説明

乗用型移動農機

【課題】機体前後及び左右方向共に重量バランスの良い乗用型移動農機を提供する。
【解決手段】乗用管理機1の機体5は、左右一対の前輪2,2及び後輪3,3に支持されており、その前輪2及び後輪3の中間位置にはエンジン12及び燃料タンク13を配置している。エンジン12は、機体幅方向においても中央に位置しており、エンジン12を挟んで機体右側には燃料タンク13が配置され、機体左側にはマフラー21が配置されている。また、前輪2,2間のフロントミッションケース33上方には作業者が着座する運転座席15が位置していると共に、リヤミッションケース46を挟んで機体右側にはバッテリー16が配置され、機体左側には油圧式無段変速装置17が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば乗用管理機などの乗用型移動農機に関し、詳しくは重量物の機体への配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、左右一対からなる前輪及び後輪により支持される機体に運転部を配置すると共に、エンジンを搭載した乗用型移動農機(小型乗用作業機)が案出されている(特許文献1及び2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−310042号公報
【特許文献2】特許第3917230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記乗用型移動農機は、前輪及び後輪間にエンジンを配置すると共に、エンジンと連動連結したミッションの上方に運転座席を配置して、機体の重量バランスの向上を図っているが、燃料タンクをエンジンの下方に配置し、該エンジンの後方下部にマフラーを配置している。これにより、マフラーと燃料タンクとが近接して危険であると共に、上記マフラーをエンジンの側部に設けようとすると、機体の左右バランスを良好に保つことが難しくなってしまっていた。
【0005】
そこで本発明は、エンジンを運転座席の後方かつ前輪及び後輪の間に配置すると共に、該エンジンを挟んで機体左右方向のいずれか一方に燃料タンクを配置し、他方にエンジンから延びるマフラーを配置することによって、上記課題を解決した乗用型移動農機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、それぞれ左右一対の前輪(2,2)及び後輪(3,3)により支持される機体(5)に運転部(6)を配置すると共にエンジン(12)を搭載してなる、乗用型移動農機(1)において、
前記運転部(6)の運転座席(15)を、前記前輪(2,2)の上方に配置し、
該運転座席(15)の後方でかつ前記前輪(2,2)及び後輪(3,3)の間である機体前後方向中央部にエンジン(12)を配置し、
該エンジン(12)を挟んで機体左右幅方向のいずれか一方に燃料タンク(13)を配置し、他方に該エンジン(12)から延びるマフラー(21)を配置した、
ことを特徴とする乗用型移動農機にある。
【0007】
請求項2に係る発明は、前記エンジン(12)の回転をミッション(33,46)に伝達し、該ミッション(33,46)から前記前輪(2,2)及び後輪(3,3)の一方に直接伝達すると共に、伝動軸(50)を介して前記前輪(2,2)及び後輪(3,3)の他方に伝達し、
前記エンジン(12)を前記燃料タンク(13)及びマフラー(21)よりも上方に配置し、該エンジン(12)の下方空間に前記伝動軸(50)を配設した、
請求項1記載の乗用型移動農機にある。
【0008】
請求項3に係る発明は、前記エンジン(12)の回転を前記後輪(3,3)間の略々中央に位置したリヤミッション(46)から前記後輪(3,3)に伝達すると共に、前記伝動軸(50)介して前記前輪(2,2)に伝達し、
該リヤミッション(3,3)を挟んで、機体左右幅方向のいずれか一方にバッテリー(16)を配設し、他方に油圧式無段変速装置(17)を配設した、
請求項1又は2記載の乗用型移動農機にある。
【0009】
