキング方法では、ワーク100の姿勢に応じて把持爪をピック軸AXpまわりに回転させる(図1の(b2)参照)。
【0023】
ここで、図1に示すように、把持爪の先端向きとアームの回転軸である軸AXtとのなす角を上記した「θ」と等しくすれば、把持爪の先端向きとワーク100の基準軸とを直交させることができる。
【0024】
なお、図1では、把持爪の先端向きとワーク100の基準軸とが直交するピック動作を例示したが、把持爪の先端向きとワーク100の基準軸とが所定の角度αとなるようにピック動作を行うこととしてもよい。この場合、把持爪の先端向きと軸AXtとのなす角が「θ+α」あるいは「θ−α」となるように、把持爪をピック軸AXpまわりに回転させることとすればよい。
【0025】
ここで、図1に示した(b1)および(b2)の手順の実行順序に関しては、どちらの手順から実行してもよく、かかる2つの手順を並行して実行することとしてもよい。
【0026】
このように、実施例1に係るワークピッキング方法では、把持爪の先端向きをワーク100の姿勢に応じて適宜調整したうえで、1対の把持爪間の間隔を狭める把持動作によってワーク100を把持する(図1の(c)参照)。
【0027】
次に、実施例1に係るワークピッキングシステム1について説明する。図2は、実施例1に係るワークピッキングシステム1のブロック図である。図2に示すように、ワークピッキングシステム1は、3次元計測部10と、ハンド20と、ロボット30と制御装置40とを備える。なお、ハンド20は、図1に示した「ピック軸付きハンド」を指す。
【0028】
また、制御装置40は、制御部41と、記憶部42とを備えており、制御部41は、3次元情報取得部41aと、ワーク姿勢算出部41bと、把持爪向き決定部41cと、指示部41dとをさらに備える。そして、記憶部42は、3次元情報42aと、ワーク情報42bとを記憶する。
【0029】
なお、図2では、ハンド20とロボット30とを独立した構成要素として記載したが、ロボット30にハンド20を含め、制御装置40の指示部41dがハンド20に対する指示についてもロボット30へ指示することとしてもよい。また、図2では、1つの制御装置40を示したが、制御装置40を複数の独立した装置としたうえで、各装置が相互に通信するように構成してもよい。
【0030】
3次元計測部10は、ワーク100の3次元形状を計測するデバイス(3次元計測器)である。この3次元計測部10としては、たとえば、レーザスリット光を用いたスキャン動作によって、物体の3次元形状の取得を行う計測ユニットを用いることができる。
【0031】
ハンド20は、図1に示したように、先端向きを適宜調整可能な1対の把持爪で把持動作を行うピック軸付きハンドである。なお、ハンドの具体的な構成例については、図6を用いて後述する。ロボット30は、たとえば、7軸の多軸ロボットであり、終端可動部には、上記したハンド20が設けられる。すなわち、ロボット30は、ハンドなどのエンドエフェクタを交換可能な汎用ロボットである。
【0032】
ここで、実施例1に係るワークピッキングシステム1の配置例について図3を、実施例1に係るロボット30の各軸について図4を、それぞれ用いて説明しておく。図3は、実施例1に係るワークピッキングシステム1の配置図である。図3に示すように、3次元計測部10は、鉛直方向(鉛直下向き)側が計測領域となるように、スタンド11(支持部)を介して固定される。
【0033】
また、図3に示すように、ロボット30は、右アーム30aと、左アーム30bとを双腕とする、いわゆる双腕ロボットである。ここで、右アーム30aおよび左アーム30bは、それぞれが、多軸ロボット(図3では7軸ロボット)であり、左アーム30bのエンドエフェクタとして、上記したハンド20(ピック軸付きハンド)が設けられる。
【0034】
なお、右アーム30aには、所定のエンドエフェクタが設けられ、ワーク100がバラ積みされた容器200を把持する。このように、ロボット30は、右アーム30aで把持した容器200から、左アーム30bに設けられたハンド20でワーク100をつまみ出す動作を行う。
【0035】
なお、ロボット30は、右アーム30aおよび左アーム30bが設けられた胴部30cを、床面などに固定される支持部30dに対して水平面に沿って旋回させる機構を有している。
