説明

乳化組成物

【課題】さっぱりとした使用感を付与しつつ、水にも、極性油にも難溶性の、紫外線吸収剤や薬剤等の物質が安定して配合された乳化組成物を提供すること。
【解決手段】下記(1)〜(4)を含有することを特徴とする乳化組成物を提供することにより、上記の課題を解決し得ることを見出した。
(1)水にも、非極性油にも、難溶性の物質を、1種又は2種以上
(2)IOB値が0.05〜0.80である極性油分を、1種又は2種以上
(3)上記(2)との相溶性が認められない常温で液状のフッ素化合物を、1種又は2種以上
(4)水

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水や非極性油に対して難溶性の物質が、さっぱりとした使用感を伴って配合された、化粧料や皮膚外用剤として用いることが好適な乳化組成物に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
乳化組成物において、さっぱりとした使用感を付与することは、非常に重要な事項である。よって、この目的を達成するために、それ自体さっぱりとした使用感を伴うシリコーン油の、乳化組成物への配合が行われている。
【0003】
一方、化粧料や外用組成物において、太陽からの紫外線の遮蔽、配合成分の安定化等の目的から、紫外線吸収剤を配合する要求が多くなっているが、紫外線吸収剤の多くはシリコーン油との相溶性に難点があることが知られている。また、多くの製品に配合が望まれる一部の薬効成分もまた、シリコーン油との相溶性に問題が認められる。
【特許文献1】特開2004−75620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の背景技術に基づき、さっぱりとした使用感を付与しつつ、水にも、極性油にも難溶性の、紫外線吸収剤や薬剤等の物質(以下、難溶性物質ともいう)が安定して配合された乳化組成物を提供することを課題としてなされた発明である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記の課題を、乳化組成物の油相において、難溶性物質を相溶させた特定の極性油分と、当該極性油分には相溶しないフッ素化合物を共存させることにより、所望するさっぱりした使用感を伴う乳化組成物が提供されることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、下記(1)〜(4)を含有する乳化組成物(以下、本発明組成物ともいう)を提供する発明である。
(1)水にも、非極性油にも、難溶性の物質を、1種又は2種以上
(2)IOB値が0.05〜0.80である極性油分を、1種又は2種以上
(3)上記(2)との相溶性が認められない常温で液状のフッ素化合物を、1種又は2種以上
(4)水
【0007】
上記のIOB値は、「有機概念図」により定義されるものである。「有機概念図」とは、藤田穆により提案されたものであり、その詳細は"Pharmaceutical Bulletin", vol.2, 2, pp.163-173(1954)、「化学の領域」vol.11, 10, pp.719-725(1957)、「フレグランスジャーナル」, vol.50, pp.79-82(1981)等で説明されている。すなわち、すべての有機化合物の根源をメタン(CH)とし、他の化合物はすべてメタンの誘導体とみなして、その炭素原子数、置換基、変態部、環等にそれぞれ一定の数値を設定し、そのスコアを加算して有機性値、無機性値を求め、この値を、有機性値をX軸、無機性値をY軸にとった図上にプロットしていくものである。この有機概念図は、「有機概念図−基礎と応用−」(甲田善生著、三共出版、1984)等にも示されている。そして、有機概念図において、IOB値とは、有機概念図における有機性値(OV)に対する無機性値(IV)の比、すなわち「無機性値(IV)/有機性値(OV)」をいう。
【0008】
本発明組成物は、上述したように乳化組成物であり、その乳化形態は自由に選択をすることが可能である。すなわち、本発明組成物は、油中水型の乳化形態、又は、水中油型の乳化形態、さらには、これらを複合的に組み合わせた乳化形態でもあり得る。本発明組成物は、特に、その乳化系を構成する油相に特徴がある。すなわち、本発明組成物は、使用に際してさっぱりとした使用感を導くフッ素化合物画分と、難溶性物質が相溶した極性油分の画分とが、乳化系において相溶しないことを特徴とし、さっぱりした使用感は、当該フッ素化合物画分により発揮され、もう一方の極性油分の画分においては、難溶性物質が安定して溶解した状態が維持されることにより、当該難溶性物質の紫外線遮蔽効果や薬効が持続的に発揮される。また、水溶性薬剤等は、水相に溶解させて保持することができる。なお、本発明組成物の乳化形態は、油中水型の形態をとることが、概ね安定性に優れる傾向があり好適である。
【0009】