なお、括弧内の符号等は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によると、機体の前後方向かつ幅方向中央である機体中心位置に、重量物であるエンジンを配置すると共に、該エンジンを挟んで左右一方に燃料タンクを配置し、他方にマフラーを配置することによって、機体を前後及び左右の重量バランスよく構成することができる。また、燃料タンクとマフラーとがエンジンを挟んで左右に振り分けて配置されているので、高温のマフラーが燃料タンクから離れて配置され安全である。
【0011】
請求項2に係る発明によると、エンジンをマフラー及び燃料タンクよりも上方に設け、該エンジン下方の空間に伝動軸を配置することによって、前輪及び後輪間の伝動系をシンプルな構成とし、最短の経路で伝動軸を配設することができる。
【0012】
請求項3に係る発明によると、機体幅方向中央のリヤミッションを挟んで略々同重量のバッテリーと油圧式無段変速装置とを左右に分配して配置したことによって、機体の左右バランスの向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明に係る乗用管理機について、図面に沿って説明をする。
【0014】
<実施形態1>
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る乗用型移動農機としての乗用管理機1は、左右一対からなる略々同径の前輪2,2及び後輪3,3に支持された機体5を有しており、該機体5の前方にはキャノピー7に上方を覆われた運転部6が設けられている。また、機体5の後方にはアッパリンク9a及びロアリンク9bの平行リンクからなる昇降リンク9が設けられており、該昇降リンク9を介してロータリ作業機10が油圧シリンダ11によって昇降自在に取付けられている。
【0015】
上記機体5は、その機体前後方向中央部である前輪2及び後輪3との間に、エンジン12及び燃料タンク13などの重量物を集中して配置していると共に、機体5の前部に設けられた前輪2の上方には作業者が着座する運転座席15を配置し、機体5の後部に設けられた後輪3の上方にはバッテリー16及び油圧式無段変速装置17(HST)を配置している。
【0016】
図2に示すように、最も重量のある上記エンジン12は機体幅方向においても中央に位置しており、燃料タンク13は該エンジン12の右側方に設けられたブラケット20を介して機体フレーム19に取付けられ、上記エンジン12から左側へと延びるマフラー21とは反対側に離れて配置されている。
【0017】
また、上記バッテリー16及び油圧式無段変速装置17は略々同じ重量であり、機体幅方向中央に位置したリヤミッションケース(ミッション、リヤミッション)46を挟んで、機体左側方には該油圧式無段変速装置17が配置され、機体右側方にはバッテリー16が配置されている。更に後輪3の後方には上記ロータリ作業機10が配設されており、これらが相俟って機体5は前後方向及び左右方向の重量バランス良くかつ、コンパクトに構成されている。
【0018】
一方、上述した運転部6には上記運転座席15の他に、機体を操向するステアリングハンドル22などが設けられており、該運転座席15の後方にはキャノピー7が上部に取付けられた安全バー23や、ヒンジ26により開閉自在に設けられた荷物載台25が配設されている。なお、上記荷物載台25はキャノピー7と兼用に構成してもよく、乗用管理機を運搬車として使用する際には肥料、農具などを載置する荷物載台とし、それ以外の際はキャノピーとして使用しても良い。
【0019】
上記ステアリングハンドル22は、ステアリングコラム27に覆われたステアリング軸29の上端部に取付けられており、該ステアリング軸29の下端部には、中間軸30の一端に設けられたベベルギヤ31と噛合するベベルギヤ32が固設されている。該中間軸30は、図3及び図4に示すように、機体後方に向って延設されており、フロントミッションケース(ミッション)33内にて、その他端に設けられたベベルギヤ35がピットマンアーム36を回動させるセクタギヤ37と噛合している。
【0020】