【0036】
図4は、7軸ロボットにおける各軸の説明図である。なお、図4に示す各関節の回転軸の向きは、円で示した関節については紙面と垂直であり、矩形で示した関節については紙面と平行である。なお、図4には、各関節の回転向きを両矢印で示している。また、図3に示した右アーム30aおよび左アーム30bのそれぞれを、図4に示した7軸ロボットとすることができる。
【0037】
図4に示すように、各関節の回転軸は、設置基準面から順に、軸AXs、軸AXl、軸AXe、軸AXu、軸AXr、軸AXbおよび軸AXtである。そして、軸AXtは、7軸ロボットの終端可動部の回転軸に相当し、終端可動部にはエンドエフェクタが設けられる。なお、右アーム30aおよび左アーム30bの軸構成は、図4に例示した構成に限られない。
【0038】
ここで、実施例1に係るハンド20(図3参照)が設けられた左アーム30b(図3参照)は、軸AXtを鉛直方向と略平行に保持した状態でハンド20によるピック動作を実行する。
【0039】
図2の説明に戻り、制御装置40について説明する。制御部41は、制御装置40の全体制御を行う。3次元情報取得部41aは、3次元計測部10から計測データを受け取り、受け取った計測データを、3次元情報42aとして記憶部42へ記憶させる。ここで、3次元情報42aは、1つまたは複数のワーク100の3次元形状を示す情報である。
【0040】
ワーク姿勢算出部41bは、3次元情報42aおよびワーク情報42bに基づいてピック動作の対象となるワーク100の姿勢を算出する処理を行う。ここで、ワーク情報42bは、ワーク100の3次元形状や被把持部位を定義した情報である。
【0041】
なお、「被把持部位」としては、たとえば、ワーク100がボルトである場合には、ボルトの頭部近傍の軸が定義される。このように、ボルトの頭部近傍の軸を被把持部位とするのは、ボルトをバラ積みした状態では、頭部近傍付近に空隙が生じやすいためである。
【0042】
ワーク姿勢算出部41bは、ワーク情報42bを用いたマッチング処理を行うことによって、3次元情報42aからワーク100を検出する。そして、ワーク姿勢算出部41bは、検出したワーク100の中から次にピッキングするワーク100を決定し、決定したワーク100の姿勢を算出する。なお、ワーク姿勢算出部41bは、ワーク100における被把持部位の位置も併せて算出する。
【0043】
そして、把持爪向き決定部41cは、ワーク姿勢算出部41bによって算出されたワーク100の姿勢に基づき、ハンド20における把持爪の先端向きを決定する。また、把持爪向き決定部41cは、決定した先端向きを、指示部41dに対して通知する。
【0044】
ここで、ハンド20(ピック軸付きハンド)の模式構成について、図5を用いて説明しておく。図5は、ハンド20の模式構成を示す図である。なお、図5の(A)には、ハンド20の模式構成を、図5の(B)には、把持爪の先端向きを変更した様子を、同じく(C)には、ワーク100における基準軸101と把持爪の先端向きとの関係を、それぞれ示している。
【0045】
図5の(A)に示すように、ハンド20は、スライダ軸21に沿って移動可能なスライダ21aおよびスライダ21bをそれぞれ含んだ1対の移動部22を備える。そして、移動部22には、関節23経由で把持爪24がそれぞれ取り付けられる。なお、把持爪24の先端は、点24aである。
【0046】
ここで、1対の移動部22が、スライダ軸21に沿ってお互いに接近する向きへ移動する動作によって、1対の把持爪24がワーク100を挟み込み、お互いに遠ざかる向きへ移動する動作によって、1対の把持爪24で挟み込んだワーク100を解放する。
【0047】
また、図5の(A)に示すように、把持爪24は、関節23を支点として、両矢印で示した向きに回転する。なお、2つの関節23を結んだ線は、上記したピック軸AXpである。また、図5の(A)には、移動部22および把持爪24が1つの直線上にある状態、すなわち、把持爪24の基準姿勢を示している。
【0048】
図5の(B)には、図5の(A)に示した基準姿勢から、1対の把持爪24をピック軸AXpまわりに所定角度だけ回転させた状態を例示している。ここで、ピック軸AXpと、2つの点24a(把持爪24の各先端)とを含んだ平面を平面50とし、平面50の法線を法線51とする。
