説明

下層膜用組成物及び多層レジストパターン形成方法

【課題】短波長の露光光の反射率が低く、酸素プラズマ等に対するエッチング耐性にも優れる下層膜を形成するための下層膜用組成物及び多層レジストパターン形成方法を提供すること。
【解決手段】フォトレジスト層の下層膜に用いられる下層膜用組成物であって、置換基を有してもよいアダマンチル基を側鎖に有するアクリルモノマーから誘導される構成単位と、ヒドロキシスチレン誘導体から誘導される構成単位とを含む共重合体を含む下層膜用組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトレジスト層の下層膜を形成するために用いられる組成物、及びこの組成物を用いた多層レジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、液晶デバイス等の各種電子デバイスにおける微細構造の製造には、リソグラフィー法が多用されているが、デバイス構造の微細化に伴って、リソグラフィー工程におけるレジストパターンの微細化が要求されている。
【0003】
現在では、この微細化の要求に応じて、露光光の短波長化が進んでいる。一般に、レジスト解像性約0.5μmでは、水銀ランプの主要スペクトルが436nmのg線が、約0.5〜0.30μmでは同じく水銀ランプの主要スペクトルが365nmのi線が用いられている。また、約0.30〜0.15μmでは、248nmのKrFエキシマレーザ光が、0.15μm以下では、193nmのArFエキシマレーザ光が用いられている。さらに、それより短波長である157nmのFエキシマレーザ、EUV(極紫外線)、電子線、X線等についても検討が行われている。
【0004】
このような短波長の露光光を用いた場合、露光時に基板から反射する反射光が大きくなる。そのため、基板からの反射によって生じる定在波や乱反射の影響により、レジストパターンに局所的な歪み、例えばレジストパターン側壁のスタンディングウェーブ(SW)が生じたり、寸法精度の劣化が生じる等の問題があった。
【0005】
このような問題を抑制する方法の1つとして、基板とフォトレジストとの間に、反射防止膜を有する下層膜(反射防止膜)を介在させるBARC(Bottom Anti−Reflective Coating)法が行われているこのような反射防止膜の形成用樹脂として、主にアクリル樹脂が用いられている(特許文献1参照)。
【0006】
一方、高アスペクト比のパターンを形成する手段として、基板上に下層膜用組成物を塗布し、これを加熱して成膜することにより下層膜を設け、その上にシリカ系の無機膜からなる中間膜を設けたのち、さらにその上にフォトレジスト膜を設け、通常のフォトリソグラフィー技術により、レジストパターンを形成し、そのレジストパターンをマスクとして中間膜をエッチングすることでパターンを転写し、次いで、パターン化された中間膜をマスクとして下層膜を酸素プラズマエッチングし、基板上にパターン形成を行う3層レジスト法が知られている。また、3層レジスト法よりも工程数が少ない点で優れた2層レジスト法も提案されている。
【0007】
3層レジスト法、2層レジスト法等の多層プロセス用途において、下層膜用組成物には、下層膜に形成されるパターンの形状を良好にするために、エッチレートが速すぎないこと、すなわち、ある程度の酸素エッチング耐性が必要とされる。現在、多層プロセス用途に用いられる下層膜の形成用組成物としては、酸素エッチング耐性が良好であることから、主にノボラック型のフェノール樹脂が用いられている。
【0008】
しかし、ノボラック型のフェノール樹脂は、KrF、ArF等のエキシマレーザ光等の短波長の露光光の反射率が高い。そのため、上記反射率を低下させた下層膜材料として、下記一般式(I)で表される構成単位を有するフェノール樹脂が用いられている(特許文献2)。
【0009】
【化1】

(式中、Rは脂環式基を表し、Rはナフチル基又はアントリル基を表し、nは0又は1を表す。)
【特許文献1】特開平10−228113号公報
【特許文献2】特開2005−156816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2に記載されている樹脂も、反射の問題を解消するには不十分であり、下層膜の光学パラメータ(屈折率(n値)、消衰係数(k値))の調整が困難であった。
【0011】