上記ピットマンアーム36は、左右のタイロッド39,39を介してナックルアーム40,40と連結しており、これらのナックルアーム40によって、前輪2のファイナルケース41を、キングピン軸42(図5参照)を中心として回動させて前輪2を操向している。
【0021】
なお、上述した相互に噛合するベベルギヤ31,32,35及びセクタギヤ37はそれぞれ歯数が相違しており、ステアリングハンドル22からの回転は、上記2回のギヤの噛合により減速される。
【0022】
次に乗用管理機1のフロントアクスル及びリヤアクスル周りの構造について説明をする。
【0023】
図3及び図4に示すように、フロントアクスル機構43及びリヤアクスル機構45は、それぞれ機体(機体フレーム19)に一体に取付けられたフロントアクスルケース56及びリヤアクスルケース70を備え、これらフロントアクスルケース56及びリヤアクスルケース70から垂下するように設けられた車軸支持部材74,58の下端部には、前輪2及び後輪3が機体幅方向内側及び外側に付け換え可能に装着されている。
【0024】
上記フロントアクスル機構43のフロントミッションケース33には、リヤミッションケース46に入力されたエンジン12からの動力が伝動軸50を介して入力されており、図5に示すように、該フロントミッションケース33内において伝動軸50のベベルギヤ51とデフ52とが噛合して左右の分配軸53,53へと出力している。
【0025】
なお、図1に示すようにエンジン12は、燃料タンク13及びマフラー21よりも上方に高い位置に配設されており、上記伝動ケース50はエンジン12の下方空間を通ってリヤミッションケース46からフロントミッションケース33まで直線状に最短の経路で配設されている。
【0026】
上記分配軸53は、フロントミッションケース33の円筒部33aと、該円筒部33aと連結しているキングピンケース55の横筒部55aとからなるフロントアクスルケース56に覆われており、キングピンケース55内において上記分配軸53の端部に固設されたベベルギヤ53aとキングピン軸42の上部に固設されたベベルギヤ42aとが噛合している。
【0027】
上記キングピン軸42は、キングピンケース55及びその下方に設けられたファイナルケース41に内装されており、その下端部に固設されたベベルギヤ42bは、車軸伝動筒(車輪付け換え部)59の外周に形成されたギヤ60と噛合している。該車軸伝動筒59はファイナルケース41にベアリングを介して回転自在に支持されており、その内周には前輪2の車軸(以下前車軸という)61が嵌挿されている。
【0028】
図5(a)に示すように、上記前車軸61は六角形軸からなり、車軸伝動筒59の内周の中途部には該前車軸61と嵌合する六角穴部62が形成され、これら六角形の前車軸61及び六角穴部62の嵌合によって、前輪2へと動力が伝達されている。また、車軸伝動筒59はその両端部から前車軸61を嵌挿可能に構成されていると共に、前車軸61の先端には係止ピン63が挿通する孔61aが設けられており、ファイナルケース41の幅方向両端から突出する車軸伝動筒59の両端部に形成されたピン孔(貫通孔)59a及び孔61aに係止ピン63が嵌挿されて前車軸61は車軸伝動筒59に抜け止めされて固定されている。
【0029】
更に、キングピンケース55とファイナルケース41との間にはコイルスプリング65が介在しており、該コイルスプリング65などによって前輪2からの衝撃を緩衝するフロントサスペンション(懸架装置)66が構成されている。
【0030】
上記フロントサスペンション66は左右の車輪(前輪2,2)を独立して上下動可能に支持した独立懸架式のサスペンションとなっており、フロントアクスル機構43の上部(フロントアクスルケース56及びキングピンケース55)は機体フレーム19に固定された構成となっている。
【0031】
これらキングピンケース55、キングピン軸42、ファイナルケース41及びフロントサスペンション66によって、前輪2の車軸支持部材58が形成されており、該車軸支持部材58のフロントアクスルケース56より下方部分の長さMは、前輪2の半径Lよりも長く構成されている(L<M)。
【0032】