【0049】
この場合、図5の(C)に示したように、ハンド20がワーク100を把持する際には、法線51と、ワーク100の基準軸101とが略平行となるように、把持爪24の先端向きを調整する。このようにすることで、把持爪24の向きが、ワーク100の基準軸101と略直交した状態で、ワーク100を把持することが可能となる。
【0050】
なお、図5の(C)には、把持爪24の向きと、ワーク100の基準軸101とを略直交させる場合を示したが、把持爪24の向きと、ワーク100の基準軸101とのなす角については、任意の角度とすることができる。
【0051】
図2の説明に戻り、制御装置40の説明をつづける。指示部41dは、把持爪向き決定部41cによって決定された把持爪向きをハンド20に対して指示する。また、指示部41dは、ピック動作に伴うハンド20の移動をロボット30に対して指示する。
【0052】
ここで、指示部41dは、ハンド20が取り付けられた終端可動部の回転軸(図1の軸AXt参照)が、鉛直方向と略平行となる姿勢を保持するように、ロボット30に対して指示する。また、指示部41dは、3次元計測部10に対する計測開始指示を適宜行うが、計測開始指示のタイミングについては、図8を用いて後述する。
【0053】
記憶部42は、ハードディスクドライブや不揮発性メモリといった記憶デバイスであり、3次元情報42aおよびワーク情報42bを記憶する。なお、3次元情報42aおよびワーク情報42bの内容については、既に説明したので、ここでの説明を省略する。
【0054】
なお、図2では、制御装置40を1つの装置として説明したが、制御装置40を複数の独立した装置として構成することとしてもよい。たとえば、3次元計測部10を制御する計測制御装置と、ハンド20およびロボット30を制御するロボット制御装置と、計測制御装置およびロボット制御装置を統括する統括制御装置とが相互に通信する構成をとってもよい。
【0055】
次に、ハンド20(ピック軸付きハンド)の構成例について図6を用いて説明する。図6は、ハンド20の構成例を示す図である。なお、図6の(A)には、左アーム30b(図3参照)に取り付けられた状態のハンド20を、図6の(B)には、ハンド20の構成例を、それぞれ示している。
【0056】
図6の(A)に示すように、左アーム30bの終端可動部31には、ハンド20が取り付けられる。また、ハンド20における上記したピック軸AXpは、終端可動部31の回転軸である軸AXtと略直交する。
【0057】
図6の(B)に示すように、ハンド20は、把持爪24の開閉に用いられる第1のサーボモータ61aと、把持爪24の先端向きの変更に用いられる第2のサーボモータ62aとを備える。また、ハンド20は、1対の移動部22と、1対の把持爪24とを備える。
【0058】
第1のサーボモータ61aによる駆動力は、伝達機構61b経由で、左右ネジシャフト21へ伝達される。ここで、左右ネジシャフト21の一端側と他端側には、それぞれ逆向きのネジ(左右ネジ)が形成されている。
【0059】
また、1対の移動部22には、左右ネジシャフト21を貫通させる穴に、それぞれ同方向のネジが形成されている。したがって、1対の移動部22は、左右ネジシャフト21の回転に伴い、左右ネジシャフト21に沿ってそれぞれ逆方向へ移動する。
【0060】
また、第2のサーボモータ62aによる駆動力は、伝達機構62b経由で、図示しないスプラインシャフトへ伝達される。そして、スプラインシャフトの回転に伴って作動するリンク機構62dは、把持爪24にピック軸AXpにて連結された円板23を回転させる。これにより、把持爪24は、ピック軸AXpまわりに回転し、把持爪24の先端向きが変更される。
【0061】
このように、1対の把持爪24の間隔および先端向きは、それぞれ、サーボモータによって変更されるので、ワーク100を適切な姿勢、かつ、適切な把持力で把持することができる。また、ワーク100の被把持部位における厚み(たとえば、ボルトの軸径)を取得することができる。
【0062】
次に、ハンド20(ピック軸付きハンド)によるピック動作について図7を用いて説明する。図7は、ハンド20によるピック動作の例を示す図である。なお、図7の(A)には、ワーク100を把持した把持爪24の動作例を、図7の(B)には、容器200と把持爪24との位置関係を、それぞれ示している。