本発明は以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、短波長の露光光の反射率が低く、酸素プラズマ等に対するエッチング耐性にも優れる下層膜を形成するための下層膜用組成物及び多層レジストパターン形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題を解決するため、下層膜を形成する組成物に着目して、鋭意研究を重ねた。その結果、下層膜を形成する組成物として、特定の化合物を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0013】
フォトレジスト層の下層膜に用いられる下層膜用組成物であって、置換基を有してもよいアダマンチル基を側鎖に有するアクリルモノマーから誘導される構成単位と、ヒドロキシスチレン誘導体から誘導される構成単位とを含む共重合体を含む下層膜用組成物を提供する。
【0014】
更に、前記下層膜用組成物を用いて下層膜を形成し、前記下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成した後、前記フォトレジスト層を選択的に露光し、現像して前記フォトレジスト層にレジストパターンを形成した後前記レジストパターン上から酸素プラズマによりエッチングし、前記下層膜に前記レジストパターンを転写する多層レジストパターン形成方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の下層膜用組成物によれば、樹脂として、置換基を有してもよいアダマンチル基を側鎖に有するアクリルモノマーから誘導される構成単位と、ヒドロキシスチレン誘導体から誘導される構成単位とを含む共重合体を含んでいる。したがって、KrF、ArF等のエキシマレーザ光等の短波長の露光光の反射率が低く、光学パラメータの調整がしやすく、酸素プラズマに対するエッチング耐性も良好な下層膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
≪下層膜用組成物≫
<共重合体(A)>
本発明の下層膜用組成物は、フォトレジスト層の下に形成される下層膜に用いられる下層膜用組成物であり、置換基を有してもよいアダマンチル基を側鎖に有するアクリルモノマーから誘導される構成単位(A1)と、ヒドロキシスチレン誘導体から誘導される構成単位(A2)とを含む共重合体(以下、(A)成分ともいう)を含む下層膜用組成物である。
この共重合体は、構成単位(A1)を誘導するモノマーと、構成単位(A2)を誘導するモノマーとを共重合させることにより得ることができる。
さらに、この共重合体は、その他のモノマーから誘導される構成単位(A3)を含有していてもよい。
【0018】
[A1:置換基を有してもよいアダマンチル基を側鎖に有するアクリルモノマーから誘導される構成単位]
置換基を有してもよいアダマンチル基を側鎖に有するアクリルモノマーから誘導される構成単位は、下記一般式(II)で表されるものが好ましいものとして挙げられる。
【0019】
【化2】

【0020】
式中Rは、H、水酸基、又は炭素数1から5のアルキル基、Rは、水素またはメチル基である。
上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
【0021】
(A1)の構成単位を誘導するモノマーとしては、アダマンチル基を側鎖に有するアクリルモノマーとして、1−アダマンチルメタクリレートを挙げることができ、置換基を有してもよいアダマンチル基を側鎖に有するアクリルモノマーとして、3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート、2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート、2−プロピル−2−アダマンチルメタクリレート、2−ブチル−2−アダマンチルメタクリレートを挙げることができる。これらの中でも、1−アダマンチルメタクリレートが好ましい。
【0022】
これらのモノマーは、公知の方法(特開平11−212265号公報等に記載)で合成することができ、例えば、2−アルキル−2−アダマンタノールとメタクリル酸クロリドとのエステル化反応により得ることができる。
【0023】
[A2:ヒドロキシスチレン誘導体から誘導された構成単位]
ヒドロキシスチレン誘導体から誘導された構成単位は、下記式(III)で表される。