なお、上記フロントミッションケース33の円筒部33aの基部にはオイルシール64が配設されており、フロントミッションケース33の本体内は潤滑油によって潤滑され、それ以降の車軸伝動部はグリスによって潤滑されている。
【0033】
一方、リヤアクスル機構45の構造も上記フロントアクスル機構43とほぼ同様に構成されており、図6に示すように、リヤミッションケース46において、エンジン12からの動力がデフ67を介して左右の分配軸69,69へと伝達されている。上記分配軸69,69はブレーキケース71及びキングピンケース72の横筒部72aからなるリヤアクスルケース70に覆われており、該ブレーキケース71にはサイドブレーキとしての多板式ブレーキ73が内装されている。
【0034】
上記分配軸69,69の先端に固設されたベベルギヤ69aは、キングピンケース72内においてキングピン軸75の上部に固設されたベベルギヤ75aと噛合しており、該キングピン軸75はその下方のファイナルケース76に亘って配設されている。また、キングピンケース72及びファイナルケース76との間にはコイルスプリング77が介在しており、該コイルスプリング77などによって独立懸架式のリヤサスペンション(懸架装置)79が構成されている。それにより、リヤアクスル機構45上部(リヤアクスルケース70及びキングピンケース72)は機体フレーム19に固定された構成となっている。
【0035】
これらキングピンケース72、キングピン軸75、ファイナルケース76及びリヤサスペンション79によって後輪3の車軸支持部材74が構成され、該車軸支持部材74は、そのリヤアクスルケース70よりも下方部分の長さYを後輪3の半径Xよりも長く構成している(X<Y)。
【0036】
上記キングピン軸75の下端には、車軸伝動筒(車輪付け換え部)81の外周に形成されたギヤ82と噛合するベベルギヤ75bが固設されており、該車軸伝動筒81はファイナルケース76にベアリングを介して回転自在に支持されている。
【0037】
上記車軸伝動筒81は、その内周に後輪3の車軸(以下、後車軸という)83が嵌合する六角穴部85が形成されていると共に、ファイナルケース76の幅方向両端から突出する両端部から後車軸83を嵌挿可能に構成されている。後車軸83は、その端部に形成された孔83a及び上記車軸伝動筒81の両端部に形成されたピン孔81a,81aとに係止ピン63を嵌挿することによって、車軸伝動筒81に抜け止めされて固定されている。
【0038】
また、キングピンケース72の横筒部72aの基部にはオイルシール86が設けられており、リヤミッションケース46及びブレーキケース71内は潤滑油によって潤滑され、それ以降の車軸伝動部はグリスによって潤滑されている。
【0039】
乗用管理機1は、そのアクスルケース56,70を上述した車軸支持部材58,74によって、前輪2及び後輪3よりも高い位置に設けており、キングピン軸42,75(車軸支持部材58,74)を挟んで機体内側であるアクスルケース56,70下方に各前輪2及び後輪3を配置可能に構成されている。また、車軸61,83を車軸伝動筒59,81に抜き差しする簡単な作業で、キングピンケース55,72を挟んで機体の内側もしくは外側に前輪2及び後輪3を付け換えることができ、図6に示すように、2つの幅狭の畝B,Bを跨ぐ場合などの広い車輪間幅が必要な場合は、車輪2,3を機体外側に配置して幅広のトレッドTとし、1つの幅広の畝Aを跨ぐ場合などには車輪2,3を機体内側に配置して幅狭のトレッドSとし、圃場の状況に応じてそのトレッドS,Tを変更可能に構成されている。
【0040】
更に、図3及び図4に示すように、機体フレーム19の両側部には車輪2,3のトレッドS,Tを変更する際に、乗用管理機1をジャッキアップするためのスタンド87,87が設けられており、該スタンド87は機体フレーム19のサイドレール19aに固設された一対のプレート89,89間に軸支された回転支軸94を中心として回転自在に取付けられている。
【0041】