【0063】
また、図7の(A)および(B)では、説明を簡略化する観点から、ピック軸AXpが紙面と垂直となるように図示している。
【0064】
図7の(A)に示すように、終端可動部31の回転軸である軸AXtを、鉛直方向と略平行としたうえで、把持爪24は、ワーク100の基準軸101と直交する姿勢でワーク100を把持する。したがって、ワーク100を把持した把持爪24の先端向きを、軸AXtと略平行になるように変更すれば、ワーク100の基準軸101は、軸AXtと略直交する。
【0065】
このように、ハンド20によれば、さまざまな姿勢でバラ積みされたワーク100であっても、終端可動部31の姿勢を保ったまま、ワーク100を一定の把持姿勢で把持することができる。さらに、ハンド20によれば、終端可動部31の姿勢を保ったまま、把持後のワーク100の姿勢を一定の姿勢(たとえば、水平状態)へ変更することができる。
【0066】
また、図7の(B)に示すように、ハンド20によれば、左アーム30b(図3参照)ならびにハンド20を容器200に接触させることなく、容器200の壁面付近に位置するワーク100をつまみ出すことが可能となる。
【0067】
たとえば、図7の(B)における左側壁面近くのワーク100を把持する場合には、位置71にハンド20を位置付けたうえで、把持爪24の先端側が左側壁面に近づくように、把持爪24の先端向きを変更する。また、図7の(B)における右側壁面近くのワーク100を把持する場合には、位置72にハンド20を位置付けたうえで、把持爪24の先端側が右側壁面に近づくように、把持爪24の先端向きを変更する。
【0068】
次に、制御装置40の指示部41dによって行われる指示の例について、図8を用いて説明する。図8は、計測位置およびピック位置を示す図である。なお、図8の(A)には、計測位置およびピック位置を鉛直線上に配置する場合を、図8の(B)には、計測位置およびピック位置を水平線上に配置する場合を、それぞれ示している。また、図8には、3次元計測部10による計測向き81を示している。
【0069】
図8の(A)に示すように、指示部41dは、容器200を把持した右アーム30aに対し、3次元計測部10の計測範囲に設けられた計測位置82に、容器200を位置付けるように指示する。
【0070】
つづいて、指示部41dは、3次元計測部10に対して計測開始指示を行う。そして、3次元計測部10による計測が完了したならば、指示部41dは、右アーム30aに対し、容器200を鉛直方向(鉛直下向き)へ移動させてピック位置83へ位置付けるように指示する。
【0071】
ここで、計測位置82に対応する距離hs(3次元計測部10から容器200の基準位置までの距離)は、ピック位置83に対応する距離hpよりも小さい。これは、3次元計測部10による計測精度が確保される距離で計測を行いつつ、ピック動作を行う左アーム30bの作業スペースを確保するためである。
【0072】
また、計測位置82の鉛直方向(鉛直下向き)にピック位置83を設けるのは、容器200内のワーク100の位置ずれを防止するためである。
【0073】
また、図8の(B)に示すように、計測位置82にて3次元計測部10による計測が完了した容器200を、水平向きに移動させてピック位置84あるいはピック位置85へ位置付けることとしてもよい。この場合、指示部41dは、図3に示した胴部30cを旋回させるようにロボット30に対して指示する。
【0074】
このように、水平向きに容器200を移動させることによっても、ピック動作を行う左アーム30bの作業スペースを確保することができる。
【0075】
次に、実施例1に係るワークピッキングシステム1が実行する処理手順について図9を用いて説明する。図9は、実施例1に係るワークピッキングシステム1が実行する処理手順を示すフローチャートである。なお、図9における「右ハンド」は、図3における右アーム30aに設けられたハンドを、「左ハンド」は、図3における左アーム30bに設けられたハンド20(ピック軸付きハンド)を、それぞれ指す。
【0076】
図9に示すように、指示部41dは、右ハンドにて容器200を測定位置へ位置付けるように指示する(ステップS101)。また、指示部41dは、3次元計測部10に対して3次元計測を実行するように指示する(ステップS102)。