【0024】
【化3】

式中Rは、水素またはメチル基である。
ヒドロキシスチレン誘導体は、248nm以下の波長に非常に強い吸収を持つため、ヒドロキシスチレン誘導体から誘導された構成単位を有する共重合体を含有する下層膜は、特に、ArFエキシマレーザ光に対する反射防止膜として好適に用いることができる。
上記ヒドロキシスチレン誘導体を誘導するモノマーとしては、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレンが挙げられる。これらのモノマーの中では、p−ヒドロキシスチレンが好ましい。
【0025】
共重合体を構成する構成単位(A1)と構成単位(A2)との含有比率は、モル比で70:30〜50:50であることが好ましく、更に好ましい範囲は65:35〜55:45である。共重合体における構成単位(A2)の含有比率を30モル%以上とすることで、成膜性を向上させ、膜べりを減少させることができる。さらにエッチング耐性を向上させることができる。また、エッチング後の表面ラフネスの発生を抑えることができる。構成単位(A1)の含有比率を50モル%以上とすることで、消衰係数(k値)を低くすることができ、所望の光学パラメータを有する下層膜の形成を行うことができる。
【0026】
[A3:他のモノマーから誘導される構成単位]
本発明の下層膜用組成物に含まれる共重合体には、他のモノマーから誘導される構成単位を含有させることもできる。他のモノマーとしては、例えば、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等のエーテル結合及びエステル結合を有する(メタ)アクリル酸誘導体等、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシル基及びエステル結合を有する化合物、スチレン等が挙げられる。ただし、これらのモノマーから誘導される構成単位の(A)成分における含有比率は、全構成単位に対して20モル%以下であることが好ましい。20モル%以下とすることにより、所望の光学パラメータを有する下層膜を形成することができる。
【0027】
[分子量]
また、(A)成分の質量平均分子量は、特に限定されないが、1000以上30000以下であることが好ましく、より好ましくは3000以上10000以下である。質量平均分子量を30000以下とすることにより、微細な凹凸を有する基板等に対する埋め込み特性が良好であり、特に平坦化の用途に用いる場合に有利である。また、質量平均分子量を1000以上とすることにより、酸素プラズマエッチング、フッ化炭素系ガス等によるエッチングに対する耐性が優れたものとなる。更に、後述する架橋剤成分(B)を含有することで、架橋構造を形成し成膜性が向上するため、質量平均分子量が1000以下の共重合体を用いても、エッチング耐性が優れた膜を形成することができる。
【0028】
<架橋剤成分(B)>
本発明の下層膜用組成物は、さらに、架橋剤成分(以下、(B)成分ともいう)を含有することが好ましい。(B)成分を含有することにより、下層膜の成膜性が向上する。下層膜の成膜性が向上すると、下層膜の上にレジスト組成物を塗布してフォトレジスト層を設ける際のインターミキシングの発生を低減することができる。
【0029】
(B)成分としては、特に限定されず、これまでに知られているアルコキシメチル化メラミンからなる架橋剤、アルコキシメチル化尿素からなる架橋剤、グリコールウリルからなる架橋剤等が挙げられる。これらの架橋剤の中でも、N位が、架橋形成基であるヒドロキシアルキル基及び/又は低級アルコキシアルキル基で置換されたグリコールウリルが好ましい。このグリコールウリルからなる架橋剤は、基板とフォトレジスト層との間に下層膜を設ける構成において、フォトレジスト層に形成されるレジストパターンの裾ひき形状、エッジラフネスの低減、T型形状断面等の形状不良を改善することができる。この場合、オニウム塩を組み合わせることが好ましい。
【0030】