上記プレート89にはスタンド87を係止する位置決めピン91を取付けるためのブラケット90がボルトによって固定されており、該位置決めピン91はスプリング91aによって上記プレート89の嵌合穴に挿通されるように付勢されている。上記スタンド87は位置決めピン91と当接することによって固定され、作業状態においては位置決めピン91と当接して正立した状態に保たれ、格納状態においては位置決めピン91によって下方に向けて回動しないように固定される。
【0042】
次に乗用管理機1の動力伝達について説明する。
【0043】
図7に示すように、エンジン12の出力軸92には2つプーリ92a,92bが固設されており、それぞれ油圧ポンプ93及び油圧式無段変速装置17の入力軸95,96に設けられたプーリ95a,96aとの間には、テンションクラッチプーリ97a,99aを介してベルト97,99が巻着されている。また、油圧式無段変速装置17に入力された動力はリヤミッションケース46の入力軸100へと出力され、該入力軸100に設けられたギヤ100aは中間軸101のギヤ101aと噛合している。
【0044】
更に、中間軸101にはデフ67と噛合するギヤ101bが固設されており、左右の分配軸69,69を介して後輪3,3に動力伝達をしていると共に、該中間軸101にはフロントミッションケース33へと動力を伝達する伝動軸50のベベルギヤ50aと噛合するギヤ101cが固設されている。
【0045】
一方、上述した油圧ポンプ93の入力軸95にはロータリ作業機10へと動力を分岐するためのプーリ95bが設けられており、副変速ギヤケース102の入力軸に設けられたプーリ102aとの間に作業機クラッチとしてのテンションクラッチプーリ103aを介してベルト103を巻着している。副変速ギヤケース102から延設された作業機PTO軸105は、作業機ギヤケース106内においてエンジン12からの動力をロータリ駆動軸107へと出力し、該ロータリ駆動軸107に入力された動力は伝動チェーン109を介してロータリ爪(ロータリ部材)110へと伝動される。なお、上述したプーリ95b,102a,ベルト103、副変速ギヤケース102、作業機PTO軸105及び作業機ギヤケース106からなる作業機伝動系111は、リヤアクスル45の下方を通って動力伝達している(図1,図6及び図7参照)。
【0046】
次にロータリ作業機10の構成について説明をする。
【0047】
図1及び図2に示すように、ロータリ作業機10は、様々な部材を取付けるためのツールバー112と、該ツールバー112の両端部に設けられた支持プレート113間に軸支され、機体幅方向に延びたロータリ駆動軸107と、該ロータリ駆動軸107に沿って機体幅方向に左右に移動自在な2つのロータリユニット115,115とから構成されている。これらのロータリユニット115,115は、図2に示すように接合して配置可能であると共に、図7に示すように畝の溝に合わせて離しても配置可能であり、その作業位置を左右方向に調整可能に構成されている。
【0048】
上記ロータリユニット115,115は、六角軸からなるロータリ駆動軸107に嵌合するスプロケット116及びロータリ爪110が取付けられた出力軸117に固設されたスプロケット119をベアリングを介して回転自在に内装し、これらスプロケット116,119間に巻着された伝動チェーン109を覆うチェーンケース120と、該ロータリ爪110の上方を覆うようにヒンジによって開閉自在に取付けられたロータリカバー121などから構成されており、上記チェーンケース120からは機体後方に向ってロータリフレーム122が延設されている。
【0049】
一方、上記ツールバー112には向かい合った一対のコ字状ブラケット123が締付ボルト125によって連結されて取付けられており、該締付ボルト125を緩めることによって、ツールバー上を左右に移動自在に構成されている。該一対のコ字状ブラケット123のうち、機体前方側にはステー127が取付けられており、その端部に設けられた円筒形のブラケットにはゲージ輪126が上下調節自在に取付けられている。
【0050】