【0077】
つづいて、ワーク姿勢算出部41bは、把持可能なワーク100があるか否かを判定する(ステップS103)。そして、把持可能なワーク100がある場合には(ステップS103,Yes)、把持爪向き決定部41cは、ワーク姿勢に基づいてハンド20における把持爪の先端向きを決定する(ステップS104)。
【0078】
そして、指示部41dは、右ハンドにて容器200をピック位置へ位置付けるように指示し(ステップS105)、左ハンド(ハンド20)にてワーク100を把持するように指示する(ステップS106)。つづいて、指示部41dは、左ハンドにてワーク100を移載するように指示し(ステップS107)、所要ワークの移載が完了したか否かを判定する(ステップ108)。
【0079】
そして、所要ワークの移載が完了した場合には(ステップS108,Yes)、処理を終了する。一方、所要ワークの移載が完了していない場合には(ステップS108,No)、ステップS101以降の処理を繰り返す。なお、「所要ワーク」とは、たとえば、移載すべきワーク100の種別ごとの総数のことを指す。
【0080】
ところで、ステップS103において把持可能なワーク100がないと判定された場合には(ステップS103,No)、容器200内の残ワーク(ワーク100の個数や総重量)が、規定値未満であるか否かを判定する(ステップS109)。そして、残ワークが規定値未満である場合には(ステップS109,Yes)、エラー報知を行ったうえで(ステップS110)、処理を終了する。
【0081】
一方、ステップS109の判定条件を満たさなかった場合には(ステップS109,No)、指示部41dは、右ハンドにて容器200を揺動させるように指示し(ステップS111)、ステップS102以降の処理を繰り返す。なお、容器200を揺動させることで、容器200内のワーク100の位置がずれるため、把持可能なワーク100を増やすことができる。
【0082】
なお、図9に示した、左ハンドによるワーク100の移載(ステップS107)と、右ハンドによる容器200の測定位置への移動(ステップS101)とを並行して行うこととしてもよい。
【0083】
上述したように、実施例1に係るワークピッキングシステムは、把持対象であるワークの3次元形状を計測する3次元計測部と、多軸ロボットの終端可動部に設けられ、把持爪の間隔を変更する機構および把持爪の先端向きを変更する機構を含むハンドとを備える。また、実施例1に係るワークピッキングシステムは、3次元計測部によって計測された3次元形状に基づいてワークの姿勢を算出する算出部と、算出部によって算出されたワークの姿勢および終端可動部の回転軸の方向に基づいて把持爪の先端向きを決定する決定部とを備える。さらに、実施例1に係るワークピッキングシステムは、終端可動部の回転軸の向きおよび決定部によって決定された把持爪の先端向きを保持しつつワークを把持する動作を指示する指示部を備える。
【0084】
したがって、実施例1に係るワークピッキングシステムによれば、把持対象となるワークの姿勢に関わらず、ハンド自体の姿勢を変えることなくワークの把持姿勢を一定に保つことができる。
【0085】
ところで、上述した実施例1では、3次元計測部を多軸ロボットとは別に固定して設けた場合について説明したが、3次元計測器を多軸ロボットに設けることとしてもよい。そこで、以下に示す実施例2では、3次元計測器を多軸ロボットに設けた場合について説明する。
【実施例2】
【0086】
図10は、実施例2に係る3次元計測部10の配置を示す図である。なお、図10は、図6の(A)に対応しており、3次元計測部10が左アーム30bの終端可動部31に設けられている点以外は、図6の(A)と同様であるので、以下では、両者に共通する説明を省略する。
【0087】
図10に示すように、3次元計測部10は、ハンド20が取り付けられた終端可動部31に設けられる。ここで、3次元計測部10は、ハンド20とともに軸AXtまわりに回転する部位に設けてもよいし、軸AXtまわりに回転しない部位に設けてもよい。
【0088】