上記グリコールウリルからなる架橋剤は、グリコールウリルとホルマリンを縮合反応させることにより、また、この生成物を低級アルコールと反応させることにより得ることができる。このような架橋剤としては、例えばモノ,ジ,トリ又はテトラヒドロキシメチルグリコールウリル、モノ,ジ,トリ又はテトラメトキシメチル化グリコールウリル、モノ,ジ,トリ又はテトラエトキシメチルグリコールウリル、モノ,ジ,トリ又はテトラプロポキシメチル化グリコールウリル、モノ,ジ,トリ又はテトラブトキシメチル化グリコールウリル等がある。特には、そのトリ体やテトラ体が好ましい。なお、このような架橋剤は、例えば市販品「MX270」(商品名)((株)三和ケミカル製)として入手することができる。これらのものはトリ体、テトラ体がほとんどであり、また、単量体、二量体、三量体の混合物である。
【0031】
この(B)成分は、共重合体100質量部に対し、好ましくは3〜50質量部、より好ましくは10〜20質量部の割合で配合される。下限値以上であると、架橋形成が進みやすい。上限値以下であると、ArF、KrF等のエキシマレーザ光に対する反射率を充分に低減でき、また、レジスト塗布液の保存安定性や感度の経時的劣化が生じにくい。
【0032】
<その他の成分>
本発明の下層膜用組成物は、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)成分等に対して混和性のある添加剤、例えば、塗布性の向上やストリエーション防止のための界面活性剤や、露光光に対して吸収を有し、基板からの反射によって生じる定在波や乱反射を防止しうる吸光性物質、下層膜の性能を改良するための付加的樹脂、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤等を含有しても良い。
【0033】
界面活性剤としては、XR−104(大日本インキ(株)製)等のフッ素系界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0034】
吸光性物質としては、これまで、下層膜や反射防止膜の成分として用いられているものの中から任意に選んで使用することができる。これらの吸光性物質は、単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0035】
<溶剤>
本発明の下層膜用組成物は、前述の(A)成分、及び(B)成分以外にも溶剤を含有することが好ましい。
【0036】
このような溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、メチルイソアミルケトン、1,1,1−トリメチルアセトン等のケトン類や、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール又はジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、あるいはこれらのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル又はモノフェニルエーテル等の多価アルコール類及びその誘導体や、ジオキサンのような環状エーテル類や、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
上記下層膜用組成物の固形分濃度は、2〜40質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。
【0037】
≪下層膜≫
本発明の下層膜用組成物は、フォトレジスト層の下層膜を形成するために用いられる。本発明の下層膜形成用組成物を用いて下層膜を形成することにより、下記のように優れた光学特性を有する下層膜を得ることができる。
【0038】
例えばArFエキシマレーザ(193nm)に対して、屈折率(n値)が1.5〜1.75、より好ましくは1.55〜1.70、消衰係数(k値)が0.2〜0.4、より好ましくは0.25〜0.35の下層膜が得られる。
【0039】
下層膜の厚さは、反射防止膜として用いる場合は、好ましくは30〜500nm、より好ましくは50〜400nmであり、平坦化膜として用いる場合は、好ましくは100〜1000nm、より好ましくは200〜600nmであり、多層プロセスに用いる場合は、好ましくは200nm以上である。
【0040】
また、下層膜を基板上に形成し反射防止膜として用いる場合、膜厚300nm以上の下層膜における、基板からの反射率が1%以下であることが好ましい。反射率を1%以下とすることで、露光光の反射を防止することができ、良好なレジストパターンを形成することができる。
【0041】
下層膜は、例えば後述するように、基板上に、本発明の下層膜用組成物を上述したような溶剤に溶解して調製した下層膜用組成物溶液を塗布することにより形成することができる。