また、上記一対のコ字状ブラケット123の機体後方側からはロータリユニット115を支持するための支持ステー129が延びており、該支持ステー129に設けられた円筒形のブラケット129aには、スプリング130を介して支持ロッド131が上下に調節自在に取付けられている。該支持ロッド131の端部には上記ロータリフレーム122及びロータリカバー121と連結したL字状の取付け部材132が設けられており、ロータリユニット115は上記支持機構及びロータリ駆動軸107によって支持されている。
【0051】
更に、上記ツールバー112の中央前面には昇降リンク9を取付けるためのホルダフレーム133が設けられており、該ホルダフレーム133には全面耕耘時にロータリユニット115間に生じる残耕を処理するためのスキ135を取付けるための円筒のブラケットが設けられている。この残耕処理用のスキ135はピンによって上記ブラケットに固定され、その高さを調整可能に構成されていると共に、容易に脱着可能である。
【0052】
なお、前輪2,2及び後輪3,3は、車軸支持部材58,74の下端部の両側に取付け部を設け、これら取付け部にボルト等によって取付けてもよく、上記昇降リンク9は油圧シリンダ11によって昇降するように構成されているが電動シリンダにより昇降してもよく、上記ロータリ作業機10は昇降リンク9の昇降に合わせて上昇時にはロータリ爪110の回転を停止し、下降時には駆動するように構成してもよい。
【0053】
次に本実施形態に係る乗用管理機の作用について説明をする。
【0054】
作業者は、圃場を耕耘する際、ロータリ作業機10のツールバー112に取付けられているコ字状ブラケット123の締付ボルト125を緩め、ロータリユニット115をロータリ駆動軸107に沿って機体幅方向に移動させ、2つのロータリユニット115,115を接合して配置すると共に、これらロータリユニット115,115間の残耕を処理するためのスキ135を取付ける。
【0055】
ロータリ作業機10の準備が整うと、作業者は乗用管理機1を圃場に移動させると共に、上記2つの接合したロータリユニット115,115を駆動させ、ロータリ爪110及びスキ135によって圃場を耕耘していく。
【0056】
また、中耕もしくは培土作業を行う際には、まず機体の両側部に格納されているスタンド87を作業状態にし、ジャッキによって機体を持ち上げる。作業者はジャッキによって機体5を持ち上げると、係止ピン63を抜いて車輪2,3を車軸伝動筒59,81から取り外すと共に、圃場の畝A,Bのサイズに合わせて機体5の内側もしくは外側に車輪2,3を付け換え、上記車軸伝動筒59,81に嵌挿された車輪2,3に係止ピン63を差し込んで固定する。
【0057】
車輪2,3のトレッドS,Tの調整が終わると、ロータリ作業機10のツールバー112に取付けられたコ字状ブラケット123の締付ボルト125を緩め、車輪2,3と同様に2つのロータリユニット115,115を畝間の溝に合わせてそれぞれ配置する。
【0058】
上記調整作業を終えると、作業者はロータリ作業機10を駆動させると共に、機体5を畝に沿って走行させ、上記ロータリ作業機10のロータリ爪110によって畝間の溝を浅く掘り起こし、除草をしたり、作物の株元に土を寄せたりする。
【0059】
上記のように乗用管理機を構成したことによって、前輪2及び後輪3に支持された機体5は、その中心部(機体前後方向及び幅方向の中央部)近傍に重量物のエンジン12を配置し、該エンジン12を挟んで機体右側方に燃料タンク13を取付け、機体左側方にマフラー21を取付けることによって、前後方向及び左右方向の重量バランスを向上させることができる。また、高温のマフラー21が燃料タンク13から離れて配置されるため安全である。
【0060】
更に、リヤミッションケース46を挟んで機体右側のリヤアクスルケース70の上方にバッテリー16を配置し、機体左側のリヤアクスルケース70の上方に油圧式無段変速装置17を配置したことによって、機体の左右バランスを向上させることができる。
【0061】
また、前輪2(フロントミッションケース33)の上方に運転座席15を設けると共に、後輪3の後方にロータリ作業機10を取付けることによって上記機体5の重量バランスを向上させることができる。
【0062】
更に、上記エンジン12をマフラー21及び燃料タンク13よりも高く配置し、その下方に生じた空間に伝動軸50を配置したことにより、最短経路で伝動軸50を配設することができる。また、伝動系の構成もシンプルなものとなる。