本発明組成物は、典型的には、皮膚若しくは頭皮頭髪に適用可能な化粧料又は皮膚外用剤として用いられる。化粧料と皮膚外用剤は、共に、皮膚又は頭皮頭髪に適用することが可能な形態であり、両者は重なり合う概念で、特に、化粧料であることは、皮膚外用剤であることをも意味するものである。皮膚外用剤であって化粧料ではない場合とは、皮膚外用剤の目的が美容を第一義とする「化粧」ではなく、健康を第一義とする「医薬部外品」若しくは「医薬品」である場合が該当する。IOB値は、大きい方が小さいものよりも極性が強いことを示している。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、水や非極性油に対して難溶性の物質が、さっぱりとした使用感を伴って安定な状態で配合された、化粧料や皮膚外用剤として用いることが好適な乳化組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[必須含有成分]
上述のように、本発明組成物における必須の含有成分は、(1)水にも、非極性油にも、難溶性の物質(難溶性物質)、(2)IOB値が0.05〜0.80である極性油分(以下、特に断りのある場合を除き、「極性油分」とは、ここにいう極性油分のことを意味するものとする)、(3)上記(2)との相溶性が認められない、常温で液状のフッ素化合物(以下、特に断りのある場合を除き、「フッ素化合物」とは、ここにいうフッ素化合物のことを意味するものとする)、及び、(4)水、である。そして、本発明組成物のエマルションは、上記のような構成をとるものである。以下、これらの本発明組成物の必須の含有成分のうち、特に、(1)〜(3)について説明する。
【0012】
(1)難溶性物質
難溶性物質は、上述の通り、水にも、非極性油にも、難溶性の物質である。ここで「非極性油」とは、IOB値が0.05未満の油分を意味するものである。ただし、当該「非極性油」の定義には、シリコーン油を含むこととする。難溶性物質には、紫外線吸収剤や薬剤などが含まれ、具体的には、紫外線吸収剤としては、2,4−ビス−[{4−(2−エチルヘキシルオキシ)−2−ヒドロキシ}−フェニル]−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリアニリノ−(p−カルボ−2'−エチルヘキシル−1'−オキシ)−1,3,5−トリアジン、1−[4−(1,1−ジメチルエチル)フェニル]−3−(4−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオン、4-メトキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン等が挙げられる。また、薬剤としては、インドメタシン、トリクロロカルバニリド等が挙げられる。
【0013】
なお、これらの難溶性物質は、あくまでも例示であり、ここに列挙したものに難溶性物質は限定されるものではない。
【0014】
難溶性物質は、本発明組成物に1種又は2種以上を配合することができる。
【0015】
(2)極性油分
極性油分としては、例えば、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル(IOB値:0.28)、2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸2−エチルヘキシル(IOB値:0.33)、ジピバリン酸トリプロピレングリコール(IOB値:0.52)、オクタン酸セチル(IOB値:0.13)、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン(IOB値:0.31)、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタンエリスリット(IOB値:0.35)、安息香酸(炭素原子数12〜15)アルキル(IOB値:0.19)、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン(IOB値:0.36)、フェネチルベンゾエート(IOB値:0.30)、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール(IOB値:0.32)、コハク酸ジ2−エチルヘキシル(IOB値:0.32)、トリオクタノイン(IOB値:0.36)等が挙げられる。
【0016】
極性油分は、本発明組成物に1種又は2種以上を配合することができる。
【0017】
(3)フッ素化合物
フッ素化合物としては、例えば、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロペンタン、パーフルオロメチルシクロヘキサン、パーフルオロジメチルシクロヘキサン、パーフルオロトリメチルシクロヘキサン、パーフルオロデカリン、パーフルオロメチルデカリン、パーフルオロパーヒドロフルオレン、パーフルオロパーヒドロフェナトレン、ポリパーフルオロメチルイソプロピルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、メチルパーフルオロブチルエーテル等のフッ素油が挙げられる。
【0018】
フッ素化合物は、本発明組成物に1種又は2種以上を配合することができる。
【0019】
(4)配合量
上記の成分(1)〜(3)の本発明組成物における配合量のうち、(1)の難溶性物質の配合量は、配合を行う難溶性物質が、可能な限りその物質に求められる機能を発揮する濃度と一致することが好適である。ただし、その上限は、(2)の極性油分が、当該難溶性物質を十分に溶解することが可能な量であることが好適である。この量は、個々の難溶性物質と極性油分の種類に応じて定められるものであり、具体的な量は、当業者であれば、常温において用いる極性油分中に所望する難溶性物質の溶解実験を行うことにより容易に把握することが可能であり、実施が容易な事項である。