【0042】
≪フォトレジスト層≫
下層膜上に形成されるフォトレジスト層を形成するために用いられるレジスト組成物としては、特に制限されない。本発明の下層膜用組成物は、ネガ型、ポジ型を問わずどのようなレジスト組成物に対しても利用することができ、露光光源に応じ、市販のレジスト組成物を選択して用いることができる。
【0043】
例えば、ナフトキノンジアジド化合物とノボラック樹脂を含有する非化学増幅型のポジ型レジスト組成物や、酸の作用によりアルカリ可溶性が変化する樹脂成分及び露光により酸を発生する酸発生剤成分を含む化学増幅型レジスト組成物等が挙げられる。
【0044】
特に、KrFやArFエキシマレーザや、それよりも短波長の光源を用いる場合には、微細解像性に優れることから、化学増幅型レジスト組成物が好ましく用いられる。
【0045】
化学増幅型レジスト組成物には、酸発生剤と、酸解離性溶解抑制基を有し、酸によりアルカリ溶解性が増大するアルカリ不溶性樹脂とを含有するポジ型のものと、酸発生剤、架橋剤、アルカリ可溶性樹脂とを含有するネガ型のものとがある。ポジ型の場合、レジストパターン形成時に露光により酸発生剤から酸が発生すると、かかる酸が酸解離性溶解抑制基を解離させることによりアルカリ可溶性となる。一方、ネガ型の場合、露光により酸が発生すると、かかる酸が作用して、アルカリ可溶性樹脂と架橋剤との間で架橋が起こりアルカリ不溶性となる。
【0046】
KrF用の化学増幅型レジスト組成物としては、t−ブトキシカルボニル基等の溶解抑制基を有するポリヒドロキシスチレン等を含有するものが知られている。ArF用の化学増幅型レジスト組成物としては、メタクリル樹脂の側鎖にアダマンチル基等の脂肪族多環式基を導入したり、主鎖にノルボルニル基等の脂肪族多環式基を含む樹脂等を含有するものが知られている。
【0047】
また、2層レジスト法や3層レジスト法等の多層プロセスを行う場合は、例えば、特開昭61−239243号公報、特開昭62−25744号公報に記載されているようなシリコン含有ポリマーを含有する化学増幅型レジストを用いることが好ましい。なお、下地材とレジスト層との間に、シリカ系の無機膜からなる中間膜(ハードマスク)を設ける3層レジスト法を行う場合には、シリコン含有ポリマーを含有するものに限定されず、上述したArF用あるいはKrF用等の化学増幅型レジスト組成物等の任意のレジスト組成物が使用可能である。
【0048】
さらに、本発明の下層膜用組成物は、上述したような、2層レジスト法や3層レジスト法のような多層プロセスに用いた場合に、下層膜上に形成されるレジスト層とのマッチングが良好であり、フォトレジスト層の現像後に、下層膜上へのフォトレジストの残留(スカム)も抑制することができる。また、フォトレジスト層に形成されるレジストパターンにおけるSWやすそ引き等を抑制することができ、パターン形状を良好にすることができる。
【0049】
≪多層レジストパターン形成方法≫
本発明の多層レジストパターン形成方法は、本発明の下層膜用組成物を用いて下層膜を形成し、下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成した後、フォトレジスト層を選択的に露光し、現像して前記フォトレジスト層にレジストパターンを形成した後、レジストパターン上から酸素プラズマによりエッチングし、下層膜に前記レジストパターンを転写することにより形成することができる。
【0050】
まず、例えば、シリコンウェーハ等の基板上に、本発明の下層膜用組成物をスピンナー等により回転塗布する。その後、200℃以上、好ましくは200〜300℃の温度で加熱することによって成膜し、好ましくは200nm以上、より好ましくは250〜500nmの膜厚の下層膜を形成する。この下層膜は、加熱による成膜(焼成)により、アルカリに対して不溶となる。また、有機溶剤に対する耐性も高まり、下層膜上にレジスト組成物を塗布してフォトレジスト層を形成する際にインターミキシングが生じにくくなる。
【0051】
基板としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、シリコンウェーハ、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属や、ガラス等が挙げられる。また、下層膜は、これら基板に所定の配線パターンや段差が形成されたものに形成してもよく、配線パターンの材料としては、例えば珪素、銅、ハンダ、クロム、アルミニウム、ニッケル、金、又はこれらの合金等が使用可能である。また、下層膜は基板上に形成するのみでなく、基板上に平坦化膜、層間絶縁膜等の膜を形成し、その上に下層膜を形成してもよい。