【0063】
一方、ロータリ作業機10の2つのロータリユニット115,115をロータリ駆動軸107に沿って移動自在とし、これらのロータリユニット115,115を接合して配置することによって機体幅の略々全面において耕耘作業をすることができる。また、上記ロータリユニット115,115を離して配置することによって、圃場の部分耕耘や中耕及び培土作業をすることもでき、ひとつのロータリ作業機10によって耕耘、中耕、培土作業を行うことができるため、各作業専用の作業機を購入する必要もない。
【0064】
更に、各車輪支持部材58,74のアクスルケース56,70下方部分の長さM,Yを前輪2及び後輪3の半径L,Xより長く形成し、各アクスルケース(フロントアクスルケース56、リヤアクスルケース70)を前輪2及び後輪3よりも高い位置に設けることによって、機体内側及び外側に上記前輪2及び後輪3を付け換えることができ、圃場の畝A,Bに合わせてトレッドS,Tを変更することができる。
【0065】
また、上記前輪2及び後輪3を、車軸伝動筒59,81に車軸61,83を嵌挿して取付けると共に、該車軸伝動筒59,81の両端に設けられたピン孔59a,81aに係止ピン63を差し込んで固定する構成と、機体5の側部にジャッキアップのためのスタンド87を設けたこととが相俟って、容易にトレッドS,Tを変更することができる。
【0066】
更に、フロントサスペンション66及びリヤサスペンション79を独立懸架方式としたことによって、フロントアクスル機構43及びリヤアクスル機構45の上部が固定された構成となり、機体フレーム19を最外側に構成できる。それにより、機体5を高剛性かつ、軽量に構成することができる。
【0067】
<実施形態2>
図9は、本発明の実施形態2に係る乗用型移動農機としての乗用管理機を示すものである。この実施形態は、実施形態1における乗用管理機1を4輪操舵(4WS)構成としたものであり、以下に実施形態1の構成と相違する部分について説明する。
【0068】
図9に示すように、前輪2,2を操向するためのピットマンアーム136(以下、フロントピットマンアームという)を略々L字状に形成し、その長辺部136aには、前輪2,2のナックルアーム40,40と連結しているタイロッド39,39が取付けられている。
【0069】
また、後輪3,3も前輪2,2と同様に上記フロントピットマンアーム136と同形状のリヤピットマンアーム139を設け、L字状の短辺部139bには後輪3,3のファイナルケース76,76に固設されたナックルアーム137,137と連結したタイロッド140,140が取付けられている。
【0070】
上述したフロントピットマンアーム136の短辺部136bと、リヤピットマンアーム139の長辺部139aはコネクティングロッド141によって連結されており、これらフロントピットマンアーム136及びリヤピットマンアーム139は、その短辺部136b及び長辺部139aが機体幅方向逆向きに位置する向きに配置されている。これにより、コネクティングロッド141は上記フロントピットマンアーム136の短辺部136b及びリヤピットマンアーム139の長辺部139a間に斜めに掛け渡されている。
【0071】
そのため、後輪3,3は前輪2,2が操舵されると、前輪2,2とは逆方向に連動して操舵され、乗用管理機1はその回転半径を小さくすることができると共に、圃場を荒らさずに隣の条に容易に入ることができる。
【0072】
また、乗用管理機1は、車輪支持部材58,74の下端部に設けられた該車軸伝動筒59,81に車軸61,83を抜き差しして前輪2及び後輪3のトレッドS,Tを変更するため、トレッドS,Tの変更に際して操舵系及び伝動系の調整をする必要がなく、シンプルな構成とすることができ、4輪操舵においても簡易な作業でトレッドS,Tの変更をすることができる。
【0073】
<実施形態3>
図10は、本発明の実施形態3に係る乗用型移動農機としての乗用管理機を示すものである。この実施形態は、実施形態1におけるロータリ作業機10への伝動を、作業機PTO軸105の代わりにベルトによってしたものであり、以下に実施形態1の構成と相違する部分について説明する。