また、図10に示すように、3次元計測部10は、計測向き81がハンド20の先端側を向くように終端可動部31に固定される。このように、ハンド20を備えた多軸ロボットに3次元計測部10を設けることで、ピック動作に関連するロボット30の動作をさらに簡略化することができる。
【0089】
また、3次元計測部10の計測範囲が狭い場合であっても、ワーク100を計測範囲に入れることが容易となる。
【0090】
次に、実施例2に係るワークピッキングシステム1が実行する処理手順について図11を用いて説明する。図11は、実施例2に係るワークピッキングシステム1が実行する処理手順を示すフローチャートである。なお、図11における「右ハンド」および「左ハンド」は、図9の説明と同様であるが、「左ハンド」には、図10に示したように3次元計測部10が設けられているものとする。
【0091】
図11に示すように、指示部41dは、右ハンドにて容器200をピック位置へ位置付けるように指示する(ステップS201)。また、指示部41dは、左ハンドに設けられた3次元計測部10に対して3次元計測を実行するように指示する(ステップS202)。
【0092】
つづいて、ワーク姿勢算出部41bは、把持可能なワーク100があるか否かを判定する(ステップS203)。そして、把持可能なワーク100がある場合には(ステップS203,Yes)、把持爪向き決定部41cは、ワーク姿勢に基づいてハンド20における把持爪の先端向きを決定する(ステップS204)。
【0093】
そして、指示部41dは、左ハンド(ハンド20)にてワーク100を把持するように指示する(ステップS205)。つづいて、指示部41dは、左ハンドにてワーク100を移載するように指示し(ステップS206)、所要ワークの移載が完了したか否かを判定する(ステップ207)。
【0094】
そして、所要ワークの移載が完了した場合には(ステップS207,Yes)、処理を終了する。一方、所要ワークの移載が完了していない場合には(ステップS207,No)、ステップS201以降の処理を繰り返す。
【0095】
ところで、ステップS203において把持可能なワークがないと判定された場合には(ステップS203,No)、容器200内の残ワーク(ワーク100の個数や総重量)が規定値未満であるか否かを判定する(ステップS208)。そして、残ワークが規定値未満である場合には(ステップS208,Yes)、エラー報知を行ったうえで(ステップS209)、処理を終了する。
【0096】
一方、ステップS209の判定条件を満たさなかった場合には(ステップS209,No)、指示部41dは、右ハンドにて容器200を揺動させるように指示し(ステップS210)、ステップS202以降の処理を繰り返す。
【0097】
このように、実施例2に係るワークピッキングシステムは、先端向きを変更可能な把持爪を有するハンドが取り付けられた多軸ロボットに対して3次元計測部を設けたので、多軸ロボットによるピック動作を簡略化することができる。また、3次元計測部の計測範囲の広狭に関わらず、ワークの姿勢を確実に計測することができる。
【0098】
なお、上述した各実施例では、双腕ロボットの右腕で容器を把持し、容器内のワークを左腕でつまみ出す場合について説明したが、左腕で容器を把持して右腕でピック動作を行ってもよい。また、ピック軸を備えたハンドが取り付けられた片腕ロボットでピック動作を行うこととしてもよい。
【0099】
また、上述した各実施例では、容器内の残ワークが規定値未満となった場合に、容器を揺動させる場合について説明したが、3次元計測部による計測を省略しつつピック動作を連続して行うこととしてもよい。また、容器内に把持可能なワークが複数ある場合に、3次元計測部による計測を省略しつつピック動作を連続して行うこととしてもよい。
【0100】
また、上述した各実施例では、1対の把持爪を備えたハンドによるピック動作を例示したが、2対以上の把持爪を備えたハンド、すなわち、複数のピック軸を備えたハンドでピック動作を行うこととしてもよい。また、1つのピック軸について3つ以上の把持爪を設けたハンドでピック動作を行うこととしてもよい。
【0101】
なお、上記した制御装置は、たとえば、コンピュータで構成することができる。この場合、制御部は、CPU(Central Processing Unit)であり、記憶部は、メモリである。また、制御部の各機能は、あらかじめ作成されたプログラムを制御部へロードして実行させることによって実現することができる。