【0052】
次に、下層膜上に、レジスト組成物をスピンナー等で塗布し、80〜150℃の温度条件下、プレベークを40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施し、フォトレジスト層を形成する。フォトレジスト層の厚さは、好ましくは10〜500nm、より好ましくは30〜300nmである。特に、シリコン含有ポリマーを含有する化学増幅型レジストを用いる場合は、好ましくは100〜200nm、より好ましくは130〜170nmである。2層レジスト法のときは、下層膜上に直接レジスト膜が設ければよいが、3層レジスト法のときは、下層膜上にシリコン系の被膜を介在させてその上にレジスト膜を設けて使用される。
【0053】
このフォトレジスト層に対し、例えばKrF露光装置等により、KrFエキシマレーザ光を、所望のマスクパターンを介して選択的に露光する。レジスト組成物として化学増幅型レジストを用いる場合は、露光後、PEB(露光後加熱)を、80〜150℃の温度条件下、40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施す。
【0054】
露光に使用する光源としては、特にKrF又はArFエキシマレーザに有用であるが、それより長波長のg線やi線、それより短波長のFレーザ、EUV(極紫外線)、VUV(真空紫外線)、電子線、X線、軟X線等の放射線に対しても有効である。
【0055】
次いで、これをアルカリ現像液、例えば0.05〜10質量%、好ましくは0.05〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて現像処理する。このとき、レジスト組成物がポジ型であれば露光部分が、ネガ型であれば未露光部分が選択的に溶解除去されて、マスクパターンに忠実なレジストパターンが形成される。このようにして、フォトレジスト層に、マスクパターンに忠実なレジストパターンを形成する。
【0056】
次に、2層レジスト法のときは、得られたレジストパターンをマスクパターンとして、前記下層膜を酸素プラズマによりエッチングし、前記下層膜に当該レジストパターンを転写する。3層レジスト法のときは、シリカ系の無機又は有機膜からなる中間膜(ハードマスク)をエッチング可能なフッ化炭素系ガス等でエッチングした後、同様にして前記下層膜を酸素プラズマによりエッチングし、前記下層膜に当該レジストパターンを転写する。
【0057】
この様な本発明の多層レジストパターン形成方法によれば、形成される下層膜の、KrF、ArF等の短波長の光源に対する反射率が低減されているので、フォトレジスト層に、垂直性の高い、マスクパターンに忠実なレジストパターンを形成することができる。
【0058】
また、下層膜の、酸素プラズマエッチングに対するエッチング耐性が高いので、フォトレジスト層のレジストパターンを下層膜に転写した際、下層膜に形成されるパターンの形状が良好なものとなる。
【0059】
さらに、下層膜とフォトレジスト層とのマッチングが良好で、フォトレジスト層にレジストパターンを形成した際、パターン形状にすそ引き等がなく、現像後に下層膜上に残留するフォトレジストの残渣(スカム)も見られない。
【0060】
なお、本発明の下地材は、このような2層レジスト法、3層レジスト法等のほか、通常の反射防止、平坦化等の用途にも使用可能である。
【実施例】
【0061】
次に、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0062】
(実施例1)
1−アダマンチルメタクリレートから誘導される構成単位とp−ヒドロキシスチレンから誘導される構成単位との含有比率がモル比で60:40の共重合体((A)成分、Mw=6000)100質量部に、グリコールウリル系架橋剤(製品名:MX270、三和ケミカル社製)((B)成分)20質量部を添加して、これをプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解して、固形分濃度12質量%の下層膜用組成物溶液を調製した。