【0074】
図10に示すように、作業機伝動系111の油圧ポンプ93の入力軸95に設けられたプーリ95bと、昇降リンク9のロアリンク9bの回動軸142に設けられたプーリ142aとの間には、テンションクラッチプーリ103aを介してベルト103が巻着されている。
【0075】
また、回動軸142上には上記プーリ142aの他にプーリ142bが設けられており、該プーリ142bと、作業機ケース143の入力軸145に設けられたプーリ145aとの間にはテンションクラッチプーリ146を介してベルト147が巻着されている。作業機ケース143に入力された動力は、ロータリ駆動軸107へと出力され、チェーンケース120に内装された伝動チェーン109(図7参照)を介してロータリ爪110へと出力される。
【0076】
上記作業機伝動系111は、ロータリ作業機10への伝動をベルト147によって行うと共に、昇降リンク9のロアリンク9bの回動軸142にプーリ142a,142bを設けたことによって、ロータリ作業機10の上下動の伝動への影響を最小限とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施形態1に係る乗用管理機の側面図。
【図2】本発明の実施形態1に係る乗用管理機の平面図。
【図3】本発明の実施形態1に係る乗用管理機の機体フレームの側面図。
【図4】本発明の実施形態1に係る乗用管理機の機体フレームの平面図。
【図5】本発明の実施形態1に係る乗用管理機のフロントアクスルの正面図。
【図6】本発明の実施形態1に係る乗用管理機のリヤアクスルの正面図。
【図7】本発明の実施形態1に係る乗用管理機の伝動系統図。
【図8】図2における乗用管理機の中耕作業状態を示す平面図。
【図9】本発明の実施形態2に係る乗用管理機のステアリング機構を示す平面図。
【図10】本発明の実施形態3に係る乗用管理機の作業機伝動系を示す側面図。
【符号の説明】
【0078】
1 乗用管理機(乗用型移動農機)
2 前輪
3 後輪
5 機体
6 運転部
10 ロータリ作業機
12 エンジン
13 燃料タンク
15 運転座席
16 バッテリー
17 油圧式無段変速装置
21 マフラー
33 フロントミッションケース(ミッション)
46 リヤミッションケース(ミッション、リヤミッション)
50 伝動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ左右一対の前輪及び後輪により支持される機体に運転部を配置すると共にエンジンを搭載してなる、乗用型移動農機において、
前記運転部の運転座席を、前記前輪の上方に配置し、
該運転座席の後方でかつ前記前輪及び後輪の間である機体前後方向中央部にエンジンを配置し、
該エンジンを挟んで機体左右幅方向のいずれか一方に燃料タンクを配置し、他方に該エンジンから延びるマフラーを配置した、
ことを特徴とする乗用型移動農機。
【請求項2】
前記エンジンの回転をミッションに伝達し、該ミッションから前記前輪及び後輪の一方に直接伝達すると共に、伝動軸を介して前記前輪及び後輪の他方に伝達し、
前記エンジンを前記燃料タンク及びマフラーよりも上方に配置し、該エンジンの下方空間に前記伝動軸を配設した、
請求項1記載の乗用型移動農機。
【請求項3】
前記エンジンの回転を前記後輪間の略々中央に位置したリヤミッションから前記後輪に伝達すると共に、前記伝動軸を介して前記前輪に伝達し、
該リヤミッションを挟んで、機体左右幅方向のいずれか一方にバッテリーを配設し、他方に油圧式無段変速装置を配設した、
請求項1又は2記載の乗用型移動農機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−161118(P2009−161118A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2583(P2008−2583)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】