【0020】
また、(2)の極性油分と(3)のフッ素化合物の配合比は、質量比で、(3)/(2)=1/2以上に極性油分が配合されていることが好適である。また、(3)の本発明組成物における配合量は、好適には、組成物の5〜50質量%である。
【0021】
また、(4)の水は、それ以外の全ての成分の残量である。
【0022】
[任意含有成分]
本発明組成物は、上記した必須構成成分の他に、通常、化粧料や皮膚外用剤において配合される他の成分、例えば、粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油、シリコーン油、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調製剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料等を必要に応じて適宜配合し、目的とする剤形に応じて製造することができる。
【0023】
ただし、シリコーン油は、その配合により難溶性物質の極性油分に対する溶解性を低下させる傾向があるので、組成物の10質量%以下(0質量%を含む)に止めることが好適である。
【0024】
[組成物の製造]
本発明組成物は、例えば、油溶性成分は、極性油分相の中に極性油分相のIOB値が、0.05〜0.80の範囲内にある限度で溶解させ、これに難溶性物質を溶解させて、極性油分の画分とし、当該の極性油分の画分と、フッ素化合物画分と、水溶性成分を水に溶解した水相に対し、界面活性物質の存在下、所望する乳化形態とすることが可能な常法を行うことにより製造することができる。
【0025】
本発明組成物は、化粧料又は皮膚外用剤として、クリーム、乳液、美容液、軟膏等の、油中水型乳化組成物として用いられる製品形態とすることが好適である。また、本発明組成物に配合される難溶性物質は、例えば、2,4−ビス−[{4−(2−エチルヘキシルオキシ−2−ヒドロキシ}−フェニル]−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等の紫外線遮蔽能に優れる紫外線吸収剤であることが、実用的には好適であり、日焼け止め用途に特化した、日焼け止め用化粧料又は日焼け止め用皮膚外用剤であることは、好適な態様として挙げられる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を、実施例を用いて、さらに具体的に説明する。ただし、本実施例が、本発明の範囲を限定するものではない。配合量は、特に断らない限り、質量%である。
【0027】
[試験法と評価法]
以下に開示する試験例(実施例又は比較例)に対して行った、試験法と評価法について説明する。
【0028】
(1)「さっぱりした使用感」についての実使用試験
試験品における肌上のさっぱりした使用感(さっぱり感ともいう)を、専門パネラー10名により実使用試験を実施した。評価基準は以下の通りである。
◎…専門パネラー8名以上が使用中肌のさっぱり感があると認めた。
○…専門パネラー6名以上8名未満が使用中肌のさっぱり感があると認めた。
△…専門パネラー3名以上6名未満が使用中肌のさっぱり感があると認めた。
×…専門パネラー3名未満が使用中肌のさっぱり感があると認めた。
【0029】
(2)紫外線吸収剤析出の有無についての試験
難溶性の紫外線吸収剤を配合した試験品を、0℃で1ヶ月保存した後、結晶析出の有無を肉眼および顕微鏡で確認した。
〇…肉眼・顕微鏡双方で、全く結晶析出が認められなかった。
×…肉眼又は顕微鏡で、試験品に結晶の析出が認められた。
【0030】
[試験品の製造]
下記の製造方法に従って試験品(実施例1〜2、比較例1〜2)を製造し、上記の実使用試験と析出判定試験を行った。試験品の処方と各試験の結果を、併せて表1に示す。
【0031】
<製造方法>
表1に示すC部[(2)成分]とE部[(1)成分]を混合し、70℃に加熱し溶解した。その後、これにB、D[実施例においては(3)成分]、Fの各部を添加して、ホモジナイザーにより充分分散させた。一方、A部は70℃に加熱し、均一に溶解させた。その後、B〜F部をホモミキサーで攪拌しながらA部を徐添することにより乳化し、冷水で室温まで冷却することでサンスクリーン乳液を得た。
【0032】
【表1】

【0033】
表1に示すように、本発明品(実施例1〜2)は、肌上におけるさっぱりした使用感が認められ、かつ、製剤も低温下でさえも安定であった。これに対して、D成分として通常のシリコーン油を配合した比較例1、D成分自体を抜去した比較例2は、使用性又は製剤の安定性において問題が認められた。
【0034】
以下に、他の本発明組成物の実施例を挙げる。各々の実施例において行った試験は、上記の試験(1)と(2)である。
【0035】
[実施例3] サンスクリーン乳液
配合成分 配合量(質量%)
A.水相
2−フェニルベンズイミダゾールー5−スルホン酸 2.0
ジプロピレングリコール 7.0
トリエタノールアミン 1.1
イオン交換水 残 余