【0063】
得られた下層膜用組成物溶液を、8インチのシリコンウェーハ上にスピンナーを用いて塗布し、250℃で90秒間のベーク処理を施して成膜し、膜厚300nmの下層膜を形成し、積層体を形成した。
【0064】
得られた積層体について、分光エリプソメーター(製品名:WVASE32、woollam JAPAN社製)を用いて、193nmにおける屈折率n、k値、及び反射率を測定した。その結果、193nmにおける屈折率nは1.658、k値は0.316、反射率は0.955%であった。
【0065】
次いで、形成した下層膜上に、シリコン含有ポリマーを含有するポジ型レジスト組成物をスピンナーを用いて塗布し、85℃で60秒間ベーク処理することにより、膜厚100nmのフォトレジスト層を形成し、該フォトレジスト層に対し、ArF露光装置NSR−S302(ニコン社製、NA=0.6、2/3Annular)により、ArFエキシマレーザをマスクパターンを介して選択的に照射し、23℃にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で30秒間現像処理したところ、フォトレジスト層に120nmのラインアンドスペース(L&S)パターンが形成された。
【0066】
得られたパターンを、測長SEM(製品名『S9920』;日立製作所社製)、断面SEM(製品名『S4500』;日立製作所社製)にて観察した。その結果、L&Sパターンの形状は、SWの発生やすそ引きのない良好なものであった。また、下層膜上に、フォトレジストの残渣(スカム)も見られなかった。
【0067】
次いで、上記L&Sパターンをマスクパターンとして、高真空RIE装置(東京応化工業社製)を用いて、下層膜に対して、酸素と窒素の混合ガスから得られるプラズマによるドライエッチングを行ったところ、下層膜に、垂直性の高いL&Sパターンが形成された。下層膜のエッチレートは、1.67nm/sであった。
【0068】
(比較例1)
下記(IV)に示す樹脂((A)成分)100質量部に、グリコールウリル系架橋剤(製品名:MX270、三和ケミカル社製)((B)成分)20質量部を添加して、これをプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解して、固形分濃度12質量%の下層膜用組成物溶液を調製した。下記(IV)に示す樹脂は、例えば、特開2005−156816号公報記載の方法により合成することができる。
【0069】
【化4】

【0070】
得られた下地材溶液を、8インチのシリコンウェーハ上にスピンナーを用いて塗布し、100℃で90秒間、及び250℃で90秒間の2段階のベーク処理を施して成膜し、膜厚300nmの下層膜を形成し、積層体を形成した。
【0071】
得られた積層体について、分光エリプソメーター(製品名:WVASE32、woollam JAPAN社製)を用いて、193nmにおける屈折率n、k値、及び反射率を測定した。その結果、193nmにおける屈折率nは1.46、k値は0.46、反射率は2.97%であった。
【0072】
次いで、形成した下層膜上に、シリコン含有ポリマーを含有するポジ型レジスト組成物をスピンナーを用いて塗布し、100℃で90秒間ベーク処理することにより、膜厚150nmのフォトレジスト層を形成し、該フォトレジスト層に対し、ArF露光装置NSR−S302(ニコン社製、NA=0.6、2/3Annular)により、ArFエキシマレーザをマスクパターンを介して選択的に照射し、23℃にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間現像処理したところ、フォトレジスト層に110nmのラインアンドスペース(L&S)パターンが形成された。
【0073】
得られたパターンを、実施例1と同様にして観察したところ、SWの発生やすそ引きのない良好なものであった。また、下層膜上に、フォトレジストの残渣(スカム)も見られなかった。
【0074】
次いで、実施例1と同様にして、下層膜に対して、酸素と窒素の混合ガスから得られるプラズマによるドライエッチングを行ったところ、下層膜に、垂直性の高いL&Sパターンが形成された。下層膜のエッチレートは、0.95nm/sであった。
【0075】
(比較例2)