【0102】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施例に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0103】
1 ワークピッキングシステム
10 3次元計測部
20 ハンド(ピック軸付きハンド)
30 ロボット
40 制御装置
41 制御部
41a 3次元情報取得部
41b ワーク姿勢算出部
41c 把持爪向き決定部
41d 指示部
42 記憶部
42a 3次元情報
42b ワーク情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持対象であるワークの3次元形状を計測する3次元計測部と、
多軸ロボットの終端可動部に設けられ、把持爪の間隔を変更する機構および前記把持爪の先端向きを変更する機構を含むハンドと、
前記3次元計測部によって計測された前記3次元形状に基づいて前記ワークの姿勢を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された前記ワークの姿勢および前記終端可動部の回転軸の方向に基づいて前記把持爪の先端向きを決定する決定部と、
前記終端可動部の回転軸の向きおよび前記決定部によって決定された前記把持爪の先端向きを保持しつつ前記ワークを把持する動作を指示する指示部と
を備えることを特徴とするワークピッキングシステム。
【請求項2】
前記決定部は、
前記把持爪の支点間を結ぶ回転軸および前記把持爪の先端を含む面の法線方向が、前記ワークにおける基準軸と所定の角度をなすように前記把持爪の先端向きを決定することを特徴とする請求項1に記載のワークピッキングシステム。
【請求項3】
前記ワークは、
ボルトであり、
前記決定部は、
前記法線方向が前記ボルトにおける軸線方向と略並行となるように前記把持爪の先端向きを決定することを特徴とする請求項2に記載のワークピッキングシステム。
【請求項4】
前記ハンドが設けられた第1の多軸ロボットと、
前記ワークがバラ積みされた容器を把持する第2の多軸ロボットと、
計測範囲が鉛直方向側となるように前記3次元計測部を支持する支持部と
を備えることを特徴とする請求項1、2または3に記載のワークピッキングシステム。
【請求項5】
前記指示部は、
前記算出部が前記ワークの姿勢の算出に失敗した場合に、前記容器を揺する動作を前記第2の多軸ロボットに対して指示することを特徴とする請求項4に記載のワークピッキングシステム。
【請求項6】
前記指示部は、
前記3次元計測部による計測が完了した場合に、前記容器を鉛直方向へ移動させて所定のピック位置へ位置付かせる動作を前記第2の多軸ロボットに対して指示することを特徴とする請求項4または5に記載のワークピッキングシステム。
【請求項7】
前記第1の多軸ロボットおよび前記第2の多軸ロボットを双腕とし、鉛直向きと略平行な旋回軸を有する胴部
を備え、
前記指示部は、
前記3次元計測部による計測が完了した場合に、前記旋回軸まわりの旋回によって前記容器を所定のピック位置へ位置付かせる動作を前記胴部へ指示することを特徴とする請求項4または5に記載のワークピッキングシステム。
【請求項8】
前記指示部は、
前記第1の多軸ロボットによる前記ワークの移載動作と、前記3次元計測部による前記容器内の計測とが並行して行われるように指示することを特徴とする請求項4〜7のいずれか一つに記載のワークピッキングシステム。
【請求項9】
前記指示部は、
前記容器内のワークの残量が所定の閾値以下である場合に、前記3次元計測部によるあらたな計測を指示することなく、前記第1の多軸ロボットによる前記ワークのピック動作を指示することを特徴とする請求項4〜8のいずれか一つに記載のワークピッキングシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−171027(P2012−171027A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33086(P2011−33086)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】