B.油相(極性油分の画分)
フェネチルベンゾエート 10.0
パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 3.0
2−エチルヘキシルー2−シアノー3,3−ジフェニルアクリレート 2.0
{2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]
安息香酸ヘキシルエステル 1.0
ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 2.0
防腐剤 適 量
香料 適 量
C.フッ素化合物画分
パーフルオロデカリン 27.0
D.難溶性紫外線吸収剤
4-メトキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン 2.0
2,4−ビス{〔4−(2−エチルヘキシルオキシ)−
2−ヒドロキシ〕フェニル}−6−(4−メトキシフェニル)
1,3,5−トリアジン 3.0
E.粉末
二酸化チタン(疎水化処理品) 10.0
酸化亜鉛(疎水化処理品) 10.0
タルク(疎水化処理品) 4.0
有機変性モンモリロナイト 0.5
【0036】
<製法及び評価>
B部とD部を混合し、70℃に加熱し溶解した。その後、これにC、E各部を添加して、ホモジナイザーにより充分分散させた。一方、A部は70℃に加熱し、均一に溶解させた。その後、B〜E部をホモミキサーで攪拌しながらA部を徐添することにより乳化し、冷水で室温まで冷却することで、難溶性紫外線吸収剤の析出が無く、さっぱりとした使用感のサンスクリーン乳液を得た。
【0037】
[実施例4] サンスクリーン乳液
配合成分 配合量(質量%)
A.水相
ジプロピレングリコール 5.0
グリチルリチン酸ジカリウム 0.02
グルタチオン 1.0
チオタウリン 0.05
クララエキス 1.0
パラベン 適 量
フェノキシエタノール 適 量
2−フェニルベンズイミダゾールー5−スルホン酸 1.0
水酸化ナトリウム 0.15
イオン交換水 残 余
B.油相(極性油分の画分)
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 1.0
ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 1.0
イソノナン酸イソノニル 5.0
パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 3.0
ブチルエチルプロパンジオール 0.5
2−エチルヘキシルー2−シアノー3,3−ジフェニルアクリレート 2.0
フェネチルベンゾエート 5.0
{2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]
安息香酸ヘキシルエステル 1.0
C.フッ素化合物画分
ポリパーフルオロメチルイソプロピルエーテル 25.0
(商品名:FOMBLIN HC/02)
D.難溶性紫外線吸収剤
2、4,6−トリス[p−(2’−エチルヘキシル−1’−オキシカルボニル)
アニリノ]1,3,5−トリアジン 1.0
4-メトキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン 1.0
2,4―ビス{〔4−(2−エチルヘキシルオキシ)
−2−ヒドロキシ〕フェニル}−6−(4−メトキシフェニル)
1,3,5−トリアジン 2.0
E.粉末
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 0.5
球状ポリアクリル酸アルキル粉体 5.0
疎水化処理酸化亜鉛または疎水処理酸化チタン 15.0
【0038】
<製法及び評価>
B部とD部を混合し、70℃に加熱し溶解した。その後、これにC、E各部を添加して、ホモジナイザーにより充分分散させた。一方、A部は70℃に加熱し、均一に溶解させた。その後、B〜E部をホモミキサーで攪拌しながらA部を徐添することにより乳化し、冷水で室温まで冷却することで難溶性紫外線吸収剤の析出が無く、さっぱりとした使用感のサンスクリーン乳液を得た。
【0039】
[実施例5] 日焼け止め水中油型乳液
配合成分 配合量(質量%)
A.水相
クエン酸 0.01
クエン酸ナトリウム 0.09
パラベン 適 量
フェノキシエタノール 適 量
エチルアルコール 5.0
ダイナマイトグリセリン 1.0
サクシノグルカン 0.2
セルロースガム 1.0
フェネチルベンゾエート 5.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 1.0
イオン交換水 残 余
B.油相(極性油分の画分)
ジメチコンコポリオール 0.5
イソステアリン酸 0.5
フェニルトリメチコン 1.0
パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 5.0
アルキル−アリール1,3−プロパンジオンシリコーン誘導体 5.0
C.フッ素化合物画分
エチルパーフルオロブチルエーテル 10.0
パーフルオロデカリン 5.0
D.難溶性紫外線吸収剤
2、4,6−トリス[p−(2’−エチルヘキシル−1’
−オキシカルボニル)アニリノ]1,3,5−トリアジン 3.0
E.粉末