(IV)に示す樹脂を室温で、メタノールに溶解し、15質量%溶液とした。そこに、メタノールの2倍量の水を加え、生じた析出物を取り出すことにより、分子量500以下未満の低核体が低減されたフェノール樹脂(Mw=6500、Mw/Mn=2.1、分子量500以下未満の低核体の含有量=0.8質量%)を得た。
【0076】
実施例1において、(A)成分を、上記フェノール樹脂に代えた以外は実施例1と同様にして下層膜用組成物を調製し、下層膜を形成して積層体を形成した。該積層体の、193nmにおける屈折率nは1.46、k値は0.46、反射率は2.9%であった。
【0077】
次いで、形成した下層膜上に、比較例1と同様にしてフォトレジスト層を形成し、選択的露光を行って現像処理したところ、フォトレジスト層に110nmのL&Sパターンが形成された。得られたパターンを実施例1と同様にして観察したところ、SWの発生やすそ引きのない良好なものであった。また、下層膜上に、フォトレジストの残渣(スカム)も見られなかった。
【0078】
次いで、実施例1と同様にして、下層膜に対して、酸素と窒素の混合ガスから得られるプラズマによるドライエッチングを行ったところ、下層膜に、垂直性の高いL&Sパターンが形成された。下層膜のエッチレートは、0.94nm/sであった。
【0079】
(比較例3)
実施例1において、(A)成分を、比較例1で用いたフェノール樹脂(IV)60質量部と、下記アクリルポリマー40質量部との混合物を用いた以外は実施例1と同様にして下層膜用組成物を調製し、下層膜を形成して積層体を形成した。Mw=10000
【0080】
【化5】

[式中、p:q:r=40:30:30(モル比)]
【0081】
該積層体の、193nmにおける屈折率n=1.54、k値は0.37、反射率は1.74%であった。
【0082】
次いで、形成した下層膜上に、比較例1と同様にしてフォトレジスト層を形成し、選択的露光を行って現像処理したところ、フォトレジスト層に110nmのL&Sパターンが形成された。得られたパターンを実施例1と同様にして観察したところ、SWの発生やすそ引きのない良好なものであった。また、下層膜上に、フォトレジストの残渣(スカム)も見られなかった。
【0083】
次いで、実施例1と同様にして、下層膜に対して、酸素と窒素の混合ガスから得られるプラズマによるドライエッチングを行ったところ、下層膜に、垂直性の高いL&Sパターンが形成された。下層膜のエッチレートは、1.20nm/sであった。
【0084】
実施例1の下層膜は比較例1から3の下層膜に比べ、ドライエッチングによるエッチレートは高いが、反射率が低く、屈折率の高い下層膜であり、反射防止膜として好適に用いることができると考えられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトレジスト層の下層膜に用いられる下層膜用組成物であって、
置換基を有してもよいアダマンチル基を側鎖に有するアクリルモノマーから誘導される構成単位と、ヒドロキシスチレン誘導体から誘導される構成単位とを含む共重合体を含む下層膜用組成物。
【請求項2】
前記共重合体中の前記置換基を有してもよいアダマンチル基を側鎖に有するアクリルモノマーから誘導される構成単位と前記ヒドロキシスチレン誘導体から誘導される構成単位との含有比率がモル比で70:30〜50:50である請求項1記載の下層膜用組成物。
【請求項3】
前記共重合体の質量平均分子量が1000以上30000以下である請求項1又は2記載の下層膜用組成物。
【請求項4】
基板上に前記下層膜用組成物から形成された膜厚300nm以上の下層膜における、前記基板からの反射率が1%以下である請求項1から3いずれか記載の下層膜用組成物。
【請求項5】
請求項1から4いずれか記載の下層膜用組成物を用いて下層膜を形成し、
前記下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成した後、
前記フォトレジスト層を選択的に露光し、現像して前記フォトレジスト層にレジストパターンを形成した後、
前記レジストパターン上から酸素プラズマによりエッチングし、前記下層膜に前記レジストパターンを転写する多層レジストパターン形成方法。

【公開番号】特開2007−240630(P2007−240630A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59743(P2006−59743)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】