疎水化処理酸化チタン 5.0
シリカ 1.0
【0040】
<製法及び評価>
B部とD部を混合し、70℃に加熱し溶解した。その後、これにC、E各部を添加して、ホモジナイザーにより充分分散させた。一方、A部は70℃に加熱し、均一に溶解させた。その後、B〜E部とA部を混合し、ホモミキサーで攪拌した後、冷水で室温まで冷却することで難溶性紫外線吸収剤の析出が無く、さっぱりとした使用感のサンスクリーン乳液を得た。
【0041】
本実施例5は、水中油型乳化組成物であるが、例えば、水中乳化剤法等を駆使することにより、外相が水相であり、水相に対する内相を構成する油滴において、その外相がフッ素化合物であり、同内相が極性油と難溶性物質の相である水中油型組成物を製造することも可能である。しかしながら、この水中油型乳化組成物は、若干、油中水型乳化組成物に比べると経時的な安定性に問題が認められる傾向がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)〜(4)を含有する乳化組成物。
(1)水にも、非極性油にも、難溶性の物質を、1種又は2種以上
(2)IOB値が0.05〜0.80である極性油分を、1種又は2種以上
(3)上記(2)との相溶性が認められない、常温で液体のフッ素化合物を、1種又は2種以上
(4)水
【請求項2】
上記(1)の難溶性の物質が、常温で固体の紫外線吸収剤である、請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項3】
常温で固体の紫外線吸収剤が、2,4−ビス−[{4−(2−エチルヘキシルオキシ−2−ヒドロキシ}−フェニル]−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリアニリノ−(p−カルボ−2'−エチルヘキシル−1'−オキシ)−1,3,5−トリアジン、1−[4−(1,1−ジメチルエチル)フェニル]−3−(4−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオン、及び、4-メトキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタンからなる群から選ばれる1種又は2種以上の紫外線吸収剤である、請求項2に記載の乳化組成物。
【請求項4】
上記(1)の難溶性の物質が、インドメタシン、又は、トリクロロカルバニリドである、請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項5】
上記(2)のIOB値が0.05〜0.80である極性油分が、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸2−エチルヘキシル、ジピバリン酸トリプロピレングリコール、オクタン酸セチル、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタンエリスリット、安息香酸(炭素原子数12〜15)アルキル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、フェネチルベンゾエート、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、及び、トリオクタノインからなる群の極性油分から選択される1種又は2種以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の乳化組成物。
【請求項6】
上記(3)の常温で液状のフッ素化合物が、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロペンタン、パーフルオロメチルシクロヘキサン、パーフルオロジメチルシクロヘキサン、パーフルオロトリメチルシクロヘキサン、パーフルオロデカリン、パーフルオロメチルデカリン、パーフルオロパーヒドロフルオレン、パーフルオロパーヒドロフェナトレン、ポリパーフルオロメチルイソプロピルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、及び、メチルパーフルオロブチルエーテルからなる群のフッ素化合物から選択される1種又は2種以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の乳化組成物。
【請求項7】
シリコーン油の配合量が、組成物全体に対して5質量%以下(0質量%を含む)である、請求項1〜6のいずれかに記載の乳化組成物。
【請求項8】
乳化組成物の乳化形態が、油中水型である、請求項1〜7のいずれかに記載の乳化組成物。
【請求項9】
乳化組成物の形態が、化粧料又は皮膚外用剤である、請求項1〜8のいずれかに記載の乳化組成物。
【請求項10】
乳化組成物の形態が、日焼け止め用化粧料又は日焼け止め用皮膚外用剤である、請求項1、2、3、5、6、7、8又は9に記載の乳化組成物。

【公開番号】特開2010−100553(P2010−100553A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272552(P2008−272552)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】